TOP > 国内特許検索 > 有機無機ハイブリッド多孔質体の製造方法 > 明細書

明細書 :有機無機ハイブリッド多孔質体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6195272号 (P6195272)
公開番号 特開2015-086262 (P2015-086262A)
登録日 平成29年8月25日(2017.8.25)
発行日 平成29年9月13日(2017.9.13)
公開日 平成27年5月7日(2015.5.7)
発明の名称または考案の名称 有機無機ハイブリッド多孔質体の製造方法
国際特許分類 C08J   9/28        (2006.01)
C08G  77/44        (2006.01)
FI C08J 9/28 CFH
C08G 77/44
請求項の数または発明の数 12
全頁数 12
出願番号 特願2013-224269 (P2013-224269)
出願日 平成25年10月29日(2013.10.29)
審査請求日 平成28年10月4日(2016.10.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】300071579
【氏名又は名称】学校法人立教学院
発明者または考案者 【氏名】大山 秀子
【氏名】菅野 智成
個別代理人の代理人 【識別番号】100140109、【弁理士】、【氏名又は名称】小野 新次郎
【識別番号】100075270、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 泰
【識別番号】100101373、【弁理士】、【氏名又は名称】竹内 茂雄
【識別番号】100118902、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 修
【識別番号】100129311、【弁理士】、【氏名又は名称】新井 規之
審査官 【審査官】芦原 ゆりか
参考文献・文献 特開平10-277579(JP,A)
特開2005-350519(JP,A)
調査した分野 C08J 9/00-42
C08G 77/00-62
特許請求の範囲 【請求項1】
(A)アルコキシシランと、当該アルコキシシラン以下の質量の(B)オルガノポリシロキサンと、酸と、水と、炭素数が2~5のアルコールとを含む溶液を調製し、当該アルコキシシランを加水分解する加水分解工程、
前工程で得た生成物にアルカリ水溶液を添加して重縮合反応を行う重縮合工程、ならび

