TOP > 国内特許検索 > ルシフェラーゼの発光基質 > 明細書

明細書 :ルシフェラーゼの発光基質

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6049019号 (P6049019)
登録日 平成28年12月2日(2016.12.2)
発行日 平成28年12月27日(2016.12.27)
発明の名称または考案の名称 ルシフェラーゼの発光基質
国際特許分類 C07D 277/12        (2006.01)
C07D 277/66        (2006.01)
C12Q   1/26        (2006.01)
G01N  21/76        (2006.01)
FI C07D 277/12 CSP
C07D 277/66
C12Q 1/26
G01N 21/76
請求項の数または発明の数 9
全頁数 27
出願番号 特願2013-530040 (P2013-530040)
出願日 平成24年8月22日(2012.8.22)
国際出願番号 PCT/JP2012/071207
国際公開番号 WO2013/027770
国際公開日 平成25年2月28日(2013.2.28)
優先権出願番号 2011182224
優先日 平成23年8月24日(2011.8.24)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年6月9日(2015.6.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
発明者または考案者 【氏名】西山 繁
【氏名】斉藤 毅
【氏名】牧 昌次郎
【氏名】丹羽 治樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100147485、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 憲司
【識別番号】100119530、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 和幸
審査官 【審査官】伊佐地 公美
参考文献・文献 特開2007-091695(JP,A)
特開2010-215795(JP,A)
特開2010-180191(JP,A)
特表2008-545746(JP,A)
特開2009-184932(JP,A)
TAKAKURA, H. et al.,Development of 5'- and 7'-Substituted Luciferin Analogues as Acid-Tolerant Substrates of Firefly Luciferase,ChemBioChem,2012年,Vol. 13, No. 10,pp. 1424-1427
調査した分野 C07D
C12Q
G01N
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の一般式を有する化合物またはその塩:
【化1】
JP0006049019B2_000041t.gif
式中、
Zは、
【化2】
JP0006049019B2_000042t.gif
であり、
1は、HまたはC1-4アルキルであり、
4は、OHまたはNH2であり、
nは、0、1、2または3である。
【請求項2】
1は、Hであり、R4は、OHである、請求項1に記載の化合物またはその塩。
【請求項3】
Zは、
【化3】
JP0006049019B2_000043t.gif
である、請求項2に記載の化合物またはその塩。
【請求項4】
Zは、
【化4】
JP0006049019B2_000044t.gif
である、請求項2に記載の化合物またはその塩。
【請求項5】
Zは、
【化5】
JP0006049019B2_000045t.gif
である、請求項1または2に記載の化合物またはその塩。
【請求項6】
Zは、
【化6】
JP0006049019B2_000046t.gif
である、請求項2に記載の化合物またはその塩。
【請求項7】
Zは、
【化7】
JP0006049019B2_000047t.gif
であり、nは、0である、請求項1または2に記載の化合物またはその塩。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物を含む、ルシフェラーゼの発光基質。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物を含む、発光検出キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ルシフェリン類似体に関する。より詳細には、本発明は、ルシフェラーゼによる発光波長が長波長側にシフトするよう修飾されたルシフェリン類似体に関する。
【背景技術】
【0002】
<ホタルルシフェリンについて>
近年、生物学的事象および現象の可視化が重要視され、可視化のための材料の拡大が望まれてきている。これに伴い、標識技術にも多様化が求められている。特に分子イメージングのための標識技術は、診断および検査機器の進歩と相まって大きく発展している。たとえば、癌や心疾患などに対する個別化医療などの先端技術に応用するための標識技術が精力的に研究されている。また、計測技術の進歩に伴い、より高感度および高性能な機器や標識材料に対する需要が急速に高まっている。
【0003】
可視化技術の中で、ホタル生物発光系は、発光効率が非常に高く、最も効率よくエネルギーを光に変換することができる系といわれている。また、生物発光の分子機構解釈も進んでいる。
【0004】
このホタル生物発光は、発光基質であるルシフェリンが発光酵素ルシフェラーゼの作用で化学反応することによって光を放出することが知られている。この反応では、発光基質が発光酵素内でアデノシン三リン酸(ATP)および2価のマグネシウムイオン(Mg2+)の存在下で、アデニリル化(AMP化)されて、活性型基質であるアデニリル体へと誘導される。次に、これが酸素化されてペルオキシドアニオンとなり、高エネルギー過酸化物であるジオキセタノンへと変換される。不安定なジオキセタノンは、分解しながらプロトンと二酸化炭素とを放出し、励起1重項状態となる。このジアニオン型励起1重項状態からの発光は、黄緑色であり、これがホタルの発光であるとされている。また、発光後の生成物は、オキシルシフェリンと称される。
【0005】
上記のように、ホタル生物発光は、発光効率が非常に高く、また生物発光の分子機構の解明が進んでいるため、ホタル生物発光系を利用した多岐にわたる発光材料が多くの企業から販売されている。しかし、ホタル生物発光関連の発光材料開発は、医学生化学的分野を中心に実用化が進んでいるため、一般にタンパク質(酵素)側からの研究開発は盛んであるが、低分子化合物(基質)側からのアプローチは非常に少ない。特に、発光基質の骨格変換を行ったような構造と活性の相関研究はほとんど存在しない。
【0006】
さらに、発光酵素は組換え技術によって安価に供給できるにもかかわらず、キット製品などで供給されているホタル生物発光系を応用した発光標識材料は安価ではない。これは、発光基質がルシフェリンであることに起因する。現在、天然の発光基質であるD体のルシフェリンは、非天然アミノ酸であるD-システインから合成されているが、D-システインは、非常に高価である。
【0007】
<生物発光系を利用した長波長発光のニーズと状況>
多現象を観測するために、標識を利用した検出系においても、多色発光が求められている。このため、検出系に利用できる標識材料の波長域は、幅広い方が望ましい。たとえば、多色発光を利用した研究には、標識として450nm程度~650nm以上の波長、特に680nm以上において発光を有する標識材料が準備されることが望ましい。また、生体内深部標識における用途では、短波長光よりも長波長光のほうが優れた光透過性を有するという観点から、赤色発光標識材料が望まれている。特に、生体組織の光計測には、波長が650~900nmの近赤外光が使用されている。可視光(400~700nm)は、ヘモグロビンやそのほかの生体構成物質の吸収が大きく、また近赤外光よりも長い波長では、水の吸収が大きくなるため、生体内を光が進むことができない。これに対して近赤外線の波長の領域は生体を透過しやすいため、「生体の窓」とも呼ばれている。
【0008】
上記のように、ホタル生物発光は、ルシフェリンとルシフェラーゼが化学反応することで生じる。これを利用して、たとえば、標的臓器にあらかじめ発光酵素をつくるように遺伝子組み換えを行っておき、その後に個体にルシフェリンを静注するか、腹腔内投与することによって全身に巡らせると、発光酵素を発現している標的臓器が発光する。また、標的臓器に癌を移植しておけば、癌の可視化、標的臓器が他生物の臓器であれば再生医療の基礎研究として利用することができる。特に、生体の窓領域に発光する長波長材料であれば、生体内透過性が高く、生体外から観測しやすくなると考えられる。
【0009】
現在、ホタル生物発光系のための発光基質として入手可能なものには、いくつかの発光波長をもつ基質が存在する。これらの基質の最短および最長の両端の波長として、セレンテラジン系の青色(約480nm)とホタル系の赤色(約613nm)が挙げられる。また、鉄道虫発光酵素を利用した、より長波長の赤色発光材料(約630nm)が、最近市販されている。しかし、長波長光のほうが優れた光透過性を有することから、これらの発光波長だけでなく、発光波長の最長の波長のさらなる拡張には、潜在的需要が見込まれる。
【0010】
生物発光系を利用した赤色と青色発光の既存製品の例を以下に示す:
1.プロメガ株式会社:Chroma-Luc:約613nm(非特許文献1)
この系は、ヒカリコメツキ虫(クリックビートル)の突然変異体および天然型ホタル発光基質を利用した系である。
2.東洋紡績株式会社:MultiReporter Assay System-Tripluc:約630nm(非特許文献2)
この系は、鉄道虫赤色発光酵素および天然型ホタル発光基質を利用した系である。緑色発光ルシフェラーゼ(SLG、最大発光波長550nm)、橙色発光ルシフェラーゼ(SLO、580nm)および赤色発光ルシフェラーゼ(SLR、630nm)の色のルシフェラーゼ遺伝子を使用して発光色を変化させている。これは、異なる発光色を与える発光酵素を利用している。
3.東京大学:アミノルシフェリン:約610nm(特許文献1)
これは、ルシフェリン誘導体を開示している。
4.プロメガ株式会社:Chroma-Luc: 約480nm(非特許文献3)
この系は、セレンテラジンおよびウミシイタケルシフェラーゼを利用した系である。
5.アトー株式会社:ウミホタル生物発光 約460nm(非特許文献4)
セレンテラジン系基質およびウミホタルルシフェラーゼを利用した系である。
【0011】
また、本発明者らも、特許文献2において、ルシフェリン類似化合物を開示している。これらの化合物は、ルシフェリンと同様の骨格を有する化合物である。
さらに、本発明者らは、特許文献4において、ルシフェリンとは異なる骨格を有するルシフェリン類似化合物が、様々な発光波長を有することを開示している。これらのルシフェリン類似化合物においても、さらに発光波長を長波長側にシフトさせることが望まれる。
【0012】

