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明細書 :金属部材の接合方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-030009 (P2015-030009A)
公開日 平成27年2月16日(2015.2.16)
発明の名称または考案の名称 金属部材の接合方法
国際特許分類 B23K  20/00        (2006.01)
B23K 103/18        (2006.01)
FI B23K 20/00 310A
B23K 20/00 310H
B23K 20/00 310G
B23K 103:18
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2013-161047 (P2013-161047)
出願日 平成25年8月2日(2013.8.2)
発明者または考案者 【氏名】小山 真司
出願人 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000925、【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4E167
Fターム 4E167AA03
4E167AA06
4E167AA08
4E167AA29
4E167BA05
4E167BA09
4E167BA12
4E167CA03
4E167CB03
要約 【課題】比較的低温で接合が可能であり、接合時の変形を抑制して、固相状態で金属同士を接合することができる金属部材の接合方法を提供する。
【解決手段】第1の金属部材と第2の金属部材を突き合わせて、加熱及び加圧すると共に、第1の金属部材と第2の金属部材との間に電流を流して、第1の金属部材と第2の金属部材を接合する工程を有して、金属部材の接合を行う。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の金属部材を接合する方法であって、
第1の金属部材と第2の金属部材を突き合わせて、加熱及び加圧すると共に、第1の金属部材と第2の金属部材との間に電流を流して、第1の金属部材と第2の金属部材を接合する工程を有する
金属部材の接合方法。
【請求項2】
前記第2の金属部材は、前記第1の金属部材とは異なる材料からなる、請求項1に記載の金属部材の接合方法。
【請求項3】
前記第1の金属部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金である、請求項1に記載の金属部材の接合方法。
【請求項4】
前記第1の金属部材がアルミニウムであり、前記第2の金属部材が銅であり、前記電流を前記第2の金属部材から前記第1の金属部材への向きに流す、請求項3に記載の金属部材の接合方法。
【請求項5】
前記第1の金属部材がアルミニウムであり、前記第2の金属部材がステンレス鋼であり、前記電流を前記第1の金属部材から前記第2の金属部材への向きに流す、請求項3に記載の金属部材の接合方法。
【請求項6】
前記第1の金属部材及び前記第2の金属部材が同じ材料からなる、請求項1に記載の金属部材の接合方法。
【請求項7】
前記第1の金属部材及び前記第2の金属部材が銅である、請求項6に記載の金属部材の接合方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の金属部材を接合する、金属部材の接合方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、アルミニウム同士、或いは、アルミニウムと鋼材は、580~620℃に加熱されて、ろう付により接合されていた。
ろう付による接合では、ろう材を溶融させて接合するため(580~620℃)、位置決め精度に問題があり、適用範囲にも制限がある。また、ろう付には、フッ化物を含有するフラックスが用いられており、フラックス残渣による腐食の問題や、フラックスが人体に有害であるため、撤廃が望まれている。さらに、ろう材とアルミニウム母材との間で金属間化合物(脆性的な性質)が形成され、接合部が脆化する問題点もあった。
【0003】
また、金属部材の他の接合方法として、レーザ溶接、摩擦撹拌溶接、スポット溶接も行われている。
これらの溶接による接合では、溶接熱により溶接部の近傍が軟化し、ミクロ割れが発生する。また、接合部のクリアランスにより、腐食が問題となっている。
さらに、接合する部材がアルミニウムの場合は、熱伝導率が高いため、大きな電力(入熱量)を必要とする。
【0004】
また、金属部材の他の接合方法として、固相接合法が知られている。
固相接合法は、母材を溶融することなく、固相状態で顕著な変形を加えずに、加熱及び加圧して接合する方法である。熱による部材へのダメージを減少させ、溶融させないことによるぬれ広がりの抑制や、精密組立接合が可能である、といった特徴を有している。
【0005】
金属材料(特にアルミニウム)は、大気中に曝すと、接合阻害因子である強固な自然酸化皮膜を形成する。強度の高い接合部を得るには、接合圧力及び接合温度を高くして、酸化皮膜を機械的に破壊しなくてはならず、おのずと接合時の変形量が増加してしまう問題点がある。
【0006】
そこで、例えば、銅の接合面を有機酸から成る酸化膜除去液で処理してから、固相接合を行うことが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2006-334652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、アルミニウム等においては、表面を有機酸で処理しただけで固相接合を行うと、十分な接合強度が得られなかった。
【0009】
上述した問題の解決のために、本発明においては、比較的低温で接合が可能であり、接合時の変形を抑制して、固相状態で金属同士を接合することができる金属部材の接合方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の金属部材の接合方法は、複数の金属部材を接合する方法であって、第1の金属部材と第2の金属部材を突き合わせて、加熱及び加圧すると共に、第1の金属部材と第2の金属部材との間に電流を流して、第1の金属部材と第2の金属部材を接合する工程を有する。
【0011】
本発明の金属部材の接合方法において、第1の金属部材がアルミニウムであり、第2の金属部材が銅であり、電流を第2の金属部材から第1の金属部材への向きに流す構成とすることも可能である。
本発明の金属部材の接合方法において、第1の金属部材がアルミニウムであり、第2の金属部材がステンレス鋼であり、電流を第1の金属部材から第2の金属部材への向きに流す構成とすることも可能である。
【0012】
上述の本発明の金属部材の接合方法によれば、加熱及び加圧すると共に、第1の金属部材と第2の金属部材との間に電流を流すことにより、接合強度を増大させることができる。
そして、高い接合強度が得られるので、従来よりも低い接合温度で、高い接合強度を得ることが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
上述の本発明によれば、従来よりも低い接合温度で、高い接合強度を得ることができる。
これにより、接合温度を低くして、加熱に必要なエネルギーを低減し、接合時の変形量を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実験1で使用した試料の斜視図である。
【図2】各実験で使用した接合装置の概略構成図である。
【図3】実験1で使用した引張試験用の試験片の側面図である。
【図4】実験1(アルミニウム/銅接合)の引張試験の結果を示す図である。
【図5】実験1の引張試験の結果の接合温度と接合変形量の関係を示す図である。
【図6】引張試験後の試料の破面のSEM写真及び銅の分析の結果を示す図である。
【図7】引張試験後の試料の接合界面のSEM写真及び元素分析の結果を示す図である。
【図8】実験2で使用した試料の斜視図である。
【図9】実験2で使用した引張試験用の試験片の側面図である。
【図10】実験2(アルミニウム/ステンレス鋼接合)の引張試験の結果を示す図である。
【図11】実験3で使用した試料の斜視図である。
【図12】実験3で使用した引張試験用の試験片の側面図である。
【図13】実験3(アルミニウム/アルミニウム合金接合)の引張試験の結果を示す図である。
【図14】A~C 実験4で使用した試料及び引張試験の試験片を示す図である。
【図15】実験4(銅/銅接合)の引張試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)について説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.本発明の概要
2.実施例