前工程で得た生成物を乾燥して、有機無機ハイブリッド多孔質体を得る工程、
を含む、有機無機ハイブリッド多孔質体の製造方法。
【請求項2】
前記重縮合工程において均一な膨潤ゲル様物を形成する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記成分(B)のオルガノポリシロキサンが、末端に水酸基を有する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記成分(B)のオルガノポリシロキサンがポリジメチルシロキサンである、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記成分(A)のアルコキシシランが
Si(OR(4-x)
[式中、R1はメチル基またはエチル基であり、R2はメチル基またはエチル基であり、xは1~3である]である、
請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記アルコールがプロパノールである、請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記酸がシュウ酸である、請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記アルカリ水溶液がアンモニア水溶液である、請求項1~7のいずれかに記載の製造
方法。
【請求項9】
前記成分(A)と成分(B)の質量比が、1~2.5:1である、請求項1~8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
請求項に記載の製造方法により得られた有機無機ハイブリッド多孔質体。
【請求項11】
請求項10に記載の有機無機ハイブリッド多孔質体を含む成形体。
【請求項12】
請求項10に記載の有機無機ハイブリッド多孔質体を含む濾過材、触媒担体、カラム、
断熱材、または防音材。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、有機無機ハイブリッド多孔質体およびその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は濾過材、触媒担体、断熱材、絶縁材、防音材などに用いることができる有機無機ハイブリッド多孔質体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質体は、溶液中または空気中の浮遊粒子除去などを目的とする濾過材、あるいは機器や住宅における断熱材等、幅広い用途が期待される。多孔質体としては有機多孔質体および無機多孔質体が知られている。無機材料の中でもケイ素化合物は化学的安定性が高く、安価であり、かつ毒性が少ないという利点を有しており、これまでにいくつかの無機多孔質体が提案されている。
【0003】
特許文献1(特開平7-138375)にはシリカの低密度多孔質体をゾルゲル法で形成して乾燥する方法が開示されている。特許文献2(特開2002-275305)には、酸化ケイ素またはケイ素酸化物を含有する乾燥ゲルから成形された連続気孔多孔体が開示されている。特許文献3(国際公開第2003/002458号)には、ゾルゲル反応を用いた、メソ細孔および精密に制御されたマクロ細孔径を有するシリカまたは有機官能基含有シロキサン重合体の製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献4(特開2010-254555)には有機テンプレート法を用いたシリカ系中空粒子の製造方法が開示されている。特許文献5(特開2008-45013)には発泡セルを含むポリマー母材と、当該発泡セル中に充填されたシリカゲルを備える光透過性柔軟断熱材が開示されている。特許文献6(特開2011-514395)には、プロトン性または極性溶媒中での加水分解により調製された、金属または半金属の酸化物およびオキシ水酸化物から選択される少なくとも1種の無機化合物のコロイド粒子を含む複合材料が開示されている。
【0005】
特許文献7(国際公開第2003/002458号)および特許文献8(特開2009-265047)には、ゾル-ゲル反応触媒成分および鋳型成分として両親媒性物質を含む溶液を調製し、さらに加水分解性の官能基を有する無機低分子化合物を添加して出発溶液を調製する工程、当該溶液からゾルを調製する工程、当該ゾルを乾燥する工程、ならびに鋳型成分を熱分解して除去する工程を含む、ケイ素-炭素結合を含む有機無機ハイブリッドの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開平7-138375号公報
【特許文献2】特開2002-275305号公報
【特許文献3】国際公開第2003/002458号
【特許文献4】特開2010-254555号公報
【特許文献5】特開2008-45013号公報
【特許文献6】特開2011-514395号公報
【特許文献7】国際公開第2003/002458号
【特許文献8】特開2009-265047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの多孔質体の製造方法は、工程が複雑であり、また高価な原料を用いる必要がある等により高コストとなる。中には、超臨界流体を用いた乾燥や、界面活性剤などを多量に使用することが必要である方法もあり、環境上の問題がある。さらに、得られた多孔質体は、可とう性が乏しい、脆い、耐熱性が不十分であること等から、必ずしも市場の要求を満足させるものではなかった。
【0008】
上記事情を鑑み、本発明は、可とう性、耐熱性、および耐薬品性に優れる有機無機ハイブリッド多孔質体を、簡便な方法で製造できる製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、アルコキシシランを、酸、水、および特定のアルコール中、オルガノポリシロキサン存在下で加水分解し、次いでアルカリ条件下で重縮合反応を行うことで、前記課題が解決できることを見出し、本願発明を完成した。すなわち、前記課題は以下の本発明によって解決される。
[1](A)アルコキシシランと、当該アルコキシシラン以下の質量の(B)オルガノポリシロキサンと、酸と、水と、炭素数が2~5のアルコールとを含む溶液を調製し、当該アルコキシシランを加水分解する加水分解工程、
前工程で得た生成物にアルカリ水溶液を添加して重縮合反応を行う重縮合工程、ならびに
前工程で得た生成物を乾燥して、有機無機ハイブリッド多孔質体を得る工程、
を含む、有機無機ハイブリッド多孔質体の製造方法。
[2]前記[1]に記載の製造方法により得られた有機無機ハイブリッド多孔質体。
[3]前記[1]に記載の有機無機ハイブリッド多孔質体を含む成形体。
[4]前記[3]に記載の有機無機ハイブリッド多孔質体を含む濾過材、触媒担体、カラム、断熱材、または防音材。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、可とう性、耐熱性、および耐薬品性に優れる有機無機ハイブリッド多孔質体を簡便な方法で製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1で得た有機無機ハイブリッド多孔質体のSEM像
【図2】実施例2で得た有機無機ハイブリッド多孔質体のSEM像
【図3】実施例3で得た有機無機ハイブリッド多孔質体のSEM像
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明において「X~Y」という記載は、その両端の値であるXとYを含む。
1.有機無機ハイブリッド多孔質体の製造方法
本発明の製造方法は、(A)アルコキシシランと、当該アルコキシシラン以下の質量の(B)オルガノポリシロキサンと、酸と、水と、炭素数が2~5のアルコールとを含む溶液を調製し、当該アルコキシシランを加水分解する加水分解工程、前工程で得た生成物にアルカリ水溶液を添加して重縮合反応を行う重縮合工程、ならびに前工程で得た生成物を乾燥して、有機無機ハイブリッド多孔質体を得る工程、を含む。

【0013】
1-1.加水分解工程
(1)アルコキシシラン(成分(A))
本工程では、(A)アルコキシシラン、(B)オルガノポリシロキサン、酸、水、および炭素数が2~5のアルコールを含む溶液を調製し、当該アルコキシシランを加水分解する。アルコキシシランとは、ケイ素原子にアルコキシル基が結合している化合物である。本発明においては、RSi(OR(4-x)で表されるアルコキシシランが好ましい。式中、xは1~3である。

