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明細書 :有機物を含む懸濁汚水の処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-123891 (P2016-123891A)
公開日 平成28年7月11日(2016.7.11)
発明の名称または考案の名称 有機物を含む懸濁汚水の処理方法
国際特許分類 C02F   1/24        (2006.01)
G21F   9/12        (2006.01)
G21F   9/10        (2006.01)
B03D   1/008       (2006.01)
B03D   1/01        (2006.01)
B03D   1/018       (2006.01)
B01J  20/18        (2006.01)
B03D 101/02        (2006.01)
FI C02F 1/24 B
G21F 9/12 501F
G21F 9/10 G
B03D 1/008
B03D 1/01
B03D 1/018
B01J 20/18 B
B03D 101:02
請求項の数または発明の数 2
出願形態 OL
全頁数 9
出願番号 特願2014-263778 (P2014-263778)
出願日 平成26年12月26日(2014.12.26)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 一般社団法人環境放射能除染学会、第3回環境放射能除染研究発表会要旨集、口頭発表番号S7-4、ポスター発表番号P-033、第3回環境放射能除染研究発表会、第27頁および第115頁、平成26年6月26日発行
発明者または考案者 【氏名】日下 英史
【氏名】石山 宏二
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
個別代理人の代理人 【識別番号】100088948、【弁理士】、【氏名又は名称】間宮 武雄
審査請求 未請求
テーマコード 4D037
4G066
Fターム 4D037AA11
4D037AB02
4D037BA01
4D037CA01
4D037CA02
4D037CA08
4G066AA61B
4G066CA12
4G066CA45
4G066DA08
要約 【課題】有機物を含む懸濁汚水を処理する場合において、懸濁汚水中の浮遊物質を高効率で捕収して分離し除去することができ、捕収剤の使用量を低減させることができる方法を提供する。
【解決手段】処理しようとする懸濁汚水中に捕収剤としてドデシルアミン酢酸塩を添加するとともに、浮遊物質の粒子表面を改質する改質剤としてポリ塩化アルミニウムを懸濁汚水中に添加し、浮遊物質の粒子表面が負に帯電した状態で浮選を行う。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
有機物を含む懸濁汚水を浮選法により処理して懸濁汚水中から浮遊物質を分離し除去する、有機物を含む懸濁汚水の処理方法において、
処理しようとする懸濁汚水中に捕収剤としてドデシルアミン酢酸塩を添加するとともに、浮遊物質の粒子表面を改質する改質剤としてポリ塩化アルミニウムを懸濁汚水中に添加し、浮遊物質の粒子表面が負に帯電した状態で浮選を行うことを特徴とする、有機物を含む懸濁汚水の処理方法。
【請求項2】
懸濁汚水が放射性セシウムイオンを含有し、放射性セシウムイオンの吸着剤としてゼオライトを添加する請求項1に記載の、有機物を含む懸濁汚水の処理方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、底質スラリーや土壌洗浄スラリー、食品工場排水等の有機物を含む懸濁汚水を、マイクロバブル等の泡沫を利用した浮選法(浮遊選別法)により処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
