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明細書 :希土類錯体ポリマー及びプラスチック成形体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5904600号 (P5904600)
登録日 平成28年3月25日(2016.3.25)
発行日 平成28年4月13日(2016.4.13)
発明の名称または考案の名称 希土類錯体ポリマー及びプラスチック成形体
国際特許分類 C08G  79/14        (2006.01)
C08L  85/02        (2006.01)
C08L 101/00        (2006.01)
C08K   5/5397      (2006.01)
C08K   5/07        (2006.01)
C09K  11/06        (2006.01)
FI C08G 79/14
C08L 85/02
C08L 101/00
C08K 5/5397
C08K 5/07
C09K 11/06 680
請求項の数または発明の数 4
全頁数 18
出願番号 特願2013-513088 (P2013-513088)
出願日 平成24年5月1日(2012.5.1)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 発行日 平成24年2月14日 刊行物 ChemPlusChem Volume 77,Issue 4,pages 277ー280,April 2012
国際出願番号 PCT/JP2012/061562
国際公開番号 WO2012/150712
国際公開日 平成24年11月8日(2012.11.8)
優先権出願番号 2011103136
優先日 平成23年5月2日(2011.5.2)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年3月6日(2015.3.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
発明者または考案者 【氏名】長谷川 靖哉
【氏名】宮田 康平
【氏名】伏見 公志
【氏名】加藤 昌子
【氏名】小林 厚志
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100113435、【弁理士】、【氏名又は名称】黒木 義樹
審査官 【審査官】佐藤 のぞみ
参考文献・文献 特開2010-95514(JP,A)
特開2010-278376(JP,A)
特開2008-255047(JP,A)
特開平11-260552(JP,A)
国際公開第2007/068672(WO,A1)
調査した分野 C08G 79/00-79/14
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00-13/08
C09K 11/00-11/89
C07F 9/00-19/00
C07C 1/00-409/44
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)


