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明細書 :連続駆動内燃機関

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-176406 (P2016-176406A)
公開日 平成28年10月6日(2016.10.6)
発明の名称または考案の名称 連続駆動内燃機関
国際特許分類 F02B  75/28        (2006.01)
F02B  71/04        (2006.01)
F02B  75/02        (2006.01)
FI F02B 75/28 D
F02B 71/04
F02B 75/02 Z
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 26
出願番号 特願2015-057094 (P2015-057094)
出願日 平成27年3月20日(2015.3.20)
発明者または考案者 【氏名】石野 洋二郎
【氏名】田中 健太郎
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
要約 【課題】 シリンダーにピストンを挿入した燃焼室を有する連続駆動内燃機関において、別の予備圧縮装置を不要として、高効率・高出力を得られるようにする。
【解決手段】 燃焼室は、主燃焼室と前駆燃焼室に分離され、主燃焼室と前駆燃焼室に予混合ガスを充填した後、前駆燃焼室に充填された予混合ガスを燃焼させ、前駆燃焼室を高圧化し、ピストンを駆動させる前駆膨張行程と、前駆膨張行程より、主燃焼室に充填された予混合ガスを圧縮し燃焼させる主膨張行程により、ピストンを駆動させ、連続して出力を得ることを特徴とする別の予備圧縮装置を不要とする連続駆動内燃機関を提供する。
【選択図】 図4
特許請求の範囲 【請求項1】
シリンダーにピストンを挿入した燃焼室を有する連続駆動内燃機関において、
前記燃焼室は、主燃焼室と前駆燃焼室に分離され、
主燃焼室と前駆燃焼室に予混合ガスを充填した後、
前記前駆燃焼室に充填された予混合ガスを燃焼させ、
前記前駆燃焼室を高圧化し、
ピストンを駆動させる前駆膨張行程と、
前記前駆膨張行程より、主燃焼室に充填された予混合ガスを圧縮し燃焼させる主膨張行程により、ピストンを駆動させ、連続して出力を得ることを特徴とする別の予備圧縮装置を不要とする連続駆動内燃機関。
【請求項2】
1つの前記シリンダーを、前記ピストンにより、前記主燃焼室と前記前駆燃焼室に分離したことを特徴とする請求項1に記載の連続駆動内燃機関。
【請求項3】
一対のシリンダーを有し、
一方のシリンダーに前記主燃焼室を、
他方のシリンダーに前記前駆燃焼室を有することを特徴とする請求項1に記載の連続駆動内燃機関。
【請求項4】
ピストンとシリンダーとの間に形成される燃焼室に予混合ガスを充填し、無圧縮で燃焼させる前駆膨張行程と、
前記前駆膨張工程により得られる動力を、出力貯留装置に貯留し、
前記燃焼室に、予混合ガスを充填させ、
前記出力貯留装置に貯留した動力により、
前記燃焼室を、圧縮させた後、燃焼させる主膨張行程により、
ピストンから連続して出力を得ることを特徴とする連続駆動内燃機関。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダーにピストンを挿入したピストン方式の燃焼室を有する連続駆動内燃機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、直動往復ピストン式内燃機関(たとえば、オットーサイクルに基づくガソリンエンジンあるいはディーゼルサイクルに基づくディーゼルエンジン、など)あるいは回転ピストン式内燃機関(たとえばヴァンケル型ロータリーエンジン)が、実用化されている(非常特許文献1参照)。これらのエンジンには、予備圧縮が行われている。即ち、始動時にスタータを回して予備圧縮し、運転時にフライホイールを用いて予備圧縮することが実用化されている。
また、特許文献1には、車両に搭載したエンジンにおいて、車両が信号などで停止した際、自動的にエンジンを、アイドル運転から停止させ、その後に、車両の発進操作等の再始動条件が成立したとき(例:ブレーキペダルからアクセルペダル踏み替え等)に、自動的にエンジンを再始動させる際の始動性を向上させる例が記載されている。具体的には、スターターモーターだけでエンジンを再始動するのでは無く、停止中のエンジンのシリンダー内に直接燃料を噴射し、圧縮行程気筒に対して初回の燃焼を実行してエンジンを少し逆転させることにより、膨張行程にある気筒のピストン上昇によって筒内圧力を高めるようにしてから、膨張行程気筒で燃焼を行わせることでピストンを押し下げ、エンジンを素早く再始動させるものがある。よって、スターターモーターの負荷を減らしながら始動する方法である。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2014-124754公報
【0004】

