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明細書 :ガラス研磨材のリサイクル方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-150658 (P2015-150658A)
公開日 平成27年8月24日(2015.8.24)
発明の名称または考案の名称 ガラス研磨材のリサイクル方法
国際特許分類 B24B  57/02        (2006.01)
C02F  11/20        (2006.01)
C02F  11/00        (2006.01)
FI B24B 57/02 ZAB
C02F 11/20
C02F 11/00 C
請求項の数または発明の数 11
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2014-027616 (P2014-027616)
出願日 平成26年2月17日(2014.2.17)
発明者または考案者 【氏名】佐藤 理夫
【氏名】植木 智也
出願人 【識別番号】505089614
【氏名又は名称】国立大学法人福島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000800、【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 3C047
4D059
Fターム 3C047FF08
3C047GG14
3C047GG17
4D059AA30
4D059BF03
4D059BJ01
4D059BK30
4D059CC10
4D059DB40
4D059EB06
要約 【課題】使用済みガラス研磨材を含むスラリーから、研磨材を高純度に再生し、製造する方法及び装置を提供する。
【解決手段】
研磨に使用されたガラス研磨材が含まれるスラリーを回収し、回収したスラリーを水と比重の異なる冷媒中で冷却凍結し、凍結させたスラリーと冷媒とからなる混和液を静置し、夫々冷媒、水、ガラス研磨材が含まれる三層に分離させ、ガラス研磨材を回収することによるガラス研磨材の製造方法、及び該製造方法を実施するための装置を提供する。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
ガラス研磨材の使用済みスラリーからガラス研磨材を製造する方法であって、
研磨に使用されたガラス研磨材が含まれるスラリーを回収する工程と
回収したスラリーを水と比重の異なる冷媒中に導入し、スラリーに含まれるガラス研磨材を水とともに凍結させる冷却凍結工程と
スラリーと冷媒とからなる混合物を静置し融解する融解工程と、
冷媒、水、ガラス研磨材が夫々含まれる三層に分離させる層分離工程と
層分離後のガラス研磨材と冷媒を夫々回収する工程とを備えることを特徴とするガラス研磨材のリサイクル方法。
【請求項2】
請求項1記載のガラス研磨材のリサイクル方法において、
前記冷媒の比重が水より軽いことを特徴とするガラス研磨材のリサイクル方法。
【請求項3】
請求項2記載のガラス研磨材のリサイクル方法において、
前記冷媒はシリコーンオイルであることを特徴とするガラス研磨材のリサイクル方法。
【請求項4】
請求項1~3いずれか1項記載のガラス研磨材のリサイクル方法において、
前記冷媒の温度及び/又は前記使用済みスラリーの冷媒への導入速度を調節することによって、所望の粒径の研磨材を製造することを特徴とするガラス研磨材のリサイクル方法。
【請求項5】
使用済みガラス研磨材を含むスラリーからガラス研磨材をリサイクルする装置であって、
導入されたスラリーを凍結するための冷媒が貯留されている冷媒槽と
前記冷媒槽で凍結されたスラリーと冷媒の混合物を融解し静置する静置槽とを備え、
前記冷媒槽にスラリーを移送するスラリー移送手段と
前記冷媒槽から前記静置槽に凍結されたスラリーと冷媒の混合物を移送する凍結混合物移送手段と
前記静置槽で層分離したガラス研磨材を回収する研磨材回収手段と
前記静置槽で層分離した冷媒を回収する冷媒回収手段と
前記静置槽で層分離した水を排出する排出手段とを備えることを特徴とするガラス研磨材のリサイクル装置。
【請求項6】
