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明細書 :組成物、リチウム2次電池用セパレータ、リチウム2次電池用固体電解質、及びポリエチレン製品

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-061900 (P2015-061900A)
公開日 平成27年4月2日(2015.4.2)
発明の名称または考案の名称 組成物、リチウム2次電池用セパレータ、リチウム2次電池用固体電解質、及びポリエチレン製品
国際特許分類 C08F 265/06        (2006.01)
H01M   2/16        (2006.01)
H01M  10/0565      (2010.01)
C08J   7/04        (2006.01)
FI C08F 265/06
H01M 2/16 P
H01M 10/0565
C08J 7/04 CEYT
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2014-154056 (P2014-154056)
出願日 平成26年7月29日(2014.7.29)
優先権出願番号 2013169541
優先日 平成25年8月19日(2013.8.19)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】八尾 滋
【氏名】佐野 祐介
【氏名】中野 涼子
【氏名】杉 真太郎
出願人 【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000578、【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
審査請求 未請求
テーマコード 4F006
4J026
5H021
5H029
Fターム 4F006AA12
4F006AB24
4F006BA01
4F006BA10
4F006CA08
4F006DA04
4J026HA11
4J026HA22
4J026HA32
4J026HA38
4J026HB11
4J026HB22
4J026HB32
4J026HB38
4J026HE01
5H021EE01
5H021EE04
5H021EE15
5H021EE23
5H021EE30
5H021EE31
5H029AJ06
5H029AM16
5H029CJ22
5H029DJ04
5H029DJ13
5H029EJ13
5H029EJ14
要約 【課題】ポリエチレンが有する特徴に起因する課題を解決できる組成物、リチウム2次電池用セパレータ、リチウム2次電池用固体電解質、及びポリエチレン製品を提供すること。
【解決手段】アルカン鎖の側鎖を有する第1のモノマーと、(a)ポリオキシエチレン構造の側鎖又は(b)3級アミン構造を持つ置換基を有する第2のモノマーとを含むブロック共重合体を含む、ポリエチレンの表面に吸着させることを用途とする組成物。ポリエチレン多孔質膜と、前記ポリエチレン多孔質膜に充填された前記組成物と、前記ポリエチレン多孔質膜に担持されたリチウムイオンと、を有することを特徴とするリチウム2次電池用セパレータ。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
アルカン鎖の側鎖を有する第1のモノマーと、(a)ポリオキシエチレン構造の側鎖又は(b)3級アミン構造を持つ置換基を有する第2のモノマーとを含むブロック共重合体を含む、ポリエチレンの表面に吸着させることを用途とする組成物。
【請求項2】
前記第1のモノマーが、ベヘニルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウロイルアクリレートから成る群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第2のモノマーが、ジ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコール‐モノアクリレート、メトキシ‐ポリエチレングリコール‐アクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレート、N、N-ジメチルアクリルアミド、N、N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N、N-ジエチルアクリルアミド、及び側鎖部位に極性基を持つメタクリレート又はアクリレートから成る群から選択される1以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ポリエチレン多孔質膜と、
前記ポリエチレン多孔質膜に充填された請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物と、
前記ポリエチレン多孔質膜に担持されたリチウムイオンと、
を有することを特徴とするリチウム2次電池用セパレータ。
【請求項5】
ポリエチレン多孔質膜と、
前記ポリエチレン多孔質膜に充填された請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物と、
前記ポリエチレン多孔質膜に担持されたリチウムイオンと、
を有することを特徴とするリチウム2次電池用固体電解質。
【請求項6】
ポリエチレンから成る基材と、
前記基材の表面における少なくとも一部を修飾する請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物と、
を備えるポリエチレン製品。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンの表面に吸着させることを用途とする組成物、リチウム2次電池用セパレータ、リチウム2次電池用固体電解質、及びポリエチレン製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンは広く利用されている高分子材料であり、高結晶性で、耐溶媒性に優れる等の特徴を有している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2012-144723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、ポリエチレンは、上記の特徴のため、用途によっては、そのままでは使用しにくい場合がある。本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、上記の課題を解決できる組成物、リチウム2次電池用セパレータ、リチウム2次電池用固体電解質、及びポリエチレン製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の組成物は、アルカン鎖の側鎖を有する第1のモノマーと、(a)ポリオキシエチレン構造の側鎖又は(b)3級アミン構造を持つ置換基を有する第2のモノマーとを含むブロック共重合体を含み、ポリエチレンの表面に吸着させることを用途とする。
【0006】
本発明の組成物は、例えば、ポリエチレン多孔質膜に充填し、リチウム2次電池用セパレータを製造する用途に用いることができる。このリチウム2次電池用セパレータは高い伝導度を有する。また、このリチウム2次電池用セパレータは、リチウム2次電池が熱暴走を起こす温度域に達する前に伝導度を低下させる(リチウム2次電池自体が自己制御を行うインテリジェント効果を奏する)ことができる。
【0007】
さらに、このリチウム2次電池用セパレータは、昇温により一旦伝導度が低下しても、その後、温度を低下させれば、再び高い伝導度を有するようになる。
また、本発明の組成物は、例えば、ポリエチレン多孔質膜に充填し、リチウム2次電池用固体電解質を製造する用途に用いることができる。このリチウム2次電池用固体電解質は高い伝導度を有する。また、このリチウム2次電池用固体電解質は、リチウム2次電池が熱暴走を起こす温度域に達する前に伝導度を低下させる(リチウム2次電池自体が自己制御を行うインテリジェント効果を奏する)ことができる。
【0008】
また、本発明の組成物は、例えば、ポリエチレンから成る基材における少なくとも一部の表面を修飾し、ポリエチレン製品を製造する用途に用いることができる。このポリエチレン製品は、エポキシ樹脂系の接着剤又は他の一般的な接着剤(例えばアロンアルファ(登録商標)等)により強固に接着できる。また、このポリエチレン製品は、エポキシ樹脂系の接着剤又は他の一般的な接着剤により接着した後、加温すれば、容易に接着面を剥離させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】組成物S3の構造を表す説明図である。
【図2】図2Aは試験片1を表す平面図であり、図2Bは2つの試験片を接着した状態を表す説明図である。
【図3】組成物S4の構造を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を説明する。本発明の組成物は、第1のモノマーと、第2のモノマーとを含むブロック共重合体を含む。第1のモノマーは、主鎖と、アルカン鎖の側鎖とを有する。第1のモノマーの側鎖は、炭素数が10以上である長さを有することが好ましい。この場合、ポリエチレン表面に対する吸着強度が一層向上し、転移温度が一層高くなる。

