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明細書 :機能性ハイドロゲル

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5944902号 (P5944902)
登録日 平成28年6月3日(2016.6.3)
発行日 平成28年7月5日(2016.7.5)
発明の名称または考案の名称 機能性ハイドロゲル
国際特許分類 C08H   1/06        (2006.01)
C08J   3/02        (2006.01)
C07K   1/14        (2006.01)
A61L  27/00        (2006.01)
A61K  47/42        (2006.01)
FI C08H 1/06
C08J 3/02 CFJZ
C07K 1/14
A61L 27/00 V
A61K 47/42
請求項の数または発明の数 13
全頁数 19
出願番号 特願2013-527960 (P2013-527960)
出願日 平成24年7月27日(2012.7.27)
国際出願番号 PCT/JP2012/069105
国際公開番号 WO2013/021836
国際公開日 平成25年2月14日(2013.2.14)
優先権出願番号 2011171678
優先日 平成23年8月5日(2011.8.5)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年7月14日(2015.7.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】506122327
【氏名又は名称】公立大学法人大阪市立大学
発明者または考案者 【氏名】田辺 利住
【氏名】立花 亮
個別代理人の代理人 【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
【識別番号】100124453、【弁理士】、【氏名又は名称】資延 由利子
【識別番号】100135208、【弁理士】、【氏名又は名称】大杉 卓也
【識別番号】100152319、【弁理士】、【氏名又は名称】曽我 亜紀
審査官 【審査官】岡▲崎▼ 忠
参考文献・文献 特開2003-012807(JP,A)
特表2003-516775(JP,A)
特開2006-111667(JP,A)
特表平08-502082(JP,A)
特開平04-189832(JP,A)
特表2007-527277(JP,A)
調査した分野 C08H 1/00-1/06
A61K 47/00-47/48
A61L 27/00
C07K 1/00-1/36
C08J 3/00-3/28
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の工程を含む、機能性ハイドロゲルの製造方法:
1)ケラチン含有材料に、ジスルフィド結合をチオール基に変換するための還元剤を添加してケラチンを抽出する工程;
2)ケラチン含有材料に、チオール基がジスルフィド結合を再形成するのを防ぐための陰イオン性界面活性剤を添加する工程;
3)陰イオン性界面活性剤を除去してケラチンを精製し、ケラチン溶液を得る工程:
4)ケラチン溶液を、タンパク質濃度110~180 mg/mlまで濃縮し、その後冷却することにより、機能性ハイドロゲルを作製する工程。
【請求項2】
陰イオン性界面活性剤がドデシル硫酸ナトリウムである、請求項1に記載の機能性ハイドロゲルの製造方法。
【請求項3】
工程3)の陰イオン性界面活性剤の除去が、工程1)および2)により得られたケラチン抽出液150~250 mLに対して透析外液2~5 Lを使用した透析を、少なくとも5回行うことによる、請求項1または2に記載の機能性ハイドロゲルの製造方法。
【請求項4】
工程4)におけるケラチン溶液の濃縮が、40~65℃の温度条件下で、溶液のまま濃縮するものである、請求項1~3のいずれか1に記載の機能性ハイドロゲルの製造方法。
【請求項5】
ケラチン含有材料にタンパク質変性剤をさらに添加する、請求項1~4のいずれか1に記載の機能性ハイドロゲルの製造方法。
【請求項6】
タンパク質濃度110~180 mg/mlのケラチン及び水性媒体を含んでなる機能性ハイドロゲルであり、当該機能性ハイドロゲルが水性媒体への溶解性を有しており、ケラチンのチオール基が置換基、生理活性物質および/または生体適合性物質により修飾されている、機能性ハイドロゲル。
【請求項7】
請求項に記載の機能性ハイドロゲルと、生理活性物質および/または生体適合性物質を含有する、機能性ハイドロゲル組成物。
【請求項8】
請求項に記載の機能性ハイドロゲルを疑似体液に接触させることによる、ハイドロキシアパタイトを含有する機能性ハイドロゲル組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項に記載の機能性ハイドロゲルまたは請求項に記載の機能性ハイドロゲル組成物を少なくとも含む、薬物送達用担体。
【請求項10】
薬物送達用担体が、薬物送達システムとして用いられる、請求項に記載の薬物送達用担体。
【請求項11】
薬物送達用担体が、薬物徐放用担体として用いられる、請求項10に記載の薬物送達用担体。
【請求項12】
請求項に記載の機能性ハイドロゲルまたは請求項に記載の機能性ハイドロゲル組成物を含む、再生医療材料。
【請求項13】
請求項1の工程4)が、濃縮前のケラチン溶液を、SH基化学修飾剤、生理活性物質、生体適合性物質のいずれかにより処理してケラチンのチオール基を修飾し、修飾処理されたケラチン溶液を濃縮することにより機能性ハイドロゲルを作製する工程である、請求項1~5のいずれか1に記載の機能性ハイドロゲルの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性ハイドロゲルの製造方法および当該製造方法から製造される新規な機能性ハイドロゲル、ならびに、機能性ハイドロゲルの応用に関する。
【0002】
本出願は、参照によりここに援用されるところの日本出願特願2011-171678号優先権を請求する。
【背景技術】
【0003】
タンパク質の一種であるケラチンは、羽毛や毛髪などの動物組織の非血管組織中に存在することが知られている。ケラチンは、毛髪用化粧料に配合されるなどして利用されているものの、産業界全体として見ると未利用のタンパク質と考えられる。ケラチンを産業用素材として活用することが期待され、研究開発が進められている。
【0004】
ケラチンは、羽毛や毛髪から抽出することができる。ケラチンの抽出方法は従来より公知であり、酸化法、還元法、あるいはそれらを組み合わせた方法が用いられている。ケラチンは多数のシステイン残基を含み、分子間および分子内のジスルフィド結合(S-S結合)により多量体を形成している。水溶液としてケラチンを抽出するためには、S-S結合を開裂させる必要がある。酸化法では、過酢酸や過酸化水素による処理により、S-S結合の開裂後にスルホン酸が生じる。スルホン酸は、再度酸化させることによりS-S結合に戻ることがない。還元法では、チオグリコール酸、2-メルカプトエタノール、ジチオスレイトールなどによりS-S結合の開裂後、チオール基(SH基)に変換させる。酸化法と還元法の組合わせでは、軽微な酸化により一部のS-S結合をスルホン酸にした後、還元が行われる。この場合抽出されたケラチンのシステイン残基は、スルホン酸を有するものとSH基のものが混在する。
【0005】
抽出したケラチンの応用として、水溶性ペプチド、スポンジ、フィルムなどの形態が提案されている。また、ケラチンをゲル化することについても検討されており、架橋剤を用いてゲル化可能であることが知られている。架橋剤を用いてゲル化されたケラチンは、架橋剤が例えば生体に好ましくない毒性を有することや、水溶液への再溶解性を有さないといった点から、用途が限られてしまうという問題がある。そこで、架橋剤を使用せずにケラチンをゲル化する方法が望まれている。
【0006】
架橋剤を用いずに、ケラチン含有組成物に粘度を持たせることが可能となったことが、特許文献1~11および非特許文献1において報告されている。特許文献1~3では、酸化剤を用いてケラチンのジスルフィド結合をスルホン酸に変換させる工程を経て、ゲル状のケラチン含有組成物を作製したことが開示されている。特許文献4~6では、酸化剤を用いて調製した粉末形態のケラチン材料に水溶性溶媒を加えることによってゲル状のケラチン含有組成物を形成すること、ゲル状のケラチン含有組成物内には水に結合し得るスルホン酸基が存在することが開示されている。特許文献7では、人毛にチオグリコール酸を添加して還元処理を行い、ケラチンを抽出した後、塩酸による沈殿、透析、ヨード酢酸による誘導体化を経た後、凍結乾燥することによりカルボキシメチルケラテインの粉末を得たことが開示されている。その後、得られた粉末を水溶液に溶解することにより、ゲル状のケラチン含有組成物を作製することが開示されている。非特許文献1では、人毛にチオグリコール酸を添加して還元処理を行い、ケラチンを抽出した後、pH調整のために水酸化ナトリウム溶液を添加しながら透析を行い、20重量%まで濃縮することによりゲル状のケラチン含有組成物を作製したことが開示されている。
【0007】
特許文献1~11および非特許文献1は、Mark Van Dykeを代表とする同じ研究グループによるものである。特許文献4および特許文献5においては、ゲル状ケラチン含有組成物をシリコンなどで構成された外被に充填することにより、乳房インプラントなどに用いることが開示されている。また特許文献7~11においては、ゲル状ケラチン含有組成物の粘度(単位:ポアズ)が開示されている。粘度とは流体についての物理定数であり、特許文献1~11および非特許文献1に開示されているゲル状ケラチン含有組成物は、固体もしくは半固体ではなく、流動性を有する粘凋な流体であると考えられる。すなわち、ケラチンを材料とする非流動性のゲルは未だ報告されていない。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】米国特許5932552号
【特許文献2】特表2003-501208号公報
【特許文献3】米国特許6270791号
【特許文献4】特表2003-516775号公報
【特許文献5】米国特許6371984号
【特許文献6】米国特許6316598号
【特許文献7】国際公開第WO2007/050387号
【特許文献8】特表2009-513190号公報
【特許文献9】特表2009-527274号公報
【特許文献10】特表2009-527481号公報
【特許文献11】特表2010-524943号公報
【0009】

