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明細書 :撥液性複合部材

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-030627 (P2015-030627A)
公開日 平成27年2月16日(2015.2.16)
発明の名称または考案の名称 撥液性複合部材
国際特許分類 C04B  41/89        (2006.01)
C30B  11/00        (2006.01)
FI C04B 41/89 A
C30B 11/00 C
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2013-158888 (P2013-158888)
出願日 平成25年7月31日(2013.7.31)
発明者または考案者 【氏名】小松 隆一
【氏名】伊東 洋典
【氏名】松井 光彦
【氏名】山本 泰幸
出願人 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
審査請求 未請求
テーマコード 4G077
Fターム 4G077AA07
4G077AA08
4G077BA04
4G077CD08
4G077EG02
4G077HA20
4G077MA05
要約 【課題】基材の表面に窒化ケイ素を含む焼結体層が形成されており、シリコン融液に対する撥液性を維持しつつ、しかもその窒化ケイ素を含む焼結体層と基材の密着力が基材の材質によらず高く、高温にさらされても窒化ケイ素を含む焼結体層と基材が剥離することがなく、撥液性を永続的に持続させることのできる複合部材を提供する。
【解決手段】基材の表面に、アルミニウム系化合物の焼結体層を介して、窒化ケイ素を含む焼結体層を形成する。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
基材の表面に、アルミニウム系化合物の焼結体層を介して、窒化ケイ素を含む焼結体層が形成されていることを特徴とする複合部材。
【請求項2】
基材の形状がるつぼ状であり、少なくとも該るつぼ状の基材の内表面に、アルミニウム系化合物の焼結体層を介して、窒化ケイ素を含む焼結体層が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の複合部材。
【請求項3】
窒化ケイ素を含む焼結体層が多孔質焼結体層であって、該多孔質焼結体層の表面に、30~80%の孔占有面積割合で、平均円相当径1~25μmの大きさの孔が分散して存在することを特徴とする、請求項1または2に記載の複合部材。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は高融点材料の溶融に用いられる撥液性複合部材に関する。詳しくは、基材の表面に窒化ケイ素を含む焼結体層が形成されており、シリコン融液等の高融点材料の融液に対する撥液性に優れることに加え、窒化ケイ素を含む焼結体層と基材の密着性に優れ、更に高温でもその密着性を維持することが可能であるため、高融点材料の溶融に繰り返し使用することが可能である複合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池材料として用いられるシリコン(Si)は、太陽電池全体の85%以上の製品で使用されている。太陽電池は、地球温暖化ガスを排出しないので、地球環境にやさしい発電方式として近年需要が急速に拡大している。しかし、太陽電池による発電は、火力発電等の他の発電と比べ、発電コスト(円/W)が高く、その低減が強く求められている。
【0003】
太陽電池材料用には、一般に結晶シリコンが用いられている。結晶シリコンは、高温で加熱溶融させたシリコン融液を鋳型内に供給して凝固させることによって形成する方法、シリコン原料自体を鋳型内で溶融した後にそのまま凝固させることによって形成する方法、又はチョクラルスキー法やフローティングゾーン法によりシリコン融液から結晶成長法によって円柱又はブロック形状の結晶を形成する方法などを用いて作製されるシリコンインゴットを、所定の厚みに切断することによって得られる。また、結晶シリコンの切断ロス分をなくし製造コストを低減するために、球状結晶シリコンを平面上に並べた構造の太陽電池も提案されている。
【0004】
これらの各種結晶シリコンは、シリコンを溶融させる工程を経て製造され、溶融シリコンが接触する部材には、該部材がシリコンと融着しないこと、該部材からシリコンに不純物が混入しないこと、凝固したシリコンが部材に付着しないこと、繰り返し使用できること、高温で使用できること等の特性が求められる。
【0005】
通常、多結晶シリコンの溶融には、炭素系やシリカ系の材料からなる基材の内表面に離型層を形成したるつぼが用いられる。一般的に、離型層の構成材料としては、窒化ケイ素(Si)、炭化ケイ素(SiC)や二酸化ケイ素(SiO)等の粉末が用いられ、特に窒化ケイ素が多用されている。しかしながら、窒化ケイ素のみで離形層を構成した場合は、窒化ケイ素が脆弱であることから、離形層が破損して、鋳型にシリコン融液が接触し、鋳型にシリコンが付着して、脱型の際、シリコンにクラックが発生する問題があった。
【0006】
そこで、窒化ケイ素のみではなく、複数の構成材料を用いた離形層が提案されている。例えば、特許文献1には、窒化ケイ素と二酸化ケイ素の重量比率を変えた層を2層に塗布し、離形層を形成する方法が記載されている。しかしながら、この方法では、離型層とるつぼとの密着力が低いため、シリコン溶融・凝固後に離型層がるつぼから剥離するという問題があった。また、結晶シリコンの製造のたびごとに離型層を塗布形成する方法は、製造工程が増加して製造コストが上昇してしまうという問題がある。
【0007】
このような問題を回避する方法として、特許文献2には、球状シリコンの製造の際に、基材上に窒化ケイ素を主成分とする多孔質焼結体層を有するシリコン融液接触部材を用いる技術が開示されている。該シリコン融液接触部材はシリコン融液に対して優れた撥液性を示し、しかもシリコン融液と繰り返し接触させてもその特性が長期にわたり維持できるため、結晶の製造のたびごとに部材を再加工する手間及びコストを低減させることが可能となった。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2003-313023号公報
【特許文献2】国際公開2012/1023463号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、発明者らが詳細に検討を行ったところ、特許文献2によって開示されたシリコン融液接触部材は、基材によっては、焼結体層と基材との密着性が十分でない場合があることが分かった。また、焼結体層と基材との密着性が得られた場合でも、該シリコン融液接触部材がシリコンの溶湯に長時間触れる等、高温に曝される際には、密着性をより向上させることが必要であることが分かった。更に、基材が石英である場合においては、石英がクリストバライト化してしまい、るつぼが割れやすくなるという問題もあった。
【0010】
そこで、本発明は、基材の表面に窒化ケイ素を含む焼結体層が形成されており、シリコン融液に対する撥液性を維持しつつ、しかもその窒化ケイ素を含む焼結体層と基材の密着力が基材の材質によらず高く、高温にさらされても窒化ケイ素を含む焼結体層と基材が剥離せず、撥液性を永続的に持続させることのできる複合部材を提供することを目的とする。また、基材が石英である場合においても、石英のクリストバライト化を抑制することができる複合部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明者らは、種々検討した結果、窒化ケイ素を含む焼結体層をアルミニウム系化合物の焼結体層を介して基材表面に形成することにより、基材の材質によらず窒化ケイ素を含む焼結体層と基材との密着力をより向上させることができ、且つ基材が石英である場合においても石英のクリストバライト化を防止することができることを見出し、本発明を成した。
【0012】
本発明は、基材の表面に、アルミニウム系化合物の焼結体層を介して、窒化ケイ素を含む焼結体層が形成されていることを特徴とする複合部材である。
【0013】
本発明の複合部材は、基材の形状がるつぼ状であり、少なくとも該るつぼ状の基材の内表面に、アルミニウム系化合物の焼結体層を介して、窒化ケイ素を含む焼結体層が形成されていることが好ましい。
【0014】
また、該窒化ケイ素を含む焼結体層は多孔質焼結体層であって、該多孔質焼結体層の表面に、30~80%の孔占有面積割合で、平均円相当径1~25μmの大きさの孔が分散して存在することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上のように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0016】
本発明の複合部材は、基材の表面に窒化ケイ素を含む焼結体層が形成されており、シリコン融液等の高融点材料の融液に対する撥液性を維持しつつ、しかもその窒化ケイ素を含む焼結体層と基材の密着力が基材の材質によらず高く、高温にさらされても窒化ケイ素を含む焼結体層と基材が剥離せず、撥液性を永続的に持続させることができるため、例えば、高温条件の結晶シリコン製造工程に繰り返し使用することが可能である。また、基材が石英である場合においても、石英のクリストバライト化が発生しないため、るつぼが割れることがなく、繰り返し使用することができ、結晶シリコンの製造コストや手間を大幅に低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明はシリコン融液等の高融点材料の溶融に用いられる撥液性複合部材に関し、該撥液性複合部材は、基材の表面に、アルミニウム系化合物の焼結体層を介して、窒化ケイ素を含む焼結体層が形成されていることを特徴とする。

