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明細書 :足付き車いす

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成27年3月23日(2015.3.23)
発明の名称または考案の名称 足付き車いす
国際特許分類 A61G   5/02        (2006.01)
FI A61G 5/02 510
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 15
出願番号 特願2013-531217 (P2013-531217)
国際出願番号 PCT/JP2012/070972
国際公開番号 WO2013/031566
国際出願日 平成24年8月20日(2012.8.20)
国際公開日 平成25年3月7日(2013.3.7)
優先権出願番号 2011185522
優先日 平成23年8月29日(2011.8.29)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IS , JP , KE , KG , KM , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US , UZ , VC , VN
発明者または考案者 【氏名】岡田 徳次
出願人 【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100080089、【弁理士】、【氏名又は名称】牛木 護
【識別番号】100161665、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 知之
【識別番号】100121153、【弁理士】、【氏名又は名称】守屋 嘉高
【識別番号】100178445、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 淳二
【識別番号】100133639、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 卓哉
【識別番号】100173923、【弁理士】、【氏名又は名称】小原 隆章
【識別番号】100188994、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 裕介
審査請求 未請求
要約 簡単な手動操作によって複数の足を任意の向きに制御でき、滑り易い路面、軟弱な路面、障害物に対応して、自由に移動することを可能にする足付き車いすを提供する。車いす本体11と、車いす本体11に大輪軸12を介して軸支される大輪2と、大輪2に回転軸23を介して軸支される複数の足24と、大輪軸12に軸支されたプーリ31と、回転軸23に軸支され足24が固定された複数のプーリ33と、大輪軸12に軸支されたプーリ31から複数のプーリ33へ動力を伝達するワイヤ36と、回転ハンドル41とを備えた。複数のプーリ33をワイヤ36により大輪軸12に軸支されたプーリ31と同一の角度変化をするように結合し、プーリ31の角度変化を大輪2の回転に関係しない回転ハンドル41の回転操作により制御可能に構成した。
特許請求の範囲 【請求項1】
車いす本体と、この車いす本体に大輪軸を介して軸支される大輪と、この大輪に回転軸を介して軸支される複数の足と、前記大輪軸に軸支されたプーリ又はスプロケットと、前記回転軸に軸支され前記足が固定された複数のプーリ又はスプロケットと、前記大輪軸に軸支されたプーリ又はスプロケットから前記回転軸に軸支された複数のプーリ又はスプロケットへ動力を伝達する動力伝達手段と、回転ハンドルとを備え、前記回転軸に軸支された複数のプーリ又はスプロケットは前記動力伝達手段により前記大輪軸に軸支されたプーリ又はスプロケットと同一の角度変化をするように結合され、前記大輪軸に軸支されたプーリ又はスプロケットの角度変化は前記回転ハンドルの回転操作により前記大輪の回転角に関係なく制御可能に構成されたことを特徴とする足付き車いす。
【請求項2】
前記回転ハンドルの回転力はウォームホイールを介して前記大輪軸に軸支されたプーリ又はスプロケットに伝達されるように構成されたことを特徴とする請求項1記載の足付き車いす。
【請求項3】
前記回転ハンドルの回転力は遊星歯車機構を介して前記大輪軸に軸支されたプーリ又はスプロケットに伝達されるように構成されたことを特徴とする請求項1記載の足付き車いす。
