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明細書 :IgG結合性ペプチド及びそれによるIgGの検出および精製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5994068号 (P5994068)
登録日 平成28年9月2日(2016.9.2)
発行日 平成28年9月21日(2016.9.21)
発明の名称または考案の名称 IgG結合性ペプチド及びそれによるIgGの検出および精製方法
国際特許分類 C07K   7/08        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C07K  17/00        (2006.01)
C07K  19/00        (2006.01)
C07K   1/22        (2006.01)
C07K   7/64        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
G01N  30/88        (2006.01)
FI C07K 7/08
C12N 15/00 ZNAA
C07K 17/00
C07K 19/00
C07K 1/22
C07K 7/64
G01N 33/53 N
G01N 30/88 J
G01N 30/88 201R
請求項の数または発明の数 12
全頁数 29
出願番号 特願2013-530055 (P2013-530055)
出願日 平成24年8月23日(2012.8.23)
国際出願番号 PCT/JP2012/071303
国際公開番号 WO2013/027796
国際公開日 平成25年2月28日(2013.2.28)
優先権出願番号 2011182539
優先日 平成23年8月24日(2011.8.24)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年6月22日(2015.6.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】伊東 祐二
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100144794、【弁理士】、【氏名又は名称】大木 信人
審査官 【審査官】西村 亜希子
参考文献・文献 米国特許出願公開第2004/0087765(US,A1)
国際公開第2005/086947(WO,A2)
特表2003-518075(JP,A)
国際公開第2008/054030(WO,A1)
特表2003-505108(JP,A)
国際公開第01/002001(WO,A1)
J. Biol. Chem.,2009年,Vol.284, No.15,pp.9986-9993
第10回日本蛋白質科学会年会 プログラム・要旨集,2010年 5月15日,p.136
生物物理,2008年,Vol.48, No.5,pp.294-298
Peptide Science,2008年,Vol.14, Issue 8 Supplement,p.141
Proteins,2002年,Vol.48,pp.539-557
Science,2000年,Vol.287,pp.1279-1283
Analytical Biochemistry,2008年,Vol.374,pp.99-105
Journal of Proteome Research,2005年,Vol.4,pp.2250-2256
調査した分野 C07K 7/08
C07K 1/22
C07K 7/64
C07K 17/00
C07K 19/00
C12N 15/09
G01N 30/88
G01N 33/53
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の式I
(X1-3)-C-A-Y-H-R-G-E-L-V-W-C-(X1-3) (I)
(式中、Xの各々は独立的にシステイン以外の任意のアミノ酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Aはアラニン残基であり、
Yはチロシン残基であり、
Hはヒスチジン残基であり、
Rはアルギニン残基であり、
Gはグリシン残基であり、
Eはグルタミン酸残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Vはバリン残基であり、かつ
Wはトリプトファン残基である。)
によって表される、13~17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、かつヒトIgGと結合可能であることを特徴とするペプチド。
【請求項2】
17アミノ酸残基とした場合の、N末端から1~3、15~17番目の各アミノ酸残基が、
1番目のアミノ酸残基= S、G、F又は、なし
2番目のアミノ酸残基= D、G、A、S、P又は、なし
3番目のアミノ酸残基= S、D、T、N、E又はR、
15番目のアミノ酸残基= S、T又はD、
16番目のアミノ酸残基= H、G、Y、T、N、D、F又は、なし、
17番目のアミノ酸残基= Y、F、H、M又は、なし
である、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
以下の1)~12)のいずれかのアミノ酸配列からなる、請求項2に記載のペプチド。
1)DCAYHRGELVWCT(配列番号55)
2)GPDCAYHRGELVWCTFH(配列番号56)
3)RCAYHRGELVWCS(配列番号57)
4)GPRCAYHRGELVWCSFH(配列番号58)
5)SPDCAYHRGELVWCTFH(配列番号100)
6)GDDCAYHRGELVWCTFH(配列番号101)
7)GPSCAYHRGELVWCTFH(配列番号102)
8)GPDCAYHRGELVWCSFH(配列番号103)
9)GPDCAYHRGELVWCTHH(配列番号104)
10)GPDCAYHRGELVWCTFY(配列番号105)
11)SPDCAYHRGELVWCTFY(配列番号106)
12)SDDCAYHRGELVWCTFY(配列番号107)
【請求項4】
ペプチドが2つのシステイン(C)残基間でジスルフィド結合を形成している、請求項1~3のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項5】
標識が結合されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のペプチドと連結されたタンパク質からなる融合タンパク質。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載のペプチドを固相に結合してなる固定化ペプチド。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載のペプチドをコードする核酸。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載のペプチド又は請求項7に記載の固定化ペプチドをIgGと結合させること、並びに、結合したIgGを遊離させてIgGを回収することを含む、IgGの精製方法。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項に記載のペプチド又は請求項7に記載の固定化ペプチドにサンプル中のIgGを結合させ、結合したIgGを検出することを含む、IgGの検出方法。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか1項に記載のペプチド又は請求項7に記載の固定化ペプチドの少なくとも1種を含む、ヒトIgGの分析又は精製のためのキット。
【請求項12】
請求項7に記載の固定化ペプチドを含有する、IgG分離用カラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ランダムペプチドライブラリから得られたヒトIgG結合性ペプチド及び該ペプチドによるIgGの検出および精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、抗体医薬は、最も確実性の高い分子標的医薬として注目されており、新しい医薬品分野を急速に拡大している。現在開発中又は使用されている抗体医薬のほとんどは免疫グロブリンG(以下「IgG」と記載する)クラスに属する抗体を用いるものである。
【0003】
従来的に、IgG抗体の精製には、Staphylococcus aureus由来のプロテインAまたはプロテインGタンパク質が用いられている(非特許文献1,2)。これらのタンパク質は、マウス、ウサギのIgGにも結合するため、研究試薬のレベルでのIgG精製に多用されてきたが、近年ヒトIgG1を中心とした抗体医薬が、医薬分野に利用されるようになり、工業的、製薬的な利用における重要性がますます高まっている。特にプロテインAカラムは、抗体医薬の精製においても中心的な役割を果たしており、多くの抗体医薬の製造メーカは、このカラムを中心とした精製システムを導入している。
【0004】
しかしながら、このプロテインAカラムは、いくつかの問題点が指摘されている。1つには、精製抗体中へのプロテインAの混入の問題である。プロテインAはバクテリア由来のタンパク質であり、人体投与後の免疫原性が高く、またエンドトキシンの混入が危惧される。このような医薬品精製に用いるアフィニティリガンドとしては、不都合な物質の混入が起こらないよう、リガンドとしてのプロテインAには高い精製度が求められており、これが医薬品精製に利用するプロテインAカラムのコストを上げている要因になっている。
【0005】
このような問題を解決すべく、新たなIgG抗体の精製システムの開発が行われている。例えば、プロテインAミメティックペプチド(非特許文献3,4)や、プロテインAとIgG抗体のFcとのX線結晶構造を基に設計された、非ペプチド性のアフィニティリガンド(非特許文献5)が報告されているが、それらは結合能力や特異性における問題で利用には限界があった。
【0006】
また、ファージライブラリや合成ペプチドライブラリなどを使って、新たなIgG結合性ペプチドを探索する研究が多くなされている(特許文献1-3)。
【0007】
このように、新たなペプチド、低分子によるIgG抗体精製の研究は行われているものの、プロテインA、Gカラムに代わりうる、工業的なスケールで対応可能な新たな精製システムは存在せず、当該分野において依然として、IgG抗体を精製するための新たな手法が求められている。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】WO 01/045746
【特許文献2】WO 02/086070
【特許文献3】WO 02/38592
【0009】

