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明細書 :3次元ホログラフィック表示システム、及び3Dディスプレイ装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6040477号 (P6040477)
登録日 平成28年11月18日(2016.11.18)
発行日 平成28年12月14日(2016.12.14)
発明の名称または考案の名称 3次元ホログラフィック表示システム、及び3Dディスプレイ装置
国際特許分類 G03H   1/04        (2006.01)
G03H   1/22        (2006.01)
G03B  21/14        (2006.01)
G02B   5/30        (2006.01)
FI G03H 1/04
G03H 1/22
G03B 21/14 Z
G02B 5/30
請求項の数または発明の数 7
全頁数 22
出願番号 特願2013-547124 (P2013-547124)
出願日 平成24年11月22日(2012.11.22)
権利譲渡・実施許諾 特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
国際出願番号 PCT/JP2012/080290
国際公開番号 WO2013/080883
国際公開日 平成25年6月6日(2013.6.6)
優先権出願番号 2011259704
2012029521
優先日 平成23年11月29日(2011.11.29)
平成24年2月14日(2012.2.14)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成27年10月8日(2015.10.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
発明者または考案者 【氏名】堤 直人
【氏名】木梨 憲司
【氏名】小江 可那子
【氏名】川辺 豊
【氏名】西出 順一
【氏名】雀部 博之
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
審査官 【審査官】小西 隆
参考文献・文献 特開2005-227311(JP,A)
国際公開第2010/141323(WO,A1)
特開2005-189845(JP,A)
特開昭62-54284(JP,A)
特許第3973964(JP,B2)
特表2009-545007(JP,A)
国際公開第2007/114011(WO,A1)
調査した分野 G03H 1/04
G03H 1/22
G09F 9/00
G09F 9/30
H04N 13/04

