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明細書 :過冷却促進剤、過冷却促進剤の製造方法、抗凝固性組成物、及び、抗凝固性組成物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-038170 (P2015-038170A)
公開日 平成27年2月26日(2015.2.26)
発明の名称または考案の名称 過冷却促進剤、過冷却促進剤の製造方法、抗凝固性組成物、及び、抗凝固性組成物の製造方法
国際特許分類 C09K   3/18        (2006.01)
C09K   3/00        (2006.01)
A23F   5/10        (2006.01)
FI C09K 3/18
C09K 3/00 102
A23F 5/10
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2013-169606 (P2013-169606)
出願日 平成25年8月19日(2013.8.19)
発明者または考案者 【氏名】河原 秀久
【氏名】片倉 啓雄
【氏名】長岡 康夫
出願人 【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100074332、【弁理士】、【氏名又は名称】藤本 昇
【識別番号】100114432、【弁理士】、【氏名又は名称】中谷 寛昭
審査請求 未請求
テーマコード 4B027
4H020
Fターム 4B027FB28
4B027FC10
4B027FQ02
4B027FQ06
4H020AA03
4H020AB01
要約 【課題】 過冷却促進能と抗酸化性能とを十分に兼ね備える過冷却促進剤などを提供することを課題とする。
【解決手段】 コーヒー豆から抽出された化合物を含み、該化合物が分子中に少なくとも芳香族炭化水素構造とカルボキシ基とを有する過冷却促進剤などを提供する。
【選択図】 なし
特許請求の範囲 【請求項1】
コーヒー豆から抽出された化合物を含み、該化合物が分子中に少なくとも芳香族炭化水素構造とカルボキシ基とを有する過冷却促進剤。
【請求項2】
前記コーヒー豆が、焙煎されたコーヒー豆である請求項1に記載の過冷却促進剤。
【請求項3】
分子中に少なくとも芳香族炭化水素構造とカルボキシ基とを有する化合物を含む過冷却促進剤の製造方法であって、
水によってコーヒー豆から抽出された水抽出物に対して、有機溶媒によって抽出処理を施すことにより、前記化合物を抽出する過冷却促進剤の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された過冷却促進剤と、水とを含む抗凝固性組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載された過冷却促進剤と、水を含む液体とを混合する工程を備える抗凝固性組成物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、過冷却促進剤、過冷却促進剤の製造方法、抗凝固性組成物、及び、抗凝固性組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
融点より低い温度になっても液体が凝固しない現象は、一般的に、過冷却現象といわれている。
【0003】
従来、このような過冷却現象を促進する過冷却促進剤(抗氷核活性剤)としては、様々なものが知られており、例えば、餡粕から抽出された抽出物を含むものが知られている(特許文献1)。
【0004】
斯かる過冷却促進剤は、例えば、水を含む液体に添加されることにより、添加後の液体において過冷却現象が起こる温度の下限を添加前よりも、低くすることができる。
【0005】
しかしながら、斯かる過冷却促進剤は、過冷却促進能を有するものの、必ずしも抗酸化性能が十分でないという問題を有する。即ち、斯かる過冷却促進剤は、過冷却促進能と抗酸化性能とを必ずしも十分に兼ね備えていないという問題を有する。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2010-121052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点等に鑑み、過冷却促進能と抗酸化性能とを十分に兼ね備えた過冷却促進剤を提供することを課題とする。
また、本発明は、過冷却促進能と抗酸化性能とを十分に兼ね備えた過冷却促進剤を得ることができる過冷却促進剤の製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、過冷却現象を起こす性能を十分に有し且つ抗酸化性能を十分に有する抗凝固性組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、過冷却現象を起こす性能を十分に有し且つ抗酸化性能を十分に有する抗凝固性組成物を得ることができる抗凝固性組成物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の過冷却促進剤は、コーヒー豆から抽出された化合物を含み、該化合物が分子中に少なくとも芳香族炭化水素構造とカルボキシ基とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明の過冷却促進剤においては、前記コーヒー豆が、焙煎されたコーヒー豆であることが好ましい。
【0010】
本発明の過冷却促進剤の製造方法は、分子中に少なくとも芳香族炭化水素構造とカルボキシ基とを有する化合物を含む過冷却促進剤の製造方法であって、
水によってコーヒー豆から抽出された水抽出物に対して、有機溶媒によって抽出処理を施すことにより、前記化合物を抽出することを特徴とする。
【0011】
本発明の抗凝固性組成物は、上記の過冷却促進剤と、水とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の抗凝固性組成物の製造方法は、上記の過冷却促進剤と、水を含む液体とを混合する工程を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の過冷却促進剤は、過冷却促進能と抗酸化性能とを十分に兼ね備えるという効果を奏する。また、本発明の過冷却促進剤の製造方法は、過冷却促進能と抗酸化性能とを十分に兼ね備えた過冷却促進剤を得ることができるという効果を奏する。
本発明の抗凝固性組成物は、過冷却現象を起こす性能を十分に有し且つ抗酸化性能を十分に有するという効果を奏する。
また、本発明の抗凝固性組成物の製造方法は、過冷却現象を起こす性能を十分に有し且つ抗酸化性能を十分に有する抗凝固性組成物を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】陰イオン交換クロマトグラフィーの結果を示すチャート。
【図2】ゲルろ過クロマトグラフィーの結果を示すチャート。
【図3】化合物のLC-MS分析結果を表す図。
【図4】化合物のMS-MS分析結果を表す図。
【図5】化合物の1HNMR分析結果を表す図。
【図6】過冷却促進能の評価結果を表す図。
【図7】過冷却促進能の評価結果を表す図。
【図8】抗酸化性能の評価結果を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る過冷却促進剤の一実施形態について詳しく説明する。