【請求項4】
前記大輪に中継軸を介して軸支されたプーリ又はスプロケットを備え、前記動力伝達手段は前記大輪軸に軸支されたプーリ又はスプロケットから前記中継軸を介して軸支されたプーリ又はスプロケットを介して前記回転軸に軸支された複数のプーリ又はスプロケットへ動力を伝達するように構成されるとともに、前記回転軸に軸支された複数のプーリ又はスプロケットの外径は前記大輪軸に軸支されたプーリ又はスプロケットの外径よりも小さく形成されたことを特徴とする請求項1記載の足付き車いす。
【請求項5】
1つの前記回転ハンドルにより左右の前記大輪軸に軸支されたプーリ又はスプロケットの角度変化を連動させて制御可能に構成されたことを特徴とする請求項1記載の足付き車いす。
【請求項6】
自由輪を備え、前記車いす本体の下部の左右に前記大輪軸側から前記自由輪側に斜めに落ちるスカートを備えたことを特徴とする請求項1記載の足付き車いす。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、滑り易い路面や軟弱な地面、或いは瓦礫の散在する路面における車いすの移動困難性を解決するための足を備えた足付き車いすに関する。
【背景技術】
【0002】
車いすの車輪は、前後方向に自由に回転できる構造になっている。しかし、路上の接触面積が小さいことから、雪道や凍結路のように屋外の滑り易い路面においては、車輪が滑って思うように漕ぎ進まなかったり、急に止まれずに物に衝突する虞があったりして、車いすの利用は非常に危険である。また、砂道や農道のように軟弱な地面においては、車輪が地中に潜り易く、車輪を漕ぐ利用者の負担は大きい。さらに、車輪が乗り上げられる瓦礫等の障害物の高さは、大輪半径の20%程度が限度である。
【0003】
これまで、滑り易い路面での対策として、車輪にチェーンを巻く、スパイクをつける、深溝を施す、などの方法があった。しかし、車輪にチェーンを巻く方法ではチェーンの取り付け取り外しの手間を要するという欠点があり、スパイクをつける、深溝を施すといった方法では車輪そのものを専用的に設計する必要があるという欠点があった。
【0004】
また、軟弱な地面などの不整地上での車いす移動の走破性を高めるために、車輪に足をつけた4輪の車両が提案されている(特許文献1)。しかし、この車両は、4つの車輪が同サイズのときにのみ足が有効に動作し、手漕ぎや足漕ぎ車いすのように自由輪を含む場合には、動力不足のため足を指定する向きに変えることができないという問題があった。また、弓状リンクを伸縮させる車両が提案されている(特許文献2)が、足となるリンクの向きを構造上の制約から時計回り、或いは反時計回りのいずれかにせざるを得ないという問題があった。同サイズの2つの車輪をわずかに離し、これらを結ぶリンクの一端を足とする車両(非特許文献1)は、足を任意の向きに変えられないという問題があった。偏心軸周りの回転により車輪外周の一方向に爪を出す車輪機構を有する車両(非特許文献2、3)は、爪の向きが車体直下に制限されるという問題があった。さらには、スポークの先端に装備した円板により着地面積を増やした車両が提案されている(特許文献3)が、大きな動力エネルギーを必要とする上に、変更できる足の向きが狭い範囲に限定されるという問題があった。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2010-264923号公報
【特許文献2】特開昭60-148780号公報
【特許文献3】米国特許第2,664,962号公報
【0006】

【非特許文献1】田口幹、佐藤央隆 著「足付き車輪による段差昇降機械の研究」、日本ロボット学会誌、15巻1号、118-123頁、1997年
【非特許文献2】芦葉清三郎 著、「機械運動機構」技報堂、18頁61-62、1990年
【非特許文献3】岩本太郎、渋谷恒司 