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明細書 :過酸化水素及びオゾンの分解触媒、過酸化水素及びオゾンの分解方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6180235号 (P6180235)
公開番号 特開2015-039684 (P2015-039684A)
登録日 平成29年7月28日(2017.7.28)
発行日 平成29年8月16日(2017.8.16)
公開日 平成27年3月2日(2015.3.2)
発明の名称または考案の名称 過酸化水素及びオゾンの分解触媒、過酸化水素及びオゾンの分解方法
国際特許分類 B01J  27/232       (2006.01)
B01J  37/04        (2006.01)
B01J  37/03        (2006.01)
C02F   1/58        (2006.01)
FI B01J 27/232 M
B01J 37/04 102
B01J 37/03 B
C02F 1/58 H
請求項の数または発明の数 6
全頁数 14
出願番号 特願2013-173339 (P2013-173339)
出願日 平成25年8月23日(2013.8.23)
審査請求日 平成28年6月24日(2016.6.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】亀島 欣一
【氏名】三宅 通博
【氏名】西本 俊介
【氏名】中村 佳奈
個別代理人の代理人 【識別番号】110001070、【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
審査官 【審査官】山口 俊樹
参考文献・文献 国際公開第01/047841(WO,A1)
特開2004-089760(JP,A)
特開平10-216520(JP,A)
特開平08-099037(JP,A)
特開2001-233619(JP,A)
国際公開第2006/080467(WO,A1)
米国特許出願公開第2011/0098488(US,A1)
調査した分野 B01J21/00-38/74
C02F1/58
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
式(1)で表される層状複水酸化物を含有する、過酸化水素またはオゾンの分解触媒。
[M2+1-x3+x(OH)2][An-x/n・yH2O] ・・・(1)
式(1)中、M2+はMg2+,Co2+,Ni2+およびCu2+からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む二価の金属イオンであり、M3+はAl3+,Fe3+,Mn3+およびCr3+からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む三価の金属イオンであり、ただし、M2+としてMg2+を含みかつM3+としてAl3+を含む組み合わせおよびM2+としてNi2+を含みかつM3+としてAl3+を含む組み合わせは除外され、An-はCO32-,HCO3-およびOH-からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む陰イオンであり、xは1/6~1/2であり、yは0~4である。
【請求項2】
前記M2+がMg2+であり、前記M3+がFe3+である、請求項1に記載の過酸化水素またはオゾンの分解触媒。
【請求項3】
前記An-がHCO3-である、請求項1または2に記載の過酸化水素またはオゾンの分解触媒。
【請求項4】
式(1)で表される層状複水酸化物を、過酸化水素またはオゾンの水溶液と接触させる工程を含む、過酸化水素またはオゾンの分解方法。
[M2+1-x3+x(OH)2][An-x/n・yH2O] ・・・(1)
式(1)中、M2+はMg2+,Co2+,Ni2+およびCu2+からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む二価の金属イオンであり、M3+はAl3+,Fe3+,Mn3+およびCr3+からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む三価の金属イオンであり、ただし、M2+としてMg2+を含みかつM3+としてAl3+を含む組み合わせおよびM2+としてNi2+を含みかつM3+としてAl3+を含む組み合わせは除外され、An-はCO32-,HCO3-およびOH-からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む陰イオンであり、xは1/6~1/2であり、yは0~4である。
【請求項5】
前記M2+がMg2+であり、前記M3+がFe3+である、請求項4に記載の過酸化水素またはオゾンの分解方法。
【請求項6】
前記An-がHCO3-である、請求項4または5に記載の過酸化水素またはオゾンの分解方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、過酸化水素及びオゾンの分解技術、具体的には過酸化水素及びオゾンの分解触媒、当該分解触媒の製造方法、および当該分解触媒を使用する過酸化水素及びオゾンの分解方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
過酸化水素およびオゾンは水処理に利用されているが、それらを含む廃水が環境中に排出されると活性酸素などが生じて水質悪化の原因となることから、分解処理されている。特に過酸化水素は漂白剤、殺菌剤、酸化剤、表面処理剤など広範囲で利用されていることから、安価で大量利用が可能な分解技術、特に分解触媒の開発が望まれている。
【0003】
従来の過酸化水素およびオゾンの分解技術として、白金などの貴金属を用いる方法(たとえば特許文献1参照)、二酸化マンガンを用いる方法、および酵素触媒を用いる方法が知られている。しかしながら、貴金属は埋蔵量や価格が、二酸化マンガンは毒性の高いマンガンの溶出が、酵素触媒は有機物による汚染源となることが問題となっていた。
【0004】
一方、一般式[M2+1-x3+x(OH)2][An-x/n・yH2O](式中、M2+は2価の金属イオンであり、M3+は3価の金属イオンであり、An-は陰イオンである。)で表される、層状複水酸化物〔Layered Double Hydroxide: LDH〕またはハイドロタルサイト様化合物と呼ばれる物質が知られている。この物質は、前記一般式の前半部分に相当する水酸化物の層同士の間に、前記一般式の後半部分に相当する陰イオンおよび水が保持されている積層構造を有する。
【0005】
層状複水酸化物は、イオン交換能や、層間に様々な分子を取り込む性質を有しており、その性質を利用したイオン交換体、吸着材、担体などの用途が提案されている。たとえば、特許文献2には、M2+8-xFe3+x(OH)16(CO32-)x/2・mH2O(式中、M2+はMg2+またはCa2+であり、0<x≦6、0<m≦5である)で表される、パイロオーライト型の構造を有する層状複水酸化物を用いて、水に含まれるアルカリ金属、アルカリ土類金属、鉛、亜鉛、アルミニウム、マンガン、リン等の金属、或いはフミン物質のような有機物の陰イオン等のヒトの健康上有害な物質を吸着等により除去する、水処理方法が記載されている。
【0006】
