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明細書 :サツマイモの栽培方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-037385 (P2015-037385A)
公開日 平成27年2月26日(2015.2.26)
発明の名称または考案の名称 サツマイモの栽培方法
国際特許分類 A01G   1/00        (2006.01)
A01G   1/06        (2006.01)
FI A01G 1/00 301Z
A01G 1/06 Z
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2013-169312 (P2013-169312)
出願日 平成25年8月18日(2013.8.18)
発明者または考案者 【氏名】足立 文彦
【氏名】井藤 和人
【氏名】門脇 正行
出願人 【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100081673、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 誠
【識別番号】100141483、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 生吾
審査請求 未請求
テーマコード 2B022
Fターム 2B022AA01
2B022AB13
要約 【課題】本発明は、有害な菌等に犯されるリスクを低減させるとともに、生長の際に有用に作用する菌等を利用して安定した収穫量を確保可能なサツマイモの栽培方法を提供することを課題とする。
【解決手段】穂木用の苗Bから採取される穂木B1と、前記穂木用の苗Bよりも無菌に近い状態で育苗された台木用の苗Aから採取される台木A1とを接木し、該接木された台木A1及び穂木B1からなる接木体Cを生長させ、台木用の苗Aから台木A1を採取する際に、切断対象の蔓6から発生した葉5又は該蔓6から枝分れした蔓7が台木A1側に残るようにして、上記切断を行い、前記台木A1を、無菌状態で育苗された無菌苗から採取する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
穂木用の苗(B)から採取される穂木(B1)と、前記穂木用の苗(B)よりも無菌に近い状態で育苗された台木用の苗(A)から採取される台木(A1)とを接木し、該接木された台木(A1)及び穂木(B1)からなる接木体(C)を生長させるサツマイモの栽培方法。
【請求項2】
台木用の苗(A)から台木(A1)を採取する際に、切断対象の蔓(6)から発生した葉(5)又は該蔓(6)から枝分れした蔓(7)が台木(A1)側に残るようにして、上記切断を行う請求項1に記載のサツマイモの栽培方法。
【請求項3】
前記台木(A1)を、無菌状態で育苗された無菌苗から採取する請求項1又は2の何れかに記載のサツマイモの栽培方法。
【請求項4】
前記台木(A1)を、無菌苗の一種であり且つ無菌培地で育成したメリクロン苗から採取する請求項3に記載のサツマイモの栽培方法。
【請求項5】
前記穂木用の苗(B)と前記台木用の苗(A)とが互いに異なる品種である請求項1乃至4の何れかに記載のサツマイモの栽培方法。
【請求項6】
前記接木体(C)を生長させ、該接木体(C)から伸びた蔓を穂木(B1)として採取し、該穂木(B1)を前記台木(A1)に接木して新たな接木体(C)とする請求項1乃至5の何れかに記載のサツマイモの栽培方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、サツマイモの栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的には、育苗されてサツマイモ苗から切断されたカット苗(挿し穂)を圃場に挿苗し、サツマイモの栽培を行うが、カット苗が有害な菌又はウィルス(菌等)に犯されていると、収穫量が低下する。これを防止するため、無菌に近い環境下で育苗を行うサツマイモの栽培方法が公知になっている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開平9-294495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献のサツマイモの栽培方法では、菌等が含まれていない又は殆ど含まれていない状態(以下、「無菌状態」)の苗が定植される。
一方、生長過程で有用に作用する菌等も複数種類存在するが、上述した通り、苗は無菌状態であるため、この有用な菌等は、その大部分を土壌から供給する必要があり、生長度合が土壌状態に大きく依存することになる。
しかし、土壌に含まれる菌等の種類や量を所望の状態に設定することは非常に困難であるため、土壌状態によって収穫量が大きく変動し、サツマイモの収穫量を安定させることが難しい。
【0005】
本発明は、有害な菌等に犯されるリスクを低減させるとともに、生長の際に有用に作用する菌等を利用して安定した収穫量を確保可能なサツマイモの栽培方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、弟1に、穂木用の苗Bから採取される穂木B1と、前記穂木用の苗Bよりも無菌に近い状態で育苗された台木用の苗Aから採取される台木A1とを接木し、該接木された台木A1及び穂木B1からなる接木体Cを生長させることを特徴とする。
【0007】
弟2に、台木用の苗Aから台木A1を採取する際に、切断対象の蔓6から発生した葉5又は該蔓6から枝分れした蔓7が台木A1側に残るようにして、上記切断を行うことを特徴とする。
【0008】
弟3に、前記台木A1を、無菌状態で育苗された無菌苗から採取することを特徴とする。
【0009】
弟4に、前記台木A1を、無菌苗の一種であり且つ無菌培地で育成したメリクロン苗から採取することを特徴とする。
【0010】
弟5に、前記穂木用の苗Bと前記台木用の苗Aとが互いに異なる品種であることを特徴とする。
【0011】
弟6に、前記接木体Cを生長させ、該接木体Cから伸びた蔓を穂木B1として採取し、該穂木B1を前記台木A1に接木して新たな接木体Cとすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、含まれる菌等の量が少ない又は無菌状態の台木に対して、該台木に接木される穂木を介して、有用な菌等を供給することが可能になるため、有害な菌等に犯されるリスクを低減させるとともに、生長の際に有用に作用する菌等を利用して安定した収穫量を確保することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用したサツマイモの栽培方法の説明図である。
【図2】本サツマイモの栽培方法の工程を示すフロー図である。
【図3】水耕栽培における移植後71日の接木体の全乾物重である。
【図4】水耕栽培における移植後71日の接木体の窒素含有量を示すグラフである。
【図5】水耕栽培した接木体及び挿苗体の蔓先端茎葉の菌密度及び菌名を示す特定グラフである。
【図6】継代検定の結果を示すグラフである。
【図7】土耕栽培における移植後108日の接木体の全乾物重である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願発明らは、鋭利検討の結果、無菌状態の苗から採取した台木に、有用な菌を保持する苗から採取した穂木を接木し、該穂木を介して台木側に有用な菌等を移動させることにより、互いに接木された台木及び穂木からなる接木体の生長が促進されることを見出し、これを本願発明に利用するものである。

