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明細書 :ワイヤーグリッド装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第5626740号 (P5626740)
登録日 平成26年10月10日(2014.10.10)
発行日 平成26年11月19日(2014.11.19)
発明の名称または考案の名称 ワイヤーグリッド装置
国際特許分類 G02B   5/30        (2006.01)
FI G02B 5/30
請求項の数または発明の数 4
全頁数 17
出願番号 特願2013-179151 (P2013-179151)
出願日 平成25年8月30日(2013.8.30)
審査請求日 平成25年11月29日(2013.11.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
発明者または考案者 【氏名】鈴木 健仁
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100102635、【弁理士】、【氏名又は名称】浅見 保男
【識別番号】100103735、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 隆盛
審査官 【審査官】最首 祐樹
参考文献・文献 特開2013-256840(JP,A)
特開2013-178303(JP,A)
特開2003-249198(JP,A)
藤井高志、松本直樹,THz帯域におけるワイヤーグリッドの金属厚みによる阻止特性への影響,第70回応用物理学会学術講演会講演予稿集 Vol.3,日本,2009年 9月 8日,1022
藤井高志、坂部行雄、武藤一義、平尾一之,金属加工によるワイヤーグリッドの構造・材質によるTHz特性への影響,第68回応用物理学会学術講演会講演予稿集 Vol.3,日本,2007年 9月 4日,1128
調査した分野 G02B 1/00-1/08;3/00-3/14
G02B 5/30
G02B 6/10-6/293
G01N 21/00-21/958
JSTPlus(JDreamIII)
要約 【課題】 テラヘルツ波帯において、強度透過率で約10-6クラスの消光比を1素子で簡易に実現する。
【解決手段】 細長い矩形状の金属薄板12が一面のほぼ中央に形成されている矩形状のポリマーフィルム11からなるフィルム基板10を複数枚積層することにより構成されている。金属薄板12の幅aを約1.0mm、金属薄板12の長さlを約12.0mm~約30mm、フィルム基板10の厚さdを約0.5μm~約50μmとすることにより、テラヘルツ波帯において、強度透過率で約10-6クラスの消光比を1素子で簡易に実現することができる。
【選択図】 図4
特許請求の範囲 【請求項1】
細長い矩形状の金属薄板が一面形成されている矩形状のフィルムからなるフィルム基板を複数枚積層することにより構成されており、
前記フィルム基板が複数枚積層された状態において、前記金属薄板が相互に重なるように配置され、各フィルム基板に形成された前記金属薄板により構成された平行平板により、テラヘルツ光の偏光子として動作するワイヤーグリッドが構成されていることを特徴とするワイヤーグリッド装置。
【請求項2】
テラヘルツ光の偏光子として動作する前記ワイヤーグリッドにおいて、前記金属薄板の短辺の幅aが1.0mm前記フィルム基板の厚さdが0.5μm~50μmとされることを特徴とする請求項1記載のワイヤーグリッド装置。
【請求項3】
平板状の底部と、該底部の上面から立設した複数本の立設柱とを有する基台と、
前記基台の前記立設柱の位置が切り欠かれた前記フィルム基板を複数枚積層したフィルム基板積層体と、
平板状の平板部と、該平板部において前記基台の前記立設柱の位置が切り欠かれている押さえ板とを備え、
前記フィルム基板積層体が前記複数本の立設柱により位置合わせされて前記基台に収納され、該フィルム基板積層体の上に前記押さえ板が載置され、該押さえ板に挿通されたネジが前記基台に螺着されていることを特徴とする請求項1または2記載のワイヤーグリッド装置。
【請求項4】
所定の奥行きを有する直方体状とされた導電性の枠体と、該枠体の一辺に平行に前記枠体を貫通するよう多数形成されたスリットとから構成されるテラヘルツ光の偏光子として動作するワイヤーグリッド装置であって、
前記スリットが多数形成されることにより、前記スリット間に多数のグリッドが形成され、前記スリットの幅dが50μm前記枠体の奥行きaが2.0mm、前記グリッドの幅wが50μm以下とされることを特徴とするワイヤーグリッド装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、主にテラヘルツ電磁波の偏光や検光等に用いられるワイヤーグリッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ電磁波は周波数が0.1~10THz(波長が30μm~3000μm)の電磁波とされており、波長が遠赤外~ミリ波領域とほぼ一致する。テラヘルツ電磁波は、「光」と「ミリ波」に挟まれた周波数領域に存在しているため、光と同様に高い空間分解能でものを見分ける能力と、ミリ波と同様の物質を透過する能力を併せ持っている。テラヘルツ波帯はこれまで未開拓電磁波であったが、この周波数帯の電磁波の特徴を生かした時間領域分光、イメージング及びトモグラフィーによる材料のキャラクタリゼーションへの応用などが検討されてきている。テラヘルツ電磁波を用いると、物質透過性と直進性を兼ね備えるためX線に替わる安全かつ革新的なイメージングが可能になったり、数100Gbps級の超高速無線通信を可能とすることができる。
【0003】
従来、主にテラヘルツ電磁波の偏光や検光等にはワイヤーグリッドを用いることが提案されており、このワイヤーグリッドの実現に向けて研究が進められている。
従来の自立型ワイヤーグリッドの一例は、直径5μm~50μm程度の金属細線を、1本づつ設定された間隔で平行に並べ、金属枠に接着剤で貼り付けて作成されている。この自立型ワイヤーグリッドは、適用可能な周波数に限界があり、概ね1.5THz以上のテラヘルツ電磁波の偏光子に適用可能な構造のものは、微細な構造となることから実現することが困難とされている。
【0004】
テラヘルツ波帯の偏光子に適用可能なワイヤーグリッド用金属板が特許文献1に開示されており、このワイヤーグリッド用金属板101の構成を示す平面図を図14に、ワイヤーグリッド用金属板101の一部の拡大平面図を図15に、図15の一部を更に拡大して示す平面図を図16(a)に、そのA-A線で切断した断面図を図16(b)に示す。
【0005】
ワイヤーグリッド用金属板101は例えば直径20mm~100mm程度のニッケルの円板形状とされ、図14~図16(a)(b)に示すように、縦方向に桟状(細線状)に延びる複数の縦桟部111と、各縦桟部111にほぼ直交する少なくとも1つの横桟部112とを有し、縦桟部111及び横桟部112は、それぞれの両端部が円形又は矩形のフランジ部113につながっている。
