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明細書 :プラズマ生成装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6083093号 (P6083093)
登録日 平成29年2月3日(2017.2.3)
発行日 平成29年2月22日(2017.2.22)
発明の名称または考案の名称 プラズマ生成装置
国際特許分類 H05H   1/24        (2006.01)
FI H05H 1/24
請求項の数または発明の数 6
全頁数 16
出願番号 特願2013-543061 (P2013-543061)
出願日 平成24年11月12日(2012.11.12)
国際出願番号 PCT/JP2012/079297
国際公開番号 WO2013/069799
国際公開日 平成25年5月16日(2013.5.16)
優先権出願番号 2011247680
優先日 平成23年11月11日(2011.11.11)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年10月20日(2015.10.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
発明者または考案者 【氏名】三沢 達也
【氏名】林 信哉
個別代理人の代理人 【識別番号】100099634、【弁理士】、【氏名又は名称】平井 安雄
審査官 【審査官】山口 敦司
参考文献・文献 特開2009-121422(JP,A)
特開2012-033385(JP,A)
特表2006-515708(JP,A)
特開2007-059385(JP,A)
特開2009-212129(JP,A)
特開2010-036152(JP,A)
調査した分野 H05H 1/24
B01J 19/08
H05H 1/30
H05H 1/46
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の電極を対向してなるプラズマ生成装置において、
前記複数の各電極間に配設され、温度の上昇に伴って誘電率が減少する特性を有するとともに分極性を有する液体の流体からなる逆特性物質を、誘電体で形成される容器に収納して形成される放電位置制御手段を備え、
前記逆特性物質が、前記複数の各電極に対して離隔されることを
特徴とするプラズマ生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ生成装置において、
前記流体の熱伝導率が4W/(m・K)以下であることを
特徴とするプラズマ生成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプラズマ生成装置において、
前記放電位置制御手段が、前記複数のいずれかの電極に対向する逆特性物質を複数に区切る仕切部を備えることを
特徴とするプラズマ生成装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のプラズマ生成装置において、
前記複数の電極の一の電極が直線状の導体で形成され、
前記一の電極の電極の軸方向外周に隙間からなるプラズマ発生部を介して円筒状に形成された放電位置制御手段が配設され、
当該放電位置制御手段の外周辺に前記複数の電極の他の電極を周回して配設され、
前記プラズマ発生部にプラズマ発生ガスを供給してプラズマを発生させることを
特徴とするプラズマ生成装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のプラズマ生成装置において、
前記複数の電極が、前記放電位置制御手段の外周に等間隔で配設され、前記放電位置制御手段が、内側にプラズマ処理対象物を収納する処理空間部を備えることを
特徴とするプラズマ生成装置。
【請求項6】
請求項5に記載のプラズマ生成装置において、
前記複数の電極が、各々電源を接続され、当該電源が、隣接相互間で位相差が各々等間隔で異なり、全体で360°の位相差となるように制御されることを
特徴とするプラズマ生成装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、放電プラズマを生成するプラズマ生成装置に関し、特に大容量で安定した大気圧プラズマを生成するプラズマ生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大気圧プラズマとは、大気圧下で放電により発生させるプラズマである。大気圧プラズマは、滅菌、殺菌、消毒、ガス分解、材料表面のプラズマ改質などの各種技術に利用されており、各種殺菌消毒に用いられるオゾンの生成、オゾンを用いた水の清浄化技術、及び医療分野などにおける酸素プラズマを用いた滅菌技術など広範に用いられている。大気圧プラズマを生成するプラズマ生成装置としては、金属などの導電性電極および電極表面に誘電体を張り付けた誘電体電極が主に用いられている。上記の用途を含む多様なニーズのなか、特定の領域に局在せず安定してプラズマを発生するような、高品質な大気圧プラズマ生成技術が要求されている。従来のプラズマ生成装置としては、対向する一対の電極の少なくとも一方の対向面に、固体誘電体部材を設置し、被処理物を吸着して固定させることによって、被処理物に対して均一なプラズマ処理を行うものがある(例えば、特許文献1参照)。