【0011】
第1のモノマーにおける主鎖の構造は特に限定されない。第1のモノマーは、例えば、ビニル系のモノマーとすることができる。この場合、リビング重合によりブロック共重合体を生成できる。

【0012】
第1のモノマーとしては、例えば、以下のものが挙げられる。ベヘニルアクリレート(CH2=CH(CO)O(CH2)21CH3)、ステアリルアクリレート(CH2=CH(CO)O(CH2)17CH3)、ラウロイルアクリレート(CH2=CH(CO)O(CH2)11CH3)。

【0013】
第2のモノマーは、主鎖と、ポリオキシエチレン構造の側鎖とを有するものであってもよいし、主鎖と、3級アミン構造を持つ置換基とを有するものであってもよい。
ポリオキシエチレン構造とは、「-(CH2-CH2-O-)n-」で表される構造であって、nの値は2以上である。3級アミン構造を持つ置換基とは、「-N(R1)(R2)」で表される構造を持つ置換基であって、R1及びR2は、それぞれ独立に、H又は炭化水素である。この炭化水素における炭素数は、例えば、1~3とすることができる。

【0014】
第2のモノマーにおける主鎖の構造は特に限定されない。第2のモノマーは、例えば、ビニル系のモノマーとすることができる。この場合、リビング重合によりブロック共重合体を生成できる。

