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明細書 :センサにおける温度補償方法、該温度補償方法の演算プログラム、演算処理装置、及び、センサ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5757439号 (P5757439)
登録日 平成27年6月12日(2015.6.12)
発行日 平成27年7月29日(2015.7.29)
発明の名称または考案の名称 センサにおける温度補償方法、該温度補償方法の演算プログラム、演算処理装置、及び、センサ
国際特許分類 G01L   9/00        (2006.01)
G01L  19/04        (2006.01)
FI G01L 9/00 305A
G01L 19/04
請求項の数または発明の数 10
全頁数 35
出願番号 特願2013-518152 (P2013-518152)
出願日 平成24年5月31日(2012.5.31)
国際出願番号 PCT/JP2012/064054
国際公開番号 WO2012/165536
国際公開日 平成24年12月6日(2012.12.6)
優先権出願番号 2011122184
優先日 平成23年5月31日(2011.5.31)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年12月20日(2013.12.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】ハオ シュウシュン
【氏名】蒋 永剛
【氏名】藤田 孝之
【氏名】樋口 行平
【氏名】前中 一介
【氏名】高尾 英邦
個別代理人の代理人 【識別番号】100127203、【弁理士】、【氏名又は名称】奈良 泰宏
審査官 【審査官】三田村 陽平
参考文献・文献 特開平02-262032(JP,A)
特表2002-535643(JP,A)
特開昭56-148870(JP,A)
特開平10-019709(JP,A)
調査した分野 G01L 7/00-23/32
G01L 27/00-27/02
特許請求の範囲 【請求項1】
一方の面に第1の電極部が形成されている基板と、前記基板の一方の面に絶縁体層を介して形成された導電部と、前記導電部において前記絶縁体層が形成されている面と反対側の面に形成され、圧力に応じて変形するダイアフラム部と、前記ダイアフラム部において前記導電部が形成されている面と反対側の面に形成された温度補償部材とを備え、内部に密閉空間を有し、前記導電部の内周面と、前記ダイアフラム部において前記導電部が形成されている側の面と、が前記密閉空間の一部を形成し、前記ダイアフラム部と、前記第1の電極部及び前記導電部との間の静電容量変化を検出するセンサにおいて、前記温度補償部材によって前記密閉空間内に封止されている気体の熱膨張に起因した前記ダイアフラム部の変形を補償するセンサにおける温度補償方法。
【請求項2】
前記センサにおいては、
前記基板と、内径が2R、外径が2Rであるリング状の前記導電部と、前記導電部において前記絶縁体層が形成されている面と反対側の面に形成され、圧力に応じて変形する円板状に形成され、外径が2Rである前記ダイアフラム部と、を備え、前記温度補償部材は、内径が2R、外径が2Rであるリング状の温度補償リングであり、前記導電部の内周面と、前記ダイアフラム部において前記導電部が形成されている側の面と、が前記密閉空間の一部を形成している静電容量型センサとして構成されており、
Timoshenkoの対称円板理論に基づいて、前記導電部、前記ダイアフラム部、及び、前記温度補償リングの各中心軸を一致させた状態で構成された複合円板を、前記ダイアフラム部の前記中心軸を基準として、半径が0からRまでの部分で構成された第1区域と、前記ダイアフラム部及び前記温度補償リングの前記中心軸を基準として、半径がRからRまでの部分で構成された第2区域と、前記導電部、前記ダイアフラム部、及び、前記温度補償リングの前記中心軸を基準として、半径がRからRまでの部分で構成された第3区域に分解する演算工程(1)と、
Kirchhoffの円板理論に基づいて、半径方向(r軸方向)と円周方向(θ)の歪みεrr、εθθと変位κ、κθとの関係を示す以下の式(1)~(4)を用いて、以下の式(5),(6)に示す、前記第1~前記第3区域の積層方向(Z軸方向)に関して参照面(z=0)における歪みεrr、εθθを求める演算工程(2)と、
【数1】
JP0005757439B2_000040t.gif
【数2】
JP0005757439B2_000041t.gif
【数3】
JP0005757439B2_000042t.gif
【数4】
JP0005757439B2_000043t.gif
【数5】
JP0005757439B2_000044t.gif
【数6】
JP0005757439B2_000045t.gif
以下の式(7)に、ヤング率E、及び、ポアソン比νを入力し、行列[Q]を求める演算工程(3)と、
【数7】
JP0005757439B2_000046t.gif
以下の式(8)に示す横等方性の線形弾性の対称円板に対する応力の構成方程式に、行列[Q]、歪みεrr、εθθ、変位κ、κθ、熱膨張係数α、及び、温度差ΔT(前記ダイアフラム部の変形を補償する際の初期状態における参照温度Tと変化後の温度Tとの温度差)を入力し、半径方向(r軸方向)の応力σrr、及び、円周方向(θ)の応力σθθを求める演算工程(4)と、
【数8】
JP0005757439B2_000047t.gif
以下の式(9)~(11)に、行列[Q]を入力することによって、各行列[A],[B]及び[D]を演算する演算工程(5)と、
【数9】
JP0005757439B2_000048t.gif
【数10】
JP0005757439B2_000049t.gif
【数11】
JP0005757439B2_000050t.gif
以下の式(12),(13)に、行列[Q]、熱膨張係数α、及び、温度差ΔT(前記ダイアフラム部の変形を補償する際の初期状態における参照温度Tと変化後の温度Tとの温度差)を入力することによって、各行列[N],[M]を演算する演算工程(6)と、
【数12】
JP0005757439B2_000051t.gif
【数13】
JP0005757439B2_000052t.gif
以下の式(14)に、前記ダイアフラム部の変形を補償する際の初期状態における参照温度T及び参照圧力Pに対応した前記ダイアフラム部の初期変形量ω’(r)、及び、前記ダイアフラム部において前記導電部が形成されている側の面と、該面と前記基板において対向する対向面との間の距離gを入力することによって、前記初期状態における前記密閉空間内の体積Vを演算する演算工程(7)と、
【数14】
JP0005757439B2_000053t.gif
以下の式(15)に、前記密閉空間内の圧力Pc、前記参照圧力P、前記初期状態における前記密閉空間内の体積V、前記参照温度T、変化後の温度T、及び、熱膨張後における前記密閉空間内の体積V(仮定値)を入力することによって、前記ダイアフラム部の合圧力(前記密閉空間内の圧力Pcと環境の参照圧力Pの差)Pを演算する演算工程(8)と、
【数15】
JP0005757439B2_000054t.gif
以下の式(16)に、真空の誘電率ε、比誘電率(媒質の誘電率と真空の誘電率の比)εr、前記初期変形量ω’(r)、及び、前記距離gを入力することによって、前記初期変形量ω’(r)に対応した静電容量C’を演算する演算工程(9)と、
【数16】
JP0005757439B2_000055t.gif
上記式(1)~(6)を、以下の式(17),(18)に入力することによって、前記第1~前記第3区域の半径方向(r軸方向)の合力Nを示す以下の式(19)、前記第1~前記第3区域の円周方向(θ)の合力Nθを示す以下の式(20)、前記第1~前記第3区域の半径方向(r軸方向)の合モーメントMを示す以下の式(21)、前記第1~前記第3区域の円周方向(θ)の合モーメントMθを示す以下の式(22)を得る演算工程(10)と、
【数17】
JP0005757439B2_000056t.gif
【数18】
JP0005757439B2_000057t.gif
【数19】
JP0005757439B2_000058t.gif
【数20】
JP0005757439B2_000059t.gif
【数21】
JP0005757439B2_000060t.gif
【数22】
JP0005757439B2_000061t.gif
以下の式(23)~(25)に、前記第1~前記第3区域の半径方向(r軸方向)の合力N、円周方向(θ)の合力Nθ、半径方向(r軸方向)の合モーメントM、円周方向(θ)の合モーメントMθ、横せん断力Q、及び、前記ダイアフラム部の合圧力(前記密閉空間内の圧力と環境の参照圧力の差)Pを入力し、以下の式(26)に示す軸対称円板の平衡方程式を求める演算工程(11)と、
【数23】
JP0005757439B2_000062t.gif
【数24】
JP0005757439B2_000063t.gif
【数25】
JP0005757439B2_000064t.gif
【数26】
JP0005757439B2_000065t.gif
上記式(19)~(22)を、上記式(23),(26)に入力することによって、以下の関係式(27),(28)を得る演算工程(12)と、
【数27】
JP0005757439B2_000066t.gif
【数28】
JP0005757439B2_000067t.gif
上記式(27),(28)に、それぞれ、2回積分処理を施して、以下に示す式(29),(30)を得る演算工程(13)と、
【数29】
JP0005757439B2_000068t.gif
【数30】
JP0005757439B2_000069t.gif
上記式(29)に積分処理を施して、以下の式(31)に示す前記第1区域における前記ダイアフラム部の変形量ω(1)、以下の式(32)に示す前記第2区域における前記ダイアフラム部の変形量ω(2)、及び、以下の式(33)に示す前記第3区域における前記ダイアフラム部の変形量ω(3)演算する演算工程(14)と、
【数31】
JP0005757439B2_000070t.gif
【数32】
JP0005757439B2_000071t.gif
【数33】
JP0005757439B2_000072t.gif
以下の式(34)に、前記変形量ω(1),ω(2)及び前記距離gを入力することによって、熱膨張後の前記密閉空間内の体積Vを演算する演算工程(15)と、
【数34】
JP0005757439B2_000073t.gif
上記式(31),(32)に、前記体積Vを入力することによって、前記変形量ω(1),ω(2)に対応した、以下の式(35)に示す静電容量C’を演算する演算工程(16)と、
【数35】
JP0005757439B2_000074t.gif
以下の式(36)に、前記静電容量C’,C’を入力することによって、静電容量の変化量ΔC’を求める演算工程(17)と、を順に行うことを特徴とする請求項1に記載のセンサにおける温度補償方法。
【数36】
JP0005757439B2_000075t.gif

