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明細書 :自走式移動装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6195301号 (P6195301)
公開番号 特開2015-093619 (P2015-093619A)
登録日 平成29年8月25日(2017.8.25)
発行日 平成29年9月13日(2017.9.13)
公開日 平成27年5月18日(2015.5.18)
発明の名称または考案の名称 自走式移動装置
国際特許分類 B61B   7/06        (2006.01)
FI B61B 7/06
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願2013-235182 (P2013-235182)
出願日 平成25年11月13日(2013.11.13)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 (1)平成25年5月22日に、「ロボティクス・メカトロニクス講演会2013」の要旨集(平成25年5月22日,第237頁,一般社団法人日本機械学会)にて発表 (2)平成24年5月24日に、「ロボティクス・メカトロニクス講演会2013」にてポスター講演により発表
審査請求日 平成28年11月14日(2016.11.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
発明者または考案者 【氏名】江上 正
【氏名】長島 祥
【氏名】長内 亜里紗
個別代理人の代理人 【識別番号】100098626、【弁理士】、【氏名又は名称】黒田 壽
審査官 【審査官】前原 義明
参考文献・文献 特開平10-248129(JP,A)
特開平5-139395(JP,A)
特開平7-067223(JP,A)
特開平5-146017(JP,A)
特開平11-113123(JP,A)
米国特許出願公開第2009/0001220(US,A1)
中国特許出願公開第102751669(CN,A)
中国特許出願公開第102522715(CN,A)
中国特許出願公開第101771251(CN,A)
欧州特許出願公開第1873535(EP,A1)
調査した分野 B61B 7/00
B61B 12/02
B66B 9/02
Scopus
特許請求の範囲 【請求項1】
細長い経路部材に沿って移動する自走式移動装置において、
所定の走行体回転軸を中心に回転可能な状態で前記経路部材に沿って走行する走行体と、
前記走行体上に配置されるフライホイールと、
前記フライホイールのホイール中心軸回りで該フライホイールを自転させるフライホイール駆動手段と、
所定の姿勢変更命令に従って、前記走行体回転軸及び前記ホイール中心軸を含む仮想平面と交差する方向へ延びる所定の回動軸を中心に該ホイール中心軸が回動するように、前記フライホイールの姿勢を変更させるフライホイール姿勢変更手段とを有することを特徴とする自走式移動装置。
【請求項2】
請求項1の自走式移動装置において、
前記走行体は、前記経路部材の長手方向中心軸を前記走行体回転軸とし、該経路部材の長手方向中心軸回りを回転可能な状態で該経路部材に沿って走行することを特徴とする自走式移動装置。
【請求項3】
請求項2の自走式移動装置において、
前記経路部材は、断面が略円形状の部材であることを特徴とする自走式移動装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自走式移動装置において、
前記フライホイールは、前記ホイール中心軸が前記走行体回転軸に対して直交する方向と略平行になるように配置され、
前記フライホイール姿勢変更手段は、前記姿勢変更命令に従って、前記走行体回転軸及び前記ホイール中心軸の何れにも略直交する方向へ延びる所定の回動軸を中心に該ホイール中心軸が回動するように、前記フライホイールの姿勢を変更させることを特徴とする自走式移動装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の自走式移動装置において、
前記フライホイールは、複数配置されており、
前記フライホイール姿勢変更手段は、前記姿勢変更命令に従って、各フライホイールのホイール中心軸が連動して回動するように各フライホイールの姿勢を変更させることを特徴とする自走式移動装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の自走式移動装置において、
前記経路部材の長手方向に対して直交する方向の撮像領域を撮像可能に配置された撮像手段を有することを特徴とする自走式移動装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤロープやベルトなどの細長い経路部材に沿って、鉛直方向、水平方向又はこれらの方向に傾斜する傾斜方向へ移動する自走式移動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自走式の移動装置としては、例えば、特許文献1に開示されている昇降装置などが挙げられる。自走式移動装置は、例えば、人や物を収容する籠体を鉛直方向に沿って又は鉛直方向に対して傾斜した方向に沿って移動させるエレベータ(昇降装置)、ロープウェイ、ケーブルカー、ゴンドラリフトなどに利用される。