【非特許文献1】Ey, P. L., Prowse, S. J., and Jenkin, C. R. (1978) Immunochemistry 15(7), 429-436
【非特許文献2】Akerstrom, B., Brodin, T., Reis, K., and Bjorck, L. (1985) J Immunol 135(4), 2589-2592
【非特許文献3】Fassina, G., Verdoliva, A., Odierna, M. R., Ruvo, M., and Cassini, G. (1996) J Mol Recognit 9(5-6), 564-569
【非特許文献4】Fassina, G., Palombo, G., Verdoliva, A., and Ruvo, M. (2002) Affinity Purification of Immunoglobulins Using Protein A Mimetic (PAM) In: Walker, J. M. (ed). The Protein Protocols Handbook, Second Edition, Humana Press Inc., Totowa, NJ
【非特許文献5】Li, R., Dowd, V., Stewart, D. J., Burton, S. J., and Lowe, C. R. (1998) Nature biotechnology 16(2), 190-195
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ヒトIgGに特異的又は選択的に結合性を有するペプチドを提供することを目的とする。
【0011】
本発明はまた、該ペプチドを用いてヒトIgGを精製する又は分析(検出又は定量)する方法を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ヒトIgGは、主に血液中に存在し、外来からの異物の排除や抗体依存性細胞障害活性を通じて、生体防御や恒常性の維持に重要な役割を果たしている。特に近年では、このような特性のために、IgGは抗体医薬として、ガンやリュウマチなどの自己免疫疾患を中心に、治療薬として使用されている。本発明は、このように医薬品として重要な地位を占めつつあるIgG抗体の状況を踏まえ、ヒトIgG(特にIgG1)に特異的又は選択的に結合可能なペプチドを提供することによって、背景技術に記載したような現方の弱点を解決した、医薬として使用可能なIgGの精製及び分析法の確立のために有用であると考えられる。
【0013】
本発明は、要約すると、以下の特徴を有する。
【0014】
[1] 下記の式I:
(X1-3)-C-(X2)-H-R-G-(Xaa1)-L-V-W-C-(X1-3) (I)
(式中、Xの各々は独立的にシステイン以外の任意のアミノ酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Hはヒスチジン残基であり、
Rはアルギニン残基であり、
Gはグリシン残基であり、
Xaa1はグルタミン酸残基またはアスパラギン残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Vはバリン残基であり、かつ
Wはトリプトファン残基である。)
によって表される、13~17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、かつヒトIgGと結合可能であることを特徴とするペプチド。
【0015】
[2] 下記の式II:
(X1-3)-C-(Xaa2)-(Xaa3)-H-R-G-(Xaa1)-L-V-W-C-(X1-3) (II)
(式中、Xの各々は独立的にシステイン以外の任意のアミノ酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Hはヒスチジン残基であり、
Rはアルギニン残基であり、
Gはグリシン残基であり、
Xaa1はグルタミン酸残基またはアスパラギン残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Vはバリン残基であり、
Wはトリプトファン残基であり、
Xaa2はアラニン残基、セリン残基またはトレオニン残基であり、かつ
Xaa3はチロシン残基またはトリプトファン残基である。)
によって表される、13~17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、かつヒトIgGと結合可能であることを特徴とする、[1]のペプチド。
【0016】
[3] 下記の式III:
(X1-3)-C-A-Y-H-R-G-E-L-V-W-C-(X1-3) (III)
(式中、Xの各々は独立的にシステイン以外の任意のアミノ酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Aはアラニン残基であり、
Yはチロシン残基であり、
Hはヒスチジン残基であり、
Rはアルギニン残基であり、
Gはグリシン残基であり、
Eはグルタミン酸残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Vはバリン残基であり、かつ
Wはトリプトファン残基である。)
によって表される、13~17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、かつヒトIgGと結合可能であることを特徴とする、[1]または[2]のペプチド。
【0017】
[4] 17アミノ酸残基とした場合の、N末端から1~3、15~17番目の各アミノ酸残基が、
1番目のアミノ酸残基= S、G、F又は、なし
2番目のアミノ酸残基= D、G、A、S、P又は、なし
3番目のアミノ酸残基= S、D、T、N、E又はR、
15番目のアミノ酸残基= S、T又はD、
16番目のアミノ酸残基= H、G、Y、T、N、D、F又は、なし、
17番目のアミノ酸残基= Y、F、H、M又は、なし
である、[1]~[3]のいずれかのペプチド。
【0018】
[5] 以下の1)~12)のいずれかのアミノ酸配列からなる、[4]のペプチド。
【0019】
1)DCAYHRGELVWCT(配列番号55)
2)GPDCAYHRGELVWCTFH(配列番号56)
3)RCAYHRGELVWCS(配列番号57)
4)GPRCAYHRGELVWCSFH(配列番号58)
5)SPDCAYHRGELVWCTFH(配列番号100)
6)GDDCAYHRGELVWCTFH(配列番号101)
7)GPSCAYHRGELVWCTFH(配列番号102)
8)GPDCAYHRGELVWCSFH(配列番号103)
9)GPDCAYHRGELVWCTHH(配列番号104)
10)GPDCAYHRGELVWCTFY(配列番号105)
11)SPDCAYHRGELVWCTFY(配列番号106)
12)SDDCAYHRGELVWCTFY(配列番号107)
[6] 下記の式IV:
D-C-(Xaa2)-(Xaa3)-H-R-G-(Xaa1)-L-V-W-C-T (IV)
(式中、
Dはアスパラギン酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Hはヒスチジン残基であり、
Rはアルギニン残基であり、
Gはグリシン残基であり、
Xaa1はグルタミン酸残基またはアスパラギン残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Vはバリン残基であり、
Wはトリプトファン残基であり、
Tはトレオニン残基であり、
Xaa2はアラニン残基、またはトレオニン残基であり、かつ
Xaa3はチロシン残基またはトリプトファン残基である。)によって表される、13アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、かつヒトIgGと結合可能であることを特徴とする、[1]または[2]のペプチド。
【0020】
[7] 以下の1)~4)のいずれかのアミノ酸配列からなる、[6]のペプチド。
【0021】
1) DCTYHRGNLVWCT(配列番号47)
2) DCAYHRGNLVWCT(配列番号48)
3) DCTYHRGELVWCT(配列番号50)
4) DCAWHRGELVWCT(配列番号53)
[8] 下記の式V:
D-C-(Xaa1)-(Xaa2)-(Xaa3)-(Xaa4)-G-(Xaa5)-L-(Xaa6)-W-C-T (V)
(式中、
Dはアスパラギン酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Gはグリシン残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Wはトリプトファン残基であり、
Tはトレオニン残基であり、
Xaa1はアラニン残基、セリン残基またはトレオニン残基であり、
Xaa2はトリプトファン残基またはチロシン残基であり、
Xaa3はヒスチジン残基、アルギニン残基、セリン残基またはトレオニン残基であり、
Xaa4はアスパラギン残基またはアルギニン残基であり、
Xaa5はグルタミン酸残基、アスパラギン残基、アルギニン残基、またはアスパラギン酸残基であり、かつ
Xaa6はイソロイシン残基またはバリン残基である)によって表される、13アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、かつヒトIgGと結合可能であることを特徴とするペプチド。
【0022】
[9] 以下の1)~12)のいずれかのアミノ酸配列からなる、[8]のペプチド。
【0023】
1) DCTYTNGNLVWCT(配列番号29)
2) DCAYTNGNLVWCT(配列番号31)
3) DCSYTNGNLVWCT(配列番号32)
4) DCTWTNGNLVWCT(配列番号34)
5) DCTYHNGNLVWCT(配列番号35)
6) DCTYRNGNLVWCT(配列番号36)
7) DCTYSNGNLVWCT(配列番号37)
8) DCTYTRGNLVWCT(配列番号39)
9) DCTYTNGELVWCT(配列番号40)
10) DCTYTNGRLVWCT(配列番号41)
11) DCTYTNGDLVWCT(配列番号42)
12) DCTYTNGNLIWCT(配列番号45)
[10] ペプチドが2つのシステイン(C)残基間でジスルフィド結合を形成している、[1]~[9]のいずれかのペプチド。
【0024】
[11] 標識が結合されている、[1]~[10]のいずれかのペプチド。
【0025】
[12] [1]~[11]のいずれかのペプチドと連結されたタンパク質からなる融合タンパク質。
【0026】
[13] [1]~[11]のいずれかのペプチドを固相に結合してなる固定化ペプチド。
【0027】
[14] [1]~[11]のいずれかのペプチドをコードする核酸。
【0028】
[15] [1]~[11]のいずれかのペプチド又は[13]の固定化ペプチドをIgGと結合させること、並びに、結合したIgGを遊離させてIgGを回収することを含む、IgGの精製方法。
【0029】
[16] [1]~[11]のいずれかのペプチド又は[13]の固定化ペプチドにサンプル中のIgGを結合させ、結合したIgGを検出することを含む、IgGの検出方法。
【0030】
[17] [1]~[11]のいずれかのペプチド又は[13]の固定化ペプチドの少なくとも1種を含む、ヒトIgGの分析又は精製のためのキット。
【0031】
[18] [13]の固定化ペプチドを含有する、IgG分離用カラム。
【0032】
[19] 下記の式I':
(X1-3)-C-(X1)-Y-H-R-G-N-L-V-W-C-(X1-3) (I')
(式中、Xの各々は独立的にシステイン以外の任意のアミノ酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Yはチロシン残基であり、
Hはヒスチジン残基であり、
Rはアルギニン残基であり、
Gはグリシン残基であり、
Nはアスパラギン残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Vはバリン残基であり、かつ
Wはトリプトファン残基である。)
によって表される、13~17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、かつヒトIgGと結合可能であることを特徴とする、[1]のペプチド。
【0033】
[20] 下記の式I'':
(X1-3)-C-A-(X1)-H-R-G-E-L-V-W-C-(X1-3) (I'')
(式中、Xの各々は独立的にシステイン以外の任意のアミノ酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Aはアラニン残基であり、
Hはヒスチジン残基であり、
Rはアルギニン残基であり、
Gはグリシン残基であり、
Eはグルタミン酸残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Vはバリン残基であり、かつ
Wはトリプトファン残基である。)
によって表される、13~17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、かつヒトIgGと結合可能であることを特徴とする、[1]のペプチド。
【0034】
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2011-182539号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【発明の効果】
【0035】
本発明のヒトIgG結合性ペプチドは、IgA、IgM及びIgEと比べてIgGに対し高い選択性をもってヒトIgGに結合可能であるという利点を有している。このことは、例えばヒト血清等からIgGを選択的に分離することを可能にすることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ヒトIgG結合ファージクローンのELISAによる結合特異性を示す。
【図2】Lib-Aの配列(A)とそこから得られたペプチドの配列(B)を示す。
【図3】Lib-Bの配列を示す。
【図4】Lib-Cの配列を示す。
【図5】表面プラズモンによるGFc-C35-3/15(T5A, T7H, N8R, N10E)ペプチド(A)およびGFc-C35-3/15(T5A, Y6W, T7H, N8R, N10E)ペプチド(B)のヒトIgG(左パネル)およびヒトIgA(右パネル)に対する結合解析の結果を示す。
【図6】Lib-Dの配列を示す。
【図7】Lib-Dから得られたペプチド配列を基に各サイトで見られたアミノ酸の出現頻度を示す。
【図8】IgG結合性ペプチドを固定化したカラムによるヒト血清からのIgGの精製結果を示す。
【図9】IgG結合性ペプチドを固定化したカラムによりヒト血清から精製された溶出画分DのSDS-PAGEの結果を示す。各レーンはそれぞれ以下のサンプルを示す。1:マーカー、2:IgG、3:HAS、4:血清、5:溶出画分D。
【発明を実施するための形態】
【0037】
今回、本発明者らが見出したヒトIgGに対し特異的又は選択的な結合性を有するペプチドは、T7ファージ提示システムによって構築された分子内に1つのジスルフィド結合を含むランダムペプチドライブラリ( Sakamoto, K., Ito, Y., Hatanaka, T., Soni, P. B., Mori, T., and Sugimura, K. (2009) The Journal of biological chemistry 284(15), 9986-9993)を参考に、新たにデザイン、構築したライブラリからバイオパンニング法を利用して単離されたものであり、このとき得られた2種の特異的クローンは、互いに共通の配列の相同性が見られ、その配列を基に多様に置換又は欠失して調製した合成ペプチドは、IgGに対する特異性を示した。これらのペプチドのIgG結合に必須の残基の同定を行い、親和性増強へのアプローチ並びに該ペプチドを使ったヒト血清からのIgGの精製への応用を可能にした。本発明のIgG結合性ペプチドは、最もコンパクトなもので、13残基と小さく、これにより低コストによるペプチドをベースにしたIgGの精製システムの構築が期待できる。