特許請求の範囲 【請求項1】
三価の希土類イオンと、ホスフィンオキシド多座配位子と、をそれぞれ複数含み、前記ホスフィンオキシド多座配位子が複数の前記希土類イオンに配位して形成された架橋構造を含み、
前記ホスフィンオキシド多座配位子が、下記式(1)で表される構造を有するホスフィンオキシド二座配位子であり、
【化1】
JP0005904600B2_000012t.gif
[式(1)中、R11は、二価の有機基、Ar12、Ar13、Ar14及びAr15は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい一価の芳香族基を示す。Ar12とAr13、及びAr14とAr15は、互いに直接結合していてもよく、連結基を介して結合していてもよい。nは、1~20の整数である。]
前記R11が、下記式(3a)で表される基、下記式(3b)で表される基、下記式(3c)で表される基又は下記式(3d)で表される基であり、
【化2】
JP0005904600B2_000013t.gif
[式中、Rは一価の有機基であり、mは、0から、Rが結合している環における置換可能な部位の数までの整数であり、Phはフェニル基である。mが2以上である場合、複数のRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
前記希土類イオンが、Eu(III)イオン、Tb(III)イオン、Sm(III)イオン、Yb(III)イオン、Nd(III)イオン又はEr(III)イオンである、
希土類錯体ポリマー。
【請求項2】
前記希土類イオンに、下記式(2)で表される配位子が更に配位している、請求項1記載の希土類錯体ポリマー。
【化3】
JP0005904600B2_000014t.gif
[式中、Aは水素原子又はハロゲン原子、Zは水素原子又は重水素原子を示す。]
【請求項3】
一つの前記希土類イオンは、当該希土類イオンに対してそれぞれ1つの部位で配位している複数の前記ホスフィンオキシド多座配位子と、
当該希土類イオンに対してそれぞれ2つの部位で配位している複数の前記式(2)で表される配位子とにより、8配位以上の配位数となる配位構造を形成している、請求項2記載の希土類錯体ポリマー。
【請求項4】
プラスチック材料と、前記プラスチック材料中に分散された請求項1~3のいずれか一項に記載の希土類錯体ポリマーと、を含有するプラスチック成形体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類錯体ポリマー及びプラスチック成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック材料に対して、識別情報を付与するために蛍光体を配合することが検討されている。例えば、食品トレーに利用されているプラスチック材料に蛍光体を配合し、そのトレーから発せられる蛍光を検出することで、バーコード等と同様に情報を読み取ることができる。そのため、プラスチック材料に蛍光体を配合することによってトレーに食品の産地などの情報を付与することができる。この場合、蛍光体を配合させたプラスチック材料から蛍光を検出するためには、特定の波長の光を照射する必要があるが、用いる蛍光体の種類によって得られる蛍光スペクトルも様々であるので、暗号として情報を付与することができる。このような性質を利用して、蛍光体を用いて暗号情報を付与する技術が注目されている。
【0003】
プラスチック材料は、一般に高温(例えば、ポリカーボネート製品では、300℃程度)で溶融させて成形加工されるため、蛍光体には、成形加工プロセスにおける高温の加熱後でも、分解せずに十分な強度の蛍光発光を生じ得ることが求められる。カラーテレビのブラウン管に使用されているようなY:Euなどの無機蛍光体を用いた場合、耐熱性には問題がないものの、無機蛍光体はプラスチック材料に溶解しないため、均一に分散させることができないという問題があった。また、無機蛍光体には、有機溶媒中では蛍光発光が観察されるものの、プラスチック材料に配合したときには蛍光を生じないという問題もあった。
【0004】
これに対し、希土類イオンに有機配位子が配位した有機希土類錯体は、プラスチック材料中に均一に分散することが可能であり、またプラスチック材料に分散させても蛍光を生じることができることが知られている。しかしながら、これまで、有機希土類錯体は、プラスチック材料の成形加工に必要な温度まで加熱されると、錯体を構成している配位子が分解してしまうため、プラスチック材料に配合することが困難な傾向にあった。
【0005】
そのような状況下、下記特許文献1には、希土類イオンに光増感機能を有する分子の一種以上を配位させた複核希土類錯体は、高い耐熱性を有することから、プラスチック材料に配合して成形加工することが可能であることが示されている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】国際公開第2005/044770号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
有機希土類錯体をプラスチック材料に配合する蛍光体として用いる場合、上記のように、高い耐熱性を有することが求められる。そのほか、有機希土類錯体に対しては、用途によって、更に高い発光強度や、高い光耐久性を有することが求められる場合もある。有機希土類錯体の特性は、希土類イオンや配位子の構造によって大きく変わることから、近年では、優れた耐熱性を有する有機希土類錯体として、様々な要求特性に対応するために、多様な構造のものが求められている。
【0008】
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、プラスチック材料に配合して成形加工するために十分な耐熱性を有する希土類錯体ポリマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の希土類錯体ポリマーは、三価の希土類イオンと、ホスフィンオキシド多座配位子とをそれぞれ複数含み、且つ、ホスフィンオキシド多座配位子が複数の希土類イオンに配位して形成された架橋構造を含むことを特徴とする。
【0010】
上記構成を有する本発明の希土類錯体ポリマーは、希土類イオンに有機配位子であるホスフィンオキシド多座配位子が配位した構造を有することから、プラスチック材料への均一な分散が可能である。また、この希土類錯体ポリマーは、希土類イオンがホスフィンオキシド多座配位子によって架橋された構造を含むことから、安定な分子構造を有している。そのため、プラスチック材料に配合されて高温での成形加工に供されても分解し難く、優れた耐熱性を発揮することができる。さらに、本発明の希土類錯体ポリマーは、希土類イオンに配位する配位子がホスフィンオキシド多座配位子であるため、発光強度や光耐久性の低下の原因となる水素原子を少なくすることができる。
【0011】
したがって、本発明の希土類錯体ポリマーは、優れた耐熱性を有することから蛍光体としてプラスチック材料に配合して成形加工することが可能であり、しかも、高い発光強度及び光耐久性を発揮することもできる。
【0012】
本発明の希土類錯体ポリマーにおいて、ホスフィンオキシド多座配位子が、下記式(1)で表される構造を有するホスフィンオキシド二座配位子であると、上述した効果が更に良好に得られる傾向にある。
【化1】
JP0005904600B2_000002t.gif
[式(1)中、R11は、二価の有機基、Ar12、Ar13、Ar14及びAr15は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい一価の芳香族基を示し、Ar12とAr13、及びAr14とAr15は、互いに直接結合していてもよく、また所定の基を介して結合していてもよい。nは、1~20の整数である。]
【0013】
また、上記効果を一層良好に得る観点からは、希土類錯体ポリマーにおいて、希土類イオンに、下記式(2)で表される配位子が更に配位していることが好ましい。さらに、一つの希土類イオンが、当該希土類イオンに対してそれぞれ1つの部位で配位している複数のホスフィンオキシド多座配位子と、当該希土類イオンに対してそれぞれ2つの部位で配位している複数の式(2)で表される配位子とにより、8配位以上の配位数となる配位構造を形成していると好ましい。
【化2】
JP0005904600B2_000003t.gif
[式(2)中、Aは水素原子又はハロゲン原子、Zは水素原子又は重水素原子を示す。]
【0014】
上記式(1)で表される構造を有するホスフィンオキシド二座配位子は、R11が、下記式(3a)で表される基、下記式(3b)で表される基、下記式(3c)で表される基又は下記式(3d)で表される基であると好ましい。このような構造を有するホスフィンオキシド二座配位子を含む希土類錯体ポリマーによれば、上述した効果が一層良好に得られるようになる。
【化3】
JP0005904600B2_000004t.gif
[式中、Rは一価の有機基であり、mは、0から、Rが結合している環における置換可能な部位の数までの整数であり、Phはフェニル基である。mが2以上である場合、複数のRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
【0015】
本発明はまた、プラスチック材料と、このプラスチック材料中に分散された上記本発明の希土類錯体ポリマーとを含有するプラスチック成形体を提供する。かかる本発明のプラスチック成形体は、上記本発明の希土類錯体ポリマーを含むことから、高温が必要とされるプラスチック材料を適用した場合でも加工が可能であり、しかも、加工後にも高い発光強度を維持可能なものとなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、プラスチック材料に配合して成形加工するために十分な耐熱性を有しており、しかも、高い発光強度及び光耐久性を発揮することができる希土類錯体ポリマーを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1の希土類錯体ポリマーである[Eu(hfa)(dpb)]の380nm励起(配位子励起)による固体状態の発光スペクトルを示す図である。
【図2】実施例1~3の希土類錯体ポリマー及び比較例1の希土類錯体について、TG-DTAによる熱重量分析を行った結果を示すグラフである。
【図3】実施例4、5及び7の希土類錯体ポリマー並びに比較例2の希土類錯体の固体状態の拡散反射吸収スペクトル、並びに、実施例1、2及び4の希土類錯体ポリマーの465nm励起(配位子励起)による固体状態の発光スペクトルを示す図である。
【図4】実施例8及び9の希土類錯体ポリマーである[Tb(hfa)(dpb)]及び[Tb(hfa)(dpbp)]の360nm励起(配位子励起)による固体状態の発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。

