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明細書 :ヒト血液がん細胞のアポトーシスを誘導するヘプタマー型スモールガイド核酸

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5959522号 (P5959522)
登録日 平成28年7月1日(2016.7.1)
発行日 平成28年8月2日(2016.8.2)
発明の名称または考案の名称 ヒト血液がん細胞のアポトーシスを誘導するヘプタマー型スモールガイド核酸
国際特許分類 C12N  15/113       (2010.01)
A61P  35/02        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61K  31/7105      (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAG
A61P 35/02
A61P 35/00
A61K 31/7105
A61K 48/00
請求項の数または発明の数 5
全頁数 12
出願番号 特願2013-528082 (P2013-528082)
出願日 平成24年8月10日(2012.8.10)
国際出願番号 PCT/JP2012/070509
国際公開番号 WO2013/022092
国際公開日 平成25年2月14日(2013.2.14)
優先権出願番号 2011176322
優先日 平成23年8月11日(2011.8.11)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年7月10日(2015.7.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505111982
【氏名又は名称】学校法人 新潟科学技術学園 新潟薬科大学
発明者または考案者 【氏名】梨本 正之
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】伊藤 良子
参考文献・文献 特表2010-539895(JP,A)
特表2010-518880(JP,A)
米国特許出願公開第2010/0324119(US,A1)
国際公開第2009/045443(WO,A1)
TAMURA M., et al.,"Intracellular mRNA cleavage by 3' tRNase under the direction of 2′‐O‐methyl RNA heptamers",Nucleic Acids Res.,2003年,Vol.31, No.15,p.4354-4360
NASHIMOTO M. et al.,"RNA heptamers that direct RNA cleavage by mammalian tRNA 3' processing endoribonuclease",Nucleic Acids Res.,1998年,Vol.26, No.11,p.2565-2571
NAKASHIMA A. et al.,"Gene silencing by the tRNA maturase tRNaseZL under the direction of small-guide RNA",Gene Therapy,2007年,Vol.14,p.78-85
BURKHART C. A. et al.,"Effects of MYCN Antisense OligonucleotideAdministration on Tumorigenesis in a Murine Model of Neuroblastoma",J. Natl. Cancer Inst.,2003年,Vol.95, No.18,p.1394-1403
調査した分野 C12N 15/00
A61K 31/7105
A61K 48/00
A61P 35/00
A61P 35/02
WPI
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
2種以上のヒト血液がん細胞のアポトーシスを誘導する、配列番号1から12のいずれかの7塩基配列からなるヘプタマー型スモールガイド核酸。
【請求項2】
ヒト血液がん細胞がヒト白血病細胞およびヒト骨髄腫細胞である請求項1のヘプタマー型スモールガイド核酸。
【請求項3】
ヒト血液がん細胞のアポトーシスが、3日間で80%以上の細胞死である請求項1のヘプタマー型スモールガイド核酸。
