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明細書 :ポリマーステント

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-064047 (P2016-064047A)
公開日 平成28年4月28日(2016.4.28)
発明の名称または考案の名称 ポリマーステント
国際特許分類 A61M  29/02        (2006.01)
FI A61M 29/02
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 22
出願番号 特願2014-195363 (P2014-195363)
出願日 平成26年9月25日(2014.9.25)
発明者または考案者 【氏名】南 和幸
出願人 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100093687、【弁理士】、【氏名又は名称】富崎 元成
【識別番号】100106770、【弁理士】、【氏名又は名称】円城寺 貞夫
【識別番号】100139789、【弁理士】、【氏名又は名称】町田 光信
審査請求 未請求
テーマコード 4C167
Fターム 4C167AA45
4C167AA49
4C167AA55
4C167BB12
4C167BB26
4C167BB31
4C167BB39
4C167BB40
4C167CC08
4C167FF05
4C167GG01
4C167GG43
4C167HH18
要約 【課題】縮径変形を阻止する構成を有し、分岐部を有する血管への留置にも適合する、円筒形に形成したポリマーステントを提供する。
【解決手段】ストラット3は複数のストラット辺3aを連結してなり、円筒形のポリマーステント1は複数のストラット3を周方向、軸方向にリンク2で網目状に連結してなり、各ストラット3の一部のストラット辺は周方向のリンク2と傘形状をなすように連結されている。ポリマーステントの拡径方向の力が作用すると一部の傘形状のストラット辺-リンクが周方向に牽引されY形状になるまで不安定状態を超えてストラット辺が伸張する。複数の三角形状ストラットを回転移動する形に組み合わせるような形態もある。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
複数のストラットがリンクで連結されて網目形状をなすように配置され全体として円筒形状をなすようにポリマー材料で形成されたポリマーステントであって、前記複数のストラットの各々における一部のストラット辺が前記ストラットの伸張していない状態から伸張した状態へあるいはその逆方向へと飛び移り座屈により変形可能であるか、または前記複数のストラットが相互に連結された不変型ストラット群と可動型ストラット群とを有し該可動型ストラット群が前記ポリマーステントの周方向に伸張していない状態から伸張した状態へと飛び移り座屈により変位可能であり、前記ポリマーステントが縮径状態から拡径状態に変化する過程で前記一部のストラット辺の変形による弾性変形が最大になる段階を超えて前記ポリマーステントの拡径した状態に達することによって各ストラットまたはストラット群が双安定性を有し、前記ポリマーステントの拡径状態を保持する機能を備えたものであることを特徴とするポリマーステント。
【請求項2】
前記複数のストラットの各々は複数のストラット辺が連結されてなるとともに2つのストラット辺が前記ポリマーステントの周方向のリンクに連結されて傘形状をなすストラット辺を少なくとも1組有し、前記ポリマーステントに拡径方向の力が作用する時に前記傘形状をなす2つのストラット辺が前記リンクに牽引されて変形しつつ不安定状態を超えて飛び移り座屈により前記リンクと2つのストラット辺とがY形状をなし前記ストラットが前記ポリマーステントの周方向に伸張し安定した状態に移行するものであることを特徴とする請求項1に記載のポリマーステント。
【請求項3】
前記複数のストラットの各々は太く変形しにくい2つないし3つ1組のストラット辺を前記ポリマーステントの軸方向に配置し双方を>形の細く変形し易いストラット辺で連結したものを前記ポリマーステントの周方向の両側において∧形または∨形の細く変形し易いストラット辺で連結してなり前記∧形または∨形のストラット辺は前記ポリマーステントの周方向のリンクに連結されてそれぞれY形状をなすものであって、前記ポリマーステントに拡径方向の力が作用する時に前記∧形または∨形のストラット辺が前記ポリマーステントの周方向のリンクに牽引されて幅を狭めるように変形し、それにより2つないし3つ1組の前記太く変形しにくいストラット辺に相互に接近する作用が生じてそれらを連結する細く変形し易いストラット辺が不安定状態を超えて飛び移り座屈により押し込まれて安定した状態に移行し前記ストラットとしては前記ポリマーステントの周方向に伸張した状態となるものであることを特徴とする請求項1に記載のポリマーステント。
【請求項4】
前記複数のストラットの各々は4つの三角形ストラットを1組としたトラス状の不変型ストラット群に4つの三角形ストラットを1組とした可動型ストラット群を連結してなり、前記可動型ストラット群の三角形ストラットは対称形で閉じた形状に配置されて相互に1つの頂点同士で連結されるとともに相互に連結されていない他の1つの頂点が前記トラス状の不変型ストラットの三角ストラットの頂点に連結され、前記可動型ストラット群の三角形ストラットは前記ポリマーステントの周方向に間隔をおいた2組の不変型ステント群のストラットの間に連結されて構成されており、前記ポリマーステントに拡径方向の力が作用する時に前記不変型ストラット群に連結された可動型ストラット群の各ストラットが回転移動しつつ不安定状態を超えて飛び移り座屈により周方向に伸張した状態に移行するものであることを特徴とする請求項1に記載のポリマーステント。
【請求項5】
前記ポリマーステント拡径方向への力の作用により前記ストラットが前記ポリマーステントの周方向に最大限に伸張した時に相互に接近するストラット辺の対向する側辺に多数のラチェット歯付き枝片が突出して設けられ、該枝片のラチェット歯の噛み合いにより前記ストラットの伸張した状態及び前記ポリマーステントの拡径状態が確実に保持されるようにしたことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のポリマーステント。
【請求項6】
前記複数のストラットの各々が2つの側辺をそれより長い1つの基辺で連結した太く変形しにくい[形のストラット辺の両側辺の端部を細く変形し易いストラット辺で連結してなり、前記太く変形しにくい[形のストラット辺の一方の側辺と前記基辺との連結部は折曲可能な連結部であるとともに該折曲可能な連結部において前記ポリマーステントの周方向のリンクに連結され、他方の側辺の中間位置において前記ポリマーステントの周方向で前記一方の側辺に連結されたリンクとは逆方向のリンクに連結されているとともに、前記ポリマーステントが拡径していない状態で前記[形のストラット辺の基辺が前記ホリマーステントの軸方向に向いていて該[形のストラット辺に連結される2本のリンクは前記ポリマーステントの軸方向に間隔をおいており、前記ポリマーステントに拡径方向の力が作用する時に前記2本のリンクに牽引されて前記ストラットが前記[形ストラット辺の折曲部を中心として回転移動しつつ前記一方の側辺が折曲部において折曲し、該折曲する側辺の端部と他方の側辺の端部との距離が最小となる位置を経て変化することにより最大限に前記ストラットが回転した状態で前記ポリマーステントとして伸張した状態における安定性を有するものであることを特徴とする請求項1に記載のポリマーステント。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はポリマーステントに関し、特に双安定性ストラットにより拡径状態が保持されるポリマーステントに関する。
【背景技術】
【0002】
心筋梗塞や脳梗塞など、血管の疾患による病気の療法として、バルーンカテーテルにより血管を拡張しステントを留置することが行われる。このステントとしては一般的に金属製のものが用いられるが、金属製のステントは永久的に体内に残留するものであるため、体の大きさが変わる若年者への適用は可能でなく、また、長時間にわたる力学的刺激により狭窄を再発する危険がある。
【0003】
ポリマー製のステントではこのような金属製ステントの欠点はなく、生体分解ポリマーで作製されたステントにすれば、生体内にステントが永久的に存在することによるストレスを解消するという利点があり、最近ではポリマーステントも多く用いられている。
【0004】
ポリマーステントに関して、以下に示すような技術がある。特許文献1には、複数の梯子状エレメントをシリーズに接続して形成され、各梯子状エレメントが2本の長尺リブのスライドを可能にし、隣接する梯子状エレメントの端部横桟間に可変的な距離を形成することにより縮小径から拡張径に拡張可能であり縮小径にスライドバックするのを阻止する梯子型拡張可能ステントについて記載され、特許文献2には、相互ロックする一連の突出部及び孔を有しオーバーラップ縁部を備え、ステントが管腔壁の一部を支持する開位置に拡大する時にラチェット作用をする円筒状シートからなる管腔内ステントについて記載されている。
【0005】
特許文献3には、頭部と頭部から延長される胴部からなるT字形のユニット部が複数連結されてなり、胴部の一側部または両側部に少なくとも一の突起部を有し、頭部は胴部を挿通して突起部を掛止する開口部を有するようにしたポリマーステントについて記載されている。
【0006】
特許文献4には、頭部と頭部から延長される胴部からなるT字形のユニット部が複数連結されてなり、胴部の一方の側部に鈎状突起部を有し、頭部は胴部を挿通して突起部を掛止するスリットを有するようにしたポリマーステントにおいて、胴部の他方の側部に胴部の幅可変部を形成するか、頭部におけるスリットの傾斜角度あるいはスリットを包囲する連結部を弾性的に変形可能にして、ステントの縮径方向への胴部の移動を係止し拡径する方向への移動を可能にすることについて記載されている。
【0007】
特許文献1による梯子型拡張可能ステントは形状・構造が複雑であるとともに、長尺リブに加わる抵抗が大きいためステントの直径を容易に可変とすることができない可能性があり、また、ステント径の縮小方向へのスライドを阻止するためのタブストップが長尺リブに設けられ、タブストップに端部横桟が係合し、長尺リブと端部横桟とが直角に構成されているために、長尺リブの動きによってタブストップが働くと端部横桟が歪んでステントが変形することにもなる。特許文献2によるものでは、円筒状シートに形成されているため、ステントの剛性が高く、円筒状シートの端部が突出して管腔内において断面が円形になるようにすることが困難であり、管腔内に密着できない可能性がある。
【0008】
特許文献3は特許文献1、2等による問題点を解消すべく本発明者が提案したものであるが、ポリマーステントがバルーンにより拡張されることにより内側から強い圧力を受け、胴部がスリットを通り抜ける箇所で頭部と胴部が重なり、この部分での摩擦力と内側からの圧力とで変形を生じ、スリットの線状切り込み部が拡張変形して鈎状突起部がスリットに係止されず、ステントの縮径方向への動きに抗し得ない、すなわちステントの機能が損なわれる可能性がある。
【0009】
特許文献4は、本発明者がさらに改良を進めたものであり、鈎状突起部を形成していない胴部の側部に幅可変部を形成するか、頭部におけるスリットの傾斜角度あるいはスリットを包囲する連結部を弾性的に変形可能にして、ステントの縮径方向への胴部の移動を係止し拡径する方向への移動を可能にするものであるが、シート状に形成したステント素材を丸めて円筒形状のステントとするということでは特許文献1~3と同様である。シート状のステント素材を丸めて円筒形状に形成するものでは、シート面と垂直方向への自由度が高く、長期間使用したような場合にその方向に力が加わると、安定して係止することができなくなる可能性がある。
【0010】
また、血管の分岐部に生じた病変に適用する場合、血管の本幹と側枝とにステントを留置することになる。このように血管の分岐部にステントを留置する手法としてT-ステント術があり、これは先に側枝にステントを留置し、その後に本幹にも別のステントを留置した後にステントの同時拡張を行うというシンプルな技法であるが、血管の分岐角度が70°以上、典型的には90°に近い場合に適合するものの、分岐角度が緩やかな場合には側枝の入口部をステントで覆うことができない範囲が生じるという不都合がある。
【0011】
キュロットステント術について図22(a)~(c)を参照して説明すると、図22(a)は血管の分岐部において側枝にまたがるように本幹内にステントS1を留置した状態を示し、その後に図22(b)のように、ステントS1の側枝に面する位置の側面のストラットを他のステントS2をマウントしたバルーンカテーテルで拡開しつつ側枝内にステントS2を導入する。その後にステントを同時拡張して、図22(c)のように分岐部において本幹と側枝とにステントを留置した状態になる。この手法では、側枝の入口部を完全にステントで覆うことができ、分岐角度が緩やかな場合にも適合する。
【0012】
このように、本幹内のステント側面のストラットを押し拡げて側枝内にステントを誘導するという形で分岐部へのステントを留置する際に、金属製ステントの場合には塑性変形によりその形状が維持され、ストラットが屈曲していてステントが血管径よりさらに拡張できる形状になっている。これに対しポリマーステントの場合には、ステントを血管径まで拡張した時にストラットがまっ直ぐに伸張した状態になりステント側面でストラットを拡開できないということになる。このような状況は、特許文献1~4のようなポリマーステントの場合も同様であり、血管の分岐部にステントを留置するのに適合しないものである。
【先行技術文献】
【0013】