湖沼や溜め池の浚渫土などの底質スラリーには、落ち葉や生物の死骸等の有機物が含まれており、このような底質スラリーの固液分離には、従来、凝集沈殿法が多く用いられている。例えば、放射能汚染土壌の除染・減容化のための方法において、放射能汚染土壌を水で洗浄して粗粒土壌の表面に付着した放射性セシウムを粗粒土壌表面から水中に分離させたときの洗浄水を凝集沈殿槽に導入し、凝集剤としてポリ塩化アルミニウム(PAC)等の無機凝集剤や磁性体ポリマー凝集剤などを使用し、吸着剤としてフェロシアン化合物、ゼオライトスラリーなどを使用して、それらを前記凝集沈殿槽に導入し、凝集沈殿法により放射性セシウムを含んだ沈殿物と放射性セシウムを除いた処理水とに分離し、沈殿物を脱水して放射性セシウム濃縮粘土にする、といった技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、浮選法を用いてスラリーを固液分離することも行われている。例えば、放射性セシウムで汚染されたスラリーの除染方法において、雨水、河川、下水あるいは農地等の汚染土を前処理した汚染スラリーと、添加剤としてアルキルアミン塩型カチオン界面活性剤、第四級アルキルアンモニウム塩型カチオン界面活性剤等の捕収剤、ゼオライト、ベントナイト等の吸着剤などとを浮選機に供給するとともに、浮選機の下部からマイクロバブルを供給することにより、浮選機の上部から放射性セシウムが濃縮された浮上物を浮上回収し、浮選機の下部から除染されたアンダーフロー水を回収する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。また、上記特許文献1には、スラリー状の細粒土壌および微細な粘土質土壌を、油脂類、アミン系浮選剤、ドデシルアミン酢酸塩(DAA)等の浮選剤と共に高速剪断ミキサーに導入して浮選性を向上させた後、細粒土壌を回収する一方、粘土質土壌および浮選剤に起泡剤を添加したスラリーを浮選機に導入して、浮選法により放射性セシウムが吸着した粘土質スラリーを選択分離して回収し、これを脱水機で脱水し、放射性セシウム濃縮粘土にする、といった事項が開示されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2013-221819号公報(第4-6頁、図1)
【特許文献2】特開2013-250261号公報(第7-14頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
底質スラリーのように有機物を含んだ懸濁汚水の固液分離に、特許文献1に開示されているような凝集沈殿法を用いる処理方法には、次のような種々の問題点がある。すなわち、懸濁汚水中の有機物は、その比重が小さいので、凝集フロック(浮遊物質の集合体)の嵩密度が小さくなり、このため、その凝集フロックを凝集沈殿槽の底部に沈降させるのに長時間を要する。また、懸濁汚水中に有機物が含まれていると、完全な固液分離を行うことができず、上澄み液を極く僅かながらも濁った状態で処理水として放流する、といったことになる。この場合、COD/BODの低減化などのように人体に直接影響の無い規制物質の除去を主たる目的とする汚水処理では、処理水の極く僅かな濁りによって規制値を超えることはなくそれほど問題とはならない。しかしながら、放射性物質や重金属などの有害物質を含む底質スラリーや土壌洗浄スラリーの処理では、それらの物質が有機物と共に処理水中に残存して、処理水の僅かな濁りが規制値超過の直接の原因となり看過することができなくなる、といった問題点がある。特に、放射性セシウムで汚染された土壌の除染処理では、放射性セシウムがセシウム吸着性の高い数μm~サブミクロン領域の粘土超微粒子に収着・吸着されその粘土超微粒子が有機体微粒子に内包された状態で処理水中に残存してそれが処理水の僅かな濁りの原因となる、といったような場合には、重大な問題となる。なお、処理時間を短くしようとして懸濁汚水中に凝集剤を大量に投与したり、無機凝集剤と高価な高分子凝集剤とを併用したりすることが試みられているが、COD/BODのように比較的穏やかな環境規制物質については問題無く処理することができる。しかしながら、放射性物質や環境ホルモンを含み有機物を含有する懸濁汚水を処理する場合には、凝集沈殿法によって規制値や目標値を達成することが困難であり、また、懸濁汚水中に有機物が含まれることにより、大量の薬剤が必要となる。
