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明細書 :認知機能障害判別装置、認知機能障害判別システム、およびプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5959016号 (P5959016)
登録日 平成28年7月1日(2016.7.1)
発行日 平成28年8月2日(2016.8.2)
発明の名称または考案の名称 認知機能障害判別装置、認知機能障害判別システム、およびプログラム
国際特許分類 A61B  10/00        (2006.01)
A61B   5/1455      (2006.01)
FI A61B 10/00 E
A61B 5/14 322
請求項の数または発明の数 8
全頁数 25
出願番号 特願2013-518182 (P2013-518182)
出願日 平成24年5月31日(2012.5.31)
国際出願番号 PCT/JP2012/064237
国際公開番号 WO2012/165602
国際公開日 平成24年12月6日(2012.12.6)
優先権出願番号 2011121241
優先日 平成23年5月31日(2011.5.31)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年3月6日(2015.3.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
発明者または考案者 【氏名】加藤 昇平
【氏名】遠藤 英俊
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査官 【審査官】宮川 哲伸
参考文献・文献 国際公開第2005/096951(WO,A1)
国際公開第2005/025421(WO,A1)
国際公開第2008/142878(WO,A1)
国際公開第2007/144977(WO,A1)
国際公開第2006/132313(WO,A1)
特開2003-275191(JP,A)
国際公開第2005/120349(WO,A1)
調査した分野 A61B 10/00
A61B 5/1455
特許請求の範囲 【請求項1】
臨床診断結果で認知機能障害の程度が既知である複数の被験者に脳を活動させるための課題を与えているときに測定された前記複数の被験者の予め定められた各脳部位における生体信号データを取得する既知データ取得部と、
前記既知データ取得部によって取得された前記複数の被験者の各脳部位における生体信号データの各々から、複数の生体特徴量を抽出する既知データ特徴量抽出部と、
前記既知データ特徴量抽出部によって抽出された前記複数の被験者の各脳部位の生体信号データの各々の前記複数の生体特徴量と各被験者の臨床診断結果とに基づいて、認知機能障害の程度の判別に用いる、脳部位と前記脳部位の生体信号データの生体特徴量との組からなる判別特徴量を少なくとも1つ選択する選択部と
前記既知データ特徴量抽出部によって抽出された前記複数の被験者の各脳部位の生体信号データの各々の前記複数の生体特徴量から得られる、前記複数の被験者の各々についての前記選択された判別特徴量と、前記複数の被験者の各々の臨床診断結果の前記認知機能障害の程度とを学習データとして用いて、前記判別特徴量に対応する前記認知機能障害の程度を判別するためのモデルを構築する学習部と、
前記課題を与えているときに測定された、前記認知機能障害の程度が未知である被験者の前記予め定められた各脳部位における生体信号データを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部によって取得された前記認知機能障害の程度が未知である被験者の生体信号データの各々から、前記複数の生体特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記特徴量抽出部によって抽出された前記被験者の各脳部位の生体信号データの各々の前記複数の生体特徴量から得られる、前記選択部によって選択された判別特徴量と、前記学習部によって予め構築されたモデルとに基づいて、前記認知機能障害の程度が未知である被験者の認知機能障害の程度を判別する判別部と、
を備える認知機能障害判別装置。
【請求項2】
前記生体信号データは、前記予め定められた脳部位における血流を計測した脳血流データである請求項1記載の認知機能障害判別装置。
【請求項3】
前記生体信号データは、前記予め定められた脳部位としての前頭前野、左側頭葉、右側頭葉、左頭頂葉、及び右頭頂葉の各々においてNIRS装置によりヘモグロビン流量を測定した脳血流データである請求項1記載の認知機能障害判別装置。
【請求項4】
前記生体信号データは、前記予め定められた脳部位としての前頭前野における右領域、中央領域、及び左領域、前記予め定められた脳部位としての左頭頂葉における所定領域、及び左側頭葉における所定領域、並びに前記予め定められた脳部位としての右頭頂葉における所定領域、及び右側頭葉における所定領域、の各々の領域においてNIRS装置によりヘモグロビン流量を測定した脳血流データである請求項1記載の認知機能障害判別装置。
【請求項5】
前記判別部は、複数段階で前記認知機能障害の程度を判別する複数の判別部であって、
前記選択部は、前記複数の判別部の各々に対して、前記判別部での前記認知機能障害の程度の段階の判別に用いる前記判別特徴量を少なくとも1つ選択し、
前記学習部は、前記複数の判別部の各々に対して、前記判別部での前記認知機能障害の程度の段階の判別に用いる前記モデルを構築する、
請求項1記載の認知機能障害判別装置。
【請求項6】
複数の低域通過フィルタを用いて前記生体信号データのノイズ除去を行なうプリミティブ解析部を備え、
前記複数の低域通過フィルタは、環境光によるノイズを含むノイズを除去するのに用いる第1のフィルタ、脳波及び血圧を含む変動成分を抽出するのに用いる第2のフィルタ、及び、顎開閉及び眼球運動を含む運動によるノイズを除去するのに用いる第3のフィルタを含み、
前記既知データ特徴量抽出部および前記特徴量抽出部は、
前記プリミティブ解析部が、前記第1のフィルタを用いてノイズ除去した前記生体信号データにおける振幅の平均値、基本周波数、及び周波数重心と、前記第3のフィルタを用いてノイズ除去した前記生体信号データにおける振幅の最大値、振幅の最小値、振幅の分散値、振幅の平均値、基本周波数、及び近似直線の傾きと、前記第1のフィルタを用いてノイズ除去した前記生体信号データと前記第3のフィルタを用いてノイズ除去した前記生体信号データとの差分データの振幅の分散値、及び、前記第2のフィルタを用いてノイズ除去した前記生体信号データと前記第3のフィルタを用いてノイズ除去した前記生体信号データとの差分データの分散値を、前記生体信号データの特徴量として抽出し、
前記判別部は、前記特徴量抽出部によって抽出された特徴量を対象に前記被験者の認知機能障害の程度の判別を行なう、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の認知機能障害判別装置。
【請求項7】
臨床診断結果で認知機能障害の程度が既知である複数の被験者に脳を活動させるための課題を与えているときに測定された前記複数の被験者の予め定められた各脳部位における生体信号データを取得する既知データ取得部、
前記既知データ取得部によって取得された前記複数の被験者の各脳部位における生体信号データの各々から、複数の生体特徴量を抽出する既知データ特徴量抽出部、
前記既知データ特徴量抽出部によって抽出された前記複数の被験者の各脳部位の生体信号データの各々の前記複数の生体特徴量と各被験者の臨床診断結果とに基づいて、認知機能障害の程度の判別に用いる、脳部位と前記脳部位の生体信号データの生体特徴量との組からなる判別特徴量を少なくとも1つ選択する選択部、
及び、前記既知データ特徴量抽出部によって抽出された前記複数の被験者の各脳部位の生体信号データの各々の前記複数の生体特徴量から得られる、前記複数の被験者の各々についての前記選択された判別特徴量と、前記複数の被験者の各々の臨床診断結果の前記認知機能障害の程度とを学習データとして用いて、前記判別特徴量に対応する前記認知機能障害の程度を判別するためのモデルを構築する学習部、を含む判定データ生成装置と、
前記課題を与えているときに測定された、前記認知機能障害の程度が未知である被験者の前記予め定められた各脳部位における生体信号データを取得するデータ取得部、