【特許文献1】特表2002-540841号公報
【特許文献2】特開平7-531号公報
【特許文献3】特開2006-68250号公報
【特許文献4】特開2011-251117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
循環器系疾病に対して術後に管腔内に留置して用いられるステントとして金属製ステントは、強度的に優れるが柔軟性に劣り、血管壁への力学的刺激、ストレスを与えやすく、血管壁の肥厚を招くことのほかに、体内に永久的に残留するものであることから、金属製のステントが体内に残留した状態ではMRI(磁気共鳴イメージング)による画像に影響を及ぼすために診断が困難になるということがある。
【0015】
ポリマーステントでは金属製ステントにおいて問題となるストレスを抑制できるが、金属製ステントに比して弾性率、強度が低いために収縮抑制力が小さく、またクリープ変形を起こし易いことから、バルーン拡張型ステントでは留置後に縮径してしまう可能性があり、また、自己拡張性ステントでは長時間収縮状態に保持したり、収縮の割合を大きくしたりする場合に永久変形が生じて復元拡張、すなわち自己拡張できなくなる可能性がある。
【0016】
また、血管の分岐部に生じた病変に適用する場合、血管の本幹と側枝とにステントを留置することを行う。その際側枝内に留置するステントを本幹内におけるステントの横側部分から挿通する必要がある。網目構造の金属製ステントではステントの横側の網目構造を一部拡げてもステントの円筒形状を保持して側枝部分への適用に対応できるが、頭部と胴部との組を複数連接したシートを丸めて円筒状に形成したポリマーステントでは、胴部を横方に拡げるために、ステントの円筒形状を保持する上で難点があり、側枝部にステントを留置するのに適合し難いものであった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は前述した課題を解決すべくなしたものであり、請求項1に係る発明によるポリマーステントは、複数のストラットがリンクで連結されて網目形状をなすように配置され全体として円筒形状をなすようにポリマー材料で形成されたポリマーステントであって、前記複数のストラットの各々における一部のストラット辺が前記ストラットの伸張していない状態から伸張した状態へあるいはその逆方向へと飛び移り座屈により変形可能であるか、または前記複数のストラットが相互に連結された不変型ストラット群と可動型ストラット群とを有し該可動型ストラット群が前記ポリマーステントの周方向に伸張していない状態から伸張した状態へと飛び移り座屈により変位可能であり、前記ポリマーステントが縮径状態から拡径状態に変化する過程で前記一部のストラット辺の変形による弾性変形が最大になる段階を超えて前記ポリマーステントの拡径した状態に達することによって各ストラットまたはストラット群が双安定性を有し、前記ポリマーステントの拡径状態を保持する機能を備えたものである。
【0018】
請求項2に係る発明によるポリマーステントは、請求項1に係る発明において、前記複数のストラットの各々は複数のストラット辺が連結されてなるとともに2つのストラット辺が前記ポリマーステントの周方向のリンクに連結されて傘形状をなすストラット辺を少なくとも1組有し、前記ポリマーステントに拡径方向の力が作用する時に前記傘形状をなす2つのストラット辺が前記リンクに牽引されて変形しつつ不安定状態を超えて飛び移り座屈により前記リンクと2つのストラット辺とがY形状をなし前記ストラットが前記ポリマーステントの周方向に伸張し安定した状態に移行するものである。
【0019】
このポリマーステントの特定の形態としては、前記複数のストラットの各々が複数の太く変形しにくいストラット辺と複数の細く変形し易いストラット辺とを組み合わせてなり、前記複数の太く変形しにくいストラット辺は前記ポリマーステントの周方向に向けて∨形ないし上下向きコ字形の凹部を有する形状をなすように連結され、前記細く変形し易いストラット辺は前記太く変形しにくいストラット辺のなす∨形ないし上下向きコ字形の凹部に沿いあるいは入り込む形状をなし両端部において前記太く変形しにくいストラット辺に連結されるとともに前記細く変形し易いストラット辺の折曲部ないし中間部において前記ポリマーステントの周方向のリンクに連結されて傘形状をなし、前記ポリマーステントに拡径方向の力が作用する時に前記細く変形し易いストラット辺が前記リンクに牽引されて変形しつつ不安定状態を超えて飛び移り座屈により前記リンクと2つのストラット辺とがY形状をなす安定した状態に移行するようにしたものがある。
【0020】
また、他の特定の形態として、前記複数の太く変形しにくいストラットが連結された構造略X形状であって前記ポリマーステントの軸方向にも∨形の凹部を有する形状をなしており、該軸方向の∨形の凹部に沿うように細く変形し易いストラット辺が両端部において前記太く変形しにくいストラット辺に連結され、前記ポリマーステントの軸方向において対向する位置にある2つのストラットの対向する凹部に連結された細く変形し易いストラット辺の折曲部が前記ポリマーステントの軸方向のリンクにより連結されていることにより前記ポリマーステントの軸方向に作用する力に応じてストラットが軸方向に伸張し得るようにしたものがある。
【0021】
請求項3に係る発明によるポリマーステントは、請求項1に係る発明において、前記複数のストラットの各々は太く変形しにくい2つないし3つ1組のストラット辺を前記ポリマーステントの軸方向に配置し双方を>形の細く変形し易いストラット辺で連結したものを前記ポリマーステントの周方向の両側において∧形または∨形の細く変形し易いストラット辺で連結してなり前記∧形または∨形のストラット辺は前記ポリマーステントの周方向のリンクに連結されてそれぞれY形状をなすものであって、前記ポリマーステントに拡径方向の力が作用する時に前記∧形または∨形のストラット辺が前記ポリマーステントの周方向のリンクに牽引されて幅を狭めるように変形し、それにより2つないし3つ1組の前記太く変形しにくいストラット辺に相互に接近する作用が生じてそれらを連結する細く変形し易いストラット辺が不安定状態を超えて飛び移り座屈により押し込まれて安定した状態に移行し前記ストラットとしては前記ポリマーステントの周方向に伸張した状態となるものである。
【0022】
このポリマーステントの特定の形態として、前記複数のストラットの各々が太く変形しにくい[形のストラット辺と┤形のストラット辺とを前記ポリマーステントの軸方向に対向させて配置し前記[形のストラット辺及び┤形のストラット辺の突辺端部間を細く変形し易いストラットで連結して該細く変形し易いストラット辺と前記┤形のストラット辺の突辺端部とがY形状をなすようにし、前記[形のストラット辺と┤形のストラット辺との前記ポリマーステントの周方向で同じ側の端部をそれぞれ細く変形し易いストラットの一端に連結し他端をともに前記ポリマーステントの周方向のリンクとY形状をなすように連結してなり、前記ポリマーステントに拡径方向の力が作用する時に前記Y形状をなす細く変形し易いストラット辺が前記リンクに牽引されて幅を狭めるように変形し、それにより前記[形のストラット辺と┤形のストラット辺とに対し相互に接近する作用が生じて前記[形のストラット辺及び┤形のストラット辺の突辺端部間を連結する細く変形し易いストラットが不安定状態を超えて飛び移り座屈により前記リンクと2つのストラット辺とが傘形状をなす安定した状態に移行するようにしたものがある。
【0023】
また、他の形態として、前記複数のストラットの各々は太く変形しにくい横向きH形のストラット辺とその両横側における1つずつの┤形のストラット辺とを前記ポリマーステントの軸方向に対向させて配置し前記横向きH形のストラット辺及び┤形のストラット辺の突辺端部間を細く変形し易いストラットで連結して該細く変形し易いストラット辺と前記横向きH形のストラット辺の突辺端部とがY形状をなすようにし、前記横向きH形のストラット辺の両側の┤形のストラット辺の前記ポリマーステントの周方向で同じ側の端部をそれぞれ細く変形し易いストラットの一端に連結し他端をともに前記ポリマーステントの周方向のリンクとY形状をなすように連結してなり、前記ポリマーステントに拡径方向の力が作用する時に前記Y形状をなす細く変形し易いストラット辺が前記リンクに牽引されて幅を狭めるように変形し、それにより前記横向きH形のストラット辺と両側の┤形のストラット辺とに対し相互に接近する作用が生じて前記[形のストラット辺及び┤形のストラット辺の突辺端部間を連結する細く変形し易いストラットが不安定状態を超えて飛び移り座屈により前記リンクと2つのストラット辺とが傘形状をなす安定した状態に移行するようにしたものがある。
【0024】
