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明細書 :発酵能を有する細菌を用いた多能性細胞の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6040494号 (P6040494)
登録日 平成28年11月18日(2016.11.18)
発行日 平成28年12月7日(2016.12.7)
発明の名称または考案の名称 発酵能を有する細菌を用いた多能性細胞の製造方法
国際特許分類 C12N   5/074       (2010.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12N   5/09        (2010.01)
C12N   1/20        (2006.01)
FI C12N 5/074
C12N 5/10
C12N 5/09
C12N 1/20 E
請求項の数または発明の数 12
全頁数 21
出願番号 特願2013-523947 (P2013-523947)
出願日 平成24年7月10日(2012.7.10)
国際出願番号 PCT/JP2012/067544
国際公開番号 WO2013/008803
国際公開日 平成25年1月17日(2013.1.17)
優先権出願番号 2011152479
2012107210
優先日 平成23年7月11日(2011.7.11)
平成24年5月9日(2012.5.9)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成27年6月22日(2015.6.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
発明者または考案者 【氏名】太田 訓正
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】上條 肇
参考文献・文献 特開平09-030981(JP,A)
特表2010-537666(JP,A)
特開2005-154387(JP,A)
特開2005-097280(JP,A)
特開2004-248505(JP,A)
特公昭49-046053(JP,B1)
国際公開第2007/027156(WO,A1)
国際公開第2010/069920(WO,A1)
国際公開第2004/087218(WO,A1)
国際公開第99/064023(WO,A1)
国際公開第2007/026255(WO,A2)
国際公開第2004/016772(WO,A1)
国際公開第02/097065(WO,A2)
新村出編,広辞苑,岩波書店,1998年,第五版,p.2156
調査した分野 C12N 5/07 - 5/10
C12N 1/20
A61K 35/74
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
CiNii

JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
体細胞に、Lactococcus属、Streptococcus属、又はLactobacillus属の乳酸菌をインビトロで感染させる工程を含む、体細胞から多能性細胞を製造する方法。
【請求項2】
体細胞が、哺乳類動物の体細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
体細胞がヒト又はマウスの体細胞である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
体細胞が、がん細胞である、請求項1から3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
乳酸菌が、Lactococcus lactis subsp. Lactis、Streptococcus salivarius subsp. thermophilus、Lactobacillus sp.、又はLactobacillus acidophilusである、請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
体細胞に、Lactococcus属、Streptococcus属、又はLactobacillus属の乳酸菌をインビトロで感染させる前に、体細胞をトリプシン処理する工程を含む、請求項1からの何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
以下の工程を含む、多能性細胞から分化誘導された体細胞を製造する方法。
(a)請求項1からの何れかに記載の方法により多能性細胞を製造する工程;及び
(b)工程(a)で得られた多能性細胞を分化誘導する工程。
【請求項8】
がん細胞に、Lactococcus属、Streptococcus属、又はLactobacillus属の乳酸菌をインビトロで感染させる工程を含む、がん細胞から非がん細胞を製造する方法。
【請求項9】
がん細胞がヒトのがん細胞である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
乳酸菌が、Lactococcus lactis subsp. Lactis、Streptococcus salivarius subsp. thermophilus、Lactobacillus sp.、又はLactobacillus acidophilusである、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
がん細胞に、Lactococcus属、Streptococcus属、又はLactobacillus属の乳酸菌インビトロで感染させる工程、及びがん細胞から非がん細胞への転換の程度を測定する工程を含む、乳酸菌由来の抗がん成分をスクリーニングする方法。
【請求項12】
乳酸菌が、Lactococcus lactis subsp. Lactis、Streptococcus salivarius subsp. thermophilus、Lactobacillus sp.、又はLactobacillus acidophilusである、請求項11に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵能を有する細菌を用いた多能性細胞の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ES細胞は、胚性幹細胞と呼ばれ、1981年にはマウスの胚から、1998年にはヒトの胚から発見された。ES細胞は胎盤を構成する細胞以外のさまざまな種類の細胞に変化する能力(多能性)を持つ細胞として、組織や器官を構築する研究が主に行われてきた。しかしながら、ES細胞は順調に成長すれば生命になる受精卵を利用しているため、倫理的に大きな問題を抱えている。もうひとつの大きな問題として、拒絶の問題がある。ES細胞を元に作製した分化細胞や臓器を患者に移植しても、免疫系はこれらを非自己と認識し攻撃する可能性がある。
【0003】
これらES細胞の問題を解決するために、京都大学の山中伸弥教授のグループは、通常は他の機能を持つ細胞に分化しない皮膚細胞からさまざまな種類の細胞に変化する能力を持つ細胞を開発し、iPS細胞と名付けた。山中ファクターと呼ばれる4つの因子(Oct 3/4, Sox2, Klf4,c-Myc)をマウスやヒトの皮膚細胞にレトロウイルスベクターを使って導入すると、細胞の初期化がおこり、ES細胞と同じく多能性を持つ細胞が作り出せることを示した[非特許文献1(Takahashi and Yamanaka, Cell 126, 663-676, 2006); 及び非特許文献2(Takahashi et al., Cell 131, 861-872, 2007)]。この時に用いる細胞は、患者自身の分化した皮膚などの体細胞に由来するため、iPS細胞から分化させた細胞を患者に移植しても免疫系はその臓器を自己と認識し移植が拒絶されることはない。iPS細胞の発見によりES細胞が抱えていた「生命倫理」という問題がクリアされた。
【0004】
上記の通り、iPS細胞は再生医療の切り札として世界的に注目されているが、細胞が癌化してしまうという技術的な問題が残されている。癌化の原因のひとつは、細胞に導入したc-Myc遺伝子によるものだが、最近ではc-Myc遺伝子を除く3つの因子でもiPS細胞が作製された。また、遺伝子の細胞への導入もレトロウイルスを使うのではなく、アデノウイルスやプラスミドを用いてiPS細胞を作製することで、より安全で実用化に近いiPS細胞の作製に一歩近づいた。しかし、人工的にいくつかの遺伝子を、細胞分化を終えた細胞に強制発現させる手法をとることから、将来、これらの細胞が癌化する可能性は否定できない。
【0005】
他方、特許文献1には、マィコバクテリウム・レプラエ菌またはその成分を用いて、再ブログラミングされた胚幹細胞(ES)様細胞を産生する方法が記載されている。即ち、特許文献1には、マイコバクテリウム・レプラエ菌またはその成分を、成人の分化細胞に接触させることを含む、再プログラミングされた ES 様細胞を産生する方法、この方法によって産生された細胞が記載されている。しかしながら、マイコバクテリウム・レプラエ菌はらい菌であり、再生医療への応用には安全性の懸念がある。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Takahashi and Yamanaka, Cell 126, 663-676, 2006
【非特許文献2】Takahashi et al., Cell 131, 861-872, 2007
【0007】

