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明細書 :改良されたオリゴヌクレオチドおよびそのオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6021018号 (P6021018)
登録日 平成28年10月14日(2016.10.14)
発行日 平成28年11月2日(2016.11.2)
発明の名称または考案の名称 改良されたオリゴヌクレオチドおよびそのオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物
国際特許分類 C12N  15/113       (2010.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61K  31/7105      (2006.01)
A61K  31/712       (2006.01)
A61K  31/7125      (2006.01)
A61K  49/00        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAG
A61P 35/00
A61K 31/7105
A61K 31/712
A61K 31/7125
A61K 49/00 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 23
出願番号 特願2013-518196 (P2013-518196)
出願日 平成24年5月30日(2012.5.30)
国際出願番号 PCT/JP2012/064491
国際公開番号 WO2012/165653
国際公開日 平成24年12月6日(2012.12.6)
優先権出願番号 2011120806
優先日 平成23年5月30日(2011.5.30)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年5月28日(2015.5.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
発明者または考案者 【氏名】梅影 創
【氏名】越智 明徳
【氏名】菊池 洋
審査官 【審査官】宮岡 真衣
参考文献・文献 特表平10-505488(JP,A)
Yokoyama Y. et al.,Cancer Research,58(1998),p.5406-5410
LIU B. et al.,SCIENCE IN CHINA, SERIES C: LIFE SCIENCES,vol. 45, no. 1, 2002,pages 87 - 95
菊池 洋,化学と生物,30(2)(1992),p.112-118
梅影 創, 外3名,ヒト血清中で安定なRNA配列の発見,第34回日本分子生物学会年会 オンライン要旨 [online],2011年11月21日,1P-0618(1T13pl-7),URL,[retrieved on 2012-07-03] <http://www.aeplan.co.jp/mbsj2011>
梅影 創, 外2名,ヒト血清中においても分解されにくい天然型RNA配列,アンチセンス・遺伝子・デリバリーシンポジウム2011要旨集,2011年 9月 1日,p.80
FOLINI M. et al.,J. Invest. Dermatol.,114(2)(2000),p.259-267
HAYASHIDANI Y. et al.,Hiroshima J. Med. Sci.,54(1)(2005),p.21-27
調査した分野 C12N 15/113
A61P 35/00
A61K 31/7105-31/7125
A61K 48/00-49/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)

特許請求の範囲 【請求項1】
下記、式6
【化6】
JP0006021018B2_000027t.gif
に示される塩基配列、または、
下記、式7
【化7】
JP0006021018B2_000028t.gif
に示される塩基配列からなり、
常温常圧下25%ヒト血清水溶液中において30分浸漬した場合に分解が10%以下であるヌクレアーゼ耐性能を有することを特徴とするRNA分子。
【請求項2】
ヌクレオチドの糖部位の少なくとも一部がハロゲンあるいはアルコキシ基により置換されている、リン酸骨格構造の少なくとも一部が、蛍光物質、ポリエチレングリコールのいずれかにて修飾されている、またはいずれかの原子が放射標識されていることを特徴とする請求項1に記載のRNA分子。
【請求項3】
請求項1に記載のRNA分子を含むことを特徴とする癌細胞に特異性を有するドラッグデリバリーの補助剤。
【請求項4】
請求項1に記載のRNA分子を含むことを特徴とする癌細胞の検出剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本出願は、2011年5月30日に出願された日本国特許出願2011-120806に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、オリゴヌクレオチドに関し、特に、簡便に製造できると共にヌクレアーゼ耐性を備える天然型の直鎖状RNA分子及びそのDNAであるオリゴヌクレオチドに関するものである。また本発明は該RNA分子を含む医薬組成物にも関するものである。
【背景技術】
【0003】
染色体テロメア
テロメラーゼはRNA成分を含むリボ核タンパク質複合体であり、テロメア配列の鋳型となるRNAと逆転写酵素、その他の制御サブユニットから構成される複合体である。RNA構成要素はTERC(Telomere RNA Component)、逆転写酵素はTERT(Telomere Reverse Transcriptase)と呼ばれる。ヒトのテロメラーゼは、TERT、TERC、ジスケリン、TEP1などのサブユニットによって構成されており、それらは異なる染色体上の遺伝子座にコードされている。TERT翻訳産物は、非翻訳RNAであるTERCと一緒に折りたたまれる。TERTは一本鎖テロメア反復配列を付加できるように染色体の周囲を覆う二股の構造をとる。TERTとテロメアの鋳型を含むTERCは隣接している。ヒトTERCの塩基配列は既知でありNIBC Reference Sequence:NR_001566.1として開示されている(配列番号1)。
【0004】
ここで、染色体のテロメアは、細胞分裂の度に短縮していき、短縮が限界に達すると細胞死を引き起こすことが知られている。ところが、多くの癌細胞ではテロメラーゼと呼ばれるテロメア合成酵素が活性化しており、このテロメラーゼによるテロメアの修復作用によってテロメアの短縮が通常通りに生じず、癌細胞の無制限な増殖を引き起こしていると言われている。よってテロメラーゼを阻害することにより癌細胞の増殖を抑制できることが考えられる。
【0005】
テロメラーゼ活性を阻害するための従来技術
テロメラーゼの活性を阻害する方法として、特許文献1にはテロメラーゼを阻害するための改変オリゴヌクレオチドが開示されている。特許文献1に開示された化合物は脂質部分とオリゴヌクレオチド部分を含み、該オリゴヌクレオチド部分はヒトテロメーゼRNA成分の特定の領域内の配列に相補的であるために、該化合物は細胞内でテロメラーゼを阻害することができる。
【0006】
また特許文献2には、テロメラーゼのRNA成分に対する阻害性ポリヌクレオチドを利用することにより、テロメラーゼのRNA成分を検出および阻害するための方法が開示されている。特許文献2においてはそのような阻害性ポリヌクレオチドとして、テロメラーゼのRNA成分に対するアンチセンス配列を含むポリヌクレオチドが具体的に開示されている。また特許文献2には、テロメラーゼRNA成分の配列中にリボザイム標的配列が存在することに基づいて、テロメラーゼのRNA成分を切断するリボザイムを採用することも提案されている。しかしながら特許文献2には、リボザイムを具体的に設計したことは開示されていない。
【0007】
特許文献3はヒトテロメーゼの触媒サブユニットのmRNA(ヒトテロメラーゼ酵素逆転写酵素:hTERT)を標的とするリボザイムが開示するものであり、該文献にはそのようなリボザイムの配列が具体的に開示されている。
【0008】
RNA分子利用の問題点
一般的に天然型ヌクレオチドによって合成されたRNA分子は、ヌクレアーゼであるRNA分解酵素による分解を受けてしまう。そのために、RNA分子を医療へ応用するには、該RNA分子がRNA分解酵素による分解を受けることを回避することが要求される。RNA分解酵素による分解を回避する一般的な方法として、RNA分解酵素による分解を受けない人工核酸を代替利用すること、あるいはRNA分子の末端に化学修飾を施すことが行われている。更には特許文献1に関連して述べたように、RNAの末端にリンカーを介して脂質を結合した化合物が提案されている。
【0009】
また、通常のRNA分子は一本鎖の直鎖状であるが、このRNA分子の末端部分を連結した環状型にすることで、エキソ型RNA分解酵素による分解を回避し、細胞内での該RNA配列の安定性を向上させる技術が開発されている(非特許文献1参照)。
【0010】
リボザイム
一方、特許文献3に記載されているように、RNA分子を医療へ応用するアプローチの1つとしてリボザイムを用いる試みが行われている。リボザイムとはタンパク質同様に触媒能力を有するRNA分子の総称である。ハンマーヘッド型リボザイムは、その二次構造が金槌型をしていることから命名されたリボザイムの一種である。該ハンマーヘッド型リボザイムは、NUX(N=A、C、G又はUであり、X=A、C、又はUの何れかである。)配列を持つあらゆるRNA配列を認識し、該NUX配列のXの3’側のホスホジエステル結合を切断することが知られている。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】特表2007-504830号公報
【特許文献2】特表2001-507229号公報
【特許文献3】特表2002-536967号公報
【0012】