【0018】
(アルミニウム系化合物の焼結体層)
本発明の複合部材は、窒化ケイ素を含む焼結体層と基材の密着力向上及び石英のクリストバライト化の低減のために、窒化ケイ素を含む焼結体層が基材の表面にアルミニウム系化合物の焼結体層を介して形成されていることが必要である。アルミニウム系化合物の焼結体層がない場合、例えば基材に直接窒化ケイ素を含む焼結体層を形成した場合やアルミニウム系化合物の焼結体層以外の層を介して形成した場合には、窒化ケイ素を含む焼結体層と基材の密着力が基材の材質によらず高く、高温にさらされても窒化ケイ素を含む焼結体層と基材が剥離せず、撥液性を永続的に持続させることができ、更に基材が石英であっても、石英のクリストバライト化が発生しないという、本発明の効果を奏することができない。

【0019】
該アルミニウム系化合物の焼結体層は、アルミニウム系化合物を主成分とする。アルミニウム系化合物としては、アルミニウムを含有し、焼結性を有する化合物であれば特に制限はなく、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al)、サイアロン(SiAlON)、酸窒化アルミニウム(AlON)、ムライト(AlO1Si)等を挙げることができるが、中でも窒化アルミニウム、酸化アルミニウムが好適である。

【0020】
アルミニウム系化合物の焼結体層中のアルミニウム系化合物の割合は、窒化ケイ素を含む焼結体層と基材の密着力を高めるために、90質量%以上、特に、95質量%以上であることが好ましい。

【0021】
前記アルミニウム系化合物の焼結体層には、アルミニウム系化合物以外に、該アルミニウム系化合物の焼結を促進する目的で添加される焼結助剤成分も含むことができる。焼結助剤成分は、一般に該アルミニウム系化合物の焼結助剤として用いられる成分であれば特に制限なく使用できる。このような焼結助剤の具体例としては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等のアルカリ土類系化合物や、酸化イットリウム、酸化ホルミウム等の希土類系化合物等を例示することができる。また、特に、アルミニウム系化合物に窒化アルミニウム化合物を用いる場合は酸化イットリウムが、アルミニウム系化合物に酸化アルミニウムを用いる場合は酸化マグネシウムが好適である。

【0022】
アルミニウム系化合物の焼結体層に焼結助剤成分を含む場合、該焼結助剤成分の割合は、0.1質量%~10質量%、特に5質量%以下が好ましい。助剤成分を0.1質量%以上添加することで、アルミニウム系化合物の焼結を促進することができる。また、10質量%以下、特に5質量%以下とすれば、アルミニウム系化合物の焼結体層の強度の低下が少ない。

【0023】
該アルミニウム系化合物の焼結体層の厚みは1~200μmが好適である。厚みを上記範囲内とすると、基材に対し十分な密着性を得ることができる。

【0024】
(窒化ケイ素を含む焼結体層)
表層の窒化ケイ素を含む焼結体層は、シリコン融液等の高融点材料の融液に対する撥液性を発揮するために、窒化ケイ素を主成分とすることが必要である。窒化ケイ素の割合は、55質量%以上、特に、70質量%以上であることが好ましい。

【0025】
前記窒化ケイ素を含む焼結体層には、窒化ケイ素以外の成分を含むこともできる。窒化ケイ素以外の成分は、焼結体を構成し得るものであれば特に制限されないが、窒化ケイ素を含む焼結体層を多孔質焼結体層とした場合に焼結時の収縮を抑制して形成される孔の形状を維持する機能を有する成分が好ましく、具体的には二酸化ケイ素が好適である。かかる二酸化ケイ素は収縮抑制効果を発揮するために、2質量%以上、特に10質量%以上の割合であることが好ましい。あまり多く存在すると、前記窒化ケイ素のシリコン融液に対する撥液性を低下させるため、50質量%未満の割合であることが好ましく、特に45質量%以下、更には、30質量%以下の割合であることが好ましい。