【0014】
は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、エポキシ基、エーテル基、アルキルアミド基、アルキルアミン基、アクリルオキシ基、またはメタクリルオキシ基である。
アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル基が挙げられる。中でも、反応性に優れること、および入手が容易であることから、アルキル基としてはメチル基またはエチル基が好ましい。本発明において、例示される基は異性体を含む。例えば、ブチル基は、n-ブチル基、i-ブチル基、またはt-ブチル基である。

【0015】
アルケニル基としては、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル基が挙げられる。アリール基としては、フェニル、トリル、キシリル基が挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル、フェニルエチル基が挙げられる。エポキシ基としては、1,2-エポキシエチル、2,3-エポキシプロピル、3,4-エポキシブチル、5,6-エポキシヘキシル、9,10-エポキシデシル、グリシドキシメチル、α-グリシドキシエチル、β-グリシドキシエチル、α-グリシドキシプロピル、β-グリシドキシプロピル、γ-グリシドキシプロピル、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル及び3,4-エポキシシクロヘキシルブチル基が挙げられる。
エーテル基としては、-RORで表される基が挙げられる。Rは、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、トリメチレン、2-メチルトリメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、3-エチル-ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレン、-CH(CH)CH-、-CHCH(CH)CH-、-(CH18-のようなアルキレン基、シクロヘキシレンのようなシクロアルキレン基、フェニレンのようなアリーレン基またはベンジレンのような二価の炭化水素基である。Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシルのようなアルキル基、シクロヘキシルのような環状脂肪族基、フェニル、トリル、キシリルのようなアリール基、ベンジル、フェニルエチルのようなアラルキル基、ビニル、アリル、メタリル、ブテニル、ヘキセニル、オクテニル、シクロヘキセニル、スチリルのようなアルケニル基である。

【0016】
以下、Rは炭素数1~6のアルキル基であり、具体的にはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル基が挙げられる。中でも、反応性に優れること、および入手が容易であることから、メチル基またはエチル基が好ましい。

【0017】
本発明のアルコキシシランとしては特にメチルトリメトキシシランが好ましい。
本発明においては、成分(A)として、上記式で表されるアルコキシシランを2種以上組み合せて用いてもよい。

【0018】
(2)オルガノポリシロキサン(成分(B))
オルガノポリシロキサンとは、シロキサン構造を主鎖に持ち、ケイ素原子に有機基が結合しているポリマーである。本発明においては、式(b1)で表されるオルガノポリシロキサンが好ましい。
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2 (b1)

【0019】
Rは、炭素数1~20の1価の炭化水素基である。当該炭化水素基としては、置換または非置換の脂肪族または芳香族炭化水素基が挙げられる。非置換の脂肪族炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシル、オクタデシル等のアルキル基や、シクロヘキシル等のシクロアルキル基が挙げられる。置換の脂肪族炭化水素基としては、クロロメチル、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル等のハロゲン化アルキル基が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル、トリル、キシリル、ベンジル、スチリル、2-フェニルエチル基が挙げられる。
は、炭素数1~4のアルキル基または水酸基である。
v、x、yは、v≧0、x≧0、y≧0であるが、v、x、yの総てが0となることはない。

【0020】
好ましいオルガノポリシロキサンは、式(b1)において、Rがアルキル基、Rが水酸基、v=2、y=0である、末端に水酸基を有するポリジアルキルシロキサンである。その例としては、(Me(OH)SiO1/2)(MeSiO2/2(Me(OH)SiO1/2)で表されるポリジメチルシロキサンが挙げられる。重合度であるxは、1~500が好ましく、5~200がより好ましく、10~100がさらに好ましい。

【0021】
別の好ましいオルガノポリシロキサンは、式(b2)で表されるオルガノポリシロキサンである。
(RSiO2/2(RSiO3/2 (b2)
式中、R、x及びyは、前記のとおり定義される。Rはメチルが好ましく、重合度であるxは、1~500が好ましく、10~200がより好ましく、yは1~200が好ましく、5~100がより好ましい。