【0016】
<1.本発明の概要>
まず、本発明の概要について説明する。
本発明の金属部材の接合方法は、同一の材料からなる、或いは、異種の材料からなる、複数の金属部材を接合する方法である。
そして、本発明では、第1の金属部材と第2の金属部材を突き合わせて、加熱及び加圧すると共に、第1の金属部材と第2の金属部材との間に電流を流して、第1の金属部材と第2の金属部材を接合する工程を有する。

【0017】
本発明において、第1の金属部材及び第2の金属部材の材料としては、各種の金属材料からなる金属部材を使用することが可能である。例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、ステンレス鋼(SUS)等を、使用することが可能である。

【0018】
接合する第1の金属部材及び第2の金属部材は、同じ材料であっても、異種の材料であっても良い。

【0019】
また、第1の金属部材と第2の金属部材を異なる材料とする場合に、それぞれの金属部材の材料の組み合わせによっては、電流を流す向きによって、その向きの電流で得られる最大の接合強度や、その最大の接合強度が得られる電流の量が異なる。
例えば、第1の金属部材をアルミニウム、第2の金属部材を銅とした場合において、銅からアルミニウムへの向きに電流を流した(アルミニウムから銅への向きに電子を流した)ときには、逆向きに電流を流したときと比較して、最大の接合強度が得られる。また、逆向きに電流を流したときと比較して、最大の接合強度が得られる電流量が小さくなる。
例えば、第1の金属部材をアルミニウム、第2の金属部材をステンレス鋼とした場合において、アルミニウムからステンレス鋼への向きに電流を流した(ステンレス鋼からアルミニウムへの向きに電子を流した)ときには、逆向きに電流を流したときと比較して、最大の接合強度が得られる。また、逆向きに電流を流したときと比較して、最大の接合強度が得られる電流量が大きくなる。