【0026】
該窒化ケイ素を含む焼結体層の厚みは100~1000μmが好適である。厚みが100μm以上であれば、充分な撥液性を得ることができる。また、厚みをあまり厚くしても効果は頭打ちとなり、経済的でないため、その厚みは1000μm程度で十分である。

【0027】
(窒化ケイ素を含む多孔質焼結体層)
本発明の複合部材の窒化ケイ素を含む焼結体層は、その表面に30~80%の孔占有面積割合で、平均円相当径1~25μmの大きさの孔が分散して存在する多孔質焼結体層であることが撥液性の観点から好ましい。

【0028】
なお、上記多孔質焼結体層の表面において、孔の存在する面積割合(以下、孔占有面積割合)は、走査型電子顕微鏡で撮影した写真の電子データを旭化成エンジニアリング社製ソフト「A像くん」を用いて算出した。算出方法は、任意の解析対象範囲を選択して、二値化処理により孔の部分とそうでない部分に分類し、それぞれの部分の面積を当該面積中に含まれる画素数を積算した。そして孔の存在する面積を総面積(孔の存在する面積+孔の存在しない面積)で除することで孔の存在する面積割合を算出した。また、平均円相当直径も、上記画像より平均値を算出した。

【0029】
多孔質焼結体層とした本発明の複合部材の窒化ケイ素を含む焼結体層は、前記窒化ケイ素を主成分とする材質に加え、上記孔の存在との特徴によって、シリコンに対する撥液性がより向上し、結晶シリコンの繰り返しての製造が可能となる。

【0030】
この孔は、多孔質焼結体層の表面を真上から見た場合の平均円相当径が平均1~25μm、好ましくは2~15μmであることが好ましい。即ち、上記平均円相当径が1μm未満では、毛細管現象によりシリコン融液が多孔質焼結体内部にしみこみやすくなり、シリコン融液に対する撥液性が減少するので好ましくない。また、25μmを超えると、シリコン融液の自重で孔内部に融液が入りやすくなるので好ましくない。

【0031】
前記多孔質焼結体層の表面に形成される孔の「孔占有面積割合」は、30%未満の場合、多孔質焼結体層の表面とシリコン融液との接触面積が増大して十分な撥液性を発揮することが困難となる。また、80%を超える場合、シリコン融液と接触して支える面積が低減し、孔内にシリコン融液が進入しやすくなる。さらに、多孔質焼結体層の強度が著しく低下する傾向があるので好ましくない。

【0032】
多孔質焼結体層の各孔は、円形状で独立して存在しているが、一部孔が複数連結しているものも存在する。連通孔は、通常、深さ方向に形成されるが、この連通項は多孔質焼結体層の表面からアルミニウム系化合物の層まで達しないことが好ましい。連通孔がアルミニウム系化合物の焼結体層まで達しなければ、アルミニウム系化合物の焼結体層からアルミニウムが拡散する恐れが少なくなる。

【0033】
連通孔の深さ(焼結体層の表面に対し垂直方向の長さ)は、多孔質焼結体層表面におけるシリコン融液の撥液性を効果的に発揮させるために、5μm以上、特に20μm以上とすることが好ましい。即ち、かかる連通孔の深さが5μm以上であれば、シリコン融液に対する撥液性が十分となる。

【0034】
多孔質焼結体層の厚みは、この連結孔の深さを勘案して設計すればよく、100μm以上が好適である。また、厚みをあまり厚くしても効果は頭打ちとなり、経済的でないため、その厚みは1000μm程度で十分である。

【0035】
(基材)
本発明において、複合部材を構成する基材は高融点材料の溶融温度に耐えうる耐熱性を有する材質であれば特に制限されないが、石英、炭化ケイ素、窒化ケイ素等のセラミックスや黒鉛等の炭素材料が好適に使用される。

【0036】
また、基材の材質が窒化アルミニウム、酸化アルミニウム等のアルミニウム系化合物である場合においては、アルミニウム系化合物の焼結体層を介して窒化ケイ素を含む焼結体層を形成しても良いが、アルミニウム系化合物の焼結体層を介することなく窒化ケイ素を含む焼結体層を形成しても本発明同様の高い密着力を得ることができるため、わざわざアルミニウム系化合物の焼結体層を設ける必要性は低い。

【0037】
上記基材の形状は、板状、るつぼ状、筒状等任意の形状とすることができるが、高融点材料の溶融に用いる場合にはるつぼ形状が好適であり、この場合、高融点材料の溶融液が接するるつぼの内面にアルミニウム系化合物の焼結体層を介して、窒化ケイ素を含む焼結体層が形成されていることが好ましい。

【0038】
基材の表面状態は特に限定されないが、その上に形成する焼結体層との密着性や焼結体層の表面の平滑性を勘案すれば、表面粗さは、Ra値で1~10μm程度であることが好ましい。

【0039】
(複合部材の製造方法)
本発明の複合部材の製造方法は、特に制限されるものではないが、代表的な製造方法を以下に示せば、(1)基材の上に、アルミニウム系化合物粉末及び有機溶剤を含有するペーストを塗布、乾燥することによりアルミニウム系化合物の成形体層を形成し、更にその上に窒化ケイ素粉末及び有機溶剤を含有するペーストを塗布、乾燥することにより窒化ケイ素を含む成形体層を形成し、その後アルミニウム系化合物の成形体層及び窒化ケイ素を含む成形体層を同時に焼成する方法、(2)基材の上に、アルミニウム系化合物粉末及び有機溶剤を含有するペーストを塗布、乾燥することによりアルミニウム系化合物の成形体層を形成、焼成して、アルミニウム系化合物の焼結体層とし、更にその上に窒化ケイ素粉末及び有機溶剤を含有するペーストを塗布、乾燥することにより窒化ケイ素を含む成形体層を形成し、その後焼成して窒化ケイ素を含む焼結体層を形成する方法、を挙げることができる。

【0040】
1.アルミニウム系化合物の成形体層及び焼結体層の製造方法
複合部材の製造方法において、アルミニウム系化合物の焼結体層の原料となるアルミニウム系化合物の粉末には、窒化アルミニウム及び酸化アルミニウムが好適に用いられる。アルミニウム系化合物の粉末の純度、粒径、粒度分布等は、特に限定されないが、太陽電池用結晶シリコンの製造を目的とすることを勘案して、純度は、99%以上であることが
好ましい。平均粒径は、0.5~3.0μmが好ましく、かかる性状を有する市販品をそのまま使用できる。