【請求項4】
請求項1に記載のヘプタマー型スモールガイド核酸の1種または2種以上を有効成分として含有するがん治療薬。
【請求項5】
ヒト白血病およびヒト多発性骨髄腫の治療薬である請求項4のがん治療薬。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、TRUEジーンサイレンシングによってヒトがん細胞のアポトーシスを効率よく誘導するヘプタマー型スモールガイド核酸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の発明者らは、TRUEジーンサイレンシング(tRNase ZL-utilizing efficaciousgene silencing)と名付けた新しい遺伝子発現抑制技術を開発している(特許文献1、非特許文献1-4)。tRNase ZLは、tRNAの3’末端部をプロセシングするエンドリボヌクレアーゼ(tRNase Zまたは3’tRNase)の分子量の大きい種類の酵素であり、前駆体tRNAの3’末端部を切除する(特許文献1、非特許文献5、6)。このTRUEジーンサイレンシングは、標的RNAと合成スモールガイド核酸とによって形成されるpre-tRNA様またはマイクロpre-tRNA様複合体を認識することによって、いかなるRNAの任意箇所をも切断することができるという哺乳動物tRNase ZLのユニークな酵素的特性に基づいている(非特許文献7-13)。スモールガイド核酸(特にスモールガイドRNA)は、5’-half tRNA(非特許文献8)、12~16-nt直鎖RNA(非特許文献13)、ヘプタマー型RNA(非特許文献9)およびフック型RNA(非特許文献12)の4種に分けられる。
【0003】
発明者らは、様々なmRNAを標的とするスモールガイド核酸(以下、sg核酸と記載することがある)を、その発現プラスミドまたは2’-O-methyl RNAsを導入することによって、様々な哺乳動物細胞におけるTRUEジーンサイレンシングの有効性を実証している(非特許文献1-4)。例えば、Jurkat細胞におけるHIV-1発現は、5’-half tRNA型sgRNAによって18日間以上抑制され(非特許文献2)、マウス肝臓におけるルシフェラーゼ発現はヘプタマー型sg核酸によって抑制された(非特許文献3)。さらに、TRUEジーンサイレンシングの効果は、RNA干渉(RNA interference: RNAi)と同等であり(非特許文献3、14)、幾つかの場合ではRNAiの効果を凌ぐことも確認されている(非特許文献4)。
【0004】
また最近、発明者らは、tRNase ZLが核内だけでなくサイトゾルにも存在すること、そしてsg核酸として使用していたのと同一の5’-half tRNAが細胞質に存在することを見出している(非特許文献15)。また、発明者らは、ヒトサイトゾルtRNase ZLが、5’-half tRNAの指揮のもとでmRNAを切断することによって遺伝子発現を調節すること、そしてPPM1F mRNAがtRNase ZLの真の標的の一つであることを見出している(非特許文献15)。さらにまた、発明者らは、miR-103を含むマイクロRNAの一部がフック型sg核酸として働き、サイトゾルtRNase ZLによるmRNA切断を介して遺伝子発現を下方調節しえることを証明している(非特許文献16)。以上のことから、TRUEジーンサイレンシングは、細胞内の小さな非コードRNAによって作動されるサイトゾルtRNase ZLの新たに解明された生理学的役割を基礎として機能していることは明らかである。
【0005】
TRUEジーンサイレンシングの最終的な目的の一つは、特定遺伝子の発現を原因とする疾患治療剤または予防剤としてのsg核酸の使用である。例えば、発明者らは既に、がん治療の分子標的として有望視されているBcl-2およびVEGFをコードする細胞内mRNAレベルが、5’-half tRNA型sg核酸、14-nt直鎖型sg核酸またはヘプタマー型sg核酸によって発現抑制されることを見出している(非特許文献1、4、17)。
【0006】
sg核酸を薬剤成分とする場合、薬理学的な視点からは、ヘプタマー型sg核酸が最も好ましい。何故ならば、ヘプタマー(7塩基核酸)は長鎖のsg核酸よりも遙かに簡便かつ安価に合成することができる。また、ヘプタマー型sg核酸は、刺激剤(トランスフェクション試薬等)を用いることなく容易に細胞内に取込ませることができる(非特許文献18)。