著、「可変翼車輪を用いたロボットビークルの構想と機構」日本機械学会論文集、C編71巻701号、pp.171-177、2005年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、簡単な操作によって足の向きを広い範囲に変更でき、滑り易い路面、軟弱な地面、障害物に対応して、自由に移動することを可能にする足付き車いすを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1記載の足付き車いすは、車いす本体と、この車いす本体に大輪軸を介して軸支される大輪と、この大輪に回転軸を介して軸支される複数の足と、前記大輪軸に軸支されたプーリ又はスプロケットと、前記回転軸に軸支され前記足が固定された複数のプーリ又はスプロケットと、前記大輪軸に軸支されたプーリ又はスプロケットから前記回転軸に軸支された複数のプーリ又はスプロケットへ動力を伝達する動力伝達手段と、回転ハンドルとを備え、前記回転軸に軸支された複数のプーリ又はスプロケットは前記動力伝達手段により前記大輪軸に軸支されたプーリ又はスプロケットと同一の角度変化をするように結合され、前記大輪軸に軸支されたプーリ又はスプロケットの角度変化は前記回転ハンドルの回転操作により前記大輪の回転角に関係なく変更可能に構成されたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2記載の足付き車いすは、請求項1において、前記回転ハンドルの回転力はウォームホイールを介して前記大輪軸に軸支されたプーリ又はスプロケットに伝達されるように構成されたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3記載の足付き車いすは、請求項1において、前記回転ハンドルの回転力は遊星歯車機構を介して前記大輪軸に軸支されたプーリ又はスプロケットに伝達されるように構成されたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4記載の足付き車いすは、請求項1において、前記大輪に中継軸を介して軸支されたプーリ又はスプロケットを備え、前記動力伝達手段は前記大輪軸に軸支されたプーリ又はスプロケットから前記中継軸を介して軸支されたプーリ又はスプロケットを介して前記回転軸に軸支された複数のプーリ又はスプロケットへ動力を伝達するように構成されるとともに、前記回転軸に軸支された複数のプーリ又はスプロケットの外径は前記大輪軸に軸支されたプーリ又はスプロケットの外径よりも小さく形成されたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項5記載の足付き車いすは、請求項1において、1つの前記回転ハンドルにより左右の前記大輪軸に軸支されたプーリ又はスプロケットの角度変化を連動させて変更可能に構成されたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項6記載の足付き車いすは、請求項1において、自由輪を備え、前記車いす本体の下部の左右に前記大輪軸側から前記自由輪側に斜めに落ちるスカートを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1記載の足付き車いすによれば、回転ハンドルの回転操作という簡単な動作によって足の向きを大輪の回転角に関係なく広い範囲に変更でき、滑り易い路面、軟弱な地面、障害物に対応して、自由に移動することを可能にする足付き車いすを提供する。
【0015】
本発明の請求項2記載の足付き車いすによれば、回転ハンドルの回転力はウォームホイールを介して伝達されるので、小さい力で足の向きを変更できる。また、回転ハンドルから手を離してもセルフロック効果により足の向きは保持される。
【0016】
本発明の請求項3記載の足付き車いすによれば、回転ハンドルの回転力は遊星歯車機構を介して伝達されるので、小さい力で足の向きを変更できる。また、回転ハンドルから手を離してもセルフロック効果により足の向きは保持される。
【0017】
本発明の請求項4記載の足付き車いすによれば、複数ある回転軸に軸支されたプーリ又はスプロケットの外径を小さくして、車輪としてのスマートさを追求できる。
【0018】
本発明の請求項5記載の足付き車いすによれば、片手で足の向きを変更できる。
【0019】
本発明の請求項6記載の足付き車いすによれば、階段昇降を容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の足付き車いすの第1の機構の動作原理を示す説明図である。
【図2】本発明の足付き車いすの第2の機構の動作原理を示す説明図である。
【図3】本発明の足付き車いすのワイヤを用いて足の向きを変える場合の動作原理を示す説明図である。
【図4】本発明の足付き車いすのベルトを用いて足の向きを変える場合の動作原理を示す説明図である。
【図5】実施例1の足付き車いすを示す部分正面図(左)と部分側面図(右)である。
【図6】実施例1の足付き車いすの車輪走行時の状態を示す正面図(左)と部分側面図(右)である。
