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明細書 :被測定対象の特性測定装置及び被測定対象の特性測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5892623号 (P5892623)
登録日 平成28年3月4日(2016.3.4)
発行日 平成28年3月23日(2016.3.23)
発明の名称または考案の名称 被測定対象の特性測定装置及び被測定対象の特性測定方法
国際特許分類 G01N  22/00        (2006.01)
G01N  24/00        (2006.01)
FI G01N 22/00 Z
G01N 24/00 Z
請求項の数または発明の数 10
全頁数 18
出願番号 特願2013-524664 (P2013-524664)
出願日 平成24年7月10日(2012.7.10)
国際出願番号 PCT/JP2012/067575
国際公開番号 WO2013/011869
国際公開日 平成25年1月24日(2013.1.24)
優先権出願番号 2011158637
優先日 平成23年7月20日(2011.7.20)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年4月23日(2015.4.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
発明者または考案者 【氏名】生嶋 健司
個別代理人の代理人 【識別番号】100125450、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 広明
審査官 【審査官】田中 洋介
参考文献・文献 国際公開第2007/055057(WO,A1)
特公平05-039619(JP,B2)
特開2000-023947(JP,A)
特開2011-104241(JP,A)
特公昭57-051895(JP,B2)
内藤駿 他,振幅変調法による音響誘起電磁応答の測定,第59回応用物理学関係連合講演会講演予稿集,2012年 3月,p.01-038(18p-C3-8)
生嶋健司,生体機能の非侵襲検査へ向けた新たな取り組み -超音波で電気・磁気を測る-,マテリアルインテグレーション,2010年,Vol.23 No.9,pp.31-40
調査した分野 G01N 22/00-22/04
G01N 24/00-24/14
G01N 29/00-29/52
A61B 8/00- 8/15
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
振幅変調された音波を照射する音波照射部と、
前記音波の発生源と被測定対象との距離を、前記音波の変調周波数に対する(1/4)波長の奇数の整数倍となる距離に設定する設定手段と、
前記音波が前記被測定対象に対して照射されることによって発生する電磁場を受信する受信部と、
前記電磁場の強度、位相、及び周波数からなる群から選択される少なくとも1種の測定に基づいて、前記被測定対象の電気特性、磁気特性、電気機械特性、及び磁気機械特性からなる群から選択される少なくとも1種の特性を抽出する測定部と、を備える、
被測定対象の特性測定装置。
【請求項2】
前記音波照射部が、連続して前記振幅変調された音波を発生する、
請求項1に記載の被測定対象の特性測定装置。
【請求項3】
前記測定部が、前記音波照射部から発生された前記音波の位相から所定角度ずれた電磁場に対して前記振幅変調の変調周波数を掃引することにより、極大又は極小となる前記強度を抽出する、
請求項1又は請求項2に記載の被測定対象の特性測定装置。
【請求項4】
前記受信部が、前記振幅変調された連続した前記音波が前記被測定対象に対して照射されることによって発生する前記電磁場を受信する、
請求項2に記載の被測定対象の特性測定装置。
【請求項5】
前記受信部が、磁場を検出するSQUID(超伝導量子干渉素子)を備えている、
請求項1、請求項2、又は請求項4に記載の被測定対象の特性測定装置。
【請求項6】
被測定対象に振幅変調された音波を照射する照射工程と、
前記照射工程における前記音波の発生源と前記被測定対象との距離を、前記音波の変調周波数に対する(1/4)波長の奇数の整数倍となる距離に設定する設定工程と、
前記被測定対象から発生する電磁場を受信する受信工程と、
前記電磁場の強度、位相、及び周波数からなる群から選択される少なくとも1種の測定に基づいて、前記被測定対象の電気特性、磁気特性、電気機械特性、及び磁気機械特性からなる群から選択される少なくとも1種の特性を抽出する測定工程と、を含む、
被測定対象の特性測定方法。
【請求項7】
前記音波が、連続した前記振幅変調された前記音波である、
請求項6に記載の被測定対象の特性測定方法。
【請求項8】
前記測定工程が、前記音波の発生源から発生された前記音波の位相から所定角度ずれた電磁場に対して前記振幅変調の変調周波数を掃引することにより、極大又は極小となる前記強度を抽出する、
請求項6又は請求項7に記載の被測定対象の特性測定方法。
【請求項9】
前記受信工程において、前記振幅変調された連続した前記音波が前記被測定対象に対して照射されることによって発生する前記電磁場を受信する、
請求項7に記載の被測定対象の特性測定方法。
【請求項10】
前記受信工程が、SQUID(超伝導量子干渉素子)により行われる、
請求項6、請求項7、又は請求項9に記載の被測定対象の特性測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、振幅変調又は周波数変調された音波を受けることよって電磁場を発生し得る(放射し得る)対象物に対して適用可能な物体の特性測定装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1において、強磁性体薄膜の磁化を時間変調すると、コヒーレントなテラヘルツ電磁波の放射が観測されることが報告されている。ただし、この文献1に記載されている技術は、音波ではなく、フェムト秒レーザー光の照射による磁化変調を開示しているにすぎない。
【0003】
一方、音波(代表的には、超音波)による計測も、各種の構造物への非破壊検査として広く利用されている。これは、音波が、光の透過が困難な金属やコンクリートブロックのような対象物に対して内部透過性が高いという大きな利点を有するためである。しかしながら、これまでは、そのような音波の利用は被測定対象の質量密度分布や弾性的性質の検査又は診断に限定されていた。
【0004】
上述のような状況の中、本願発明者は、音波の特徴を活かしながら、あらゆる対象物を被測定対象とし得る音波誘起電磁場による物体の特性測定装置及びその方法を提案している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】国際公開第WO2007/055057号パンフレット
【0006】