【非特許文献1】T. Aboushwareb et al., J. Biomed. Mater. Res. Part B: Appl. Biomater.,90B, 45-54 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ケラチンを材料とする非流動性の機能性ハイドロゲルおよび当該機能性ハイドロゲルを製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ケラチン含有材料からケラチンを抽出する際に、ケラチン含有材料にタンパク質安定化剤を添加してケラチンを抽出し、その後タンパク質安定化剤を除去して精製されたケラチン溶液を得、精製されたケラチン溶液を濃縮して濃縮ケラチン溶液を得、濃縮ケラチン溶液から非流動性の機能性ハイドロゲルを作製可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は以下よりなる。
1.以下の工程を含む、機能性ハイドロゲルの製造方法:
1)ケラチン含有材料に、ジスルフィド結合をチオール基に変換するための還元剤を添加してケラチンを抽出する工程;
2)ケラチン含有材料に、チオール基がジスルフィド結合を再形成するのを防ぐためのタンパク質安定化剤を添加する工程;
3)タンパク質安定化剤を除去してケラチンを精製し、ケラチン溶液を得る工程:
4)ケラチン溶液を濃縮することにより機能性ハイドロゲルを作製する工程。
2.タンパク質安定化剤がドデシル硫酸ナトリウムである、前項1に記載の機能性ハイドロゲルの製造方法。
3.工程3)のタンパク質安定化剤の除去が、工程1)および2)により得られたケラチン抽出液150~250 mLに対して透析外液2~5 Lを使用した透析を、少なくとも5回行うことによる、前項1または2に記載の機能性ハイドロゲルの製造方法。
4.工程4)におけるケラチン溶液の濃縮が、40~65℃の温度条件下で行われる、前項1~3のいずれか1に記載の機能性ハイドロゲルの製造方法。
5.ケラチン含有材料にタンパク質変性剤をさらに添加する、前項1~4のいずれか1に記載の機能性ハイドロゲルの製造方法。
6.前項1~5のいずれか1に記載の製造方法により作製される、機能性ハイドロゲル。
7.機能性ハイドロゲルが水性媒体への溶解性を有する、前項6に記載の機能性ハイドロゲル。
8.機能性ハイドロゲル内のチオール基が置換基により修飾されている、前項6または7に記載の機能性ハイドロゲル。
9.前項6~8のいずれか1に記載の機能性ハイドロゲルと、生理活性物質および/または生体適合性物質を含有する、機能性ハイドロゲル組成物。
10.前項6~8のいずれか1に記載の機能性ハイドロゲルを疑似体液に接触させることによる、ハイドロキシアパタイトを含有する機能性ハイドロゲル組成物の製造方法。
11.前項6~8のいずれか1に記載の機能性ハイドロゲルまたは前項9に記載の機能性ハイドロゲル組成物を少なくとも含む、薬物送達用担体。
12.薬物送達用担体が、薬物送達システムとして用いられる、前項11に記載の薬物送達用担体。
13.薬物送達用担体が、薬物徐放用担体として用いられる、前項11または12に記載の薬物送達用担体。
14.前項6~8のいずれか1に記載の機能性ハイドロゲルまたは前項9に記載の機能性ハイドロゲル組成物を含む、再生医療材料。
【発明の効果】
【0013】
本発明の機能性ハイドロゲルの製造方法によれば、非流動性の機能性ハイドロゲルを作製することが可能である。本発明の製造方法により得られた機能性ハイドロゲルは、非血管組織より抽出したケラチンを主材料として作製したものであるため、病原性のリスクが極めて低い。
【0014】
本発明の機能性ハイドロゲルはチオール基を持つため、当該チオール基に、種々の置換基(例えば酸性残基、塩基性残基等)を導入して修飾を施すことにより、ハイドロゲル自体の物性や機能を改変することが可能である。チオール基またはチオール基を修飾する置換基には、種々の生理活性物質や生体適合性物質の導入が可能であり、多様な作用や薬効を発揮しうる機能性ハイドロゲル組成物を作製して利用することが可能となる。本発明の機能性ハイドロゲルは非流動性であるため、再生医療の材料として利用することができる。また、本発明の機能性ハイドロゲルは、薬物送達用担体として用いることができる。本発明の機能性ハイドロゲルは、pH等の条件によって水性媒体への再溶解性を有するため、腸溶性経口剤等の薬物送達システム(DDS)としての利用も可能である。また、薬物の徐放性を有するものは、薬物徐放用担体として用いることが可能である。
【0015】
本発明の機能性ハイドロゲルによれば、薬物等の生理活性物質や生体適合性物質(例えばハイドロキシアパタイト(HAP))を含有させた機能性ハイドロゲル組成物を容易に作製することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の機能性ハイドロゲルの写真である。(実施例1)
【図2】S-カルボキシメチル化ケラチンのハイドロゲル上のHAPを走査電顕で確認した写真である。(実施例5)
【図3】S-カルボキシメチル化ケラチンのハイドロゲル上のHAPについて、粉末X線結晶解析により確認した結果である。(実施例5)
【図4】S-カルボキシメチル化ケラチンのハイドロゲルとHAPとの複合体の徐放能を示す図である。(実施例6)
【図5】サリチル酸内包ハイドロゲルからのサリチル酸徐放能を示す図である。(実施例8)
【図6】サリチル酸含浸ハイドロゲルからのサリチル酸徐放能を示す図である。(実施例8)
【発明を実施するための形態】
【0017】
(機能性ハイドロゲルの製造方法)
本発明は以下の1)~4)の工程を含む機能性ハイドロゲルの製造方法に関するものである。
1)ケラチン含有材料に、ジスルフィド結合をチオール基に変換するための還元剤を添加してケラチンを抽出する工程。
2)ケラチン含有材料に、チオール基がジスルフィド結合を再形成するのを防ぐためのタンパク質安定化剤を添加する工程。
3)タンパク質安定化剤を除去してケラチンを精製し、ケラチン溶液を得る工程。
4)ケラチン溶液を濃縮することにより機能性ハイドロゲルを作製する工程。
本発明の製造方法により非流動性の機能性ハイドロゲルを作製することができる。