【特許文献1】特許第3660718号公報
【非特許文献1】Tamura,M., Nashimoto,C., Miyake,N., Daikuhara,Y., Ochi,K. and Nashimoto,M.(2003) Intracellular mRNA cleavage by 3′ tRNase under the direction of 2′-O-methylRNA heptamers. Nucleic Acids Res., 31, 4354-4360.
【非特許文献2】Habu,Y., Miyano-Kurosaki,N., Kitano,M., Endo,Y., Yukita,M., Ohira,S., Takaku,H., Nashimoto,M. and Takaku,H. (2005) Inhibition of HIV-1 gene expression by retroviral vector-mediated small-guide RNAs that direct specific RNA cleavage by tRNase ZL. Nucleic Acids Res., 33, 235-243.
【非特許文献3】Nakashima,A., Takaku,H., Shibata,H.S., Negishi,Y., Takagi,M., Tamura,M. and Nashimoto,M. (2007) Gene-silencing by the tRNA maturase tRNase ZL under the direction of small guide RNA. Gene Therapy, 14, 78-85.
【非特許文献4】Elbarbary,R.A., Takaku,H., Tamura,M. and Nashimoto,M. (2009) Inhibition of vascular endothelial growth factor expression by TRUE gene silencing. Biochem.and Biophys. Res. Commun., 379, 924-927.
【非特許文献5】Nashimoto,M. (1997) Distribution of both lengths and 5′ terminal nucleotides of mammalian pre-tRNA 3′ trailers reflects properties of 3′processing endoribonuclease. Nucleic Acids Res., 25, 1148-1155.
【非特許文献6】Takaku,H., Minagawa,A., Masamichi,T. and Nashimoto,M. (2003) A candidateprostate cancer susceptibility gene encodes tRNA 3′ processing endoriobonuclease. Nucleic Acids Res., 31, 2272-2278.
【非特許文献7】Nashimoto,M. (1995) Conversion of mammalian tRNA 3′ processing endoribonuclease to four-base-recognizing RNA cutters. Nucleic Acids Res., 23, 3642-3647.
【非特許文献8】Nashimoto,M. (1996) Specific cleavage of target RNAs from HIV-1 with 5′ half tRNA by mammalian tRNA 3′ processing endoribonuclease. RNA, 2, 2523-2524.
【非特許文献9】Nashimoto,M., Geary,S., Tamura,M. and Kasper,R. (1998) RNA heptamers that directs RNA cleavage by mammalian tRNA 3′ processing endoribonuclease. Nucleic Acids Res., 26, 2565-2571.
【非特許文献10】Nashimoto,M. (2000) Anomalous RNA substrates for mammalian tRNA 3′processing endoribonuclease. FEBS Letters, 472, 179-186.
【非特許文献11】Takaku,H., Minagawa,A., Takagi,M. and Nashimoto,M. (2004) The N-terminal half-domain of the long form of tRNase Z is required for the RNase 65 activity. Nucleic Acids Res., 32, 4429-4438.
【非特許文献12】Takaku,H., Minagawa,A., Takagi,M. and Nashimoto,M. (2004) A novel four-base-recognizing RNA cutter that can remove the single 3′ terminal nucleotides from RNA molecules. Nucleic Acids Res., 32, e91.
【非特許文献13】Shibata,H.S., Takaku,H., Takagi,M. and Nashimoto,M. (2005) The T loop structure is dispensable for substrate recognition by tRNase ZL. J. Biol. Chem., 280, 22326-22334.