縦桟部111の幅(ワイヤー幅)や間隔は、ワイヤーグリッド用金属板101の性能を決定するバラメータであり、適用する光の周波数に応じて定まる。そして、ワイヤーグリッド用金属板101は、1.5THz以上のテラヘルツ電磁波にも適用可能な構造とすることができ、縦桟部111の幅Waは1.5μm~50μmとすることができる。
【0006】
ワイヤーグリッド用金属板101においては、横桟部112が、少なくとも所定幅以上であって縦桟部111の幅以上に幅広とされている。これにより、幅Waが1.5μm~50μmの細線構造の縦桟部111を製造可能となる。また、ワイヤーグリッド用金属板101の板厚は、基板からの引き剥がし等における物理的強度や透過光特性の劣化を考慮して定める必要があり、板厚は10μmとされている。
なお、縦桟部111の幅Waはワイヤーグリッド用金属板101の性能を決定するバラメータとして一義的に定まるが、横桟部112の幅Wbや間隔(個数)等は、主にワイヤーグリッド用金属板101の強度を確保する観点から定まる。このため、横桟部112の幅Wbは、縦桟部111の幅以上の幅広に形成されている。具体的には、縦桟部111の幅Waを1.5μm~50μmとし、横桟部112を15μm以上であって縦桟部111より幅広に形成する。
【0007】
図17に、縦桟部111の幅Waが20μm、縦桟部111の間隔が60μm、横桟部112の幅Wbが20μm、横桟部112の間隔が5mm、厚みが50μmとされたワイヤーグリッド用金属板101を使用した場合の特性を示す。図17に示す透過配置の特性線α2、阻止配置の特性線β2から、周波数0.1~1.5THzのテラヘルツ光に対して偏光子として動作していることが分かる。この場合、テラヘルツ光の電場の振幅方向が縦桟部111の延伸方向である縦方向と直交する場合に透過配置となり、テラヘルツ光の電場の振幅方向が縦桟部111の延伸方向である縦方向の場合に阻止配置となる。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特許第5141320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、テラヘルツ電磁波の偏光や検光等に用いられるワイヤーグリッド装置の消光比として、強度透過率で約10-6クラスの特性が求められているが、特許文献1に記載のワイヤーグリッド用金属板101においては、このような高い消光比を達成することができなかった。
そこで、本発明は、従来のワイヤーグリッド装置では実現不可能であった強度透過率で約10-6クラスの消光比を1素子で簡易に実現できるワイヤーグリッド装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のワイヤーグリッド装置は、細長い矩形状の金属薄板が一面形成されている矩形状のフィルムからなるフィルム基板を複数枚積層することにより構成されており、前記フィルム基板が複数枚積層された状態において、前記金属薄板が相互に重なるように配置され、各フィルム基板に形成された前記金属薄板により構成された平行平板により、テラヘルツ光の偏光子として動作するワイヤーグリッドが構成されていることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のワイヤーグリッド装置は、細長い矩形状の金属薄板が一面形成されている矩形状のフィルムからなるフィルム基板を複数枚積層することにより構成されている、テラヘルツ光の偏光子として動作するワイヤーグリッドを備えている。この場合、ワイヤーグリッドを構成する平行平板とされる金属薄板の間隔は、ワイヤーグリッド装置の性能を決定するパラメータであるが、この間隔はフィルム基板の厚さで一義的に決定される。すなわち、本発明のワイヤーグリッド装置は、大量生産した場合にも上記間隔を安定して一定の値に保つことができ、ワイヤーグリッド装置の歩留まりを向上することができる。また、フィルム基板の厚さを変更するだけで、ワイヤーグリッド装置の性能を変更することができるようになる。なお、金属薄板の幅aを約1.0mm、金属薄板の長さlを約12.0mm、フィルム基板の厚さdを約0.5μm~約50μmとすることにより、テラヘルツ波帯において強度透過率で約10-6クラスの消光比を1素子で簡易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施例のワイヤーグリッド装置の構成を示す斜視図、一部拡大図および各部の寸法の例を示す図表である。
【図2】本発明の第1実施例のワイヤーグリッド装置の解析モデルを示す図である。
【図3】本発明の第1実施例のワイヤーグリッド装置の解析モデルによる解析結果を示す図である。
【図4】本発明の第2実施例のワイヤーグリッド装置の構成およびフィルム基板の構成を示す斜視図、各部の寸法の例を示す図表である。
【図5】本発明の第2実施例のワイヤーグリッド装置の解析モデルを示す図である。
【図6】本発明の第2実施例のワイヤーグリッド装置の解析モデルによる解析結果を示す図である。
【図7】本発明の第2実施例のワイヤーグリッド装置の解析モデルによる他の解析結果を示す図である。
【図8】本発明の第3実施例のワイヤーグリッド装置の構成を示す正面図および平面図である。
【図9】本発明の第3実施例のワイヤーグリッド装置の構成を示す分解組立図である。
【図10】本発明の第3実施例のワイヤーグリッド装置におけるフィルム基板の構成を示す平面図およびフィルム基板積層体の構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の第3実施例のワイヤーグリッド装置における基台の構成を示す平面図および正面図である。
【図12】本発明の第3実施例のワイヤーグリッド装置における押さえ板の構成を示す平面図および正面図である。
【図13】本発明の第3実施例のワイヤーグリッド装置の解析結果を示す図である。
【図14】従来のワイヤーグリッド用金属板の構成を示す斜視図である。
【図15】従来のワイヤーグリッド用金属板の構成を示す一部の拡大平面図である。
【図16】従来のワイヤーグリッド用金属板の構成を示す他の一部の拡大平面図である。
【図17】従来のワイヤーグリッド用金属板の特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1実施例のワイヤーグリッド装置1の構成を示す斜視図を図1(a)に、その一部拡大図を図1(b)に、第1実施例のワイヤーグリッド装置1の各部の寸法の例を示す図表を図1(c)に示す。
本発明の第1実施例のワイヤーグリッド装置1は、図1(a)(b)に示すように所定の奥行きを有する直方体状とされた導電性の枠体1aと、枠体1aの縦方向に枠体1aを貫通するよう多数形成されたスリット1bとから構成されている。枠体1aは金属製等の導電性とされ、枠体1aの奥行きはaとされる。多数のスリット1bの縦方向の長さはl(小文字のエル)とされ、スリット1は互いに平行に配置されている。スリット1b間の枠体1aの領域によりグリッド1cが形成される。スリット1bの幅はd、グリッド1cの幅はwとされている。第1実施例のワイヤーグリッド装置1では、枠体1aに多数のスリット1bが形成されることにより、平行平板とされる多数のグリッド1cが形成されて、ワイヤーグリッド装置として機能するようになる。なお、lはグリッド1cの長さでもあって、ワイヤーグリッド装置1の開口の寸法ともされている。