【0018】
本明細書において「ケラチン含有材料」は、ケラチンを含有するものであって、本発明の方法によりケラチンを抽出可能な材料であればいかなるものであってもよい。ケラチン含有材料として例えば、羊毛、アルパカ、カシミア、モヘア、アンゴラなどの哺乳類の獣毛、角、ひずめ、ヒトの毛髪、爪、鳥類の羽毛等が挙げられ、これらの材料について脱脂等の処理を施したもの等を用いてもよい。また獣毛から衣料品、絨毯、カーペット等の織物、編み物等を製造する際には、獣毛の廃棄物が多量に排出される。例えば製造工程や使用済みものを合わせると、羊毛等の廃棄物量は約5万トンにも達する。本発明のケラチン含有材料としては羊毛の廃棄物を使用することができるため、産業廃棄物の再利用としても有用である。また、古着や、使用済みの織物、編み物等をケラチン含有材料として用いることも可能である。ケラチン含有材料は、細かく刻んで用いることが好ましい。

【0019】
本発明においては、ケラチン含有材料からケラチンを抽出するために、還元剤を用いる。還元剤としては、ケラチンのジスルフィド結合(以下「S-S結合」と称する)を、チオール基(以下「SH基」と称する)に変換可能なものであればいかなるものであってもよいが、例えばチオグリコール酸、2-メルカプトエタノール、ジチオスレイトールなどのチオール化合物、メタ重亜硫酸ナトリウムなどの重亜硫酸塩、亜硫酸水素ナトリウムなどの亜硫酸塩が挙げられる。還元剤としてはチオール化合物が好ましく、2-メルカプトエタノールがより好ましい。

【0020】
工程1)により還元型ケラチンが生成されるが、還元剤の使用量は、還元剤の種類により異なり、ケラチンのS-S結合をほぼ全てを還元し得る量で添加すればよい。ケラチンのS-S結合のほぼ全てを還元するためには、ケラチンのシステイン含量(モル)に対して100倍~30000倍程度、好ましくは1000倍~20000倍程度のモル量で還元剤を用いることが好ましい。30000倍程度の還元剤を用いれば、ケラチンのS-S結合を還元するのに充分であると考えられる。例えば、還元剤として2-メルカプトエタノールを用いる場合、ケラチン含有材料10 gを、水性媒体100 ml中で、150 mM以上の2-メルカプトエタノールに接触させて、ケラチンを抽出すればよい。後述する実施例では、充分量の還元剤として、1.66 Mの2-メルカプトエタノールを用いている。

【0021】
上記工程1)においては、ケラチン含有材料を懸濁した水性媒体中に、還元剤を添加して、ケラチンを抽出すればよい。あるいは、予め還元剤を添加した水性媒体中にケラチン含有材料を添加してもよい。本工程において使用される水性媒体としては、抽出されるケラチンが機能性ハイドロゲルを作製し得るものであれば、いかなる成分、組成の水性媒体であってもよく、例えば、蒸留水、リン酸塩、炭酸塩、酢酸塩、ほう酸塩、クエン酸塩、トリスなどの緩衝液などをあげることができる。また本発明における水性媒体は、メタノール、エタノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトンなどのケトン類、アセトアミドなどのアミド類を含有する蒸留水や緩衝液であってもよい。

【0022】
工程2)においては、SH基がS-S結合を再形成することを防ぐために、タンパク質安定化剤を添加する。タンパク質安定化剤は、S-S結合形成阻害剤またはタンパク質解離剤と称することもできる。タンパク質安定化剤は、SH基がS-S結合を再形成することを防ぐことができ、ケラチンを可溶化し得るものであればいかなるものであってもよい。タンパク質安定化剤としては、非イオン性界面活性剤、 両イオン性界面活性剤 、陰イオン性界面活性剤などの界面活性剤が例示されるが、好ましくは陰イオン性界面活性剤であり、より好ましくはアルキル硫酸塩類であり、さらに好ましくはドデシル硫酸ナトリウム(以下「SDS」と称する)である。

【0023】
工程2)におけるタンパク質安定化剤は、工程1)の還元剤と別個(例えば還元剤の添加後)に添加されてもよいし、還元剤と同時に添加されてもよい。タンパク質安定化剤は、還元剤と同様、水性媒体中に添加されることが好ましい。タンパク質安定化剤の使用量は、タンパク質安定化剤の種類により異なり、SH基がS-S結合を再形成することを防ぐことにより、ケラチンを沈殿させずに溶液中で可溶化した状態を維持し得る量であればいかなる量であってもよい。例えばタンパク質安定化剤としてSDSを用いる場合、SDSはタンパク質1 gに対して14 gが結合すると考えられている。ケラチン含有材料10 gの半分の重量がタンパク質に相当する場合、SDSを0.25 M程度で使用することで、タンパク質量に対して飽和量のSDSを用いていることとなる。SDSは必ずしも飽和量が必要とは限らず、SH基がS-S結合を再形成することを防ぐことが可能な量を適宜調整して用いることが可能である。具体的には、ケラチン含有材料10 gを、水性媒体100 ml中で、0.1~0.5 MのSDS、好ましくは0.2~0.3 MのSDSに接触させればよい。

