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明細書 :RNAi分子の活性を抑制するための核酸分子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成27年4月2日(2015.4.2)
発明の名称または考案の名称 RNAi分子の活性を抑制するための核酸分子
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N  15/113       (2010.01)
A61K  31/713       (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
A61K  31/7105      (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 15/00 G
A61K 31/713
A61K 48/00
A61K 31/7105
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 47
出願番号 特願2013-544295 (P2013-544295)
国際出願番号 PCT/JP2012/079518
国際公開番号 WO2013/073576
国際出願日 平成24年11月14日(2012.11.14)
国際公開日 平成25年5月23日(2013.5.23)
優先権出願番号 2011250905
優先日 平成23年11月16日(2011.11.16)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IS , JP , KE , KG , KM , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US , UZ , VC
発明者または考案者 【氏名】立花 亮
【氏名】田辺 利住
出願人 【識別番号】506122327
【氏名又は名称】公立大学法人大阪市立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4C084
4C086
Fターム 4B024AA01
4B024BA80
4B024CA05
4B024CA11
4B024GA11
4B024HA17
4C084AA13
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
要約 標的とするRNAi分子の活性を特異的に、かつ効率的に抑制することができ、さらに安全で安価に生産することが可能な核酸分子を開発し、提供することである。
標的RNAi分子において、その活性を有する機能鎖の塩基配列に対して完全に又は十分に相補的な塩基配列からなる非修飾DNA領域を1つ含む一本鎖核酸部分と前記一本鎖核酸部分の5’末端及び3’末端の少なくとも一方に連結される二本鎖核酸部分を含む標的RNAi分子活性抑制用核酸分子を提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
標的RNAi分子の活性を抑制するための核酸分子であって、
該標的RNAi分子において前記活性を有する機能鎖の塩基配列に対して完全に又は十分に相補的な塩基配列からなる非修飾DNA領域を含む一本鎖核酸部分、及び
前記一本鎖核酸部分の5’末端及び3’末端の少なくとも一方に連結される二本鎖核酸部分
を含む前記核酸分子。
【請求項2】
前記非修飾DNA領域が18~35塩基長である、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
前記非修飾DNA領域が1塩基又は連続する2~10塩基のミスマッチ部位を含む、請求項1又は2に記載の核酸分子。
【請求項4】
前記一本鎖核酸部分が2つ以上の同一の又は異なる非修飾DNA領域を含む請求項1~3のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項5】
2つの非修飾DNA領域間に存在し、それらを連結する1~10塩基長の核酸からなるスペーサー領域を含む、請求項4に記載の核酸分子。
【請求項6】
同一の又は異なる一本鎖核酸部分を2つ以上含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項7】
前記一本鎖核酸部分が非修飾DNA領域と二本鎖核酸部分の連結を介在する1~10塩基長の核酸からなる連結領域を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項8】
RNAi分子がsiRNA、shRNA又はmiRNAである、請求項1~7のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項9】
前記二本鎖核酸部分が5~25塩基長である、請求項1~8のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項10】
1又は連続する2~6塩基のミスマッチ部位を有する二本鎖核酸部分を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項11】
一方の核酸鎖の3′末端と他方の核酸鎖の5′末端とが3~10塩基長の核酸からなるループ領域によって連結されている二本鎖核酸部分を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項12】
一方又は両方の核酸鎖がニックを有する二本鎖核酸部分を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項13】
三重鎖構造又は四重鎖構造を構成する二本鎖核酸部分を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項14】
DNAのみで構成される、請求項1~13のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の核酸分子を少なくとも1つ有効成分として含有する医薬組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、標的とするRNAi分子の活性を特異的に抑制することができる核酸分子、及びその核酸分子を有効成分として含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、miRNA(マイクロRNA)やsiRNA(低分子干渉RNA)のようなタンパク質をコードしていない、いわゆるノンコーディングRNAが生理活性を有し、生体内で種々の機能を果たしていることが明らかになってきた。例えば、非特許文献1は、miRNAの1種でありoncomir(癌miRNA)と呼ばれるmiR-21をマウスで発現させた場合に、プレB細胞リンパ腫が誘導されることを開示している。一方で、多くの癌細胞ではmir-21が大量に発現されており、その発現を阻害するとHeLa細胞やヒトグリオーマ細胞U87等の癌細胞株では細胞死が引き起こされることが知られている(非特許文献2及び3)。miRNAをはじめとするノンコーディングRNAの活性を制御する薬剤を開発できれば、癌等の様々な疾患を治療するための医薬や診断薬の有効成分として利用することが可能となる。それ故、世界各国において、ノンコーディングRNAの活性を制御する薬剤を用いた核酸医薬品等の研究及び開発が盛んに進められており、これまでにも、miRNA阻害剤等をはじめとする様々な核酸医薬品が開発されてきた。
【0003】
例えば、非特許文献4は、人工的に構築された非天然型核酸である架橋化核酸(BNA/LNA:Bridged Nucleic Acid/Locked Nucleic Acid)をmiRNA阻害剤として使用する方法を開示しており、また、非特許文献5は、2’-OMeで化学修飾されたRNAを含む核酸をmiRNA阻害剤として用いる方法を開示している。一般にDNAよりも非天然型核酸や化学修飾した核酸の方がRNAに対するTm値が高いことが知られており、これらの方法は、そのRNAに対する高い結合親和性を利用して標的miRNAの活性を抑制する。しかし、非天然型核酸や化学修飾した核酸の合成には、非修飾のDNA合成の数十倍のコストを要するため、低廉で大量に生産できないという問題があった。また、生体内で分解されない非天然型核酸や化学修飾核酸を医薬品に適用することは、副作用等の安全面においても大きな問題が残る。
【0004】
その他にも、特殊な構造を有する核酸分子からなるmiRNA阻害剤が知られている。例えば、非特許文献6は、miRNA阻害剤として、MBS(miRNA-biding site)がステムにはさまれた構造を有するRNAデコイを開示している。また、非特許文献7も、miRNA阻害剤として、バルジを含む相補的配列の両端にステムを結合させたmiRNA spongeを開示している。しかし、これらのmiRNA阻害剤は、プラスミドベクターからの発現によって生じるRNAによって構成されている。RNAは、生体内でヌクレアーゼ等の核酸分解酵素による分解を受けやすく、非常に不安定であることから、核酸医薬品の薬理効果を効率的に、かつ継続的に作用させる上で問題が残る。
【0005】
特許文献1、非特許文献8及び非特許文献9では、miRNAの標的配列を含むステム構造を有し、2’-OMeで化学修飾されたRNAから構成されるmiRNA阻害剤が開示されている。これらのmiRNA阻害剤は、2’-OMe修飾によってRNAのヌクレアーゼに対する分解耐性を向上させている。しかし、RNAを化学修飾させる点においては、前述の化学修飾した核酸と変わらず、合成に要するコスト面の問題や、副作用の問題が依然として残されている。
【0006】
したがって、可能な限り天然型の核酸で構成され、核酸分解酵素に対する高い分解耐性能を有し、生体内で比較的安定に維持され、かつ安価で提供できる新たな核酸医薬品の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】WO2007095387
【0008】