【特許文献1】特開2007-091695号公報
【特許文献2】国際公開公報第2007/116687号
【特許文献3】特開2006-219381号公報
【特許文献4】特開2010-215795号公報
【非特許文献1】プロメガ株式会社総合カタログ2008-9 12.6
【非特許文献2】Upload vol. 79, 2005 p 1-10, Toyobo Biochemicals for Lifescience 2006/2007 p4-67.
【非特許文献3】プロメガ株式会社総合カタログ2008-9 12.14
【非特許文献4】アトー株式会社総合カタログ2008-2009 p 247
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記した状況に鑑み、本発明は、ホタル生物発光系における発光波長が、従来の発光基質と比較してより長波長側へシフトした新規発光基質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明者らは、ルシフェリンに類似する構造を有する発光基質の類似体群を作製し、その発光波長の解析を行った。その結果、ルシフェリンおよびルシフェリン類似体の構造において、特定の位置に修飾を有することにより、発光波長が長波長側にシフトすることを見いだした。
【0015】
本発明は、以下の一般式を有する化合物またはその塩を提供する:
【化1】
JP0006049019B2_000002t.gif
式中、
Zは、
【化2】
JP0006049019B2_000003t.gif
であり、
1は、HまたはC1-4アルキルであり、
4は、OHまたはNH2であり、
nは、0、1、2または3である。
【0016】
また、本発明は、R1、Hであり、R4は、OHである、上記化合物またはその塩を提供する。
【0017】
さらに、本発明は、上記記載の化合物を含む、ルシフェラーゼの発光基質を提供する。
【0018】
さらに、本発明は、記載の化合物を含む、発光検出キットを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、発光活性を損なわずに修飾されたルシフェリンおよびルシフェリン類似体が提供される。特に、本発明により、ホタル生物発光系における発光波長が、従来の発光基質と比較して、より長波長側へシフトした新規発光基質が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の修飾されたホタルルシフェリンの発光波長を示す図。
【図2】本発明の修飾されたホタルルシフェリン類似体の発光波長を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、発光活性を有するルシフェリン類似体が提供される。本明細書において、ルシフェリン類似体とは、ルシフェラーゼまたはルシフェラーゼ改変体と反応することによって発光を生じる物質をいう。ルシフェラーゼ改変体は、ルシフェラーゼの遺伝子を改変等することによって、その基質特性およびその発光波長が変化されたルシフェラーゼタンパク質をいう。

【0022】
本発明は、以下の一般式を有する化合物またはその塩を提供する:
【化3】
JP0006049019B2_000004t.gif
式中、
Zは、
【化4】
JP0006049019B2_000005t.gif
であり、
1は、HまたはC1-4アルキルであり、
4は、OHまたはNH2であり、
nは、0、1、2または3である。特に、上記化合物において、R1、Hであり、R4は、OHであることができる。

【0023】
また、上記化合物において、ベンゼン環においてマーカッシュ表記された化合物は、結合部位が任意であることを示しているが、本発明の化合物において、Zは、以下の化合物であることができる:
【化5】
JP0006049019B2_000006t.gif
式中、R4は、OHまたはNH2である。

【0024】
具体的態様において、本発明は、ベンゾチアゾール部分の7位がアリル基で修飾されたホタルルシフェリン類似体を提供する。本明細書において、ルシフェリンは、以下の構造を有する。

【0025】
【化6】
JP0006049019B2_000007t.gif

【0026】
修飾は、ホタルルシフェリン類似体に対して行ってもよい。本明細書において、修飾とは、任意の化合物に対して任意の基を結合させることをいう。修飾部位は、ベンゾチアゾール部分の7位に対応する部位であることができる。たとえば、以下の一般式Iを有する化合物であることができる:

【0027】
【化7】
JP0006049019B2_000008t.gif
式中、
1は、HまたはC1-4アルキルであり、
は、Nであり、Yは、Sである

【0028】
本明細書において、「C1-4アルキル」という用語は、1~4炭素原子を含む飽和直鎖状または分枝鎖アルキル基、たとえばメチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチルをいう。同様に、「C-Cアルキル」という用語は、1~3炭素原子を含む飽和直鎖状または分枝鎖アルキル基(たとえば、メチル、エチルまたはイソ-プロピル)をいう。

【0029】
上記のように、RがC1-4アルキルであってもよいことは、当業者であれば容易に想到することができるであろう。たとえば、本発明者らによる上記特許文献2には、本発明の化合物のR部分に対応する部分がAMPであるルシフェリン類似化合物が、ホタル生物発光系の基質となり得る結果が示されている。したがって、置換としてのこのような低級アルキルは、活性に影響を及ぼす可能性が低いと考えられる。

【0031】
一つの態様において、本発明は、一般式IにおいてRは、Hであり、Xは、Nであり、Yは、Sである、以下の化合物を提供する:

【0032】
【化8】
JP0006049019B2_000009t.gif

【0033】
上記の式を有する化合物は、ホタルルシフェラーゼとの反応により、およそ605nmの発光波長にて発光する。

【0034】
もう一つの具体的態様において、本発明は、以下の一般式IIを有する化合物を提供する:

【0035】
【化9】
JP0006049019B2_000010t.gif
式中、
1は、HまたはC1-4アルキルであり、
は、Nであり、Yは、であり、
nは、0、1、2または3である。

【0036】
上記のように、一般式IIにおいて、R1がC1-4アルキルであってもよいことは、当業者であれば容易に想到することができるであろう。

【0038】
上記のように、一般式IIにおいて、「n」として表されたオレフィン鎖単位は、所望の長さに変更することができることは、当業者であれば容易に想到することができるであろう。