【0014】
次に、第1実施例のワイヤーグリッド装置1の透過率と消光比を解析するための解析モデルを図2に示す。
第1実施例のワイヤーグリッド装置1に入射したz軸方向に進行するテラヘルツ光は、スリット1bが形成された枠体1aに入射し、奥行きaとされた枠体1aに形成されているグリッド1c間を通過して出射されるようになる。これをモデル化したのが図2に示す解析モデルであり、入射するまでの枠体1aの前の領域を仮想した周期境界壁1eの領域と、周期境界壁1eにステップ構造#1で連結された間隔dで対向すると共に奥行きaとされた電気壁1dの領域と、この領域にステップ構造#2で連結された枠体1aの後の領域を仮想した周期境界壁1eの領域とからなる。なお、電気壁1dは奥行きa、幅wとされたグリッド1cにより構成されることから、ステップ構造#1,#2のステップ高さはw/2とグリッド1cの幅wの1/2となる。

【0015】
1つ目のステップ構造#1と2つ目のステップ構造#2とを距離aで散乱行列S1を接続し、周期境界壁1eと電気壁1dとが接続される高さw/2のステップをモードマッチング法により解析する。モードマッチング法による解析では、既知の特性を有する区間に分割し、各区間の接続部の領域における場を計算によって求め、全体の応答を計算している。第1実施例のワイヤーグリッド装置1のモードマッチング法の解析について説明する。
入射波はTMモード(Transverse Magnetic mode)であり、磁界H(ベクトル)の入射波Hiy、反射波Hry、透過波Htyは、
【数1】
JP0005626740B1_000002t.gif
とおける。ここで、Im、In、Ilは基底関数を表し、
【数2】
JP0005626740B1_000003t.gif
と表せる。さらに、
【数3】
JP0005626740B1_000004t.gif
である。Am、Bn、Clは励振関数を表す。電界E(ベクトル)は磁界H(ベクトル)より一意に決まり、開口面上で電界と磁界の境界条件をたてる。境界条件に3種類の基底関数Im、In、Ilを重み付けのためそれぞれ乗算して、境界面上で積分し、行列式を導出する。この行列式を解くことで励振関数Am、Bn、Clが求まる。
1つ目のステップ構造#1の散乱行列は励振関数Am、Bn、Clにより導出でき、2つ目のステップ構造#2の散乱行列と距離(奥行き)aで接続することにより、図1(a)に示すワイヤーグリッド装置1の全体構造でのTMモードのテラヘルツ光を入射した際の透過、反射特性が求まる。また、消光比はTEモード(Transverse ElectroMagnetic mode)の伝搬定数を考慮して求めることができる。これは、テラヘルツ光の電場の振幅方向がグリッド1cの延伸方向である縦方向と直交する(TMモード)場合に透過配置となり、テラヘルツ光の電場の振幅方向がグリッド1cの延伸方向である縦方向(TEモード)の場合に阻止配置となるからである。