【非特許文献1】Medina PP, et al., 2010, Nature, 467:86-90.
【非特許文献2】Yao Q, et al., 2009, Biochem Biophys Res Commun., 388(3):539-42.
【非特許文献3】Zhou X, et al., 2010, Oncol Rep., 24(1):195-201.
【非特許文献4】Elmen J, et al., 2008, Nature., 452(7189):896-9.
【非特許文献5】Hutvagner G, et al., 2004, PLoS Biol., 2(4):E98.
【非特許文献6】Haraguchi T., et al., 2009, Nucleic Acid Res 2009, Vol.37, No.6, e43.
【非特許文献7】Ebert MS., et al., 2007, Nature Methods, 4:721-726.
【非特許文献8】Vermeulen A., et al., 2007, RNA, 13:723-730.
【非特許文献9】Robertson B., et al., 2010, Silence, 2010, 1:10.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
核酸医薬品を開発する上で、コスト面や被検体に対する安全面を課題とした場合、非天然型核酸や化学修飾した核酸よりも生体内で分解可能な天然型核酸、すなわち、RNAやDNAで構成されていることが好ましい。ここで、RNAは、miRNAのようなノンコーディングRNAとの結合親和性が高く、それ故、阻害活性も高いが、生体内で非常に不安定である点や、化学合成効率が低く、合成コストも非天然型核酸や化学修飾核酸ほどではないにしても比較的高いという問題を有する。一方、DNAは、RNAと比べて生体内での安定性が比較的高く、核酸の中では最も安価に合成できるが、ノンコーディングRNAに対する結合親和性が低く、特に、低濃度のときには、miRNA等に相補的な塩基配列を有していてもほとんど結合することができない。それ故、阻害活性が低いという問題を有している。
【0010】
本発明の目的は、標的とするRNAi分子の活性を特異的に、かつ効率的に抑制することができ、さらに安全かつ低廉で大量に生産することが可能な核酸分子を開発し、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本発明者らが研究を重ねた結果、RNAi分子における機能鎖の塩基配列に相補的な塩基配列を有する核酸がDNAで構成されている場合であっても、その5’末端及び3’末端の少なくとも一方に二本鎖核酸を連結することによって、前記機能鎖の塩基配列への結合親和性が飛躍的に上昇し、その結果、RNAi分子の遺伝子サイレンシング活性を抑制できることを見出した。本発明は、この新規知見に基づいて完成されたものであって、以下を提供する。
【0012】
(1)標的RNAi分子の活性を抑制するための核酸分子であって、該標的RNAi分子において前記活性を有する機能鎖の塩基配列に対して完全に又は十分に相補的な塩基配列からなる非修飾DNA領域を含む一本鎖核酸部分、及び前記一本鎖核酸部分の5’末端及び3’末端の少なくとも一方に連結される二本鎖核酸部分を含む前記核酸分子。
【0013】
(2)前記非修飾DNA領域が18~35塩基長である、(1)に記載の核酸分子。
【0014】
(3)前記非修飾DNA領域が1塩基又は連続する2~10塩基のミスマッチ部位を含む、(1)又は(2)に記載の核酸分子。
【0015】
(4)前記一本鎖核酸部分が2つ以上の同一の又は異なる非修飾DNA領域を含む、(1)~(3)のいずれかに記載の核酸分子。
【0016】
(5)2つの非修飾DNA領域間に存在し、それらを連結する1~10塩基長の核酸からなるスペーサー領域を含む、(4)に記載の核酸分子。
【0017】
(6)同一の又は異なる一本鎖核酸部分を2つ以上含む、(1)~(5)のいずれかに記載の核酸分子。
【0018】
(7)前記一本鎖核酸部分が非修飾DNA領域と二本鎖核酸部分の連結を介在する1~10塩基長の核酸からなる連結領域を含む、(1)~(6)のいずれかに記載の核酸分子。
【0019】
(8)RNAi分子がsiRNA、shRNA又はmiRNAである、(1)~(7)のいずれかに記載の核酸分子。
【0020】
(9)前記二本鎖核酸部分が5~25塩基長である、(1)~(8)のいずれかに記載の核酸分子。
【0021】
(10)1又は連続する2~5塩基のミスマッチ部位を有する二本鎖核酸部分を含む、(1)~(9)のいずれかに記載の核酸分子。
【0022】
(11)一方の核酸鎖の3′末端と他方の核酸鎖の5′末端とが3~10塩基長の核酸からなるループ領域によって連結されている二本鎖核酸部分を含む、(1)~(10)のいずれかに記載の核酸分子。
【0023】
(12)一方又は両方の核酸鎖がニックを有する二本鎖核酸部分を含む、(1)~(11)のいずれかに記載の核酸分子。
【0024】
(13)三重鎖構造又は四重鎖構造を構成する二本鎖核酸部分を含む、(1)~(12)のいずれかに記載の核酸分子。
【0025】
(14)DNAのみで構成される、(1)~(13)のいずれかに記載の核酸分子。
【0026】
(15)(1)~(14)のいずれかに記載の核酸分子を有効成分として含有する医薬組成物。
【0027】
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2011-250905号の明細書及び/又は図面に記載される内容を包含する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の核酸分子によれば、標的とするRNAi分子の活性を、特異的に、かつ効率的に抑制することができる。また、本発明の核酸分子は、DNAのみで構成される場合であっても標的RNAi分子に結合して、その活性を抑制できることから、化学合成によって安全性の高い核酸分子を簡便に、大量に、かつ安価で提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のRNAi分子活性抑制用核酸分子の構成を示す概念図である。この図は、本発明のRNAi分子活性抑制用核酸分子の最小かつ必須の構成単位を示している。Aは、一本鎖核酸部分(101)の3’末端に二本鎖核酸部分(102)が連結されている構成であり、Bは、一本鎖核酸部分(101)の5’末端に二本鎖核酸部分(102)が連結されている構成である。Cは、一本鎖核酸部分(101)の5’末端と3’末端が二本鎖核酸部分(102)の3’末端と5’末端にそれぞれ連結された構成である。Aでは、一本鎖核酸部分(101)が標的RNAi分子(100)に対して相補的な塩基配列のみで構成されていることから一本鎖核酸部分(101)の全領域が非修飾DNA領域(103)に相当する。なお、A~Cにおいて、縦線は二本鎖核酸部分(102)の核酸鎖間の塩基対合を、星印は、一本鎖核酸部分(101)と標的RNAi分子(100)間の塩基対合を表す(以下、同様とする)。
【図2】本発明のRNAi分子活性抑制用核酸分子の構成単位における選択的構成要素である、一本鎖核酸部分(201)と二本鎖核酸部分(202)を連結する連結領域(204)、フランキング領域(205)、ミスマッチ部位(206)、二以上の非修飾DNA領域(203a及び203b)間のスペーサー領域(207)等を示す概念図である。
【図3-1】本発明のRNAi分子活性抑制用核酸分子の二本鎖核酸部分が1本の核酸鎖で構成される特殊な構造を有する例を示す。A:相補的な2本の核酸鎖(301)がループ領域(302)によって連結されることで、一本鎖核酸分子(304)と二本鎖核酸部分(303)が1本の核酸鎖で構成される例である。B:二本鎖核酸部分を構成する1本の核酸鎖が、その塩基配列中に特定の配列を含むことによって3重鎖構造を形成する例である。ここでは、図示する3列の核酸鎖の塩基配列間において、枠内の3つの塩基(GGC又はAAT)が互いに塩基対合することで、3つの核酸鎖が3重鎖を形成する例を示している。C: 二本鎖核酸部分を構成する1本の核酸鎖が、その塩基配列中に特定の配列を含むことによって4重鎖構造を形成する例である。ここでは、図示するグアニンリッチな配列(305)によって二本鎖核酸部分がGカルテット(306)を形成する例を示している。
【図3-2】本発明のRNAi分子活性抑制用核酸分子の二本鎖核酸部分が1本の核酸鎖で構成される特殊な構造を有する例を示す。D:塩基対合を形成した互いに相補的な2本の核酸鎖の一方の核酸鎖にニック(307)が存在する二本鎖核酸部分(303)の構成例である。E:塩基対合を形成した互いに相補的な2本の核酸鎖の両方の核酸鎖にニック(307)が存在する二本鎖核酸部分(303)の構成例である。
【図4】一分子内に1つの二本鎖核酸部分(401)と2つ(A-1~A-7及びD)、3つ(B-1~B-3)及び4つ(C)の一本鎖核酸部分(402)を含む本発明の核酸分子の構成態様を示す概念図である。A-1~Cは、二本鎖核酸部分が2本の核酸鎖で構成される場合の構成態様を、またDは、二本鎖核酸部分が1本の核酸鎖で構成される場合の構成態様である。
【図5-1】一分子内に2つの二本鎖核酸部分(501)と1つ(A)及び2つ(B-1~B-7)の一本鎖核酸部分(502)を含む本発明の核酸分子の構成態様を示す概念図である。これらは、2つの二本鎖核酸部分がいずれも2本の核酸鎖で構成される場合の構成態様を示している。
【図5-2】一分子内に2つの二本鎖核酸部分(501)と3つ(C-1~C-11)の一本鎖核酸部分(502)を含む本発明の核酸分子の構成態様の一部を示す概念図である。これらは、2つの二本鎖核酸部分がいずれも2本の核酸鎖で構成される場合の構成態様を示している。
【図5-3】一分子内に2つの二本鎖核酸部分(501)と3つ(C-12~C-19)の一本鎖核酸部分(502)を含む本発明の核酸分子の構成態様の一部を示す概念図である。これらは、2つの二本鎖核酸部分がいずれも2本の核酸鎖で構成される場合の構成態様を示している。
【図5-4】一分子内に2つの二本鎖核酸部分(501)と4つ(D-1~D-10)の一本鎖核酸部分(502)を含む本発明の核酸分子の構成態様の一部を示す概念図である。これらは、2つの二本鎖核酸部分がいずれも2本の核酸鎖で構成される場合の構成態様を示している。
【図5-5】一分子内に2つの二本鎖核酸部分(501)と4つ(D-11~D-20)の一本鎖核酸部分(502)を含む本発明の核酸分子の構成態様の一部を示す概念図である。これらは、2つの二本鎖核酸部分がいずれも2本の核酸鎖で構成される場合の構成態様を示している。
【図5-6】一分子内に2つの二本鎖核酸部分(501)と4つ(D-21~D-24)の一本鎖核酸部分(502)を含む本発明の核酸分子の構成態様の一部を示す概念図である。これらは、2つの二本鎖核酸部分がいずれも2本の核酸鎖で構成される場合の構成態様を示している。
【図5-7】一分子内に2つの二本鎖核酸部分(501)と5つ(E-1~E-10)の一本鎖核酸部分(502)を含む本発明の核酸分子の構成態様の一部を示す概念図である。これらは、2つの二本鎖核酸部分がいずれも2本の核酸鎖で構成される場合の構成態様を示している。
【図5-8】一分子内に2つの二本鎖核酸部分(501)と6つ(F)又は7つ(G)の一本鎖核酸部分(502)を含む本発明の核酸分子の構成態様の一部を示す概念図である。これらは、2つの二本鎖核酸部分がいずれも2本の核酸鎖で構成される場合の構成態様を示している。
【図5-9】一分子内に2つの二本鎖核酸部分(501)と1つ(H)、2つ(I-1及びI-2)、及び3つ(J-1~J-9)の一本鎖核酸部分(502)を含む本発明の核酸分子の構成態様を示す概念図である。これらは、2つの二本鎖核酸部分の一方が1本の核酸鎖で構成される場合の構成態様を示している。
【図5-10】一分子内に2つの二本鎖核酸部分(501)と4つ(K-1~K-7)、及び5つ(L)の一本鎖核酸部分(502)を含む本発明の核酸分子の構成態様を示す概念図である。これらは、2つの二本鎖核酸部分の一方が1本の核酸鎖で構成される場合の構成態様を示している。
【図5-11】一分子内に2つの二本鎖核酸部分(501)と1つ(M)、2つ(N-1及びN-2)、及び3つ(O-1~O-3)の一本鎖核酸部分(502)を含む本発明の核酸分子の構成態様を示す概念図である。これらは、2つの二本鎖核酸部分の両方が1本の核酸鎖で構成される場合の構成態様を示している。
【図6】一分子内に二本鎖核酸部分と一本鎖核酸部分をそれぞれ3つ以上含む核酸分子の構成態様を示す概念図である。
【図7-1】実施例1等で用いた核酸分子の分子名、その構造及び塩基配列、並びに配列番号を示す。図中、大文字はDNAを、小文字はRNAを示す。太字は一本鎖核酸部分を示し、そのうち下線部はミスマッチ部位を、二重下線部は連結領域を示す。したがって、それ以外の太字は非修飾DNA領域である。細字は二本鎖核酸部分を示す。以下、図7-2~図7-7において同じとする。
【図7-2】実施例1等で用いた核酸分子の分子名、その構造及び塩基配列、並びに配列番号を示す。
【図7-3】実施例1等で用いた核酸分子の分子名、その構造及び塩基配列、並びに配列番号を示す。
【図7-4】実施例1等で用いた核酸分子の分子名、その構造及び塩基配列、並びに配列番号を示す。
【図7-5】実施例4で用いた核酸分子の分子名、その構造及び塩基配列、並びに配列番号を示す。
【図7-6】実施例5及び7等で用いた核酸分子の分子名、その構造及び塩基配列、並びに配列番号を示す。
【図7-7】実施例6で用いた核酸分子の分子名、その構造及び塩基配列、並びに配列番号を示す。
【図8】実施例1で用いた測定系の構造を示す。(a)は、mir-16活性抑制効果を測定するpDsRed2-mi16-Tの主要構造の一部の概念図である。この発現ベクターでは、miR-16の標的部位としてmiR-16に完全に相補的な配列であるmiR-16-T(miR-16-Target)が3回繰り返して挿入されている。(b)は、mir-16活性抑制効果を補正するGFP発現ベクターであるpCAGGS-AFPの主要構造の一部の概念図である。
【図9】実施例1における各核酸分子によるmiR-16活性抑制効果を示す。図中、横軸に示す核酸分子名は、図7-1~図7-4の核酸分子名に対応する。また、縦軸は、前述のコントロールにおける正規化DsRed2/GFP比を1としたときの相対値である。
【図10】実施例2における各核酸分子によるmiR-16活性抑制効果を示す。
【図11】実施例3における各培養細胞でのRNAi分子活性抑制用核酸分子sp-mi16-11によるmiR-16活性抑制効果を示す。
【図12】本発明の核酸分子におけるミスマッチ部位の塩基長と活性抑制効果の関連性を示す。各核酸分子において、その核酸分子名におけるカッコ内の数字は、ミスマッチ部位の塩基数を示す。
【図13】本発明の核酸分子におけるミスマッチ部位の位置と活性抑制効果の関連性を示す。各核酸分子において、その核酸分子名におけるカッコ内の数字は、ミスマッチ部位の塩基数を示す。なお、sp-miR16-17(12)は、構造的に図7-3で示す核酸分子sp-miR16-11に相当する。
【図14】本発明の核酸分子における連結領域の塩基長と活性抑制効果の関連性を示す。各核酸分子において、その核酸分子名におけるカッコ内の数字は、連結領域の塩基の数を示す。
【図15】実施例7における各核酸分子によるmiR-143活性抑制効果を示す。図中、横軸に示す核酸分子名sp-miR143-1及びsp-miR21-1は、図7-6の核酸分子名に対応する。また、縦軸は、本発明の核酸分子無添加時のコントロールにおける正規化DsRed2/GFP比を1としたときの相対値である。
【図16】実施例8で用いた核酸分子を示す。図中、大文字はDNAを、小文字はRNAを表す。B及びCにおいて、太字は一本鎖核酸部分を、そして細字は、二本鎖核酸部分を表す。また、Bにおけるイタリック文字はフランキング領域を、Bにおける下線部は、ループ領域を示す。すなわち、Aでは、二本鎖核酸部分がなく、一本鎖核酸部分のみで形成された核酸分子sp-miR16-probe1の、Bでは一本鎖核酸部分とその3’末端に2本の核酸鎖からなる二本鎖核酸部分で構成されたsp-miR16-probe2の、そしてCでは、一本鎖核酸部分とその5’末端に2本の核酸鎖からなる二本鎖核酸部分及び3’末端にループ領域を有する1本の核酸鎖からなるsp-miR16-probe3の、それぞれの構造と塩基配列を示している。なお、各アンカー核酸鎖の5’末端部における「b」は、ビオチン化されていることを示す。
【図17】図16で示した各核酸分子の概念図とsp-miR16-probe1~sp-miR16-probe3のmiRNAとの結合力をSPR法によって測定した結果を示す。Aは、sp-miR16-probe1、Bは、sp-miR16-probe2、そしてCは、sp-miR16-probe3の結果を示す。またA~Cにおいて、(a)は50nM、(b)は25nM、(c)は12.5nM、(d)は6.25nM、及び(e)は3.125nMを示す。
【図18】実施例9で用いた核酸分子の分子名、その構造及び塩基配列、並びに配列番号を示す。図中、sp-miR16-19及びsp-miR302cdに関して、大文字はDNAを、太字は一本鎖核酸部分を示し、そのうち、下線部はミスマッチ部位を、二重下線部は連結領域を示す。したがって、それ以外の太字は非修飾DNA領域である。細字は二本鎖核酸部分を示す。BNA-miR16-supにおいて、イタリック文字は非天然型核酸であるBNAで構成された部位、その他はDNAで構成された部位である。OMe-miR16-supは、全て2’-OMeで化学修飾されたRNAからなる。小文字はRNAを示す。縦軸は、コントロールであるsp-miR302cdにおける正規化DsRed2/GFP比を1としたときの相対値である。
【図19】実施例9における各核酸分子による内在性miR-16の活性抑制効果を示す。
【図20】oncomir(癌miRNA)として知られ、癌細胞で高い発現が見られるmiR-21に関して、乳癌細胞株MCF7に内在するmiR-21の活性をmiR-21活性抑制用核酸分子sp-miR21-1によって抑制することでMCF7細胞の増殖が抑制されることを示した図である。
【図21】sp-miR21-1とは構造の異なるmiR-21活性抑制用核酸分子sp-miR21-YMBを用いたときのMCF7細胞の増殖抑制を示した図である。
【図22】実施例12における各核酸分子による外来miR-125bの活性抑制効果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
1.RNAi分子活性抑制用核酸分子
1-1.概要
本発明の第1の実施形態は、標的RNAi分子の活性を抑制するための核酸分子である。本発明のRNAi分子活性抑制用核酸分子(以下、本明細書においては、しばしば「核酸分子」と略記する)は、低廉かつ合成が容易で、さらに標的RNAi分子の活性を特異的に抑制することができる。

【0031】
1-2.定義
本発明において「RNAi分子」とは、生体内においてRNAi(RNA干渉:RNA inteference)を誘導し、標的とする遺伝子転写産物の分解を介してその遺伝子の発現を抑制(サイレンシング)することができるRNA分子をいう(Fire A. et al.,1998,Nature,391, 806-811)。また、本発明において「標的RNAi分子」とは、本発明の核酸分子の標的であって、その活性を抑制すべき対象となるRNAi分子をいう。RNAi分子の具体例としては、siRNA、miRNA、shRNA等が挙げられる。

【0032】
「siRNA」(低分子干渉RNA:small interference RNA)とは、標的遺伝子の一部に相当する塩基配列を有するセンス鎖(パッセンジャー鎖)、及びそのアンチセンス鎖(ガイド鎖)からなる小分子二本鎖RNAである。

【0033】
「miRNA」(micro RNA)とは、生体内に存在し、特定の遺伝子の発現を調節する長さ18~25塩基長の一本鎖ノンコーディングRNAである。このRNAは、標的遺伝子のmRNA及びタンパク質因子と結合して複合体を形成し、標的遺伝子の翻訳を阻害することが知られている。miRNAは、pri-miRNAと呼ばれる一本鎖の前駆体状態でゲノムから転写された後、核内でDroshaと呼ばれるエンドヌクレアーゼによりpre-miRNAと呼ばれるさらなる一本鎖前駆体状態にプロセシングされ、核外でDicerと呼ばれるエンドヌクレアーゼの働きによってmiRNA鎖とmiRNAスター鎖からなる成熟型二本鎖miRNAとなり、そのうちmiRNA鎖がRISC(RNA-induced silencing complex)複合体に取り込まれて、成熟型一本鎖miRNAとなり標的遺伝子発現を抑制する(David P. Bartel, Cell, Vol. 116, 281-297, January 23, 2004,)。

【0034】
「shRNA」(short hairpin RNA)とは、適当な配列を有する短いスペーサー配列によって前記siRNA又は成熟型二本鎖miRNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖が連結された一本鎖RNAをいう。つまり、shRNAは、一分子内でセンス領域とアンチセンス領域が互いに塩基対合してステム構造を形成し、同時に前記スペーサー配列がループ構造を形成ことによって、分子全体としてヘアピン型のステム-ループ構造を形成している。