【0039】
一つの具体的態様において、本発明は、一般式IIにおいてR1は、Hであり、Xは、Nであり、Yは、Sであり、かつnは、1である、以下の化合物を提供する:

【0040】
【化10】
JP0006049019B2_000011t.gif

【0041】
上記の式を有する化合物は、ホタルルシフェラーゼとの反応により、およそ690nmの発光波長にて発光する。

【0049】
本発明において、修飾されたルシフェリンおよびルシフェリン類似体には、その塩が含まれる。「塩」とは、本発明の化合物において、該化合物のいずれかの部分が塩基を形成することができる場合にのみ想定される。

【0050】
「塩」という表現には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸、亜燐酸、亜硝酸、クエン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、乳酸、酒石酸、フマル酸、安息香酸、マンデル酸、ケイ皮酸、パモ酸、ステアリン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、コハク酸、トリフルオロ酢酸および生きた生物に対して非中毒性であるその他のような無機酸または有機酸とのいずれかの塩、または式Iの化合物の性質が酸性である場合、アルカリまたはアルカリ土類塩基、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムその他のような無機塩基との塩も包含する。

【0051】
本発明の修飾されたルシフェリンおよびルシフェリン類似体は、たとえば以下の実施例に記載した手順に従って製造することができる。より詳細な手順は、下記の実施例に記載してあるが、一般式Iの化合物は、たとえば以下の手順に従って製造することができる。

【0052】
【化11】
JP0006049019B2_000012t.gif

【0053】
簡潔には、市販の2-シアノ-6-メトキシベンゾチアゾールの脱メトキシにより得られる2-シアノ-6-ヒドロキキシベンゾチアゾールの水酸基をアリル化し、クライゼン転移により7位にアリル基を導入して2-シアノ-7-アリル6-ヒドロキシベンゾチアゾール4を得る。続いて、D-システインをメタノール中炭酸カリウム存在か室温で反応させ、塩酸で中和することで、7-アリルホタルルシフェリン5を得る。

【0054】
より具体的には、開始物質として2-シアノ-6-メトキシベンゾチアゾールを使用し、ピリジン塩酸塩と反応させて、2-シアノ-6-ヒドロキシベンゾチアゾールを得る。次いで、2‐シアノ‐6‐ヒドロキシベンゾチアゾールを臭化アリルと反応させて、6‐アリルオキシ‐ベンゾチアゾール‐2-カルボニトリルを得る。

【0055】
得られた6‐アリルオキシ‐ベンゾチアゾール‐2-カルボニトリルをアルゴン雰囲気下180℃にて加熱融解して反応混合物を放冷した後、7‐アリル-6-ヒドロキシベンゾチアゾール‐2-カルボニトリルを得る。次いで、7‐アリル-6-ヒドロキシベンゾチアゾール‐2-カルボニトリルをアルゴン雰囲気下、180℃で加熱融解し、7-アリル-6-ヒドロキシベンゾチアゾール-2-カルボニトリルを得る。次いで、2-シアノ-7-アリル-6-ヒドロキシベンゾチアゾールおよびD-システイン塩酸塩一水和物をメタノール:蒸留水に溶解し、アルゴン雰囲気下、炭酸カリウムを加えることにより、7-アリル-ホタルルシフェリを得ることができる。

【0056】
また、下記の一般式の化合物:

【0057】
【化12】
JP0006049019B2_000013t.gif
は、たとえば以下の手順に従って製造することができる:

【0058】
【化13】
JP0006049019B2_000014t.gif

【0059】
市販の2-クロロベンゾチアゾールに濃硫酸中氷冷下硝酸カリウムを加えてニトロ化し、生成した2-クロロ6-ニトロベンゾチアゾールを塩酸中で錫と反応させることでニトロ基をアミノ基に還元して、2-クロロ6-アミノベンゾチアゾールと誘導する。これに、DMSO溶媒中、アルゴン雰囲気下でシアン化カリウムを加え、一晩加熱還流させることで2-シアノ6-アミノベンゾチアゾールとする。DMF溶媒中で臭化アリルと炭酸カリウムを反応させ、アミノ基をアリル化し、アザクライゼン転移により7位にアリル基を導入する。メタノール中炭酸カリウムとシステインを加え撹拌し、塩酸で中性にすることで、7-アリルーアミノルシフェリン型化合物を得ることができる。

【0060】
当業者であれば、上記一般式Iの化合物の置換基を所望の置換基と置き換えた開始物質から開始して、上記合成手順と同様の手順によって対応する化合物を合成することができることを理解するであろう。また、当業者であれば、上記合成手順の適切な工程において、化合物の置換基を所望の置換基に置換することもできることを理解するであろう。また、最後の工程において、カルボン酸部分を所望のエステルに置換することにより、対応するR1を有する化合物を得ることができるであろう。

【0061】
また、詳細な手順は、下記の実施例に記載してあるが、一般式IIの化合物は、たとえば以下の手順に従って製造することができる:

【0062】
【化14】
JP0006049019B2_000015t.gif

【0063】
簡潔には、市販のヒドロキシナフトエ酸11のジアリル化によりジアリル体12を得る。クライゼン転移により芳香環にアリル基を導入し、DIBAL-Hによりエステル部をヒドロキシメチレンに還元して14を得る。酸化とwittig反応による増炭で化合物15を得る。同様に還元と増炭を繰り返すことで、二重結合部位を所望の数に増やすことができる。エステル部位を加水分解してカルボキシル基とし、D-システイン誘導体とアミド結合させ、環化して化合物20を得る。エステラーゼやリパーゼを用いてエステル部位を加水分解して化合物IIを得ることができる。

【0064】
より具体的には、2-ナフトエ酸をアセトンに溶解し、氷冷下にて炭酸カリウムおよび臭化アリルと反応させて、化合物2を得る。化合物2を200℃にて加熱して、化合物3を得る。次いで、化合物3をテトラヒドロフランに溶解させ、室温にて塩化t-ブチルジメチルシリルおよびトリエチルアミンと反応させて、さらに-78℃にて水素化ジイソブチルアルミニウムと反応させて、化合物14を得る。

【0065】
次いで、化合物14をジクロロメタンに溶解し、室温にて酸化マンガと反応させて、さらに生成物をベンゼンに溶解させ、室温にて(カルボメトキシメチレン)トリフェニルホスホランと反応させて、化合物15を得る。次いで、化合物15をイソプロピルアルコールに溶解させ、1M水酸化ナトリウム水溶液と反応させて、化合物16を得る。

【0066】
一方、D-システイン-S-トリチル化合物をメタノールに溶解させ、4N塩化水素の1,4-ジオキサン溶液都反応させて、化合物18を得る。

【0067】
次いで、化合物16と化合物18をピリジンに溶解し、塩酸1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドおよび1-ヒドロキシベンゾトリアゾールと反応させて、化合物19を得る。次いで、化合物19をジクロロメタンに溶解し、0℃にてトリフェニルホスフィンオキシドおよび無水トリフルオロメタンスルホン酸と反応させて、化合物20を得る。

【0068】
最後に、化合物20をテトラヒドロフラン、エタノールおよび10m炭酸アンモニウム水溶液に溶解し、40℃にてブタ膵臓リパーゼと反応させて、化合物21を得る。

【0069】
また、下記の一般式の化合物:

【0070】
【化15】
JP0006049019B2_000016t.gif
は、たとえば以下の手順に従って製造することができる。市販の6-アミノナフチルアルデヒドのアミノ基をアリル化し、アザクライゼン転移により7位にアリル基を導入する。wittig反応による増炭でαβ-不飽和エステル体を得る。エステル部の還元と増炭を繰り返すことで、二重結合部位(n)を所望の数に増やすことができる。アミノ基をジアルキル化し、エステル部位を加水分解してカルボキシル基とし、D-システイン誘導体とアミド結合させ、環化してエステル体を得る。エステラーゼやリパーゼを用いてエステル部位を加水分解して7-アリル-ジメチルアミノナフトール型化合物得ることができる。同様の工程で、アミノ基をアルキル化しなければ、R1=R2=Hの4-アミノタイプ(-NH2)7-アリル-アミノナフトール型化合物得ることができる。さらに、4-ニトロナフチルアルデヒドを出発物質にして、ニトロ基をアミノ基に還元して同様の反応を行うことでも7-アリル-アミノナフトール型化合物得ることができる。

【0071】
当業者であれば、上記一般式IIの化合物の置換基を所望の置換基と置き換えた開始物質から開始して、上記合成手順と同様の手順によって対応する化合物を合成することができることを理解するであろう。また、当業者であれば、上記合成手順の適切な工程において、化合物の置換基を所望の置換基に置換することもできることを理解するであろう。また、最後の工程において、メチルエステル部分を所望のエステルに置換することにより、対応するR1を有する化合物を得ることができるであろう。さらに、開始物質として使用する化合物のオレフィン部分の長さを変更することにより、一般式IIにおいて所望の長さのnを有する化合物を得ることができるであろう。

【0076】
また、特開2010-180191号公報に記載された手順に従って、ルシフェリンおよびルシフェリン類似体を、それらのベンゾチアゾール環部分の7位およびナフトール部分の5位においてアリル基で修飾することができる。

【0077】
本発明の化合物は、発光甲虫ルシフェラーゼ、ATPおよびMg2+の存在する系に添加することによって、発光甲虫ルシフェラーゼにより酸化して発光する。本発明の化合物は、単独で発光基質として利用可能であるが、必要に応じて、その他の発光基質と組み合わせて使用してもよい。本発明の化合物は、ATPおよびMg2+と共にキットとして提供することもできる。また、キットには、その他の発光基質や適切なpHに調製した溶液を含めることもできる。さらに、本発明の化合物は、ATPおよびMg2+と共に本発明の化合物を適切なpHに調製した発光基質組成物を発光剤キットとして提供することもできる。

【0078】
ホタル生物発光系は、水性系であるので、親水性有機化合物が存在していてもよい。たとえば、テトラフルオロ酢酸、酢酸およびギ酸などが存在していてもよい。本発明の化合物を発光系に応用する場合、好適な発光強度を得るためには、1μM以上の発光基質の濃度で使用されることが好ましく、たとえば5μM以上で使用される。また、発光系のpHは、4~10、好ましくは6~8であることが想定されるが、特に限定されない。必要に応じて、pHを安定化させるために、リン酸カリウム、トリス塩酸、グリシンおよびHEPESなどの緩衝剤を使用することができる。

【0079】
また、本発明の化合物は、ホタル発光甲虫ルシフェラーゼ発光系において、種々の酸化酵素によって発光させることができる。ルシフェラーゼは、北アメリカ産ホタル(Photinus pyralis)および鉄道虫(Railroad worm)などの種々の生物から単離されており、それらのいずれを使用することもできる。使用可能な酸化酵素には、たとえばヒカリコメツキムシルシフェラーゼ、イリオモテボタルルシフェラーゼおよびフラビン含有モノオキシゲナーゼなどを含む。

【0080】
本発明の化合物を発光基質とする生物発光は、発光系にコエンザイムA(CoA)、ピロリン酸またはMgイオン(Mg2+)が存在すると、その発光が増強されることが知られている。したがって、これらを発光甲虫ルシフェラーゼ発光系の発光増強剤として利用することができる。これらの化合物の発光増強効果は、発光系におけるCoA、ピロリン酸またはMg2+の濃度がそれぞれ5μM以上において顕著であり、濃度の増加にしたがって増強されることが知られている。

【0081】
ホタル生物発光系を測定/検出に使用するためには、酵素の失活を防止してプラトーな発光挙動を示すように、発光を安定化させることが重要である。たとえば、ホタル生物発光系における発光の安定化には、Mgイオンが有効である。発光系にMgイオンが存在すると、立ち上がった後の減衰が抑制されるように発光挙動が変化する。特に、ピロリン酸およびMgイオンが発光系に共存すると、発光挙動が大きく変化する。すなわち、発光安定化がきわめて顕著となり、発光基質に対して大過剰のピロリン酸およびMgイオンが共存する場合の発光挙動は、急速に立ち上がり、これが維持されてプラトーな状態が形成される。Mgイオン単独の場合、発光系のMgイオン濃度が0.5mM以上において、発光安定化効果が顕著であり、Mgイオンの濃度の増加にしたがって増強される。プラトーな発光挙動を達成するために、たとえば10μM以上、好ましくは100μM以上の濃度のピロリン酸マグネシウムを存在させることができる。また、ピロリン酸とMgイオンとの割合は、当量比である必要はない。ピロリン酸マグネシウムは、水溶性が低いものの、これを使用することにより、ピロリン酸およびMgイオンをそれぞれ別個に供給することができる。これらは、遊離形態および塩の形態で発光系に供給することができる。使用可能なMg塩には、硫酸マグネシウムおよび塩化マグネシウムなどの無機酸塩、並びに酢酸マグネシウムなどの有機酸塩を含む。ピロリン酸塩には、ナトリウムおよびカリウムなどのアルカリ金属との塩、並びにマグネシウムおよびカルシウムなどのアルカリ土類金属との塩、鉄などとの塩を含む。これらは、水溶液状態で発光系に含めてもよい。また、酵素に対する影響を考慮して、発光系のpHは、2~10になるように含めることが好ましい。

【0082】
本発明の化合物は、化学発光における基質として使用してもよい。化学発光は、本発明の化合物を酸化して過酸化物を生成し、この過酸化物の分解物が励起状態の発光種となることによって生じる。酸化は、たとえばDMSO中でt-ブトキシカリウムを使用して空気酸化させることによって進行させることができる。化学発光の場合、ホタル生物発光系における発光よりも短波長の発光が想定される。

【0083】
本発明の化合物は、生物学的測定/検出における発光標識として利用することができる。たとえば、アミノ酸、ポリペプチド、タンパク質および核酸などを標識するために使用することができる。本発明の化合物をこれらの物質に結合させるための手段は、当業者に周知である。たとえば、本発明の化合物は、当業者に周知の方法を使用して、目的の物質のカルボキシル基およびアミノ基に対して結合させることができる。

【0084】
また、本発明の化合物は、発光基質の発光によって発光甲虫ルシフェラーゼ活性を検出することを利用した測定/検出に利用することができる。たとえば、本発明の化合物を、上記のような発光甲虫ルシフェラーゼとの反応に適した条件下で反応させる。次いで、該化合物からの発光を検出する。たとえば、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した細胞または動物に対して本発明の化合物を投与することにより、インビボにおける標的遺伝子またはタンパク質の発現などを測定/検出することができる。本発明の化合物は、それぞれ異なる発光波長で発光させることができる。したがって、複数の化合物を使用することにより、複数の標的による発光を同時に測定/検出することができる。