【特許文献1】米国特許出願公開US 2006/0222636 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の通り、受精卵が胎児に発達する過程で採取できるES(Embryonic Stem)細胞や自分自身の体から採取されるiPS(induced pluripotent Stem)細胞は、将来ほとんどの組織になり得る多能性幹細胞である。これらの細胞は難病の克服への応用に期待されているが、それぞれ倫理性の問題と癌化への危険性という大きな問題を抱えている。本発明は、細胞の癌化の問題がなく、かつ再生医療への応用において安全性が高い多能性細胞の製造方法を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決するために乳酸菌や納豆菌などの発酵能を有する細菌に着目し、発酵能を有する細菌と細胞との関係を調べた。即ち、本発明者は、細胞分化を終えたヒト皮膚細胞(Human Dermal Fibroblasts, CELLAPPLICATIONS, INC. Cat No.106-05a)に乳酸菌[Lactococcus lactis subsp.lactis(理化学研究所バイオリソースセンター 微生物材料開発室;JCM20101)、Streptococcus salivarius subsp. thermophilus (JCM20026)、Lactobacillus sp.(JCM20061)]又は納豆菌をそれぞれ感染させると、ES細胞やiPS細胞のように細胞塊を形成し、アルカリホスファターゼ染色法で染色されることを確認した。また、これらの細胞塊は、ES細胞やiPS細胞に特異的に発現するマーカー分子(SSEA-4)を発現していた。さらに、これらの細胞塊を分化させたところ、中胚葉や外胚葉由来の細胞へと分化した。通常、私たちの体に存在する乳酸菌により誘導された多能性幹細胞を用いることにより、倫理性や癌化といった問題を克服でき、かつ再生医療への応用において安全性が高い多能性細胞を製造することができる。本発明の方法で製造される多能性細胞は、再生医療の材料として、これまで治療法のなかった病気の治療に貢献できる。さらに本発明では、1970年にマーギュリスが提唱した細胞内共生説(嫌気性真核生物が好気性細菌を飲み込むことにより共生し、現在の真核細胞へと進化した)を実験的に検証することで、細菌を飲み込むことにより細胞内にミトコンドリアや葉緑体といった独自にエネルギーを生み出す小器官をもつ真核細胞の起源の解明が期待できる。本発明は上記の知見に基づいて完成したものである。
【0010】
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1) 体細胞に、発酵能を有する細菌、その成分又はその分泌物を接触させる工程を含む、体細胞から多能性細胞を製造する方法。
(2) 体細胞が、哺乳類動物の体細胞である、(1)に記載の方法。
(3) 体細胞がヒト又はマウスの体細胞である、(1)又は(2)に記載の方法。
(4) 体細胞が、がん細胞である、(1)から(3)の何れか1項に記載の方法。
(5) 発酵能を有する細菌が、乳酸菌、又は納豆菌である、(1)から(4)の何れか1項に記載の方法。
(6) 乳酸菌が、Lactococcus属、Streptococcus属、又はLactobacillus属の乳酸菌である、(5)に記載の方法。
(7) 乳酸菌が、Lactococcus lactis subsp. Lactis、Streptococcus salivarius subsp. thermophilus 、Lactobacillus sp.、又はLactobacillus acidophilus である、(6)に記載の方法。
(8) 体細胞に、発酵能を有する細菌、その成分又はその分泌物を接触させる工程が、体細胞に、発酵能を有する細菌、その成分又はその分泌物を感染させる工程である、(1)から(7)の何れか1項に記載の方法。
(9) 体細胞に、発酵能を有する細菌、その成分又はその分泌物を接触させる前に、体細胞をトリプシン処理する工程を含む、(1)から(8)の何れか1項に記載の方法。
(10) (1)から(9)の何れかに記載の方法により得ることができる多能性細胞。
(11) 以下の工程を含む、多能性細胞から分化誘導された体細胞を製造する方法。
(a)(1)から(9)の何れかに記載の方法により多能性細胞を製造する工程;及び
(b)工程(a)で得られた多能性細胞を分化誘導する工程。
(12) (11)に記載の方法により得ることができる、多能性細胞から分化誘導された体細胞。
(13) 発酵能を有する細菌、その成分又はその分泌物を含む、体細胞から多能性細胞を製造するためのキット。
(14) がん細胞に、発酵能を有する細菌、その成分又はその分泌物を接触させる工程を含む、がん細胞から非がん細胞を製造する方法。
(15) がん細胞がヒトのがん細胞である、(14)に記載の方法。
(16) 発酵能を有する細菌が、乳酸菌、又は納豆菌である、(14)又は(15)に記載の方法。
(17) 乳酸菌が、Lactococcus属、Streptococcus属、又はLactobacillus属の乳酸菌である、(16)に記載の方法。
(18) 乳酸菌が、Lactococcus lactis subsp. Lactis、Streptococcus salivarius subsp. thermophilus 、Lactobacillus sp.、又はLactobacillus acidophilus である、(17)に記載の方法。