【0035】
本発明において「RNAi分子の活性」とは、RNAi分子が有する標的遺伝子の発現をサイレンシングする活性(遺伝子サイレンシング活性)をいう。また、本発明において「RNAi分子の活性を抑制する」とは、RNAi分子の遺伝子サイレンシング活性を完全に又は部分的に抑制することをいう。RNAi分子は、内在性のRNAi分子であってもよいし、外来性のRNAi分子であってもよい。生体内(細胞内、組織内、器官内及び個体内を含む)に存在するある特定のRNAi分子の活性を抑制した場合、相対的にその特定のRNAi分子が標的としていた遺伝子のサイレンシングは完全に又は部分的に回避される。その結果、その標的遺伝子の生体内での発現量は増加することとなる。

【0036】
本発明において「核酸」とは、ヌクレオチドを構成単位とし、それらがホスホジエステル結合によって連結した生体高分子をいう。原則として自然界に存在する天然型ヌクレオチドが連結してなる天然型核酸を意味するが、本発明の核酸分子は、天然型核酸若しくは人工核酸又はそれらの混合物を包含する。

【0037】
本明細書において「天然型ヌクレオチド」とは、アデニン、グアニン、シトシン及びチミンのいずれかの塩基を有するデオキシリボヌクレオチド及びアデニン、グアニン、シトシン及びウラシルのいずれかの塩基を有するリボヌクレオチドが該当する。「天然型核酸」とは、デオキシリボヌクレオチドが連結したDNA及びリボヌクレオチドが連結したRNAが該当する。

【0038】
本明細書において「人工核酸」とは、全部又は一部が非天然型ヌクレオチドで構成される核酸、又は非天然型核酸をいう。

【0039】
本明細書において「非天然型ヌクレオチド」とは、人工的に構築された自然界に存在しないヌクレオチドである。天然型ヌクレオチドに類似の性質及び/又は構造を有する人工ヌクレオチドや、天然型ヌクレオチドの構成要素である天然型ヌクレオシド若しくは天然型塩基に類似の性質及び/又は構造を有する非天然型ヌクレオシド若しくは非天然型塩基を含む人工ヌクレオチドが該当する。非天然型ヌクレオシドの具体例としては、脱塩基ヌクレオシド、アラビノヌクレオシド、2′-デオキシウリジン、α-デオキシリボヌクレオシド、β-L-デオキシリボヌクレオシドが挙げられる。また、非天然型塩基の具体例としては、2-オキソ(1H)-ピリジン-3-イル基、5位置換-2-オキソ(1H)-ピリジン-3-イル基、2-アミノ-6-(2-チアゾリル)プリン-9-イル基、2-アミノ-6-(2-チアゾリル)プリン-9-イル基、2-アミノ-6-(2-オキサゾリル)プリン-9-イル基等が挙げられる。

【0040】
本明細書において「非天然型核酸」とは、天然型核酸に類似の構造及び/又は性質を有する人工的に構築された核酸をいう。例えば、ペプチド核酸(PNA:Peptide Nucleic Acid)、ホスフェート基を有するペプチド核酸(PHONA)、架橋化核酸(BNA/LNA:Bridged Nucleic Acid/Locked Nucleic Acid)、モルホリノ核酸等が挙げられる。

【0041】
また、本発明の核酸分子は、後述の非修飾DNA領域を除けば、修飾されていてもよい。ここでいう「修飾」とは、核酸の構成単位であるヌクレオチド又はその構成要素であるヌクレオシドの一部又は全部が他の原子団と置換されること、又は官能基等が付加されることをいう。具体的には、例えば、糖修飾、塩基修飾、又はリン酸修飾が挙げられる。

【0042】
糖修飾とは、ヌクレオシドを構成するリボース部の修飾である。例えば、リボヌクレオシドを構成するリボース部の修飾であって、2′位のヒドロキシ基における置換若しくは付加が挙げられる。具体的には、例えば、ヒドロキシ基を、メトキシ基に置換した2′-O-メチルリボース、エトキシ基に置換した2′-O-エチルリボース、プロポキシ基に置換した2′-O-プロピルリボース、若しくはブトキシ基に置換した2′-O-ブチルリボース、ヒドロキシ基をフルオロ基に置換した2′-デオキシ-2′-フルオロリボース又はヒドロキシ基を2′-O-メトキシ-エチル基に置換した2′-O-メトキシエチルリボースが該当する。又は、ヌクレオシドの(デオキシ)リボース部の他糖への置換等が挙げられる。具体的には、例えば、リボース部のアラビノース、2′-フルオロ-β-D-アラビノース、リボースの2′ヒドロキシ基と4′位の炭素原子をメチレンで架橋したリボース誘導体、リボース環の4位の酸素を硫黄に置換したリボース誘導体への置換が該当する。又は、リボフラノース環上の酸素原子(リボースの4位の酸素原子)が硫黄に置換したものも含まれる。

【0043】
塩基修飾とは、ヌクレオシドを構成する塩基部の修飾である。例えば、塩基部への官能基の置換若しくは付加、又は塩基部の塩基類似体への置換が挙げられる。具体的には、例えば、シトシンの5位にメチル基が置換した5-メチルシトシン、シトシンの5位にヒドロキシ基が置換した5-ヒドロキシシトシン、ウラシルの5位にフルオロ基が置換した5-フルオロウラシル、ウラシルの4位の酸素原子がチオ基に置換した4-チオウラシル若しくはウラシルの5位にメチル基が置換した5-メチルウラシルやウラシルの2位の酸素原子がチオ基に置換した2-チオウラシルのような修飾ピリミジン、アデニンの6位にメチル基の置換した6-メチルアデニン、グアニンの6位にチオ基が置換した6-チオグアニンのような修飾プリン又は他の複素環塩基等が該当する。

【0044】
さらに本発明の核酸分子は、必要に応じて、リン酸基、糖及び/又は塩基が核酸用標識物質で標識されていてもよい。この標識は、後述する非修飾DNA領域を構成するヌクレオチドにも行うことができる。核酸用標識物質は、当該分野で公知のあらゆる物質を利用することができる。例えば、放射性同位元素(例えば、32P、3H、14C)、DIG、ビオチン、蛍光色素(例えば、FITC、Texas、Cy3、Cy5、Cy7、FAM、HEX、VIC、JOE、Rox、TET、Bodipy493、NBD、TAMRA)、又は発光物質(例えば、アクリジニウムエスター)が挙げられる。

【0045】
1-3.構成
1-3-1.構成単位
本発明のRNAi分子活性抑制用核酸分子の構成を図1及び図2に示す。これらの図が示すように、本発明の核酸分子は、最小、かつ必須の構成単位として、1つの一本鎖核酸部分(101、201)とその末端に連結された1つの二本鎖核酸部分(102、202)をからなる構造を包含する。二本鎖核酸部分が連結される位置は、一本鎖核酸部分の3’末端(図1A)又は5’末端(図1B)のいずれであってもよいが、より高いRNAi分子の活性抑制効果を有する3’末端が好ましい。また、一本鎖核酸部分の両末端が1つの二本鎖核酸部分に連結されることで、二本鎖核酸部分と一本鎖核酸部分とがステム構造とループ構造を形成したような構造(図1C)であってもよい。

【0046】
以下、一本鎖核酸部分と二本鎖核酸部分について具体的に説明をする。

【0047】
(1)一本鎖核酸部分
「一本鎖核酸部分」(101、201)は、本発明の核酸分子において一本鎖からなる核酸部分であって、その内部に非修飾DNA領域(103、203)を少なくとも1つ、好ましくは3つ以下、より好ましくは2つ以下含む。一本鎖核酸部分が非修飾DNA領域を2つ以上含む場合、それぞれの非修飾DNA領域(例えば、203a及び203b)は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。ここで言う「同一」とは、標的RNAi分子が同一であること及び/又は構成する塩基配列が同一であることをいう。また、ここで言う「異なる」とは、標的RNAi分子が異なること及び/又は構成する塩基配列が異なることをいう。

【0048】
なお、図1Aでは、一本鎖核酸部分が後述する連結領域及び/又はフランキング領域を含まず、かつ一本鎖核酸部分が非修飾DNA領域(103)を1つしか含まないことから、一本鎖核酸部分の全領域(101)が非修飾DNA領域(103)に相当する。

【0049】
また、本発明の核酸分子は、必要に応じて、図2に示す連結領域(204)、フランキング領域(205)及び/又はスペーサー領域(207)を含むことができる。これらの領域は、本発明の核酸分子における選択的構成要素である
(1-1)非修飾DNA領域
「非修飾DNA領域」(103、203)とは、標的RNAi分子(100、200)における機能鎖の塩基配列に対して完全に又は十分に相補的な塩基配列からなる核酸領域をいう。非修飾DNA領域は、DNAのみで構成される。

【0050】
本明細書において、「非修飾DNA」とは、修飾されていないDNAをいう。核酸の修飾については上述した通りである。

【0051】
本明細書において、「機能鎖」とは、標的RNAi分子において、遺伝子サイレンシングを誘導することができるRNAiの実質的な活性を有する核酸鎖であって、本発明の核酸分子の真の標的となり得る核酸鎖をいう。例えば、RNAi分子がsiRNAやshRNAである場合には、ガイド鎖と呼ばれるアンチセンス鎖が該当し、またmiRNAである場合には、miRNA鎖と呼ばれるアンチセンス鎖が該当する。

【0052】
本明細書において、「相補的」とは、2つの塩基が互いにワトソン・クリック型の塩基対合を形成し得る関係をいう。具体的には、アデニンとチミン又はウラシルとの関係、及びシトシンとグアニンとの関係をいう。

【0053】
本明細書において、「完全に相補的」とは、2つの核酸鎖において一方の核酸鎖の塩基配列の全ての塩基が他方の核酸鎖の塩基配列の対応する全ての塩基と塩基対合し得る関係をいう。したがって、本発明の核酸分子において、一本鎖核酸部分の非修飾DNA領域が標的RNAi分子の機能鎖の塩基配列に対して完全に相補的な塩基配列からなる場合は、非修飾DNA領域の塩基配列の全ての塩基が機能鎖の塩基配列の全ての塩基と塩基対合を形成できることを意味する。

【0054】
本明細書において、「十分に相補的」とは、2つの核酸鎖のうち少なくとも一方の核酸鎖の全ての塩基が他方の核酸鎖の塩基配列の対応する全ての塩基と塩基対合し得る関係ではないものの、その一方の塩基配列の50%以上100%未満、好ましくは60%以上100%未満、より好ましくは70%以上100%未満、さらに好ましくは80%以上100%未満の塩基が他方の核酸鎖の塩基配列の塩基と塩基対合し得る関係をいう。例えば、2つの核酸鎖において、一方の核酸鎖の塩基配列は、他方の核酸鎖の塩基配列に対して完全に相補的であるが、他方の核酸鎖は、一方の核酸鎖の塩基配列に対して完全に相補的ではなく、50%以上100%未満しか相補的ではない場合が挙げられる。具体的には、完全に相補的な塩基配列からなる2つの核酸鎖のうち一方の核酸鎖のみに1つ又は複数の塩基が付加された場合が該当する。あるいは、例えば、2つの核酸鎖において、2つの核酸鎖の塩基配列は、いずれも相手方の核酸鎖に対して完全に相補的ではないが、それぞれの核酸鎖の塩基配列の50%以上100%未満が相手方の核酸鎖の塩基配列と相補的である場合が挙げられる。具体的には、完全に相補的な塩基配列からなる2つの核酸鎖において互いに対応する位置にあるヌクレオチド残基の塩基の両方又はいずれか一方を他の塩基に置換した結果、その置換した位置におけるヌクレオチド残基が塩基対合できなくなった場合や、一方の核酸鎖からヌクレオチド残基が1つ若しくは2~4つ欠失した結果、その欠失した位置におけるヌクレオチド残基が塩基対合できなくなった場合、が該当する。本発明の核酸分子であれば、前記十分に相補的な例として、非修飾DNA領域がミスマッチ部位(206)を含む場合が挙げられる。

【0055】
本明細書において、「ミスマッチ部位」(206)とは、2つの核酸鎖を互いに塩基対合させたときに、一方の核酸鎖の塩基配列に含まれる塩基に対して相補的な塩基が他方の核酸鎖の塩基配列の対応する位置に存在しないことにより、塩基対合を形成できないヌクレオチド残基からなる部位をいう。

【0056】
非修飾DNA領域は、その塩基配列中に、機能鎖と塩基対合しない1塩基(1ヌクレオチド残基に相当する。以下同様に解する。)からなるミスマッチ部位(「ギャップ部位」ともいう)及び/又は連続する2~10塩基、好ましくは連続する3~8塩基、より好ましくは連続する4~6塩基のミスマッチ部位(「ループ部位」ともいう)を少なくとも1つ有することができる。

【0057】
非修飾DNA領域がミスマッチ部位を含む場合、その挿入位置は、非修飾DNA領域内であれば特に制限はしない。好ましくは非修飾DNA領域の末端部を除いた同領域内部である。より好ましくは非修飾DNA領域の中央部、具体的にはその5’末端から数えて9~14番目、又は10~13番目のヌクレオチド残基間である。

【0058】
非修飾DNA領域の塩基長は、特に制限はしないが、前述のように標的RNAi分子における機能鎖の塩基配列に対して完全に又は十分に相補的な塩基配列を有することを鑑みれば、機能鎖以上の塩基長を有することが好ましい。一般に、RNAi分子の機能鎖は、18~25塩基長であることが知られている(Kim D.H., et al.,2005, Nat Biotechnol., 23(2):222-6)。また、非修飾DNA領域が後述するミスマッチ部位を含むことを考慮すれば、18~35塩基長、18~33塩基長又は18~31塩基長であることが好ましい。

【0059】
(1-2)連結領域
「連結領域」(204)とは、前記非修飾DNA領域と二本鎖核酸部分の連結を介在する核酸領域をいう。連結領域は、一本鎖核酸部分の5’末端部及び/又は3’末端部に位置する。本発明の核酸分子において、一本鎖核酸部分に含まれる非修飾DNA領域の少なくとも一方の末端部と二本鎖核酸部分は、直接連結されていてもよいが、本連結領域を介在することにより、一本鎖核酸部分と二本鎖核酸部分の自由度が高まり、より高いRNAi分子の活性抑制効果を得ることができる。