【非特許文献1】E.Beaurepaire 他5名、Appl.Phys.Lett.,Vol.84,No.18,pp.3465-3467,3May 2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これまでに本願発明者によって創出された上述の物体の特性測定装置及びその方法の優れた点は、内部透過性の高い音波を利用して、照射した音波と同一周波数の電磁場(通常RF波-マイクロ波)の発生を、双極子放射等を通して積極的に促し、電気及び/又は磁気特性を測定することにある。ここで、上述の物体の特性測定方法及びそれを実現する原理の詳しい説明については、特許文献1に既に開示されているため省略するが、特筆すべきは、音速と光速の違いにより、音波は電磁波に比べて同一周波数であって波長が約5桁も短い点である。そのため、実時間波形の取得が容易なMHz/GHz周波数帯において、ミリメータ/マイクロメータのフォーカスを実現することが可能となる。すなわち、音波測定は電磁波測定よりも同一周波数で空間分解能を(例えば)5桁高くすることができるため、上述の物体の特性測定装置及びその方法の優位性が発揮される。
【0008】
ところで、上述の物体の特性測定装置及びその方法において、仮にパルス状音波を照射する場合、音波発生源の発生する電磁場ノイズ等から測定対象となる電気信号を時間的に分離(換言すれば、抽出)した状態で測定することができるという顕著な利点がある。しかしながら、連続波を照射することによって上述の物体の特性測定手段を実施する場合、音波発生源の発生する電磁場ノイズ等から上述の電気信号を確度高く抽出することは必ずしも容易ではなかった。この連続波の問題は、例えば、音波発生源による電磁ノイズや被測定対象に対して照射した音波のエコーが、偶然にその物体から発生した(測定対象の)電磁場(electromagnetic fields)と重なって表れたときに顕在化することになる。というのも、音波発生源から発せられる音波の周波数と、測定対象となる信号の周波数とが同じ周波数帯に属するためである。
【0009】
加えて、仮に、測定対象となる信号を比較的抽出し易いパルス状音波を照射する場合においても、実効的な積分時間が短いために測定時間が長くなるという問題がある。具体的には、例えば、測定対象となる信号が発生している時間幅は、一般的に10μ秒以下であるのに対して、パルス状音波の繰り返し時間は通常0.1秒(100Hz)である。そのため、実効的に信号を積分している時間が測定時間の0.01%でしかない。換言すると、1秒積算することによって得られるノイズ強度比に対する信号強度比(signal-to-noise ratio,以下、単に「S/N比」という。)がかなり小さくなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、物体の特性測定手段として音波を利用することによって高い空間分解能を維持しつつ、仮に連続波であっても音波発生源の発生する電磁場ノイズ等から測定対象となる電気信号を確度高く抽出することのできる被測定対象の特性測定技術の更なる向上に大きく貢献するものである。
【0011】
上述のように、音波発生源の発生する電磁場ノイズ等と測定対象となる電気信号とが同じ周波数帯に属している場合、特に連続波として音波を照射すると、前述のノイズから測定対象となる電気信号を適切に抽出することが困難となる。一方、パルス状の音波の照射では、測定精度は高まっても、短時間での測定を実現することが容易ではない。本願発明者は、そのような、いわば二律背反する状況の中で鋭意研究を重ねた結果、照射する音波に対して従来とは異なる工夫を加えることにより、上述の複数の問題が同時に解決され得ることを知見し、本発明が完成した。
【0012】
本発明の1つの被測定対象の特性測定装置は、被測定対象から離れて配置される、振幅変調又は周波数変調された音波を照射する音波照射部と、その音波が前述の被測定対象に対して照射されることによって発生する電磁場を受信する受信部と、その電磁場の強度、位相、及び周波数からなる群から選択される少なくとも1種の測定に基づいて、前述の被測定対象の電気特性、磁気特性、電気機械特性、及び磁気機械特性からなる群から選択される少なくとも1種の特性を抽出する測定部とを備えている。
【0013】
この特性測定装置によれば、音波照射部から照射される音波が振幅変調又は周波数変調された音波であるため、振幅変調又は周波数変調されなかった場合と比較して、被測定対象から発生する電磁場の抽出が容易になる。すなわち、この特性測定装置によれば、音波発生源の発生する電磁場ノイズ等から測定対象となる電気信号をより確度高く抽出することが可能となる。また、この特性測定装置によれば、上述のとおり、音波照射部が被測定対象から離れて配置されるため、いわゆる非破壊の測定装置として活用され得る点は有利である。
【0014】
ところで、上述の被測定対象の特性測定装置において、その音波照射部が連続して振幅変調又は周波数変調された音波を発生することは、より好ましい一態様である。照射される音波が連続波になれば、被測定対象から発生する電磁場の抽出が容易になるだけでなく、実効的に信号を積分する時間が格段に増えることになる。その結果、S/N比が格段に向上するとともに、連続波の照射を行った場合の測定時間がパルス状音波の照射の際の測定時間と比較して顕著に短縮され得る。
【0015】
また、本発明の1つの被測定対象の特性測定方法は、被測定対象に振幅変調又は周波数変調された音波を照射する照射工程と、その被測定対象から発生する電磁場を受信する受信工程と、前述の電磁場の強度、位相、及び周波数からなる群から選択される少なくとも1種の測定に基づいて、前述の被測定対象の電気特性、磁気特性、電気機械特性、及び磁気機械特性からなる群から選択される少なくとも1種の特性を抽出する測定工程とを含んでいる。
【0016】