【請求項3】
前記導電部が、
前記ダイアフラム部の変形に応じて、前記第1の電極部と共に前記ダイアフラム部との間の静電容量変化を検出するための第2の電極部であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサにおける温度補償方法。
【請求項4】
前記センサが、
少なくとも白金を含むとともに、前記第2の電極部と前記絶縁体層との間に形成され、内周面が前記密閉空間の一部を形成するバリアメタル層を備えていることを特徴とする請求項3に記載のセンサにおける温度補償方法。
【請求項5】
前記導電部が、
前記ダイアフラム部において前記温度補償リングが形成されている側の面と反対側の面に形成された封止リング部であり、
前記センサが、
前記封止リング部と前記絶縁体層との間に形成され、前記ダイアフラム部の変形に応じて、前記第1の電極部と共に前記ダイアフラム部との間の静電容量変化を検出するためのリング状の第2の電極部を備えていることを特徴とする請求項2に記載のセンサにおける温度補償方法。
【請求項6】
前記センサにおいて、
前記第2の電極部と前記封止リング部との接合が、金-金接合によるものであることを特徴とする請求項5に記載のセンサにおける温度補償方法。
【請求項7】
前記センサが、
少なくとも白金を含むとともに、前記ダイアフラム部において前記温度補償リングが形成されている側の面と反対側の面に形成されたリング状のバリアメタル層と、
前記バリアメタル層と前記絶縁体層との間に形成され、前記ダイアフラム部の変形に応じて、前記第1の電極部と共に前記ダイアフラム部との間の静電容量変化を検出するためのリング状の第2の電極部とを備え、
前記導電部が、
前記バリアメタル層が単層である場合には、該バリアメタル層であり、
前記バリアメタル層が複数層である場合には、該バリアメタル層のうち、前記ダイアフラム部に最も近い層であることを特徴とする請求項2に記載のセンサにおける温度補償方法。
【請求項8】
一方の面に第1の電極部が形成されている基板と、前記基板の一方の面に絶縁体層を介して形成された導電部と、前記導電部において前記絶縁体層が形成されている面と反対側の面に形成され、圧力に応じて変形するダイアフラム部と、前記ダイアフラム部において前記導電部が形成されている面と反対側の面に形成された温度補償部材とを備え、内部に密閉空間を有し、前記導電部の内周面と、前記ダイアフラム部において前記導電部が形成されている側の面と、が前記密閉空間の一部を形成し、前記ダイアフラム部と、前記第1の電極部及び前記導電部との間の静電容量変化を検出するセンサにおいて、前記温度補償部材によって前記密閉空間内に封止されている気体の熱膨張に起因した前記ダイアフラム部の変形を補償するセンサにおける温度補償方法を演算処理するための演算プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載の演算プログラムを演算処理することを特徴とする演算処理装置。
【請求項10】
一方の面に第1の電極部が形成されている基板と、前記基板の一方の面に絶縁体層を介して形成された導電部と、前記導電部において前記絶縁体層が形成されている面と反対側の面に形成され、圧力に応じて変形するダイアフラム部と、前記ダイアフラム部において前記導電部が形成されている面と反対側の面に形成された温度補償部材とを備え、内部に密閉空間を有し、前記導電部の内周面と、前記ダイアフラム部において前記導電部が形成されている側の面と、が前記密閉空間の一部を形成し、前記ダイアフラム部と、前記第1の電極部及び前記導電部との間の静電容量変化を検出するセンサであって、前記温度補償部材によって前記密閉空間内に封止されている気体の熱膨張に起因した前記ダイアフラム部の変形が補償されることを特徴とするセンサ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、センサにおける温度補償方法、該温度補償方法の演算プログラム、該演算プログラムを演算処理する演算処理装置、及び、該温度補償の対象となるセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、一般に半導体圧力センサは、微小キャビティーとその表面を覆う薄いダイアフラムからなり、外部の圧力により変形したダイアフラムの変形をその表面に形成した抵抗の変化、あるいは、対極にもう一つの電極を設け、ダイアフラムと対極電極の容量変化を測定することにより圧力計とするものである。
【0003】
このような構成の圧力センサにおいて、キャビティー内を真空封止した場合には、ダイアフラムの変形は外気圧と真空圧との差圧、すなわち、絶対圧センサとなり、その一方で、キャビティー内にある圧力の気体を封入した場合は、外気圧とのキャビティー内の気体圧との差圧、すなわち、相対圧センサとなる。キャビティー内を真空封入した絶対圧センサは、キャビティー内を真空に保つための困難さはあるが、内部の気体の温度による収縮の影響は無視できるため、圧力センサとしての温度補償が容易になるという利点がある。その一方で、キャビティー内が真空で封止されているため、例えば1気圧の外気圧下において、すでにダイアフラムが大きく変形しており、1気圧付近で用いる圧力センサとしてはダイアフラムを薄くして圧力感度を高めることが困難であるという欠点を有する。
【0004】
一方、上記相対圧センサの一例としては、下記特許文献1に代表されるように、物理量の一種である圧力に応じて変形するダイアフラム部を有した静電容量型圧力センサが公知となっている。なお、この特許文献1に開示されている静電容量型圧力センサは、電極部が形成されている第1の基板と、圧力に応じて変形するダイアフラム部が形成されている第2の基板とを有し、前記ダイアフラム部と前記電極部とがギャップをもって互いに対向する関係となるキャビティー部を設けるとともに、キャビティー部を外部から封止する封止材を設け、前記第1及び前記第2の基板とが接合されたセンサチップを備え、前記ダイアフラム部に加わる被測定圧力と前記キャビティー部内の圧力との圧力差に応じて前記ギャップのギャップ幅を変化させて該ギャップ幅の変化による前記ダイアフラム部と前記電極部との間の静電容量の変化によって前記圧力差を検出するようにした静電容量型圧力センサにおいて、前記キャビティー部内を密閉した密閉部材を有しているものである。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開平10-19709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記相対圧センサは、例えば、キャビティー内に1気圧付近の気体を封入し、1気圧付近の外気を測定する場合、その差圧は小さくダイアフラムの変形が小さいため、より薄いダイアフラムを設けることが可能となり、1気圧付近で高感度化を図ることができるという利点がある。しかしながら、キャビティー内に気体を封入するものであるため、ボイル・シャルルの法則からも明らかなように、キャビティー内の温度変化によって内部圧力が変動し、ダイアフラムの温度による変形を補償することが困難になるという欠点がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、キャビティー内の気体の温度による圧力変化(キャビティー内に封止されている気体の熱膨張)に起因したダイアフラムの変形を相殺し、対象とする温度範囲でダイアフラムの変形を抑制することにより、最適な温度補償を行うことのできる、センサにおける温度補償方法、該温度補償方法の演算プログラム、該演算プログラムを演算処理する演算処理装置、及び、センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明のセンサにおける温度補償方法は、一方の面に第1の電極部が形成されている基板と、前記基板の一方の面に絶縁体層を介して形成された導電部と、前記導電部において前記絶縁体層が形成されている面と反対側の面に形成され、圧力に応じて変形するダイアフラム部と、前記ダイアフラム部において前記導電部が形成されている面と反対側の面に形成された温度補償部材とを備え、内部に密閉空間を有し、前記導電部の内周面と、前記ダイアフラム部において前記導電部が形成されている側の面と、が前記密閉空間の一部を形成し、前記ダイアフラム部と、前記第1の電極部及び前記導電部との間の静電容量変化を検出するセンサにおいて、前記温度補償部材によって前記密閉空間内に封止されている気体の熱膨張に起因した前記ダイアフラム部の変形を補償することを特徴とするものである。