【0019】
本発明の好適な実施形態に係る希土類錯体ポリマーは、三価の希土類イオンと、ホスフィンオキシド多座配位子とをそれぞれ複数含み、ホスフィンオキシド多座配位子が複数の希土類イオンに配位して形成された架橋構造を含む。かかる希土類錯体ポリマーにおいては、ホスフィンオキシド多座配位子が有している複数の配位可能な部位が、それぞれ異なる希土類イオンに配位することによって、希土類イオンが、ホスフィンオキシド多座配位子からなる架橋構造を介して複数連続して配置された高分子状の構造が形成されている。このように、本明細書における錯体ポリマーとは、複数の金属イオンが配位子による配位結合を介して複数連結された構造を有するものをいう。

【0020】
三価の希土類イオンとしては、例えば、Eu(III)イオン、Tb(III)イオン、Sm(III)イオン、Yb(III)イオン、Nd(III)イオン、Er(III)イオンが挙げられる。なかでも、高い発光強度及び耐熱性を得る観点からは、Eu(III)イオン又はTb(III)イオンが好ましく、Eu(III)イオンが更に好ましい。

【0021】
ホスフィンオキシド多座配位子としては、下記式(1)で表される構造を有するホスフィンオキシド二座配位子が挙げられる。
【化4】
JP0005904600B2_000005t.gif

【0022】
式(1)中、R11は、二価の有機基を示す。二価の有機基は特に限定されず、複数の基が連結した基であってもよい。R11としては、例えば、二価の不飽和基、二価の芳香族基、オキシアルキレン基等が挙げられ、これらの基には更に他の基が結合していてもよい。また、R11は、これらの二価の基が複数結合して構成される基であってもよく、さらにポリマー状の構造を有する基であってもよい。

【0023】
ここで、二価の不飽和基としては、ビニレン基等のアルケニレン基が挙げられる。芳香族基とは、リン原子との2つの結合手を有する芳香環からなる基であり、芳香環は、リン原子との結合部位以外において更に置換基を有していてもよい。この芳香環としては、ベンゼン環、チオフェン環、ピリジン環等が挙げられる。オキシアルキレン基としては、オキシメチレン基等が挙げられる。また、これらの二価の基が複数結合した基としては、例えば、2つ以上の芳香環が結合した基や、両末端でリン原子と結合するポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)からなる基等が挙げられる。

【0024】
なかでも、R11としては、少なくとも一つの芳香環を含む基が好ましく、複数の芳香環を含む基であるとより好ましい。R11が、芳香環を含む、特に芳香環を複数含むことにより、希土類錯体ポリマーの耐熱性が更に高められる傾向にある。より優れた耐熱性を得る観点からは、R11としては、下記式(3a)、(3b)、(3c)又は(3d)で表される基が好ましく、下記式(3b)又は(3c)で表される基がより好ましく、下記式(3c)で表される基がさらに好ましい。
【化5】
JP0005904600B2_000006t.gif

【0025】
式(3a)、(3b)、(3c)及び(3d)中、Rは一価の有機基であり、mは、0から、Rが結合している芳香環(ベンゼン環又はチオフェン環)における置換可能な部位の数までの整数であり、Phはフェニル基である。mが2以上である場合、複数のRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Rとしての一価の有機基としては、CからC20の炭化水素基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メルカプト基等が挙げられる。

【0026】
また、式(1)中、Ar12、Ar13、Ar14及びAr15は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい一価の芳香族基である。一価の芳香族基とは、リン原子との結合手を一つ有する芳香環からなる基であり、この芳香環は、リン原子との結合部位以外において更に置換基を有していてもよい。芳香環としては、R11において二価の芳香族基を形成し得る芳香環と同じものが挙げられる。また、置換基としては、Rとしての一価の有機基と同じ基や、ホスフィンオキシド基(-P(=)R3132で表される基;R31やR32としては、Ar12、Ar13、Ar14及びAr15と同じ基が挙げられる。)等が例示される。Ar12、Ar13、Ar14及びAr15を構成する芳香環が、置換基としてホスフィンオキシド基を有する場合は、この部分において希土類イオンに配位してもよい。さらに、Ar12とAr13、及びAr14とAr15は、互いに直接結合していてもよく、また、アルキレン基、アリーレン基、カルボニル基等の二価の有機基からなる連結基を介して結合していてもよい。

【0027】
Ar12、Ar13、Ar14及びAr15としては、それぞれ独立に、下記式(6)で表される基が挙げられる。
【化6】
JP0005904600B2_000007t.gif
[式(6)中、R61、R62、R63、R64及びR65は、それぞれ独立に、水素原子、CからC20の炭化水素基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基又はメルカプト基を示す。]