この特性測定方法によれば、照射される音波が振幅変調又は周波数変調された音波であるため、振幅変調又は周波数変調されなかった場合と比較して、被測定対象から発生する電磁場の抽出が容易になる。すなわち、この特性測定方法によれば、音波発生源の発生する電磁場ノイズ等から測定対象となる電気信号をより確度高く抽出することが可能となる。
【0017】
ところで、上述の被測定対象の特性測定方法において、その音波が振幅変調又は周波数変調された連続波であることは、より好ましい一態様である。照射される音波が連続した音波になれば、被測定対象から発生する電磁場の抽出が容易になるだけでなく、実効的に信号を積分する時間が格段に増えることになる。その結果、S/N比が格段に向上するとともに、連続波の照射を行った場合の測定時間がパルス状音波の照射の際の測定時間と比較して顕著に短縮され得る。
【0018】
また、本発明の1つの被測定対象の特性測定プログラムは、被測定対象に振幅変調又は周波数変調された音波を照射する照射ステップと、その被測定対象から発生する電磁場を受信する受信ステップと、その電磁場の強度、位相、及び周波数からなる群から選択される少なくとも1種の測定に基づいて、前述の被測定対象の電気特性、磁気特性、電気機械特性、及び磁気機械特性からなる群から選択される少なくとも1種の特性を抽出する測定ステップとを含んでいる。
【0019】
この特性測定プログラムの実行により、照射される音波が振幅変調又は周波数変調された音波であるため、振幅変調又は周波数変調されなかった場合と比較して、被測定対象から発生する電磁場の抽出が容易になる。すなわち、この特性測定方法によれば、音波発生源の発生する電磁場ノイズ等から測定対象となる電気信号をより確度高く抽出することが可能となる。
【0020】
なお、本出願では、便宜上、ケーブルやアンプを流れる電磁気信号(RF信号)のことを「電気信号」と呼ぶ。また、本出願では、便宜上、音波照射部と被測定対象の間の媒体中に発生している電磁場(RF場)のことを、「電磁場」と呼ぶ。また、この「電磁場」は「電磁波」と呼ばれることもあるが、本出願は、従来から本発明者及び/又は本願出願人が意図していた、いわゆる近接場(near‐field)と遠方場(far-field)とを含む概念であることをより明確に示す、「電磁場」という表現を用いることとした。
【発明の効果】
【0021】
本発明の1つの被測定対象の特性測定装置によれば、音波照射部から照射される音波が振幅変調又は周波数変調された音波であるため、振幅変調又は周波数変調されなかった場合と比較して、被測定対象から発生する電磁場の抽出が容易になる。すなわち、この特性測定装置によれば、音波発生源の発生する電磁場ノイズ等から測定対象となる電気信号をより確度高く抽出することが可能となる。
【0022】
また、本発明の1つの被測定対象の特性測定方法によれば、照射される音波が振幅変調又は周波数変調された音波であるため、振幅変調又は周波数変調されなかった場合と比較して、被測定対象から発生する電磁場の抽出が容易になる。すなわち、この特性測定方法によれば、音波発生源の発生する電磁場ノイズ等から測定対象となる電気信号をより確度高く抽出することが可能となる。
【0023】
また、本発明の1つの被測定対象の特性測定プログラムの実行により、照射される音波が振幅変調又は周波数変調された音波であるため、振幅変調又は周波数変調されなかった場合と比較して、被測定対象から発生する電磁場の抽出が容易になる。すなわち、この特性測定方法によれば、音波発生源の発生する電磁場ノイズ等から測定対象となる電気信号をより確度高く抽出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態における被測定対象の特性測定装置の構成図である。
【図2】物体の部分に音波を照射して誘起される電磁場の様子を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における被測定対象の特性測定装置のうち、音波発生器と被測定対象との関係を説明する概念図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における振幅変調周波数(横軸)の掃引による、測定対象信号(電気信号)の強度(縦軸)の変動を示すグラフである。
【図5】本発明の第1の実施形態における被測定対象の特性測定フローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態における被測定対象の特性測定装置の構成図である。
【図7】本発明の第3の実施形態における被測定対象の特性測定装置の構成図である。
【図8】本発明のその他の実施形態における被測定対象の特性測定装置の構成図である。
【図9】本発明のその他の実施形態における被測定対象の特性測定装置のうち、音波発生器と被測定対象との関係を説明する概念図である。
【符号の説明】
【0025】
1 音波集束ビーム
2 音波集束領域
3 正の荷電粒子
4 負の荷電粒子
5 音波の振動方向
6 音波によって誘起される電磁場
10 第1波形発生器
15 分配器
20 第2波形発生器
25 第1増幅器
30 第1ミキサー
40 音波発生器
50,70,80 受信部
52 アンテナ
54 第2増幅器
56 バンドバスフィルタ
60 測定部
62 位相調整器
64 第2ミキサー
66 ロ-パスフィルタ
68 ロックインアンプ
72 共振回路
74,84 増幅器
82a 表面電極
82b 裏面電極
90 被測定対象
100,200,300,400 被測定対象の特性測定装置
412 周波数変調発振回路
467 周波数変調復調回路
【発明を実施するための形態】
【0026】
つぎに、本発明の実施形態を、添付する図面に基づいて詳細に述べる。尚、この説明に際し、全図にわたり、共通する部分には共通する参照符号を付す。また、図中、本実施形態の要素は必ずしもスケール通りに示していない。

