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明細書 :発光材料製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6212817号 (P6212817)
公開番号 特開2015-036384 (P2015-036384A)
登録日 平成29年9月29日(2017.9.29)
発行日 平成29年10月18日(2017.10.18)
公開日 平成27年2月23日(2015.2.23)
発明の名称または考案の名称 発光材料製造方法
国際特許分類 C09K  11/08        (2006.01)
C09K  11/78        (2006.01)
FI C09K 11/08 ZNMB
C09K 11/78 CPB
請求項の数または発明の数 3
全頁数 11
出願番号 特願2013-167177 (P2013-167177)
出願日 平成25年8月10日(2013.8.10)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 1.平成24年度 第46回卒業研究・修士論文発表会予稿集 平成25年2月12日発行 2.平成24年度 第45回卒業研究・修士論文発表会 平成25年2月16日発表 3.日本化学会第93春季年会(2013)講演予稿集III 平成25年3月8日発行 4.日本化学会第93春季年会(2013) 平成25年3月24日発表 5.7th Mini-Symposium on Liquids予稿 平成25年6月25日掲載 6.7th Mini-Symposium on Liquids 平成25年7月5日、6日発表
審査請求日 平成28年7月14日(2016.7.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
発明者または考案者 【氏名】西山 桂
【氏名】秋田 幸彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100116861、【弁理士】、【氏名又は名称】田邊 義博
審査官 【審査官】磯貝 香苗
参考文献・文献 特開2004-099383(JP,A)
Georgios A. Sotiriou et al,,"Color-Tunable Nanophosphors by Codoping Flame-Made Y2O3 with Tb and Eu",J.Phys.Chem.C,2011年,115,1084-1089
Timur Sh Atabaev et al,"Color-tunable properties of Eu3+ and Dy3+ codoped Y2O3 phosphor particles,Nanoscale Research Letters,2012年,7:556
調査した分野 C09K 11/00-11/89
特許請求の範囲 【請求項1】
硝酸イットリウム粉末または酸化イットリウム粉末を母材、発光希土類元素の硝酸塩の粉末または発光希土類元素の酸化物の粉末を添加剤とし、
界面活性剤およびpH調整剤を溶解分散させた水溶液中において、これらの混合材料をミセル構造とするとともに均一沈殿法により沈殿させ、
沈殿物を最高温度400℃~600℃にて加熱し界面活性剤およびpH調整剤の分解促進並びに焼結体の形成および安定化をおこない、間に降温工程を挟み、最高温度700℃~900℃にて再度加熱して不純物除去をおこない、発光希土類元素がドープされた直径100nm~600nmの粒子状酸化イットリウムを得ることを特徴とする発光材料製造方法。
【請求項2】
複数種の発光希土類元素それぞれの硝酸塩、または、複数種の発光希土類元素それぞれの酸化物の粉末を添加剤とし、
発光希土類元素の含有比を変えることにより、および/または、照射光の励起波長を変化させることにより、色相調整が可能な酸化イットリウムのナノ粒子を得ることを特徴とする請求項1に記載の発光材料製造方法。
【請求項3】
発光希土類元素が、Dy,Tb,Er,または,Euであり、
界面活性剤が硫酸ドデシルナトリウムであり、
沈殿は尿素を用いた均一沈殿法としたことを特徴とする請求項1または2に記載の発光材料製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類を用いた発光材料製造方法に関し、特に、可視光領域の中間色も表現可能な発光材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光材料は様々な応用が可能であるため広く研究され、その一つに希土類発光体の研究開発が進められている。
【0003】
例えば、Nd:YAGレーザのように、近赤外域で発光する希土類元素を無機結晶中にドープした材料が知られている。これは、希土類元素の発光スペクトルの幅が狭く、特定の発光を得やすいという性質を利用したものである。
【0004】
しかしながら、従来のこのような希土類発光体の技術では以下の問題点があった。
(1)発振波長の選択性に乏しい。