また、エッチング装置用の上部電極の中央部に、誘電体を注入するための空間である凹部を設け、生成するプラズマの電界強度の面内分布に応じて凹部内に誘電体を供給することで、電界強度の面内分布を均一とさせるものがある(例えば、特許文献2参照)。また、従来のプラズマ生成装置では、電源供給手段から放電電圧が印加される第1電極と、第1電極と所定間隔が離隔され、第1電極を取り囲む誘電体と、第1電極と誘電体との間の空間に充填される液体誘電体と、誘電体と所定間隔が離隔されるように設置される第2電極とを備えるものがあり、電極間の隙間や電極周辺の境界領域等に発生するような余分なプラズマを抑制するものがある(例えば、特許文献3参照)。また、二重管誘電体の内管内側に処理対象ガスとキャリアガスを流通させ、内管と外管の間に流通させる導電性液体を外部電極とし、羽根部が配設され、当該羽根部の長手外周部に敷設した導電性連続コイルを内部電極とし、内管内側に流通する処理対象ガスを処理するものがある(例えば、特許文献4参照)。
【0003】
このように、従来のプラズマ生成装置としては、被処理物に対して均一なプラズマを生成させるものや、電極が液体に浸漬される構成により余分なプラズマの発生を抑制するものや、効率よく処理対象ガスを処理するようにプラズマを生成させるものが提案されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2005-332784号公報
【特許文献2】特開2009-212129号公報
【特許文献3】特開2007-59385号公報
【特許文献4】特開2010-51941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の(低温で用いられる)大気圧プラズマ生成装置は、大気圧下でプラズマを発生させるという大気圧プラズマの性質上、低気圧条件下で生成されている低気圧プラズマよりも高い電圧が必要となる。高電圧を用いた放電では、放電が局在しないで室温程度の低温でのプラズマの利用が可能なグロー放電から、放電が局在して強い光と数千度程度の熱を発生するアーク放電に容易に移行するという傾向がある。当該アーク放電が発生すると、放電の局在によって生成されるプラズマの容積が減少し,プラズマやラジカルなどの生成領域や反応領域が減少してプラズマ処理の効率が悪化したり、高温によってプラズマを利用する処理対象(例えば、滅菌処理を目的とする場合には滅菌対象物)を損傷させてしまうという課題がある。
【0006】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、空間的に局在する放電であるアーク放電を抑制する大気圧放電プラズマを安定的かつ従来の方法よりも高い生成効率で生成することができるプラズマ生成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示するプラズマ生成装置は、複数の電極を対向してなるプラズマ生成装置において、 前記複数の各電極間に配設され、温度の上昇に伴って誘電率が減少する特性を有するとともに分極性を有する流体からなる逆特性物質を、誘電体で形成される容器に収納して形成される放電位置制御手段を備え、前記逆特性物質が、前記複数の各電極に対して離隔されるものである。このように、本願に開示するプラズマ生成装置によれば、温度の上昇に伴って誘電率が減少する逆特性物質からなる放電位置制御手段を備え、当該逆特性物質が、前記複数の各電極に対して離隔されることから、プラズマの生成した電極近傍の領域が温度上昇によって誘電率が減少し、当該領域での放電が抑制されるとともに当該領域よりも誘電率の高い隣接の領域(未だプラズマが発生していない領域)でプラズマが誘発されることで、放電位置が他の領域に順次移動することとなり、アーク放電を抑制した空間的に局在しないプラズマを生成することができる。
【0008】
また、本願に開示するプラズマ生成装置は、必要に応じて、前記放電位置制御手段が、分極性を有する流体からなる逆特性物質を誘電性材料で形成される容器に収納して形成されるものである。このように、本願に開示するプラズマ生成装置によれば、前記放電位置制御手段が、分極性を有する逆特性物質を誘電体で形成される容器に収納して形成されることから、当該容器を複雑な形状とすることができる。さらに、分極性を有する流体は、特に他の物質と比較して、高い誘電率を持ち、交流電界の印加に伴う温度の上昇率が大きいことから、プラズマの生成した領域が温度上昇によって誘電率が急激に減少することとなり、アーク放電を抑制し、空間的に偏りのないプラズマを生成することができる。分極性は、逆特性物質が有する電気双極子モーメント[単位:デバイ(D)、D=3.33564×10-30 C・m]を指標とすることができ、電気双極子モーメントが0Dより大きい場合に分極性を有することが示される。
【0009】
また、本願に開示するプラズマ生成装置は、必要に応じて、前記流体の熱伝導率が4W/(m・K)以下であるものである。このように、本願に開示するプラズマ生成装置によれば、前記流体の熱伝導率が4W/(m・K)以下と比較的低いことから、前記流体において、プラズマが生成した領域の温度上昇がより局所的なものとなって、顕著な温度差の有る温度分布が生じることで、放電位置が他の領域により移動しやすくなることとなり、さらにアーク放電を抑制した空間的に偏りのないプラズマを生成することができる。