【図7】実施例1の足付き車いすの滑り防止時の状態を示す正面図(左)と部分側面図(右)である。
【図8】実施例1の足付き車いすの段差乗り上げ時の状態を示す正面図(左)と部分側面図(右)である。
【図9】足数を8にした実施例2の足付き車いすを示す正面図(左)と部分側面図(右)である。
【図10】実施例3の足付き車いすを示す部分正面図(左)と部分側面図(右)である。
【図11】実施例4の足付き車いすの遊星歯車機構の動作原理を示す説明図である。
【図12】実施例4の足付き車いすを示す部分正面図(左)と部分側面図(右)である。
【図13】実施例5の足付き車いすを示す部分正面図(左)と部分側面図(右)である。
【図14】実施例6の足付き車いすを示す側面図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、日常生活で広く使われている車いすが屋外において路面性状の影響を受けて移動できる範囲の制限を受けるなかで、健常な手をもつ利用者が手漕ぎパワーをどんなに増強しても、滑り易い路面、軟弱な地面、障害物に対応して走破することに限界があることに着目し、車いすを構成する大輪の外周に等間隔で多数の短い足を付け、利用者の自力によってハンドルを回し、全ての足を指定する向きに変更可能としたものである。そして、利用者の簡単なハンドル操作で複数の足を車輪外周の任意方向に出し、様々な路面性状に影響されない移動を実現するものである。足の向きを僅かな手動力で半固定的に変更するための手段としては、ウォームとウォームホイール機構、或いは遊星歯車機構を採用する。
【0022】
以下、車いす構造の左右対称性から片側側面の大輪について主に図示することとする。本発明の足付き車いすの第1の機構の動作原理を示す図1において、11は車いす本体であり、この車いす本体11には大輪を回動自在に軸支する大輪軸12が設けられている。21は大輪外周であり、この大輪外周21は、ベース22を介して大輪軸12に軸支されている。ただし、大輪外周21は、ベース22の代わりにスポークを介して大輪軸12に軸支されてもよい。ベース22には、6つの回転軸23が設けられ、この回転軸23にそれぞれ足24が軸支されている。なお、足24は1本のみを図示し、その他は省略してあるが、足24の数は3以上の任意の値とすることができる。また、大輪軸12にはプーリ又はスプロケット31(以下、プーリ31という)が軸支されている。また、回転軸23にはプーリ31と同じ半径を有するプーリ又はスプロケット33(以下、プーリ33という)がラジアルベアリング46を介して軸支されており、このプーリ33は足24に固定されている。そして、プーリ31とプーリ33は、動力伝達手段であるワイヤ、ロープ、チェーン、又はベルト36(以下、ワイヤ36という)により連結されて、プーリ31からプーリ33へ動力が伝達されるようになっている。なお、6は路面である。
【0023】
ここで、プーリ31とプーリ33のサイズが同じであり、プーリ31は車いす本体11に固定されているので、回転軸23に固定された足24は、大輪外周21の回転に関係なく、同じ方向に保たれる。さらに、車いす本体11に対するプーリ31の角度を強制的に変えると、それに応じて足24の向きが変わる。
【0024】
要するに本発明は、足24の動作を大輪2の回転から切り離し、かつ、大輪軸12上に回動自在に軸支されたプーリ31の回転量と足24が固定されたプーリ33の回転量を同一にするという新規な発想に基づき、プーリ31と33の回転角度を同一に保つ。このため、大輪軸12上のプーリ31を回転させない限り、大輪2が回転しても足24の向きが変わらない構成になっている。この構成において、大輪2の回転角度に関係なく、プーリ31を回転させることにより足24の向きを制御することができる。
【0025】
図2には、本発明の足付き車いすの第2の機構の動作原理を示す。以下、図1と共通する部分には同じ符号を付してその説明を省略する。この機構は、大輪軸12と回転軸23の間に中継軸32を設けているのが特徴である。中継軸32にプーリ34とプーリ又はスプロケット35(以下、プーリ35という)が軸支され、回転軸23にプーリ又はスプロケット33(以下、プーリ33という)が軸支されている。また、プーリ35はプーリ34に固定されており、プーリ33とプーリ34は、動力伝達手段であるワイヤ又はベルト37(以下、ワイヤ37という)により連結されて、プーリ34からプーリ33へ動力が伝達されるようになっている。なお、図2中、プーリ31とプーリ35、プーリ34とプーリ33は、それぞれ等しい大きさになっているが、プーリ31とプーリ33の回転方向と回転速度を同じにするためである。プーリ31とプーリ33の回転方向と回転速度を同じにするという条件を満たせば、これらの大きさは適宜変更可能であり、プーリ31とプーリ35、プーリ34とプーリ33の大きさは必ずしも同じにする必要はない。