しかしながら、特定の層状複水酸化物を過酸化水素およびオゾンの分解のために利用できることは、特許文献2およびその他の文献に記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2013-013868号公報
【特許文献2】特開2001-233619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、安価で大量利用が可能であり、かつ毒性の低い、過酸化水素およびオゾンの分解触媒を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ユビキタス元素(ありふれた入手しやすい元素)から合成することのできる特定の層状複水酸化物が、過酸化水素およびオゾンの分解触媒として利用することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は第1の側面において、特定の層状複水酸化物を含有する過酸化水素またはオゾンの分解触媒を提供する。本発明は第2の側面において、そのような過酸化水素またはオゾンの分解触媒に含有される特定の層状複水酸化物の製造方法を提供する。本発明は第3の側面において、特定の層状複水酸化物を利用した過酸化水素またはオゾンの分解方法を提供する。これらの側面において提供される、本発明に係る分解触媒、製造方法および分解方法は、下記のような構成を有する。
【0011】
[1] 式(1)で表される層状複水酸化物を含有する、過酸化水素またはオゾンの分解触媒。
[M2+1-x3+x(OH)2][An-x/n・yH2O] ・・・(1)
式(1)中、M2+はMg2+,Co2+,Ni2+およびCu2+からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む二価の金属イオンであり、M3+はAl3+,Fe3+,Mn3+およびCr3+からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む三価の金属イオンであり、ただし、M2+としてMg2+を含みかつM3+としてAl3+を含む組み合わせおよびM2+としてNi2+を含みかつM3+としてAl3+を含む組み合わせは除外され、An-はCO32-,HCO3-およびOH-からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む陰イオンであり、xは1/6~1/2であり、yは0~4である。
【0012】
[2] 前記M2+がMg2+であり、前記M3+がFe3+である、[1]に記載の過酸化水素またはオゾンの分解触媒。
[3] 前記An-がHCO3-である、請求項1または2に記載の過酸化水素またはオゾンの分解触媒。
【0013】
[4] 式(1)で表される層状複水酸化物の製造方法であって、M2+およびM3+が溶解している水溶液と、An-が溶解している水溶液とを混合し、式(1)で表される層状複水酸化物の粒子を沈殿させる工程を含む、層状複水酸化物の製造方法。
【0014】
[M2+1-x3+x(OH)2][An-x/n・yH2O] ・・・(1)
式(1)中、M2+はMg2+,Co2+,Ni2+およびCu2+からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む二価の金属イオンであり、M3+はAl3+,Fe3+,Mn3+およびCr3+からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む三価の金属イオンであり、ただし、M2+としてMg2+を含みかつM3+としてAl3+を含む組み合わせおよびM2+としてNi2+を含みかつM3+としてAl3+を含む組み合わせは除外され、An-はCO32-,HCO3-およびOH-からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む陰イオンであり、xは1/6~1/2であり、yは0~4である。
【0015】
[5] 前記M2+がMg2+であり、前記M3+がFe3+である、[4]に記載の製造方法。
[6] 前記An-がHCO3-である、[4]または[5]に記載の製造方法。
【0016】
[7] 式(1)で表される層状複水酸化物を、過酸化水素またはオゾンの水溶液と接触させる工程を含む、過酸化水素またはオゾンの分解方法。
[M2+1-x3+x(OH)2][An-x/n・yH2O] ・・・(1)
式(1)中、M2+はMg2+,Co2+,Ni2+およびCu2+からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む二価の金属イオンであり、M3+はAl3+,Fe3+,Mn3+およびCr3+からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む三価の金属イオンであり、ただし、M2+としてMg2+を含みかつM3+としてAl3+を含む組み合わせおよびM2+としてNi2+を含みかつM3+としてAl3+を含む組み合わせは除外され、An-はCO32-,HCO3-およびOH-からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む陰イオンであり、xは1/6~1/2であり、yは0~4である。
【0017】
[8] 前記M2+がMg2+であり、前記M3+がFe3+である、[7]に記載の過酸化水素またはオゾンの分解方法。
[9] 前記An-がHCO3-である、[7]または[8]に記載の過酸化水素またはオゾンの分解方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明による過酸化水素及びオゾンの分解触媒は、ユビキタス元素で構成されている層状複水酸化物を使用しているにも関わらず、過酸化水素とオゾンを分解できることが特徴である。好ましい金属イオンを選択することにより、二酸化マンガンと同程度の過酸化水素分解性能をもち、かつ二酸化マンガンを大きく凌駕するオゾン分解性能を併せ持つ分解触媒を調製することができる。また、過酸化水素及びオゾンそれぞれの処理にともなう層状複水酸化物からの金属イオンの溶出は検出限界以下であるため、低毒性の分解触媒を調製することができる。たとえ溶出が起きることがあるとしても、層状複水酸化物を構成する金属イオンとしてたとえばマグネシウムおよび鉄を選択することにより、環境や生体への影響をほとんどゼロにすることができる。このような本発明による過酸化水素及びオゾンの分解触媒は、従来技術よりも大規模かつ広範囲に利用されることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、実施例5および比較例2における、種々の触媒によるオゾンの分解挙動(残存オゾン量)の結果を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例6におけるオゾンの分解挙動(残存オゾン量)の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
-分解触媒(層状複水酸化物)-
本発明に係る過酸化水素またはオゾンの分解触媒は、式(1)で表される層状複水酸化物を含有する。すなわち、本発明に係る過酸化水素またはオゾンの分解触媒は、本質的に式(1)で表される層状複水酸化物のみで構成されていてもよいし、それと分解触媒としての用途に適した他の物質との組み合わせによって構成されていてもよい。