特許請求の範囲 【請求項1】
フォトリフラクティブポリマーを主成分とするフォトリフラクティブ複合体が設けられたホログラフィック表示デバイスと、
S-偏光の物体光及びS-偏光の参照光を前記ホログラフィック表示デバイスに同じ側から照射することによりホログラム像を記録する記録手段と、
前記記録手段による前記ホログラム像の記録と同時に、P-偏光のプローブ光を前記ホログラフィック表示デバイスに前記物体光及び前記参照光と同じ側から照射することにより当該記録手段で記録された当該ホログラム像を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする3次元ホログラフィック表示システム。
【請求項2】
前記記録手段は、
レーザービームを発振するレーザー発振器と、
このレーザー発振器から発振されたレーザービームの光軸上に配置された第1の半波長板と、
前記第1の半波長板を通過したレーザービームを分割して第1、第2の偏光レーザービームとするビームスプリッターと、
前記第1の偏光レーザービームの光軸上に配置された第2の半波長板と、
前記第2の半波長板を通過した第1の偏光レーザービームのビーム径を拡大して物体へ照射し前記物体光とする第1の光学系と、
前記第2の偏光レーザービームを拡大して前記参照光とする第2の光学系と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の3次元ホログラフィック表示システム。
【請求項3】
前記記録手段は、
レーザービームを発振するレーザー発振器と、
このレーザー発振装置から発振されたレーザービームの光軸上に配置された第1の半波長板と、
前記第1の半波長板を通過したレーザービームのビーム径を拡大する第1の光学系と、
前記第1の光学系で拡大されたレーザービームを分割して第1、第2の偏光レーザービームとし、当該第2の偏光レーザービームを前記参照光とするビームスプリッターと、
前記第1の偏光レーザービームを変換して前記物体光とする空間光変調器と、
前記物体光を前記ホログラフィック表示デバイスに集光させる第2の光学系と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の3次元ホログラフィック表示システム。
【請求項4】
前記フォトリフラクティブ複合体は、電界を印加することなく前記記録手段による前記ホログラム像の書き換えを可能とする成分からなることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の3次元ホログラフィック表示システム。
【請求項5】
前記フォトリフラクティブ複合体は、電界を印加時に30フレーム毎秒のビデオレートに追従する応答性を有する成分からなることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の3次元ホログラフィック表示システム。
【請求項6】
3次元ホログラフィック表示システムを用いて構成された3Dディスプレイ装置であって、
前記3次元ホログラフィック表示システムは請求項1~のいずれかに記載の3次元ホログラフィック表示システムであることを特徴とする3Dディスプレイ装置。
【請求項7】
前記記録手段及び前記表示手段は、前記参照光と前記プローブ光とを、前記ホログラフィック表示デバイスに対して互いに異なる角度で前記ホログラフィック表示デバイスに照射する構成を有していることを特徴とする請求項1に記載の3次元ホログラフィック表示システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、静止画像や動画像を3次元映像として立体表示させる3次元ホログラフィック表示システムと、このシステムを用いた3Dディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の物質は、良好な電荷輸送能を有することが知られており、その応用事例としてフォトリフラクティブ効果がある。フォトリフラクティブ効果とは、可視光レーザーを照射するとポッケルス効果によって物質の屈折率が変化することである。具体的には、例えば、2本のコヒーレントなレーザー光をクロスさせて媒体に照射する場合が挙げられる。クロスしたビームは互いに干渉し、媒体に周期的な干渉縞が形成される。この干渉縞においては、明所・暗所が交互に交差し、明所では、媒体が光励起されて電荷キャリアが生成され、生成された電荷キャリアは、媒体に印加された外部電場によって明所からドリフト移動し、暗所でトラップされる。これにより、媒体には、周期的な電荷密度の分布が生じる。この周期的な電荷密度の分布は、ポッケルス効果を介して媒体に屈折率の周期的な変化を誘起する。
【0003】
このようなフォトリフラクティブ効果を用いることで、位相共役や、歪曲した媒体からのイメージング、実時間ホログラフィー、超多重ホログラム記録、3Dディスプレイ、3Dプリンター、さらには光増幅、光ニュートラルネットワークを含む非線形光情報処理、パターン認識、光リミッティング、高密度光データの記憶等への応用が期待されている。
【0004】
フォトリフラクティブ媒体を用いて3次元画像を記録、再生する技術として、例えば以下のものが挙げられる。特許文献1には、空間光変調器とホログラム記録媒体を備え、このホログラム記録媒体に、互いに統計的に独立な位相分布の複素共役用いて位相符号化されたキャリアが重ねて記録され、ホログラム記録媒体から立体像を再生する光学装置が記載されている。
【0005】
特許文献2には、空間光変調器をホログラム用物体光発生源として用い、空間光変調器に入射した光のうち空間光変調器を透過した0次光を遮断し、空間光変調器で回折された物体光のみを用いた三次元ホログラム表示装置であって、空間光変調器で作製した複数の物体光をフォトリフラクティブ効果を有する記録媒体に逐次蓄積する手段と、蓄積された複数の物体光を一括再生する手段を備える三次元ホログラム表示装置が記載されている。
【0006】
特許文献3には、ホログラムによる立体映像を表示する装置であって、光源から発生された光を第1および第2の光路に分割する光路分割手段と、表示すべきホログラムの像を計算によって算出するホログラム計算手段と、算出されたホログラムの像を表示し、第1の光路に分割された光が照射されることによって表示された像の反射光または透過光を散乱光として出射する表示手段と、フォトリフラクティブ効果を有し、表示手段から出射された散乱光に同期して非散乱光が入射されることによって、これら入射光の干渉縞がホログラムとして記録されるホログラム記録手段と、第2の光路に分割された光を複数の光路にさらに分割し、複数の非散乱光を生成し、これら複数の非散乱光をそれぞれ異なる入射角で前記ホログラム記録手段に入射する非散乱光生成手段とを備える立体映像表示装置が記載されている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開平7-181878号公報
【特許文献2】特許第3487499号公報
【特許文献3】特開2001-34148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の光学装置、特許文献2の三次元ホログラム表示装置、及び特許文献3の立体映像表示装置の記録媒体には、無機材料のフォトリフラクティブ結晶が用いられている。フォトリフラクティブ結晶は数cm程度のものであり、従って、特許文献1~3に記載の装置を用いた場合、ディスプレイの大面積化は非常に困難である。そのため、極めてコスト高となり、3Dディスプレイ装置を量産化することはできないという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、ディスプレイの大面積化を容易なものとして、低コストで製作でき、量産化が可能な3次元ホログラフィック表示システム、及び3Dディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために次の技術的手段を講じた。
即ち、本発明の3次元ホログラフィック表示システムは、フォトリフラクティブポリマーを主成分とするフォトリフラクティブ複合体が設けられたホログラフィック表示デバイスと、S偏光の物体光及びS偏光の参照光を前記ホログラフィック表示デバイスに同じ側から照射することによりホログラム像を記録する記録手段と、前記記録手段による前記ホログラム像の記録と同時に、P偏光のプローブ光を前記ホログラフィック表示デバイスに前記物体光及び前記参照光と同じ側から照射することにより当該記録手段で記録された当該ホログラム像を表示する表示手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
上記本発明の3次元ホログラフィック表示システムによれば、物体光及び参照光によってホログラム像が記録され、プローブ光によってホログラム像が表示されるホログラフィック表示デバイスに、フォトリフラクティブポリマーを主成分とするフォトリフラクティブ複合体を用いているので、当該ホログラフィック表示デバイスを容易に大面積化することができる。
【0012】
前記記録手段としては、レーザービームを発振するレーザー発振器と、このレーザー発振器から発振されたレーザービームの光軸上に配置された第1の半波長板と、前記第1の半波長板を通過したレーザービームを分割して第1、第2の偏光レーザービームとするビームスプリッターと、前記第1の偏光レーザービームの光軸上に配置された第2の半波長板と、前記第2の半波長板を通過した第1の偏光レーザービームのビーム径を拡大して前記物体へ照射し前記物体光とする第1の光学系と、前記第2の偏光レーザービームを拡大して前記参照光とする第2の光学系と、を有するものが挙げられる。この記録手段の構成によって、物体のホログラム像をホログラフィック表示デバイスへ明瞭に記録することができる。
【0013】
前記記録手段としては、レーザービームを発振するレーザー発振器と、このレーザー発振装置から発振されたレーザービームの光軸上に配置された第1の半波長板と、前記第1の半波長板を通過したレーザービームのビーム径を拡大する第1の光学系と、前記第1の光学系で拡大されたレーザービームを分割して第1、第2の偏光レーザービームとし、当該第2の偏光レーザービームを前記参照光とするビームスプリッターと、前記第1の偏光レーザービームを変換して前記物体光とする空間光変調器と、前記物体光を前記ホログラフィック表示デバイスに集光させる第2の光学系と、を有するものが挙げられる。この記録手段の構成によって、空間変調器に表示された表示物のホログラム像をホログラフィック表示デバイスへ明瞭に記録することができる。
【0017】
前記フォトリフラクティブ複合体として、電界を印加することなく前記記録手段による前記ホログラフィック画像の書き換えを可能とする成分からなるものが挙げられる。この場合、電圧を印加するための電界印加装置が必要でなくなり、3次元ホログラフィック表示システムのコストをさらに低減させることができる。
【0018】
前記フォトリフラクティブ複合体として、電界を印加時に30フレーム毎秒のビデオレートに追従する応答性を有する成分からなるものが挙げられる。この場合、ホログラフィック表示デバイスの応答性を格段に向上させることができる。
【0020】
本発明の3Dディスプレイ装置は、3次元ホログラフィック表示システムを用いて構成された3Dディスプレイ装置であって、前記3次元ホログラフィック表示システムは上記の3次元ホログラフィック表示システムであることを特徴とする。
【0021】
上記本発明の3Dディスプレイ装置によれば、容易に大面積化することができる3次元ホログラフィック表示システムを用いて構成されているため、大画面の3Dディスプレイ装置を製造する場合であってもコスト安となり、量産化を可能とすることができる。
前記記録手段及び前記表示手段が、前記参照光と前記プローブ光とを、前記ホログラフィック表示デバイスに対して互いに異なる角度で前記ホログラフィック表示デバイスに照射する構成を有するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
上記の通り、本発明によれば、物体光及び参照光によってホログラム像が記録され、プローブ光によってホログラム像が表示されるホログラフィック表示デバイスに、フォトリフラクティブポリマーを主成分とするフォトリフラクティブ複合体を用いているので、ホログラフィック表示デバイスを、容易に大面積化することができる。そのため、低コストで製作でき、量産化を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る3次元ホログラフィック表示システムの概略構成図である。
【図2】ホログラフィック表示デバイスの断面模式図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る3次元ホログラフィック表示システムの概略構成図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る3次元ホログラフィック表示システムの概略構成図である。
【図5】第3実施形態に係る3次元ホログラフィック表示システムのホログラフィック表示デバイスの断面模式図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る3次元ホログラフィック表示システムの概略構成図である。
【図7】ホログラフィック表示デバイスへ書き換えを行っている状態を説明するホログラム像の写真である。
【図8】ホログラフィック表示デバイスに映し出されたホログラム像と手の写真である。
【図9】空間光変調器を用いてホログラフィック表示デバイスに連続的に映し出されたホログラム像の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る3次元ホログラフィック表示システム1(3Dディスプレイ装置)の概略構成図である。この3次元ホログラフィック表示システム1は、ホログラム像を記録かつ表示させるホログラフィック表示デバイス2と、物体光及び参照光をホログラフィック表示デバイス2に照射することによりホログラム像を記録する記録手段3と、プローブ光をホログラフィック表示デバイス2に照射することにより、記録手段3で記録されたホログラム像を表示する表示手段4とで主に構成されている。

