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明細書 :界面活性剤の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6055683号 (P6055683)
公開番号 特開2014-140813 (P2014-140813A)
登録日 平成28年12月9日(2016.12.9)
発行日 平成28年12月27日(2016.12.27)
公開日 平成26年8月7日(2014.8.7)
発明の名称または考案の名称 界面活性剤の製造方法
国際特許分類 B01F  17/56        (2006.01)
C08B  37/00        (2006.01)
FI B01F 17/56
C08B 37/00 Q
請求項の数または発明の数 5
全頁数 13
出願番号 特願2013-010967 (P2013-010967)
出願日 平成25年1月24日(2013.1.24)
審査請求日 平成27年12月4日(2015.12.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
発明者または考案者 【氏名】河原 秀久
【氏名】片倉 啓雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100074332、【弁理士】、【氏名又は名称】藤本 昇
【識別番号】100114432、【弁理士】、【氏名又は名称】中谷 寛昭
審査官 【審査官】松元 麻紀子
参考文献・文献 特開2007-217466(JP,A)
特表2003-512152(JP,A)
特開2007-297628(JP,A)
調査した分野 B01F 17/56
C08B 37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
コーヒー豆にpH12未満の水含有溶媒で抽出処理を施し、前記抽出処理後の抽出残渣を得る前抽出工程と、
前記前抽出工程で得られた前記抽出残渣にpH12以上のアルカリ性水で抽出処理を施し、構成単糖としてガラクトースとマンノースとを有する多糖類を含有する抽出液を得て、前記多糖類を含む界面活性剤を得るアルカリ抽出工程と、
備える、界面活性剤の製造方法。
【請求項2】
前記前抽出工程は、pH7の水含有溶媒で前記抽出処理を施すことを含む、請求項1に記載の界面活性剤の製造方法。
【請求項3】
前記前抽出工程は、脱イオン水で前記抽出処理を施すことを含む、請求項1又は2に記載の界面活性剤の製造方法。
【請求項4】
前記前抽出工程は、イミダゾール水溶液で前記抽出処理を施すことを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の界面活性剤の製造方法。
【請求項5】
前記アルカリ抽出工程の後に、前記構成単糖としてガラクトースとマンノースとを有する多糖類を含む抽出液のpHを12~14に調整するpH調整工程を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の界面活性剤の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は界面活性剤の製造方法に関する。

【背景技術】
【0002】
従来、界面活性剤としては、様々なものが知られており、例えば、疎水基と親水基とを有し、疎水基がラウリル基であり且つ親水基がヒドロキシ基であるものが知られている。
【0003】
この種の界面活性剤としては、例えば、疎水基になる脂肪酸としてのラウリル酸と、親水基になる複数のヒドロキシ基を有するジグリセリンとを化学合成によって反応させたものが知られており、具体的には、ジグリセリンモノラウレートなどが知られている(特許文献1)。
【0004】
上記の界面活性剤は、界面活性能を有し、例えば、油分を水中に乳化させるために用いられ得る。
しかしながら、上記の界面活性剤は、副反応物も生じさせる化学合成によって、疎水基になる脂肪酸などと、親水基を含む物質とを反応させて得るものであることから、副反応物によって必ずしも十分な界面活性能が発揮されないという問題を有する。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2006-083092
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、化学合成によらずとも得ることができ、しかも十分な界面活性能を有する界面活性剤が要望されている。
【0007】
本発明は、上記の問題点、要望点等に鑑み化学合成によらずとも十分な界面活性能を有する界面活性剤を得ることができる界面活性剤の製造方法を提供することを課題とする。

【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の界面活性剤の製造方法は、コーヒー豆にpH12未満の水含有溶媒で抽出処理を施し、前記抽出処理後の抽出残渣を得る前抽出工程と、前記前抽出工程で得られた前記抽出残渣にpH12以上のアルカリ性水で抽出処理を施し、構成単糖としてガラクトースとマンノースとを有する多糖類を含有する抽出液を得て、前記多糖類を含む界面活性剤を得るアルカリ抽出工程と、を備えることを特徴とする。