【0038】
以下に、本発明についてさらに詳細に説明する。

【0039】
具体的には、本発明のIgG結合性ペプチド、該ペプチドによるIgGの精製法及び分析法、そのようなIgG精製又は検出のためのキットについて説明する。

【0040】
(IgG結合性ペプチド)
本発明のペプチドは、多数のランダムペプチドを含むファージライブラリのなかからヒトIgGと特異的に又は選択的に結合性を有するものとしてスクリーニングされたものである。

【0041】
本明細書中で使用するヒトIgGは、IgG1,IgG2,IgG3及びIgG4を指すものとする。

【0042】
すなわち、本発明のペプチドは、広義の一次構造として、下記の式I:
(X1-3)-C-(X2)-H-R-G-(Xaa1)-L-V-W-C-(X1-3) (I)
(式中、Xの各々は独立的にシステイン以外の任意のアミノ酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Hはヒスチジン残基であり、
Rはアルギニン残基であり、
Gはグリシン残基であり、
Xaa1はグルタミン酸残基またはアスパラギン残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Vはバリン残基であり、かつ
Wはトリプトファン残基である。)
によって表される、13~17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、かつヒトIgGと結合可能であることを特徴とするペプチドである。

【0043】
上記式で、N末端又はC末端のX1-3という表記は、システイン(C又はCys)以外の独立的に任意のアミノ酸残基Xが1~3個連続していることを意味し、それを構成するアミノ酸残基は同じか又は異なる残基であるが、好ましくは3個すべてが同じ残基でない配列からなる。同様に、X2もシステイン(C又はCys)以外の独立的に任意のアミノ酸残基Xが2個連続していることを意味し、それを構成するアミノ酸残基は同じか又は異なる残基であるが、好ましくは当該2個連続しているアミノ酸残基は同じ残基でない配列からなる。

【0044】
式Iの2つのシステイン残基はジスルフィド結合して環状ペプチドを形成することができる。通常、式Iのペプチドはジスルフィド結合している。

【0045】
式Iのペプチドのアミノ酸配列においてアミノ酸残基Xをさらに特定した式I'および式I''で表されるペプチドを以下に示す。

【0046】
すなわち、式I'で表されるペプチドは、
(X1-3)-C-(X1)-Y-H-R-G-N-L-V-W-C-(X1-3) (I')
(式中、Xの各々は独立的にシステイン以外の任意のアミノ酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Yはチロシン残基であり、
Hはヒスチジン残基であり、
Rはアルギニン残基であり、
Gはグリシン残基であり、
Nはアスパラギン残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Vはバリン残基であり、かつ
Wはトリプトファン残基である。)
によって表される、13~17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、かつヒトIgGと結合可能であることを特徴とする。

【0047】
式I''で表されるペプチドは、
(X1-3)-C-A-(X1)-H-R-G-E-L-V-W-C-(X1-3) (I'')
(式中、Xの各々は独立的にシステイン以外の任意のアミノ酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Aはアラニン残基であり、
Hはヒスチジン残基であり、
Rはアルギニン残基であり、
Gはグリシン残基であり、
Eはグルタミン酸残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Vはバリン残基であり、かつ
Wはトリプトファン残基である。)
によって表される、13~17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、かつヒトIgGと結合可能であることを特徴とする。

【0048】
また、式Iのペプチドのアミノ酸配列においてアミノ酸残基Xをさらに特定した式IIで表されるペプチドを以下に示す。

【0049】
すなわち、式IIで表されるペプチドは、
(X1-3)-C-(Xaa2)-(Xaa3)-H-R-G-(Xaa1)-L-V-W-C-(X1-3) (II)
(式中、Xの各々は独立的にシステイン以外の任意のアミノ酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Hはヒスチジン残基であり、
Rはアルギニン残基であり、
Gはグリシン残基であり、
Xaa1はグルタミン酸残基またはアスパラギン残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Vはバリン残基であり、
Wはトリプトファン残基であり、
Xaa2はアラニン残基、セリン残基またはトレオニン残基であり、かつ
Xaa3はチロシン残基またはトリプトファン残基である。)
によって表される、13~17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、かつヒトIgGと結合可能であることを特徴とする。

【0050】
上記の式I'、式I''および式IIのペプチドのアミノ酸配列において、17アミノ酸残基とした場合の、N末端から1番目及び2番目並びに16番目及び17番目のアミノ酸残基Xは欠失していてもよく、そのようなペプチドは13アミノ酸長からなる。

【0051】
本明細書で使用する「17アミノ酸残基とした場合の」とは、ペプチドのアミノ酸残基をアミノ酸番号で呼ぶときに、最長のアミノ酸長である17残基のN末端から順番に1番目から17番目まで番号づけするために便宜的に表現した用語である。