【0015】
以下、図1及び図2に基づいて、本発明の実施形態について説明する。

【0016】
図1は、本発明を適用したサツマイモの栽培方法の説明図であり、図2は、本サツマイモの栽培方法の工程を示すフロー図である。同図に示すサツマイモの栽培方法は、台木用の苗(台木用苗)Aを育てるとともに穂木用の苗(穂木用苗)Bを育てる育苗工程と、台木用苗Aから台木A1を採取するとともに、穂木用苗Bから穂木B1を採取する採取工程と、台木A1と穂木B1とを接木する接木工程と、該接木工程によって互いが接木された台木及び穂木からなる接木体Cを生長させる生長工程とを有している。

【0017】
ちなみに、生長させた接木体Cは、伸びた蔓の一部を切断してカット苗として利用してもよいし、或いは、そのまま生長させてサツマイモを収穫してもよい。

【0018】
上記育苗工程では、穂木用苗Bよりも無菌状態に近い環境下で育苗された苗を台木用苗Aとして用いる。具体的には、ウィルスフリーの無菌苗(以下、単に「無菌苗」)の一種であるメリクロン苗を、台木用苗Aとして用いる。ちなみに、メリクロン苗とは、無菌培地で育苗した無菌苗であり、この無菌培地として、培養液等を用いた液体培地である場合や、寒天等の固体培地である場合が想定される。

【0019】
さらに具体的に台木用苗Aについて説明すると、まず、ポットに定植されたメリクロン苗を手元に入手し、しばらく育苗させた後、或いは直ちに、別のポット1に改めて定植する。この際、新たなポット1内の入れる土としては焼成された無菌状態の土2であるバーミキュライト又はパーライトを用い、この育苗中も無菌状態を保持する。

【0020】
一方、穂木用苗Bとしては、通常状態(非無菌状態)で育苗された普通苗を用いる。普通苗は、菌が存在する状態で、育苗されるため、複数種類の有用な菌等が多くまれた状態になる。ただし、普通苗は、多くの菌を保持しているが、病原菌や有害なウィルスには感染していない健康な苗である。

【0021】
さらに具体的に穂木用苗Bについて説明すると、まず、ポットに定植された普通苗を手元に入手し、しばらく育苗させた後、或いは直ちに、別のポット3に改めて定植する。この際、新たなポット3内に入れる土4としては焼成された無菌状態の土であるバーミキュライト又はパーライトを用い、この育苗中に意図しない菌等が混入されることを防止する。