【0009】
上記(1)の構成によれば、密閉空間内の気体の温度による圧力変化(密閉空間内に封止されている気体の熱膨張)に伴うダイアフラム部の変形を相殺し、対象とする温度範囲でダイアフラム部の変形を抑制することにより、最適な温度補償を実現することができる。
【0010】
更に、上記(1)の構成によれば、温度補償を有効に行うことで、ダイアフラムの薄いセンサを設計・製作することが可能となり、センサの高感度化を図ることができる。
【0011】
なお、本発明中の「ダイアフラム部の変形を補償する」とは、ダイアフラム部の変形量を完全に零にすること、及び、ダイアフラム部の変形量を零に近似させること、が含まれる。
【0012】
(2) 上記(1)のセンサにおける温度補償方法においては、前記センサは、前記基板と、内径が2R、外径が2Rであるリング状の前記導電部と、前記導電部において前記絶縁体層が形成されている面と反対側の面に形成され、圧力に応じて変形する円板状に形成され、外径が2Rである前記ダイアフラム部と、を備え、前記温度補償部材は、内径が2R、外径が2Rであるリング状の温度補償リングであり、前記導電部の内周面と、前記ダイアフラム部において前記導電部が形成されている側の面と、が前記密閉空間の一部を形成している静電容量型センサとして構成されており、Timoshenkoの対称円板理論に基づいて、前記導電部、前記ダイアフラム部、及び、前記温度補償リングの各中心軸を一致させた状態で構成された複合円板を、前記ダイアフラム部の前記中心軸を基準として、半径が0からRまでの部分で構成された第1区域と、前記ダイアフラム部及び前記温度補償リングの前記中心軸を基準として、半径がRからRまでの部分で構成された第2区域と、前記導電部、前記ダイアフラム部、及び、前記温度補償リングの前記中心軸を基準として、半径がRからRまでの部分で構成された第3区域に分解する演算工程(1)と、
Kirchhoffの円板理論に基づいて、半径方向(r軸方向)と円周方向(θ)の歪みεrr、εθθと変位κ、κθとの関係を示す以下の式(1)~(4)を用いて、以下の式(5),(6)に示す、前記第1~前記第3区域の積層方向(Z軸方向)に関して参照面(z=0)における歪みεrr、εθθを求める演算工程(2)と、
【数1】
JP0005757439B2_000002t.gif
【数2】
JP0005757439B2_000003t.gif
【数3】
JP0005757439B2_000004t.gif
【数4】
JP0005757439B2_000005t.gif
【数5】
JP0005757439B2_000006t.gif
【数6】
JP0005757439B2_000007t.gif
以下の式(7)に、ヤング率E、及び、ポアソン比νを入力し、行列[Q]を求める演算工程(3)と、
【数7】
JP0005757439B2_000008t.gif
以下の式(8)に示す横等方性の線形弾性の対称円板に対する応力の構成方程式に、行列[Q]、歪みεrr、εθθ、変位κ、κθ、熱膨張係数α、及び、温度差ΔT(前記ダイアフラム部の変形を補償する際の初期状態における参照温度Tと変化後の温度Tとの温度差)を入力し、半径方向(r軸方向)の応力σrr、及び、円周方向(θ)の応力σθθを求める演算工程(4)と、
【数8】
JP0005757439B2_000009t.gif
以下の式(9)~(11)に、行列[Q]を入力することによって、各行列[A],[B]及び[D]を演算する演算工程(5)と、
【数9】
JP0005757439B2_000010t.gif
【数10】
JP0005757439B2_000011t.gif
【数11】
JP0005757439B2_000012t.gif
以下の式(12),(13)に、行列[Q]、熱膨張係数α、及び、温度差ΔT(前記ダイアフラム部の変形を補償する際の初期状態における参照温度Tと変化後の温度Tとの温度差)を入力することによって、各行列[N],[M]を演算する演算工程(6)と、
【数12】
JP0005757439B2_000013t.gif
【数13】
JP0005757439B2_000014t.gif
以下の式(14)に、前記ダイアフラム部の変形を補償する際の初期状態における参照温度T及び参照圧力Pに対応した前記ダイアフラム部の初期変形量ω’(r)、及び、前記ダイアフラム部において前記導電部が形成されている側の面と、該面と前記基板において対向する対向面との間の距離gを入力することによって、前記初期状態における前記密閉空間内の体積Vを演算する演算工程(7)と、
【数14】
JP0005757439B2_000015t.gif
以下の式(15)に、前記密閉空間内の圧力Pc、前記参照圧力P、前記初期状態における前記密閉空間内の体積V、前記参照温度T、変化後の温度T、及び、熱膨張後における前記密閉空間内の体積V(仮定値)を入力することによって、前記ダイアフラム部の合圧力(前記密閉空間内の圧力Pcと環境の参照圧力Pの差)Pを演算する演算工程(8)と、
【数15】
JP0005757439B2_000016t.gif
以下の式(16)に、真空の誘電率ε、比誘電率(媒質の誘電率と真空の誘電率の比)εr、前記初期変形量ω’(r)、及び、前記距離gを入力することによって、前記初期変形量ω’(r)に対応した静電容量C’を演算する演算工程(9)と、
【数16】
JP0005757439B2_000017t.gif
上記式(1)~(6)を、以下の式(17),(18)に入力することによって、前記第1~前記第3区域の半径方向(r軸方向)の合力Nを示す以下の式(19)、前記第1~前記第3区域の円周方向(θ)の合力Nθを示す以下の式(20)、前記第1~前記第3区域の半径方向(r軸方向)の合モーメントMを示す以下の式(21)、前記第1~前記第3区域の円周方向(θ)の合モーメントMθを示す以下の式(22)を得る演算工程(10)と、
【数17】
JP0005757439B2_000018t.gif
【数18】
JP0005757439B2_000019t.gif
【数19】
JP0005757439B2_000020t.gif
【数20】
JP0005757439B2_000021t.gif
【数21】
JP0005757439B2_000022t.gif
【数22】
JP0005757439B2_000023t.gif
以下の式(23)~(25)に、前記第1~前記第3区域の半径方向(r軸方向)の合力N、円周方向(θ)の合力Nθ、半径方向(r軸方向)の合モーメントM、円周方向(θ)の合モーメントMθ、横せん断力Q、及び、前記ダイアフラム部の合圧力(前記密閉空間内の圧力と環境の参照圧力の差)Pを入力し、以下の式(26)に示す軸対称円板の平衡方程式を求める演算工程(11)と、
【数23】
JP0005757439B2_000024t.gif
【数24】
JP0005757439B2_000025t.gif
【数25】
JP0005757439B2_000026t.gif
【数26】
JP0005757439B2_000027t.gif
上記式(19)~(22)を、上記式(23),(26)に入力することによって、以下の関係式(27),(28)を得る演算工程(12)と、
【数27】
JP0005757439B2_000028t.gif
【数28】
JP0005757439B2_000029t.gif
上記式(27),(28)に、それぞれ、2回積分処理を施して、以下に示す式(29),(30)を得る演算工程(13)と、
【数29】
JP0005757439B2_000030t.gif
【数30】
JP0005757439B2_000031t.gif
上記式(29)に積分処理を施して、以下の式(31)に示す前記第1区域における前記ダイアフラム部の変形量ω(1)、以下の式(32)に示す前記第2区域における前記ダイアフラム部の変形量ω(2)、及び、以下の式(33)に示す前記第3区域における前記ダイアフラム部の変形量ω(3)演算する演算工程(14)と、
【数31】
JP0005757439B2_000032t.gif
【数32】
JP0005757439B2_000033t.gif
【数33】
JP0005757439B2_000034t.gif
以下の式(34)に、前記変形量ω(1),ω(2)及び前記距離gを入力することによって、熱膨張後の前記密閉空間内の体積Vを演算する演算工程(15)と、
【数34】
JP0005757439B2_000035t.gif
上記式(31),(32)に、前記体積Vを入力することによって、前記変形量ω(1),ω(2)に対応した、以下の式(35)に示す静電容量C’を演算する演算工程(16)と、
【数35】
JP0005757439B2_000036t.gif
以下の式(36)に、前記静電容量C’,C’を入力することによって、静電容量の変化量ΔC’を求める演算工程(17)と、を順に行うことが好ましい。
【数36】
JP0005757439B2_000037t.gif