【0052】
またさらに、式Iのペプチドのアミノ酸配列においてアミノ酸残基Xをさらに特定した式IIIで表されるペプチドを以下に示す。

【0053】
式IIIで表されるペプチドは、
(X1-3)-C-A-Y-H-R-G-E-L-V-W-C-(X1-3) (III)
(式中、Xの各々は独立的にシステイン以外の任意のアミノ酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Aはアラニン残基であり、
Yはチロシン残基であり、
Hはヒスチジン残基であり、
Rはアルギニン残基であり、
Gはグリシン残基であり、
Eはグルタミン酸残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Vはバリン残基であり、かつ
Wはトリプトファン残基である。)
によって表される、13~17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、かつヒトIgGと結合可能であることを特徴とする。

【0054】
上記の式IIIのペプチドのアミノ酸配列において、17アミノ酸残基とした場合の、N末端から1番目及び2番目並びに16番目及び17番目のアミノ酸残基Xは欠失していてもよく、そのようなペプチドは13アミノ酸長からなる。

【0055】
さらに、上記の各式のペプチドのアミノ酸配列のシステイン(C)以外のアミノ酸残基、すなわち、17アミノ酸残基とした場合のN末端から1~3、5、6、15~17番目の各アミノ酸残基は、以下のものから選択されることが好ましい。ここで、各大文字のアルファベットは、アミノ酸の一文字表記である:
1番目のアミノ酸残基= S、G、F又は、なし
2番目のアミノ酸残基= D、G、A、S、P又は、なし
3番目のアミノ酸残基= S、D、T、N、E又はR、
5番目のアミノ酸残基= A又はT、
6番目のアミノ酸残基= Y又はW、
15番目のアミノ酸残基= S、T又はD、
16番目のアミノ酸残基= H、G、Y、T、N、D、F又は、なし、
17番目のアミノ酸残基= Y、F、H、M又は、なし。

【0056】
5番目のアミノ酸残基= A又はT、
6番目のアミノ酸残基= Y又はW、
式Iのペプチドのアミノ酸配列においてアミノ酸残基Xをさらに特定した式IVで表されるペプチドを以下に示す。

【0057】
式IVで表されるペプチドは、
D-C-(Xaa2)-(Xaa3)-H-R-G-(Xaa1)-L-V-W-C-T (IV)
Dはアスパラギン酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Hはヒスチジン残基であり、
Rはアルギニン残基であり、
Gはグリシン残基であり、
Xaa1はグルタミン酸残基またはアスパラギン残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Vはバリン残基であり、
Wはトリプトファン残基であり、
Tはトレオニン残基であり、
Xaa2はアラニン残基、またはトレオニン残基であり、かつ
Xaa3はチロシン残基またはトリプトファン残基である。)によって表される、13アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、かつヒトIgGと結合可能であることを特徴とする。

【0058】
式Iのペプチドの具体例のいくつかを以下の1)~17)に列挙するが、これらに制限されないことはいうまでもない。このようなペプチドはいずれもヒトIgGに対し他の種の免疫グロブリンと比べて格別に高い結合特異性又は結合選択性を有している:
1)DCTYHRGNLVWCT(配列番号47)
2)DCAYHRGNLVWCT(配列番号48)
3)DCTYHRGELVWCT(配列番号50)
4)DCAYHRGELVWCT(配列番号52)
5)DCAWHRGELVWCT(配列番号53)
6)DCAYHRGELVWCT(配列番号55)
7)GPDCAYHRGELVWCTFH(配列番号56)
8)RCAYHRGELVWCS(配列番号57)
9)GPRCAYHRGELVWCSFH(配列番号58)
10)SPDCAYHRGELVWCTFH(配列番号100)
11)GDDCAYHRGELVWCTFH(配列番号101)
12)GPSCAYHRGELVWCTFH(配列番号102)
13)GPDCAYHRGELVWCSFH(配列番号103)
14)GPDCAYHRGELVWCTHH(配列番号104)
15)GPDCAYHRGELVWCTFY(配列番号105)
16)SPDCAYHRGELVWCTFY(配列番号106)
17)SDDCAYHRGELVWCTFY(配列番号107)。

【0059】
また、本発明のペプチドは、広義の一次構造として、下記の式V:
D-C-(Xaa1)-(Xaa2)-(Xaa3)-(Xaa4)-G-(Xaa5)-L-(Xaa6)-W-C-T (V)
(式中、
Dはアスパラギン酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Gはグリシン残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Wはトリプトファン残基であり、
Tはトレオニン残基であり、
Xaa1はアラニン残基、セリン残基またはトレオニン残基であり、
Xaa2はトリプトファン残基またはチロシン残基であり、
Xaa3はヒスチジン残基、アルギニン残基、セリン残基またはトレオニン残基であり、
Xaa4はアスパラギン残基またはアルギニン残基であり、
Xaa5はグルタミン酸残基、アスパラギン残基、アルギニン残基、またはアスパラギン酸残基であり、かつ
Xaa6はイソロイシン残基またはバリン残基である)によって表される、13アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、かつヒトIgGと結合可能であることを特徴とするペプチドである。

【0060】
式Vの2つのシステイン残基はジスルフィド結合して環状ペプチドを形成することができる。通常、式Vのペプチドはジスルフィド結合している。

【0061】
式Vのペプチドの具体例のいくつかを以下の10)~21)に列挙するが、これらに制限されないことはいうまでもない。このようなペプチドはいずれもヒトIgGに対し他の種の免疫グロブリンと比べて格別に高い結合特異性又は結合選択性を有している:
10) DCTYTNGNLVWCT(配列番号29)
11) DCAYTNGNLVWCT(配列番号31)
12) DCSYTNGNLVWCT(配列番号32)
13) DCTWTNGNLVWCT(配列番号34)
14) DCTYHNGNLVWCT(配列番号35)
15) DCTYRNGNLVWCT(配列番号36)
16) DCTYSNGNLVWCT(配列番号37)
17) DCTYTRGNLVWCT(配列番号39)
18) DCTYTNGELVWCT(配列番号40)
19) DCTYTNGRLVWCT(配列番号41)
20) DCTYTNGDLVWCT(配列番号42)
21) DCTYTNGNLIWCT(配列番号45)。

【0062】
前述のとおり、本発明に関わる上記式のペプチドは、各アミノ酸配列のなかに離間した2つのシステイン(C)残基を有し、該システイン残基間でジスルフィド結合を形成しうるようにシステイン残基が配置されていることを特徴としており、好ましいペプチドは、2つのシステイン残基がジスルフィド結合して環状ペプチドを形成し、各システイン残基のN末端側及びC末端側には1または2個のシステイン以外の任意のアミノ酸残基を有していても良い。各システイン残基のN末端側及びC末端側には1または2個のアミノ酸残基を有する場合において、17アミノ酸残基とした場合のN末端から1~2、16~17番目の各アミノ酸残基は、上記例示のものである。

【0063】
本発明のペプチドは、ヒトIgGとの結合親和性が、他のヒト免疫グロブリン(IgA, IgE, IgM)と比較して約10倍以上、好ましくは約50倍以上、より好ましくは約200倍以上高い。本発明のペプチドとヒトIgGとの結合に関する解離定数(Kd)は、表面プラズモン共鳴スペクトル解析(例えばBIACOREシステム使用)により決定可能であり、例えば1×10-1M~1×10-3M未満、好ましくは1×10-4M未満、より好ましくは1×10-5M未満である。

【0064】
本発明のペプチドは、慣用の液相合成法、固相合成法などのペプチド合成法、自動ペプチド合成機によるペプチド合成などによって製造することができる(Kelley et al., Genetics Engineering Principles and Methods, Setlow, J.K. eds., Plenum Press NY. (1990) Vol.12, p.1-19;S tewart et al., Solid-Phase Peptide Synthesis (1989) W.H. Freeman Co.; Houghten, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1985) 82: p.5132、「新生化学実験講座1 タンパク質IV」(1992)日本生化学会編,東京化学同人)。あるいは、本発明のペプチドをコードする核酸を用いた遺伝子組換え法やファージディスプレイ法などによって、ペプチドを製造してもよい。例えば本発明のペプチドのアミノ酸配列をコードするDNAを発現ベクター中に組み込み、宿主細胞中に導入し培養することにより、目的のペプチドを製造することができる。製造されたペプチドは、常法により、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー、HPLCなどのクロマトグラフィー、硫安分画、限外ろ過、免疫吸着法などにより、回収又は精製することができる。