【非特許文献14】Appasani,K. (2005) RNA interference technology: from basic science to drug development. Cambridge University Press, Cambridge.
【非特許文献15】Elbarbary,R.A., Takaku,H., Uchiumi,N., Tamiya,H., Abe,M., Takahashi,M., Nishida,H. and Nashimoto,M. (2009) Modulation of gene expression by human cytosolic tRNase ZL through 5′-half-tRNA. PLoS ONE, 4, e5908.
【非特許文献16】Elbarbary,R.A., Takaku,H., Uchiumi,N., Tamiya,H., Abe,M., Nishida,H. and Nashimoto,M. (2009) Human cytosolic tRNase ZL can downregulate gene expression through miRNA. FEBS Lett., 583, 3241-3246.
【非特許文献17】Hu,W. and Kavanagh,J.J. (2003) Anticancer therapy targeting the apoptotic pathway. Lancet Oncol., 4, 721-729.
【非特許文献18】Loke,S.L., Stein,C.A., Zhang X.H., Mori,K., Nakanishi,M., Subasinghe,C., Cohen,J.S. and Neckers,L.M. (1989) Characterization of oligonucleotide transport into living cells. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86, 3474-3478.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らによって、ヘプタマー型sg核酸が発がんに関連する遺伝子の発現を効果的に抑制することが示されている。しかしながら、がん治療の観点からは、がん細胞を確実に死滅させる効果が求められる。さらに、薬剤の製造やその使用上の利便性の観点からは、複数種のがん細胞を対象とすることのできるヘプタマー型sg核酸は、大きな利点を有している。
【0008】
本発明は、2種以上の血液がん細胞のアポトーシスを誘導することができる新規なヘプタマー型sg核酸を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、(A、U、G、C)=16,384個もの膨大な数のヘプタマー型スモールガイド核酸から、正常細胞の生存に影響を及ぼすことなく、少なくとも2種のヒト血液がん細胞のアポトーシスを効果的に誘導する12種のヘプタマー型スモールガイド核酸を見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、前記の課題を解決するものとして以下の発明を提供する。
(1)2種以上のヒト血液がん細胞のアポトーシスを誘導する、配列番号1から12のいずれかの7塩基配列からなるヘプタマー型スモールガイド核酸。
(2)ヒト血液がん細胞がヒト白血病細胞およびヒト骨髄腫細胞である前記(1)のヘプタマー型スモールガイド核酸。
(3)ヒト血液がん細胞のアポトーシスが、3日間で80%以上の細胞死である前記(1)のヘプタマー型スモールガイド核酸。
(4)前記(1)に記載のヘプタマー型スモールガイド核酸の1種または2種以上を有効成分として含有するがん治療薬。
(5)ヒト白血病およびヒト骨髄腫の治療薬である前記(1)の癌治療薬。
【発明の効果】
【0010】
本発明のヘプタマー型sg核酸は、2種以上のヒト血液がん細胞のアポトーシスを誘導する。従って、このヘプタマー型sg核酸を含有する薬剤は、それ単独で複数の血液がん(リンパ腫、白血病および骨髄腫)に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】RPMI-8226細胞に無効なsgRNA(mock)を導入した場合のフローサイトメトリー実験の結果である。
【図2】RPMI-8226細胞にHep1(PKCb)(配列番号1)を導入した場合のフローサイトメトリー実験の結果である。
【図3】RPMI-8226細胞にHep1(FGFR3)(配列番号2)を導入した場合のフローサイトメトリー実験の結果である。
【図4】RPMI-8226細胞にHep2(FGFR3)(配列番号3)を導入した場合のフローサイトメトリー実験の結果である。
【図5】HL60細胞に無効なsgRNA(mock)を導入した場合のフローサイトメトリー実験の結果である。なお、分析結果の図にはHL60細胞の代わりにファイル名「2000」を表記している。
【図6】HL60細胞にHep1(PKCb)(配列番号1)を導入した場合のフローサイトメトリー実験の結果である。なお、分析結果の図にはHL60細胞の代わりにファイル名「2000」を表記している。
【図7】HL60細胞にHep1(FGFR3)(配列番号2)を導入した場合のフローサイトメトリー実験の結果である。なお、分析結果の図にはHL60細胞の代わりにファイル名「2000」を表記している。
【図8】HL60細胞に無効なsgRNA(mock)を導入した場合のフローサイトメトリー実験の結果である。
【図9】HL60細胞にHep7(FGFR3)(配列番号10)を導入した場合のフローサイトメトリー実験の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のヘプタマー型sg核酸は、表1に示した12種のいずれか一つである。