【非特許文献1】In vitro and in vivo production and purification of circular RNA aptamer,So Umekage & Yo Kikuchi;J.Biotechnol.13,265-272(15 January 2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は癌の治療などを目的として、テロメアーゼを阻害するための新たな手段を提供することである。
【0014】
特許文献1および非特許文献1に示した従来技術は、いずれも化学的な修飾や、反応による環状化を行わなくてはならず、RNA分解酵素に対する耐性の向上したRNA分子を製造しようとすれば、その製造工程を煩雑化してしまうという問題点があった。
【0015】
更に、人工核酸など非天然型構造を導入しようとすれば、高度な合成技術が必要とされ、汎用的な生産が困難となりかねない上、得られるRNA分子のコストを上昇させてしまうという問題点があった。このため、汎用的に低コストで利用し得るヌクレアーゼ耐性に優れたRNA分子を提供することが困難となっていた。
【0016】
また、化学的修飾を行った場合や人工核酸などの非天然型のRNA分子は、場合によっては、天然型のRNA分子に比べて標的とする分子に対する結合能力を低下させかねず、ヌクレアーゼ耐性の向上と目的とする機能発現との両立が困難になるという問題点があった。
【0017】
一方特許文献3には、テロメラーゼの阻害剤として使用できる天然型RNA分子のリボザイムが開示されている。しかしながら、特許文献3においては、in vivo或いはそれと類似の環境(例えばRNA分解酵素と共存する環境)下で触媒活性を示すか、ヌクレアーゼ耐性を備えるかについては検討されていない。
【0018】
RNA分子を分子標的薬やドラックデリバリーシステム用素材に用いる場合には、生体内で使用されるためヌクレアーゼに対する十分な耐性が要求されるが、これまで述べてきたように、天然型RNA分子では未だ必要な耐性を実現できないという問題点を残している。
【0019】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものである。具体的には、本発明は簡便に製造できると共にヌクレアーゼ耐性を備えるRNA分子を提供することを目的としている。ヌクレアーゼ耐性を備えるRNA分子がテロメアーゼ活性を阻害するリボザイムとして機能するならば、そのようなRNA分子は癌の治療に利用できると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記課題の解決のために鋭意研究に努めた結果、簡便に製造できると共にヌクレアーゼ耐性を備える天然型の直鎖状RNA分子及びそのDNAであるオリゴヌクレオチド、該RNA分子を含む癌治療用の医薬組成物、癌細胞の検出剤、および癌細胞に特異性を有するドラッグデリバリーの補助剤を得た。
【0021】
本発明は、好ましくは以下に記載するような態様により行われるが、これに限定されるものではない。
【0022】
[態様1]
下記、一般式1
【化1】
JP0006021018B2_000002t.gif
(一般式1においてXからX16はそれぞれ独立にアデニン、シトシン、グアニン、ウラシルのうちのいずれかの塩基を表す)
に示される塩基配列、あるいはこの配列中において1から複数個の塩基の変異を有する塩基配列を含み、ヌクレアーゼ耐性能を有することを特徴とするRNA分子。
【0023】
[態様2]
下記、一般式2
【化2】
JP0006021018B2_000003t.gif
(一般式2においてX17からX25はそれぞれ独立にアデニン、シトシン、グアニン、ウラシルのうちのいずれかの塩基を表す)
で示されるハンマーヘッドリボザイムの共通配列を有することを特徴とする態様1に記載のRNA分子。
【0024】
[態様3]
ヒトテロメラーゼRNAの鋳型領域にハイブリダイズする塩基配列を有することを特徴とする態様1または態様2に記載のRNA分子。
【0025】
[態様4]
下記、一般式3
【化3】
JP0006021018B2_000004t.gif
(一般式3においてX、X4、、X10からX15はそれぞれ独立にアデニン、シトシン、グアニン、ウラシルのうちのいずれかの塩基を表す)
に示される塩基配列、あるいはこの配列中において1から複数個の塩基の変異を有する塩基配列を含み、ヌクレアーゼ耐性能を有することを特徴とする態様1から3のいずれか1に記載のRNA分子。
【0026】
[態様5]
下記、一般式4
【化4】
JP0006021018B2_000005t.gif
(一般式4においてX、X12、X13はそれぞれ独立にアデニン、シトシン、グアニン、ウラシルのうちのいずれかの塩基を表す)
に示される塩基配列、あるいはこの配列中において1から複数個の塩基の変異を有する塩基配列を含み、ヌクレアーゼ耐性能を有することを特徴とする態様1から4のいずれかの1に記載のRNA分子。
【0027】
[態様6]
5’側末端の配列がGG、G、AまたはGGGであることを特徴とする態様1から5のいずれか1に記載のRNA分子。
【0028】
[態様7]
一般式1の塩基配列のうち39以上の塩基を備える直鎖状のRNA分子であることを特徴とする態様1から6のいずれか1に記載のRNA分子。
【0029】
[態様8]
ヌクレオチドの糖部位の少なくとも一部がハロゲンあるいはアルコキシ基により置換されている、リン酸骨格構造の少なくとも一部が、蛍光物質、ポリエチレングリコール、ビオチン、チオール基のいずれかにて修飾されている、またはいずれかの原子が放射標識されていることを特徴とする態様1から7のいずれか1に記載のRNA分子。
