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明細書 :熱可塑性ポリマー微粒子からなるマイクロビーズの製造手段

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5750689号 (P5750689)
登録日 平成27年5月29日(2015.5.29)
発行日 平成27年7月22日(2015.7.22)
発明の名称または考案の名称 熱可塑性ポリマー微粒子からなるマイクロビーズの製造手段
国際特許分類 B29B   9/00        (2006.01)
B01J   2/00        (2006.01)
FI B29B 9/00
B01J 2/00 A
請求項の数または発明の数 18
全頁数 16
出願番号 特願2013-528940 (P2013-528940)
出願日 平成24年7月24日(2012.7.24)
国際出願番号 PCT/JP2012/068647
国際公開番号 WO2013/024669
国際公開日 平成25年2月21日(2013.2.21)
優先権出願番号 2011177370
優先日 平成23年8月15日(2011.8.15)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年12月16日(2013.12.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
発明者または考案者 【氏名】鈴木 章泰
個別代理人の代理人 【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
【識別番号】100116090、【弁理士】、【氏名又は名称】栗原 和彦
【識別番号】100113022、【弁理士】、【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
審査官 【審査官】阿川 寛樹
参考文献・文献 特開2008-043944(JP,A)
特開平01-262938(JP,A)
特開2008-137377(JP,A)
特開昭63-197424(JP,A)
実開昭56-159210(JP,U)
特開2008-291192(JP,A)
特開昭50-094074(JP,A)
調査した分野 B29B 9/00- 9/16
特許請求の範囲 【請求項1】
熱可塑性ポリマーからなる原フィラメントが、P1気圧下において送出手段によって送り出されて行く工程と、
該原フィラメントがオリフィス中を通過して、P2気圧下(P1>P2)の噴霧室へ導かれる工程と、
該噴霧室において、該オリフィスを通過してきた該原フィラメントが、赤外線ビームを照射されることによって加熱・溶融され、P1からP2の気圧差によって生ずる該オリフィスからの気体の流れによって微粒子として噴霧される工程と、
を有することによって、平均粒子径が10μm以下の熱可塑性ポリマー微粒子からなるマイクロビーズの製造方法。
【請求項2】
前記マイクロビーズが1μm未満の平均粒子径を有することを特徴とする、請求項1記載の熱可塑性ポリマー微粒子からなるマイクロビーズの製造方法。
【請求項3】
前記原フィラメントがオリフィスへ導入される過程において、該原フィラメントが熱処理される工程を有することを特徴とする、請求項1記載の熱可塑性ポリマー微粒子からなるマイクロビーズの製造方法。
【請求項4】
前記原フィラメントが、示差走査熱量計(DSC)測定による結晶化度が25%以上であることを特徴とする、請求項1記載の熱可塑性ポリマー微粒子からなるマイクロビーズの製造方法。
【請求項5】
前記微粒子又は該微粒子と該微粒子中に混在する副生成された延伸されたフィラメントとが、フィルター上で真空室内に集積されることを特徴とする、請求項1記載の熱可塑性ポリマー微粒子からなるマイクロビーズの製造方法。
【請求項6】
前記フィルターが循環するコンベアを形成していることを特徴とする、請求項記載の熱可塑性ポリマー微粒子からなるマイクロビーズの製造方法。
【請求項7】
前記P1が大気圧であり、前記P2が減圧下であることを特徴とする、請求項1記載の熱可塑性ポリマー微粒子からなるマイクロビーズの製造方法。
【請求項8】
前記赤外線ビームが、炭酸ガスレーザービームであることを特徴とする、請求項1記載の熱可塑性ポリマー微粒子からなるマイクロビーズの製造方法。
【請求項9】
前記赤外線ビームの中心が、前記オリフィスの出口より30mm以内で前記原フィラメントに照射されることを特徴とする、請求項1記載の熱可塑性ポリマー微粒子からなるマイクロビーズの製造方法。
【請求項10】
前記赤外線ビームが、前記原フィラメントの中心でフィラメントの軸方向に沿って上下4mm以内の範囲に照射されることを特徴とする、請求項1記載の熱可塑性ポリマー微粒子からなるマイクロビーズの製造方法。
【請求項11】
前記マイクロビーズが該熱可塑性ポリマーの軟化点以上で、かつ融点以下で熱処理されることを特徴とする、請求項1記載の熱可塑性ポリマー微粒子からなるマイクロビーズの製造方法。
【請求項12】
原フィラメントの送出手段を有するP1気圧下の原フィラメント供給室と、
該原フィラメント供給室に配設されており、該原フィラメントがその中を通過するオリフィスと、
該オリフィスによって該原フィラメント供給室と接続されており、該オリフィスを通過してきた該原フィラメントが赤外線光束により加熱・溶融され、P1からP2の気圧差によって生ずる該オリフィスからの気体の流れによって微粒子として噴霧されるP2気圧下(P1>P2)の噴霧室と、
該噴霧室において、コンベア上に集積された該微粒子を集積するコンベアと、
該コンベア上の微粒子を該コンベアから分離して捕集容器に集めるスクレーパと、
該赤外線光束を照射する赤外線照射装置と、
