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明細書 :高変換効率SiC光電極およびそれを用いた水素製造装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-145141 (P2016-145141A)
公開日 平成28年8月12日(2016.8.12)
発明の名称または考案の名称 高変換効率SiC光電極およびそれを用いた水素製造装置
国際特許分類 C01B   3/04        (2006.01)
C01B  31/36        (2006.01)
C25B   1/04        (2006.01)
C25B  11/04        (2006.01)
C25B  11/08        (2006.01)
FI C01B 3/04 A
C01B 31/36 601Y
C25B 1/04
C25B 11/04 A
C25B 11/08 Z
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2015-076647 (P2015-076647)
出願日 平成27年4月3日(2015.4.3)
優先権出願番号 2014227634
2015014184
優先日 平成26年11月10日(2014.11.10)
平成27年1月28日(2015.1.28)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】加藤 正史
【氏名】長谷川 貴大
【氏名】市川 尚澄
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 4G146
4K011
4K021
Fターム 4G146MA14
4G146MB03
4G146MB23
4G146MB30
4G146NB05
4G146PA06
4K011AA24
4K011AA32
4K011BA07
4K011DA01
4K021AA01
4K021BA04
4K021BC08
4K021DA09
4K021DA13
4K021DC03
要約 【課題】SiCを用いて光照射による水分解のエネルギー変換効率を向上させる。
【解決手段】SiC単結晶基板上にSiC膜をエピタキシャル成長させ、さらに当該SiC単結晶基板の前記SiC膜とは反対側の面に金属電極を形成したSiCを含む光電極であり、あるいは前記光電極の構成に加えて前記SiC膜上の電解液と接触する面にPdまたはPtを主体に含む膜が形成された、SiCを含む光電極。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
SiC単結晶基板上にSiC膜をエピタキシャル成長させ、さらに当該SiC単結晶基板の前記SiC膜とは反対側の面に金属電極を形成したSiCを含む光電極。
【請求項2】
前記SiC単結晶上のSiC膜が、on-axisのp型4H-SiC基板上にp型3C-SiC膜をエピタキシャル成長させたものである、請求項1に記載のSiCを含む光電極。
【請求項3】
前記p型4H-SiC基板の不純物濃度が1×1015/cm~1×1019/cmであり、前記p型3C-SiC膜の不純物濃度が1×1014/cm~1×1017/cmである、請求項2に記載の光電極。
【請求項4】
前記SiC膜の電解液と接触する面にPdまたはPtを主体に含む膜が形成された、請求項1~3のいずれかに記載の光電極。
【請求項5】
前記Pdを主体に含む膜が光化学堆積法で形成され、前記Ptを主体に含む膜が電気化学堆積法により形成される請求項4に記載の光電極。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の光電極を用いた水素製造装置。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンカーバイドを用いた光電極に関する。
【背景技術】
【0002】
光電極は水を分解して太陽エネルギーを水素エネルギーに変換できるため、再生可能エネルギーの生成に有望であることは広く知られているところである。従来、この光電極に用いる半導体材料として酸化チタンなどが知られているが、エネルギー変換効率が低く実用化できないという課題があった。
【0003】
それに対して本発明者らはSiCをこの光照射による水分解技術に用いるという提案をしており、それは特許文献1に記載の多結晶SiCではなく、非特許文献1および非特許文献2に記載の単結晶SiCを用いるという提案である。理論的には単結晶SiCにより5%以上のエネルギー変換効率(以下、単に「変換効率」ということがある。)が期待できるものの、非特許文献1では0.17%という変換効率が報告されている。一方、本発明者らは非特許文献2にて報告した単結晶SiCのエネルギー変換効率は0.38%であり、理論値とは未だ大きな差異があるのが現状である。その理由として、3C-SiCの低い結晶品質による光励起キャリアの再結合による光電流の低減、あるいはSiC光電極と金属電極との界面での電気抵抗により光電流が制限されること、さらにはSiC内の電子と電解液中の水素イオンとの反応エネルギー障壁が高いこと等の原因が考えられる。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特表2012-505962
【0005】