【0022】
上記採取工程における台木用苗Aからの台木A1の採取では、最も太いメインの蔓(主蔓)6を切断対象として選択し、主蔓6を、根元側から2~3節又は3~4節(長さ5cm)程度の部分で垂直にカットし、ポット1を含む根元側部分を台木A1として用いる。この台木A1は、主蔓6の上記節から枝分れして葉5が生えた一又は複数(図示する例では節数と同数)の蔓(枝蔓)7又は主蔓6から直接発生した葉5の何れか一方若しくは両方が含まれた状態になる。

【0023】
そして、台木A1の主蔓6におけるカットされた先端部には、断面が軸心側を境に対称に分割されるように切込溝6aを切込形成する。

【0024】
一方、採取工程における穂木用苗Bからの穂木B1の採取では、最も太いメインの蔓(主蔓)8を切断対象として選択し、主蔓8の先端側から2~4節(長さ10cm)程度の部分を側面からみてV字状にカットし、この先端側部分を穂木B1として用いる。上記カット形状によって、穂木B1の主蔓8の基端部は、楔状をなす刺込部8aが形成される。

【0025】
この穂木B1も、主蔓8の上記節から枝分れして葉10を生えた一又は複数(図示する例では節数と同数)の蔓(枝蔓)9又は主蔓8から直接発生した葉10何れか一方若しくは両方が含まれた状態になる。なお、通常、葉量(葉5,10の枚数又は各葉5,10の表面積を合算した総面積)は、台木A1よりも穂木B1が多くなるが、これを逆に設定し、穂木B1よりも台木A1の葉量を多く設定することもできる。

【0026】
上記接木工程では、上記切込溝6aに刺込部8aを係合状態で挿入し、該係合部分の外周に接木用テープ11を巻付けて固定し、さらに、接木クリップ12によって、巻付けた接木用テープ11の外周(台木の先端部の外周側)を挟持することにより、切込溝6a内に刺込部8aを挟込ませて保持させ、これによって上記接木の作業を完了する。

【0027】
上記生長工程では、接木体Cを、水耕栽培又は土壌栽培によって生長させる。水耕栽培の場合には、上記台木A1のポット1を、そのまま用いることも可能であり、バーミキュライト又はパーライトからなる土2を用い、培養液を定期的に所定量供給して水耕栽培を行う。土壌栽培の場合には、ポット1に定植された接木体Cを、圃場や別のポットに移植する作業が必要になるが、この場合には、生長した接木体Cから採取したカット苗を、圃場や別のポットに定植させてもよい。そして、接木体Cが生長する過程で、穂木B1側から台木A1側に有効な菌等が移動し、生長が促進される。

【0028】
なお、図2に仮想線の矢印で示す通り、生長させた接木体Cから上記した手段と同一の手段により穂木B1を採取し、この穂木B1と前記台木A1とを接木して新たな接木体Cとしてもよい。さらに、この手順を繰返して、次々と代を受け継がせてもよい。以下、この代の受け継ぎを「継代」と呼ぶ。

【0029】
また、穂木B1は挿し穂の状態であるため、手元に入手した挿し穂の基端部に刺込部8aを形成し、そのまま穂木B1として用いてもよい。この場合、穂木B1の育苗工程の全て及び採取工程の一部が省略可能になる。

【0030】
また、台木A1についても同様であり、無菌状態のポット苗を入手し、該ポット苗の先端側をカットして、ポットを含む根元側をそのまま台木A1として利用してもよい。この場合には、台木A1の育苗工程が全て省略される。

【0031】
以上のように構成されるサツマイモの栽培方法によれば、穂木B1の上記有用な菌が台木A1にも移り、効率的な生長を促すことが可能である。

【0032】
また、台木A1及び穂木B1は、互いに異なる品種のサツマイモ苗から採取されるため、台木用苗A及び穂木用苗Bとして、互いに性質の異なる品種のサツマイモ苗を用いて、品質の高いサツマイモを多く収穫することが可能になる。例えば、糖度は高いが収穫量が少ない品種のサツマイモ苗から採取した台木A1と、収穫量が多い品種のサツマイモ苗から採取した穂木B1とを接木する等の組合せが考えられる。なお、同一品種のサツマイモ苗から台木A1及び穂木B1を採取してもよい。