【0021】
本発明において過酸化水素またはオゾンを分解するために用いられる層状複水酸化物は、式(1)で表される層状複水酸化物である。
[M2+1-x3+x(OH)2][An-x/n・yH2O] ・・・(1)
式(1)中、M2+はMg2+,Co2+,Ni2+およびCu2+からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む二価の金属イオンである。すなわち、本発明で用いられる層状複水酸化物は、M2+として、Mg2+,Co2+,Ni2+またはCu2+のいずれか一種または二種以上のみを含むものが好ましいが、これらの特定の二価の金属イオンに加えて本発明の作用効果を阻害しない範囲で他の二価の金属イオンを含むものであってもよい。前記特定の二価金属イオンのうちMg2+は、分解性能に優れた触媒を合成することができることに加えて、原料を安価に入手することができ、毒性もほとんどないため好ましい。また、分解性能に優れた触媒を合成することができる点では、Co2+も好ましい。

【0022】
3+はAl3+,Fe3+,Mn3+およびCr3+からなる群より選ばれる少なくとも1種の陽イオンを含む三価の金属イオンである。すなわち、本発明で用いられる層状複水酸化物は、M3+として、Al3+,Fe3+,Mn3+またはCr3+のいずれか一種または二種以上のみを含むものが好ましいが、これらの特定の三価の金属イオンに加えて本発明の作用効果を阻害しない範囲で他の三価の金属イオンを含むものであってもよい。前記特定の三価金属イオンのうちFe3+は、分解性能に優れた触媒を合成することができることに加えて、原料を安価に入手することができ、毒性もほとんどないため好ましい。

【0023】
ただし、M2+としてMg2+を含みかつM3+としてAl3+を含む組み合わせ、およびM2+としてNi2+を含みかつM3+としてAl3+を含む組み合わせ、つまりM2+およびM3+のどちらも価数が変化しない金属イオンである組み合わせは除外される。本発明で用いられる層状複水酸化物が過酸化水素またはオゾンを効率的に分解するためには、M2+またはM3+の少なくとも一方が、価数が変化しうる遷移金属を含む必要があるものと考えられる。

【0024】
たとえば、マグネシウムイオンは2価が安定であり、価数は変化しない。また、アルミニウムイオンは3価が安定であり、価数は変化しない。一方、鉄イオンは、マグネシウムイオンのような価数の変化しない2価のイオンと組み合わせた場合は、層状複水酸化物中で3価で安定的であると考えられるが、2価にも変化しうるイオンである。したがって、M2+としてマグネシウムイオンを含み、M3+としてアルミニウムイオンを含む層状複水酸化物は、過酸化水素またはオゾンを分解する活性をほとんど有さず、分解触媒を調製するための層状複水酸化物として不適切であるが、M2+としてマグネシウムイオンを含み、M3+として鉄イオンを含む層状複水酸化物は、過酸化水素またはオゾンを分解する高い活性を有し、分解触媒を調製するための層状複水酸化物として好適である。この際、層状複水酸化物中の鉄イオンは、下記のような、OH-を介して電気的なやりとりがなされる反応に関与しているものと推測される(ここでは、水酸化物なので中性から弱アルカリ性と考えて、H+が出ない反応で記述している)。