請求項5記載の使用済みガラス研磨材を含むスラリーからガラス研磨材をリサイクルする装置であって、
前記冷媒槽にスラリーと冷媒を混和する撹拌装置を備えることを特徴とするガラス研磨材のリサイクル装置。
【請求項7】
請求項5又は6記載の使用済みガラス研磨材を含むスラリーからガラス研磨材をリサイクルする装置であって、
冷媒槽に冷却装置を備えることを特徴とするガラス研磨材のリサイクル装置。
【請求項8】
使用済みガラス研磨材を含むスラリーからガラス研磨材をリサイクルする装置であって、
スラリーと冷媒との混合物を貯留する貯留槽と
凍結後のスラリーと冷媒の混合物を融解し静置する静置槽とを備え、
前記貯留槽にスラリーと冷媒を移送するスラリー・冷媒移送手段と
前記貯留槽から前記静置槽に凍結後のスラリーと冷媒混合物を移送する凍結混合物移送手段と
前記静置槽で層分離したガラス研磨材を回収する研磨材回収手段と
前記静置槽で層分離した冷媒を回収する冷媒回収手段と
前記静置槽で層分離した水を排出する排出手段とを備えることを特徴とするガラス研磨材のリサイクル装置。
【請求項9】
請求項8記載の使用済みガラス研磨材を含むスラリーからガラス研磨材をリサイクルする装置であって、
スラリーと冷媒を混合する撹拌装置を有する冷媒槽を備え、
前記スラリー・冷媒移送手段によって、冷媒槽で混合されたスラリー及び冷媒が貯留槽に移送されることを特徴とするガラス研磨材のリサイクル装置。
【請求項10】
請求項8又は9記載の使用済みガラス研磨材を含むスラリーからガラス研磨材をリサイクルする装置であって、
前記スラリー・冷媒移送手段、又は冷媒槽に冷却装置を備えることを特徴とするガラス研磨材のリサイクル装置。
【請求項11】
請求項5~10いずれか1項記載の使用済みガラス研磨材を含むスラリーからガラス研磨材をリサイクルする装置であって、
前記使用済みスラリーの凍結速度を制御するための冷媒温度制御装置を備えることを特徴とするガラス研磨材のリサイクル装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス研磨材の使用済みスラリーからガラス研磨材を再生しガラス研磨材を製造する方法、及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学レンズやプリズム、ガラス基板等のガラス製品を研磨する際、研磨材として酸化セリウム系ガラス研磨材が広く用いられている。酸化セリウム系ガラス研磨材の研磨機構は、化学的機械研磨と称され、研磨材自体が有する表面化学作用によって、機械的研磨効果を増大させるものである。そのため非常に平滑な研磨表面を得ることができるので、精巧な研磨が求められる精密研磨に利用されている。
【0003】
研磨工程では、酸化セリウム系ガラス研磨材粉末を工業用水に分散させたスラリーの状態で用いる。研磨材スラリーは研磨能力が低下するまで使用され、他の排水とともに排水処理施設に集められ、凝集沈殿処理の後、廃棄されることが多かった。
【0004】
しかしながら、酸化セリウム系ガラス研磨材は、軽希土類の一種であるセリウムを主成分とする研磨材であり、レアアース資源の主要な輸出国である中国の輸出規制により、近年価格が高騰してきている。そのため研磨材の再利用技術の開発による使用量の削減が重要となってきている。そこで、研磨材の使用済みスラリー中に存在する研磨材微粒子を回収し、再利用する技術が開発されてきた(特許文献1~3)。
【0005】
また、研磨材には、粒径0.1μm程度の研磨材一次粒子と、一次粒子が凝集し数μm程度の大きさに形成されている二次粒子が混在している。未使用の研磨材には、二次粒子が多く含まれるが、使用済みスラリー中には二次粒子が少なく、一次粒子の状態で多く存在していることを本発明者らは報告している(非特許文献1)。一次粒子は粒径が小さいことから分離回収が困難であることや、研磨材二次粒子が多いほど研磨パッドからの荷重が大きくなり、研磨レートが増大することから、研磨材を再利用するためには、研磨材二次粒子の再形成も必要であると考えられる。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2007-276055号公報
【特許文献2】特開2004-237163号公報
【特許文献3】特開2010-214515号公報
【0007】