【0006】
また、マイクロバブル等による浮選法を用いた処理は、懸濁汚水中に含まれる浮遊物質(懸濁質)が無機物粒子であるときには高効率で固液分離することが可能である。しかしながら、従来の浮選法では、有機物を希薄に含む懸濁汚水中から浮遊物質を分離して完全に除去することはできなかった。また、浮遊物質の捕収効果を高めようとすると、DAA等の捕収剤の使用量が多くなる、といった問題点があった。
【0007】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、有機物を含む懸濁汚水、特には有機物を希薄に含む懸濁汚水を処理する場合において、懸濁汚水中の浮遊物質を高効率で捕収して分離し除去することができ、捕収剤の使用量を低減させることができる、有機物を含む懸濁汚水の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明では、浮選を行うときに、懸濁汚水中の浮遊物質の粒子表面への捕収剤の吸着が促進されて浮遊物質が浮上しやすくなるように、浮遊物質の粒子表面を改質剤で改質する、といった手段を採用することにより、上記目的を達成した。すなわち、請求項1に係る発明は、有機物を含む懸濁汚水を浮選法により処理して懸濁汚水中から浮遊物質を分離し除去する方法において、処理しようとする懸濁汚水中に捕収剤としてドデシルアミン酢酸塩(以下、「DAA」という)を添加するとともに、浮遊物質の粒子表面を改質する改質剤としてポリ塩化アルミニウム(以下、「PAC」という)を懸濁汚水中に添加し、浮遊物質の粒子表面が負に帯電した状態で浮選を行うことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の方法において、懸濁汚水中に放射性セシウムイオン(溶解性放射性セシウム)が含有されているときに、放射性セシウムイオンの吸着剤としてゼオライトを添加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明の懸濁汚水処理方法によると、懸濁汚水中にPACが添加されることにより、浮遊物質の粒子表面が改質されて、その粒子表面に捕収剤であるDAAの吸着が促進され、浮遊物質が泡沫、例えばマイクロバブルに付着して浮上しやすくなる。より詳しく説明すると、浮遊物質の粒子表面は負に帯電しているので、この負に帯電した粒子表面に陽イオン性捕収剤であるDAAが吸着しやすくなり、浮遊物質はマイクロバブルに付着して浮上しやすくなる。さらに、懸濁汚水中にPACが添加されているので、PACが予め有機物に収着・吸着されることにより、浮遊物質の粒子表面へのDAAの吸着がより促進され、この結果、浮遊物質がマイクロバブルに付着してより一層浮上しやすくなる。なお、浮遊物質の量(懸濁汚水中の浮遊物質の濃度)に対してPACを過剰に添加すると、浮遊物質の表面電位が負から正へシフトすることにより、浮遊物質へのDAAの吸着が抑制されて、浮遊物質が浮上しにくくなる。したがって、浮選は、浮遊物質の粒子表面が負に帯電した状態で行う必要がある。
以上のように、この懸濁汚水処理方法によると、懸濁汚水中の浮遊物質を高効率で分離して除去することができるので、完全な固液分離が可能であり、また、PACの添加により浮遊物質がより一層浮上しやすくなるので、DAAの使用量を低減させることができる。
【0011】
請求項2に係る発明の方法では、懸濁汚水中に含有されている放射性セシウムイオンがゼオライトに吸着され、浮遊物質と共に浮上して分離され、放射性セシウムを含有しない処理水とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明に係る、有機物を含む懸濁汚水の処理方法による効果を確認するために行った実験の結果を示すグラフであって、改質剤であるPACの濃度を種々に変えたときの、捕収剤であるDAAの濃度と処理水の濁度との関係を示すものである。
【図2】この発明に係る懸濁汚水処理方法による効果を確認するための実験に使用した装置の概略構成図である。
【図3】この発明に係る懸濁汚水処理方法を実施するために使用される装置構成の1例を示す概略図である。