【0028】
希土類錯体ポリマーを構成している希土類イオンには、安定な錯体構造を取る観点から、上記ホスフィンオキシド多座配位子やその他の配位子が複数配位していることが好ましい。高い耐熱性を得るとともに、発光強度等の特性を良好に得る観点からは、一つの希土類イオンには、2つ以上の部位でホスフィンオキシド多座配位子が配位し、且つその他の部位に他の配位子が更に配位していることが好ましい。

【0029】
他の配位子としては、希土類錯体ポリマーの耐熱性を高めるために、多座配位子が好ましい。なかでも、アセチルアセトナート又はその誘導体からなる配位子が好ましい。このような配位子としては、下記式(2)で表される配位子が挙げられる。なかでも、他の配位子としては、高い耐熱性を得る観点から、ヘキサフルオロアセチルアセトナートからなる配位子がより好ましい。
【化7】
JP0005904600B2_000008t.gif
[式中、Aは水素原子又はハロゲン原子、Zは水素原子又は重水素原子を示す。]

【0030】
耐熱性、発光強度及び光耐久性を好適に得るために、希土類錯体ポリマーにおいては、一つの希土類イオンが、当該希土類イオンにそれぞれ1つの部位で配位している2つ以上のホスフィンオキシド二座配位子と、当該希土類イオンにそれぞれ2つの部位で配意している2つ以上の上記式(2)で表される配位子とにより、8配位以上の配位数の配位構造を形成していることが好ましい。

【0031】
好適な希土類錯体ポリマーの一例として、下記式(4)で表される構造を有するものが挙げられる。この例の希土類錯体ポリマーは、希土類イオンが、Eu(III)イオンであり、ホスフィンオキシド多座配位子が、上記R11で表される二価の基としてArで表される二価の芳香族基を有しており、Ar12、Ar13、Ar14及びAr15としてフェニル基を有しており、且つ、Eu(III)イオンにはヘキサフルオロアセチルアセトナートが配位しており、Eu(III)イオンにより8配位型の配位構造が形成されているものである。
【化8】
JP0005904600B2_000009t.gif

【0032】
本実施形態の希土類錯体ポリマーは、例えば、希土類イオンの原料である希土類金属化合物と配位子となるべき化合物とを、必要に応じて触媒の存在下で、これらを溶解または分散できる溶媒中にて攪拌する方法(液-液拡散法)によって合成することができる。溶媒としては、希土類金属化合物及び配位子となるべき化合物に対してそれぞれ好適なものを混合して用いてもよく、例えば、ジクロロメタン/メタノールの混合溶媒を適用することができる。触媒としては、例えば、必要に応じてトリメチルアミンや水酸化リチウム等を添加することができる。

【0033】
本実施形態の希土類錯体ポリマーは、蛍光体としての特性を有しており、また有機配位子を有することからプラスチック材料への分散性が良好であり、しかも優れた耐熱性を有している。そのため、この希土類錯体ポリマーは、プラスチック材料に配合してから成形加工を行うことが可能な蛍光体として適用することができる。

【0034】
希土類錯体ポリマーを配合させるプラスチック材料は、特に制限されず、種々の材料を適用することができる。プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、尿素樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が挙げられる。

【0035】
希土類錯体ポリマーを配合して成形加工する方法としては、特に限定されないが、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、押出成形、反応成形、中空成形、熱成形、FRP成形等が挙げられる。これらの成形方法では、高温、特にポリカーボネート樹脂を用いる場合には約300℃の高温が必要となる。これに対し、本実施形態の希土類錯体ポリマーは、配位子の構造等を適宜選択することによって、300℃を超えるような高温であっても安定に存在でき、高い発光強度を維持することができるので、上述したようなプラスチック材料に配合して成形加工を行うことが可能である。