一般に、エレベータ等の移動装置としては、籠体には移動用の駆動装置を設けず、籠体を支持するロープ(ワイヤー)等の経路部材を駆動させることで籠体を移動させるロープ式(トラクション式)のものが広く利用されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2011-219267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロープ式の移動装置は、経路部材を駆動させる関係で、例えば移動距離が長いケース(例えば、地球上から静止軌道以上まで延びる経路部材に沿って移動する宇宙エレベータあるいは軌道エレベータとして使用するケース)においては、採用が困難である。これに対し、ロープ(ワイヤー)等の経路部材に沿って籠体(走行体)を走行させる自走式の移動装置は、籠体に設けられる移動用の駆動装置によって経路部材に沿って籠体が走行するので、経路部材を固定的に配置することが可能である。そのため、上述したロープ式の移動装置が不得手とする昇降距離の長いケースでも、採用が比較的容易である。
【0005】
このような自走式移動装置は、予め決められた経路を移動する簡易な手段であり、人や物を収容する籠体(走行体)を移動させるエレベータ等のほかにも、様々な分野での利用が期待されている。例えば、高層ビル等の外壁面に沿って走行体を移動させて清掃を行ったり損傷箇所を確認したりするメンテナンス装置、撮像手段を搭載した走行体を移動させながらスポーツ競技を撮像する移動式の撮像装置などへの利用が挙げられる。
【0006】
本発明者らの研究によれば、様々な分野で自走式移動装置を利用する上で、経路部材に沿って走行する走行体の向き(所定の走行体回転軸回りにおける走行体の回転角度)を制御できることが有利であるという知見が得られた。例えば、走行体に撮像手段を搭載して撮像する場合に走行体の向きを制御できれば、走行体の向きを変えて撮像手段の撮像方向を変更することができ、広い撮像範囲をカバーすることが可能となる。
【0007】
走行体の向きを制御する方法としては、例えば、走行体に可動フィンを設け、経路部材上を走行する際に可動フィンが受ける空気抵抗等を利用して、走行体の向きを変える方法が考えられる。しかしながら、この方法では、走行体の向きを目標方向に維持することが難しいという問題がある。また、例えば、経路部材を回転駆動させるなどして走行体の向きを変える方法も考えられる。しかしながら、この方法では、経路部材を固定的に配置できるという自走式移動装置の利点が損なわれるという問題がある。
【0008】
本発明は、以上の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、経路部材が固定的に配置されるものであっても、走行体の向きを目標方向に維持することが容易な自走式移動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、請求項1の発明は、細長い経路部材に沿って移動する自走式移動装置において、所定の走行体回転軸を中心に回転可能な状態で前記経路部材に沿って走行する走行体と、前記走行体上に配置されるフライホイールと、前記フライホイールのホイール中心軸回りで該フライホイールを自転させるフライホイール駆動手段と、所定の姿勢変更命令に従って、前記走行体回転軸及び前記ホイール中心軸を含む仮想平面と交差する方向へ延びる所定の回動軸を中心に該ホイール中心軸が回動するように、前記フライホイールの姿勢を変更させるフライホイール姿勢変更手段とを有することを特徴とするものである。
本発明は、ホイール中心軸を中心に自転するフライホイールのジャイロ効果を利用して、走行体の向き(所定の走行体回転軸回りにおける走行体の回転角度)を制御するものである。詳しくは、フライホイール姿勢変更手段によりフライホイールの姿勢が変更され、所定の回動軸を中心にフライホイールのホイール中心軸(自転軸)が回動すると、当該ホイール中心軸と当該所定の回動軸とに直交する軸回りにフライホイールを回動させるトルク(ジャイロモーメント)が生じる。本発明においては、当該所定の回動軸が、走行体が回転可能な走行体回転軸とホイール中心軸とを含む仮想平面と交差する方向へ延びているため、フライホイールの姿勢変更により生じるトルクは、走行体回転軸回りのトルク成分を有する。よって、フライホイール姿勢変更手段によりフライホイールの姿勢を変更することで、走行体回転軸回りに走行体を回転させて走行体の向きを変えることができる。その後、フライホイール姿勢変更手段によるホイール中心軸(自転軸)の所定の回動軸回りの回動を停止させ、フライホイールの姿勢を維持すると、自転するフライホイールの回転軸保存性により、ホイール中心軸の軸方向が保たれる効果が得られる。これにより、走行体回転軸回りの走行体の回転が停止して、走行体を変更後の向きで維持することができる。
このように、自転するフライホイールのジャイロ効果を利用して走行体の向きを制御する本発明によれば、経路部材が固定的に配置されるものであっても、走行体の向きを目標方向に維持することが容易に実現できる。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1の自走式移動装置において、前記走行体は、前記経路部材の長手方向中心軸を前記走行体回転軸とし、該経路部材の長手方向中心軸回りを回転可能な状態で該経路部材に沿って走行することを特徴とする。