【0026】
つぎに、動力伝達手段として、紐状のワイヤ36、37を用いた場合の動作原理を図3に示す。図中、(a)、(b)、(c)は第1の機構、(d)、(e)は第2の機構に基づくワイヤの掛け方である。ワイヤは捻れや交差が許容されるので、ワイヤを用いる場合は、例えば、回転軸23、プーリ33、足(図3において図示せず)を1組として、任意の数の足を設けることができる。ただし、足の回転角を確実に伝達するため、プーリへのワイヤの巻き数を大きく、かつプーリの段数を少なくするのがよい。(a)、(d)は1本、(b)、(c)、(e)は2本のワイヤをそれぞれ使って、6つの足をプーリ31の回転角と同一の向きに制御している。なお、1本のワイヤにつき1個のアイドリングプーリがワイヤの緩みをなくすために必要であるが、その挿入方法は公知であるため省略する。ワイヤを短く、かつプーリにワイヤを巻く角度を大きくするには、(a)、(d)の巻き方が好ましい。
【0027】
また、ワイヤ36、37として、捻れや交差が許容されないベルトを用いた場合の動作原理を図4に示す。図中、(a)、(b)は第1の機構、(c)、(d)は第2の機構に基づくベルトの掛け方である。いずれもスプロケットへのベルトの巻き付け角が180度となっている。長さを短く、かつ、巻き付け角を大きくする観点からは、ベルトよりワイヤの方が好ましい。
【0028】
なお、ワイヤには多芯撚線、ベルトにはVベルト、片歯タイミングベルト、両歯タイミングベルト、チェーンなどが利用できる。
【0029】
本発明は、一般の電動車いすにおいて操舵機構をもたない(車輪軸方向を変えない)動力輪を大輪とみなして適用できる。
【0030】
以下、本発明の足付き車いすの実施例について、図面を参照しながら説明する。なお、既に説明した部分には同じ符号を付してその説明を省略する。
【実施例1】
【0031】
本実施例は、ウォームとウォームホイールを第1の機構に適用したものである。本実施例の足付き車いすを表す図5~8において、1は車いす、2は大輪、3は足24を回転させるための足回転手段、4は足24の方向を指定するための足方向指定手段である。25は利用者が大輪2を回転させるためのハンドリムである。なお、図5において、足24は1本のみを図示し、その他の足は省略してある。足回転手段3も省略してある。
【0032】
41は回転ハンドルであって、この回転ハンドル41は、ウォーム42に固定されている。また、ウォーム42は、ウォームホイール43に連結するとともに、車いす本体11に設けられたウォーム軸固定板44に回動自在に軸支されている。ここで、ウォーム42の回転軸は、ウォームホイール43の回転軸と直交している。ウォームホイール43は、回転角伝達手段45を介してプーリ31に固定されている。なお、図中のウォーム42の軸は鉛直となっているが、これに限らず、操作しやすい向きに傾けて変形実施可能である。
【0033】
プーリ31は、ベアリング46により大輪軸12上で自由に回転可能になっており、回転ハンドル41の回転操作によりウォーム軸固定板44に軸支されたウォーム42が回転する。さらに、ウォーム42の回転により、ウォームホイール43が回転し、ウォームホイール43の回転が回転角伝達手段45、プーリ31、ワイヤ36、プーリ33を介して、足24に伝達される。したがって、回転ハンドル41の回転操作により足24の向きを変えることができる。しかも、ウォーム42とウォームホイール43の組み合わせにより、速くて小さい回転ハンドル41の回転力で遅くて大きな回転力をプーリ33に伝えられる。一般に、回転ハンドル41の回転力の50~60倍の回転力がプーリ31に伝達される。
【0034】
反対に、プーリ33の回転力により回転ハンドル41を回転させるためには、プーリ31に大きな回転力を与える必要がある。したがって、足24に大きな負荷がかかる場合であっても、回転ハンドル41から手を放したままの状態を維持できるセルフロック効果が期待できる。すなわち、車いすの利用者は足24の向きを変える時以外は、回転ハンドル41を放置したまま通常の手漕ぎ動作に従事できる。
【0035】