【非特許文献1】「エンジン進化の軌跡(蒸気エンジンから環境エンジンへ)」 荒井久治、山海堂。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの内燃機関では、変形する作動空間に閉じ込められた作動流体を、作動空間の変形により予備圧縮したのち、燃焼させる。燃焼の結果、作動流体は高圧化するため、作動空間を膨張させることができ、この際に仕事(出力)を取り出すことができる。燃焼の前に作動流体を予備圧縮する理由は、予備圧縮により高熱効率を得ることができるからである。
【0006】
ただし、従来技術では、作動流体の予備圧縮に要する仕事は、前サイクルまでの仕事の一部を用いる。
このため、機関(エンジン)の始動時には、別の動力を必要とし、スターターモーターとバッテリーあるいはリコイルスターターと人力、などを必要とする。
また、機関の連続作動中にも、前サイクルの出力を使用するため、それを一時的に貯蔵するフライホイールなどの慣性モーメントを有する装置(別の動力)を必要とする。その結果、フライホイールの慣性モーメントによりエンジンの加減速時の応答性が低下する。したがって、従来のエンジンには、別の予備圧縮装置(スターターモーターとバッテリー、フライホイール)を必要とする課題がある。
本発明の目的は、エンジンの始動時および運転時に、別の予備圧縮装置を不要とすることである。したがって、始動時のスターターモーター等、運転時のフライホイールを不要とし、エンジンの加減速時の応答性が向上する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、空間的あるいは時間的に分離した複数の作動空間を用意し、はじめに作動空間に充填された作動流体を(主として加熱・発熱・燃焼などにより)膨張させ、(それがピストンなどを介し)空間的あるいは時間的に分離した別の作動空間に充填された作動流体を予備圧縮した後、(主として加熱・発熱・燃焼などにより)膨張させる。この過程において、膨張する作動流体に面したピストンにより出力を得る。
【0008】
以下、たとえば、ガソリンエンジンのように予混合ガスイを吸気するエンジンを例にとり、説明する。
(空気を吸気し、燃焼前に燃料を噴射し、点火あるいは自着火により燃焼させてもよい。)
ここで、予混合ガスイとは、燃料と酸素(または空気)が燃焼前に一定の割合で均一に混合されている混合ガスのことである。
【0009】
<空間的に分離した複数の作動空間を用いる方法>
発明1は、シリンダーにピストンを挿入した燃焼室を有する連続駆動内燃機関において、燃焼室は、主燃焼室と前駆燃焼室に分離され、主燃焼室と前駆燃焼室に予混合ガスを充填した後、前駆燃焼室に充填された予混合ガスを燃焼させ、前駆燃焼室を高圧化し、ピストンを駆動させる前駆膨張行程と、前駆膨張行程より、主燃焼室に充填された予混合ガスを圧縮し燃焼させる主膨張行程により、ピストンを駆動させ、連続して出力を得ることを特徴とする別の予備圧縮装置を不要とする連続駆動内燃機関である。
この発明によれば、出力を貯蓄する別の予備圧縮装置(始動時のスターターモーターとバッテリー、運転時のフライホイール)が不要となる。また、サイクル内の回転速度の変動を小さくすることができ、なめらかな回転が得られる。
発明2は、1つのシリンダーを、ピストンにより、主燃焼室と前駆燃焼室に分離したことを特徴とする発明1に記載の連続駆動内燃機関である。
発明2によれば、1つのシリンダーとピストンにより、別の予備圧縮装置が不要な連続駆動内燃機関を提供することができる。
発明3は、一対のシリンダーを有し、一方のシリンダーに主燃焼室を、他方のシリンダーに前駆燃焼室を有することを特徴とする発明1に記載の連続駆動内燃機関である。
発明3によれば、一対のシリンダーとピストンにより、別の予備圧縮装置が不要な連続駆動内燃機関を提供することができる。
【0010】
<単一の作動空間を時間的に機能変化させる方法>
発明4に記載の発明は、ピストンとシリンダーとの間に形成される燃焼室に予混合ガスを充填し、無圧縮で燃焼させる前駆膨張行程と、前駆膨張工程により得られる動力を、出力貯留装置に貯留し、前記燃焼室に、予混合ガスを充填させ、出力貯留装置に貯留した動力により、燃焼室を、圧縮させた後、燃焼させる主膨張行程により、ピストンから連続して出力を得ることを特徴とする連続駆動内燃機関である。
ここで、出力貯留装置はフライホイールなどである。この方法によれば、始動時の動力を供給する装置が不要となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る連続駆動内燃機関によれば、はじめに作動空間に充填された作動流体を(主として加熱・発熱・燃焼などにより)膨張させ、(それがピストンなどを介し)空間的あるいは時間的に分離した別の作動空間に充填された作動流体を予備圧縮した後、(主として加熱・発熱・燃焼などにより)膨張させるため、従来製品に比べ、高効率・高出力を得られる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る連続駆動内燃機関の、第1実施形態のピストンタイプ別の構成種類を示す。
【図2】第2実施形態の、直列気筒・完全排気モードの場合の両作動空間の体積変化および状態遷移を示す。
【図3】第2実施形態の、複クランク・リンケージ機構の一例を示す(要部拡大正面図)。
【図4】第3実施形態の直列気筒・完全排気モード(二室単気筒,複クランク・リンケージ機構によるコンロッド経由延長棒駆動ピストンの場合)の機関構成と作動工程を示す。
【図5】第4実施形態の直列気筒・完全排気モード(双頭気筒,複クランク・リンケージ機構によるコンロッド経由延長棒駆動ピストンの場合)の機関構成と作動工程を示す。
【図6】第5実施形態の直列気筒・完全排気モード(双頭気筒,複クランク・リンケージ機構によるコンロッド駆動ピストンの場合)の機関構成と作動工程を示す。
【図7】第6実施形態の遊星歯車・複クランク機構の一例を示す。(1)は平面図、(2)は正面図。
【図8】第7実施形態の直列気筒・完全排気モード(二室単気筒,遊星歯車・複クランク機構による確動カム経由延長棒駆動ピストンの場合)の機関構成と作動工程を示す。
【図9】第8実施形態の直列気筒・完全排気モード(双頭気筒,遊星歯車・複クランク機構による確動カム経由延長棒駆動ピストンの場合)の機関構成と作動工程を示す。
【図10】第9実施形態の直列気筒・完全排気モード(双頭気筒,遊星歯車・複クランク機構による確動カム経由コンロッド駆動ピストンの場合)の機関構成と作動工程を示す。
【図11】第10実施形態の並列気筒・完全排気モードの場合の両作動空間の体積変化および状態遷移を示す。
【図12】第10実施形態の、並列気筒・完全排気モード(並列2気筒,遊星歯車・複クランク機構によるコンロッド駆動ピストンの場合)の機関構成を示す。(1)は側面図、(2)は上側横断面図、(3)は縦断面図、(4)は下側横断面図。
【図13】第11実施形態の並列異種気筒・完全排気モードの場合の両作動空間の体積変化および状態遷移を示す。
【図14】第11実施形態の並列異種気筒・完全排気モード(並列異種2気筒,単純クランク機構によるコンロッド駆動ピストンの場合)の機関構成を示す。(a)は異なる偏心量クランクを使用し、他は同一のコンロッド、ピストン、シリンダーヘッドによる構成を示す側面図、横断面図および縦断面図。(b)は異なるシリンダーヘッドを使用し、他は同一の偏心量クランク、コンロッド、ピストンによる構成を示す縦断面図。(c)は異なるピストンを使用し、他は同一の偏心量クランク、コンロッド、シリンダーヘッドによる構成を示す縦断面図。(d)は異なるコンロッドを使用し、他は同一の偏心量クランク、ピストン、シリンダーヘッドによる構成を示す縦断面図。
【図15】第12実施形態のフライホイール付き単気筒・完全排気モードの場合の作動空間の体積変化および状態遷移を示す。
【図16】第12実施形態のフライホイール付き単気筒・完全排気モード(単気筒、遊星歯車・複クランク機構によるコンロッド駆動ピストンの場合)の機関構成を示す。(1)は側面図、(2)は縦断面図、(3)は横断面図。
【図17】第12実施形態のフライホイール付き単気筒・完全排気モード(単気筒、遊星歯車・複クランク機構によるコンロッド駆動ピストンの場合)の作動工程を示す。
【図18】第13実施形態の並列気筒・不完全排気モードの場合の両作動空間の体積変化および状態遷移を示す。
【図19】第13実施形態の並列気筒・不完全排気モード(並列2気筒、単純クランク機構によるコンロッド駆動ピストンの場合)の機関構成を示す。(1)は側面図、(2)は上側横断面図、(3)は縦断面図、(4)は下側横断面図。
【図20】第14実施形態のフライホイール付き単気筒・不完全排気モードの場合の作動空間の体積変化および状態遷移を示す。
【図21】第14実施形態のフライホイール付き単気筒・不完全排気モード(単気筒、単純クランク機構によるコンロッド駆動ピストンの場合)の機関構成を示す。(1)は側面図、(2)は縦断面図、(3)は横断面図。
【図22】第14実施形態のフライホイール付き単気筒・不完全排気モード(単気筒、単純クランク機構によるコンロッド駆動ピストンの場合)の作動工程を示す。
【図23】第15実施形態のフライホイール付き単気筒・残留ガス洗浄吸気モードの場合の作動空間の体積変化および状態遷移を示す。
【図24】第15実施形態のフライホイール付き単気筒・残留ガス洗浄吸気モード(単気筒,単純クランク機構によるコンロッド駆動ピストンの場合)の機関構成を示す。(1)は側面図、(2)は縦断面図、(3)は横断面図。
【図25】第15実施形態のフライホイール付き単気筒・残留ガス洗浄吸気モード(単気筒、単純クランク機構によるコンロッド駆動ピストンの場合)の作動工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図に基づいて、本発明に係る連続駆動内燃機関の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0014】
(第1実施形態)
図1により、本発明に係る連続駆動内燃機関の第1実施形態の構成を説明する。

【0015】
図1に、空間的に分離した作動空間を使用する場合の、ピストンタイプ別の構成種類を示す。ただし、図では2つのシリンダー1が180度に配置された場合を示すが、シリンダー1の数は多数でもよく、また配置角は180度でなくともよい。

【0016】
図1(1)に示される構造は、180度に配置されたシリンダー1の間に、力を入出力する機械的な機構を持たない「単独ピストン」が挿入されている構造である。両シリンダー1は連続した同一の円筒面とすることができる。ピストン3からの力の入出力は、電磁的に行うことができる。
図1(2)に示される構造は、180度に配置されたシリンダー1の間に、力を入出力する延長棒5が付属するピストン3が挿入されている構造である。延長棒5は、シリンダー1の端面を貫く構造である。両シリンダー1は連続した同一の円筒面とすることができる。
図1(3)に示される構造は、180度に配置されたシリンダー1の間に、ピストン3が挿入され、両シリンダー1の間隙からピストン3に直接駆動し、力を入出力する構造である。
図1(4)に示される構造は、180度に配置されたシリンダー1に、2つの独立したピストン3が挿入され、2つのピストン3と1つのクランク7とが、コネクティングロッド9により回転接続された構造である。
(第2実施形態)

【0017】
図2に、第2実施形態の直列気筒・完全排気モードの場合の両作動空間の体積変化および状態遷移を示してある。図2において、縦軸は上から下方へと作動進行度合いを表す。同図では、クランク角度で示している。また、横軸は作動空間の体積を表す。すなわち、図中の曲線がピストン位置の変化を示し、それより左側の長さが左作動空間の体積を、また右側の長さが右作動空間の体積を表す。図2には、左側に左室の工程が、また右側に右室の工程が、示されている。