【非特許文献1】高橋 亮ら、化学工学論文集(2013)第39巻、157-162頁
【非特許文献2】植木 智也ら、化学工学論文集(2014)第40巻、72-78頁
【非特許文献3】Takahashi R., et al., ASEAN Journal of Chemical Engineering (2014), in press
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には使用済み研磨材スラリーを塩酸等の強酸で酸処理し、固液分離を行い、乾燥、焼成して研磨材を再生する方法が開示されている。該再生方法は乾燥、焼成する工程が含まれているために、多くのエネルギーを必要とすることから、環境に対する負荷が大きい。また、該再生方法によれば、研磨材は研磨レートの低下を生じることはないが、工程が多く、また、強酸を使用する工程が含まれているため、耐食性に優れた設備を必要とするとともに、作業を行うにあたって非常に注意を要するという問題があった。
【0009】
特許文献2には、使用済み研磨材のスラリーに、ポリ塩化アルミニウム(PAC)を凝集剤として添加し、凝集させ再利用する方法が開示されている。該再生方法は、簡便な方法ではあるものの、凝集剤としてPACを添加しているために、再生した研磨材を用いてガラスを研磨すると、研磨中に凝集が進行してしまい、研磨に支障をきたすことがある。
【0010】
本発明者らも、ガラス研磨材を再利用するための製造方法をすでに開示している(特許文献3、非特許文献1)。本発明者らはガラス研磨材の使用済みスラリーを凍結、解凍することにより凝集物が形成されることを見出した。さらに、本発明者らは、凍結により形成された凝集物は、スラリー中の研磨材一次粒子が二次粒子(以下、凍結二次粒子ということもある。)を形成し、さらに凍結二次粒子が集合体を形成したものであることを確認している。この再生方法は、凍結、融解といった簡単な方法により粒径の大きい二次粒子を形成させることができ、再利用可能な凝集物を回収できることから、注目を集めている。
【0011】
また、氷の結晶の間にガラス研磨材として再利用可能な凝集物が形成されることから、凍結速度を調整することにより粒径を制御できることも見出した(非特許文献2)。これにより、研磨に適したサイズのガラス研磨材を回収することが可能である。
【0012】
試料を凍結することによる使用済みスラリーの回収は、スラリーに凝集を促進させるために凝集剤を添加する必要がないことから再形成された二次粒子の組成が変質していない。そのため、再生したガラス研磨材は研磨能力が回復するという利点もある(非特許文献3)。
【0013】
しかしながら、研磨工場で排出される多量の使用済みスラリーを凍結させる場合には、研磨に適したサイズである1~10μmに再生研磨粒材を調整することが困難であること、凍結までに長時間を要すること、分離するための機構が必要である等、改善すべき点があった。特に、多量の使用済みスラリーを凍結させると、凍結に時間を要するために、二次粒子が圧縮され集合した凝集物が大きくなりすぎ、ポンプで吸い上げられない、目詰まりする等、種々の問題が生じていた。
【0014】
本発明は、前記凍結によるガラス研磨材のリサイクル方法をさらに発展させ、簡便に再利用を行うための装置、及び製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のガラス研磨材の使用済みスラリーからガラス研磨材を製造する方法は、研磨に使用されたガラス研磨材が含まれるスラリーを回収する工程と、回収したスラリーを水と比重の異なる冷媒中に導入し、スラリーに含まれるガラス研磨材の混合物を水とともに凍結させる冷却凍結工程と、スラリーと冷媒とからなる混合物を静置し融解する融解工程と、冷媒、水、ガラス研磨材が夫々含まれる三層に分離させる層分離工程と、層分離後のガラス研磨材と冷媒を夫々回収する工程とを備えることを特徴とする。
【0016】