経路部材の長手方向中心軸を走行体回転軸とする走行体は、経路部材の捩れにより経路部材の長手方向中心軸回りの回転が発生しやすく、走行体の向きを維持することが難しい。そのため、このような走行体においては、走行体の向きを目標方向に維持することが特に難しい。本発明によれば、自転するフライホイールの回転軸保存性により、走行体回転軸回りの走行体の回転が抑止される結果、そのような走行体であっても、走行体の向きを目標方向に維持することを容易に実現できる。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項2の自走式移動装置において、前記経路部材は、断面が略円形状の部材であることを特徴とする。
例えば、当該自走式移動装置を屋外環境で使用する場合、経路部材が風を受けて過大な張力が加わって経路部材が破断するなどのおそれがあり、経路部材としては、風の影響を受けにくい断面が略円形状の部材が用いられることが多い。経路部材として断面が略円形状の部材を用いると、経路部材の捩れによる経路部材の回りの走行体の回転は特に発生しやすい。本発明によれば、このような経路部材であっても、走行体の向きを目標方向に維持することを容易に実現できる。
【0012】
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自走式移動装置において、前記フライホイールは、前記ホイール中心軸が前記走行体回転軸に対して直交する方向と略平行になるように配置され、前記フライホイール姿勢変更手段は、前記姿勢変更命令に従って、前記走行体回転軸及び前記ホイール中心軸の何れにも略直交する方向へ延びる所定の回動軸を中心に該ホイール中心軸が回動するように、前記フライホイールの姿勢を変更させることを特徴とする。
本発明においては、走行体回転軸とホイール中心軸と所定の回動軸とが互いに直交する関係となる。そのため、フライホイール姿勢変更手段によるフライホイールの姿勢変更により所定の回動軸を中心にホイール中心軸が回動するときに生じるトルク(ジャイロモーメント)の軸は、走行体が回転可能な走行体回転軸に略一致する。よって、生じたトルクを、走行体の向きを変えるための力として効率的に利用することができる。その結果、フライホイールや駆動モータの軽量化、小型化を実現できる。
【0013】
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の自走式移動装置において、前記フライホイールは、複数配置されており、前記フライホイール姿勢変更手段は、前記姿勢変更命令に従って、各フライホイールのホイール中心軸が連動して回動するように各フライホイールの姿勢を変更させることを特徴とする。
走行体の重量バランスを考慮すると、フライホイールは走行体の中心付近に配置することが望ましい。しかしながら、走行体上に搭載される他の部品のレイアウトなどが理由で、フライホイールを走行体の中心付近に配置することが難しい場合が多い。本発明によれば、フライホイールを複数配置するため、フライホイールを走行体の中心付近に配置しなくても、走行体の重量バランスをとることが容易である。
【0014】
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の自走式移動装置において、前記経路部材の長手方向に対して直交する方向の撮像領域を撮像可能に配置された撮像手段を有することを特徴とする。
本発明によれば、走行体の向きを変えて撮像手段の撮像方向を変更することができ、広い撮像範囲をカバーできる移動式の撮像装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、経路部材が固定的に配置されるものであっても、走行体の向きを目標方向に維持することが容易な自走式移動装置を実現することができるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る昇降装置を示す斜視図である。
【図2】同昇降装置における走行体を示す斜視図である。
【図3】同走行体の従動ローラをZ軸方向から見たときの模式図である。
【図4】同昇降装置に搭載されるジャイロ装置を示す斜視図である。
【図5】(a)は、フライホイールの姿勢がホームポジション(基本姿勢)であるときのジャイロ装置をY軸方向から見たときの正面図である。(b)は、フライホイールの姿勢がホームポジションから変化した後のジャイロ装置をY軸方向から見たときの正面図である。
【図6】同昇降装置の姿勢制御に関わる制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る自走式移動装置を、経路部材であるワイヤーロープ上を移動する昇降装置に適用した一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る昇降装置1を示す斜視図である。
図2は、本昇降装置1における走行体2を示す斜視図である。
本昇降装置1は、所定の昇降経路に沿って配置される経路部材として、断面が略円形状の部材であるワイヤーロープ100を用い、このワイヤーロープ100に沿って移動して上昇及び下降が可能なものである。本実施形態においては、ワイヤーロープ100が鉛直方向に沿って配置された例であるが、鉛直方向に対して斜め方向に配置される場合でも、水平方向に配置される場合でもよい。ただし、鉛直方向以外では重量バランスを考慮する必要がある。