【0010】
また、本願に開示するプラズマ生成装置は、必要に応じて、前記放電位置制御手段が、前記複数のいずれかの電極に対向する逆特性物質を複数に区切る仕切部を備えるものである。このように、本願に開示するプラズマ生成装置によれば、前記複数のいずれかの電極に対向する方向に沿って配設される仕切部を備えることから、前記逆特性物質において、当該仕切部の仕切り単位にプラズマ生成による温度上昇が生じることで、温度上昇がより局所的なものとなり、顕著な温度差の有る温度分布が生じることで、放電位置が隣接する仕切領域により移動しやすくなることとなり、さらにアーク放電を抑制した空間的に偏りのないプラズマを生成することができる。また、当該仕切部の存在によって、逆特性物質が流体の場合には、流体内の温度差を緩和するような対流を抑制することとなり、逆特性物質が固体の場合には、固体内の温度絶縁によって固体内に温度分布を促進することとなり、いずれの場合もプラズマ生成によって逆特性物質内の温度分布を確実に生じさせることができるとともに、適用可能な前記逆特性物質の種類を広げることができる。例えば、前記複数の各電極が平面形状を有する場合には、当該仕切部は、前記複数の各電極の電極面に垂直な方向に立てられ、電極面に水平な方向に配設されることで、逆特性物質を複数に区切ることができる。
【0011】
また、本願に開示するプラズマ生成装置は、必要に応じて、前記複数の電極の一の電極が直線状の導体で形成され、前記一の電極の電極の軸方向外周に隙間からなるプラズマ発生部を介して円筒状に形成された放電位置制御手段が配設され、当該放電位置制御手段の外周辺に前記複数の電極の他の電極を周回して配設され、前記プラズマ発生部にプラズマ発生ガスを供給してプラズマを発生させるものである。このように、本願に開示するプラズマ生成装置によれば、放電位置制御手段が円筒状に形成されることから、当該円筒形状の軸方向のみならず軸方向に垂直な面に対しても放射状のプラズマが生成されることとなり、三次元的に偏りのないプラズマを生成することができる。
【0012】
また、本願に開示するプラズマ生成装置は、必要に応じて、前記複数の電極が、前記放電位置制御手段の外周に等間隔で配設され、前記放電位置制御手段が、内側にプラズマ処理対象物を収納する処理空間部を備えるものである。このように、本願に開示するプラズマ生成装置によれば、前記複数の電極が、前記放電位置制御手段の外周に等間隔で配設された、前記放電位置制御手段が、内側にプラズマ処理対象物を収納する処理空間部を備えることから、複数の電極により周回されて形成される処理空間部に対して、三次元的に包囲するようにプラズマが生成されることとなり、当該処理空間部において三次元的に偏りなく生じるプラズマによって、前記プラズマ処理対象物に対して効率よくプラズマ処理を実施することができる。
【0013】
また、本願に開示するプラズマ生成装置は、必要に応じて、前記複数の電極が、各々電源を接続され、当該電源が、隣接相互間で位相差が各々等間隔で異なり、全体で360°の位相差となるように制御されるものである。このように、本願に開示するプラズマ生成装置によれば、前記複数の電極が、各々電源を接続され、当該電源が、隣接相互間で位相差が各々等間隔で異なり、全体で360°の位相差となるように制御されることから、各電極間で放電が絶えずサイクリックに生じることとなり、前記処理空間部を経時的にも万遍なく包囲するとともに前記処理空間部110を横断する対向方向を貫通する方向に対しても三次元的にプラズマが生成され、前記プラズマ処理対象物に対して効率よくプラズマ処理を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るプラズマ生成装置の構成図を示す。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るプラズマ生成装置の逆特性物質の誘電率及び熱伝導率の温度特性図、及び第1の実施形態に係るプラズマ生成装置の構成図を示す。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るプラズマ生成装置の構成図及びプラズマ生成を示す説明図を示す。
【図4】本発明の第3の実施形態に係るプラズマ生成装置の構成を説明する説明図を示す。
【図5】本発明の第4及びその他の実施形態に係るプラズマ生成装置の構成を説明する説明図を示す。
【図6】本発明のその他の実施形態に係るプラズマ生成装置の交流電源のタイミングチャートを説明する説明図を示す。
【図7】本発明に係るプラズマ生成装置のアルゴン雰囲気下で放電を行った場合の水温度(ガラス最外面)と発光スペクトルの時間依存性、及び放電開始後30分の時の発光スペクトル分布の実験結果を示す。
【図8】本発明に係るプラズマ生成装置の放電部からの発光ピークの時間依存性(波長763.511nm)の実験結果を示す。
【図9】本発明に係るプラズマ生成装置の放電を複雑な形状を持つ大容量の誘電体容器に適用した場合の実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係るプラズマ生成装置を、図1及び図2に基づいて説明する。