【0085】
また、波長は、長波長であるほど光透過性を有するため、組織透過性も高い。したがって、本発明のアリル基で修飾されたルシフェリンおよびルシフェリン類似体は、アリル基で修飾されていないルシフェリンおよびルシフェリン類似体と比較して、より長波長の発光を有する。特に、ルシフェリンおよびルシフェリン類似体において、ベンゾチアゾール環部分の7位、フェノール部分の6位およびナフトール部分の5位をアリル基で修飾することにより、その発光波長を長波長側にシフトさせることができるので、アリル基で修飾されたルシフェリンおよびルシフェリン類似体は、生体内深部標識のために有用である。
【実施例】
【0086】
以下の実施例において、本発明を具体的に説明してあるが、本発明は、これらの範囲に限定されるわけではない。
【実施例】
【0087】
1)機器分析および測定装置
pH測定:東洋濾紙株式会社製pH試験紙UNIVを使用して測定した。また、pHメータとして、堀場社製pH/ION METER F-23を使用して測定した。
【実施例】
【0088】
1H核磁気共鳴スペクトル(1H NMR):日本電子社製Lambda-270型装置(270MHz)を使用して測定した。“1H NMR(測定周波数,測定溶媒):δケミカルシフト値(水素の数, 多重度, スピン結合定数)”と記載した。ケミカルシフト値(δ)はテトラメチルシラン(δ=0)を内部基準とし、ppで表記した。多重度は、s(単一線)、d(二重線)、t(三重線)、q(四重線)、m(多重線または複雑に重なったシグナル)で表示し、幅広いシグナルは、brと記した。スピン結合定数(J)は、Hzで記載した。
【実施例】
【0089】
13C核磁気共鳴スペクトル(13C NMR):日本電子社製Lambda-270型装置(67.8MHz)を使用して測定した。“13C NMR(測定周波数,測定溶媒):δケミカルシフト値(多重度)”と記載した。ケミカルシフト値(δ)は、テトラメチルシラン(δ= 0)を内部基準とし、ppmで表記した。多重度は、s(単一線)、d(二重線)、t(三重線)、q(四重線)で表示した。
【実施例】
【0090】
質量スペクトル(MS):日本電子社製JMS-600H型質量分析計を用い、電子衝撃法(EI、イオン化エネルギー:70eV)により測定した。日本電子社製JMS-T100LC型TOF質量分析計AccuTOFを用い、エレクトロンスプレーイオン化法(ESI)により測定した。なお、装置の設定は、脱溶媒ガス250℃、オリフィス1温度80℃、ニードル電圧2000V、リングレンズ電圧10V、オリフィス1電圧85V、オリフィス2電圧5Vとした。サンプル送液は、インフュージョン法で行い、流速10μl/minとした。“MS(測定法)m/z質量数(相対強度)”と記載した。
【実施例】
【0091】
比旋光度:日本分光社製DIP-1000型旋光計を使用して測定した。光源は、ナトリウムランプを使用し、セルは、円筒型ガラスセル(Φ10×100mm)を使用した。測定値は未補正であり、データは5回測定の平均値である。それぞれD体、L体について“DまたはL:[α]温度測定値(濃度, 測定溶媒)”と記載した。
【実施例】
【0092】
2)クロマトグラフィー
分析用薄層クロマトグラフィー(TLC):E. Merck社製のTLCプレート、シリカゲル60F254(Art.5715)厚さ0.25mmを使用した。TLC上の化合物の検出はUV照射(254nmまたは365nm)および発色剤に浸した後に加熱して発色させることによって行った。発色剤としてはp-アニスアルデヒド(9.3ml)と酢酸(3.8ml)をエタノール(340ml)に溶解し、濃硫酸(12.5ml)を添加したものを使用した。
【実施例】
【0093】
分取用薄層クロマトグラフィー(PTLC):E. Merck社製のTLCプレート、シリカゲル60F254(Art.5744)厚さ0.5mmを用いるか、またはE. Merck社製の薄層クロマトグラフィー用シリカゲル60GF254(Art.7730)を20cm×20cmのガラスプレート上に、厚さ1.75mmに調整したものを使用して行った。
【実施例】
【0094】
シリカゲルカラムクロマトグラフィー:E. Merck社製のシリカゲル60F254(Art.7734)を使用して行った。
【実施例】
【0095】
3)基本操作
反応溶液の冷却は、冷媒を満たしたジュワー瓶に反応容器を浸して行った。室温~4℃では、氷水、4~-90℃では、液体窒素-アセトンを冷媒として用いた。反応後の抽出溶液の乾燥は、飽和食塩水にて洗浄後、無水硫酸ナトリウムまたは無水硫酸マグネシウムを加えることで行った。反応後の中和を樹脂で行ったものについては、オルガノ株式会社製陽イオン交換樹脂アンバーライトIR120B NAまたは陰イオン交換樹脂アンバーライトIRA400 OH AGを使用した。溶液の減圧濃縮は、アスピレーターの減圧下(20~30mmHg)、ロータリーエバポレーターを使用して行った。痕跡量の溶媒の除去は、液体窒素浴で冷却したトラップを装着させた真空ポンプ(約1mmHg)を使用して行った。溶媒の混合比は全て体積比で表した。
【実施例】
【0096】
4)溶媒
蒸留水は、アドバンテック東洋株式会社製GS-200型蒸留水製造装置を使用して蒸留およびイオン交換処理したものを使用した。
【実施例】
【0097】
トルエン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、2-ブタノンは、関東化学株式会社製の有機合成用脱水溶媒または特級溶媒を、モレキュラーシーブス(4A)を使用して乾燥させて使用した。
【実施例】
【0098】
NMR測定用溶媒は、以下に示すものをそのまま使用した。CDCl3:ISOTEC Inc.製99.7 ATOM%D、0.03% TMS、CD3OD:ISOTEC Inc.製99.8 ATOM%D(~0.7 ATOM%13C)、0.05% TMS。
【実施例】
【0099】
実施例1 7-アリル-ホタルルシフェリンの合成
7-アリル-ホタルルシフェリンは、以下の合成スキームに従って合成した。
【実施例】
【0100】
【化16】
JP0006049019B2_000017t.gif
【実施例】
【0101】
2-シアノ-6-ヒドロキシベンゾチアゾール32の合成
【実施例】
【0102】
【化17】
JP0006049019B2_000018t.gif
【実施例】
【0103】
2-シアノ-6-メトキシベンゾチアゾール31(51.4mg、0.271mmol)にピリジン塩酸塩(2.32g)を加え、アルゴン雰囲気下で200℃に加熱し、ピリジン塩酸塩を融解させ30分間撹拌した。反応混合物を放冷した後、1M塩酸(50ml)を加え、酢酸エチル(3×50ml)で抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層シリカゲルクロマトグラフィー{20cm×20cm×1.75mm×1枚;ヘキサン-酢酸エチル(1:1)}にて精製し、2-シアノ-6-ヒドロキシベンゾチアゾール32(47.2mg、99%)を薄黄色固体として得た。
【実施例】
【0104】
1H NMR(270MHz, CD3OD)δ7.17(1H, dd, J=2.7, 9.2Hz), 7.41(1H, d, J=2.7Hz), 7.99(1H, d, J=9.2Hz)
【実施例】
【0105】
6-アリルオキシ-ベンゾチアゾール-2-カルボニトリル33の合成
【実施例】
【0106】
【化18】
JP0006049019B2_000019t.gif
【実施例】
【0107】
2-シアノ-6-ヒドロキシベンゾチアゾール32(336.2mg、1.91mmol)、臭化アリル(331μl、3.82mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(1.5ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下、炭酸カリウム(404.6mg、1.53mmol)を加え、室温で一時間撹拌した。反応混合物に水(20ml)を加え、酢酸エチル(3×50ml)を抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層シリカゲルカラムクロマトグラフィー{20cm×20cm×1.75mm×1枚;ヘキサン-酢酸エチル(1:1)}にて精製し、6-アリルオキシ-ベンゾチアゾール-2-カルボニトリル33(418.1mg、90%)を薄黄色固体として得た。
【実施例】
【0108】
1H NMR(270MHz, CDCl3)δ8.07(1H, d, J=9.2Hz), 7.36(1H, d, J=2.4Hz), 7.26(1H, dd, J=2.4, 9.2Hz), 6.08(1H, m), 5.41(comp. 2H, m)