【0015】
第2のモノマーのうち、主鎖と、ポリオキシエチレン構造の側鎖とを有するものとしては、例えば、以下のものが挙げられる。ジ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート(CH2=CH(CO)O(CH2-CH2-O-)2C2H5)、ポリエチレングリコール‐モノアクリレート(CH2=CH(CO)O(CH2-CH2-O-)nH)(n=2~10)、メトキシ‐ポリエチレングリコール‐アクリレート(CH2=CH(CO)O(CH2-CH2-O-)nCH3)(n=2~9)、及び側鎖部位にアミド基や水酸基などの極性基を持つメタクリレートあるいはアクリレートから成る群から選択される1以上。

【0016】
また、第2モノマーのうち、主鎖と、3級アミン構造を持つ置換基とを有するものとしては、例えば、以下のものが挙げられる。2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(2-(Dimethylamino) ethyl Methacrylate、DMAEMA)、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート(2-(Diethylamino) ethyl Methacrylate、DEAEMA)、2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレート(2-(tert- Butylamino) ethyl Methacrylate、TBAEMA)、N、N-ジメチルアクリルアミド(N、N-Dimethylacrylamide、DMAA)、N、N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(N、N-Dimethylaminopropyl Acrylamide、DMAPAA)、及びN、N-ジエチルアクリルアミド(N、N-Diethylacrylamide、DEAA)から成る群から選択される1以上。

【0017】
ブロック共重合体において、第1のモノマーに対応する分子量と、第2のモノマーに対応する分子量とが、それぞれ500以上(好ましくは1000以上)であることが好ましい。第1のモノマーに対応する分子量が500以上であると、ポリエチレンに対する接着性に優れる。また、第2のモノマーに対応する分子量が500以上であると、ポリエチレンの表面を任意の特性を持つように修飾できる。ブロック共重合体は、第1のモノマー及び第2のモノマーから成るものであってもよいし、さらにその他のモノマーを含んでいてもよい。

【0018】
本発明の組成物をポリエチレンの表面に吸着させれば、そのポリエチレンの表面を親水性にすることができる。また、本発明の組成物をポリエチレンの表面に吸着させれば、そのポリエチレンを接着剤で接着したときの接着強度を高めることができる。

【0019】
本発明のリチウム2次電池用セパレータ及び本発明のリチウム2次電池用固体電解質は、ポリエチレン多孔質膜と、ポリエチレン多孔質膜に充填された、前記の組成物と、ポリエチレン多孔質膜に担持されたリチウムイオンとを有する。前記の組成物は、例えば、ポリエチレン多孔質膜における細孔内に吸着させることができる。

【0020】
ポリエチレン多孔質膜としては、例えば、リチウム2次電池用セパレータとして利用されている公知のものを広く用いることができる。その一例として、Mykrolis(登録商標)UPE(pore size is 0.1 μm、0.01μm)(NIHON ENTEGRIS KK YONEZAWA, JAPAN)が挙げられる。ポリエチレン多孔質膜は、0.01μm以上の平均孔径を有することが好ましい。この場合、リチウムイオンの伝導性の点で優れる。

【0021】
組成物をポリエチレン多孔質膜に充填する方法としては、例えば、ホットプレート等で組成物をその融点以上に加熱し、溶融した組成物を、重力により、又はプレスにより、ポリエチレン多孔質膜に充填する方法がある。また、別の方法としては、組成物を溶媒に溶かして溶液を調製し、その溶液にポリエチレン多孔質膜を浸漬する方法がある。

【0022】
ポリエチレン多孔質膜にリチウムイオンを担持する方法としては、例えば、リチウム塩を溶解可能な揮発性電解液(例えば、ジメチルアセトアミド(DMAC)、アクリロニトリル等)にリチウム塩を1mol/Lの濃度で溶解し、この溶液にポリエチレン多孔質膜を浸漬する方法が挙げられる。

【0023】
本発明の組成物により、例えば、ポリエチレンから成る基材の表面における少なくとも一部を修飾することができる。組成物により基材の表面を修飾する方法としては、例えば、組成物を揮発性の溶媒に溶解して溶液を調製し、その溶液に基材を浸漬するか、溶液を基材の表面に塗布する方法が挙げられる。この方法で用いられる溶液における組成物の濃度は、10wt%以下が好ましく、5wt%以下が一層好ましい。