【0060】
連結領域は、1~10塩基長の一本鎖で構成される。好ましくは1~8塩基長、より好ましくは2~6塩基長である。

【0061】
連結領域を構成する核酸は、上述した核酸のいずれであってもよい。好ましくは天然型核酸、より好ましくはDNAである。また連結配列の塩基配列は、自己アニーリング等の分子内フォールディングによる高次構造を形成しない配列であれば、特に制限しない。例えば、Tのみ、又はCのみからなる配列が挙げられる。

【0062】
(1-3)フランキング領域
「フランキング領域」(205)とは、一本鎖核酸部分(201)において、二本鎖核酸部分が連結しない5’末端又は3’末端に連結される一本鎖の核酸領域をいう。それ故、フランキング領域は、一本鎖核酸部分に含まれる非修飾DNA領域の一方の末端部と直接連結される。

【0063】
フランキング領域の塩基長は、特に限定はしない。不要に長い場合、本発明の核酸分子を化学合成等により調製することが困難又はコスト高となることを考慮すれば、通常は、1~30塩基長、又は1~25塩基長の範囲であることが好ましい。

【0064】
フランキング領域を構成する核酸は、上述した核酸のいずれであってもよい。好ましくは天然型核酸、より好ましくはDNAである。またフランキング領域の塩基配列は、自己アニーリング等の分子内フォールディングによる高次構造を形成しない配列であれば、特に制限しない。また、フランキング領域には、必要に応じて、Hisタグ、FLAGタグ、mycタグ、HAタグ等の各種タグをコードする塩基配列を含むことができる。

【0065】
また、フランキング領域において、一本鎖核酸部分に連結されない他方の末端部は、遊離状態の一本鎖核酸末端でもよいし、担体に固定されていてもよい。ここでいう「担体」とは、例えば、低分子化合物(例えば、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン又はニュートラアビジン)、アミノ酸若しくはペプチド、高分子多糖支持体(例えば、セファロース、セファデックス、アガロース)、樹脂(天然又はプラスチックを含む合成樹脂)、シリカ、ガラス、磁気ビーズ、金属(例えば、金、白金、銀)、セラミックス、又はそれらの組み合わせが挙げられる。

【0066】
(1-4)スペーサー領域
「スペーサー領域」(207)とは、一本鎖核酸部分が2つ以上の非修飾DNA領域を含むときに、各非修飾DNA領域間で2つの非修飾DNA領域を介在する核酸領域をいう。2つ以上の非修飾DNA領域が含まれる場合、それらは直接連結されていてもよいが、本スペーサー領域を介在させることにより、一本鎖核酸部分内での各非修飾DNA領域の自由度が高まり、それぞれの標的RNAi分子との結合が容易になることから、より高いRNAi分子の活性抑制効果を得ることができる。

【0067】
スペーサー領域は、1~10塩基長の一本鎖で構成される。好ましくは1~8塩基長、より好ましくは2~8塩基長である。

【0068】
スペーサー領域を構成する核酸は、上述した核酸のいずれであってもよい。好ましくは天然型核酸、より好ましくはDNAである。またスペーサー配列の塩基配列は、自己アニーリング等の分子内フォールディングによる高次構造を形成しない配列であれば、特に制限しない。

【0069】
(2)二本鎖核酸部分
「二本鎖核酸部分」(102、202)は、前記一本鎖核酸部分の5’末端部又は3’末端部の少なくとも一方に連結される核酸部分である。

【0070】
(2-1)基本構造
二本鎖核酸部分は、塩基対合を形成した互いに相補的な2本の核酸鎖から構成される。ただし、後述の(2-2)に記載するように、核酸鎖が分子内フォールディングによって二本鎖を形成する場合、多重鎖構造を形成し得る場合、又は一方又は両方の核酸鎖内にニック(切れ目)が存在する場合には、この限りではない。

【0071】
二本鎖核酸部分を構成する各核酸鎖の塩基長は、核酸鎖間で形成された塩基対合を安定して維持できる長さであれば、特に限定はしない。通常は、5~25塩基長の範囲内で足りる。ただし、長い塩基長の核酸分子の調製に伴う困難性やコスト面を考慮した上で、必要に応じて、上記塩基長を26塩基長以上にしても構わない。また、二本鎖核酸部分を構成する各核酸鎖の塩基長は、同一であってもよいし又は異なっていてもよい。好ましくは、同一塩基長である。各核酸断片の塩基長が異なる場合、図2Bで示すように、長鎖側が分子内フォールディングによって一以上の側鎖ステム部位(208)及び側鎖ループ部位(209)、を形成してもよい。また、ステム部位は、その内部に一以上の側鎖ミスマッチ/バルジ部位(210)を含んでいてもよい。

【0072】
二本鎖核酸部分は、2本の核酸鎖が互いに完全に相補的であることが好ましい。特に各核酸鎖の塩基長が9塩基長以下の場合には、核酸鎖間で形成された塩基対合を安定して維持するために、完全に相補的であることが望ましい。一方、各核酸鎖の塩基長が10塩基長以上の場合には、完全に相補的でなくてもよく、十分に相補的であればよい。例えば、二本鎖核酸部分の少なくとも一方の核酸鎖が、その塩基配列中に、他方の核酸鎖と塩基対合しない1塩基及び/又は連続する2塩基以上のミスマッチ部位(211)を少なくとも1つ有する場合が挙げられる。ミスマッチ部位が連続する2塩基以上からなるループ部位(212)を形成する場合、ミスマッチ部位の塩基長は、2~6塩基であればよいが、前述のように、そのループ部位内で分子内フォールディングによって一以上のループ構造及び一以上のステム構造を形成する場合には、ミスマッチ部位がより長い塩基長であってもよい。

【0073】
二本鎖核酸部分を構成する核酸は、上述した核酸のいずれであってもよい。二本鎖構造等の二次構造や後述するGカルテット等の三次構造のように、安定した高次構造を形成しえる核酸であれば、特に限定はしない。本発明の核酸分子の合成面やコスト面を考慮した場合、好ましくはDNAである。すなわち、本発明の核酸分子は、その全てをDNAで構成した場合が核酸分子の合成上やコスト上、最も容易かつ低廉であることから好ましい。

【0074】
二本鎖核酸部分のそれぞれの核酸鎖の塩基配列は、上述したように、互いの核酸鎖が完全に又は十分に相補的であればよく、一方又は両方の核酸鎖が分子内フォールディングによる高次構造を形成し得る塩基配列を有していても構わない。

【0075】
二本鎖核酸部分は、少なくとも一方の核酸鎖において、少なくとも一方の末端に前記一本鎖核酸部分が連結されている。したがって、各核酸鎖の両末端に前記一本鎖核酸部分を連結した場合、1つの二本鎖核酸部分は、最大で4つの一本鎖核酸部分を連結することができる。

【0076】
(2-2)特殊な構造を有する二本鎖核酸部分
二本鎖核酸部分は、原則として完全に又は十分に相補的な2本の核酸鎖が互いに塩基対合して構成される。しかし、核酸鎖が分子内フォールディングによって二本鎖を形成する場合、多重鎖構造を形成し得る場合、又は相補的な2本の核酸鎖の一方又は両方の核酸鎖にニックが存在する場合には、1本又は3本以上の核酸鎖からも構成され得る。このような特殊な構造も、核酸鎖間又は核酸鎖内で塩基対合を介して高次構造を形成する点で2本の核酸鎖間の塩基対合によって形成される二本鎖核酸と同一又は類似する構造であることから本発明の核酸分子においては、二本鎖核酸部分に含めるものとする。

【0077】
このような特殊な構造を有する二本鎖核酸部分の具体例を図3-1及び図3-2に示す。

【0078】
図3-1におけるAは、互いに相補的な2本の核酸鎖(301)がループ領域(302)によって連結された構成例である。本構成では、このループ領域によって二本鎖核酸部分が1本の核酸鎖で構成される。

【0079】
本明細書において「ループ領域」(302)とは、二本鎖核酸部分を構成する互いに完全に又は十分に相補的な2本の核酸鎖において、一方の核酸鎖の3′末端と他方の核酸鎖の5′末端とを連結する1本鎖で構成される核酸領域をいう。ループ領域の塩基長は、特に限定はしないが、通常は3~10塩基長あればよい。二本鎖核酸部分が1本の核酸鎖で構成される場合、その二本鎖核酸部分の一方の末端に前記一本鎖核酸部分(304)を連結することによって、本発明の核酸分子の必須構成単位を1本の核酸鎖で形成させることができる。したがって、本発明の核酸分子を製造には、核酸分子を化学合成後、分子内フォールディングさせるだけで足り、異なる2本の核酸鎖の混合比率等を調整する工程を必要しない。その結果、製造工程や製造コストを削減できる。

【0080】
図3-1のBは、核酸鎖間に三重鎖構造(三重らせん構造)が形成される二本鎖核酸部分の構成例である。三重鎖構造は、3本の核酸鎖が特定の塩基配列を含む場合に各核酸鎖間で構成される。「特定の塩基配列」とは、例えば、G(グアニン)及びA(アデニン)の連続した配列(GA配列)とT(チミン)及びC(シトシン)の連続した配列(TC配列)が挙げられる。3本の核酸鎖のうち2本がGA配列を含み、1本がCT配列を含むことにより、Bで示すように、3つの塩基間、すなわち、GGC間(各塩基は、塩基配列上で互いにはなれて存在する)及びAAT間(同前)で塩基対合が形成される。

【0081】
図3-1のCは、核酸鎖間に四重鎖構造(四重らせん構造)が形成される二本鎖核酸部分の構成例である。この図で示す四重鎖構造は、Gカルテット(G-quartet)と呼ばれる構造(306)であり、4つのGが水素結合によって互いに同一平面内に配置され、そのような平面が二段以上形成されることを特徴とする。Gカルテットは、例えば、配列番号41(305)で示すようなGリッチな塩基配列を含む1本鎖において分子内フォールディングによって形成され得る。

【0082】
図3-2のD及びEは、塩基対合を形成した互いに相補的な2本の核酸鎖の一方(D)又は両方(E)の核酸鎖にニック(307)が存在する二本鎖核酸部分(303)の構成例である。本構成では、二本鎖核酸部分が3本若しくは4本、又はそれ以上の核酸鎖で構成される。

【0083】
一方の核酸鎖にニックが1箇所存在する場合(D)には、ニックによってその1本の核酸鎖が2本(308、309)に分離することから、二本鎖核酸部分としては1本の核酸鎖に2本の核酸鎖が塩基対合した構造となる。これらの核酸鎖は、塩基対合を介して、全体として2本の核酸鎖からなる二本鎖核酸部分を構成し得る。

【0084】
両方の核酸鎖にニックがそれぞれ1箇所存在する場合(E)には、それぞれのニックによって1本の核酸鎖が2本に分離することから、二本鎖核酸部分全体としては4本の核酸鎖(308、309、310、311)が互いに塩基対合を介して、全体として2本の核酸鎖からなる二本鎖核酸部分を構成した構造となる。各核酸鎖におけるニックの位置は、アニーリングの際、互いに対応する位置であってはならない。二本鎖核酸部分が、2つに分離してしまうからである。安定した二本鎖核酸部分を形成させるためには、各核酸鎖におけるニックの位置は、各鎖がアニーリングしたときに互いに4塩基以上、好ましくは6塩基以上、より好ましくは8塩基以上離れていることである。

【0085】
ニックの数は、原則構造の互いに相補的な2本の核酸鎖において1本の核酸鎖あたり複数個存在していてもよいが、二本鎖核酸部分を構成する核酸鎖が断片化することから、本発明の核酸分子の製造において工程が複雑化してしまう。したがって、ニックの数は、1本の核酸鎖あたり1箇所であることが好ましい。

【0086】
1-3-2.RNAi分子活性抑制用核酸分子の構成態様
本発明の核酸分子は、一分子内に1つの一本鎖核酸部分と1つの二本鎖核酸部分が連結されてなる最小、かつ必須の構成単位を少なくとも1つ有する。一方、本発明の核酸分子は、一分子内に一本鎖核酸部分及び/又は二本鎖核酸部分を2つ以上有することができる。

【0087】
この場合、一分子内に含まれる各一本鎖核酸部分の構成は、同一であってもよく、異なっていてもよく、又はそれらの組み合わせ(一本鎖核酸部分を3つ以上有する場合に限る)であってもよい。

【0088】
例えば、各一本鎖核酸部分が非修飾DNA領域を1つ含む場合、それぞれの一本鎖核酸部分の標的RNAi分子は、同一であってもよく、異なっていてもよく、又はそれらの組み合わせ(一本鎖核酸部分を3つ以上有する場合に限る)であってもよい。各一本鎖核酸部分の標的RNAi分子が同一の場合、そのような核酸分子は、一分子で、より多くの標的RNAi分子の活性を抑制できる点で効果的である。各一本鎖核酸部分の標的RNAi分子が異なる場合、そのような核酸分子は、治療すべき疾患が生体内における複数種のmiRNAの活性に起因するようなときに、各一本鎖核酸部分がそれぞれのRNAi分子を標的とすることが可能となる。それ故、一分子で多面的な治療効果を期待することができる点で効果的である。

【0089】
また、各一本鎖核酸部分は、同一の又は異なる構成であってもよい。例えば、同一のRNAi分子を標的とする場合であっても、1つの一本鎖核酸分子は、非修飾DNA領域のみで構成され、かつその非修飾DNA領域が標的RNAi分子における機能鎖の塩基配列に対して完全に相補的な塩基配列からなるのに対して、他の一本鎖核酸分子は、非修飾DNA領域、連結領域及びフランキング領域から構成され、かつその非修飾DNA領域が、標的RNAi分子における機能鎖の塩基配列に対してミスマッチ部位を含む十分に相補的な塩基配列からなる場合が挙げられる。ミスマッチ部位の有無やその挿入位置、又は連結領域の有無等は、一本鎖核酸部分の標的RNAiに対する活性抑制効果の強さを左右し得る。したがって、各一本鎖核酸部分における上記のような構成的な差異は、例えば、各一本鎖核酸部分が異なるRNAi分子を標的とする場合であって、各標的RNAiの活性の抑制強度に差異を設けたい場合に便利である。