【実施例】
【0109】
7-アリル-6-ヒドロキシベンゾチアゾール-2-カルボニトリル34の合成
【実施例】
【0110】
【化19】
JP0006049019B2_000020t.gif
【実施例】
【0111】
6-アリルオキシ-ベンゾチアゾール-2-カルボニトリル33(201.0mg、0.93mmol)を、アルゴン雰囲気下、180℃で加熱融解し、一時間撹拌した。反応混合物を放冷した後、分取薄層シリカゲルクロマトグラフィー{20cm×20cm×1.75mm×1枚;ヘキサン-酢酸エチル(1:1)}にて精製し、7-アリル-6-ヒドロキシベンゾチアゾール-2-カルボニトリル34(100.0mg、50%)を薄黄色固体として得た。
【実施例】
【0112】
1H NMR(270MHz, CDCl3)δ7.98(1H, d, J=8.9Hz), 7.17(1H, d, J=2.7Hz), 5.97(1H, m), 5.74(1H, s), 5.17-5.25(comp. 2 H), 3.65(1H, dt, J=1.3, 6.2Hz)
【実施例】
【0113】
7-アリル-ホタルルシフェリン35の合成
【実施例】
【0114】
【化20】
JP0006049019B2_000021t.gif
【実施例】
【0115】
2-シアノ-7-アリル-6-ヒドロキシベンゾチアゾール34(50mg、0.23mmol)、D-システイン塩酸塩一水和物(45mg、0.25mmol)をメタノール:蒸留水(2:1.6ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下、炭酸カリウム(50mg、0.36mmol)を加え、室温で40分間撹拌した。得られた固体をろ過し、蒸留水で洗浄して7-アリル-ホタルルシフェリン35(64mg、84%)を黄色固体として得た。
【実施例】
【0116】
1H NMR(270MHz, CD3OD)δ7.78(1H, d, J =8.9Hz), 7.10(1H, dd, J =8.9Hz), 5.92(1H, m), 5.42(1H, t, J=8.9Hz), 5.15-5.03(comp. 2 H), 3.75(2 H, d, J=8.1Hz), 3.59(2 H, J=6.2Hz)
【実施例】
【0117】
実施例2 ナフトール部分の5位がアリル基で修飾された化合物の合成。
以下の化合物
【実施例】
【0118】
【化21】
JP0006049019B2_000022t.gif
は、以下の合成スキームに従って合成した。
【実施例】
【0119】
【化22】
JP0006049019B2_000023t.gif
【実施例】
【0120】
【化23】
JP0006049019B2_000024t.gif
【実施例】
【0121】
2-ナフトエ酸11(500mg、2.66mmol)をアセトン(10ml)に溶解し、氷冷下にて炭酸カリウム(793mg、5.32mmol)、臭化アリル(0.7ml、8.0mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液に、水(100ml)を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を減圧留去して得られる粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)にて精製し、化合物12(713mg、100%)を淡黄色固体として得た。
【実施例】
【0122】
1H NMR(400 MHz, CDCl3) δ 4.67(2H, d, J=4.8Hz), 5.33(2H, t, J=10.8Hz), 5.46(2H, m), 6.11(2H, m), 7.16(1H, d, J=2.4Hz), 7.22(1H, dd, J=2.4, 8.8Hz), 7.74(1H, d, J=8.8Hz), 7.85(1H, d, J=9.2Hz), 8.04(1H, dd, J=1.6, 8.8Hz), 8.55(1H, d,J=1.6Hz)
【実施例】
【0123】
【化24】
JP0006049019B2_000025t.gif
【実施例】
【0124】
化合物12(760mg、2.83mmol)を200℃にて加熱し、18時間撹拌した。反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=6:1)にて精製し、化合物13(546mg、71%)を淡黄色固体として得た。
【実施例】
【0125】
【化25】
JP0006049019B2_000026t.gif
【実施例】
【0126】
化合物13(165mg、0.38mmol)をテトラヒドロフラン(1ml)に溶解させ、室温にて塩化t-ブチルジメチルシリル(180mg、1.0mmol)、トリエチルアミン(0.14ml、0.99mmol)を加え、1時間撹拌した。薄層クロマトグラフィーにより、原料の消失を確認したのち、-78℃にて反応液に水素化ジイソブチルアルミニウム(1.0M、n-ヘキサン溶液、1.0ml)を加え1時間攪拌した。反応液を0℃に昇温した後、水(10ml)を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を減圧留去して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=6:1)にて精製し、図中の化合物14(130mg、100%)を黄色油状として得た。
【実施例】
【0127】
1H NMR(400 MHz, CDCl3) δ 0.29(6H, s), 1.08(9H, s), 3.85(2H, d, 6.0Hz), 4.77(2H, s), 4.97(1H, d, J=30.0Hz), 5.01(1H, d, J=23.2Hz) , 6.02(1H, m), 6.02(1H, m), 7.12(1H, d, J=8.8Hz), 7.44(1H, d, J=8.8Hz), 7.62(1H, d, J=8.8Hz), 7.70(1H, s), 7.90(1H, J=8.8Hz)
【実施例】
【0128】
【化26】
JP0006049019B2_000027t.gif
【実施例】
【0129】
化合物14(130mg、0.38mmol)をジクロロメタン(10ml)に溶解し、室温にて酸化マンガン(400mg、4.60mmol)を加え、4時間撹拌した。薄層クロマトグラフィーにより、原料の消失を確認したのち、セライトにて不溶物を除去した。溶媒を減圧留去してアルデヒドの粗生成物を得た。粗生成物をベンゼン(5ml)に溶解させ、室温にて(カルボメトキシメチレン)トリフェニルホスホラン(1.2g、3.8mmol)を加え、6時間攪拌した。溶媒を減圧留去して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)にて精製し、化合物15(145mg、100%)を淡黄色固体として得た。
【実施例】
【0130】
1H NMR(400 MHz, CDCl3) δ 0.26(6H, s), 1.04(9H, s), 3.80(complex 5H), 4.94(1H, d, J=38.5Hz), 4.98(1H, d, J=30.5Hz), 5.99(1H, m), 6.02(1H, m), 6.49(1H, d, J=16.0Hz), 7.11(1H, d, J=8.8Hz), 7.64(complex 2H), 7.84(complex 3H)
【実施例】
【0131】
【化27】
JP0006049019B2_000028t.gif
【実施例】
【0132】
化合物15(53mg、0.14mmol)をイソプロピルアルコール(6ml)に溶解させ、1M水酸化ナトリウム水溶液(3ml、3mmol)を加え室温で12時間攪拌した。反応液を放冷した後、陽イオン交換樹脂(アンバーライトIR-120H)を用いて中和した。樹脂を濾別し、溶媒を減圧留去し、化合物16(51mg、100%)を淡黄色固体として単一の生成物で得た。
【実施例】
【0133】
1H NMR(400 MHz, CD3OD) δ 3.83(2H, d, J=6.1Hz), 4.96(complex 2H), 6.00(1H, m), 6.56(1H, d, J=16.0Hz), 7.26(1H, d, J=8.8Hz), 7.76(complex 3H), 8.97(complex 2H)
【実施例】
【0134】
【化28】
JP0006049019B2_000029t.gif
【実施例】
【0135】