【0027】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態の被測定対象の特性測定装置100(以下、単に、「特性測定装置100」ともいう。)の構成を示す図である。なお、本図面は概要図であるため、各構成部分を制御する制御部及び/又は各構成部分ないし該制御部に接続するコンピューターを含む周辺装置ないし機器は図1から省略されている。また、本出願における本実施形態とは別の被測定対象の特性測定装置の構成を示す図についても同様である。

【0028】
図1に示すように、本実施形態の特性測定装置100は、大きく3つの構成部分に分類される。

【0029】
まず、その1つの構成部分は、被測定対象90に対して照射する音波を発生する音波発生器40である。本実施形態において、照射される音波の振幅は変調されている。具体的には、まず、第1波形発生器(FG)10によって発生する高周波(本実施形態では、周波数が10MHz)の波形が、分配器15の経由し、第1ミキサー(本実施形態では、DBM(Double-balanced Mixer))30によって、もう1つの低周波用(本実施形態では、周波数が5kHz~70kHz)の第2波形発生器20から発生する波形と合成されることにより、振幅変調された波形が形成される。そして、本実施形態では、変調された波形が第1増幅器25によって増幅された後、音波発生器40により、キャリア周波数(f)が10MHzであり、振幅変調の変調周波数(以下、「振幅変調周波数」ともいう)(f)が5kHz~70kHzの、振幅変調された音波が被測定対象90に向けて照射される。なお、上述のとおり、狭義の意味では、本実施形態の音波照射部は音波発生器40のみを指すが、広義の意味では、本実施形態の音波照射部には、音波発生器40に加えて、第1波形発生器10、第2波形発生器20、第1ミキサー30、及び第1増幅器25が含まれる。

【0030】
ところで、特性測定装置100における音波照射部(例えば、音波発生器40)と被測定対象90との間が離れていれば、その間の距離は特に限定されない。より具体的には、音波照射部と被測定対象90の間に、音波によって誘起される、測定対象となる電磁場と同等又はそれ以上の電磁場を発しない媒体が介在していれば、音波照射部(例えば、音波発生器40)と被測定対象90との間の距離は特に限定されない。また、本出願においては、振幅変調(amplitude modulation)は、単にAMと表記されることがある。

【0031】
ここで、音波発生器40によって照射される前に振幅変調された波形が第1増幅器25によって増幅されているが、本実施形態はこの構成に限定されない。例えば、第1増幅器25が無い場合であっても、測定に必要な音波強度が発生するのであれば、本実施形態の特性測定装置100と実質的に同等の効果、又はその少なくとも一部の効果が奏されることが確認されている。

【0032】
次に、その2つ目の構成部分は、振幅変調された音波が照射されることによって被測定対象90から発生する、測定対象信号を含む電磁場(以下、単に「電磁場」ともいう。)を受信する受信部50である。

【0033】
詳細な説明については、上述の特許文献1の記載に譲るが、ここで簡単に、被測定対象90において、音波が照射された部分に誘起される電磁場について説明する。

【0034】
図2は、被測定対象90の部分に音波を照射して誘起される電磁場の様子を示す図である。図2において、音波集束ビーム1は、被測定対象90の部分2に集束している様子を示しており、丸印で囲んだ+及び-の記号は、それぞれ正の荷電粒子3及び負の荷電粒子4を示している。また、被測定対象90の音波集束領域2では、正の荷電粒子3と負の荷電粒子4との濃度のバランスが崩れ、正の荷電粒子3が負の荷電粒子4よりも多い電荷分布状態を示している。加えて、矢印5は、音波集束ビーム1の音波振動方向を示しており、電場の向きに対応する。また、矢印6は、矢印5に垂直な面内で発生する磁場を示している。

【0035】
図2に示すように、音波集束ビーム1の照射によって、正の荷電粒子3及び負の荷電粒子4は、音波の振動方向(矢印5)に音波の振動数で振動する。そうすると、正の荷電粒子3及び負の荷電粒子4の振動は電荷が振動することになるので、振動方向5に垂直な面内で発生する磁場(矢印6)が誘起される。発生する電磁場は、互いに位相がπだけずれているので、それらの電磁場が互いに打ち消しあうために電磁場は誘起されない。しかしながら、被測定対象90の音波集束領域2では、負の荷電粒子4よりも正の荷電粒子3が多い電荷分布状態であるので、互いに完全に打ち消し合うことができず、正味の電磁場(矢印6)が誘起されることになる。従って、音波によって誘起される電磁場を観測し、電磁場の強度変化が観測されれば、電荷分布に変化が生じたこと、即ち、正の荷電粒子3又は負の荷電粒子4の濃度に変化が生じたか、或いはその両方の濃度が変化したことがわかる。その結果、音波によって誘起される電磁場の測定から、被測定対象90中の荷電粒子の特性値、この場合にはその濃度の変化を測定することができる。

【0036】
ところで、図2は、音波によって誘起される電磁場の測定から、荷電粒子の濃度変化を測定する例を示したが、測定できる荷電粒子の特性値の変化としては、濃度だけでなく、質量、サイズ、形状、荷電数、又は荷電粒子を取り囲む媒体との相互作用力の変化が可能である。例えば、被測定対象90の状態に関する他の知識や、或いは、他の何らかの手段による知識から、濃度、質量、サイズ、形状、及び荷電数の変化が起こり得ない状態であれば、測定した電磁場の強度変化は、荷電粒子を取り囲む媒体との相互作用力の変化に結びつけることができる。従って、例えば、測定した電磁場の強度変化は、電子分極率又は陽イオン分極率の変化に結びつけることができる。

【0037】
本実施形態の特性測定装置100及びその特性測定方法においては、被測定対象90の電気特性として、電場、誘電率、電場、又は誘電率の空間勾配を測定することができる。また、本実施形態の特性測定装置100及びその特性測定方法においては、被測定対象90の磁気特性として、電子スピン又は核スピンに起因した磁化を測定することもできる。具体的には、電気分極の場合と同様に、磁化が時間変化しても電磁場が発生する。Maxwell方程式によると、放射電場は磁化の時間に対する2回微分に比例する(非特許文献1参照)。従って、電磁場強度や位相から、磁化の大きさや方向を測定することが可能である。

【0038】
本実施形態の特性測定装置100及びその特性測定方法においては、被測定対象の磁気特性として、電子スピン又は核スピンに起因した音響磁気共鳴を測定することができる。具体的には、ある特定の共鳴周波数で、音波が効率よく吸収され、電子スピン又は核スピンの方向が変化することから、その周波数において電磁場強度や位相が大きく変化することが期待される。情報としては、共鳴周波数を確定することができる。加えて、通常のESR(電子スピン共鳴)やNMR(核磁気共鳴)と同様に、音波の周波数を走査すれば、スペクトルが得られ、電子スピンや核スピンの情報を取得できる。また、電子スピンや核スピンの緩和時間が測定できる。