【非特許文献1】“Photoelectrolysis of water to hydrogen in p-SiC/Pt and p-SiC/n-TiO2 cells” J. Akikusa and S. U. M. Khan, Int. J. Hydrogen Energy 27 (2002) 863.
【非特許文献2】“SiC photoelectrodes for a self-driven water-splitting cell” T. Yasuda, M. Kato, M. Ichimura, and T. Hatayama, Appl. Phys. Lett. 101, 53902 (2012).
【非特許文献3】“Epitaxial p-type SiC as a self-driven photocathode for water splitting” Masashi Kato, Tomonari Yasuda, Keiko Miyake, Masaya Ichimura, Tomoaki Hatayama, International Journal of Hydrogen Energy 39 (2014) 4845-4849
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、SiCを用いて光照射による水分解のエネルギー変換効率を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、SiC基板上にSiC膜をエピタキシャル成長させることにより得られた光電極の結晶欠陥濃度を低減させ、さらに、電解液と接触するSiC膜表面に触媒としてのパラジウム(Pd)または白金(Pt)を主体に含む膜を担持させることにより、SiC内の電子と電解液中の水素イオンとの反応エネルギーを低減して水分解反応が進みやすくなることにより、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下の光電極を提供する。
【0008】
SiC単結晶基板上にSiC膜をエピタキシャル成長させ、さらに当該SiC単結晶基板の前記SiC膜とは反対側の面に金属電極を形成したSiCを含む光電極。
【0009】
[2]前記SiC単結晶基板上のSiC膜が、on-axisのp型4H-SiC基板上にp型3C-SiC膜をエピタキシャル成長させたものである前記[1]に記載のSiCを含む光電極。
【0010】
[3]前記p型4H-SiC基板の不純物濃度が1×1015/cm~1×1019/cmであり、前記p型3C-SiC膜の不純物濃度が1×1014/cm~1×1017/cmである、前記[2]に記載の光電極。
【0011】
[4]前記SiC膜の電解液と接触する面にPdまたはPtを主体に含む膜が形成された、前記[1]~[3]のいずれかに記載の光電極。
【0012】
[5]前記Pdを主体に含む膜が光化学堆積法で形成され、前記Ptを主体に含む膜が電気化学堆積法により形成される前記[4]に記載の光電極。
【0013】
[6]前記[1]~[5]のいずれかに記載の光電極を用いた水素製造装置。

【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】on-axisのp型4H-SiC基板上にp型3C-SiC膜をエピタキシャル成長させたSiC基板の断面の概要図である。
【図2】on-axisのp型4H-SiC基板上にp型3C-SiC膜をエピタキシャル成長させ、p型4H-SiC単結晶基板のp型3C-SiC膜とは反対側の基板表面に金属電極を形成した光電極の断面の概要図である。
【図3】実施例1の二極式電気化学セル(光電極)による水素生成原理を示す図である。
【図4】実施例1の二極式電気化学セルの電極の詳細を示す図である。
【図5】実施例2のSiC光電極による水素生成原理を示す図である。
【図6】本発明実施例1のSiC光電極において、SiC光電極を挟む2つの金属電極間の光電流の測定結果を示す図である。
【図7】本発明実施例3のSiC基板に光化学堆積法によりPd膜を形成する方法に関する概要図である。
【図8】本発明実施例3のPd膜を担持したSiC光電極と、Pd膜を担持していないSiC光電極にそれぞれ光照射した場合の光電流の測定結果を示す図である。
【図9】本発明実施例4のSiC基板に電気化学堆積法によりPt膜を形成する方法に関する概要図である。
【図10】本発明実施例4のPt膜を担持したSiC光電極と、Pt膜を担持していないSiC光電極にそれぞれ光照射した場合の光電流の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0016】
本発明に用いるSiCは単結晶であることが好ましく、結晶形態としては4H‐SiC、6H‐SiC、3C‐SiC等が好ましく、なかでも4H‐SiCが特に好ましい。本発明のSiC光電極は、on-axis(±1°以下)のp型4H-SiC基板上にp型3C-SiC膜をエピタキシャル成長させ(図1参照)、さらにp型4H-SiC基板上に、p型3C-SiC膜とは反対側の面に金属電極を形成して得られる(図2参照)。p型4H-SiC基板の不純物濃度が1×1015/cm~1×1019/cmであることが好ましく、p型3C-SiC膜の不純物濃度が1×1014/cm~1×1017/cmであることが好ましく、また、p型3C-SiC膜の不純物濃度はp型4H-SiC基板の不純物濃度より小さいことが好ましい。また、p型4H‐SiC基板の結晶欠陥濃度(エッチピット密度)は1×10/cm以下、p型3C-SiCエピタキシャル膜内部の結晶欠陥濃度(エッチピット密度)も1×10/cm以下とすることが好ましい。p型SiCとするために、不純物としてアルミニウム(Al)あるいはホウ素(B)がドープされる。p型3C-SiC膜はCVD法等により形成され、その厚みは10~100μmであることが好ましい。金属電極は、SiC基板との接触抵抗が小さいことが好ましく、例えば、Ti/Al/Niなる構成で形成される。

【0017】
本発明においては、SiC基板上にエピタキシャル成長させたSiC膜上にさらに触媒としてPdまたはPtを主体に含む膜を担時することが好ましい。当該触媒としての膜はPdまたはPtを70重量%以上含み、他にRu、Rh、Ag、Au等を含んでもよい。当該金属の担持はPdを主体とする膜の場合は光化学堆積法により形成することが好ましく、Ptを主体とする膜の場合は電気化学堆積法が好ましい。