【0009】
本発明の界面活性剤の製造方法においては、好ましくは、前記前抽出工程は、pH7の水含有溶媒で前記抽出処理を施すことを含む

【0010】
本発明の界面活性剤の製造方法においては、好ましくは、前記前抽出工程は、脱イオン水で前記抽出処理を施すことを含む

【0011】
本発明の界面活性剤の製造方法においては、好ましくは、前記前抽出工程は、イミダゾール水溶液で前記抽出処理を施すことを含む。
本発明の界面活性剤の製造方法は、好ましくは、前記アルカリ抽出工程の後に、前記構成単糖としてガラクトースとマンノースとを有する多糖類を含む抽出液のpHを12~14に調整するpH調整工程を備える。

【発明の効果】
【0012】
発明の界面活性剤の製造方法は、化学合成によらずとも十分な界面活性能を有する界面活性剤を得ることができるという効果を奏する。

【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】多糖類をゲルろ過クロマトグラフィーにより分画したときのチャートを表す図。
【図2】乳化後の外観を表す写真。
【図3】乳化物の粒度分布を示すグラフ。
【図4】多糖類のGPCによるクロマトグラムを表す図。
【図5】多糖類を構成する単糖をABEE測定法によって分析したチャートを表す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る界面活性剤の一実施形態について詳しく説明する。

【0015】
本実施形態の界面活性剤は、コーヒー豆から抽出された多糖類を含み、該多糖類が構成単糖としてガラクトースとマンノースとを有するものである。

【0016】
前記コーヒー豆は、コーヒーノキ属(Coffea属)に属する植物の種子である。

【0017】
前記コーヒーノキ属(Coffea属)に属する植物としては、アラビカ種のもの(Coffea arabica)、又は、ロブスタ種のもの(Coffea canephora)などが挙げられる。

【0018】
前記コーヒー豆としては、前記多糖類の界面活性能がより優れたものになり得るという点で、焙煎されたものが好ましい。
前記焙煎とは、水の沸点を超える温度にてコーヒー豆を加熱することである。前記焙煎における温度としては、150~200℃が好ましい。

【0019】
前記抽出は、前記コーヒー豆に対して抽出溶媒によって抽出処理を施し、抽出処理後の抽出液を少なくとも得ることである。
前記抽出処理の詳細については、後述する。

【0020】
前記多糖類は、構成単糖として少なくともガラクトースとマンノースとを有するものである。
具体的には、前記多糖類は、例えば、β-1,4-マンナン構造を主鎖として有し、該主鎖に1,6-結合したガラクトースを側鎖として有する。

【0021】
前記多糖類は、構成単糖としてガラクトースとマンノースとをガラクトース/マンノース=1.0/1.0~1.0/2.5のモル比で有することが好ましく、1.0/1.2~1.0/2.0のモル比で有することがより好ましく、1.0/1.5~1.0/2.0のモル比で有することがよりさらに好ましい。前記ガラクトースと前記マンノースとのモル比が上記の数値範囲であることにより、前記多糖類の界面活性能がより優れたものになり得るという利点がある。
なお、前記ガラクトースと前記マンノースとのモル比は、実施例に記載されたABEE測定法によって決める。

【0022】
前記多糖類の分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィーによって得られた値がデキストラン換算で10,000~20,000Daの範囲であることが好ましく、15,000~18,000Daの範囲であることがより好ましい。
前記多糖類の分子量が上記の範囲であることにより、前記多糖類の界面活性能がより優れたものになり得るという利点がある。

【0023】
前記多糖類の分子量を測定するためのゲルろ過クロマトグラフィーにおける測定条件は、実施例に記載されたものである。

【0024】
前記多糖類は、構成単糖として、さらに、アラビノースなどを有し得る。

【0025】
前記界面活性剤における多糖類の含有率は、特に限定されないが、通常、フェノール硫酸法による全糖量換算で40~55質量%である。
なお、前記界面活性剤は、通常、液状の態様であるが、粉状、ペースト状の態様にもなり得る。

【0026】
次に、本発明に係る界面活性剤の製造方法の一実施形態について詳しく説明する。

【0027】
本実施形態の界面活性剤の製造方法は、構成単糖としてガラクトースとマンノースとを有する多糖類をアルカリ性水によってコーヒー豆から抽出する工程を含むものである。