(2)可視光発光を得るのに高調波結晶等が必要で、発光装置の構造が複雑化する。
(3)実用化されているNd:YAGレーザ等は、発振基本波が近赤外線であり熱に変換されやすく、波長変換の安定性を保つためにフィードバック機構等が複雑である。
(4)バルク結晶の創製は容易であるものの、ナノ構造化が難しい。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2000-58951号公報
【特許文献2】特表2002-540247号公報
【特許文献3】特表2002-540247号公報
【特許文献4】特開2009-249507号公報
【特許文献5】特開2006-207027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、可視光域の単色発光はもとより、希土類の分散割合を変化させることによっても、励起光の波長制御によっても、色相設計(中間色設計)が容易な、ナノ発光材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発光材料製造方法は、硝酸イットリウム粉末または酸化イットリウム粉末を母材、発光希土類元素の硝酸塩の粉末または発光希土類元素の酸化物の粉末を添加剤とし、界面活性剤およびpH調整剤を溶解分散させた水溶液中において、これらの混合材料をミセル構造とするとともに均一沈殿法により沈殿させ、沈殿物を最高温度400℃~600℃にて加熱し界面活性剤およびpH調整剤の分解促進並びに焼結体の形成および安定化をおこない、間に降温工程を挟み、最高温度700℃~900℃にて再度加熱して不純物除去をおこない、発光希土類元素がドープされた直径100nm~600nmの粒子状酸化イットリウムを得ることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発光材料製造方法は、請求項1に記載の発光材料製造方法において、複数種の発光希土類元素それぞれの硝酸塩、または、複数種の発光希土類元素それぞれの酸化物の粉末を添加剤とし、発光希土類元素の含有比を変えることにより、および/または、照射光の励起波長を変化させることにより、色相調整が可能な酸化イットリウムのナノ粒子を得ることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発光材料製造方法は、請求項1または2に記載の発光材料製造方法において、発光希土類元素が、Dy,Tb,Er,または,Euであり、界面活性剤が硫酸ドデシルナトリウムであり、沈殿は尿素を用いた均一沈殿法としたことを特徴とする。
【0011】
なお、請求項にいう不純物とは、界面活性剤およびpH調整剤などをいう。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、可視光域の単色発光はもとより、希土類の分散割合を変化させることによっても、励起光の波長制御によっても、色相設計(中間色設計)が容易な、ナノ発光材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】Eu@Yの発光スペクトルを示した図である。
【図2】Eu@Yの励起スペクトルを示した図である。
【図3】Eu@Yの発光の様子を示した写真である。
【図4】Tb@Yの発光スペクトルを示した図である。
【図5】Tb@Yの励起スペクトルを示した図である。
【図6】Tb@Yの発光の様子を示した写真である。
【図7】Dy@Yの発光スペクトルを示した図である。
【図8】Dy@Yの励起スペクトルを示した図である。
【図9】Dy@Yの発光の様子を示した写真である。
【図10】Er@Yの発光スペクトルを示した図である。
【図11】Er@Yの励起スペクトルを示した図である。
【図12】Er@Yの発光の様子を示した写真である。
【図13】Eu@YのXRDパタンである。
【図14】Eu@Yの電子顕微鏡写真である。
【図15】酸化ユウロピウムと本発明により得られたユウロピウムをドープした酸化イットリウムの発光強度を比較した写真である。
【図16】EuとTbとの配合比を変えてドープした本発明による酸化イットリウムの発光の色相変化を表した写真である。
【図17】EuとTbとをドープした本発明による酸化イットリウムの、照射光波長を変化させた場合の発光の色相変化を表した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
合成の概要は次の通りである。
1.硫酸ドデシルナトリウム(和光純薬工業株式会社製:型番196-08675。以下、適宜SDSと称する)、尿素(和光純薬工業株式会社製:型番219-00175)、母材となる希土類化合物の粉末、ドープさせる発光希土類の化合物の粉末、を水溶液中に分散させる。
2.溶液温度を40℃に、pHを9に、それぞれ保ちながら72時間攪拌する。均一沈殿法により、ミセルが形成される。
3.不純物をろ過したのち、ろ液を乾燥させる(沈殿が促進される)。
4.乾燥したものを電気炉で第一の加温→降温→第二の加温として二段階加熱をおこない、発光希土類がドープされたナノ粒子を合成する。

