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明細書 :LSD1の過剰発現またはLSD1をコードする遺伝子の増幅を伴う悪性腫瘍を予防または治療するための医薬および予後予測用の乳癌組織検査キット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-056152 (P2016-056152A)
公開日 平成28年4月21日(2016.4.21)
発明の名称または考案の名称 LSD1の過剰発現またはLSD1をコードする遺伝子の増幅を伴う悪性腫瘍を予防または治療するための医薬および予後予測用の乳癌組織検査キット
国際特許分類 A61K  45/00        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
A61K  31/502       (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
G01N  33/573       (2006.01)
G01N  33/574       (2006.01)
FI A61K 45/00
C12Q 1/68 ZNAA
A61K 31/502
A61P 35/00
A61P 43/00 111
G01N 33/573 A
G01N 33/574 A
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 19
出願番号 特願2014-186221 (P2014-186221)
出願日 平成26年9月12日(2014.9.12)
発明者または考案者 【氏名】佐藤 工
【氏名】セドキーナ アンナ
【氏名】永澤 慧
出願人 【識別番号】596165589
【氏名又は名称】学校法人 聖マリアンナ医科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100105050、【弁理士】、【氏名又は名称】鷲田 公一
審査請求 未請求
テーマコード 4B063
4C084
4C086
Fターム 4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ04
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4B063QQ53
4B063QR08
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4B063QS25
4B063QS28
4B063QS34
4B063QS36
4B063QS39
4B063QX02
4C084AA17
4C084MA17
4C084MA23
4C084MA35
4C084MA36
4C084MA37
4C084MA41
4C084MA43
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZC20
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC20
要約 【課題】LSD1の過剰発現を伴う悪性腫瘍に対して有効な医薬を提供すること、および従来よりも高精度に乳癌の予後を予測できるキットを提供すること。
【解決手段】PARP阻害剤を含む医薬は、LSD1の過剰発現を伴う悪性腫瘍に対して有効であり、これらの悪性腫瘍を予防または治療するために用いることができる。抗LSD1抗体、LSD1をコードする遺伝子を特異的に増幅するためのプライマーまたはLSD1をコードする遺伝子に特異的な配列と相補的な配列を有するプローブを含む、乳癌の予後予測用キットによれば、乳癌の予後を従来よりも高精度に予測することができる。
【選択図】図5
特許請求の範囲 【請求項1】
PARP阻害剤を含む、LSD1の過剰発現またはLSD1をコードする遺伝子の増幅を伴う悪性腫瘍を予防または治療するための医薬。
【請求項2】
前記悪性腫瘍は卵巣癌、非小細胞性肺癌、食道癌、大腸癌、悪性黒色腫、肝癌、リンパ腫、胃癌、膵臓がん、胆管癌、胆嚢癌、脳腫瘍および骨肉種のいずれかである、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
前記悪性腫瘍は非小細胞性肺癌、食道癌、大腸癌、悪性黒色腫、肝癌、リンパ腫、胃癌、膵臓がん、胆管癌、胆嚢癌、脳腫瘍および骨肉種のいずれかである、請求項1または2に記載の医薬。
【請求項4】
抗LSD1抗体と、LSD1をコードする遺伝子を特異的に増幅するためのプライマーと、LSD1をコードする遺伝子に特異的な配列と相補的な配列を有するプローブと、の少なくともいずれかを含む、予後予測用の乳癌組織検査キット。
【請求項5】
前記悪性腫瘍はトリプルネガティブ乳癌である、請求項4に記載のキット。
【請求項6】
前記悪性腫瘍はBasal-like乳癌である、請求項4に記載のキット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、LSD1(Lysine Specific Demethylase 1)の過剰発現またはLSD1をコードする遺伝子の増幅を伴う悪性腫瘍を予防または治療するための医薬および予後予測用の乳癌組織検査キットに関する。
【背景技術】
【0002】
LSD1は、ヒストンH3の4番目と9番目のリジン残基がモノメチル化またはジメチル化されている時に、これらの残基の脱メチル化を行う酵素である。LSD1は、この性質により、エピジェネティックな遺伝子発現制御を介し、細胞分化の促進および細胞周期の制御等に関与することが知られている。LSD1の過剰発現は様々な悪性腫瘍で見られ、なかでも、食道扁平上皮癌(非特許文献1)、非小細胞性肺癌(非特許文献2)、原発性肝細胞癌(非特許文献3)および大腸癌(非特許文献4)等では、LSD1の過剰発現が見られると患者の予後が不良になりやすいことが知られている。
【0003】
また、悪性腫瘍では、遺伝子(DNA)の増幅が見られることがある。遺伝子の増幅による、その転写・翻訳産物の過剰な発現も、細胞の分化または分裂に異常が生じる原因となりうる。そのため、LSD1をコードする遺伝子が増幅していると、LSD1が過剰発現していることが予測される。
【0004】
乳癌でも、LSD1の過剰発現がみられることがあると報告されているが、乳癌におけるLSD1の過剰発現と患者の予後との関連は明らかになっていない。乳癌は、遺伝子発現解析の結果によって、Luminal A、Luminal B、HER2(またはHER2-enriched)およびBasal likeの4病型に分類される。これらのうち、Luminal A、Luminal BおよびHER2の3病型は、患者の予後が良好であることが多いか、または近年の治療法の発展により予後が改善されている。しかし、これらの病型の中にも患者が予後不良となるケースは見られる。また、Basal likeに分類されることはそれ自体が予後因子として用いられているが、Basal likeに分類される乳癌の中にも、患者が予後不良になるケースとそうではないケースとが見られる。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】YanYan Yu, et al., "High expression of lysine-specific demethylase 1 correlates with poor prognosis of patients with esophageal squamous cell carcinoma," Biochemical and Biophysical Research Communication, 2013, Vol.437, pp.192-198.
【非特許文献2】Tangfeng Lv., et al., "Over-Expression of LSD1 Promotes Proliferation, Migration and Invasion in Non-Small Cell Lung Cancer," PLoS ONE, Vol.7, Issue 4, 2012, Article No. e35065.
【非特許文献3】Ze-Kun Zhao, et al., "Overexpression of lysine specific demethylase 1 predicts worse prognosis in primary hepatocellular carcinoma patients," World Journal of Gastroenteroloigy, 2012, Vol.18, pp.6651-6656.
【非特許文献4】Ding Jie, et al., "Positive Expression of LSD1 and Negative Expression of E-carherin Correlate with Metastasis and Poor Prognosis of Colon Cancer," Digestive Diseases and Sciences, 2013, Vol.58, pp.1581-1589.
【非特許文献5】Helen E. Bryant, et al., "Specific killing of BRCA2-deficient tomours with inhibitors of poly(ADP-ribose) polymerase," Nature, 2005, Vol.434, pp.913-917.
【非特許文献6】Hannah Farmer, et al., "Targeting the DNA repair defect in BRCA mutant cells as a therapeutic strategy," Nature, 2012, Vol.434, pp.917-921.
【非特許文献7】Cancer Genome Atlas N., "Comprehensive molecular portraits of human breast tomours," Nature, 2012, Vol.490, pp.61-70.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
LSD1の過剰発現またはLSD1をコードする遺伝子の増幅を伴う悪性腫瘍に有効な抗癌剤が開発されれば、様々な悪性腫瘍において、患者の予後の改善が見込まれる。基礎実験レベルでは、食道癌に対してLSD1阻害剤が有効であることを示唆するデータが報告されているが、LSD1阻害剤が他の悪性腫瘍にも有効であるかどうかは不明であり、LSD1の過剰発現を伴う悪性腫瘍の全般に対して有効な抗癌剤は、いまだ開発されていない。また、悪性腫瘍は薬剤に対して耐性を獲得することがあると知られており、新しい抗癌剤への需要は常に存在する。
【0007】
複数種の悪性腫瘍において、LSD1の過剰発現が見られると患者の予後が不良になる可能性が高いことが知られているが、これらの悪性腫瘍でLSD1が予後不良を引き起こす機序には不明な点も多く、また、これら以外の悪性腫瘍の発生、増殖または浸潤とLSD1の過剰発現との関連は明らかになっていない。乳癌においても、LSD1の過剰発現と患者の予後との関係はまだ調べられていない。乳癌においては、basal-likeに分類されるか等の予後因子によって予後予測がなされているが、より高精度に予後を予測することができれば、より治療計画が立てやすくなり、治療成績の向上が期待される。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、LSD1の過剰発現またはLSD1をコードする遺伝子の増幅を伴う悪性腫瘍に対して有効な医薬を提供すること、および従来よりも高精度に乳癌の予後を予測できるキットを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題に鑑み、本発明の第1は、以下の医薬に関する。
[1]PARP阻害剤を含む、LSD1の過剰発現またはLSD1をコードする遺伝子の増幅を伴う悪性腫瘍を予防または治療するための医薬。
[2]前記悪性腫瘍は卵巣癌、非小細胞性肺癌、食道癌、大腸癌、悪性黒色腫、肝癌、リンパ腫、胃癌、膵臓がん、胆管癌、胆嚢癌、脳腫瘍および骨肉腫のいずれかである、[1]に記載の医薬。
[3]前記悪性腫瘍は非小細胞性肺癌、食道癌、大腸癌、悪性黒色腫、肝癌、リンパ腫、胃癌、膵臓がん、胆管癌、胆嚢癌、脳腫瘍および骨肉腫のいずれかである、[1]または[2]に記載の医薬。
【0010】
また、本発明の第2は、以下の乳癌の予後予測用キットに関する。
[4]抗LSD1抗体と、LSD1をコードする遺伝子を特異的に増幅するためのプライマーと、LSD1をコードする遺伝子に特異的な配列と相補的な配列を有するプローブと、の少なくともいずれかを含む、予後予測用の乳癌組織検査キット。
[5]前記悪性腫瘍はトリプルネガティブ乳癌である、[4]に記載のキット。
[6]前記悪性腫瘍はBasal-like乳癌である、[4]に記載のキット。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、LSD1の過剰発現またはLSD1をコードする遺伝子の増幅を伴う悪性腫瘍に対して有効な医薬、および従来よりも高精度に乳癌の予後を予測できるキットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1(a)は、LSD1のmRNAの発現量を乳癌の分類ごとにプロットしたグラフである。図1(b)は、BRCA1のmRNAの発現量を乳癌の分類ごとに比較したグラフである。
【図2】図2(a)~図2(e)は、それぞれ、すべてのタイプの乳癌患者、Basal-like乳癌に分類された乳癌患者、Luminal A乳癌に分類された乳癌患者、Luminal B乳癌に分類された乳癌患者およびHER2乳癌に分類された乳癌患者についての、LSD1の発現量が多い乳癌患者に由来する検体およびLSD1の発現量が少ない乳癌患者に由来する検体のそれぞれをもとに作成したカプラン-マイヤー生存曲線を表すグラフである。
【図3】図3(a)は、LSD1の過剰発現が検出された試料の免疫染色イメージであり、図3(b)は、LSD1の過剰発現が検出されなかった試料の免疫染色イメージである。図3(c)は、LSD1の過剰発現が検出された検体を採取した患者およびLSD1の過剰発現が検出されなかった検体を採取した患者のカプラン-マイヤー生存曲線を表したグラフである。
【図4】図4(a)は、LSD1の過剰発現が検出された試料およびLSD1の過剰発現が検出されなかった試料のそれぞれについて、BRCA1タンパク質の発現量をプロットしたグラフである。図4(b)は、乳腺細胞における、LSD1過剰発現群およびベクターコントロール群のウェスタンブロット結果を示す写真である。図4(c)は、骨肉腫細胞における、LSD1過剰発現群およびベクターコントロール群のウェスタンブロット結果を示す写真である。
【図5】図5(a)および図5(b)は、それぞれ、乳癌細胞および骨肉腫細胞のLSD1過剰発現群およびベクターコントロール群にPARP阻害剤を注入したときの細胞の生存率を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.第1の実施形態:LSD1の過剰発現またはLSD1をコードする遺伝子の増幅を伴う悪性腫瘍を予防または治療するための医薬
本発明の第1の実施形態に係る、LSD1の過剰発現またはLSD1をコードする遺伝子の増幅を伴う悪性腫瘍を予防または治療するための医薬は、有効成分としてPARP(poly(ADP-ribose)polymerase)阻害剤を含むことを特徴とする。