【図4】図3に示した装置を使用して、この発明に係る方法により実際に懸濁汚水を処理したときの結果の1例を示すグラフであって、マイクロバブル浮選時間と処理水の濁度との関係を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の最良の実施形態について説明する。
この発明に係る懸濁汚水処理方法において、対象となる懸濁汚水は、例えば、落ち葉、生物の死骸等の腐食有機物が含まれた湖沼や溜め池の底質層を浚渫した底質スラリーや有害物質で汚染された土壌を浚渫し洗浄した土壌洗浄スラリーであって、浚渫土を磨砕・解砕し、各種分級工程、固液分離工程、軽比重物質除去工程などを経て、底質礫、木材やごみ、落葉、底質砂などを除去した後の洗浄水、あるいは、その洗浄水を凝集沈殿処理して凝集沈殿物を沈降分離した後の上澄み水、さらには、その上澄み水を濾過装置で濾過した後の通常の放流水など、有機体微粒子を希薄に含む汚水である。そして、この処理方法では、懸濁汚水を処理槽内で泡沫、例えばマイクロバブルと接触させることにより、懸濁汚水中の浮遊物質をマイクロバブルに付着させて浮上させ、汚水中から浮遊物質を分離して除去し、浄化された処理水として放流できるようにする。

【0014】
懸濁汚水中にマイクロバブルを発生させるマイクロバブル発生器としては、市販されているものを使用すればよい。マイクロバブルは、一般に直径が1μm~数十μmである微細な気泡のことである。なお、泡沫は、マイクロバブルに限らず、それよりも直径が大きい数十μm以上の気泡であってもよい。

【0015】
このマイクロバブル浮選では、処理しようとする懸濁汚水中に捕収剤として陽イオン性捕収剤であるDAAを添加するとともに、改質剤として、一般に無機凝集剤として用いられているPACを懸濁汚水中に添加する。DAAは、懸濁汚水中の浮遊物質に吸着されてその粒子表面を疎水性にし、マイクロバブルへの浮遊物質の付着確率を高める目的で添加される。また、PACは、予め有機物に収着・吸着されて浮遊物質の粒子表面を改質し、浮遊物質へのDAAの吸着をより促進する目的で添加される。DAAとPACとは、処理槽へ供給される懸濁汚水に同時に添加してもよいし、懸濁汚水に先にPACを添加した後にDAAを添加し、その懸濁汚水を処理槽へ供給するようにしてもよい。また、起泡剤として、例えば非イオン性界面活性剤であるトリトンX-100(Triton X-100))(製品名)を懸濁汚水中に添加する。起泡剤は、懸濁汚水でのマイクロバブルの発生およびマイクロバブルの泡沫層の安定形成を助ける目的で添加される。さらに、懸濁汚水中に放射性セシウムイオンが含有されているような場合には、放射性セシウムイオンの吸着剤としてゼオライトを添加する。

【0016】
捕収剤DAAの添加量や改質剤PACの添加量は、懸濁汚水中に含有される浮遊物質の量(懸濁汚水中の浮遊物質の濃度)に応じて相対的に決められる。起泡剤の添加量は、懸濁汚水中の濃度が例えば1w/v%以下となるように設定され、また、捕収剤に対する起泡剤の混合割合は、例えば重量比で1以下とされる。

【0017】
この浮選法を用いた汚水処理方法によると、粒子表面が負に帯電した浮遊物質に陽イオン性捕収剤であるDAAが吸着し、浮遊物質はマイクロバブルに付着して浮上しやすくなる。この場合において、懸濁汚水中にPACが添加されていることにより、PACが予め有機物に収着・吸着される。このため、浮遊物質の粒子表面へのDAAの吸着がより促進され、浮遊物質はマイクロバブルに付着してより一層浮上しやすくなる。この結果、懸濁汚水中の浮遊物質が高効率で分離して除去され、完全な固液分離が行われる。また、PACの添加により、浮遊物質表面へのDAAの吸着がより促進されて浮遊物質がより一層浮上しやすくなるので、DAAの消費量が低減する。なお、懸濁汚水中にPACが過剰に添加されると、浮遊物質の表面電位が負から正へシフトすることになり、浮遊物質へのDAAの吸着が抑制されて、浮遊物質が浮上しにくくなる。したがって、PAC添加による効果を発揮させるためには、浮遊物質の粒子表面が負に帯電した状態で浮選を行うようにする。
【実施例】
【0018】