請求項4に係る発明によるポリマーステントは、請求項1に係る発明において、前記複数のストラットの各々は4つの三角形ストラットを1組としたトラス状の不変型ストラット群に4つの三角形ストラットを1組とした可動型ストラット群を連結してなり、前記可動型ストラット群の三角形ストラットは対称形で閉じた形状に配置されて相互に1つの頂点同士で連結されるとともに相互に連結されていない他の1つの頂点が前記トラス状の不変型ストラットの三角ストラットの頂点に連結され、前記可動型ストラット群の三角形ストラットは前記ポリマーステントの周方向に間隔をおいた2組の不変型ステント群のストラットの間に連結されて構成されており、前記ポリマーステントに拡径方向の力が作用する時に前記不変型ストラット群に連結された可動型ストラット群の各ストラットが回転移動しつつ不安定状態を超えて飛び移り座屈により周方向に伸張した状態に移行するものである。
【0025】
このポリマーステントの形態において、可動型ストラットをなす4つの1組の三角形状ストラットに関し、前記ポリマーステントの同じ側で2つの前記不変型ストラットに連結される2つの可動型ストラットの頂点における角度は前記2つの可動型ストラットが相互に連結される頂点における角度より大きくなるようにするのがよい。
【0026】
請求項5に係る発明によるポリマーステントは、請求項1~4のいずれかの発明において、前記ポリマーステント拡径方向への力の作用により前記ストラットが前記ポリマーステントの周方向に最大限に伸張した時に相互に接近するストラット辺の対向する側辺に多数のラチェット歯付き枝片が突出して設けられ、該枝片のラチェット歯の噛み合いにより前記ストラットの伸張した状態及び前記ポリマーステントの拡径状態が確実に保持されるようにしたものである。
【0027】
請求項6に係る発明によるポリマーステントは、請求項1に係る発明において、前記複数のストラットの各々が2つの側辺をそれより長い1つの基辺で連結した太く変形しにくい[形のストラット辺の両側辺の端部を細く変形し易いストラット辺で連結してなり、前記太く変形しにくい[形のストラット辺の一方の側辺と前記基辺との連結部は折曲可能な連結部であるとともに該折曲可能な連結部において前記ポリマーステントの周方向のリンクに連結され、他方の側辺の中間位置において前記ポリマーステントの周方向で前記一方の側辺に連結されたリンクとは逆方向のリンクに連結されているとともに、前記ポリマーステントが拡径していない状態で前記[形のストラット辺の基辺が前記ホリマーステントの軸方向に向いていて該[形のストラット辺に連結される2本のリンクは前記ポリマーステントの軸方向に間隔をおいており、前記ポリマーステントに拡径方向の力が作用する時に前記2本のリンクに牽引されて前記ストラットが前記[形ストラット辺の折曲部を中心として回転移動しつつ前記一方の側辺が折曲部において折曲し、該折曲する側辺の端部と他方の側辺の端部との距離が最小となる位置を経て変化することにより最大限に前記ストラットが回転した状態で前記ポリマーステントとして伸張した状態における安定性を有するものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明では、複数のストラットをリンクで連結して分布させた網目形状のストラット-リンク構造を有するポリマーステントにおいて、各ストラットがポリマーステントのストラット辺の変形特性により拡径した状態を保持する双安定性を有するか、あるいはストラット群におけるストラットの回転移動特性により双安定性を有することにより、ポリマーステントの縮径変形を阻止し拡径状態を保持する。
【0029】
ポリマーステントであるので、金属製ステントよりも体内器官にストレスが加わることは少なく、MRI画像に影響を及ぼすこともない。チューブ状のステント素材から微細加工を用いて形成することができ、シート状素材を丸めて形成したものにおいてみられるような、拡張時にシート同士がこすれ合うことによる余分な摩擦力が生じ、あるいは血管内への挿入の際に縮径のために巻き付けた状態では屈曲性が低下し曲率半径の小さい部分を通すのが難しくなるというようなことが生じることはない。また、金属製ステントと同様に、分岐部を有する血管の本幹と側枝とに留置するという使用形態にも適合する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ポリマーステントの概観図である。
【図2】(a)は本発明によるポリマーステントの網目構造を部分的に拡大した図であり、(b)は(a)の状態からストラットが周方向に伸張した状態を示す図である。
【図3】図2(a)と異なる他のストラットの形状の例を示す図である。
【図4】(a)さらに他のストラットの形状の例を示す図であり、(b)は(a)の状態からストラットが周方向に伸張した状態を示す図であり、(c)は(b)の状態からストラットが周方向にさらに伸張した状態を示す図である。
【図5】(a)は図4(a)と異なるストラットの形状の例を示す図であり、(b)はさらに異なるストラットの形状の例を示す図である。
【図6】(a)はストラットにおけるストラット辺にラチェット歯付き枝片を設けたストラットの形状の例を示す図であり、(b)は(a)の形状のストラットが周方向に伸張した状態を示す図であり、(c)は(b)の状態からさらに周方向に伸張した状態を示す図であり、(d)は(c)の状態からさらに周方向に伸張し対向するストラット辺の枝片が重なった状態を示す図である。
【図7】(a)は図6(a)において重なった枝片のラチェット歯がかみ合う状態を示す図であり、(b)は1組の枝片のラチェット歯の噛み合いを拡大して示す図であり、(c)は枝片の両側辺にラチェット歯を形成した場合の噛み合い状態を示す図である。
【図8】ポリマーステントの側面においてストラットを押し拡げて他のポリマーステントを挿通する状況を示す図である。
【図9】(a)はポリマーステントの他のストラット-リンクの形状形態の例を示す図であり、(b)は(a)の形状形態における一部を拡大して示す図であり、(c)は(b)の状態から可動型ストラットが回転移動して周方向に伸張した状態を示す図である。
【図10】(a)は図9(b)において可動型ストラットの一部のストラット辺にラチェット歯付きの枝片を設けたものを示す図であり、(b)は(a)の状態から可動型ストラットが回転移動して周方向に伸張し枝片のラチェット歯が噛み合った状態を示す図である。
【図11】(a)は図9(a)と異なるストラットの形状によるストラット-リンクの形状を示す図であり、(b)は(a)の状態から可動型ストラットが回転移動して周方向に伸張した状態を示す図である。
【図12】(a)はポリマーステントの他のストラット-リンクの形状形態の例を示す図であり、(b)は(a)の形状形態における一部を拡大して示す図であり、(c)は(b)の状態から周方向に伸張した状態を示す図である。
【図13】(a)は図12(a)のストラット-リンク形状においてさらに軸方向に変形可能なストラット辺を付加した形状のストラット-リンクの形状形態の例を示す錫であり、(b)は(a)の状態から周方向に伸張した状態を示す図であり、(c)は別のポリマーステントを挿通するためにポリマーステントの側面を拡開する状況を示す図である。
【図14】(a)は図13(a)のストラット-リンクと同様の形状であるが初期の形態が異なる例を示す図であり、(b)は(a)の状態から周方向に伸張した状態を示す図であり、(c)は別のポリマーステントを挿通するためにポリマーステントの側面を拡開する状況を示す図である。
【図15】(a)は図12(a)のストラット-リンクの変形例を示す図であって太いストラット辺をN形としたものであり、(b)は(a)の状態から伸張した状態を示す図である。
【図16】(a)は図12(a)のストラット-リンクの変形例を示す図であって太いストラット辺をH形としたものであり、(b)は(a)の状態から伸張した状態を示す図である。
【図17】(a)はさらに他の形状形態のストラット-リンクの形状を示す図であり、(b)は(a)の状態からストラットがリンクに牽引されてある程度回転した状態を示す図であり、(c)はストラットが最大限に回転した状態を示す図である。
【図18】(a)はさらに他のストラット-リンクの形状を示す図であり、(b)は(a)の状態からストラットが周方向に伸張し軸方向に圧縮した状態を示す図である。
【図19】(a)は図18(a)の形状のストラットを複合した形のストラットを有する例を示す図であり、(b)は(a)の状態からストラットが周方向に伸張し軸方向に圧縮した状態を示す図である。
【図20】(a)は図19(a)のストラット-リンクを変更した形状の例を示す図であり、(b)は異なる形状のストラットをリンクで連結したストラット-リンクの形状の例を示す図である。
【図21】(a)は図18(a)と同様のストラット-リンクを示す図であり、(b)は別のポリマーステントを挿通するためにポリマーステントの側面を拡開する状況を示す図である。
【図22】分岐部を有する血管の部位へのステントの留置について説明する図であり、(a)は血管の分岐部において側枝にまたがるように本幹内に1つのステントを留置した状態を示し、(b)は留置されたステントの側面から他のステントを導入する状態を示し、(c)は分岐部において本幹と側枝とにステントを留置した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明によるポリマーステントの実施形態について説明する。図1はポリマーステントの概観図であり、ポリマーステント1は多数のストラット3をリンク2で連結した網目構造をなしており、全体として円筒形状をなしている。