【0024】
ポリエチレンから成る基材の形状は特に限定されず、例えば、板状部材、棒状部材、筒状部材、球状部材、直方体形状の部材等が挙げられる。また、基材は、その全体がポリエチレンから成っていてもよいし、ポリエチレン以外の材料から成る芯材と、その少なくとも一部を被覆するポリエチレン層から成っていてもよい。
(実施例1)
1.組成物S1の製造
以下の手順で組成物S1を製造した。
(i)酢酸ブチル3.0gと、ジ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート(DEEA)4.0gとを三口フラスコに入れた。
(ii)開始剤として、3,7-Dioxa-4-aza-6-phosphanonanoic acid,4,5-bis(1,1-dimethylethyl)-6-ethoxy-2,2-dimethyl-, 6-oxide(SG-1-MA (BlocBuilder @ARKEMA))を三口フラスコに0.29g入れ、温度を105℃に設定し、4時間重合を行った。
(iii)重合開始から4時間後、酢酸ブチル4.9gとステアリルアクリレート(STA)5.8gとを三口フラスコに添加・投入し、4時間重合した。その後温度を下げ、重合を終了した。

【0025】
以上(i)~(iii)の工程により、9500g/molのDEEAと、4900g/molのSTAとから成るブロック共重合体(組成物S1)を得ることが出来た。
2.リチウム2次電池用セパレータの製造
以下の手順でリチウム2次電池用セパレータを製造した。上述したように製造した組成物S1をキシレンに加え、攪拌して、組成物S1のキシレン溶液を調製した。この溶液における組成物S1の濃度は0.5wt%とした。

【0026】
この溶液に、ポリエチレン多孔質膜を4時間浸漬した。ポリエチレン多孔質膜としては、Mykrolis UPE(pore size is 0.1 μm、0.01μm)を用いた。その後、ポリエチレン多孔質膜を溶液から取り出し、風乾した。ここまでの工程により、組成物S1がポリエチレン多孔質膜に充填された。

【0027】
次に、10gのDMACに、Lithium hexafluorosphateを1.519g加え、リチウムイオン溶液を作成した。このリチウムイオン溶液に、上記のように組成物S1を充填した後のポリエチレン多孔質膜を2時間浸漬させ、ポリエチレン多孔質膜にリチウムイオンを担持した。以上の工程により、リチウム2次電池用セパレータが製造できた。

【0028】
3.リチウム2次電池用セパレータの評価
(3-1)伝導度の評価
インピーダンス測定法により、リチウム2次電池用セパレータの伝導度を測定した。測定条件は以下のとおりとした。

【0029】
測定装置:LCR-HITESTER (HIOKI 3522-50)
測定レンジ:50~80000Hz、34points
伝導度の決定方法:By Cole-Cole plot
測定温度:35、40、45、45、50、55、60、65℃
伝導度の値は、35℃においては、9.08×10-5S/cmであり、高いイオン伝導度を有することが確認できた。

【0030】
リチウム2次電池用セパレータが高いイオン伝導度を有する理由は以下のように推測できる。側鎖の長いアルカン鎖はポリエチレンと良好な吸着特性を有するため、ブロック共重合体のこの部位がポリエチレンの多孔構造の側面に吸着し、ポリオキシエチレン鎖が多孔構造の側面に沿って相を形成することが可能となる。この構造のため、正負両電極の方向に高分子固体電解質が配向した構造を形成する。また側鎖のポリオキシエチレンは、分子鎖長が短いために結晶化を起こさず、非常に運動性に富む構造を保持する。その結果として、これまで固体状態では得ることが困難であったリチウムイオンの伝導性を発現したと考えられる。

【0031】
また、65℃における伝導度の値は8.30×10-5S/cmであり、35℃における伝導度より大きく低下した。これは、昇温により、組成物S1を構成するブロック共重合体がポリエチレン多孔質膜の孔表面から離脱し、それにより、リチウムイオンの伝導機能を保有するポリオキシエチレン成分の連続層が破壊・消失するためであると推測できる。

【0032】
本実施例のリチウム2次電池用セパレータを用いれば、高温下で伝導度が低下する性質により、リチウム2次電池が熱暴走を起こす温度域に達する前に急激に伝導度を低下させる(リチウム2次電池自体が自己制御を行うインテリジェント効果を奏する)ことができる。