【0028】
即ち、本実施形態の界面活性剤の製造方法は、構成単糖としてガラクトースとマンノースとを有する多糖類を含む界面活性剤を製造すべく、
コーヒー豆に抽出処理を施す抽出工程を有し、該抽出工程が、アルカリ性水によってコーヒー豆から前記多糖類を抽出するアルカリ抽出工程を少なくとも含むものである。

【0029】
前記界面活性剤の製造方法は、前記抽出工程の前に、コーヒー豆を焙煎する焙煎工程を有することが好ましい。
また、前記界面活性剤の製造方法は、前記抽出工程後に、前記多糖類を含む抽出処理後の抽出液のpHを調整するpH調整工程を有することが好ましい。
また、前記界面活性剤の製造方法は、前記pH調整工程の後に、前記多糖類を含む抽出処理後の抽出液に精製処理を施す精製工程を有することが好ましい。

【0030】
即ち、前記界面活性剤の製造方法は、コーヒー豆を焙煎する焙煎工程と、焙煎したコーヒー豆に対して抽出溶媒によって抽出処理を施す抽出工程と、該抽出工程によって抽出した前記多糖類を含む抽出処理後の抽出液のpHを調整するpH調整工程と、該pH調整後の前記多糖類を含む抽出処理後の抽出液に精製処理を施す精製工程とを有し、前記抽出工程が、アルカリ性水でコーヒー豆に抽出処理を施すアルカリ抽出工程を少なくとも含んでいることが好ましい。
なお、前記抽出工程の前には、コーヒー豆を砕くことにより、コーヒー豆をより抽出処理されやすいものにすることができる。

【0031】
前記焙煎工程は、上述したコーヒー豆に焙煎処理を施すものである。焙煎処理は、上述したように、コーヒー豆に対して水の沸点を超える温度を加えるものである。
前記焙煎工程においては、一般的なコーヒー豆の焙煎方法が採用される。
前記焙煎工程においては、焙煎温度が150~200℃であることが好ましい。

【0032】
前記抽出工程では、一般的な抽出処理が採用され得る。具体的には、前記抽出工程では、例えば、コーヒー豆1質量部に対する抽出溶媒の容量比が1~5倍である。また、例えば、抽出温度が5~100℃未満である。また、例えば、抽出時間が30分間~24時間である。
また、前記抽出工程では、抽出溶媒として、通常、少なくとも水を含む抽出溶媒が採用される。
前記抽出工程では、必要に応じて、適宜、ろ過、沈殿、遠心分離などの操作が行われる。

【0033】
前記抽出工程は、水含有抽出溶媒でコーヒー豆に抽出処理を施した後の抽出残渣を得る前抽出工程と、前抽出工程で得られた残渣にアルカリ性水で抽出処理を施すアルカリ抽出工程とを含むことが好ましい。

【0034】
前記前抽出工程では、少なくとも水を含む水含有抽出溶媒によってコーヒー豆に抽出処理を施し、抽出処理後の残渣を得る。即ち、前記前抽出工程では、水含有抽出溶媒によってコーヒー豆に抽出処理を施し、抽出処理後の上澄み液を除去する。前記前抽出工程によれば、前記多糖類以外の成分をコーヒー豆から抽出することができ、抽出前よりも前記多糖類の含有率が高まったコーヒー豆残渣を得ることができる。

【0035】
前記前抽出工程における水含有抽出溶媒のpHは、12未満であることが好ましく、10未満であることがより好ましい。該水含有抽出溶媒のpHが12未満であることにより、アルカリ抽出工程において得る多糖類のコーヒー豆残渣における含有率がより高くなるという利点がある。
前記水含有抽出溶媒は、水以外に、例えば、イミダゾールなどの有機溶媒、緩衝剤などを含み得る。

【0036】
前記前抽出工程では、水含有抽出溶媒の温度が100℃未満であることが好ましい。水含有抽出溶媒の温度が100℃未満であることにより、前処理抽出後のコーヒー豆残渣に前記多糖類がより多く残存し得るという利点がある。