【0018】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定さ
れない。

【0019】
(実施例1)
本発明の実施例1である、二極式電気化学セル(光電極)による水素生成原理を図3に示す。Ni板(7mm×70mm×0.1mm厚)からなる対向電極2、SiCを含む作用電極3を導線4で接続し、双方の電極を1mol/lの硫酸からなる電解液5に浸漬した。なお、作用電極3は図4に示すように、on-axisの365μm厚のp型4H-SiC基板上にp型3C-SiC膜を形成した(作用電極の大きさは7mm×7mm)。p型3C-SiC膜はCVD法により、厚み30μm形成した。そしてこのp型4H-SiC基板のp型3C-SiC膜とは反対側の面に電極金属8として、Ti(厚み15nm)、Al(厚み112nm)、およびNi(厚み13nm)をこの順に蒸着した。
以上のように形成された光電極を1000℃で熱処理した後、SiCの表面のみが露出するように、この双方を作用電極固定絶縁部材(ポリカーボネート)にエレクトロンワックスの接着剤7で固定した。そして、SiC基板上のp型3C-SiC膜の表面に光(発光源は太陽光と同じスペクロルを有するソーラシミュレータ(照射強度:1.1W/cm)を照射して、水素生成に伴う電流値を測定したところ、図6のようになった。この結果より、変換効率が約1.5%と見積もられた。この結果より、3C-SiCの結晶品質向上による光励起キャリアの再結合による光電流の低減とSiC光電極と金属電極との界面での電気抵抗低減のうち、再結合の抑制のほうがより変換効率向上に寄与していると推測した。

【0020】
(実施例2)
実施例1では対向電極と作用電極を電解液中で分離させたが、SiCと直接接触させた金属を対向電極とすることにより、実施例1に比べて製作工程の簡略化を図ることができた(図5参照)。

【0021】
(実施例3)
実施例1の光電極のSiC膜にさらに触媒を担持して、更なるエネルギー変換効率向上の可能性を調査した。本実施例では触媒としてPd膜を用い、SiC基板上SiC膜へのPd膜の担持方法についてその実施例を図7に示す。on-axisの365μm厚のp型4H-SiC基板上にp型3C-SiC膜を形成し、当該p型3C-SiC膜上にPdを堆積させるための溶液としてPdCl2を2 mmol/L、HClを0.03 mol/Lそれぞれ加えた水溶液を用いた。SiC膜の表面に当該水溶液を付着させ、20 mW/cm2の超高圧水銀ランプにより試料表面に120秒間の光照射を行うことでPd膜をSiC基板に担持した。
実施例1同様に、図3に示す二電極式電気化学セルを用いた水素生成の実施例を示す。Pd膜が担持されたSiC膜表面だけが露出するように、固定材6に接着剤7でSiC基板9を固定し作用電極3を作成した。図8は、実施例1と同じ条件で、光(発光源は太陽光と同じスペクトルを有するソーラシミュレータ(照射強度:1.0W/cm)を照射して、水素生成に伴う電流値を測定した結果である。図8に示すとおり、Pd膜担持をした場合の電流値はPd膜担持をしない場合の電流値よりも大きくなっている。すなわち、Pdの担持によりエネルギー変換効率が改善されていることが分かる。推定のエネルギー変換効率はPd担持のない場合(1.5%)より向上し、2.5%と推測される。

【0022】
(実施例4)
実施例3同様に、光電極のSiC膜に触媒としてPt膜を担持して変換効率向上の可能性を調査した。n-axisの365μm厚のp型4H-SiC基板上にp型3C-SiC膜を形成し、当該p型3C-SiC膜上にPtを堆積させるための堆積溶液としてH2PtCl6を0.05 mol/L、HClを1 mol/Lそれぞれ加えた水溶液を用い、電気化学堆積法によりPt膜を形成した。溶液の温度は40℃で一定とし、この溶液中でガルバノスタットにより-800 μA/cm2の電流を50秒間流すことによりPt膜を担持した。電気化学堆積法の実施例を図9に示す。
実施例3同様に、図3に示す二電極式気化学セルを用いた実施例水素生成の実施例を示す。Pt膜が担持されたSiC膜表面だけが露出するように、固定材6に接着剤7でSiC基板9を固定し作用電極3を作成した。図10は、実施例1と同じ条件で、光(発光源は太陽光と同じスペクトルを有するソーラシミュレータ(照射強度:1.0W/cm)を照射して、水素生成に伴う電流値を測定した結果である。図10から分かるように、Pt膜担持をした場合の電流値はPt膜担持をしない場合の電流値よりも大きくなっている。すなわち、Pdの担持によりエネルギー変換効率が改善されていることが分かる。推定のエネルギー変換効率はPt担持のない場合(1.5%)より向上し、2.5%と推測される。
【産業上の利用可能性】
【0023】
光触媒、特に光照射による水の分解に用いることができる。

【符号の説明】
【0024】
1…電解液収納容器、2…対向電極、3…作用電極、4…導線、5…電解液、6…作用電極固定部材、7…接着剤、8…作用電極、9…SiC、11…電解液収納容器、12…対向電極、13…SiC 14…Pt溶液、15…塩橋、16…KCl溶液、17…参照電極
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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