【0025】
ホログラム像を記録する本実施形態の記録手段3は、レーザーを発振するレーザー発振器10と、このレーザー発振器10から発振されたレーザービームを反射させる第1の固定ミラー11と、この第1の固定ミラー11で反射したレーザービームの光軸上に配置された第1の半波長板12と、この第1の半波長板12を通過したレーザービームを分割してp-偏光とs-偏光の第1、第2の偏光レーザービームB1、B2とするビームスプリッター13と、第1の偏光レーザービームB1の光軸上に配置された第2の半波長板14と、この第2の半波長板14を通過した第1の偏光レーザービームB1を反射させる第2の固定ミラー15と、この第2の固定ミラー15で反射したレーザービームのビーム径を拡大して物体5へ照射し、物体光B11とする第1の光学系16と、第2の偏光レーザービームB2のビーム径を拡大する第2の光学系17と、この第2の光学系17で拡大されたレーザービームを反射させて参照光B21とする第3の固定ミラー18とで構成されている。このうち、第1の光学系16は、レーザービームのビーム径を拡大する対物レンズ19とレンズ20とからなり、第2の光学系17は、レーザービームのビーム径を拡大するレンズ21とレンズ22とからなるが、これらの光学系を構成するレンズの数、種類は限定するものではない。

【0026】
レーザー発振器10から発振されたレーザービームは第1の固定ミラー11で反射され、第1の半波長板12を通過後、ビームスプリッター13で分割され、p-偏光の第1の偏光レーザービームB1はビームスプリッター13を直進し、s-偏光の第2のレーザービームB2はビームスプリッター13で反射される。第1の半波長板12を回転させることによって、ビームスプリッター13を直進するp-偏光の第1の偏光レーザービームB1と、ビームスプリッター13で反射されるs-偏光の第2の偏光レーザービームB2の強度比を変えることができる。

【0027】
ビームスプリッター13を通過したp-偏光の第1の偏光レーザービームB1は、第2の半波長板14でs-偏光に変換される。第2の半波長板14で変換されたs-偏光の第1の偏光レーザービームB1は、第2の固定ミラー15で反射される。第2の固定ミラー15で反射されたs-偏光の第1の偏光レーザービームB1のビーム径は、対物レンズ19とレンズ20で拡大される。ビーム径を拡大されたs-偏光の第1の偏光レーザービームB1は、物体5に照射され、物体光B11となる。

【0028】
ビームスプリッター13で反射したs-偏光の第2の偏光レーザービームB2は、レンズ21とレンズ22とを通過後、そのビーム径が拡大される。ビーム径が拡大されたs-偏光の第2の偏光レーザービームB2は、第3の固定ミラー18で反射され、参照光B21となる。

【0029】
そして、上記物体光B11が、上記参照光B21と共にホログラフィック表示デバイス2に照射され、当該物体光B11に含まれる空間的な強度分布及び位相分布を干渉縞として、当該物体光B11の空間情報が、ホログラフィック表示デバイス2に書き込まれる(記録される)。

【0030】
記録されたホログラム像を表示する本実施形態の表示手段4は、レーザーを発振するレーザー発振器24と、このレーザー発振装置24から発振されたレーザービームの光軸上に配置されたプローブ光用半波長板25と、このプローブ光用半波長板25を通過したレーザービームを反射させる第4の固定ミラー26と、この第4の固定ミラー26で反射されたレーザービームのビーム径を拡大するプローブ光用光学系27と、このプローブ光用光学系27で拡大されたレーザービームを反射させてプローブ光B31とする第5の固定ミラー28とで構成されている。このうち、プローブ光用光学系27は、2つのレンズ29、30からなるが、当該光学系を構成するレンズの数、種類は限定するものではない。

【0031】
レーザー発振器24から発振されたレーザービームは、プローブ光用半波長板25でp-偏光に変換され、第4の固定ミラー26で反射される。反射したp-偏光のレーザービームのビーム径は、レンズ29とレンズ30とで拡大される。ビーム径が拡大されたp-偏光のレーザービームは、第5の固定ミラー28で反射されてプローブ光B31となる。そして、記録手段3によって書き込まれた(記録された)空間情報は、p-偏光のプローブ光B31でホログラム像として読み出され、ホログラフィック表示デバイス2に表示される。

【0032】
物体光と参照光の波長、及び物体光と参照光の強度比を変更することによって、応答速度が変化する。物体光と参照光の波長は、450~700nmであることが好ましく、500~600nmがより好ましい。物体光と参照光の波長が、450nmを下回るか、700nmを上回ると十分な応答速度が得られないからである。

【0033】
図2はホログラフィック表示デバイス2の断面模式図である。このホログラフィック表示デバイス2はフォトリフラクティブ複合体6と、このフォトリフラクティブ複合体6を挟持する2枚の基材7、7とからなる。基材7、7はそれぞれ四方形状に形成されたガラス製の板材である。フォトリフラクティブ複合体6はフォトリフラクティブポリマー8に増感剤や非線形光学色素等を添加するか、又はフォトリフラクティブ機能を有するポリマーやその他の化合物で構成することによって得ることができる。本発明では、ホログラム像を書き換え可能なフォトリフラクティブ複合体6を用いている。

【0034】
(フォトリフラクティブ複合体)
ポリビニルカルバゾ-ル(PVCz)やカルバゾールを側鎖に有するビニルポリマー類に増感剤、非線形光学色素及び可塑剤を分散混合させたフォトリフラクティブCzポリマー複合体が挙げられる。フォトリフラクティブCzポリマー複合体は、例えば特開2005-227311号公報、特開2009-57528号公報、特開2010-211191号公報、Naoto Tsutsumi,Akihito Dohi,Asato Nonomura,and Wataru Sakai,J.Polym.Sci.Part
B:Polym.Phys.49,pp.414-420(2011).に記載されている。

【0035】
ポリ(ジフェニルアミノ)スチレン(PDAS)に増感剤、非線形光学色素及び可塑剤を分散混合させたフォトリフラクティブPDAS複合体が挙げられる。フォトリフラクティブPDAS複合体は、例えばN.Tsutsumi, T. Murao, and W. Sakai, Macromolecules, 38(17)pp.7521-7523(2005).に記載されている。