【0016】
この図1は本発明の第1の実施形態に係るプラズマ生成装置の構成図及びプラズマ生成を示す説明図、図2は図1のプラズマ生成装置における逆特性物質の誘電率及び熱伝導率の温度特性図、及び第1の実施形態に係るプラズマ生成装置の構成図を示す。

【0017】
図1(a)において、本実施形態に係るプラズマ生成装置は、対向電極1と、対向電極1に対向して配設される接触電極2と、この対向電極1と接触電極2という複数の電極間に介在する誘電体からなる誘電体容器31と、この誘電体容器31の内部に配設され、温度の上昇に伴って誘電率が減少する逆特性物質32からなる放電位置制御手段3と、対向電極1と接触電極2の電極間に交流又はパルス状の電圧を印加する交流電源4とを備える構成である。

【0018】
対向電極1及び接触電極2は、金属電極、又は絶縁被膜した金属電極等を使用することができる。金属電極としては、プラチナ、金、パラジウムなどを使用することができるが、取扱いの容易性からプラチナが好適である。誘電体容器31は、誘電体の性質を有する固体であれば特に限定されず、例えば、ホウケイ酸ガラスやチタンケイ酸ガラスを使用することができる。

【0019】
放電位置制御手段3は、逆特性物質32からなるものである。逆特性物質32とは、逆特性(温度の上昇に伴って誘電率が減少する特性)を持つ物質である。この逆特性物質32が、対向電極1及び接触電極2(複数の各電極)の各々に対して離隔されるという本実施形態に係る構成によって、放電時に各電極で生じる温度上昇の影響をこの逆特性物質32が受けないこととなり、この逆特性物質32においては放電が生じた領域のみが高温領域となる。すなわち、放電時にこの逆特性物質32に生じる温度分布は、高温領域が局在化したものとなることから、逆特性物質32では、前記逆特性によって、放電が生じた領域の誘電率が減少することとなり、放電が生じた領域では、他の領域に比べてそれ以降の放電が生じにくくなる。この結果、放電位置は時間の経過とともに他の領域に鋭敏に順次移動することとなり、空間的に局在しないプラズマが生成され、確実にアーク放電を抑制することができる。

【0020】
この逆特性物質32を誘電体容器31収容してなる放電位置制御手段3は、図1(a)に示すように、対向電極1と接触電極2の中間に配設すること、すなわち対向電極1と接触電極2のいずれにも接触しない構成とすることができる。また、同図(b)に示すように、接触電極2に接するように配設することもでき、また対向電極1に接するように配設することもできる。

【0021】
また、放電位置制御手段3を構成する誘電体容器31は、同図(c)および(d)に示すように、各電極の対向方向に対して、複数配設することもでき、同図(e)および(f)に示すように、各電極の対向方向に対して垂直となる方向に対しても複数配設することができる。このように、放電位置制御手段3では、誘電体容器31の個数や配置関係は特に制限されない。また、複数の誘電体容器31が配設される場合には、誘電体容器31に収容される逆特性物質32は、各々、同種のものでもよいし、異種のものでもよい。

【0022】
なお、放電位置制御手段3は、対向電極1及び接触電極2の各電極間に生じる放電領域のほぼ全領域を遮蔽することが好ましい。このような構成によって、放電位置制御手段3が確実に放電領域をカバーすることから、放電位置制御手段3を構成する逆特性物質32の温度分布が放電領域に対して漏れなく形成されることとなり、結果として局在化しないプラズマが生成され、確実にアーク放電を抑制することができる。

【0023】
また、同図(h)に示すように、対向電極1及び接触電極2の各電極の対向面の大きさが異なる場合(同図は、その一例として、対向電極1の対向面の大きさが接触電極2のそれより小さい場合を示す)にも同様に、この各電極間に生じる放電領域(図中の点線と各電極の対向面で囲まれた領域)のほぼ全領域を遮蔽することが好ましい。

【0024】
前記逆特性物質32としては、逆特性(温度の上昇に伴って誘電率が減少する特性)高い(顕著な)液体(ゾルやゲルの場合も含まれる)であ、図2(a)に示すように、溶媒誘電率の温度依存特性が良好な水、ニトロベンゼン、メチルアルコール(メタノール)、トルエン、アセトンを挙げることができる。分極性の指標となる電気双極子モーメント[単位:デバイ(D)]は各々、水(1.85D)、ニトロベンゼン(4.22D)、メチルアルコール(1.69D)、アセトン(2.88D)、トルエン(0.36D)であり、水、ニトロベンゼン、メチルアルコール(メタノール)、アセトンのように電気双極子モーメントが0.36Dより大きい物質が好ましく、電気双極子モーメントが最も高い水が特に好ましい。また、図2(b)及び(c)に示すように、熱伝導率が比較的低い4W/(m・K)以下である液体がより好ましく、特に取扱いの容易性からも水が好ましい。熱伝導率に関しては、熱伝導率が4W/(m・K)より大きい場合には、前記温度分布における温度勾配が十分に得られ難くなることから放電の移動が生じ難くなる。

【0025】
以下、前記構成に基づく本実施形態の具体的なプラズマ生成について説明する。

【0026】
本実施形態は、図2(d)に示すように、対向電極1と接触電極2の電極間に、放電位置制御手段3として、逆特性物質32の一つの例である水と、この水を格納する誘電体容器31を設置する。この電極間に放電ガスである空気、アルゴン、ヘリウム、窒素、酸素などを流入させ、交流電源4から電極間に交流電圧を印加する。この電圧印加によって、電極間に放電によってプラズマPが発生する。また特に、放電ガスとして、空気および酸素を用いた場合、オゾンおよび酸素ラジカルが生成される。

【0027】
本実施形態のプラズマ生成装置は、温度上昇に伴って誘電率が減少する逆特性物質32からなる放電位置制御手段3を備えることから、図2(e)に示すように、対向電極1または接触電極2から放電が起きた時点で、放電位置制御手段3内部に温度分布T1が形成される。このような温度分布T1が形成される詳細なメカニズムは、未だ詳細には解明されていないが、以下に示す作用によるものと推察される。まず、対向電極1と接触電極2の間に交流電圧を加えることで、当該交流電圧を受けた逆特性物質32中の分子が、その分子固有の分極性に応じて振動し、その分子振動の結果として逆特性物質32が局所的に熱を持つこととなり、逆特性物質32内において、交流電界を最も強く受けた領域で最も温度が高くなるような温度分布T1が生じるものと考えられる。有意な温度分布T1を得るためには、逆特性物質32は分極性を有することが好ましく、さらに高い分極性、すなわち高い電気双極子モーメントを持つ分子からなることが好ましく、特に0.36Dより大きい電気双極子モーメントを持つ分子からなることが好ましい。