【0014】
本発明の第1の実施形態は、従来はBRCA1遺伝子変異またはBRCA2遺伝子変異を伴う癌細胞のみを選択的に死滅させる抗癌剤として用いられてきたPARP阻害剤に、LSD1の過剰発現またはLSD1をコードする遺伝子の増幅を伴う悪性腫瘍を死滅させる効果があるという、本発明者らによる新たな知見に基づくものである。PARP阻害剤はBRCA1遺伝子変異もしくはBRCA2遺伝子変異を伴う乳癌または卵巣癌の治療にのみ有効であるとされており、その適応の低さが問題となっていたが、本発明者らの新たな知見によれば、多用な種類の悪性腫瘍の治療にPARP阻害剤の適用を拡大することができる。

【0015】
本発明において、LSD1の発現とは、患者または被験者から採取した検体またはそれを加工した試料のタンパク質解析によりLSD1が検出されること、または患者または被験体から採取した検体またはそれを加工した試料のmRNA解析によりLSD1をコードする遺伝子の転写産物であるmRNAが検出されることを意味する。

【0016】
本発明において、LSD1が過剰発現しているとは、患者または被験者から採取した検体またはそれを加工した試料から、LSD1の発現が通常よりも多く定量されることを意味する。検体または試料中のLSD1の発現は、任意の方法で定量することができる。たとえば、タンパク質レベルでLSD1の発現を定量してもよく、mRNAレベルで定量してもよい。LSD1の発現量は、他の細胞株(例えばHeLa細胞等)におけるLSD1の発現量または同じ検体から検出した他の遺伝子(ハウスキーピング遺伝子等)の産物の発現量と比較した相対値を用いてもよいし、LSD1発現量の絶対値を用いてもよい。LSD1が過剰発現しているか否かは、ある検体から測定したLSD1の発現量を健常者の検体から測定したLSD1の発現量と比較することによって判定してもよいし、後述するように、ある検体におけるLSD1の発現量をスコア化して行ってもよい。