【0025】
Fe(III)OOH+H2O2+2e-(2OH-)→2Fe(II)(OH)2+O2
2Fe(II)(OH)2+H2O2→2Fe(III)OOH+2H2O+2e-(2OH-)
n-はCO32-,HCO3-およびOH-からなる群より選ばれる少なくとも1種の陰イオンを含む。すなわち、本発明で用いられる層状複水酸化物は、An-としてCO32-,HCO3-またはOH-のいずれか一種または二種以上のみを含むものが好ましいが、これらの特定の陰イオンに加えて本発明の作用効果を阻害しない範囲で他の陰イオン(たとえば後述するような金属イオン水溶液に含まれる陰イオン)を含むものであってもよい。これらの陰イオンのうちHCO3-は、過酸化水素、オゾンどちらの分解性能にも優れた触媒を合成することができるため好ましい。陰イオンとしてHCO3-を有する層状複水酸化物は、溶液内のOH-濃度を増加させやすく、そのことが高い分解性能に寄与しているものと考えられる。

【0026】
xは、M2+およびM3+によって変動する場合があるが、通常は1/6(M2+/M3+モル比=5)~1/2(M2+/M3+モル比=1)、好ましくは1/4(M2+/M3+モル比=3)~1/2(M2+/M3+モル比=1)である。

【0027】
yは、層状複水酸化物の層間に含まれる水分子の量を表し、M2+、M3+およびAn-によって変動する場合があるが、通常は0~4である。
上記のM2+、M3+、An-、x、yは、過酸化水素またはオゾンの分解性能などを考慮しながら適宜選択することができ、層状複水酸化物の製造原料およびその量や製造条件によって調節することができる。

【0028】
なお、層状複水酸化物の結晶化度、構成成分、層状構造などの確認は、たとえば、X線回折法(XRD)、蛍光X線分析(XRF)、示差熱-質量分析(DTA-TG)、フーリエ変換赤外線分光法(FTIR)などにより行うことができる。

【0029】
層状複水酸化物、たとえば次に述べる本発明に係る製造方法において乾燥させた後に得られた層状複水酸化物は、微結晶が凝集して形成された、凝集体の形態をとっていることがある。この微結晶、凝集体それぞれのサイズ(平均粒子径、粒度分布等)や凝集体の比表面積は特に限定されるものではなく、分解触媒としての性能、用途、取り扱い性などを考慮しながら適切な範囲に調整することができる。

【0030】
-製造方法-
本発明に係る、式(1)で表される層状複水酸化物の製造方法は、少なくとも、M2+およびM3+が溶解している水溶液(金属イオン水溶液)と、An-が溶解している水溶液(陰イオン水溶液)とを混合し、式(1)で表される層状複水酸化物の微結晶を沈殿させる工程(沈殿工程)を必須工程として含む。また、本発明に係る製造方法は、必要に応じてその他の工程、たとえば前記沈殿工程で生じた層状複水酸化物の微結晶を成長させる工程(熟成工程)を任意工程として含んでいてもよい。

【0031】
このような本発明に係る製造方法は、一般的には共沈法として知られている層状複水酸化物の製造方法を応用し、過酸化水素またはオゾンの分解触媒としての用途に適したM2+、M3+およびAn-の供給源(金属塩等)を用いることを特徴とするものであり、本発明に係る分解触媒に含まれる式(1)で表される層状複水酸化物の製造方法として好適なものである。

【0032】
ただし、本発明において過酸化水素またはオゾンの分解触媒を調製するために用いられる層状複水酸化物は、本発明に係る製造方法によって得られたものに限定されず、式(1)の条件を満たし、過酸化水素またはオゾンの分解能を有する限り、他の製造方法によって得られたものであってもよい。

【0033】
・供給源(原料)
2+およびM3+それぞれの供給源は、水中でM2+およびM3+それぞれを生成する物質であればよく、特定の物質に限定されるものではない。一般的には、M2+およびM3+それぞれの金属を含む化合物、たとえば無機酸塩、ハロゲン化物などであって、金属イオン水溶液を調製する上で適切な水に対する溶解度を有し、また共沈法に用いる上で適した酸性~中性の(アルカリ性でない)金属イオン水溶液が得られるものを用いることができる。これらの供給源は、いずれか一種を単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。

【0034】
たとえば、M2+がMg2+の場合、その供給源としては硝酸マグネシウム(六水和物など)、硫酸マグネシウム(無水物、七水和物)、塩化マグネシウムなどが挙げられる。また、M3+がFe3+の場合、その供給源としては硝酸鉄(III)(九水和物など)、塩化鉄(III)などが挙げられる。

【0035】
一方、An-の供給源も、水中でAn-を生成する物質であればよく、特定の物質に限定されるものではない。一般的には、An-を含む化合物、主に金属(通常、M2+およびM3+に相当する二価または三価の金属ではないもの、代表的にはナトリウム)の炭酸塩、炭酸水素塩または水酸化物などであって、水溶液を調製する上で適切な水に対する溶解度を有するものを用いることができる。これらの供給源も、いずれか一種を単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。