【0028】
前記の温度分布T1が放電位置制御手段3の内部領域に形成されると、温度上昇に伴って誘電率が減少するという逆特性物質32の特性によって、放電が発生した局所領域に距離が近い放電位置制御手段3の内部領域の誘電率が減少することとなり、先に放電が生じた局所領域では放電が抑制され、隣接する周辺の誘電率の高い領域での放電が促進され、図中の矢印方向Aに放電領域が移動する。矢印方向Aに放電領域が移動することで、放電位置制御手段3内に、温度分布T1よりも平滑な傾斜をもつ温度分布T2が形成され、以降さらに平滑な傾斜をもつ温度分布となるように放電領域が広がっていく。このように放電位置が順次移動することによって、放電が一箇所で集中的に発生するということが無くなり、集中的な放電による温度上昇が抑制されることから、逆特性物質内の温度上昇も抑制されることとなる。

【0029】
なお、従来のプラズマ生成装置の電極構成では、電極が液体に浸漬されているものもあるが(前記特許文献3)、その液体中で放電に伴って生じる温度分布は、高温領域が局在化することなく、液体の全体にわたって均一的かつ滑らかに拡がるものであることから、本実施形態に係るプラズマ生成装置とは、電極構成のみならず、その作用が異なるものである。この理由としては、電極は、一般に導電体であることから、電気を伝導しやすい性質を有しており、別の点からは、熱に対しても同様に伝導しやすい性質を有するものである。このため、電極は、熱伝導性が高い性質、すなわち熱伝導体としての性質も有することから、前記従来のプラズマ生成装置では、放電の際には、この液体中に放電由来の熱エネルギーによって温度分布が生じるとともに、高い熱伝導率を持つ電極を介した熱エネルギーの移動が生じることによって、この液体中で放電に伴って生じる温度分布は、本実施形態に係るプラズマ生成装置では高温領域が局在化することとは異なり、高温領域が局在化することなく、前記液体の全体にわたって均一的かつ滑らかに拡がるものとなる。

【0030】
このように、放電位置制御手段3内部における温度分布の発生と温度分布に依存した誘電率の減少によって、局所放電によってプラズマが生成された領域での放電が抑制されるとともに、先に局所放電が生じた領域よりも誘電率の高い隣接の領域(未だプラズマが発生していない、あるいは低いプラズマ密度の領域)での放電が促進されることで、放電位置が他の領域に順次移動することとなり、局所的なアーク放電を抑制した空間的に偏りのないプラズマを生成することができる。また、誘電体容器および各電極を冷却する冷却手段を設置してもよい。例えば、この冷却手段によって、逆特性物質32を冷却することで、有意な温度分布の形成を促進させることとなり、放電位置制御手段3によって放電位置を精度よく移動させることができる。この冷却は、一旦放電を止めて実施してもよいし、放電中に実施してもよい。このようにして得られたプラズマは、安定性の高いプラズマであり、食品表面の菌、カビ及びそれらが生成する毒素等の殺菌消毒および不活化をはじめとする、滅菌、殺菌、消毒、ガス分解、材料表面のプラズマ改質など幅広い分野に適用することができる。

【0031】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係るプラズマ生成装置を、図3に基づいて説明する。図3は本発明の第2の実施形態に係るプラズマ生成装置の構成図及びプラズマ生成を示す説明図を示す。

【0032】
図3において本実施形態に係るプラズマ生成装置は、図1に示したプラズマ生成装置の変形型であり、第1の実施形態と同様の前記対向電極1と前記交流電源4とを備え、前記接触電極2、前記誘電体容器31、前記放電位置制御手段3が円柱形状を有することを特徴とする構成である。さらに、図3(a)に示すように、放電ガスを対向電極1近傍に流入させるガス流路5を備える。

【0033】
本実施形態に係るプラズマ生成装置は、図3(b)に示すように、前記接触電極2、前記誘電体容器31、前記放電位置制御手段3が円柱形状を有することを特徴とし、前記対向電極1が直線状の導体で形成され、前記対向電極1の軸方向外周に隙間からなるプラズマ発生部を介して円筒状に形成された前記放電位置制御手段3が配設され、この放電位置制御手段3の外周辺に前記接触電極2を周回して配設され、前記プラズマ発生部に放電ガスを供給してプラズマを発生させるものである。

【0034】
図3に示される前記接触電極2は、点、直線または平面の形状を用いることが可能であるが、点または直線の形状では誘電体容器31の外部領域で電界が集中し、不必要な放電を生じやすいため、平面の形状を用いることが好ましい。前記誘電体容器31は、一部が導電性を有していてもよい。前記放電位置制御手段3は、図3(b)に示すように、前記対向電極1の軸方向外周に隙間からなるプラズマ発生部を介して円筒状に形成される。また、用途に応じて対向電極1の表面を、絶縁体被膜からなる絶縁被膜コーティング6でコーティングしてもよい。