【0017】
本発明において、LSD1をコードする遺伝子の増幅とは、患者または被験者から採取した検体またはそれを加工した試料において、乳癌に罹患していない被験者から採取した検体またはそれを加工した試料と比べて、LSD1をコードする遺伝子(DNA等の核酸配列)が多く検出されることを意味する。LSD1をコードする遺伝子が増幅しているか否かは、ある検体から測定したLSD1をコードする遺伝子の量を健常者の検体から測定したLSD1をコードする遺伝子の量と比較することによって判定することができる。

【0018】
このとき、後述する、本発明の第2の実施形態に係るキットを用いてLSD1の過剰発現またはLSD1をコードする遺伝子の増幅を検出してもよい。

【0019】
タンパク質レベルでのLSD1の発現は、例えば、免疫染色法(蛍光抗体法、酵素抗体法、重金属標識抗体法、放射性同位元素標識抗体法等)、電気泳動法(ウェスタンブロット法、蛍光二次元電気泳動法等)、酵素免疫測定吸着法(ELISA)、ドット・ブロット法等によって定量することができる。mRNAレベルでのLSD1の発現は、例えば、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)、ノーザンブロット法、分岐DNAプローブ法、in situ ハイブリダイゼーション法(ISH)等によって定量することができる。RT-PCRは、リアルタイムRT-PCRであることが好ましい。in situ ハイブリダイゼーション法は、蛍光in situ ハイブリダイゼーション法(FISH)であることが好ましい。

【0020】
遺伝子の増幅は、サザンブロット法、in situ ハイブリダイゼーション法(ISH)等によって検出することができる。in situ ハイブリダイゼーション法は、蛍光in situ ハイブリダイゼーション法(FISH)であることが好ましい。

【0021】
免疫染色法は、例えば、以下の手順により行うことができる。乳癌患者から採取した検体を常法によりホルマリン等で固定した後、パラフィンに包埋する。包埋した検体を組織片に薄切し、スライドガラスに貼り付け、試料として使用する。必要であれば、2次抗体の種類に応じて、細胞内の酵素を失活させる。試料に抗LSD1抗体(抗ヒトLSD1抗体を含む)を滴下し、1次反応を行う。試料に2次抗体を滴下し、2次反応を行う。必要に応じて、試料の細胞核等を染色する。

【0022】
免疫染色法を行った場合、LSD1の過剰発現は、例えば、以下の方法(Remmele法)によって判定することができる。細胞が明瞭に区別できる領域を5カ所選択し、表1に記載の基準にしたがって領域内の染色強度(SI:Staining Intensity)および領域内から任意に選定した500個の細胞のうちの染色された細胞の割合(PP:Percentage of Positive Cells)を求め、SIとPPとを乗算した数を免疫染色スコアとする。免疫染色スコアが5以上の場合、LSD1の過剰発現が検出されたと判定する。なお、SIおよびPPの基準は表1に限定されず、目的等に応じて判断基準を適宜変更してもよい。ない。また、LSD1の過剰発現が認められる基準値となるスコアも、この値に限定されない。例えば、健常者から採取した検体について同様の測定を行って健常者の免疫染色スコアを算出し、健常者の免疫染色スコアとは明瞭に差がでるようなスコアをLSD1の過剰発現が検出されたと判定するための基準値に設定してもよい。

【0023】
【表1】
JP2016056152A_000003t.gif

【0024】
RT-PCRは、例えば、以下の手順により行うことができる。乳癌患者から採取した検体に、RNA抽出試薬を添加し、検体中に含まれるRNAを抽出する。逆転写酵素を用いて逆転写を行い、LSD1をコードする遺伝子を特異的に増幅するためのプライマーを用いてPCRを行う。PCRの任意のサイクルごとにPCR産物を定量する。PCR産物は、決められたサイクルごとに反応液をサンプリングして電気泳動によって定量してもよいし、二本鎖DNAに特異的に結合(インターカレーション)して蛍光を発するインターカレーターまたは蛍光標識プローブによってリアルタイムに定量してもよい。サイクルごとのPCR産物の量から回帰分析を行うことで、鋳型となったLSD1のmRNAの量を求めることができる。

【0025】
ISHは、例えば、以下の手順により行うことができる。乳癌患者から採取した検体を常法によりホルマリン等で固定した後、パラフィンに包埋する。包埋した検体を組織片に薄切し、スライドガラスに貼り付け、試料として使用する。プローブが酵素で標識されている場合等には、必要であれば、ラベルとして用いる酵素の種類に応じて、細胞内の酵素を失活させる。mRNAレベルでLSD1の発現を定量する場合、RNaseによってmRNAを分離したり、プロテアーゼによってmRNAを取り囲むタンパク質を消化したりしてもよい。遺伝子(DNA)の増幅を検出する場合、エタノール沈殿等によってDNAを分離したり、プロテアーゼによってDNAを取り囲むタンパク質を消化したりしてもよい。LSD1をコードする遺伝子に特異的な配列と相補的な配列を有するプローブの溶液を試料に滴下し、プローブとmRNAまたはDNAとをハイブリダイズさせる。用いたプローブの種類に応じた方法で、mRNAまたはDNAとハイブリダイズしたプローブを検出する。たとえば、プローブが蛍光物質で標識されている場合、蛍光顕微鏡でプローブからの蛍光を検出することができる。検出されたプローブのシグナルの強度をもとに、ハイブリダイズしたLSD1のmRNAの定量またはLSD1をコードする遺伝子(DNA)の増幅の検出をすることができる。プローブは、放射性同位元素、蛍光物質または酵素等で標識することができる。

【0026】
LSD1の過剰発現は、乳癌、卵巣癌、非小細胞性肺癌、食道癌、大腸癌、悪性黒色腫、肝癌、リンパ腫、胃癌、膵臓がん、胆管癌、胆嚢癌、脳腫瘍および骨肉腫等にみられる。LSD1をコードする遺伝子の増幅も、これらの悪性腫瘍でみられると考えられる。本願発明者らが今回得た知見によると、LSD1の過剰発現を伴う悪性腫瘍においては、BRCA1タンパク質の発現量が抑制されている。そのため、BRCA1遺伝子変異を伴う癌細胞を死滅させる抗癌剤であるPARP阻害剤は、これらの悪性腫瘍の治療に有効であると考えられる。また、LSD1をコードする遺伝子の増幅を伴う悪性腫瘍においては、LSD1が過剰に発現することにより、BRCA1タンパク質の発現量が抑制されていると予測される。そのため、PARP阻害剤は、LSD1をコードする遺伝子の増幅を伴う悪性腫瘍の治療にも有効であると考えられる。これらの悪性腫瘍のうち、本発明の第1の実施形態に係る医薬は、好ましくは卵巣癌、非小細胞性肺癌、食道癌、大腸癌、悪性黒色腫、肝癌、リンパ腫、胃癌、膵臓がん、胆管癌、胆嚢癌、脳腫瘍および骨肉腫に有効であり、さらに好ましくは非小細胞性肺癌、食道癌、大腸癌、悪性黒色腫、肝癌、リンパ腫、胃癌、膵臓がん、胆管癌、胆嚢癌、脳腫瘍および骨肉腫に有効である。