前記データ取得部によって取得された前記認知機能障害の程度が未知である被験者の生体信号データの各々から、前記複数の生体特徴量を抽出する特徴量抽出部、
及び、前記特徴量抽出部によって抽出された前記被験者の各脳部位の生体信号データの各々の前記複数の生体特徴量から得られる、前記選択部によって選択された判別特徴量と、前記学習部によって予め構築されたモデルとに基づいて、前記認知機能障害の程度が未知である被験者の認知機能障害の程度を判別する判別部、を含む認知機能障害判別装置と、
を備える認知機能障害判別システム。
【請求項8】
コンピュータを、
臨床診断結果で認知機能障害の程度が既知である複数の被験者に脳を活動させるための課題を与えているときに測定された前記複数の被験者の予め定められた各脳部位における生体信号データを取得する既知データ取得部と、
前記既知データ取得部によって取得された前記複数の被験者の各脳部位における生体信号データの各々から、複数の生体特徴量を抽出する既知データ特徴量抽出部と、
前記既知データ特徴量抽出部によって抽出された前記複数の被験者の各脳部位の生体信号データの各々の前記複数の生体特徴量と各被験者の臨床診断結果とに基づいて、認知機能障害の程度の判別に用いる、脳部位と前記脳部位の生体信号データの生体特徴量との組からなる判別特徴量を少なくとも1つ選択する選択部と、
前記既知データ特徴量抽出部によって抽出された前記複数の被験者の各脳部位の生体信号データの各々の前記複数の生体特徴量から得られる、前記複数の被験者の各々についての前記選択された判別特徴量と、前記複数の被験者の各々の臨床診断結果の前記認知機能障害の程度とを学習データとして用いて、前記判別特徴量に対応する前記認知機能障害の程度を判別するためのモデルを構築する学習部と、
前記課題を与えているときに測定された、前記認知機能障害の程度が未知である被験者の前記予め定められた各脳部位における生体信号データを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部によって取得された前記認知機能障害の程度が未知である被験者の生体信号データの各々から、前記複数の生体特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記特徴量抽出部によって抽出された前記被験者の各脳部位の生体信号データの各々の前記複数の生体特徴量から得られる、前記選択部によって選択された判別特徴量と、前記学習部によって予め構築されたモデルとに基づいて、前記認知機能障害の程度が未知である被験者の認知機能障害の程度を判別する判別部と、
として機能させるためのプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、認知機能障害判別装置、認知機能障害判別システム、およびプログラムに係り、特に、脳の生体信号を用いて認知機能障害の判別を行う認知機能障害判別装置、認知機能障害判別システム、およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、認知症のスクリーニングは、例えば「Katoh, S., Simogaki, H., Onodera, A., Ueda, H., Oikawa, K., Ikeda, K., Kosaka, K., Imai, Y., and Hasegawa, K.: Development of the revised version of Hasegawa's Dementia Scale (HDS-R), Japanese Journal of Geriatric Psychiatry, Vol. 2, No. 11, pp. 1339-1347 (1991), (in Japanese)」に記載のHDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)、「Folstein, M. F., Folstein, S. E., and McHugh, P. R.: “Mini-Mental State”: A practical method for grading the cognitive state of patients for the clinician, J. Psychiat. Res, Vol. 12, No. 3, pp. 189-198 (1975)」に記載のMMSE(Mini-MentalState Examination)、及び、「Morris, J. C.: The Clinical Dementia Rating (CDR): Current version and scoring rules, Neurology, Vol. 43, No. 11, pp. 2412-2414 (1993)」に記載のCDR(Clinical Dementia Rating)などがある。これらの認知症のスクリーニングは、「Zhang, D., Wang, Y., Zhou, L., Yuan, H., Shen, D., and Alzheimer's Disease Neuroimaging Initiative, the : Multimodal classification of Alzheimer's disease and mild cognitive impairment, Journal of Neuroimage, Vol. 55, No. 3, pp. 856-867 (2011)」に記載のfMRI(functionalMRI)、FDG-PET、及びCSFバイオマーカーなどの神経生理学に基づくテストと同様に広く用いられている。
【0003】
これらは一定のトレーニングを受けた医師、あるいは臨床心理士などにより、主として医療機関において実施されている。
【0004】
しかしながら、日常の外来診療場面では、HDS-Rなどの簡易検査であっても、医師は、検査に5~20分程度の時間を要する。これによって、他の外来患者の診療に支障をきたすとの指摘もあり、医師の負担の軽減が重要になると考えられる。
【0005】
例えば、前述のfMRI、FDG-PET、CSFバイオマーカーなどの神経生理学に基づくテストとしては、「Zhang, D., Wang, Y., Zhou, L., Yuan, H., Shen, D., and Alzheimer's Disease Neuroimaging Initiative, the : Multimodal classification of Alzheimer's disease and mild cognitive impairment, Journal of Neuroimage, Vol. 55, No. 3, pp. 856-867 (2011)」が知られている。このテストは、非侵襲的ではあるが、髄液採取の困難性、放射線被爆、大掛かりな測定装置、被験者の束縛など制約が多く、多くの高齢者を対象とした早期スクリーニングには適さない。
【0006】
より簡便で使用しやすく、かつ、従来のツールと同等以上の性能を有するツールを開発することができれば、医師は、さらに広範にスクリーニングを実施することが可能となる。これによって、認知症の早期診断に資することが可能になる。
【0007】
発明者等は、先行研究(特開2011-255106号公報、及び「加藤昇平, 鈴木祐太, 小林朗子, 小島敏昭, 伊藤英則,本間昭:高齢者音声韻律特徴を用いたHDS-R スコアとの相関分析‐音声を用いた認知症の早期スクリーニングをめざして‐, 人工知能学会論文誌, Vol. 26, No. 2, pp. 347-352 (2011)」)において、高齢者の発話音声に着目し、音声韻律特徴を用いた認知機能障害のスクリーニングを研究してきた。この技術は、音声情報のみを用いるため誰でも在宅・外出などで場所を問わず手軽に実施できる(1次スクリーニング)長所を持つ。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特開2011-255106号公報及び加藤昇平他「高齢者音声韻律特徴を用いたHDS-R スコアとの相関分析・・・」に記載の技術は、脳機能を直接測定するものではないため、専門医療機関に直接誘導する2次スクリーニングとしては限界がある。