【0018】
状態(1)では、ピストンが左端に位置し、左作動空間は無く、右作動空間は最大体積である。
工程(2)では、ピストンの右方向への移動に伴い、右作動空間は無くなり、右作動流体は排出される(主排気)が左作動空間は最大体積となり、新気が充填される(主吸気)。
工程(3)では、ピストンの左方向への移動に伴い、左作動空間の体積は減少する(主吸気戻し、主弱圧縮)が、右作動空間には新気が充填(前駆吸気)される。
工程(4)では、右作動空間の作動流体は点火が行われ(前駆着火)、燃焼し、高圧燃焼ガスとなる。
工程(5)では、左作動流体が圧縮される(前駆膨張および主圧縮)。
工程(6)では、圧縮された左作動流体は点火が行われ(主着火)、燃焼し、高圧燃焼ガスとなる。
工程(7)では、ピストンの右方向への移動に伴い、右作動空間は無くなり、右作動流体は排出される(前駆排気)が、左作動空間は最大体積となる(主膨張)。
工程(8)では、ピストンの左方向への移動に伴い、左作動空間は無くなり、左作動流体は排出される(主排気)が、右作動空間は最大体積となり、新気が充填される(主吸気)。
工程(9)では、ピストンの右方向への移動に伴い、右作動空間の体積は減少する(主吸気戻し、主弱圧縮)が、左作動空間には新気が充填(前駆吸気)される。
工程(10)では、左作動空間の作動流体は点火が行われ(前駆着火)、燃焼し、高圧燃焼ガスとなる。
工程(11)では、右作動流体が圧縮される(前駆膨張および主圧縮)。
工程(12)では、圧縮された右作動流体は点火が行われ(主着火)、燃焼し、高圧燃焼ガスとなる。
工程(13)では、ピストンの左方向への移動に伴い、左作動空間は無くなり、左作動流体は排出される(前駆排気)が、右作動空間は最大体積となり(主膨張)、状態(1)と同じ状態となる。
なお、第2実施形態において、行程1~行程7では、段落0017記載の左作動空間は主燃焼室185を、段落0017記載の右作動空間は前駆燃焼室187を示し、行程8~行程13では、段落0017記載の左作動空間は前駆燃焼室187を、段落0017記載の右作動空間は主燃焼室185を示す。

【0019】
また、図3から図10に、図2の状態遷移を実現する構造の例を示す。
図3は、図2に示したピストンの挙動を実現する「複クランク・リンケージ機構」の一例である。図2の縦軸のクランク角度は、この寸法構成における主クランク角度を意味し、図3の角度を0度とした。
ここで、図3について説明する。
図3の機構は、主クランク11と副クランク13を有し、これらはそれぞれの回転軸まわりに回転する。ただし、副クランク13は主クランク11とは逆方向に1/3の回転速度で回転する。主クランク軸15には主リンケージ17が、副クランク軸19には副リンケージ21が回転接続され、副リンケージ21のもう一方の端部と主リンケージ17の端部も回転接続される。また、主リンケージ17のもう一方の端部は、コンロッド23の端部と回転接続される。もう一方のコンロッド23端部は、ピストン3あるいは延長棒5に回転接続される。主リンケージ17の形状は、図3では、3つの接続部が一直線に配置されているが、一直線に配置されなくとも良い。

【0020】
(第3実施形態)
図4は、第3実施形態の直列気筒・完全排気モード(二室単気筒,複クランク・リンケージ機構によるコンロッド経由延長棒駆動ピストンの場合)の機関構成と作動工程を示す。図4では、作動工程の1サイクルを(1)~(13)まで順番に示してある。
この構造は、図1(2)に示す構造の具体例である。
なお、大気圧の新気が充填された図4(4)あるいは図4(10)から始動することで、始動仕事することなく、機関を始動することができる。

【0021】
<構成>
はじめに、図4(1)を用いて構造の説明を行う。
一つの円筒内面と左右端面を有するシリンダー1に、右向きに延長棒5が取り付けられたピストン3が挿入されている。延長棒5は右端面を貫いている。延長棒5の右端は、延長棒防振部によって振れ止めが為されていてもよい。
シリンダー1の左右端面には、左吸気管25および左排気管27、ならびに右吸気管29および右排気管31が接続され、それぞれに、左吸気バルブ33および左排気バルブ35、ならびに右吸気バルブ37および右排気バルブ39が取り付けられている。シリンダー左端面とピストン3との間のシリンダー内空間を左室、ピストン3とシリンダー1右端面との間のシリンダー空間を右室と呼ぶ。
延長棒5のシリンダー外部の部分には、第2実施形態で説明した「複クランク・リンケージ機構」が取り付けられる。
なお、図中黒丸印はシール部材41を示す。

【0022】
<作動工程(図4)>
図4において、(1)から(13)は、図2における同番号の状態および工程を表す。

【0023】
はじめに、(1)では、右室に前サイクルで発生した燃焼ガス(他のガスでも可)が充填されており、バルブは4つとも閉である。
(2)の工程では、バルブの状態は、左吸気バルブ33:開、左排気バルブ35:閉、右吸気バルブ37:閉、右排気バルブ39:開の状態であり、ピストン3は、左端面から右端面へと移動する。この際、左吸気バルブ33から流入した新気が左室に充填される。また、右排気バルブ39から右室に充填されていた燃焼ガスが排気される。
(3)の工程では、バルブの状態は、左吸気バルブ33:開、左排気バルブ35:閉、右吸気バルブ37:開、右排気バルブ39:閉の状態であり、ピストン3は、右端面から左方向へ移動する。この際、右吸気バルブ37から流入した新気が右室に充填される。また、左吸気バルブ33から左室に充填されていた新気が逆流する。なお、この工程で、左吸気バルブ33を閉とし、運動部品の慣性力を利用し、左室の新気を圧縮してもよい。
(4)の工程では、バルブの状態は全てのバルブが閉の状態であり、点火装置により右室の新気を燃焼させ、高温高圧の燃焼ガスに変える。

【0024】
(5)の工程では、バルブの状態は全てのバルブが閉の状態であり、右室の燃焼ガスがピストン3を左方向に押し、左室の新気が圧縮される。この工程では、右室の燃焼ガスの膨張仕事が、左室の新気の圧縮仕事より大きい場合、ピストン駆動機構に軸出力が発生する。
(6)の工程では、バルブの状態は全てのバルブが閉の状態であり、点火装置(あるいは自着火)により左室の新気を燃焼させ、高温高圧の燃焼ガスに変える。
(7)の工程では、バルブの状態は、左吸気バルブ33:閉、左排気バルブ35:閉、右吸気バルブ37:閉、右排気バルブ39:開の状態であり、左室の燃焼ガスがピストン3を右方向に押し、右室の燃焼ガスが排気される。
この工程の途中まで右排気バルブ39を閉とすることで、壁面冷却され負圧となった右室の燃焼ガスにピストン3を右方向に引かせてもよい。(7)の工程では、ピストン駆動機構に軸出力が発生する。

【0025】
以後の工程、すなわち(8)から(13)までの工程は、前記(1)から(7)までの工程を左右反対にした工程であり、以下に記載する。
(8)の工程では、バルブの状態は、左吸気バルブ33:閉、左排気バルブ35:開、右吸気バルブ37:開、右排気バルブ39:閉の状態であり、ピストン3は右端面から左端面へと移動する。この際、右吸気バルブ37から流入した新気が右室に充填される。また、左排気バルブ35から左室に充填されていた燃焼ガスが排気される。
(9)の工程では、バルブの状態は、左吸気バルブ33:開、左排気バルブ35:閉、右吸気バルブ37:開、右排気バルブ39:閉の状態であり、ピストン3は左端面から右方向へ移動する。この際、左吸気バルブ33から流入した新気が左室に充填される。また、右吸気バルブ37から右室に充填されていた新気が逆流する。なお、この工程で右吸気バルブ37を閉とし、運動部品の慣性力を利用し、右室の新気を圧縮してもよい。
(10)の工程では、バルブの状態は全てのバルブが閉の状態であり、点火装置により左室の新気を燃焼させ、高温高圧の燃焼ガスに変える。