【0018】
本昇降装置1は、昇降距離が長いケースを想定したものであり、そのため、ワイヤーロープ100は強いテンションで張られている。このようなケースとしては、昇降装置を用いて高層ビルやタワーなどの清掃、検査等を行うケースや、地球上から静止軌道以上まで延びる昇降経路を昇降する宇宙エレベータあるいは軌道エレベータとして昇降装置を使用するケースなど、様々なケースが挙げられる。昇降装置1は、その用途に応じて、走行体2A,2B上に、清掃部材、撮像装置、籠体(ゲージ)などの各種部品が取り付けられるが、それらの部品についての説明は省略する。

【0019】
昇降装置1の走行体2は、第1走行体フレーム2Aと第2走行体フレーム2Bとから構成され、蝶番部材5によって図2に示すような展開状態にすることができる。走行体2には、ワイヤーロープ100を挟持する駆動回転体としての4つの駆動ローラ3A,3B,3C,3Dと従動回転体としての4つの従動ローラ4A,4B,4C,4Dとを備えた駆動装置が設けられている。駆動ローラ3A,3B,3C,3Dは、第1走行体フレーム2A側に設けられており、従動ローラ4A,4B,4C,4Dは、第2走行体フレーム2B側に設けられている。

【0020】
4つの駆動ローラ3A,3B,3C,3Dのうちの2つの駆動ローラ3A,3Bは、駆動源である図示しない1つの駆動モータからの駆動力を、動力伝達ベルト6Aを介して分配し、それぞれ回転駆動する。同様に、残りの2つの駆動ローラ3C,3Dは、別の駆動源である図示しない1つの駆動モータからの駆動力を、動力伝達ベルト6Bを介して分配し、それぞれ回転駆動する。従動ローラ4A,4B,4C,4Dは、それぞれ、駆動ローラ3A,3B,3C,3Dとの間にワイヤーロープ100を挟み込むように配置されている。各従動ローラ4A,4B,4C,4Dは、図3に示すように、それぞれ、スプリング7A,7B,7C,7Dによって駆動ローラ3A,3B,3C,3D側に付勢されており、その付勢力によって駆動ローラ3A,3B,3C,3Dとの間にワイヤーロープ100を挟持している。

【0021】
本実施形態における駆動ローラ3A,3B,3C,3D及び従動ローラ4A,4B,4C,4Dは、ワイヤーロープ100との接触面(ローラ外周面)が、ワイヤーロープ100の断面形状(断面円形状)に沿って湾曲している。これにより、ワイヤーロープ100の周面と駆動ローラ3A,3B,3C,3D及び従動ローラ4A,4B,4C,4Dとの接触面積を増やし、高い摩擦力を確保して、滑りの発生を抑制している。