【0041】
まず、基材上にアルミニウム系化合物の成形体層を形成するが、アルミニウム系化合物の成形体層を形成するためには、該アルミニウム系化合物の粉末を分散媒に分散させたペーストを使用することが好ましい。該アルミニウム系化合物の粉末を分散させる分散媒には、有機溶媒及び水が含まれる。使用する有機溶媒は特に限定されないが、太陽電池用結晶シリコンの製造を目的とする場合は、不純物(原子)の混入を防止するため、炭素、水素、必要に応じて酸素原子から構成される、易蒸発性の有機溶媒が好ましい。具体的には、トルエンなどの炭化水素系溶媒や、n-オクチルアルコール、エチレングリコール、テルピネオールなどのアルコール系溶媒が好適な溶媒とし例示される。上記有機溶媒の使用量は特に限定されず、後出の塗布方法に適した粘度となるように適宜決定される。

【0042】
該ペーストには、アルミニウム系化合物の焼結を促進する目的で焼結助剤を適宣配合してもよい。焼結助剤は、一般に該アルミニウム系化合物の焼結助剤として用いられる成分であれば特に制限なく使用することができ、このような焼結助剤の具体例としては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等のアルカリ土類系化合物や、酸化イットリウム、酸化ホルミウム等の希土類系化合物等を例示することができる。また、特に、アルミニウム系化合物に窒化アルミニウム化合物を用いる場合は酸化イットリウムが、アルミニウム化合物に酸化アルミニウムを用いる場合は酸化マグネシウムが好適である。

【0043】
上記助剤を使用する場合の使用量は特に限定されないが、アルミニウム系化合物と焼結助剤との合計量の0.1質量%~10質量%、特に5質量%以下の範囲であることが好ましい。助剤成分を0.1質量%以上添加することで、アルミニウム系化合物の焼結を促進することができる。また、10質量%以下、特に5質量%以下とすれば、アルミニウム系化合物の焼結体層の強度の低下が少ない。

【0044】
水や有機溶媒に溶解する樹脂は、アルミニウム系化合物の成形体層を形成する粉体の結合力をより向上するために使用する。使用する樹脂は特に限定されないが、焼成により燃焼し、消失しやすい樹脂が好ましい。具体的には、ポリビニルアルコール、水系セルロースなどの水系・アルコール系樹脂、エチルセルロース、アクリルなどの有機溶剤系樹脂が好適な樹脂として例示される。上記樹脂の使用量は特に限定されず、後出の塗布方法に適した粘度となるように適宜決定される。

【0045】
該ペーストには、アルミニウム系化合物の成形体層を形成する粉体の分散性をより均一にする目的で分散剤を適宣配合してもよい。セラミックス粒子を分散するものであれば特に制限なく使用することができ、このような分散剤の具体例としては、リン酸エステル型やスルホン酸型などの界面活性剤型分散剤や、ポリエチレングリコールなどの高分子型分散剤等を例示することができる。上記分散剤の使用量は特に限定されないが、分散剤やペーストの流動性を良好に保つために、ペースト全量に対し、3質量%以下であることが好ましい。

【0046】
該ペーストをセラミック基板などの基材表面に所定の厚みに塗布、乾燥してアルミニウム系化合物の成形体層を形成する。塗布方法は特に制限されず、刷毛を用いて塗布する方法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、ダイコート法、フローコート法、スプレー法等の方法が採用される。なお、スピンコート法のように、一度の塗布で十分な厚みが得られない場合、前記ペーストを塗布後、有機溶媒を乾燥させてから再度塗布を行う方法を繰り返すことによって、所望の厚みを有する層を形成することができる。

【0047】
アルミニウム系化合物の成形体層の膜厚は、1~300μmが好適である。厚みを上記範囲内とすると、基材に対し十分な密着性を得ることができる。

【0048】
基材上に所定の厚みの焼結体用ペーストを塗布した後、分散媒を乾燥により除去する。乾燥の条件は、分散媒の沸点以上の温度で加熱することが好ましく、具体的には、80~500℃で10分以上の加熱が好ましい。加熱時の雰囲気も特に制限されないが、アルミニウム系化合物の酸化を防止する目的で、窒素もしくはアルゴンの気流や滞留中の雰囲気中で加熱することが好ましい。

【0049】
前記溶媒の乾燥による除去の後に、同一の装置内で、雰囲気ガスや温度を変えて連続的に焼成を行ってもよいし、別々の装置において焼成を行ってもよい。また、この段階では焼成を行わず、乾燥のみとし、後述の窒化ケイ素を含む成形体層を作製する工程を経た後に、窒化ケイ素を含む成形体層を焼成する工程で同時に焼成してもよい。

【0050】
焼成条件は特に制限されないが、アルミニウム化合物層を後述の窒化ケイ素を含む成形体層と別に焼成する場合は、1000℃~1800℃の温度範囲で1時間以上焼成することが好ましい。加熱時の雰囲気も特に制限されないが、アルミニウム系化合物の酸化を防止する目的で、窒素もしくはアルゴンの気流や滞留中の雰囲気中で加熱することが好ましい。

【0051】
2.窒化ケイ素を含む焼結体層の作製方法
次いで、アルミニウム系化合物を含む成形体層、または焼結体層が形成された基材の上に窒化ケイ素を含む成形体層を作製する。原料となる窒化ケイ素粉末の純度、粒径、粒度分布等は、特に限定されないが、太陽電池用結晶シリコンの製造を目的とすることを勘案して、純度は97%以上、特に98%以上であることが好ましい。平均粒径は、0.1~5.0μmが好ましく、かかる性状を有する市販品をそのまま使用できる。

【0052】
窒化ケイ素を含む成形体層を形成するためには、該窒化ケイ素粉末を主成分とする焼結性粉末を分散媒に分散させたペーストを使用することが好ましい。

【0053】
焼結性粉末中の窒化ケイ素粉末の割合は、主成分である限り、即ち、50質量%を超えれば効果を発揮するが、シリコン融液に対してより優れた撥液性を発揮する焼結体層を形成するためには、55質量%以上、特に、70質量%以上であることが好ましい。