【0036】
複数のカルバゾール環を分子内に有する低分子化合物に、増感剤、非線形光学色素及び可塑剤を分散混合させたフォトリフラクティブ分子ガラス複合体が挙げられる。フォトリフラクティブ分子ガラス複合体は、N. Tsutsumi, J. Eguchi, W. Sakai, Chem. Phys. Lett. 408, 269 (2005)、特開2005-227311号公報に記載されている。

【0037】
芳香族第3級アミンとアルデヒドとの付加重合体に、増感剤、非線形光学色素を分散混合させたフォトリフラクティブトリフェニルアミン類ポリマー複合体が挙げられる。フォトリフラクティブトリフェニルアミン類ポリマー複合体は、特開2001-255566号公報に記載されている。

【0038】
以上のフォトリフラクティブ複合体は、電界を印加してホログラム像の書き換えを行うことができ、その中でもフォトリフラクティブPDAS複合体では、電界を印加時に30フレーム毎秒のビデオレートに追従する応答性を発現させることができる。無電界でホログラム像の書き換えを行うことができるフォトリフラクティブ複合体は、フォトリフラクティブCzポリマー複合体、フォトリフラクティブPDAS複合体、フォトリフラクティブ分子ガラス複合体である。

【0039】
上記のフォトリフラクティブ複合体に関し、無電界でホログラム像の書き換えを行うことが記載された文献を挙げる。フォトリフラクティブCzポリマー複合体は、特開2003-322886号公報、特許第3973964号公報に記載されている。フォトリフラクティブPDAS複合体は、Naoto Tsutsumi, Yusuke Shimizu, Junya Eguchi, Takehiro Murao,
Yoshito Nakajima and Wataru Sakai, Proceedings of SPIE, 6343 63432V (14 pages)
(2006)に記載されている。フォトリフラクティブ分子ガラス複合体は、N.Tsutsumi他3名、Opt.Mater.Vol.29pp.435-438(2006)に記載されている。

【0040】
無電界でホログラム像の書き換えを行うことができる他のフォトリフラクティブ複合体を例示する。光導電性部位と非線形光学部位を一つの分子内に持つ分子である下記式(1)で表される3-[(4-ニトロフェニル)アゾ]-9H-カルバゾール-9-エタノール (NACzE)を、ポリメチルメタクリレート(PMMA)やポリエチルメタクリレート(PEMA)に分散混合させたフォトリフラクティブ複合材が挙げられる。このフォトリフラクティブ複合体は、A.Tanaka,J.Nishide,H.Sasabe、Mol.Cryst.Liq.Cryst.,504,44-51(2009).に記載されている。

【0041】
【化1】
JP0006040477B2_000002t.gif

【0042】
下記式(2)で表されるヘミシアニン色素を、PVCz又はPMMAに分散混合させたフォトリフラクティブ複合体が挙げられる。このようなフォトリフラクティブ複合体として、J.-W. Lee ら “Novel polymer composites with high optical gain based on pseudo-photorefraction”,Adv.Mater.14(2),pp.144-147(2002)に記載されたものが挙げられる。

【0043】
【化2】
JP0006040477B2_000003t.gif

【0044】
電子受容性チオキサンソンと、下記式(3)で表される電子供与性4-(2-ニトロビニル)アニリン(TH-NVA)を分子内に有するモノリシック分子のフォトリフラクティブ分子ガラスが挙げられる。このフォトリフラクティブ複合体は、J.Jeong,K.Ohnishi,H.Sato,K.Ogino,Jpn.J.Appl.Phys.Part2 No.2B42(2003)L179.に記載されている。

【0045】
【化3】
JP0006040477B2_000004t.gif

【0046】
下記式(4)で表される2、5-ジメチル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)-4’-ニトロアゾベンゼン(DMHNAB)を分散混合させたシリカガラスフォトリフラクティブ複合体が挙げられる。このシリカガラスフォトリフラクティブ複合体は、P.Cheben,“A photorefractive originally modified silica glass with high optical
gain”,Nature408,pp.64-67(2000)に記載されている。

【0047】
【化4】
JP0006040477B2_000005t.gif

【0048】
マトリックスポリマーにイオン性液体を加えたフォトリフラクティブ複合体が挙げられる。具体的にはNACzEをPMMAに分散混合させ、これに下記式(5)で表されるイオン性液体である1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(1-butyl-3-methylimidazolium/bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)(BMIM)を加えたものが挙げられる。混合比は適宜変更される。一例を挙げると、NACzE/PMMA/BMIM:10~40/40~70/5~20(重量%比)である。

【0049】
【化5】
JP0006040477B2_000006t.gif

【0050】
モノシリック化合物である下記式(6)に示す[4-(4-ニトロフェニルアゾ)-フェニル]-ジフェニルアミン([4-(4-Nitrophenylazo)-phenyl-diphenylamine)(NATA)を、PMMAに分散混合させ、これに上記のイオン性液体であるBMIMを加えたものが挙げられる。混合比は適宜変更される。一例を挙げると、NATA/PMMA/BMIM:10~40/40~70/5~20(重量%比)である。マトリックスポリマーにイオン性液体を加えた複合体を用いれば、応答速度が極めて速くなりミリ秒オーダーの応答も可能とすることができる。

【0051】
【化6】
JP0006040477B2_000007t.gif

【0052】
(増感剤)
増感剤は電子受容体としての性能を有しており、フォトリフラクティブ性を高めるために配合されるものである。増感剤が配合されると、当該増感剤と、フォトリフラクティブポリマーとにより、電荷移動錯体が形成され、有用なフォトリフラクティブ性が発現される。さらには、増感剤の配合により、分子配向の制御なし(無電界下)でのフォトリフラクティブ性をも発現させることができる。

【0053】
増感剤の具体例として、(2,4,7-トリニトロ-9-フルレニィリデン)マロニトリル(TNF-DM)、[6,6]-フェニルC61ブタン酸メチルエステル(PCBM)、2,4,7-トリニトロ-9-フルオレノン(TNF)、フラーレンC60、フラーレンC70、テトラシアノベンゼン(TCBN)、テトラシアノキノジノメタン(TCNQ)、ベンゾキノン(BQ)、及びその誘導体、2、6-ジメチル-p-ベンゾキノン(MQ)、2、5-ジクロロ-p-ベンゾキノン(ClQ)、2、3、5、6-テトラクロロ-p-ベンゾキノン(クロラニル)、2、3-ジクロロ-5、6-p-ベンゾキノン(DDQ)等が挙げられる。これら具体例のうち、ホストマトリックスであるフォトリフラクティブポリマーに対する溶解性の点で、2,4,7-トリニトロ-9-フルオレノン(TNF)がより好ましい。なお、増感剤は、一種のものを単独で使用してもよく、2種類以上のものを併用しても良い。