【0022】
また、第2走行体フレーム2Bには、走行方向前方部と後方部にそれぞれガイド部8A,8Bが設けられている。これらのガイド部8A,8Bは、ワイヤーロープ100を3面でガイドしており、これにより、駆動ローラ3A,3B,3C,3D及び従動ローラ4A,4B,4C,4Dによる挟持部へワイヤーロープ100が適正に送り込まれるようにガイドされる。また、昇降装置1には、各種制御を行う電気回路基板や電源等も適宜設けられる。

【0023】
次に、本実施形態の昇降装置1に搭載されているジャイロ装置の構成について説明する。
図4は、昇降装置1に搭載されるジャイロ装置10を示す斜視図である。
図5(a)は、2つのフライホイール11A,11Bの姿勢がホームポジション(基本姿勢)であるときのジャイロ装置10をY軸方向から見たときの正面図である。
図5(b)は、2つのフライホイール11A,11Bの姿勢がホームポジションから変化した後のジャイロ装置10をY軸方向から見たときの正面図である。
本実施形態のジャイロ装置10は、図1に示したように、走行体2の走行方向前方部に取り付けられているが、走行体2の走行方向中央部や後方部に取り付けてもよい。また、本実施形態におけるジャイロ装置10には、それぞれホイールケースに収納された状態の2つのフライホイール11A,11Bが設けられている。2つのフライホイール11A,11Bの自転軸であるホイール中心軸Oxに沿って延びる各ホイール軸部には、フライホイール駆動手段としてのホイール駆動モータ12A,12Bが個別に接続されている。各ホイール駆動モータ12A,12Bは互いに同期して駆動し、各ホイール駆動モータ12A,12Bの駆動力により、各フライホイール11A,11Bはそのホイール中心軸Oxを中心に回転駆動(自転)する。

【0024】
各フライホイール11A,11Bは、図4や図5(a)に示すようなホームポジション(基本姿勢)に姿勢が維持されているときには、そのホイール中心軸Oxが互いに同軸となるように、かつ、そのホイール中心軸Oxがワイヤーロープ100の長手方向中心軸Ozに対して直交する方向に延びるように、ホイール支持機構13に支持されている。

【0025】
ホイール支持機構13は、各フライホイール11A,11Bのホイール中心軸方向外側でそのホイール中心軸Oxに沿って延びるホイール軸部を回転可能に支持する外側支持アーム13aと、各フライホイール11A,11Bのホイール中心軸方向内側でそのホイール中心軸Oxに沿って延びるホイール軸部を回転可能に支持する内側支持アーム13bと、各外側支持アーム13a及び各内側支持アーム13bの両端を互いに連結する連結アーム13cとを備えている。各ホイール駆動モータ12A,12Bは、各内側支持アーム13bにそれぞれ固定支持されている。

【0026】
各連結アーム13cは、回動軸Oyに沿って延びる回動軸部を備えている。各連結アーム13cの回動軸部は、その回動軸方向外側から、コの字状の2つの回動軸支持アーム13eの各端部に対して回動可能に取り付けられている。2つの回動軸支持アーム13eは、第2走行体フレーム2Bにホイール支持機構13を固定するための固定フレーム13dに取り付けられている。このようなホイール支持機構13の構成により、連結アーム13c並びにこれによって連結される外側支持アーム13a及び内側支持アーム13bは、回動軸Oyを中心に回動可能である。したがって、外側支持アーム13a及び内側支持アーム13bによって保持されている2つのフライホイール11A,11Bは、回動軸Oyを中心に回動可能な状態で、ホイール支持機構13に支持される。