【0016】
第1実施例のワイヤーグリッド装置1において、スリット1bの幅dを約50μm、枠体の奥行きaを約2.0mm、スリット1bの長さlを約18mmと図1(c)に示す寸法とし、グリッド1cの幅wを約20μm、約30μm、約50μmとして、0.1THz~2.98THzの周波数のテラヘルツ光を第1実施例のワイヤーグリッド装置1に入射させた際の解析を、図2に示す解析モデルで解析し、その解析結果のグラフを図3(a)(b)(c)に示す。これらの図においては、横軸が0.1THz~2.98THzの周波数、縦軸が百分率で表したTransmission Power[%](以下、「透過電力%」という)、あるいは、強度透過率で表した消光比(Extinction Ratio)とされている。入射されたテラヘルツ光の電場の振幅方向がグリッド1cの縦方向であるy軸方向と直交する場合に透過配置となり、その透過電力%が実線で示され、テラヘルツ光の電場の振幅方向がグリッド1cの縦方向であるy軸方向と平行する場合に阻止配置となり、その消光比が破線で示されている。図3(a)はグリッド1cの幅wが約20μmの時の解析結果であり、この図を参照すると、透過配置の透過電力%では周波数が0.1THzから2.98THzまで高くなるに従って上下に振動しているが、約85%以上の良好な透過電力%が得られている。また、阻止配置の消光比は0.1THz~2.98THzにおいて10-12以下となる良好な消光比が得られている。図3(b)はグリッド1cの幅wが約30μmの時の解析結果であり、この図を参照すると、透過配置の透過特性では周波数が0.1THzから2.98THzまで高くなるに従って上下に振動しているが、約70%以上の良好な透過電力%が得られている。また、阻止配置の消光比は0.1THz~2.98THzにおいて10-12以下となる良好な消光比が得られている。図3(c)はグリッド1cの幅wが約50μmの時の解析結果であり、この図を参照すると、透過配置の透過電力%では周波数が0.1THzから2.98THzまで高くなるに従って上下に振動しているが、約1.50THzまでは約60%以上の良好な透過電力%が得られ、1.5THzを超えると透過電力%は次第に低下するが20%以上の透過電力%が得られている。また、阻止配置の消光比は0.1THz~2.98THzにおいて10-12以下となる良好な消光比が得られている。このように、グリッド1cの幅wは狭くなるに従って透過電力%が向上することが分かり、グリッド1cの幅wは約50μm以下とすることが好適とされる。このように、第1実施例のワイヤーグリッド装置1において上記したパラメータ値とすると、周波数0.1~2.98THzのテラヘルツ光に対する図3(a)~(c)に示す透過配置の透過電力%、阻止配置の消光比(強度透過率)において、透過電力%の最悪値が20%とされるが、その際の消光比は10-12以下となるから、周波数0.1~2.98THzのテラヘルツ光に対して従来得ることができなかった良好な特性の偏光子として動作することが分かる。

【0017】
本発明の第2実施例のワイヤーグリッド装置2の構成を示す斜視図を図4(a)に、本発明の第2実施例のワイヤーグリッド装置2のフィルム基板10の構成を示す斜視図を図4(b)に、本発明の第2実施例のワイヤーグリッド装置2の各部の寸法の例を示す図表を図4(c)に示す。
本発明の第2実施例のワイヤーグリッド装置2は、図4(a)(b)に示すように細長い矩形状の金属薄板12が一面のほぼ中央に形成されている矩形状のポリマーフィルム11からなるフィルム基板10a,10b,10c,10d,10e・・・・を複数枚積層することにより構成されている。ポリマーフィルム11は、例えばテラヘルツ波帯において低損失なシクロオレフィンポリマーフィルムとされ、厚さがdとされている。金属薄板12は、ポリマーフィルム11の一面に蒸着あるいは貼着したり、ポリマーフィルム11の全面に成膜したCuの金属薄膜をエッチングすることにより形成されている。金属薄板12の長さはl(小文字のエル)、幅はa、厚さはtとされ、ポリマーフィルム11のほぼ中央に金属薄板12が配置されている。この場合、ポリマーフィルム11の長辺から金属薄板12の長辺までの長さが両辺ともbとされている。なお、ポリマーフィルム11の厚さdはフィルム基板10の厚さdとなる。

【0018】
第2実施例のワイヤーグリッド装置2は、図4(a)に示すように複数枚のフィルム基板10a,10b,10c,10d,10e,・・・を積層して構成されているが、複数枚のフィルム基板10a~10e,・・・のそれぞれは図4(b)に示すフィルム基板10と同様の構成とされている。また、複数枚のフィルム基板10a~10e,・・・が積層された際に、各フィルム基板10a~10eに形成されている金属薄板12が相互に重なるように配置される。この場合、隣接する金属薄板12間の間隔は、ポリマーフィルム11の厚さであるdとなる。これにより、上下にわたり重ねられた複数の金属薄板12が平行平板を構成し、ワイヤーグリッドを構成することができる。この場合、平行平板とされる金属薄板12の間隔は、ワイヤーグリッド装置2の性能を決定するパラメータであるが、この間隔はフィルム基板10の厚さで一義的に決定される。すなわち、第2実施例のワイヤーグリッド装置2は、大量生産した場合にも上記間隔を安定して一定の値に保つことができ、ワイヤーグリッド装置2の歩留まりを向上することができる。
ここで、第2実施例のワイヤーグリッド装置2の各部の寸法の例を図4(c)に示す。図4(c)に示す図表のように、金属薄板12の幅aは約1.0mmとされ、厚さtは約0.5μmとされ、長さlは約12.0mmとされる。また、ポリマーフィルム11の長辺から金属薄板12の長辺までの長さbは約2.0mmとされ、ポリマーフィルム11の厚さdは約50μmとされる。なお、フィルム基板10を積層する枚数は、フィルム基板10を積層していった寸法が、ワイヤーグリッド装置1に必要とされる開口の高さの寸法になる枚数とされる。