【0030】
[態様9]
下記、一般式5
【化5】
JP0006021018B2_000006t.gif
(一般式5においてXはアデニンまたはグアニンのいずれかの塩基を表し、X12はウラシルまたはアデニンのいずれかの塩基を表し、X13はグアニンまたはアデニンのいずれかの塩基を表す)
に示される塩基配列を含み、ヌクレアーゼ耐性能を有することを特徴とする態様1から8のいずれか1に記載のRNA分子。
【0031】
[態様10]
下記、式6
【化6】
JP0006021018B2_000007t.gif
に示される塩基配列、または、
下記、式7
【化7】
JP0006021018B2_000008t.gif
に示される塩基配列を含み、ヌクレアーゼ耐性能を有することを特徴とする態様1から9のいずれか1に記載のRNA分子。
【0032】
[態様11]
下記、式8
【化8】
JP0006021018B2_000009t.gif
に示される塩基配列を含み、ヌクレアーゼ耐性能を有することを特徴とする態様1あるいは態様3から9のいずれか1に記載のRNA分子。
【0033】
[態様12]
態様1から11のいずれか1に記載のRNAの塩基配列と同一のまたは相補的な塩基配列を有するDNA配列を含むことを特徴とするDNA分子。
[態様13]
態様2記載のRNA分子を有効成分として含むことを特徴とする癌治療用の医薬組成物。
[態様14]
態様3記載のRNA分子を含むことを特徴とする癌細胞に特異性を有するドラッグデリバリーの補助剤。
[態様15]
態様3記載のRNA分子を含むことを特徴とする癌細胞の検出剤。
【発明の効果】
【0034】
本発明のRNA分子はヌクレアーゼに対する耐性を備えているので、ヌクレアーゼが存在する生体内でも使用することができるという点で有利である。このため、例えば、静脈注射によって本発明のRNA分子を全身投与した場合であっても、当該RNA分子が直ちに分解されるといったことがなく、薬剤の体内輸送を実現し得る。
【0035】
その上、例えば、本発明のRNA分子がリボザイムの機能を発現するよう設計された場合には、RNA分解酵素による分解速度が顕著に抑制されることから、長時間にわたって触媒活性を持続させることができる。
【0036】
また本発明のRNA分子は天然型のRNA分子であるので、煩雑な化学合成を行うことなく、鋳型となる塩基配列から転写によって製造することができる。故に汎用的な手法で簡便かつ低コストで製造することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1はヒトテロメラーゼに対応するRNAの塩基配列を示した図である。なお図1は、ChenらSecondary structure of Vertebrate Telomerase RNA,Cell,Volume 100,Issue 5,3 March 2000,Pages 503-514の内、Fig.2(一部)を転載したものである。図1の赤字のG,A,U,Cは100%保存領域を示す。緑色はユニバーサルコバリエーションにサポートされている部分である。青色はグループ特異的コバリエーションにサポートされている部分である。-はワトソン-クリック塩基対を示す(配列の90%超)。黒丸はG/U塩基対を示す。白丸は非カノニカル塩基対を示す。星印は非ユニバーサル塩基対を示す。
【図2】図2は実施例1と比較例1のRNA分子の血清中での安定性を示した図である。レーンCは血清のみのサンプルである。レーン1は凝集RNAのみのサンプルである。レーン2は凝集RNAに血清を加えて1分間反応させたサンプルである。レーン3は凝集RNAに血清を加えて10分間反応させたサンプルである。レーン4は凝集RNAに血清を加えて30分間反応させたサンプルである。レーン5は凝集RNAに血清を加えて60分間反応させたサンプルである。レーン6は環状RNAのみのサンプルである。レーン7は環状RNAに血清を加えて1分間反応させたサンプルである。レーン8は環状RNAに血清を加えて60分間反応させたサンプルである。
【図3】図3は実施例1のRNA分子のリボザイム活性を示した図である。図3においてFITC標識基質は30nMであり、実施例1のRNA分子の0.8μM、1.6μM、3.2μMを用いて、37℃にて10分間反応を行った。レーン1は基質RNAのみのサンプルである。レーン2は基質RNAに実施例1のRNA分子(3.2μM)を加えたサンプルである。レーン3は基質RNAに実施例1のRNA分子(1.6μM)を加えたサンプルである。レーン4は基質RNAに実施例1のRNA分子(0.8μM)を加えたサンプルである。レーン5は基質RNAに実施例1のRNA分子(3.2μM)とEDTAを加えたサンプルである。
【図4】図4は比較例2のRNA分子の血清中での安定性を示した図である。図4においてヒト血清は25%であり、比較例2のRNA分子は0.2μg/レーンである。レーン1は比較例2のRNA分子のみのサンプルである。レーン2は比較例2のRNA分子にヒト血清を加えて1分間反応させたサンプルである。レーン3は比較例2のRNA分子にヒト血清を加えて10分間反応させたサンプルである。レーン4は比較例2のRNA分子にヒト血清を加えて30分間反応させたサンプルである。レーン5は比較例2のRNA分子にヒト血清を加えて60分間反応させたサンプルである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を詳細に説明する。