【0032】
ストラット3は、複数のストラット辺が連結されてまとまった形状をなし、リンクを介しての作用に応じて各ストラットの一部または全部のストラット辺が移動・変形を行いストラットの形状がポリマーステントの周方向に伸張していない状態と、伸張した状態との間で変形可能であるようにする部分である。リンクはストラット同士をポリマーステントの周方向及び/または軸方向に連結し、個々のストラットを変形させる作用を与えるとともにストラット同士の相対変位を適切に制御する部分となる。

【0033】
ポリマーステントを構成するストラット-リンクの網目構造において、ストラットとリンクとは基本的にこのようなに機能をもつものとなるが、実際の構成形態においてストラット、リンクとも種々の形状形態を有し、必ずしも厳格に区分されるとは限らず、場合によっては双方の機能を有する部分となる場合もあり得るが、ストラット、リンクは原則として前述のように規定される。

【0034】
本発明のポリマーステントはこのようなストラット-リンクの網目構造が円筒形をなすように形成されたものであり、各ストラットはポリマーステントの周方向に伸張するように(拡径方向に)変形可能であり、変形の限度に達した段階では、ポリマーステントの周方向に収縮する方向(縮径方向)の力がポリマーステントに加わっても、拡径した状態を保持する。

【0035】
このように、ポリマーステントの網目構造における各ストラットは、拡径前の初期段階と拡径時に伸張した状態との形状を安定的に保持する機能を有するものであり、本発明においてはこれを双安定性ストラットと称する。双安定性ストラットを有するポリマーステントの動作原理は飛び移り座屈によるものであり、この動作は、例えばブリキの灯油缶のフタに見られるようなものである。円形のフタの周辺は曲げて多数の爪状にされ、缶にフタをする時にこの爪状部分が缶の口先を包囲し塞ぐ。フタの円形部分は上に膨らんだ状態と凹んだ状態とをとることができ、膨らんだ時には爪部が缶の口先に固定され、凹んだときには爪部が口先から外れる状態になる。

