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明細書 :窒素がドープされたアモルファスシリコンカーバイドよりなるn型半導体及びn型半導体素子の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6083676号 (P6083676)
登録日 平成29年2月3日(2017.2.3)
発行日 平成29年2月22日(2017.2.22)
発明の名称または考案の名称 窒素がドープされたアモルファスシリコンカーバイドよりなるn型半導体及びn型半導体素子の製造方法
国際特許分類 H01L  21/205       (2006.01)
C23C  16/42        (2006.01)
FI H01L 21/205
C23C 16/42
請求項の数または発明の数 7
全頁数 11
出願番号 特願2013-541636 (P2013-541636)
出願日 平成24年11月1日(2012.11.1)
国際出願番号 PCT/JP2012/007029
国際公開番号 WO2013/065315
国際公開日 平成25年5月10日(2013.5.10)
優先権出願番号 2011241063
優先日 平成23年11月2日(2011.11.2)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年10月28日(2015.10.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】本多 謙介
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
審査官 【審査官】河合 俊英
参考文献・文献 特表2010-519773(JP,A)
特開2007-221165(JP,A)
特開平08-032104(JP,A)
特開昭63-081436(JP,A)
特開昭62-033419(JP,A)
特開昭63-137173(JP,A)
M.N.P.Carreno, I.Pereyra, H.E.M.Peres,N-type doping in PECVD a-Si1-xCx:H obtained under 'starving plasma' condition,Journal of Non-Crystalline Solids,1998年,Vol.227-230,483-487
J Safrankova, J Huran, I Hotovy, A P Kobzev, S A Korenev,Characterization of nitrogen-doped amorphous silicon carbide thin films,Vacuum,1998年,Vol.51, No.2,165-167
吉永浩亮, 栗山孝一, 桑原遼輔, 楢木野宏, 本多謙介,プラズマCVD法による窒素をド-プしたアモルファルスシリコンカ-バイド半導体薄膜の作製とその物理・化学特,日本化学会講演予稿集,日本,2011年 3月11日,Vol.91st No.3,967
調査した分野 H01L 21/205
C23C 16/42
特許請求の範囲 【請求項1】
珪素、炭素及び窒素を有効成分とし、前記珪素と前記炭素の原子数比が1対3~5であり、前記珪素と前記炭素の合計原子数に対して前記窒素の原子数が1~5%であることを特徴とする窒素がドープされたアモルファスシリコンカーバイドよりなるn型半導体。
【請求項2】
珪素と炭素の原子数比が1対4.5~4.9であり、前記珪素と前記炭素の合計原子数に対して窒素の原子数が1~2%であることを特徴とする請求項1記載の窒素がドープされたアモルファスシリコンカーバイドよりなるn型半導体。
【請求項3】
常温~80℃で常圧下に液体であるアルキルシラン化合物及びアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物と、常温~80℃で常圧下に液体であるシラザン化合物とを原料とし、プラズマCVD法により、請求項1又は2記載の窒素がドープされたアモルファスシリコンカーバイドよりなるn型半導体を基板上に薄膜として形成することを特徴とするn型半導体素子の製造方法。
【請求項4】
シラン化合物に対して、シラザン化合物を0.1~10モル%用いることを特徴とする請求項3記載のn型半導体素子の製造方法。
【請求項5】
シラン化合物が、テトラメチルシラン、テトラエチルシラン、テトラプロピルシラン、テトラブチルシラン及びテトラエトキシシランから選ばれる少なくとも1種であり、シラザン化合物が、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン、1,1,1,3,3,3-ヘキサエチルジシラザン、トリス(トリメチルシリル)アミン及びビストリメチルシリルメチルアミンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3又は4記載のn型半導体素子の製造方法。
【請求項6】