【0039】
本実施形態の特性測定装置100及びその特性測定方法においては、被測定対象90の電気機械特性又は磁気機械特性として、圧電特性又は磁歪特性を次のようして測定することができる。反転対象性のないイオン結晶は原理的に歪によって、電気分極が生じる。従って、音波誘起電磁場といえる測定対象の電磁場の強度から分極の大きさを得ることができる。音波を走査すれば、被測定対象90の圧電特性を画像化することができる。さらに、音波伝播方向と、発生した電磁場の角度分布から、圧電テンソルを、被測定対象90に電極を設けずに非接触で測定することができる。

【0040】
本実施形態の特性測定装置100及びその特性測定方法においては、被測定対象90の電気機械特性又は磁気機械特性として、磁歪特性を次のようして測定することができる。磁歪とは、結晶歪により電子軌道が変化し、軌道・スピン相互作用を通じて電子スピン磁化に変化が加わる現象をいう。他の態様として、磁区構造が外部歪によって変化し、その結果、巨視的な領域(音波ビームスポット程度)での有効磁化が変化することもある。また、結晶歪により、結晶場分裂に変化が生じ、これが電子状態を変化させ、電子スピン磁化の大きさを変化させることもある。これらの時間変化が電磁場を発生させると考えられる。従って、音波誘起電磁場の強度から磁化の大きさや軌道・スピン相互作用、結晶歪と電子軌道変化の敏感さ、結晶場分裂と歪の敏感さ、結晶場分裂と電子スピン状態の関係、又は磁区構造と歪の関係を決定することができる。音波伝播方向と放射強度からは、被測定対象90に電極を設けずに、非接触で磁歪テンソルを測定することができる。磁歪特性の画像化も圧電特性と同様に可能である。

【0041】
本実施形態の特性測定装置100及びその特性測定方法においては、被測定対象90に音波を照射し、この被測定対象90から発生する電磁場を測定する。そして、電磁場の強度、位相、及び周波数からなる群から選択される少なくとも1種の測定に基づいて、被測定対象90の電気特性、磁気特性、電気機械特性、及び磁気機械特性からなる群から選択される少なくとも1種の特性を抽出することができる。従って、被測定対象90の電気特性としては、電場、誘電率、電場又は誘電率の空間勾配、被測定対象90の有する荷電粒子における濃度、質量、寸法、形状、荷電数、荷電粒子を囲む媒体との相互作用からなる群から選択される少なくとも1種の特性値の変化を測定することができる。被測定対象90の磁気特性としては、被測定対象90の電子スピン又は核スピンに起因した磁化、被測定対象90の電子スピン、又は核スピンに起因した音響磁気共鳴を測定することができる。被測定対象90の電気機械特性、及び磁気機械特性としては、被測定対象90の圧電特性又は磁歪特性を測定することができる。

【0042】
上述のとおり、本実施形態の特性測定装置100においては、被測定対象90から発生する測定対象信号を含む電磁場が受信部50によって受信されることになる。本実施形態の受信部50は、アンテナ52、バンドパスフィルタ(Band-pass filter)56、及び第2増幅器54が含まれる。ここで、被測定対象90から発生する(放射される)電磁場は、その近接場(near field)又は近接場ではない非近接場、即ち遠接場(far field)の電磁場測定により測定することができる。また、アンテナ52の種類は、電磁場を検出できるものであれば問われない。例えば、ループ型アンテナやアレイ型アンテナなどの各種アンテナや、ループ型やアレイ型のコイルからなるアンテナを使用することができる。

【0043】
アンテナ52によって受信された電磁場は、第2増幅器54によって増幅された後、バンドバスフィルタ56によって所定の周波数帯(本実施形態では、9.9MHz~10.1MHz)の範囲外の電磁場が取り除かれる。

【0044】
そして、本実施形態の特性測定装置100の3つ目の構成部分は、受信部50によって形成された所定の周波数帯の電磁場から、被測定対象90における上述の電気特性、磁気特性、電気機械特性、及び磁気機械特性からなる群から選択される少なくとも1種の特性を抽出する測定部60である。

【0045】
本実施形態の測定部60は、まず、分配器15の経由し、位相調整器(Phase Shifter)62によって位相が調整された第1波形発生器10からの高周波の波形と、上述の電磁場に基づく電気信号とを、第2ミキサー(本実施形態では、DBM(Double-balanced Mixer))64によって合成する。そして、合成された電気信号のうち、ローパスフィルタ(Low-pass filter)66によって、低周波成分(本実施形態では、1.9MHz以下)の周波数成分)が取り出された後、ロックインアンプ68において、取り出された電気信号の中から、測定対象となる電気信号を抽出する。

【0046】
ここで、本実施形態における測定の内容と具体的な結果について説明する。

【0047】
図3は、本実施形態における被測定対象の特性測定装置100のうち、音波発生器40と被測定対象90との関係を説明する概念図である。また、図4は、本実施形態における振幅変調周波数(横軸)の掃引による、測定対象信号(電気信号)の強度(縦軸)の変動を示すグラフである。ここで、図4における測定対象信号は、「虚部(90°)」と表示されているグラフである。

【0048】
図3に示すように、音波発生器40から発生する音波が振幅変調されている。本実施形態においては、高周波成分はキャリア周波数(f)が10MHzであり、振幅変調周波数(f)は、キャリア周波数よりも少なくとも1桁低い周波数(例えば、5kHz~70kHz)である。そのため、音波発生器40と被測定対象90との距離が1/4波長の奇数の整数倍の場合、図4に示すように、音波発生器40が発生するノイズ成分の位相と、被測定対象90から発生する測定対象となる電磁場の位相とは、互いに理想的には90°ずれることになる。より具体的には、例えば、図4における6.25kHzが示す波形の極大となった場所は、1/4波長の1倍となる場所であり、18.75kHzが示す波形が極小となった場所は、1/4波長の3倍となる場所である。