【0033】
ちなみに、この生長促進効果のメカニズムについて説明すると、まず、生長に欠かせない重要な物質として窒素が存在する。そして、この窒素を固定させると、生長が促進されるが、この窒素固定に有用に作用する菌として窒素固定内生菌の存在する。窒素の固定について説明すると、窒素固定内生菌は、植物と共生し、常時空気中から窒素と取込み、この取込んだ窒素を該植物が利用可能な形態の窒素に変化させる。ここでは、この一連の現象を窒素固定と呼んでいる。

【0034】
この窒素固定内生菌は、普通苗に多く含まれるものであるが、単体では、窒素を保持する機能を十分に発揮しないものが多く、別の菌と共存させた環境(共生環境)下で、初めて窒素保持機能を発揮するため、単離・培養した窒素固定内生菌を用いても、それ程高い効果を望むことができない場合が多い。

【0035】
すなわち、この窒素固定内生菌を活性化させるためには、この窒素固定内生菌を採取した苗の体内と同様の共生環境を再現させる必要があり、本願発明らは、この点に着目し、この共生環境の再現が、接木される穂木によって実現可能であることを見出した。

【0036】
具体的には、窒素固定内生菌を体内に含むことが確実視される健康な穂木B1の体内では、当上記共生環境が構築されているため、この穂木B1を無菌状態の台木A1に接木することにより、共生環境によって窒素を固定する機能が活性化した窒素固定内生菌を、そのままの状態で、台木A1側に移動させることが可能であり、これによって生長が促進される。

【0037】
次に、上記サツマイモの栽培方法の優位性を確認する目的で、水耕栽培での実験を行ったので、その実験内容及び結果について説明する。

【0038】
まず、下記表に示す無菌苗及び普通苗を用意した。

【0039】
【表1】
JP2015037385A_000003t.gif

【0040】
そして、高系14号の無菌苗を台木用苗Aとして用いる一方、高系14号、紅赤、べにはるかの3種類の無菌苗及び高系14号、紅赤、べにはるかの3種類の普通苗の計6種類の苗を穂木用苗Bとして用い、各種類の穂木用苗Bを、個別に専用で用意した台木用苗Aに接木した。

【0041】
各台木用苗A及び各穂木用苗Bは、完全展開葉10節を残して切取り且つ5葉を残した葉も切取って挿し穂状態とし、バーミキュライトを詰めたビニル製ポット1,3に挿苗した。そして、5~6月の季節に20~24日程度育苗し、その後、各組の台木用苗A及び穂木用苗Bで、接木作業を行った。

【0042】
ポット1に定植された接木体Cは、6~7月の季節に1ヶ月程度、日除けが施されたビニルトンネル内で生長させた。この際、乾燥を防止するため、午前6時と、午後0時の一日2回、各回5分間の自動潅水を行った。

【0043】
続いて、生長させた各接木体Cからなる各ポット苗を、根鉢状になった根をトリミングし、バーミキュライトを詰めたザルに移植した。ザルは、プラスチック製のボックス内に収容されたネットであり、ザルは7cm程度底上げされ、その底面側には、供給用のフィルタが設けられている。

【0044】
そして、下記表に示す準園試処方(大塚B)水耕液(培養液)によって、水耕栽培を行った。

【0045】
【表2】
JP2015037385A_000004t.gif

【0046】
また、培養液の濃度は、生長に合わせて、以下に示す表の通りに変化させた。

【0047】
【表3】
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【0048】
そして、移植後の水耕栽培期間を70日程度(本例では、71日)とし、成長した各接木体Cについて、各種計測を行った。

【0049】
図3は、水耕栽培における移植後71日の接木体の全乾物重である。接木体Cの葉5,10、蔓6,7,8,9、根及び塊根を、80℃通風乾燥機内で48時間以上乾燥させて乾物とし、各接木体Cにおいて乾物の総重量を計測した。結果は、同図に示す通りであり、無菌苗から採取した台木A1に、普通苗から採取した穂木B1を接木した3種類のものは、該台木A1に、無菌苗から採取した穂木B1を接木した3種類のものに比べて、有意に重く、本発明の優位性を示す結果になった。ちなみに、図3の図中、「はるか」はべにはるかの略であり、「高系」は高系14号の略である。