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、脳機能に関しての早期スクリーニングに適した認知機能障害判別装置、認知機能障害判別システム、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第1の様態に係る認知機能障害判別装置は、脳を活動させるための課題を与えているときに測定された被験者の予め定められた脳部位における生体信号データを取得するデータ取得部と、前記データ取得部によって取得された生体信号データの特徴量を抽出する特徴量抽出部と、前記特徴量抽出部によって抽出された特徴量と、予め求めておいた認知機能障害の判定に用いるデータとに基づいて、前記被験者の認知機能障害の程度を判別する判別部と、を備えている。
【0011】
また、本発明の第2の様態に係る認知機能障害判別装置は、本発明の第1の様態に係る認知機能障害判別装置において、前記生体信号データは、前記予め定められた脳部位における血流を計測した脳血流データである。
【0012】
また、本発明の第3の様態に係る認知機能障害判別装置は、本発明の第1の様態に係る認知機能障害判別装置において、前記生体信号データは、前記予め定められた脳部位としての前頭前野、左側頭葉、右側頭葉、左頭頂葉、及び右頭頂葉の各々においてNIRS装置によりヘモグロビン流量を測定した脳血流データである。
【0013】
また、本発明の第4の様態に係る認知機能障害判別装置は、本発明の第1の様態に係る認知機能障害判別装置において、前記生体信号データは、前記予め定められた脳部位としての前頭前野における右領域、中央領域、及び左領域、前記予め定められた脳部位としての左頭頂葉における所定領域、及び左側頭葉における所定領域、並びに前記予め定められた脳部位としての右頭頂葉における所定領域、及び右側頭葉における所定領域、の各々の領域においてNIRS装置によりヘモグロビン流量を測定した脳血流データである。
【0014】
また、本発明の第5の様態に係る認知機能障害判別装置は、本発明の第1乃至4のいずれか1つの様態に係る認知機能障害判別装置において、前記認知機能障害の程度が既知である複数の被験者に前記課題を与えているときに測定された前記生体信号データを取得する既知データ取得部と、前記既知データ取得部によって取得された生体信号データの前記特徴量を抽出する既知データ特徴量抽出部と、前記既知データ特徴量抽出部によって抽出された特徴量に基づいて、前記認知機能障害の判定に用いるデータを生成する判定データ生成部と、を更に備える。
【0015】
また、本発明の第6の様態に係る認知機能障害判別装置は、本発明の第5の様態に係る認知機能障害判別装置において、前記判定データ生成部は、前記既知データ特徴量抽出部によって抽出された特徴量の中から、前記認知機能障害の判定に用いる特徴量を選択する選択部と、前記選択部によって選択された特徴量と当該特徴量が抽出された被験者の前記認知機能障害の程度とを学習データとして用いて、前記判別部が前記特徴量に対応する前記認知機能障害の程度を判定するためのモデルを構築する学習部と、を備える。
【0016】
また、本発明の第7の様態に係る認知機能障害判別装置は、本発明の第1乃至第6の様態のいずれか1つに係る認知機能障害判別装置において、複数の低域通過フィルタを用いて前記入力された生体信号データのノイズ除去を行なうプリミティブ解析部を備え、前記複数の低域通過フィルタは、環境光によるノイズを含むノイズを除去するのに用いる第1のフィルタ、脳波及び血圧を含む変動成分を抽出するのに用いる第2のフィルタ、及び、顎開閉及び眼球運動を含む運動によるノイズを除去するのに用いる第3のフィルタを含み、前記データ特徴量抽出部は、前記プリミティブ解析部が、前記第1のフィルタを用いてノイズ除去した前記生体信号データにおける振幅の平均値、基本周波数、及び周波数重心と、前記第3のフィルタを用いてノイズ除去した前記生体信号データにおける振幅の最大値、振幅の最小値、振幅の分散値、振幅の平均値、基本周波数、及び近似直線の傾きと、前記第1のフィルタを用いてノイズ除去した前記生体信号データと前記第3のフィルタを用いてノイズ除去した前記生体信号データとの差分データの振幅の分散値、及び、前記第2のフィルタを用いてノイズ除去した前記生体信号データと前記第3のフィルタを用いてノイズ除去した前記生体信号データとの差分データの分散値を、前記生体信号データの特徴量として抽出し、前記判別部は、前記データ特徴量抽出部によって抽出された特徴量を対象に前記被験者の認知機能障害の程度の判別を行なう。
【0017】
また、本発明の第8の様態に係る認知機能障害判別システムは、認知機能障害の程度が既知である複数の被験者に脳を活動させるための課題を与えているときに測定された予め定められた脳部位における生体信号データを取得する既知データ取得部、前記既知データ取得部によって取得された生体信号データの特徴量を抽出する既知データ特徴量抽出部、及び、前記既知データ特徴量抽出部によって抽出された特徴量に基づいて、前記認知機能障害の判定に用いるデータを生成する判定データ生成部、を含む判定データ生成装置と、前記課題を与えているときに測定された、前記認知機能障害の程度が未知である被験者の前記予め定められた脳部位における生体信号データを取得するデータ取得部、前記データ取得部によって取得された生体信号データの特徴量を抽出する特徴量抽出部、及び、前記特徴量抽出部によって抽出された特徴量と前記判定データ生成装置によって生成されたデータとに基づいて、前記認知機能障害の程度が未知である被験者の認知機能障害の程度を判別する判別部、を含む認知機能障害判別装置と、を備える。
【0018】
また、本発明の第9の様態に係るプログラムは、コンピュータを、脳を活動させるための課題を与えているときに測定された、被験者の予め定められた脳部位における生体信号データを取得するデータ取得部と、前記データ取得部によって取得された生体信号データの特徴量を抽出する特徴量抽出部と、前記特徴量抽出部で抽出された特徴量と、予め求めておいた認知機能障害の判定に用いるデータとに基づいて、前記被験者の認知機能障害の程度を判別する判別部と、として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、認知課題実行中の被験者の脳の複数領域の生体信号を取得して当該生体信号の特徴量を抽出し、この特徴量と、予め求めておいた認知機能障害の判定に用いるデータとに基づいて、被験者の認知機能に障害があるかどうかを判別することにより、脳機能に関しての早期スクリーニングが可能となる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態に係る認知機能障害判別装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1におけるfNIRS測定装置による第1の測定箇所を示す説明図である。
【図3】図1におけるfNIRS測定装置による第2の測定箇所を示す説明図である。
【図4】図1におけるfNIRS測定装置による第3の測定箇所を示す説明図である。
【図5】実施の形態に係る認知機能障害判別装置による脳血流計測時に用いるブロックデザインを示す説明図である。
【図6】図1におけるfNIRS測定装置による脳血流計測時に用いるシステム構成例を示す説明図である。
【図7】図1におけるfNIRS測定装置による第1の脳血流計測結果例を示す説明図である。
【図8】図1におけるfNIRS測定装置による第2の脳血流計測結果例を示す説明図である。
【図9】図1におけるfNIRS測定装置による第3の脳血流計測結果例を示す説明図である。
【図10】実施の形態に係る認知機能障害判別装置におけるベイジアン分類器の内部構成を示すブロック図である。
【図11】実施の形態に係る認知機能障害判別装置におけるプリミティブ解析部の内部構成を示すブロック図である。
【図12】図11におけるプリミティブ解析部による処理例を示す説明図である。
【図13】実施の形態に係る認知機能障害判別装置により実行される第1の処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】実施の形態に係る認知機能障害判別装置により実行される第2の処理の流れを示すフローチャートである。
【図15】実施の形態に係る認知機能障害判別装置により実行される第3の処理の流れを示すフローチャートである。

【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施の形態では、特別な測定環境を必要とせず、自然な体勢で課題実行中の脳機能を測定できる、機能的近赤外分光法(functional near-infrared spectroscopy、以下、「fNIRS」ともいう)から得られる生体信号に着目した。本実施の形態では、認知課題テスト実施中の高齢者の脳機能計測データを用いて認知症スクリーニングを行なう際に、本発明を適用した場合を例に説明する。