【0027】
PARP阻害剤は、BRCA1遺伝子変異またはBRCA2遺伝子変異を伴う癌細胞を特異的に死滅させる抗癌剤として知られている。BRCA1遺伝子の発現により産出されるBRCA1タンパク質またはBRCA2遺伝子の発現により産出されるBRCA2タンパク質は、相同組換えによる遺伝子修復において重要な役割を有する。一方でPARP遺伝子の発現により産出されるPARPタンパク質は、塩基除去修復によるDNAの一本鎖切断の修復に関与する。BRCA1タンパク質またはBRCA2タンパク質が欠損している細胞において、PARPタンパク質も阻害されると、切断部位の修復が行われないため、DNA合成期に奇形DNAが生じることになる。このような奇形DNAが生じた細胞は、細胞周期のチェックポイントを通過できず、アポトーシスにより自死する(非特許文献5、非特許文献6等参照)。PARP阻害剤によるこのような作用機序を合成致死性ともいう。

【0028】
PARPタンパク質にはPARP1タンパク質およびPARP2タンパク質が存在するが、これらのいずれが阻害されても、上記合成致死が導かれる。そのため、本発明の第1の実施態様において用いるPARP阻害剤は、PARP1タンパク質の発現または働きを阻害するものでも、PARP2タンパク質の発現または働きを阻害するものでもよい。本発明の第1の実施態様において用いるPARP阻害剤は、これらの双方を阻害するものであることが好ましいが、PARP1タンパク質またはPARP2タンパク質のいずれか一方の発現または働きのみを阻害するものである場合は、PARP1タンパク質の発現または働きを阻害するものであることが好ましい。

【0029】
本発明の第1の実施形態に係る医薬に含まれるPARP阻害剤は、当業者に知られる方法を用いて製造したものでもよいが、市販の製剤でもよい。このような市販の製剤の例には、アストラゼネカ株式会社の「オラパリブ」(4-[[3-[[4-(シクロプロピルカルボニル)-1-ピペラジニル]カルボニル]-4-フルオロフェニル]メチル]-1(2H)-フタラジノン)、和光純薬工業株式会社の「BYK 204165」(4-(1-メチル-1H-ピロール-2-イルメチレン)-4H-イソキノリン-1,3-ジオン)、「DR2313」(2-メチル-3,5,7,8-テトラヒドロチオピラノ[4,3-d]ピリミジン-4-オン) 、「NU1025」(8-ヒドロキシ-2-メチルキナゾリン-4-オン)および「UPF1069」(5-(2-オキソ-2-フェニルエトキシ)-3,4-ジヒドロイソキノリン-1(2H)-オン)、バイオマリン・ファーマシューティカル社の[BMN673]((8S,9R)-5-フルオロ-8-(4-フルオロフェニル)-9-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾル-5-イル)-8,9-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3,2-de]フタラジン-3(7H)-オン)、テサロ社の[ニラパリブ]((S)-2-(4-(ピペリジン-3-イル)フェニル)-2H-インダゾール-7-カルボキシアミド)、クロヴィス・オンコロジー社の[ルカパリブ](8-フルオロ-5-(4-((メチルアミノ)メチル)フェニル)-3,4-ジヒドロ-2H-アゼピノ[5,4,3-cd]インドール-1(6H)-オン フォスフェート)等が含まれる。

【0030】
本発明の第1の実施形態に係る医薬は、任意の様式で投与することができる、当該医薬を投与する際に採用できる様式の例には、経口投与および非経口投与(皮下、筋肉内、静脈内または腹腔内への注射、および経皮または経粘膜投与等)が含まれる。これらのうち、患者の負担を軽減する観点からは、経口投与が好ましい。

【0031】
本発明の第1の実施形態に係る医薬の剤形は、特に限定されず、投与様式に従って任意に決定することができる。たとえば、経口投与の場合は、錠剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤、散剤およびカプセル剤などの固形剤形、ならびにエリキシル、シロップおよび懸濁液などの液体剤形とすることができる。錠剤の場合には、患者が嚥下しやすい大きさの錠剤になるようにPARP阻害剤の1錠当たりの含量を設定し、常法通り打錠すればよい。

【0032】
本発明の第1の実施形態に係る医薬の1日当たりの投与量は、患者の年齢、体重、病状および臨床経過ならびに投与様式等によって適宜定めることが好ましいが、LSD1の過剰発現またはLSD1をコードする遺伝子の増幅を伴う悪性腫瘍の増殖および浸潤を抑制する量であって副作用の少ない量のPARP阻害剤を投与しうる量であれば特に限定されない。たとえば、PARP阻害剤としてオラパリブを用いるときは、患者に1日当たり400mgを投与すればよい。当該医薬全量に対するPARP阻害剤の配合量(割合)は特に限定されず、剤形に応じて適宜設定すればよい。

【0033】
本発明の第1の実施形態に係る医薬は、薬学的に許容される担体をさらに含むことができる。薬学的に許容される担体として、任意の標準的な担体、緩衝剤および賦形剤(例えばリン酸緩衝食塩水、5%デキストロース水溶液等)を用いることができる。

【0034】
本発明の第1の実施形態に係る医薬の用法は、LSD1の過剰発現またはLSD1をコードする遺伝子の増幅を伴う悪性腫瘍の増殖および浸潤を抑制することができれば特に限定されない。たとえば、PARP阻害剤としてオラパリブを用いるときは、前記1日当たりの投与量を2回に分けて食前、食間または食後に経口投与すればよい。

【0035】
本発明の第1の実施形態に係る医薬は、患者への安全性を考慮したうえで、他の抗癌剤、抗腫瘍剤その他医薬と併用してもよい。

【0036】
本発明の第1の実施形態に係る医薬は、LSD1の過剰発現またはLSD1をコードする遺伝子の増幅を伴う悪性腫瘍に罹患している患者に投与することで、これらの悪性腫瘍の治療に用いることができる。また、当該医薬は、LSD1が過剰発現またはLSD1をコードする遺伝子が増幅しているが増殖または浸潤はしていない悪性腫瘍の細胞を死滅させることもできるため、LSD1の過剰発現またはLSD1をコードする遺伝子の増幅を伴う悪性腫瘍に罹患していると臨床的には診断されない患者に投与することで、これらの悪性腫瘍の予防に用いることができる。

【0037】
2.第2の実施形態:乳癌の予後予測用キット
本発明の第2の実施形態に係る、乳癌の予後予測用キットは、抗LSD1抗体と、LSD1をコードする遺伝子を特異的に増幅するためのプライマーと、LSD1をコードする遺伝子に特異的な配列と相補的な配列を有するプローブと、の少なくともいずれかを含むことを特徴とする。