【0013】
【表1】
JP0005959522B2_000002t.gif

【0014】
表1には各sgRNAの配列を示している。これら12種のヘプタマー型sgRNAは(A、U、G、C)=16,384個のオリゴヌクレオチドから、血液がん細胞のアポトーシス誘導効果を確認して選択されたものである。そのヌクレオチド配列から切断標的となる遺伝子mRNAが想定されるが、標的遺伝子は1つとは限らない。未知の遺伝子を含め、それぞれのオリゴヌクレオチドとアニールする7ヌクレオチド配列を有するmRNAが複数の遺伝子に由来する場合もある。従って、表1における「名前」の括弧内の記号はそれぞれのヘプタマー型sgRNAが切断標的とするmRNAを転写する遺伝子の1例を示したものである。

【0015】
これらのヘプタマー型sg核酸は、下記実施例に示したように、少なくとも2つの異なるヒト血液がん細胞のアポトーシスを誘導することができる。血液がん細胞は、例えばヒト白血病細胞およびヒト骨髄種細胞である。またアポトーシスの誘導は、がん細胞の80%以上を3日以内に死滅させることを意味する。

【0016】
これらのヘプタマー型sg核酸は、公知の化学合成を用いる方法、あるいは酵素的転写法等にて製造することができる。公知の化学合成を用いる方法として、ホスホロアミダイト法、ホスフォロチオエート法、ホスホトリエステル法等をあげることができ、例えば、ABI3900ハイスループット核酸合成機(アプライドバイオシステムズ社製)やNTS H-6核酸合成機(日本テクノサービス社製)、OligoPilot10核酸合成機(GEヘルスケア社製)により合成することができる。酵素的転写法としては、目的の塩基配列を有するプラスミドまたはDNAを鋳型として、T7、T3、SP6RNAポリメラーゼ等のRNAポリメラーゼを用いた転写をあげることができる。合成法または転写法により製造したヘプタマー型sg核酸は、次いでHPLC等にて精製する。例えばHPLC精製時には、triethylammonium acetate (TEAA)またはhexylammonium acetate(HAA)とacetonitrileの混合溶液を用いて、ヘプタマー型sg核酸をカラムから溶出する。その後、溶出体積の1000倍量の蒸留水で溶出溶液を10時間透析し、透析溶液を凍結乾燥した後、使用時まで冷凍保存する。使用時には蒸留水で最終濃度が100μM程度になるように溶解する。

【0017】
本発明のヘプタマー型sg核酸に用いられる核酸としては、ヌクレオチドまたはそのヌクレオチドと同等の機能を有する分子が重合した分子であればいかなるものでもよい。ヌクレオチドとしては、例えばリボヌクレオチドの重合体であるRNA、デオキシリボヌクレオチドの重合体であるDNA、RNAおよびDNAが混合した重合体、ヌクレオチド類似体を含むヌクレオチド重合体が、それぞれあげられる。特にRNAが好ましい。

【0018】
ヌクレオチド類似体としては、例えばRNAまたはDNAと比較して、ヌクレアーゼ耐性の向上または安定化させるため、相補鎖核酸とのアフィニティーをあげるため、細胞透過性をあげるため、あるいは可視化させるために、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、RNAまたはDNAに修飾を施した分子を挙げるこことができる。例えば、糖部修飾ヌクレオチド類似体やリン酸ジエステル結合修飾ヌクレオチド類似体等があげられる。

【0019】
糖部修飾ヌクレオチド類似体とは、ヌクレオチドの糖の化学構造の一部あるいは全てに対し、任意の化学構造物質を付加あるいは置換したものであればいかなるものでもよく、例えば、2’-O-メチルリボースで置換されたヌクレオチド類似体、2’-O-プロピルリボースで置換されたヌクレオチド類似体、2’-メトキシエトキシリボースで置換されたヌクレオチド類似体、2’-O-メトキシエチルリボースで置換されたヌクレオチド類似体、2’-O-[2-(グアニジウム)エチル]リボースで置換されたヌクレオチド類似体、2’-O-フルオロリボースで置換されたヌクレオチド類似体、糖部に架橋構造を導入する
ことにより2つの環状構造を有する架橋構造型人工核酸(Bridged Nucleic Acid)(BNA)、より具体的には、2’位の酸素原子と4’位の炭素原子がメチレンを介して架橋したロックト人工核酸(Locked Nucleic Acid:LNA)、エチレン架橋構造型人工核酸(Ethylene bridged nucleic acid:ENA)[Nucleic Acid Research, 32, e175 (2004)]等があげられ、さらにペプチド核酸(PNA)[Acc. Chem. Res., 32, 624 (1999)]、オキシペプチド核酸(OPNA)[J. Am. Chem. Soc., 123, 4653 (2001)]、およびペプチドリボ核酸(PRNA)[J. Am. Chem. Soc., 122, 6900 (2000)]等をあげることができる。

【0020】
リン酸ジエステル結合修飾ヌクレオチド類似体としては、ヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の化学構造の一部あるいは全てに対し、任意の化学物質を付加あるいは置換したものであればいかなるものでもよく、例えば、ホスフォロチオエート結合に置換されたヌクレオチド類似体、N3'-P5'ホスフォアミデート結合に置換されたヌクレオチド類似体等をあげることができる[細胞工学, 16, 1463-1473 (1997)][RNAi法とアンチセンス法、講談社(2005)]。