【0050】
図4は、水耕栽培における移植後71日の接木体の窒素含有量を示すグラフである。まず、上記乾物を、微粉砕し、窒素分析装置によって窒素の含有量を計測するとともに、ザル内のバーミキュライトを採取し、105℃通風乾燥機内で、48時間以上乾燥させて窒素分析装置によって窒素の含有量を計測した。

【0051】
続いて、与えた培養液と残った培養液の硝酸態窒素をイオン電極でモニタし、これとアンモニア態窒素、全窒素をそれぞれ窒素分析装置によって測定し、窒素の収支を求めるとともに、植物の15N濃度を利用する重窒素自然存在比法により空気由来の窒素利用率を求めた。

【0052】
結果は、図4に示す通りであり、無菌苗から採取した台木A1に、普通苗から採取した穂木B1を接木した3種類のものは、該台木A1に、無菌苗から採取した穂木B1を接木した3種類のものに比べて、空気由来の窒素利用率や、窒素全体の含有量が高く、穂木B1から台木A1に移動した窒素固定内生菌が有用に作用している状態が確認された。特に、空気由来の窒素利用率で、有意な差が見出された。ちなみに、図4の図中、「はるか」はべにはるかの略であり、「高系」は高系14号の略である。

【0053】
図5は、水耕栽培した接木体及び挿苗体の蔓先端茎葉の菌密度及び菌名を示す特定グラフである。上記の通りに71日間水耕栽培した6種類の接木体Cと、穂木B1を採取する3種類の普通苗とについて、蔓先端茎葉に対して、菌を分離して、その菌名及び菌密度を調べた。

【0054】
その結果は、同図に示す通りであり、菌が分離されたものが、紅赤の挿し穂状態の普通苗及びこれと同一品種の普通苗から採取された穂木B1を接木した接木体Cであった。また、後述する継代検定において、紅赤のサツマイモ品種について、良好な結果が示されている結果と一致している。ちなみに、図5中、「はるか」はべにはるかの略であり、「高系」は高系14号の略である。

【0055】
なお、菌が分離されないものについては、菌が存在していないということではなく、数が少ないか、或いは分離されない菌が普通苗及び接木体Cに存在しているものと推測される。なお、これらの菌は、窒素固定内生菌か、或いはそれに関連する菌である。

【0056】
図6は、継代検定の結果を示すグラフである。各種類の接木体Cについて継代させ、新たな接木体Cを、上述と同様の手法により、生長させ、移植後44日で、乾物の増加した重量を測定した。

【0057】
その結果は、同図に示す通りであり、無菌苗から採取した台木A1に、普通苗から採取した穂木B1を接木した3種類の接木体Cから採取した穂木B1を、さらに、無菌苗から採取した台木A1に接木して、新たな接木体Cとしたものは、無菌苗から採取した台木A1に、無菌苗から採取した穂木B1を接木した3種類の接木体Cから採取した穂木B1を、さらに、無菌苗から採取した台木A1に接木して、新たな接木体Cとしたものよりも、乾物の増加重量が有意に重く、窒素固定内生菌の有用性が継代しても保持されることが確認された。ちなみに、図6の図中、「はるか」はべにはるかの略であり、「高系」は高系14号の略である。

【0058】
次に、上記サツマイモの栽培方法の優位性を確認する目的で、土耕栽培での実験を行ったので、その実験内容及び結果について説明する。

【0059】
まず、下記表に示す無菌苗及び普通苗を用意した。

【0060】
【表4】
JP2015037385A_000006t.gif

【0061】
そして、高系14号の普通苗を台木用苗Aとして用い、上述と同様の手法により、接木体Cを作り、この接木体Cを土耕栽培した。

【0062】
土耕栽培における移植後108日の接木体の全乾物重である。同図に示す通り、各種類の接木体の乾物の総重量は、無菌苗から採取した穂木B1と、普通苗から採取した穂木Bとの間で、有意な差は無かった。ちなみに、同図の「高」は高系14号の略であり、「黄」は黄金千貫の略であり、「は」はべにはるかの略であり、「東」はべにあずまの略であり、「赤」は紅赤の略である。同図に示す結果は、台木A1を採取する苗としては、無菌苗の方が、普通苗よりも望ましいことを示すものである。
【符号の説明】
【0063】
5 葉
6 主蔓(蔓)
7 枝蔓(蔓)
10 葉
A 台木用苗(台木用の苗)
A1 台木
B 穂木用苗(穂木用の苗)
B1 穂木
C 接木体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6