【0022】
成分(B)の質量は、成分(A)の質量以下である必要がある。成分(A)と成分(B)の質量比は、1~20:1が好ましく、1~5:1がより好ましく、1~2.5:1がさらに好ましい

【0023】
(3)酸
酸は、成分(A)であるアルコキシシランの加水分解を促進する。好ましい酸としては、グルタル酸、グルコン酸、グリコール酸、ラウリン酸、乳酸、リンゴ酸、マロン酸、吉草酸、クエン酸、ステアリン酸、コハク酸、酢酸、シュウ酸、アジピン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、蟻酸、フマル酸、フタル酸、プロピオン酸、ピルビン酸、および酒石酸などが挙げられる。反応促進の観点から、シュウ酸、酢酸、希塩酸などが好ましく、シュウ酸がより好ましい。

【0024】
(4)炭素数が2~5のアルコール
本発明では、炭素数2~5のアルコールを用いる。このようなアルコールとしてはエタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-ブタノール、t-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノールが挙げられる。

【0025】
炭素数が2~5のアルコールは成分(A)および(B)を溶解させ、均一な溶液を生成する。この結果、加水分解反応が均一に進行する。従来法では、均一な反応系を得るために界面活性剤を配合するため操作が煩雑になる上に排水中に界面活性剤が混入して環境の問題が生じる恐れがあったが、本発明ではそのような問題を回避できる。

【0026】
また、炭素数が2~5のアルコールを用いると、次の重縮合工程において、膨潤したゲル状物を形成することができる。詳細は後述するが、このことにより所期の性能を有する多孔質体を得ることができる。これらのこの観点から、本発明で用いる炭素数が2~5のアルコールとしては、1-プロパノール、2-プロパノール、2-ブタノールが好ましく、2-プロパノールが特に好ましい。

【0027】
前記アルコールと水の質量比は、10:1~1:1が好ましく、5:1~1:1がさらに好ましい。アルコールと水の合計量は、成分(A)と(B)の溶解性によって適宜調整できるが、成分(A)と(B)の合計100質量部に対して、150~400質量部が好ましい。
酸の量は加水分解反応を進行できる量であれば限定されないが、本発明で使用する水を溶媒とする酸水溶液とした場合に、1~20mM程度となる量が好ましい。

【0028】
(4)反応条件
本工程における反応温度は適宜調整できるが、15~35℃が好ましい。反応時間も適宜調整できるが、1~24時間が好ましい。
本工程においては成分(A)であるアルコキシシランのアルコキシル基が加水分解されて、この加水分解物と成分(B)を含むゾルが生成する。前述のとおり、特定のアルコールを用いるので反応系が均一となり均一なゾルが得られる。

【0029】
1-2.重縮合工程
本工程では、前工程で得た生成物にアルカリ水溶液を添加して重縮合反応を行う。すなわち、前工程で得たゾルを重縮合してゲル化する。この際、成分(B)であるオルガノシロキサンの官能基(例えば水酸基等)も反応に関与するので、アルコキシシラン(成分(A))由来の成分およびオルガノシロキサン(成分(B))由来の成分を含む共重縮合体ゲルが形成される。

【0030】
(1)アルカリ水溶液
アルカリ水溶液は重縮合反応を促進する機能を担う。しかしながら、アルカリ成分が反応系に溶解しないと反応が均一に進行せず所期の性能を持った多孔質体を得にくくなる。よって、アルカリ水溶液としては、反応系に溶解しやすいアミン水溶液が好ましく、アンモニア水溶液がより好ましい。アルカリ水溶液の濃度は1~20モル%が好ましい。アルカリ水溶液の使用量は、アルカリの濃度で異なるので一概には言えないが、例えば10Mのアルカリ水溶液を用いた場合、成分(A)と(B)の合計100質量部に対して、10~100質量部とすることができる。

【0031】
前述のとおり、本発明では特定のアルコール、酸、アルカリを用いることで、重縮合中の反応系が均一な膨潤ゲル様物となる。すなわち、重縮合工程において反応系が均一な膨潤ゲル様状態になり、スケールによっては反応系全体が一体となった膨潤ゲル様状態となる。この膨潤ゲル様状態は、未発達ではあるが三次元網目構造が形成された「ゲル化物前駆体」の網目内に液体成分が保持されている状態であると考えられる。この状態において重縮合反応がさらに進行し、本工程の完了時には、三次元網目構造を有するゲル化物の網目内に液体が保持された「膨潤ゲル」が得られる。当該膨潤ゲルから液体成分を次の乾燥工程で除去することで所期の性能を有する多孔質体を得ることができる。膨潤ゲル様状態は、重縮合工程の初期から形成され、本工程中維持されることが好ましい。初期とは重縮合反応の開始から5~30分の間をいう。前記成分を用いないと、重縮合反応が進行せず、反応系の大部分は液状のままとなり、均一な膨潤ゲル様状態は形成されない。