【0054】
一方、焼結性粉末には窒化ケイ素粉末以外の成分を含むこともできる。窒化ケイ素粉末以外の成分は、焼結性を有する粉体であれば特に制限されないが、窒化ケイ素を含む焼結体層を多孔質焼結体層とする場合に焼結を促進して焼結時の収縮を抑制する作用を有する成分が好ましく、具体的には、二酸化ケイ素粉末が好適である。即ち、二酸化ケイ素粉末を含有するペーストを用いて後述の多孔質焼結体層を形成しようとした場合、後述する熱分解性樹脂粒子が除去された後の焼結において、収縮が抑制され、安定して孔を形成することができるので、好ましい。

【0055】
従って、かかる二酸化ケイ素粉末は、焼結時の収縮抑制効果を発揮するために、2質量%以上、特に、10質量%以上の割合で使用することが好ましい。しかし、あまり多く存在すると、前記窒化ケイ素によるシリコン融液に対する撥液性を低下させるため、50質量%未満の割合であることが好ましく、特に、45質量%以下、更には、30質量%以下の割合であることが好ましい。

【0056】
上記二酸化ケイ素粉末の純度は、99.99%以上であることが好ましい。平均粒径は0.05~5μm、好ましくは0.2~2μmが良く、かかる性状を有する市販品をそのまま使用できる。

【0057】
該窒化ケイ素粉末を主成分とする焼結性粉末を分散させる分散媒には、有機溶媒及び水が含まれる。使用する有機溶媒は特に限定されないが、太陽電池用結晶シリコンの製造を目的とする場合は、不純物(原子)の混入を防止するため、炭素、水素、必要に応じて酸素原子から構成される、易蒸発性の有機溶媒が好ましく、上記に列挙した、アルミニウム系化合物の成形体層を作製する場合に用いるペーストと同様の溶媒を用いることができる。上記有機溶媒の使用量は特に限定されず、後出の塗布方法に適した粘度となるように適宜決定される。

【0058】
樹脂や分散剤についても、アルミニウム系化合物の成形体層を作製する場合に用いる樹脂や分散剤と同様のものを用いることができる。

【0059】
窒化ケイ素を含む焼結体層を多孔質焼結体層とする場合には、上記焼結性粉末を有機溶媒に分散させたペーストに熱分解性樹脂粒子を配合することが好ましい。

【0060】
熱分解性樹脂粒子は、後述する熱分解や焼結工程を経て前記所定の孔を生成する働きをなす成分である。即ち、熱分解性樹脂粒子の粒子径が、焼結後の多孔質焼結体層における孔の直径に、また、配合量が前記孔占有面積割合に反映される。そのため、熱分解性樹脂粒子として、平均粒径が1~25μm、好ましくは3~20μmの樹脂粒子を使用し、焼結性粉末100容量部に対して、前記表面基準面積当たりの孔の総面積の比率が所定の値となるように、40~400容量部配合することが好ましい。

【0061】
前記粒子を構成する熱分解性樹脂としては、所定の温度で熱分解する樹脂であれば特に制限はないが、熱分解および焼結後に多孔質焼結体層に残存して、その後、製造する結晶シリコン中に混入して汚染することは好ましくない。また、熱分解性樹脂粒子は、比重が、焼結性粉末の比重と同等かそれより小さいことが、前記ペーストを塗布した際にその表面に確実に存在せしめることができ、好ましい。

【0062】
従って、熱分解性樹脂としては、ポリオレフィンやポリスチレン等の炭化水素系樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド縮合物、アクリレート系樹脂が好ましい。特に、焼結後に樹脂由来のカーボンの残存が少ないアクリレート系樹脂やポリスチレン系樹脂が好ましい。

【0063】
このようなアクリレート系樹脂としては、架橋ポリメタクリル酸メチルの真球状粒子(積水化成品工業株式会社製「MBXシリーズ」)、架橋ポリメタクリル酸ブチルの真球状粒子(積水化成品工業株式会社製「BMXシリーズ」)、メタクリル系樹脂の粒子(積水化成品工業株式会社製「テクポリマーIBM-2」)、架橋ポリアクリル酸エステルの真球状粒子(積水化成品工業株式会社製「ARXシリーズ」)、架橋ポリメタクリル酸メチルの真球状粒子(積水化成品工業株式会社製「SSX(単分散)シリーズ」)等、また、ポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン系架橋ポリスチレンの真球状粒子(積水化成品工業株式会社製「SBXシリーズ」)等様々な粒径や粒度分布のものが市販されているので、本発明の目的に応じて使用すればよい。

【0064】
焼結性粉末を有機溶媒に分散させたペーストには、上記各成分に加えて、例えば、酸化マグネシウム、酸化イットリウムなどの焼結助剤、ペーストの分散安定を目的とする分散剤等の添加剤を適宜配合しても良い。

【0065】
焼結性粉末、必要に応じて配合される熱分解性樹脂粒子、添加剤や有機溶媒の混合順序やその方法は特に限定されない。

【0066】
焼結性粉末を有機溶媒に分散させたペーストを、アルミニウム系化合物の成形体層、または焼結体層が形成された基材の上に焼結後に窒化ケイ素を含む焼結体層が所望の厚みとなるように、所定の厚みに塗布する。塗布方法は特に制限されず、上記に列挙した、アルミニウム系化合物の成形体層の作製と同様の方法を用いることができる。

【0067】
基材上に所定の厚みの焼結体用ペーストを塗布した後、有機溶媒を乾燥により除去し、窒化ケイ素を含む成形体層を作製する。乾燥の条件は、有機溶媒の沸点以上の温度で加熱することが好ましい。