【0033】
また、昇温により一旦伝導度が低下しても、リチウム2次電池用セパレータの温度を低下させれば、再び伝導度が高くなる。これは、温度低下により、ブロック共重合体の再吸着・再配列が行われ、再びリチウムイオンの伝導機能を保有するポリオキシエチレン成分の連続層が形成されるためであると推測できる。この機能により、本実施例のリチウム2次電池用セパレータは、リチウム2次電池が熱暴走を起こした後でも再利用することができる。
(実施例2)
1.組成物S2の製造
以下の手順で組成物S2を製造した。
(i)酢酸ブチル7.7gと、ベヘニルアクリレート(BHA)4.9gとを三口フラスコに入れた。
(ii)開始剤として、3,7-Dioxa-4-aza-6-phosphanonanoic acid,4,5-bis(1,1-dimethylethyl)-6-ethoxy-2,2-dimethyl-, 6-oxide(SG-1-MA (BlocBuilder @ARKEMA))を三口フラスコに0.29g入れ、温度を105℃に設定し、6時間重合を行った。
(iii)重合開始から6時間後、酢酸ブチル33.6gとポリエチレングリコール‐モノアクリレート(AE-400)22.4gとを三口フラスコに添加・投入し、62時間重合した。その後温度を下げ、重合を終了した。

【0034】
以上(i)~(iii)の工程により、3000g/molのBHAと、62000g/molのAE-400とから成るブロック共重合体(組成物S2)を得ることが出来た。
2.ポリエチレン製品P1の製造
ポリエチレンフィルム(ポリエチレンから成る基材の一例)を用意した。このポリエチレンフィルムは、市販のHDPEペレット(東ソー株式会社製ニポロンハード4200)を180℃、20MPaの条件で100μmの厚さにプレス成形したものである。

【0035】
一方、0.5gの組成物S2を酢酸ブチル50gに溶解し、組成物S2の酢酸ブチル溶液を調製した。この溶液に、ポリエチレンフィルムを浸漬し、その後、取り出した。ポリエチレンフィルムの表面には、組成物S2の層が形成された。すなわち、ポリエチレンフィルムの表面が組成物S2で修飾された。TEMで観察したところ、組成物S2の膜厚は約200nmであった。以上の工程により、ポリエチレンフィルムと、その表面を修飾する組成物S2とを備えるポリエチレン製品P1が製造できた。

【0036】
3.組成物S2の評価
(3-1)接着力の評価
ポリエチレンフィルムから、JIS K71132(1/3)で規定する形状の試験片1(図2A参照)を2つ切り出した。それぞれの試験片1について、片方の端2から30.5mmの位置3までの部分5を残し、それ以外の部分7は切除した。

【0037】
一方の試験片1において、前記片方の端2から26.5~30.5mmに相当する部分(以下では接着部5Aとする)を、組成物S2の酢酸ブチル溶液に浸漬し、その後、取り出した。その結果、接着部5Aの表面は組成物S2で修飾された。接着部5Aは、幅2mm、長さ5mmの長方形の領域である。また、他方の試験片1についても、同様に、その接着部5Aの表面を組成物S2で修飾した。

【0038】
次に、図2Bに示すように、一方の試験片1の接着部5Aに接着剤(エポキシ樹脂系のセメダインEP001N)を塗布してから、一方の試験片1の接着部5Aと他方の試験片1の接着部5Aとを重ね、両者を接着した。

【0039】
2つの試験片1を接着したものを、以下では試験片SP1とする。試験片SP1の全体の長さは57mmである。
また、基本的には試験片SP1と同様の方法で作成するが、組成物S2の酢酸ブチル溶液に試験片を浸漬する代わりに、溶媒で試験片の表面を洗浄したものを、試験片SP2とした。