を具備している、熱可塑性ポリマー微粒子からなるマイクロビーズの製造装置。
【請求項13】
原フィラメントの送出手段を有するP1気圧下の原フィラメント供給室と、
該原フィラメント供給室に配設されており、該原フィラメントがその中を通過するオリフィスと、
該オリフィスによって該原フィラメント供給室と接続されており、該オリフィスを通過してきた該原フィラメントが赤外線光束により加熱され溶融されて、P1からP2の気圧差によって生ずる該オリフィスからの気体の流れによって微粒子として噴霧されるP2気圧下(P1>P2)の噴霧室と、
該噴霧室において、該微粒子又は該微粒子と該微粒子中に混在する副生された延伸されたフィラメントとを堆積させるフィルターと、
該赤外線光束を照射する赤外線照射装置と、
を具備している、熱可塑性ポリマー微粒子からなるマイクロビーズの製造装置。
【請求項14】
前記フィルターがバイブレータを有している、請求項13記載の熱可塑性ポリマー微粒子からなるマイクロビーズの製造装置。
【請求項15】
前記フィルターがコンベアを形成している、請求項13記載の熱可塑性ポリマー微粒子からなるマイクロビーズの製造装置。
【請求項16】
前記原フィラメント供給室が大気下にあり、前記噴霧室が減圧下にある請求項12又は請求項13記載の熱可塑性ポリマー微粒子からなるマイクロビーズの製造装置。
【請求項17】
前記赤外線照射装置が、同一光束を反射させて、前記原フィラメントに複数箇所から該原フィラメントに照射させるための鏡を有する、請求項12又は請求項13記載の熱可塑性ポリマー微粒子からなるマイクロビーズの製造装置。
【請求項18】
前記赤外線照射装置が、複数の箇所から前記原フィラメントに照射させる複数の光源を有する、請求項12又は請求項13記載の熱可塑性ポリマー微粒子からなるマイクロビーズの製造装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリマー微粒子からなるマイクロビーズ(ポリマー微粒子)の製造手段に関し、特に、熱可塑性フィラメントを赤外線ビームにより溶解し、高速の気体流によって噴霧されることにより、10μm以下、さらにはナノ領域に到る平均粒子径を有するマイクロビーズを製造する手段に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー微粒子は、粒子径が小さいこと、表面積が非常に大きいこと、他の物質への分散性が良いことなどから、近年、ポリマーの改質、化粧品や薬剤の添加物、塗料などのレオロジー改質剤などに使用されている。特に、レーザー加工技術と組み合わされて、オーダーメイドの成形品が製造できるラピッドプロトタイピング等の樹脂成形技術用の原料としても注目されている。
【0003】
マイクロビーズの製造方法としては大別して2つの方法がある、その一つは、形の小さいもの、または溶液などの形のないものから、一定の大きさのマイクロビーズを形成するビルトアップ法である。代表的なものとして、乳化重合や懸濁重合のようにポリマーの重合によって形成される方法である。他に、スプレードライ法、アトマイズ(噴霧)法(例えば、特開2008-169275号)などがある。これらは、溶剤や添加剤を使用するので、生成されたマイクロビーズからこれらの溶剤等を完全に除くことが困難である。また、これらの重合法や溶剤等に適するポリマーしか使用できないので、使用できるポリマーに自ずと限界がある。
【0004】
他の方法としてはブレイクダウン法があり、形の大きいものから、一定の大きさのマイクロビーズを形成させるもので、粉砕法が代表的である。粉砕法は、圧縮せん断型ミルやローラーミルなどと分級機と組み合わせて、微細粒子を形成させる。しかし、使用できるポリマーにも限定があり、また大きな機械エネルギーを使用するわりには、微粒子の生成効率悪いこと、真球度の良くない微粒子しか生成できないなどの問題点がある。
【0005】
本発明は、一定の径(例えば100-200μm)のフィラメントから数μmからナノμm領域に到る平均粒子径を有するマイクロビーズの製造手段である。したがって、本発明のマイクロビーズの製造手段は、ブレイクダウン法の1種であり、従来に無い、全く新しい手段を提供する。赤外線ビームによるフィラメントの延伸技術に関しては、本発明者の先出願(国際公開公報WO2008/084797A1)がある。本発明は、この先発明の技術を発展させ、熱可塑性ポリマー微粒子からなるマイクロビーズを有効に生成させる手段を提供することにある。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2008-169275号(第1-2頁)
【特許文献2】国際公開公報WO2008/084797A1(第1-2頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、本発明者の先発明をさらに発展させたものであって、その目的とするところは、あらゆる熱可塑性ポリマーからマイクロビーズの製造を可能にすることにある。また本発明は、溶剤や添加剤を使用せずに、生産性良く安定して製造できる手段を提供することにある。さらに本発明で生成されるマイクロビーズは、粒子径が揃っており、真球度も高い微粒子が生成される特徴も有する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、熱可塑性ポリマー微粒子からなるマイクロビーズの製造手段に関する。熱可塑性ポリマーは、熱により可塑化されるポリマーであり、以下例示する。