【0020】
本発明では、金属部材を接合する際に、加熱及び加圧を行うと共に、接合する金属部材に電流を流すので、電流によってそれぞれの金属部材の元素の拡散が促進される。
これにより、各金属部材が異種の材料の場合、接合面付近に反応層が生じ、各金属部材が同種の材料の場合、接合面付近の原子が結合する。また、接合過程の初期の段階で、ジュール熱により接合界面近傍のみ塑性変形することで、接合界面の密着化を完了する。
従って、接合強度を増大させることができる。
このようにして高い接合強度を得ることができるため、従来よりも低い温度で高い接合強度を得ることが可能になる。

【0021】
上述したように、本発明によれば、従来よりも低い温度で、十分に高い接合強度が得られるので、固相状態での接合が低温で可能になる。
そして、温度と同様の観点から、接合の際の圧力を低くしても、十分に高い接合強度を得ることができる。
これにより、低圧力で固相状態での接合が可能になり、接合の際の変形量を低減することができるので、接合の位置精度を向上することができる。そして、接合の位置精度が向上することにより、高い位置精度を保つことができるので、溶接では困難であった複雑な形状の金属部材の接合も可能になる。
また、低温かつ低圧力で接合が可能になるため、接合装置の構成を簡略化することや、加熱に必要なエネルギーを低減して、エネルギー効率を向上することができる。例えば、消費電力や加熱用の燃料、接合に要する時間等を低減することが可能になる。

【0022】
なお、金属部材として、アルミニウムのように酸化物皮膜が形成されやすい材料を使用する場合には、表面に形成された酸化物皮膜を除去するために、例えば、アルカリ処理や有機酸処理を行ってから、接合を行っても良い。

【0023】
<2.実施例>
次に、実際に、本発明によって金属部材の接合を行い、特性を調べた。

【0024】
(実験1)アルミニウム/銅接合
接合する2つの金属部材として、図1に斜視図を示すように、直径が20mmで高さが15mmの円柱状のアルミニウムと、直径が10mmで高さが15mmの円柱状の銅を用意した。アルミニウムの純度は99.9%、銅の純度は99.99%であった。

【0025】
実験に使用した接合装置の概略構成図を、図2に示す。
図2に示す接合装置1は、真空チャンバ11内に、試験片に対して加圧を行う加圧部2が配置され、真空チャンバ11の周囲にヒーター13が設けられて、構成されている。
真空チャンバ11には、真空ポンプ12が接続されている。また、真空チャンバ11内には、窒素ガス供給部14に接続された窒素ガス供給管18が挿入されている。これにより、真空チャンバ11内を真空にした後に窒素ガスを供給して、真空チャンバ11内を窒素雰囲気とすることができる。
加圧部2の内部の空間には、試験片(この場合は、アルミニウム21及び銅22)が設置され、試験片21,22の上下にそれぞれ接してセラミック板4を配置して、下側のセラミック板4を基板3の上に載せている。そして、基板3及びセラミック板4を通じて、図示しない圧力調整部により調整された一定の圧力が、試験片21,22に印加されるように構成されている。
ヒーター13は、電力供給部15に接続されている。また、電力供給部15に接続された制御部16から、加圧部2内の基板3へ熱電対20が接続されている。これにより、熱電対20で基板3の温度を測定して、測定結果をフィードバックしている。そして、制御部16によって電力供給部15からヒーター13に供給する電力を制御し、真空チャンバ11内の温度を制御する。
また、直流電源17から、加圧部2内の試験片(アルミニウム21及び銅22)へ配線19が接続されている。これにより、アルミニウム21及び銅22に電流を流すことができる。なお、図2では、直流電源17の正極を銅22に接続して、負極をアルミニウム21に接続した状態を示しているが、この接合装置1では、図2とは逆に負極を銅22に接続して正極をアルミニウム21に接続することも可能である。

【0026】
図2に示したように、直流電源17の正極を銅22に接続し、負極をアルミニウム21に接続した場合には、電流は銅22からアルミニウム21に流れ、電子流はアルミニウム21から銅22に流れる。
図2とは逆に、直流電源17の正極をアルミニウム21に接続し、負極を銅22に接続した場合には、電流はアルミニウム21から銅22に流れ、電子流は銅22からアルミニウム21に流れる。