【0035】
以下、前記構成に基づく本実施形態の具体的なプラズマ生成について説明する。

【0036】
本実施形態は、対向電極1と接触電極2の電極間に、放電位置制御手段3として、逆特性物質32の一つの例である水と、この水を格納する誘電体容器31を設置する。前記ガス流路5を経由して、前記対向電極1の近傍に放電ガスである空気、アルゴン、ヘリウム、窒素、酸素などを流入させ、前記交流電源4から電極間に交流電圧を印加する。この電圧印加によって、電極間に放電によってプラズマPが発生する。また特に、放電ガスとして、空気および酸素を用いた場合、オゾンおよび酸素ラジカルが生成される。

【0037】
このように、本実施形態のプラズマ生成装置は、前記放電位置制御手段3が円筒状に形成されることから、この円筒形状の軸方向のみならず軸方向に垂直な面に対しても放射状のプラズマが生成されることとなり、三次元的に偏りのないプラズマを安定的に生成することができる。

【0038】
(第3の実施形態)
図4に、本発明の第3の実施形態に係るプラズマ生成装置の構成を説明する説明図を示す。上記実施形態のプラズマ生成装置において、前記放電位置制御手段が、前記複数のいずれかの電極に対向する逆特性物質32を複数に区切る仕切部7を備えることもできる。仕切部7としては、プラスチック等の樹脂等からなる平板を使用することができる。仕切部7は、図4(a)に示すように、誘電体容器31が前記図1(b)に示したように接触電極2に接するように配設される場合であって、接触電極2から電界(図中の矢印)が発せられる場合には、放電位置制御手段3内の放電領域に近い側(接触電極2と反対側)の壁面に、その端部を接触させることで密着させて形成する。図4(a)に示すように、局所放電時に放電位置制御手段3内に発生する電界の強度が最も大きい側の壁面に仕切部7を密着させることによって、仕切部7が放電開始面に密着して放電開始点を区切ることとなり、放電に伴って発生する逆特性物質32の温度上昇をより局所的に発生させることができ、より顕著な温度勾配のある温度分布を得ることができる。

【0039】
仕切部7は、逆特性物質32全体を1つ1つの区画に分離して仕切るように設置することも可能であるが、同図(b)に示すように、放電位置制御手段3内の放電領域に近い側(接触電極2と反対側)の壁面近傍のみに設置することも可能である。放電位置制御手段3内の放電領域に近い側(接触電極2と反対側)の壁面近傍のみに設置する場合でも、この仕切部7によって、同図(c)に示すように、前記図2(d)に示したものと同様な温度傾斜のある温度分布T3の形成を促進することができる。また、誘電体容器31が前記図1(b)に示したように対向電極1と接触電極2の中間に配設される場合でも、図4(d)に示すように、仕切部7は、放電位置制御手段3内の放電領域に近い側(接触電極2に近い側)の壁面に、その端部を接触させることで密着させることで、上記と同様に温度分布T3の形成を促進することができる。

【0040】
この仕切部7の形状としては、この他にも、同心円形状やマトリクス形状、短冊形状などとすることも可能である。例えば、図4(e)に示すように、仕切部7を同心円形状とする場合には、隣接する同心円で囲まれた領域ごとに温度が異なるように温度分布が形成される。最初の放電後、この領域単位に放電位置が順次移動していく。また例えば、図4(f)に示すように、仕切部7をマトリクス形状とする場合には、このマトリクスを構成するマス目単位に放電位置が順次移動する。仕切部7が無い場合には逆特性物質において自発的に連続的な温度分布が形成されるが、仕切部7を設けた場合には、仕切部7で仕切られた領域ごとに温度分布が形成される。このように、仕切部7を設けることで強制的に温度分布を形成させることができるので、逆特性物質単独では十分な温度分布が得られ難い場合であっても、有意な温度分布を確実に得ることができ、利用可能な逆特性物質の種類を広げることができる。

【0041】
このように、仕切部7を備えることから、逆特性物質32において、当該仕切部7の仕切り単位にプラズマ生成による温度上昇が生じることで、温度上昇がより局所的なものとなり、顕著な温度差の有る温度分布が生じることで、放電位置が隣接する仕切領域により移動しやすくなることとなり、さらにアーク放電を抑制した空間的に偏りのないプラズマを生成することができる。また、当該仕切部7の存在によって、逆特性物質32が流体(ゾルやゲルの場合も含まれる液体等)の場合には、流体内の温度差を緩和するような対流を抑制することとなり、逆特性物質32が固体の場合には、固体内の温度絶縁によって固体内に温度分布を促進することとなり、いずれの場合もプラズマ生成によって逆特性物質32内の温度分布を確実に生じさせることができるとともに、適用可能な逆特性物質32の種類を広げることができる。