熱可塑性ポリマーには、ポリエチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステルおよびポリエチレンナフタレートを含むポリエステル、ナイロン(例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12など)を含むポリアミド、ポリプロピレンやポリエチレンを含むポリオレフィン、ポリビニルアルコール系ポリマー、アクリロニトリル系ポリマー、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などを含むフッ素系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、スチレン系ポリマー、ポリオキシメチレン、エーテルエステル系ポリマーなどの熱可塑性ポリマーからなるフィラメントであれば使用することができる。また、ポリ乳酸やポリグリコール酸等の生分解性ポリマーや生体内分解吸収性ポリマー等も使用することができる。なお、上記ポリマーを85%(重量パーセント)以上含む場合は、ポリエステル「系」やポリエステルを「主成分」とするなどと表現する場合がある。
【0009】
本発明のマイクロビーズは、ポリマー微粒子とも呼ばれ、粒子径が1μm未満の場合はナノ粒子と呼ばれることもある。本発明のマイクロビーズは、その平均粒子径が10μm以下であり、特に本発明では平均粒子径が1μm未満、すなわちナノ粒子を容易に製造できることに特徴がある。平均粒子径は、数千から数万倍の電子顕微鏡下で、100個(電子顕微鏡に測長ソフトがついている場合は、それ以上の数の場合もある)の粒子を数えて、算術平均して求める。また、本発明のマイクロビーズは、粒子径分布巾が狭く、また真球度も高いことも特徴の一つである。粒子径分布は、上記で測定した個々の粒子径の測定値より、標準偏差を求め、粒子径分布の尺度とした。本発明におけるマイクロビーズの粒子径分布の標準偏差は、0.2以下であり、好ましくは0.1以下である。粒子径分布巾が小さいことは、一定の範囲の粒子径が求められる用途において、分級の手間を少なくし、また、製品の歩留まりが高いことをも意味する。
【0010】
また、本発明のマイクロビーズは、粒子の真球度が高いことを特徴とする。粒子の真球度は、真の球体から個々の粒子の変形の度合いであり、簡便法として、粒子の長径aと短径bの比b/aで表される。平均真球度は、個々の測定値の算術平均値で示される。本発明におけるマイクロビーズは、平均真球度が0.8以上であることが望ましく、さらに望ましくは0.9以上である。
【0011】
通常のスパンボンド不織布やメルトブロー不織布などの紡糸直結型の不織布において、ダマまたはショットと呼ばれる粒、又は粒子が存在するが、これらはマイクロビーズと区別して考えなければならない。これらのダマ等と呼ばれるものは、径が数十μm以上のものが多く、また、不織布を構成するフィラメント径より数倍以上、通常、10倍以上あり、数もフィラメントの数より圧倒的に少なく、不織布の欠陥として扱われる。本発明における微粒子は、その粒子径が揃っていることも特徴の一つで、この点でもスパンボンド不織布やメルトブロー不織布の「だま」あるいはショットとは異なる。
【0012】
本発明のマイクロビーズの製法において、マイクロビーズとは別に、フィラメントが副生成される場合がある。本発明のマイクロビーズは、平均粒子径が副生成されたフィラメントの平均フィラメント径とほぼ同等か、それより小さく、また、フィラメント数より圧倒的に数が多いことを特徴とする。
【0013】
本発明のマイクロビーズの製造手段は、本発明者の先願発明である国際公開公報WO2008/084797A1に使用されている、炭酸ガスレーザービームとオリフィス間の気圧差を利用したフィラメントの超高倍率延伸手段を、熱可塑性ポリマーのマイクロビーズの製造方法に応用したものである。熱可塑性ポリマーからなる原フィラメントは、数10μmから数100μmの太いフィラメント径から、レーザービームで加熱され、溶融されて、オリフィス前後における気圧差を利用した噴出して高速気体によって噴霧されてマイクロビーズとなる。本発明における熱可塑性ポリマーからなる原フィラメントとは、既にフィラメントとして製造されて、リール等に巻き取られたものである。また紡糸過程において、溶融または溶解フィラメントが冷却や凝固によりフィラメントとなったものを紡糸過程に引き続き使用され、本発明の原フィラメントとなしうる。ここでフィラメントとは、実質的に連続したフィラメントであり、数mmから数十mmの長さである短繊維とは区別される。原フィラメントは、単独で存在することが望ましいが、数本集合されていても使用することができる。
【0014】
本発明の原フィラメントは、結晶化度が高いことが好ましく、それらの原フィラメントを構成するポリマーの最適熱処理温度で熱処理されていることが好ましい。また、熱処理ばかりでなく、配向によって配向結晶化されている場合も使用できる。結晶化度は、示差走査熱量計(DSC)測定による結晶化度が25%以上であることが好ましく、さらに好ましくは35%以上、最も好ましくは40%以上であり、これらの値はポリマーの種類によって異なる。結晶化度が高いことで、赤外線ビームで加熱されたフィラメントが、マイクロフィラメントになる確率よりもマイクロビーズになる確率が高いことが、実験結果確認された。原フィラメントの示差熱分析(DSC)測定は、JISK0129の熱流束DSCで、株式会社リガク製THEM PLUS2 DSC8230Cにより、蓋付きのアルミニウムパンに約2mgを正確に秤取り、標準試料としてアルミナを用い、昇温速度10℃/minで測定した。
【0015】
本発明においは、フィラメントの送出手段から送り出された原フィラメントはオリフィスへ導入される。送出手段は、ニップローラや数段の駆動ローラの組み合わせたもの、または回転するリールなどのほぼ一定の送出速度でフィラメントを送り出すことが出来るものであれば種々のタイプのものが使用できる。
【0016】