【0026】
(11)の工程では、バルブの状態は全てのバルブが閉の状態であり、左室の燃焼ガスがピストン3を右方向に押し、右室の新気が圧縮される。この工程では、左室の燃焼ガスの膨張仕事が、右室の新気の圧縮仕事より大きい場合、ピストン駆動機構に軸出力が発生する。
(12)の工程では、バルブの状態は全てのバルブが閉の状態であり、点火装置(あるいは自着火)により右室の新気を燃焼させ、高温高圧の燃焼ガスに変える。
(13)の工程では、バルブの状態は、左吸気バルブ33:閉、左排気バルブ35:開、右吸気バルブ37:閉、右排気バルブ39:閉の状態であり、右室の燃焼ガスがピストン3を左方向に押し、左室の燃焼ガスが排気される。
この工程の途中まで左排気バルブ35を閉とすることで、壁面冷却され負圧となった左室の燃焼ガスにピストン3を左方向に引かせてもよい。
(13)の工程では、ピストン駆動機構に軸出力が発生する。
(13)の工程が行われると、(1)と同じ状態となり、1サイクルが完了する。
なお、第3実施形態において、行程1~行程7では、段落0021記載の左室は主燃焼室185を、段落0021記載の右室は前駆燃焼室187を示し、行程8~行程13では、段落0021記載の左室は前駆燃焼室187を、段落0021記載の右室は主燃焼室185を示す。

【0027】
(第4実施形態)
図5は、第4実施形態の直列気筒・完全排気モード(双頭気筒,複クランク・リンケージ機構によるコンロッド経由延長棒駆動ピストンの場合)の機関構成と作動工程を示す。図5では、作動工程の1サイクルを(1)~(13)まで、順番に示してある。
この構造は、図1(3)に示す構造の具体例である。
なお,大気圧の新気が充填された図5(4)あるいは図5(10)から始動することで、始動仕事することなく、機関を始動することができる。

【0028】
<構成>
はじめに、図5(1)を用いて構造の説明を行う。
第2実施形態で説明した「複クランク・リンケージ機構」の左右に置かれた、中心軸が互いに180度の2つの円筒内面シリンダーと、それらの端面に設置した左端面および右端面と、から成る双頭シリンダー43がある。また、左シリンダー部に左ピストン45を挿入し、右シリンダーに右ピストン47を挿入し、さらに両ピストンを延長棒49で接続する。延長棒49は、延長棒防振部によって振れ止めが為されていてもよい。延長棒49には、図3に示したような、複クランク・リンケージ機構のコンロッド23の解放端を回転接続する。
シリンダーの左右端面には、左吸気管25および左排気管27、ならびに右吸気管29および右排気管31が接続され、それぞれに左吸気バルブ33および左排気バルブ35、ならびに右吸気バルブ37および右排気バルブ39が取り付けられている。シリンダー左端面と左ピストン45との間のシリンダー内空間を左室、右ピストン47とシリンダー右端面との間のシリンダー空間を右室と呼ぶ。
第3実施形態に対して、第4実施形態の構成の利点は、ピストンの裏面からピストン・シリンダー間の潤滑を行うことができること、延長棒49が右室を貫かず、延長棒49による冷却熱損失が無いこと、である。
なお、図中黒丸印はシール部材41を示す。

【0029】
<作動工程>
第4実施形態の作動工程は、第3実施形態の作動工程と同じである。
図5(1)~(13)の各図の状態および工程は、図4(1)~(13)の各図と対応する。
なお、第4実施形態において、行程1~行程7では、段落0028記載の左室は主燃焼室185を、段落0028記載の右室は前駆燃焼室187を示し、行程8~行程13では、段落0028記載の左室は前駆燃焼室187を、段落0028記載の右室は主燃焼室185を示す。

【0030】
(第5実施形態)
図6は、第5実施形態の直列気筒・完全排気モード(双頭気筒,複クランク・リンケージ機構によるコンロッド駆動ピストンの場合)の機関構成と作動工程を示す。図6では、作動工程の1サイクルを(1)~(13)まで,順番に示してある。
この構造は、図1(4)に示す構造の具体例である。
なお,大気圧の新気が充填された図6(4)あるいは図6(10)から始動することで、始動仕事することなく、機関を始動することができる。

【0031】
<構成>
はじめに、図6(1)を用いて構造の説明を行う。
2本のコンロッドを有する「複クランク・リンケージ機構」(図3)の左右に置かれた、中心軸が互いに180度である2つの円筒内面シリンダーと、それらの端面に設置した左端面および右端面と、から成る双頭シリンダー51がある。また、左シリンダー部に左ピストン45を挿入し、右シリンダーに右ピストン47を挿入する。両ピストン45,47は、複クランク・リンケージ機構の2本のコンロッド53の解放端に回転接続する。
シリンダーの左右端面には、左吸気管25および左排気管27、ならびに右吸気管29および右排気管31が接続され、それぞれに、左吸気バルブ33および左排気バルブ35、ならびに右吸気バルブ37および右排気バルブ39が取り付けられている。シリンダー左端面と左ピストン45との間のシリンダー内空間を左室、右ピストン47とシリンダー右端面との間のシリンダー空間を右室と呼ぶ。
第4実施形態に対して、第5実施形態の構成の利点は、2つのシリンダーの互いの角度が180度で無くとも良いことである。すなわち、双頭気筒型の他に、V型、並行型に構成することができる。ただし、シリンダーの角度が180度を大きく離れる場合、クランク角度の位相の異なる2つの複クランク・リンケージ機構を用いて適切な駆動を個別のコンロッド53に与えると良い。なお、図中黒丸印はシール部材41を示す。

【0032】
<作動工程>
第5実施形態の作動工程は、第3実施形態および第4実施形態の作動工程と同じである。
図6(1)~(13)の各図の状態および工程は、図4(1)~(13)および図5(1)~(13)の各図と対応する。
なお、第5実施形態において、行程1~行程7では、段落0031記載の左室は主燃焼室185を、段落0031記載の右室は前駆燃焼室187を示し、行程8~行程13では、段落0031記載の左室は前駆燃焼室187を、段落0031記載の右室は主燃焼室185を示す。

【0033】
(第6実施形態)
図7は、第6実施形態を示し図2に示したピストンの挙動を実現する「遊星歯車・複クランク機構」の一例である。
図7の機構は、まず主クランク11と、その主クランク偏芯軸55に回転接続された副クランク回転軸55と副クランク13と、太陽歯車57、アイドル歯車59、遊星歯車61と、から成る。
太陽歯車57は、主クランク11の回転軸と同軸に取り付けられ、回転は固定されている。
遊星歯車61は、主クランク偏芯軸55と同軸に、副クランク13に取り付けられる。太陽歯車57と遊星歯車61は、歯数の比が4:3であり、アイドル歯車59で回転が伝達される。

【0034】
(第7実施形態)
図8は、第7実施形態の直列気筒・完全排気モード(二室単気筒,遊星歯車・複クランク機構による確動カム経由延長棒駆動ピストンの場合)の機関構成と作動工程を示す。図8では、作動工程の1サイクルを(1)~(13)まで、順番に示してある。
この構造は、図1(2)に示す構造の具体例である。
なお、大気圧の新気が充填された図8(4)あるいは図8(10)から始動すると、始動仕事することなく、機関を始動することができる。

【0035】
<構成>
はじめに、図8(1)を用いて構造の説明を行う。
図8に示す第7実施形態の構成は、第3実施形態の構成(図4)とは、ピストンの駆動構成が異なるだけで、前駆燃焼室および主燃焼室は変わらない。
第7実施形態の駆動構成では、平行間隙から成るカム・フォロワが延長棒5に取り付けられる。なお、図中黒丸印はシール部材41を示す。
カム・フォロワの平行間隙の部分には、第6実施形態で説明した「遊星歯車・複クランク機構」の副偏芯軸が挿入される。

【0036】
<作動工程>
第7実施形態の作動工程は,第3実施形態,第4実施形態および第5実施形態の作動工程と同じである。
図8(1)~(13)の各図の状態および工程は、図4、5、6の(1)~(13)と対応する。

【0037】
(第8実施形態)
図9は、第8実施形態の直列気筒・完全排気モード(双頭気筒,遊星歯車・複クランク機構による確動カム経由延長棒駆動ピストンの場合)の機関構成と作動工程を示す。図9では、作動工程の1サイクルを(1)~(13)まで、順番に示してある。
この構造は、図1(3)に示す構造の具体例である。
なお、大気圧の新気が充填された図9(4)あるいは図9(10)から始動すると、始動仕事することなく、機関を始動することができる。