図6は車輪走行時の状態、図7は滑り防止時の状態、図8は段差乗り上げ時の状態を示す。また、図8は1つの回転ハンドル41により左右の大輪2の足24を連動させて方向制御する態様となっている。
【0036】
そして、地面の滑り易さ、段差の有無、柔らかさなどに応じて、足24の利用形態を回転ハンドル41の操作により設定できる。例えば、右方向の車輪走行の場合は、図6に示すように、足24を後方斜め上に向けて足24の着地をなくし、通常の利用形態を実現する。一方、凍結路や雪道のように滑り易い路面においては、図7に示すように、足24を真下に向け、足立ち移動の利用形態を実現する。段差のような障害物に遭遇した場合は、図8に示すように、足24を前方斜め下、或いは水平前方に向け、段差乗り上げ移動、或いは段差跨ぎ移動の利用形態を実現する。また、農道や砂地のように軟弱な地面に遭遇した場合は、足24を後方斜め下に向け、車輪の埋没防止移動の利用形態を実現する。さらに、図6,7のように足の向きを左右で独立に変更できる機構に設計する場合には、右に下る斜面を横切る場合は右の大輪の足24を下方に左の大輪の足24を上方に、また、左に下る斜面を横切る場合は右の大輪の足24を上方に左の大輪の足24を下方にそれぞれ向ければよい。したがって、本実施例の足付き車いすは、介助者の支援を求めず、屋外路上に幅広く適応する移動の実現に寄与する。
【0037】
以上のように、本実施例の足付き車いすは、車いす本体11と、この車いす本体11に大輪軸12を介して軸支される大輪2と、この大輪2に回転軸23を介して軸支される複数の足24と、前記大輪軸12に軸支されたプーリ31と、前記回転軸23に軸支され前記足24が固定された複数のプーリ33と、前記大輪軸12に軸支されたプーリ31から前記回転軸23に軸支された複数のプーリ33へ動力を伝達する動力伝達手段としてのワイヤ36と、回転ハンドル41とを備え、前記回転軸23に軸支された複数のプーリ33は前記ワイヤ36により前記大輪軸12に軸支されたプーリ31と同一の角度変化をするように結合され、前記大輪軸12に軸支されたプーリ31の角度変化は前記回転ハンドル41の回転操作により制御可能に構成されたものであり、回転ハンドル41の回転操作という簡単な操作によって足24の向きを広い範囲に変更でき、滑り易い路面、軟弱な地面、障害物に対しても窮することなく移動することを可能にする足付き車いすを提供する。
【0038】
また、前記回転ハンドル41の回転力はウォームホイール43を介して前記大輪軸12に軸支されたプーリ31に伝達されるように構成されたので、小さい力で足24の向きを制御できる。
【0039】
また、図8のように1つの前記回転ハンドル41により左右の前記大輪軸12に軸支されたプーリ31の角度変化を連動させて制御可能に構成した場合には、片手で全ての足24の向きを制御できる。
【実施例2】
【0040】
本実施例は、足数が8の場合のワイヤ37ができるだけ短くなるようにワイヤ37の掛け方を工夫したものである。本実施例は、図9に示すように、案内プーリ38が足24に連結されたプーリ33と交互に、かつ、プーリ33と同一円上に並ぶように配置されている。すなわち、プーリ33と案内プーリ38は、大輪2のリムに近い円周上に交互に配置されている。案内プーリ38はプーリ33と同数となっており、隣り合うプーリ33とプーリ38の間隔は概略近い値になっている。そして、動力伝達手段であるワイヤ37がプーリ33とプーリ38に交互にジグザグに案内されている。また、大輪2のリムには、回転軸23を大輪軸12と平行に保持するための足軸固定リング50が固定されている。このほかの各部分の説明については既に済んでいるので省略する。
【0041】
図9の構成において、プーリ33とプーリ38に交互に案内されることにより、ワイヤ37がプーリ33に巻き掛ける角度が確保される。その結果、ワイヤ37の動力がプーリ33に確実に伝達される。また、プーリ38の位置を円周方向にずらすことでワイヤ37の微細な張力調整が図られる。
【実施例3】
【0042】
本実施例は、ウォームとウォームホイールを第2の機構に適用したものである。その構成を図10に示す。ただし、足回転手段3は図5と同様に省略してある。
【0043】
この実施例は、前記大輪2に中継軸32を介して軸支されたプーリ35、34を備え、前記動力伝達手段としてのワイヤ36、37は前記大輪軸12に軸支されたプーリ31から前記中継軸32を介して軸支されたプーリ35、34を介して前記回転軸23に軸支された複数のプーリ33へ動力を伝達するように構成されている。前記回転軸23に軸支された複数のプーリ33の外径は前記大輪軸12に軸支されたプーリ31の外径よりも小さく形成されたものであり、複数ある回転軸23に軸支されたプーリ33の外径を小さくして、車輪としてのスマートさを追求するのに適する。