(19) がん細胞に、発酵能を有する細菌、その成分又はその分泌物を接触させる工程が、がん細胞に、発酵能を有する細菌、その成分又はその分泌物を感染させる工程である、(14)から(18)の何れか1項に記載の方法。
(20) (14)から(19)の何れかに記載の方法により得ることができる非がん細胞。
(21) 乳酸菌、その成分又はその分泌物を含む、抗がん剤。
(22) 乳酸菌が、Lactococcus属、Streptococcus属、又はLactobacillus属の乳酸菌である、(21)に記載の抗がん剤。
(23) 乳酸菌が、Lactococcus lactis subsp. Lactis、Streptococcus salivarius subsp. thermophilus 、Lactobacillus sp.、又はLactobacillus acidophilus である、(21)又は(22)に記載の抗がん剤。
(24) がん細胞に、乳酸菌、その成分又はその分泌物を接触させる工程、及びがん細胞から非がん細胞への転換の程度を測定する工程を含む、乳酸菌由来の抗がん成分をスクリーニングする方法。
(25) 乳酸菌が、Lactococcus属、Streptococcus属、又はLactobacillus属の乳酸菌である、(24)に記載の方法。
(26) 乳酸菌が、Lactococcus lactis subsp. Lactis、Streptococcus salivarius subsp. thermophilus 、Lactobacillus sp.、又はLactobacillus acidophilus である、(24)又は(25)に記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、人体に存在して細胞と共存している乳酸菌などの発酵能を有する細菌を体細胞に感染させることにより多能性幹細胞を製造することができる。本発明の方法においては、人工的な遺伝子の導入操作は全く必要としないことから、製造される多能性細胞の癌化の可能性は正常状態とほとんど差がないと言える。本発明による乳酸菌などの発酵能を有する細菌を用いた多能性細胞の製造方法は、医療分野(創薬研究、並びに医薬品の安全性、有効性及び副作用の試験)、疾患研究(難病の原因解明、治療法や予防法の開発)、再生医療(神経、血管、臓器の機能修復)、並びに食品分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、乳酸菌と一緒に培養したHDF細胞を示す。
【図2】図2は、HDF細胞に乳酸菌を感染させ、形成した細胞塊をアルカリファスファターゼ発色液で染色した結果を示す。
【図3】図3は、HDF細胞に乳酸菌を感染させ、形成した細胞塊を抗SSEA-4(MILLIPORE)抗体で染色した結果を示す。
【図4】図4は、HDF細胞に乳酸菌を感染させ、その細胞塊由来のcDNAについてRT-PCRを行った結果を示す。
【図5】図5は、HDF細胞に乳酸菌またはLactobacillus spを感染させた後、細胞塊を長期間維持できるか検討した結果を示す。
【図6】図6は、HDF細胞に乳酸菌を感染させ、抗α-SMA抗体(血管マーカー)、抗Desmin抗体 (中胚葉マーカー)、抗Tuj1抗体(神経細胞マーカー)、抗GFAP抗体(グリア細胞マーカー)で染色した結果を示す。
【図7】図7は、HDF細胞に乳酸菌を感染させた後、骨細胞、脂肪細胞又は軟骨細胞に分化誘導をうながす培養液を用いて培養した結果を示す。
【図8】図8は、HDF細胞に乳酸菌を感染させたあとの細胞塊を電子顕微鏡で観察した結果を示す。
【図9】図9は、コントロールのHDF細胞(C-HDF)と、乳酸菌を感染させたHDF細胞(Bala-HDF)からtRNAを精製し、マイクロアレイ遺伝子発現解析を行った結果を示す。
【図10】図10は、HDF細胞に乳酸菌を感染させた後、SCIDマウスの片側精巣に投与して、奇形種の形成を3ヶ月後に調べた結果を示す。
【図11】図11は、E12.5 のGFP マウスからMouse Embryonic Fibroblasts 細胞を単離し、乳酸菌(JCN1021)を感染させ,5日間培養した結果を示す。
【図12】図12は、乳がん細胞(MCF7)、肝がん細胞(HepG2)、肺がん細胞(A549)に乳酸菌(JCM1021)を感染させ4 日間培養した結果を示す。
【図13】図13は、肝がん細胞(HepG2)、乳がん細胞(MCF7)にヨーグルトを加え、9日間培養した結果を示す。
【図14】図14は、肝がん細胞(HepG2) に乳酸菌(JCM1021)を感染させた後、4、8、12日目に細胞を回収し、がん細胞のマーカーであるc-Myc とCEA を用いてRT-PCR を行った結果を示す。
【図15】図15は、肺がん細胞(A549)の細胞塊を作製し、ヌードマウス(8週齢のメス)の皮下に移植し、約1ヶ月後に腫瘍が形成される結果を示す。
【図16】図16は、腫瘍を皮下に移植して40日後、取り出して 重さを計測した結果を示す。コントロールは乳酸菌( JCM1021 )の非存在下で、乳酸菌3回は乳酸菌(2 x 108 in 0.2 ml)の存在下で腫瘍を移植後、3日と6日目に乳酸菌を注入した。
【図17】図17は、納豆菌又は大腸菌と一緒に培養したHDF細胞を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
本発明による体細胞から多能性細胞を製造する方法は、体細胞に発酵能を有する細菌、その成分又はその分泌物を接触させる工程を含むことを特徴とする。