【0090】
あるいは、各二本鎖核酸部分は、互いに異なる構成を有していてもよい。例えば、一分子内において1つの二本鎖核酸部分は、2本の核酸鎖で構成され、他の二本鎖核酸部分は、ループ領域を含む1本鎖で構成される場合が挙げられる。また、2以上の二本鎖核酸部分がいずれも2本の核酸鎖で構成される場合であっても、1つの二本鎖核酸部分は、互いに完全に相補的な2本の核酸鎖から構成され、他の核酸部分はミスマッチ部位を含む十分に相補的な塩基配列からなる場合が挙げられる。

【0091】
さらに、各一本鎖核酸部分が同一の又は異なる構成である場合の例として、各一本鎖核酸部分が含む非修飾DNA領域の数が同一である場合、異なる場合、又はそれらの組み合わせである場合(一本鎖核酸部分を3つ以上有する場合に限る)が挙げられる。また、非修飾DNA領域の数にかかわらず、それぞれの非修飾DNA領域の標的RNAi分子が同一である場合、異なる場合、又はそれらの組み合わせである場合(非修飾DNA領域を3つ以上有する場合に限る)が挙げられる。

【0092】
一分子内に二本鎖核酸部分が2つ以上含まれる場合も、各二本鎖核酸部分の構成は、同一であってもよく、異なっていてもよく、又はそれらの組み合わせ(二本鎖核酸部分を3つ以上有する場合に限る)であってもよい。

【0093】
以下、本発明の核酸分子が一分子内に複数の一本鎖核酸部分及び/又は二本鎖核酸部分を有する場合の様々な構成態様について、図4~6を用いて説明する。

【0094】
(1)一分子内に1つの二本鎖核酸部分と2~4つの一本鎖核酸部分を含む核酸分子(図4)
二本鎖核酸部分が2本の核酸鎖で構成される場合には、二本鎖核酸部分は、5'末端と3'末端がそれぞれ2つ存在する。それ故、1つの二本鎖核酸部分は、一本鎖核酸部分を2つ(図4A-1~A-7)、3つ(図4B-1~B-3)又は4つ(図4C)有し得る。

【0095】
また、二本鎖核酸部分が1本の核酸鎖で構成される場合には、5'末端と3'末端がそれぞれ1つ存在することから、1つの二本鎖核酸部分は2つの一本鎖核酸部分を有し得る(図4D)。

【0096】
(2)一分子内に2つの二本鎖核酸部分と1~7つの一本鎖核酸部分を含む核酸分子(図5-1~5-11)
2つの二本鎖核酸部分のいずれもが2本の核酸鎖で構成される場合、1つの二本鎖核酸部分は、一本鎖核酸部分を1つ(図5-1:A)、2つ(図5-1:B-1~B-7)、3つ(図5-2及び図5-3:C-1~C-19)、4つ(図5-4~図5-6:D-1~D-24、また、これらの他にも図示はしないが、二本鎖核酸部分の対応する5’末端と3’末端に1つの一本鎖核酸部分がループ状に連結された構成の核酸分子を含む)、5つ(図5-7:E-1~E-10、また、これらの他にも図示はしないが、二本鎖核酸部分の対応する5’末端と3’末端に1つの一本鎖核酸部分がループ状に連結された構成の核酸分子を含む)、6つ(図5-8:F)、又は7つ(図5-8:G)有し得る。

【0097】
また、2つの二本鎖核酸部分の一方が1本の核酸鎖で構成され、他方が2本の核酸鎖で構成される場合、1つの二本鎖核酸部分は、一本鎖核酸部分を1つ(図5-9:H)、2つ(図5-9:I-1~I-2、また、これらの他にも図示はしないが、二本鎖核酸部分の対応する5’末端と3’末端に1つの一本鎖核酸部分がループ状に連結された構成の核酸分子を含む)、3つ(図5-9:J-1~J-9、また、これらの他にも図示はしないが、二本鎖核酸部分の対応する5’末端と3’末端に1つの一本鎖核酸部分がループ状に連結された構成の核酸分子を含む)、4つ(図5-10:K-1~K-7、また、これらの他にも図示はしないが、二本鎖核酸部分の対応する5’末端と3’末端に1つの一本鎖核酸部分がループ状に連結された構成の核酸分子を含む)、又は5つ(図5-10:L)有し得る。

【0098】
さらに、2つの二本鎖核酸部分の両方が1本の核酸鎖で構成される場合、1つの二本鎖核酸部分は、一本鎖核酸部分を1つ(図5-11:M)、2つ(図5-11:N-1~N-2)、又は3つ(図5-11:O-1~O-3)有し得る。

【0099】
(3)一分子内に二本鎖核酸部分と一本鎖核酸部分をそれぞれ3つ以上含む核酸分子(図6)
本発明の核酸分子の一分子内に二本鎖核酸部分と一本鎖核酸部分をそれぞれ3つ以上包含させることも可能である。しかし、そのような核酸分子の多くは、製造時に複数の異なる核酸断片を複雑にアニーリングさせたり、又は150塩基長を超える非常に長い核酸鎖を合成する必要が生じてしまうため、製造工程の増加、製造コストの増大、さらに製造自体の困難性を伴う。それ故、本発明の目的に反することとなり、好ましい構成とは言い難い。

【0100】
しかし、例えば、1本あたり約40~60塩基長からなる異なる2種類又はそれ以上の核酸鎖を混合してアニーリングすることによって、多数の二本鎖核酸部分と一本鎖核酸部分を包含する核酸分子を製造できる場合には、前記問題は生じないことから、この限りではない。

【0101】
例えば、図6で示す核酸分子は、一本鎖核酸部分の両末端に、二本鎖核酸部分を構成する一方の核酸鎖の一部がそれぞれ連結された2種類の核酸鎖(ここでは、便宜的に「α鎖(601)」及び「β鎖(602)」とする)で構成される。α鎖において一本鎖核酸部分(603)の5’末端側に位置する二本鎖核酸部分を構成する一方の核酸鎖の一部(604)は、β鎖における一本鎖核酸部分(603)の3’末端に位置する二本鎖核酸部分を構成する一方の核酸鎖の一部(607)と塩基対合することによって、コヒシブ末端(610)を有する二本鎖核酸断片(608)の一部(609)を形成する。同様に、α鎖において一本鎖核酸部分の3’末端側に位置する二本鎖核酸部分を構成する一方の核酸鎖の一部(605)は、β鎖において一本鎖核酸部分の5’末端に位置する二本鎖核酸部分を構成する一方の核酸鎖の一部(606)と塩基対合することによって、コヒシブ末端を有する二本鎖核酸断片の一部が形成する。本発明の核酸分子は、前記形成された2つの一本鎖核酸部分と、その両末端に連結され、かつコヒシブ末端を有する二本鎖核酸断片の一部からなる本発明の核酸分子の部分構成単位(611)をコヒシブ末端により複数個連結した構成を有する。

【0102】
1-4.RNAi分子活性抑制用核酸分子の製造方法
本発明の核酸分子の調製方法について説明をする。本発明の核酸分子は、上記「1-3.構成」で説明をした構成を有する核酸分子を調製することのできる方法であれば、当該分野で公知のあらゆる方法によって製造することができる。ここでは、一具体例を挙げて説明するが、本発明の核酸分子の製造方法は、以下の方法に限られない。

【0103】
本発明の核酸分子の製造方法は、(1)設計工程、(2)合成工程、及び(3)アニーリング工程を含む。

【0104】
(1)設計工程
「設計工程」とは、本発明の核酸分子の構造とそれを構成する塩基配列を決定する工程である。

【0105】
本工程では、まず、一本鎖核酸部分の設計を行う。一本鎖核酸部分の設計では、目的とする標的RNAi分子における機能鎖の塩基配列に基づいて、その塩基配列に相補的な塩基配列を決定し、それを非修飾DNA領域として設計する。このとき、必要に応じて非修飾DNA領域内にミスマッチ部位を挿入してもよい。また、異なるRNAi分子を標的とする非修飾DNA領域を2以上含む核酸分子を製造する場合には、それぞれのRNAi分子に対して特異的な非修飾DNA領域を設計しておく。必要であれば非修飾DNA領域において、二本鎖核酸部分を連結する末端部に連結領域を配置するように設計してもよいし、二本鎖核酸部分を連結しない末端部にはフランキング領域を設計してもよい。一本鎖核酸部分に非修飾DNA領域を2つ以上含ませる場合には、それらの塩基配列間にスペーサー領域を配置するように設計してもよい。連結領域、フランキング領域及びスペーサー領域の塩基配列や塩基長は、必要性や合成するポリヌクレオチドの長さに応じて適宜定めればよい。また、連結領域、フランキング領域及びスペーサー領域は、必要であれば、DNA以外の核酸で構成するように設計することもできる。

【0106】
次に、二本鎖核酸部分の設計を行う。ここでは、最初にこの二本鎖核酸部分を2本の核酸鎖で構成させるか、1本の核酸鎖で構成させるかを決定する。2本の核酸鎖で構成させる場合には、それぞれの核酸鎖が互いに完全に又は十分に相補的となるように設計する。このとき、各核酸鎖の塩基配列は、自己アニーリングや一本鎖核酸部分とアニーリングをしない配列となるように留意する。また、1本の核酸鎖で構成させる場合には、互いに完全に又は十分に相補的な核酸鎖において、一方の核酸鎖の3′末端と他方の核酸鎖の5′末端とをループ領域によって連結し1本の核酸鎖となるように設計する。二本鎖核酸部分を構成する核酸は、天然型核酸、人工核酸又はそれらの組合せのいずれであってもよい。必要に応じて適当な核酸を適宜選択し、設計すればよい。通常は、DNAが好ましく使用される。

【0107】
続いて、一本鎖核酸部分少なくとも1つの末端と二本鎖核酸部分の少なくとも一つの末端が連結し、1本の核酸鎖となるように設計する。ただし、この連結は、必ずしも設計工程で行う必要はなく、次の合成工程で調製してもよい。

【0108】
(2)合成工程
「合成工程」とは、前記設計工程で設計した塩基配列に基づいて、本発明の核酸分子を構成する各核酸鎖を酵素的に又は化学合成によって製造する工程である。前述のように、本発明の核酸分子は、非修飾DNA領域以外は、天然型核酸、人工核酸又はそれらの組合せから構成することができる。核酸の合成方法は、当該分野では公知の技術を用いればよい。例えば、固相合成法に従って化学合成することができる。具体的には、例えば、Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry, Volume 1, Section 3、Verma S. and Eckstein F., 1998, Annul Rev. Biochem., 67, 99-134に記載された化学合成方法を利用すればよい。また、人工核酸や修飾核酸を含めた核酸の化学合成については、多くのライフサイエンス系メーカー(例えば、タカラバイオ社、ファスマック社、ライフテクノロジーズ社、ジーンデザイン社、シグマ アルドリッチ社等)が受託製造サービスを行っており、それらを利用することもできる。化学合成後の本発明の核酸分子は、使用前に当該分野で公知の方法によって精製することが好ましい。例えば、精製方法としては、ゲル精製法、アフィニティーカラム精製法、HPLC法等が挙げられる。

【0109】
また、一本鎖核酸部分と二本鎖核酸部分を別個に化学合成した場合には、前述のように、本工程において本発明の核酸分子を合成する。例えば、当該分野で公知の方法を用いて、その一本の核酸断片の両末端を連結することによって合成してもよい。一具体例として、リガーゼ等の酵素を用いる方法が挙げられる。

【0110】
(3)アニーリング工程
「アニーリング工程」とは、前記合成工程後の核酸分子を構成する各核酸鎖のアニーリング及び/又は分子内フォールディングさせて標的RNAi分子の活性を抑制する活性を有する本発明の核酸分子を形成させ工程をいう。

【0111】
本工程は、合成された一以上の核酸鎖を、例えば、適当なバッファー、例えば、D-PBS(-)(0.2g/L KCl、8g/L NaCl、0.2g/L KH2PO4、1.15g/L Na2HPO4)に溶解し、混合後、90℃に加熱後、徐々に温度を下げてアニーリングさせればよい。

【0112】
本発明の核酸分子が二本以上の核酸鎖から構成される場合、核酸分子は、それぞれの核酸鎖を独立に化学合成し、必要に応じて精製した後、好ましくは等量混合して、互いにアニーリングさせることで製造することができる。

【0113】
本発明の核酸分子が一本の核酸鎖から構成される場合、核酸分子は、核酸鎖を化学合成し、必要に応じて精製した後、分子内フォールディングが可能な条件下に置くことで製造することができる。

【0114】
1-5.使用方法
本発明の核酸分子は、生体内、すなわち、生きている細胞内、組織内、器官内又は個体内に導入することによって生体内で標的RNAi分子の活性を抑制することができる。

【0115】
本発明の核酸分子を生体内に導入する方法は、本発明の核酸分子を含有する溶液の注入する方法、本発明の核酸分子によって被覆された粒子を用いたボンバードメントする方法、又は本発明の核酸分子の存在下でのエレクトロポレーション等による方法が挙げられる。さらに、脂質媒介担体輸送、化学媒介輸送(例えばリン酸カルシウム法)等の核酸を細胞に導入するための当技術分野において公知の他の方法を用いることができる。また、生体が動物個体であれば、後述する医薬組成物のような薬剤として導入することができる。

【0116】
本発明の核酸分子を導入すべき細胞、組織、器官又は個体は、特に限定はしない。標的RNAi分子を含み得るあらゆる生物種又はそれに由来する細胞、組織若しくは器官を包含する。例えば、生物種は、動物及び植物をはじめとするいずれの生物であってもよい。

【0117】
動物であれば、好ましくは脊椎動物、より好ましくは魚類、鳥類又は哺乳動物である。魚類の中でさらに好ましくは水産資源用魚種(例えば、サケ科、スズキ科、タラ科、ニシン科、ヒラメ科、カレイ科、アジ科、イカナゴ科、タイ科及びメバル科の魚種)である。鳥類の中でさらに好ましくは食用種(例えば、ニワトリ、ガチョウ、アヒル、カモ、合鴨、七面鳥、ウズラ、ダチョウ等)である。哺乳動物の中でさらに好ましくは家畜(ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ)、実験用動物(げっ歯類、ウサギ、イヌ、サル)、競争馬、愛玩動物(イヌ、ネコ、ウサギ、サル、げっ歯類)又はヒトである。一層好ましい生物種は、ヒトである。