【0054】
増感剤の含有量としては、フォトリフラクティブポリマー100重量%に対して、下限値としては0.1重量%が好ましく、0.5重量%がさらに好ましく、1重量%が最も好ましく、上限値としては、30重量%が好ましく、20重量%がさらに好ましく、10重量%が最も好ましい。増感剤の含有量が、0.1重量%以下であると、無電界下でのフォトリフラクティブ性が低くなる。増感剤の含有量が、30重量%よりも多いと、増感剤による電荷移動錯体の濃度が高くなるため、光の吸収の増大が招来されて光の透過度が顕著に低下してしまう。

【0055】
(非線形光学色素)
非線形光学色素とは2次の非線形光学特性を示すドナーアクセプター型分子、すなわち、電場によって屈折率が変化する材料(2次非線形光学材料)のことである。非線形光学色素の具体例として、2、5-ジメチル-4-(p-ニトロフェニルアゾ)アニソール(DMNPAA)、4-アミノ-4‘-ニトロアゾベンゼン(ANAB)、s-(-)-1-(4-ニトロフェニル)-2-ピロリジン-メタノール(NPP)、4-(ジエチルアミノ)-(E)-β-ニトロスチレン(DEANST)、(ジエチルアミノ)ベンツアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH)、PDCST、AODCST、[[4-(ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)フェニル]メチレン]プロパンジニトリル(7-DCST)、TDDCST、DCDHF-6等のアミノシアノスチレン類が挙げられる。なお、非線形光学色素は、一種のものを単独で使用してもよく、2種類以上のものを併用しても良い。

【0056】
非線形光学色素の含有量としては、フォトリフラクティブポリマー100重量%に対して、下限値として、20重量%が好ましく、25重量%がさらに好ましく、上限値として、50重量%が好ましく、40重量%がさらに好ましく、30重量%が最も好ましい。非線形光学色素の含有量が20重量%よりも少ないと、フォトリフラクティブ効果に必要な回折効率や利得係数が得られない場合がある。非線形光学色素の含有量が、50重量%よりも多いと、他の成分との量比にアンバランスが生じて、フォトリフラクティブ複合体の設計に悪影響を及ぼす場合がある。

【0057】
(可塑剤)
可塑剤はマトリックスのガラス転移温度を低下させる役割を果たす。可塑剤の具体例として、エチルカルバゾール(ECZ)、又はプロピオン酸カルバゾイルエチル(CzEPA)、トリフェニルアミン(TPA)、フタル酸ベンジルブチル(BBP)、フタル酸ジシクロヘキシル(DCP)リン酸トリクレジル(TCP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、N-メチル-1-ピロリドン、N-オクチル-1-ピロリドン、N-ドデシル-1-ピロリドン等のN-アルキル-1-ピロリドン類、並びに2-(1、2-シクロヘキサンジカルボキシイミド)エチルプロピオネート) (AX22)、2-(1、2-シクロヘキサンジカルボキシイミド)エチルブチレート、2-(1、2-シクロヘキサンジカルボキシイミド)エチルベンゾエート、2-(1、2-シクロヘキサンジカルボキシイミド)エチルアクリレート、2-(フタルイミド)エチルプロピオネート(AX23) 等のイミド化合物等が挙げられる。

【0058】
可塑剤の含有量としては、フォトリフラクティブポリマー100重量%に対して、下限値として10重量%が好ましく、15重量%がさらに好ましく、上限値として40重量%が好ましく、30重量%がさらに好ましく、20重量%が最も好ましい。可塑剤の含有量が10重量%よりも少ないと、可塑効果すなわちマトリックスのガラス転移温度が低下せず、フォトリフラクティブ効果に必要な回折効率や利得係数が得られない場合がある。可塑剤の含有量が40重量%よりも多いと、他の成分との量比にアンバランスが生じてフォトリフラクティブ複合体の設計に悪影響を及ぼす場合がある。

【0059】
フォトリフラクティブ複合体6の膜厚は50~100μmが好適であり、膜厚が50μm未満であればブラッグ回折条件を満たしにくく、100μmを超えると印加電圧の上昇や吸収の増大を招く恐れがあるからである。

【0060】
(フォトリフラクティブ複合体の製法)
非線形光学色素、増感剤等を用いるフォトリフラクティブCzポリマー複合体等の場合は下記のとおりである。フォトリフラクティブポリマー、非線形光学色素、増感剤及び可塑剤を溶媒に溶解させる溶解工程と、この溶媒を留去する溶媒留去工程と、サンドイッチ型デバイス作製工程とを含む製造方法によってフォトリフラクティブ複合体6が製作される。

【0061】
(溶解工程)フォトリフラクティブポリマー、非線形光学色素、増感剤及び可塑剤を所定の割合にて溶媒に溶解する。溶媒としては特に限定されるものではなく、テトラヒドロフラン(THF)、N-メチルピロリドン(NMP)やジメチルホルムアミド等が使用され、好ましくはTHFである。溶解温度は室温程度であればよく、必要に応じてスターラーチップにより溶液を撹拌してもよい。

【0062】
(溶媒留去工程)各成分が溶解された溶液の溶媒を除去する。溶媒を除去する方法としては特に限定されるものではなく、例えばキャストフィルムを得るようにすればよい。具体的には、ガラス板上に各成分が溶解された溶液を流延しその後、室温で溶媒を蒸発させ、続いてこれを真空乾燥器に入れて溶媒をさらに蒸発させる。

【0063】
(サンドイッチ型デバイス作製工程)溶媒を留去後、四隅にスペーサー(ポリイミド,厚み:50μm)を配置してその後もう一枚のガラス基材を上に乗せ、温度をかけながら圧着して、サンドイッチ型のフォトリフラクティブデバイスを作製する。

【0064】
NACzEをPMMA等に分散混合させたフォトリフラクティブ複合材等の場合は下記のとおりである。NACzEとPMMA等を溶媒に溶解させる溶解工程と、この溶媒を留去する溶媒留去工程と、サンドイッチ型デバイス作製工程とを含む製造方法によってフォトリフラクティブ複合体6が製作される。

【0065】
(溶解工程)NACzEとPMMA等を所定の割合の溶媒に溶解する。溶媒としては特に限定されるものではなく、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、N-メチルピロリドン(NMP)やジメチルホルムアミド等が使用され、好ましくはTHFである。溶解温度は室温程度であればよく、必要に応じてスターラーチップにより溶液を撹拌してもよい。

【0066】
(溶媒留去工程)各成分が溶解された溶液の溶媒を除去する。溶媒を除去する方法としては特に限定されるものではなく、例えばキャストフィルムを得るようにすればよい。具体的にはガラス板上に各成分が溶解された溶液を流延しその後、室温で溶媒を蒸発させ、続いてこれを一晩自然乾燥後、約80℃で12時間減圧乾燥を行い、さらに溶媒を蒸発させる。