【0044】
各部の詳細な説明については既に済んでいるので省略する。なお、中継軸32を大輪軸12と平行に保持するために、実施例2と同様の足軸固定リング50を配置してもよい。本実施例においても実施例1,2と同様に、1つの回転ハンドル41により左右の大輪2の足24を連動させて方向制御する態様も可能である。
【実施例4】
【0045】
本実施例は、ウォームとウォームホイールの代わりに、遊星歯車機構を第1の機構に適用したものである。本実施例の足付き車いすの遊星歯車機構を示す図11と、本実施例の足付き車いすを示す図12において、5は遊星歯車機構である。ただし、図12は、足24として1本のみを図示し、足回転手段3、他も省略して見易くしてある。遊星歯車機構5は、太陽歯車51、遊星歯車52a、52b、52c、内歯車53、遊星軸54a、54b、54c、遊星キャリア55により構成されている。太陽歯車51は、キー溝やセレーションなどの結合手段により大輪軸12に固定されている。また、遊星歯車52a、52b、52cは、遊星キャリア55に固定された遊星軸54a、54b、54cにそれぞれ回動自在に軸支されている。そして、太陽歯車51には遊星歯車52a、52b、52cが結合し、遊星歯車52a、52b、52cには内歯車53が噛み合っている。また、内歯車53には、回転ハンドル41が一体に固定されている。回転ハンドル41の回転面は、内歯車53の回転面と同一又は平行であって、大輪軸12とは直交している。
【0046】
この機構において、回転ハンドル41を回すと内歯車53、遊星歯車52a、52b、52cが回り、その結果、遊星キャリア55が回る。その回転角は回転角伝達手段45によってプーリ31にそのまま伝達される。このときの回転力は、太陽歯車51、内歯車53の歯数をそれぞれNs、Niとすると(Ns+Ni)/Ni倍になってプーリ31に伝達される。したがって、回転ハンドル41を回す力が小さくても、プーリ31を大きな力で回すことができる。本実施例においても実施例1-3と同様に、1つの回転ハンドル41により左右の大輪2の足24を連動させて方向制御する態様も可能である。
【0047】
以上のように、本実施例の足付き車いすは、前記回転ハンドル41の回転力を遊星歯車機構5を介して前記大輪軸12に軸支されたプーリ31に伝達するように構成されたものであり、小さい力で足24の向きを制御できる。
【実施例5】
【0048】
本実施例は、遊星歯車機構を第2の機構に適用したものである。その構成を図13に示すが、各部分の説明は既に済んでいるので省略する。本実施例においても実施例1~4と同様に、1つの回転ハンドル41により左右の大輪2の足24を連動させて方向制御する態様も可能である。
【実施例6】
【0049】
本実施例は、階段昇降に適した構成としたものである。階段昇降に利用する場合は、大輪の側から昇り始めることになるが、もう一方の側の小径自由輪が障壁に阻止されて移動を困難にする。本実施例は、図14に示すように、車体の下部の左側と右側に大輪軸側から自由輪14側に斜めに落ちる細長い板からなるスカート15を取り付けたものであり、自由輪14を踏み面に載せ上げその上で平地同様に転動させることができる。降りる場合は逆に、小径自由輪を先にしてスカート15が階段の端部に接触して滑りながら車いすの荷重を支え転倒を防止する。いずれにおいても、大輪側を山側に向けて昇降することが重要である。なお、スカート15の一端を、自由輪14を車いす本体11に固定するための支柱に沿って上下方向に移動可能とし、スカート15の傾きを変更可能に構成してもよい。
【0050】
本実施例の足付き車いすは、自由輪14を備え、前記車いす本体11の下部の左右に前記大輪軸12側から前記自由輪14側に斜めに落ちるスカート15を備えたものであり、階段昇降を容易にする。
【符号の説明】
【0051】
2 大輪
5 遊星歯車機構
11 車いす本体
12 大輪軸
14 自由輪
15 スカート
23 回転軸
24 足
31、33、34、35 プーリ
32 中継軸
36、37 ワイヤ(動力伝達手段)
41 回転ハンドル
43 ウォームホイール
50 足軸固定リング
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
12
【図14】
13