【0022】
なお、fNIRSとは、近赤外光を用いて脳内のヘモグロビン流量を計測する公知の技術であり、非侵襲かつ被測定者(以下、被験者ともいう)への拘束が少なく、測定環境を選ばない比較的簡便な計測が可能である。
【0023】
本実施の形態では、このような機能的近赤外分光法を用いて認知課題実行中の脳血流データを計測し、計測された脳血流データに基づいて、健常(NC)、軽度認知機能障害(MCI)、及びアルツハイマー型認知症(AD)の臨床診断群を自動判別する。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態に係る認知機能障害判別装置10は、機能的近赤外分光法を用いて認知課題実行中の脳血流データを計測するfNIRS測定装置20,20aと、本発明に係る認知機能障害判別処理を実行するコンピュータにより構成される学習装置31、データ蓄積装置32、及び判別装置33と、判別装置33の処理結果等を表示する表示装置40とを備えている。
【0025】
学習装置31、データ蓄積装置32、及び判別装置33は、各々、図示していないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及びHDD(Hard Disk Drive)を備える。HDDには、CPUが本発明に係る認知機能障害判別処理を実行する際に用いるプログラムが記憶されている。
【0026】
学習装置31は、プログラムを実行して実現される処理機能として、特徴選択部31a、学習部31b、臨床データベース31d、及びモデル記憶部31eを備えている。
【0027】
データ蓄積装置32は、プログラムを実行して実現される処理機能として、原波形信号取得部32a、プリミティブ解析部32b、特徴量抽出部32c、及び臨床データベース32dを備えている。
【0028】
判別装置33は、プログラムを実行して実現される処理機能として、原波形信号取得部33a、プリミティブ解析部33b、特徴量抽出部33c、ベイジアン分類器33d、及びモデル記憶部33eを備えている。
【0029】
本実施の形態では、データ蓄積装置32と判別装置33の各々は、原波形信号取得部32a,33a、プリミティブ解析部32b,33b、及び特徴量抽出部32c,33cを備えた構成としている。データ蓄積装置32と判別装置33の各々を、同じコンピュータに備える構成とすることにより、原波形信号取得部32a,33aのいずれか、プリミティブ解析部32b,33bのいずれか、及び特徴量抽出部32c,33cのいずれを共有する構成としても良い。
【0030】
fNIRS測定装置20,20aは、生体信号として、被験者の脳血流データを計測する。脳血流の増加は、例えば「Villringer, A. and Firnafl, U.: Coupling of brain activity and cerebral blood flow: basis of functional nuroimaging, Cerebrovasc. Brain Metab. Rev., Vol. 7, pp. 240-276 (1995)」に記載のように、その脳部位の神経活動の活発化を反映しており、脳血流の変化は、血液中の酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)量の変化を測定することで捉えることが可能である。そのため、fNIRS測定装置20,20aで計測されたoxy-Hb量の変化を脳活動の指標と捉えることができる。
【0031】
本実施の形態では、認知課題実行中の高齢者の脳活動計測として、多チャンネルのfNIRS測定装置20,20aを用いている。具体的には、株式会社島津製作所(R)製の近赤外光脳機能イメージング装置FOIRE-3000を用いた。
【0032】
このような多チャンネルのfNIRS測定装置20,20aを用いて、本実施の形態では、図2~図4に示すように、複数の箇所で被験者の脳血流データを計測する。なお、図2~図4において、白丸部分は発光器(illuminator)、黒丸部分は検出器(detector)である。
【0033】
fNIRS測定装置20,20aは、図2に示すように、前頭前野では、右領域Fr、中央領域Fc、及び左領域Flにおける1~22の22チャンネルの部位において脳血流を計測する。また、図3に示すように、fNIRS測定装置20,20aは、右側頭葉では、前方領域Rf及び後方領域Rrにおける1~10の10チャンネルの部位において脳血流を計測する。また、図4に示すように、fNIRS測定装置20,20aは、左側頭葉では、前方領域Lf及び後方領域Lrにおける1~10の10チャンネルの部位において脳血流を計測する。このように、fNIRS測定装置20,20aは、合計42チャンネルの部位において脳血流を計測する。
【0034】
各プローブの装着位置については、脳波測定における国際10-20法の電極配置を参考に、前頭前野のプローブセットは最下部中央がFpzに重なるように水平に配置し、左右側頭葉及び頭頂葉のプローブセットはP3,T3(P4,T4)の位置を基準に配置した。
【0035】
判別装置33は、このようにして、fNIRS測定装置20により被験者から計測された複数部位の脳血流データを、原波形信号取得部33aにより取り込む。判別装置33は、取り込んだ複数部位の脳血流データに基づいて、プリミティブ解析部33bにより、脳の複数部位を複数に分割した複数領域の脳血流データを取得する。
【0036】
さらに、判別装置33は、特徴抽出部33cにより、得られた脳血流データの特徴量を抽出する。そして、判別装置33は、ベイジアン分類器33dにより、予め構築しておいた認知機能障害の判定に用いるモデル(モデル記憶部33e)を用いて、被験者に対して、健常(NC)、軽度認知機能障害(MCI)、及びアルツハイマー型認知症(AD)の3種類(3群)のいずれに該当するかの判別を行う。
【0037】
この判別結果は、判別装置33から表示装置40に出力され、表示装置40において表示される。
【0038】
また、学習装置31は、データ蓄積装置32が予め蓄積した、認知機能に障害があるかどうか、あればどの程度かが既知である被験者の認知課題実行中の脳の複数部位の脳血流データおよび臨床診断結果を用いて、判別装置33における上述の認知機能障害の判定に用いるモデル(臨床モデル記憶部31e,33e)を構築する。
【0039】
データ蓄積装置32は、原波形信号取得部32aにより、認知機能に障害があるかどうか、あればどの程度かが既知である被験者の認知課題実行中の脳の複数部位の脳血流データをfNIRS測定装置20aから取得すると共に、図示していない入力装置から入力される当該被検体者の臨床診断結果を収集して蓄積する。
【0040】
そして、データ蓄積装置32は、プリミティブ解析部32bにより、蓄積した複数部位の脳血流データに基づいて、脳の複数部位を複数に分割した複数領域の脳血流データを取得する。次に、データ蓄積装置32は、特徴抽出部32cにより、得られた脳血流データの特徴量を抽出する。
【0041】
データ蓄積装置32は、これらの処理を、認知機能に障害があるかどうか、あればどの程度かが既知である複数の被験者に対して行い、複数の被験者の脳血流データ特徴量を得て、各々を対応付けて、臨床データベース32dにおいて蓄積する。
【0042】
学習装置31は、臨床データベース31dにより、臨床データベース32dにおいて蓄積された情報と同じ情報を蓄積する。さらに、学習装置31は、特徴選択部31aにより、このようにして臨床データベース31dにおいて得られた特徴量の中から判定に用いる特徴量を選択する。そして、学習装置31は、学習部31bにより、この選択した特徴量と抽出された特徴量とに基づき、認知機能障害を判別するためのモデルを構築する。
【0043】
以下、認知機能障害の判定に用いるモデルの構築について、より詳しく説明する。
【0044】
本実施の形態では、認知機能に障害があるかどうか、あればどの程度かが既知である被験者として、表1に示す50名の高齢者(年齢64~92歳、男性18名、女性32名)を被験者とした。表1には、被験者の臨床診断群と年齢構成の内訳を示している。
【0045】
表1中の括弧内の数値は、それぞれ順に、NC(健常)群,MCI(軽度認知機能障害)群,AD(アルツハイマー型認知症)群の人数を示している。なお、ここでは、MCI群は、「臨床認知症評価法」における「CDR(Clinical Dementia Rating)」が0.5相当の患者を対象とし、また、AD群は、CDR1相当の患者を対象とした。