【0036】
本発明における双安定性ストラットも、これと同様に飛び移り座屈の動作原理による伸張していない状態と伸張した状態との2つの状態で安定性を有するストラットを用いるものである。また、各ストラットがポリマーステントの周方向に伸張した拡径状態のストラット形状を保持するために、ストラットを構成するストラット辺のうち接近する状態にあるストラット辺の側辺にラチェット歯を形成した枝片を設けておき、枝片同士が接触した時にラチェット歯がかみ合うことによりストラットがポリマーステントの縮径方向に変形するのを阻止するという手段を備えるものであるが、このラチェット機能については以下の例に関連して説明する。

【0037】
図2(a)は、ストラット-リンクの形状の一例を示し、網目構造の一部を拡大して示すものであり、図の縦方向が円筒形ポリマーステントの周方向、図の横方向がポリマーステントの軸方向になっている。複数のリンク2が複数のストラット3を連結し網目構造を形成している。各ストラット3は複数のストラット辺3aが5辺形をなすように連結された形状をなし、図で左側のストラット3は上側の2辺が凹形になっていて上側のリンク2とで傘形の形状をなし、その右側のストラット3は下側の2辺が凹形になっていて下側のリンク2とで傘形の形状をなしており、以下交互に上側、下側のリンクと傘形の形状をなす5辺形のストラットが図で横方向(ポリマーステントの軸方向)に並置され隣り合うストラット間が2本の横方向のリンク2で連結された形状になっている。このようなストラット-リンクがポリマーステントの周方向、軸方向に網目状に形成されて円筒形のポリマーステントを形成している。

【0038】
図2(b)は、図2(a)の形状のストラット-リンクを有するポリマーステントに対し、ポリマーステントの拡径方向の力(矢印方向の力)が作用した時に各ストラットが変形した状態を示すものである。各ストラット3の凹形の2辺は拡径方向の力によりリンク2を介して牽引されて凸形に変形し、図2(b)のように凸形に変形した2辺とリンクとはY形をなすようになっている。図2(a)の状態から図2(b)の状態に移行するに際し、ストラット辺は凹形の状態から曲げ変形をしつつ不安定状態を超えて飛び移り座屈により凸形の安定状態に達する。

【0039】
図2(b)のように各ストラットがポリマーステントの周方向に伸張し凹形の2辺が凸形になった状態から、ポリマーステントの縮径方向の力(矢印と逆方向の力)が作用しても、そのストラットの横方向を支えるリンク2の作用により、図2(b)の状態に復元しようとする動きは阻止される。すなわち、各ストラットは図2(b)の形状状態で安定的に保持される。

【0040】
図3はストラット-リンクの配置形態についての他の例を示すものである。図2(a)のストラット-リンクの配置形態では、5辺形のストラットとして上側の2辺が凹形のものと下側の2辺が凹形のものとがポリマーステントの軸方向に交互に配置されているが、図3のようにストラットとして上側の2辺が凹形のものを軸方向に揃えた形としてもよく、あるいは下側の2辺が凹形のものを軸方向に揃えた形としてもよい。2つのストラット辺が凹形になる5辺形の配置形態はそれ以外に種々の組み合わせ方が考えられる。

【0041】
図4(a)は他の形状のストラットの例を示すものであり、各ストラット3は6つのストラット辺3aからなり、上側の2辺と下側の2辺とが凹形とが凹形でそれらを図で縦方向のストラット辺連結する6辺形をなし、各ストラット3の上下の凹形に折曲した2つのストラット辺3aとリンク2とで傘形形状をなすように連結されている。図で左側のストラット3においては、上側の2つのストラット辺3aは浅く折曲し、下側の2つのストラット辺3aが深く折曲している。その右側のストラット3においては、上側の2つのストラット辺3aが深く、下側の2つのストラット辺が浅く折曲している。このように浅く折曲したストラット辺3aと深く折曲したストラット辺3aとが交互になるようにしてストラットが配置され、横方向に隣り合うストラットは2つのリンク2でそれぞれ連結されている。

【0042】
図4(b)は、図4(a)の形状のストラット-リンクを有するポリマーステントに対し、ポリマーステントの拡径方向の力(矢印方向の力)が作用した時に各ストラットが変形する状態を示すものであり、この段階では図4(a)の形状の各ストラット3は一様にリンクを介してポリマーステントの周方向の引張り力が加わり、ストラット辺のうち、浅く折曲したストラット辺が変形し易いため、凹形から凸形に反転するように変形する。深く折曲したストラット辺は変形しにくいためそれまでの形状を保持している。浅く折曲したストラット辺が反転した形状になるまで変形することにより、ポリマーステントとしては周方向に伸張し、拡系することになる。

【0043】
図4(c)は、さらにポリマーステントを拡径させる力が作用して、深く折曲したストラット辺も凸形になるまで反転するように変形した状態を示している。図4(c)のようにストラットが伸張した段階では、ポリマーステントに縮径方向の力が作用しても隣り合うストラット3を横方向に連結するリンク2で一旦変形したストラット辺が復元するような変形が抑制され、ストラットは双安定性を有する。

【0044】
図4(a)のように、ポリマーステントの各ストラット3の対向する側において浅く凹形に折曲する2つのストラット辺と深く凹形に折曲するストラット辺とを備える6辺形のストラット形状とし、リンクを介してそれらを牽引するようになる網目構造としておくことにより、ポリマーステントに拡径方向の力が作用した時に、ポリマーステントは図4(b)の段階を経て図4(c)の段階に達する、というように、2段階で拡径することになり、それだけポリマーステントの拡径の幅を大きくとることができる。

【0045】
図5(a)は、6辺形のストラット3の配置形態が図4(a)の例とは異なり、浅く折曲した2つのストラット辺が図でいずれも上側に配置され、下側が深く折曲した2つのストラット辺になっているものである。このようなストラット3の配置形態でもポリマーステントに拡径方向の力が加わる時に各ストラットが2段階で伸張するようになるのは、図4(a)の配置形態によるものと同様である。

【0046】
図5(b)はさらにストラットの組合せ形状を変えた例を示し、図4(a)または図5(a)に示されるストラット-リンク構造において、隣り合うストラット3,3を連結する2本のリンク2を凹形に折曲したストラット辺3aとし、折曲する部分をリンク2で連結し、隣り合うストラット3,3の間の構造もストラットとなるようにしたものである。図で横方向、縦方向に6辺形のストラット3が並置され形になり、ストラットを縦方向に連結するリンクもストラットを構成するストラット辺となっている。この構造によっても、各ストラットにおける上側及び下側の折曲辺の一方を浅く、他方を深く折曲したものとすることにより、図4(a)、図5(a)に示すストラット-リンク構造の場合と同様に、ポリマーステントが2段階で拡径できるようになる。

【0047】
図6(a)は、図4(a)と同様の形状の6辺形のストラット3を示すものであるが、図で左右のストラット辺3の6辺形で見て内側辺において多数の枝片3bが対向するストラット辺に向かって突出するように設けられ、各ストラット辺3aの側辺における枝片3bは略同じ長さ、幅であり、その幅とほぼ等しい間隔をおいているとともに、各枝片3bの側縁には多数のラチェット歯が形成されている。このラチェット歯は対向するストラット辺3a,3aが接近し枝片3bが重なる際に噛み合うように形成されている。

【0048】
図6(a)~(d)はポリマーステントが拡径して各ストラット3がポリマーステントの周方向に伸張してラチェット歯付きの枝片3bが設けられた対向ストラット辺3a,3aが接近し枝片が重なる状況を示している。図6(a)~(c)までの変形は、図4(a)~(c)での変形と同様であり、これまでに2段階でストラットが伸張している。図6(d)では、ストラットがさらに伸張し、対向するストラット辺3a,3aの間隔がさらに狭まり、内側辺に突出して設けられた枝片が重なり、ラチェット歯が噛み合うようになる。このラチェット歯が噛み合う状態までにストラットが伸張するので、図6(a)~(d)の変形過程でストラットは3段階で伸張することになる。