【0037】
前記前抽出工程は、複数回行うことができる。具体的には、前記抽出工程においては、例えば、焙煎し粉砕したコーヒー豆に対して80℃~90℃の水によって抽出処理を施し、抽出液たる飲用コーヒーを得て1回目の前抽出処理を行うことができ、さらに、抽出後の残渣であるコーヒー粕に対して80℃~90℃の水含有抽出溶媒によって抽出処理を施して2回目の前抽出処理を行うことができる。

【0038】
前記アルカリ抽出工程においては、焙煎されたコーヒー豆又は焙煎されていないコーヒー豆に対してアルカリ性水で抽出処理を施し、抽出処理後の抽出液を得る。即ち、前記アルカリ抽出工程においては、アルカリ性水による抽出処理後の上澄み液を得る。前記アルカリ抽出工程によって、抽出処理後の抽出液に前記多糖類が含まれることとなる。

【0039】
前記アルカリ抽出工程の抽出処理において用いるアルカリ性水は、少なくとも水を含有し且つpHが7を超えるものである。

【0040】
前記アルカリ抽出工程では、pH12以上のアルカリ性水でコーヒー豆に抽出処理を施すことが好ましく、pH13以上のアルカリ性水でコーヒー豆に抽出処理を施すことがより好ましい。pH12以上のアルカリ性水でコーヒー豆に抽出処理を施すことにより、前記多糖類がより十分に抽出されるという利点がある。

【0041】
前記アルカリ抽出工程では、アルカリ性水として、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの無機塩基を水に溶解させたアルカリ性水、水の電気分解によって得られたアルカリ性水などが採用される。
前記アルカリ性水は、水以外に、NaOHやKOHなどの無機物、又は、有機物等を含んでいてもよい。

【0042】
前記pH調整工程では、アルカリ抽出工程により得られた前記多糖類を含む抽出液のpHを調整する。

【0043】
前記pH調整工程では、例えば、上記抽出処理後の抽出液を酸性側へ調整すべく、塩酸や硫酸などの無機酸、又は、酢酸やクエン酸などの有機酸などを抽出処理後の抽出液に添加することができる。具体的には、例えば、酢酸溶液を抽出処理後の抽出液に添加することができる。
また、前記pH調整工程では、例えば、上記抽出処理後の抽出液をアルカリ性側へ調整すべく、NaOHやKOHなどの無機塩基などを抽出処理後の抽出液に添加することができる。

【0044】
前記pH調整工程では、アルカリ抽出工程で得られた抽出処理後の抽出液をpH12~14に調整することが好ましい。pHを12~14に調整することにより、多糖類の分子間における水素結合(マンナン鎖間における水素結合)を抑えることができるという利点がある。

【0045】
前記精製工程では、一般的な精製方法を採用することにより、pH調整された前記多糖類を含む抽出処理後の抽出液に精製処理を施すことができる。

【0046】
前記精製処理としては、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィーによる精製処理、透析膜を用いた透析による精製処理などが挙げられる。

【0047】
前記精製工程では、前記多糖類として、前記ゲルろ過クロマトグラフィーによる精製処理によって精製され、デキストラン換算で分子量10,000~20,000Daのものを得ることが好ましく、15,000~18,000Daのものを得ることがより好ましい。前記多糖類の分子量が上記の数値範囲であることにより、界面活性剤の界面活性能がより優れたものになるという利点がある。

【0048】
前記透析膜を用いた透析による精製処理としては、所定分子量で分画できる透析膜を備えた市販されている透析チューブを用いたものなどが挙げられる。透析チューブにより、分子量が所定Da以上の多糖類と、該所定Da未満の多糖類とを分画することができる。