【0046】
【表1】
JP0005959016B2_000002t.gif

【0047】
なお、CDR(Clinical Dementia Rating)は、世界中で広く用いられている行動観察尺度(観察式)による臨床認知症基準であり、記憶、見識、判断力と問題解決、社会適応、家族状況と趣味、及び、介護状況の6項目を5段階で評価する。本実施の形態では、中等度や重度の認知症であるCDR2以上の被験者は対象群から除外した。また、課題実行に立ち会ったオペレータによる観察及び課題の回答内容から被験者の態度を総合的に評価し、認知課題の遂行自体に明らかな問題のある被験者についても対象群から除外した。
【0048】
本実施の形態では、HDS-Rテストを含め様々な認知課題を実行中の高齢者の脳機能を計測するために、図5に示すブロックデザインの課題を設計し、音声・fNIRS同時計測を行った。
【0049】
図5に示すように、計測では、開始後の前半10分間において、被験者の出身地や少年時代の会話と長谷川式テストを実施し、後半の12分間において、回想法(1.聴く、2.話す、3.見る)ならびにワーキングメモリ課題(1.カテゴリ想起、2.リーディングスパンテスト、3.顔想起)の認知課題を実施した。また、当該計測においては、課題に集中して取り組めるように、1課題の時間は60秒とし、各認知課題の前後に60秒の1点注視休憩(レスト)を取らせた。
【0050】
具体的には、図6に示すシステム環境において、測定者は、被測定者(被験者)を課題提示装置(ディスプレイ)の正面に座らせ、被測定者(被験者)の頭部にfNIRS測定のためのプローブ(あるいは脳波EEG・Electroencephalogram測定のための電極など)を設置する。そして、測定者は、被測定者(被験者)に対して、ディスプレイ及び傍らのスピーカから認知課題を提示する。
【0051】
被測定者は、ディスプレイおよびスピーカからの指示に従い課題を実行し、測定者は、課題実行中の脳活動状態を、fNIRS測定器(あるいは脳波測定器など)から測定する。
【0052】
本実施の形態では、fNIRS測定装置20,20aを用いており、このfNIRS測定器は、oxy-Hb(酸素化ヘモグロビン量)、deoxy-Hb(脱酸素化ヘモグロビン量)、及びtotal-Hb(総ヘモグロビン量)を計測する。ここでは、oxy-Hbの測定信号を用いた例を示す。
【0053】
本実施の形態では、予備的調査として、ワーキングメモリ課題1「カテゴリ想起」の課題実行中のfNIRSデータ(oxy-Hb)を用いて全チャンネル毎(33CH,41CHを除く)の3群(NC、MCI、及びAD)間の有意差検定を行った。検定方法は、「t-検定」を用いて、両側検定、有意水準P<0.001、Bonferroni補正(1/40)のもとで実施した。
【0054】
図7乃至図9は、検定で有意差が確認されたチャンネルについて、t-値に基づき16階調の濃淡でマッピングした例を示している。図7乃至図9では、t-値が高く相互の差が大きいほど、濃い色で示され、有意差ありとなる。
【0055】
認知症患者は、認知機能の障害により、ワーキングメモリの機能が低下する。その結果、前頭前野の脳血流において、健常群は疾病群と比較して有意に賦活することが確認できる(図7及び図8の左図における図2に示されるFr、Fc及びFl領域)。また、左右側頭葉の脳血流についても、健常群は疾病群と比較して有意に賦活することが確認された(図7及び図8の中右図における図3,4で示されるRf、Rr、Lf、及びLr領域)。加えて、図9に示すように、軽度の認知機能障害であるMCI群は、AD群に比べてこれらの脳血流が僅かながら有意に賦活することが確認できる。
【0056】
すなわち、図7は、健常(NC)群と軽度認知機能障害(MCI)群間での、有意差が確認されたチャンネルを示す。図8は、健常(NC)群とアルツハイマー型認知症(AD)群間での、有意差が確認されたチャンネルを示す。図9は、軽度認知機能障害(MCI)群とアルツハイマー型認知症(AD)群間での、有意差が確認されたチャンネルを示している。
【0057】
これらの図7~図9の結果、特に、図8の結果から、健常(NC)群と疾病(AD)群の間では、認知課題実行時の脳血流に有意な差が確認される。
【0058】
これらのことは、認知課題実行中のfNIRSデータを用いた認知症スクリーニングの実現可能性を示唆している。なお、同課題実行直前のレスト区間のfNIRSデータを用いて3群に対する同様の検定を行なったところ、全てのチャンネルにおいて有意差は確認されなかった。
【0059】
従って、認知症のスクリーニングは、まず、認知機能の健常性を判断し、疑義がある場合には、その程度に応じて軽度認知機能障害あるいは認知症であるかを判定するプロセスとする。
【0060】
そこで、本実施の形態では、図10に示すように、ベイジアン分類器33dは、ベイジアン分類器(1)33d’とベイジアン分類器(1)33d”を備えている。このように、ベイジアン分類器33dは、二段階のNaive-Bayes Classifierを用いて、fNIRSデータからのNC群、MCI群、及びAD群の3群を判別する。
【0061】
次に、図11及び図12を用いて、プリミティブ解析部32b,33bについて説明する。
【0062】
プリミティブ解析部32b,33bは、原波形信号取得部32a,33aにより入力されたfNIRS測定信号の原波形に対して、チャンネル(CH1~CH42)毎に、プリミティブ解析を行う。プリミティブ解析では、低域通過フィルタ及び差分フィルタをかけてノイズが除去され、注目する領域内のチャネルの加算平均が行われる。
【0063】
具体的には、プリミティブ解析部32b,33bは、まず、図11に示すように、各チャンネルのfNIRS信号を3つの低域通過フィルタF1~F3(いずれもバタワース特性、次数5)に通して平滑化する。
【0064】
ここで、低域通過フィルタF1の遮断周波数は1.92Hz、低域通過フィルタF2の遮断周波数は0.96Hz、及び、低域通過フィルタF3の遮断周波数は0.48Hzである。
【0065】
さらに、プリミティブ解析部32b,33bは、図12に示すように、これらの3つの平滑化信号に、2つの差分データを加えて、1チャンネルあたり5個のfNIRS時系列信号を生成する。図12に示す5個のfNIRS時系列信号1201~1205は次のものである。
【0066】
fNIRS時系列信号1201は、低域通過フィルタF1(遮断周波数1.92Hz)により、主に環境光によるノイズを除去した信号である。
【0067】
fNIRS時系列信号1202は、低域通過フィルタF2(遮断周波数0.96Hz)により、脈波や血圧による変動成分(背景ノイズ)を抽出した信号である。
【0068】
fNIRS時系列信号1203は、低域通過フィルタF3(遮断周波数0.48Hz)により、主に額開閉、眼球運動、及び首前屈などの運動によるノイズを除去した信号である。
【0069】
fNIRS時系列信号1204は、fNIRS時系列信号1201からfNIRS時系列信号1203を差分した信号系列で、変動に着目した信号である。
【0070】
fNIRS時系列信号1205は、fNIRS時系列信号1202からfNIRS時系列信号1203を差分した信号系列で、変動に着目した信号である。
【0071】
次に、プリミティブ解析部32b,33bは、測定脳部位を以下の7つの領域に分割し、各領域内のfNIRS時系列信号をそれぞれ加算平均する。具体的には、プリミティブ解析部32b,33bは、図11における加算平均値Fr,Fc,Fl,Rf,Rr,Lf,Lrとして、頭部の7領域(前頭前野:3領域,左右側頭葉:各2領域)内のチャンネルについて、それぞれ上記の5系列信号を加算平均(Averaging)する。
【0072】
詳しくは、加算平均値Frは、前頭前野の右側7チャンネル(チャネル1,5,6,10,14,15,19)について、上記の5系列信号を加算平均したものである。
【0073】
加算平均値Fcは、前頭前野の中央部8チャンネル(チャネル2,3,7,11,12,16,20,21)について、上記の5系列信号を加算平均したものである。
【0074】
加算平均値Flは、前頭前野の左側7チャンネル(チャネル4,8,9,13,17,18,22)について、上記の5系列信号を加算平均したものである。
【0075】
加算平均値Rfは、右頭頂葉の前方5チャンネル(チャネル23,24,26,27,30)について、上記の5系列信号を加算平均したものである。