【0049】
図6(d)の段階で対向するストラット辺3a,3aが接近し枝片のラチェット歯が噛み合った後にストラットに縮径方向の力が作用しても、ラチェット歯の噛み合いによりその作用が阻止される。図6(d)はストラット3がポリマーステントの周方向に最も伸張した状態であり、この状態でラチェット歯の噛み合いにより対向するストラット辺3a,3aが接近した状態で保持されるため、血管壁からの押圧によりポリマーステントが縮径しようとする作用に抗してポリマーステント径が保持される。

【0050】
図7(a)は図6(d)において対向するストラット辺3a,3aが接近してそれらの枝片3bが重なり合いラチェット歯が噛み合う時の一部を拡大して示す図である。図7(a)に示すものでは、図で左側のトスラット辺3aに突設された各枝片3bの下側に多数のラチェット歯3cが形成され、右側のストラット辺3aに突設された各枝片3bの上側に多数のラチェット歯が形成されている。それぞれの一方のストラット辺3aに突設された枝片3bの間隔は他方のストラット辺3aに突設された枝片の幅とほぼ同等であり、両方のストラット辺3a,3aが接近した際に枝片同士が相手の枝片をガイドし合いラチェット歯が噛み合い易い関係になっている。

【0051】
図7(b)は、図7(a)に示すものにおいて2本の枝片が重なり合い、ラチェット歯が噛み合う状態を示している。この場合、各枝片3bの一方の側辺にラチェット歯が形成されているが、図7(c)に示すように各枝片の両側辺にラチェット歯3cを形成し、各枝片の両側辺のラチェット歯が噛み合うようにしてもよい。

【0052】
図22に関して説明したように血管の分岐部位にポリマーステントを留置する場合に、本幹内に留置されたポリマーステントの側面を拡開しつつ側枝内に他のポリマーステントをマウントしたバルーンカテーテルを導入することになり、そのためにポリマーステントの側面のストラットを押し拡げる必要がある。図8はこのような場合にストラットを押し拡げた状態を示す図であり、ストラット辺-リンクは線で示されている。

【0053】
図6(c)のように各ストラットがポリマーステントの周方向に伸張した状態において、図で左右の隣り合うリンク2,2の間にポリマーステントをマウントしたバルーンカテーテルBCを挿通していくと、図8のように左右の方向(ポリマーステントの軸方向)にリンク2,2が押し拡げられるとともに、バルーンカテーテルBCに押されるリンク2は上下のストラット3を引っ張る。その際のストラットの変形はポリマーステントの周方向に伸びる方向であるので、ラチェット歯は拡径時と同じ動作、作用を発揮し、ストラットの変形が可能であるとともに、ラチェット歯の噛み合いによりその押し拡げられた形状を保持できる。それによりポリマーステントの留置後の側枝への血流を確保できる効果がある。このようにして、分枝を有する血管の部位にポリマーステントを留置することができる。

【0054】
図9(a)~(c)はストラットの変形形態が異なるポリマーステントのストラット-リンクの形状の例を示すものである。図9(a)において縦方向がポリマーステントの周方向、横方向が軸方向であり、その一部を拡大した図9(b)に示すように、不変型ストラット30は同形の三角形の4つのストラット30-1,30-2,3-3,30-4を1組として連結された不変型ストラットであり、軸方向にはリンク2で連結されている。

【0055】
1組の不変型ストラット30における下側の2つのストラット30-2,30-4のそれぞれの下側の頂点と、周方向に下側の他の不変型ストラット30における上側の2つのストラットのそれぞれの上側の頂点との間に4つ1組の三角形の可動型ストラット31が連結されている。可動型ストラット31は不変型ストラット30より小形の直角三角形状のストラット31-1,31-2,31-3,31-4を図示のように連結してなり、ポリマーステントが縮径した状態ではストラット31-1,31-2,31-3,31-4の間のストラット辺が近接して、4つのストラット31-1,31-2,31-3,31-4の間は縦方向の菱形を幅狭くした形状になっている。

【0056】
図9(b)の状態から、ポリマーステントの周方向に拡径方向の力が作用した時に、可動型ストラット31-1,31-2,31-3,31-4はそれぞれ不変型ストラットとの連結点を中心に回転するように移動し、図9(c)に示すようにポリマーステントの周方向に伸張した状態に達し、可動型ストラット31-1,31-2の右側のストラット辺と、可動型ストラット31-3,31-4の左側のストラット辺とはそれぞれほぼ直線状になる。

【0057】
図9(b)のように縮径した状態から図9(c)の拡径した状態に転ずるに際し、拡径方向に向かう作用を受けて、図9(b)でストラット31-1,31-3のそれぞれ上側の屈曲した形状のストラット辺と、ストラット31-2,31-3のそれぞれ下側の屈曲した形状のストラット辺とはそれぞれ一旦曲げ変形をしながら不変型ストラットとの連結点の間を通過し曲げ状態から復元した後に、図9(c)の状態になる。そのため、図9(c)のように拡径した状態から図9(b)のように縮径した状態に戻ろうとするに際してはこれに抗する作用が生じることになり、その意味で図9(a)のストラット-リンクの構造は飛び移り座屈による双安定性を有するものとなっている。

【0058】
図10(a)、(b)は図9(a)の形状のポリマーステントのストラット-リンク構造において、ポリマーステントが拡径した状態を保持するためのラチェット歯付き枝片をストラットに設けるようにしたものを示す図である。図10(a)では図9(b)と同様なストラット-リンクの形状になっているが、可動型ストラット31-1,31-2と可動型ストラット31-3,31-4とにおける対向して近接する縦方向に長い菱形形状のストラット辺のうち、ストラット31-1,31-2側のストラット辺の側辺にストラット31-3,31-4側に向かって突出する多数のラチェット歯付き枝片31bが設けられている。

【0059】
ポリマーステントに拡径方向の力が作用して、図10(a)の状態から図10(b)のようにポリマーステントの周方向に伸張した状態になると、可動型ストラットの回転移動により可動型ストラットの間の菱形形状は横方向に長い形になって対向するストラット31-1,31-2のストラット辺が接近して枝片31bが重なり合うように移動し、それらに設けられたラチェット歯が噛み合うようになる。可動型ストラットは拡径の状態で安定性を有することについては図9(b),(c)に関して説明したが、図10(b)のように可動型ストラットのストラット辺に突設した枝片のラチェット歯の噛み合いにより、拡径の状態がより確実に保持される。

【0060】
図9(a)に示されるポリマーステントのストラット-リンク構造では可動型ストラットを構成する4つのストラットが直角三角形状のものであるが、他の三角形状のストラットであってもよく、他の三角形状のものでもよい。ただし、双安定性を確保することからはある程度の条件が要求される。

【0061】
図11(a)は可動型ストラットを構成する一般的な三角形状のストラットのストラット-リンク構造について示すものであり、可動型ストラットは4つの合同な三角形状のストラット31-1,31-2,31-3,31-4が対称的に配置され相互に連結されるとともに、上側の不変型ストラット、下側の不変型ストラットに連結されている。

【0062】
4つの可動型ストラットのうちの上側の2つのストラット41-1,31-4についてみて、不変型ストラットに連結されている頂点における角度をDとし、ストラット31-1と31-4とが連結されている頂点における角度をAとする。下側の2つのストラット対称的な配置関係から、同様な角度を有するものである。この時にストラットにおける角度A、Dは、以下のように、∠D≧∠Aとなるようにすることが双安定性の面から望ましい。

【0063】
図11(b)はポリマーステントに拡径方向の力が作用して、図11(a)の状態から可動型ストラットが不変型ストラットとの連結点を中心に回転移動した後の状態を示すものであり、図11(a)の状態から図11(b)の状態への変移に際して、ストラット31-1,31-3のそれぞれ上側の屈曲した形状のストラット辺と、ストラット31-2,31-4のそれぞれ下側の屈曲した形状のストラット辺とはそれぞれ一旦曲げ変形をしながら不変型ストラットとの連結点の間を通過し曲げ状態から復元して図11(b)の状態になることにより、拡径状態から縮径状態への変移に抗する作用が生じ、ストラット-リンクの構造が飛び移り座屈による双安定性を有すること、可動型ストラット31-1,31-2と可動型ストラット31-3,31-4とにおける対向して近接するストラット辺が縦方向に長い菱形形状をなす状態から可動型ストラット31-1,31-3と可動型ストラット31-2,31-4とに対向して近接するストラット辺が横方向に長い菱形形状をなす状態に変移することは図9(a)~(c)に示したものと同様である。