【0027】
図2に示した接合装置1において、接合圧力を12MPa、接合温度を460℃、接合時間を15分にそれぞれ設定して、加熱及び加圧することにより、アルミニウム21と銅22を接合して継手を作製した。
さらに、接合圧力を12MPa、接合時間を15分に設定して、電流値、電流の向き、接合温度を変えて、それぞれ金属部材の接合を行って、継手を作製した。
また、比較対照のために、電気アシストを行わず(電流0)に接合させた、継手も作製した。
さらに、変形例として、アルミニウムの接合界面の酸化物皮膜を金属塩に置換した後に、電気アシストを行って接合させた、継手も作製した。

【0028】
(引張試験)
アルミニウムと銅の接合により得られた継手を、試験片として使用して、引張試験を行った。
図3に示すように、径が太いアルミニウム側の端面に引張試験用の治具を引っ掛けて、銅の外側を治具で挟んで、図中矢印で示す方向に応力をかけて、引張試験を行った。
引張試験機は、INSTRON社製5567を使用した。
接合圧力は12MPaで一定として、電流値、電流の向き、接合温度を変えて接合した、それぞれの継手について引張試験を行い、継手の界面強度を得た。

【0029】
実験1の引張試験の結果として、接合圧力を12MPa、接合温度を460℃にそれぞれ固定して、電流値及び電流の向きを変化させた場合の界面強度の変化を、図4に示す。なお、図4の凡例の「Cu→Al」及び「Al→Cu」の矢印は電子流の向きを示しており、図2に示した直流電源17の負極をアルミニウムに接続した場合は、「Al→Cu」に該当する。

【0030】
図4より、高い界面強度を得るには、電流値及び電流の向きを適切に選択する必要があることが分かる。
また、AlとCuを接合しようとした場合は、図4の●印のように、電子流をAlからCuへの向きに、即ち電流をCuからAlへの向きに、10A(約0.8V)流すことによって、最も高い界面強度が得られることが分かる。
そして、CuからAlへの向きに電流を流した場合、逆にAlからCuへの向きに電流を流した場合と比較して、ピークの界面強度が高くなり、また、ピークの界面強度が得られる電流量が小さくなる。

【0031】
上述のように、電流の向きによって、ピークの界面強度が異なる現象が生じた要因は、以下のように考えられる。
電子をCu側からAl側に移動させた場合(図4の□印の場合)には、Cu側の酸素イオンと電子の斥力が働き、酸素イオンがAl側に移動することで、Al側の接合界面にAlが多量に生成し、Al/Cu間の反応が生じにくい状態に変化したことが、界面強度が低くなった要因と考えられる。
電子をAl側からCu側に移動させた場合(図4の●印の場合)には、接合初期の段階でAl側に生成しているAlの酸素イオンが電子との斥力によって引き離されCu側に移動し、接合温度が250℃以上であるため、酸化銅のCOとの還元作用によりAlとCuが反応しやすくなったことが、界面強度が高くなった要因と考えられる。

【0032】
また、電子をAl側からCu側に移動させた場合(図4の●印の場合)で、電流量を大きくしていったときに、ピークの界面強度が得られる電流量(10A)までは界面強度が増大し、さらに電流量を大きくすると界面強度が低下する現象が生じた要因は、以下のように考えられる。
電流によりアルミニウム酸化物が還元され、酸素イオンとしてCu接合面に移動した結果、Al及びCuの反応が顕著に生じやすくなったため、界面強度が増大したと考えられる。また、電流量がさらに大きくなると、電子がCu側に激しく移動することによって、CuのAl側への拡散を抑制したためではないかと考えられる。

【0033】
次に、図4で最も高い界面強度が得られた、電流の向き及び電流量の条件に固定して、接合温度を変化させて場合の結果を、図5に示す。図5は、接合温度と界面強度及び接合変形量(Alの加圧方向の“接合前高さ-接合後の高さ”)の関係を示している。接合変形量は、電気アシストの有無に関わらずほとんど変化は認められなかった。なお、図5には、比較対照である、電気アシストを行わないで接合させた継手の測定結果、並びに変形例である、酸化物皮膜を金属塩に置換した後に電気アシストを行って接合させた継手の測定結果も、併記している。

【0034】
図5より、電気アシストの有無に関わらず、接合温度の上昇とともに界面強度が増加する傾向が認められた。
しかしながら、電気アシストを行うことで、より低温・低変形量から界面強度が増加し、電気アシストを行わない場合に対して、約3倍の界面強度を有する接続部が得られることがわかる。さらに、接合界面の酸化物皮膜を金属塩に置換した後に電気アシストを行うことで、より界面強度が増加することが分かった。

