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明細書 :測定装置及び測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5946193号 (P5946193)
登録日 平成28年6月10日(2016.6.10)
発行日 平成28年7月5日(2016.7.5)
発明の名称または考案の名称 測定装置及び測定方法
国際特許分類 G01N  21/49        (2006.01)
G01N  21/17        (2006.01)
FI G01N 21/49 Z
G01N 21/17 630
請求項の数または発明の数 5
全頁数 11
出願番号 特願2013-545857 (P2013-545857)
出願日 平成24年10月24日(2012.10.24)
国際出願番号 PCT/JP2012/077469
国際公開番号 WO2013/077137
国際公開日 平成25年5月30日(2013.5.30)
優先権出願番号 2011255782
2012181474
優先日 平成23年11月24日(2011.11.24)
平成24年8月20日(2012.8.20)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成27年5月25日(2015.5.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
発明者または考案者 【氏名】岩井 俊昭
【氏名】渡會 俊晴
個別代理人の代理人 【識別番号】100090398、【弁理士】、【氏名又は名称】大渕 美千栄
【識別番号】100090387、【弁理士】、【氏名又は名称】布施 行夫
審査官 【審査官】森口 正治
参考文献・文献 特開2005-121600(JP,A)
特開2003-65930(JP,A)
特開2007-198804(JP,A)
調査した分野 G01N 21/00-21/958
特許請求の範囲 【請求項1】
試料媒質中の粒子の動的光散乱測定を行う測定装置において、
低コヒーレンス光源からの光を分割する光分割部と、
前記光分割部で分割された一方の光を試料媒質に照射する照射部と、
前記光分割部で分割された他方の光を位相変調する位相変調部と、
前記位相変調された光と試料媒質からの散乱光を波長毎に分解して、前記位相変調された光と前記散乱光との干渉光の分光スペクトルを取得する分光スペクトル取得部と、
取得した分光スペクトルに基づいて粒子の動的光散乱測定を行う測定部とを含み、
前記測定部が、
取得した分光スペクトルに基づき試料媒質における散乱点の位置毎の強度信号を求め、前記散乱点の位置毎の強度信号の時間変化に基づき前記散乱点の位置毎のパワースペクトルを求め、求めたパワースペクトルに基づき前記散乱点の位置毎の粒子の拡散係数を求める、測定装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記分光スペクトル取得部は、
複数の受光素子が一列に並んだラインセンサカメラを含み、前記ラインセンサカメラの各受光素子で検出された検出信号を前記分光スペクトルとして取得する、測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記測定部が、
前記分光スペクトルを逆フーリエ変換することで、前記散乱点の位置毎の強度信号を求める、測定装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記測定部が、
時系列的に変化する前記散乱点の位置毎の強度信号をそれぞれフーリエ変換することで、前記散乱点の位置毎のパワースペクトルを求める、測定装置。
【請求項5】
試料媒質中の粒子の動的光散乱測定を行う測定方法において、
低コヒーレンス光源からの光を分割し、分割された一方の光を試料媒質に照射し、分割された他方の光を位相変調する手順と、
前記位相変調された光と試料媒質からの散乱光を波長毎に分解して、前記位相変調された光と前記散乱光との干渉光の分光スペクトルを取得する手順と、
取得した分光スペクトルに基づいて粒子の動的光散乱測定を行う測定手順とを含み、
前記測定手順では、
取得した分光スペクトルに基づき試料媒質における散乱点の位置毎の強度信号を求め、前記散乱点の位置毎の強度信号の時間変化に基づき前記散乱点の位置毎のパワースペクトルを求め、求めたパワースペクトルに基づき前記散乱点の位置毎の粒子の拡散係数を求める、測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、試料媒質中の粒子の動的光散乱測定を行う測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液中の高分子微粒子は、溶液壁面から十分離れた領域においては自由拡散運動(ブラウン運動)をしており、溶液壁面(固液界面)近傍においては、壁面と溶液の流体力学相互作用が顕著になるため拡散運動が抑制される。このような現象はwall-drag現象と呼ばれ、局所的なストークス粘性力の変化によって引き起こされる。この効果の実験的解析は動的光散乱法を用いて行われた。動的光散乱法は、懸濁液などの媒質に光を当て、媒質中の散乱体(粒子)から散乱される散乱光強度の時間変動(ゆらぎ)を時間相関関数やパワースペクトルを用いて検出することにより、散乱体の動的特性を調べる方法であり、粒径測定や凝集計測などに広く用いられている。この従来の動的光散乱法の適用範囲は、界面から十分に離れた自由拡散領域の測定のみに限定されている。