本再生方法は、凍結濃縮法を応用したものであることから、凝集剤等の試薬を使用しないため、回収された再生ガラス研磨材は非常に純度が高い。凍結濃縮法は、従来、食品加工、あるいは汚泥処理に用いられてきた方法であるが、本発明者らがガラス研磨材の再生に用いる方法を開発し、すでに開示していることは前述のとおりである(特許文献3)。ガラス研磨材を含むスラリーを凍結した場合には、食品や汚泥とは異なり、ガラス研磨材が氷の結晶により圧縮されて二次粒子を形成する。本発明者らは、ガラス研磨材に特有の凍結二次粒子を形成するという特性を見出し、ガラス研磨材の再生方法を開発した。ガラス研磨材は、凍結二次粒子を形成するため、研磨レートの大きい品質の良いガラス研磨材として再生される。
【0017】
また、ガラス研磨材の再生方法において、冷媒と混和することにより、冷却、凍結を行い、濃縮された研磨材成分を回収するというという方法は、本発明独自のものである。また、冷媒と混和することにより、大量の使用済みスラリーであっても非常に早く冷却凍結工程を行うことができる。
【0018】
さらに、酸化セリウム系ガラス研磨材は、水と混和したスラリー状で用いられるので、ガラス研磨材を凍結濃縮する際に、使用済みガラス研磨材が分散している水と比重の異なる冷媒を用いることにより、層分離した際に冷媒、水、研磨材を含む層の三層に分離することができる。
【0019】
本発明のガラス研磨材のリサイクル方法は、冷媒の比重が水より軽いことを特徴とする。
【0020】
冷媒の比重を水より軽くすることにより、冷媒とスラリーの混合物を凍結融解させ層分離させた後に、冷媒の回収を簡便に行うことができる。冷媒としては、融点が水の融点である0℃よりも低く、比重が水よりも軽いものであればどのようなものでも良く、種々のオイルを用いることができる。
【0021】
本発明のガラス研磨材のリサイクル方法は、冷媒がシリコーンオイルであることを特徴とする。
【0022】
シリコーンオイルは各種オイルの中でも非常に扱いやすいことから、本発明の研磨材のリサイクル方法に適している。
【0023】
さらに、本発明のガラス研磨材のリサイクル方法は、冷媒の温度及び/又は使用済みスラリーの冷媒への導入速度を調節することによって、所望の粒径の研磨材を製造することを特徴とする。
【0024】
本発明者のグループは、スラリーが凍結に要する時間が長いほど、二次粒子が集合した凝集物が大きくなることを見出した。したがって、冷媒の温度、スラリーの冷媒への導入速度といった冷却条件を調節することによって、研磨材の凝集物の粒径を所望の大きさに調整可能である。
【0025】
本発明の使用済みガラス研磨材を含むスラリーからガラス研磨材をリサイクルする装置は、導入されたスラリーを凍結するための冷媒が貯留されている冷媒槽と、冷媒槽で凍結されたスラリーと冷媒の混合物を融解し静置する静置槽とを備え、冷媒槽にスラリーを移送するスラリー移送手段と、冷媒槽から静置槽に凍結されたスラリーと冷媒の混合物を移送する凍結混合物移送手段と、静置槽で層分離したガラス研磨材を回収する研磨材回収手段と、静置槽で層分離した冷媒を回収する冷媒回収手段と、静置槽で層分離した水を排出する排出手段とを備えることを特徴とする。
【0026】
冷媒槽には、氷点下に冷却された冷媒が貯留されおり、冷媒槽内に使用済み研磨材を含むスラリーが導入されることにより、冷却され凍結される。
【0027】
冷媒槽で凍結されたスラリーと冷媒の混和物は、静置槽にスラリー移送手段によって移送され、静置槽内で融解されることにより層分離する。層分離することにより、冷媒、ガラス研磨材を回収し、水層は所定の排水処理機構によって処理することが可能となる。
【0028】
本発明の装置は、凍結濃縮法を基本としているものであるから、基本構成として、冷媒槽と、凍結したスラリー/冷媒の混合物を静置し融解する静置槽、及び各槽をつなぐ流路及び再生研磨材、冷媒を回収する手段を備えていればよい。したがって、非常に簡単な構成で研磨材の再生を行うことができる。
【0029】
さらに、本発明の使用済みガラス研磨材を含むスラリーからガラス研磨材をリサイクルする装置は、冷媒槽にスラリーと冷媒を混和する撹拌装置を備えることを特徴とする。
【0030】
冷媒槽に撹拌装置を備えることにより、迅速かつ均一に冷却を行うことが可能である。
【0031】
本発明の使用済みガラス研磨材を含むスラリーからガラス研磨材をリサイクルする装置は、冷媒槽に冷却装置を備えることを特徴とする。