【0016】
本実施形態の過冷却促進剤は、コーヒー豆から抽出された化合物を含み、該化合物が分子中に少なくとも芳香族炭化水素構造とカルボキシ基とを有するものである。

【0017】
前記コーヒー豆は、コーヒーノキ属(Coffea属)に属する植物の種子である。

【0018】
前記コーヒーノキ属(Coffea属)に属する植物としては、アラビカ種のもの(Coffea arabica)、又は、ロブスタ種のもの(Coffea canephora)などが挙げられる。

【0019】
前記コーヒー豆としては、過冷却促進性能及び抗酸化性能がより優れたものになるという点で、焙煎されたものが好ましい。
前記焙煎とは、水の沸点を超える温度にてコーヒー豆を加熱することである。焙煎における温度としては、150~200℃が好ましい。

【0020】
前記抽出は、コーヒー豆に対して抽出溶媒によって抽出処理を施し、抽出処理後の抽出液を少なくとも得ることである。
前記抽出処理の詳細については、後述する。

【0021】
前記化合物は、分子中に少なくとも芳香族炭化水素構造とカルボキシ基とを有する。
前記化合物は、例えば、カルボキシ基が塩でない状態において、C152627の組成式で表され、346の分子量を有する。

【0022】
前記過冷却促進剤における化合物の含有率は、特に限定されないが、例えば、10~100質量%である。
なお、前記過冷却促進剤は、通常、液状の態様であるが、粉状、ペースト状の態様にもなり得る。

【0023】
次に、本発明に係る過冷却促進剤の製造方法の一実施形態について詳しく説明する。

【0024】
本実施形態の過冷却促進剤の製造方法は、分子中に少なくとも芳香族炭化水素構造とカルボキシ基とを有する化合物を含む過冷却促進剤の製造方法であって、
水によってコーヒー豆から抽出された水抽出物に対して、有機溶媒によって抽出処理を施すことにより、前記化合物を抽出するものである。

【0025】
好ましくは、本実施形態の過冷却促進剤の製造方法は、コーヒー豆に対して水によって抽出処理を施すことにより水抽出物を得る水抽出工程と、水抽出物のpHを調整するpH調整工程と、pH調整された水抽出物に対して有機溶媒によって抽出処理を施すことによって上記の化合物が抽出された抽出液を得る有機溶媒抽出工程とを備える。斯かる製造方法によれば、上述した化合物を含む抽出液における化合物濃度を効率的に高めることができるという利点がある。