【0015】
<実施の形態1:Eu(ユウロピウム)ドープ>
尿素50g、SDS1.5g、硝酸イットリウム(III)n水和物(和光純薬工業株式会社製:型番255-00551。以下、適宜「硝酸イットリウム」と記述。)2.00g、硝酸ユウロピウム(III)六水和物(関東化学株式会社製:型番14605-33。以下、適宜「硝酸ユウロピウム」と記述。)0.04gを測りとり、水50cmに分散させた。硝酸イットリウムと硝酸ユウロピウムの質量比は98:2(物質量比で98.8:1.2)とした(以後も特に説明がない限り、質量比で、硝酸イットリウム:発光希土類=98:2とする)。なお、このSDS濃度は臨界ミセル濃度(CMC)以上である。
次に、水溶液を温度40℃、pHを9に、それぞれ保ちながら72時間攪拌を行った。
さらに、不純物を除去したのち溶液を乾燥させ、電気炉で焼成およびさらなる不純物除去をおこない、目的のEuがドープされた酸化イットリウムのナノ粒子を作成した。なお、以降において、このナノ粒子をEu@Yと適宜表記する。

【0016】
加熱に際しては、室温(25℃)から120分間で200℃になるまで昇温し、240分間200℃を維持し、その後120分間で500℃になるまで昇温し、360分間500℃を維持し、さらに180分間で室温となるまで降温する。以下、これを「第一の加温(および降温)」と呼ぶ。
次いで、240分間で800℃となるまで昇温し、120分間800℃を維持し、その後240分間で室温となるまで降温する。以下、これを「第二の加温(および降温)」と呼ぶ。

【0017】
これは、SDSおよび尿素が200℃程度で分解することが知られているものの、事前実験にてまず500℃における加熱だけでは焼結体から不純物である尿素とSDSが除去できないことを確認したためであり、一方で、乾燥物を800℃まで一度に昇温し2時間維持したところ乾燥物がそのまま蒸散し、焼結体が形成されなかったことに由来する。すなわち、第一の加温(および降温)は、SDSおよび尿素の分解促進並びに焼結体の形成および安定化ステップであり、第二の加温(および降温)は、焼結体からの不純物(SDSおよび尿素)の除去ステップであるといえる。第一の加温の最高温度の設定は、維持時間や乾燥物の量にも依存するが、400℃~600℃が好ましく、第二の加温のピーク温度の設定は700℃~900℃が好ましい。本発明の一つの特徴はこの二段階加熱にある。

【0018】
得られたEu@Yの発光特性を調べた。図1は、Eu@Yの発光スペクトルを示した図である。なお、励起波長は254nmである。また、図2は、Eu@Yの励起スペクトルを示した図である。図3は、Eu@Yの発光の様子を示した写真である。なお、図3の中央部分が試料であり、周囲の菱形は、発光色を見やすくするために設置した樹脂製トレーである。

【0019】
図から明らかなように、Eu@Yは、Eu特有の612nm付近(橙色)の鋭いピークが観測された。また、励起スペクトルは240nm付近に極大が観測された。

【0020】
<実施の形態2:Tb(テルビウム)ドープ>
尿素50g、SDS1.5g、硝酸イットリウム2.0g、硝酸テルビウム(III)六水和物(和光純薬工業株式会社製:型番573-46241)0.04gを測りとり、水50cmに分散させた。
次に、水溶液を温度40℃、pHを9に、それぞれ保ちながら72時間攪拌を行った。
さらに、溶液を乾燥させ、電気炉でEu@Yと同様の二段階加熱により焼成および不純物除去をおこない、目的のTbがドープされた酸化イットリウムのナノ粒子を作成した。なお、以降において、このナノ粒子をTb@Yと適宜表記する。

【0021】
得られたTb@Yの発光特性を調べた。図4は、Tb@Yの発光スペクトルを示した図である。なお、励起波長は254nm又は304nmとした。また、図5は、Tb@Yの励起スペクトルを示した図である。図6は、Tb@Yの発光の様子を示した写真である。

【0022】
図から明らかなように、Tb@Yの発光スペクトルは、550nm付近に二つの近接したピークが観測され、また、490nmにもピークが見られた。全体としては緑色系の発色であった。また、励起スペクトルは300nm過ぎに極大が観測された。