【0014】
本発明で初期化のために用いる体細胞の種類は特に限定されず、任意の体細胞を用いることができる。即ち、本発明で言う体細胞とは、生体を構成する細胞のうち生殖細胞以外の全ての細胞を包含し、分化した体細胞でもよいし、未分化の幹細胞でもよい。体細胞の由来は、哺乳動物、鳥類、魚類、爬虫類、両生類の何れでもよく特に限定されないが、好ましくは哺乳動物(例えば、マウスなどのげっ歯類、またはヒトなどの霊長類)であり、特に好ましくはヒト又はマウスである。また、ヒトの体細胞を用いる場合、胎児、新生児又は成人の何れの体細胞を用いてもよい。本発明の方法で製造される多能性細胞を再生医療など疾患の治療に用いる場合には、該疾患を患う患者自身から分離した体細胞を用いることが好ましい。また、本発明では体細胞としてがん細胞を用いることができる。がん細胞に、発酵能を有する細菌、その成分又はその分泌物を接触させることによって、がん細胞から非がん細胞を製造することができる。本発明において、体細胞(がん細胞である場合を含む)に、発酵能を有する細菌、その成分又はその分泌物を接触させる工程は、インビトロで行うことができる。

【0015】
本発明で言う多能性細胞とは、所定の培養条件下(具体的には、乳酸菌の存在下)において長期にわたって自己複製能を有し、また所定の分化誘導条件下において多種の細胞(外胚葉系の細胞、中胚葉系の細胞、又は内胚葉系の細胞など)への多分化能を有する細胞(このような細胞のことは、幹細胞とも称する)のことを言う。