【0036】
たとえば、An-がCO32-の場合、その供給源としては炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。An-がHCO32-の場合、その供給源としては炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどが挙げられる。An-がOH-の場合、その供給源としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。

【0037】
・製造工程
(1)沈殿工程
必須工程である沈殿工程は、M2+およびM3+が溶解している水溶液(金属イオン水溶液)と、An-が溶解している水溶液(陰イオン水溶液)とを混合し、式(1)で表される層状複水酸化物の微結晶を沈殿させる工程である。

【0038】
沈殿工程に用いられる金属イオン水溶液および陰イオン水溶液は、常法に従って、前述したようなM2+、M3+およびAn-の供給源を水(イオン交換水等)に溶解させて調製すればよい。各供給源の量は、目的とする式(1)で表される層状複水酸化物を合成するために必要な量の各イオンが生成するのに適切な量とすればよい。特に、M2+およびM3+の供給源の量は、式(1)中のxの値に応じて、化学量論的な量比を満たすように調節することが好ましい。沈殿工程で用いる金属イオン水溶液中のM2+およびM3+の量比と、得られる層状複水酸化物中のM2+およびM3+の量比とは多少相違する場合があるので、たとえば後者の量比を蛍光X線分析(XRF)で確認しながら、前者の量比を適切に調整すればよい。

【0039】
なお、M2+およびM3+の供給源として、それらの金属の硝酸塩や塩化物を用いる場合、生成する層状複水酸化物の層間に硝酸イオンや塩化物イオンが取り込まれ、An-の一部を占める可能性がある。そのようなM2+およびM3+の供給源に由来する陰イオンの混入を防ぐため、陰イオン水溶液はAn-としての炭酸イオン、炭酸水素イオンまたは水酸化物イオンを過剰に含む濃度で調製することが好ましい。層状複水酸化物の層間には、硝酸イオンや塩化物イオンよりも炭酸イオン等の方が取り込まれやすく、安定的である。本明細書に記載したような製造方法によって得られる層状複水酸化物は、本質的に式(1)の定義に従うもの、すなわちAn-としてCO32-,HCO3-およびOH-からなる群より選ばれる少なくとも1種の陰イオンを含むものとみなしてよいが、An-として、M2+およびM3+の供給源に由来する陰イオンを、製造方法上防ぐことのできない最小限の量で含むことも許容される。

【0040】
沈殿工程では、一般的に、金属イオン水溶液を陰イオン水溶液に添加するようにしてこれらの水溶液を混合し、適切なpH条件下で反応させるようにする。この際、金属イオン水溶液は、滴下により少量ずつ陰イオン水溶液に添加することが好ましい。

【0041】
pHは、M2+およびM3+の組み合わせや濃度に応じて、所望の性状の層状複水酸化物の微粒子が形成されるよう調整することができる。たとえば、M2+としてMg2+を用いる場合は、通常は8~11、好ましくは10前後である。アルカリ性である陰イオン水溶液に酸性である金属イオン水溶液を添加するとpHが酸性側に変動するので、その影響を考慮して混合溶液のpHをアルカリ性側の適切な範囲内に保つことが適切である。このようなpHの調節は常法に従って行うことができるが、一般的にはアルカリ性のpH調節用水溶液、たとえば適切な濃度の水酸化ナトリウム水溶液が用いられる。pH調節用水溶液は、金属イオン水溶液の滴下にあわせて陰イオン水溶液(混合溶液)中に滴下するようにしてもよいし、M2+およびM3+の水溶液の添加後に陰イオン水溶液(混合溶液)中に一度に添加するようにしてもよい。

【0042】
沈殿工程のその他の諸条件、たとえば温度、金属イオン水溶液の滴下速度などは、上で述べたpHや次に述べる熟成工程の撹拌時間などの条件とともに、形成される層状複水酸化物の微粒子の粒子径、粒度分布、結晶性などに影響する場合がある。本発明に係る分解触媒に用いられる層状複水酸化物は、所定の分解能を有するものであれば、粒子径、粒度分布、結晶性などは特に限定されないので、上記の諸条件は所定の分解能を有する層状複水酸化物が得られる範囲で適切に調整すればよい。

【0043】
(2)熟成工程
任意工程である熟成工程は、前記沈殿工程で生じた層状複水酸化物の微結晶を成長させる工程である。沈殿工程で生じたばかりの層状複水酸化物の微結晶は、一次粒径がたとえば1nm以下程度であるが、熟成工程を経ることによってその一次粒径を数nm~十数nm程度にまで成長させることができる。分解触媒としての取り扱い性を向上させるため、本発明に係る製造方法には沈殿工程に加えて熟成工程を含めることが好ましい。