【0032】
冷媒槽に冷却装置を備えることにより、冷媒をスラリーが所望の粒径の二次粒子を形成し凍結する温度に設定することができる。
【0033】
本発明のガラス研磨材を含むスラリーからガラス研磨材をリサイクルする装置は、スラリーと冷媒との混合物を貯留冷却する貯留槽と、凍結後のスラリーと冷媒の混合物を融解し静置する静置槽とを備え、貯留槽にスラリーと冷媒を移送するスラリー・冷媒移送手段と、貯留槽から静置槽に凍結後のスラリーと冷媒混合物を移送する凍結混合物移送手段と、静置槽で層分離したガラス研磨材を回収する研磨材回収手段と、静置槽で層分離した冷媒を回収する冷媒回収手段と、静置槽で層分離した水を排出する排出手段とを備えることを特徴とする。
【0034】
ガラス研磨材を含むスラリーと冷媒は、貯留槽に移送される。このときスラリーは別ラインで移送される冷媒と、移送されながら合流して貯留槽に移送されても良いし、混和した後に貯留槽に移送されてもよい。研磨を行う工場の実情に即したライン構成により再生処理を行うことができる。
【0035】
貯留槽では、スラリー、冷媒の混合物が氷点下以下に冷却されることにより、スラリーに含まれる水が凍結する。凍結することにより、ガラス研磨材の凝集物は成長する。貯留槽では、冷媒、スラリーは夫々の比重によって分離する。含まれるガラス研磨材微粒子の量が各事業所等により異なるため、スラリーの比重は異なる。しかし、冷媒は適宜選択することができることから、各事業所でスラリーの比重を考慮して冷媒を選択すればよい。
【0036】
貯留槽内では静置槽内で凍結物を融解し、静置した場合ほど三層にきれいに層分離することはないが、ガラス研磨材の凝集物が多い分画を回収することが可能である。そこで、冷媒は回収して再利用するために戻し、スラリーの凍結物と冷媒の混合物は静置槽へと凍結混合物移送手段により移送される。
【0037】
静置槽で静置、融解されたスラリーは、冷媒層、水層、ガラス研磨材を含む層の三層に分離するので、冷媒、ガラス研磨材は再利用し、水は排水として処理すればよい。
【0038】
この装置によれば、貯留槽によりスラリーが濃縮した分画を静置槽に移送し、冷媒はすぐに回収するため、冷媒の温度があまり上がることがなく、再利用のために回収することができ、エネルギーの無駄が少ない。
【0039】
さらに、本発明の使用済みガラス研磨材を含むスラリーからガラス研磨材をリサイクルする装置は、スラリーと冷媒を混合する撹拌装置を有する冷媒槽を備え、冷媒槽で混合されたスラリー・冷媒移送手段によってスラリー及び冷媒が貯留槽に移送されることを特徴とする。
【0040】
冷媒槽で、冷媒とスラリーとを撹拌装置を備えた冷媒槽で混合することにより、多量のスラリーであっても均一に冷媒と混合し、貯留槽に移送することができる。
【0041】
本発明の使用済みガラス研磨材を含むスラリーからガラス研磨材をリサイクルする装置は、スラリー・冷媒移送手段、又は冷媒槽に冷却装置を備えることを特徴とする。
【0042】
冷却装置は、使用済みスラリーが出る量や研磨工場のラインの配置等、各研磨工場の実情に即して、スラリーと冷媒が混合して移送されるスラリー・冷媒移送手段に設けてもよいし、冷媒槽に設けてもよい。
【0043】
本発明の使用済みガラス研磨材を含むスラリーからガラス研磨材をリサイクルする装置は、使用済みスラリーの凍結速度を制御するための冷媒温度制御装置を備えることを特徴とする。
【0044】
冷媒温度を調節することにより、スラリーの凍結速度を調整し、所望の粒径にガラス研磨材二次粒子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の使用済みのガラス研磨材の再生方法の概略を示す図。
【図2A】第1の実施形態の研磨材の製造装置を示す図。
【図2B】第2の実施形態の研磨材の製造装置を示す図。
【図3】第3の実施形態の研磨材の製造装置を示す図。
【図4】第4の実施形態の研磨材の製造装置を示す図。
【図5】第5の実施形態の研磨材の製造装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1を参照しながら、本発明の使用済みのガラス研磨材を再生する方法の概略を説明する。