次に、この発明に係る懸濁汚水処理方法を実施したときの効果を確認するための実験およびその実験結果を示して、この発明についてより具体的に説明する。
試料水として、市販の腐葉土40g(刀川平和農園提供)を水道水200mLに投入し、そのスラリーをカッターミル(TWINBIRD製ミル&ミキサーKC-4811型)で5分間粉砕した後、25μmの篩を使用して篩い分けし、-25μm濃厚スラリーを水道水で200倍希釈し、1Lに定容して模擬底質スラリーを調製し、この模擬底質スラリーをさらに40倍に希釈した希薄スラリー(固体濃度:125ppm)を用いた。また、捕収剤DAAとして東京化成(株)製のDAAを、改質剤PACとして日本軽金属(株)製ニッケイパックを、起泡剤としてナカライテスク(株)製のトリトンX-100をそれぞれ使用した。実験機として、図2に示すように、1L容量の円筒形浮選セル1を有し、その底部に、多数の細孔が形成されたフィルタ板2が取り付けられ、浮選セル1の底から空気を吹き込むことにより数μmの微細気泡を発生させることができ、浮選セル1の底部に処理水を抜き取るための側孔3を設けたカラム浮選器を使用した。そして、浮選セル1内に希薄スラリー、DAA、PACおよびトリトンX-100を投入して20分間液調整した後、30分間浮選を行い、浮選セル1の側孔3からセル底部の処理水を抜き取り、処理水の濁度を濁度センサー(OPTEX製TD-M500)によって計測した。
【実施例】
【0019】
実験の結果を図1に示す。図1は、スラリー中のPACの濃度を0ppm、25ppm、75ppmおよび200ppmと変えたときの、DAAの濃度と処理水の濁度との関係を示したものである。図1中のAがPAC濃度0ppmのとき、BがPAC濃度25ppmのとき、CがPAC濃度75ppmのとき、DがPAC濃度200ppmのときのそれぞれの変化を示す。
【実施例】
【0020】
図1の実験結果に示すように、改質剤としてのPACを添加しないときには、捕収剤であるDAAを150ppmの濃度となるように添加することにより、処理水の濁度を5度以下にすることができた。これは、負に帯電した懸濁質表面に陽イオン性捕収剤であるDAAが静電吸着し、マイクロバブルへの浮遊物質の付着が促進されて、浮遊物質が浮上しやすくなったためであると考えられる。また、PACを25ppmおよび75ppmの濃度となるようにそれぞれ添加することにより、処理水の濁度を5度以下まで下げることのできるDAAの添加濃度がそれぞれ25ppmおよび50ppmとなり、PACの添加によりDAAの添加量を低減することができることが分かった。これは、PACが予め有機物に収着・吸着することことによって、懸濁質表面へのDAAの吸着がより促進されたためであると考えられる。以上のことから、懸濁汚水をPACで前処理した後にマイクロバブル浮選を行うことにより、処理水の濁度を5度以下にすることができるDAAの添加量を大幅に減少させることができ、かつ、完全な固液分離が可能であることが確認された。このように、無機凝集剤として一般に用いられている安価なPACの使用により、比較的高価なDAAの使用量を低減させることができ、かつ、完全な固液分離が可能であるので、この発明に係る方法は、底質スラリーのように有機物を含む懸濁汚水の処理に有効に利用し得るものである。
【実施例】
【0021】
なお、PACを200ppmの濃度となるように添加したときは、PAC無添加のときに比べて、処理水の濁度を同等程度まで下げることのできるDAAの添加濃度を高くする必要があった。これは、浮遊物質の表面電位が負から正へシフトすることにより、浮遊物質へのDAAの吸着が抑制されて、浮遊物質が浮上しにくくなるためであると考えられる。したがって、浮遊物質の粒子表面が負に帯電した状態で浮選が行われるように、PAC添加量を調節することが必要である。
【実施例】
【0022】
次に、上記と同様の実験方法により、希薄スラリーに塩化セシウム(CsCl)およびゼオライトを添加して浮選を行った。スラリー中の各薬剤の濃度は、Cs:5ppm、ゼオライト:1,500ppm、PAC:25ppm、DAA:100ppmとした。この結果、濁度が3.2度である処理水が得られ、処理水中にはCsが検出されなかった。この結果から、放射性物質であるCsを含有した底質スラリーを、この発明の方法によるマイクロバブル浮選で処理することにより、底質スラリーを完全に固液分離するとともに、Csの吸着剤であるゼオライトも浮上分離することができ、この発明に係る汚水処理方法は、底質スラリーの除染にも適用可能であることが確認された。