【0067】
(サンドイッチ型デバイス作製工程)溶媒を留去後、四隅に例えばポリイミドのスペーサー(例えば厚み:50μm)を配置してその後もう一枚のガラス基材を上に乗せ、温度をかけながら真空プレス機で圧着して、サンドイッチ型のフォトリフラクティブデバイスを作製する。

【0068】
以上の3次元ホログラフィック表示システム1の構成によって、ホログラフィック表示デバイス2へ、記録手段3による物体光B11と参照光B21とを照射するのと同時に、表示手段4によるプローブ光B31を照射することで、物体5のホログラム像を当該ホログラフィック表示デバイス2に記録するのと同時に、そのホログラム像をホログラフィック表示デバイス2に表示させることができる。即ち、ホログラフィック表示デバイス2へ、物体5のホログラム像をリアルタイムに表示させることができる。

【0069】
上記本実施形態の3次元ホログラフィック表示システム1(3Dディスプレイ装置)によれば、物体光B11及び参照光B21によって物体5のホログラム像が記録され、かつプローブ光B31によってホログラム像が表示されるホログラフィック表示デバイス2に、フォトリフラクティブポリマー8を主成分とするフォトリフラクティブ複合体6を用いているので、当該ホログラフィック表示デバイス2を容易に大面積化することができる。そのため、3Dディスプレイ装置1を低コストで製作でき、その量産化を可能とすることができる。

【0070】
それに加え、3次元ホログラフィック表示システム1は、ホログラフィック表示デバイス2を用いることにより、ホログラム像を無電界下においても数秒の間に記録、再生でき、かつ書き換えが可能である。そのため、電解印加装置を構築する必要がなく、それと共にホログラフィック表示デバイス2を取り替えることなく、異なったホログラム画像を瞬時に表示させることができる。

【0071】
図3は本発明の第2実施形態に係る3次元ホログラフィック表示システム50の概略構成図である。本実施形態が上記第1実施形態と異なる点は、記録手段51に空間光変調器52が備えられ、ホログラム像をスクリーン53に表示させている点である。ホログラフィック表示デバイス2は、第1の実施形態と共通する。

【0072】
ホログラム像を記録する本実施形態の記録手段51は、レーザーを発振するレーザー発振器55と、このレーザー発振装置55から発振されたレーザービームの光軸上に配置された第1の半波長板56と、この第1の半波長板56を通過したレーザービームを反射する第1の固定ミラー57と、この第1の固定ミラー57で反射されたレーザービームのビーム径を拡大する第1の光学系58と、この第1の光学系58で拡大されたレーザービームを分割してp-偏光とs-偏光の第1、第2の偏光レーザービームB5、B6とするビームスプリッター59と、このうち第1の偏光レーザービームB5の偏光状態を変換して物体光B51とする空間光変調器52と、この物体光B51をホログラフィック表示デバイス2に集光させる第2の光学系60と、第2の光学系60を通過した物体光B51を反射させる第2の固定ミラー61と、ビームスプリッター59で分割された第2の偏光レーザービームB6を反射させて参照光B61とする第3の固定ミラー62とを備えている。このうち、第1の光学系58は、レーザービームのビーム径を拡大するレンズ63とレンズ64とからなり、第2の光学系60は、レーザービームを集光させるレンズ65からなるが、これらの光学系を構成するレンズの数、種類は限定するものではない。

【0073】
上記空間光変調器52には、図示しないコンピューターの画面上に映し出される動画が表示されるようになっている。本実施形態では、ホログラム像を直接的に見るのではなくスクリーン53に投影させるようにするため、表示手段67は、上記第1実施形態の構成に加えて、ホログラフィック表示デバイス2の後方に配置されたカラーフィルター68とレンズ69と可動ミラー70とスクリーン53とを備えている。

【0074】
レーザー発振器55から発振されたレーザービームは、第1の半波長板56を通過後、第1の固定ミラー57で反射される。反射したレーザービームのビーム径が、レンズ63とレンズ64とで拡大される。拡大されたレーザービームは、ビームスプリッター59で分割され、p-偏光の第1の偏光レーザービームB5はビームスプリッター59を直進し、s-偏光の第2のレーザービームB6はビームスプリッター59で反射される。第1の半波長板57を回転させることによって、ビームスプリッター59を直進するp-偏光の第1の偏光レーザービームB5と、ビームスプリッター59で反射されるs-偏光の第2の偏光レーザービームB6の強度比を変えることができる。ビームスプリッター59で反射されたs-偏光の第2のレーザービームB6は、第3の固定ミラー62で反射されて参照光B61となる。

【0075】
ビームスプリッター59を通過したp-偏光の第1の偏光レーザービームB5は、空間光変調器52に照射される。空間光変調器52の偏光特性によりp-偏光の第1の偏光レーザービームB5は、s-偏光のレーザービームに変換されて反射する。空間光変調器52で反射されたs-偏光の第1の偏光レーザービームB5は、物体光B51となり、ビームスプリッター59に戻り、反射される。ビームスプリッター59で反射された物体光B51は、レンズ65で集光されつつ、第2の固定ミラー61で反射される。

【0076】
そして、上記物体光B51が、上記参照光B61と共にホログラフィック表示デバイス2に照射され、当該物体光B51に含まれる空間的な強度分布及び位相分布を干渉縞として、当該物体光B51の空間情報が、ホログラフィック表示デバイス2に書き込まれる(記録される)。

【0077】
表示手段67のレーザー発振器24から発振されたレーザービームは、プローブ光用半波長板25でp-偏光に変換され、第4の固定ミラー26で反射される。反射したp-偏光のレーザービームのビーム径は、レンズ29とレンズ30とで拡大される。ビーム径が拡大されたp-偏光のレーザービームは、第5の固定ミラー28で反射されてプローブ光B71となる。そして、記録手段51によって書き込まれた空間情報が、p-偏光のプローブ光B71によってホログラム像として読み出され、ホログラフィック表示デバイス2に表示される。ホログラフィック表示デバイス2に表示されたホログラム像の光は、カラーフィルター68を通過し、レンズ69で結像されると共に可動ミラー70で反射されて、スクリーン53に投影される。

【0078】
以上の3次元ホログラフィック表示システム50の構成によって、ホログラフィック表示デバイス2へ、記録手段51による物体光B51と参照光B61とを照射するのと同時に、表示手段67によるプローブ光B71を照射することで、空間光変調器52に表示される画像をホログラム像として当該ホログラフィック表示デバイス2に記録するのと同時に、そのホログラム像をホログラフィック表示デバイス2へ表示させ、スクリーン53へ投影することができる。即ち、スクリーン53へ、空間光変調器52に表示される画像のホログラム像をリアルタイムに表示させることができる。