【0021】
ヌクレオチド類似体としては、その他に、核酸の塩基部分、リボース部分、リン酸ジエステル結合部分等の原子(例えば、水素原子、酸素原子)もしくは官能基(例えば、水酸基、アミノ基)が他の原子(例えば、水素原子、硫黄原子)、官能基(例えば、アミノ基)、もしくは炭素数1~6のアルキル基で置換されたものまたは保護基(例えばメチル基またはアシル基)で保護されたもの、核酸に、例えば脂質、リン脂質、フェナジン、フォレート、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、色素など、別の化学物質を付加した分子等を用いてもよい。

【0022】
核酸に別の化学物質を付加した分子としては、例えば、5’-ポリアミン付加誘導体、コレステロール付加誘導体、ステロイド付加誘導体、胆汁酸付加誘導体、ビタミン付加誘導体、Cy5付加誘導体、Cy3付加誘導体、6-FAM付加誘導体、およびビオチン付加誘導体等をあげることができる。

【0023】
本発明のがん治療薬は、本発明のヘプタマー型sg核酸の1種または2種以上を含有する。2種以上のヘプタマー型sg核酸は任意の組み合わせで使用することができる。すなわち、本発明のヘプタマー型sg核酸はそれぞれ単独で、血液がん細胞の生存に必要な遺伝子mRNAに対するTRUEジーンサイレンシングによってがん細胞のアポトーシスを誘導することができる。この場合、各ヘプタマー型sg核酸は、それぞれ異なる標的遺伝子mRNAを切断しているか、同一の標的遺伝子mRNAの異なる箇所を切断している。従って、2種以上のヘプタマー型sg核酸を組み合わせることによって、血液がん細胞の生存に必要な2種以上の遺伝子mRNAに対するTRUEジーンサイレンシングが可能となり、効果的ながん細胞アポトーシスを誘導することができる。あるいは同一の標的遺伝子mRNAでも別の箇所を切断するものを組み合わせることによってがん細胞のアポトーシスを効果的に誘導することができる。また、患者によっては異なる血液がん細胞が共存する場合が想定されるので、その場合は例えば、白血病細胞のアポトーシスに特に有効なものと、骨髄腫細胞のアポトーシスに特に有効なものなどを組み合わせることもできる。

【0024】
ヘプタマー型sg核酸はそれ単独で製剤化することもできるが、通常は薬理学的に許容される1つあるいはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られる任意の方法により製造した医薬製剤として投与するのが望ましい。

【0025】
投与経路は、治療に際し最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口投与、または口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内および静脈内などの非経口投与をあげることができ、望ましくは静脈内投与をあげることができる。

【0026】
経口投与に適当な製剤としては、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤などがあげられる。乳剤およびシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトール、果糖などの糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油などの油類、p-ヒドロキシ安息香酸エステル類などの防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミントなどのフレーバー類などを添加剤として用いて製造できる。カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤などは、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトールなどの賦形剤、デンプン、アルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの界面活性剤、グリセリンなどの可塑剤などを添加剤として用いて製造できる。

【0027】
非経口投与に適当な製剤としては、注射剤、座剤、噴霧剤などがあげられる。注射剤は、塩溶液、ブドウ糖溶液あるいは両者の混合物からなる担体などを用いて調製される。座剤はカカオ脂、水素化脂肪またはカルボン酸などの担体を用いて調製される。また、噴霧剤は受容者の口腔および気道粘膜を刺激せず、かつ有効成分を微細な粒子として分散させ吸収を容易にさせる担体などを用いて調製される。

【0028】
担体として具体的には乳糖、グリセリンなどが例示される。本発明で用いる核酸、さらには用いる担体の性質により、エアロゾル、ドライパウダーなどの製剤が可能である。また、これらの非経口剤においても経口剤で添加剤として例示した成分を添加することもできる。

【0029】
投与量または投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、体重などにより異なるが、通常成人1日当たり10 μg/kg~20 mg/kgである。