テトラエチルシランに対して、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザンを2~6モル%用いることを特徴とする請求項5記載のn型半導体素子の製造方法。
【請求項7】
常温~80℃で常圧下に液体であるアルキルシラン化合物及びアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物と、常温~80℃で常圧下に液体であるシラザン化合物とを原料とし、前記シラン化合物に対して、前記シラザン化合物を0.1~10モル%用いて、プラズマCVD法により、窒素がドープされたアモルファスシリコンカーバイドよりなるn型半導体を基板上に薄膜として形成することを特徴とするn型半導体素子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、n型アモルファスシリコンカーバイド半導体素子及びその製造方法に係わる。詳しくは、窒素がドープされたアモルファスシリコンカーバイドよりなるn型半導体及びその製造方法である。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の問題から二酸化炭素を排出しない、しかも安全な新エネルギーシステムとして、太陽光発電が注目されている。現在、太陽光発電素子としては、一般にシリコン半導体が用いられている。しかし、一方でより高性能な半導体素子を求める研究もなされている。その一つとして、シリコンカーバイト(SiC)が次世代の半導体として注目されている。SiC半導体素子は、従来のシリコン(Si)半導体素子に比べて絶縁破壊電界が一桁以上大きく、熱伝導性がSiの3倍、耐熱性、耐薬品性にも優れ、放射能に対する耐性が2桁高い。また、バンドギヤップも、Siに比べて大きい特徴もある。従って、SiC半導体は、Si半導体より、小型、低損失、高効率のパワー素子、高周波素子や耐放射線性の半導体となり得る可能性がある。そこで、超低損失の電力変換デバイス、携帯電話の基地局等に使用される高周波素子としても期待される。
【0003】
このため単結晶SiCをベースとした半導体の研究開発が多く行われている。n型のSiC半導体実現のためには、SiC中にドナーとなる周期律表第5族の元素をドープする必要があり、一般にはSiCを2000℃近く加熱し、窒素ガスをSiC中に拡散させるか又は800℃近くでイオン注入する方法が採られている(非特許文献1)。しかしながら、これらの研究ではn型半導体とするため極めて高い温度を必要とし、光電発電等の目的で透明なガラス基板上への半導体膜の形成が困難であるうえ、窒素ガスなどのSiCへの拡散は、容易ではなく、ドナー密度は1×1010~5×1012cm-3程度である。
【0004】
そこで、本発明者らは、SiC原料として、窒素含有有機珪素化合物を用い、CVD法(化学蒸着法)により、窒素含有SiC薄膜を合成することを試みた(非特許文献2)。すなわち、原料としてヘキサメチルジシラザンを原料としプラズマCVDを用いて基板上に薄膜を形成させた。この膜は、X線光電子光(XPS)によりSi-C結合を有することが確認され、広いバンドギャップが計測された。しかしながら、この膜はn型半導体としての機能を示すものではなかった。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】FEDReview,VOL.1,No17,14 March(2002)
【非特許文献2】平成23年度日本化学会発表要旨集(プラズマCVD法による窒素をドープしたアモルファスシリコンカーバイド半導体薄膜の作製とその物理化学特性)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、次世代半導体として着目されるシリコンカーバイドをベースとしたn型半導体素子の開発を目指し、低温で成膜可能で安価な広いバンドギャップを有する窒素がドープされたアモルファスシリコンカーバイド(a-SiC)よりなるn型半導体の開発を目的とする。
【発明を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、珪素、炭素及び窒素を有効成分とし、前記珪素と前記炭素の原子数比が1対3~5であり、前記珪素と前記炭素の合計原子数に対して前記窒素の原子数が1~5%であることを特徴とする窒素がドープされたアモルファスシリコンカーバイドよりなるn型半導体である。
【発明を解決するための手段】
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、珪素と炭素の原子数比が1対4.5~4.9であり、前記珪素と前記炭素の合計原子数に対して、窒素の原子数が1~2%であることを特徴とする窒素がドープされたアモルファスシリコンカーバイドよりなるn型半導体である。
【発明を解決するための手段】
【0009】