【0049】
上記のごとく製造した界面活性剤は、例えば、加工食品、化粧料などに配合され、油分と水分とを乳化させるために好適に使用される。

【0050】
本実施形態の界面活性剤及び界面活性剤の製造方法は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の界面活性剤及び界面活性剤の製造方法に限定されるものではない。また、本発明では、一般の界面活性剤及び界面活性剤の製造方法において採用される種々の形態を、本発明の効果を損ねない範囲で採用することができる。
【実施例】
【0051】
以下に、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
下記のようにして界面活性剤を製造した。
「前抽出工程」
コーヒーノキ属(Coffea属)に属する植物(アラビカ種)の種子を180℃にて焙煎したコーヒー豆に対して85℃の水(水含有抽出溶媒)によって抽出処理を施した後のコーヒー粕を用意した。
このコーヒー粕100gを500mLの脱イオン水(水含有抽出溶媒)に入れてオートクレーブ内にて90℃にて1時間抽出処理し、さらに遠心分離(10000g,15分間)により抽出後の残渣を得た。
得られた残渣を500mLの0.5Mイミダゾール水溶液(水含有抽出溶媒 pH7.0)に懸濁させつつ、70℃にて1時間の抽出処理を行い、遠心分離(10000g,15分間)によって沈殿物を得た。
さらに、沈殿物を250mLの0.05MNaOH水溶液(水含有抽出溶媒)に懸濁して撹拌しつつ、室温にて2時間の抽出処理を行い、遠心分離(10000g,15分間)によって沈殿物を得た。
加えて、沈殿物を250mLの1.0MNaOH水溶液(水含有抽出溶媒)に懸濁して撹拌しつつ、室温にて2時間の抽出処理を行った。そして、前抽出処理後のコーヒー粕残渣を得た。
「アルカリ抽出工程」
前抽出工程後の湿潤コーヒー粕残渣120g(乾燥分54g)を、250mLの4.0M NaOH水溶液(アルカリ性水 pH14)に懸濁させ、撹拌しつつ、室温にて2時間抽出処理を行い、遠心分離により上澄み液(多糖類を含む抽出処理後の抽出液)を得た。
「pH調整工程」
抽出処理後の抽出液に氷酢酸を加えることにより、抽出処理後の抽出液をpH5.0に調整した。
「精製工程」
・透析による精製
pH調整した抽出処理後の抽出液を透析用チューブに入れ、該チューブを水中に3日間浸漬させることにより精製工程を行った。
詳しくは、透析用チューブとして分画分子量10kDaの透析膜で構成されたもの(和光純薬社製 製品名「ダイヤレスメンブラン」)を用いた。チューブを浸漬した水を1日ごとに交換し、3日後のチューブ内容物に対して遠心分離(10000g,15分間)を行い、上澄み液を得た。このようにして液状の界面活性剤を製造した。
【実施例】
【0053】
(実施例2)
実施例1で製造した界面活性剤に対してさらに下記の精製工程を行うことにより、液状の界面活性剤を製造した。
「精製工程」
・ゲルろ過クロマトグラフィーによる精製
実施例1で得た上澄み液をゲルろ過クロマトグラフィーによって精製(分画)した。
詳しくは、送液ポンプとしては、ペリスタポンプを用いた。また、ゲルろ過クロマトグラフィーにおける条件は、次の通りである。即ち、カラム(φ15mm×長さ1000mm)中の担体が、「Sephacryl S-400 HR」(GEヘルスケア・ジャパン社製)であり、溶出液が、0.15MとなるようにNaClを溶解させた20mMリン酸カリウム緩衝液であり、流速が、0.5mL/分である。
【実施例】
【0054】
ゲルろ過クロマトグラフィーのチャートを図1に示す。図1における縦軸(A490)は、フェノール硫酸法による全糖量に対する490nm波長の相対吸光度を示す。図1に示すチャートにおける右側のピークに溶出された分画(分子量がデキストラン換算で15,000Da~17,000Daのもの)を下記の界面活性能の評価に用いた。
このようにして、多糖類を含む液状の界面活性剤(乾燥分として4.52g、フェノール硫酸法による全糖量換算で2.35g)を製造した。
【実施例】
【0055】
(実施例3)
前抽出工程、アルカリ抽出工程、精製工程を下記のようにして行った点以外は、実施例1と同様にして界面活性剤を製造した。
「前抽出工程」