【0035】
引張試験後の試料の破面を、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察した。また、アルミニウム側の破面の銅の分析も行った。
観察により得られた接合界面のSEM写真、及び、分析により得られたアルミニウム側の接合界面の銅の分布を、図6に示す。図6は、上段に電気アシストを行わなかった場合を示し、下段に電気アシストを行った場合を示し、それぞれ接合温度が500℃と520℃の場合の試料の結果を示している。

【0036】
図6より、電気アシストを行った場合は、破面の全面から互いの元素が検出されたが、電気アシストを行わなかった場合は一部に付着物が認められる程度であった。
従って、電気アシストを行った場合に高い界面強度を示したのは、接合面間の互いの原子による反応拡散がより顕著に生じたためであることが示唆される。

【0037】
次に、図6に示した接合条件と同じ接続部の接合界面について、SEMを用いて観察及び元素分析を行った。その結果を図7に示す。図7は、上段に電気アシストを行わなかった場合を示し、下段に電気アシストを行った場合を示す。また、左側に接合温度500℃の場合を示し、右側に接合温度520℃の場合を示した。そして、それら4通りの条件について、SEM写真と対応する位置のAl及びCuの量の線分析結果を示している。

【0038】
図7より、電気アシストを行った場合は、界面に顕著な反応層が認められたが、電気アシストを行わなかった場合は、一部にわずかな反応領域が見られる程度であった。
従って、電気アシストを行った場合に高い界面強度を示したのは、電気アシストにより接合面間の互いの原子による反応拡散が促進されたためであることが示唆される。

【0039】
(実験2)アルミニウム/ステンレス綱(SUS304)接合
接合する2つの金属部材として、図8に斜視図を示すように、直径が20mmで高さが15mmの円柱状のアルミニウムと、直径が10mmで高さが15mmの円柱状のSUS304ステンレス綱を用意した。アルミニウムの純度は99.9%であった。
使用したSUS304ステンレス綱の化学組成を表1に示す。

【0040】
【表1】
JP2015030009A_000003t.gif

【0041】
図2に示した接合装置1において、接合圧力を6MPa、接合温度を460℃、接合時間を15分にそれぞれ設定して、電流値と電流の向きを変え、それぞれアルミニウム及びステンレス鋼の接合を行って、継手を作製した。
また、比較対照のために、電気アシストを行わず(電流0)に接合させた、継手も作製した。

【0042】
(引張試験)
アルミニウムとステンレス鋼の接合により得られた継手を、試験片として使用して、引張試験を行った。
図9に示すように、径が太いアルミニウム側の端面に引張試験用の治具を引っ掛けて、ステンレス鋼の外側を治具で挟み、図中矢印で示す方向に応力をかけて、引張試験を行った。
引張試験機は、INSTRON社製5567を使用した。
接合圧力、接合温度及び接合時間を一定として、電流値、電流の向きを変えて接合した、それぞれの継手について引張試験を行い、継手の界面強度を得た。

【0043】
実験2の引張試験の結果として、電流量及び電流の向きを変化させた場合の界面強度の変化を、図10に示す。なお、図10には、比較対照である、電気アシストを行わないで接合させた継手の測定結果も、併記している。また、図10の凡例の「Al→SUS304」及び「SUS304→Al」の矢印は、図4と同様に、電子流の向きを示している。

【0044】
図10より、高い界面強度を得るには、電流値及び電流の向きを適切に選択する必要があることが分かる。
また、AlとSUS304を接合しようとした場合は、電子流をSUS304からAlへの向きに、即ち電流をAlからSUS304への向きに、20A(約1.6V)流すことによって、最も高い界面強度が得られることが分かる。なお、このAlからSUS304への向きに電流を流した場合、逆にSUS304からAlへの向きに電流を流した場合と比較して、ピークの界面強度が得られる電流量が大きくなる。

【0045】
実験2より、電気アシストによる接合法は、Alとステンレス鋼との接合にも適用可能であることがわかる。
従って、電気アシストによる接合法は、多様な金属に対応可能であることが示された。

【0046】
(実験3)アルミニウム/アルミニウム合金接合
接合する2つの金属部材として、図11に斜視図を示すように、直径が20mmで高さが15mmの円柱状のアルミニウムと、直径が10mmで高さが15mmの円柱状のアルミニウム合金を用意した。アルミニウムの純度は99.9%であった。
使用したアルミニウム合金の化学組成を表2に示す。