【0047】
研磨材スラリーは、循環して利用され、研磨能力が低下した後に回収する。使用済みの研磨材を含むスラリー1を冷媒2と混和し、混合されたスラリー・冷媒混合物3はさらに冷却される。冷媒は水と比重の異なるものであれば、どのようなものを使用してもよい。冷却凍結工程4を経た凍結スラリー・冷媒混合物5は、融解工程6を経て融解される。水を含むスラリーであることから、0℃以上で融解するので特に加温することはなく、例えば室温で放置すればよい。研磨材粒子は冷却凍結工程4により二次粒子を形成しているため、迅速に沈殿する。また、水と異なる比重の冷媒を用いていることから、冷媒と水の層が分離する。したがって、静置することによる層分離工程7によって、凍結された研磨材に富む再生研磨材の層8、水層9、冷媒層10の三層に分離する。再生研磨材層8は回収して再利用し、冷媒10は回収し、再度冷却してガラス研磨材の再生に再利用し、水層9は廃液として処理する。

【0048】
冷媒は回収のしやすさから、水より比重の軽いものであって、融点が0℃より低いものであればどのようなものを用いても良い。比重の点から油であることが好ましく、中でも扱いやすいシリコーンオイルであることがより好ましい。

【0049】
使用済みの研磨材は粒径の小さい一次粒子が多くなっているが、水と一緒に凍結する際に、氷の結晶の間にガラス研磨材が挟まれ二次粒子が形成される。二次粒子は上述のように粒子径が大きくなるため、ガラス研磨材として再利用した場合にも、研磨レートが増大する。また、層分離工程7では、凍結二次粒子が凝集した凝集物として存在するために速やかに沈殿する。