【0038】
本発明の第2の実施形態は、LSD1の過剰発現またはLSD1をコードする遺伝子の増幅を伴う乳癌患者は予後不良になる可能性が高いという、本発明者らによる新たな知見に基づくものである。特には、Basal-like乳癌の患者がLSD1の過剰発現またはLSD1をコードする遺伝子の増幅を伴う場合は予後不良になる可能性がより高いという、本発明者らによる新たな知見に基づき、本発明の第2の実施形態に係るキットは、Basal-like乳癌の予後予測用キットとして用いることができる。さらには、トリプルネガティブ乳癌(エストロゲン受容体(ER:Estrogen Receptor)、プロゲステロン受容体(PR:Progesterone Receptor)およびHER2のいずれのマーカーも陰性である乳癌)の患者について、LSD1の過剰発現またはLSD1をコードする遺伝子の増幅を伴う場合は予後不良になる可能性がより高いという、本発明者らによる新たな知見に基づき、本発明の第2の実施形態に係るキットは、トリプルネガティブ乳癌の予後予測用キットとして用いることができる。

【0039】
これらの知見に基づけば、乳癌患者から採取した検体中のLSD1の発現を定量するかまたはLSD1をコードする遺伝子の増幅を検出することで、乳癌患者、特にはBasal-like乳癌患者、さらにはトリプルネガティブ乳癌患者の予後予測を行うことができる。また、従来はBasal-like乳癌そのものが予後因子とされていたが、本発明の第2の実施形態によれば、Basal-like乳癌以外の乳癌患者についても予後予測を行うことができる。また、Basal-like乳癌に分類された患者においても予後不良となる患者と寛解する患者とが従来は見られたが、本発明の第2の実施形態によれば、Basal-like乳癌の患者についてより高精度に予後予測を行うことが可能となる。

【0040】
本発明の第2の実施形態によって予後予測を行った結果をもとに、その後の患者の治療計画を立てることで、患者の治療成績が上がることが可能となり、また、患者のQOL(Quality of Life)を向上させることも可能になる。たとえば、本発明の第2の実施形態によって予後不良の可能性が高いとされた患者には、早期から悪性乳癌治療剤の投与を開始することで、乳癌、特にはBasal-like乳癌、さらにはトリプルネガティブ乳癌の患者の治療成績が向上することが見込まれる。

【0041】
なお、本発明の第2の実施形態において、予後不良とは、診断後5年経過後の無再発生存率が75%以下であることを意味する。

【0042】
本発明の第2の実施形態は、上記知見に基づいて提供される、乳癌患者の予後を予測するためのキットに係るものである。当該キットによれば、乳癌患者から採取した検体または試料中のLSD1の発現を定量またはLSD1をコードする遺伝子の増幅を検出することができる。

【0043】
本発明において、LSD1の発現とは、患者または被験者から採取した検体またはそれを加工した試料のタンパク質解析によりLSD1が検出されること、または患者または被験体から採取した検体またはそれを加工した試料のmRNA解析によりLSD1をコードする遺伝子の転写産物であるmRNAが検出されることを意味する。

【0044】
本発明において、LSD1が過剰発現しているとは、患者または被験者から採取した検体またはそれを加工した試料から、LSD1の発現が通常よりも多く定量されることを意味する。検体または試料中のLSD1の発現は、任意の方法で定量することができる。たとえば、タンパク質レベルでLSD1の発現を定量してもよく、mRNAレベルで定量してもよい。LSD1の発現量は、他の細胞株(例えばHeLa細胞等)におけるLSD1の発現量または同じ検体から検出した他の遺伝子(ハウスキーピング遺伝子等)の産物の発現量と比較した相対値を用いてもよいし、LSD1発現量の絶対値を用いてもよい。LSD1が過剰発現しているか否かは、ある検体から測定したLSD1の発現量を健常者の検体から測定したLSD1の発現量と比較することによって判定してもよいし、後述するように、ある検体におけるLSD1の発現量をスコア化して行ってもよい。

【0045】
本発明において、LSD1をコードする遺伝子の増幅とは、患者または被験者から採取した検体またはそれを加工した試料において、乳癌に罹患していない被験者から採取した検体またはそれを加工した試料と比べて、LSD1をコードする遺伝子(DNA等の核酸配列)が多く検出されることを意味する。LSD1をコードする遺伝子が増幅しているか否かは、ある検体から測定したLSD1をコードする遺伝子の量を健常者の検体から測定したLSD1をコードする遺伝子の量と比較することによって判定することができる。

【0046】
タンパク質レベルでのLSD1の発現は、例えば、免疫染色法(蛍光抗体法、酵素抗体法、重金属標識抗体法、放射性同位元素標識抗体法等)、電気泳動法(ウェスタンブロット法、蛍光二次元電気泳動法等)、酵素免疫測定吸着法(ELISA)、ドット・ブロット法等によって定量することができる。mRNAレベルでのLSD1の発現は、例えば、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)、ノーザンブロット法、分岐DNAプローブ法、in situ ハイブリダイゼーション法(ISH)等によって定量することができる。RT-PCRは、リアルタイムRT-PCRであることが好ましい。in situ ハイブリダイゼーション法は、蛍光 in situ ハイブリダイゼーション法(FISH)であることが好ましい。

【0047】
遺伝子の増幅は、サザンブロット法、in situ ハイブリダイゼーション法(ISH)等によって検出することができる。in situ ハイブリダイゼーション法は、蛍光in situ ハイブリダイゼーション法(FISH)であることが好ましい。

【0048】
免疫染色法は、例えば、以下の手順により行うことができる。乳癌患者から採取した検体を常法によりホルマリン等で固定した後、パラフィンに包埋する。包埋した検体を組織片に薄切し、スライドガラスに貼り付け、試料として使用する。必要であれば、2次抗体の種類に応じて、細胞内の酵素を失活させる。試料に抗LSD1抗体(抗ヒトLSD1抗体を含む)を滴下し、1次反応を行う。試料に2次抗体を滴下し、2次反応を行う。必要に応じて、試料の細胞核等を染色する。

【0049】
免疫染色法を行った場合、LSD1の過剰発現は、例えば、以下の方法(Remmele法)によって判定することができる。細胞が明瞭に区別できる領域を5カ所選択し、前述の表1に記載の基準にしたがって領域内の染色強度(SI:Staining Intensity)および領域内から任意に選定した500個の細胞のうちの染色された細胞の割合(PP:Percentage of Positive Cells)を求め、SIとPPとを乗算した数を免疫染色スコアとする。免疫染色スコアが5以上の場合、LSD1の過剰発現が検出されたと判定する。なお、LSD1の過剰発現が認められる基準値となるスコアは、この値に限定されない。たとえば、健常者から採取した検体について同様の測定を行って健常者の免疫染色スコアを算出し、健常者の免疫染色スコアとは明瞭に差がでるようなスコアをLSD1の過剰発現が検出されたと判定するための基準値に設定してもよい。

【0050】
免疫染色法を採用する場合、本発明の第2の実施形態に係るキットは、抗LSD1抗体(モノクローナルおよびポリクローナル抗体、標識化抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体ならびにこれらの結合活性断片を含む)を含む。抗LSD1抗体には、セル・シグナリング・テクノロジー(CST)社のAnti-LSD1 (2139) antibody等が含まれる。