【0003】
界面近傍領域から自由拡散領域までの拡散運動の変化を観察するための手法として、低コヒーレンス干渉法を用いた動的光散乱法が知られている(例えば、特開2005-121600号公報参照)。この手法によれば、wall-drag効果による界面からの距離に依存する拡散係数の変化を測定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の低コヒーレンス干渉法を用いた動的光散乱法では、参照ミラーを走査するなどして界面から散乱点までの距離(測定位置)を変化させながら測定を行う必要があるため、界面からの距離に依存する拡散係数の変化を参照ミラーを走査することなく同時に測定することができない。そのため、測定中に光エネルギーを照射し続けることに起因する溶液内の対流の発生や、溶液が蒸発することによる濃度の変化などが、試料媒質中の粒子の動態に影響を及ぼすことが懸念される。
【0005】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、界面からの距離に依存した試料媒質中の粒子の動態計測を同時に行うことが可能な測定装置及び測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、試料媒質中の粒子の動的光散乱測定を行う測定装置において、
低コヒーレンス光源からの光を分割する光分割部と、
前記光分割部で分割された一方の光を試料媒質に照射する照射部と、
前記光分割部で分割された他方の光を位相変調する位相変調部と、
前記位相変調された光と試料媒質からの散乱光を波長毎に分解して、前記位相変調された光と前記散乱光との干渉光の分光スペクトルを取得する分光スペクトル取得部と、
取得した分光スペクトルに基づいて粒子の動的光散乱測定を行う測定部とを含み、
前記測定部が、
取得した分光スペクトルに基づき試料媒質における散乱点の位置毎の強度信号を求め、前記散乱点の位置毎の強度信号の時間変化に基づき前記散乱点の位置毎のパワースペクトルを求め、求めたパワースペクトルに基づき前記散乱点の位置毎の粒子の拡散係数を求める。
【0007】
また本発明は、試料媒質中の粒子の動的光散乱測定を行う測定方法において、
低コヒーレンス光源からの光を分割し、分割された一方の光を試料媒質に照射し、分割された他方の光を位相変調する手順と、
前記位相変調された光と試料媒質からの散乱光を波長毎に分解して、前記位相変調された光と前記散乱光との干渉光の分光スペクトルを取得する手順と、
取得した分光スペクトルに基づいて粒子の動的光散乱測定を行う測定手順とを含み、
前記測定手順では、
取得した分光スペクトルに基づき試料媒質における散乱点の位置毎の強度信号を求め、前記散乱点の位置毎の強度信号の時間変化に基づき前記散乱点の位置毎のパワースペクトルを求め、求めたパワースペクトルに基づき前記散乱点の位置毎の粒子の拡散係数を求める。
【0008】
本発明によれば、位相変調された光と散乱光を波長分解して、位相変調された光と散乱光との干渉光の分光スペクトルを取得し、取得した干渉光の分光スペクトルに基づき試料媒質中の散乱点の位置(界面からの距離)毎の粒子の拡散係数を求める処理を行うことで、試料媒質中の散乱点の位置に依存した粒子の動態計測を同時に行うことができる。
【0009】
(2)また本発明に係る測定装置及び測定方法では、
前記分光スペクトル取得部は(前記分光スペクトルを取得する手順では)、
複数の受光素子が一列に並んだラインセンサカメラを含み、前記ラインセンサカメラの各受光素子で検出された検出信号を前記分光スペクトルとして取得してもよい。
【0010】
(3)また本発明に係る測定装置及び測定方法では、
前記測定部が(前記測定手順では)、
前記分光スペクトルを逆フーリエ変換することで、前記散乱点の位置毎の強度信号を求めてもよい。
【0011】
(4)また本発明に係る測定装置及び測定方法では、
前記測定部が(前記測定手順では)、
時系列的に変化する前記散乱点の位置毎の強度信号をそれぞれフーリエ変換することで、前記散乱点の位置毎のパワースペクトルを求めてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本実施形態の測定装置の構成の一例を示す図である。
【図2】図2は、光検出器で検出される干渉光の分光スペクトルを示す図である。
【図3】図3は、干渉光の分光スペクトルに基づき算出した散乱点の位置毎の時間を固定したときの強度信号を示す図である。
【図4】図4は、ある散乱点の位置について算出したパワースペクトルの一例を示す図である。
【図5】図5は、本実施形態の計測装置による時間相関関数の測定結果を示す図である。
【図6】図6は、本実施形態の計測装置による拡散係数の測定結果を示す図である。
【図7】図7は、変形例の測定装置の構成の一例を示す図である。
【図8】図8は、変形例の計測装置による拡散係数の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。