【0026】
前記過冷却促進剤の製造方法においては、水抽出工程の前に、コーヒー豆を焙煎する焙煎工程を行うことができる。
前記過冷却促進剤の製造方法においては、水抽出工程の後であってpH調整工程の前に、上述した化合物を含む水抽出処理後の水抽出物に対して、分子量に応じた分画処理を施す分画工程を行うことができる。
前記過冷却促進剤の製造方法においては、有機溶媒抽出工程の後に、前記化合物を含む抽出処理後の抽出液に精製処理を施す精製工程を行うことができる。

【0027】
即ち、前記過冷却促進剤の製造方法は、
コーヒー豆を焙煎する焙煎工程と、
焙煎したコーヒー豆に対して水によって抽出処理を施す水抽出工程と、
該水抽出工程によって抽出した水抽出物に対して分子量に応じた分画処理を施すことにより上記化合物を含む分画液を得る分画工程と、
上記の化合物を含む分画後の分画液をpH調製するpH調整工程と、
pH調整された分画液に対して有機溶媒によって抽出処理を施す有機溶媒抽出工程と、
有機溶媒による抽出処理後の抽出液に精製処理を施す精製工程とを備え得る。

【0028】
なお、前記水抽出工程の前には、コーヒー豆を砕くことにより、コーヒー豆をより抽出処理されやすいものにすることができる。

【0029】
前記焙煎工程は、上述したコーヒー豆に焙煎処理を施すものである。焙煎処理は、上述したように、コーヒー豆に対して水の沸点を超える温度を加えるものである。
前記焙煎工程においては、一般的なコーヒー豆の焙煎方法が採用される。
前記焙煎工程においては、焙煎温度が150~200℃であることが好ましい。

【0030】
前記水抽出工程では、一般的な抽出処理によって、水を含む水含有抽出溶媒によってコーヒー豆に抽出処理を施す。そして、水含有抽出溶媒によって抽出された水抽出物を得る。該水抽出物には、上記の化合物が含まれている。
抽出処理を施すコーヒー豆としては、例えば、焙煎されたコーヒー豆、又は、焙煎されたコーヒー豆がいったん水によって抽出処理された残渣(コーヒー粕)などが挙げられる。

【0031】
前記水抽出工程では、水含有抽出溶媒として、通常、水を採用する。なお、水含有抽出溶媒としては、水を90質量%以上含むものを採用することができる。
前記水抽出工程では、水含有抽出溶媒のpHを6~8に調整することが好ましい。

【0032】
前記水抽出工程では、抽出温度が、通常、90~100℃である。また、抽出時間が、例えば30分間~24時間である。
前記水抽出工程は、例えば、オートクレーブなどを用いることにより、加圧状態で行っても良い。

【0033】
前記水抽出工程では、例えば、乾燥したコーヒー豆1質量部に対する水含有抽出溶媒の容量比が1~5倍である。
前記水抽出工程では、必要に応じて、適宜、ろ過、沈殿、遠心分離、乾燥などの操作が行われる。
前記水抽出工程によって得られる水抽出物は、上述した化合物を含む。該水抽出物は、液状、又は粉状などの態様になり得る。

【0034】
なお、前記水抽出工程では、水による抽出処理を複数回行ってもよい。例えば、水抽出工程においては、コーヒー豆に対して水によって抽出処理を施した後の残渣を得て、該残渣に対して、さらに水によって抽出処理を施し、水抽出物を得てもよい。

【0035】
前記分画工程では、水抽出工程によって得られた水抽出物に含まれる成分を、一般的な分画処理方法によって、分子量に応じて分画する。
分画処理方法としては、所定分子量で分画できる透析膜による分画処理方法、イオン交換クロマトグラフィーによる分画処理方法、限外ろ過膜を用いた分画処理方法などを採用することができる。

【0036】
例えば、前記分画工程では、水抽出物を水で希釈することなどによって、分画処理用液を調製する。そして、分画分子量が所定値に設定された限外ろ過膜を用いて、所定分子量を超える成分と、所定分子量以下の成分とを得る。

【0037】
また、前記分画工程では、例えば、水抽出工程によって得られた水抽出物に含まれる成分を、分子量が1万を超える成分と、分子量が1万以下の成分とに分画する。そして、分画された分子量1万以下の成分を含む分画液が、上記の化合物を含むこととなり、続くpH調整工程で用いられる。