【0079】
上記本実施形態の3次元ホログラフィック表示システム50(3Dディスプレイ装置)によれば、物体光B51及び参照光B61によってホログラム像が記録され、プローブ光B71によってホログラム像が表示されるホログラフィック表示デバイス2に、フォトリフラクティブポリマー8を主成分とするフォトリフラクティブ複合体6を用いているので、当該ホログラフィック表示デバイス2を容易に大面積化することができる。そのため、3Dディスプレイ装置1を低コストで製作でき、その量産化を可能とすることができる。

【0080】
それに加え、3次元ホログラフィック表示システム50は、上記のホログラフィック表示デバイス2を採用することにより、ホログラム像を無電界下において数秒の間に記録、再生でき、かつ書き換えが可能である。そのため、電圧の印加装置を構築する必要がなく、それと共にホログラフィック表示デバイスを取り替えることなく、異なったホログラム画像を瞬時に表示させることができる。

【0081】
図4は本発明の第3実施形態に係る3次元ホログラフィック表示システム80の概略構成図であり、図5は本実施形態で用いるホログラフィック表示デバイス81の断面模式図である。本実施形態が上記第1実施形態と異なる点は、ホログラフィック表示デバイス81に電界を印加するための電界印加装置82が設けられ、ホログラム像をスクリーン83に表示し、ホログラフィック表示デバイス81の構成を変更している点である。ホログラフィック表示デバイス81にホログラム像を記録する記録手段84は、第1実施形態と共通する。

【0082】
本実施形態では、ホログラム像を直接的に見るのではなくスクリーン83に投影させるために、表示手段85は、上記第1実施形態の構成に加えて、ホログラフィック表示デバイス81の後方に配置されたカラーフィルター86と、2つのレンズ87、88と、可動ミラー89と、スクリーン83とを備えている。このような表示手段85によって、ホログラフィック表示デバイス81に表示されたホログラム像の光は、カラーフィルター86を通過し、2つのレンズ87、88で結像されると共に可動ミラー89で反射され、スクリーン83に投影される。電界印加装置82によって、ホログラフィック表示デバイス81に電界が印加されるようになっている。

【0083】
ホログラフィック表示デバイス81は、フォトリフラクティブ複合体90と、このフォトリフラクティブ複合体90を挟持する2枚の電極基材91、91とからなる。各電極基材91は、四方形状に形成されたガラス製の板材92と、このガラス製の板材92の内側に成膜された透明電極膜であるITO(インジウム-錫酸化膜)93とで構成されている。フォトリフラクティブ複合体90には、電界を印加時に30フレーム毎秒のビデオレートに追従する応答性を有するフォトリフラクティブPDAS複合体を用いている。

【0084】
電界を印加させる際には、ホログラフィック表示デバイス81を回転させて、当該ホログラフィック表示デバイス81に有効電場がかかるように調整する。そして、フォトリフラクティブ複合体90には、上記のとおり高速応答性を有するものが用いられているため、本実施形態の3次元ホログラフィック表示システム80では、物体5のホログラム像の表示速度を格段に高めることができる。

【0085】
図6は本発明の第4実施形態に係る3次元ホログラフィック表示システム95の概略構成図である。本実施形態が上記第2実施形態と異なる点は、ホログラフィック表示デバイス96に電界を印加するための電界印加装置97が設けられ、フォトリフラクティブ複合体に、電界を印加時に30フレーム毎秒のビデオレートに追従する応答性を有するフォトリフラクティブPDAS複合体を用いている点である。記録手段及び表示手段は、第2実施形態と共通し、ホログラフィック表示デバイス96は、第3実施形態と同じものを採用した。