【実施例】
【0023】
上記した実験では、試料水を回分処理したが、底質スラリーを連続処理するマイクロバブル浮選ミニプラント機を使用して行った試験およびその結果について、以下に説明する。図3に、連続処理を行う装置構成の1例を概略的に示す。
【実施例】
【0024】
この試験機は、内径20cm、高さ200cmの円筒形の浮選セル10を備えている。浮選セル10の上部には、浮上物を掻き出すための掻取り機12が設置され、浮選セル10の上部外周に、掻き出された浮上物が流入する受け槽14が設けられている。また、浮選セル10の上部には、スラリーの流入口16が設けられており、その流入口16にスラリー供給パイプ18が連通して接続されている。浮選セル10の底部には、排水パイプ20が連通して接続されており、排水パイプ20の途中からスラリー循環パイプ22が分岐している。また、試験機には、貯留タンク24が併設されている。この貯留タンク24内に、希薄スラリーが投入される。そして、貯留タンク24内の希薄スラリーに各薬剤、すなわちPAC、DAAおよびトリトンX-100がそれぞれ添加され混合される。貯留タンク24の内部には水中ポンプ26が設置されており、この水中ポンプ26にスラリー供給パイプ18が流路接続されている。スラリー供給パイプ18には、流量調整弁28および流量計30が介挿されている。そして、貯留タンク24内に貯留され薬剤が混合された一定流量の希薄スラリーが、スラリー供給パイプ18を通って浮選セル10へ送給される。スラリー循環パイプ22は、その先端部が貯留タンク24内に挿入されており、スラリー循環パイプ22に循環ポンプ32が介設されている。そして、浮選セル10内の処理途中のスラリーがスラリー循環パイプ22を通って貯留タンク24内へ戻され、浮選セル10と貯留タンク24との間でスラリーが循環させられる。また、試験機には、浮選セル10内の底部付近にマイクロバブルを放出するためのマイクロバブル発生器34が設置されている。
【実施例】
【0025】
図3に示したような構成の試験機を使用し、100Lの希薄スラリー(固体濃度:125ppm)を連続的に所定流量で浮選セル10内に流した。100Lの希薄スラリー中に添加するPACおよびDAAの濃度は、それぞれ25ppmおよび25ppmとした。また、泡沫層の安定化のためにトリトンX-100を、浮選開始時(0分)に15ppmの濃度となるように添加し、浮選を開始してから5分後に15ppmの濃度となるように再度添加した。浮選セル10内へのスラリーの投入流量は、2.4L/minで一定とした。マイクロバブル生成のための空気流量は、0.5L/min~1L/minとした。この試験結果を図4のグラフに示す。
【実施例】
【0026】
図4に示すとおり、希薄スラリーの初期濁度は300度以上であったが、浮選時間の経過に従って処理水の濁度が低下し、浮選開始から60分が経過した時点で濁度が35度となり、120分経過後には21度程度にまで濁度が低下することが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0027】
この発明に係る懸濁汚水処理方法は、湖沼や溜め池の浚渫土などの底質スラリーを完全に固液分離する処理や、放射性物質等の有害物質で汚染された土壌を洗浄した土壌洗浄スラリーから固体粒子とともに有害物質を除去して放流水とする処理などに適用されるほか、食品工場など有機物質を扱う事業所からの排水や下水道汚水のように希薄有機汚泥等の有機物を含む排水の処理に広く適用し得るものであり、この発明は、水質汚濁防止・環境保全などの分野で利用される。
【符号の説明】
【0028】
1、10 浮選セル
16 スラリーの流入口
18 スラリー供給パイプ
22 スラリー循環パイプ
24 貯留タンク
34 マイクロバブル発生器
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3