【0040】
また、基本的には試験片SP1と同様の方法で作成するが、組成物S2の酢酸ブチル溶液に試験片を浸漬する工程を省略したものを、試験片SP3とした。
試験片SP1、SP2、SP3のそれぞれについて、伸張試験機を用いて1mm/minの速さで引張り、伸長特性を測定した。その測定結果を表1に示す。ここで、ヤング率は、伸張測定直後の伸びに対する力の変化率から算出している。また降伏点は、伸張試験における最大の力から求めている。また、破断伸びは、試験片が破断し伸張に要する力が0となった点までの伸びから求めている。

【0041】
【表1】
JP2015061900A_000003t.gif
上記表1に示す評価結果から、ポリエチレン製品P1は、表面を組成物S2で修飾されていることで、エポキシ樹脂系の接着剤により強固に接着できることが確認できた。
(3-2)高温下での剥離性の評価
試験片SP1を70℃の温水に浸漬したところ、短時間で接着面が剥離した。これは、接着剤の変化のためではなく、ポリエチレンフィルムの表面から、組成物S2を構成するブロック共重合体が外れたためであると推測できる。

【0042】
また、上記のように接着面が剥離した後、試験片の表面を再度、組成物S2で修飾してから、エポキシ樹脂系接着剤で接着したところ、強固な接着性能が得られた。
(3-3)接触角の測定
ポリエチレン製品P1について、水接触角測定装置を用い、表面の接触角を測定した。また、比較例として、無処理のポリエチレンフィルムと、組成物S2の酢酸ブチル分散液を使用せず、代わりに、酢酸ブチルで洗浄したポリエチレンフィルムとについても、同様に表面の接触角を測定した。その結果を表2に示す。

【0043】
【表2】
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表2に示すように、ポリエチレン製品P1の表面は、無処理のポリエチレンフィルム、及び酢酸ブチルで洗浄したポリエチレンフィルムの表面に比べ、親水性であった。
(実施例3)
1.リチウム2次電池用固体電解質の製造
市販のリチウム2次電池用セパレータ(厚さ30μm、空孔率64%、ガーレー値78sec/100cc)を用意した。以下ではこれを市販セパレータとする。この市販セパレータは、ポリエチレン多孔質膜の一例である。市販セパレータを、組成物S2の0.5wt%アセトニトリル溶液に浸漬した。このとき、市販セパレータの空孔に組成物S2が充填された。

【0044】
次に、組成物S2を充填した後の市販セパレータを、濃度1mol/lのリチウムヘキサフルオロフォスフェート(lithium hexafluorophosphate)溶液に浸漬し、リチウムイオンを導入した。リチウムイオンは、市販セパレータに担持された。以上の工程により、リチウム2次電池用固体電解質が製造できた。

【0045】
2.リチウム2次電池用固体電解質の評価
上記のように製造したリチウム2次電池用固体電解質の特性を、インピーダンス測定により評価した。その結果、35℃でのリチウムイオンの伝導率は4.47×10-4S/cmであり、リチウム2次電池用固体電解質として非常に良好であった。一方、70℃になると、リチウムイオンの伝導率は1.58×10-4S/cmに低下した。このことから、本実施形態のリチウム2次電池用固体電解質は、温度により出力が制御できることが確認できた。
(実施例4)
1.組成物S3の製造
ベヘニルアクリレート(BHA)5.0gを酢酸ブチル7.7gに分散したものを撹拌重合装置に投入し、オイルバス(105℃)で加熱しながら、窒素気流下で6時間重合した。このとき、撹拌重合装置における攪拌速度は70rpm前後とした。

【0046】
次に、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート(DEAEMA)4.2gを酢酸ブチル4.1gに分散したものを同じ攪拌重合装置に投入し、オイルバス(105℃)で加熱しながら、窒素気流下で17時間重合した。このときも、撹拌重合装置における攪拌速度は70rpm前後とした。

【0047】
以上の工程(リビングラジカル重合)により、2400g/molのBHAと、25600g/molのDEAEMAとから成るブロック共重合体(組成物S3)を得ることが出来た。組成物S3は、図1に示す構造を有する。図1におけるn、mはそれぞれ整数である。