【0044】
熟成工程では、一般的に、M2+およびM3+の水溶液とAn-の水溶液の混合溶液を、所定の時間、撹拌し続けるようにする。撹拌時間は、目的とする微結晶の粒子径などの性状に応じて調整することができ、一般的に撹拌時間を長くするほど微結晶の粒子径は大きくなるが、通常3時間以上、好ましくは12時間以上である。

【0045】
(3)その他の工程
沈殿工程、および必要に応じて熟成工程を経て、混合溶液中に沈殿物として生成した層状複水酸化物は、常法に従って、固液分離により回収し、洗浄、乾燥すればよい。乾燥された層状複水酸化物は通常、凝集体を形成しているため、必要であれば粉砕機等を用いて所望のサイズに調整すればよい。

【0046】
-用途-
式(1)で表される層状複水酸化物は、単独で、または必要に応じて分解触媒としての用途に適した他の物質との組み合わせによって、過酸化水素またはオゾンの分解触媒として利用することができる。換言すれば、式(1)で表される層状複水酸化物(すなわち本発明に係る分解触媒)は、過酸化水素またはオゾンを分解するための工程(分解工程)において使用することができる。

【0047】
過酸化水素またはオゾンの分解工程では、それらが溶解した水溶液と式(1)で表される層状複水酸化物を接触させればよい。たとえば、式(1)で表される層状複水酸化物を過酸化水素またはオゾンが溶解した水溶液中に投入して浸漬するような回分(バッチ)方式、あるいは式(1)で表される層状複水酸化物が充填されたカラムに過酸化水素またはオゾンが溶解した水溶液を通液する連続方式において、そのように接触させることができる。この際、式(1)で表される層状複水酸化物を多孔質体(たとえば酢酸セルロース等の疎水性高分子)に担持させて水処理材を作製し、その水処理剤を過酸化水素またはオゾンの水溶液に浸漬したり、カラムに充填したりするようにしてもよい。