【0039】
本発明のRNA分子
既に述べたように本発明は、下記の一般式9(配列番号2)に示される塩基配列、あるいはこの配列中において1から複数個の塩基の変異を有する塩基配列を含み、ヌクレアーゼ耐性能を有することを特徴とするRNA分子である。ヌクレアーゼ耐性能を有する本発明のRNA分子は、該RNAの2分子以上が凝集した構造を有することができるが、本発明のRNA分子はそのような構造を有するものに限定されるものではない。

【0040】
【化9】
JP0006021018B2_000010t.gif
尚、本明細書において特に断らない限り、A、C、GおよびUは、アデニン、シトシン、グアニンおよびウラシルの各塩基を示し、XからX16はそれぞれ独立にアデニン、シトシン、グアニン、ウラシルのうちのいずれかの塩基を表す。

【0041】
本発明のオリゴヌクレオチドは、天然型のヌクレオチドで形成されたものである。当該RNA分子は、RNA分解酵素などのヌクレアーゼに対する耐性を備えており、RNA分解酵素存在下においても、通常の天然型RNAのように直ちに分解されるといったことがなく、長時間にわたって安定である。

【0042】
本明細書において「ヌクレアーゼ耐性能を有する」とは、リボヌクレアーゼによる分解が通常のRNA分子と比べて遅いことを意味する。具体的には、例えば、常温常圧下25%ヒト血清水溶中において30分浸漬した場合にRNA分子の分解が10%以下であることを意味する。なおヌクレアーゼ耐性能を有さない通常のRNA分子は、同じ条件下で90%以上分解される。

【0043】
2.ハンマーヘッドリボザイムの共通配列を有することについて
ハンマーヘッドリボザイムは既に述べたようにハンマーヘッド型のリボザイムであって、そのリボザイム活性により特定のRNA配列を切断する活性を有する。ハンマーヘッドリボザイムは下記の一般式10(配列番号3)で示される共通配列を含むことが知られており、本発明のRNA分子は、その様なハンマーヘッドリボザイムの共通配列を有することが好ましい。

【0044】
【化10】
JP0006021018B2_000011t.gif
一般式10において、X17からX25はそれぞれ独立にアデニン、シトシン、グアニン、ウラシルのうちのいずれかの塩基を表す。

【0045】
本発明のRNA分子のうち配列番号3に示すハンマーヘッドリボザイムの共通配列を有するものは、ヒトテロメラーゼRNAにハイブリダイズし、その触媒作用によってヒトテロメラーゼRNAを切断分解することができる。よって後に述べるように、ハンマーヘッドリボザイムの共通配列を有する本発明のRNA分子はテロメラーゼを分解することができるので、下記において詳しく述べるように抗癌剤として有用な医薬組成物となり得る。下記の実施例1(配列番号7)と実施例2(配列番号8)にて作製したRNA分子はハンマーヘッドリボザイムの共通配列を有し、リボザイム活性を示すことが実際に示された。

【0046】
3.ヒトテロメラーゼのRNA鋳型領域にハイブリダイズする塩基配列を有することについて
本発明のRNA分子は、ヒトテロメラーゼのRNA鋳型領域にハイブリダイズする塩基配列を有することが好ましい。ヒトおよびマウスからのテロメラーゼのRNA成分は、単離され、そして配列決定されている(例えば、Fengら、Science 269:1236-41(1995);米国特許第5,583,016号;およびBlascoら、Scince 69:1267-1270(1995)参照)。ヒトテロメラーゼのRNA鋳型領域をコードするヒトゲノムDNAは、クローン化され、配列決定され、そして寄託されている。具体的には「28-1」と称されるλクローンは、ヒトテロメラーゼのRNA鋳型領域の遺伝子配列を含有する約15kbの挿入物を含んでいる。当該クローンは、ブダペスト条約に従って、アメリカンタイプカルチャーコレクションに寄託され、そして受託番号ATCC75925号を与えられている。図1はヒトテロメラーゼの塩基配列を示した図である。図1に示されるようにヒトTERCではヒトテロメラーゼのRNA鋳型領域の配列は3’-UCCCAAUC-5’(配列番号10)であり、これを元にTERTはテロメアの3’側へ塩基を付加する。

【0047】
本発明のRNA分子は、その有する塩基配列の一部が、図1に示したヒトテロメラーゼRNA鋳型領域の塩基配列(3’-UCCCAAUC-5’:配列番号10)にハイブリダイズするものであれば良い。なお配列番号2において5’末端から2番目から11番目の塩基配列はGUUAGGGUUA(配列番号11)であるが、この配列は上記のヒトテロメラーゼRNA鋳型領域の塩基配列にハイブリダイズする。後に詳細に述べるように、ヒトテロメラーゼのRNA鋳型領域の配列にハイブリダイズする塩基配列を有する本発明のRNA分子は、癌細胞等の検出剤、あるいは、テロメラーゼが発現している癌細胞を標的としたドラッグデリバリーの補助剤として有用である。

【0048】
本明細書においてハイブリダイズするとは、相補的な塩基配列(UならばAもしくはGと、CならばGと)の塩基対間で水素結合することであり、他の互いに異なる分子の存在下であっても、標的分子に対し接触および会合し得る能力をいう。ここで相補的な塩基配列と「特異的」に結合するとは、ストリンジェントな条件下で特定のポリヌクレオチドが、それと相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドとハイブリダイズすることを言う。

【0049】
ハイブリダイゼーションの条件については当業者が適宜選択をすることができるが、ストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件の例として、以下のような条件を挙げることができる。ハイブリダイゼーションバッファーの組成は、例えば、6×SSC、0.1重量%N-ラウロイルサルコシン、0.02重量%のSDS、2重量%の核酸ハイブルダイゼーション用ブロッキング試薬及び50%フォルムアミドから成る。核酸ハイブルダイゼーション用ブロッキング試薬としては、一例として、0.1Mマレイン酸と0.15M 塩化ナトリウムからなる緩衝液(pH7.5)に市販の核酸ハイブリダイゼーション用ブロッキング試薬を10%になるように溶解したものを使用することができる。20×SSCは、3M塩化ナトリウム、0.3Mクエン酸溶液であり、SSCは、より好ましくは、4~7×SSC、更に好ましくは5~6×SSCの濃度で使用する。