【0038】
前記pH調整工程では、分画された分画液のpHを一般的な方法によって調整する。前記pH調整工程では、例えば、分画された分子量1万以下の成分を含む分画液のpHを調整する。

【0039】
前記pH調整工程では、上述した化合物のカルボキシル基が塩の態様になることを抑制するという点で、分画された分画液のpHを酸性側へ調整することが好ましい。
pHを酸性側へ調整することにより、上述した化合物の水溶性がより小さくなり、続く有機溶媒抽出工程において、上記の化合物をより確実に抽出できるという利点がある。

【0040】
前記pH調整工程では、pHを酸性側へ調整すべく、例えば、塩酸や硫酸などの無機酸、又は、酢酸やクエン酸などの有機酸などを分画液に添加することができる。
具体的には、前記pH調整工程では、例えば、塩酸水溶液によってpHを調整することができる。

【0041】
前記pH調整工程では、pHを1~4に調整することが好ましく、pHを1~3に調整することがより好ましい。pHを1~4に調整することにより、上述した理由と同様の理由により、有機溶媒によって上記の化合物をより確実に抽出できるという利点がある。

【0042】
前記有機溶媒抽出工程では、pH調整した分画液に対して、有機溶媒によって抽出処理を施すことにより、有機溶媒抽出液を得る。即ち、有機溶媒に上記の化合物が溶解してなる有機溶媒の溶液を抽出液として得る。

【0043】
前記有機溶媒抽出工程では、抽出処理として、一般的な抽出処理を採用することができる。
該抽出処理としては、例えば、分液ロートを用いた抽出処理、ソックスレー抽出器を用いた抽出処理などを採用することができる。

【0044】
前記有機溶媒抽出工程では、抽出溶媒として一般的な有機溶媒を用いる。なお、有機溶媒抽出工程における抽出溶媒は、通常、95容量%以上の有機溶媒を含む。

【0045】
前記有機溶媒抽出工程では、抽出温度が、通常、20~30℃である。また、抽出時間が、例えば30分間~24時間である。

【0046】
前記有機溶媒としては、分子中に極性基を有する極性有機溶媒、又は、分子中に極性基を有さない非極性有機溶媒などが挙げられる。

【0047】
極性有機溶媒としては、極性基として、エステル基を有するもの、ヒドロキシ基を有するもの、エーテル基を有するもの、ケトン基を有するもの等が挙げられる。

【0048】
エステル基を有する極性有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、などのカルボン酸エステルなどが挙げられる。
ヒドロキシ基を有する極性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコールなどの1価アルコールなどが挙げられる。
エーテル基を有する極性有機溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのモノエーテル化合物などが挙げられる。
ケトン基を有する極性有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなごが挙げられる。

【0049】
非極性有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素構造を有する化合物などが挙げられる。

【0050】
前記有機溶媒としては、上記の化合物をより確実に抽出できるという点で、炭素数2~4の極性有機溶媒が好ましく、炭素数2~4のカルボン酸エステル又は炭素数2~4の1価アルコールがより好ましく、酢酸エチル又はエチルアルコールがさらに好ましい。

【0051】
なお、前記有機溶媒抽出工程は、水によって既にコーヒー豆から抽出された水抽出物を用いて行うことができる。例えば、水抽出物として、市販のインスタントコーヒー(焙煎されたコーヒー豆の水抽出物)を採用することができる。

【0052】
前記精製工程では、一般的な精製方法を採用することにより、上記の化合物を含む抽出処理後の有機溶媒抽出液に精製処理を施すことができる。

【0053】
前記精製処理としては、例えば、上記の分画工程において行う方法が採用され得る。また、逆浸透による精製処理、吸着による精製処理なども採用され得る。

【0054】
本実施形態の過冷却促進剤の製造方法によれば、化学合成を行わなくても、過冷却促進能と抗酸化性能とを十分に兼ね備えた過冷却促進剤を得ることができる。従って、斯かる過冷却促進剤は、合成用触媒等を用いなくとも得られることから、人体に対する安全性が比較的高いものとなり得る。