0.5Mイミダゾール水溶液、0.05MNaOH水溶液、及び0.1MNaOH水溶液のいずれも用いず、代わりにコーヒー粕に対して90℃の水で1時間の処理を行った後に遠心分離によって該処理後のコーヒー粕残渣を得た。
「アルカリ抽出工程」
4.0M NaOH水溶液(pH14)を300mLとした。
また、精製処理によって液状の界面活性剤(上澄み液 フェノール硫酸法による全糖量換算で2.35gの多糖類を含有)を製造した後に、該液状の界面活性剤に対して凍結乾燥処理を行い、4.52gの粉末を得た。
「精製工程」
ゲルろ過クロマトグラフィーによる精製を行わず、透析による精製のみ行った。
このようにして、実施例3の界面活性剤を製造した。
【実施例】
【0056】
(実施例4)
アルカリ抽出工程において4.0M NaOH水溶液に代えて電気分解後のアルカリイオン水(pH13)を用いた点以外は、実施例2と同様にして界面活性剤(フェノール硫酸法による全糖量換算で0.36gの多糖類を含有する液体)を製造し、さらに、凍結乾燥処理によって0.84gの粉末を得た。
【実施例】
【0057】
<界面活性能の評価>
下記に示すようにして、乳化を行い、乳化物の粒子径を測定することにより、界面活性能を評価した。
「乳化」
実施例3で製造した界面活性剤の界面活性能について、下記のようにして評価した。実施例2で製造した界面活性剤については、下記の評価のうちの一部を行った。
即ち、フェノール硫酸法による全糖量換算で0.1~2.0mg/mL濃度の多糖類を含む各水相と、油相とを1:1の容積比(2mLずつ)にて混合して乳化し、37℃で24時間放置後の油相(上側相)における油滴の粒子径を測定した。
なお、乳化においては、混合機としてホモジナイザー(製品名「ポリトロン PT1300D シャフトPT-DA 12/2EC-E157」 セントラル科学貿易社製)を用い、20,000rpmで1分間の撹拌を行った。
また、油相としては、ケロシン、菜種油、スクワレン、スクワラン、大豆油、オリーブ油、コメ油、紅花油、ゴマ油を用いた。
比較対照の界面活性剤としては、下記のものを用いた。
・ジグリセリンモノラウレート(理研ビタミン社製 製品名「ポエムDL-100」)
・ショ糖脂肪酸エステル(ショ糖パルミチン酸エステル)
(三菱化学フーズ社製 製品名「リョートー P-1670」)
【実施例】
【0058】
「乳化粒子径(油滴)の測定」
・粒子径分布1
乳化粒子を100倍率の光学顕微鏡によって観察した画像を画像解析ソフトによって解析することにより、粒子径分布を求め、この粒子径分布から平均粒子径を求めた。
・粒子径分布2
また、乳化物を測定用溶媒(水)に添加することにより評価サンプルを調製し、動的光散乱式粒径分布装置(堀場製作所社製 製品名「LB-550」)によって粒度分布を求め、この粒子径分布から平均粒子径を求めた。
【実施例】
【0059】
「乳化性能の評価」
上記のごとき乳化によって得られた乳化物における乳化性能を乳化指標(E24)によって評価した。
詳しくは、油相としてのケロシンと水相とを上記のごとく乳化した乳化物を試験管内で37℃でそれぞれ24時間放置後、液面までの全高さと、エマルジョン層(上側の層)の高さを測定し、全高さに占めるエマルジョン層の高さをE24(乳化指標)として算出した。
【実施例】
【0060】
実施例3の界面活性剤を用いて、多糖類がフェノール硫酸法による全糖量換算で0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.5mg/mL、1.0mg/mL、2.0mg/mLの各濃度となるように調製した水相を用い、また、ケロシンを油相として用いたときの、乳化24時間後の乳化物の外観を図2に示す。
また、上記粒子径分布1の粒度分布から求めた平均粒子径の値、及び、上記の乳化指標(E24)を表1に示す。
【実施例】
【0061】
【表1】
JP0006055683B2_000002t.gif
【実施例】
【0062】
実施例3の界面活性剤を用いて、多糖類がフェノール硫酸法による全糖量換算で2.0mg/mLの濃度となるように調製した水相を用い、また、ケロシンを油相として用いて乳化し、乳化24時間後の粒度分布(上記粒子径分布1及び上記粒子径分布2)の測定結果を図3に示す。
【実施例】
【0063】