【0027】
また、本実施形態におけるジャイロ装置10には、回動軸Oyを中心に2つのフライホイール11A,11Bを回動させるためのホイール回動機構14が設けられている。ホイール回動機構14は、回動軸Oyの一端側(図4中紙面手前側)に位置する2つの連結アーム13c上の突出部13f間を連結するスライドシャフト14aを備えている。このスライドシャフト14aの長手方向各端部は、当該2つの連結アーム13c上の突出部13fに対し、回動軸Oyと平行な軸回りに回転可能な状態で連結されている。また、ホイール回動機構14は、ホイール姿勢制御モータ14bを備えており、そのホイール姿勢制御モータ14bのモータ軸には、回動アーム14cが固定されている。回動アーム14cの端部は、スライドシャフト14aの中央部に対し、回動軸Oyと平行な軸回りに回転可能な状態で連結されている。

【0028】
ホイール姿勢制御モータ14bは、制御手段としての制御部20からの回転角度指令に従ってモータ軸の回転角度を制御できるものであり、例えばステッピングモータで構成することができる。ホイール姿勢制御モータ14bのモータ軸の回転角度を変更すると、そのモータ軸に固定された回動アーム14cがモータ軸を中心に回動し、これによりスライドシャフト14aの中央部がモータ軸回りで回動する。このとき、スライドシャフト14aの長手方向各端部は、ホイール支持機構13における2つの連結アーム13cの突出部13fに取り付けられている。そのため、スライドシャフト14aは、その長手方向中央軸の軸方向を保持しながら、モータ軸を中心に回動する動きを示す。このようなスライドシャフト14aの動きに連動して、スライドシャフト14aの各端部に取り付けられた2つの連結アーム13cは、回動軸Oyを中心に回動する。その結果、当該2つの連結アーム13cに固定されている外側支持アーム13a及び内側支持アーム13bに保持されている各フライホイール11A,11Bが、回動軸Oyを中心に回動する。これにより、図5(b)に示すように、2つのフライホイール11A,11Bのホイール中心軸Oxが回動軸Oy回りを回動するように、2つのフライホイール11A,11Bの姿勢が変更される。

【0029】
以上のように、本実施形態では、ホイール支持機構13、ホイール回動機構14及び制御部20によって、フライホイール姿勢変更手段が構成されている。

【0030】
次に、昇降装置1の姿勢制御について説明する。
図6は、昇降装置1の姿勢制御に関わる制御ブロック図である。
制御部20には、昇降装置1における走行体2の姿勢変更を指示する姿勢変更命令が、外部装置から入力される。この外部装置は、例えば、当該走行体2上に搭載されている上位制御装置(昇降装置1の姿勢制御プログラムを実行するCPU等で構成される制御装置等)や、昇降装置1の操作を担当する操作オペレータが操作する外部コンピュータなどが挙げられる。

【0031】
姿勢変更命令が制御部20に入力されると、制御部20は、当該姿勢変更命令から、ワイヤーロープ100の長手方向中心軸Oz(走行体回転軸)回りにおける走行体2の目標回転角度を把握する。そして、制御部20は、ワイヤーロープ100の長手方向中心軸Oz回りの走行体2の回転角度を当該目標回転角度とするための回転角度指令を、ホイール姿勢制御モータ14bへ出力する。これにより、ホイール姿勢制御モータ14bは、そのモータ軸の回転角度がその回転角度指令に従った回転角度となるように駆動する。その結果、例えば、図5(a)に示すホームポジションの姿勢から図5(b)に示す姿勢へ、2つのフライホイール11A,11Bの姿勢が変更される。

【0032】
このように、2つのフライホイール11A,11Bのホイール中心軸Oxが回動軸Oy回りに回動すると、ホイール中心軸Oxを中心に自転している2つのフライホイール11A,11Bのジャイロ効果により、ワイヤーロープ100の長手方向中心軸Oz回りに走行体2を回転させるトルクが発生する。詳しくは、2つのフライホイール11A,11Bの姿勢が変更され、各フライホイール11A,11Bのホイール中心軸Oxがそれぞれ回動軸Oyを中心に回動すると、ホイール中心軸Oxと回動軸Oyとに直交する軸回りに、各フライホイール11A,11Bを回動させるトルク(ジャイロモーメント)が生じる。このトルクにより、走行体2は、ワイヤーロープ100の長手方向中心軸Oz回りに回動し、走行体2の向きを変えることができる。