【0055】
上記のごとく製造した過冷却促進剤は、少なくとも水を含む組成物に配合され、例えば、加工食品、化粧料、などにおいて好適に使用される。

【0056】
続いて、本発明に係る抗凝固性組成物の一実施形態について詳しく説明する。

【0057】
本実施形態の抗凝固性組成物は、少なくとも、上記の過冷却促進剤と、水とを含むものである。
前記抗凝固性組成物は、通常、さらに、様々な配合成分を含む。

【0058】
前記抗凝固性組成物は、上記の過冷却促進剤を含むため、水の融点より低い温度になったとしても、氷核が形成されることが抑制されている。従って、該組成物によれば、保存などの目的で氷点下の環境下に置かれても、該組成物に配合された配合成分が氷結に伴って破壊されることを抑制できる。
さらに、前記抗凝固性組成物は、上記の過冷却促進剤を含むため、抗酸化性能を十分に有する。
即ち、前記抗凝固性組成物は、過冷却現象を起こす性能を十分に有し且つ抗酸化性能を十分に有する。

【0059】
前記抗凝固性組成物としては、例えば、液体飲料、冷凍食品、化粧料、検査用血液、細胞懸濁液、臓器保存液、塗料などが挙げられる。

【0060】
前記抗凝固性組成物は、通常、上記の過冷却促進剤を、上記の化合物に換算して0.01質量%~90質量%含む。

【0061】
前記抗凝固性組成物は、例えば、食品分野、化粧品分野、医療分野、塗料分野などの技術分野において好適に使用される。

【0062】
さらに、本発明に係る抗凝固性組成物の製造方法の一実施形態について詳しく説明する。

【0063】
本実施形態の抗凝固性組成物の製造方法は、上記の過冷却促進剤と、水を含む液体とを混合する工程(以下、混合工程ともいう)を備えるものである。
本実施形態の抗凝固性組成物の製造方法によれば、氷点下の温度環境下であっても、氷核が形成されることが抑制されている組成物を得ることができる。また、抗酸化性能を有する組成物を得ることができる。