【0086】
本実施形態では、電界印加装置97によってホログラフィック表示デバイス96に電界が印加される。電界を印加させる際には、ホログラフィック表示デバイス96を回転させて、当該ホログラフィック表示デバイス96に有効電場がかかるように調整する。そして、フォトリフラクティブ複合体には、高速応答性を有するものが用いられているため、本実施形態の3次元ホログラフィック表示システム95では、空間光変調器52に表示される画像のホログラム像の表示速度を格段に高めることができる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0088】
(実施例1)
第1実施形態と同じ3次元ホログラフィック表示システムを制作し、コインの表面からの物体光と、参照光とをホログラフィック表示デバイスに照射してホログラム像を記録し、それと同時にプローブ光をホログラフィック表示デバイスに照射して表示させる。その後、コインを裏返して、コインの裏面からの物体光と、参照光とをホログラフィック表示デバイスの同じ部分に照射してホログラム像を記録し、それと同時にプローブ光をホログラフィック表示デバイスに照射して表示させた。
【実施例】
【0089】
ホログラフィック表示デバイスの作製は、次のようにして行った。ポリメチルメタクリレート70%、図3に示すNACzE30%の重量比で混合し、テトラヒドロフラン(THF)に溶解させてキャスト溶液を得た。キャスト溶液をガラス板上に流延し、その後、室温で溶媒を蒸発させて均一な膜を得る。続いてこれを一晩自然乾燥後、約80℃で12時間減圧乾燥を行い、さらに溶媒を蒸発させる。溶媒を留去後、四隅にスペーサー(ポリイミド,厚み:50μm)を配置して、もう一枚のガラス板をかぶせる。これに、所要の温度をかけながら真空プレス機で圧着して、膜厚が均一なフォトリフラクティブ複合体を得た。
【実施例】
【0090】
レーザービームの照射条件は以下のとおりである。波長532nmのグリーンレーザー光源(300mW)を用い、物体光(面積:0.48cm)の光強度4.8mW(10mW/cm)、参照光(面積:2.1cm)の光強度14mW(6.7mW/cm)でホログラム像の記録を行う。同時に、波長642nmのレッドレーザー(140mW)を10~50mWに絞り込んでプローブ光とし、このプローブ光をホログラフィック表示デバイスに照射し、当該ホログラフィック表示デバイスに記録したホログラム像を表示させる。
【実施例】
【0091】
図7(a)はコインのホログラム像を描く前の写真であり、プローブ光を照射している状態である。図7(b)はコインの表面のホログラム像を記録するのと同時に、表示している写真である。図7(c)はホログラフィック表示デバイスにおけるコインの表面のホログラム像を記録したのと同一部分に、コインの裏面を上書きし、それと同時にそのホログラム像を表示している写真である。図7(d)はさらに、コインを裏返して、ホログラフィック表示デバイスにおけるコインの裏面のホログラム像を記録したのと同一部分に、コインの表面を再度上書きし、それと同時にそのホログラム像を表示している写真である。図7(a)~(d)のホログラム像の記録、表示、及び上書きのよる消去のそれぞれに要する時間は数秒であった。これらの結果から、秒単位でホログラム像が記録され(書き込まれ)、それと同時に表示され(読み出され)、消去されていることが認められた。
【実施例】
【0092】
(実施例2)
実施例1と同じ3次元ホログラフィック表示システムを制作し、実施例1と同じ条件下で、コインの表面からの物体光と、参照光とをホログラフィック表示デバイスに照射し、ホログラム像を記録した。その後、記録したコインのホログラム像をプローブ光で表示させると同時に、ホログラフィック表示デバイスの後側に手をかざした。図8はホログラフィック表示デバイスに映し出されたホログラム像と手の写真である。図8の写真では、コインに対して位置がずれている手の上に、まるで当該コインが乗っているかのように見えているのがわかる。
【実施例】
【0093】
(実施例3)
第4実施形態と同じ3次元ホログラフィック表示システムを制作し、コンピューターの画面上に映し出される動画(まんがの猫が走っている様子の動画)を空間光変調器に表示させ、その反射光を物体光と、この物体光と参照光とをホログラフィック表示デバイスに照射し、ホログラム像を記録するのと同時に、プローブ光によって表示させる。
【実施例】
【0094】
電界を印加するホログラフィック表示デバイスの作製は次のようにして行った。ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVCz)に、増感剤(TNF)、非線形光学色素(7-DCS)、及び可塑剤を混合し、溶媒に溶解させてキャスト溶液を得た。電極部が加工され、大きさ:30×30mmの透明電極膜であるITO(インジウム-錫酸化膜)電極基材を2枚製作しておく。このうち1枚の電極基材に、キャスト溶液を流延し、その後、室温で溶媒を蒸発させて均一な膜を得る。乾燥機中で溶媒をさらに除去し、もう一枚のITO電極基材をかぶせる。さらに、その上から4kg重の荷重をかけて、120~180℃で加熱しながら圧着し、電界を印加できるようにしたものを作製した。
【実施例】
【0095】
レーザービームの照射条件は実施例1と同様であり、印加した電界(電場)は45V/μmである。図9はホログラフィック表示デバイスに0.2秒ごとにコマ撮りで記録及び表示したホログラム像である。猫の動きが明瞭にコマ撮りされていることが認められた。これは、ホログラフィック表示デバイスの応答性が、コマ撮りのビデオレート以上に高速であることを示しているものである。
【実施例】
【0096】
(実施例4)
非縮退4光波混合法を用いて、回折効率を測定する。干渉させる2光波の波長は561nm、回折効率をモニターするプローブ光の波長は642nmである。
【実施例】
【0097】
干渉させる2光波の強度比は、1~10であることが好ましく、1~8がより好ましい。干渉させる2光波の強度比が、1~8を外れると十分な応答速度が得られないからである。より具体的には、例えば、干渉させる2光波の波長が530~570nm、干渉させる2光波の強度比が1:(4~8)の条件下で、かなり速い応答速度を得ることができる。
【実施例】
【0098】
ホログラフィック表示デバイスの作製は、次のようにして行った。NACzEとPMMAと、イオン性液体であるBMIMを溶媒に溶解させてキャスト溶液を得た。その後の製作方法は実施例1と同様である。混合比は、NACzE/PMMA/BMIM:30/60/10(重量%比)である。イオン性液体であるBMIMを加えないものを製作した。その混合比は、NACzE/PMMA:30/70である。
【実施例】
【0099】
レーザービームの照射条件は以下のとおりである。物体光と参照光の波長を波長561nmとし、干渉させる2光波の強度比を1:7として行った。NACzE/PMMA/BMIMを混合したものでは、回折効率が69%であった。このデバイスで速い応答速度が得られた。イオン性液体を加えず、NACzE/PMMAのみでは、回折効率は80%であったが、応答速度は半分程度であった。
【実施例】
【0100】
(実施例5)
非縮退4光波混合法を用いて、回折効率を測定する。干渉させる2光波の波長は561nm、回折効率をモニターするプローブ光の波長は642nmである。
【実施例】
【0101】
ホログラフィック表示デバイスの作製は、次のようにして行った。NATAとPMMAと、イオン性液体であるBMIMを溶媒に溶解させてキャスト溶液を得た。その後の製作方法は実施例1と同様である。混合比は、NATA/PMMA/BMIM:30/60/10(重量%比)である。イオン性液体であるBMIMを加えないものを製作した。その混合比は、NATA/PMMA:30/70である。
【実施例】
【0102】
レーザービームの照射条件は以下のとおりである。物体光と参照光の波長を波長561nmとし、干渉させる2光波の強度比を1:8として行った。NATA/PMMA/BMIMを混合したものでは、回折効率が4.6%であり、応答時間は、NACzE/PMMA/BMIM系の半分程度であった。イオン性液体を加えないNATA/PMMAを混合したものでは、回折効率が14%であり、応答時間はあまり変わらなかった。
【実施例】
【0103】
上記で開示した実施形態、実施例は例示であり制限的なものではない。例えば、ホログラム像の記録、表示、及び書き換えに必要な他の装置や機器を3次元ホログラフィック表示システムに設けることができる。ホログラフィック表示デバイスのフォトリフラクティブ複合体は、上記各成分の他にフォトリフラクティブ性を損なわせない範囲内で、他の成分を含有していてもよい。このような他の成分としては、例えば、酸化防止剤や紫外線吸収剤等が挙げられる。
【符号の説明】
【0104】
1、50、80、95 3次元ホログラフィック表示システム
2、81、96 ホログラフィック表示デバイス
3、51、84 記録手段
4、67、85 表示手段
5 物体
6、90 フォトリフラクティブ複合体
7 基材
8 フォトリフラクティブポリマー
10、24、55 レーザー発振器
11、57 第1の固定ミラー
12、56 第1の半波長板
13、59 ビームスプリッター
14 第2の半波長板
15、61 第2の固定ミラー
16、58 第1の光学系
17、60 第2の光学系
18、62 第3の固定ミラー
25 プローブ光用半波長板
26 第4の固定ミラー
27 プローブ光用光学系
28 第5の固定ミラー
52 空間光変調器
53、83 スクリーン
68、86 カラーフィルター
69、87、88 レンズ
70、89 可動ミラー
82、97 電界印加装置
91 電極基材
92 ガラス製の板材
93 ITO
B1 第1の偏光レーザービーム
B2 第2の偏光レーザービーム
B11 物体光
B21 参照光
B31 プローブ光
B5 第1の偏光レーザービーム
B6 第2の偏光レーザービーム
B51 物体光
B61 参照光
B71 プローブ光
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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