【0013】
上記(2)の構成によれば、静電容量の変化量ΔC’、より具体的に、密閉空間内に封止されている気体の熱膨張に起因したダイアフラム部の変形の補償程度を判断可能なパラメータΔC’を得ることができる。これにより、該パラメータΔC’を最適化した結果を静電容量型センサに適用さえすれば、上記ダイアフラム部の変形を従来よりも正確に補償することができる。その結果、該静電容量型センサにおいて、ダイアフラム部の変形に応じて、ダイアフラム部と、第1の電極部及び導電部との間の静電容量変化を検出する場合に、該静電容量変化を従来よりも高精度に検出することができる。ここで、上記「パラメータΔC’を最適化する」とは、パラメータΔC’を完全に零にすること、及び、パラメータΔC’を零に近似させること、が含まれる。
【0014】
(3) 上記(1)又は(2)のセンサにおける温度補償方法においては、前記導電部が、前記ダイアフラム部の変形に応じて、前記第1の電極部と共に前記ダイアフラム部との間の静電容量変化を検出するための第2の電極部であることが好ましい。
【0015】
上記(3)の構成によれば、パラメータΔC’を最適化した結果を静電容量型センサに適用さえすれば、上記ダイアフラム部の変形を従来よりも正確に補償することができる。その結果、該静電容量型センサにおいて、ダイアフラム部の変形に応じて、ダイアフラム部と、第1の電極部及び第2の電極部との間の静電容量変化を検出する場合に、該静電容量変化を従来よりも高精度に検出することができる。
【0016】
(4) 上記(3)のセンサにおける温度補償方法においては、前記センサが、少なくとも白金を含むとともに、前記第2の電極部と前記絶縁体層との間に形成され、内周面が前記密閉空間の一部を形成するバリアメタル層を備えていることが好ましい。ここで、「バリアメタル」とは、(1)緻密な膜形成が可能で、配線材料とシリコン基板との反応に対するバリア効果を有しているもの、(2)金属及び絶縁膜との接着性に優れるもの、(3)ドライエッチングによる微細加工が可能、(4)電気抵抗が低い、など優位な効果を有した金属などの材料のことを言う。
【0017】
上記(4)の構成によれば、パラメータΔC’を最適化した結果を静電容量型センサに適用することで、バリアメタル層においてバリアメタルの効果を享受した静電容量型センサにおいても、ダイアフラム部と、第1の電極部及び導電部との間の静電容量変化を従来よりも高精度に検出することができる。
【0018】
(5) 上記(2)のセンサにおける温度補償方法においては、前記導電部が、前記ダイアフラム部において前記温度補償リングが形成されている側の面と反対側の面に形成された封止リング部であり、前記センサが、前記封止リング部と前記絶縁体層との間に形成され、前記ダイアフラム部の変形に応じて、前記第1の電極部と共に前記ダイアフラム部との間の静電容量変化を検出するためのリング状の第2の電極部を備えていることが好ましい。
【0019】
上記(5)の構成によれば、パラメータΔC’を最適化した結果を静電容量型センサに適用することで、ダイアフラム部と第2の電極部との間を封止リング部で封止することにより、密閉空間内部の気体の漏れをより確実に防止できるという効果を享受した静電容量型センサにおいても、ダイアフラム部と、第1の電極部及び第2の電極部との間の静電容量変化を従来よりも高精度に検出することができる。
【0020】
(6) 上記(5)のセンサにおける温度補償方法においては、前記センサにおいて、前記第2の電極部と前記封止リング部との接合が、金-金接合によるものであることが好ましい。
【0021】
上記(6)の構成によれば、パラメータΔC’を最適化した結果を静電容量型センサに適用することで、第2の電極部と封止リング部との電気的な接続信頼性を向上させることができるという効果を享受した静電容量型センサにおいても、ダイアフラム部と、第1の電極部及び第2の電極部との間の静電容量変化を従来よりも高精度に検出することができる。
【0022】
(7) 上記(2)のセンサにおける温度補償方法においては、前記センサが、少なくとも白金を含むとともに、前記ダイアフラム部において前記温度補償リングが形成されている側の面と反対側の面に形成されたリング状のバリアメタル層と、前記バリアメタル層と前記絶縁体層との間に形成され、前記ダイアフラム部の変形に応じて、前記第1の電極部と共に前記ダイアフラム部との間の静電容量変化を検出するためのリング状の第2の電極部とを備え、前記導電部が、前記バリアメタル層が単層である場合には、該バリアメタル層であり、前記バリアメタル層が複数層である場合には、該バリアメタル層のうち、前記ダイアフラム部に最も近い層であることが好ましい。
【0023】
上記(7)の構成によれば、パラメータΔC’を最適化した結果を静電容量型センサに適用することで、バリアメタル層においてバリアメタルの効果を享受した静電容量型センサにおいても、ダイアフラム部と、第1の電極部及び第2の電極部との間の静電容量変化を従来よりも高精度に検出することができる。
【0024】
(8) 本発明の温度補償方法の演算プログラムは、一方の面に第1の電極部が形成されている基板と、前記基板の一方の面に絶縁体層を介して形成された導電部と、前記導電部において前記絶縁体層が形成されている面と反対側の面に形成され、圧力に応じて変形するダイアフラム部と、前記ダイアフラム部において前記導電部が形成されている面と反対側の面に形成された温度補償部材とを備え、内部に密閉空間を有し、前記導電部の内周面と、前記ダイアフラム部において前記導電部が形成されている側の面と、が前記密閉空間の一部を形成し、前記ダイアフラム部と、前記第1の電極部及び前記導電部との間の静電容量変化を検出するセンサにおいて、前記温度補償部材によって前記密閉空間内に封止されている気体の熱膨張に起因した前記ダイアフラム部の変形を補償するセンサにおける温度補償方法を演算処理することを特徴とするものである。

【0025】
上記(8)の構成によれば、上記(1)の構成と同様の効果を享受することができる。
【0026】
(9) 本発明の演算処理装置は、請求項8に記載の演算プログラムを演算処理することを特徴とするものである。
【0027】
上記(9)の構成によれば、上記(8)の構成と同様の効果を享受することができる。
【0028】
(10) 本発明のセンサは、一方の面に第1の電極部が形成されている基板と、前記基板の一方の面に絶縁体層を介して形成された導電部と、前記導電部において前記絶縁体層が形成されている面と反対側の面に形成され、圧力に応じて変形するダイアフラム部と、前記ダイアフラム部において前記導電部が形成されている面と反対側の面に形成された温度補償部材とを備え、内部に密閉空間を有し、前記導電部の内周面と、前記ダイアフラム部において前記導電部が形成されている側の面と、が前記密閉空間の一部を形成し、前記ダイアフラム部と、前記第1の電極部及び前記導電部との間の静電容量変化を検出するセンサであって、前記温度補償部材によって前記密閉空間内に封止されている気体の熱膨張に起因した前記ダイアフラム部の変形が補償されることを特徴とするものである。
【0029】
上記(10)の構成によれば、上記(1)の構成と同様の効果を享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係るセンサにおける温度補償方法の演算結果が適用される静電容量型センサの概略図であって、(a)が上視図、(b)が(a)のA-A線の矢視断面図である。
【図2】ダイアフラム部の変形量の一般的な補償原理を説明するための図であって、(a)が補償前の状態を示し、(b)が補償後の状態を示している。
【図3】本発明の第1実施形態に係るセンサにおける温度補償方法の各演算工程を示したフローチャートである。
【図4】本発明の第1実施形態に係るセンサにおける温度補償方法の各演算工程を示したフローチャートである。
【図5】本発明の第1実施形態に係るセンサにおける温度補償方法の各演算工程を示したフローチャートである。
【図6】Timoshenkoの対称円板理論に基づいて複合円板を第1~第3区域に分解する演算工程を説明するための図であって、(a)が分解前の状態を示し、(b)が分解後の状態を示している。
【図7】本発明の第2実施形態に係るセンサにおける温度補償方法の演算結果が適用される静電容量型センサの概略図であって、(a)が上視図、(b)が(a)のB-B線の矢視断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るセンサにおける温度補償方法の各演算工程を示したフローチャートである。
【図9】本発明の第2実施形態に係るセンサにおける温度補償方法の各演算工程を示したフローチャートである。
【図10】本発明の第2実施形態に係るセンサにおける温度補償方法の各演算工程を示したフローチャートである。
【図11】本発明の第3実施形態に係るセンサにおける温度補償方法の演算結果が適用される静電容量型センサの概略図であって、(a)が上視図、(b)が(a)のC-C線の矢視断面図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係るセンサにおける温度補償方法の各演算工程を示したフローチャートである。
【図13】本発明の第3実施形態に係るセンサにおける温度補償方法の各演算工程を示したフローチャートである。
【図14】本発明の第3実施形態に係るセンサにおける温度補償方法の各演算工程を示したフローチャートである。
【図15】本発明の第4実施形態に係るセンサにおける温度補償方法の演算結果が適用される静電容量型センサの概略図であって、(a)が上視図、(b)が(a)のD-D線の矢視断面図である。
【図16】本発明の第4実施形態に係るセンサにおける温度補償方法の各演算工程を示したフローチャートである。
【図17】本発明の第4実施形態に係るセンサにおける温度補償方法の各演算工程を示したフローチャートである。
【図18】本発明の第4実施形態に係るセンサにおける温度補償方法の各演算工程を示したフローチャートである。
【図19】本発明の第5実施形態に係る演算処理装置を示すブロック図である。
【図20】本発明の第5実施形態に係るセンサにおける温度補償方法の演算プログラム及び演算処理装置の各演算工程を示したフローチャートである。
【図21】本発明の第5実施形態に係るセンサにおける温度補償方法の演算プログラム及び演算処理装置の各演算工程を示したフローチャートである。
【図22】本発明の第5実施形態に係るセンサにおける温度補償方法の演算プログラム及び演算処理装置の各演算工程を示したフローチャートである。
【図23】本発明の第4実施形態の変形例に係るセンサの概略図であって、(a)が上視図、(b)が(a)のE-E線の矢視断面図である。
【図24】本発明の第4実施形態の変形例に係るセンサの概略図であって、(a)が上視図、(b)が(a)のF-F線の矢視断面図である。
【図25】本発明の第1実施形態の変形例に係るセンサの概略図であって、(a)が上視図、(b)が(a)のG-G線の矢視断面図である。
【図26】本発明の第1実施形態の変形例に係るセンサの概略図であって、(a)が上視図、(b)が(a)のH-H線の矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<第1実施形態>
以下、図1~図6を参照しながら、本発明の第1実施形態に係るセンサにおける温度補償方法について説明する。