実施例3の界面活性剤を用いて、多糖類がフェノール硫酸法による全糖量換算で2.0mg/mLの濃度となるように調製した水相を用い、また、スクアラン、スクアレン、菜種油をそれぞれ油相として用い、乳化24時間後における上記粒子径分布1の粒度分布から求めた平均粒子径、及び乳化指標(E24)の結果を表2に示す。
【実施例】
【0064】
【表2】
JP0006055683B2_000003t.gif
【実施例】
【0065】
実施例3の界面活性剤を用いて、多糖類がフェノール硫酸法による全糖量換算で2.0mg/mLの濃度となるように調製した水相を用い、また、大豆油、オリーブ油、コメ油、菜種油、紅花油、ゴマ油をそれぞれ油相として用い、乳化24時間後の乳化指標(E24)の結果を表3に示す。
【実施例】
【0066】
【表3】
JP0006055683B2_000004t.gif
【実施例】
【0067】
実施例3の界面活性剤及び比較対照の界面活性剤を用いて、多糖類をフェノール硫酸法による全糖量換算で2.0mg/mLの濃度となるように配合したものを水相として用い、ケロシンを油相として用い、乳化24時間後における上記粒子径分布1の粒度分布から求めた平均粒子径、及び乳化指標(E24)の結果を表4に示す。
【実施例】
【0068】
【表4】
JP0006055683B2_000005t.gif
【実施例】
【0069】
上記の結果から把握できるように、実施例の界面活性剤は、十分な界面活性能(乳化性能)を有する。
【実施例】
【0070】
<界面活性剤に含まれる多糖類の分析>
界面活性剤に含まれる多糖類について、GPCによる分析、及び、ABEE測定法による分析を行った。
・GPC
実施例1で製造した界面活性剤を用いて上記と同様にして乳化物を調製した。詳しくは、油相としてケロシンを用い、水相としてフェノール硫酸法による全糖量換算で1mg/mL濃度の多糖類を含むものを用いて、上記と同様にして乳化物を調製した。
さらに、ケロシンを含む上層を、用いたケロシンと同容量の酢酸エチルと混合し、抽出操作した後の酢酸エチル液(酢酸エチル抽出液)を得た。
【実施例】
【0071】
・試験サンプル1
実施例1で製造された液状の界面活性剤(ゲル濾過クロマトグラフィー精製前)
・試験サンプル2
上述したように乳化した後の水相(下側層)
・試験サンプル3
上述したように乳化した後に酢酸エチルで抽出操作した後の液(酢酸エチル抽出液)
【実施例】
【0072】
上記の試験サンプルをGPCによって分析したときのチャートを図4に示す。
【実施例】
【0073】
・ABEE測定法
実施例1で得た液状の界面活性剤、実施例2で得た液状の界面活性剤、及び、上記の試験サンプル3について、ABEE測定法によって多糖類を構成する単糖のモル比を調べた。詳しくは、測定用キット「GlyScope 糖標識化キットABEE Labeling Kit」(j-オイルミルズ社製)を用い、該キット記載の手順に従って、上記の試験サンプル1~3のそれぞれに対して酸加水処理を行い、還元アミノ化反応によって4-アミノ安息香酸エチルエステル(ABEE)で標識化したのち、HPLC分析によって分析を行った。
なお、ABEE測定法におけるHPLC分析の分析条件は、溶離液:0.2M ホウ酸カリウム緩衝液(pH8.9)/アセトニトリル=93:7、流速:1mL/分、カラム:Honnenpak C18 (21.5mmID×30cm)である。
【実施例】
【0074】
上記のABEE測定法による分析チャートを図5に示す。図5におけるGal、Man、Araは、それぞれ、ガラクトース、マンノース、アラビノースを示す。また、図5のグラフにおける縦軸は、蛍光の信号強度を示す。
図5に示すように、試験サンプル3においては、多糖類を構成する単糖のモル比は、ガラクトース/マンノース=1/2のモル比であった。また、実施例1の界面活性剤においては、多糖類を構成する単糖のモル比は、ガラクトース/マンノース=1/1.3のモル比であった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の界面活性剤は、例えば、加工食料、化粧料などの分野において、乳化、分散、可溶化などの目的で好適に用いられる。即ち、乳化剤、分散剤、可溶化剤などとして好適に用いられる。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
4