【0050】
ハイブリダイゼーションの温度は、35~60℃、より好ましくは35~50℃、更に好ましくは37~45℃の範囲であり、数時間から一晩のインキュベーションを行った後、洗浄バッファーで洗浄する。洗浄の温度は、好ましくは室温、より好ましくはハイブリダイゼーション時の温度である。洗浄バッファーの組成は4×SSC+0.1重量%SDS溶液、より好ましくは5~6×SSC+0.1重量%SDS溶液である。

【0051】
本発明のRNA分子は、5’側末端の配列がGG、G、AまたはGGGであることが好ましい。本発明のRNA分子のうち、GG、G、AまたはGGGの配列を備えたものは、当該RNA分子を鋳型として二本鎖DNAを合成した場合、二本鎖DNAにGG、G、AまたはGGGの配列が組み込まれる。故に、その二本鎖DNAを用いT7RNAポリメラーゼによる転写反応で本発明のRNA分子を生成することができ、in vitroの反応で、容易に、目的のRNA分子を得ることができる。T7ポリメラーゼによる酵素反応は、反応生成物であるRNA分子を高効率で生産できると共に、一般的に広く普及しているRNAの製造手法である。故に、本RNA分子を製造する場合には従来の製造技術を利用して行うことができ、製造者は、容易に本RNA分子を製造することができる。

【0052】
更に本発明のRNA分子を得るために、天然型オリゴヌクレオチドの公知の核酸合成法を適用することもできる。例えば、本技術分野で汎用されている核酸合成法として、例えばホスホロアミダイト法、CEM法(特許公開2008-174524、WO2006/022323)を適用することができる。

【0053】
また本発明のRNA分子は、配列番号2の塩基配列のうち39以上の塩基を備える直鎖状のRNA分子であることが好ましい。当該塩基配列が38塩基以下では、ヌクレアーゼ耐性を保持することが困難となる。下記の比較例2にて38塩基で構成されるRNA分子について検討を行ったところ、ヌクレアーゼ耐性能を有していなかった。

【0054】
本発明において好適なRNA分子は、下記の一般式11(配列番号4)に示される塩基配列、あるいはこの配列中において1から複数個の塩基の変異を有する塩基配列を含み、ヌクレアーゼ耐性能を有することを特徴とするRNA分子である。本明細書において「複数個」とは2、3、4、5個などの2以上の整数を意味するものであり、部位特異的変異誘発法により変異をさせることができる程度の数である。また本明細書において塩基の「変異を有する」とは、塩基の欠失、置換、付加による変異を含む意味である。

【0055】
【化11】
JP0006021018B2_000012t.gif
一般式11においてX、X4、、X10からX15はそれぞれ独立にアデニン、シトシン、グアニン、ウラシルのうちのいずれかの塩基を表す。

【0056】
配列番号4において5’末端における12個の塩基配列と3’末端における16個の塩基配列は保存されており、よってヌクレアーゼ耐性能を有する。また配列番号4の配列においてXがGである場合には、該配列において5’末端から数えて12番目から35番目に相当するハンマーヘッドリボザイムの共通配列(配列番号3)が維持されており、そのリボザイム活性によりテロメラーゼを分解することができる。また配列番号4の配列において5’末端から2番目から11番目の塩基配列はGUUAGGGUUA(配列番号11)であるので、この配列は上記のヒトテロメラーゼRNA鋳型領域の塩基配列とハイブリダイズする。

【0057】
更に本発明において好適なRNA分子は、下記の一般式12(配列番号5)に示される塩基配列、あるいはこの配列中において1から複数個の塩基の変異を有する塩基配列を含み、ヌクレアーゼ耐性能を有することを特徴とするRNA分子である。

【0058】
【化12】
JP0006021018B2_000013t.gif
一般式12においてX、X12、X13はそれぞれ独立にアデニン、シトシン、グアニン、ウラシルのうちのいずれかの塩基を表す。

【0059】
更に本発明において好適なRNA分子は、下記の一般式13(配列番号6)に示される塩基配列を含み、ヌクレアーゼ耐性能を有することを特徴とするRNA分子である。

【0060】
【化13】
JP0006021018B2_000014t.gif
一般式13においてXはアデニンまたはグアニンのいずれかの塩基を表し、X12はウラシルまたはアデニンのいずれかの塩基を表し、X13はグアニンまたはアデニンのいずれかの塩基を表す。

【0061】
更に本発明において特に好適なRNA分子は、下記の式14(配列番号7)

【0062】
【化14】
JP0006021018B2_000015t.gif
に示される塩基配列有するものである。

【0063】
更に本発明において特に好適なRNA分子は、下記の式15(配列番号8)

【0064】
【化15】
JP0006021018B2_000016t.gif
に示される塩基配列を有するものである。

【0065】
更に本発明において特に好適なRNA分子は、下記の式16(配列番号9)

【0066】
【化16】
JP0006021018B2_000017t.gif
に示される塩基配列を有するものである。これらのRNA分子については下記の実施例1乃至実施例3において、ヌクレアーゼ耐性を有することが実際に示されている。

【0067】
RNA分解酵素耐性を有するためには、本発明のRNA分子は、配列番号2で示されるRNA分子と80%以上の同一性を備えることが好ましく、85%以上の同一性を備えることがより好ましく、90%の同一性を備えることが更に好ましく、95%の同一性を備えることが更に好ましく、99%の同一性を備えることが特に好ましい。