【0064】
前記混合工程は、一般的な方法によって行う。該混合工程を行うことによって、例えば上述したような抗凝固性組成物を得ることができる。

【0065】
本実施形態の抗凝固性組成物の製造方法は、例えば、上述した技術分野において好適に使用される。

【0066】
本実施形態の過冷却促進剤、過冷却促進剤の製造方法、抗凝固性組成物、及び、抗凝固性組成物の製造方法は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の形態に限定されるものではない。また、本発明では、一般の過冷却促進剤、過冷却促進剤の製造方法、抗凝固性組成物、及び、抗凝固性組成物の製造方法において採用される種々の形態を、本発明の効果を損ねない範囲で採用することができる。
【実施例】
【0067】
以下に、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0068】
(実施例1)
下記のようにして過冷却促進剤を製造した。
「焙煎工程」
コーヒーノキ属(Coffea属)に属する植物(アラビカ種)の種子を180℃にて焙煎した。
「水抽出工程」
焙煎したコーヒー豆に対して85℃の水によって抽出処理を施した後のコーヒー粕を用意した。
このコーヒー粕100g(乾燥分)を500mLの脱イオン水に入れてオートクレーブ内にて90℃にて1時間抽出処理し、さらに遠心分離(8000g,20分間)により抽出後の残渣を取り除き、固形分5.7gの水抽出物(水抽出液)を得た。
「分画工程」
得られた液状の水抽出物を限外ろ過膜でろ過することにより、分画処理を行った。
限外ろ過膜による分画処理においては、分画分子量が10000の限外ろ過膜(日本ミリポア社製、限外ろ過ディスク、ウルトラセル、PL、再生セルロース、10000NMWL)を装着した限外ろ過装置(日本ミリポア社製、アミコン攪拌式セルModel 18400)を用いた。
そして、分子量1万以下の分画液を得た。
「pH調整工程」
分画処理後の分画液に塩酸水溶液を加えることにより、pHを2.0に調整した。
「有機溶媒抽出工程」
pH調整した後の分画液と酢酸エチルとを分液ロート内に入れ、分液ロートを振ることにより、有機溶媒抽出工程を行った。
そして、酢酸エチル層を取り出し、酢酸エチルを揮発させ、固体状の粗抽出物を得た。斯かる粗抽出物を過冷却促進剤として得た。
なお、後述する「過冷却促進能(抗氷核活性能)の評価」においては、比較対照サンプルとして、有機溶媒抽出工程における水層から水を揮発させて取り除いた後の残渣を用いた。
【実施例】
【0069】
(実施例2)
実施例1で製造した過冷却促進剤を用いて、さらに、精製工程を行った。
「精製工程」
即ち、陰イオン交換クロマトグラフィー、及び、ゲルろ過クロマトグラフィーによって、精製工程を行った。
・陰イオン交換クロマトグラフィー
上記の粗抽出物40mgをTris-HCl緩衝液(10mM,pH8.0)50mlでメスアップして精製用溶液を得た。
この溶液50mlに対して、下記の条件下で、陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製処理を施した。
カラム:緩衝液で平衡化したDEAEカラム
(DEAE-TOYOPEARL650M,16mm×20cm,
東ソー社製)
流速:2.0ml/分
濃度勾配:20mMから1Mへ 酢酸アンモニウム
総溶出量:400ml
そして、酢酸アンモニウム濃度が0.4M付近(溶出量180ml付近)で溶出してくる画分を回収した。
・ゲルろ過クロマトグラフィー
陰イオン交換クロマトグラフィーで得られた画分に対して、下記条件のゲルろ過クロマトグラフィーを行うことによって、さらに精製処理を施した。
担体:セファデックスLH-20(GEヘルスケア社製)
溶出液:50容量%のメタノール
カラム:φ15mm×1000mm
流速:1.0ml/分
装置:フラッシュクロマトグラフSYS16020(東京理科器械株式会社製)
液量:300ml
そして、溶出液量100ml付近で溶出してくる3mlの画分を回収した。
【実施例】
【0070】
上記のようにして実施例1の液状の過冷却促進剤を製造した。
陰イオン交換クロマトグラフィーのチャートを図1に、ゲルろ過クロマトグラフィーのチャートを図2に示す。
【実施例】
【0071】
<過冷却促進剤に含まれる化合物の分析>
実施例2で製造した過冷却促進剤に含まれる化合物について、常法によって分子構造を解析した。
即ち、LC-MS、MS-MS、1H-NMRによって化合物を分析した。
各分析における条件は、下記の通りである。
LC-MS:分析機器-Applied Biosystems社製「API3000」
HPLC機器-Agilent社製「1100series」
移動相-アセトニトリル/水、流速1.0ml/min
カラムサイズ-4.6mm×150mm
MS-MS:大気圧化学イオン化-質量分析計(APCI-MSMS)
(分析機器-Applied Biosystems社製「API3000」)
(測定条件-移動相1%ギ酸超純水溶液と1%ギ酸アセトニトリル溶液を1:1で混合して1ml/mlの流速にて、Positive(M+1)で分析)
1H-NMR:分析機器 日本電子社製「JEOL EX-400」(399.65MHz, D2O)
LC-MSの結果を図3に、MS-MSの結果を図4に、1H-NMRの結果を図5に示す。