【0051】
免疫染色法を採用する場合、本発明の第2の実施形態に係るキットは、ペルオキシダーゼ等の酵素、2次反応用の抗体、染色液、緩衝液(EDTA溶液、クエン酸緩衝液またはPBS等)および洗浄液の少なくともいずれかを含んでいてもよい。2次反応用の抗体は、当該キットに用いる抗LSD1抗体と親和性のあるものであれば特に限定されない。2次反応用の抗体は、蛍光プローブとして機能するものであってもよい。染色液は、核を染色することができるものを含むことが好ましく、例えばヘマトキシリン、メチル緑またはケルンエヒトロートを含むことが好ましい。染色液には、エオジン等の核以外の部位を染色できるものを組みあわせてもよい。

【0052】
RT-PCRは、例えば、以下の手順により行うことができる。乳癌患者から採取した検体に、RNA抽出試薬を添加し、検体中に含まれるRNAを抽出する。逆転写酵素を用いて逆転写を行い、LSD1をコードする遺伝子を特異的に増幅するためのプライマーを用いてPCRを行う。PCRの任意のサイクルごとにPCR産物を定量する。PCR産物は、決められたサイクルごとに反応液をサンプリングして電気泳動によって定量してもよいし、二本鎖DNAに特異的に結合(インターカレーション)して蛍光を発するインターカレーターまたは蛍光標識プローブによってリアルタイムに定量してもよい。サイクルごとのPCR産物の量から回帰分析を行うことで、鋳型となったLSD1のmRNAの量を求めることができる。

【0053】
RT-PCRを採用する場合、本発明の第2の実施形態に係るキットは、LSD1をコードする遺伝子を特異的に増幅するためのプライマーを含む。LSD1をコードする遺伝子を特異的に増幅するためのプライマーは、LSD1の配列またはLSD1をコードする遺伝子の配列をもとに設計してもよいし、市販のものを用いてもよい。

【0054】
RT-PCRを採用する場合、本発明の第2の実施形態に係るキットは、逆転写酵素、PCR用のリバースプライマー、核酸、DNAポリメラーゼ、PCR用試薬、検出用のインターカレーターまたは蛍光標識プローブ、緩衝液(EDTA溶液、クエン酸緩衝液またはPBS等)および洗浄液の少なくともいずれかを含んでいてもよい。蛍光標識プローブには、TaqManプローブ等が含まれる。

【0055】
ISHは、例えば、以下の手順により行うことができる。乳癌患者から採取した検体を常法によりホルマリン等で固定した後、パラフィンに包埋する。包埋した検体を組織片に薄切し、スライドガラスに貼り付け、試料として使用する。プローブが酵素で標識されている場合等に、必要であれば、ラベルとして用いる酵素の種類に応じて、細胞内の酵素を失活させる。mRNAレベルでLSD1の発現を定量する場合、RNaseによってmRNAを分離したり、プロテアーゼによってmRNAを取り囲むタンパク質を消化したりしてもよい。遺伝子(DNA)の増幅を検出する場合、エタノール沈殿等によってDNAを分離したり、プロテアーゼによってDNAを取り囲むタンパク質を消化したりしてもよい。LSD1をコードする遺伝子に特異的な配列と相補的な配列を有するプローブの溶液を試料に滴下し、プローブとmRNAまたはDNAとをハイブリダイズさせる。用いたプローブの種類に応じた方法で、mRNAまたはDNAとハイブリダイズしたプローブからのシグナルを検出する。たとえば、プローブが蛍光物質で標識されている場合、蛍光顕微鏡でプローブからの蛍光を検出することができる。検出されたプローブのシグナルの強度をもとに、ハイブリダイズしたLSD1のmRNAの定量またはLSD1をコードする遺伝子(DNA)の増幅の検出をすることができる。

【0056】
ISHを採用する場合、本発明の第2の実施形態に係るキットは、LSD1をコードする遺伝子に特異的な配列と相補的な配列を有するプローブを含む。LSD1をコードする遺伝子に特異的な配列と相補的な配列を有するプローブは、LSD1の配列またはLSD1をコードする遺伝子の配列をもとに設計してもよいし、市販のものを用いてもよい。プローブは、放射性同位元素、蛍光物質または酵素等で標識することができるが、これらのうち、蛍光物質で標識されていることが好ましい。プローブの長さは特に限定されないが、10~500bp、10~250bp、10~100bp、または20~50bpとすることができる。

【0057】
ISHを採用する場合、本発明の第2の実施形態に係るキットは、ペルオキシダーゼ等の酵素、RNase、プロテアーゼ、溶媒、緩衝液(EDTA溶液、クエン酸緩衝液またはPBS等)および洗浄液の少なくともいずれかを含んでいてもよい。

【0058】
本発明の第2の実施形態に係るキットは、必要に応じて、その他の試薬、試験に必要な器具およびコントロール等をさらに含むことができる。

【0059】
LSD1の発現を定量またはLSD1をコードする遺伝子の増幅を検出する検体は、乳癌患者の罹患組織または血液に由来することが好ましい。検体は、Basal-like乳癌の患者から採取したものであることが好ましく、トリプルネガティブ乳癌の患者から採取したものであることも好ましい。試験に供する試料は、患者から採取された検体自体であってもよく、また試験に応じて検体を処理して試料としてもよい。たとえば、試料を免疫染色法で定量する場合、患者から得られた検体から調製したパラフィン切片を試料として用いることができる。また、試料をウェスタンブロット法またはRT-PCRで定量する場合、患者から得られた検体から調製したタンパク質抽出液またはmRNA抽出液を試料として用いることができる。