【0023】
<実施の形態3:Dy(ジスプロシウム)ドープ>
尿素50g、SDS1.5g、硝酸イットリウム2.0g、硝酸ジスプロシウム(III)六水和物(和光純薬工業株式会社製:型番042-20682。以下、適宜「硝酸ジスプロシウム」と記述。)0.05gを測りとり、水50cmに分散させた。
次に、水溶液を温度40℃、pHを9に、それぞれ保ちながら72時間攪拌を行った。
さらに、溶液を乾燥させ、電気炉でEu@Yと同様の二段階加熱により焼成および不純物除去をおこない、目的のDyがドープされた酸化イットリウムのナノ粒子を作成した。なお、以降において、このナノ粒子をDy@Yと適宜表記する。

【0024】
得られたDy@Yの発光特性を調べた。図7は、Dy@Yの発光スペクトルを示した図である。なお、励起波長は212nmまたは350nmとした。また、図8は、Dy@Yの励起スペクトルを示した図である。図9は、Dy@Yの発光の様子を示した写真である。

【0025】
図から明らかなように、Dy@Yは、480nm前後の青色領域、570nm前後の黄色領域の二つのピークが観測され、全体的には白っぽい色として観測された。また、励起スペクトルは220nm付近に極大が観測された。

【0026】
<実施の形態4:Er(エルビウム)ドープ>
尿素50g、SDS1.5g、硝酸イットリウム2.0g、硝酸エルビウム(III)六水和物(和光純薬工業株式会社製:型番055-04891。以下、適宜「硝酸エルビウム」と記述。)0.05gを測りとり、水50cmに溶かした。
次に、水溶液を温度40℃、pHを9に、それぞれ保ちながら72時間攪拌を行った。
さらに、溶液を乾燥させ、電気炉でEu@Yと同様の二段階加熱により焼成および不純物除去をおこない、目的のErがドープされた酸化イットリウムのナノ粒子を作成した。なお、以降において、このナノ粒子をEr@Yと適宜表記する。

【0027】
得られたEr@Yの発光特性を調べた。図10は、Er@Yの発光スペクトルを示した図である。なお、励起波長は213nm、254nm、380nmとした。また、図11は、Er@Yの励起スペクトルを示した図である。図12は、Er@Yの発光の様子を示した写真である。

【0028】
図から明らかなように、Er@Yの発光スペクトルは、550nm前後に重なったようなピークが見られた。無機結晶中にドープされたErは、赤外領域での発光がよく知られている。均一沈殿法を用いた合成によると、可視光領域(緑色)においてスペクトル幅がシャープな発光を実現できた。また、励起スペクトルは220nm付近に極大が観測された。

【0029】
<他の実施例>
同様に硝酸イットリウムと酸化ユウロピウムの質量比を98:2としてEuがドープされた酸化イットリウムのナノ粒子を作成したところ、実施の形態1と同様の発色が観測された。励起スペクトルもほぼ同様であった。

【0030】
また、得られた試料のXRDパタンを測定した結果を図13に示す。その結果、酸化イットリウムに特徴的なピークが一致し、焼成によって硝酸塩が酸化物に変化したことが確認できた。すなわち、本発明により得られる発光材料は有機物を含まない無機素材であるともいえる。
また、試料の電子顕微鏡写真を図14に示す。スケールから、得られた発光希土類ドープ酸化イットリウムの直径は約100nm~600nmの粒子状であることを確認した。なお他のドーパントに関しても同様の結果が得られた。

【0031】
本発明の合成方法は、母材に希土類化合物(ただしPmは安定同位体が存在しないためPmを除いた希土類化合物)を用い、添加剤に母材と異なる発光希土類元素(ドーパント)の化合物を用い、これらの粉末を界面活性剤およびpH調整剤によりミセル構造とし、均一沈殿法により微細な沈殿物とした後で、焼成して得られる。換言すれば、ミセル構造となり、焼成により母材の酸化物にドーパントがドープされれば化合物の種類は特に限定されない。焼成により酸化物を形成する観点からは、硝酸塩や酸化物を原料とするのが好ましい。