【0064】
一方、可動型ストラットが一般的な三角形状のストラットである場合、ポリマーステントの拡径した図11(b)の状態で可動型ストラット31-1,31-2の右側のストラット辺と、可動型ストラット31-3,31-4の左側のストラット辺とはそれぞれほぼ直線状にはならない。可動型ストラットが図11(b)の状態になっているポリマーステントに縮径方向の力が作用しても、その作用は三角形状ストラット31-1,31-2,31-3,31-4が拡径時と同じ方向に回動するので、図11(a)の状態に戻る可能性は低くなる。

【0065】
図11(a)に示すポリマーステントの三角形ストラットからなる不変型ストラットと可動型ストラットを組み合わせたストラット-リンクの形状では、不変型ストラットは2つの三角形のストラットが一辺を共通にして組み合わされ4つ1組として連結されてなり、上下方向(ポリマーステントの周方向)の頂点部が可動型ストラットとの連結部となる。可動型ストラットは4つ1組の三角形のストラットが相互に連結されるとともに各ストラットの1つの頂点部が2組の不変型ストラットの頂点部に連結され、可動型ストラットはポリマーステントの拡径方向に作用する力を受けて不変型ストラットとの連結部を中心に回転移動し、ポリマーステント周方向に拡径した状態で縮径方向に復元しないように飛び移り座屈による安定性を有する構造になっている。

【0066】
不変型ストラット、可動型ストラットはこのようなポリマーステントとしての機能に即したものであればよいのであるが、可動型ストラットに双安定性の機能をもたせることからは、ポリマーステントの周方向に連なる不変型ストラット-可動型ストラット-不変型ストラットの系列として見て、左右対称形であるようにするのがポリマーステントを設計する上では簡易になり、また、可動型ストラットを構成するストラットの三角形状において前述の∠D≧∠Aの関係を満たすのが望ましい。

【0067】
図12(a)~(c)はさらに異なるストラット-リンクの形状形態について示す図であり、図12(a)に概略X形のストラット40をリンク2で網目状に連結して形成される。図12(b)はその一部をさらに拡大して示すものであり、各ストラット40は略X形のストラット辺41と、その端部に連結されたストラット辺42とからなる。略X形のストラット辺41は幅が太く、ポリマーステントの周方向、軸方向の力を受けても変形しにくいものである。ストラット辺42は幅が細く、それぞれストラット辺41の図で上側、下側に沿って折曲する形になり、図で上下に隣り合うストラット40の対向するストラット辺42、42同士の折曲部がリンク2により連結されており、折曲したストラット辺42とリンクとは傘形をなしている。ストラット辺42は幅が細いことによりポリマーステントの周方向の力を受けて変形し易くなっている。

【0068】
図12(b)の状態においてポリマーステントに拡径方向の力が作用した時に、略X形のストラット辺41は太く変形しにくいためその形状を保持するが、折曲したストラット辺42は細く変形し易いことから、リンク2に牽引されてある程度変形しつつ反転した形として図12(c)に示すようにストラット辺42とリンク2とがY形をなすようになり、ストラット-リンク形状がポリマーステントの周方向に伸張した状態になる。この伸張した状態からもとの状態に復元しようとしてもこれに抗する作用があることから、図12(a)のストラット-リンクの構造は飛び移り座屈による双安定性を有するものとなっている。また、図12(a)のストラット-リンクの構造の場合に、ポリマーステントの周方向には伸張可能であるが、軸方向には伸縮しないようになっている。

【0069】
図13(a)はポリマーステントの周方向、軸方向にも伸張可能であるようにしたストラット-リンクの構造を示している。図12(a)の場合と異なるのは、略X形のストラット41辺の図で上側及び下側(周方向)のほか、左右(軸方向)のうち軸方向のリンク2に連結される側でストラット辺41の端部から側辺に沿うように幅の細いストラット辺42が連結され、その折曲部同士がリンク2で連結されていることである。ポリマーステントが伸張していない状態で、幅の細い折曲したストラット辺42とその折曲部同士を連結するリンク2とは傘形状になっている。

【0070】
図13(b)は図13(a)のストラット-リンク構造のポリマーステントに拡径方向の力が作用し、ストラット辺42がリンク2に牽引され、ストラット辺42とリンク2とがY形状になり周方向に伸張した状態を示しており、この図では、太いストラットを太線で、細いストラットとリンクを細い線で示している。この状態ではストラットはポリマーステントの軸方向に伸張していない。血管の分岐部位にポリマーステントを留置するに際し、本幹内に留置されたポリマーステントの側面を拡開しつつ側枝内に他のポリマーステントをマウントしたバルーンカテーテルを導入するが、このようにバルーンカテーテルで特定箇所のストラット-リンク構造を押し広げていく場合には、その部分ではポリマーステントの周方向とともに軸方向にも押し広げる力を作用させることになる。

【0071】
図13(c)はこのようにバルーンカテーテルBCでストラット-リンク構造の特定箇所を押し拡げる際の状況を示すものであり。バルーンカテーテルBCが導入される箇所において、図でバルーンカテーテルBCの左右(軸方向)の位置のストラットは側方に押し広げられ、それによりその上下(周方向)のストラットにも左右に拡がる作用が加わり、細く変形し易いストラット辺42が軸方向のリンクに牽引される形で拡がった状態で安定するようになっている。このようにバルーンカテーテルを挿通する箇所の拡開がなされる。

【0072】
図14(a)は図13(a)と同様の形状のストラット-リンクを示しているが、当初の状態としてポリマーステントの軸方向のリンク2に連結されるストラットの細く変形し易いストラット辺42が軸方向に伸張する形で拡がっているものであることで図13(a)に示すものと異なった形態となっている。図14(b)は図14(a)の状態からポリマーステントが拡径して各ストラットが周方向に伸張した状態を示し、この図では、太いストラットを太線で、細いストラットとリンクを細い線で示している。

【0073】
図14(c)はバルーンカテーテルBCでストラット-リンク構造の特定箇所を押し拡げる際の状況を示すものである。バルーンカテーテルBCが導入される箇所において、図でバルーンカテーテルBCの左右(軸方向)の位置のストラットは側方に押し広げられ、それによりそれらのストラットとそのさらに軸方向左右に隣接するストラットとの間では拡がっていた細く変形し易いストラット辺が押し込まれるように変形してストラット間距離を縮小する形になっている。このようにバルーンカテーテルを挿通する箇所の拡開がなされる。

【0074】
図12(a)、13(a)、14(a)に示すストラット-リンクの構造は、太く変形しにくいストラット辺と細く変形し易いストラット辺とを組み合わせたストラットとしてそれらをリンクで連結し、ポリマーステンの拡径の方向、軸方向への伸張の際に、細く変形し易いストラット辺が伸張の方向に変形した状態では復元する方向へ力に抗する機能を有するという意味で双安定性のストラット-リンク構造となっているものである。これらの例では、太く変形しにくいストラット辺が略X形である場合について説明したが、この太く変形しにくいストラット辺はさらに他の形状とすることができる。

【0075】
図15(a)は太く変形しにくいストラットを略N形としたストラット-リンクの形状を示すものであり、図で太いストラット412の上側辺に沿って細く変形し易いストラット辺42が連結されその折曲部においてリンク2に連結されていおり、またストラット辺42に下側辺に沿って細く変形し易いストラット辺42が連結されその折曲部においてポリマーステントの周方向に延びるリンク42に連結されている。

【0076】
図15(b)はポリマーステントに拡径方向の力が作用し、ストラットが周方向に伸張した状態を示すものである。細いストラット42はリンク2に牽引され、反転して略Y形の状態となる。図15(a)においてN形のストラット辺41の縦方向の長さをLとすると、図15(b)の伸張した状態ではほぼ5Lの長さになるので、ポリマーステントの拡径を大きくとれることになる。