【0032】
(2)反応条件
重縮合反応の反応温度は40~80℃が好ましく、50~70℃がより好ましい。重縮合反応時間は、適宜選択できるが、8~96時間が好ましい。

【0033】
1-3.乾燥工程
本工程では、重縮合工程で得た生成物を乾燥する。本工程は、まず生成物に含まれる液体成分、すなわち膨潤ゲル中の液体成分を溶媒で置換することが好ましい。この置換には前述の炭素数2~5のアルコールを用いることができる。中でも2-プロパノールが好ましい。このようなアルコールは原料および低分子生成物を溶解させ易いためである。当該アルコールで置換した後、さらに脂肪族アルカンで当該アルコールを置換してもよい。脂肪族アルカンとしてはヘキサンが好ましい。このことにより乾燥がより容易となる。
溶媒で処理した生成物から当該溶媒を除去して固体成分(ゲル化物)を単離し、この固体成分を乾燥する。乾燥条件は、常圧で20~80℃が好ましい。

【0034】
これらの工程を経て、有機無機ハイブリッド多孔質体が得られる。本発明の製造方法は、迅速で簡便であり、超臨界流体や界面活性剤を使用することもなく、反応温度も低く、安価で環境に優しい製造方法である。

【0035】
2.有機無機ハイブリッド多孔質体
本発明で得られた多孔質体は、可とう性、耐熱性、耐薬品性に優れる。可とう性に優れる理由は必ずしも明らかではないが、アルコキシシランとオルガノポリシロキサンが、前記水溶液中で、適切な配合比の下に共縮合されることで可とう性が発現すると考えられる。