【0024】
工程1)および2)においては、さらにケラチン含有材料を懸濁した水性媒体中にタンパク質変性剤を添加し、ケラチンの抽出を行ってもよい。タンパク質変性剤の添加の順番は、特に限定されるものではなく、還元剤やタンパク質安定化剤のいずれかと同時であってもよいし、別個であってもよい。タンパク質変性剤は、ケラチン含有材料中のタンパク質の水素結合の間に割り込むことにより、水素結合による高次構造の安定性を低下させ得るものであればいかなるものであってもよい。タンパク質変性剤としては例えば、尿素やチオ尿素、グアニジン塩酸塩等が挙げられるが、尿素を用いることが好ましい。タンパク質変性剤の使用量は、タンパク質変性剤の種類により異なるが、タンパク質の高次構造の安定性を低下させるものであればいかなる量であってもよい。例えばタンパク質変性剤として尿素を用いる場合、ケラチン含有材料10 gを、水性媒体100 ml中で、4~10 Mの尿素、好ましくは6~8 Mの尿素に接触させればよい。タンパク質の変性処理では、通常8 M程度の尿素を用いるが、4 M程度でも反応時間を調整することにより、タンパク質を変性し得ると考えられる。また、尿素の溶解度を考えると、10 M程度が上限であると考えられる。

【0025】
工程1)および2)により、ケラチン含有材料からケラチンを抽出したケラチン抽出溶液を得ることができる。工程1)および2)においては、水性媒体中でケラチン含有材料と、還元剤およびタンパク質安定化剤(所望によりタンパク質変性剤)とを接触させてインキュベートすることにより抽出反応を行うが、インキュベートは30~60℃の温度条件下で、12~24時間程度行えばよい。インキュベートした後、ケラチンを抽出した後のケラチン含有材料の残渣を、沈殿物等としてろ別などにより溶液より除去する。かくして、残渣を含有しないケラチン抽出溶液を得ることができる。

【0026】
工程3)において、ケラチン抽出溶液からタンパク質安定化剤を除去して、精製されたケラチン溶液(精製ケラチン溶液)を得る。 タンパク質安定化剤の除去方法は、いかなる手法を用いてもよく、タンパク質安定化剤の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、透析膜による透析、限外濾過、脱塩カラムによる透析、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動などの等電点の差を利用する方法などが挙げられるが、これらに限定されない。タンパク質安定化剤がSDSである場合、SDSはタンパク質と複合体を形成しているため、容易に除去することができない。透析膜を用いた透析によりSDSを除去する場合は、タンパク質と複合体を形成したSDSを除去するために、工程1)および2)により得られたケラチン抽出溶液150~250 mLに対して透析外液2~5 L(好ましくは約3 L)を使用して、少なくとも5回透析を行うのが好適である。1回の透析は、2時間以上行うことが好ましい。これらのいずれかの手法によりタンパク質安定化剤を実質的に除去し、精製されたケラチン溶液を得ることができる。

【0027】
本発明において、精製されたケラチン溶液は、タンパク質安定化剤のみならず、還元剤やタンパク質変性剤もケラチン抽出溶液から実質的に除去されたものがより好適である。還元剤やタンパク質変性剤は、上記のタンパク質安定化剤の除去工程により同時に除去されてもよいし、公知の手法もしくは新規に見出される手法によって、別工程により除去されてもよい。

【0028】
精製されたケラチン溶液中のタンパク質濃度は特に限定されないが、例えば10~50 mg/ml程度、好ましくは30~50 mg/ml程度である。

【0029】
工程4)においては、工程3)により得た精製されたケラチン溶液を濃縮することにより濃縮されたケラチン溶液(濃縮ケラチン溶液)を得、濃縮されたケラチン溶液により機能性ハイドロゲルを作製する。精製されたケラチン溶液の濃縮は、いかなる手法により行ってもよいが、タンパク質が変性しない温度条件下で行うことが必要である。濃縮工程は30~65℃、好ましくは45~60℃、より好ましくは50~60℃の温度条件下で行う。

【0030】
精製ケラチン溶液の濃縮は、透析、限外濾過、常圧蒸留、減圧蒸留、減圧化エバポレーターを用いた手法などの既知の濃縮法または新規に見出される濃縮法、あるいはそれらの組み合わせによって行えばよい。例えば有機溶媒などを用いた沈殿法や、凍結乾燥によるケラチン溶液の濃縮は、ケラチンが溶液の状態ではなく沈殿や粉末の状態となってしまうため、本発明においては好ましくない。本発明におけるケラチン溶液の濃縮は、溶液のままで濃縮可能な、前述したような濃縮法を用いることが好ましい。

【0031】
濃縮されたケラチン溶液中のタンパク質濃度は、例えばSH基の修飾されていないケラチンを含有するケラチン溶液の場合は、110~160 mg/ml程度である。タンパク質濃度が110 mg/ml未満の場合は、工程4)において冷却してインキュベートを行ったとしても、流動性のあるゲル状組成物しか得られず、本発明の機能性ハイドロゲルを得ることができない。タンパク質濃度が160 mg/mlより高濃度の場合は、流動性がなくなりゲル化してしまうため、鋳型としての所望の容器に濃縮されたケラチン溶液を流し込むことができなくなってしまう。
なお、後述するような種々の置換基や生理活性物質等により修飾されたSH基を有するケラチンを含有する溶液や、精製されたケラチン溶液中に生理活性物質等を添加した場合などでは、濃縮されたケラチン溶液中のタンパク質濃度は120~160 mg/mlに限定されるものではない。例えば、SH基がカルボキシメチル基、エチルアミノ基、アセトアミド基等で修飾されている場合は、濃縮されたケラチン溶液中のタンパク質濃度は140~180 mg/mlである。

【0032】
工程4)においては、機能性ハイドロゲルを作製するために、濃縮ケラチン溶液を適切な容器に入れてインキュベートする。インキュベートの時間は温度条件や作製したい機能性ハイドロゲルの硬さ(弾性など)によって調節可能であるが、例えば3~16時間程度である。インキュベートは、室温で行ってもよいし、室温より低温の4~20℃の冷却条件下で行ってもよい。濃縮されたケラチン溶液のタンパク質濃度やタンパク質のSH基修飾の種類等に応じて、室温または冷却条件下でハイドロゲルを作製すればよい。例えばタンパク質濃度が比較的高い場合は、室温でも容易にハイドロゲルを作製することができ、濃度が比較的低い場合は、冷却することにより容易にハイドロゲルを作製することができる。

【0033】
上記工程1)~4)により得られた精製もしくは濃縮されたケラチン溶液中のタンパク質、あるいは作製された機能性ハイドロゲルは、無修飾のSH基を有している。かかるSH基は、公知の手法により、様々の置換基、例えば酸性残基、塩基性残基、中性残基により修飾を行うことが可能である。SH基の修飾は、精製されたケラチン溶液や濃縮されたケラチン溶液において行うことも可能であるが、ケラチンをゲル化して機能性ハイドロゲルを作製した後においても、可能である。なお本明細書においては、SH基のカルボキシメチル基による修飾を「カルボキシメチル化」と表す場合と、「S-カルボキシメチル化」と表す場合がある。カルボキシメチル化以外の他の修飾態様についても同様である。