【0016】
本発明では、体細胞に、発酵能を有する細菌、その成分又はその分泌物を接触させる。
本発明で用いる発酵能を有する細菌の種類は特に限定されず、乳酸菌、納豆菌などの好気性細菌でもよいし、ビフィズス菌などの嫌気性細菌でもよい。
本発明で用いる乳酸菌の種類は特に限定されない。乳酸菌とは、発酵によって糖類から乳酸を産生する能力を有する菌の総称である。代表的な乳酸菌としては、ラクトバシラス属 (Lactobacillus) 、ビフィドバクテリウム属 (Bifidobacterium)、エンテロコッカス属 (Enterococcus) 、ラクトコッカス属 (Lactococcus) 、ペディオコッカス属(Pediococcus)、リューコノストック属 (Leuconostoc) 、ストレプトコッカス属(Streptococcus)などに属する乳酸菌が挙げられ、本発明においてもこれらの乳酸菌を使用することができる。好ましくは、Lactococcus属、Streptococcus属、又はLactobacillus属の乳酸菌を使用することができる。乳酸菌としては、特に好ましくは、Lactococcus lactis subsp. Lactis、Streptococcus salivarius subsp. thermophilus 、Lactobacillus sp.、又はLactobacillus acidophilusを使用することができる。

【0017】
発酵能を有する細菌の成分としては、細胞壁、核酸、タンパク質、細胞内小器官、脂質、糖、炭水化物、糖脂質、グリコシル化された糖などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。

【0018】
本発明においては、細胞培養用の通常の培地を用いて発酵能を有する細菌の存在下において培養を行うことにより、本発明の多能性細胞又は非がん細胞を分離及び培養することができる。本発明の多能性細胞を培養するための培地には、必要に応じて、各種の成長因子、サイトカイン、ホルモンなど(例えば、FGF-2、TGFβ-1、アクチビンA、ノギン(Nanoggin)、BDNF、NGF、NT-1、NT-2、NT-3等のヒトES細胞の増殖・維持に関与する成分)を添加してもよい。また、分離された多能性細胞の分化能及び増殖能は、ES細胞について知られている確認手段を利用することにより確認することができる。

【0019】
本発明の方法で製造される多能性細胞及び非がん細胞の用途は特に限定されず、各種の試験・研究や疾病の治療などに使用することができる。例えば、本発明の方法により得られた多能性細胞をレチノイン酸、EGFなどの増殖因子、又はグルココルチコイドなどで処理することにより、所望の分化細胞(例えば神経細胞、心筋細胞、肝細胞、膵臓細胞、血球細胞など)を誘導することができ、そのようにして得られた分化細胞を患者に戻すことにより自家細胞移植による幹細胞療法を達成することができる。

【0020】
本発明の多能性細胞を用いて治療を行うことができる中枢神経系の疾患としてはパーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、脳梗塞、脊髄損傷などが挙げられる。パーキンソン病の治療のためには、多能性細胞をドーパミン作動性ニューロンへと分化しパーキンソン病患者の線条体に移植することができる。ドーパミン作動性ニューロンへの分化はマウスのストローマ細胞株であるPA6細胞と本発明の多能性細胞を無血清条件で共培養することで進めることができる。アルツイハイマー病、脳梗塞、脊髄損傷の治療においては本発明の多能性細胞を神経幹細胞に分化誘導した後に、傷害部位に移植することができる。

【0021】
また、本発明の多能性細胞は肝炎、肝硬変、肝不全などの肝疾患の治療に用いることができる。これら疾患を治療するには、本発明の多能性細胞を肝細胞あるいは肝幹細胞に分化し移植することができる。本発明の多能性細胞をアクチビンA存在下で5日間培養し、その後肝細胞増殖因子(HGF)で1週間程度培養することで肝細胞あるいは肝幹細胞を取得することができる。

【0022】
さらに本発明の多能性細胞はI型糖尿病などのすい臓疾患の治療に用いることができる。I型糖尿病の場合には、本発明の多能性細胞を膵臓β細胞に分化させ、膵臓に移植することができる。本発明の多能性細胞を膵臓β細胞に分化させる方法は、ES細胞を膵臓β細胞に分化させる方法に準じて行うことができる。

【0023】
さらに本発明の多能性細胞は虚血性心疾患に伴う心不全の治療に用いることができる。心不全の治療には、本発明の多能性細胞を心筋細胞に分化させた後に傷害部位に移植することが好ましい。本発明の多能性細胞は胚様体を形成させる3日前よりノギンを添加し培地中に添加することで、胚様体形成後2週間程度で心筋細胞を得ることができる。

【0024】
また、本発明によれば、がん細胞に、乳酸菌などの発酵能を有する細菌、その成分又はその分泌物を接触させることによって、がん細胞から非がん細胞を製造することができる。従って、乳酸菌、その成分又はその分泌物は抗がん剤として有用であり、乳酸菌、その成分又はその分泌物を含む抗がん剤を提供することができる。