【0076】
加算平均値Rrは、右側頭葉の後方5チャンネル(チャネル25,28,29,31,32)について、上記の5系列信号を加算平均したものである。
【0077】
加算平均値Lfは、左頭頂葉の前方5チャンネル(チャネル33,34,36,37,40)について、上記の5系列信号を加算平均したものである。
【0078】
加算平均値Lrは、左側頭葉の後方5チャンネル(チャネル35,38,39,41,42)について、上記の5系列信号を加算平均したものである。
【0079】
プリミティブ解析部32b,33bは、このようにして得た各領域毎の5つの系列信号を加算平均した値を、特徴量抽出部32c,33cに入力する。
【0080】
特徴量抽出部32c,33cは、プリミティブ解析部32b,33bにより得られた各領域毎の5つの系列から、以下の11の特徴量を算出する特徴抽出を行う。具体的には、特徴量抽出部32c,33cは、脳血流変動の特徴を表す特徴量として、前記用意したfNIRSデータから、それぞれ表2に示す特徴量を計算し、被験者1課題について各領域あたり11個のfNIRS特徴量を算出する。
【0081】
なお、認知機能障害の判別に有効なfNIRSの特徴は未だ明らかではない。fNIRSの信号解析においても、例えば脳波におけるα、β、γ、δ、及びθなどの各波の周波数帯域や、事象関連電位N100,P300のように確立された特徴量は見出されていない。そのため、本実施の形態では、試行錯誤的ではあるものの、データマイニングのアプローチに着目した。前述の初期解析で除去できない程のアーチファクトや雑音による影響が含まれるデータについては、目視によるfNIRS信号の判読により事前に除去した。
【0082】
【表2】
JP0005959016B2_000003t.gif

【0083】
表2においては、フィルタ番号として、フィルタ1(F1)、フィルタ3(F3)、フィルタ1-3(F1-3)、フィルタ2-3(F2-3)が示され、各々に対応するfNIRS特徴量が示されている。
【0084】
フィルタ1(F1)は、遮断周波数1.92Hzの低域通過フィルタである。フィルタ1(F1)を通過した信号は、主に環境光によるノイズが除去され、5つの信号系列中で最も広い周波数成分を持つ。なお、フィルタ1(F1)は、フィルタ2(F2)の周波数成分を含む。
【0085】
フィルタ2(F2)は、遮断周波数0.96Hzの低域通過フィルタである。フィルタ2(F2)を通過した信号は、脈波や血圧による変動成分(背景ノイズ)が抽出されたもので、脳活動に直接関係しない自律神経系の生体信号成分であるため、特徴量は抽出しない。
【0086】
フィルタ3(F3)は、遮断周波数0.48Hzの低域通過フィルタである。フィルタ3(F3)を通過した信号は、主に額開閉、眼球運動、及び首前屈などの運動によるノイズが除去され、5つの信号系列中で最も狭い周波数成分であり、認知機能との関連が比較的強いと考えられる。
【0087】
フィルタ1-3(F1-3)は、フィルタ1(F1)を通過した信号からフィルタ3(F3)を通過した信号を差分した信号系列であり、ここでは、その変動に着目する。
【0088】
フィルタ2-3(F2-3)は、フィルタ1(F2)を通過した信号からフィルタ3(F3)を通過した信号を差分した信号系列であり、ここでは、その変動に着目する。
【0089】
fNIRS特徴量としての振幅の平均値(mean)は、脳活動(賦活)の平均レベルを表す。
【0090】
fNIRS特徴量としての基本周波数(f0)は、脳活動(賦活)の振動回数(ピーク)を表す。
【0091】
fNIRS特徴量としての周波数重心(fc)は、脳活動(賦活)の振動回数(重心)を表す。
【0092】
fNIRS特徴量としての振幅の最大値(max)は、脳活動(賦活)の最大レベルを表す。
【0093】
fNIRS特徴量としての振幅の最小値(min)は、脳活動(賦活)の最低レベルを表す。
【0094】
fNIRS特徴量としての振幅の分散値(var)は、脳活動(賦活)の変動を表す。
【0095】
fNIRS特徴量としての振幅の平均値(mean)は、脳活動(賦活)の平均レベルを表す。
【0096】
fNIRS特徴量としての近似直線の傾き(gr)は、脳活動(賦活)の傾向を表す。
【0097】
fNIRS特徴量としての振幅の分散値(var)は、脳活動(賦活)の変動を表す。
【0098】
特徴量抽出部32c,33cは、以上の処理を施して、特徴量化した数値(77次元)を説明変数に格納する。そして、データ蓄積装置32は、これに、臨床診断結果(NC:健常、MCI:軽度認知機能障害、AD:アルツハイマー型認知症)を目標属性として付与したデータを臨床データベース32dに格納する。
【0099】
学習装置31は、上述の処理で臨床データベース32dに格納したデータを臨床データベース31dに蓄積し、このデータを用いて、モデルの構築を行う(Learning)。
【0100】
本実施の形態では、学習装置31は、予め臨床データベース32cに蓄積したデータ、すなわち、50人分(NC:21人、MCI:19人、AD:10人)のデータを用いて、認知機能障害の有無および程度の判別結果を推定するモデルを構築する。
【0101】
具体的には、学習装置31は、被験者のfNIRS測定データから抽出した77個のfNIRS特徴量を説明変数、臨床診断群を目標属性としてベイジアン・クラシファイアを構築する。なお、クラシファイアモデルにはNaive-Bayes Classifier を採用した。
【0102】
ここでは、学習装置31は、認知機能に障害があるかどうかを推定する第1段階としての判別器NBNC/CI用のモデルと、障害が推定された場合にその程度を推定する第2段階の判別器NBMCI/AD用のモデルとの2つの判別器用のモデルを構築してモデル記憶部31eに格納する。
【0103】
なお、上記のモデルを構築する際に、データから抽出した特徴量が多すぎると、その中には認知機能障害の判別に無関係な特徴量が含まれる可能性があり、モデルの構築や判別性能に悪影響を与えることが考えられる。
【0104】
そこで、本実施の形態では、学習装置31は、特徴選択部31aにより、モデル構築の事前に特徴選択を行う。しかしながら、現在のところ、高齢者の認知機能障害と因果関係の高いfNIRS特徴は特定されておらず、特徴選択として有用な理論や事前の知識は存在しない。また、抽出した特徴量のすべての組合せを計算することは計算コストが高くなる。
【0105】
そのため、ここでは、特徴選択部31aは、例えば、「Draper, N. and Smith, H.: Applied Regression Analysis (3rd edition), John Wiley & Sons (1998)」に記載のように、一般的に多用されている逐次選択法としてフォワードステップワイズ法を用いて特徴選択を行う。
【0106】
フォワードステップワイズ法の特徴選択規準としては、各2群の推定正答率の平均値を用いた。
【0107】
このフォワードステップワイズ法により、ベイジアン分類器(1)33d’において健常者と認知機能障害の弁別を行う判別基準に有用な特徴量を自動的に選択するために、特徴選択部31aは、NC群とCI群(MCI+AD群)の2群を弁別するために準最適な特徴量の組合せを求める。
【0108】
また、特徴選択部31aは、ベイジアン分類器(2)33d”において認知機能障害の程度(軽度、認知症)を弁別する判別基準として有用な特徴量を自動的に選択するために、MCI群とAD群を弁別するために準最適な特徴量の組合せを求める。
【0109】
表3は、ベイジアン分類器(1)33d’において健常者と認知機能障害の弁別を行う判別基準に有用な特徴量として2つのものを選択した例を示す。また、表3は、ベイジアン分類器(2)33d”において認知機能障害の程度(軽度、認知症)を弁別する判別基準として有用な特徴量として3つのものを選択した例を示している。
【0110】
【表3】
JP0005959016B2_000004t.gif

【0111】
ここで、表3に示す特徴量について説明する。まず、ベイジアン分類器(1)33d’において健常者と認知機能障害の弁別を行う判別基準に有用な特徴量として、領域Fr(前頭全野の右側7チャネル)におけるフィルタ3(F3)を通過した信号の振幅の最大値(max)と、領域Lr(左側頭葉の後方5チャネル)におけるフィルタ1(F1)を通過した信号の周波数重心(fc)とを用いている。
【0112】