【0032】
(静電容量型センサ100の構成)
図1(a),(b)に示すように、静電容量型センサにおける温度補償方法の演算結果が適用される静電容量型センサ(センサ)100は、基板1と、絶縁体層2と、第1の電極部3と、第2の電極部(導電部)4と、ダイアフラム部5と、温度補償リング(温度補償部材)6と、密閉空間7と、を備えているものである。

【0033】
基板1は、ケイ素などの半導体からなるものであり、略中央部に円形状の凹部1aを有したものである。

【0034】
絶縁体層2は、二酸化ケイ素などの絶縁体からなる層であり、基板1の一方の面に形成されているものである。また、絶縁体層2は、基板1の凹部1aに合わせて略中央部に形成された円形状の貫通部2aと、図1(a)に示したような略四角形状の貫通部2bとを有しているものである。

【0035】
第1の電極部3は、少なくとも白金を含むバリアメタル層として形成されており、基板1に最も近いチタンからなる層と、基板1から最も離れた金からなる層と、これら二つの層間に形成された白金からなる層と、の三層からなるものである。

【0036】
第2の電極部4は、金からなり、絶縁体層2における基板1が形成されている側の面と反対側の面においてリング状に形成されているものである。なお、一変形例として、第2の電極部4を、銀又は銅などの金属材料で構成してもよい。

【0037】
ダイアフラム部5は、ケイ素からなり、気圧により印加された圧力に応じて変形可能なものである。なお、一変形例として、ダイアフラム部5を、ケイ素以外の半導体材料で構成してもよい。

【0038】
温度補償リング6は、アルミニウムからなり、ダイアフラム部5における第2の電極部4が形成されている側の面と反対側の面においてリング状に形成されているものである。なお、一変形例として、温度補償リング6は、アルミニウム以外にも、他の高い熱膨張係数を有する金属材料を代用できる。

【0039】
密閉空間7は、ダイアフラム部5に印加された圧力の検出に適した雰囲気環境を形成するためのものであって、凹部1aの内面と、貫通部2aの内周面と、第2の電極部4の内周面と、ダイアフラム部5において第2の電極部4が形成されている側の面と、で取り囲むことによって形成されているものである。

【0040】
(静電容量型センサ100の動作)
次に、静電容量型センサ100の動作について説明する。静電容量型センサ100のダイアフラム部5に対して気圧による圧力が印加された場合、ダイアフラム部5は、該圧力に応じて変形する。該変形によって生じた、ダイアフラム部5と第1の電極部3及び第2の電極部4との間の静電容量変化を検出し、圧力の測定を行う。

【0041】
(ダイアフラム部5の変形量の補償原理)
次に、図2を参照しながら、ダイアフラム部5の変形量の一般的な補償原理について説明する。なお、図2(a)~(c)中の距離gは、ダイアフラム部5において第2の電極部4が形成されている側の面と、該面と対向する凹部1aの対向面との間の距離を示しているものである。

【0042】
まず、図2(a)に示す補償前の状態では、参照温度T及び参照圧力Pの環境下における初期状態において、ダイアフラム部5は図中の実線で示す状態に変形しており、その初期変形量はω(r)である。該初期変形量ω(r)に対応して、ダイアフラム部5と第1の電極部3及び第2の電極部4との間に生じている静電容量はCである。そして、参照圧力が初期圧力Pのままで変わらず、参照温度のみが初期温度Tから温度Tに変化した場合に、ダイアフラム部5が図中の点線で示す状態に変形し、ダイアフラム部5の変形量が初期変形量ω(r)から変形量ω(r)に変化し、ダイアフラム部5と第1の電極部3及び第2の電極部4との間に生じている静電容量が初期静電容量CからCに変化したと仮定した場合、静電容量の変化量ΔCは、以下の式(37)で表すことができる。なお、式(37)中の係数εは真空の誘電率を示し、係数εrは、比誘電率(媒質の誘電率と真空の誘電率の比)を示している。
【数37】
JP0005757439B2_000038t.gif

【0043】
次に、図2(b)に示す補償後の状態では、参照温度T及び参照圧力Pの環境下における初期状態において、ダイアフラム部5は図中の実線で示す状態に変形しており、その初期変形量はω’(r)である。該初期変形量ω’(r)に対応して、ダイアフラム部5と第1の電極部3及び第2の電極部4との間に生じている静電容量はC’である。そして、参照圧力が初期圧力Pのままで変わらず、参照温度のみが初期温度Tから温度Tに変化した場合に、ダイアフラム部5が図中の点線で示す状態に変形し、ダイアフラム部5の変形量が初期変形量ω’(r)から変形量ω’(r)に変化し、ダイアフラム部5と第1の電極部3及び第2の電極部4との間に生じている静電容量が初期静電容量C’からC’に変化したと仮定した場合、静電容量の変化量ΔC’は、以下の式(38)で表すことができる。なお、式(38)中の係数εは真空の誘電率を示し、係数εrは、比誘電率(媒質の誘電率と真空の誘電率の比)を示している。
【数38】
JP0005757439B2_000039t.gif

【0044】
上記式(38)から、ダイアフラム部5の変形を完全に補償する場合、つまり、ダイアフラム部5の変形量(=初期変形量ω’(r)-変形量ω’(r))の差分を完全に零にする場合には、パラメータΔC’を零に設定すればよいことが判明している。これにより、ダイアフラム部5の変形の補償程度を判断可能なパラメータはΔC’であることが判明している。

【0045】
図2(c)は、図2(a),(b)に示した一般的な補償原理との比較例であって、本実施形態に係る温度補償方法の演算結果で得られたパラメータΔC’を最適化した結果、より具体的には、該パラメータΔC’を零に設定した結果を示しており、ダイアフラム部5の変形量を完全に零にした状態を示している。この状態では、ダイアフラム部5において第2の電極部4が形成されている側の面と、該面と対向する凹部1aの内面との間の距離はgで維持されている。ここで、一変形例として、パラメータΔC’を零と近似した値に設定することで、ダイアフラム部5の変形量を零に近似させてもよい。

【0046】
(本実施形態に係るセンサにおける温度補償方法の各演算工程)
次に、図3~図6を参照しながら、静電容量型センサにおける温度補償方法の各演算工程について説明する。なお、各演算工程の目的は、温度によるダイアフラム部5の変形を計算することである。温度によって、密閉空間7内の圧力も変わるので、ダイアフラム部5の変形は、温度と圧力の関係に基づいて計算される。

【0047】
まず、図3に示す演算工程S1において、図6に示すように、Timoshenkoの対称円板理論に基づいて、第2の電極部4、ダイアフラム部5、及び、温度補償リング6の各中心軸を一致させた状態で構成された複合円板(図6(a)参照)を、ダイアフラム部5の中心軸を基準として、半径が0からRまでの部分で構成された第1区域(1)と、ダイアフラム部5及び温度補償リング6の中心軸を基準として、半径がRからRまでの部分で構成された第2区域(2)と、第2の電極部4、ダイアフラム部5、及び、温度補償リング6の中心軸を基準として、半径がRからRまでの部分で構成された第3区域(3)に分解する(図6(b)参照)。

【0048】
なお、図6(a),(b)中の一点鎖線は、第2の電極部4、ダイアフラム部5、及び、温度補償リング6における中心軸P(半径rが0の位置)を通過し、第2の電極部4、ダイアフラム部5、及び、温度補償リング6の積層方向に沿って延びる軸線を示し、図6(a),(b)中の厚さtg、ts、及び、taは、それぞれ、第2の電極部4、ダイアフラム部5、及び、温度補償リング6の各厚さを示しているものである。同図中の温度差ΔTは、参照温度Tと温度Tとの温度差を示しているものである。同図中の合圧力Pは、密閉空間7内の圧力Pcと環境の参照圧力Pの差を示しているものである。同図中のRは、温度補償リング6の内径(2R)の半径を示しているものである。同様に、Rは、第2の電極部4の内径(2R)の半径を示しているものである。同様に、Rは、第2の電極部4、ダイアフラム部5、及び、温度補償リング6の外径(2R)の半径を示しているものである。ここでは、同図中の第2の電極部4、ダイアフラム部5、及び、温度補償リング6は、それぞれ、金、シリコン、及び、アルミニウムを材料として構成されている。

【0049】
次に、演算工程S2において、Kirchhoffの円板理論に基づいて、半径方向(r軸方向)と円周方向(θ)の歪みεrr、εθθと変位κ、κθとの関係を示す上記式(1)~(4)を用いて、上記式(5),(6)に示す、第1区域(1)~第3区域(3)の積層方向(Z軸方向)に関して参照面(z=0)における歪みεrr、εθθを求める。