【0049】
そこで、本実施形態では、ロックインアンプ68において、音波発生器40に入力する信号(本実施形態では、第2波形発生器20から発生する波形)を参照信号としてロックイン検出することにより、0°成分(実数成分)である音波発生器40からのノイズ成分と、90°成分(虚数成分)である測定対象となる電気信号とを分離することが可能となる。換言すれば、本実施形態における被測定対象の特性測定装置100の測定部60は、音波発生器40からのノイズ成分を含む電気信号から、測定対象となる電気信号を確度高く抽出することができる。そうすると、被測定対象90の測定対象部位における電気特性、磁気特性、電気機械特性、及び磁気機械特性からなる群から選択される少なくとも1種の特性が適切に抽出される。

【0050】
ここで、本実施形態においては、高周波成分はキャリア周波数(f)が10MHzであり、空間分解能を決めることになる。一方、振幅変調周波数(f)は、キャリア周波数よりも少なくとも1桁低い周波数(例えば、5kHz~70kHz)である。従って、本実施形態では、キャリア周波数に対して3桁以上低い周波数が振幅変調周波数として採用されているため、音波発生源の発生する電磁場ノイズ等から測定対象となる電気信号をより確度高く抽出することが可能となる。同時に、本実施形態についての特性測定プログラムによれば、キャリア周波数が高周波である10MHzであるため、十分な空間分解能を維持することが出来る。

【0051】
また、特に興味深いことには、本実施形態では、被測定対象90に対して照射される音波が連続波であるかパルス波であるかを問わないことである。これは、本実施形態によれば、音波発生器40からのノイズと被測定対象90からの測定対象となる電気信号とを時間的に分離する必要がないためである。但し、連続した音波が照射されれば、被測定対象90から発生する電磁場の抽出が容易になるだけでなく、実効的に信号を積分する時間が格段に増えることになる。その結果、S/N比が格段に向上するとともに、連続波の照射を行った場合の測定時間がパルス状音波の照射の際の測定時間と比較して顕著に短縮され得る。換言すれば、変調された連続する音波を被測定対象90に対して照射すること、及び変調された連続する音波を受信部50が受信することは、前述の観点から好ましい一態様である。

【0052】
例えば、本実施形態では、半周期矩形波(50ns幅)のパルス波と比較して、連続波のS/N比が約50倍以上に向上することが確認されている。換言すれば、測定時間は約2500分の1よりも短縮されるという特筆すべき効果が得られる。加えて、連続する音波を照射すれば、パルス状の音波を照射する場合に観察される余計な周波数成分(例えば、パルス状の音波によって発生する広帯域な電磁場ノイズ)が含まれた電磁場を受信することがないため、その点においてもS/N比の向上に寄与することになる。なお、連続した音波が照射されること、及び受信部50が連続した音波が被測定対象90に対して照射されることによって発生する電磁場を受信することによって生じる上述の各効果は、振幅変調の場合のみならず、後述する周波数変調された音波の場合にも奏され得る。

【0053】
さらに、図4に示すように、振幅変調周波数を掃印すると、ちょうど1/4波長の奇数の整数倍に相当する信号強度が極大又は極小になると予想される。その結果、仮に、音波発生器40と被測定対象90との距離が不明である場合であっても、前述の極大又は極小となる周波数を知ることにより、音波発生器40から被測定対象90までの距離を容易に算出することができることになる。例えば、「信号の極値電圧が得られる条件」を図4示すグラフに当てはめると、6.25kHzの極大値は、n=1であり、fmod=(v/4d)となる。また、18.75kHzの極小値は、n=2であり、fmod=(3v/4d)となる。さらに、6.25kHzの極大値は、n=3であり、fmod=(5v/4d)となる。したがって、本実施形態の被測定対象の特性測定装置100によれば、当初不明確であった音波発生器40から被測定対象90までの距離を測定することも可能となる。

【0054】
ところで、既に述べたとおり、本実施形態では、一例として、特性測定装置100の各構成部分を制御する制御部がコンピューターに接続されている。このコンピューターは、上述の各構成部分における処理を実行するための、被測定対象90の特性測定プログラムにより、上述の各構成部分の処理を監視し、又は統合的に制御する。以下に、具体的な特性測定フローチャートを示しながら、被測定対象90の特性測定プログラムを説明する。尚、本実施形態では、上述の特性測定プログラムがコンピューター内のハードディスクドライブ、又はコンピューターに設けられた光ディスクドライブ等に挿入される光ディスク等の公知の記録媒体に保存されているが、この特性測定プログラムの保存先はこれに限定されない。例えば、この特性測定プログラムの一部又は全部は、本実施形態における制御部内に保存されていてもよい。また、この特性測定プログラムは、ローカルエリアネットワークやインターネット回線等の公知の技術を介して上述の各プロセスを監視し、又は制御することもできる。

【0055】
なお、上述のコンピューターにより、音波誘起電磁場の時系列信号の所定の時間を、高速フーリエ変換(FFT)のアルゴリズムによりフーリエ変換すれば、計算時間の短縮ができる。このフーリエスペクトルを得る手段は、コンピューターによらない専用のDSP(デジタルシグナルプロセッサ)やFFT装置でも良い。また、本実施形態の特性測定装置100においては、電気信号の増幅や復調等の信号処理のために、受信部50用の集積回路やDSPも採用され得る。

【0056】
まず、本実施形態についての被測定対象90の特性測定プログラムを説明する。図5は、本実施形態における被測定対象90の特性測定フローチャートである。

【0057】
図5に示すとおり、本実施形態についての被測定対象の特性測定プログラムを実行すると、まず、被測定対象90が配置されると、ステップS101において、キャリア周波数の波形と振幅変調周波数の波形とを合成する。従って、本実施形態では、ステップS101において、高周波である10MHzの波形と、低周波である5kHz~70kHzの波形とが合成される。次に、ステップS102において、音波発生器40が被測定対象90に対して振幅変調された音波を照射する、照射ステップが実行される。その後、ステップS103において、被測定対象90から発生する電磁場を受信部50が受信する受信ステップが実行される。この電磁場は、上述のとおり、音波発生器40からのノイズ成分及びその他のノイズ成分を含んでいる。