この原フィラメントがオリフィスへ導入される過程において、原フィラメントが熱処理される工程を有することができる。実験の結果、マイクロビーズになるには、原フィラメントの結晶化度が高いことが好ましい。そこで、原フィラメントがオリフィスへ導入される前、または導入される過程において、熱処理を施すことが望ましい。プロセス内で熱処理することは、別工程で熱処理するより、工程を1つ減らすことができる。さらにプロセス内で熱処理することは、取り扱いが困難な未延伸原フィラメントが、繰出や巻取を繰り返すことで原フィラメントが損傷することや変質することを防ぎ、安定したマイクロビーズの生成を可能にする。熱処理は、原フィラメントがオリフィスへ導入される前、または過程において、熱風ゾーンを通過させてもよいし、赤外線加熱や熱板加熱によっても行うことができる。なお、熱処理温度は、原フィラメントの温度が、原フィラメントを構成するポリマーの軟化点以上、融点以下であることが好ましい。
【0017】
熱可塑性ポリマーからなる原フィラメントが、P1気圧下で送出手段によって送り出されて、オリフィス中を通過して、P2気圧下(P1>P2)の噴霧室へ導かれる。オリフィスを通過してきた原フィラメントが、赤外線ビームを照射されることによって加熱され溶融され、P1からP2の気圧差によって生ずる気体の流れによって噴霧される。なお、この原フィラメント群が送り出されてくる際の圧力P1が大気圧であり、噴霧室における圧力P2が減圧下であることは、装置を簡便にできるので、好ましい態様の一つである。また、P1を加圧下とし、P2を減圧下にすると、P2の減圧度をそれほど大きくすることなく、P1とP2の差圧を大きくできるので、これも好ましい態様の一つである。
【0018】
なおP1またはP2における気体は、通常室温の空気が使用される。しかし、原フィラメントを予熱や熱処理を行いたい場合は、加熱エアーが使用される場合もある。また、原フィラメントに湿度を供給したい場合は、水蒸気、又は水蒸気を含んだエアーが使用される。さらに、原フィラメントが酸化されることが好ましくない場合は、窒素等の不活性ガスが使用される。
【0019】
本発明における原フィラメント供給室と噴霧室は、オリフィスによってつながっている。オリフィス中では、原フィラメントとオリフィス内径との間の狭い隙間に、P1>P2の圧力差で生じた高速気体の流れが生じる。この高速気体の流れを生じるために、オリフィスの内径Dと繊維の径dとは、あまり大きくかけはなれてはならない。実験結果、D>dであって、D<30d、好ましくはD<10d、さらに好ましくはD<5dであってD>2dであることが最も好ましい。
【0020】
上記におけるオリフィス内径Dは、オリフィスの出口部における径をいう。但し、オリフィス断面が円では無い場合、一番狭い部分の径をDとする。同様に、フィラメントの径も、断面が円ではない場合、一番小さい径の値をDとし、断面の最も小さい箇所を基準に10カ所を測定して算術平均する。また、オリフィスの内径は、均一な径ではなく、テーパ状で出口において狭くなる形状も好ましい。なお、オリフィスの出口は、通常、原フィラメントが上から下へ通過するので、縦に配置されたオリフィスの下方が出口となるが、下から上へ原フィラメントが通過する場合は、オリフィスの上方に出口がある。同様に、オリフィスが横に配置されて、原フィラメントが横方向に通過する場合は、オリフィスの横方向に出口がある。
【0021】
上記のように、オリフィス内を高速の気体が流れるので、オリフィスの内部は抵抗の少ない構造が望ましい。本発明のオリフィスの形状は、1本1本独立したものも使用されるが、板状物に多数の孔を開けて多錘のオリフィスとすることもできる。オリフィスの内部の断面も円形のものが望ましいが、複数のフィラメントを通過させる場合や、フィラメントの形状が楕円やテープ状の場合には、断面が楕円や矩形のものも使用される。また、オリフィス入り口では、原フィラメントを導入しやすいように大きく、出口部分のみ狭い形状が、フィラメントの走行抵抗を小さくし、オリフィスの出口からの風速も大きくできるので好ましい。
【0022】
本発明におけるオリフィスは、本発明人らによる従来の送風管とは役割を異にしている。従来の送風管は、外部から気体を圧入して、レーザーをフィラメントの定位置に当てる役目であり、できるだけ抵抗少なく、定位置に原フィラメントを搬送する役目であった。本発明はそれにプラスすることの、高速の気体流が原フィラメント供給室の気圧P1と噴霧室の気圧P2の気圧差によって発生する自然対流である点で異なる。なお、通常のスパンボンド不織布製造においては、エアーサッカー等によって溶融フィラメントに張力を与えられる。しかし、スパンボンド不織布製造におけるエアーサッカーと本発明におけるオリフィスとは、その作用機構と効果とを全く異にする。スパンボンド法では、溶融フィラメントをエアーサッカー内の高速流体で送られ、エアーサッカー内でそのフィラメント径の細化の殆どが完了する。それに対して、本発明では固体の原フィラメントがオリフィスで送られ、オリフィス内ではフィラメントの細化は始まらず、オリフィスを出た所でレーザービームが照射されることによって、始めて延伸が開始される。またスパンボンド法では、エアーサッカー内に高圧エアーを送りこむことにより高速流体を発生させるが、本発明では、オリフィス前後における部屋の気圧差でオリフィス内の高速流体を発生させる点でも異なる。またその効果も、スパンボンド法では、せいぜい10μm前後のフィラメント径しか得られないのに対して、本発明では、マイクロビーズが生成され、そして、場合によっては数μから1μm未満のフィラメントとマイクロビーズが得られるという点が異なる。
【0023】