【0065】
ペプチド合成は、各アミノ酸の、結合しようとするα-アミノ基とα-カルボキシル基以外の官能基を保護したアミノ酸類を用意し、それぞれのアミノ酸のα-アミノ基とα-カルボキシル基との間でペプチド結合形成反応を行う。通常、ペプチドのC末端に位置するアミノ酸残基のカルボキシル基を適当なスペーサー又はリンカーを介して固相に結合しておく。上で得られたジペプチドのアミノ末端の保護基を選択的に除去し、次のアミノ酸のα-カルボキシル基との間でペプチド結合を形成する。このような操作を連続して行い側基が保護されたペプチドを製造し、最後に、すべての保護基を除去し、固相から分離する。保護基の種類や保護方法、ペプチド結合法の詳細は、上記の文献に詳しく記載されている。

【0066】
遺伝子組換え法は、本発明のペプチドをコードするDNAを適当な発現ベクター中に挿入し、適当な宿主細胞にベクターを導入し、細胞を培養し、細胞内から又は細胞外液から目的のペプチドを回収することを含む。ベクターは、限定されないが、例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、ファージミド、ウイルスなどのベクターである。プラスミドベクターとしては、限定するものではないが、大腸菌由来のプラスミド(例えばpET22b(+)、pBR322、pBR325、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19、pBluescript等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110、pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13、YCp50等)などが挙げられる。ファージベクターとしては、限定するものではないが、T7ファージディスプレイベクター(T7Select10-3b、T7Select1-1b、T7Select1-2a、T7Select1-2b、T7Select1-2c等(Novagen))、λファージベクター(Charon4A、 Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11、λZAP、λZAPII等)が挙げられる。ウイルスベクターとしては、限定するものではないが、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、センダイウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスなどが挙げられる。コスミドベクターとしては、限定するものではないが、Lorist 6、Charomid9-20、Charomid9-42などが挙げられる。ファージミドベクターとしては、限定するものではないが、例えばpSKAN、pBluescript、pBK、pComb3Hなどが知られている。ベクターには、目的のDNAが発現可能なように調節配列や、目的DNAを含むベクターを選別するための選択マーカー、目的DNAを挿入するためのマルチクローニングサイトなどが含まれうる。そのような調節配列には、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、S-D配列又はリボソーム結合部位、複製開始点、ポリAサイトなどが含まれる。また、選択マーカーには、例えばアンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、等が用いられうる。ベクターを導入するための宿主細胞は、大腸菌や枯草菌等の細菌、酵母細胞、昆虫細胞、動物細胞(例えば、哺乳動物細胞)、植物細胞等であり、これらの細胞への形質転換又はトランスフェクションは、例えば、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、パーテイクルガン法、PEG法等を含む。形質転換細胞を培養する方法は、宿主生物の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。例えば、大腸菌や酵母細胞等の微生物の培養では、宿主微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有する。本発明のペプチドの回収を容易にするために、発現によって生成したペプチドを細胞外に分泌させることが好ましい。そのために、その細胞からのペプチドの分泌を可能にするペプチド配列をコードするDNAを目的ペプチドをコードするDNAの5'末端側に結合する。細胞膜に移行した融合ペプチドがシグナルペプチダーゼによって切断されて、目的のペプチドが培地に分泌放出される。あるいは、細胞内に蓄積された目的ペプチドを回収することもできる。この場合、細胞を物理的又は化学的に破壊し、タンパク質精製技術を使用して目的ペプチドを回収する。

【0067】
それゆえに、本発明はさらに、本発明のペプチドをコードする核酸にも関する。ここで、核酸は、DNA又はRNA(例えばmRNA)を含む。

【0068】
本発明のペプチドは、IgGの検出を可能にするために、標識されていてもよい。標識は、限定されないが、例えば蛍光色素、化学発光色素、酵素、放射性同位元素、蛍光タンパク質、ビオチンなどを含む。好ましい標識の例は、フルオレセイン、FITCなどのフルオレセイン誘導体、ローダミン、テトラメチルローダミンなどのローダミン誘導体、テキサスレッドなどの蛍光色素である。

【0069】
本発明のペプチドは、任意のタンパク質と融合させてもよい。タンパク質がGFP(緑色蛍光タンパク質)のような蛍光タンパク質、ペルオキシダーゼなどの酵素などであれば、該タンパク質を標識として使用できる。この場合、本発明のペプチドと該タンパク質とを、必要に応じて適当なリンカーを介して融合タンパク質として遺伝子組換え法によって作製できる。このとき、本発明のペプチドがヒトIgGとの結合性を損なわないように融合タンパク質を作製するべきである。

【0070】
本発明のペプチドはさらに、ヒトIgGの分離精製、分析などに使用できるように、アフィニティカラムに充填可能な固相上に固定化されてもよい。

【0071】
ペプチドを固定化するのに用いる好適な固相としては、限定するものではないが、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、スチレン-ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸エステルポリマー、フッ素樹脂、シリカゲル、架橋デキストラン、ポリサッカライド、アガロース等の多糖類、ガラス、金属、磁性物質、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。そのような固相の形状は、例えば、トレー、球、繊維、粒子、棒、平板、容器、セル、マイクロプレート、試験管、膜(フィルム又はメンブラン)、ゲル、チップなどの任意の形状でよい。具体的には例えば、磁性ビーズ、ガラスビーズ、ポリスチレンビーズ、セファロースビーズ、シリカゲルビーズ、多糖類ビーズ、ポリスチレンプレート、ガラスプレート、ポリスチレンチューブなどが挙げられる。これら固相への本発明のペプチドの固定化は、当業者に周知の方法を用いて行うことができ、例えば物理的吸着法、共有結合法、イオン結合法等によって行うことができる。固定化は共有結合にて行うことが好ましく、固相表面に化学官能基(例えばヒドロキシ基、アミノ基、N-ヒドロキシスクシンイミジル基など)、好ましくは炭素数約4~20のアルキレン鎖をスペーサーとして有する化学官能基を有しており、これとペプチドのカルボキシ末端を化学的に反応させてエステル結合又はアミド結合等を形成する。本発明のペプチドを固定化した固相は、アフィニティークロマトグラフィーカラム、HPLCカラム等のカラムに充填して、ヒトIgGを検出、精製又は分離するために用いることができる。

【0072】
(IgGの精製法)
本発明はさらに、上記の本発明のペプチド又は固定化ペプチドをIgGと結合させること、並びに、結合したIgGを遊離させてIgGを回収することを含む、IgGの精製方法を提供する。

【0073】
本発明のペプチドを固定化した固相を、アフィニティークロマトグラフィーカラム、HPLCカラム等のカラムに充填し、適当なバッファーで平衡化し、室温~0℃、好ましくは約10℃~0℃、更に好ましくは約4℃、の低温でヒトIgGを含有する液をアプライし、固相上のペプチドにヒトIgGを結合させる。例えば血清中のIgGを分離する場合には、中性域のpH、例えばpH6.0~7.5のバッファーを使用してカラムにアプライし、結合操作を行うことができる。溶出は、酸性域のpH、例えばpH2~4のバッファー(例えば0.3MのNaClを含有するpH3.5からpH2.5の0.2Mグリシン-HClバッファー)をカラムに流して行うことができる。

【0074】
IgGが回収されたがどうかは、例えば、電気泳動、その後の抗ヒトIgG抗体を使用するウエスタンブロット法によって測定できる。泳動条件は、5~20%アクリルアミドグラジエントゲルを用いたSDS-PAGEを行い、また、ウエスタンブロット条件は、泳動後のタンパク質をPVDF膜に転写し、スキムミルクでブロッキング後、抗ヒトIgGα鎖ヤギ抗体とHRP標識抗ヤギIgGマウス抗体で検出を行うことができる。

【0075】
本発明の方法は、種々の方法で生産されたIgG含有生産物からIgGを精製する工程のなかでIgGに富む画分を得る場合に有用である。それゆえに、アフィニティークロマトグラフィー、HPLC等のカラムクロマトグラフィーにおいて本発明の方法を使用することが好ましい。IgGの精製に際しては、このようなクロマトグラフィー法に加えて、タンパク質の慣用的な精製技術、例えばゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー、硫安分画、限外ろ過などを適宜組み合わせることができる。

【0076】
(IgGの分析法)
本発明はさらに、上記の本発明のペプチド又は固定化ペプチドにサンプル中のIgGを結合させ、結合したIgGを検出することを含む、IgGの検出方法を提供する。ここで、検出には、定性又は定量のいずれかの分析を含むものとする。

【0077】
IgGの検出は、操作中に適するバッファーを使用しながら、メンブランやポリスチレンウエルプレートなどにサンプルを結合し、これに本発明の標識ペプチドを接触させ、必要に応じて洗浄後、標識のレベルを定性又は定量することによって行うことができる。