【0047】
【表2】
JP2015030009A_000004t.gif

【0048】
図2に示した接合装置1において、接合圧力を6MPa、接合温度を460℃、接合時間を15分にそれぞれ設定して、電流値と電流の向きを変え、それぞれアルミニウム及びアルミニウム合金の接合を行って、継手を作製した。
また、比較対照のために、電気アシストを行わず(電流0)に接合させた、継手も作製した。

【0049】
(引張試験)
アルミニウムとアルミニウム合金の接合により得られた継手を、試験片として使用して、引張試験を行った。
図12に示すように、径が太いアルミニウム側の端面に引張試験用の治具を引っ掛けて、アルミニウム合金の外側を治具で挟んで、図中矢印で示す方向に応力をかけて、引張試験を行った。
引張試験機は、INSTRON社製5567を使用した。
接合圧力及び接合温度を一定として、電流値、電流の向きを変えて接合した、それぞれの継手について引張試験を行い、継手の界面強度を得た。

【0050】
実験3の引張試験の結果として、電流値及び電流の向きを変化させた場合の界面強度の変化を、図13に示す。なお、図13には、比較対照である、電気アシストを行わないで接合させた継手の測定結果も、併記している。また、図13の凡例の「Al→Al合金」及び「Al合金→Al」の矢印は、図4と同様に、電子流の向きを示している。

【0051】
図13に示すように、高い界面強度を得るには、電流の向きを適切に選択する必要があることが分かる。
また、AlとAl合金を接合しようとした場合は、AlからAl合金の向き(図13の□印)に電子を流し、かつ電流量を増加させることで、界面強度を高くできることが分かる。

【0052】
実験3より、電気アシストによる接合法は、AlとAl合金との接合にも適用可能であることがわかる。
従って、電気アシストによる接合法は、多様な金属に対応可能であることが示された。

【0053】
(実験4)銅/銅接合
接合する2つの金属部材として、図14Aに示すように、直径が1.2mmであり、下端部を曲率半径R=8.5mmで折り曲げた、高さ60mmの銅線(銅ワイヤ)31と、縦横が15mmで厚さが5mmの銅板32を用意した。
この銅線31及び銅板32を、図14Bに示すように、直径5mmの丸棒側面の先端部33を備えた押圧治具34で矢印に示す方向に荷重を加えて、銅線31と銅板32との間に電流を流し、加熱して、銅線31及び銅板32を接合して、試験片を作製した。
そして、図14Bにおいて、押圧治具34による接合荷重を588N、接合温度を300℃、接合時間を15分に設定して、電流値を変えて、それぞれ銅線31及び銅板32を接合して、試験片を作製した。
また、比較対照のために、電気アシストを行わず(電流0)に接合させた、継手も作製した。

【0054】
(引張試験)
銅線31と銅板32の接合により得られた試験片を使用して、引張試験を行った。
図14Cに示すように、銅板32に引張試験の治具を引っ掛けて、銅線側31を治具で挟み、図中矢印で示すように上方向に引っ張って、引張試験を行った。
接合圧力、接合温度、電流の向きを一定として、電流値を変えて接合した、それぞれの試験片について引張試験を行い、界面強度を得た。

【0055】
実験4の引張試験の結果として、電流値と界面強度の関係を、図15に示す。なお、図15には、比較対照である、電気アシストを行わないで接合させた継手の測定結果も、併記している。

【0056】
図15より、高い界面強度を得るには、電流値を適切に選択する必要があることが分かる。
また、CuとCuを接合しようとした場合は、電流を10A(約0.8V)流すことで、最も界面強度を高くできることが分かる。
従って、電気アシストによる接合法は、同種金属間であっても対応可能であることが示された。

【0057】
本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上の通り、本発明に係る金属部材の接合方法は、低温及び低変形量で金属部材を接合することを可能にするものであり、産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0059】
1 接合装置、2 加圧部、3 基板、4 セラミック板、11 真空チャンバ、12 真空ポンプ、13 ヒーター、14 窒素ガス供給部、15 電力供給部、16 制御部、17 直流電源、18 窒素ガス供給管、19 配線、20 熱電対、21 アルミニウム、22 銅、31 銅線(銅ワイヤ)、32 銅板、34 押圧治具
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図6】
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【図7】
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