【0034】
酸性残基とは例えば、カルボキシ基(-COOH)、ヒドロキサム酸基(-CONHOH)、アシルシアナミド基(-CONHCN)、スルホ基(-SO3H)、スルホンアミド基(-SO2NH2または-NRSO3H)、アシルスルホンアミド基(-CONHSO2Rまたは-SO2NHCOR)、フェノール基(-C6H4OH)、これらの酸性残基で置換された炭化水素基(例、カルボキシメチル基)等が挙げられる。酸性残基中のRは、水素原子、または置換基を有していてもよい炭化水素基を表わす。酸性残基は、置換基を有していてもよい炭化水素基、C1-6アルコキシ基、保護されていてもよいアミノ基、1-ピペリジニル基または4-モルホリニル基等の保護基により保護されていてもよい。「炭化水素基」としては、C1-15アルキル基、C3-8シクロアルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-10シクロアルケニル基、C6-14アリール基等が挙げられる。またR中における置換基としては、例えば、ニトロ基、水酸基、オキソ基、チオキソ基、シアノ基、カルバモイル基、C1-8炭化水素等で置換されたアミノカルボニル基、カルボキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、スルホ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子が例示される。

【0035】
中性残基とは、例えば、水酸基、水酸基で置換された炭化水素基、水酸基で置換された環状基、環状エーテル基、または環状チオエーテル基等が挙げられる。さらに水酸基は保護されていてもよい。また環状エーテル基や環状チオエーテル基は、置換基を有していてもよい。水酸基を保護する保護基としては、C1-8アルキル基、C2-8アルケニル基、C2-8アルキニル基、C7-15アラルキル基、C3-8シクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、C1-8アシル基、C1-8アルキルスルホニル基等が挙げられ、これらの基はさらに1~6個のハロゲン原子(前記と同じ意味を表す。)等で置換されていてもよい。

【0036】
塩基性残基とは例えば、グアニジノ基、アミノ基、C1-6アルキルカルボニル-アミノ基(例、アセトアミド)、これらの塩基性残基で置換された炭化水素基(例、アミノエチル基)等が挙げられる。これらの塩基性残基は置換基を有していてもよく、置換基としては例えば、C1-6アルキル基、C1-6アシル基等が例示される。

【0037】
上記酸性残基等によるSH基の修飾は、公知の種々の試薬または新規に見出される試薬、すなわちSH基を修飾可能なSH基化学修飾剤を用いて行うことができる。SH基化学修飾剤としては、例えばアルキル化剤を用いることができる。公知のアルキル化剤により、アルキル化されたSH基を有する機能性ハイドロゲルを作製することができる。アルキル化剤としてヨード酢酸を用いた場合、工程3)により得た、精製されたケラチン溶液に、ヨード酢酸を添加して公知の手法により反応させる。反応させた後、工程4)の濃縮工程を行い、機能性ハイドロゲルを作製することができる。

【0038】
(機能性ハイドロゲル)
本発明は工程1)~4)から得られた機能性ハイドロゲル、および、さらにSH基の修飾工程を経て得られた機能性ハイドロゲルに関する。

【0039】
本発明の機能性ハイドロゲルは水性媒体に対して再溶解する性質を有する。「再溶解」とは、一旦半固体のハイドロゲルの形態になったものを水性媒体中に置いた場合に、ハイドロゲルが水性媒体により膨潤した後、溶解に至ることを意味する。本発明の機能性ハイドロゲルが再溶解した後の水性媒体は、機能性ハイドロゲルが再溶解する前の水性媒体と同等の粘度を有する。機能性ハイドロゲルのうち、SH基の修飾工程を経ていないものは、塩基性溶液および中性溶液に対して溶解性を示すが、特に塩基性溶液に対する溶解性が高い。ここで、塩基性溶液とはpH 8~12、好ましくはpH 9.5~11である。また中性溶液とはpH 6~8.5、好ましくはpH 6.5~8.0である。本発明の機能性ハイドロゲルにおいて、SH基に導入する置換基を変更することにより、機能性ハイドロゲルの溶解性を改変することが可能であると考えられる。

【0040】
また本発明の機能性ハイドロゲルの膨潤度について説明する。SH基の修飾されていない機能性ハイドロゲルは、酸性溶液に対して100~500%、好ましくは100~300%の膨潤度を有し、中性溶液に対して1500~3500%、好ましくは2000~3000%の膨潤度を有する。SH基の修飾されていない機能性ハイドロゲルは、塩基性溶液によって比較的短時間で溶解するため、膨潤度は規定されない。酸性溶液に対する膨潤度は、pH 3.5の酢酸緩衝液を用いて測定した場合の値であり、中性溶液に対する膨潤度は、pH 7.5のリン酸緩衝液を用いて測定した場合の値である。塩基性溶液に対する膨潤度は、pH 10.4の炭酸-重炭酸緩衝液を用いて測定した場合の値である。なお膨潤度は、膨潤後重量(g)/乾燥重量(g)×100により算出される。乾燥重量とは、機能性ハイドロゲルを作製するのと等量の濃縮されたケラチン溶液を凍結乾燥して得られた物質の重量である。

【0041】
(機能性ハイドロゲル組成物とその製造方法)
さらに本発明は、機能性ハイドロゲルと、生理活性物質および/または生体適合性物質(単に「生理活性物質等」とも称する)を含む機能性ハイドロゲル組成物を包含する。生理活性物質および/または生体適合性物質は、機能性ハイドロゲル内に含有されていればよく、含有の態様は問わない。例えば、生理活性物質等がSH基を修飾する態様で含有されていてもよいし、SH基以外の残基に結合している態様で含有されていてもよいし、単に機能性ハイドロゲル内に分散もしくは溶解して含有されていてもよい。SH基の生理活性物質等による修飾は、上記置換基による修飾と同様、精製されたケラチン溶液や濃縮されたケラチン溶液において行うことも可能であるが、ケラチンをゲル化して機能性ハイドロゲルを作製した後においても、可能である。

【0042】
本発明で用いられる生理活性物質は、薬理学的に有用なものであれば特に限定をされず、非ペプチド化合物であってもよいし、タンパク質やペプチド化合物であってもよい。非ペプチド化合物としては、抗生物質、抗腫瘍剤、抗炎症剤や、薬理学的に有用な作用を発揮しうる、種々の遺伝子等があげられる。また、ペプチド化合物としては、例えば、インスリン、ソマトスタチン、成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、プロラクチン、エリスロポイエチン、副腎皮質ホルモン、腫瘍壊死因子等の各種サイトカイン、神経成長因子、細胞増殖因子、エンドセリン拮抗作用を有するペプチド類などおよびその誘導体、さらにはこれらのフラグメントまたはフラグメントの誘導体などの生理活性ペプチドが挙げられる。

【0043】
本発明で用いられる生理活性物質は、薬理学的に許容される塩であってもよい。このような塩としては、該生理活性物質がアミノ基等の塩基性基を有する場合、無機酸(無機の遊離酸とも称する)(例、炭酸、重炭酸、塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸等)、有機酸(有機の遊離酸とも称する)(例、コハク酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸等)などとの塩が挙げられる。生理活性物質がカルボキシル基等の酸性基を有する場合、無機塩基(無機の遊離塩基とも称する)(例、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属など)や有機塩基(有機の遊離塩基とも称する)(例、トリエチルアミン等の有機アミン類、アルギニン等の塩基性アミノ酸類等)などとの塩が挙げられる。また、生理活性ペプチドは金属錯体化合物(例、銅錯体、亜鉛錯体等)を形成していてもよい。