【0060】
以下、実施例を参照して本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
【実施例】
【0061】
1.Basal-like乳癌におけるLSD1の過剰発現(mRNAレベル)
1-1.バイオインフォマティクスによる解析
非特許文献7に添付の浸潤性乳癌のmRNA発現量データを癌ゲノムアトラス(TCGA:The Cancer Genome Atlas)からダウンロードし、4つの乳癌の分類(Luminal A、Luminal B、HER2およびBasal-like)のそれぞれにおけるLSD1をコードする遺伝子の転写産物であるmRNAの量(以下、単にLSD1のmRNAの発現量ともいう。)およびBRCA1遺伝子の転写産物であるmRNAの量(以下、単にBRCA1のmRNAの発現量ともいう。)を比較した。
【実施例】
【0062】
図1(a)は、LSD1のmRNAの発現量を乳癌の分類ごとにプロットしたグラフである。乳癌のタイプによって、LSD1のmRNAの発現量には有意な差が見られた(one way ANOVAによる検定:p<0.0001)。Basal-like乳癌では、他の種類の乳癌よりもLSD1のmRNAの発現量が増加していた(Bonferroni法によるpost hoc多重比較:Basal-like乳癌と他の乳癌との間のすべての組みあわせについて、p<0.0001)。
【実施例】
【0063】
図1(b)は、BRCA1のmRNAの発現量を乳癌の分類ごとに比較したグラフである。Basal-like乳癌では、他の種類の乳癌よりもBRCA1のmRNAの発現量が減少する傾向が見られた。
【実施例】
【0064】
1-2.考察
図1(a)の結果は、Basal-like乳癌においてLSD1のmRNAの発現量が増加していることを示しており、図1(b)の結果は、Basal-like乳癌においてBRCA1のmRNAの発現量が減少していることを示している。これらの結果から、LSD1のmRNAの発現量の増加とBRCA1のmRNAの発現量の減少が相関することが示唆された。
【実施例】
【0065】
2.LSD1の過剰発現(mRNAレベル)と予後不良との関係
2-1.バイオインフォマティクスによる解析
kmplot(www.kmplot.com)を用いて、LSD1の発現量(mRNAレベル)が多いと判定された乳癌患者由来の検体およびLSD1の発現量(mRNAレベル)が少ないと判定された乳癌患者由来の検体のそれぞれをもとにしたカプラン-マイヤー生存曲線を、2014年6月19日の時点でkmplotに内在するデータを用いて作成した。「Gene symbol」に[KDM1]を入力し、「Intrinsic subtype」を[all]、[basal]、[luminal A]、[luminal b]、[HER2+]として図2(a)~図2(e)に示すカプラン-マイヤー生存曲線を作成した。
【実施例】
【0066】
図2(a)は、すべてのタイプの乳癌患者についての、LSD1の発現量が多い乳癌患者に由来する検体およびLSD1の発現量が少ない乳癌患者に由来する検体のそれぞれをもとに作成したカプラン-マイヤー生存曲線を表すグラフである。LSD1の発現量が多い患者の無再発生存期間(RFS:Recurrence Free Survival)は、LSD1の発現が少ない患者の無再発生存期間よりも短かった(hazard ratio:1.14)。
【実施例】
【0067】
図2(b)は、Basal-like乳癌に分類された患者についての、LSD1の発現量が多い乳癌患者に由来する検体およびLSD1の発現量が少ない乳癌患者に由来する検体のそれぞれをもとに作成したカプラン-マイヤー生存曲線を表すグラフである。LSD1の発現量が多い患者の無再発生存期間は、LSD1の発現量が少ない患者の無再発生存期間よりも短かった(hazard ratio:1.39)。
【実施例】
【0068】
図2(c)、図2(d)および図2(e)はそれぞれ、Luminal A、Luminal BおよびHER2乳癌に分類された患者についての、LSD1の発現量が多い乳癌患者に由来する検体およびLSD1の発現量が少ない乳癌患者に由来する検体のそれぞれをもとに作成したカプラン-マイヤー生存曲線を表すグラフである。これらの乳癌については、LSD1の発現量が多くても無再発生存期間は短くならなかった(Luminal A乳癌のhazard ratio:0.88、Luminal A乳癌のhazard ratio:1.01、HER2乳癌のhazard ratio:1.03)。
【実施例】
【0069】
2-2.考察
これらの結果により、乳癌、特にBasal-like乳癌において、LSD1の発現量が多くなるとその後の再発または死亡の可能性が高くなることがわかる。これらの結果により、LSD1の過剰発現は乳癌、特にBasal-like乳癌における予後因子として用いることができることが示された。また、LSD1をコードする遺伝子の転写産物であるmRNAの量をもとに、乳癌、特にBasal-like乳癌において患者の予後判定ができることが示された。
【実施例】
【0070】
3.LSD1の過剰発現(タンパク質レベル)と予後不良との関係
3-1.臨床試料による解析
2007年から2009年にかけて聖マリアンナ医科大学病院を受診した乳癌患者のうち、トリプルネガティブ乳癌と診断された患者(n=20)から乳癌組織切片を採取した。
【実施例】
【0071】
採取した組織切片中のLSD1の発現は、以下の手順で定量した。
【実施例】
【0072】
採取した乳癌のパラフィン組織切片を厚さ4μmのスライド状に薄切し、常法にしたがってパラフィンを除去した。その後、薄切した切片を3%過酸化水素溶液中に5分間浸漬して、切片に含まれる内在性ペルオキシダーゼを失活させた。ウサギ抗ヒトLSD1抗体(セル・シグナリング・テクノロジー社、2139、1:100に希釈)を切片に乗せて60分静置することで、1次反応を行った。ペルオキシダーゼ標識抗ウサギIgGポリクローナル抗体(ダコ・ジャパン株式会社、ヒストファイン シンプルステイン MULTI)によって、メーカー推奨の方法により2次反応を行い、その後、ヘマトキシリンで核を染色した。各工程の間に、必要に応じて適宜PBSまたは水で試料を洗浄した。
【実施例】
【0073】
LSD1発現の程度(免疫染色スコア)は、Remmele法により求めた。具体的には、細胞が明瞭に区別できる領域を5カ所選択し、表1に記載の基準にしたがって染色強度(SI)および500個の細胞のうちの染色された細胞の割合(PP)を求め、SIとPPとを乗算した数を免疫染色スコアとして、免疫染色スコアが5以上の場合、LSD1の過剰発現が検出されたとした。図3(a)はLSD1の過剰発現が検出された試料の免疫染色イメージであり、図3(b)はLSD1の過剰発現が検出されなかった試料の免疫染色イメージである。図3(a)および図3(b)中、濃い色になっている部分は、染色が見られた部分である。
【実施例】
【0074】
3-2.カプラン-マイヤー生存曲線
図3(c)は、上記方法でLSD1の過剰発現が検出された検体を採取した患者(図中点線、n=5)およびLSD1の過剰発現が検出されなかった検体を採取した患者(図中実線、n=15)のカプラン-マイヤー生存曲線を表したグラフである。それぞれの患者の無再発生存期間(RFS)は、聖マリアンナ医科大学病院の診療記録をもとに求めた、検体を採取した後に乳癌の再発がなく生存した期間を用いた。
【実施例】
【0075】
3-3.考察
図3(a)および図3(b)により示されるように、免疫染色法によって、乳癌患者から採取した試料から、その患者が罹患している乳癌がLSD1の過剰発現を伴う悪性腫瘍であるか否かを判断することができた。また、LSD1の発現により産出されたタンパク質の量をもとに、乳癌、特にトリプルネガティブ乳癌において患者の予後判定ができることが示された。
【実施例】
【0076】