【0033】
このようにして走行体2の向きが変わると、走行体2上に搭載されている姿勢検知手段としてのジャイロセンサ21が、ワイヤーロープ100の長手方向中心軸Oz回りにおける走行体2の回転角度を検知する。その検知結果は、制御部20へ送られる。そして、制御部20は、その検知結果に基づく回転角度が姿勢変更命令に係る目標回転角度に近づくように回転角度指令を出力して、ホイール姿勢制御モータ14bを制御する。このようなフィードバック制御を実行することにより、ワイヤーロープ100の長手方向中心軸Oz回りにおける走行体2の回転角度が姿勢変更命令に係る目標回転角度となるように、走行体2の向きを変えることができる。

【0034】
検知結果に基づく回転角度が目標回転角度に達すると、制御部20は、ホイール姿勢制御モータ14bのモータ軸の回転角度を維持させるように制御する。これにより、フライホイール11A,11Bの回動軸Oy回りの回動が停止して、フライホイールの姿勢が静止状態になる。これにより、ホイール中心軸Oxを中心に自転している2つのフライホイール11A,11Bの回転軸保存性によって、ホイール中心軸Oxの軸方向を保つ効果が得られる。これにより、ワイヤーロープ100の長手方向中心軸Oz回りにおける走行体2の回転が目標回転角度となったときに停止し、走行体2の向きは、その目標回転角度で維持される。

【0035】
なお、本実施形態の昇降装置1は、断面が円形状であるワイヤーロープ100を鉛直方向に延ばした経路部材とした自走式移動装置の例であるが、ベルト状等の他の形状の経路部材や、水平方向あるいは鉛直方向に対して傾斜方向する方向に延ばした経路部材などに対応する自走式移動装置であってもよい。
また、本実施形態の昇降装置1におけるジャイロ装置10は、フライホイールを2つ備えた例であるが、フライホイールの数には特に制限はなく、フライホイールを1つだけ備えたものでも、3以上のフライホイールを備えたものでもよい。ただし、走行体2の安定した走行を実現する上では、ワイヤーロープ100等の経路部材に対する走行体2の重量バランスがとれるようにフライホールを配置することが好ましい。

【0036】
また、本実施形態の昇降装置1は、ジャイロ装置10のジャイロ効果によって回転する走行体2の回転軸がワイヤーロープ100の長手方向中心軸Ozと一致している例であるが、これらが一致していない構成であってもよい。例えば、水平方向に延ばした経路部材にぶら下がるようにして走行体が経路部材に沿って走行するような自走式移動装置においては、走行体の回転軸は鉛直方向に平行な方向となり、走行体の回転軸が経路部材の長手方向中心軸とは一致しないが、このような構成であっても同様である。
また、本実施形態においては、ホイール中心軸Oxと回動軸Oyとが互いに直交する配置関係であるが、必ずしもこの配置関係に限らず、ホイール中心軸Oxとワイヤーロープの長手方向中心軸Ozとを含む仮想平面に対して回動軸Oyが交差する関係であればよい。
【符号の説明】
【0037】
1 昇降装置
2 走行体
2A 第1走行体フレーム
2B 第2走行体フレーム
3A,3B,3C,3D 駆動ローラ
4A,4B,4C,4D 従動ローラ
6A,6B 動力伝達ベルト
7A,7B,7C,7D スプリング
8A,8B ガイド部
10 ジャイロ装置
11A,11B フライホイール
12A,12B ホイール駆動モータ
13 ホイール支持機構
13a 外側支持アーム
13b 内側支持アーム
13c 連結アーム
13d 固定フレーム
13e 回動軸支持アーム
13f 突出部
14 ホイール回動機構
14a スライドシャフト
14b ホイール姿勢制御モータ
14c 回動アーム
20 制御部
21 ジャイロセンサ
100 ワイヤーロープ
Ox ホイール中心軸
Oy 回動軸
Oz ワイヤーロープの長手方向中心軸
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
4
【図6】
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