【0078】
あるいは、上記のような本発明のペプチドを固定化したHPLCカラムを使用する場合には、該カラムに、ヒトIgGを含有するサンプルを注入し、結合バッファーを流してペプチドにヒトIgGを結合し、例えば吸光度280nmで、もしくは280nmの励起光による350nmの蛍光で、タンパク質を検出し記録し、溶出緩衝液(例えば、0.15MのNaClを含む0.1Mグリシン塩酸緩衝液pH2.5へのグラジエント溶出)にてカラムから溶出させ、現れたピーク及びピーク面積により、IgGの定性及び定量を行うことができる。

【0079】
(キット及びカラム)
本発明はさらに、上記の本発明のペプチド又は固定化ペプチドの少なくとも1種を含む、ヒトIgGの分析(定性、定量等)又は精製のためのキットを提供する。

【0080】
本発明のキットに含まれる個々のペプチド又は固定化ペプチドは、個別の容器に収容される。また、必要であれば、ヒトIgGの分析手順や精製手順を記載した使用説明書をキットに備えてもよい。さらにキットには、分析に必要な試薬やバッファー、固定化ペプチド充填カラムなどを含めてもよい。

【0081】
本発明はさらに、上記の本発明の固定化ペプチドを含有する、IgG分離用カラムを提供する。

【0082】
上記IgG分離用カラムは、IgGを分離するためのカラムであり、具体的には、IgGの分析又は精製・分取のための、クロマトグラフィーカラム、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)カラム等のカラムを包含する。カラムのサイズは、特に制限されないものとし、分析用、精製・分取用などの用途、アプライ(搭載)又は注入する量、などに応じて変化させうる。また、カラムの材質は、金属、プラスチック、ガラス等の、カラムとして通常使用されるようなものでよい。