【0048】
なお、組成物S3の多分散度(M/M)は1.18である。
2.組成物S3の評価
(2-1)接着力の評価
前記実施例2の場合と同様の方法で、2つの試験片1の接着部5Aを組成物S3で修飾し、その後、2つの試験片1の接着部5A同士を接着剤で接着した(図2A、図2B参照)。以下では、2つの試験片1を接着したものを、接着後試験片とする。

【0049】
接着部5Aの表面を組成物S3で修飾する工程は、組成物S3の酢酸ブチル分散液(濃度1wt%)を用い、ディップコーティング法により行った。また、接着剤には、エポキシ樹脂系接着剤、又はアロンアルファを用いた。

【0050】
次に、引張試験機を用い、接着後試験片を、2つの試験片1が離れる方向に、1mm/minの速度で引っ張った。そして、破断伸びを記録した。試験は6回行い、6回の試験における平均値を採用した。破断伸びの値が大きいほど、2つの試験片1を接着する力が強いことを意味する。

【0051】
比較例として、2つの試験片1の表面に組成物S3を吸着させる工程を省略した(無改質の)場合と、2つの試験片1の表面に組成物S3を吸着させる工程の代わりに酢酸ブチルで洗浄する工程を行った場合についても、同様にして破断伸びを測定した。試験結果を表3に示す。

【0052】
【表3】
JP2015061900A_000005t.gif
なお、表3において、SP4~SP9はそれぞれ以下の条件を意味する。

【0053】
SP4:組成物S3の酢酸ブチル分散液(濃度1wt%)を用い、ディップコーティング法により、試験片1の表面を組成物S3で修飾する。接着剤はエポキシ樹脂系接着剤である。

【0054】
SP5:試験片1を酢酸ブチルで洗浄する。接着剤はエポキシ樹脂系接着剤である。
SP6:試験片1は無改質である。接着剤はエポキシ樹脂系接着剤である。
SP7:組成物S3の酢酸ブチル分散液(濃度1wt%)を用い、ディップコーティング法により、試験片1の表面を組成物S3で修飾する。接着剤はアロンアルファである。

【0055】
SP8:試験片1を酢酸ブチルで洗浄する。接着剤はアロンアルファである。
SP9:試験片1は無改質である。接着剤はアロンアルファである。
表3に示すように、接着剤の種類によらず、2つの試験片1の接着部5Aの表面に組成物S3を吸着させた場合は、その他の場合に比べて、破断伸びが大きかった(2つの試験片1同士の接着力が大きかった)。

【0056】
(2-2)接触角の測定
組成物S3に酢酸ブチルを加え、組成物S3の酢酸ブチル分散液を調製した。この分散液における組成物S3の濃度は1wt%とした。

【0057】
上記の分散液を用い、ディップコーティング法により、膜厚150μmのポリエチレンフィルムの表面に組成物S3を吸着させた。組成物S3が表面に吸着したポリエチレンフィルムを以下ではポリエチレン製品P2とする。

【0058】
ポリエチレン製品P2について、水接触角測定装置を用い、表面の接触角を測定した。また、比較例として、無処理のポリエチレンフィルムと、組成物S3の酢酸ブチル分散液を使用せず、代わりに、酢酸ブチルで洗浄したポリエチレンフィルムとについても、同様に表面の接触角を測定した。

【0059】
その結果を表4に示す。

【0060】
【表4】
JP2015061900A_000006t.gif
表4に示すように、ポリエチレン製品P2の表面は、無処理のポリエチレンフィルムの表面、及び酢酸ブチルで洗浄したポリエチレンフィルムの表面に比べ、接触角が小さく、親水性であった。
(実施例5)
1.組成物S4の製造
ベヘニルアクリレート(BHA)4.8gを酢酸ブチル7.8gに分散したものを撹拌重合装置に投入し、オイルバス(105℃)で加熱しながら、窒素気流下で24時間重合した。このとき、撹拌重合装置における攪拌速度は70rpm前後とした。

【0061】
次に、2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレート(TBAEMA)5.1gを酢酸ブチル7.7gに分散したものを同じ攪拌重合装置に投入し、オイルバス(105℃)で加熱しながら、窒素気流下で6時間重合した。このときも、撹拌重合装置における攪拌速度は70rpm前後とした。