【0038】
<構成>
はじめに、図9(1)を用いて構造の説明を行う。
図9に示す第8実施形態の構成は、第4実施形態の構成(図5)とは、ピストンの駆動構成が異なるだけで、前駆燃焼室および主燃焼室は変わらない。
図9の駆動構成では、平行間隙から成るカム・フォロワが延長棒49に取り付けられる。
カム・フォロワの平行間隙の部分には、第6実施形態で説明した「遊星歯車・複クランク機構」の副偏芯軸が挿入される。

【0039】
<作動工程>
第8実施形態の作動工程は、第3・第4・第5・第7実施形態の作動工程と同じである。
図9(1)~(13)の各図の状態および工程は、図4、5、6、8の(1)~(13)の各図と対応する。

【0040】
(第9実施形態)
図10は、第9実施形態の直列気筒・完全排気モード(双頭気筒,遊星歯車・複クランク機構による確動カム経由コンロッド駆動ピストンの場合)の機関構成と作動工程を示す。図10では、作動工程の1サイクルを(1)~(13)まで、順番に示してある。
この構造は、図1(4)に示す構造の具体例である。
なお、大気圧の新気が充填された図10(4)あるいは図10(10)から始動すると、始動仕事することなく、機関を始動することができる。

【0041】
<構成>
はじめに、図10(1)を用いて構造の説明を行う。
図10に示す第9実施形態の構成は、第5実施形態の構成(図6)とは、ピストンの駆動構成が異なるだけで、前駆燃焼室および主燃焼室は変わらない。
第6実施形態で説明した「遊星歯車・複クランク機構」の副クランク偏芯軸に、2本のコンロッドを挿入し、それらのコンロッド53を2つのピストン45,47に回転接続する。なお、図中黒丸印はシール部材41を示す。

【0042】
<作動工程>
第9実施形態の作動工程は、第3・第4・第5・第7・第8実施形態の作動工程と同じである。
図10(1)~(13)の各図の状態および工程は、図4、5、6、7、9の(1)~(13)の各図と対応する。

【0043】
(第10実施形態)
図11に、第10実施形態の並列気筒・完全排気モードの場合の両作動空間の体積変化および状態遷移を示す図を示す。また、図12に、並列気筒・完全排気モードの場合の機関構成の一例を示す。気筒数は2気筒(気筒Aおよび気筒Bと呼ぶ)とし、ピストンの駆動形式は、「遊星歯車・複クランク機構によるコンロッド経由駆動」としたが、「複クランク・リンケージ機構」など図3~図10までの機構でもよく、また他の機構でも良い。
なお、大気圧の新気が充填された図11の工程(4)あるいは図11の工程(10)から始動すると、始動仕事することなく、機関を始動することができる。
この構成例では、2つのAシリンダー63およびBシリンダー65を並列に設置し、逆位相に設定したクランク機構とAコンロッド67およびBコンロッド69により、Aピストン71およびBピストン73を駆動する。それぞれのシリンダー端面には、A吸気管75、A排気管77、B吸気管79およびB排気管81が設置され、それぞれに、A吸気バルブ83、A排気バルブ85、B吸気バルブ87およびB排気バルブ89が取り付けられている。各吸気管75,79からは、予混合ガスあるいは空気が流入する。作動流体の着火は、予混合ガスへの点火栓による点火、あるいは燃料噴射後の自着火、などにより行う。Aシリンダー63およびAピストン71に囲まれる作動空間をA室とし、Bシリンダー65およびBピストン73に囲まれる作動空間をB室とする。なお、図中黒丸印はシール部材41を示す。

【0044】
図11および図12を用いて、第10実施形態の作動を説明する。
図11において、縦軸は上から下方へと、作動進行度合いを表し、クランク角度で示した。横軸は、作動空間の体積を表す。すなわち、図中の曲線がピストン位置の変化を示し、それより左側の長さが気筒AのA室の体積を、また右側の長さが気筒BのB室の体積を表す。また、図11には、左側にA室の工程が、右側にB室の工程が、それぞれ示されている。
図11が表す第10実施形態の状態変化は、第2実施形態および第3実施形態として説明した状態変化と同等であり、相違点は、第2実施形態では左室および右室で実現するのに対して、第10実施形態ではA室およびB室で実現することだけであるが、明瞭に説明するため下記に記載する。

【0045】
<作動工程(図11および図12)>
図11の状態(1)では,Aピストン71はシリンダー端面(シリンダー端位置)に位置し、A室の作動空間は無く、Bピストン73はシリンダー端面から最も離れた位置(クランク端位置)にあり、B室の作動空間は最大体積である。B室には、前サイクルで発生した燃焼ガス(他のガスでも可)が充填されている。A吸気バルブ83、A排気バルブ85、B吸気バルブ87およびB排気バルブ89は全て閉である。
工程(2)では、バルブの状態は、A吸気バルブ83:開、A排気バルブ85:閉、B吸気バルブ87:閉、B排気バルブ89:開の状態であり、Aピストン71は、シリンダー端位置からクランク端位置へと移動する。この際、A吸気バルブ83から流入した新気がA室に充填される(主吸気)。また、Bピストン73はクランク端位置からシリンダー端位置へと移動し、B排気バルブ89からB室に充填されていたガスが排気される(主排気)。
工程(3)では、バルブの状態は、A吸気バルブ83:開、A排気バルブ85:閉、B吸気バルブ87:開、B排気バルブ89:閉の状態であり、Aピストン71は、クランク端位置からシリンダー端方向へ移動し、Bピストン73はシリンダー端位置からクランク端方向へ移動する。この際、B吸気バルブ87から流入した新気がB室に充填される(前駆吸気)。また、A室に充填されていた新気がA吸気バルブ83から逆流する(新気戻し)。なお、この工程で、A吸気バルブ83を閉とし、運動部品の慣性力を利用し、A室の新気を圧縮(主弱圧縮)してもよい。
工程(4)では、バルブの状態は、全てのバルブが閉の状態であり、点火装置によりB室の新気を燃焼させ、高温高圧の燃焼ガスに変える(前駆着火)。

【0046】
工程(5)では、バルブの状態は、全てのバルブが閉の状態である。B室の燃焼ガスは,直接的にはBピストン73をクランク端方向に準クランク端位置まで押し(前駆膨張)、またピストン駆動機構91を介して間接的にAピストン71をシリンダー端方向に準シリンダー端位置まで押し、A室の新気が圧縮される(主圧縮)。この工程では、B室の燃焼ガスの膨張仕事が、A室の新気の圧縮仕事より大きい場合、ピストン駆動機構91に軸出力が発生する。
工程(6)では、バルブの状態は全てのバルブが閉の状態であり、Bピストン73は準クランク位置であり、Aピストン71は準シリンダー位置である。点火装置(あるいは自着火)によりA室の新気を燃焼させ、高温高圧の燃焼ガスに変える(主着火)。
工程(7)では、バルブの状態は、A吸気バルブ83:閉、A排気バルブ85:閉、B吸気バルブ87:閉、B排気バルブ89:開の状態であり、A室の燃焼ガスがAピストン71をクランク端位置まで移動させ(主膨張)、B室の燃焼ガスが排気される(前駆排気)。
この工程の途中までB排気バルブ89を閉とすることで、壁面冷却され負圧となったB室の燃焼ガスにピストンをシリンダー端方向に引かせてもよい。工程(7)の工程では、ピストン駆動機構91に軸出力が発生する。