【0019】
次に、第2実施例のワイヤーグリッド装置2の透過率と消光比を解析するための解析モデルを図5に示す。
第2実施例のワイヤーグリッド装置2に入射したz軸方向に進行するテラヘルツ光は、まずポリマーフィルム11に入射し、ポリマーフィルム11を長さbだけ通過すると金属薄板12に達する。次いで、幅aとされた金属薄板12の間を通過すると再びポリマーフィルム11に達し、ポリマーフィルム11を長さbだけ通過すると出射されるようになる。これをモデル化したのが図5に示す解析モデルであり、ポリマーフィルム11の領域を仮想した長さbの周期境界壁15の領域Aと、周期境界壁15の領域Aにステップ状に連結された間隔dで対向すると共に幅(長さ)aとされた電気壁16aの領域Bと、この領域Bにステップ状に連結されたポリマーフィルム11の領域を仮想した長さbの周期境界壁17の領域Cとからなる。なお、領域Bは幅a、厚さt、間隔dで対向する金属薄板12からなる領域に相当することから、領域Aと領域Bとが接続されるステップのステップ高さは金属薄板12の厚さtの1/2であるt/2となると共に、領域Bと領域Cとが接続されるステップのステップ高さもt/2となる。

【0020】
領域Aでは散乱行列S2を接続し、領域Aと領域Bとが接続される高さt/2のステップをモードマッチング法により解析する。領域Bでは散乱行列s3を接続し、領域Bと領域Cとが接続される高さt/2のステップをモードマッチング法により解析する。そして、領域Cでは散乱行列S3を接続する。モードマッチング法の解析については、第1実施例のワイヤーグリッド装置1の解析と同様にして行われるので、その説明は省略する。

【0021】
第2実施例のワイヤーグリッド装置2において、金属薄板12の幅a、長さlおよび厚さtと、フィルム基板10の厚さdを上記した図4(c)に示す寸法とし、ポリマーフィルム11の複素屈折率を1.53+j0.0064として、長さbを約0mm、約1.0mm、約2.0mm、約3.0mmとした時の、0.1THz~1.92THzの周波数のテラヘルツ光を第2実施例のワイヤーグリッド装置2に入射させた際の解析を、図5に示す解析モデルで解析し、その解析結果のグラフを図6に示す。図6においては、横軸が0.1THz~1.92THzの周波数、縦軸が透過電力%(Transmission Power[%])、あるいは、強度透過率で表した消光比(Extinction Ratio)とされている。入射されたテラヘルツ光の電場の振幅方向が金属薄板12からなるワイヤーグリッドの縦方向であるy軸方向と直交する(TMモード)場合に透過配置となり、その透過電力%が実線で示され、テラヘルツ光の電場の振幅方向が金属薄板12からなるワイヤーグリッドの縦方向であるy軸方向と平行な(TEモード)場合に阻止配置となり、その消光比が破線で示されている。図6を参照すると、透過配置の透過電力%では周波数が0.1THzから高くなるに従い上下に若干振動しながら低下していく。この時、長さbが0mmの時に透過電力%が最も良好となり、0.1THz~1.92THzで約94%~約40%の透過電力%が得られ、約1.0mmの時に0.1THz~1.92THzで約83%~約10%の透過電力%が得られ、約2.0mmの時に0.1THz~1.92THzで約78%~約2%の透過電力%が得られ、約3.0mmの時に0.1THz~1.92THzで約70%~約1%の透過電力%が得られ、長さbが長くなるに従って透過電力%が劣化するようになる。これは、長さbが長くなるに従いフィルム基板10による減衰が大きくなるからと考えられる。また、阻止配置の消光比は0.1THz~1.92THzにおいて10-12以下の良好な消光比が得られ、消光比は長さbが0mmから3.0mmまで変化してもほぼ同じとなる。

【0022】
また、第2実施例のワイヤーグリッド装置2において、金属薄板12の幅a、長さlと、フィルム基板10の厚さdおよび長さbを図4(c)に示す寸法とし、ポリマーフィルム11の複素屈折率を1.53+j0.0064として、金属薄板12の厚さtを約0.5μm、約10μm、約50μmとした時の、0.1THz~1.92THzの周波数のテラヘルツ光を第2実施例のワイヤーグリッド装置2に入射させた際の解析を、図5に示す解析モデルで解析し、その解析結果のグラフを図7に示す。図7においては、横軸が0.1THz~1.92THzの周波数、縦軸が透過電力%(Transmission Power[%])、あるいは、強度透過率で表した消光比(Extinction Ratio)とされている。透過配置の透過電力%が実線で示され、阻止配置の消光比が破線で示されている。図7を参照すると、透過配置の透過電力%では周波数が0.1THzから高くなるに従い上下に若干振動しながら低下していく。この時、厚さtが約0.5μmの時に0.1THz~1.92THzで約94%~約42%の透過電力%が得られ、厚さtが約10μの時に0.1THz~1.92THzで約94%~約38%の透過電力%が得られ、約50μmの時に0.1THz~1.92THzで約94%~約19%の透過電力%が得られるが、所定間隔毎の周波数において透過電力%が劣化するようになる。また、阻止配置の消光比は0.1THz~1.92THzにおいて強度透過率が10-12以下の良好な消光比が得られ、消光比は厚さtが0.5μmから50μmまで変化してもほぼ同じとなる。
このように、第2実施例のワイヤーグリッド装置2において上記したパラメータ値とすると、周波数0.1~1.92THzのテラヘルツ光に対する図6,7に示す透過配置の透過電力%、阻止配置の消光比(強度透過率)において、透過電力%の最悪値が1%とされるが、その際の消光比は10-12以下となるから、周波数0.1~1.92THzのテラヘルツ光に対して従来得ることができなかった良好な特性の偏光子として動作することが分かる。