本発明の第3の態様は、常温~80℃で常圧下に液体であるアルキルシラン化合物及びアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物と、常温~80℃で常圧下に液体であるシラザン化合物を原料とし、プラズマCVD法により前記態様1又は2に記載の窒素がドープされたアモルファスシリコンカーバイドよりなるn型半導を基板上に薄膜として形成させることを特徴とするn型半導体素子の製造方法である。
【発明を解決するための手段】
【0010】
本発明の第4の態様は、前記第3の態様において、シラン化合物に対して、シラザン化合物を0.1~10モル%用いることを特徴とするn型半導体素子の製造方法であり、本発明の第5の態様は、前記第3又は第4の態様において、シラン化合物が、テトラメチルシラン、テトラエチルシラン、テトラプロピルシラン、テトラブチルシラン及びテトラエトキシシランから選ばれる少なくとも1種であり、シラザン化合物が、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン、1,1,1,3,3,3-ヘキサエチルジシラザン、トリス(トリメチルシリル)アミン及びビストリメチルシリルメチルアミンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするn型半導体素子の製造方法である。また、本発明の他の態様は、前記第3の態様において、アルキルシラン化合物又はアルコキシシラン化合物としてテトラメチルシラン、テトラエチルシラン、テトラプロピルシラン、テトラブチルシラン及びテトラエトキシシランから選ばれる少なくとも1種とシラザン化合物として1,1,1,3,3,3ヘキサメチルジシラザン、1,1,1,3,3,3ヘキサエチルジシラザン、トリス(トリメチルシリル)アミン、N、N-トリメチルシリルメチルアミン及びビストリメチルシリルメチルアミンのうちから選ばれる少なくとも1種のシラザン化合物とをアルキルシラン化合物又はアルコキシシラン化合物に対して、シラザン化合物を0.1~10モル%用いることを特徴とする窒素がドープされたアモルファスシリコンカーバイドよりなるn型半導体素子の製造方法である。
【発明を解決するための手段】
【0011】
本発明の第6の態様は、前記第5の態様においてアルキルシラン化合物としてのテトラエチルシランに対し、シラザン化合物として1,1,1,3,3,3ヘキサメチルジシラザンを2~6モル%用いることを特徴とするn型半導体素子の製造方法であり、本発明の第7の態様は、常温~80℃で常圧下に液体であるアルキルシラン化合物及びアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物と、常温~80℃で常圧下に液体であるシラザン化合物とを原料とし、前記シラン化合物に対して、前記シラザン化合物を0.1~10モル%用いて、プラズマCVD法により、窒素がドープされたアモルファスシリコンカーバイドよりなるn型半導体を基板上に薄膜として形成することを特徴とするn型半導体素子の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、シラザン化合物と分子中に窒素原子を持たないアルキルシラン又はアルコキシシランを原料として用いることにより、シリコンカーバイトの合成と同時に不純物として窒素原子を導入することにより、容易に且つ極めて有効に窒素をドープしたアモルファスシリコンカーバイドよりなるn型半導体を合成することができる。本発明によれば、シリコンカーバイトに後から窒素ガスを拡散又はイオン注入する方法に比べて安価に且つ、比較的高濃度で窒素がドープされたバンドギャップの広い高耐熱性、高耐薬品性の高電圧用のMOSFEIやショットキーダイオード或いは光電素子に用いられるn型半導体素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明におけるシラン化合物(TES)に対するシラザン化合物(HMDS)の使用モル比と得られるn型半導体の光電流密度との関係を示す図である。
【図2】本発明の窒素ドープアモルファスシリコンカーバイドのXPSスペクトル図である。
【図3】本発明のn型半導体の光学ギャップ(バンドギャップ)値の測定値を示す図である。
【図4】本発明の窒素ドープアモルファスシリコンカーバイドがn型半導体であることを示すための測定結果を示す図である。
【図5】n型半導体の光電流発生のメカニズムを示す図である。
【図6】本発明の半導体の光電流値の測定図である。
【図7】シラザン化合物のみで作成した窒素含有アモルファスシリコンカーバイドにおける光電流測定図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、比較的低い温度で安価にアモルファスシリコンカーバイドよりなるn型半導体を得ることを目的とするものであって、窒素原子を結合した珪素原子を有する有機化合物、すなわちシラザン化合物と窒素原子を含まないシラン化合物であるアルキルシラン又はアルコキシシランとを原料とし、プラズマCVD法により、チヤンバー内で両原料を分解し、基板上に薄膜として堆積させることを最大の特徴とする。