【0042】
(第4の実施形態)
図5(a)に、本発明の第4の実施形態に係るプラズマ生成装置の構成を説明する説明図を示す。図5(a)において本実施形態に係るプラズマ生成装置は、図3(a)に示したプラズマ生成装置の変形型であり、第2の実施形態と同様の前記対向電極1と前記交流電源4とを備え、前記接触電極2、前記誘電体容器31、前記放電位置制御手段3が円柱形状を有し、放電ガス(プラズマ発生ガス)を対向電極1近傍に流入(白抜き矢印)させ、プラズマ処理対象物100が収納される処理空間部110の底部から放電ガス(プラズマ発生ガス)を排出(黒矢印)する構成である。プラズマ処理対象物100が、前記放電位置制御手段3の内部の処理空間部110に載置されるとともに、前記放電位置制御手段3を周回する前記接触電極2の内側近傍に配置される。このような構成によって、プラズマ処理対象物100が収納される処理空間部110において、前記放電位置制御手段3の内部に充満するプラズマによって、効率よく滅菌されることとなる。なお、前記接触電極2が複数に分割され、前記放電位置制御手段3の外周に等間隔で配設されることも可能である。その場合には、前記対向電極1を基準として、前記対向電極1の外周にある分割された前記接触電極2の各電極に対して、順次放電が生じることとなり、内側にプラズマ処理対象物を収納する処理空間部においてサイクリックに放電が生じることができ、前記プラズマ処理対象物を効率よくプラズマ処理することができる。

【0043】
(その他の実施形態)
本発明は、上述したような実施形態に限定されるものではない。図5(b)に、本発明のその他の実施形態に係るプラズマ生成装置の構成を説明する説明図を示す。本実施形態に係るプラズマ生成装置は、図5(b)に示すように、複数の電極1-1、1-2、1-3、1-4が、前記放電位置制御手段3の外周に等間隔で配設され、前記放電位置制御手段3が、内側にプラズマ処理対象物100を収納する処理空間部110を備える構成である。放電ガス(プラズマ発生ガス)は、図5(b)に示すように、電極間の隙間から流入(白抜き矢印)させ、他の電極間の隙間に排出(黒矢印)する構成である。なお、放電ガス(プラズマ発生ガス)の流れは、図5(b)において、各電極間の隙間から流入させ、紙面に対して上下方向に排出することも可能である。前記複数の電極は、1つの電源から放電に必要となる位相差を制御された電流を供給されてもよい。この場合には、当該位相差の制御により、順次、放電領域を移動させた放電を行うことができる。

【0044】
また、同図(b)に示すように、前記複数の電極が、各々電源4-1、4-2、4-3、4-4を接続され、当該電源が、隣接相互間で位相差が各々等間隔で異なり、全体で360°の位相差となる(例えば、図の例では90°ごとに各電源の位相差が異なる)ように制御される。この各電源は、位相差が時計回りに生じるように配置してもよいし、反時計回りに生じるように配置してもよい。

【0045】
この場合の交流電源のタイミングチャートを図6(a)に示す。同図(a)では、電源4-1、4-2、4-3、4-4が印加する電圧を、各々V、V、V、V[V]として示している。上述した構成によって、同図(a)で示されるように、放電発生を示す間隔Xが、前記処理空間部110を横断して対向する電極間において、時間の経過と共に絶えずサイクリックに生じる。このように、前記複数の電極が、各々電源を接続され、当該電源4-1、4-2、4-3、4-4が、隣接相互間で位相差が各々等間隔で異なり、全体で360°の位相差となるように制御されることから、各電極間で放電が絶えずサイクリックに生じることとなり、前記処理空間部110を経時的にも万遍なく包囲するとともに前記処理空間部110を横断する対向方向を貫通する方向にも上述したアーク放電を抑制したプラズマが三次元的に生成され、前記プラズマ処理対象物100に対して効率よくプラズマ処理を実施することができる。

【0046】
なお、上記では、前記複数の電極の個数を4個としたが、このような偶数個に限定されるものではなく、奇数個としてもよい。例えば、図5(c)に示すように、前記複数の電極が、奇数個、すなわち3つであり、各々電源4-1、4-2、4-3を接続され、当該電源が、隣接相互間で位相差が各々等間隔で異なり、全体で360°の位相差となる(例えば、図の例では120°ごとに各電源の位相差が異なる)ように制御することもできる。この各電源は、位相差が時計回りに生じるように配置してもよいし、反時計回りに生じるように配置してもよい。放電ガス(プラズマ発生ガス)は、図5(c)に示すように、電極間の隙間から流入(白抜き矢印)させ、他の電極間の隙間に排出(黒矢印)する構成である。なお、放電ガス(プラズマ発生ガス)の流れは、図5(c)において、各電極間の隙間から流入させ、紙面に対して上下方向に排出することも可能である。

【0047】
この場合の交流電源のタイミングチャートを図6(b)に示す。同図(b)では、電源4-1、4-2、4-3が印加する電圧を、各々Va、Vb、Vc[V]として示している。上述した構成によって、同図(b)で示されるように、各複数の電極から生じる放電が、前記処理空間部110に対して、時間の経過と共に絶えずサイクリックに生じるとととなり、前記プラズマ処理対象物100に対して効率よくプラズマ処理を実施することができる。