【0068】
2つのヌクレオチド配列の同一性%は、視覚的検査と数学的計算により決定可能であるか、またはより好ましくは、この比較はコンピュータ・プログラムを使用して配列情報を比較することによってなされる。代表的な、好ましいコンピュータ・プログラムは、遺伝学コンピュータ・グループ(GCG;ウィスコンシン州マディソン)のウィスコンシン・パッケージ、バージョン10.0プログラム「GAP」である(Devereux,et al.,1984,Nucl.Acids Res.,12:387)。ここで、「GAP」プログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)ヌクレオチドについての(同一物について1、及び非同一物について0の値を含む)一元(unary)比較マトリックスのGCG実行と、Schwartz及びDayhoff監修「ポリペプチドの配列および構造のアトラス(Atlas of Polypeptide Sequence and Structure)」国立バイオ医学研究財団、353-358頁、1979により記載されるような、GribskovおよびBurgess,Nucl.Acids Res.,14:6745,1986の加重アミノ酸比較マトリックス;又は他の比較可能な比較マトリックス;(2)アミノ酸の各ギャップについて30のペナルティと各ギャップ中の各記号について追加の1のペナルティ;又はヌクレオチド配列の各ギャップについて50のペナルティと各ギャップ中の各記号について追加の3のペナルティ;(3)エンドギャップへのノーペナルティ:及び(4)長いギャップへは最大ペナルティなし、が含まれる。当業者により使用される他の配列比較プログラムでは、例えば、米国国立医学ライブラリーのウェブサイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/bls.htmlにより使用が利用可能なBLASTNプログラム、バージョン2.2.7、またはUW-BLAST2.0アルゴリズムが使用可能である。UW-BLAST2.0についての標準的なデフォルトパラメーターの設定は、以下のインターネットサイト:http://blast.wustl.eduに記載されている。さらに、BLASTアルゴリズムは、BLOSUM62アミノ酸スコア付けマトリックスを使用し、使用可能である選択パラメーターは以下の通りである:(A)低い組成複雑性を有するクエリー配列のセグメント(WoottonおよびFederhenのSEGプログラム(Computers and Chemistry,1993)により決定される;WoottonおよびFederhen,1996「配列データベースにおける組成編重領域の解析(Analysis of compositionally biased regions in sequence databases)」Methods Enzymol.,266:544-71も参照されたい)、又は、短周期性の内部リピートからなるセグメント(ClaverieおよびStates(Computers and Chemistry,1993)のXNUプログラムにより決定される)をマスクするためのフィルターを含むこと、及び(B)データベース配列に対する適合を報告するための統計学的有意性の閾値、またはE-スコア(KarlinおよびAltschul,1990)の統計学的モデルにしたがって、単に偶然により見出される適合の期待確率;ある適合に起因する統計学的有意差がE-スコア閾値より大きい場合、この適合は報告されない);好ましいE-スコア閾値の数値は0.5であるか、または好ましさが増える順に、0.25、0.1、0.05、0.01、0.001、0.0001、1e-5、1e-10、1e-15、1e-20、1e-25、1e-30、1e-40、1e-50、1e-75、または1e-100である。

【0069】
4.本発明のRNA分子と同一あるいは相補的なDNA分子について
本発明は、上記した本発明のRNA分子におけるRNA配列と同一のまたは相補的な塩基配列を有するDNA配列を含むDNA分子も含む。なおここで「相補的」とは、2つのポリヌクレオチドの間の適合性をいい、第1のポリヌクレオチド中の塩基配列が第2のポリヌクレオチド中の塩基配列の結合パートナーである場合には、第1のポリヌクレオチドは第2のポリヌクレオチドに対して相補的である。ここでいう結合パートナーとは具体例には、アデニン(A)とウラシル(U)(あるいはチミン(T))、グアニン(G)とシトシン(C)の組み合わせである。またここで「同一の塩基配列」とは、RNA分子の塩基であるウラシルとDNAの塩基であるチミンの差を包含するものである。

【0070】
このようなDNA分子から、上記において述べた本発明のRNA分子を得ることができる。当該DNA分子は、直鎖状二本鎖DNAあるいは環状プラスミドDNAのいずれであっても良い。更には上記DNA配列の上流にプロモーターの配列を供えたものであっても良い。プロモーター配列としては、上記RNA配列を備えたRNA分子を本DNA分子から転写するために設計されたものであれば特に限定されないが、好ましくは、T7RNAポリメラーゼによって認識される配列(T7プロモーター配列)やSP6RNAポリメラーゼによって認識される配列(SP6プロモーター配列)が用いられる。

【0071】
5.本発明のRNA分子の置換・修飾について
本発明のRNA分子は、置換又は分子修飾されていてもよく、例えば本発明のRNA分子のヌクレオチドの糖部位の少なくとも一部がハロゲンあるいはアルコキシ基により置換されているもの、本発明のRNA分子のリン酸骨格構造の少なくとも一部が、蛍光物質、ポリエチレングリコールのいずれかにて修飾されているもの、または本発明のRNA分子を構成するいずれかの原子が放射標識されているものでもよい。本発明において糖部位が置換されている態様の例として、ヌクレオチドの糖部位(リボース等)の2’位の水酸基(-OH)が、フッ素(この場合2’-deoxy-2-fluoro)や-OCH等に置換されているものを挙げることができるが、それらに限定されるものではない。また本発明において該RNA分子の5’末端リン酸基、あるいは3’末端のリボース3’部位を修飾するのに使用可能な蛍光物質の例としてはフルオレセイン、テキサスレッド、FITCなどを挙げることができ、ポリエチレングリコールの例としては5万程度の分子量を有するものなどを挙げることができるが、それらに限定されるものではない。本発明のRNA分子を放射標識する例として、α位、あるいはγ位のリン酸部分が32PラベルされたATP、UTP、CTPもしくはGTPの何れか、もしくはそれらの複数の組み合わせを用いた試験管内転写合成法あるいはキナーゼを用いた5’末端標識による該RNA分子への放射標識などを挙げることができるが、それらに限定されるものではない。

【0072】
ここで、本発明のRNA分子はヌクレアーゼに対する耐性を有しているので、生体内から採取した細胞や抽出物からヌクレアーゼを除去する操作(精製操作)を行うことなく、標的分子の存在を検出することができる。具体的には本発明のRNA分子を蛍光物質や放射活性物質等で修飾または標識すれば、標的分子とハイブリダイズさせることで標的分子の存在を検出するプローブとして利用することができる。

【0073】
更には、一般に、天然型ヌクレオチド構造のRNA分子は、非天然型ヌクレオチド構造のものに比べ細胞膜透過性に優れている。このため、蛍光物質や放射活性物質で修飾・標識した本発明のRNA分子を生体内に導入すれば、本発明のRNA分子とハイブリダイズすることによって、生体細胞内に存在する標的物質を標識するマーカーとしての使用が可能となる。そのような標識するマーカーとしての使用については下記に詳細に述べる。