【0015】
驚くべきことに、窒素及び炭素を結合した有機珪素化合物であるシラザン化合物だけを用いた場合には、図7に示すように光電流は、実質的に流れない。すなわち、n型半導体は得られないのである。

【0016】
本発明に用いられるシラザン化合物とは、例えば、下記一般式で表わされる化合物である。

【0017】
【化1】
JP0006083676B2_000002t.gif

ここでRは同一又は異なるアルキル基を表し、一般に炭素数1~4のアルキル基である。また、水素原子の少なくとも1つは、一般に炭素数1~4のアルキル基で置換されていても良い。

【0018】
本発明にあっては、シラザン化合物のうち常温ないし比較的低い温度下(80℃以下程度)で、液体の化合物が用いられる。かかるシラザン化合物としては、例えば、トリエチルシラザン、トリブチルシラザン等のトリアルキルシリルアミン類、ビストリメチルシリルメチルアミン等のビスアルキルシリルアルキルアミン類、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、ヘキサプロピルジシラザン、ヘキサブチルジシラザン等のジシラザン類、トリス(トリメチルシリル)アミン、トリス(トリエチルシリル)アミン等のトリス(トリアルキルシリル)アミン類等がある。

【0019】
これらは、80℃以下の温度で液状を保ったものが、取扱上使用できる。本発明の原料として好ましいものは常温(25℃)下に液体である化合物であり、なかでも、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザンが特に好ましい。

【0020】
またアルキルシラン化合物又はアルコキシシラン化合物としては、例えば、次の化合物である。

【0021】
【化2】
JP0006083676B2_000003t.gif

ここで、Rは、同一又は異なるアルキル基であり、一般に炭素数1~4のアルキル基であり、nは1~4の整数を表す。

【0022】
これらのアルキル基、又はアルコキシ基としては、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基或いはこれらが酸素原子と結合したアルコキシ基である。

【0023】
本発明にあっては、取扱の便利上から、常温ないし比較的低い温度下(80℃以下)で液状のものが使用される。

【0024】
特に好ましいアルキルシラン化合物は、テトラエチルシランである。

【0025】
本発明は、プラズマCVD法により、減圧下に各原料を蒸発させ、チャンバー(反応器)中に導入する。この場合原料のキャリアーガスとして、水素又は窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いるが、原料の分解に伴い、製品であるアモルファスシリコンカーバイド中に存在する不対電子対を不活する意味で水素を用いるのが好ましい。

【0026】
本発明にあっては、200℃以下、好ましくは100℃以下の温度で成膜を行えるため、例えば、光電半導体等に用いられるよう透明なガラスを基板とすることができ、形成した半導体薄膜を、基板と共に半導体素子して利用できるという利点がある。

【0027】
また原料のチャンバーへの供給は、両原料をそれぞれ別々に蒸発させて、これらを別々に或いはガスとして混合した上でチャンバー内に供給することにより、両原料のモル比をコントロールすることも好ましいが、両原料を適宜選択することにより、あらかじめ液状原料を混合して同時に加熱蒸発させて供給することもできる。例えば、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザンとテトラエチルシランを用いる場合は、約2Pa程度の減圧下に80℃で蒸発させることにより、目的とする窒素含有アモルファスシリコンカーバイドを得ることができるので特に好ましい原料の組合せとなる。

【0028】
本発明で使用するプラズマCVD法では、原料ガスを200℃以下、好ましくは、80~100℃程度で水素又は不活性ガスをキャリアーガスとして50~100Pa、好ましくは、60~80Pa下に原料ガスをプラズマ状態にして、活性な励起ラジカル又はイオンとし基板上に析出させる。

【0029】
この場合、一般に、チャンバー内は、酸素を導入して、プラズマを発生させ、ステージを加熱してクリーニングし、更にアルゴンプラズマにより基板上の酸化被膜を除去した後に、基板一般にシリコン基板やガラス基板をセットして原料ガスを導入し、反応に供する。