本発明の原フィラメントは、赤外線加熱手段(レーザーを含む)により照射される赤外線光束(ビーム)により加熱され溶融される。本発明の赤外線光束の照射は、複数箇所から照射されることもできる。マイクロビーズの生成では、一度に多量の加熱エネルギーを一点に集中させる必要がある。また、原フィラメントの片側のみからの加熱は、非対称加熱により、均一粒子径の生成や真球度の良いビーズを得ることが困難な場合があるからである。このような複数箇所からの照射は、赤外線光束を鏡によって反射させることにより、複数回、原フィラメントの通路に沿って照射させることによって達成できる。鏡は、固定型ばかりでなく、ポリゴンミラーのように回転するタイプも使用することができる。また、複数箇所からの照射の別な手段として、複数光源からの光源を原フィラメントに複数箇所から照射する手段がある。比較的小規模のレーザー光源で安定してコストの安いレーザー発振装置を複数用いて、高パワーの光源とすることがでる。本発明のマイクロビーズの生成では高ワット密度が必要であることより、この複数光源を使用する方式は有効である。
【0024】
赤外線は、波長0.78μmから1mmまでとされているが、高分子化合物のC-Cボンドの3.5μmの吸収を中心としており、0.78μmから20μm程度の近赤外の範囲が特に好ましい。これらの赤外線は光束(ビーム)となって、鏡やレンズにより線状または点状に焦点を絞り、原フィラメントの加熱域をフィラメントの中心に上下に4mm以下に絞り込むスポットヒータやラインヒータと呼ばれる加熱ヒータが使用できる。特にラインヒータは、複数本の原フィラメントが並列して走行する場合に、それらを同時に加熱する場合に好適である。
【0025】
本発明の赤外線加熱には、レーザービームによる加熱が特に好ましい。中でも、10.6μmの波長の炭酸ガスレーザーと、1.06μmの波長のYAG(イットリウム、アルミニウム、ガーネット系)レーザーが特に好ましい。また、アルゴンレーザーも使用することができる。レーザーは、放射範囲を小さく絞り込むことが可能であり、また、特定の波長に集中しているので、無駄なエネルギーも少ない。
【0026】
オリフィスから送り出されてきた原フィラメントは、オリフィスの出口で、赤外線ビームによって加熱され溶融される。オリフィスの直下とは、実験結果、赤外線ビームの中心がオリフィス先端より30mm以下、好ましくは10mm以下、5mm以下であることが最も好ましい。オリフィスから離れると、原フィラメントが振れ、定位置に収まらず、赤外線ビームに安定して捉えられないからである。またオリフィスからの高速気体によってフィラメントに与えられる力が、オリフィスから離れることによって弱くなり、また安定性も小さくなるからと思われる。
【0027】
本発明の原フィラメントは、赤外線ビームにより加熱され溶融される。その場合、加熱される範囲がフィラメントの中心でフィラメントの軸方向に沿って、上下4mm(長さ8mm)以内であることが好ましく、さらに好ましくは上下3mm以下、最も好ましくは上下2mm以下で加熱される。このビームの径は、走行するフィラメントの軸方向に沿って測定する。本発明は、狭い領域で急激にされて噴霧されることにより、高度に極小化され、ナノ領域までに細かく微粒子化を可能にすることができた。なお、この赤外線ビームが照射されるフィラメントがマルチフィラメントである場合は、上記のフィラメントの中心は、マルチフィラメントのフィラメント束の中心を意味する。
【0028】
P1とP2との間の気圧差による高速流体によって噴霧された微粒子(マイクロビーズ)は一定圧力(P2)下の噴霧室内に飛散する。噴霧室の下方に微粒子の集積室を設ける場合もあるが、集積室も噴霧室と同一圧力下にあり、広義の噴霧室に含まれる。微粒子はこの噴霧室内に捕集容器を備え、直接捕集することができる。
【0029】
噴霧された微粒子には、この微粒子と共に副生された延伸されたフィラメントを伴う場合がある。延伸されたフィラメントは、原フィラメントから赤外線ビームによる加熱と、オリフィスから噴出される気体の流れによって発生する延伸張力によって延伸される。本発明は微粒子の製造手段を提供するものであり、延伸されたフィラメントはあくまでも副生されるものである。そして、そのフィラメントの数は、微粒子の数より圧倒的に少なく、少なくとも数10の1、通常は数100分の1よりも小さい。また延伸されたフィラメントの径は、原フィラメントの数10の1、通常は数100分の1よりも小さい。
【0030】
本発明の噴霧された微粒子(マイクロビーズ)、又はこの微粒子と共に副生された延伸されたフィラメントは、噴霧室にコンベアを設け、噴霧された微粒子等をコンベア上に集積することができる。コンベア上に集積された微粒子等は、スクレーパによりコンベアから分離して捕集容器に集めることができる。
【0031】
本発明の噴霧された微粒子等は、フィルターによって噴霧室内に蓄積される。フィルターは、微粒子や延伸されたフィラメントを空気と分離する役割を担う場合と、微粒子と延伸されたフィラメントを分離する役割を担う場合がある。微粒子等を空気と分離する場合は、できるだけ密なフィルター、例えば50メッシュ以上や開口率で40%未満であることが好ましい。また、微粒子と延伸フィラメントを分離する場合は、40メッシュ以下、望ましくは30メッシュ以下、又はで開口率40%以上、好ましくは50%以上であるフィルターで除去されることが望ましい。濾過されたマイクロビーズ等は、噴霧室内に集積される。
【0032】
前記副生成された延伸フィラメントは、フィルターにバイブレータが設けられていることにより、濾過効果を大きくすることができる。また、このフィルターは、循環して走行することによってコンベアを形成し、マイクロビーズを連続的に濾過させることが好ましい。コンベア上に集積された延伸されたフィラメントは、別に設けられた巻取機に巻き取られる。このコンベアであるフィルターにもバイブレータを設けられ、マイクロビーズと延伸されたフィラメントとの分離効率を高めることができる。
【0033】