【0036】
そして、本実施形態の希土類錯体ポリマーは、希土類イオンがホスフィンオキシド多座配位子によって架橋された構造を少なくとも有することから、高い耐熱性及び発光強度に加えて、分光スペクトルを行ったときのピークの半値幅が狭く、美しい発光色を呈することができるほか、量子放射効率や蛍光寿命といった点でも優れた効果を奏することができる。
【実施例】
【0037】
[実験例A]
(希土類錯体ポリマーの合成)
まず、Eu(III)イオンの原料である酢酸ユーロピウムと、上記式(2)で表される配位子の原料である1,1,1,5,5-ヘキサフルオロ-2,4-ペンタンジオンとを混合して、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユーロピウム(III)を合成した。
【実施例】
【0038】
次いで、このトリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユーロピウム(III)、及び、ホスフィンオキシド二座配位子の原料となる化合物を含むメタノール溶液を準備し、この溶液を還流しながら12時間攪拌した。その後、得られた反応混合物をロータリーエバポレーターにより濃縮し、さらにメタノールを用いて再結晶を行うことにより精製して、目的とする希土類錯体ポリマーを得た。本例では、上記式(4)において、Arが上記式(3a)で表される基(m=0)である希土類錯体ポリマー([Eu(hfa)(dpb)]、実施例1)、Arが上記式(3b)で表される基(m=0)である希土類錯体ポリマー([Eu(hfa)(dpbp)]、実施例2)及びArが上記式(3c)で表される基(m=0)である希土類錯体ポリマー([Eu(hfa)(dpbt)]、実施例3)の3種類の希土類錯体ポリマーを合成した。
【実施例】
【0039】
また、比較例として、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユーロピウム(III)及び1,1’-ビフェニル-2,2’-ジイルビス(ジフェニルホスフィンオキシド(BIPHEPO)を含むメタノール溶液を準備し、この溶液を還流しながら12時間攪拌した。その後、得られた反応混合物をロータリーエバポレーターにより濃縮し、さらにメタノールを用いて再結晶を行うことにより精製して、ホスフィンオキシド二座配位子による架橋構造が形成されていない希土類錯体を合成した(下記式(5)で表される化合物、Eu(hfa)(BIPHEPO)、比較例1)。
【化9】
JP0005904600B2_000010t.gif
【実施例】
【0040】
(特性評価)
まず、実施例1~3の希土類錯体ポリマー及び比較例1の希土類錯体を、X線構造解析により分析した結果、一つのEu(III)イオンに対し、2分子(実施例1~3)又は1分子(比較例1)のホスフィンオキシド二座配位子が2箇所において配位し、また3分子のヘキサフルオロアセチルアセトナート(Hfa)が6箇所において配位しており、8配位型の錯体構造が形成されていることが分かった。
【実施例】
【0041】
また、一例として、実施例1の希土類錯体ポリマーである[Eu(hfa)(dpb)]の380nm励起(配位子励起)による固体状態の発光スペクトルを図1に示す。図1に示すように、この希土類錯体ポリマーでは、Eu(III)のf-f電子遷移に基づく578nm、592nm、613nm及び649nmの発光が観察された。
【実施例】
【0042】
さらに、実施例1~3の希土類錯体ポリマー及び比較例1の希土類錯体について、TG-DTAによる熱重量分析を行った。得られた結果を図2に示す。図2中、(a)は[Eu(hfa)(BIPHEPO)](比較例1)、(b)は[Eu(hfa)(dpb)](実施例1)、(c)は[Eu(hfa)(dpbp)](実施例2)、(d)は[Eu(hfa)(dpbt)](実施例3)の結果を示している。
【実施例】
【0043】
これらの結果より、各実施例及び比較例の希土類錯体ポリマー又は希土類錯体の熱分解温度は、次のように算出された。
[Eu(hfa)(dpb)](実施例1):230℃
[Eu(hfa)(dpbp)](実施例2):290℃
[Eu(hfa)(dpbt)](実施例3):310℃
[Eu(hfa)(BIPHEPO)](比較例1):210℃
【実施例】
【0044】
このように、実施例1~3の希土類錯体ポリマーは、比較例1の希土類錯体に比して高い熱分解温度を有しており、優れた耐熱性を有していることが判明した。
【実施例】
【0045】
[実験例B]
以下の方法にしたがって、各種の配位子の原料を合成し、さらにそれを用いて各種の希土類錯体ポリマーを合成した。なお、下記の各種分析は、次の条件で行った。IR測定は、日本光学社製、FT/IR-350を用いて行った。H-NMR測定は、日本電子社製、JNM-EX270(270MHz)を用いて行い、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準として化学シフトを決定した。元素分析及び質量分析は、北海道大学機器分析部門にて行った。熱重量測定は、リガク社製TermoEvo TG8120を用い、アルゴン雰囲気下、1℃/分の昇温速度で行った。DSC測定は、マックサイエンス社製、DSC3220を用い、2℃/分の昇温速度で行った。
【実施例】
【0046】
(配位子の原料の合成)
<1,4-ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン(dpb)の合成>
100mLの三口フラスコをフレームドライして、内部をArで置換した。この三口フラスコに、0.80mL(8.0mmol)の1,4-ジフルオロベンゼンを入れ、さらに40mLのカリウムジフェニルホスファイド溶液(0.5MTHF溶液、20mmol)をシリンジでゆっくり加え、室温で1時間攪拌し、その後、12時間還流した。このとき、溶液の色は赤褐色から濁った黄色へと変化した。還流後、反応を止め、THFを減圧留去し、さらにメタノール(約40mL)を加えた。この溶液を加熱し、30分還流した後、メタノールをデカントして、灰色の粉末を得た。