【0068】
前記溶媒の乾燥による除去の後に、同一の装置内で、雰囲気ガスや温度を変えて連続的に焼成を行ってもよいし、別々の装置において焼成を行ってもよい。

【0069】
また、窒化ケイ素を含む焼結体層を多孔質焼結体層とするために熱分解性樹脂粒子を配合した場合には、有機溶媒を乾燥により除去した後に、熱分解性樹脂粒子を熱分解して消失せしめる操作を行う。該操作は、焼結のための焼成の過程に行ってもよい。焼結を行う前に、熱分解性粒子の熱分解温度より50~300℃高い温度で焼成して、熱分解性樹脂粒子を熱分解して消失せしめることが好ましい。熱分解時における雰囲気は、熱分解性樹脂粒子が分解可能な雰囲気が特に制限なく実施される。一般には、分解によって生成したカーボンを効果的に除去するため、酸素の存在下、通常は、空気中で実施することが好ましい。

【0070】
窒化ケイ素を含む成形体層は、1100~1700℃、好ましくは1100~1550℃、特に好ましくは、1400~1530℃で加熱して焼結せしめることにより、目的とする窒化ケイ素を含む焼結体層となる。当該焼成温度を採用することにより、得られる焼結体層における変形や割れの発生を減少することができる。焼結時の雰囲気は、不活性雰囲気下、例えば、窒素ガス等の雰囲気下で行うことが好ましい。焼結時間は、1時間以上、好ましくは、2時間以上行う。あまり長時間行うと、表面に形成された孔が小さくなったり潰れたりする虞があるため、30時間以下とすることが好ましい。