コンベア上に集積されたマイクロビーズ又は噴霧室に蓄積されたマイクロビーズは、熱処理されることが好ましい。熱処理は、熱風循環や赤外線加熱、または誘導加熱等で加熱されているロールや板上を通過させることで行われる。加熱温度は、マイクロビーズの温度が軟化点以上、融点以下で行われることが望ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、あらゆる熱可塑性ポリマーからマイクロビーズの製造を可能にしたことにしたことに特徴がある。従来のビルトアップ法は、溶剤や添加剤を使用するが、本発明ではそれらを全く使用せずに製造できる。また、従来のブレイクダウン法のように、大きな機械エネルギーを使用する割には生産効率が悪く、また、ポリマーの硬度や軟化点等の制約がある。本発明では、このような硬度や軟化点等の制約がなく、あらゆる熱可塑性ポリマーに適用できる点も特徴の一つである。また、本発明によって生成されるマイクロビーズは、粒子径が揃っており、真球度も高い微粒子が生成される特徴も有する。また、製造手段が1段で簡便であり、生産性も高く、コストの安い製造手段であることに特徴がある。さらに本発明は、閉鎖系の密閉室で行うことができるので、得られたナノ粒子の大気中への飛散を防ぐことができ、作業環境の安全性が高いことも特徴の一つである。
【0035】
本発明によるマイクロビーズは、溶剤や添加剤を使用していないので、バイオメディカル分野、化粧品分野、医薬品開発分野へと使用されることにおいて好適である。また、本発明によるマイクロビーズは、粒子径が揃い、真球度も高いので、それらが求められるラピッドプロトタイピング法の樹脂成形技術用の原料として最適であり、従来ナイロン11が使用されていたこの分野に、種々のポリマー粒子の提供を可能にした。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の熱可塑性ポリマー微粒子からなるマイクロビーズを製造する原理を示す装置の概念図。
【図2】本発明のマイクロビーズ製造手段がフィルターを有する例を示す概念図。
【図3】本発明のマイクロビーズ製造手段がスクレーパにより捕集される例を示す概念図。
【図4】本発明のマイクロビーズ製造手段がフィルターからなるコンベアを有する例を示す装置の概念図。
【図5】本発明のオリフィスの例を示す概念図。
【図6】本発明のオリフィスの他の例を示す概念図。
【図7】本発明の赤外線ビームが鏡によって反射されて原フィラメントに複数個所から照射される例を示す概念図。
【図8】本発明の赤外線ビーム放射装置が複数設置され、原フィラメントに複数個所から照射される例を示す概念図。
【図9】本発明により生成したポリエチレンテレフタレートのマイクロビーズの電子顕微鏡写真(倍率5,000)。
【図10】本発明により生成したポリエチレンテレフタレートのマイクロビーズの粒度径分布を示すヒストグラム。
【図11】本発明により生成したポリ-L-乳酸(PLLA)のマイクロビーズの電子顕微鏡写真(倍率1,000)。
【図12】本発明により生成した高密度ポリエチレンのマイクロビーズの電子顕微鏡写真(倍率10,000)。
【図13】本発明により生成したPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)のマイクロビーズの電子顕微鏡写真(倍率30,000)。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態の例を、図面に基づいて説明する。図1は本発明によって熱可塑性ポリマーからなる極細フィラメントを製造する原理の例を示す概念図で、装置の斜視図で示す。熱可塑性ポリマーからなる原フィラメント1は、リール2に巻かれた状態から繰り出され、繰出ニップローラ(図では省略)等により一定速度で送り出される。なお、図では繰出ニップロールは省略してあるが、リール2が一定回転数で回転することで、繰出ニップロールの代わりをすることもできる。繰出された原フィラメント1は、オリフィス3へと導かれる。このリール2からオリフィス3までの全体は、原フィラメント供給室4内に納められており、圧力P1に保たれている。この圧力P1は、加圧ポンプ(図示されていない)からの圧力をバルブ5によって一定に保たれている。オリフィス3の出口以降は、P2気圧下(この図では負圧状態)にある噴霧室6となる。この圧力P2は、真空ポンプ(図示されていない)からバルブ7によって一定に保たれている。オリフィス3を出た原フィラメント1は、原フィラメント供給室4と噴霧室6との気圧差によってもたらされる高速エアーと共に噴霧室6に導かれる。炭酸ガスレーザー発振装置8より出たレーザービーム9が、オリフィス3直下において原フィラメント1に対して照射される。なお、レーザービーム9を噴霧室6内へ導くには、Zn-Se窓10aを通過する。なお、レーザービーム9は、噴霧室6の壁に当たる部分のZn-Se窓10bを出て、パワーメータ11に達する。レーザービーム9により加熱・溶融された原フィラメントは、P1とP2の気圧差によってもたらされる高速エアーにより、霧状に噴霧されて、噴霧された微粒子群12となって下降する。噴霧室6の下方には、同じP2圧力でつながっている空間である微粒子集積室13がある。その微粒子集積室13の中には微粒子の捕集容器14があり、噴霧された微粒子群12は捕集容器14中に集められる。加圧度や真空度は、調整するバルブ5、7およびポンプの回転数、バイパスバルブ等で調整される

【0038】
図2は、本発明のマイクロビーズ製造手段がフィルターを有する例を概念図で示す。リール21に巻かれている原フィラメント22が繰り出されて負圧であるP2圧力下の噴霧室23へオリフィス24を通じて導かれる。オリフィス24を通過してきた原フィラメント22は、赤外線ビーム25により加熱され、オリフィス24を通過する気体流によって噴霧された微粒子26となる。微粒子26は捕集容器27へと導かれる。捕集容器27の底にはフィルター28が設けられ、そのフィルター28に通じている導管のバルブ29を通じて真空ポンプ(図示されていない)により噴霧室23内の負圧を一定に保たれている。