【0036】
本発明により得られた有機無機ハイブリッド多孔質体は、製造工程が簡便であることから安価に製造でき、多孔性で弾性や折り曲げ性が良好であり、耐熱性、耐薬品性も優れること、使用目的に応じてモルフォロジーを制御可能なことから、濾過材、触媒担体、クロマトグラフィー等用のカラム、断熱材、防音材などへ適用可能である。特に、従来の濾過材では対応が不十分であった、医療用、薬品用、燃料用、ガスフィルターなどへの適用が可能である。
【実施例】
【0037】
実施例で得た多孔質体について、以下のように評価を行った。
(1)系の均一性(膨潤状態)
重縮合反応を1時間実施した反応系を使用し、以下の基準で系の均一性を評価した。
OK:静置した試料を目視で観察し、系が均一な膨潤ゲル様状態であると確認できる。
NG:静置した試料目視で観察し、系が単に白濁した液状であるなど、均一な膨潤ゲル様状態であると確認できない。
本試験においてOKと判断される試料は、次の乾燥過程を経て固体試料が得られる。しかし、本試験においてNGと判断される試料は次の乾燥過程を経ても液状あるいは粉末状となり固形試料が得られない。即ち、系の均一性が良好であることは加工性が良好であることに対応し、不良な場合は加工性が不良であることに対応する。
【実施例】
【0038】
(2)弾性試験
乾燥後の試料に関して、以下の基準で評価した。
○(良):試料を上から指で強く押して指を離した後に、試料の変形が回復する。
×(不良):試料を上から指で強く押して指を離した後に、試料が変形したままで、元の状態に回復しない。
【実施例】
【0039】
(3)折り曲げ試験
乾燥後の試料を、カッターを用いて、厚さ約2mmの薄片に切断し、この薄片を以下の基準で評価した。
○(良):試料薄片を指で折り畳んだ後、指を離すと試料が元の形に完全に回復する。
△(やや良):試料薄片を指で折り畳んだ後、指を離すと試料は破断しないが、元の形に完全には回復しない。
×(不良):試料薄片を指で折り畳むと試料が破断する。
【実施例】
【0040】
(4)多孔性評価
試料表面を金蒸着した後、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてモルフォロジー観察を行って試料の多孔性を評価した。高倍率で撮影したSEM像において、以下の基準で評価した。
○(良):多くの細孔が観察された。
×(不良):細孔がほとんど観察されない。
【実施例】
【0041】
[実施例1]
ガラス製のスクリュー管中に、以下の材料を仕込み、室温で1時間撹拌した。
5mMシュウ酸水溶液1.2g(シュウ酸は和光純薬工業株式会社製)
2-プロパノール4.0g(和光純薬工業株式会社製)
メチルトリメトキシシラン(MTMS)(東京化成工業株式会社製)1.2g
ポリジメチルシロキサン(PDMS)(Aldrich社製)0.8g
次に、系内に10Mのアンモニア水溶液(アンモニアは和光純薬工業株式会社製)を1.2g滴下した後、撹拌を停止した。スクリュー管を湯浴中に置き、60℃で2時間保持した。
この重縮合反応開始1時間後に系の均一性試験を行い、均一な膨潤ゲル様状態を確認したので、OKと判断した。
【実施例】
【0042】
さらに前記スクリュー管を60℃で18時間、合計20時間保持した。その後、スクリュー管を湯浴から取り出し、生成物に2-プロパノールを注ぎ、余剰の2-プロパノールを抜き出した。すなわち膨潤ゲル中の液体成分を2-プロパノールで置換した。さらにヘキサンを用いて同様の操作を行い、2-プロパノールをヘキサンで置換した。続いて、当該生成物を常圧で、60℃で24時間乾燥した。その結果、外観が白色のケーキ状の固体試料が得られた。
【実施例】
【0043】
得られた試料のSEM像を図1に示す。構成単位と思われる径が3~5μm程度の球状粒子が連続して網目構造を形成し、網目構造の間隙に細孔が形成されていることがわかる。即ち、得られた固体試料は多孔性であることがわかる。
当該固体試料について、弾性試験、折り曲げ試験を行った結果、いずれも良との評価を得た。すなわち、弾性で折り曲げ性が良好で可とう性のある多孔質体が得られた。
【実施例】
【0044】
[実施例2]
メチルトリメトキシシラン(MTMS)とポリジメチルシロキサン(PDMS)の配合比を表1のように変更した以外は実施例1と同様に試料を作製し評価した。評価結果を表1に示す。SEM像を図2に示す。構成単位と思われる径が2~4μm程度の球状粒子が連続して網目構造を形成しており、実施例1同様の多孔性を確認した。
【実施例】
【0045】
参考例3]
メチルトリメトキシシラン(MTMS)とポリジメチルシロキサン(PDMS)の配合比を表1のように変更した以外は実施例1と同様に試料を作製し評価した。評価結果を表1に示す。SEM像を図3に示す。構成単位と思われる径が~1μm程度の球状粒子が連続して網目構造を形成しており、実施例1同様の多孔性を確認した。
【実施例】
【0046】
[比較例1]
メチルトリメトキシシラン(MTMS)を2.0g使用し、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いなかった以外は実施例1と同様に試料を作製して評価した。評価結果を表1に示す。試料は折り曲げ試験で容易に破損し、良好な可とう性は得られなかった。
【実施例】
【0047】
[比較例2~3]
ガラス製のスクリュー管中に表1の配合で原材料を仕込み、室温で1時間撹拌した。次に、系内に10Mのアンモニア水溶液を1.2g滴下した後、撹拌を停止した。スクリュー管を湯浴中に置き、60℃で20時間保持した。実施例と同様に系の均一性試験を行った結果、反応系は単に白濁した液体であり、均一な膨潤ゲル様状態が確認できなかったのでNGと判断した。
実施例1と同様にして、系の均一性試験結果がNGである試料を2-プロパノールで置換し、さらにヘキサンで置換した後、常圧で、60℃で24時間乾燥した。その結果、スラリー状あるいは粉末状の試料が得られ、実施例1~3におけるようなケーキ状の固体は得られなかった。このため、さらなる評価は実施不可能であった。
【実施例】
【0048】
[比較例4、5]
2-プロパノールの代わりにメタノールおよび水をそれぞれ配合した以外は実施例3と同様にして、表1の配合で試料を作製した。しかし、加水分解反応後に系の均一性評価を実施したところ、NGであった。
【実施例】
【0049】
【表1】
JP0006195272B2_000002t.gif
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2