D-システイン-S-トリチル化合物17(504mg、1.39mmol)をメタノール(100ml)に溶解させ、4N塩化水素1,4-ジオキサン溶液(5.4ml)を加えた。室温で17日間撹拌した後、陰イオン交換樹脂アンバーライトIRA400を用いて中和した。樹脂を濾別し、溶媒を減圧留去し得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)にて精製し、化合物18(455mg、86%)を淡黄色油状として得た。
【実施例】
【0136】
1H NMR(400MHz, CDCl3) δ 2.47(1H, dd, J=8.1, 13Hz), 2.60(1H, dd, J=5.1, 13Hz), 3.21(1H, dd, J=5.1, 8.1Hz), 3.66(3H, s), 7.18-7.32(9H, complex), 7.40-7.54(6H, complex)
【実施例】
【0137】
【化29】
JP0006049019B2_000030t.gif
【実施例】
【0138】
化合物16(50mg、0.13mmol)と化合物18(67mg、0.17mmol)をピリジン(2ml)に溶解し、塩酸1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(42ml、0.21mmol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(29mg、0.21mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応溶媒を減圧留去し、酢酸エチル(50ml)で希釈し、水(50ml)を加えた。有機層を飽和食塩水(20ml)にて洗浄し、さらに水層を酢酸エチル(50ml)で洗浄した後、有機層を合わせ無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を減圧留去してアミドの粗生成物(図中の化合物19)を得た。化合物19は不安定であり、精製せずに次の反応を行った。
【実施例】
【0139】
【化30】
JP0006049019B2_000031t.gif
【実施例】
【0140】
アミドの粗生成物(図中の化合物19)をジクロロメタン(35ml)に溶解し、0℃にてトリフェニルホスフィンオキシド(106mg、0.37mmol)、無水トリフルオロメタンスルホン酸(160μl、0.88mmol)を加えた。2時間撹拌した後、反応液をクロロホルム(50ml)で希釈し、水(50ml)を加えた。有機層を飽和食塩水(20ml)にて洗浄し、さらに水層を酢酸エチル(50ml)で洗浄した後、有機層を合わせ無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を減圧留去し得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=9:1)にて精製し、化合物20(36mg、2段階収率80%)を淡黄色油状として得た。
【実施例】
【0141】
1H NMR(400 MHz, CD3OD) δ 3.62(2H, m), 3.82(complex 5H), 5.05(complex 2H) 5.23(1H, t, J=19.0Hz), 6.05(1H, m), 7.14(complex 2H, , J=8.7, 16.2Hz), 7.26(1H, d, J=16.2Hz), 7.66(complex 3H), 7.77(1H, s), 7.86(1H, d, J=9.0Hz)
【実施例】
【0142】
【化31】
JP0006049019B2_000032t.gif
【実施例】
【0143】
化合物20(25mg、0.026mmol)をテトラヒドロフラン(1ml)、エタノール(5ml)、10mM炭酸アンモニウム水溶液(30ml)に溶解し、40℃にてブタ膵臓リパーゼ(25mg)を加えた。24時間撹拌した後、反応液をクロロホルム(50ml)で希釈し、水(50ml)を加えた。セライトにて不溶物を除去した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をメタノール/水混合溶媒(1:1,2ml)に溶解し、高速液体クロマトグラフィー(MightsilRP-18GP(3μm)、0.05%TFAaq.:MeCN=9:1→1:9(40min)、20℃、1ml/min、検出440nm(DAD))にて精製したところ、図2のような結果を得た。化合物21は、19.60min付近に溶出された。
【実施例】
【0144】
1H NMR(500 MHz, CD3OD)δ 3.62-3.70(2H, m), 3.78(2H, d, J=5.75Hz), 4.90-4.95(2H, m), 5.21(1H, t, 8.05Hz), 5.95-6.02(1H, m), 7.08(1H, m), 7.13(1H, d, 9.15Hz), 7.39(1H, d, 16.0Hz), 7.67(1H, s), 7.67(1H, d, 16Hz), 7.89-7.90(2H, m)
【実施例】
【0145】
参考例3:ナフトール-モノエン型のルシフェリン類似体の合成
TBS保護体32の合成
【化32】
JP0006049019B2_000033t.gif
【実施例】
【0146】
6-シアノ-2-ナフトール31(50.2mg、0.297mmol)、t-ブチルジメチルシリルクロライド(143mg、0.95mmol)、イミダゾール(160.7mg、2.37mmol)をDMF(0.5mL)に溶解させ、室温で1時間攪拌した。反応混合物に水(40mL)を加え、酢酸エチル(3×60mL)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー{シリカゲル36g;ヘキサン-酢酸エチル(8:1)}にて精製し、TBS保護体32(69.9mg、83%)を無色油状として得た。
【実施例】
【0147】
類似体32
1H NMR(270MHz, CDCl3)δ 0.01(6H, s), 0.74(9H, s), 6.80-7.80(6H, complex)。
【実施例】
【0148】
アルデヒド体33の合成
【化33】
JP0006049019B2_000034t.gif
【実施例】
【0149】
TBS保護体32(99.3mg、0.35mmol)、1M ジイソブチルアルミニウム(トルエン溶液)0.5mLをアルゴン雰囲気下、脱水トルエン(10mL)に溶解させ、1時間攪拌した。反応混合物を氷冷し、アセトン(10mL)、飽和ロッシェル塩水溶液(20mL)、水(30mL)を加え、酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。有機層に硫酸ナトリウムを加え乾燥させた後、減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー{20cm×20cm×0.5mm×1枚;ヘキサン-酢酸エチル(10:1)}にて精製し、アルデヒド体33(74.4mg、74%)を黄色油状として得た。
【実施例】
【0150】
アルデヒド体33
1H NMR(270MHz, CDCl3)δ 0.28(6H, s), 1.03(9H, s), 7.00-7.80(6H, complex), 10.10(1H, s)。
【実施例】
【0151】
エステル体34の合成
【化34】
JP0006049019B2_000035t.gif
【実施例】
【0152】
アルデヒド体33(63.9mg、0.22mmol)、カルベトキシメチレントリフェニルホスフォラン(121mg、0.349mmol)をトルエン(2mL)に溶解させ、室温で5時間攪拌した。反応混合物に水(50mL)を加え、酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー{20cm×20cm×0.5mm×1枚;ヘキサン-酢酸エチル(25:1)}で精製し、エステル体34(76.6mg、97%)を黄色油状として得た。
【実施例】
【0153】
エステル体34
1H NMR(270MHz, CDCl3)δ 0.25(6H, s), 1.00(9H, s), 1.43(3H, t, J=7.0Hz), 4.23(2H, q, J=7.1Hz), 5.95(1H, d, J=12.5Hz), 6.47(1H, d, J=16.1Hz), 7.01-7.80(7H, complex)。
【実施例】
【0154】
カルボン酸35の合成
【化35】
JP0006049019B2_000036t.gif
【実施例】
【0155】
エステル体34(90.8mg、0.253mmol)をイソプロピルアルコール(3mL)に溶解させ、1M水酸化ナトリウム水溶液(5mL)を加え、5時間攪拌した。反応混合物に陽イオン交換樹脂IR-120BNaを加え中和した。樹脂を濾別し、濾液を減圧濃縮して、カルボン酸35(54.9mg、quant.)を薄黄色固体として得た。