【0030】
本発明で得られる窒素含有アモルファスシリコンカーバイドは、それを構成する各成分の割合によって、目的とするn型半導体としての性能が異なる。

【0031】
本発明のn型半導体は、珪素(Si)、炭素(C)及び窒素(N)を有効成分とし、珪素と炭素の原子数比が1対3~5、好ましくは1対4.5~4.9であり、珪素と炭素の合計原子数に対して窒素の原子数が1~5%、好ましくは1~2%の範囲である。すなわち、珪素の原子数:炭素の原子数は、1:3~5、好ましくは1:4.5~4.9の範囲であり、珪素の原子数と炭素の原子数を合計した原子数に対して、窒素の原子数が、1~5%、好ましくは1~2%の範囲である。

【0032】
これらの範囲は、使用する両原料の種類とは、殆ど無関係に使用割合によって決めることができるので、数度の予備的な試行によって容易に決めることができる。例えば、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン(HMDS)とテトラエチルシラン(TES)を用いた場合、図1に示すように、HMDS/TESのモル比は0.036あたりで光電流密度が1.2以上のピークを示す。そのときの各成分の原子数比はC:Si:N=52:11:1となる。これは、一般に両原料の種類に関係なくほぼ同様の挙動を示すものである。すなわち、本発明にあっては、一般にシラン化合物に対し、シラザン化合物は0.1~10モル%、好ましくは、2~6モル%の範囲を目安として決めればよい。