【実施例】
【0047】
次に、上記で得られた灰色の粉末及び約20mLのジクロロメタンをフラスコに入れ、この溶液を0℃に冷却して、そこに30%の過酸化水素水(約5mL)を加えた。この混合物を2時間攪拌した。反応後、生成物をジクロロメタンで抽出し、飽和食塩水で3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、さらにエバポレータで溶媒を留去した。濃縮物を、ジクロロメタンで再結晶して、1,4-ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン(dpb)の白色の結晶を得た(収量:2.5g(収率:66%))。生成物の分析結果は以下の通りであった。
【実施例】
【0048】
IR(KBr):1121(st、P=O)cm-1
H-NMR(270MHz,CDCl,25℃)δ7.48-7.78(m、24H;P-C,C)ppm.
ESI-Mass(m/z)=479.1[M+H]
元素分析:(C3024の計算値):C,75.31;H,5.06%、(実測値):C,74.86;H,5.11%
【実施例】
【0049】
<1,4-ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル(dpbp)の合成>
100mLの三口フラスコをフレームドライして、内部をArで置換した。この三口フラスコに、1.9g(6.0mmol)の4,4’-ジブロモビフェニル及び30mLのTHFを入れ、液体窒素/エタノールで約—80℃に冷却した。この溶液に、9.3mL(15mmol)の1.6Mのn-ブチルリチウムヘキサン溶液をシリンジでゆっくり添加した。この添加は、約15分かけて行い、この間、黄色の析出物が生成した。この溶液を-10℃で3時間攪拌した。次に、溶液を再び-80℃に冷却した後、2.7mL(15mmol)のジクロロフェニルホスファイドを滴下し、14時間攪拌させながら徐々に室温に戻した。その後、反応を止め、酢酸エチルで抽出を行った。得られた溶液を飽和食塩水で3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレータで溶媒を留去した。得られた組成生物を、アセトン及びエタノールで複数回洗浄することにより精製し、白色の粉末を得た。
【実施例】
【0050】
次に、上記で得られた白色の粉末及び約40mLのジクロロメタンをフラスコに入れ、この溶液を0℃に冷却し、そこに30%の過酸化水素水(約5mL)を加えた。この混合物を、2時間攪拌した。生成物をジクロロメタンで抽出した後、抽出液を飽和食塩水で3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、エバポレータで溶媒を留去して、白色の粉末を得た。この白色の粉末をジクロロメタンで再結晶して、1,4-ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル(dpbp)の白色の結晶を得た(収量:1.1g(収率:33%))。生成物の分析結果は以下の通りであった。
【実施例】
【0051】
IR(KBr):1120(st、P=O)cm-1
H-NMR(270MHz,CDCl,25℃)δ7.67-7.80(m、16H;P-C,C),7.45-7.60(m、12H;P-C,C)ppm.
ESI-Mass(m/z)=555.2[M+H]
元素分析:(C3628の計算値):C,77.97;H,5.09%、(実測値):C,77.49;H,5.20%
【実施例】
【0052】
<4,4-ビス(ジフェニルホスホリル)ビチオフェン(dpbt)の合成>
100mLの三口フラスコをフレームドライして、内部をArで置換した。この三口フラスコに、1.2g(7.2mmol)のビチオフェン及び20mLのTHFを入れ、液体窒素/エタノールで約-80℃に冷却した。この溶液に、13mL(20mmol)の1.6Mのn-ブチルリチウムヘキサン溶液をシリンジでゆっくり添加した。この添加は、約15分かけて行い、この間、黄色の析出物が生成した。この溶液を-10℃で3時間攪拌した後、この溶液に3.7mL(20mmol)のクロロジフェニルホスファイドを-80℃で滴下した。この溶液を18時間攪拌させながら徐々に室温に戻した。生成物を酢酸エチルで抽出した後、抽出物を飽和食塩水で3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレータで溶媒を留去した。得られた組成生物を、メタノールで繰り返し洗浄して、黄色の粉末を得た。
【実施例】
【0053】
次に、得られた黄色の粉末及び約40mLのジクロロメタンをフラスコに入れ、この溶液を0℃に冷却し、そこに30%の過酸化水素水(10mL)を加えた。この混合物を、2時間攪拌した。生成物をジクロロメタンで抽出した後、抽出液を飽和食塩水で3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、エバポレータで溶媒を留去して、黄色の粉末を得た。この黄色の粉末をジクロロメタンで再結晶して、4,4-ビス(ジフェニルホスホリル)ビチオフェン(dpbt)の黄色の結晶を得た(収量:1.4g(収率:31%))。生成物の分析結果は以下の通りであった。
【実施例】
【0054】
IR(KBr):1122(st,P=O)
H-NMR(270MHz,CDCl,25℃)δ7.45-7.79(m、20H;P-C),7.33-7.37(m,2H;CS),7.24-7.27(m,2H;CS)ppm.
ESI-Mass(m/z)=567.1[M+H]
元素分析:(C3224の計算値):C,67.83;H,4.27%、(実測値):C,67.13;H,4.40%