【0025】
さらに、本発明によれば、がん細胞に、乳酸菌、その成分又はその分泌物を接触させ、がん細胞から非がん細胞への転換の程度を測定することによって、乳酸菌由来の抗がん成分をスクリーニングすることができる。上記スクリーニングによって同定される乳酸菌由来の抗がん成分は、抗がん剤として有用である。

【0026】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
実施例1
10cmシャーレでHDF細胞(Human Dermal Fibroblasts, CELL APPLICATIONS, INC. Cat No.106-05a)をFibroblast Growth Medium(CELL APLICATION INC.)で培養した。10mlのCMF(Ca2+ Mg2+フリーバッファー)で細胞を洗浄した。0.25%トリプシン溶液(1mM EDTA含)を1ml加えて全体にいきわたらせた。細胞をCO2インキュベーター(37℃)に5分間入れた。トリプシン阻害溶液(CELL APLICATION INC.)3mlを加え懸濁し、細胞数をカウントした。あらかじめ6 well plate に1 wellあたり7 x 107の乳酸菌[Lactococcus lactis subsp. Lactis (JCM20101)、Streptococcus salivarius subsp. thermophilus (JCM20026)、Lactobacillus sp. (JCM20061)、Lactobacillus acidophilus (JCM1021)]を各々入れておき、HDF細胞(5 x 105/2 ml)を加えた。乳酸菌は理化学研究所バイオリソースセンター 微生物材料開発室から購入したものを使用した。細胞をそのまま34℃、5% CO2インキュベータで培養した。
その結果、数日後には細胞塊が観察でき、図1の写真は培養してから8日後のものを示す。
【実施例】
【0028】
実施例2
6 well plate内で、HDF細胞(5 x 105/2 ml)に乳酸菌[Lactococcus lactis subsp. Lactis (JCM20101)、Streptococcus salivarius subsp. thermophilus (JCM20026)、Lactobacillus sp. (JCM20061)]を各々感染させ(7 x 107)、34℃、5% CO2インキュベータで8日間培養後、細胞塊を4 well plateに移し、アルカリファスファターゼ発色液(Roche)に入れ、室温で1時間発色させた。
その結果、図2に示すように細胞塊が紫色に発色したことから、乳酸菌を感染させたHDF細胞が多能性を有することが示唆された。
【実施例】
【0029】
実施例3
6 well plate内で、HDF細胞(5 x 105/2 ml)に乳酸菌(Lactococcus lactis subsp. Lactis; JCM20101)を感染させ(7 x 107)、34℃、5% CO2インキュベータで8日間培養後、形成された細胞塊を4% PFAで室温15分間固定し、マウス抗SSEA-4(MILLIPORE)抗体で染色した。
その結果、図3に示すように細胞塊は多能性細胞が特異的に発現するSSEA-4抗原を発現していた。
【実施例】
【0030】
実施例4
HDF細胞(2 x 105/ml)を12well plateにまき、乳酸菌(Lactobacillus acidophilus; JCM1021、2 x 107)と感染させ34℃、5% CO2インキュベータで8日間培養した。5日間おきに培養液を半分ずつ交換し、2週間後に形成された細胞塊(20個)からTrizol試薬(Invitrogen)を用いてtRNAを精製した。 Oligo(dT)プライマーとSuperScriptTM III(Invitrogen)を用いてcDNAを合成し、多能性に関与すると報告されているいくつかの遺伝子に対するプライマーセットによりRT-PCR法を行った。2%アガロースゲルを用いて増幅されたDNAを電気泳動し、エチジウムブロマイド染色によりバンドを確認した。
その結果、乳酸菌を感染させた細胞塊では、HDF細胞では発現していないc-Myc、Nanog、Oct3/4、Sox2、TDGF1の発現誘導が観察されたが、REX1、Fgf4、GDF3、ECAT16の発現はみられなかった。
【実施例】
【0031】
実施例5
6 well plate内で、HDF細胞(5 x 105/2 ml)に乳酸菌 (Streptococcus salivarius subsp. thermophilus; JCM20026)または(Lactobacillus sp.; JCM20061)を感染後(2 x 107)、5% CO2インキュベータで培養し、5日おきに培養液を半分ずつ交換し、細胞塊を長期間維持できるか検討した。培養には、乳酸菌を加えたFibroblast Growth Medium(CELL APLICATION INC.)、または、加えないFibroblast Growth Medium(CELL APLICATION INC.)を用いた。左の4枚の写真は培養30日後、右の2枚の写真は培養50日後を示す。
その結果、図5に示すように、乳酸菌の存在下で細胞塊を培養すると50日後も細胞塊は維持できたが、乳酸菌非存在下で培養した細胞塊は細胞死をおこしたことから、細胞塊の維持には乳酸菌が必要であることが示唆された。