【0032】
<発光強度の比較>
Euは、希土類の中で発光しやすい性質を持つため、希土類として最も発光体材料として用いられている。実際、Euの酸化物や硝酸塩でも発光が観測される。そこで、市販の酸化物とEu@Yとの発光強度を比較することとした。用いた市販の酸化ユウロピウムは和光純薬工業株式会社製の054-04643(型番)である。
実験は、紫外線(波長254nm)をそれぞれ同出力、等距離にて試料に照射させるようにし、発光量を比べておこなった。結果を図15に示す。図では左側が市販品の酸化ユウロピウム、右が本発明による試料である。図から明らかなように、本発明の製造方法によるEu@Yの方が、明らかによく光っていることが目視でも確認できた。なお、Tb@Yと市販の酸化テルビウムとの比較のほか、本発明による他の希土類酸化物のナノ粒子と、市販の希土類酸化物との、紫外線励起(波長254nmおよび265nm)による発光強度の比較をおこなおうとしたが、本発明の製造方法によるナノ粒子は前述のように発光が観測されたものの、市販の酸化物では少なくとも可視光域の目視可能な発光は全く観測されなかった。

【0033】
<カラーチューニング1>
本発明により得られる酸化物は、概ね単数または少数の鋭いピークを有し、単色発光またはそれに類する発光物質であるといえる。従って、この特徴を利用して、中間色発光、すなわち、色相調整が可能であるかを検討した。実験では、添加剤としてEuとTbの硝酸塩を、それぞれ、質量比でEu:Tb=0:1,1:2,1:1,1:0とし、実施の形態1および2と同様に、これ(これら)がドープされた酸化イットリウム粉末を作成した。得られた各試料に254nmの紫外線を照射して、その発光色の変化を調べた。図16にその結果を示す。Eu@YとTb@Yでは、Eu@Yの方が発光強度が大きいため、Eu:Tb=1:2のとき黄色となるが、添加割合ないし混合比を変えることにより、簡便に中間色の発光が得られることが確認できた。

【0034】
なお、この例では、SDS溶液に二種類の発光希土類元素の化合物を添加し、焼結段階で両方の希土類元素が酸化イットリウムにドープされたナノ粒子が形成されているが、希土類元素がドープされたそれぞれの酸化イットリウム粉末を混合しても同様に調光可能であることも確認した。

【0035】
<カラーチューニング2>
一方、Eu@YとTb@Yの励起波長が異なるため、励起波長側を変化させることにより発色を調整することも検討した。質量比Eu:Tb=1:2で混合した添加剤を用いて得た酸化イットリウム粉末について、照射光を240nm~270nmまで変化させた場合の発光色の変化を図17に示した。図に示したように、橙から緑色に連続的に色相が変化することを確認した。

【0036】
以上から、本発明による酸化イットリウムのナノ粒子は、希土類添加剤の配合比によっても、単体で得られたものの混合比によっても、さらには、照射光の波長を変えることによっても、簡便に所望の色を発色させることができることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明により得られる発光物質は、ナノ粒子であるため、微小空間(ナノ~マイクロメートル)における発光マーカとして利用できる。例えば、細胞やバクテリアなどに注入し、機能発現部位や病斑形成部に選択的に付着させ、紫外線照射によって当該部位を視覚化できる。また、色相制御が容易であるので、異なる部位に付着させたマーカを異なる色で発光させるといった利用も可能である。
【0038】
この他、紫外線照射により可視光領域で発光するので、セキュリティ材料への適用も可能である。具体的には、有価証券やクレジットカードに印刷して、紫外線照射により真贋確認ができ、偽造防止技術としても利用できる。また、一般顧客には視認の必要がないものの、店舗や管理者にのみ認識可能な情報を印刷する材料としても利用できる。
【0039】
また、発光色が、発光希土類の添加割合および照射波長によって制御できるので、添加元素数を4,配合比を総計100%となるように1%ずつ異ならせ、かつ、10種類の励起波長で照射するとすれば、得られるパタンは理論的には約15万通りとなる。従って、この情報をナノ空間に閉じこめることが可能であるので、情報素材としての利用も可能である(例えば、バーコードの発展形としての利用が可能である)。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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