【0030】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0031】
(1)方法
(1-1)ヘプタマー型sgRNAの合成
表1に示した12種のヘプタマー型sgRNA(配列番号1-12)を化学合成機にて合成した。
各sgRNAは、5′末端および3′末端がリン酸化され、かつ2′-O-メチル化されている。合成後、各sgRNAはHPLCにて精製した。精製時には、hexylammonium acetate (HAA)とacetonitrileの混合溶液を用いて、合成sgRNAをカラムから溶出した。その後、溶出体積の1000倍量の蒸留水で溶出溶液を10時間透析し、透析した溶液を凍結乾燥した後、使用時まで冷凍保存した。使用時に蒸留水で最終濃度が100 μMになるように溶解し、残りの溶液は冷凍保存した。
【実施例1】
【0032】
(1-2)MTTアッセイ
ヒトがん細胞株(1000個/100 μl培地)の入った96ウエル培養プレートに、細胞内導入試薬なしで各sgRNA(最終濃度1 μM)を加え、37℃のCO2インキュベーターにて培養した。72時間後MTT試薬(テトラカラーワン6 μl、生化学バイオビジネス(株))を加え、3時間後と6時間後に分光光度計で450 nmの吸光度を測定することにより生細胞数の定量(triplicateの平均値として表示)を行なった。ヒトがん細胞株は、白血病細胞HL60、骨髄腫細胞KMM1およびRPMI-8226を使用し、生細胞数量をsgRNA非投与群と比較した。また対照として正常細胞HEK293に対して各sgRNAを導入し、同様のMTTアッセイを行なった。
【実施例1】
【0033】
(1-3)フローサイトメトリー実験
ヒトがん細胞株(1000個/100 μl培地)の入った96ウエル培養プレートに、細胞内導入試薬なしでsgRNA(最終濃度1 μM)を加え、37℃のCO2インキュベーターにて培養した。72時間後、細胞を室温にて15分間phycoerythrin-conjugated Annexin V(BD Pharmingen)および7-AAD(Sigma)により染色し、フローサイトメター(FACSCalibur)を用いて解析した。
【実施例1】
【0034】
(1-4)マウスゼノグラフト実験
免疫不全マウスであるヌードマウスの皮下に、2 X 106個のヒト白血病細胞HL60を細胞外マトリクスと共に移植した。この移植部位に、各ヘプタマー型sgRNA(100 μM)を10 μl毎日1回(連続5日間)投与し、腫瘍の体積を毎日測定した。腫瘍体積が1500 mm3に達した時点で安楽死させた。グループあたり6から8匹のマウスを用いて実験を行い、各sgRNA投与グループの生存日数の中央値と非投与(あるいは効果のないヘプタマー型sgRNA投与)グループの生存日数の中央値の差をヘプタマー型sgRNAによる余命の延長日数とした。
【実施例1】
【0035】
(2)結果
(2-1)MTTアッセイ
結果は表2に示したとおりである。配列番号1-6のヘプタマー型sgRNAは、3種のがん細胞の80%以上を3日間で死滅させた。また、配列番号7-12のヘプタマー型sgRNAは、3種のがん細胞のうち、2種の癌細胞の80%以上を死滅させた。一方、正常細胞HEK293の死滅率は0%であった。
【実施例1】
【0036】
【表2】
JP0005959522B2_000003t.gif
【実施例1】
【0037】
(2-2)フローサイトメトリー実験
結果は図1-4(骨髄細胞腫RPMI-8226)および図5-9(白血病細胞HL60)に示したとおりである。試験したヘプタマー型sgRNAは、効果のないヘプタマー型sgRNA(mock)に較べ、遙かに多くの細胞のアポトーシスを誘導することが確認された。
(2-3)マウスゼノグラフト実験
結果は表2に示したとおりである。試験したヘプタマー型sgRNAは少なくとも3日、最大で26日間もHL60細胞移植マウスを延命させた。
【実施例1】
【0038】
以上の結果から、本発明のヘプタマー型sg核酸は、ヒト血液がん細胞のアポトーシスを有効に誘導させること、またこのアポトーシスの誘導によりがん細胞を有する動物個体を延命させることが可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によって、ヒト血液がんに対する有効な治療法が提供される。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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