【0118】
一方、植物であれば、好ましくは種子植物、より好ましくは被子植物、さらに好ましくは食用植物種、繊維資源用植物種、又は木材資源用植物種である。例えば、食用植物種であれば、イネ科(例えば、イネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、トウモロコシ、コーリャン、アワ)、マメ科(例えば、ダイズ、アズキ、グリーンピース)、ナス科(例えば、トマト、ナス、ジャガイモ、トウガラシ、ピーマン)、ヒルガオ科(例えば、サツマイモ)、バラ科(例えば、イチゴ、アーモンド、モモ、プラム、ウメ、バラ、サクラ)、アブラナ科(例えば、ダイコン、カブ、アブラナ)、アカザ科(例えば、ホウレンソウ、テンサイ)、セリ科、タデ科、ウリ科、キク科、ユリ科、サトイモ科、ブドウ科、ミカン科、ブナ科、ヤシ科等に属する食用の植物種が、繊維資源用植物種であれば、例えば、ワタ、アサ等が、また、木材資源用植物種であれば、スギ、ヒノキ、モミ、ツガ、マツ、イチイ、サクラ、カエデ、カシ、ナラ、ブナ、ニレ、ケヤキ、クルミ、ホウ、カツラ、チーク、ラワン、黒檀、マホガニー、ポプラ、ユーカリ等が挙げられる。

【0119】
さらに、本発明の核酸分子は、研究用試薬として用いることができ、この場合、遺伝子発現抑制剤、RNAi試薬等として用いることができる。

【0120】
本発明の核酸分子は、導入される用量に応じて細胞、組織、器官又は個体において特定のRNAi分子を抑制する。当該核酸分子は、細胞当たり少なくとも1コピーの送達を可能とする量で導入することができる。高用量(例えば、細胞当たり少なくとも5、10、100、500又は1000コピー)の当該核酸分子はより効果的な抑制を生じさせることができる。

【0121】
1-6.効果
本発明の核酸分子によれば、標的とするRNAi分子の活性を、特異的、かつ効率的に抑制することができる。また、本発明の核酸分子は、DNAのみで構成される場合でも標的RNAi分子の活性を十分に抑制できることから、化学合成により簡便に、かつ大量に、さらに安価で提供することができる。

【0122】
2.医薬組成物
2-1.概要
本発明の第2の実施形態は、医薬組成物である。本発明の医薬組成物を生体に投与することによって、生体内における特定のRNAi分子の活性を特異的に抑制することができる。

【0123】
2-2.構成
2-2-1.組成
(1)有効成分
本発明の医薬組成物は、有効成分として前記第1実施形態のRNAi分子活性抑制用核酸分子を含有する。本発明の医薬組成物は、1つのRNAi分子を標的とする同一の又は二以上の異なる前記核酸分子を含むことができる。又は、異なるRNAi分子を標的とする同一の又は二以上の異なる核酸分子を含んでいてもよい。

【0124】
本発明の医薬組成物において、医薬組成物中の有効成分である核酸分子の含有量は、製薬上有効な量であればよい。本明細書において「製薬上有効な量」とは、核酸分子中の機能性核酸がその機能を発揮する上で必要な用量で、かつ投与する生体に対して有害な副作用がほとんどないか又は全くない用量を言う。具体的な用量は、使用する核酸分子の種類、標的RNAi分子の種類、そのRNAi分子の作用機序、本発明の核酸分子の作用効果及び安定性、使用する医薬組成物の剤形、使用する担体の種類、及び投与方法、被検体の情報及び投与経路によって異なる。ヒトに投与する場合、製薬上有効な量の範囲及び好適な投与経路は、通常、細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータに基づいて策定される。最終的な投与量は、個々の被検者に応じて医師の判断により決定され、調整される。その際に、勘案される被検者の情報には、病気の進行度若しくは重症度、全身の健康状態、年齢、体重、性別、食生活、薬剤感受性及び治療に対する耐性等が含まれる。

【0125】
一投与単位あたりにおける核酸分子の含有量の具体例として、他の医薬の併用を必要としないヒト成人男子(体重60kg)に対して、本発明の医薬組成物を注射液によって投与する場合、注射液一投与単位あたり約0.01%(w/v)~約20%(w/v)、好ましくは約0.1%(w/v)~約10%(w/v)で本発明の核酸分子を含んでいればよい。本発明の医薬組成物の薬理効果を得る上で本発明の核酸分子の大量投与が必要な場合、被検体に対する負担軽減のために数回に分割して投与することもできる。

【0126】
(2)媒体
本発明の医薬組成物は、有効成分である第1の実施形態に記載の核酸分子の媒体を含むことができる。媒体には、例えば、水、エタノール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアレルアルコール、ポリオキシ化イソステアレルアルコール及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類のような溶媒が挙げられる。このような媒体は、使用時に殺菌されていることが望ましく、必要に応じて血液と等張に調整されていることが好ましい。

【0127】
(3)担体
本発明の医薬組成物は、必要に応じて製薬上許容可能な担体を含むことができる。「製薬上許容可能な担体」とは、製剤技術分野において通常使用する添加剤をいう。例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、充填剤、乳化剤、流動添加調節剤、滑沢剤等が挙げられる。

【0128】
賦形剤としては、単糖、二糖類、シクロデキストリン及び多糖類のような糖(より具体的には、限定はしないが、グルコース、スクロース、ラクトース、ラフィノース、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、デキストリン、マルトデキストリン、デンプン及びセルロースを含む)、金属塩(例えば、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム若しくはリン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム)、クエン酸、酒石酸、グリシン、低、中、高分子量のポリエチレングリコール(PEG)、プルロニック、カオリン、ケイ酸、あるいはそれらの組み合わせが例として挙げられる。

【0129】
結合剤としては、トウモロコシ、コムギ、コメ、若しくはジャガイモのデンプンを用いたデンプン糊、単シロップ、グルコース液、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セラック及び/又はポリビニルピロリドン等が例として挙げられる。

【0130】
崩壊剤としては、前記デンプンや、乳糖、カルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、アガー、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、アルギン酸若しくはアルギン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド又はそれらの塩が例として挙げられる。

【0131】
充填剤としては、前記糖及び/又はリン酸カルシウム(例えば、リン酸三カルシウム、若しくはリン酸水素カルシウム)が例として挙げられる。

【0132】
乳化剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルが例として挙げられる。

【0133】
流動添加調節剤及び滑沢剤としては、ケイ酸塩、タルク、ステアリン酸塩又はポリエチレングリコールが例として挙げられる。

【0134】
このような担体は、主として剤形形成を容易にし、また剤形及び薬剤効果を維持する他、有効成分である核酸分子が生体内の核酸分解酵素による分解を受け難くするために用いられるものであり、必要に応じて適宜使用すればよい。上記の添加剤の他、必要であれば矯味矯臭剤、可溶化剤、懸濁剤、希釈剤、界面活性剤、安定剤、吸収促進剤、増量剤、付湿剤、保湿剤、吸着剤、崩壊抑制剤、コーティング剤、着色剤、保存剤、抗酸化剤、香料、風味剤、甘味剤、緩衝剤等を含むこともできる。

【0135】
(4)他の有効成分
本発明の医薬組成物は、有効成分である核酸分子が有する薬理効果を失わない範囲において、他の有効成分を包含する、いわゆる複合製剤であってもよい。ここでいう「他の有効成分」とは、例えば、第1実施形態の核酸分子と同一のRNAi分子を標的とし、かつ第1実施形態の核酸分子とは異なる作用機序でその活性を抑制する薬剤等が挙げられる。このような複合製剤は、同一の標的RNAi分子の活性を多面的に抑制できることから相乗的な効果を期待することができる。

【0136】
また、他の有効成分は、前記実施形態1の核酸分子とは異なる薬理作用を有する薬剤であってもよい。例えば、抗生物質等が挙げられる。

【0137】
2-2-2.剤形
本実施形態の医薬組成物の剤形は、有効成分である核酸分子又は他の付加的な有効成分を不活化させない形態であって、投与後、生体内でその薬理効果を発揮し得る形態であれば特に限定しない。一般に、天然型核酸は、生体内でヌクレアーゼなどの分解酵素による影響を受けやすいことから本発明の医薬組成物を投与する場合には生体内で有効成分である核酸分子が分解され難い剤形が好ましい。例えば、液体、固体又は半固体のいずれであってもよい。具体的な剤形としては、例えば、注射剤、懸濁剤、乳剤、点眼剤、点鼻剤、クリーム剤、軟膏剤、硬膏剤、シップ剤及び座剤等の非経口剤形又は液剤、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、舌下剤、トローチ剤等の経口剤形が挙げられる。好ましい剤形は、注射剤である。

【0138】
また、本実施形態の医薬組成物をナノ粒子(例えば、Davis ME, et al.,Nature, 2010, 464:1067-1070に記載の標的ナノ粒子伝達システムを含む)、リポソーム(例えば、膜透過ペプチド結合リポソーム、SNALPsを含む)、コレステロール結合体の形態に調製してもよい。Castanotto D. & Rossi JJ., Nature,2009, 457, 426-433に記載のRNAi伝達システムを利用することもできる。

【0139】
2-3.医薬組成物の製造
本発明の医薬組成物の製造方法については、当業者に公知の製剤化方法を応用すればよい。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (Merck Publishing Co., Easton, Pa.)に記載された方法を参照することができる。

【0140】
2-4.投与方法
本実施形態の医薬組成物は、目的とする疾患の治療のために、有効成分である第1実施形態の核酸分子を製薬上有効な量で生体に投与することができる。投与する対象となる生体は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。

【0141】
本発明の医薬組成物の投与方法は、全身投与又は局所的投与のいずれであってもよい。疾患の種類、発症箇所又は進行度等に応じて適宜選択することができる。発症箇所が局部的な疾患であれば、注射などにより発症箇所及びその周辺に直接投与する局所的投与が好適である。治療すべき箇所(組織又は器官)に有効成分である核酸分子を十分量投与することができ、また他の組織に影響を及ぼしにくいからである。一方、転移性癌のように治療箇所を特定できない場合や発症が全身性の疾患の場合には、静脈注射等による全身投与が好ましい。血流を介して有効成分である核酸分子を全身に行き渡らせることで、診断で発見できない病変部にも投与が可能となるからである。

【0142】
本発明の医薬組成物の具体的な投与方法としては、有効成分である核酸分子が失活しないあらゆる方法で投与することができる。例えば、非経口(例えば、注射、エアロゾル、塗布、点眼、点鼻)又は経口が挙げられる。前述した理由や侵襲性が比較的低いことから、注射による投与は、特に好ましい。