【0058】
続いて、ステップS104において、測定部60がキャリア周波数をリファレンスとして、受信された(ノイズ成分を含む)電磁場に基づく電気信号を復調し、ローパスフィルタ66を通して低周波成分を取り出す。その後、ステップS105において、測定部60が、取り出された電気信号の中から、ノイズ成分と差別化された測定対象の電気信号を抽出する。本実施形態では、主としてステップS104及びステップS105が測定ステップに該当する。

【0059】
従って、本実施形態についての特性測定プログラムを実行すれば、被測定対象90に対して照射される音波が振幅変調された音波であるため、振幅変調されなかった場合と比較して、被測定対象90から発生する電磁場の抽出が容易になる。特に、本実施形態では、キャリア周波数に対して少なくとも1桁以上低い周波数が振幅変調周波数として採用されているため、音波発生源の発生する電磁場ノイズ等から測定対象となる電気信号をより確度高く抽出することが可能となる。同時に、本実施形態についての特性測定プログラムによれば、キャリア周波数が高周波である10MHzであるため、十分な空間分解能を維持することが出来る。

【0060】
<第2の実施形態>
本実施形態の被測定対象の特性測定装置200(以下、単に、「特性測定装置200」ともいう。)は、第1の実施形態の受信部50が受信部70に変更された点を除き、第1の実施形態のそれらと同様である。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。

【0061】
図6は、本実施形態の被測定対象の特性測定装置200の構成を示す図である。本実施形態では、被測定対象90が音波発生器40からの振幅変調された音波を受けると、被測定対象90から発生する電磁場は、受信部70の共振回路72によって受信された後、増幅器74を経由して第2ミキサー64に送られる。

【0062】
上述の特性測定装置200が採用された場合であっても、被測定対象90から発生する電磁場は受信部70によって受信された後、測定部60によって音波発生源の発生する電磁場ノイズ等から測定対象となる電気信号をより確度高く抽出することが可能となる。

【0063】
<第3の実施形態>
本実施形態の被測定対象の特性測定装置300(以下、単に、「特性測定装置300」ともいう。)は、第1の実施形態の受信部50が受信部80に変更された点を除き、第1の実施形態のそれらと同様である。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。

【0064】
図7は、本実施形態の被測定対象の特性測定装置300の構成を示す図である。本実施形態では、被測定対象90が音波発生器40からの振幅変調された音波を受けると、被測定対象90から発生する電磁場は、被測定対象90上に配置された表面電極82a及び裏面電極82bから配線から増幅器84を経由して第2ミキサー64に送られる。

【0065】
上述の特性測定装置300が採用された場合であっても、被測定対象90から発生する電磁場は受信部80によって受信された後、測定部60によって音波発生源の発生する電磁場ノイズ等から測定対象となる電気信号をより確度高く抽出することが可能となる。なお、本実施形態の特性測定装置300は、第1の実施形態の特性測定装置100が採用していたバンドバスフィルタ56を備えていない。しかしながら、例えば、キャリア周波数に近い帯域で特別大きなノイズの混入が無い場合、あるいは測定対象となる電気信号が十分大きい場合であれば、バンドバスフィルタ56が無くても第1の実施形態の効果と同様の、又は少なくとも一部の効果が奏される。

【0066】
なお、本実施形態においては、被測定対象90からの電磁場のうち、磁場の測定をSQUID(超伝導量子干渉素子)を用いて測定してもよい。SQUIDは、超伝導体からなるリング内に1つ又は2つのジョセフソン接合を有する素子である。ジョセフソン接合が1つの場合はrf-SQUID、ジョセフソン接合が2つの場合はdc-SQUIDと、それぞれ呼ばれている。SQUIDは、超伝導の量子化現象を応用した超高感度磁気センサであり、従来の磁気センサに比べて100倍以上の感度を有しており、地磁気の5,000万分の1以下という微弱磁場を検出することができる点が優れている。

【0067】
また、上述の各実施形態では、キャリア周波数(f)が10MHzであり、振幅変調周波数(f)が5kHz以上70kHz以下であるが、それらの周波数は本実施形態の数値に限定されない。例えば、音波発生器40のキャリア周波数が、0.1MHz以上100MHz以下であり、音波発生器40の振幅変調周波数が、そのキャリア周波数よりも一桁以上小さく、かつ0.1kHz以上100kHz以下であれば、上述の各実施形態の効果と同様の効果、又はその効果のうち、少なくとも一部の効果が奏され得る。但し、非破壊検査としての適用性を高める観点からいえば、前述のキャリア周波数の好ましい範囲は、1MHz以上20MHz以下であり、振幅変調周波数(f)の好ましい範囲は、100kHz以上2000kHz以下である。

【0068】
また、上述の各実施形態では、測定部60が位相調整器62を備えているが、上述の各特性測定装置100,200,300の構成はそのような測定部に限定されない。例えば、ケーブルの長さを調整すれば、各特性測定装置100,200,300が位相調整器62を備えていなくても、上述の各実施形態の効果と同様の、又は少なくとも一部の効果が奏される。

【0069】
さらに、上述の各実施形態では、2つの波形発生器が採用されているが、それらの代わりに、第1波形発生器10の機能と第2波形発生器20の機能を両方ともに有する公知の一台の波形発生器を用いることも他の採用し得る一態様である。