【0039】
図3は、本発明のマイクロビーズ製造手段がスクレーパにより捕集される例を概念図で示す。オリフィス31から出た原フィラメント32はオリフィス31からの気体流と赤外線ビーム33の加熱により噴霧された微粒子34となる。この微粒子34には、副生された延伸されたフィラメントを伴う場合がある。噴霧された微粒子は、噴霧室(図示されていないがオリフィス31から下に設置されている)中を循環するコンベア35上に集積され、スクレーパ36により削ぎ落されて捕集容器37中に捕集される。

【0040】
図4は、本発明のマイクロビーズ製造手段がフィルターからなるコンベアを有する場合の例を示す概念図で、装置の斜視図で示す。熱可塑性ポリマーからなる原フィラメント41a、41b、41c、・・・は、リール42に巻かれた状態から繰り出され、コーム等(図では省略)を経て、繰出ニップローラ(図では省略)等により一定速度で送り出される。板43には、多数のオリフィス44a,44b,44c、・・・の孔が彫られており、送り出されてきた熱可塑性ポリマーからなる原フィラメント41は、オリフィス44へと導かれる。この図におけるここまでの工程は、原フィラメント供給室の気圧P1が大気圧に保たれて、特別の部屋を必要としない場合について図示してある。オリフィス44a,44b,44c、・・・の出口以降は、P2気圧下(この図では負圧状態)にある噴霧室45となる。この圧力P2は、真空ポンプ(図示されていない)からバルブ46によって一定に保たれている。オリフィス44a,44b,44c、・・・を出た原フィラメント41a、41b、41c、・・・は、原フィラメント供給室と噴霧室との気圧差によってもたらされる高速エアーと共に噴霧室45に導かれる。炭酸ガスレーザー発振装置47より出たレーザービーム48が、オリフィス44直下において、多数本の原フィラメント41に対して照射される。なお、レーザービーム48を噴霧室45内へ導くには、Zn-Seからなる窓49を通過する。原フィラメント41は、レーザービーム49により加熱され、溶融されて、P1とP2の気圧差によってもたらされる高速エアーによって噴霧され、微粒子群と副生成された延伸されたフィラメントからなる噴霧体50a、50b、50c・・・となって下降する。噴霧室45の下方には、フィルターからなるコンベア51が循環し、コンベア51上に噴霧体50が集積される。コンベア51には、バイブレータ52が設けられており、このバイブレータ52の働きによりコンベア51上の噴霧体50から延伸されたフィラメントからなるウェブ53が残り、微粒子群54はフィルターであるコンベア51から落下する。落下した微粒子群54は傾斜している捕集板55に受け止められ、傾斜に沿って落下して捕集箱内56に蓄積される。微粒子群54が捕集板55から捕集箱56へとスムースに移行させるために、この捕集板55にもバイブレータ57を設けておくことが望ましい。また、捕集板55上の微粒子群54は、赤外線加熱等で熱処理することもできる。なお、コンベア31上のウェブ53は、ウェブ巻取機(図示されていない)によって巻き取られ、コンベア51上から連続的に除去される。

【0041】
図5は、本発明のオリフィスの1態様の例をオリフィスの断面図で示す。この図は、フィラメント径がdである原フィラメント61が通過する単純な円筒形オリフィス62を示す。出口部のオリフィス内径はD1である。オリフィス62を出た原フィラメント61に赤外線光束63が照射される。そして、オリフィスの出口から赤外線光束63中心までの距離Lを出来るだけ小さくなるように配置される。

【0042】
第6図に、オリフィスの他の態様の例をオリフィスの断面図で示す。(a)図は、オリフィス入り口部は大きいが、出口部で細くなっており、内径D2になっているタイプのオリフィス64を示す。(b)図は、フィラメントが多数本同時に送り出されるオリフィス65の例を一部断面で示される概念図で示す。(b)図における出口径D3は、一番狭い方向である、厚み方向の径で示される。

【0043】
第7図に、本発明で採用されている赤外線光束を、複数箇所から原フィラメントに照射する手段の例を示す。A図は平面図であり、B図は側面図である。赤外線光束照射機より照射された赤外線光束71aは、原フィラメント72の通る領域P(図の点線内)を通って、鏡73に達し、鏡73で反射された赤外線光束71bとなり、鏡74で反射されて赤外線光束71cとなる。赤外線光束71cは、領域Pを通って、最初の原フィラメントの照射位置から120度後から、原フィラメント72を照射する。領域Pを通過した赤外線光束71cは、鏡75で反射されて、赤外線光束71dとなり、鏡76で反射されて、赤外線光束71eとなる。赤外線光束71eは領域Pを通って、最初の原フィラメントの照射位置の赤外線光束71cとは逆の120度後から、原フィラメント72を照射する。このように、原フィラメント72は、3つの赤外線光束71a、71c、71eにより、120度ずつ対称の位置から均等に原フィラメント72を加熱することができる。

【0044】
第8図に、本発明で採用されている赤外線光束を、複数箇所から原フィラメントに照射する手段の他の例で、複数の光源を使用する例を平面図で示す。赤外線照射装置から放射された赤外線光束77aは、原フィラメント72へ放射される。また、別の赤外線照射装置から放射された赤外線光束77bも、原フィラメント72へ放射される。さらに別の赤外線照射装置から放射された赤外線光束77cも、原フィラメント75へ放射される。このように、複数の光源からの放射は、比較的小規模の光源で安定したコストの安いレーザー発信装置を複数用いて、高パワーの光源とすることができる。なお、図では光源が3個の場合を示したが、2個でもよいし、4個以上も使用できる。複数本のフィラメントからなるマルチフィラメントの延伸では、このような複数光源による延伸が特に有効である。