【0047】
以後の工程、すなわち、工程(8)から工程(13)までの工程は、前記の工程(1)から工程(7)までの工程を、左右反対にした工程であり、以下に説明する。
工程(8)では、バルブの状態は、A吸気バルブ83:閉、A排気バルブ85:開、B吸気バルブ87:開、B排気バルブ89:閉の状態であり、Bピストン73は、シリンダー端位置からクランク端位置へと移動する。この際、B吸気バルブ87から流入した新気がB室に充填される(主吸気)。また、Aピストン71はクランク端位置からシリンダー端位置へと移動し、A排気バルブ85からA室に充填されていたガスが排気される(主排気)。
工程(9)では、バルブの状態は、A吸気バルブ83:開、A排気バルブ85:閉、B吸気バルブ87:開、B排気バルブ89:閉の状態であり、Bピストン73は、クランク端位置からシリンダー端方向へ移動し、Aピストン71はシリンダー端位置からクランク端方向へ移動する。この際、A吸気バルブ83から流入した新気がA室に充填される(前駆吸気)。また、B室に充填されていた新気がB吸気バルブ87から逆流する(新気戻し)。なお、この工程で、B吸気バルブ87を閉とし、運動部品の慣性力を利用し、B室の新気を圧縮(主弱圧縮)してもよい。
工程(10)では、バルブの状態は全てのバルブが閉の状態であり、点火装置によりA室の新気を燃焼させ、高温高圧の燃焼ガスに変える(前駆着火)。
工程(11)では、バルブの状態は全てのバルブが閉の状態である。A室の燃焼ガスは、直接的にはAピストン71をクランク端方向に準クランク端位置まで押し(前駆膨張)、またピストン駆動機構91を介して、間接的にBピストン73をシリンダー端方向に準シリンダー端位置まで押し、B室の新気が圧縮される(主圧縮)。この工程では、A室の燃焼ガスの膨張仕事が、B室の新気の圧縮仕事より大きい場合、ピストン駆動機構91に軸出力が発生する。

【0048】
工程(12)では、バルブの状態は全てのバルブが閉の状態であり、Aピストン71は準クランク位置であり、Bピストン73は準シリンダー位置である。点火装置(あるいは自着火)によりB室の新気を燃焼させ、高温高圧の燃焼ガスに変える(主着火)。
工程(13)では、バルブの状態は、A吸気バルブ83:閉、A排気バルブ85:開、B吸気バルブ87:閉、B排気バルブ89:閉の状態であり、B室の燃焼ガスがBピストン73をクランク端位置まで移動させ(主膨張)、A室の燃焼ガスが排気される(前駆排気)。
この工程の途中までA排気バルブ85を閉とすることで、壁面冷却され負圧となったA室の燃焼ガスにピストンをシリンダー端方向に引かせてもよい。工程(13)の工程では、ピストン駆動機構91に軸出力が発生する。
図11の工程(13)が行われると、図11の状態(1)と同じ状態となり、1サイクル分が完了する。以降、状態(1)~工程(13)が繰り返され、連続動作が行われる。
なお、第10実施形態において、行程1~行程7では、段落0043記載のA室は主燃焼室185を、段落0043記載のB室は前駆燃焼室187を示し、行程8~行程13では、段落0043記載のA室は前駆燃焼室187を、段落0043記載のB室は主燃焼室185を示す。

【0049】
(第11実施形態)
図13に、第11実施形態の並列異種気筒・完全排気モードの場合の作動空間の体積変化および状態遷移を示す。また、図14に、並列異種気筒・完全排気モードの場合の機関構成の一例を示す。
気筒数は2気筒(前駆気筒および主気筒)とし、ピストンの駆動形式は、図14では「単純クランク機構によるコンロッド経由駆動」とした。ただし、気筒間のクランクの位相は180度とする。
ピストンの駆動形式は、「遊星歯車・複クランク機構によるコンロッド経由駆動」、「複クランク・リンケージ機構」など図3~図10および12までの機構でもよく、また他の機構であっても、図13に示すサイクルを実現できればよい。

【0050】
なお,図14では,主気筒からの前駆気筒の差異を実現する方法として,
(a)異なる偏心量クランクを使用し,他は同一のコンロッド,ピストンおよびシリンダーヘッドによる構成,
(b)は異なるシリンダーヘッドを使用し、他は同一の偏心量クランク、コンロッド、ピストンによる構成,
(c)は異なるピストンを使用し、他は同一の偏心量クランク、コンロッド、シリンダーヘッドによる構成,
(d)は異なるコンロッドを使用し、他は同一の偏心量クランク、ピストン、シリンダーヘッドによる構成を示してある。

【0051】
この構成例では、前駆シリンダー93および主シリンダー95を並列に設置、逆位相に設定したクランク機構97と前駆コンロッド99および主コンロッド101により、それぞれ前駆ピストン103および主ピストン105を駆動する。それぞれのシリンダー端面には、前駆吸気管107、前駆排気管109、主吸気管111および主排気管113が設置され、それぞれに前駆吸気バルブ115、前駆排気バルブ117、主吸気バルブ119および主排気バルブ121が取り付けられている。各吸気管107,111からは、予混合ガスあるいは空気が流入する。作動流体の着火は、予混合ガスへの点火栓による点火、あるいは燃料噴射後の自着火、などにより行う。前駆シリンダー93および前駆ピストン103に囲まれる作動空間を前駆作動空間とし、主シリンダー95および主ピストン105に囲まれる作動空間を主作動空間とする。ただし、前駆作動流体の完全排気を行うため、前駆ピストン103と前駆シリンダー端面との最短距離はゼロに近く設定する。また、主ピストン105と主シリンダー端面との最短距離は、主シリンダー95での圧縮比を設定できる適切な距離に設定する。これらの設定は、主気筒を基準とする場合、前駆気筒を次のように変化させることで行うことができる。
クランクの偏芯距離の調整(図14(a).図13の太実線)、シリンダー端面位置の調整(図14(b)、図13の太破線)、ピストン長さの調整(図14(c)、図13の太破線)、あるいはコンロッド長さの調整(図14(d)、図13の太破線)。なお、図中黒丸印はシール部材41を示す。

【0052】
図13から図14を用いて、第11実施形態の作動を説明する。
図13において、縦軸は上から下方へと作動進行度合いを表し、クランク角度で示される。横軸はピストン位置を表す。すなわち、図中の曲線がピストン位置の変化を示し、それより左側の長さが作動空間の体積を表す。太実線および太破線の曲線が、前駆ピストンの位置変化および前駆作動空間の体積変化を表し、細実線の曲線が主ピストンの位置変化および主作動空間の体積変化を表す。また、図13では、左側に前駆気筒の工程、右側に主気筒の工程、がそれぞれ説明される。
なお、大気圧の新気が充填された図13(5)から始動することで、始動仕事なしに機関を始動することができる。

【0053】
<作動工程(図13および図14)>
工程(1)では、前駆ピストン103はシリンダー端面(シリンダー端位置)に位置し、前駆作動空間は無く、主ピストン105はシリンダー端面から最も離れた位置(クランク端位置)にあり、主作動空間は最大体積である。主作動空間には、前サイクルで発生した燃焼ガス(他のガスでも可)が充填されている。前駆吸気バルブ115、前駆排気バルブ117、主吸気バルブ119および主排気バルブ121は全て閉である。
工程(2)では、バルブの状態は、前駆吸気バルブ115:開、前駆排気バルブ117:閉、主吸気バルブ119:閉、主排気バルブ121:開の状態であり、前駆ピストン103は、シリンダー端位置からクランク端位置へと移動する。この際、前駆吸気バルブ115から流入した新気が前駆作動空間に充填される。また、主ピストン105はクランク端位置からシリンダー端位置へと移動し、主排気バルブ121から主作動空間に充填されていたガスが排気される(主排気)。
工程(3)では、バルブの状態は、前駆吸気バルブ115:開、前駆排気バルブ117:閉、主吸気バルブ119:開、主排気バルブ121:閉の状態であり、前駆ピストン103は、クランク端位置からシリンダー端まで移動し、この際、前駆作動空間に充填されていた新気は前駆吸気バルブ115から逆流し、排出される。前駆気筒における工程(2)および工程(3)は、吸入新気を排出する工程であるので、アイドル工程、あるいは無効吸排気工程となる。一方、主ピストン105はシリンダー端位置からクランク端まで移動する。この際、主吸気バルブ119から流入した新気が主作動空間に充填される(主吸気)。
工程(4)では、バルブの状態は、前駆吸気バルブ115:開、前駆排気バルブ117:閉、主吸気バルブ119:開、主排気バルブ121:閉の状態であり、前駆ピストン103はシリンダー端位置からクランク端方向へ移動し、主ピストン105はクランク端位置からシリンダー端方向へ移動する。この際、前駆吸気バルブ115から流入した新気が前駆作動空間に充填される(前駆吸気)。また、主作動空間に充填されていた新気が主吸気バルブ119から逆流する(新気戻し)。なお、この工程で、主吸気バルブ119を閉とし、運動部品の慣性力を利用し,主作動空間の新気を圧縮(主弱圧縮)してもよい。