【0074】
ここで、先に述べた非天然型ヌクレオチドとは、例えばリボースの2’位の水酸基がフッ素等に置換されたもの等を指し、この場合ヌクレアーゼによる分解が妨げられるため、生体内での半減期を増長させる効果が期待できる。また、ポリエチレングリコールを付加した場合、生体内での安定性を向上させる効果があり、かつ、ポリエチレングリコールの重合度を変えることで生体内での半減期をコントロールすることが可能である。

【0075】
6.本発明のRNA分子のドラッグデリバリー剤、および癌細胞等検出剤としての使用について
本発明のRNA分子に癌細胞に特異的に認識する化合物あるいは核酸配列やペプチドを付加することや担持させることにより、標的となる癌細胞に医薬を送達することができる。例えば本発明のRNA分子において、前立腺癌細胞を特異的に認識するRNAアプタマー配列を本発明のRNA分子の5’側あるいは3’側、あるいは2分子の本発明のRNA分子の間に配したものを、そのようなドラッグデリバリー補助剤として利用することができる。ドラッグデリバリー補助剤として利用した場合、ヌクレアーゼに対する耐性を備えているので、例えば、静脈投与や患部への注入によって医薬を安定に生体内に導入できる。ドラッグデリバリーの際には、カチオン性脂質、ポリ乳酸担持金コロイドなどのドラッグデリバリー物質との共役的な使用法も含まれる。さらに、蛍光物質で修飾された本発明のRNA分子または放射標識された本発明のRNA分子を用いれば、他の癌細胞標的試薬との共同的な使用により癌細胞の検出剤として使用もできる。

【0076】
尚、本発明のRNA分子をこのような標的分子の検出に用いる場合や、ドラッグデリバリー補助剤として利用する場合には、リボザイム活性が好ましくない影響をもたらす場合などにおいては必要に応じて、ハンマーヘッドリボザイムの共通配列を有していないものを選択することができる。

【0077】
7.本発明のRNA分子を含む医薬組成物について
更に本発明は、上記において述べた本発明のRNA分子において配列番号3に示すハンマーヘッドリボザイムの共通配列を有するものを、有効成分として含む医薬組成物を提供する。本発明のRNA分子が、ヒトテロメラーゼにハイブリダイズする塩基配列を備えて設計されたものであれば、ハンマーヘッドリボザイム活性によりテロメラーゼを切断分解することが可能である。また、本発明のRNA分子はRNA分解酵素耐性を備えているので、細胞内においても触媒として有効に作用する。このために本発明は天然型のRNA分子を有効成分として含む医薬組成物を提供することができる。従って、そのようなRNA分子を有効成分として含有する本発明の医薬組成物を、ヒトテロメラーゼの活性によって異常増殖が生じている細胞、例えば癌細胞に対し投与すれば、癌細胞の異常増殖を抑制することができる。

【0078】
尚、ヒトテロメラーゼは、ヒトのみならず、哺乳動物全般に保存された配列であるので、本発明はヒトのみに適用されるものではなく、哺乳動物全般に適用しえる。

【0079】
更に、本発明のRNA分子は、天然型のヌクレオチドで構成されたものであるため、非天然型のヌクレオチドで構成されたものに比べて安全性が高く、細胞膜への浸透性も高いため医薬組成物として用いた場合に、少量で有効な薬理効果を得られやすい。

【0080】
本発明の医薬組成物は血清中のヌクレアーゼに対して耐性であるので、静脈注射により投与することが可能であるという利点を有するが、それに限定されるものではなく、投与経路としては、静脈注射、経口投与、経皮投与、直腸内投与、経眼投与、膀胱内投与など、いずれの投与経路を採用することもできる。本発明のRNA分子の投与量は該RNA分子の種類、投与方法、投与される者の状態や年齢等により異なるが、通常は血中濃度が0.001μM~1000μM、好ましくは0.01μM~100μM、更に好ましくは0.1μM~10μMである。

【0081】
剤型としては、注射剤、懸濁剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、座剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤、吸入剤等の種々の剤型が挙げられる。これらの製剤は常法に従って調製されるが、特に好ましい剤型は注射剤である。尚、液体製剤にあっては、用時、水又は他の適当な溶媒に溶解または懸濁する形であってもよい。また錠剤、顆粒剤は周知の方法でコーティングしてもよい。注射剤の場合には、本発明のRNA分子を水に溶解させて調製されるが、必要に応じて生理食塩水あるいはブドウ糖溶液に溶解させてもよく、また緩衝剤や保存剤を添加してもよい。

【0082】
注射剤を製造するには、有効成分を必要に応じて塩酸、水酸化ナトリウム、乳糖、乳酸、ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどのpH調整剤、塩化ナトリウム、ぶどう糖などの等張化剤と共に注射用蒸留水に溶解し、無菌濾過してアンプルに充填するか、更にマンニトール、デキストリン、シクロデキストリン、ゼラチンなどを加えて真空凍結乾燥し、用事溶解型の注射剤としてもよい。また、有効成分にレチシン、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などを加えて水中で乳化せしめ注射剤用乳剤とすることもできる。

【0083】
これらの製剤は、本発明のRNA分子を0.01%~100重量%、好ましくは0.1%~95重量%、更に好ましくは1~90重量%の割合で含有することができる。これらの製剤はまた、治療上価値のある他の成分を含有していてもよい。

【0084】
また本発明は、本発明のRNA分子を有効成分として含む医薬組成物を投与することにより癌を治療する方法を包含する。更に本発明は、本発明のRNA分子を有効成分として含む医薬組成物を癌の治療のために使用する方法をも包含する。