【0023】
次に、本発明の第3実施例のワイヤーグリッド装置3の構成を図8ないし図12に示す。図8(a)(b)は第3実施例のワイヤーグリッド装置3の構成を示す正面図および平面図であり、図9は第3実施例のワイヤーグリッド装置3の構成を示す分解組立図であり、図10(a)(b)は第3実施例のワイヤーグリッド装置3におけるフィルム基板およびフィルム基板積層体の構成を示す斜視図であり、図11(a)(b)は第3実施例のワイヤーグリッド装置3における基台の構成を示す平面図および正面図であり、図12(a)(b)は第3実施例のワイヤーグリッド装置3における押さえ板の構成を示す平面図および正面図である。
これらの図に示すように、第3実施例のワイヤーグリッド装置3は、基台50と、複数のフィルム基板20を積層したフィルム基板積層体30と、押さえ板40を備えている。図11(a)(b)に示す基台50はアルミニウム合金等の金属製とされており、矩形の横長の平板状とされた底部51と、底部51の上面において1つの隅を除く3つの隅から所定の高さで立設された第1立設柱52、第2立設柱53、第3立設柱54とを備えている。第1立設柱52~第3立設柱54の断面は、横長の矩形状とされており、基台50の中心に面している角にはR部が形成されて丸みを帯びている。また、底部51には4つのネジ孔55が形成されている。

【0024】
また、図12(a)(b)に示す押さえ板40はアルミニウム合金等の金属製とされており、横長の矩形の平板状とされた平板部41を備え、平板部41の1の隅を除く3つの隅には、第1立設柱52~第3立設柱54の断面形状とそれぞれほぼ同じ形状とされた第1切欠部42、第2切欠部43、第3切欠部44が形成されている。基台50に押さえ板40を組み合わせた時に、第1切欠部42~第3切欠部44に第1立設柱52~第3立設柱54がそれぞれ嵌合するようになる。また、平板部41には、基台50に設けられているネジ孔55と同じ位置に4つの挿通孔46が形成されている。なお、4つの挿通孔46には座繰り加工が施されている。

【0025】
第3実施例のワイヤーグリッド装置3におけるフィルム基板20は、外形形状がほぼ押さえ板40と同様の外形形状とされたポリマーフィルム21と、ポリマーフィルム21上に設けられた横に細長い金属薄板22とから構成されている。ポリマーフィルム21は、横長の矩形の平板状とされ、取付部21bおよび取付部21cが両側に形成され、取付部21bと取付部21cとの間に矩形状切欠部26が形成されて、金属薄板22を保持する横に細長い保持部21aが中央部の一側に形成されている。第1立設柱52~第3立設柱54の位置に対応する取付部21bの1つの隅と取付部21cの2つの隅には、第1立設柱52~第3立設柱54の断面形状と同じ形状とされた第1切欠部23、第2切欠部24、第3切欠部25がそれぞれ形成されている。保持部21aの一面には、横長の矩形状とされた金属薄板22が蒸着あるいは貼着、または、ポリマーフィルム21の一面に成膜したCuの金属薄膜をエッチングすることにより形成されている。金属薄板22の長さはl(小文字のエル)、幅はa、厚さはtとされる。この場合、保持部21aの縁部から金属薄板22の長辺までの長さが両側ともbとされている。また、取付部21bと取付部21cには、基台50に形成されている4つのネジ孔55に対応する位置に4つの孔部27が形成されている。なお、ポリマーフィルム21の厚さはdとされる。

【0026】
このような構成のフィルム基板20を図10(b)に示すように位置合わせしながら複数枚積層してフィルム基板積層体30を構成する。図10(b)に示すフィルム基板20a,20b,20c,20d,20e,20fは図10(a)に示すフィルム基板20と同じ構成とされている。フィルム基板積層体30は、図10(b)では6枚のフィルム基板20a~20fから構成されているが、図10(b)は模式的に示す図であり実際には数十枚以上のフィルム基板20を積層してフィルム基板積層体30が構成される。そして、フィルム基板積層体30においては、フィルム基板20a~20fに形成されている金属薄板22a~22fが同じ位置で重ねられると共に、隣接する金属薄板22間の間隔は、ポリマーフィルム21の厚さであるdとなる。これにより、上下にわたり重ねられた複数の金属薄板22が平行平板を構成し、ワイヤーグリッドが構成される。