【実施例】
【0055】
<3,6-ビス(ジフェニルホスホリル)-9-フェニルカルバゾール(dppcz)の合成>
100mLの三口フラスコをフレームドライして、内部をArで置換した。この三口フラスコに、2.4g(6.0mmol)の3,6-ジブロモ-9-フェニルカルバゾール及び30mLのTHFを入れ、液体窒素/エタノールで約-80℃に冷却した。この溶液に、8.8mL(14mmol)の1.6Mのn-ブチルリチウムヘキサン溶液をシリンジでゆっくり添加した。この添加は、約10分かけて行い、この間、黄白色の析出物が生成した。この溶液を-10℃で2時間攪拌した後、この溶液に2.6mL(14mmol)のジクロロフェニルホスファイドを-80℃で滴下した。この溶液を徐々に室温に戻し、18時間攪拌させて、白色の析出物を得た。この析出物をろ過し、メタノールで数回洗浄し、その後真空下で乾燥させた。
【実施例】
【0056】
次に、上記で得られた白色の粉末及び約40mLのジクロロメタンをフラスコに入れ、この溶液を0℃に冷却し、そこに30%の過酸化水素水(8mL)を加えた。この混合物を、2時間攪拌した。生成物をジクロロメタンで抽出した後、抽出液を飽和食塩水で3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、エバポレータで溶媒を留去して、白色の粉末を得た。この白色の粉末をジクロロメタン/ヘキサンで再結晶して、3,6-ビス(ジフェニルホスホリル)-9-フェニルカルバゾール(dppcz)の無色の結晶を得た(収量:2.0g(収率:53%))。生成物の分析結果は以下の通りであった。
【実施例】
【0057】
IR(KBr):1122(st,P=O)cm-1
H-NMR(270MHz,CDCl,25℃)δ8.43-8.47(d,J=10.8Hz,2H;P-C),7.63-7.76(m,11H;CS),7.43-7.60(m,18H;CS)ppm.
ESI-Mass(m/z)=644.2[M+H]
元素分析:(C4331NOの計算値):C,78.37;H,4.85;N,2.18%、(実測値):C,78.42;H,5.00;N,2.18%
【実施例】
【0058】
(希土類錯体ポリマーの合成;実施例4~8)
上記で得た配位子の原料の1等量、及び、[Eu(hfa)(HO)]の1等量をクロロホルム(20mL)に溶解した。この溶液を8時間攪拌しながら還流した。その後、得られた反応混合物を濃縮して乾燥させた。そして、メタノール-クロロホルム溶液の液-液拡散法により、希土類錯体ポリマーを得た。
【実施例】
【0059】
本例では、配位子の原料として、上述したdpb、dpbp、dpbt及びdppczをそれぞれ用いることで、上記式(4)において、Arが上記式(3a)で表される基(m=0)である希土類錯体ポリマー([Eu(hfa)(dpb)]、実施例4)、Arが上記式(3b)で表される基(m=0)である希土類錯体ポリマー([Eu(hfa)(dpbp)]、実施例5)、Arが上記式(3c)で表される基(m=0)である希土類錯体ポリマー([Eu(hfa)(dpbt)]、実施例6)及びArが上記式(3d)で表される基(m=0)である希土類錯体ポリマー([Eu(hfa)(dppcz)]、実施例7)の4種類の希土類錯体ポリマーを合成した。
【実施例】
【0060】
得られた核希土類錯体ポリマーの収量(収率)及び分析結果は以下の通りであった。
[Eu(hfa)(dpb)]
収量:60mg(収率42%、モノマー換算)
IR(KBr):1652(st,C=O)、1256-1145(st,C-F)、1128(st,P=O)cm-1
ESI-Mass(m/z)=1045.05[Eu(hfa)(dpb)]、2297.18[Eu(hfa)(dpb)
元素分析:([C4527EuF18の計算値)、C,43.18;H,2.17%、(実測値)、C,43.12;H,2.28%
【実施例】
【0061】
[Eu(hfa)(dpbp)]
収量:98mg(収率67%、モノマー換算)
IR(KBr):1653(st,C=O)、1255-1145(st,C-F)、1127(st,P=O)cm-1
ESI-Mass(m/z)=1120.08[Eu(hfa)(dpbp)]、2447.15[Eu(hfa)(dpbp)
元素分析:([C5131EuF18の計算値)、C,46.14;H,2.35%、(実測値)、C,45.59;H,2.49%
【実施例】
【0062】
[Eu(hfa)(dpbt)]
収量:160mg(収率68%、モノマー換算)
IR(KBr):1651(st,C=O)、1254-1145(st,C-F)、1128(st,P=O)cm-1
ESI-Mass(m/z)=1133.00[Eu(hfa)(dpbt)]、2473.02[Eu(hfa)(dpbt)
元素分析:([C4727EuF18の計算値)、C,42.14;H,2.03%、(実測値)、C,42.67;H,2.12%
【実施例】
【0063】
[Eu(hfa)(dppcz)]
収量:110mg(収率50%、モノマー換算)
IR(KBr):1652(st,C=O)、1256-1145(st,C-F)、1128(st,P=O)cm-1
ESI-Mass(m/z)=1210.13[Eu(hfa)(dppcz)]、1853.34[Eu(hfa)(dppcz)
元素分析:([C5734EuF18NOの計算値)、C,48.32;H,2.42;N,0.99%、(実測値)、C,48.32;H,2.42;N,1.06%.
【実施例】
【0064】
また、比較例として、[Eu(hfa)(BIPHEPO)](比較例2)を上述した比較例1と同様に合成するとともに、[Eu(hfa)(HO)](比較例3)で表されるホスフィンオキシド配位子を有しない希土類錯体を合成した。
【実施例】
【0065】