【0050】
次に、演算工程S3において、上記式(7)に、ヤング率E、及び、ポアソン比νを入力し、行列[Q]を求める。

【0051】
次に、演算工程S4において、上記式(8)に示す横等方性の線形弾性の対称円板に対する応力の構成方程式に、行列[Q]、歪みεrr、εθθ、変位κ、κθ、熱膨張係数α、及び、温度差ΔT(ダイアフラム部5の変形を補償する際の初期状態における参照温度Tと変化後の温度Tとの温度差)を入力し、半径方向(r軸方向)の応力σrr、及び、円周方向(θ)の応力σθθを求める。

【0052】
次に、演算工程S5において、上記式(9)~(11)に、行列[Q]を入力することによって、各行列[A],[B]及び[D]を演算する。

【0053】
次に、演算工程S6において、上記式(12),(13)に、行列[Q]、熱膨張係数α、及び、温度差ΔT(ダイアフラム部5の変形を補償する際の初期状態における参照温度Tと変化後の温度Tとの温度差)を入力することによって、各行列[N],[M]を演算する。

【0054】
次に、演算工程S7において、上記式(14)に、ダイアフラム部5の変形を補償する際の初期状態における参照温度T及び参照圧力Pに対応したダイアフラム部5の初期変形量ω’(r)、及び、ダイアフラム部5において第2の電極部4が形成されている側の面と、該面と対向する凹部1aの対向面との間の距離gを入力することによって、上記初期状態における密閉空間7内の体積Vを演算する。

【0055】
次に、演算工程S8において、上記式(15)に、密閉空間7内の圧力Pc、参照圧力P、初期状態における密閉空間7内の体積V、参照温度T、変化後の温度T、及び、熱膨張後における密閉空間7内の体積V(仮定値)を入力することによって、ダイアフラム部5の合圧力(密閉空間7内の圧力Pcと環境の参照圧力Pの差)Pを演算する。

【0056】
次に、演算工程S9において、上記式(16)に、真空の誘電率ε、比誘電率(媒質の誘電率と真空の誘電率の比)εr、ダイアフラム部5の初期変形量ω’(r)、及び、上記距離gを入力することによって、初期変形量ω’(r)に対応した静電容量C’を演算する。

【0057】
次に、演算工程S10において、上記式(1)~(6)を、上記式(17),(18)に入力することによって、第1区域(1)~第3区域(3)の半径方向(r軸方向)の合力Nを示す上記式(19)、第1区域(1)~第3区域(3)の円周方向(θ)の合力Nθを示す上記式(20)、第1区域(1)~第3区域(3)の半径方向(r軸方向)の合モーメントMを示す上記式(21)、第1区域(1)~第3区域(3)の円周方向(θ)の合モーメントMθを示す以下の式(22)を得る。ここで、式(19)中の各符号A11、A12、B11、及び、B12は、上記式(9),(10)に示す行列[A],[B]の各成分を示し、符号Nは、温度Tにおいて引き起こされた半径方向(r軸方向)の合力を示しているものである。式(20)中の各符号A21、A22、B21、及び、B22は、上記式(9),(10)に示す行列[A],[B]の各成分を示し、符号Nθは、温度Tにおいて引き起こされた円周方向(θ)の合力を示しているものである。式(21)中の各符号B11、B12、D11、及び、D12は、上記式(10),(11)に示す行列[B],[D]の各成分を示し、符号Mは、温度Tにおいて引き起こされた半径方向(r軸方向)の合モーメントを示しているものである。式(22)中の各符号B21、B22、D21、及び、D22は、上記式(10),(11)に示す行列[B],[D]の各成分を示し、符号Mθは、温度Tにおいて引き起こされた円周方向(θ)の合モーメントを示しているものである。

【0058】
次に、演算工程S11において、上記式(23)~(25)に、第1区域(1)~第3区域(3)の半径方向(r軸方向)の合力N、円周方向(θ)の合力Nθ、半径方向(r軸方向)の合モーメントM、円周方向(θ)の合モーメントMθ、横せん断力Q、及び、ダイアフラム部5の合圧力(密閉空間7内の圧力Pcと環境の参照圧力Pの差)Pを入力し、上記式(26)に示す軸対称円板の平衡方程式を求める。

【0059】
次に、演算工程S12において、上記式(19)~(22)を、上記式(23),(26)に入力することによって、上記関係式(27),(28)を得る。ここで、式(27),(28)中の符号D11は、式(28)に示すように、上記行列[A],[B],[D]の各成分A11、B11、及び、D11を用いて取得されたパラメータを示している。同様に、式(28)中の符号βは、上記式(28)に示すように、行列[A],[B]の各成分A11、及び、B11を用いて取得されたパラメータを示している。

【0060】
次に、演算工程S13において、上記式(27),(28)に、それぞれ、2回積分処理を施して、上記式(29)に示すノーマル方向変位の勾配θ(r)と、上記式(30)に示す半径方向の変位u(r)の一般解を得る。ここで、式(30)中の符号a、a、及び、式(29)中の符号b、bは各係数を示している。

【0061】
次に、演算工程S14において、上記式(29)に積分処理を施して、上記式(31)に示す第1区域(1)におけるダイアフラム部5の変形量ω(1)、上記式(32)に示す第2区域(2)におけるダイアフラム部5の変形量ω(2)、及び、上記式(33)に示す第3区域(3)におけるダイアフラム部5の変形量ω(3)演算する。なお、式(31)中の符号D11(1)、b(1)、及び、c(1)は、積分処理後の各係数を示している。同様に、式(32)中の符号D11(2)、b(2)、b(2)、及び、c(2)は、積分処理後の各係数を示している。これにより、複合円板における各区域の連続条件と拘束条件によって、各係数b(1)、c(1)、b(2)、b(2)、及び、c(2)が算出される。

【0062】
次に、演算工程S15において、上記式(34)に、ダイアフラム部5の変形量ω(1),ω(2)及び上記距離gを入力することによって、熱膨張後の密閉空間7内の体積Vを演算する。

【0063】
次に、演算工程S16において、上記式(31),(32)に、熱膨張後の密閉空間7内の体積Vを入力することによって、ダイアフラム部5の変形量ω(1),ω(2)に対応した、上記式(35)に示す静電容量C’を演算する。

【0064】
次に、演算工程S17において、上記式(36)に、上記静電容量C’,C’を入力することによって、静電容量の変化量ΔC’を求める。

【0065】
上記構成によれば、密閉空間7内の気体の温度による圧力変化(密閉空間7内に封止されている気体の熱膨張)に伴うダイアフラム部5の変形を相殺し、対象とする温度範囲でダイアフラム部5の変形を抑制することにより、最適な温度補償を実現することができる。

【0066】
更に、上記構成によれば、温度補償を有効に行うことで、ダイアフラム部5の薄い静電容量型センサ100を設計・製作することが可能となり、静電容量型センサ100の高感度化を図ることができる。

【0067】
更に、上記構成によれば、静電容量の変化量ΔC’、より具体的に、密閉空間7内に封止されている気体の熱膨張に起因したダイアフラム部5の変形の補償程度を判断可能なパラメータΔC’を得ることができる。これにより、該パラメータΔC’を最適化した結果を静電容量型センサに適用さえすれば、ダイアフラム部5の変形を従来よりも正確に補償することができる。その結果、静電容量型センサ100において、ダイアフラム部5の変形に応じて、ダイアフラム部5と、第1の電極部3及び第2の電極部4との間の静電容量変化を検出する場合に、該静電容量変化を従来よりも高精度に検出することができる。ここで、「パラメータΔC’を最適化する」とは、パラメータΔC’を完全に零にすること、及び、パラメータΔC’を零に近似させること、が含まれる。また、「ダイアフラム部5の変形を正確に補償する」とは、パラメータΔC’に零を設定することにより、ダイアフラム部5の変形量を完全に零にすること、及び、パラメータΔC’に零と近似した値を設定することにより、ダイアフラム部5の変形量を零に近似させること、が含まれる。

【0068】
<第2実施形態>
次に、図7~図10を用いて、本発明の第2実施形態に係るセンサにおける温度補償方法について説明する。なお、第1実施形態に係る温度補償方法の演算結果が適用される静電容量型センサ100の部位1~7と、本実施形態に係る温度補償方法の演算結果が適用される静電容量型センサ200の部位21~27(図示していない部位がある)とは、順に同様のものであるので、説明を省略することがある。

【0069】
(静電容量型センサ200の構成)
図7に示すように、静電容量型センサ(センサ)200は、上記静電容量型センサ100と同様の基板21と、絶縁体層22と、第1の電極部23と、第2の電極部(導電部)24と、ダイアフラム部25と、温度補償リング(温度補償部材)26と、密閉空間27とに加えて、第1のバリアメタル層28を備えているものである。

【0070】
第1のバリアメタル層28は、少なくとも白金を含むものであって、第2の電極部24と絶縁体層22との間において第2の電極部24と同じくリング状に形成されており、絶縁体層22に最も近いチタンからなる層28aと、第2の電極部24に最も近い白金からなる層28bと、の二層からなるものである。第1のバリアメタル層28の内周面は、凹部21aの内面と、貫通部22aの内周面と、第2の電極部24の内周面と、ダイアフラム部25において第2の電極部24が形成されている側の面と共に、密閉空間27を構成しているものである。