【0054】
工程(5)では、バルブの状態は全てのバルブが閉の状態であり、点火装置により前駆作動空間の新気を燃焼させ、高温高圧の燃焼ガスに変える(前駆着火)。
工程(6)では、バルブの状態は全てのバルブが閉の状態である。前駆作動空間の燃焼ガスは、直接的には前駆ピストン103をクランク端方向にクランク端位置まで押し(前駆膨張)、またピストン駆動機構を介して、間接的に主ピストン105をシリンダー端方向にシリンダー端位置まで押し、主作動空間の新気が圧縮される(主圧縮)。この工程では、前駆作動空間の燃焼ガスの膨張仕事が、主作動空間の新気の圧縮仕事より大きい場合、ピストン駆動機構に軸出力が発生する。
工程(7)では、バルブの状態は全てのバルブが閉の状態であり、前駆ピストン103はクランク端位置であり、主ピストン105はシリンダー端位置である。点火装置(あるいは自着火)により主作動空間の新気を燃焼させ、高温高圧の燃焼ガスに変える(主着火)。
工程(8)では、バルブの状態は、前駆吸気バルブ115:閉、前駆排気バルブ117:開、主吸気バルブ119:閉、主排気バルブ121:閉の状態であり、主作動空間の燃焼ガスが主ピストン105をクランク端位置まで移動させ(主膨張)、前駆作動空間の燃焼ガスが排気される(前駆排気)。
この工程の途中まで前駆排気バルブ117を閉とすることで、壁面冷却され負圧となった前駆作動空間の燃焼ガスに前駆ピストン103をシリンダー端方向に引かせてもよい。工程(8)では、ピストン駆動機構に軸出力が発生する。
工程(8)が終了すると、工程(1)と同じ状態となり、連続作動の1サイクル分が終了する。以降、工程(1)~工程(8)が繰り返され、連続動作が行われる。
なお、第11実施形態において、段落0051記載の前駆シリンダー93および主シリンダー95は一対のシリンダー189を示し、一方のシリンダー191は主シリンダー95を、他方のシリンダー193は前駆シリンダー93を示す。また、段落0051記載の主作動空間は主燃焼室185を、段落0051記載の前駆作動空間は前駆燃焼室187を示している。

【0055】
(第12実施形態)
図15に、第12実施形態のフライホイール付き単気筒・完全排気モードの場合の作動空間の体積変化および状態遷移を示す。また、図16に、第12実施形態の単気筒・完全排気モードの場合の機関構成の一例を示す。ピストンの駆動形式は、「遊星歯車・複クランク機構によるコンロッド経由駆動」としたが、「複クランク・リンケージ機構」など図3~図10、12および14までの機構でもよく、また他の機構でも良い。
図17に、作動工程の1サイクルを工程(1)~(10)まで、順番に示してある。
なお、大気圧の新気が充填された図15の状態(4)(図17(4))から始動することで、始動仕事することなく、機関を始動することができる。
この構成例では、1つのシリンダーを設置し、1つのピストンを挿入する。シリンダーおよびピストンに囲まれる作動空間を燃焼室とする。
ピストンの駆動形式は、図7に示した遊星歯車・複クランク機構とコンロッドによる駆動形式としてある。
シリンダー端面には、吸気管123および排気管125が設置され、それぞれに吸気バルブ127および排気バルブ129が取り付けられている。吸気管からは、予混合ガスあるいは空気が流入する。作動流体の着火は、予混合ガスへの点火栓による点火、あるいは燃料噴射後の自着火、などにより行う。クランク軸にはフライホイール131を設置するが、運動部品の慣性モーメントでフライホイール機能を代用できる場合もある。なお、図中黒丸印はシール部材41を示す。

【0056】
図15および図17を用いて、第12実施形態の作動を説明する。
図15において、縦軸は上から下方へと作動進行度合いを表し、クランク角度で示した。横軸は、作動空間の体積を表す。すなわち、図中の曲線がピストン位置の変化と作動空間体積を示す。また、図15には、その工程が示してある。

【0057】
<作動工程(図15および図17)>
図16(図18)の状態(1)では、ピストン133はシリンダー端面から最も離れた位置(クランク端位置)にあり、作動空間は最大体積である。作動空間には、前サイクルで発生した燃焼ガス(他のガスでも可)が充填されている。吸気バルブ127および排気バルブ129は全て閉である。
工程(2)では、バルブの状態は、吸気バルブ127:閉、排気バルブ129:開の状態であり、ピストン133はクランク端位置からシリンダー端位置へと移動し、作動空間に充填されていたガスが排気バルブ129から排気される(主排気)。
工程(3)では、バルブの状態は、吸気バルブ127:開、排気バルブ129:閉の状態であり、ピストン133はシリンダー端位置からクランク端方向へ移動する。この際、吸気バルブ127から流入した新気が作動空間に充填される(前駆吸気)。
工程(4)では、バルブの状態は、吸気バルブ127:閉、排気バルブ129:閉の状態であり、点火装置により作動空間の新気を燃焼させ、高温高圧の燃焼ガスに変える(前駆着火)。

【0058】
工程(5)では、バルブの状態は、吸気バルブ127:閉、排気バルブ129:閉の状態であり、作動空間の燃焼ガスはピストン133をクランク端方向に押し、準クランク端位置(あるいはクランク端位置)まで移動させる(前駆膨張)。図16とは異なるピストン駆動機構により、ピストン133をクランク端位置まで移動(図15中の破線で示す)させても良い。この工程でピストン駆動機構135に軸出力が発生し、フライホイール131あるいは運動部品にエネルギーが蓄積する。
工程(6)では、バルブの状態は、吸気バルブ127:閉、排気バルブ129:開の状態であり、ピストン133はクランク端位置からシリンダー端位置まで移動する。この際、排気バルブ129から燃焼ガスが排気される(前駆排気)。
工程(7)では、バルブの状態は、吸気バルブ127:開、排気バルブ129:閉の状態であり、ピストン133はシリンダー端位置からクランク端位置まで移動する。この際、吸気バルブ127から流入した新気が作動空間に充填される(主吸気)。
工程(8)では、バルブの状態は、吸気バルブ127:閉、排気バルブ129:閉の状態であり、ピストン133はクランク端位置から準シリンダー端位置まで移動する。作動空間の新気は圧縮される(主圧縮)。この圧縮エネルギーは、工程(5)の「前駆膨張工程」で発生したエネルギーにより賄われる。

【0059】
工程(9)では、バルブの状態は、吸気バルブ127:閉、排気バルブ129:閉の状態であり、点火装置あるいは圧縮自着火により作動空間の新気を燃焼させ、高温高圧の燃焼ガスに変える(主着火)。
工程(10)では、バルブの状態は、吸気バルブ127:閉、排気バルブ129:閉の状態であり、作動空間の燃焼ガスはピストン133をクランク端方向に押し、クランク端位置まで移動させる(主膨張)。この工程でピストン駆動機構135に軸出力が発生する。
工程(10)が行われると、状態(1)となり、1サイクルが完了する。
なお、第12実施形態において、行程7~行程10、行程1および2では、段落0055記載の燃焼室は主燃焼室185を示し、行程3~行程6では、段落0055記載の燃焼室は前駆燃焼室187を示す。
また、段落0055記載のフライホイール131および運動部品は、出力貯留装置195を示している。

【0060】
(第13実施形態)
第13実施形態は、第10実施形態とほとんど同様の作動工程となる。第10実施形態に比し、第13実施形態の利点は、ピストンの駆動機構が単純クランクで良いことである。
図18に、並列気筒・不完全排気モードの場合の両作動空間の体積変化および状態遷移を示してある。また、図19に、並列気筒・不完全排気モードの場合の機関構成の一例をしてある。気筒数は2気筒(気筒Aおよび気筒Bと呼ぶ)とし、ピストンの駆動形式は、単純クランク機構で良い。
なお、大気圧の新気が充填された図18の工程(4)あるいは工程(10)から始動することで、始動仕事することなく、機関を始動することができる。
この構成例では、2つのAシリンダー137およびBシリンダー139を並列に設置し、逆位相に設定したクランク機構141とAコンロッド143およびBコンロッド145によりAピストン147およびBピストン149を駆動する。それぞれのシリンダー端面には、A吸気管151、A排気管153、B吸気管155およびB排気管157が設置され、それぞれにA吸気バルブ159、A排気バルブ161、B吸気バルブ163およびB排気バルブ165が取り付けられている。各吸気管151、155からは、予混合ガスあるいは空気が流入する。作動流体の着火は、予混合ガスへの点火栓による点火、あるいは燃料噴射後の自着火、などにより行う。Aシリンダー137およびAピストン147に囲まれる作動空間をA室167とし、Bシリンダー139およびBピストン149に囲まれる作動空間をB室169とする。
また、ピストンとシリンダー端面との最短距離は、シリンダーでの圧縮比を設定できる適切な距離に設定する。なお、図中黒丸印はシール部材41を示す。