【0050】
本発明者のグループは、凍結条件を調節し、スラリーの凍結速度を変えることによって、形成される二次粒子の粒径を制御できることを見出した(非特許文献2)。したがって、凍結条件を調節することによりガラス研磨材の凝集物を所望の粒径に調節することが可能である。

【0051】
本発明の方法では、スラリーを冷媒に導入することにより凍結させることから、急速に凍結することが可能である。従来は、冷凍庫内で凍結させていたため、スラリーが凍結に要する時間の制御が難しく、また、大量のスラリーを凍結させるのに非常に時間を要した。本発明の方法によれば、凍結に要する時間を短縮することができ、かつ冷媒の温度調節をすることによる温度条件の設定も簡便である。

【0052】
以下、本発明のガラス研磨材の製造装置について詳細に説明する。図2Aに本発明の製造装置の第1の実施形態を示す。

【0053】
ガラス研磨材の使用済みスラリー11は、冷媒の貯留してある冷媒槽12にポンプP等で移送する。冷媒槽12内には冷却された冷媒が貯留されており、冷媒を撹拌羽25で撹拌することによって、スラリーと良く混合する。冷媒の温度、スラリーの移送速度、撹拌速度によって、スラリーの凍結に要する時間を調節することができる。上述のようにスラリーの凍結速度を調節することによって、二次粒子の大きさを調節することが可能である。冷媒は、使用済みスラリーが凍結する温度であれば何度でも良いが、適度な粒径を備えた二次粒子を形成させるためには、-5℃~-30℃の範囲が好ましい。冷媒温度を制御する冷媒温度制御装置を備えた構成とすれば、適度な粒径を備えた二次粒子を形成させることができる。

【0054】
冷媒槽12で冷媒とスラリーが混合された冷媒/スラリー混合物13は、静置槽14に移送され静置される。冷媒/スラリー混合物13は、ポンプ等により移送するため流動可能なスラリー状となるように、冷却温度や使用済み研磨材スラリーの濃度が調整されている。なお、スラリーや冷媒の移送はポンプを使用した例を挙げているが、以下の実施例すべてにおいて流路の高低差を利用して移送する等、どのような方法を用いても良い。

【0055】
静置槽14において静置し、融解することによって、冷媒15、水16、凍結濃縮された研磨材層17の三層に分離する。研磨材層17に含まれる研磨材は二次粒子の割合も多く、すぐに研磨材として再利用することが可能である。また、冷媒は再び冷却して冷媒槽12に戻し再利用し、水層は所定の排水処理機構により処理する。

【0056】
ここでは、冷媒が水よりも比重が小さいものを例として示しているが、水と異なる比重の冷媒であれば、静置した際に、水層、冷媒層、再生研磨材層の三層に分離することからどのような冷媒を用いてもよい。さらに、静置槽で三層に分離した冷媒槽、再生研磨材層から夫々冷媒、再生研磨材を回収できるように、ポンプ、弁等を適宜配置すればよいのは言うまでもない。

【0057】
図2Bには本発明の製造装置の第2の実施形態を示す。第1の実施形態では、冷媒槽12において、冷媒とスラリーを撹拌しながらスラリーを凍結させるが、第2の実施形態では、スラリーをゆっくり滴下することによって凍結させる。

【0058】
適切な比重の冷媒を選択することにより、スラリーは滴下後、冷媒槽内で凍結するが凍結することによって比重が軽くなり、凍結したスラリーを冷媒表面に浮かせることができる。上面の冷媒とともに、凍結したスラリーをポンプP等で静置槽14に移送することにより、スラリーの多い分画を静置槽14に移送させることができる。静置槽14で静置した後は、第1の実施形態と同様に三層に分離した冷媒15、水16、凍結濃縮された研磨材層17の各層を夫々回収、処理すればよい。

【0059】
次に本発明の製造装置の第3の実施形態を示す(図3)。使用済み研磨材を含むスラリー11は、スラリー・冷媒移送手段18内で予め冷却された冷媒とともに冷却されながら貯留槽19に移送される。スラリーは、スラリー・冷媒移送手段18移送中も冷却装置により冷却されているため、凍結しながら冷媒とともに移送される。冷却温度は、スラリーが凍結する温度であれば何度でも良いが、移送速度、スラリー・冷媒移送手段18のラインの長さ等を調整して、二次粒子の大きさを調整するためには、-5℃~-30℃の範囲が好ましい。

【0060】
スラリー・冷却移送手段18を移送された冷媒とスラリーの混合物は、一旦貯留槽19で貯留されると、夫々冷媒20とスラリー凍結物の多い層21とに分離することから、凍結物の多い層21を静置槽14に凍結混合物移送手段22により移送し、冷媒20は回収し、冷媒槽に移送し再利用する。冷媒20は静置槽14に移送される前に回収されることから、低い温度を保ったまま回収することができる。また、ここでは、冷媒20がスラリー凍結物の多い層21よりも比重が小さい例を挙げて示しているが、冷媒層がスラリー凍結物の多い層の下に分離するような冷媒を選択してもよい。