【実施例】
【0032】
実施例6
6 well plate内で、HDF細胞(5 x 105/2 ml)に乳酸菌(Lactococcus lactis subsp. Lactis; JCM20101、2 x 107)を感染させ、8日後に形成された細胞塊をポリLリジンとラミニン(Sigma、50μg/ml)でコートしたカバーグラス上で7日間培養した。4% PFAで室温15分間固定後、マウス抗α-SMA抗体(Sigma、血管マーカー)、ウサギ抗Desmin抗体 (Thermo、中胚葉マーカー)、マウス抗Tuj1抗体(R&D、神経細胞マーカー)、ウサギ抗GFAP抗体(Dako、グリア細胞マーカー)で染色した。
その結果、図6に示すように、分化させた後の細胞は各々の抗体で認識されたことから、HDF細胞が様々なタイプの細胞に分化したことが示された。
【実施例】
【0033】
実施例7
6 well plate内で、HDF細胞(5 x 105/2 ml)に乳酸菌(Lactobacillus acidophilus; JCM1021、2 x 107)を感染させ、2週間後に細胞塊を4 well plateに移した。骨細胞(B; AはBの染色後の96 well)、脂肪細胞(C)、軟骨細胞(D)に分化誘導をうながす培養液(GIBCO; A10072-01, A10070-01, A10071-01)を500 ml加え、3日間おきに培養液を半分ずつ交換し、さらに2週間培養した。細胞分化を調べるために、各々のplate内の細胞をAlizarin Red S染色(骨)、Oil Red O染色(脂肪)、Alcian Blue染色(軟骨)により染色した。
その結果、図7に示すように、乳酸菌を感染させた細胞塊はAlizarin Red S染色(骨)、Oil Red O染色(脂肪)、Alcian Blue染色(軟骨)により染色されたことにより、細胞の分化が確認できた。
【実施例】
【0034】
実施例8
6 well plate内で、HDF細胞(5 x 105/2 ml)に乳酸菌(Lactobacillus acidophilus; JCM1021、2 x 107)を感染させ、5日間おきに培養液を半分ずつ交換し、形成された細胞塊を一般的な樹脂包埋超薄切片法により電子顕微鏡で観察した(株式会社 東海電子顕微鏡解析に委託)。
その結果、図8に示すように、乳酸菌(左図の赤矢印)は細胞質内に存在していた。右図は左写真の四角領域の拡大図を示す。
【実施例】
【0035】
実施例9
コントロールのHDF細胞(C-HDF)と乳酸菌(Lactobacillus acidophilus; JCM1021)を感染させたHDF細胞塊(Bala-HDF、20個)からTrizol試薬(Invitrogen)を用いてtRNAを精製し、マイクロアレイ遺伝子発現解析を行った(Agilent Whole Genome (4 x 44K) Human 1色法)。この実験では、細胞塊形成の効率を上げるために、ラクトフェリン(25μg/ml)を加えているので、細胞をBala-HDFと記載した。解析は株式会社Oncomicsに委託した。
【実施例】
【0036】
その結果を図9に示す。
図9-1は遺伝子発現の増減が2倍以上ある遺伝子についてクラスター解析を行った。C-HDFに対してBala-HDFで発現が増加している遺伝子群をグループI、C-HDFに対してBala-HDFで発現量がほとんど変化しない遺伝子群をグループII、C-HDFに対してBala-HDFで発現が減少している遺伝子群をグループIIIとした。図9-2では、幹細胞の多能性に関与すると報告されている遺伝子群に注目して解析を行った。
【実施例】
【0037】
C-HDFに対してBala-HDFで発現が30倍以上上昇している遺伝子は108個存在した。逆に、C-HDFに対してBala-HDFで発現が30倍以上減少している遺伝子は126個存在した(表1)。多能性幹細胞関連の遺伝子としては、C-HDFに対してBala-HDFにおいてNanog遺伝子が8.5倍、Oct3/4遺伝子が2.7倍の発現上昇を示した。注目すべき遺伝子としては、あらゆる動物の体軸に沿った構造の決定に中心的な役割を担っているHox遺伝子群(Homeotic genes)が、C-HDFに対してBala-HDFで発現が30倍以上減少している遺伝子の中に19種類も存在していることである(表1におけるNo.1~4、6、8、10、13、14、17、18、22、35、47、53、59、74、117、121)
【実施例】
【0038】
【表1-1】
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【実施例】
【0039】
【表1-2】
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【実施例】
【0040】
【表1-3】
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【実施例】
【0041】
【表1-4】
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【実施例】
【0042】
【表1-5】
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【実施例】
【0043】
【表1-6】