【0083】
上記のカラムは、上記の手法に準じて作製した本発明の固定化ペプチド(乾燥又は湿潤状態)をカラムに密に充填することによって製造できる。
【実施例】
【0084】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、それらの実施例によって制限されないものとする。
【実施例】
【0085】
T7ファージ提示法によって構築した2つのCysによって環状構造を持つランダムペプチドライブラリから、ヒトIgG特異的なファージを単離するため、以下のバイオパンニングの手法を用いた。
【実施例】
【0086】
すなわち、0.5%BSAと0.1μMのタイプII IgG結合ペプチドK6R(J. Biol. Chem. 284, 9986, 2009)を含むPBS中の5×1010 pfuのT7ファージライブラリ(X3CX8CX3、X3CX9CX3 X3CX10CX3の等量混合物)溶液を、ヒトIgG‐Fc(From human plasma, Athens Research & Technology, Athens, GA, USA)でコート(1μg/100μl/well)し、0.5%BSAでブロッキングした96穴マイクロプレート(Nunc, Maxisorp)のウェルに加え、1時間反応させた。上清のファージ溶液を除いた後、0.1%Tweenを含むPBSで10回ウェルを洗浄した。大腸菌BLT5615(Novagen)の培養液(300μl)を加えて感染させ、3mlの大腸菌培養液と一緒に37℃にて、増殖、溶菌するまでインキュベートした。溶菌後の培養液から定法に従い、ポリエチレングリコールによるファージ沈殿法によってファージを回収した。得られたファージは、PBSに溶解させ、0.45μmのフィルターを通した後、次のパンニングに用いた。上記を含め4回のパンニングを行うことによって、IgG特異的なファージを濃縮した。
【実施例】
【0087】
4回のパンニング後に得られたファージの種々のIgGに対する結合特異性をELISAで調べたところ、図1に示したように、ヒトIgGに結合するだけでなく、ウサギやヤギ、マウスのIgGとも結合活性が見られた。
【実施例】
【0088】
そこで、得られたファージの提示するペプチドモチーフの解析を行いアミノ酸配列を決定した(表1)。
【表1】
JP0005994068B2_000002t.gif
【実施例】
【0089】
比較的結合活性の強かったGFc-C35について、ペプチド合成を行い、表面プラズモン共鳴(SPR)解析による親和性評価を行ったところ、Kd値で14μMと親和性が低く、親和性リガンドとして利用するには、親和性の増強が必要であることが分かった。
【実施例】
【0090】
そこで、まず、2つのCysで挟まれた領域を対象に、GFc-C35で完全に保存されていたGly9, Leu11, Val12およびTrp13、ならびにThr15を固定し、その他の部位をNNKの混合ヌクレオチドでランダム化したライブラリ(ライブラリA:Lib-A、図2(A))を構築し、バイオパニングによって得られたペプチドの配列から、結合に優位なアミノ酸の特性を評価した(ただし、ライブラリから得られたペプチドのアミノ酸配列の1位は、共通の特徴がほとんど見られないことから、このライブラリ化からは外した)。このライブラリAを用いて、ヒト抗体に対するバイオパニングを行った後、得られたファージのペプチドの配列と、各アミノ酸部位で見られたアミノ酸を図2(B)に示す。5位には側鎖の小さなThr, Ser, Alaのみが見られ、また、6位には、Trpが最も多くその他Tyr, Pheの芳香環を持った側鎖で占められていた。7位はHisが最も多く、一部SerとTrpが見られた。また、8位にはArg,Leu,Metが多く見られた。さらに10位では親水性のアミノ酸で占められていたが、その中ではArgが最も多かった(図2)。
【実施例】
【0091】
以上の結果から、Gly9、Leu11,Val12,Trp13およびThr15を固定化した場合の、IgG結合における重要な各部位の側鎖の特徴が明らかになったが、再度、保存された残基の重要性の確認と、より強い結合力を持ったペプチドのスクリーニングを行うため、ライブラリB:Lib-Bをデザインした。
【実施例】
【0092】
すなわち、図3に示したように、Lib-Aで得られたクローンのペプチド配列の特性を含めながら、表1で完全に保存されていたアミノ酸(Leu11, Val12, Trp13およびThr15)についても、類似の側鎖を持ったアミノ酸を含む変異を導入しライブブラリ構築を行った。ただし、Gly9は、ペプチドの立体構造の維持に重要と思われたので固定化し、また、2つのCysより外側についてはライブラリ化からは外し、元のGFc-C35のペプチドの配列(Asp3とThr15)を付加するのみとした)。構築したライブラリを用いて、厳しい洗浄条件でバイオパニングを行い、ELISAでのスクリーニングによって強い結合活性を示したクローンのペプチド配列を解析した。
【実施例】
【0093】
得られた配列を表2に示す。
【表2】
JP0005994068B2_000003t.gif
【実施例】
【0094】
結果、5位については、SerやThrと比べて顕著な優位性は見えなかったがAlaが一番多かった。6位については、Lib-Aで有意であったTrpに代わり、TyrとPheが優位になった。7位については、ライブラリでは多様なアミノ酸を導入したにもかかわらず、Hisが圧倒的に多くなった。8位は、Lib-AでのArgとLeuに代わり、PheとLeuが多くを占めた。10位では、酸性のアミノ酸AspとGluが多くを占めたが、ポジティブな電荷を持つLys, HisやGlnも少数みられた。一方、最初の単離されたクローンの配列から予想されたように、Leu11,Val12、Trp13は、ほぼ保存されていたが、極僅か11位ではTyr、12位ではIle、13位ではArgへの置換が見られた。
【実施例】
【0095】
これらの高頻度で出現するアミノ酸は、各アミノ酸の側鎖のIgGに対する結合への寄与を反映させたものと考えられる。元のライブラリ(ライブラリO:Lib-O)、ライブラリA,B(Lib-A, B)から得られたクローンのペプチド配列において、高い頻度で見られたアミノ酸を各位置ごとにまとめて表3に示す。
【表3】
JP0005994068B2_000004t.gif
【実施例】
【0096】
この情報に基づいて、さらにCysの両外側の配列を付加しランダム化したライブラリを構築した(Lib-C、図4)。このライブラリでは、Cysの内部の配列は、Lib-A、Bにおける高頻度で出現するアミノ酸を含み、Cysの両外側の残基をNNKの混合ヌクレオチドによる完全なランダム配列か、あるいは、Lib-OまたはLib-Aで見られた類似のアミノ酸と類似のアミノ酸を含むようにライブラリ化した。ライブラリの構成に関し、6位には本来Thrを入れるべきであったが、塩基混合においてThrを入れると非常にアミノ酸数が多くなることから、Thrに代えて疎水および/またはアロマティックのアミノ酸を入れた。また、7位には本来Ser、Arg、Trp等を入れるべきであったが、Hisが圧倒的に多かったことからHisを加え、そのコントロールとしてTyr、Glnを加えた。
【実施例】
【0097】
このライブラリを使って、再度パニングにより、結合性の高いクローンを選別し、配列を解析した結果を表4に示す。
【表4】
JP0005994068B2_000005t.gif
【実施例】
【0098】
結果、N末側Cysの外側の2,3位では、特徴的なアミノ酸の出現が見られなかったが、C末側Cysの外側の15位ではThrとSerの高い出現が見られた。しかし、16、17位では特徴的なアミノ酸が見られなかった。内部配列については、ほぼ、Lib-O,A,Bから取れた配列の結果(表3)と矛盾しない配列が得られた。
【実施例】
【0099】
次に、結合の増強に寄与すると考えられる各サイトで高い頻度で見られたアミノ酸の導入の効果を、合成ペプチドを用いて評価、検証を行うこととした。
【実施例】
【0100】
検証のためのアミノ酸の領域を狭めるために、GFc-C35の配列のうち、両端から1つずつ(GFc-C35-2/16)、または2つずつ削ったペプチド(GFc-C35-3/15)を合成した。この内、GFc-C35-3/15の合成ペプチドを基準にして、アミノ酸変異導入による親和性への影響を評価した。すなわち、ファージライブラリから得られた高い頻度あるいは一部で観察されたアミノ酸に置換したペプチドを合成し、その結合解析を行うことで、各アミノ酸置換の親和性への寄与を評価した。結果を表5に示す。
【表5】
JP0005994068B2_000006t.gif
【実施例】
【0101】
両端から1つずつ(GFc-C35-2/16)、または2つずつ削ったペプチド(GFc-C35-3/15)の親和性解析を行ったところ、それぞれのKd値は、GFc-C35の14μMに比べ、25μMおよび130μMと増大し、親和性が低下した。この結果から、両端の残基(1、2、16、17位)の結合への寄与が明らかとなった。
【実施例】
【0102】
Asp3については、Lib-0およびLib-CでArgが共通してみられた(表1および4)。置換したペプチド(GFc-C35-3/15(D3R))と元のペプチド(GFc-C35-3/15)の親和性を比較したところ、親和性の上昇がみられた。
【実施例】
【0103】
Thr5については、Lib-Aにおいて、ほとんどAla、Thr、Serのみが見られ、また、その後のLib-B,Cにおいて3つのアミノ酸の中での優位性がみられなかった(表3)。置換した2種のペプチド(GFc-C35-3/15(T5A)、GFc-C35-3/15(T5S))と元のペプチド(GFc-C35-3/15)の親和性を比較したところ、Alaにより置換したペプチドが最も、高い親和性を示した。
【実施例】
【0104】
Tyr6については、Lib-A,Bからは、Trp、Tyr、Pheがほぼ均等に見られたが、それぞれを導入した置換体を作製し評価を行ったところ、GFc-C35-3/15(Y6F)は大きく親和性の低下がみられ、Trpへの置換(GFc-C35-3/15(Y6W))では、親和性の上昇がみられた。
【実施例】
【0105】
Thr7については、Lib-Aから得られたHis、Serをそれぞれ導入した置換体を作製し評価した。いずれの場合も、大きく親和性が向上したが、特にHisへの置換は顕著に親和性が増加した(約50倍)。
【実施例】
【0106】
Asn8については、Lib-OおよびLib-A、Bで多く見られたLeuとArgへの置換を行った。Argへの置換(GFc-C35-3/15(N8R))では、約18倍のKd値の低下がみられ、親和性が大きく増大した。一方、Leuへの置換(GFc-C35-3/15(N8L))は大きく親和性を低下した。
【実施例】
【0107】
Asn10については、Lib-Aからは、電荷の対照的なArgとGluが多く見られた。このアミノ酸を導入したペプチド(GFc-C35-3/15(N10R)およびGFc-C35-3/15(N10E))では共に元のペプチド(GFc-C35-3/15)より親和性が向上した。この結果は、荷電性の残基が結合活性を増加させ得ることを示唆する。このことは、Asn10を電荷を持たないGlnで置換した場合(GFc-C35-3/15(N10Q))に、元のペプチドとほぼ同等の親和性を有し、親和性の増強の効果がなかったことからも支持される。一方、Asn10をAspで置換した場合(GFc-C35-3/15(N10D))でも親和性の向上が若干認められるが、長い側鎖を持つGluで置換したペプチド(GFc-C35-3/15(N10E))程には親和性が向上しなかった。したがって、親和性が向上させるためには、導入するアミノ酸残基が、ある程度の長さの側鎖を有することが示唆された。
【実施例】
【0108】
Leu11については、Lib-OおよびLib-Bでは、11位の位置は、Leuが圧倒的に多く、結合に重要残基とみなされるが、Lib-Cにおいては、Metの出現もみられた。そのため、Leu11をMetで置換したところ(GFc-C35-3/15(L11M))、親和性の低下がみられた(Kd値で約2倍)。
【実施例】
【0109】
Val12については、Lib-Cにおいて見られたIleに置換したところ、元のペプチドと比べてKd値が1/10程度となり、親和性が向上した。
【実施例】
【0110】