【0044】
生体適合性物質としては、ハイドロキシアパタイト等のリン酸カルシウム類、ポリアクリルアミド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸等の合成高分子、ポリシアル酸、アルギン酸およびアルギン酸塩、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、デンプン、ペクチン等の多糖類、ポリ-γ-グルタミン酸等のポリペプチド、これらのコポリマー、ならびにこれらの誘導体、ゼラチン、コラーゲン及びその誘導体等のタンパク質、クエン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、シュウ酸、乳酸、グリコール酸、グルコース、マンノース、ショ糖、マルトースなどの低分子化合物などを含む。

【0045】
生理活性物質および/または生体適合性物質を予め、精製または濃縮されたケラチン溶液中に添加して、ハイドロゲルを作製して機能性ハイドロゲル組成物を作製することができる。精製または濃縮されたケラチン溶液中に生理活性物質等を添加した場合、生理活性物質等は、ケラチン溶液中に分散または溶解した状態であってもよいし、SH基等の残基を修飾した状態であってもよい。かかる手法により作製されたものは、生理活性物質等を内包した機能性ハイドロゲル組成物と称することができる。

【0046】
また、機能性ハイドロゲルを作製した後、生理活性物質等もしくは生理活性物質等の原料となる物質に機能性ハイドロゲルを接触させることにより、生理活性物質等を含有する機能性ハイドロゲル組成物を作製することができる。生理活性物質等もしくは生理活性物質等の原料となる物質の機能性ハイドロゲルへの接触は、これらの物質を含有する溶液に機能性ハイドロゲルを浸漬することにより、行えばよい。かかる手法により作製されたものは、生理活性物質等を含浸した機能性ハイドロゲル組成物と称することができる。

【0047】
生体適合性物質として、ハイドロキシアパタイトが例示される。ハイドロキシアパタイトを含有する機能性ハイドロゲル組成物の製造方法について、説明する。工程1)~4)(所望によりSH基の修飾工程を含む)により機能性ハイドロゲルを得、当該機能性ハイドロゲルを、ハイドロキシアパタイトの原料となる疑似体液に浸漬することにより、機能性ハイドロゲルの表面にハイドロキシアパタイトの結晶が結合した機能性ハイドロゲル組成物を作製することができる。本発明においては、SH基をカルボキシメチル基により修飾した機能性ハイドロゲルを、疑似体液に浸漬してハイドロキシアパタイトの結晶が結合した機能性ハイドロゲル組成物を作製することが好ましい。

【0048】
ここで、疑似体液とは、少なくともカルシウムイオンとリン酸イオンを含む疑似体液である。好ましくは疑似体液とは、リン酸三カルシウム(Ca3(PO4)2)等のリン酸カルシウム類を与える溶液であり、Na+, K+, Mg2+, Ca2+, Cl-, HCO3-, HPO42-, SO42-をヒト血漿にほぼ等しくした溶液が例示される。疑似体液としては例えば、NaCl、NaHCO3、KCl、K2HPO4・3H2O、MgCl2・6H2O、CaCl2、Na2SO4又はNaFなどを水に溶解することによって調製することができる。またpHを7~8に調整することが好ましい。ここで用いる疑似体液のCa2+イオン濃度は2~5 mM、リン酸イオン濃度は0.5~2 mMであることが望ましい。

【0049】
疑似体液に機能性ハイドロゲルを浸漬する時間や温度などの条件は特に限定されないが、例えば70~200時間程度、36~38℃程度で行えばよい。

【0050】
(機能性ハイドロゲルおよび機能性ハイドロゲル組成物の用途)
本発明において得られた機能性ハイドロゲルまたは機能性ハイドロゲル組成物は、種々の用途に用いることが可能である。例えば、機能性ハイドロゲルまたは機能性ハイドロゲル組成物は、薬物を担持して生体に投与するための担体である薬物送達用担体として使用することができる。薬物は、前述の生理活性物質の一例である。

【0051】
本発明の薬物送達用担体は、生体の組織、器官または病変部位などの標的部位にのみ薬物を送達するための担体としても使用可能である。かかる標的部位のみに薬物を送達するための担体は、薬物送達システム(DDS)として用いられ得るものであり、標的指向性を有するものである。DDSとしては、経口剤が例示され、特に腸溶性経口剤が例示される。例えばSH基の修飾されていない機能性ハイドロゲルは、酸性では溶解せず中性以上で溶解することから、腸溶性経口剤への応用が期待される。また機能性ハイドロゲルまたは機能性ハイドロゲル組成物に、標的部位を特異的に認識し、標的部位に指向する物質を含有させてもよい。これにより、本発明の薬物送達用担体は標的部位のみに薬物を送達することができる。標的部位を特異的に認識する物質は、ケラチンのSH基を修飾することにより、機能性ハイドロゲルまたは機能性ハイドロゲル組成物に含有させることができる。標的部位を特異的に認識する物質は、例えば、標的部位に存在する分子と特異的に結合する物質である。当該物質は、タンパク質、ペプチド等のいかなる分子であってもよい。

【0052】
本発明の薬物送達用担体は徐放特性を有するものもあり、薬物徐放用担体として使用することもできる。本発明の機能性ハイドロゲルまたは機能性ハイドロゲル組成物を薬物徐放用担体として用いた場合、ハイドロゲルが埋入部位より容易に拡散することがなく、薬物の薬理作用を局所的かつ継続的に発揮させることができると考えられる。本発明の機能性ハイドロゲルは、水性媒体例えば、中性水溶液中でゆっくりと再溶解するため、ゲルが保持する薬物と外液との交換による薬物の放出、ゲルの溶解による薬物の放出という二重の徐放が可能になると考えられる。

【0053】
また本発明の機能性ハイドロゲルまたは機能性ハイドロゲル組成物において、SH基に種々の修飾を施すことによりハイドロゲルの性質を変化させ、幅広い薬物に適応可能とすることができる。本発明の機能性ハイドロゲルまたは機能性ハイドロゲル組成物において、SH基の修飾態様や薬物の種類を選択することにより、薬物の徐放パターンを制御することが可能である。