【0027】
このようにして構成されたフィルム基板積層体30を図9に示すように基台50上に配置して基台50内に収納する。収納した際にフィルム基板積層体30における各フィルム基板20の第1切欠部23~第3切欠部25に、基台50の第1立設柱52~第3立設柱54がそれぞれ嵌合されて、基台50に対してフィルム基板積層体30における各フィルム基板20が位置合わせされて収納されるようになる。また、フィルム基板積層体30における各フィルム基板20の4つの孔部27が基台50の4つのネジ孔55に位置合わせされる。
フィルム基板積層体30を基台50に収納した後に、基台50上に押さえ板40を配置して基台50に収納したフィルム基板積層体30の上に載置する。この時、押さえ板40の第1切欠部42~第3切欠部44に、基台50の第1立設柱52~第3立設柱54がそれぞれ嵌合されて、基台50に対して押さえ板40が位置合わせされるようになる。また、押さえ板40の4つの挿通孔46が、フィルム基板積層体30における各フィルム基板20の4つの孔部27および基台50の4つのネジ孔55に位置合わせされる。

【0028】
そこで、押さえ板40の4つの挿通孔46にそれぞれ取付ネジ60を挿通して、フィルム基板積層体30における各フィルム基板20の孔部27を貫通した4本の取付ネジ60を、それぞれ基台50のネジ孔55に螺着する。これにより、フィルム基板20同士が密着されて図8(a)(b)に示す第3実施例のワイヤーグリッド装置3が組み立てられるようになる。第3実施例のワイヤーグリッド装置3においては、押さえ板40の平板部41により、金属薄板22が形成されているフィルム基板20の保持部21aが圧接されて、金属薄板22間の間隔が安定して保持されるようになる。また、図8(a)に示すように、フィルム基板積層体30における各フィルム基板20の金属薄板22が上下にわたり平行に配置されてワイヤーグリッドが構成される様子を理解することができる。この場合、平行平板とされる金属薄板22の間隔は、ワイヤーグリッド装置3の性能を決定するパラメータであるが、この間隔はフィルム基板20の厚さで一義的に決定される。すなわち、第3実施例のワイヤーグリッド装置3では、4本の取付ネジ60で固着される基台50と押さえ板40との間に平行平板とされている金属薄板22を備えるフィルム基板積層体30が挟持されることから、平行平板とされる金属薄板22間の間隔がきわめて安定化されており、大量生産した場合にも上記間隔を安定して一定の値に保つことができ、ワイヤーグリッド装置3の歩留まりを向上することができる。なお、4本の取付ネジ60は皿ネジとされており、押さえ板40の4つの座繰り加工された挿通孔46内に頭部が収まるようになり、取付ネジ60を螺着することにより基台50、フィルム基板積層体30および押さえ板40が位置合わせされて固着されるようになる。

【0029】
第3実施例のワイヤーグリッド装置3の透過率と消光比は、図5に示す解析モデルを用いて解析することができる。第3実施例のワイヤーグリッド装置3において、金属薄板22の幅aを約1.0mm、長さlを約30.0mm、厚さtを約0.5μm、フィルム基板20の厚さdを約50μm、長さbを約0mm、ポリマーフィルム21の複素屈折率を1.53+j0.0064とした場合の図5に示す解析モデルを用いて解析した解析結果と、実験結果とのグラフを図13(a)に示す。図13(a)においては、横軸が0.1THz~1.92THzの周波数、縦軸がTMモード時の透過電力%(Transmission power of TM mode[%])、あるいは、強度透過率で表した消光比(Extinction Ratio)とされている。図13(a)において破線で示す解析結果は、入射されたテラヘルツ光の電場の振幅方向が金属薄板22からなるワイヤーグリッドの縦方向であるy軸方向と直交する透過配置の場合の解析結果である。この透過配置の解析結果の透過電力%を参照すると、周波数が0.1THzから高くなるに従い上下に若干振動しながら低下していき、0.1THz~1.92THzにおいて約94%~40%の透過電力%が得られている。
また、入射されたテラヘルツ光がTMモードであって、電場の振幅方向が金属薄板22からなるワイヤーグリッドの縦方向であるy軸方向と直交する場合(透過配置)の透過電力%の実験結果(Measurement results)が上段の実線で示されている。この実験結果を参照すると、周波数が0.1THzから高くなるに従い最大30%の幅で上下に振動しながら若干低下していくが、0.1THz~1.92THzにおいて約100%~60%の透過電力%が得られ、解析結果の透過電力%と近似しているがより良好な透過電力%が得られていることが分かる。

【0030】
さらに、入射されたテラヘルツ光がTEモードであって、電場の振幅方向が金属薄板22からなるワイヤーグリッドの縦方向であるy軸方向に平行となる場合(阻止配置)の消光比の実験結果(Measurement results)が下段の実線で示されている。この実験結果を参照すると、周波数が0.1THzでは消光比が約10-4程度であるが、約0.75THz近辺まで高くなると消光比が約10-7以下となって向上していき、0.5THz近辺を超えて1.92THzまではほぼ10-6前後の消光比が得られていることが分かる。
このように、第3実施例のワイヤーグリッド装置3において上記したパラメータ値とすると、周波数0.1~1.92THzのテラヘルツ光に対する図13(a)に示す透過配置の透過電力%、阻止配置の消光比(強度透過率)において、透過電力%の最悪値が60%と良好な値が得られると共に、その際の消光比は10-4以下が得られることから、周波数0.1~1.92THzのテラヘルツ光に対して従来得ることができなかった良好な特性の偏光子として動作することが分かる。