【0048】
また、上記のような分解工程は、過酸化水素の分解反応(2H22→2H2O+O2)またはオゾンの分解反応(2O3→3O2)が進行する適切な条件下で行えばよい。通常、過酸化水素およびオゾンの分解反応は室温で進行するが、必要に応じて適切な温度範囲で加熱することにより分解反応を促進することも可能である。分解工程は、水溶液中の過酸化水素またはオゾンの残存量が所望の値以下になるまで所望の時間行えばよい。
【実施例】
【0049】
[実施例1]Mg-Fe-CO3型LDHによる過酸化水素の分解
金属硝酸塩のモル比がMg/Fe=2または3となるように、硝酸マグネシウム六水和物と硝酸鉄(III)九水和物をイオン交換水に溶解させ、1.0 Mの金属硝酸塩水溶液を調製した。次に,1.25 Mの炭酸ナトリウム水溶液中に調製した金属硝酸塩水溶液を滴下し、さらに2.0 Mの水酸化ナトリウム水溶液を加えて混合溶液のpHを10に調整した。この混合溶液を室温で撹拌しながら24 時間熟成させた。その後、沈殿物を固液分離し、イオン交換水で洗浄し、真空乾燥機を用いて乾燥させて目的とするMg-Fe-CO3型LDH上記の製造条件において、金属硝酸塩のモル比がMg/Fe=2または3となるよう調製された水溶液を用いた場合、得られるMg-Fe-CO3型LDH中のMg/Feはそれぞれ1.57(式(1)中、x=1/2.57に相当)および2.25(同x=1/3.25に相当)になることを、蛍光X線分析(XRF)により確認した。
【実施例】
【0050】
この試料を0.50 g秤量し、1.0 Mに調製した100 mLの過酸化水素水溶液に加えて、発生する酸素ガスを水上置換法により捕集した。反応初期の酸素が100 mL発生するのに必要な時間から、触媒の単位量、単位時間当たりの酸素発生速度を算出した。この結果を表1に、実施例2と比較例1の結果と合わせて示す。
【実施例】
【0051】
Mg/Fe=2(金属硝酸塩のモル比を指す、以下同様)のMg-Fe-CO3型LDHによる酸素発生速度は0.08 mol/gcat hであり、Mg/Fe=3のMg-Fe-CO3型LDHによる酸素発生速度は0.05 mol/gcat hであった。この値は、前者が二酸化マンガンの半分、後者が1/4程度の値であった。
【実施例】
【0052】
[実施例2]Mg-Fe-HCO3型LDHによる過酸化水素の分解
実施例1と同様に調製した1.0 Mの金属硝酸塩水溶液を2.5 Mの炭酸水素ナトリウム水溶液中に滴下し、2.0 Mの水酸化ナトリウム水溶液を加えて混合溶液のpHを10に調整した。この溶液を実施例1と同様に熟成し、沈殿物を同様に回収して、Mg-Fe-HCO3型LDHを得た。上記の製造条件において、金属硝酸塩のモル比がMg/Fe=2または3となるよう調製された水溶液を用いた場合、得られるMg-Fe-HCO3型LDH中のMg/Feはそれぞれ1.40(式(1)中、x=1/2.40に相当)および2.12(同x=1/3.12に相当)になることを、XRFにより確認した。
【実施例】
【0053】
この試料を0.50 g秤量し、実施例1と同様に過酸化水素水溶液に加えて、発生する酸素ガスの発生速度を算出した。この結果を表1に、実施例1と比較例1の結果と合わせて示す。
【実施例】
【0054】
Mg/Fe=2のMg-Fe-HCO3型LDHによる酸素発生速度は0.14 mol/gcat hであり、Mg/Fe=3のMg-Fe-HCO3型LDHによる酸素発生速度は0.09 mol/gcat hであった。この値は、前者が二酸化マンガンと同程度、後者が半分の値であった。
【実施例】
【0055】
[実施例3]Co-Al-CO3型LDHによる過酸化水素の分解
金属硝酸塩のモル比がCo/Al=2または3となるように、硝酸コバルト(II)六水和物と硝酸アルミニウム九水和物をイオン交換水に溶解させ、1.0 Mの金属硝酸塩水溶液を調製した。この金属硝酸塩水溶液を2.5 Mの炭酸水素ナトリウム水溶液中に滴下し、2.0 Mの水酸化ナトリウム水溶液を加えて混合溶液のpHを10に調整した。この溶液を実施例1と同様に熟成し、沈殿物を同様に回収して、Co-Al-CO3型LDHを得た。上記の製造条件において、金属硝酸塩のモル比がCo/Al=2または3となるよう調製された水溶液を用いた場合、得られるCo-Al-CO3型LDH中のCo/Alはそれぞれ2.33(式(1)中、x=1/3.33に相当)および3.46(同x=1/4.46に相当)になることを、XRFにより確認した。
【実施例】
【0056】
[実施例4]Cu-Al-CO3型LDHによる過酸化水素の分解
金属硝酸塩のモル比がCu/Al=2または3となるように、硝酸銅(II)三水和物と硝酸アルミニウム九水和物をイオン交換水に溶解させ、1.0 Mの金属硝酸塩水溶液を調製した。この金属硝酸塩水溶液を2.5 Mの炭酸水素ナトリウム水溶液中に滴下し、2.0 Mの水酸化ナトリウム水溶液を加えて混合溶液のpHを10に調整した。この溶液を実施例1と同様に熟成し、沈殿物を同様に回収して、Cu-Al-CO3型LDHを得た。上記の製造条件において、金属硝酸塩のモル比がCu/Al=2または3となるよう調製された水溶液を用いた場合、得られるCu-Al-CO3型LDH中のCo/Alはそれぞれ2.04(式(1)中、x=1/3.04に相当)および3.03(同x=1/4.03に相当)になることを、XRFにより確認した。
【実施例】
【0057】
[実施例5]Mg-Fe-CO3型LDHによるオゾンの分解
実施例1で用いたMg-Fe-CO3型LDHを用いて、オゾン分解を調査した。イオン交換水に、オゾン発生装置よりバブリングによりオゾンを供給し、1時間以上保持することで飽和オゾン水溶液とした。この溶液100 mLに試料を0.2 g分散させ、一定時間経過ごとに溶液を分取した。分取した溶液はインジゴ法でオゾンの残存量を測定した。この結果を、比較例2の結果とともに図1に示す。
【実施例】
【0058】
Mg-Fe-CO3型LDHによりオゾンは速やかに分解され、Mg/Fe=3の試料は10分後の残存オゾン量が1/10であった。また、Mg/Fe=2の試料は30分後の残存オゾン量が1/10であった。分解速度はMg/Fe=3の試料がMg/Fe=2の試料よりも早かった。また、どちらの試料も今回参照にした二酸化マンガンよりも高活性であった。