【0054】
本発明の薬物送達用担体は、標的指向性と徐放特性の両方を付与されたものであってもよい。

【0055】
また本発明の機能性ハイドロゲルまたは機能性ハイドロゲル組成物は、医薬品のみならず、健康食品への応用も可能であると考えられる。

【0056】
また本発明の機能性ハイドロゲルまたは機能性ハイドロゲル組成物は、骨代替材料や生体組織の再生を誘導・促進し得る足場等の再生医療用材料、細胞培養用基材などに用いることが可能である。本発明のハイドロキシアパタイトを含有する機能性ハイドロゲル組成物に、さらに抗生物質等の薬物を含有させることにより、骨代替材料として有効に使用可能であると考えられる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明の内容を実施例に示して具体的に本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例においてはタンパク質濃度をLowry法により測定した。
【実施例】
【0058】
(実施例1)ハイドロゲルの作製
蒸留水で洗浄後細断した羊毛27 gを、0.26 Mドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1.66 M 2-メルカプトエタノール(2-ME)、8 M尿素を含有する水溶液300 mlと混合し、60℃で一晩振とうした。固形残渣をステンレスメッシュで除去し、ケラチン抽出溶液を得た。次に、SDS、2-ME、尿素を除去するために、抽出液を透析チューブ (Dialysis Membrane size36 ,Wako) に移し、透析外液として約3000 mlの蒸留水を用いて透析して、精製されたケラチン溶液を得た。透析外液の交換は2日間で6回行った。透析中に生じた沈殿物をろ別し、約700 mlの溶液を得た。この段階でLowry法によりタンパク質濃度測定を行った結果、タンパク質濃度20~40 mg/mlであった。
【実施例】
【0059】
限外ろ過器ultra filter (P0200, ADVANTEC)により、精製されたケラチン溶液をタンパク質濃度60~70 mg/mlまで濃縮した後、60℃の湯浴中で撹拌しながらタンパク質濃度が約110~120 mg/mlになるまでさらに濃縮して濃縮されたケラチン溶液を得た。これを適当な容器中、4℃で冷蔵保存することでハイドロゲルを得た。
【実施例】
【0060】
得られたハイドロゲルの写真を図1に示す。本実施例において得られたハイドロゲルは、非流動性であり半固体のものであった。
【実施例】
【0061】
(実施例2)SH基の修飾されたケラチンのハイドロゲルの作製
実施例1と同様に、羊毛よりケラチンの抽出および精製を行なった。但し、透析は透析外液として0.5 M Tris-HCl (pH 8.5)を用いて行い、精製されたケラチン溶液(タンパク質の濃度20~40 mg/ml、0.5 M Tris-HCl (pH 8.5))を得た。
【実施例】
【0062】
ヨード酢酸を終濃度0.12 Mとなるように加え、室温で約2時間撹拌した。反応の進行に伴い、pHが低下するので、適時粉末のトリスヒドロキシメチルアミノメタンを添加しpHを8.5に維持した。反応後、蒸留水に対し1日2回透析外液を交換し透析を行なった。透析後、限外ろ過によりタンパク質濃度約70~80 mg/mlまで濃縮を行なった。エルマン試薬を用い残基SH含量を調べたところ、SH含量は反応前の約20%に減少しており、80%がカルボキシメチル化していると考えられた。60℃のウォーターバスでタンパク質濃度150~160 mg/mlまで濃縮して濃縮ケラチン溶液を得、濃縮ケラチン溶液をシャーレに移して4℃で冷蔵保存することでハイドロゲルを得た。
またヨード酢酸の代わりに、2-ブロモエチルアミンまたはヨードアセトアミドを用いて、SH基がエチルアミノ化、アセトアミド化されたケラチンを得、これらのハイドロゲルを作製した。
【実施例】
【0063】
(実施例3)ハイドロゲルの膨潤度の測定
実施例1にて作製したハイドロゲルを、1 M酢酸緩衝液 (pH 3.5)、1 Mリン酸緩衝液 (pH 7.5)、または1 M炭酸-重炭酸緩衝液(pH 10.4)に浸漬し、膨潤度を測定した。
【実施例】
【0064】
その結果を以下の表1に示す。
【表1】
JP0005944902B2_000002t.gif
1 M酢酸緩衝液 (pH 3.5の酸性領域)では、時間とともにゲルが収縮した。これはケラチンの等電点が酸性側にあるため、電荷の消失と共にゲルが収縮したものと考えられる。1 Mリン酸緩衝液 (pH 7.5の中性領域)では、ゲルは膨潤したが、約48時間で膨潤は止まった。1 M炭酸-重炭酸緩衝液(pH 10.4の塩基性領域)ではゲルは激しく膨潤し、24時間以内に溶解した。なお乾燥重量とは、実施例1にてハイドロゲルを作製するのに用いたのと等量のケラチン溶液と濃縮ケラチン溶液を凍結乾燥して得た物質の重量である。
【実施例】
【0065】
(実施例4)ハイドロゲルの徐放能の評価
ハイドロゲルにブロモフェノールブルー(BPB)を担持させて、様々な条件での徐放能を調べた。
実施例1の方法と同様にして濃縮されたケラチン溶液を得、濃縮されたケラチン溶液にBPBを添加後、冷却しハイドロゲルを作製した。37℃で1 M酢酸緩衝液 (pH 4.4)、1 Mリン酸緩衝液 (pH 7.5)、1 M炭酸-重炭酸緩衝液 (pH 10.2)の各水溶液中でのBPBの徐放を、590 nmの吸光度より求めた。
【実施例】
【0066】
pH 4.4の水溶液中では、BPB担持ハイドロゲルは収縮したが、BPBの徐放は認められなかった。
pH 7.5とpH 10.2で徐放能を確認した結果を以下の表2に示す。
【表2】
JP0005944902B2_000003t.gif
pH 7.5では72時間までBPBの徐放が認められ、72時間で約80%の薬剤が放出された。一方、pH 10.4では高い初期バーストが見られたが、24時間で55%の薬剤が放出されたところで放出は止まった。
なお、ハイドロゲル作製後BPB溶液に浸漬し担持させる方法も試みたところ、より高い初期バーストの後、ほぼ同様な放出パターンを示した。
【実施例】
【0067】
(実施例5)ハイドロキシアパタイトを含有する、SH基がカルボキシルメチル基により修飾されたケラチンのハイドロゲル組成物の作製
実施例2にて作製したSH基がカルボキシルメチル基により修飾されたケラチン(S-カルボキシメチル化ケラチン)のハイドロゲルを37℃、疑似体液(Na+, K+, Mg2+, Ca2+, Cl-, HCO3-, HPO42-, SO42-をヒト血漿にほぼ等しくしたもの)に1~7日間浸漬した。ハイドロゲルが白色結晶で覆われた後、エタノールで洗浄した。析出した結晶について、走査電顕、粉末X線結晶解析を行い、析出した結晶がハイドロキシアパタイト(HAP)であることを確認した。
【実施例】
【0068】
ケラチンゲル上のHAPの走査電顕の写真を図2に示す。ハイドロゲルを疑似体液に浸漬後1日目(上図)と7日目(下図)の写真である。図2よりHAPが析出されていることを確認することができる。また、粉末X線結晶解析の結果を図3に示す。図3中、1d、3d、7dは各々疑似体液に浸漬した1日目、3日目、7日目の結果を示す。疑似体液に浸漬した1日目から、32°付近に低結晶性のハイドロキシアパタイトに帰属されるブロードなピークが確認された。疑似体液への浸漬日数を増すごとに、そのピーク強度が高くなっていく傾向が確認された。これらの結果から、疑似体液への浸漬時間が増すにつれて、ハイドロキシアパタイトの結晶性が高くなることがわかった。
【実施例】
【0069】