【0061】
図18を用いて、第13実施形態の作動を説明する。
図18において、縦軸は上から下方へと作動進行度合いを表し、クランク角度で示した。横軸は作動空間の体積を表す。すなわち、図中の曲線がピストン位置の変化を示し、それより左側の長さが気筒AのA室の体積を、また右側の長さが気筒BのB室の体積を、それぞれ表す。また、図の左側にA室の工程、また右側にB室の工程、をそれぞれ示してある。

【0062】
<作動工程(図18)>
第13実施形態は、第10実施形態とほぼ等しい作動工程となる。したがって、詳細な説明は省略する。第10実施形態との相違点は、第13実施形態では、主排気後の作動空間体積がゼロとならず、前駆吸気後の作動流体に主排気での残留ガスが混入することである。
なお、第13実施形態において、行程1~行程7では、段落0060記載のA室167は主燃焼室185を、段落0060記載のB室169は前駆燃焼室187を示し、行程8~行程13では、段落0060記載のA室167は前駆燃焼室187を、段落0060記載のB室169は主燃焼室185を示す。

【0063】
(第14実施形態)
第14実施形態は、第12実施形態とほとんど同様の作動工程となる。第12実施形態に比し、第14実施形態の利点は、ピストンの駆動機構が単純クランク機構で良いことである。
図20に、フライホイール付き単気筒・不完全排気モードの場合の作動空間の体積変化および状態遷移を示してある。また、図21に、単気筒・不完全排気モードの場合の機関構成の一例を示す。ピストンの駆動形式は、単純クランク機構で良い。
図22に、作動工程の1サイクルを(1)~(10)まで順番に示してある。
なお,大気圧の新気が充填された状態(4)から始動することで、始動仕事することなく、機関を始動することができる。
第14実施形態の構成例では、1つのシリンダーを設置し、1つのピストン171を挿入する。シリンダーおよびピストン171に囲まれる作動空間を燃焼室とする。
ピストンの駆動形式は、単純クランク機構で良い。
シリンダー端面には、吸気管173および排気管175が設置され、それぞれに吸気バルブ177および排気バルブ179が取り付けられている。吸気管173からは予混合ガスあるいは空気が流入する。作動流体の着火は予混合ガスへの点火栓による点火、あるいは燃料噴射後の自着火、などにより行う。クランク軸181にはフライホイール183が設置してあるが、運動部品の慣性モーメントでフライホイール機能を代用できる場合もある。なお、図中黒丸印はシール部材41を示す。

【0064】
図20を用いて、第14実施形態の作動を説明する。
図20において、縦軸は上から下方へと作動進行度合いを表し、クランク角度で示した。横軸は作動空間の体積を表す。すなわち、図中の曲線がピストン位置の変化と作動空間体積を示す。また、図20には、その工程を示してある。

【0065】
<作動工程(図20および図22)>
第14実施形態は、第12実施形態とほぼ等しい作動工程となる。したがって、詳細な説明は省略する。第12実施形態との相違点は、第14実施形態では、主排気後の作動空間体積がゼロとならず、前駆吸気後の作動流体に主排気での残留ガスが混入することである。
なお、第14実施形態において、行程7~行程10、行程1および2では、段落0063記載の燃焼室は主燃焼室185を示し、行程3~行程6では、段落0063記載の燃焼室は前駆燃焼室187を示す。
また、段落0063記載のフライホイール183および運動部品は、出力貯留装置195を示している。

【0066】
(第15実施形態)
第15実施形態は、第14実施形態と同様の機器構成であるが、作動工程が若干異なる。
図23に、フライホイール付き単気筒・残留ガス洗浄吸気モードの場合の作動空間の体積変化および状態遷移を示してある。また、図24に、フライホイール付き単気筒・残留ガス洗浄吸気モードの場合の機関構成の一例を示してある。この機器構成は、第14実施形態の機器構成(図21)と同じである。
図25に、作動工程の1サイクルを(1)~(12)まで順番に示してある。
なお,大気圧の新気が充填された状態(6)から始動することで、始動仕事することなく、機関を始動することができる。

【0067】
図23を用いて、第15実施形態の作動を説明する。
図23において、縦軸は上から下方へと作動進行度合いを表し、クランク角度で示した。横軸は作動空間の体積を表す。すなわち、図中の曲線がピストン位置の変化と作動空間体積を示す。また、図23には、その工程が示されている。

【0068】
<作動工程(図23および図25)>
第15実施形態は、第14実施形態とほぼ等しい作動工程となる。したがって、詳細な説明は省略する。その相違点は、「主排気」の後に「洗浄排気」と「洗浄戻し」の工程が挿入され、前駆吸気後の作動流体に混入する主排気の際の残留ガスの混入を低減されることである。
なお、第15実施形態において、行程9~行程12、行程1および2では、段落0063記載の燃焼室は主燃焼室185を示し、行程3~行程8では、段落0063記載の燃焼室は前駆燃焼室187を示す。
また、段落0063記載のフライホイール183および運動部品は、出力貯留装置195を示している。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る連続駆動内燃機関は、釘打機の他、別の予備圧縮装置を必要とする燃焼によって出力を連続して得る機器にも用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0070】
イ 予混合ガス
(図1)
1 シリンダー 3 ピストン 5 延長棒
7 クランク 9 コネクティングロッド
(図3)
11 主クランク 13 副クランク 15 主クランク軸
17 主リンケージ 19 副クランク軸 21 副リンケージ 23コンロッド
(図4)
25 左吸気管 27 左排気管 29 右吸気管 31 右排気管
33 左吸気バルブ 35 左排気バルブ 37 右吸気バルブ
39 右排気バルブ 41 シール部材
(図5)
43 双頭シリンダー 45 左ピストン 47 右ピストン 49延長棒
(図6)
51 双頭シリンダー 53 コンロッド
(図7)
55 主クランク偏芯軸 55 副クランク回転軸 57 太陽歯車
59 アイドル歯車 61 遊星歯車
(図12)
63 Aシリンダー 65 Bシリンダー 67 Aコンロッド
69 Bコンロッド 71 Aピストン 73 Bピストン
75 A吸気管 77 A排気管 79 B吸気管 81 B排気管
83 A吸気バルブ 85 A排気バルブ 87 B吸気バルブ 89 B排気バルブ
91 ピストン駆動機構
(図14)
93 前駆シリンダー 95 主シリンダー 97 クランク機構
99 前駆コンロッド 101 主コンロッド 103 前駆ピストン
105 主ピストン 107 前駆吸気管 109 前駆排気管
111 主吸気管 113 主排気管 115 前駆吸気バルブ
117 前駆排気バルブ 119 主吸気バルブ 121 主排気バルブ
(図16,図17)
123 吸気管 125 排気管 127 吸気バルブ
129 排気バルブ 131 フライホイール 133 ピストン
135 ピストン駆動機構
(図19)
137 Aシリンダー 139 Bシリンダー 141 クランク機構
143 Aコンロッド 145 Bコンロッド 147 Aピストン
149 Bピストン 151 A吸気管 153 A排気管
155 B吸気管 157 B排気管 159 A吸気バルブ
161 A排気バルブ 163 B吸気バルブ 165 B排気バルブ
167 A室 169 B室
(図21)
171 ピストン 173 吸気管 175 排気管 177 吸気バルブ
179 排気バルブ 181 クランク軸 183 フライホイール

185 主燃焼室 187 前駆燃焼室 189 一対のシリンダー
191 一方のシリンダー 193 他方のシリンダー 195 出力貯留装置

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24