【0071】
(静電容量型センサ200の動作)
次に、静電容量型センサ200の動作について説明する。静電容量型センサ200のダイアフラム部25に対して気圧による圧力が印加された場合、ダイアフラム部25は、該圧力に応じて変形する。該変形によって生じた、ダイアフラム部25と第1の電極部23及び第2の電極部24との間の静電容量変化を検出し、圧力の測定を行う。

【0072】
(本実施形態に係るセンサにおける温度補償方法の各演算工程)
次に、図8~図10を参照しながら、静電容量型センサにおける温度補償方法の各演算工程について説明する。本実施形態では、第1実施形態に係る温度補償方法の各演算工程S1~S17と同様の工程S201~S217が順に行われる。

【0073】
上記構成によれば、パラメータΔC’を最適化した結果を静電容量型センサ200に適用することで、第1のバリアメタル層28においてバリアメタルの効果を享受した静電容量型センサ200においても、ダイアフラム部25と、第1の電極部23及び第2の電極部24との間の静電容量変化を従来よりも高精度に検出することができる。

【0074】
<第3実施形態>
次に、図11~図14を用いて、本発明の第3実施形態に係るセンサにおける温度補償方法について説明する。なお、第1実施形態に係る温度補償方法の演算結果が適用される静電容量型センサ100の部位1~7と、本実施形態に係る温度補償方法の演算結果が適用される静電容量型センサ300の部位31~37(図示していない部位がある)とは、順に同様のものであるので、説明を省略することがある。

【0075】
(静電容量型センサ300の構成)
図11に示すように、静電容量型センサ(センサ)300は、上記静電容量型センサ100と同様の基板31と、絶縁体層32と、第1の電極部33と、第2の電極部34と、ダイアフラム部35と、温度補償リング(温度補償部材)36と、密閉空間37とに加えて、封止リング部(導電部)38を備えているものである。

【0076】
封止リング部38は、金、白金又はチタンなどの金属材料からなり、内径が2R、外径が2Rであって、ダイアフラム部35と第2の電極部34との間に形成され、密閉空間37内部に封止された気体の漏れを防止するものである。ここで、第2の電極部34と封止リング部38との接合は、金-金接合によるものであることが好ましい。封止リング部38の内周面は、凹部31aの内面と、貫通部32aの内周面と、第2の電極部34の内周面と、ダイアフラム部35において封止リング部38が形成されている側の面と共に、密閉空間37を構成しているものである。

【0077】
(静電容量型センサ300の動作)
次に、静電容量型センサ300の動作について説明する。静電容量型センサ300のダイアフラム部35に対して気圧による圧力が印加された場合、ダイアフラム部35は、該圧力に応じて変形する。該変形によって生じた、ダイアフラム部35と第1の電極部33及び第2の電極部34との間の静電容量変化を検出し、圧力の測定を行う。

【0078】
(本実施形態に係るセンサにおける温度補償方法の各演算工程)
次に、図12~図14を参照しながら、静電容量型センサにおける温度補償方法の各演算工程について説明する。なお、第1実施形態に係る温度補償方法の各演算工程S2~S17と、本実施形態に係る温度補償方法の各演算工程S302~S317とは、順に同様のものであるので、ここでは、演算工程S301についてのみ詳細な説明を行う。

【0079】
まず、演算工程S301において、Timoshenkoの対称円板理論に基づいて、封止リング部38、ダイアフラム部35、及び、温度補償リング36の各中心軸を一致させた状態で構成された複合円板を、ダイアフラム部35の中心軸を基準として、半径が0からRまでの部分で構成された第1区域(1)と、ダイアフラム部35及び温度補償リング36の中心軸を基準として、半径がRからRまでの部分で構成された第2区域(2)と、封止リング部38、ダイアフラム部35、及び、温度補償リング36の中心軸を基準として、半径がRからRまでの部分で構成された第3区域(3)に分解する。

【0080】
そして、演算工程S302~S317を順に行い、静電容量型センサにおける温度補償方法の各演算工程が終了する。

【0081】
上記構成によれば、パラメータΔC’を最適化した結果を静電容量型センサ300に適用することで、ダイアフラム部35と第2の電極部34との間を封止リング部38で封止することにより、密閉空間37内部の気体の漏れをより確実に防止できるという効果を享受した静電容量型センサ300においても、ダイアフラム部35と、第1の電極部33及び第2の電極部34との間の静電容量変化を従来よりも高精度に検出することができる。

【0082】
更に、上記構成によれば、パラメータΔC’を最適化した結果を静電容量型センサ300に適用することで、第2の電極部34と封止リング部38との接合が、金-金接合によるものである場合、第2の電極部34と封止リング部38との電気的な接続信頼性を向上させることができるという効果を享受した静電容量型センサ300においても、ダイアフラム部35と、第1の電極部33及び第2の電極部34との間の静電容量変化を従来よりも高精度に検出することができる。

【0083】
<第4実施形態>
次に、図15~図18を用いて、本発明の第4実施形態に係るセンサにおける温度補償方法について説明する。なお、第1実施形態に係る温度補償方法の演算結果が適用される静電容量型センサ100の部位1~7と、本実施形態に係る温度補償方法の演算結果が適用される静電容量型センサ400の部位41~47(図示していない部位がある)とは、順に同様のものであるので、説明を省略することがある。

【0084】
(静電容量型センサ400の構成)
図15に示すように、静電容量型センサ(センサ)400は、上記静電容量型センサ100と同様の基板41と、絶縁体層42と、第1の電極部43と、第2の電極部44と、ダイアフラム部45と、温度補償リング(温度補償部材)46と、密閉空間47とに加えて、封止リング部48及び第2のバリアメタル層49を備えているものである。

【0085】
封止リング部48は、金からなり、ダイアフラム部45と第2の電極部44との間、より具体的には、第2の電極部44において絶縁体層42が形成されている側の面と反対側の面に形成されており、密閉空間47内部に封止された気体の漏れを防止するものである。

【0086】
第2のバリアメタル層49は、少なくとも白金を含むものであって、内径が2R、外径が2Rであって、ダイアフラム部45と封止リング48との間において封止リング48と同じくリング状に形成されており、封止リング48に最も近い白金からなる層49aと、ダイアフラム部45に最も近いチタンからなる層(導電部)49bと、の二層からなるものである。第2のバリアメタル層49の内周面は、封止リング部48の内周面、凹部41aの内面、貫通部42aの内周面、第2の電極部44の内周面、ダイアフラム部45において第2のバリアメタル層49が形成されている側の面と共に、密閉空間47を構成しているものである。

【0087】
(静電容量型センサ400の動作)
次に、静電容量型センサ400の動作について説明する。静電容量型センサ400のダイアフラム部45に対して気圧による圧力が印加された場合、ダイアフラム部45は、該圧力に応じて変形する。該変形によって生じた、ダイアフラム部45と第1の電極部43及び第2の電極部44との間の静電容量変化を検出し、圧力の測定を行う。

【0088】
(本実施形態に係るセンサにおける温度補償方法の各演算工程)
次に、図16~図18を参照しながら、静電容量型センサにおける温度補償方法の各演算工程について説明する。なお、第1実施形態に係る補償方法の各演算工程S2~S17と、本実施形態に係る補償方法の各演算工程S402~S417とは、順に同様のものであるので、ここでは、演算工程S401についてのみ詳細な説明を行う。

【0089】
まず、演算工程S401において、Timoshenkoの対称円板理論に基づいて、第2のバリアメタル層49においてダイアフラム部45に最も近い層49b、ダイアフラム部45、及び、温度補償リング46の各中心軸を一致させた状態で構成された複合円板を、ダイアフラム部45の中心軸を基準として、半径が0からRまでの部分で構成された第1区域(1)と、ダイアフラム部45及び温度補償リング46の中心軸を基準として、半径がRからRまでの部分で構成された第2区域(2)と、第2のバリアメタル層49においてダイアフラム部45に最も近い層49b、ダイアフラム部45、及び、温度補償リング46の中心軸を基準として、半径がRからRまでの部分で構成された第3区域(3)に分解する。

【0090】
そして、演算工程S402~S417を順に行い、静電容量型センサにおける温度補償方法の各演算工程が終了する。

【0091】
上記構成によれば、パラメータΔC’を最適化した結果を静電容量型センサ400に適用することで、第2のバリアメタル層49においてバリアメタルの効果を享受した静電容量型センサ400においても、ダイアフラム部45と、第1の電極部43及び第2の電極部44との間の静電容量変化を従来よりも高精度に検出することができる。

【0092】
更に、上記構成によれば、パラメータΔC’を最適化した結果を静電容量型センサ400に適用することで、第2の電極部44と封止リング部48との接合が、金-金接合によるものである場合、第2の電極部44と封止リング部48との電気的な接続信頼性を向上させることができるという効果を享受した静電容量型センサ400においても、ダイアフラム部45と、第1の電極部43及び第2の電極部44との間の静電容量変化を従来よりも高精度に検出することができる。