これらの結果から、実施例1及び実施例2の過冷却促進剤には、少なくとも、分子中に芳香族炭化水素構造とカルボキシ基とを有する化合物が含まれていることがわかった。また、実施例1及び実施例2における斯かる化合物は、組成式がC152627であり、分子量が346であることがわかった。
【実施例】
【0072】
(実施例3)
以下のようにして過冷却促進剤を製造した。
即ち、まず、インスタントコーヒー(Blendy AGF社製)4gを超純水200mlに溶解したもの(20mg/ml)を用意した。次に、1M HClによってpHを2.0に調製した。その後、分液ロートを用いて2倍容量の酢酸エチルによって有機溶媒抽出工程を行った。分画後の酢酸エチル層を回収し、エバポレーターを用いて濃縮乾固させることにより、固体状の過冷却促進剤を製造した。なお、過冷却促進剤の回収率は、1.5g(37.5%)であった。
実施例3の過冷却促進剤に含まれる化合物についても、上記と同様にして分子構造を解析した。その結果、実施例3の過冷却促進剤に含まれる化合物は、分子中に芳香族炭化水素構造とカルボキシ基とを少なくとも有することがわかった。
【実施例】
【0073】
<過冷却促進能(抗氷核活性能)の評価>
実施例1及び実施例3の過冷却促進剤に関して、下記の方法によって過冷却促進能を評価した。
【実施例】
【0074】
まず、粗抽出物(残渣)の固形分濃度が0.1mg/mL、0.5mg/mL、1.0mg/mL、5.0mg/mL、10.0mg/mLとなるように150mMのリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈し、さらに、希釈後の溶液をフィルター(ADVANTEC社製 Cellulose Acetate 0.2μm)でろ過した。ろ過後の水溶液をそれぞれ100μl用意した。
一方で、ヨウ化銀濃度が1mg/mlとなるように、150mMのリン酸緩衝液(pH7.0 KPB)にヨウ化銀を溶解させた水溶液を900μl用意した。
それぞれの評価用サンプルは、上記の2つの水溶液を混合することによって調製した。
なお、比較評価用サンプルとして、実施例1で得られた水層からの残渣を用いて、同様にして調製したものを用意した。また、ブランクサンプルは、150mMのリン酸緩衝液100μlと上記のヨウ化銀溶液とを混合したものを用いた。
過冷却促進能(抗氷核活性能)は、Valiの小滴凍結法によって測定した。詳しくは、Valiの小滴凍結法においては、コールドプレート冷却装置(COOLACE CCA-1000 EYELA社製)の銅版の上にアルミニウムのフィルムを置き、その表面に各評価用サンプル及びブランクサンプルを10μLずつ30箇所に滴下し、毎分1.0℃の速度で温度を低下させて、30個の小滴の50%が凍結する温度をT50とする。
各サンプルの上記小滴凍結時の温度をSampleT50とし、ブランクサンプルの上記小滴凍結時の温度をBlankT50とする。そして、抗氷核活性値ΔT50(℃)は、下記式によって求めた。
ΔT50(℃)=BlankT50-SampleT50
【実施例】
【0075】
実施例1の過冷却促進剤について評価した結果を図6に示す。実施例3の過冷却促進剤について評価した結果を図7に示す。なお、結果の値は、3回の試験結果の平均値である。
図6及び図7から把握されるように、実施例1の過冷却促進剤は、過冷却促進能(抗氷核活性能)において優れていた。
【実施例】
【0076】
実施例2の過冷却促進剤に関して、下記の方法によって過冷却促進能を評価した。
【実施例】
【0077】
<抗酸化性能の評価>
抗酸化性能の評価は、一般的に知られている、ジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル消去活性試験によって行った。
詳しくは、1.5ml容量サンプリングチューブに、超純水(250μl)、エタノール(300μl)、200mM MES水溶液(300μl)、実施例2の過冷却促進剤が固形分換算で所定濃度となるように調製した水溶液(50μl)、400μM DPPHエタノール溶液(300μl)を順次加えた。
そして、ボルテックスミキサーによって、内容物を撹拌した。その後、室温で暗所にて20分間静置した。その後、吸光度計を用いて、評価用サンプルを520nmの波長で吸光度を測定した。ブランクサンプルとしては、超純水(50μl)を使用した。
DPPHラジカル消去活性(%)は、下記の式によって算出した。
DPPHラジカル消去活性(%)={1-(A520/A’520)}×100
[A520=評価用サンプルの吸光度 A’520=ブランクサンプルの吸光度]
【実施例】
【0078】
抗酸化性能の評価結果を図8に示す。図8から把握されるように、実施例2の過冷却促進剤は、抗酸化性能に優れていた。
なお、実施例2の過冷却促進剤について、Trolox当量で抗酸化性能を評価したところ、6.72μmol TE/gであった(固形分換算)。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の過冷却促進剤は、例えば、加工食品分野、化粧品分野、医療分野などにおいて、該過冷却促進剤と水とを含む組成物の氷結を抑制する目的で好適に用いられる。同様に、本発明の抗凝固性組成物は、例えば、加工食品分野、化粧品分野、医療分野などにおいて、氷点下で液状組成物が氷結することを抑制させる目的で好適に用いられる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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