なお、X線構造解析により分析した結果、実施例4~7の各希土類錯体ポリマーも、実施例1~3の希土類錯体ポリマーと同様の8配位型の錯体構造を有していることが確認された。
【実施例】
【0066】
(特性評価)
上述した希土類錯体ポリマーのうち、実施例4、5及び7の希土類錯体ポリマー並びに比較例3の希土類錯体の、固体状態の拡散反射吸収スペクトルを図3の左側に、実施例4、5及び7の希土類錯体ポリマーの465nm励起(配位子励起)による固体状態の発光スペクトルを図3の右側に示す。図3の左側に示すように、実施例4、5及び7の希土類錯体ポリマー並びに比較例3の希土類錯体では、hfa配位子によるπ-π遷移に基づく310nmの吸収が確認され、実施例4、5及び7の希土類錯体ポリマーでは、Eu(III)の遷移に基づく465nmの小さな吸収が観察された。また、図3の右側に示すように、実施例4、5及び7の希土類錯体ポリマーでは、Eu(III)のf-f電子遷移に基づく578nm、591nm、613nm、649nm及び698nmの発光が観察された。
【実施例】
【0067】
さらに、実施例4、5及び7の希土類錯体ポリマー並びに比較例2及び3の希土類錯体について以下の評価を行った。得られた結果をまとめて表1に示す。
【実施例】
【0068】
まず、実施例4、5及び7の希土類錯体ポリマー並びに比較例2の希土類錯体について、TGAによる熱重量測定を行い、それらの熱分解温度(℃)を測定した。
【実施例】
【0069】
また、各希土類錯体ポリマー又は希土類錯体の発光を、Nd:YAGレーザー(スペクトラ・フィジックス社製INDI-50、半値幅=5ns、中心波長=1064nm)の第3高調波(355nm)を励起光源とし、光電子増倍管(浜松ホトニクス社製R5108、応答時間≦1.1ns)を用いて測定した。そして、Nd:YAGレーザーの応答をオシロスコープ(ソニー・テクトロニックス社製、TDS3052、500MHz)によりモニターし、減衰プロファイルの対数プロットの傾きから、各希土類錯体ポリマー又は希土類錯体の発光寿命(tobs、単位:ms)を算出した。
【実施例】
【0070】
また、各希土類錯体ポリマー又は希土類錯体の、380nm励起による合計発光量子収率(Ftot、単位:%)を、積分級ユニット(日本分光社製、ILF-533、φ=100mm)と接続した蛍光光度計(日本分光社製、F-6300-H)により測定した。
【実施例】
【0071】
さらに、各希土類錯体ポリマー又は希土類錯体による放射寿命(τrad、単位:ms)、4f-4f発光量子収率(FLn、単位:%))、光増感エネルギー移動効率(ηsens、単位:%)、放射速度定数(k、単位:S-1)及び無放射速度定数(knr、単位:S-1)を求めた。これらは、それぞれ以下の式で表される関係を満たす。
τrad=1/k (a)、
obs=1/(k+knr) (b)、
Ln=k/(k+knr) (c)、
1/τrad=AMD,0(Itot/IMD) (d)、
nr=1/tobs-1/τrad (e)。
【実施例】
【0072】
これらの式中、AMD,0は、真空での遷移の自然放出確率(ここでは14.65s-1)であり、nは溶媒の屈折率(ここでは1.5を用いる)であり、(Itot/IMD)は、Eu(III)による発光スペクトルの全領域の、発光の領域に対する比率である。
【実施例】
【0073】
なお、表1中の比較例3の希土類錯体の熱分解温度、tobs、τrad、FLn、Ftot及びηsensはいずれも文献値である(Y. Hasegawa
et al., J. Phys. Chem., A 2003, 107, 1697-1702)。
【実施例】
【0074】
【表1】
JP0005904600B2_000011t.gif
【実施例】
【0075】
表1に示されるように、実施例4、5及び7の希土類錯体ポリマーは、優れた蛍光特性を有しながら、比較例2及び3の希土類錯体に比して高い耐熱性を有していることが判明した。
【実施例】
【0076】
[実験例C]
(希土類錯体ポリマーの合成)
0.18mmolのTb(hfa)(HO)と、0.18mmolのホスフィンオキシド二座配位子の原料となる化合物とを、10mLのメタノール及び5mLのクロロホルムを混合した混合溶媒に溶解し、80℃で8時間加熱還流した。その後、反応溶液中の白色沈殿を分離し、数回メタノール及びクロロホルムで洗浄して、目的とする希土類錯体ポリマーを得た。本例では、実施例1及び2の希土類錯体ポリマーにおけるEuがTbに置き換わった希土類錯体ポリマーとして、[Tb(hfa)(dpb)](実施例8)及び[Tb(hfa)(dpbp)](実施例9)の2種類を合成した。
【実施例】
【0077】
実施例8及び9の希土類錯体ポリマーの収量(収率)及び分析結果は以下の通りであった。
[Tb(hfa)(dpb)](実施例8)
収量:90mg(収率34%)
IR(KBr):1655(st,C=O)、1256-1141(st,C-F)、1125(st,P=O)cm-1
元素分析:([C452718Tb]の計算値)、C,42.95;2.34%、(実測値)、C,42.87;H,2.29%
【実施例】
【0078】
[Tb(hfa)(dpbp)](実施例9)
収量:95mg(収率40%)
IR(KBr):1653(st,C=O)、1253-1142(st,C-F)、1125(st,P=O)cm-1
元素分析:([C513118Tb]の計算値)、C,45.90;2.34%、(実測値)、C,45.76;H,2.48%
【実施例】
【0079】
(特性評価)
実施例8及び9の希土類錯体ポリマーである[Tb(hfa)(dpb)]及び[Tb(hfa)(dpbp)]の360nm励起(配位子励起)による固体状態の発光スペクトルを、日本分光社製、F-6300-Hを用いて測定した。得られた結果を図4に示す。

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3