【0071】
本発明の複合部材は、シリコンの融液を扱う容器、例えば、シリコン溶融用るつぼ、インゴット製造用のキャスト用容器の構成部材として有用である。かかる用途においては、窒化ケイ素を含む焼結体層が少なくとも内表面となるように容器を構成することが好ましい。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
【実施例】
【0073】
(評価方法)
(1)窒化ケイ素を含む焼結体層の割れ観察
実施例および比較例のるつぼの作製後、窒化ケイ素を含む焼結体層に割れが生じたか否かを、目視によって確認した。割れが確認されなかった場合は○、確認された場合は×として評価した。
【実施例】
【0074】
(2)シリコンの溶解後の窒化ケイ素を含む焼結体層の剥離観察
実施例および比較例のるつぼの中に50gの高純度シリコンを入れ、抵抗式加熱炉で1470℃まで昇温した。3時間で昇温し、その後、1470℃で1時間保持してシリコンを溶解した。シリコンを溶解した後、るつぼをその底側から0.5mm/分の速度で加熱帯から大気中に引き出し、シリコンを凝固した。
【実施例】
【0075】
凝固したシリコンをるつぼから取り出し、窒化ケイ素を含む焼結体層の剥離の有無を、目視によって確認した。剥離がなかった場合は○、残存した層のるつぼ内面に対する割合が50%より多かった場合は△、50%以下の場合は×として評価した。
【実施例】
【0076】
(3)シリコン溶解後のクリストバライト化(失透)領域の長さ測定
実施例および比較例のシリコンを溶解・凝固させた後のるつぼの中央部を、るつぼ底面に対して垂直に切断した。次に、その断面のアルミニウム系化合物の焼結体/るつぼ界面からるつぼ内に向かって失透した領域の長さを、SEMによって計測した。なお、この現象は石英に特有(クリストバライト化)のものであるため、石英るつぼを用いた時のみ評価した。
【実施例】
【0077】
<実施例1>
(窒化アルミニウム成形体層の形成)
純度99%、平均粒径1.0μmの窒化アルミニウムを53質量%、酸化イットリウムを1質量%、エチルセルロースを20質量%、テルピネオールを25質量%、リン酸エステル型界面活性剤(第一工業製薬株式会社製、商品名「プライサーフ」)を1質量%となるように秤量し、撹拌脱泡装置(クラボウ製、商品名「マゼルスター」)によって10分間混合し、ペーストとした。
【実施例】
【0078】
このようにして作製したペーストを、外径Φ50mm×内径Φ40mm×高さ40mm(容量40ml)の黒鉛製るつぼの内側全面に、その厚さが50~100μmになるように刷毛を用いて塗布した。このるつぼを300℃に保持した電気炉で10分間乾燥し、窒化アルミニウム成形体層を形成した。
(窒化ケイ素を含む焼結体層の形成)
純度98%、平均粒径1.0μmの窒化ケイ素粉末を30質量%、純度99.99%、平均粒径1.0μmの非晶質二酸化ケイ素粉末を9質量%、平均粒径5μmの熱分解性樹脂粒子(積水化成工業株式会社製、テクポリマー「SSX-105」;架橋ポリメタクリル酸メチル)を36質量%、エチルセルロースを8質量%、テルピネオールを16質量%、リン酸エステル型界面活性剤(第一工業製薬株式会社製、商品名「プライサーフ」)を1質量%となるように秤量し、撹拌脱泡装置(クラボウ製、商品名「マゼルスター」)によって10分間混合し、ペーストとした。
【実施例】
【0079】
このようにして作製したペーストを、上記のように黒鉛製るつぼに形成された窒化アルミニウムの成形層の上部に、その厚さが500μmになるように刷毛を用いて塗布した。
【実施例】
【0080】
このるつぼを、300℃に保持した電気炉で10分間乾燥した。
【実施例】
【0081】
次に、このるつぼを高温電気炉に入れ、0.1リットル/分の窒素気流中で昇温速度200℃/時によって1500℃まで加熱した。1500℃で1時間加熱保持した後、降温速度150℃/時で室温まで冷却した。作製されたるつぼには、その表面に、60%の孔占有面積割合で、平均円相当径5μmの大きさの孔が存在することが確認された。このるつぼを上記(1)、(2)の方法で評価した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0082】
作製後のるつぼの窒化ケイ素を含む焼結体層に割れは見られなかった。シリコンの溶解・凝固後も、シリコンはるつぼに融着せず、窒化ケイ素を含む焼結体層に剥離は全くなかった。このるつぼを、評価(2)の条件で再度シリコンの溶融・凝固に用いたが、2度目の使用後も、窒化ケイ素を含む焼結体層に剥離は見られなかった。更に、このるつぼを、評価(2)の条件で計5回のシリコンの溶解・凝固に繰り返し用いたが、窒化ケイ素を含む焼結体層の剥離は全く見られなかった。
【実施例】
【0083】
<実施例2>
るつぼの材質を黒鉛から石英に変更する以外は、実施例1と同様にるつぼを作製した。作製されたるつぼにはその表面に、60%の孔占有面積割合で、平均円相当径5μmの大きさの孔が存在することが確認された。このるつぼを上記(1)~(3)の方法で評価した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0084】
作製後のるつぼの窒化ケイ素を含む焼結体層に割れは見られなかった。シリコンの溶解・凝固後も、シリコンはるつぼに融着せず、窒化ケイ素を含む焼結体層に剥離は全くなく、石英のクリストバライト化も確認されなかった。このるつぼを、評価(2)の条件で再度シリコンの溶融・凝固に用いたが、2度目の使用後も、窒化ケイ素を含む焼結体層に剥離は見られなかった。
【実施例】
【0085】
<実施例3>
るつぼの材質を黒鉛から炭化ケイ素に変更する以外は、実施例1と同様にるつぼを作製した。作製されたるつぼにはその表面に、60%の孔占有面積割合で、平均円相当径5μmの大きさの孔が存在することが確認された。このるつぼを上記(1)、(2)の方法で評価した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0086】
作製後のるつぼの窒化ケイ素を含む焼結体層に割れは見られなかった。シリコンの溶解・凝固後も、シリコンはるつぼに融着せず、窒化ケイ素を含む焼結体層に剥離は全くなかった。このるつぼを、評価(2)の条件で再度シリコンの溶融・凝固に用いたが、2度目の使用後も、窒化ケイ素を含む焼結体層に剥離は見られなかった。
【実施例】
【0087】
<実施例4>
(窒化アルミニウム焼結体層の形成)
純度99%、平均粒径1.0μmの窒化アルミニウムを53質量%、酸化イットリウムを1質量%、エチルセルロースを20質量%、テルピネオールを25質量%、界面活性剤(第一工業製薬株式会社製、商品名「プライサーフ」)を1質量%となるように秤量し、撹拌脱泡装置(クラボウ製、商品名「マゼルスター」)によって10分間混合し、ペーストとした。
【実施例】
【0088】
このようにして作製したペーストを、外径Φ50mm×内径Φ40mm×高さ40mm(容量40ml)の黒鉛製るつぼの内側面および底面の全面に、その厚さが50~100μmになるように硬質の刷毛を用いて塗布した。
【実施例】
【0089】
このるつぼを300℃に保持した電気炉で10分間乾燥した。次に、このるつぼを高温電気炉に入れ、0.1リットル/分の窒素気流中で昇温速度200℃/時によって1700℃まで加熱した。1700℃で1時間加熱保持した後、降温速度150℃/時で室温まで冷却した。
【実施例】
【0090】
(窒化ケイ素を含む焼結体層の形成)
上記のように黒鉛製るつぼに形成された窒化アルミニウム焼結体層の上部に、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素を含む焼結体層を形成した。
【実施例】
【0091】
このるつぼを上記(1)、(2)の方法で評価した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0092】
作製後のるつぼの窒化ケイ素を含む焼結体層に割れは見られなかった。シリコンの溶解・凝固後も、シリコンはるつぼに融着せず、窒化ケイ素を含む焼結体層に剥離は全くなかった。このるつぼを、評価(2)の条件で再度シリコンの溶融・凝固に用いたが、2度目の使用後も、窒化ケイ素を含む焼結体層に剥離は見られなかった。更に、このるつぼを、評価(2)の条件で計5回のシリコンの溶解・凝固に繰り返し用いたが、窒化ケイ素を含む焼結体層の剥離は全く見られなかった。
【実施例】
【0093】
<実施例5>
るつぼの材質を黒鉛から石英に変更する以外は、実施例4と同様にるつぼを作製した。
【実施例】
【0094】
このるつぼを上記(1)~(3)の方法で評価した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0095】
作製後のるつぼの窒化ケイ素を含む焼結体層に割れは見られなかった。シリコンの溶解・凝固後も、シリコンはるつぼに融着せず、窒化ケイ素を含む焼結体層に剥離は全くなく、石英のクリストバライト化も確認されなかった。このるつぼを、評価(2)の条件で再度シリコンの溶融・凝固に用いたが、2度目の使用後も、窒化ケイ素を含む焼結体層に剥離は見られなかった。