【0093】
<第5実施形態>
次に、図19~図22を用いて、本発明の第5実施形態に係るセンサにおける温度補償方法の演算プログラム、及び、該演算プログラムを演算処理する演算処理装置について説明する。

【0094】
(演算処理装置500の構成)
図19に示すように、パーソナルコンピュータ(演算処理装置)500は、画像を表示するディスプレイ51、コマンドや数値等を入力するキーボード52、及び、制御装置53を備えているものである。

【0095】
制御装置53は、パーソナルコンピュータ500内の各装置を制御するCPU54、ハードディスク55、及び、ドライブ装置56を有しているものである。ドライブ装置56には、CD-ROM57が着脱可能に装着される。

【0096】
(演算処理装置500の動作)
CD-ROM57がドライブ装置56に装着された後、キーボード52を介して入力される指示に応答して、CD-ROM57に保存されたプログラム(本実施形態に係る演算プログラム)がハードディスク55にダウンロードされる。

【0097】
(本実施形態に係る演算処理装置の各演算工程)
次に、図20~図22を参照しながら、本実施形態に係る演算処理装置の各演算工程について説明する。図20~図22に示す各演算工程は、CPU54 が、ハードディスク55に格納されたプログラムを実行することによって実現される。なお、本実施形態では、第1実施形態に係る温度補償方法の各演算工程S1~S17と同様の工程S501~S517が順に行われる。

【0098】
上記構成によれば、パーソナルコンピュータ500において、本実施形態に係る演算プログラムが具体的に実行されることで、第1実施形態と同様の効果を享受することができる。

【0099】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。例えば、図23に示すように、上記静電容量型センサ400と同様の基板61と、絶縁体層62と、第1の電極部63と、第2の電極部64と、ダイアフラム部65と、温度補償リング66と、封止リング部68と、第2のバリアメタル層69(69a,69b)とを備えた静電容量型センサ600において、少なくとも白金を含むものであって、第2の電極部64と絶縁体層62との間において第2の電極部64と同じくリング状に形成されており、絶縁体層62に最も近いチタンからなる層60aと、第2の電極部64に最も近い白金からなる層60bと、の二層からなる第1のバリアメタル層60を形成してもよい。ここでは、第1のバリアメタル層60の内周面は、第2のバリアメタル層69の内周面、封止リング部68の内周面、凹部61aの内面、貫通部62aの内周面、第2の電極部64の内周面、ダイアフラム部65において第2のバリアメタル層69が形成されている側の面と共に、密閉空間67を構成しているものである。これにより、パラメータΔC’を最適化した結果を静電容量型センサ600に適用することで、第1のバリアメタル層60においてバリアメタルの効果を享受した静電容量型センサ600においても、ダイアフラム部65と、第1の電極部63及び第2の電極部64との間の静電容量変化を従来よりも高精度に検出することができる。

【0100】
なお、上述した第1~第5実施形態では、ダイアフラム部に最も近い層、ダイアフラム部、及び、温度補償リングで構成された三層からなる複合円板に、Timoshenkoの対称円板理論を適用して、ダイアフラム部の変形の補償程度を判断可能なパラメータΔC’を得る例について述べたが、各実施形態はこれに限定されず、ダイアフラム部に最も近い層、ダイアフラム部、及び、温度補償リングで構成された三つの層に、ダイアフラム部に最も近い層、ダイアフラム部、及び、温度補償リング以外の層を追加した四層以上からなる複合円板に、Timoshenkoの対称円板理論を適用して、ダイアフラム部の変形の補償程度を判断可能なパラメータΔC’を得てもよい。

【0101】
なお、上述した第4実施形態では、第2のバリアメタル層49を、封止リング48に最も近い白金からなる層49aと、ダイアフラム部45に最も近いチタンからなる層49bと、の複数層で構成する例について述べたが、本実施形態はこれに限定されず、図24に示すように、上記静電容量型センサ400と同様の基板71と、絶縁体層72と、第1の電極部73と、第2の電極部74と、ダイアフラム部75と、温度補償リング76と、密閉空間77と、封止リング部78とを備えた静電容量型センサ700において、第2のバリアメタル層を、白金からなる層79aのみからなる単層で構成してもよい。この場合にあっては、第4実施形態と同様に、上記の演算工程S401(図16参照)において、Timoshenkoの対称円板理論に基づいて、層79a、ダイアフラム部75、及び、温度補償リング76の各中心軸を一致させた状態で構成された複合円板を、ダイアフラム部75の中心軸(半径rが0の位置)を基準として、半径が0からRまでの部分で構成された第1区域(1)と、ダイアフラム部75及び温度補償リング76の中心軸を基準として、半径がRからRまでの部分で構成された第2区域(2)と、層79a、ダイアフラム部75、及び、温度補償リング76の中心軸を基準として、半径がRからRまでの部分で構成された第3区域(3)に分解される。

【0102】
なお、上述した第1実施形態では、温度補償リング6を、ダイアフラム部5における第2の電極部4が形成されている側の面と反対側の面においてリング状に形成する例について述べたが、本実施形態はこれに限定されず、一例として、図25(a),(b)に示すように、上記静電容量型センサ100と同様の基板81と、絶縁体層82と、第1の電極部83と、第2の電極部84と、ダイアフラム部85と、密閉空間87とを備えた静電容量型センサ800において、略直方体状の温度補償部材86を、ダイアフラム部85における第2の電極部84が形成されている側の面と反対側の面において、ダイアフラム部85の周方向に沿って90°毎に配置してもよい。この例では、図25(a)に示すように、温度補償部材86の径方向外側の端面は、基板81及び絶縁体層82の積層方向から見た際に、ダイアフラム部85の外周面(図中の太線部分)と同一形状に形成されている。なお、温度補償部材86は、温度補償に最適な状態であれば、どのような位置に配置されるものでもよく、どのような形状を有するものでもよい。その他の実施形態(第2~第4実施形態)に係る静電容量型センサ200~400についても同様である。

【0103】
なお、上述した第1実施形態では、温度補償リング6を、ダイアフラム部5における第2の電極部4が形成されている側の面と反対側の面に形成する例について述べたが、本実施形態はこれに限定されず、一例として、図26(a),(b)に示すように、上記静電容量型センサ100と同様の基板91と、絶縁体層92と、第1の電極部93と、第2の電極部94と、ダイアフラム部95と、密閉空間97とを備えたピエゾ抵抗型物理量センサ(センサ)900において、略直方体状の温度補償部材96及びピエゾ素子98を、ダイアフラム部95における第2の電極部94が形成されている側の面と反対側の面において、ダイアフラム部95の周方向に沿って90°毎に配置してもよい。この例では、図26(a)に示すように、温度補償部材96及びピエゾ素子98の径方向外側の端面は、基板91及び絶縁体層92の積層方向から見た際に、ダイアフラム部95の外周面(図中の太線部分)と同一形状に形成されている。上記ピエゾ抵抗型物理量センサ900は、ダイアフラム部95の歪みに応じて抵抗値が変化するピエゾ素子98を用いて、ダイアフラム部95に印加された圧力値を検出するものである。なお、この抵抗値変化は、第1の電極部93と第2の電極部94の各出力に基づいて検出可能である。また、ピエゾ素子98の材料には、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの圧電材料を使用できる。その他の実施形態(第2~第4実施形態)についても同様である。

【0104】
また、上述した第1~第5実施形態においては、導電部(電極部)を円形のリング状とし、ダイアフラム部を円形状とし、温度補償部材を温度補償リングとして、各形状が対応するように形成しているが、これらの組み合わせに限られない。例えば、上記密閉空間内に封止されている気体の熱膨張に起因したダイアフラム部の変形を補償するように、導電部(電極部)及び温度補償部材を四角のリング状、ダイアフラム部を四角形状として、各形状が対応するように形成してもよい。当然、上記密閉空間内に封止されている気体の熱膨張に起因したダイアフラム部の変形を補償するように形成されていれば、導電部、ダイアフラム部及び温度補償部材はどのような形状であってもよい。
【符号の説明】
【0105】
1、21、31、41、61、71、81、91 基板
100、200、300、400、600、700、800 静電容量型センサ(センサ)
1a、21a、31a、41a、61a 凹部
2、22、32、42、62、72、82、92 絶縁体層
2a、2b、22a、32a、42a、62a 貫通部
3、23、33、43、63、73、83、93 第1の電極部
4、24、34、44、64、74、84、94 第2の電極部
5、25、35、45、65、75、85、95 ダイアフラム部
6、26、36、46、66、76 温度補償リング(温度補償部材)
7、27、37、47、67、77、87、97 密閉空間
28、28a、28b、60、60a、60b 第1のバリアメタル層
38、48、68、78 封止リング部
49、49a、49b、69、69a、69b、79a 第2のバリアメタル層
51 ディスプレイ
52 キーボード
53 制御装置
54 CPU
55 ハードディスク
56 ドライブ装置
57 CD-ROM
86、96 温度補償部材
98 ピエゾ素子
500 パーソナルコンピュータ(演算処理装置)
900 ピエゾ抵抗型物理量センサ(センサ)
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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