【0048】
なお、上記では、前記放電位置制御手段3が、前記複数の電極ごとに複数配設されるとしたが、これに限定されず、1つの筐体としてもよいし、2つの筐体としてもよい。

【0049】
以下に、本発明の特徴をさらに具体的に示すために実施例を記すが、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。

【0050】
(実施例1)
上記実施形態3の構成にて、アルゴン雰囲気下で放電の安定性を確認した(熱電対温度計(アズワン株式会社製DIGITAL THERMOMETER IT-2200及びK型熱電対)、分光器(株式会社相馬光学製Fastevert S-2431))。温度上昇に伴って誘電率が減少する特性を持つ物質として水を使用した。誘電体容器として直径の異なる2本のホウケイ酸製ガラス管(内管の外径6mm、外管の外径18mm、肉厚はそれぞれ1mm)を図3(a)と同様の同軸構造に配置して使用した。放電電圧は周波数10kHz、電圧振幅4.5kVを用いた。放電ガスはアルゴンを用いた。図7(a)は、本発明に係るプラズマ生成装置のアルゴン雰囲気下で放電を行った場合の水温度(ガラス最外面)と発光スペクトルの時間依存性の実験結果を示し、同図(b)は、放電開始から30分経過時点での発光スペクトル分布の実験結果を示す。図7から、強いピーク波長を計測した波長309.06nm及び764.03nmにおいて、時間の経過とともに、放電に伴う逆特性物質の温度が上昇し、アーク放電が発生することなく安定した放電によってプラズマが生成していることが分かった。

【0051】
(実施例2)
本発明に係るプラズマ生成装置の放電部からの発光ピークの時間依存性(波長763.511nm)の実験結果を図8に示す(熱電対温度計(アズワン株式会社製DIGITAL THERMOMETER IT-2200及びK型熱電対)、分光器(株式会社相馬光学製Fastevert S-2431))。誘電体容器として直径の異なる2本のホウケイ酸製ガラス管(内管の外径6mm、外管の外径18mm、肉厚はそれぞれ1mm)を図3(a)と同様の同軸構造に配置して使用した。放電電圧は周波数10kHz、電圧振幅4.5kVを用いた。放電ガスはアルゴンを用いた。同図から、逆特性物質としてメタノール(誘電体:純度99.8%)を用いた場合でも、水と同様に放電したことが分かった。メタノールを用いた場合には、沸点が低いため、途中で沸騰して実験は5分で終了したが、水と同様の速い速度で温度が上昇し、放電が安定化した。水やメタノールの場合には、 時間の増加(温度の増加)に伴って発光強度が増加していることから、水の平均温度の上昇によって空間的に偏りのない放電が安定に生成された。これに対して、電気双極子モーメントが低いトルエン(誘電体、純度99.5%)を逆特性物質として用いた場合には、ほとんど温度上昇が無く、安定的で高密度な放電は得られなかった。これは、温度変化が無かったことから誘電率の変化が生じなかったためと考えられる。このように、水を含めて電気双極子モーメントが高い物質であれば本願発明が幅広く適用できることがわかった。

【0052】
(実施例3)
本発明に係るプラズマ生成装置の放電を複雑な形状を持つ大容量の誘電体容器に適用した場合の実験結果を図9に示す。複雑な形状を持つ誘電体容器としてホウケイ酸ガラス製球入冷却器(冷却用内管の長さ300mm、冷却器内管の外径11mm~25mm)を用い、冷却水側に水を充填して、図3(a)と同様の配置で実験を行った。放電電圧は周波数10kHz、電圧振幅4.5kVを用いた。放電中の画像をデジタルカメラにて撮影した。通常の大気圧放電プラズマでは、内管直径の違いによって放電領域内部の電界強度が軸方向位置に分布をもち、プラズマの空間的な偏りが生じる可能性があるが、対して本プラズマ生成装置では誘電体容器の内管の直径が11mmから25mmと大きく変化しているにもかかわらず、放電位置制御手段の効果によって、放電したプラズマはアーク放電の様な局所的な放電にならず、また300mmという大きな放電領域であるにもかかわらず、空間的に偏りのない安定したプラズマが得られた。このように、複雑な形状および大きな放電領域を持つ電極を用いた大気圧放電プラズマでも、本願発明が幅広く適用できることがわかった。特に、図9のように、誘電体容器の表面形状が、球面が数珠状に繋がることから形成される場合には、誘電体容器の表面における凹凸形状によって、逆特性物質内で生じた温度変化が周囲に伝播し難くなることとなり、放電時の逆特性物質中に明確な温度分布が形成されやすいという利点がある。また、当該球面の内部に形成される空間に、例えば、プラズマを照射したい対象物を密閉することもでき、当該対象物に対して効率的にプラズマを照射することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 対向電極
11 金属電極
2 接触電極
3 放電位置制御手段
31 誘電体容器
32 逆特性物質
4 交流電源
5 ガス流路
6 絶縁被膜コーティング
7 仕切部
100 プラズマ処理対象物
110 処理空間部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8