【0085】
その他、本発明は、趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた形態で実施できるものである。
【実施例】
【0086】
<実施例1>
【実施例】
【0087】
下記の式17(配列番号7)のRNA分子に対応するDNA配列とその上流にT7プロモーター配列をもつ二本鎖DNAを用い、ランオフ転写法によって該RNA分子を作製し、ゲル電気泳動により該RNA分子を純化した。純化した該RNA分子はヒト血清を含む生理食塩水(PBS)中で37℃で一定時間静置した後、7Mウレア入りアクリルアミド電気泳動を行い、エチジウムブロミド染色を行うことで血清による該RNA分子の分解耐性能評価を行った。結果を図2に示す。
【実施例】
【0088】
【化17】
JP0006021018B2_000018t.gif
図2は、第1実施例で作製したRNA分子のヒト血清中での分解耐性能の結果を示した図である。
【実施例】
【0089】
まず、T7プロモーター下流に該RNA配列をコードするプラスミドDNAを鋳型DNAとして、T7RNAポリメラーゼによるランオフ転写によって該RNA配列を含む転写反応液を得た。次に、転写反応液中から該RNAを精製するため、16%変性アクリルアミドゲル電気泳動を行い、該RNAのみを切り出すことで該RNA分子を純化した。また、環状RNAに関しては、非特許論文1に記載の手法に従い調製した。該RNA分子または環状RNAを0.2μg用意し、PBS(リン酸緩衝液)中において、ヒト血清(Cambrex社)を25%含む条件下で、37℃で浸漬した。図2内に示される反応時間後にフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール溶液と混合し、ボルテックスによる混合後、液体窒素を用いて反応液を氷結させることで該RNA分子および環状RNAのヌクレアーゼ分解反応を停止させた。分解反応停止後、遠心処理して水層のみを回収し、エタノール沈殿による該RNA分子及び環状RNAを濃縮した。分解耐性能評価のため、先に濃縮したRNAを16%変性アクリルアミドゲル電気泳動を行い、フルオロイメージアナライザーFLA-900(FUJIFILM)により、各反応時間後の該RNA分子の残存率を定量することで分解耐性能評価を行った。
【実施例】
【0090】
図2においてレーン2からレーン5は実施例1で作製したRNA分子(配列番号7)の実験系における結果である。一方図2においてレーン6からレーン8は比較例1で作製したRNA分子(配列番号12)の実験系における結果である。図2のレーン2からレーン5に示されるように、本RNA分子は、ヒト血清中において少なくとも1時間は分解されること無く安定に存在していることが示された。
<実施例2>
【実施例】
【0091】
下記の式18(配列番号8)に示すRNA分子を実施例1と同様のランオフ転写方法で作製し、ゲル電気泳動法により純化した。該RNA分子は、ヒトテロメラーゼに対してハイブリダイズする配列を備えると共に、配列番号7に示すRNA分子と2つの塩基配列が異なったものである。このRNA分子に対し実施例1と同様の分解耐性能評価を行った。この結果により、本RNA分子は、ヒト血清中において少なくとも1時間は分解されないことが示された。
【実施例】
【0092】
【化18】
JP0006021018B2_000019t.gif
<実施例3>
【実施例】
【0093】
本実施例では、下記の式19(配列番号9)に示すRNA分子を実施例1と同様のランオフ転写方法で作製した。該RNA分子は、ヒトテロメラーゼに対してハイブリダイズする配列を備えると共に、配列番号7に示すRNA分子と1つの塩基配列が異なったものである。このRNA分子に対し実施例1と同様の分解耐性能評価を行ったところ、該RNA分子は、ヒト血清中において少なくとも1時間は分解されること無く安定に存在した。
【実施例】
【0094】
【化19】
JP0006021018B2_000020t.gif
<実施例4>
【実施例】
【0095】
実施例1にて作製したRNA分子(配列番号7)(0.8-3.2μM)と該RNA分子の基質とする5’末端をFITC標識したテロメラーゼRNA配列(鋳型領域のみ)を混合し、リボザイム反応液(50mM Tris-HCl pH8.0、10mM MgCl、該テロメラーゼRNA 20nM)中で、37℃で10分反応させた後、16%変性アクリルアミドゲル電気泳動を行い、該基質RNA(該テロメラーゼRNA)の切断率をフルオロイメージアナライザーFLA-900(FUJIFILM)によって定量した。配列番号7に示すRNA分子は、ハンマーヘッドリボザイムの共通配列を有するものである。
【実施例】
【0096】
図3は、実施例1にて作製したRNA分子のリボザイム活性評価を示した図である。図3においてレーン1は基質RNA(30nM)のみ、レーン2は基質RNA+実施例1にて作製したRNA分子(3.2μM)、レーン3は基質RNA+実施例1にて作製したRNA分子(1.6μM)、レーン4は基質RNA+実施例1にて作製したRNA分子(0.8μM)、レーン5は基質RNA+実施例1にて作製したRNA分子(3.2μM)+EDTAの実験系である。図3からも分るように実施例1で作製したRNA分子により基質RNAは分解され、リボザイム活性が認められた。
<実施例5>
【実施例】
【0097】
実施例2および3で作製したRNA分子について、実施例4と同様のリボザイム活性評価を行った。ハンマーヘッドリボザイムの共通配列を有する実施例2のRNA分子はリボザイム活性を有し、ハンマーヘッドリボザイムの共通配列を有していない実施例3のRNA分子はリボザイム活性を備えないことが示された。
<比較例1>
【実施例】
【0098】
下記式20(配列番号12)で示される環状RNA分子を作製し、実施例1と同様の条件にてRNA分子の分解耐性能評価を行った。図2のレーン7と8に示されるように、比較例1のRNA分子はヒト血清中において1分以内に完全に分解した。
【実施例】
【0099】
【化20】
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<比較例2>
【実施例】
【0100】
下記式21(配列番号13)で示されるRNA分子を実施例1と同様に作成し、実施例1と同様の条件にてRNA分子の分解耐性能評価を行った。比較例2のRNA分子は、38塩基で構成されている。結果を図4に示す。図4は、比較例2のRNA分子のヒト血清中での分解耐性能の結果を示した図である。図4に示すように、ヒト血清中において比較例2のRNA分子は1分以内に分解した。
【実施例】
【0101】
【化21】
JP0006021018B2_000022t.gif
[配列表]
JP0006021018B2_000023t.gifJP0006021018B2_000024t.gifJP0006021018B2_000025t.gifJP0006021018B2_000026t.gif
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3