Thr15については、Lib-Cにおいて高頻度で出現したSerに置換したところ、元のペプチドと比較して親和性の上昇がみられた(Kd値で約1/4程度)。
【実施例】
【0111】
上記の検討を基に、親和性の向上に寄与することが予測されるアミノ酸置換を組み合わせたペプチドを合成した(表6)。
【表6】
JP0005994068B2_000007t.gif
【実施例】
【0112】
まず、最も効果の大きかった、Thr7HisとAsn8Argの置換を導入したところ(GFc-C35-3/15(T7H, N8R))、Kd値が1.1μMと低下し、親和性増強の効果が見られた。
【実施例】
【0113】
さらに、このペプチド(GFc-C35-3/15(T7H, N8R))に、表5で効果のあったT5A、Y6W、N10E、V12Iを一つずつ導入したところ、T5AまたはN10Eを導入したペプチド(GFc-C35-3/15(T7H, N8R, T5A)またはGFc-C35-3/15(T7H, N8R, N10E))では、親和性増強の効果が見られたが、Y6WまたはV12Iを導入したペプチド(GFc-C35-3/15(T7H, N8R, Y6W)またはGFc-C35-3/15(T7H, N8R, V12I))では、親和性が低下した。これは、個々の優位変化を積み上げても、お互いの効果の補償や干渉作用により、必ずしも加成性が成り立たないことを示唆する。
【実施例】
【0114】
続いて、親和性増強の効果が大きかったペプチドGFc-C35-3/15(T5A, T7H, N8R, N10E)およびGFc-C35-3/15(T5A, Y6W, T7H, N8R, N10E)の表面プラズモン共鳴(SPR)解析を行った。
【実施例】
【0115】
結果を、図5に示す。
【実施例】
【0116】
センサーグラムの解析によると、GFc-C35-3/15(T5A, T7H, N8R, N10E)の親和性(Kd値)は、54nMであり、元のGFc-C35-3/15ペプチドに比べ、Kd値は、約24分の1となった。また、結合速度定数は、ka=4.6×105 M-1S-1と極めて早く、また解離速度定数kd=2.5×10-2 S-1 であった。
【実施例】
【0117】
GFc-C35-3/15(T5A, Y6W, T7H, N8R, N10E)の親和性(Kd値)は、257nMであり、元のGFc-C35-3/15ペプチドに比べ上昇した。解離反応速度定数kd値は、1.4×10-2 S-1 であり、GFc-C35-3/15(T5A, T7H, N8R, N10E)の半分にまで低下し、親和性の増加に寄与している一方で、結合速度定数kaが5.4×104 M-1S-1と極端に低下(8分の1以下)しているために、GFc-C35-3/15(T5A, Y6W, T7H, N8R, N10E)は全体として親和性が低下していた。このように、Y6Wの置換は、ka値とkd値の両方に大きく影響を与えるアミノ酸置換であることが示された。
【実施例】
【0118】
GFc-C35-3/15(D3R, T5A, T7H, N8R, N10E, T15S)の親和性は、147nMであり、元のGFc-C35-3/15ペプチドに比べ上昇した。しかしながら、GFc-C35-3/15(T5A, T7H, N8R, N10E)と比較すると親和性は低下した。
【実施例】
【0119】
上記検討により、元のペプチドであるGFc-C35-3/15よりも約2400倍の親和性を有するGFc-C35-3/15(T5A, T7H, N8R, N10E)が得られた。この最も高い親和性を示したペプチドを以下C35A-3/15と称する。
【実施例】
【0120】
表5の結果よりGFc-C35の配列のうち、両端から1つずつ(GFc-C35-2/15)、または2つずつ削ったペプチド(GFc-C35-3/15)のKd値は、GFc-C35に比べ、その親和性は低下しており、両端の残基(1,2、16,17位)の結合への寄与が明らかとなった。そこで、両端の2残基の親和性への寄与を評価した。最も高い親和性を示したC35A-3/15に対して、1位にGly、2位にPro、16位にPhe、17位にHisを加えたペプチド(C35A)を合成し、親和性解析を行った。
【実施例】
【0121】
これら4残基のアミノ酸付加による効果を確認するため、C35A-3/15(D3R, T15S)についても1位にGly、2位にPro、16位にPhe、17位にHisを加えたペプチド(C35A(D3R, T15S))を合成し、親和性解析を行った。なお、C35A-3/15(D3R, T15S)は表6におけるGFc-C35-3/15(D3R, T5A, T7H, N8R, N10E, T15S)と同様の配列である。
【実施例】
【0122】
結果を表7に示す。
【表7】
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【実施例】
【0123】
C35A-3/15の配列の両端にGly、Pro、Phe、Hisを導入したペプチド(C35A)では、元の配列と比較して親和性の向上がみられた(Kd値で約5分の1)。また、C35A-3/15(D3R, T15S)の配列の両端に同様のアミノ酸を導入したペプチド(C35A(D3R, T15S))でも、元の配列と比較して親和性が向上した(Kd値で約3分の1)。
【実施例】
【0124】
2種類のペプチドにおいて、両端の2残基(1、2、16、17位)の導入により親和性の向上が認められたことから、Cys残基の外部配列もヒトIgGに対する親和性に寄与していることが示された。すなわち、Cys残基の外部配列の最適化によって、より高い親和性を有する配列を得る可能性が示唆された。そこで、2つのCys残基間の内側の配列を固定化し、Cys残基の外側のアミノ酸についてXYZの混合ヌクレオチドによってランダム化したライブラリ(Lib-D、図6)を構築し、バイオパンニングによって得られたペプチドの配列から、結合に優位なアミノ酸の特性を評価した。
【実施例】
【0125】
すなわち、5×1011 pfuのT7ファージライブラリ(X3CAYHRGELVWCX3)溶液を、RNAse(Ribonuclease A from bovine pancreas, SIGMA)をコート(4μg/400μl/well)し、0.5%BSAでブロッキングした96穴マイクロプレート(Nunc, Maxisorp)のウェルに加え、1時間反応させた(吸収ステップ1)。その上清を、次に、HSA(Human serum albmin, SIGMA)をコート(4μg/400μl/well)し、0.5%BSAでブロッキングした96穴マイクロプレート(Nunc, Maxisorp)のウェルに加え、1時間反応させた(吸収ステップ2)。その後、その上清を、ヒトIgG1(モノクローナル、中外製薬株式会社)をコート(1μg/200μl/well)し、0.5%BSAでブロッキングしたウェルに移し、1時間反応を行った(結合ステップ)。上清のファージ溶液を除いた後、0.1%Tweenを含むPBSで3回ウェルを洗浄した(洗浄ステップ)。大腸菌BLT5403(Novagen)の培養液(200μl)を加えて感染させ、10mlの大腸菌培養液と一緒に37℃にて、増殖、溶菌するまでインキュベートした(増殖ステップ)。溶菌後の培養液から定法に従い、ポリエチレングリコールによるファージ沈殿法によってファージを回収した。得られたファージは、PBSに溶解させ、次のパンニングに用いた。上記を含め7回のパンニングを行うことによって、IgG特異的なファージを濃縮した。ただし、2~7回目のパンニングでは、ステップを追うごとに洗浄回数を増やし最大30回行った。また、6~7回目のパンニングにおいて吸収ステップは行っていない。7回目のパンニング後ファージを単クローン化し、ELISAによってヒトIgGに対する結合特異性を評価した。評価したファージの内、ヒトIgGに対し、高い結合活性を示したクローンについて、提示されたペプチド配列を解析した。その結果を表8に示す。
【表8】
JP0005994068B2_000009t.gif
【実施例】
【0126】
得られたペプチド配列を基に、各サイトで見られたアミノ酸の出現頻度を図7に示す。
【実施例】
【0127】
N末側の1位ではSerが優位であり、元の配列(C35A)のGlyの出現頻度は2番目に高かった。2位ではAsp、Glyが優位に出現した。3位ではSer残基の出現が優位であり、元の配列で見られたAspの出現頻度は2番目に高かった。C末側の15位ではSerの出現頻度が顕著に高かった。16位ではHis、Glyの出現頻度が高かった。17位ではTyrが優位に出現し、芳香環を有するTyr、Pheの出現が優位であった。これらの結果は2つのCys残基の外部配列にこれらのアミノ酸を導入することで、ヒトIgGに対しより高い親和性を有するペプチドをデザインできる可能性を示すものである。
【実施例】
【0128】
上記の検討を基に、各サイトで高い頻度で見られたアミノ酸の導入の効果を、合成ペプチドを用いて評価、検証を行うこととした。
【実施例】
【0129】
C35Aの合成ペプチドを基準にして、アミノ酸変異導入により、上記ファージライブラリにて高い頻度で観察されたアミノ酸に置換したペプチドを合成し、上記と同様に表面プラズモン共鳴(SPR)解析によりヒトIgGに対する結合解析を行い、各アミノ酸置換の親和性に対する寄与を評価した。結果を以下の表9に示す。
【表9】
JP0005994068B2_000010t.gif
【実施例】
【0130】
得られたIgG結合性ペプチドの有用性を確認するために、IgG結合性ペプチドを固定化したカラムを用いて、ヒト血清からのIgGの精製を行った。IgG結合性ペプチドを固定化したカラムは以下の方法によって作製した。
【実施例】
【0131】
1mM HCl (5mL)にて平衡化したHiTrap NHS-activated HPカラム (1ml, GE Healthcare)に、ペプチド溶液(4.0 mgのN末端をPEG化したC35A-3/15(NH2-PEG4-DCAYHRGELVWCT-NH2)4mgを0.05M 炭酸緩衝液(pH8.3) 1.1mLに溶解したもの(濃度1.5mM))1mLを加え、室温で30分間固定化した。その後、1M Tris (1mL)で洗浄し、1M Tris (2mL)を加えて室温で30分間ブロッキングした。PBS(6mL)で3回、続いてPBS(1mL)で1回洗浄した。上記操作により、固定化量1.2μmolのペプチド固定化カラムを作製した。
【実施例】
【0132】
Profiniaタンパク質精製システム(BIO RAD)に得られたペプチド固定化カラム(1.2μmol)を使用し、ヒト血清(1mL)を5倍希釈したPBS溶液(5mL)をペプチド固定化カラムにアプライした。PBSにてカラムを洗浄後、0.1M グリシン塩酸(pH2.5)にてステップワイズ溶出を行った。カラムからのタンパク質の溶出は、280nmの吸光度で追跡した。
【実施例】
【0133】
結果を図8に示す。
【実施例】
【0134】
溶出画分の溶液(画分D,5mL)の吸光度の測定結果より,タンパク質の回収量は10.4mgであることが確認された。
【実施例】
【0135】
図8に示される溶出画分Dについて、SDS-PAGE(還元処理)を従来公知の手法に従ってIgGの確認を行った。即ち、溶出画分Dを2-メルカプトエタノールにより還元処理を行った後,4~20%ポリアクリルアミドグラジェントゲル(ミニプロティアンTGXゲル;BioRad)上で電気泳動を行い、Gelcode Blue Regentにて染色させた。結果,IgGの軽鎖(L鎖)及び重鎖(H鎖)を示す25kDa付近及び50kDa付近のきれいなバンドが確認された(図9のレーン5)。ただし、レーン1,2,3,4は分子量マーカー、標品のヒトIgG,HSA,ヒト血清のサンプルを示す。
【実施例】
【0136】
このことから、IgG結合性ペプチドを固定化したカラムは、ヒトIgG精製用のアフィニティカラムとして利用できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明は、ヒトIgGと特異的又は選択的に結合可能なペプチドを提供するものであり、これによって、抗体医薬としてのIgGの製造におけるIgGの精製のために、またIgGの分析のために産業上有用である。
【0138】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8