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【実施例】
【0044】
実施例10
6 well plate内で、HDF細胞(5 x 105/2 ml)に乳酸菌(Lactobacillus acidophilus; JCM1021、2 x 107)を感染させた後、2週間後に細胞塊を集め、トリプシン処理を行い、5 x 105/30 μl細胞をSCIDマウス(オス9-10週令)の片側精巣に投与して、奇形種の形成を3ヶ月後に調べた。
その結果、図10の写真のように、乳酸菌感染細胞を投与した精巣(上)ではコントロールの精巣(下;同一マウス個体の反対側の精巣)と比べて少し大きくはなっていたが、奇形種の形成は確認されなかった。パラフィン切片(6μm)を作製し、HE染色を行った。JCM1021を感染させたHDF細胞を移植した精巣とコントロールの精巣の構造には差が見られなかった。
【実施例】
【0045】
実施例11
理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター作製のマウス胚線維芽細胞(MEF細胞)採取方法に従った。12.5日目胚のGFPマウスを子宮から摘出し、頭部、尾部、四肢および内臓を除去した。手術用ハサミで残った組織を細かく切り刻み、0.25% trypsin-EDTA液に37℃で15分間インキュベートした。セルストレーナーで濾過後、細胞培養液に懸濁し、10cmシャーレ1枚に胎児1匹分の細胞をまいた。コンフルエントになったら、HDF細胞の場合と同様に乳酸菌(JCM1021)を感染させ、5日間培養した。
その結果、図11の写真のように、乳酸菌を感染させたMEF細胞は細胞塊を形成した。
【実施例】
【0046】
実施例12
理化学研究所 バイオリソースセンターから乳がん細胞株(MCF7; RBRC-RCB1904)、肺がん細胞株(A549; RBRC-RCB0098)、肝がん細胞株(HEP G2; RBRC-RCB1648)を入手した。実施例1と同様に、あらかじめ6 well plate に1 wellあたり1 x 108の乳酸菌[Lactococcus lactis subsp. Lactis (JCM20101)]を入れておき、5 x 105のがん細胞を加える。そのまま34℃、5% CO2インキュベータで培養する。
結果を図12に示す。図12に示すように数日後には細胞塊が観察できる。写真は培養してから4日後のものである。
【実施例】
【0047】
実施例13
実施例1と同様の実験を行ったが、あらかじめ6 well plate に1 wellあたり50μlの市販ヨーグルトを入れておき、5 x 105のがん細胞を加える。そのまま34℃、5% CO2インキュベータで培養する。
結果を図13に示す。図13に示すように数日後には細胞塊が観察できる。写真は培養してから9日後のものである。
【実施例】
【0048】
実施例14
実施例12と同様の実験を肝がん細胞株(HEP G2)と乳酸菌(JCM20101)を用いて行った。感染から4, 8, 12日目に細胞を回収し、がん細胞のマーカーであるc-Mycとcarcino embryonic antigen(CEA)を用いてRT-PCR法を行った。
結果を図14に示す。図14に示すように、両マーカー分子とも0日目には発現しているが、c-Mycは4日目、CEAは8日目から発現の減少が観察された。
【実施例】
【0049】
実施例15
Hanging Drop法とは、細胞をトリプシン処理して1 x 105 / 20μlの割合で培養液に懸濁し、シャーレの蓋にドロップした後、蓋をひっくり返し、1晩置く。翌日、ドロップの先端に細胞塊が観察され、細胞を塊としてマウスに移植するための方法である。肺がん細胞株(A549)を用いてHanging Drop法を行い、細胞塊を作製した。これらの細胞塊5個をヌードマウス(8週齢、メス)の皮下に移植した。約1ヶ月後、腫瘍が形成される(図15)。この腫瘍を取り出し、4 x 4 mmの大きさにトリミングする。コントロールは腫瘍の固まりをPBS液に浸ける。実験対象として、腫瘍の固まりを乳酸菌(JCM20101)の液(1 x 108 /ml)に室温で20分間浸ける。その後、1個の腫瘍の固まりをヌードマウス(8週齢、メス)の皮下に移植した。乳酸菌の実験対象マウスには、3、6日目に乳酸菌を含む液を注入した。40日後に、腫瘍を取り出し、その重さを計測した。
結果を図16に示す。腫瘍を移植したマウスと比べ、乳酸菌を感染させ、その後乳酸菌を注入したマウスでは、腫瘍が小さくなっていた。
【実施例】
【0050】
実施例16
実施例1と同様に、あらかじめ6 well plate に1 wellあたり1 x 108の納豆菌または大腸菌(XLI-blue: Stratagene社)を入れておき、5 x 105のHDF細胞(Human Dermal Fibroblasts, CELL APPLICATIONS, INC. Cat No.106-05a)を加える。そのまま34℃、5% CO2インキュベータで培養する。
結果を図17に示す。図17に示すように、納豆菌存在下では数日後に細胞塊が観察できるが、大腸菌存在下では、細胞塊は形成されなかった。写真は培養してから8日後のものを示す。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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