【0077】
図16(a)は太く変形しにくいストラット辺を略H形としたストラット-リンクの形状を示すものであり、図で上下の細く変形し易いストラット辺42,42はそれぞれリンク2,2に連結され傘形状をなしている。図16(b)はポリマーステントに拡径方向の力が作用してストラットが周方向に伸張した状態を示しており、この場合H形のストラット辺41の縦方向の長さLに対して伸張した状態ではほぼ3Lの長さになる。

【0078】
図17(a)~(c)はさらに他のストラット-リンクの形状形態を示すものであり、図17(a)において、太く変形しにくいストラット辺41はAD、DC、CBの3辺がコ字形に連結されてなり、Cの部分は変形しにくい連結部であるが、Dの部分は細めになっていて折曲変形し易くなっている。ストラット辺41はリンク2とDの箇所及びBC上の位置で連結されている。またA、Bの部分が細く変形し易いストラット42で連結されている。図で縦方向がポリマーステントの周方向、横方向がポリマーステントの軸方向である。

【0079】
図17(a)のストラット-リンクにおいて、ポリマーステントに拡径方向の力が作用すると、図17(b)のように、Dで連結されたリンク2とEで連結されたリンク2とに牽引されて、ストラットが時計方向に回転するとともにストラット辺41のADの部分が折曲しストラット辺42が屈撓していく。図17(a)においてAB間の距離がaであるとし、図17(b)の状態ではa″であるとする。さらにリンク2により牽引されるとストラットがさらに時計方向に回転しADの部分がさらに折曲して図17(c)のようになる。このときのAB間の距離をa′とする。

【0080】
図17(a)~(c)におけるAB間の距離の関係を、a,a′>a″となるように設定しておくことにより、中間のa″となる図17(b)の位置で最短の距離となり、AB間の細いストラット辺42の屈撓み変形による弾性エネルギーが最大になり、図17(c)の状態ではそれよりストラット辺42の屈撓は緩むことから、このストラット-リンクの形態は双安定性をもつものである。また、図17(c)の状態は図17(a)の状態からストラットが略90°時計方向に回転してリンク2の連結点Eの位置がDからLだけ下方の位置になっているので、ポリマーステントとしてはストラットの回転変位により当初の図17(a)のときよりもL-Lだけ伸張したことになる。

【0081】
図18(a)、(b)はさらに他のストラット-リンクの形状形態を示すものであり、図18(a)でストラット40は太く変形しにくい[形のストラット辺41aと┤形のストラット辺41bとを組み合わせそれらの突辺端部間を細く変形し易いストラット42で連結し、さらにストラット辺41の両角部及びストラット辺41bの両端をそれぞれ細く変形し易いストラット辺42で連結してなり、さらに図で上下のリンク2で連結されている。[形のストラット辺41aの端部と┤形のストラット辺41bの突辺端部とを連結するストラット42と突辺とはY形状をなし、上下のリンク2に連結されるストラット辺42とリンク2とはY形状をなしている。

【0082】
ポリマーステントに拡径方向の力が作用したときに、上下のリンク2に牽引されてストラットが縦方向(ポリマーステントの周方向)に伸張する作用が生じるとともにリンク2に連結されるストラット辺42のY形状は幅が狭まり、それによって[形のストラット辺41aと┤形のストラット辺41bとが接近するような作用が生じ、[形のストラット辺41aと┤形のストラット辺41bとを連結するストラット辺42を押し込んで図18(b)の状態になる。このようにストラット40が周方向に伸張しポリマーステントが拡径する状態となるのであり、このストラット40は飛び移り座屈による双安定性を有する。

【0083】
図19(a)に示すストラット-リンクの形状形態は、図18(a)の場合のストラットを合わせたような形状としたものであり、太く変形しにくい[形のストラット辺2つを合わせて横向きH形状にしたストラット辺41aとし、その両側に対向する┤形の太く変形しにくいストラット辺41bの突辺の端部とを細く変形し易いストラット辺42でY形状になるように連結して構成したストラットとなし、ストラット辺41bの図で上方の端部を連結する細く変形し易いストラット辺42と上方のリンク2とでY形状になり、下方の端部を連結する細く変形し易いストラット辺42と下方のリンク2とでY形状になるように連結したものである。

【0084】
図19(a)のストラット-リンクは図18(a)によるものを2つ合わせた形状になり、ポリマーステントの拡径方向の力が作用したときに、上下のリンク2に牽引されてストラットが縦方向(ポリマーステントの周方向)に伸張する作用が生じるとともにリンク2に連結されるストラット辺42のY形状は幅が狭まり、それによって横向きH形のストラット辺41aと両側の┤形のストラット辺41bとが接近するような作用が生じ、ストラット辺41aと両側の┤形のストラット辺41bとを連結するストラット辺42を押し込んで図19(b)の状態になる。このようにストラット40が周方向に伸張しポリマーステントが拡径する。このストラット40は双安定性を有する。

【0085】
図20(a)に示すストラット-リンクは、図19(a)に示すストラット-リンクをさらに変更した例を示すものであり、図20(a)に示すものにおいては、太く変形しにくい横向きH形のストラット辺41aとその両側の┤形のストラット辺42とを連結する細く変形し易いストラット辺42a、42bのうち、図で左側のストラット辺42a,42aのなす角度が、右側のストラット辺42b,42bのなす角度より小さくなっている。

【0086】
このように左右のストラット辺42a,42aの角度と、ストラット辺42b,42bのなす角度が異なることにより、ポリマーステントの拡径の際に、先に角度の大きい方のストラット辺42b,42bが押し込まれ、その後に角度の小さい方のストラット辺42a,42aが押し込まれ変形するというように、2段階の拡径動作になる。この作用は、図4のストラット-リンクに関して説明したのと、押し込み-引っ張りの関係では逆であるが、2段階で拡径し拡径の幅を大きくすることができるという意味では同様になる。

【0087】
図20(b)は前出のストラット-リンクの形状におけるいくつかのものを組み合わせたものの例を示し、上側のストラットは図16(a)に示すものであり、その次のストラットは図18(a)に示す形状のものであり、下側のストラットは図4に示す形状のものであり、このように異なる形状のストラットをリンク2で連結した網目構造としたポリマーステントにおいても、それぞれのストラットは双安定性を有し、全体としてポリマーステントは拡径状態を保持するという機能を備える。

【0088】
図21(a),(b)は、分岐部に留置されたポリマーステントの側面から分枝側に他のポリマーステントを留置するために、バルーカテーテルBCでストラット-リンク構造の特定箇所を押し拡げる際の状況を示すものであり、この図では、太いストラットを太線で、細いストラットとリンクを細い線で示している。バルーンカテーテルBCを挿通する前はその周辺で伸張していないストラットがあるが、バルーンカテーテルBCを導入していくと、ストラットが側方に押圧され伸張し易くなり、開口形状が保持される。周方向及び軸方向に伸張する方向に細いストラット辺が変形しているが、それに軸方向に隣接するストラットとの間ではストラットの間の間隔が狭まることにより、太いストラット辺の軸方向側辺のストラット辺はリンクと傘形状をなす状態になっている。

【0089】
以上説明したポリマーステントは複数のストラットをリンクで連結して網目形状に形成して構成したものであり、このようなポリマーステントを作製するには、チューブ状のポリマー素材に対してストラット、リンクの部分を残して他の部分を削除するように加工する必要がある。このような枝辺のラチェット歯を有するストラット、リンクの形状の微細加工を行うに際し、平面状の素材を加工する際に用いられるフォトリソグラフィの手法は利用し難いので、他の手法として、金属製ステントの作製に用いられるレーザー加工により作製することができる。また、本発明者からが開発した手法である円筒面反応性イオンエッチングを用いるとさらに微細な加工を行うことができる(Journal of Micromechanics and Microengineering,24(2014)055022,pp.1-8,doi:10.1088/0960-1317/24/5/055022)。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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