【0070】
加えて、上述の各実施形態では、ロックインアンプ68において、90°成分(虚数成分)の電気信号を抽出することにより、音波発生器40からのノイズ成分を含む電気信号から測定対象となる電気信号を抽出したが、上述の各実施形態はこの角度に限定されない。例えば、実際に使用する特性測定装置又はその一部の装置、あるいは該装置の一部をなす電子部品の性能としての位相精度によって、90°とは異なる角度を採用しても、上述の各実施形態の効果のうちの全部又は少なくとも一部の効果が奏され得る。また、被測定対象に要求される測定精度によっても、適宜、90°とは異なる角度が採用され得る。従って、上述の各実施形態において、音波照射部から発生された音波の位相から所定角度ずれた電気信号を測定対象となる電気信号として抽出する際、その所定角度は、代表的には90°であるが、その角度に限定されない。

【0071】
<その他の実施形態>
さらに、上述の各実施形態においては、振幅変調された音波が被測定対象90に対して照射されているが、振幅変調された音波に代えて周波数変調された音波が照射された場合であっても、上述と同様の効果が奏され得る。以下に、より詳細に説明する。なお、本出願においては、周波数変調(frequency modulation)は、単にFMと表記されることがある。

【0072】
図8は、周波数変調された音波を利用した、本実施形態の被測定対象の特性測定装置400(以下、単に、「特性測定装置400」ともいう。)の構成を示す図である。また、図9は、本実施形態における被測定対象の特性測定装置400のうち、音波発生器40と被測定対象90との関係を説明する概念図である。

【0073】
図8に示すように、本実施形態の特性測定装置400は、大きく3つの構成部分に分類される。

【0074】
まず、その1つの構成部分は、被測定対象90に対して照射する音波を発生する周波数変調発振回路412である。本実施形態において、照射される音波の周波数は変調されている。具体的には、キャリア周波数(本実施形態では、周波数が10MHzであるが、測定対象によって大きく変動し得る)(f)に対して、周波数変調の変調周波数(信号波とも呼ばれる)(fmod)によって変調されている。このとき、周波数変調発振回路412によって変調された波(f(t))は、次式で表される。

【0075】
【数1】
JP0005892623B2_000002t.gif

【0076】
ここで、(f)は、最大周波数偏移である。

【0077】
周波数変調発振回路412によって周波数変調された電気信号が第1増幅器25によって増幅された後、図9に示すように、音波発生器40により、周波数変調された音波が被測定対象90に向けて照射される。なお、振幅変調の場合と同様に、狭義の意味では、本実施形態の音波照射部は音波発生器40のみを指すが、広義の意味では、本実施形態の音波照射部には、音波発生器40に加えて、周波数変調発振回路412が含まれる。

【0078】
次に、その2つ目の構成部分は、振幅変調された音波が照射されることによって被測定対象90から発生する電磁場を受信する受信部50である。この受信部50は、第1の実施形態と同様の役割を果たすため、その説明を省略する。

【0079】
そして、本実施形態の特性測定装置400の3つ目の構成部分は、受信部50によって形成された所定の周波数帯の電気信号から、被測定対象90における上述の電気特性、磁気特性、電気機械特性、及び磁気機械特性からなる群から選択される少なくとも1種の特性を抽出する測定部である。

【0080】
本実施形態の測定部においては、図8に示す周波数変調復調回路467が、キャリア周波数(f)を基準に、受信部50によって受信された電気信号を復調する。復調された信号は、(f-fmod)に比例した復調信号としてロックインアンプ68に送られる。一方、復調信号と比較される参照信号(変調周波数fmodの参照信号)も、ロックインアンプ68に送られる。そして、ロックインアンプ68において、取り出された電気信号の中から、測定対象となる電気信号を抽出する

【0081】
上述のとおり、本実施形態の特性測定装置400によれば、周波数変調された音波が採用された場合であっても、第1の実施形態における特性測定装置100やその特性測定方法と同様に、非破壊で被測定対象90の電気特性、磁気特性、電気機械特性、及び磁気機械特性からなる群から選択される少なくとも1種の特性することができる。

【0082】
特に、周波数変調された音波が採用した場合は、振幅変調された音波を採用した場合に比べて、いわゆる外乱(雑音等)に対する除去に優れているといえるため、本実施形態の特性測定装置400は好ましい一態様である。

【0083】
ところで、周波数変調された音波を用いた被測定対象の特性測定装置及び特性測定方法も、振幅変調された音波を用いた被測定対象の特性測定装置及び特性測定方法と同様に、キャリア周波数(f)、周波数変調の変調周波数(fmod)、及び最大位相偏移(f)のいずれも、特定の数値に限定されるものではない。当業者であれば、上述の実施形態において明示的に又は公知技術を含む黙示的に示された技術に基づいて適宜、前述の各周波数や偏移を変えることができる。

【0084】
また、周波数変調された音波を用いた被測定対象の特性測定装置及び特性測定方法も、振幅変調された音波を用いた被測定対象の特性測定装置及び特性測定方法と同様に、ロックインアンプ68から電気信号を抽出する際に、90°とは異なる角度を採用しても良い。そのような場合であっても、上述の実施形態の効果のうちの全部又は少なくとも一部の効果が奏され得る。加えて、振幅変調された音波を用いた被測定対象の特性測定装置及び特性測定方法において説明された、SQUID、測定部60、又は波形発生器に関する変形例も、周波数変調された音波を用いた被測定対象の特性測定装置及び特性測定方法に適用され得る。

【0085】
なお、上述の各実施形態の開示は、それらの実施形態の説明のために記載したものであって、本発明を限定するために記載したものではない。加えて、各実施形態の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の被測定対象の特性測定装置、特性測定方法、及び特性測定プログラムは、非破壊で被測定対象の電気特性、磁気特性、電気機械特性、及び磁気機械特性からなる群から選択される少なくとも1種の特性することができる。従って、コロイド溶液、液晶、固体電解質、イオン結晶、半導体、誘電体、金属、磁性体、磁性流体の何れか、あるいはこれらの複合材料を含む物体、構造物、又は機能デバイス等を対象とする、バイオ技術分野における計測技術を含む各種特性の測定技術に利用できる。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
3
【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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