【0143】
注射による投与の場合、注入部位は、特に限定しない。標的分子に対して本発明の核酸分子又は発現ベクターから生産される核酸分子がその機能を発揮し、医薬組成物の目的を達し得ればいずれの部位であってもよい。例えば、静脈内、動脈内、肝臓内、筋肉内、関節内、骨髄内、髄腔内、心室内、経皮、皮下、皮内、腹腔内、鼻腔内、腸内又は舌下等が挙げられる。好ましくは静脈内注射又は動脈内注射等の血管内への注射である。
【実施例】
【0144】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0145】
<実施例1:miR-16活性抑制用核酸分子の調製とその活性抑制効果の検証(1)>
(目的)
HEK293T細胞(ヒト胎児腎細胞)の内在性miRNAであるmir-16を標的RNAi分子として、様々な構成態様の本発明の核酸分子を構築し、mir-16活性の抑制効果について検証した。
【実施例】
【0146】
(方法)
mir-16活性の抑制効果は、細胞内でmir-16によって蛍光タンパク質の翻訳が阻害されている系に対して、本発明のmir-16活性抑制用核酸分子を添加したときの蛍光タンパク質の発現増加率として算出した。以下、本実施例の具体的な実施方法について説明をする。
【実施例】
【0147】
1.核酸分子の調製
本実施例で用いた核酸分子の分子名、その構造及び塩基配列を図7-1~図7-7に示す。各核酸分子を構成するするDNAオリゴヌクレオチドからなる核酸鎖、又はRNAオリゴヌクレオチドからなる核酸鎖は、化学合成によって調製した。DNAオリゴヌクレオチドの合成はファスマック社に、またRNAオリゴヌクレオチドの合成はファスマック社及びシグマアルドリッチ社に委託した。いずれの核酸も修飾はしていない。合成後のオリゴヌクレオチドは、D-PBS(-)(0.2g/L KCl、8g/L NaCl、0.2g/L KH2PO4、1.15g/L Na2HPO4)に溶解した。1本の核酸鎖で構成される核酸分子については前記溶解後に、また2本以上の核酸鎖で構成される核酸分子については、核酸分子の構成に必要な各核酸鎖を組み合わせて混合・溶解後に、それぞれ90℃に加熱して、徐々に温度を下げて核酸鎖間又は核酸鎖内でアニーリングさせ、各核酸分子を調製した。
【実施例】
【0148】
2.活性抑制効果の測定系の調製
本実施例で用いたmir-16活性抑制効果の測定系を図8に示す。mir-16活性抑制効果は、(a)で示すpDsRed2-mi16-Tを用いて測定した。pDsRed2-mi16-Tは、CMVプロモーターの下流に蛍光タンパク質DsRed2の遺伝子が連結されており、さらにその遺伝子の3’-非翻訳領域内には、miR-16の標的部位(miR-16-T;miR-16-Target)としてmiR-16に完全に相補的な配列が3回繰り返して挿入されている。それ故、細胞内でのDsRed2遺伝子の発現と共にmiR-16-Tもその一部として発現する。ここで、miR-16-Tは、内在性のmiR-16によりRNAiの標的となる。同時にDsRed2もRNAiによって、その翻訳が著しく抑制されてしまう。その結果、極めて微弱な赤色蛍光しか検出できなくなる。この状態における蛍光強度を基準値として、上記で調製した様々な核酸分子をこの系にそれぞれ添加したとき、仮にその核酸分子が内在するmiR-16の活性抑制効果を有していれば、miR-16によるmiR-16-Tの翻訳阻害が解除され、その結果、DsRed2の翻訳が達成され、強い赤色蛍光が検出できるようになる。
【実施例】
【0149】
なお、(b)で示す配列を有し、かつ図7-1~図7-4に示す各核酸分子の活性に関わらずGFPを発現するpCAGGS-AFPを前記pDsRed2-mi16-Tと同時にHEK293T細胞内に導入し、各サンプル間におけるプラスミド導入効率を補正した。すなわち、コントロールである前記基準値の蛍光強度/GFPの蛍光強度の比を1としたときの各サンプルにおける正規化DsRed2/GFP比(相対値)を発現増加率とした。
【実施例】
【0150】
pDsRed2-mi16-Tの調製は、pDsRed2-C1(Clontech社、カタログ番号632407)において、DsRed2遺伝子の3’-非翻訳領域(3’-UTR)に配置されたマルチクローニングサイト(1288位~1363位)を改変して5'-AGATCTCGAGAAGCTTAGATATCGTCGACCCGGGATCCACCGGATCTAGATAACTGA-3'(配列番号42)としたpDsRed2ERVSMAを作製した。この配列は、DsRed2タンパク質のC末端としてArg-Ser-Arg-Glu-Ala-翻訳停止コドンをコードし、その直後にEcoRV部位(GATATC)を有する。pDsRed2ERVSMAをEcoRVで切断した平滑末端に、5'-GTAGCGCCAATATTTACGTGCTGCTACGCCAATATTTACGTGCTGCTACGCCAATATTTACGTGCTGCTA-3'(配列番号43)/5'-TAGCAGCACGTAAATATTGGCGTAGCAGCACGTAAATATTGGCGTAGCAGCACGTAAATATTGGCGCTAC-3'(配列番号44)又は5'-GTAGCAACGTTGAGGAAGGTGACTGCCAACAACGTTGAGGAAGGTGACTGCCAACAACGTTGAGGAAGGTGACTGCCAA-3'(配列番号45)/5'-TTGGCAGTCACCTTCCTCAACGTTGTTGGCAGTCACCTTCCTCAACGTTGTTGGCAGTCACCTTCCTCAACGTTGCTAC-3'(配列番号46)をアニーリングさせたDNA鎖を連結し、pDsRed2-mi16-Tを作製した。pDsRed2-mi16-Tは、miR-16の標的部位としてmiR-16(配列番号1)に完全に相補的な配列が3回繰り返した配列が挿入されている。作製に用いた遺伝子工学的手法、例えば、プラスミドDNAの抽出・精製、コンピテントセルの調製、大腸菌の形質転換、DNAクローニング、リガーゼ反応等は、当該分野で公知の手順(例えば、Sambrook J, Fritsh EF, Maniatis T (1989) Molecular Cloning: a laboratory manual. Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, Now Yorkに記載の方法)を用いた。
【実施例】
【0151】
また、個々の核酸の導入効率の相違を補正するために、二本鎖核酸分子の活性に関わらずGFPを発現するpCA GGS-AFP(Momose T et al., 1999, Dev Growth Differ, 41, 335-44)を用いた。
【実施例】
【0152】
3.核酸導入方法及び蛍光測定方法
24ウェルプレートにHEK293T細胞を60,000細胞/ウェルとなるように播種し、DMEM(Wako)を用いて5%CO2下で37℃にて培養した。24時間培養後、25nMの図7-1~図7-4に記載の各核酸分子、50ngのpCAGGS-AFP、及び50ngのpDsRed2-mi16-TをLipofectamineTM LTX(life technologies)を用いて細胞にトランスフェクションした。方法はlife technologies社のプロトコルに従った。48時間後、細胞を緩衝液TBST(20mM Tris,pH7.4、0.15M NaCl、0.05% Triton X-100)で破壊し、13,000×Gで30分間遠心した後、上清を蛍光プレートリーダー(Fluoroskan Ascent FL, Thermofisher Scientific)で測定した。波長は、GFPについては励起485nm、蛍光538nmでDsRed2については励起544nm、蛍光590nmで測定した。
【実施例】
【0153】
(結果)
図9に結果を示す。二本鎖核酸部分を含まない核酸分子sp-miR16-1(ここで「sp」は、「suppressor」を意味する。以下同じ。)には、miR-16の活性抑制効果は認められなかった。これは、DNAは、miRNAに対する結合力が弱く、その結果としてmiRNA活性の抑制効果も低いという従来の実験結果(Meister G., et al., 2004, RNA, 10:544-550)に矛盾しない。一方、本発明の核酸分子であるsp-miR16-2~sp-miR16-16は、いずれもコントロールと比較して高いmiR-16の活性抑制効果を有していた。この結果から、標的RNAi分子であるmiR-16の機能鎖の塩基配列に対して十分に相補的な塩基配列からなる非修飾DNA領域を少なくとも1つ含む一本鎖核酸部分と、その一本鎖核酸部分の5’末端及び3’末端の少なくとも一方に二本鎖核酸部分が連結された構造とをその分子内に含む核酸分子は、miR-16活性抑制作用を有していることが立証された。特に、一本鎖核酸部分の3’末端に二本鎖核酸部分が連結された核酸分子は、一本鎖核酸部分の5’末端に二本鎖核酸部分が連結された核酸分子よりも、比較的miR-16の活性抑制効果が高いことが明らかとなった。
【実施例】
【0154】
<実施例2:miR-16活性抑制用核酸分子の調製とその活性抑制効果の検証(2)>
(目的)
実施例1で効果の見られた本発明のmiR-16活性抑制用核酸分子の活性抑制効果が濃度依存的か否か、またその効果がmiR-16活性抑制用核酸分子に特異的であるか否かについて検証した。
【実施例】
【0155】
(方法)
基本的な方法は、実施例1に準じて行った。miR-16活性抑制用核酸分子には、実施例1で用いたsp-miR16-11を用いた。また、コントロールとして、二本鎖核酸部分を含まないsp-miR16-1とmiR-143活性抑制用核酸分子sp-miR143-1を用いた。sp-miR143-1は、図7-6に示した塩基配列に基づいて、実施例1と同様の方法で調製した。また、活性抑制効果の測定系の調製や、核酸導入方法及び蛍光測定方法は実施例1に準じて行った。ただし、sp-miR16-11及びsp-miR143-1は5、10及び25nMで、sp-miR143-1は25及び50nMで、培養細胞に添加した。
【実施例】
【0156】
(結果)
図10に結果を示す。二本鎖核酸部分を含まないsp-miR16-1では、添加濃度が25nMのときの相対値はコントロール以下であり、50nMであってもほとんどmir-16活性抑制効果が認められなかった。これは、25nMという低濃度では、一本鎖核酸部分のみでは、ほとんどmir-16に結合できないことを示唆している。一方、miR-16活性抑制用核酸分子であるsp-miR16-11は、僅か5nMでもコントロールに対してmir-16活性抑制効果が認められ、その強さは添加した核酸分子の濃度依存的に増大することが立証された。また、sp-miR143-1では、mir-16活性抑制効果は、いずれの濃度でもほとんど認められなかった。これらの結果から、実施例1に示したmiR-16活性抑制用核酸分子は、低濃度であってもmir-16活性抑制効果を有し、その強さは濃度依存的に増大すること、また、miR-16におけるこの活性抑制効果は、miR-16活性抑制用核酸分子に特異的なものであって、miR-143活性抑制用核酸分子のような他のmiRNA活性抑制用核酸分子では認められないことも明らかとなった。
【実施例】
【0157】
<実施例3: miR-16活性抑制用核酸分子の培養細胞による活性抑制効果の検証>
(目的)
本発明の核酸分子のmiR-16活性抑制効果が導入する細胞に依存するか否かについて検証した。
【実施例】
【0158】
(方法)
核酸分子には、実施例1に記載のsp-miR16-11、及び実施例2に記載のsp-miR143-1を用いた。使用した培養細胞は、HEK293T細胞、HepG2細胞、及びMCF7細胞である。いずれの細胞も内在性miRNAとしてmiR-16を有している。各培養細胞の培養条件、核酸分子の添加量及び導入方法、並びに蛍光測定方法は実施例1に準じて行った。
【実施例】
【0159】
(結果)
図11に結果を示す。この図で示すように、本発明の核酸分子であるsp-miR16-11は、細胞の種類に関係なく、miR-16を内在するいずれの培養細胞においても高いmiR-16活性抑制効果を有することが示された。一方、miR-143活性抑制用核酸分子であるsp-miR143-1は、いずれの培養細胞でもmiR-16活性抑制効果は認められず、当該効果がmiR-16活性抑制用核酸分子特異的であることが立証された。
【実施例】
【0160】
<実施例4:RNAi分子活性抑制用核酸分子におけるミスマッチ部位の塩基長と活性抑制効果>
(目的)
本発明のRNAi分子活性抑制用核酸分子が、非修飾DNA領域内にミスマッチ部位を含む場合、そのミスマッチ部位の塩基長(ヌクレオチド残基数)によるRNAi分子の活性抑制効果について検証した。
【実施例】
【0161】
(方法)
核酸分子には、図7-5に記載のsp-miR16-16(0)、sp-miR16-16(1)、sp-miR16-16(2)、sp-miR16-16(3)、sp-miR16-16(4)、sp-miR16-16(5)、及びsp-miR16-16(6)を用いた。各核酸分子名のカッコ内の数字は、ミスマッチ部位における塩基数を示す。ミスマッチ部位は、ミスマッチ部位のない、すなわち、miR-16の機能鎖に完全一致するsp-miR16-16(0)における非修飾DNA領域の5’末端から12番目のAと13番目のC間に配置した。各核酸分子は、図7-5に示した塩基配列に基づいて、実施例1と同様の方法で調製した。使用した培養細胞は、HEK293T細胞である。各培養細胞の培養条件、核酸分子の添加量及び導入方法、並びに蛍光測定方法は実施例1に準じて行った。
【実施例】
【0162】
(結果)
図12に結果を示す。この図で示すように、ミスマッチ部位の有無及びその塩基長にかかわらず、本発明の核酸分子は、miR-16の活性抑制効果を有することが明らかとなった。
【実施例】
【0163】
<実施例5:RNAi分子活性抑制用核酸分子におけるミスマッチ部位の位置と活性抑制効果>
(目的)
本発明のRNAi分子活性抑制用核酸分子が、非修飾DNA領域内にミスマッチ部位を含む場合、そのミスマッチ部位の位置とRNAi分子の活性抑制効果について検証した。
【実施例】
【0164】
(方法)
核酸分子には、図7-3に記載のsp-miR16-11、及び図7-6に記載のsp-miR16-17(4)及びsp-miR16-17(18)を用いた。sp-miR16-17(4)とsp-miR16-17(18)のカッコ内の数字は、ミスマッチ部位の位置を示す。例えば、sp-miR16-17(4)の場合、miR-16の機能鎖に完全一致する核酸分子における非修飾DNA領域の5’末端から4番目と5番目の塩基間にミスマッチ部位を配置したことを意味する。なお、sp-miR16-11は、本実施例では、sp-miR16-17(12)に相当する。各核酸分子は、図7-3及び図7-6に示した塩基配列に基づいて、実施例1と同様の方法で調製した。使用した培養細胞は、HEK293T細胞である。各培養細胞の培養条件、核酸分子の添加量及び導入方法、並びに蛍光測定方法は実施例1に準じて行った。
【実施例】
【0165】
(結果)
図13に結果を示す。この図で示すように、本発明の核酸分子は、ミスマッチ部位の位置にかかわらず、いずれもmiR-16の活性抑制効果を有することが示された。ただし、その活性抑制効果は、非修飾DNA領域の中央付近(9~14番目)に配置したときが高いことが明らかとなった。
【実施例】
【0166】
<実施例6:RNAi分子活性抑制用核酸分子における連結領域の塩基長と活性抑制効果>
(目的)
本発明のRNAi分子活性抑制用核酸分子の一本鎖核酸部分が連結領域を含む場合、その塩基長とRNAi分子の活性抑制効果について検証した。
【実施例】
【0167】
(方法)
核酸分子には、図7-7に記載のsp-miR16-18(0)、sp-miR16-18(1)、sp-miR16-18(2)、sp-miR16-18(3)、sp-miR16-18(4)、及びsp-miR16-18(5)を用いた。カッコ内の数字は、連結領域の塩基の数を示す。連結領域の塩基は、sp-miR16-18(1)がCであることを除き、他は全てTである。なお、本実施形態で使用したRNAi分子活性抑制用核酸分子であるmiR-16活性抑制用核酸分子は、いずれも二本鎖核酸部位が一本鎖で構成されており、その塩基配列内にGカルテットを形成し得る配列5’-GGTTGGTGTGGTTGG-3’(配列番号41)を有し、また非修飾DNA領域には4塩基長のミスマッチ部位5’-TCGA-3’を同位置に有する。各核酸分子は、図7-7に示した塩基配列に基づいて、実施例1と同様の方法で調製した。使用した培養細胞は、HEK293T細胞である。各培養細胞の培養条件、核酸分子の添加量及び導入方法、並びに蛍光測定方法は実施例1に準じて行った。