【実施例1】
【0045】
原フィラメントとして未延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィラメント(繊維径110μm、結晶化度7%)を使用し、260℃で10分間熱処理すると結晶化度41%となった。この熱処理PET原フィラメントを使用し、第1図の噴霧装置によりマイクロビーズ噴霧を行った。この時のレーザー発振装置は、レーザー出力20Wの炭酸ガスレーザー発振装置を使用し、ビーム径(光束)は1.8mmであった。オリフィスとして第6図(a)を使用し、オリフィス径d2は、0.5mmであった。噴霧室の真空度は、P1は常圧、P2は16kPaに調整した。原フィラメントの速度を0.1m/分で供給すると、図9のSEM写真(倍率5,000)のような真球度が高く、粒子径の揃ったマイクロビーズが生成した。このときの粒子径分布は図10に示すように、0.8μmから1.2μmに集中しており、分布巾が狭いことがわかる。このときの平均粒子径は0.9μmで、ナノ粒子に属するものであった。なお、原フィラメントとして、熱処理を施さない結晶化度7%のものをそのまま使用すると、得られるのは、マイクロビーズではなく、ナノフィラメントであった。
【実施例2】
【0046】
原フィラメントとしてポリ-L-乳酸(PLLA)未延伸フィラメント(繊維径75μm)を使用し、160℃で10分間熱処理すると結晶化度60%となった。この熱処理PLLA原フィラメントを使用し、第4図の噴霧装置によりマイクロビーズ噴霧を行った。この時のレーザー発振装置は、レーザー出力20Wの炭酸ガスレーザー発振装置を使用し、ビーム径(光束)は1.8mmであった。オリフィスとして第6図(a)を使用し、オリフィス径d2は、0.5mmであった。噴霧室の真空度は、P1は常圧、P2は16kPaに調整した。原フィラメントの速度を0.1m/分で供給すると、図11のSEM写真(倍率1,000)のような若干延伸されたフィラメントが混じるマイクロビーズが生成した。この延伸されたフィラメントを30メッシュのフィルターでろ過した後のマイクロビーズの平均粒子径は0.76μmであった。
【実施例3】
【0047】
原フィラメントとして高密度ポリエチレン(MFR1.0、結晶化度60%)の延伸フィラメント(繊維径176μm)を使用し、第1図の延伸装置によりマイクロビーズ噴霧を行った。この時のレーザー発振装置は、レーザー出力20Wの炭酸ガスレーザー発振装置を使用し、ビーム径(光束)は1.8mmであった。オリフィスとして第6図(a)を使用し、オリフィス径d2は、0.5mmであった。噴霧室の真空度は、P1は常圧、P2は16kPaに調整した。原フィラメントの速度を0.1m/分で供給すると、図12のSEM写真(倍率10,000)にみられるような真球度が高く、粒子径の揃ったマイクロビーズが生成した。
【実施例4】
【0048】
原フィラメントとして未延伸テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)からなるフィラメント(フィラメント径100μm、結晶化度27%)を使用し、第1図の噴霧装置によりマイクロビーズ噴霧を行った。噴霧室の真空度は、P1は常圧、P2は94kPaに調整した。原フィラメントの速度を0.1m/分で供給すると、図13のSEM写真(倍率30,000)にみられるような真球度が高く、粒子径の揃ったマイクロビーズが生成した。このときの平均粒子径は50nμmで、ナノ粒子に属するものであった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
ポリマー微粒子は、粒子径が小さいこと、表面積が非常に大きいこと、他の物質への分散性が良いことなどから、近年、ポリマーの改質、化粧品や薬剤の添加物、塗料などのレオロジー改質剤などに使用されている。特に、レーザー加工技術と組み合わされて、オーダーメイドの成形品が製造できるラピッドプロトタイピング等の樹脂成形技術用原料としても注目されている。
【符号の説明】
【0050】
1:熱可塑性ポリマーからなる原フィラメント、 2:リール、 3:オリフィス、
4:原フィラメント供給室、 5:バルブ、6:噴霧室、 7:バルブ、
8:炭酸ガスレーザー発振装置、 9:レーザービーム、
10a、10b:Zn-Se窓、 11:パワーメータ、 12:微粒子群、
13:微粒子集積室、 14:捕集容器。
21:リール、 22:原フィラメント、 23:噴霧室、 24:オリフィス、
25:赤外線ビーム、 26:微粒子、 27:捕集容器、 28:フィルター、
29:バルブ。
31:オリフィス、 32:原フィラメント、 33:赤外線ビーム、
34:微粒子、 35:コンベア、 36:スクレーパ、 37:捕集容器。
41a、41b、41c・・・:原フィラメント、
42:リール、 43:板、 44a、44b、44c・・・:オリフィス、
45:噴霧室、 46:バルブ、 47:炭酸ガスレーザー発振装置、
48:レーザービーム、 49:Zn-Se窓、
50a、50b、50c・・・:噴霧体、 51:コンベア、
52:バイブレータ、 53:ウェブ、 54:微粒子群、 55:捕集板、
56:捕集箱、 57:バイブレータ。
61:原フィラメント、 62:オリフィス、 63:赤外線光束、
64、65:オリフィス。
71a、71b、71c:赤外線光束、 72:原フィラメント、
73、74、75、76:鏡、 77a、77b、77c:赤外線光束。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12