図3(c)に示されているように、トリプルネガティブ乳癌の患者でも、LSD1過剰発現が検出された患者の無再発生存期間は、LSD1過剰発現が検出されなかった患者の無再発生存期間よりも短かった(hazard ratio:8.218)。これらの結果により、LSD1の過剰発現はトリプルネガティブ乳癌における予後因子として用いることができることが示された。
【実施例】
【0077】
4.LSD1の発現とBRCA1タンパク質の発現との関係
4-1.免疫染色法による検証
上記3.で用いた試料について、1次反応をEDTA溶液(pH 9.0)によって40分間96℃にスチームすることで抗原賦活化を行った後、抗BRCA1抗体(メルクミリポア社、07-434、1:1000に希釈)を乗せて60分静置することにより行った以外は上記3.と同様の方法により、BRCA1タンパク質の発現を定量した。
【実施例】
【0078】
図4(a)は、上記3.の方法でLSD1の過剰発現が検出された試料およびLSD1の過剰発現が検出されなかった試料のそれぞれについて、BRCA1タンパク質の発現量(免疫染色スコア)をプロットしたグラフである。LSD1の過剰発現が検出された試料は、LSD1の過剰発現が検出されなかった試料よりも有意にBRCA1タンパク質の発現量が低下していた。
【実施例】
【0079】
4-2.ウェスタンブロット法による検証
X-tream HP DNAトランスフェクション試薬を用いて、ヒト乳腺癌(basal-like乳癌)由来の細胞系列であるMDA-MB-231株に、LSD1をコードする遺伝子を有するプラスミドをトランスフェクションしてLSD1を過剰発現させた。トランスフェクションの48時間後に、細胞を0.5%濃度のNP-40溶解バッファー(Tris-HCl(pH7.5):50mM、NaCl:150mM、NP-40:0.5%、NaF:50mM、DTT:1mM、NaVO;1mM、コンプリート プロテアーゼ インヒビター カクテル(ロシェ社)、PMSF:1mM)によって溶解し、SDS-PAGEで展開し、ウェスタンブロット測定を行った。LSD1を過剰発現させなかったこと以外は同様にして、何もコードしない遺伝子を有するプラスミドをトランスフェクションしたベクターコントロール群(VC)についてもウェスタンブロット測定を行った。
【実施例】
【0080】
ヒト骨肉腫由来の細胞系列であるU2OS株を使用した以外は上記と同様にして、ウェスタンブロット測定を行った。
【実施例】
【0081】
図4(b)に、MDA-MB-231株におけるLSD1過剰発現群およびベクターコントロール群のウェスタンブロット結果を示す。図4(c)に、U2OS株におけるLSD1過剰発現群およびベクターコントロール群のウェスタンブロット結果を示す。いずれの株種においても、LSD1過剰発現群では、ベクターコントロール群と比較して、LSD1の発現量は多かったが、BRCA1タンパク質の発現量は少なかった。
【実施例】
【0082】
4-3.考察
図4(a)および図4(b)に示されるように、LSD1の過剰発現が見られる試料では、BRCA1タンパク質の発現量は低くなっていた。これらの結果は、LSD1の過剰発現が見られる組織では、PARP阻害剤による悪性腫瘍細胞の死滅効果が見込まれることを示唆する。
【実施例】
【0083】
5.LSD1過剰発現細胞に対するPARP阻害剤投与の効果
5-1.乳癌細胞株によるコロニー形成アッセイ
X-tream HP DNAトランスフェクション試薬を用いて、ヒト乳腺癌由来の細胞系列であるMDA-MB-231株に、LSD1をコードする遺伝子を有するプラスミドをトランスフェクションしてLSD1を過剰発現させた。トランスフェクションの24時間後に、6ウェルプレートに、1ウェルあたり4000個のセルを導入し、LSD1過剰発現群を作成した。何もコードしない遺伝子を有するプラスミドをトランスフェクションしてLSD1を過剰発現させなかったこと以外は同様にして、ベクターコントロール群(VC)を作成した。異なる濃度のオラパリブ(PARP阻害剤、アストラゼネカ株式会社)を、LSD1過剰発現群およびベクターコントロール群のそれぞれのウェルに注入し、プレートを37℃で1週間インキュベートした。オラパリブの量は、ウェル中の濃度が0.2nM、2nM、20nM、200nM、2000nM、20000nMとなるよう調整した。その後、75%メタノール-25%酢酸溶液で細胞を固定し、プレートを乾燥させた。コロニーはLillie’s crystal violet(crystal violet:2g、シュウ酸アンモニウム:0.8g、80%エタノール:100ml)で5分間染色した。染色後、プレートを水で洗浄し、乾燥させ、ImageQuant LAS 4000(GEヘルスケア)で撮像した画像をもとに、細胞の生存率(%)を測定した。
【実施例】
【0084】
図5(a)に測定結果を示す。LSD1が過剰発現している細胞株(図中点線)にオラパリブを注入すると、ベクターコントロール群(図中実線)と比較して、細胞の生存率は低くなった。オラパリブの濃度が高くなるほどLSD1が過剰発現している細胞株の生存率は低くなり、特にオラパリブの濃度が2nM以上20000nM以下の場合、さらにはオラパリブの濃度が20nM以上20000nM以下の場合に、LSD1が過剰発現している細胞株の生存率は低くなり、オラパリブの濃度が200nM以上4000nM以下の場合に、LSD1が過剰発現している細胞株の生存率は低くなった。
【実施例】
【0085】
5-2.骨肉種細胞株によるコロニー形成アッセイ
ヒト骨肉腫由来の細胞系列であるU2OS株を使用した以外は上記と同様にして、コロニー形成アッセイを行った。
【実施例】
【0086】
図5(b)に測定結果を示す。LSD1が過剰発現している細胞株(図中点線)にオラパリブを注入すると、ベクターコントロール群(図中実線)と比較して、細胞の生存率は低くなった。オラパリブの濃度が高くなるほどLSD1が過剰発現している細胞株の生存率は低くなり、特にオラパリブの濃度が2nM以上20000nM以下の場合、さらにはオラパリブの濃度が20nM以上20000nM以下の場合に、LSD1が過剰発現している細胞株の生存率は低くなり、オラパリブの濃度が200nM以上4000nM以下の場合に、LSD1が過剰発現している細胞株の生存率は低くなった。
【実施例】
【0087】
5-3.考察
図5(a)より、PARP阻害剤であるオラパリブが、LSD1が過剰発現している乳癌細胞を特異的に死滅させるため、LSD1が過剰発現している乳癌の治療にPARP阻害剤が有効であることがわかる。また、特にPARP阻害剤の濃度が高いと、癌細胞の死滅効果も高くなることがわかる。
【実施例】
【0088】
図5(b)より、PARP阻害剤であるオラパリブが、LSD1が過剰発現している骨肉種細胞を特異的に死滅させるため、LSD1が過剰発現している骨肉種の治療にもPARP阻害剤が有効であることがわかる。また、特にPARP阻害剤の濃度が高いと、腫瘍細胞の死滅効果も高くなることがわかる。
【実施例】
【0089】
発生部位も発生機序も異なる2種類の悪性腫瘍細胞株において、LSD1が過剰発現しているときにPARP阻害剤によって悪性腫瘍細胞が特異的に死滅させられることから、悪性腫瘍の種類にかかわらず、LSD1の過剰発現を伴う悪性腫瘍をPARP阻害剤が特異的に死滅させることがわかる。また、悪性腫瘍の種類にかかわらず、PARP阻害剤の濃度が高くなるほどLSD1の過剰発現を伴う悪性腫瘍の死滅効果は高くなることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の第1の実施形態に係る医薬は、LSD1の過剰発現またはLSD1をコードする遺伝子の増幅を伴う悪性腫瘍の治療に用いることができる。本発明の第2の実施形態に係るキットは、乳癌の予後予測に用いることができる。
図面
【図1】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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