【実施例】
【0168】
(結果)
図14に結果を示す。この図で示すように、本発明の核酸分子は、連結領域の塩基長にかかわらず、いずれもほぼ同程度のmiR-16の活性抑制効果を有することが示された。
【実施例】
【0169】
<実施例7:miR-143活性抑制用核酸分子の調製とその活性抑制効果の検証>
(目的)
実施例1~6では、miR-16を標的RNAi分子とした核酸分子について、その活性抑制効果を検証したが、miR-16以外のmiRNAを標的RNAi分子とする場合であっても、本発明の構成を有するRNAi分子活性抑制用核酸分子であれば、同様の標的RNAi分子特異的な活性抑制効果を有することを検証する。
【実施例】
【0170】
(方法)
miR-143又はmiR-21を標的RNAi分子とする図7-6に記載の核酸分子(それぞれ、sp-miR143-1及びsp-miR21-1)を実施例1と同様の方法で、調製し、HEK293T細胞内に導入した。活性抑制効果の基本的方法も実施例1に準ずるが、HEK293T細胞は、内在性のmiR-143をほとんど発現しないことから、miR-143を25 nMの濃度で上記記載の核酸分子と混合して同時に細胞内に導入した。
【実施例】
【0171】
(結果)
図15に結果を示す。この図で示すように、外因性miR-143を添加した場合、pDsRed2の発現は著しく抑制された。一方、sp-miR143-1を同時に添加した場合、miR-143の活性は抑制され、pDsRed2の発現は、外因性miR-143が無添加のときの約60%まで回復した。これに対して、sp-miR21-1を同時に添加した場合には、pDsRed2の発現は、10%程度しか回復しなかった。この結果から、本発明のRNAi分子活性抑制用核酸分子は、標的RNAi分子の種類に特定されることなく、標的RNAi分子の活性を特異的に抑制できることが立証された。
【実施例】
【0172】
<実施例8:本発明のRNAi分子活性抑制用核酸分子とmiRNAとの結合力の解析>
(目的)
本発明のRNAi分子活性抑制用核酸分子とmiRNAとの結合力をSPR(表面プラズモン共鳴)測定法を用いて解析した。
【実施例】
【0173】
(方法)
1.核酸分子の調製
本実施例で用いた核酸分子の分子名、その構造及び塩基配列を図17に示す。各核酸分子を構成するDNAオリゴヌクレオチドからなる核酸鎖(sp-miR16-probe1、sp-miR16-probe2、及びsp-miR16-probe3)及び5’末端をビオチン化したアンカー核酸鎖、は、ファスマック社に委託して化学合成によって調製した。ここで、sp-miR16-probe1は、一本鎖核酸部分のみで形成され、二本鎖核酸部分を持たない核酸分子であり、またsp-miR16-probe2は、一本鎖核酸部分と、その3’末端に2本の核酸鎖からなる二本鎖核酸部分を有する本発明の核酸分子であり、さらにsp-miR16-probe3は、一本鎖核酸部分と、その5’末端には2本の核酸鎖からなる二本鎖核酸部分及び3’末端にはループ領域を有する1本の核酸鎖からなる二本鎖核酸部分を有する本発明の核酸分子である。アンカー核酸鎖を除き、いずれの核酸も修飾はしていない。合成後のオリゴヌクレオチドは、D-PBS(-)(0.2g/L KCl、8g/L NaCl、0.2g/L KH2PO4、1.15g/L Na2HPO4)に溶解した。sp-miR16-probe3は、前記溶解後に、90℃に加熱して、徐々に温度を下げて核酸鎖内で5’末端部をアニーリングさせ、ループ領域を有する二本鎖核酸部分を形成させた。
【実施例】
【0174】
2.SPR測定用センサチップの調製
まず、Biacore 3000用センサチップCM5(GE Healthcare)に、ストレプトアビジンをカルボジイミドカップリングによって、固定化した。具体的な方法は、GE Healthcareの標準プロトコルに従って行った。次に、前記アンカー核酸鎖を加え、当該アンカー核酸鎖をビオチン/ストレプトアビジン結合によりセンサチップ上に固定化した。続いて、調製したsp-miR16-probe1、sp-miR16-probe2、及びsp-miR16-probe3を導入した。これらの核酸分子は、3’末端部にアンカー核酸鎖と相補的な配列を有することから、アンカー核酸鎖との塩基対合を介してセンサチップ上に固定化される。
【実施例】
【0175】
3.Biacore 3000による親和性測定法
SPR測定には、Biacore 3000(GE Healthcare)を用いた。D-PBS(-)に3.125nM、6.25nM、12.5nM、25 nM、及び50nMで溶解したmir-16をインジェクトして、それぞれその結合量を測定した。結合定数の算出は、GE Healthcareの標準プロトコルに従った。
【実施例】
【0176】
(結果)
図17及び表1に結果を示す。
【表1】
JP2013073576A1_000003t.gif
【実施例】
【0177】
図17において、Aはsp-miR16-probe1の、Bはsp-miR16-probe2の、Cはsp-miR16-probe3の、mir-16に対する結合親和性を示している。また、表1は、図17の結果から得られた各核酸分子の結合特性を示す。
【実施例】
【0178】
表1から、DNAで構成された一本鎖核酸部分のみからなるsp-miR16-probe1は、KD値が1μMであった。一方、一本鎖核酸部分の一方の末端に二本鎖核酸部分を有するsp-miR16-probe2及び一本鎖核酸部分の両末端に二本鎖核酸部分を有するsp-miR16-probe3では、KD値はそれぞれ7.1 nM及び0.54 nMであった。これは、一本鎖DNAのみで構成された核酸が当該分野で従来から認識されているようにmiRNAとの結合力が低いのに対して、本発明の構成を有する核酸分子は、miRNAとの結合力がKD値で3桁以上も強くなることが立証された。これは、極めて低濃度であってもmiRNAとの結合が可能であることを示唆している。また、本発明の核酸分子のmiRNAの活性抑制効果については、上記実施例で明らかにされている。
【実施例】
【0179】
以上の結果から、本発明によれば、生体内での安定性が高く、大量に合成可能であり、生体内において安全性の高い天然型核酸であるDNAで構成され、しかも低濃度であってもmiRNAに結合して、その活性を抑制することが可能な標的RNAi分子活性抑制用核酸分子を低廉で提供することができる。
【実施例】
【0180】
<実施例9:miR-16活性抑制用核酸分子と修飾核酸分子の活性抑制効果の比較>
(目的)
本発明の構成を有するmiR-16活性抑制用核酸分子と、非天然型核酸である架橋化核酸(BNA/LNA)を含むmiR-16阻害剤、又は2’-OMeで化学修飾されたRNAを含むmiR-16阻害剤による内在性miR-16の活性抑制効果を比較した。
【実施例】
【0181】
(方法)
本実施例で使用した核酸分子の構造及び塩基配列を図18に示す。使用したmiR-16活性抑制用核酸分子(sp-miR16-19)は、配列番号47と配列番号48で示される核酸分子からなる。また、BNAを含むmiR-16阻害剤(BNA-miR16-sup)は、配列番号49で示されるBNAを含む核酸分子からなる(日本バイオサービスに委託合成)。さらに、2’-OMeで化学修飾されたRNAからなるmiR-16阻害剤(OMe-miR16-sup)は、配列番号50で示される核酸分子からなる(日本バイオサービスに委託合成)。コントロールとして、miR302cdを標的とし、配列番号51と52で示される核酸分子からなるmiR-302cd活性抑制用核酸分子(sp-miR302cd)を用いた。
【実施例】
【0182】
HEK293T細胞(12000細胞)を96ウェルプレートに播種し、翌日、実施例1で構築したpDsRed2-mi16-Tを15 ng、導入効率を求め、mir-16活性抑制効果を補正するためのGFP発現ベクターであるpCAGGS-AFPを5 ng、及びsp-miR16-19、BNA-miR16-sup、OMe-miR16-sup又はsp-miR302cdを10 nM又は25 nMでLipofectamineTM LTX(life technologies)でHEK293T細胞にトランスフェクションした。その2日後、細胞をRIPA buffer(25 mM Tris-HCl pH7.6, 150 mM NaCl, 1% NP-40, 1% sodium deoxycholate, 0.1% SDS)で破砕抽出し、遠心した後、上清を回収し、蛍光強度を測定した。
【実施例】
【0183】
(結果)
図19に結果を示す。sp-miR16-19は、従来技術のBNAや2’-OMeで化学修飾されたRNAを含むmiRNA阻害剤(BNA-miR16-sup及びOMe-miR16-sup)よりもmiR-16活性の抑制効果が2倍以上高く、その効果は実施例2の結果と同様に、濃度依存的に増加することが明らかとなった。
【実施例】
【0184】
<実施例10:miR-21活性抑制用核酸分子による癌細胞の増殖抑制効果(1)>
(目的)
本発明の構成を有するmiR-21活性抑制用核酸分子による癌細胞の増殖抑制効果を検証した。miR-21は、Onco-miRNA(oncomir)として様々な癌細胞で高発現していることが知られている(Cho W.C., 2007, Mol Cancer, 6, 60)。miR-21は、アポトーシス作用を抑制する活性を有することから、miR-21を高発現している癌細胞では、その活性によってアポトーシスを回避できる。そこで、癌細胞にmiR-21活性抑制用核酸分子を導入することによってmiR-21の活性を抑制し、その結果、アポトーシス作用が回復して癌細胞の増殖を抑制することができるか否かについて確認した。
【実施例】
【0185】
(方法)
癌細胞には、ヒト乳癌由来の細胞株MCF7を用いた。また、miR-21活性抑制用核酸分子は、図7-6に示したsp-miR21-1を用いた。
【実施例】
【0186】
MCF7細胞(18000細胞)を96ウェルプレートに播種し、翌日、pCAGGS-AFPを5 ng、及びsp-miR21-1を25 nM又は0 nM、LipofectamineTM LTX(life technologies)を用いてMCF7細胞にトランスフェクションした。トランスフェクションから1、2、3、5日目の細胞に対してCell Counting Kit-8(Dojindo)を用いてWST Assay行い、450 nmの吸光度を測定した。その間、培地交換は、トランスフェクション後、1及び3日目に行った。
【実施例】
【0187】
(結果)
図20に結果を示す。この図が示すように、sp-miR21-1を導入していないMCF7細胞(Mock)は、培養日数の増加に伴いWST assayに基づく450 nmの吸光度、すなわち細胞数が増加するのに対して、sp-miR21-1を導入したMCF7細胞は、トランスフェクション後2日目から、細胞増殖が抑制されることが明らかとなった。この結果は、本発明のRNAi分子活性抑制用核酸分子が癌に関与する標的RNAi分子の活性をインビボで抑制することによって、癌細胞の増殖を効果的に抑制できることを示している。
【実施例】
【0188】
<実施例11:miR-21活性抑制用核酸分子による癌細胞の増殖抑制効果(2)>
(目的)
本発明の構成を有するmiR-21活性抑制用核酸分子であれば、その構造(二次構造及び/又は三次構造)の違いに関わらず、インビボで実施例10と同様の効果があることを検証した。
【実施例】
【0189】
(方法)
基本的な方法は、実施例10に準じて行った。miR-21活性抑制用核酸分子は、図18に示すsp-miR21-YMB(配列番号53)を用いた。sp-miR21-YMBは、図18において太字で示す一本鎖核酸部分の5’末端及び3’末端に位置する二本鎖核酸部分が、それぞれ分子内フォールディングによってヘアピン状のステム・ループ構造を形成する。
【実施例】
【0190】
(結果)
図21に示すように、図20と同様の傾向が確認された。ただ、sp-miR21-1はMCF7細胞に導入後、2日後に細胞増殖の抑制効果が見られたのに対して、sp-miR21-YMBはMCF7細胞に導入後、5日まではコントロール(Mock)との差異がほとんど見られなかった。しかし、その後、sp-miR21-1を上回る著しい細胞増殖の抑制効果が観察された。この効果が現れるまでの時間差については、まだ明らかにはなっていないが、本発明のRNAi分子活性抑制用核酸分子は、二次構造や三次構造の違いに関わらず、同じ標的RNAi分子の活性をインビボで抑制できることが立証された。
【実施例】
【0191】
<実施例12:外来miR-125bに対する活性抑制効果>
(目的)
実施例7のmiR-143を除き、上記実施例の多くは、細胞に内在するRNAi分子(miRNA)のみを標的として、それに対する本発明のRNAi分子活性抑制用核酸分子の抑制活性について検証したものであった。
【実施例】
【0192】
しかし、miRNA、siRNA、shRNA等のRNAi分子は、核酸医薬として外部から細胞内に導入する場合も考えられる。そこで、本実施例では、本発明のRNAi分子活性抑制用核酸分子が外来性のRNAi分子であっても、それを標的分子としてその活性を抑制することができることを検証した。
【実施例】
【0193】
(方法)
外来性のRNAi分子には、miR-125bを用いた。本実施例で使用したRNAi分子活性抑制用核酸分子の構造及び塩基配列を図18に示す。miR-125b活性抑制用核酸分子(sp-miR125b-YMB)は、配列番号54で示される核酸分子からなる。この核酸分子は、sp-miR21-YMBと同様に太字で示す一本鎖核酸部分の5’末端及び3’末端に位置する二本鎖核酸部分が、それぞれ分子内フォールディングによってヘアピン状のステム・ループ構造を形成する。コントロール用RNAi分子活性抑制用核酸分子として、miR-39を標的とする配列番号55で示される核酸分子からなるmiR-39活性抑制用核酸分子(sp-miR39-YMB)を用いた。
【実施例】
【0194】
HEK293T細胞(12000細胞)を96ウェルプレートに播種し、翌日、miR-125bのtargetを含むDSRed発現プラスミドpDsRed2-mi125b-Tを15 ng、導入効率を求め、mir-125bの活性抑制効果を補正するためのGFP発現ベクターpCAGGS-AFPを5 ng、sp-miR125b-YMB又はsp-miR39-YMBを15 ng、及び標的RNAi分子であるmiR-125bを5 ng、LipofectamineTM LTX(life technologies)を用いてHEK293T細胞にトランスフェクションした。その2日後、細胞をRIPA bufferで破砕抽出し、遠心した後、上清を回収し、蛍光強度を測定した(n=3)。なお、pDsRed2-mi125b-Tの構築は、pDsRed2-mi16-Tに準じて行った
(結果)
図22に結果を示す。RNAi分子を外部から細胞に導入した場合であっても、本発明のRNAi分子活性抑制用核酸分子は、標的とするRNAi分子の活性を特異的に抑制できることが明らかとなった。
【実施例】
【0195】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【符号の説明】
【0196】
101:201:1703;一本鎖核酸部分
102:202:1704;二本鎖核酸部分
103:203;非修飾DNA領域
204;連結領域
205;フランキング領域
206;ミスマッチ部位
207;スペーサー領域
1701;アンカー核酸鎖
1702;miRNA(miR-16)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3-1】
2
【図3-2】
3
【図4】
4
【図5-1】
5
【図5-2】
6
【図5-3】
7
【図5-4】
8
【図5-5】
9
【図5-6】
10
【図5-7】
11
【図5-8】
12
【図5-9】
13
【図5-10】
14
【図5-11】
15
【図6】
16
【図7-1】
17
【図7-2】
18
【図7-3】
19
【図7-4】
20
【図7-5】
21
【図7-6】
22
【図7-7】
23
【図8】
24
【図9】
25
【図10】
26
【図11】
27
【図12】
28
【図13】
29
【図14】
30
【図15】
31
【図16】
32
【図17】
33
【図18】
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【図19】
35
【図20】
36
【図21】
37
【図22】
38