【0033】
以下に実施例を示す。
【実施例】
【0034】
(窒素ドープa-SiC薄膜の作製)
1)成膜装置、原料
窒素ドープa-SiC薄膜は、容量結合型高周波プラズマCVD装置(SAMCO Inc., Model BPD-1)を使用して作製した。テトラエチルシラン(TES)と1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を、TESに対するHMDSのモル比3.64×10-2で混合した液体を、2Pa、80℃に加熱し,気化したガスを真空チャンバに導入して原料とした。成膜時の真空チャンバ内の圧力は70 Paである。
【実施例】
【0035】
基板材料は、導電性n型Si(111)ウェーハ(SUMCO TECHXIV CORPORATION)を(1×1cm)を使用した。基板の脱脂処理として、2-プロパノール中で15分間の超音波洗浄を行った。
2)成膜条件
Si基板導入前に、酸素プラズマ照射(O流量50 sccm、 Plasma出力110W)によりステージの加熱及びクリーニングを行った(ステージ温度100℃まで)。
【実施例】
【0036】
Si基板をチャンバ内に導入し、基板表面の自然酸化膜を除去するためにArプラズマ(Ar流量50sccm、チャンバ圧20Pa、出力200W)を15分間照射した後、窒素ドープa-SiC薄膜の成膜を行った。
【実施例】
【0037】
成膜条件は、原料ガス流量1sccm、Hガス流量100sccm、RF出力75W、成膜時間10分。
(窒素ドープa-SiC薄膜の組成)
XPS測定より、a-SiC薄膜は、原子数比で、C:Si:N=52:11:1程度の構成比であった。
1)XPS(ESCA)測定
窒素ドープa-SiC表面にESCA-3200(島津製作所)を用いてMg(Kα)を線源とするX線を照射し、生じる光電子のエネルギーを測定(元素組成比の算出の場合のXPSスペクトルの測定は10eV min-1の速度でエネルギー範囲0~1000eVの範囲を測定、Si 2pピークの詳細解析の場合、1eVmin-1の速度で88~108eVの範囲を測定)することで、サンプルの構成元素とその電子状態を分析した(図2)。
図2において、含有されるSiに由来するSi 2pピークを波形分離することで、含有されるSiがどのような元素と結合を作っているか確認した。
2)得られた結果
Si 2pピークには、100.65eVにCと結合したSiのピークが、99.709eVにSiと結合したSiのピークが確認された。
【実施例】
【0038】
したがって、窒素ドープa-SiC薄膜中には、Si-C結合が含まれて(面積強度比からSi-CはSi-Siの4/3倍存在)いることが確認できた。
(窒素ドープa-SiC薄膜の物理特性)
<光学ギャップ値>
UV吸収分光測定(JASCO Corporation,V-670、自動絶対反射率測定ユニット,ARMN-735)により窒素ドープa-SiC薄膜の光学ギャップ(Eog)値の測定を行った。得られた透過、反射スペクトルからTauc plotを作成し、x軸との交点からEog値の算出を行った(図3)。
【実施例】
【0039】
すなわち図3は、ガラス基板上に窒素ドープa-SiCを10分間成膜し、紫外可視吸光光度計V-670(JASCO Co., Ltd.)(日本分光)によって測定を行った。
【実施例】
【0040】
まず、薄膜の吸光係数を計測するために透過スペクトルを(光エネルギーで0.6~4eVの範囲)測定し、続いて、薄膜表面での反射の割合を算出して吸収スペクトルに含まれて反射の割合を差し引く(Taucの式の1-Rの部分)ために、反射スペクトルを計測した。得られた、2つのスペクトルの透過率Tと反射率RをTaucの式(dは薄膜の厚み)
α=-ln(T/(1-R))×10/d
に代入してαを計算し、(αhν)1/2を縦軸に、横軸に波長を光のエネルギーに変換して図示した。得られたプロットの外挿線と横軸との交点が光学ギャップ値である。その結果、1.80eVという、結晶性Siの1.14eVと比較して約1.58倍の光学ギャップを確認することができた。よって作製した窒素ドープa-SiC薄膜は結晶性Siよりもワイドバンドギャップな半導体であることが確認できた。
(電気化学測定)
1)使用した装置
全ての電気化学測定(リニアスイープボルタンメトリー;LSV)は3電極セルを使用して行った。対極(CE)に白金ワイヤ、参照極(RE)にAg/AgCl(sat.KCl)電極、作用極(WE)には窒素ドープa-SiC薄膜を使用した。作用極と電解質溶液の接触面積(電極面積)は、Oリングを使用して0.1cmとした。電気化学測定装置には、ポテンショ/ガルバノスタット(Hokuto Denko Corporation,HZ-3000 system)を使用した。全ての測定には0.2M NaHPO溶液を使用した。
2)整流作用の測定
窒素ドープa-SiC薄膜電極の0.2M NaHPO水溶液中での水の電気分解に対するボルタモグラム(走査速度 5mVs-1)を図4に示す。図4の左下部分に水素発生電流が観測される。一方、n型半導体は正孔が少ないので溶液中の還元体(水)と酸化反応を起こすことはない。したがって図の右上で酸素発生電流は観測されていない。すなわち、窒素ドープa-SiC薄膜電極では、水電解反応に対して、水素発生に由来する還元電流のみ示し、酸素発生に由来する酸化電流は観測されないという、n型半導体電極特有の整流作用を示すことが確認できた。
3)光電流の測定
0.2M NaHPO水溶液を電解液として、窒素ドープa-SiC薄膜を電極として組み込んだ光電気化学セルを用いて、窒素ドープa-SiC薄膜の光励起応答電流(光電流)の評価を行った(図6)。
【実施例】
【0041】
図6においては、窒素ドープa-SiC薄膜を、0.2Mりん酸二水素ナトリウム溶液に浸漬し、電極表面に紫外光を照射(ウシオ電機:Spot Cure SP-9 キセノンランプ、光量10%)しながら、電位を卑電位から貴電位に(-1.5V~6.0V(vs. Ag|AgCl))走査速度5mVs-1の速度で電位走査し、電流-電位曲線を観測した。紫外光照射なしの条件でも電位を卑電位から貴電位に(-1.5V~6.0V(vs. Ag|AgCl))走査速度5mVs-1の速度で電位走査し、電流-電位曲線を観測した。
【実施例】
【0042】
紫外光照射なしでは、窒素ドープa-SiC薄膜はn型半導体性を示すため、貴電位側への電位走査(5mV/s)では応答電流は観測されていない。(光励起なしなので、結果としては、図4の整流作用の測定で得られたものとほぼ同じ)これに対して、紫外光照射下では、貴電位側に電位走査すると応答電流が観測され、6V vs. Ag|AgClの電位おいて、27μAcm-2程度の光電流を示している。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明では、n型半導体性を示すアモルファスシリコンカーバイドの作製手法の構築と、太陽電池等へ適用可能な、高いキャリア密度・キャリア移動度を示すn型アモルファスシリコンカーバイド半導体として有用である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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