(実施例6)ハイドロキシアパタイト(HAP)を含有するS-カルボキシメチル化ケラチンのハイドロゲルの徐放能の評価
実施例5にて作製したHAPを含有するS-カルボキシメチル化ケラチンのハイドロゲル組成物を、BPB水溶液(5 mg/ml)に減圧下で1時間浸漬し、BPBを担持させた。37℃、PBS中でBPBの徐放を、実施例5と同様の方法により観察した。
【実施例】
【0070】
結果を図4に示す。約10時間で総担持量の25%が放出されたが、その後150時間まで観察したところ50%まで徐放が観察された。さらに徐放は継続することが示唆された。
【実施例】
【0071】
(実施例7)ハイドロゲルの膨潤度の測定
実施例3と同様にして、実施例1および実施例2により作製した各種ハイドロゲルを、1 M酢酸緩衝液 (pH 3.5)、1 Mリン酸緩衝液 (pH 7.5)、または1 M炭酸-重炭酸緩衝液(pH 10.4)に浸漬し、膨潤度を測定した。
【実施例】
【0072】
結果を以下の表3に示す。各種ハイドロゲルを各pHの水溶液に浸漬し、体積が変化しなくなった時点(48~72時間)での膨潤度(膨潤後重量/乾燥重量 x 100)を示した。
【表3】
JP0005944902B2_000004t.gif
【実施例】
【0073】
(実施例8)各種ハイドロゲルのサリチル酸徐放能の確認
(1)サリチル酸内包ハイドロゲル
実施例1の方法と同様にして得られた濃縮ケラチン(100~120 mg/ml)に、10 mLの10 mM サリチル酸 in Tris-HCl (pH 7.4)を添加した後、60℃で140-160 mg/mlまで濃縮した。これを冷却静置し、サリチル酸を内包した無修飾のハイドロゲルを得た。直径1 cm、高さ0.5 cmの円柱状にくり抜いた後、50 ml PBS中に浸漬し、放出されたサリチル酸を296 nmの吸光度により検出した。
なおカルボキシメチル化、エチルアミノ化、アセトアミド化は、実施例2と同様に、精製ケラチン溶液(タンパク質の濃度20~40 mg/ml)に、ヨード酢酸、2-ブロモエチルアミン、ヨードアセトアミドをそれぞれ添加することにより行った。その後、無修飾のハイドロゲルと同様に濃縮し、サリチル酸を添加、さらに濃縮を行うことにより、サリチル酸を内包した各種修飾ハイドロゲルを得た。
【実施例】
【0074】
(2)サリチル酸含浸ハイドロゲル
実施例1の方法と同様にして得られたケラチンハイドロゲルを、直径1 cm、高さ0.5 cmの円柱状にくり抜き、これを10 mLの10 mM サリチル酸 in Tris-HCl (pH 7.4)に浸漬しサリチル酸を含浸させた。その後50 ml PBS中に浸漬し、放出されたサリチル酸を296 nmの吸光度により検出した。
【実施例】
【0075】
サリチル酸内包ハイドロゲルのサリチル酸徐放能の結果を、以下の表4と図5に示す。なお、表4中の「Keratin」および図5中の「ケラチンハイドロゲル」は、無修飾のケラチンを表す。サリチル酸の総担持量は、サリチル酸内包ハイドロゲルを1 M塩酸で溶解して求めた。
【表4】
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カルボキシメチル化ケラチンハイドロゲルは約5時間で溶解したため、それに伴ってサリチル酸の放出も約5時間で完了した。アミノエチル化ケラチンハイドロゲルも24時間で溶解し、サリチル酸放出も24時間で完了した。無修飾ケラチンおよびアセトアミド化ケラチンハイドロゲルは、溶解せず、72時間の徐放が見られた。
サリチル酸を内包させたハイドロゲルでは、より溶解しやすくなる傾向が見られた。
【実施例】
【0076】
サリチル酸含浸ハイドロゲルのサリチル酸徐放能の結果を、以下の表5と図6に示す。なお、表5中の「Keratin」および図6中の「ケラチンハイドロゲル」は、無修飾のケラチンを表す。サリチル酸の総担持量は、サリチル酸含浸ハイドロゲルを1 M塩酸で溶解して求めた。
【表5】
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全てのハイドロゲルにおいて、サリチル酸内包ハイドロゲルに比べて高い初期バーストが見られた。ゲルを薬液に浸漬する方法では、ゲル表層に入った薬剤が多くなり初期バーストが高くなったと思われる。カルボキメチル化ケラチン及びアミノエチル化ケラチンハイドロゲルは24時間で溶解し薬剤放出もその時点で完了したが、5~24時間の間で徐放が見られた。無修飾ケラチンは3時間の初期バースト後72時間まで徐放が観察された。アセトアミド化ケラチンハイドロゲルは、比較的初期バースト量が少なく、1時間の初期バースト後72時間まで徐放が起こった。
【実施例】
【0077】
薬剤総担持量は、担持方法、ゲルの種類に関係なく、ほぼ同量のサリチル酸が担持されていた。
サリチル酸は酸性物質であることから、等電点がpH5~6のケラチンに静電的な結合はせず反発すると考えられ、サリチル酸はゲル内で分散していると考えられる。無修飾ケラチンハイドロゲル及びアセトアミド化ケラチンハイドロゲルでは、酸性物質の徐放性を確認することができた。またカルボキシメチル化ケラチンゲルは中性で溶解することから、急速な酸性物質の放出が確認された。アミノエチル化ケラチンは酸性物質を担持させることにより中性においても溶解を起こすことができ、カルボキシメチル化ケラチンに近い放出パターンを示すことがわかった。
【実施例】
【0078】
(実施例9)ハイドロゲルのBPB徐放能の確認
1 M酢酸緩衝液 (pH 4.4)、1 Mリン酸緩衝液 (pH 7.5)、1 M炭酸-重炭酸緩衝液 (pH 10.2)の代わりに、0.2M 塩酸-塩化カリウム緩衝液(pH 1.2)、0.2M リン酸緩衝液(pH 5.8)を用いた以外は、実施例4の方法と同様にして、無修飾ハイドロゲルからのブロモフェノールブルー(BPB)の徐放能の確認を行った。
【実施例】
【0079】
結果を以下の表6に示す。
【表6】
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この結果より、薬剤をハイドロゲルに担持させた場合、胃のpHでは放出が起こらず、腸のpHで放出が起こることが強く示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明により、非流動性の新規な機能性ハイドロゲルが提供される。かかる機能性ハイドロゲルはSH基を含有しており、用途に応じて多様な置換基、生理活性物質、生体適合性物質等によりSH基を修飾し、物性や機能を改変することが可能である。本発明の機能性ハイドロゲルおよび、機能性ハイドロゲル組成物は、薬物送達用担体、薬物送達システム、薬物徐放用担体や、骨代替材料、移植材料などの再生医療材料、細胞培養用基材など、医療・食品といった広範な分野において、応用が可能である。
【0081】
さらに本発明の機能性ハイドロゲルの製造方法は、衣料品、絨毯、カーペット等の織物、編み物等を製造した際の廃棄物や、使用済みの衣料品、織物、編み物等を原料として機能性ハイドロゲルを作製することが可能である。本発明は、資源を有効活用することができ環境に配慮したものであり、社会貢献という観点からも優れた技術である。
図面
【図5】
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【図6】
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【図1】
2
【図2】
3
【図3】
4
【図4】
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