【実施例】
【0059】
[実施例6]Mg-Fe-HCO3型LDHによるオゾンの分解
実施例2で用いたMg-Fe-HCO3型LDHを用いて、実施例5と同様の手順で、オゾン分解を調査した。この結果を図2に示す。Mg/Fe=3、Mg/Fe=2、どちらのMg-Fe-HCO3型LDHも、実施例5のMg-Fe-CO3型LDH(Mg/Fe=3)よりさらにオゾンの分解活性が高かった。
【実施例】
【0060】
[比較例1~9]種々の参照物質による過酸化水素の分解
実施例1,2と同様の手順において参照物質を用いて、過酸化水素分解を調査した。参照物質として、過酸化水素の分解触媒としてよく知られる二酸化マンガン(MnO2:ナカライテスク製)(比較例1)、Mg-Fe-CO3型LDHと同じくMgとFeを含む酸化物として代表的なマグネシウム鉄スピネル(MgFe2O4:炭酸マグネシウムと酸化鉄の混合物を熱処理して作製)(比較例2)、ならびに層状複水酸化物の代表的な物質である、実施例1と類似のMg-Al-CO3型LDH(Mg/Al=3)(比較例3)、実施例2と類似のMg-Al-HCO3型LDH(Mg/Al=3)(比較例4)、実施例3と類似のNi-Al-CO3型LDH(Ni/Al=2, 3)(比較例5A,5B)、および各遷移金族水酸化物(Fe(OH)3,Co(OH)2,Ni(OH)2,およびCu(OH)2)(比較例6~9)を用いた。
【実施例】
【0061】
二酸化マンガン(比較例1)の酸素生成速度は0.19 mol/gcat hであった。一方、マグネシウム鉄スピネル(比較例2)の酸素生成速度はゼロであった。つまり、単純な金属の組み合わせで分解活性が生じることはなかった。また、Mg-Al-CO3型LDH(Mg/Al=3)、Mg-Al-HCO3型LDH(Mg/Al=3)、およびNi-Al-CO3型LDH(Ni/Al=2, 3)(比較例3,4,5A,5B)の酸素生成速度については、完全にゼロではなかったが、Mg-Fe-CO3型LDHよりも2桁小さな値であった。
【実施例】
【0062】
一方、各遷移金族水酸化物(比較例6~9)の酸素生成速度は、Fe(OH)3がほぼゼロ、Co(OH)2が0.35 mol/gcat hで二酸化マンガンの約2倍、Ni(OH)2がほぼゼロ、Cu(OH)2が0.29 mol/gcat hで二酸化マンガンの約1.5倍であった。Fe(OH)3は水に溶解せず(溶解度1.5×10-4 g/L、溶解度積1.0×10-38)、単純な水酸化物においては鉄イオンは3価の方が安定であるため、過酸化水素をほとんど分解しないものと考えられる。しかしながらM3+として鉄イオンがLDH中に取り込まれた場合には、LDHは元々2価の水酸化物層(brucite-layer)であるため、その鉄イオンは単純な水酸化物とは異なり3価から2価への変化が生じやすく、これが過酸化水素の分解性能が発揮される理由だと考えられる。Ni(OH)2については、Fe(OH)3よりは水に溶解するが(溶解度1.3×10-2 g/L、溶解度積2.0×10-15)、ニッケルイオンは2価が安定で価数は変化しないため、過酸化水素をほとんど分解しないものと考えられる。これに対して、Co(OH)2(溶解度3.2×10-3 g/L、溶解度積1.6×10-18 g/L)およびCu(OH)2(溶解度1.8×10-3 g/L、溶解度積1.9×10-20 g/L)は、Fe(OH)3より溶解度が一桁大きいため微量のコバルトイオンおよび銅イオンが水中に溶解する。これらの金属イオンは、M2+としてLDHに取り込まれた場合にも過酸化水素の分解性能を発揮するが、水中に溶解した場合であっても、過酸化水素が存在するので価数が変化し、酸化還元反応が起きて、過酸化水素は水と酸素に分解するものと考えられる。ただし、Co(OH)2やCu(OH)2のような水酸化物は、LDHと異なり、カラムに充填するなど水処理用の部材を作製するために用いるには不向きな物質である。
【実施例】
【0063】
[比較例2]種々の参照物質によるオゾンの分解
実施例3と同様の手順において参照物質を用いて、オゾン分解を調査した。参照物質として、オゾン分解の報告がある二酸化マンガン(MnO2:ナカライテスク製)を用いた。この結果を、実施例3の結果とともに図1に示す。二酸化マンガンによるオゾンの分解はわずかであり、触媒なしのブランク測定と大差がなかった。
【実施例】
【0064】
以上の結果からも明らかなように、本発明におけるMg-Fe型LDHの触媒活性は、過酸化水素の分解活性は二酸化マンガンと同程度であり、オゾンの分解活性は二酸化マンガンを大きく凌駕した。触媒としての繰り返し活性も示しており、使用後の金属イオンの溶出も極微量であった。従って、本発明による触媒を過酸化水素やオゾンの分解に利用することで、低環境負荷での分解除去が可能となり、環境保全のために利用価値が大きいことが明らかになった。
【実施例】
【0065】
【表1】
JP0006180235B2_000002t.gif
なお、実施例3A,3B,4A,4Bおよび比較例5A,5BのLDHについては粒度分布を測定した。レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置 LA-950(堀場製作所製)を用いて、試料を10~25mg/100mLとなるようにイオン交換水中に分散させ、分散剤には濃度が数%となるようにヘキサメタリン酸ナトリウムを添加して、測定を行った。その結果、約100nm、約3~8μmおよび約100~20μmにピークが見られ、それぞれ一次粒径、二次粒径および三次粒径に対応しているものと考えられる。結晶子サイズや観察される粒径に大きな差がないことから、実施例1A,1B,2A,2BなどのLDHの粒径も同程度であるものと考えられる。
図面
【図1】
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【図2】
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