これは、例えば「Walhovd, K. B., Fjell, A. M., Dale, A. M., McEvoy, L. K., Brewer, J., Karow, D. S., Salmon, D. P., Fennema-Notestine, C., and the Alzheimer's Disease Neuroimaging Initiative, : Multi-modal imaging predicts memory performance in normal aging and cognitive decline, Neurobiology of Aging, Vol. 31, No. 7, pp. 1107-1121 (2010)」に記載のように、主にアルツハイマー型認知症において後帯状回の脳部位における血流の低下が確認されており、また、認知機能の障害に伴いワーキングメモリの機能が低下することに着目したためである。実際に、本実施の形態における判別結果から、前頭前野の血流が低下し、側頭後方領域の賦活周期が伸長すると認知機能障害の疾病群として判別することが確認されている。
【0113】
また、ベイジアン分類器(2)33d”において認知機能障害の程度(軽度、認知症)の弁別を行なう判断基準に有用な特徴量として、領域Fr(前頭全野の中央部8チャネル)におけるフィルタ1,3(F1,F3)を通過した各々の信号の差分信号振幅の分散値(var)、領域Lf(左頭頂葉の前方5チャネル)におけるフィルタ1(F1)を通過した信号の振幅の平均値(mean)、及び、領域Lf(左頭頂葉の前方5チャネル)におけるフィルタ1,3(F1,F3)を通過した各々の信号の差分信号振幅の分散値(var)とを用いている。
【0114】
これは、例えば、「Ishiwata 06 Ishiwata, A., Sakayori, O., Minoshima, S., Mizumura, S., Kitamura, S., and Katayama, Y.: Preclinical evidence of Alzheimer changes in progressive mild cognitive impairment: a qualitative and quantitative SPECT study, Acta Neurologica Scandinavica;114(2):91-6, 2006, Vol. 114, No. 2, pp. 91-96 (2006)」に記載のように、軽度認知機能障害からアルツハイマー型認知症へ進行した患者の脳における病態学的特徴として、後帯状回や楔前部における脳血流の低下が認められることに着目したためである。実際に、本実施の形態における判別結果から、頭頂領域(左頭頂領域)の賦活の分散及び平均値が減少すると、軽度認知機能障害からアルツハイマー型認知症と分別することが確認されている。
【0115】
このように、本実施の形態では、特徴選択部31aは、表3に示すように、ベイジアン分類器(1)33d’で健常者と認知機能障害の弁別を行う際に用いる2つの特徴量として、領域Fr(前頭全野の右側7チャネル)におけるフィルタ3(F3)を通過した信号の振幅の最大値(max)と、領域Lr(左側頭葉の後方5チャネル)におけるフィルタ1(F1)を通過した信号の周波数重心(fc)とを選択している。
【0116】
また、特徴選択部31aは、ベイジアン分類器(2)33d”で認知機能障害の程度(軽度、認知症)を弁別する際に用いる3つの特徴量として、領域Fr(前頭全野の中央部8チャネル)におけるフィルタ1,3(F1,F3)を通過した各々の信号の差分信号振幅の分散値(var)、領域Lf(左頭頂葉の前方5チャネル)におけるフィルタ1(F1)を通過した信号の振幅の平均値(mean)、及び、領域Lf(左頭頂葉の前方5チャネル)におけるフィルタ1,3(F1,F3)を通過した各々の信号の差分信号振幅の分散値(var)を選択している。
【0117】
学習装置31は、このようにして特徴選択部31aにより選択された特徴量と、臨床データベース31dに蓄積されている特徴量とから、ベイジアン分類器33dにおいて認知機能障害を判別するためのモデルを構築してモデル記憶部31eに格納する。
【0118】
具体的には、学習装置31は、学習部31bにより、臨床データベース31d、および、特徴選択部31aにより絞り込まれた表3に示す特徴量のリストを用いて、各特徴量間及び特徴量と判別目標との確率的な依存関係を計算する。これにより、学習装置31は、ベイジアン分類器33dにおける分類機能のネットワーク構造およびパラメータ(条件付確率分布)を構築してモデル記憶部31eに格納する。
【0119】
判別装置33は、このようにして学習装置31が構築したモデルを用いて、被験者に認知機能に障害があるかどうかの判別を行う。以下、判別装置33による、被験者に認知機能に障害があるかどうかの判別を行う処理について説明する。
【0120】
この場合、認知機能の診断が未知の高齢者に、モデルを構築する際と同様にして、図5に示す認知課題を実行させる。判別装置33は、実行中の脳血流データから以下の処理を経て、本人の認知機能レベルを判別する。
【0121】
すなわち、判別装置33は、上記モデルを構築する場合と同様に、まず、fNIRS測定装置20において計測された複数部位の脳血流データを、判別装置33に備えられた原波形信号取得部33aにより取り込む。
【0122】
次に、取り込んだ複数部位の脳血流データに対してプリミティブ解析部33bが解析処理を行う。そして、プリミティブ解析で得られた各領域毎の5つの系列から、特徴抽出部33cが、特徴量を算出する。そして、ベイジアン分類器33dが、予め学習装置31が構築した、モデル記憶部33eにおいた蓄積された認知機能障害の判定に用いるモデルにより、当該被験者に対するNC、MCI、及びADの判別を行う。
【0123】
この判別処理においては、判別装置33は、図10に示すように、まず、ベイジアン分類器(1)33d’を用いて、健常(NC)であるか認知機能障害(CI)であるかを判別する。
【0124】
具体的には、ベイジアン分類器(1)33d’は、選択された特徴量に該当する計算値をノードにセットし、NC/CI分類処理を実行する。その出力として、NC群とCI群に分類される確率値が得られる。
【0125】
ここで、CI群に分類される確率が高いと推定された場合は、判別装置33は、次に、ベイジアン分類器(2)33d”を用いて、軽度認知機能障害(MCI)であるかアルツハイマー型認知症(AD)であるかを判別して、認知機能障害の程度を推定する。
【0126】
この場合、上記ベイジアン分類器(1)33d’の場合と同様に、ベイジアン分類器(2)33d”は、選択された特徴量に該当する計算値をノードにセットし、MCI/AD分類処理を実行する。その出力として、軽度認知機能障害(MCI)群、アルツハイマー型認知症(AD)群に分類される確率値が得られる。
【0127】
以下、本実施の形態に係る認知機能障害判別装置による判別処理の実験結果について説明する。
【0128】
この実験結果は、表1で示した50名の高齢者が実施した図5に示す認知課題のうち、ワーキングメモリ課題1(カテゴリ想起)の終盤20秒で実施された「果物の名前を出来るだけ多く答える」課題に対する回答時のfNIRSデータを用いて、NC/MCI/ADの判別実験を行った結果である。
【0129】
検証方法として、Leave-one-out交差検定を用いた。また、ベイジアン分類器(1)33d’及びベイジアン分類器(2)33d”で採用されたfNIRS特徴量の一覧は表3に示すものである。
【0130】
表4は、被験者50名に対して本実施の形態に係る認知機能障害判別装置による判別処理を行なった実験の交差検定結果を示している。
【0131】
【表4】
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【0132】
表4の結果は、アルツハイマー型認知症(AD)の判定正答率と、健常(NC)の判定的中率とが共に90%を超えていることを示している。このことから、本実施の形態に係る認知機能障害判別装置は、アルツハイマー型認知症(AD)群に属する被験者が健常(NC)であると誤判定することがなく、かつ、健常と判定された被験者をアルツハイマー型認知症(AD)患者であると判別することがない(1名のみMCI患者であった)ことがわかる。
【0133】
この結果は、認知症スクリーニングが求められる仕様を鑑みて好ましい結果であると言える。また、MCIの推定正答率も73.7%であり、本実施の形態に係る認知機能障害判別装置の性能は、許容できるものであるといえる.