【0061】
静置槽14に移送された凍結物は、融解することにより三層に分離する。三層に分離された冷媒15、研磨材17はともに再利用し、水16は所定の排水機構により処理を行う。静置槽14の冷媒15と、貯留槽19の冷媒20はポンプP等で汲み上げ移送するが、移送する管の周囲に冷却装置を適宜配置することにより、冷却しながら移送する。これにより回収した冷媒を再度スラリーと混合し、スラリーを冷却することが可能となる。

【0062】
図4の本発明の第4の実施形態では、スラリー11を冷媒槽12に移送し、冷媒槽12内で混和する。冷媒とスラリーの混合物13は、スラリー・冷媒移送手段23を通って移送されるが、スラリー・冷媒移送手段23自体を冷却し、移送しながら冷却を行うことにより、スラリーを凍結させる。なお、移送距離、得たい二次粒子の粒径等によって、冷却温度、移送速度を適宜調節すればよい。

【0063】
スラリー・冷媒移送手段23を冷却されながら移送された冷媒/スラリーの混合物は、第3の実施形態と同様に一旦貯留槽19で貯留されると、冷媒20とスラリー凍結物の多い層21とに分離することから、凍結物の多い層21を静置槽14に移送し、冷媒20は冷媒槽に移送し再利用する。凍結物は静置槽14で融解することにより、三層に分離させた後、他の実施形態と同様に冷媒、研磨材ともに再生利用する。

【0064】
本発明の第5の実施形態では、冷媒槽12に移送されたスラリー11は冷媒槽12内で混和される。冷媒槽12内の冷媒は冷却されており、冷却され、凍結したスラリーと冷媒の混合物13は、スラリー・冷媒移送手段24を通って貯留槽19に移送される。

【0065】
移送された冷媒とスラリーの混合物は、第3、第4の実施形態と同様に一旦貯留槽19で貯留されると、冷媒20とスラリー凍結物の多い層21とに分離することから、凍結物の多い層21を静置槽14に移送し、冷媒20は冷媒槽に移送し再利用する。凍結物は静置槽14で融解することにより、三層に分離させた後、他の実施形態と同様に冷媒、研磨材ともに再生利用する。また、回収した冷媒を回収するラインの周囲に冷却装置を配し、冷却して冷媒槽に戻すことができる。

【0066】
本発明の装置は、スラリーを冷媒に導入することにより凍結させることから、急速に凍結することが可能であり、多量のスラリーを処理する際に非常に効率が良い。また、スラリーの温度制御が容易であり、凍結条件を容易に調整し、所望の粒径に調節することができる。

【0067】
以上、本発明の研磨材を再利用するための装置を説明したが、この実施形態に限らず、スラリーの供給、凍結、静置、研磨材及び冷媒の回収ができるように、ポンプ、流路、弁等、適宜組み合わせて構成することができる。

【0068】
また、いずれの実施形態の場合にも冷媒を冷却する冷却装置の温度制御によって、自在にスラリーの凍結温度の調節を行うことが可能である。これにより、二次粒子の大きさを調節可能であり、所望の粒径の研磨材に再生することが可能である。

【0069】
本発明のガラス研磨材の再生方法によれば、試薬を添加する等の操作を経ることなく、スラリーを凍結/融解することによる凍結濃縮のみで、研磨材を再生することができる。また、冷媒も再利用可能であり、非常に簡単な設備でコストもかからず研磨材の再生を行うことができる。
【符号の説明】
【0070】
11・・・使用済みスラリー、12・・・冷媒槽、13・・・冷媒/スラリー混合物、14・・・静置槽、15、20・・・冷媒層、16・・・水層、17・・・再生研磨材層、18、23、24・・・スラリー・冷媒移送手段、19・・・貯留槽、22・・・凍結混合物移送手段
図面
【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
4
【図5】
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