【実施例】
【0156】
カルボン酸35
1H NMR(270MHz, CD3OD)δ 6.47(1H, d, J=15.8Hz), 7.00-7.90(7H, complex)。
【実施例】
【0157】
メチルエステル体36の合成
【化36】
JP0006049019B2_000037t.gif
【実施例】
【0158】
D-システイン-S-トリチル化合物(504mg、1.39mmol)をメタノール(100ml)に溶解させ、4N 塩化水素の1,4-ジオキサン溶液(5.4ml)を加えた。室温で17日間撹拌した後、陰イオン交換樹脂 IRA400 OH AGを用いて中和した。樹脂を濾別し、得られた溶液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー{シリカゲル33.6g;ヘキサン-酢酸エチル(1:1)}にて精製し、メチルエステル体36(455mg、86%)を薄黄色油状として得た。
【実施例】
【0159】
メチルエステル36
IR(neat) 3380, 3320, 1740, 1600cm-1
1H NMR(270MHz, CDCl3)δ2.47(1H, dd, J=8.1, 13Hz), 2.60(1H, dd, J=5.1, 13Hz), 3.21(1H, dd, J=5.1, 8.1Hz), 3.66(3H, s), 7.18-7.32(9H, complex), 7.40-7.54(6H, complex)
13C NMR(67.8MHz, CD3OD)δ36.90(t), 52.16(q), 53.78(d), 66.83(s), 126.8(d)×3, 127.9(d)×6, 129.6(d)×6, 144.5(s)×3, 174.2(s)。
【実施例】
【0160】
アミド体37の合成
【化37】
JP0006049019B2_000038t.gif
【実施例】
【0161】
メチルエステル36(145mg、0.381mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(1ml)にアルゴン雰囲気下、カルボン酸35(54.9mg、0.254mmol)、塩酸1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(145mg、0.762mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(155mg、1.27mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。反応混合物に水(50ml)を加え、酢酸エチル(3×50ml)で抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー{20cm×20cm×0.5mm×2枚;ヘキサン-酢酸エチル(2:1)}にて精製し、アミド体37(58.4mg、40%)を薄黄色油状として得た。
【実施例】
【0162】
アミド体37
1H NMR(270MHz, CDCl3)δ 2.75(2H, dd, J=4.6, 7.9Hz), δ3.75(3H, s), 4.77(1H, dd, 2.7, 7.9Hz), 6.35(1H, d, J=16.1Hz), 6.90-7.80(22H, complex)。
【実施例】
【0163】
チアゾリン38の合成
【化38】
JP0006049019B2_000039t.gif
【実施例】
【0164】
アミド37(60.3mg、0.109mmol)のジクロロメタン溶液(3ml)にアルゴン雰囲気下、トリフェニルホスフィンオキシド(91mg、0.327mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(100μL, 0.546mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物に水(50ml)を加え、クロロホルム(3×50ml)で抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー(20cm×20cm×0.5mm×2枚;ヘキサン-酢酸エチル(1:2)}にて精製し、チアゾリン38(17.4mg、55%)を黄色固体として得た。
【実施例】
【0165】
チアゾリン38
1H NMR(270MHz, CD3OD)δ3.63(2H, dd, J=3.1, 8.9Hz), 3.8 1(3H, s), 5.27(1H, t, J=8.9Hz), 7.07-7.13(2H, complex), 7.33(1H, d, J=16.1Hz), 7.55-7.83(4H, complex)。
【実施例】
【0166】
類似体39の合成
【化39】
JP0006049019B2_000040t.gif
【実施例】
【0167】
チアゾリン38(6.3mg、0.0201mmol)を、エタノール(2mL)と10mM 炭酸水素アンモニウム水溶液(8mL)の混合溶媒に溶解させ、アルゴン雰囲気下、少量のブタ肝臓エステラーゼを加えた。36℃で17時間撹拌した後、反応混合物を濾過し、その濾液を減圧濃縮して、類似体39(7.6mg、quant.)を黄色固体として得た。
【実施例】
【0168】
生物発光スペクトル
200μLポリスチレンチューブ内で、リン酸カリウム緩衝液(0.5 M、pH8.0、20μl)基質溶液(2.5mM、20μl)、酵素溶液(20μl)、次いでATP-Mg溶液(10mM、40μl)を混合して発光スペクトル測定を行った。酵素溶液の濃度は、17μMのものを使用した。ただし、ホタルルシフェリンは、1.7μM、フェノール型ルシフェリンは、170μMの酵素をそれぞれ使用した。また、発光スペクトル測定の露光時間は、60秒とした。ただし、ホタルルシフェリンは、5秒で行った。
【実施例】
【0169】
実験結果
上記手順を使用して、ホタルルシフェリンおよびナフトール-モノエン型のルシフェリン類似体(上記化合物39)、並びに図1および図2に示したアリル基で修飾された化合物の発光波長を測定した。ホタルルシフェリンは、565nmの発光波長を有していた。また、ナフトール-モノエン型のルシフェリン類似体(上記化合物39)は、660nmの発光波長を有していた。図1および図2に示した化合物は、それぞれ605nmおよび690nmの発光波長を有していた。ホタルルシフェリンのベンゾチアゾール環部分の7位をアリル基で修飾することにより、発光波長が長波長側におよそ30~40nmシフトした。また、ナフトール-モノエン型のルシフェリン類似体のナフトール部分の5位をアリル基で修飾することにより、発光波長が長波長側におよそ30~40nmシフトした。
【実施例】
【0170】
したがって、ルシフェリンおよびルシフェリン類似体は、アリル基で修飾することにより、その発光波長を長波長側にシフトさせることが可能なことが分かった。
【実施例】
【0171】
これにより、実用的な発光波長を変更するための指標を確立することができた。この指標に基づいてルシフェリン誘導体を設計することにより、より長波長の発光波長を有するルシフェラーゼ基質を製造することができる。
【実施例】
【0172】
インビボでのバイオイメージング
ルシフェラーゼが導入されたトランスジェニック細胞、組織および生物に対して本発明のルシフェリン類似体を投与することにより、発光を生じさせことができる。この反応を利用して、生体の窓である690nm付近の発光波長を有する本発明の化合物を使用することにより、インビボにおける発光を検出しやすくなる。たとえば、移植組織や移植細胞にへルシフェラーゼを導入した後、移植動物に対して本発明の化合物を投与すことにより、移植された生体内における、特に現在は難しいとされる生体内深部の移植組織の状態をインビボにおいて非侵襲的にイメージングすることができる。
【実施例】
【0173】
ルシフェラーゼを導入した細胞などのインビボにおけるイメージングにおいて、ルシフェラーゼトランスジェニック細胞は、たとえば実験医学、Vol.26、No.17(増刊)、2008、110-117ページに記載された手順に従って作製することができる。
【実施例】
【0174】
ルシフェラーゼトランスジェニック細胞、組織および生物を作成後、移植組織等のイメージングのためには、本発明のルシフェリン類似体を投与する。次いで、IVIS Imaging System (Xenogen社)などの装置によって、本発明の化合物による発光を検出することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1