【0134】
また、本実施の形態に係る認知機能障害判別装置では、誤判定された5名の8割が疾患側(AD)に判定されていることも受け入れやすい結果である。
【0135】
次に、図13乃至図15を用いて、図1に示す学習装置31、データ蓄積装置32、及び判別装置33による、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体等に記憶されたプログラムに基づく処理動作例を説明する。なお、プログラムを記憶するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。
【0136】
図13は、データ蓄積装置32による処理動作例を示しており、データ蓄積装置32は、ステップ1301において、原波形信号取得部32aの機能により、fNIRS測定データを取得する。
【0137】
ステップ1302において、データ蓄積装置32は、プリミティブ解析部32bの機能により、fNIRS測定データに対してフィルタリングするプリミティブ解析処理を行なう。
【0138】
ステップ1303において、データ蓄積装置32は、特徴量抽出部32cの機能により、プリミティブ解析処理されたfNIRS測定データに対する特徴量の抽出処理を行なう。
【0139】
ステップ1304において、データ蓄積装置32は、特徴量抽出部32cの機能により抽出したfNIRS測定データに対する特徴量を臨床データベース32dに格納する。
【0140】
図14は、学習装置31の処理動作例を示しており、学習装置31は、ステップ1401において、特徴選択部31aの機能により、臨床データベース31dに格納されたfNIRS測定データに対する特徴量の内から、例えば前述の表3に示される特徴量を判別基準として選択する。
【0141】
ステップ1402において、学習装置31は、臨床データベース31dから、特徴選択部31aの機能により判別基準として選択された特徴量を抽出してリストアップし、ステップ1403において、学習部31bにより、リストアップした特徴量を学習データとして用いて、分類機能のネットワーク構造及びパラメータ(条件付確率分布)のモデル構築を行ない、モデル記憶部31eに格納する。
【0142】
図15は、判別装置33の処理動作例を示しており、判別装置33は、ステップ1501において、原波形信号取得部33aの機能により、fNIRS測定データを取得する。
【0143】
ステップ1502において、判別装置33は、プリミティブ解析部33bの機能により、fNIRS測定データに対してフィルタリング処理等をするプリミティブ解析処理を行なう。
【0144】
ステップ1503において、判別装置33は、特徴量抽出部33cの機能により、プリミティブ解析処理されたfNIRS測定データに対する特徴量の抽出処理を行なう。
【0145】
ステップ1504において、判別装置33は、ベイジアン分類器33dの機能により、モデル記憶部33eにモデル記憶部31eからコピーして格納されたデータを用いて、特徴量抽出部33cの機能により抽出したfNIRS測定データの特徴量に対応する診断結果を判別する。
【0146】
以上、各図を用いて説明したように、本実施の形態の認知機能障害判別装置10は、認知課題実行中の被験者の脳の複数領域の生体信号としての脳血流データを取得すると、取得した脳血流データ(生体信号)の特徴量を抽出し、抽出した特徴量と、予め用意された認知機能障害の判定に用いるデータとに基づいて、被験者の認知機能に障害があるかどうかを判別する。
【0147】
なお、認知機能障害判別装置10は、認知機能障害の判定に用いるデータを、予め認知機能に障害があるかどうかが既知である複数の被験者の認知課題実行中の脳の複数領域の生体信号を用いて、その特徴量を抽出し、抽出した特徴量に基づいて生成する。その際、認知機能障害判別装置10は、抽出した特徴量の中から判定に用いる特徴量を選択し、選択した特徴量と抽出された特徴量とに基づき、判定に用いるデータとして認知機能障害を判別するためのモデルを構築する。
【0148】
このように、本実施の形態の認知機能障害判別装置10は、認知課題実行中の被験者の脳の複数領域の生体信号を取得して当該生体信号の特徴量を抽出し、この特徴量と、予め求めておいた認知機能障害の判定に用いるデータとに基づいて、被験者の認知機能に障害があるかどうかを判別しており、これにより、脳機能に関しての早期スクリーニングが可能となる。
【0149】
なお、上記した実施形態では、認知機能障害判別装置において、認知機能障害を判別するためのモデルを構築する例を示したが、認知機能障害を判別するためのモデルを構築する装置(学習装置31、及びデータ蓄積装置32)を、認知機能障害判別装置とは別に設置するようにしても良い。例えば、認知機能障害判別装置が複数ありそれぞれからネットワークを介してセンタ(認知機能障害を判別するためのモデルを構築する装置として機能)にモデル構築のためのデータを送信し、センタ側にてそのようなデータを蓄積してモデルを構築し、認知機能障害判別装置(判別装置33)が認知機能障害判別を行うときに、センタからモデルを受信し、それに基づいて認知機能障害判別を行うようにして、認知機能障害判別システムを構成することでも良い。
【0150】
また、本実施の形態では、脳の生体信号として、fNIRS測定器で得られる脳血流データを用いるものを示したが、例えば、脳波測定器などで得られる脳波を用いるようにしても良い。また、本実施の形態では、株式会社島津製作所(R)製のfNIRS測定器を用いたが、それに限らず他のNIRS測定器を用いることでも良い。
【0151】
また、本実施の形態では、64歳~92歳の高齢者50名をまとめて被験者としているが、被験者を予め複数のグループに分類して、認知症危険度の判別を行なうことも可能である。例えば、予め、高齢者から採取した脳血流データを、その類似性によって複数のグループに分類しておく。そして、未知の判別対象者のデータとこれらのグループとの分布の類似度に基づく重みを計算することで、判別対象者の判別に適した重み付き分布(個人差適応型分布)を擬似的に計算し、この重み付き分布上で判別計算を実行する計算手法をとる。このことにより、高齢者の脳血流データの個人差に適応した認知症危険度の判別が可能となる。
【0152】
なお、上述の複数グループは、一般的には、採取した脳血流データの類似性に基づいて適切な数のグループに分類する手段をとるが、それ以外にも、例えば、男女の2グループや、年齢(年代)に応じた数グループなどに固定することによっても性差や年齢差を吸収することが可能である。
【0153】
また、本実施の形態では、プリミティブ解析部32b,33bは、測定脳部位を7つの領域(前頭前野:3領域,左右側頭葉:各2領域)に分割した各領域内のfNIRS時系列信号をそれぞれ加算平均している。しかし、例えば、主成分分析(PCA)、独立成分分析(ICA)、特異値分解(SVD)、及び非負行列因子分解(NMF)などのブラインド情報源分離の技術を適用して各領域内から認知機能障害の判別に有効な信号を分離・抽出することでも良い。このような計算技術を用いることで、より高い性能が期待される。
【0154】
また、本実施の形態では、学習装置31は、特徴選択部31aによる特徴量の選択処理動作において、一般的に多用されている逐次選択法としてフォワードステップワイズ法を用いて特徴選択を行なっているが、これに限られるものではない。学習装置31は、例えば、変数増加法、変数減少法、及び変数増減法等の逐次選択法や、EMアルゴリズム、遺伝的アルゴリズム(GA)、粒子群最適化(Particle Swarm Optimization,PSO)、ならびに、Evolutionarily Stable Strategy(ESS)やDifferential evolution(DE)などの進化的計算を用いた手法等の同時選択法を用いて特徴選択を行っても良い。
【0155】
また、本実施の形態では、判別装置33は、認知機能障害を判別するために、クラシファイアモデルとしてNaive-Bayes Classifierを採用しているが、これに限られるものではない。例えば、ベイジアンネットワーク、正準判別分析、線形判別分析、ニューラルネットワーク、ナイーブベイズ法、及びサポートベクトルマシン(SVM)などの分類型の推定手法や、重回帰分析、リッジ回帰、サポートベクトル回帰(SV回帰)、及びカーネル回帰分析などの数値型の推定手法を用いることでも良い。
【0156】
例えば、分類型の計算手法では、高齢者の音声データから、健常(NC)、認知症疑い(MCI)、認知症(AD)の3群のどれに分類されるかで認知症の危険度を判別する。また、数値型の計算方法では、長谷川式スコアなど認知機能テストの点数(0~30)に相当する数値を出力し、その数値の高低で認知症の危険度を判別する。
【0157】
また、本発明のプログラムを、記憶媒体に格納して提供することも可能である。本発明に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、コンピュータを、脳を活動させるための課題を与えているときに測定された、被験者の予め定められた脳部位における生体信号データを取得するデータ取得部と、前記データ取得部によって取得された生体信号データの特徴量を抽出する特徴量抽出部と、前記特徴量抽出部で抽出された特徴量と、予め求めておいた認知機能障害の判定に用いるデータとに基づいて、前記被験者の認知機能障害の程度を判別する判別部と、として機能させるためのプログラムを記憶する。
【0158】
日本出願2011-121241の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【0159】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記載された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図10】
6
【図11】
7
【図12】
8
【図13】
9
【図14】
10
【図15】
11
【図7】
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【図8】
13
【図9】
14