【0031】
また、第3実施例のワイヤーグリッド装置3において、金属薄板22の幅aを約1.0mm、長さlを約12.0mm、厚さtを約0.5μm、フィルム基板20の厚さdを約50μm、長さbを約2.0mm、ポリマーフィルム21の複素屈折率を1.53+j0.0064とした場合の図5に示す解析モデルを用いて解析した解析結果と、実験結果とのグラフを図13(b)に示す。図13(b)においても、横軸が0.1THz~1.92THzの周波数、縦軸がTMモード時の透過電力%(Transmission power of TM mode[%])、あるいは、強度透過率で表した消光比(Extinction Ratio)とされている。図13(b)において破線で示す解析結果は、入射されたテラヘルツ光の電場の振幅方向が金属薄板22からなるワイヤーグリッドの縦方向であるy軸方向と直交する透過配置の場合の解析結果である。この透過配置の解析結果の透過電力%を参照すると、周波数が0.1THzから高くなるに従い上下に若干振動しながら低下していき、0.1THz~1.92THzにおいて約78%~約2%の透過電力%が得られている。
また、入射されたテラヘルツ光がTMモードであって、電場の振幅方向が金属薄板22からなるワイヤーグリッドの縦方向であるy軸方向と直交する場合(透過配置)の透過電力%の実験結果(Measurement results)が左矢印で示す実線で示されている。この実験結果を参照すると、周波数が0.1THzから高くなるに従い若干振動しながら低下していき、0.1THz~1.92THzにおいて約80%~2%の透過電力%が得られ、解析結果の透過電力%と近似しているがより良好な透過電力%が得られていることが分かる。

【0032】
さらに、入射されたテラヘルツ光がTEモードであって、電場の振幅方向が金属薄板22からなるワイヤーグリッドの縦方向であるy軸方向に平行となる場合(阻止配置)の消光比の実験結果(Measurement results)が右矢印で示す実線で示されている。この実験結果を参照すると、周波数が0.1THzでは消光比が約10-4程度であるが、約1.15THz近辺まで高くなると消光比が約10-7クラスとなって向上していき、1.15THz近辺を超えて1.92THzまではほぼ10-5ないし10-6前後の消光比が得られていることが分かる。
このように、第3実施例のワイヤーグリッド装置3において上記したパラメータ値とすると、周波数0.1~1.92THzのテラヘルツ光に対する図13(b)に示す透過配置の透過電力%、阻止配置の消光比(強度透過率)において、透過電力%の最悪値が2%とされるが、その際の消光比は10-4程度が得られることから、周波数0.1~1.92THzのテラヘルツ光に対して従来得ることができなかった良好な特性の偏光子として動作することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上説明した本発明にかかるワイヤーグリッド装置においては、テラヘルツ波帯において良好な透過率が得られると共に約10-6クラスの高い消光比を得ることができる。また、第2,3実施例のワイヤーグリッド装置においてフィルム基板を積層する枚数は、フィルム基板を積層していった寸法が、ワイヤーグリッド装置に必要とされる開口の高さの寸法になる枚数とされる。さらに、第2,3実施例のワイヤーグリッド装置をテラヘルツ波帯に適用する際に、金属薄板の幅を約1.0mm、金属薄板の長さを約12.0mm~約30mm、フィルム基板の厚さdを約0.5μm~約50μmとすることが好適とされる。
この場合、第2,3実施例のワイヤーグリッド装置におけるワイヤーグリッドを構成する平行平板とされる金属薄板の間隔は、ワイヤーグリッド装置の性能を決定するパラメータであるが、この間隔はフィルム基板の厚さで一義的に決定される。すなわち、本発明の第2,3実施例のワイヤーグリッド装置では、大量生産した場合にも上記間隔を安定して一定の値に保つことができ、当該ワイヤーグリッド装置の歩留まりを向上することができる。また、フィルム基板の厚さを変更するだけで、適用される周波数帯を変更することができるようになる。さらに、ポリマーフィルムは、シクロオレフィンポリマーフィルムを用いるようにしたが、これに限ることはなくテラヘルツ波帯において誘電正接の小さいフィルムならばいずれの材料からなるフィルムでも用いることができる。また、フィルムに替えてフィルム状の物質を金属薄板の面に形成しても良い。例えば、金属薄板の面に所定の厚さになる樹脂等の絶縁性の物質を塗布あるいは貼着することにより、金属薄板を所定間隔で対向させるようにしても良い。
なお、第1実施例のワイヤーグリッド装置において、スリットを縦方向に形成したが、横方向に形成するようにしても良いことは当然のことであり、スリットは枠体の辺に平行に枠体のほぼ全領域に形成すればよい。
【符号の説明】
【0034】
1 ワイヤーグリッド装置、1a 枠体、1b スリット、1c グリッド、1d 電気壁、1e 周期境界壁、2 ワイヤーグリッド装置、3 ワイヤーグリッド装置、10 フィルム基板、10a~10e フィルム基板、11 ポリマーフィルム、12 金属薄板、15 周期境界壁、16 電気壁、17 周期境界壁、20 フィルム基板、20a~20f フィルム基板、21 ポリマーフィルム、21a 保持部、21b 取付部、21c 取付部、22 金属薄板、22a~22f 金属薄板、23 第1切欠部、24 第2切欠部、25 第3切欠部、26 矩形状切欠部、27 孔部、30 フィルム基板積層体、40 押さえ板、41 平板部、42 第1切欠部、43 第2切欠部、44 第3切欠部、46 挿通孔、50 基台、51 底部、52 第1立設柱、53 第2立設柱、54 第3立設柱、55 ネジ孔、60 取付ネジ、101 ワイヤーグリッド用金属板、111 縦桟部、112 横桟部、113 フランジ部
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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