【0062】
以上の工程(リビングラジカル重合)により、1700g/molのBHAと、7600g/molのTBAEMAとから成るブロック共重合体(組成物S4)を得ることが出来た。組成物S4は、図3に示す構造を有する。図3におけるn、mはそれぞれ整数である。

【0063】
なお、組成物S4の多分散度(M/M)は1.21である。
2.組成物S4の評価
(2-1)接着力の評価
前記実施例2の場合と同様の方法で、2つの試験片1の接着部5Aを組成物S4で修飾し、その後、2つの試験片1の接着部5A同士を接着剤で接着し、(図2A、図2B参照)接着後試験片を作成した。

【0064】
接着部5Aの表面を組成物S4で修飾する工程は、組成物S4の酢酸ブチル分散液(濃度0.05wt%又は0.1wt%)を用い、フィルムアプリケータ法により行った。また、接着剤には、アロンアルファを用いた。

【0065】
次に、引張試験機を用い、接着後試験片を、2つの試験片1が離れる方向に、1mm/minの速度で引っ張った。そして、破断伸びを記録した。試験は6回行い、6回の試験における平均値を採用した。破断伸びの値が大きいほど、2つの試験片1を接着する力が強いことを意味する。

【0066】
比較例として、2つの試験片1の表面に組成物S4を吸着させる工程を省略した場合と、2つの試験片1の表面に組成物S4を吸着させる工程の代わりに酢酸ブチルで洗浄する工程を行った場合についても、同様にして破断伸びを測定した。

【0067】
測定結果を表5に示す。

【0068】
【表5】
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なお、表5において、SP10~SP13はそれぞれ以下の条件を意味する。

【0069】
SP10:組成物S4の酢酸ブチル分散液(濃度0.05wt%)を用い、フィルムアプリケータ法により、試験片1の表面を組成物S4で修飾する。接着剤はアロンアルファである。

【0070】
SP11:組成物S4の酢酸ブチル分散液(濃度0.1wt%)を用い、フィルムアプリケータ法により、試験片1の表面を組成物S4で修飾する。接着剤はアロンアルファである。

【0071】
SP12:試験片1を酢酸ブチルで洗浄する。接着剤はアロンアルファである。
SP13:試験片1は無改質である。接着剤はアロンアルファである。
表5に示すように、2つの試験片1の表面に組成物S4を吸着させた場合は、その他の場合に比べて、破断伸びが大きかった(2つの試験片1同士の接着力が大きかった)。
(2-2)接触角の測定
組成物S4に酢酸ブチルを加え、組成物S4の濃度が0.05wt%である組成物S4の酢酸ブチル分散液と、組成物S4の濃度が0.1wt%である組成物S4の酢酸ブチル分散液とをそれぞれ調製した。

【0072】
上記の分散液を用い、ディップコーティング法、又はフィルムアプリケータコーティング法により、膜厚150μmのポリエチレンフィルムの表面に組成物S4を吸着させた。組成物S4を表面に吸着させたポリエチレンフィルムには、分散液における組成物S4の濃度、及びコーティング法の種類により、表6に示す4種類があり、それらの名称をそれぞれポリエチレン製品P3~P6とする。

【0073】
【表6】
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なお、表6において「分散液濃度」は、組成物S4の酢酸ブチル分散液における組成物S4の濃度を意味する。また、「D」はディップコーティング法を意味し、「F」はフィルムアプリケータコーティング法を意味する。

【0074】
ポリエチレン製品P3~P6について、水接触角測定装置を用い、表面の接触角を測定した。また、比較例として、無処理のポリエチレンフィルムと、組成物S4の酢酸ブチル分散液を使用せず、代わりに、酢酸ブチルで洗浄したポリエチレンフィルムについても、同様に表面の接触角を測定した。その結果を上記表6に示す。

【0075】
表6に示すように、ポリエチレン製品P3~P6の表面は、無処理のポリエチレンフィルムの表面、及び酢酸ブチルで洗浄したポリエチレンフィルムの表面に比べ、親水性であった。

【0076】
尚、本発明は前記実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0077】
1…試験片、2…片方の端、3…切断線、5、7…部分、5A…接着部、9…接着剤
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2