【実施例】
【0096】
<実施例6>
るつぼの材質を黒鉛から炭化ケイ素に変更する以外は、実施例4と同様にるつぼを作製した。
【実施例】
【0097】
このるつぼを上記(1)、(2)の方法で評価した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0098】
作製後のるつぼの窒化ケイ素を含む焼結体層に割れは見られなかった。シリコンの溶解・凝固後も、シリコンはるつぼに融着せず、窒化ケイ素を含む焼結体層に剥離は全くなかった。このるつぼを、評価(2)の条件で再度シリコンの溶融・凝固に用いたが、2度目の使用後も、窒化ケイ素を含む焼結体層に剥離は見られなかった。
【実施例】
【0099】
<実施例7>
(酸化アルミニウム焼結体層の形成)
純度99%、平均粒径1.0μmの酸化アルミニウムを54質量%、エチルセルロースを20質量%、テルピネオールを25質量%、界面活性剤(第一工業製薬株式会社製、商品名「プライサーフ」)を1質量%となるように秤量し、撹拌脱泡装置(クラボウ製、商品名「マゼルスター」)によって10分間混合し、ペーストとした。
【実施例】
【0100】
このようにして作製したペーストを、外径Φ50mm×内径Φ40mm×高さ40mm(容量40ml)の黒鉛製るつぼの内側面および底面の全面に、その厚さが50~100μmになるように硬質の刷毛を用いて塗布した。
【実施例】
【0101】
このるつぼを300℃に保持した電気炉で10分間乾燥した。次に、このるつぼを高温電気炉に入れ、0.1リットル/分の窒素気流中で昇温速度200℃/時によって1500℃まで加熱した。1500℃で1時間加熱保持した後、降温速度150℃/時で室温まで冷却した。
【実施例】
【0102】
(窒化ケイ素を含む焼結体層の形成)
上記のように黒鉛製るつぼに形成された酸化アルミニウム焼結体層の上部に、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素を含む焼結体層を形成した。
【実施例】
【0103】
このるつぼを上記(1)、(2)の方法で評価した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0104】
作製後のるつぼの窒化ケイ素を含む焼結体層に割れは見られなかった。シリコンの溶解・凝固後も、シリコンはるつぼに融着せず、窒化ケイ素を含む焼結体層に剥離は全くなかった。このるつぼを、評価(2)の条件で再度シリコンの溶融・凝固に用いたが、2度目の使用後も、窒化ケイ素を含む焼結体層に剥離は見られなかった。
【実施例】
【0105】
<実施例8>
るつぼの材質を黒鉛から石英に変更する以外は、実施例7と同様にるつぼを作製した。このるつぼを上記(1)~(3)の方法で評価した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0106】
作製後のるつぼの窒化ケイ素を含む焼結体層に割れは見られなかった。シリコンの溶解・凝固後も、シリコンはるつぼに融着せず、窒化ケイ素を含む焼結体層に剥離は全くなく、石英のクリストバライト化も確認されなかった。このるつぼを、評価(2)の条件で再度シリコンの溶融・凝固に用いたが、2度目の使用後も、窒化ケイ素を含む焼結体層に剥離は見られなかった。
【実施例】
【0107】
<実施例9>
るつぼの材質を黒鉛から炭化ケイ素に変更する以外は、実施例7と同様にるつぼを作製した。
【実施例】
【0108】
このるつぼを上記(1)、(2)の方法で評価した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0109】
作製後のるつぼの窒化ケイ素を含む焼結体層に割れは見られなかった。シリコンの溶解・凝固後も、シリコンはるつぼに融着せず、窒化ケイ素を含む焼結体層に剥離は全くなかった。このるつぼを、評価(2)の条件で再度シリコンの溶融・凝固に用いたが、2度目の使用後も、窒化ケイ素を含む焼結体層に剥離は見られなかった。
【実施例】
【0110】
<比較例1>
アルミニウム系化合物層を形成せず、窒化ケイ素を含む焼結体層を黒鉛製るつぼに直に形成する以外は、実施例1と同様にるつぼを作製した。このるつぼを上記(1)、(2)の方法で評価した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0111】
作製後のるつぼの窒化ケイ素を含む焼結体層には多数の割れが観察された。溶融したシリコンを黒鉛製るつぼから取り出すことはできたが、窒化ケイ素を含む焼結体層のほとんどが剥離したため、るつぼの再利用は不可能であった。
【実施例】
【0112】
<比較例2>
るつぼの材質を黒鉛から石英に変更する以外は、比較例1と同様にるつぼを作製した。このるつぼを上記(1)~(3)の方法で評価した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0113】
作製後のるつぼの窒化ケイ素を含む焼結体層に割れは見られなかった。溶融したシリコンを石英るつぼから取り出すことはできたが、窒化ケイ素を含む焼結体層のほとんどが剥離したため、るつぼの再利用は不可能であった。るつぼ側壁断面のほぼ半分がクリストバライト化しており、ひび割れも発生していた。
【実施例】
【0114】
<比較例3>
るつぼの材質を黒鉛から炭化ケイ素に変更する以外は、比較例1と同様にるつぼを作製した。このるつぼを上記(1)、(2)の方法で評価した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0115】
作製後のるつぼの窒化ケイ素を含む焼結体層に割れは見られなかった。溶融したシリコンをるつぼから取り出すことはできたが、窒化ケイ素を含む焼結体層のほとんどが剥離したため、るつぼの再利用は不可能であった。
【実施例】
【0116】
<比較例4>
(二酸化ケイ素焼結体層の形成)
純度99.99%、平均粒径1.0μmの非晶質二酸化ケイ素粉末を54質量%、エチルセルロースを20質量%、テルピネオールを25質量%、界面活性剤(第一工業製薬株式会社製、商品名「プライサーフ」)を1質量%となるように秤量し、撹拌脱泡装置(クラボウ製、商品名「マゼルスター」)によって10分間混合し、ペーストとした。
このようにして作製したペーストを、外径Φ50mm×内径Φ40mm×高さ40mm(容量40ml)の黒鉛製るつぼの内側面および底面の全面に、その厚さが50~100μmになるように硬質の刷毛を用いて塗布した。このるつぼを300℃に保持した電気炉で10分間乾燥した。次に、このるつぼを高温電気炉に入れ、0.1リットル/分の窒素気流中で昇温速度200℃/時によって1200℃まで加熱した。1200℃で1時間加熱保持した後、降温速度150℃/時で室温まで冷却した。
【実施例】
【0117】
(窒化ケイ素を含む焼結体層の形成)
二酸化ケイ素焼結体層の上部に、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素を含む焼結体層を形成した。
【実施例】
【0118】
このるつぼを上記(1)、(2)の方法で評価した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0119】
作製後のるつぼの窒化ケイ素を含む焼結体層に多数の割れが観察された。溶融したシリコンを黒鉛製るつぼから取り出すことはできたが、窒化ケイ素を含む焼結体層のほとんどが剥離したため、るつぼの再利用は不可能であった。
【実施例】
【0120】
<比較例5>
るつぼの材質を黒鉛から石英に変更する以外は、比較例4と同様にるつぼを作製した。このるつぼを上記(1)~(3)の方法で評価した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0121】
作製後のるつぼの窒化ケイ素を含む焼結体層に多数の割れが観察された。溶融したシリコンを石英製るつぼから取り出すことはできたが、窒化ケイ素を含む焼結体層のほとんどが剥離したため、るつぼの再利用は不可能であった。るつぼ側壁断面のほぼ半分がクリストバライト化しており、ひび割れも発生していた。
【実施例】
【0122】
<比較例6>
るつぼの材質を黒鉛から炭化ケイ素に変更する以外は、比較例4と同様にるつぼを作製した。このるつぼを上記(1)、(2)の方法で評価した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0123】
作製後のるつぼの窒化ケイ素を含む焼結体層に多数の割れが観察された。溶融したシリコンを炭化ケイ素製るつぼから取り出すことはできたが、窒化ケイ素を含む焼結体層のほとんどが剥離したため、るつぼの再利用は不可能であった。

【実施例】
【0124】
【表1】
JP2015030627A_000002t.gif