【0014】
1.構成
図1は、本実施形態の測定装置の構成の一例を示す図である。本実施形態の測定装置1は、試料媒質40(懸濁液)中の粒子の動的光散乱測定を行う装置として構成されている。測定装置1は、低コヒーレンス光源10と、光分割部として機能する光カプラ20と、位相変調部として機能する参照ミラー50及び振動素子52と、分光スペクトル取得部として機能する回折格子62及び光検出器70と、測定部として機能する演算処理部80とを含む。測定装置1の光学系は、低コヒーレンス光源10としてSLD(Super Luminescent Diode)を用いたマイケルソン型の干渉計である。

【0015】
低コヒーレンス光源10からの光は、光ファイバ22に入射され、光カプラ20で2つの光に分割される。光カプラ20で分割された一方の光は、光ファイバ24を通ってコリメータ30で平行光となり、透明容器42に入った試料媒質40に入射される。試料媒質40からの後方散乱光は、再びコリメータ30、光ファイバ24を通って、光カプラ20に入射される。

【0016】
光カプラ20で分割された他方の光(参照光)は、光ファイバ26を通ってコリメータ32で平行光となり、参照ミラー50で反射される。参照ミラー50で反射した光は、再びコリメータ32、光ファイバ26を通って、光カプラ20に入射される。

【0017】
光カプラ20に入射された参照光と散乱光は、光ファイバ28を通って凹面ミラー60で反射され、回折格子62で波長分解される。波長分解された参照光と散乱光は、凹面ミラー64で反射され、光検出器70に入射され、干渉して干渉光として検出される。光検出器70は、複数の受光素子が一列に並んだラインセンサカメラで構成され、干渉光の分光スペクトルを検出する。光検出器70で検出された検出信号(干渉光の分光スペクトル)は、演算処理部80に出力される。

【0018】
参照ミラー50には、参照ミラー50を振動させることで参照光を位相変調する振動素子52が取り付けられている。ここでは、振動素子52を、周波数2kHz、最大振幅0.12μmで正弦振動させている。振動素子52は、圧電素子(ピエゾ素子)により構成することができる。参照光を位相変調して散乱光と干渉させることで、単散乱光成分のヘテロダインスペクトルと多重散乱光成分のホモダインスペクトルとを分離することができる。

【0019】
演算処理部80(コンピュータ)は、光検出器70で検出された干渉光の分光スペクトルに基づき、試料媒質40における散乱点の位置毎の粒子の拡散係数を算出する処理を行う。

【0020】
なお、図中rは、参照光の光路長を示し、図中zは、参照面RPから容器42内側の壁面SW(容器42壁面と試料媒質40の界面)までの距離を示し、図中sは、容器42内側の壁面SWから試料媒質40中の粒子中心(散乱点)までの距離を示す。ここでは、zを約50μmとしている。

【0021】
図2に、本実施形態の光検出器70で検出される干渉光の分光スペクトルを示す。分光スペクトルは、光源10のパワースペクトルに、参照ミラー50(参照面RP)と散乱点の光路差分の位相が重畳するスペクトルとして検出される。

【0022】
演算処理部80は、検出された干渉光の分光スペクトルを波数空間に関して逆フーリエ変換することによって、図3に示すような、試料媒質40中の散乱点の位置(すなわち、壁面SWから散乱点までの距離sの値)毎の強度信号を算出する。

【0023】
図3において、z=約50μmの位置に存在するピークPは、参照ミラー50で反射した光と容器42内側の壁面SWからの光とが干渉した干渉信号に相当する。また、zが約50μmを越える位置(すなわち、s>0の位置)に存在する信号は、参照ミラー50で反射した光と試料媒質40中の粒子からの後方散乱光とが干渉した干渉信号に相当する。また、zが0~約25μmの位置に存在する主要なローブLは試料光路の自己相関項を含むため、この位置には多重散乱光成分が存在する。従って、多重散乱光の影響を避けるため、参照ミラー50は容器42内側の壁面SWの位置から約25μm以上離して設置する必要がある。

【0024】
演算処理部80は、試料媒質40中の散乱点の位置(距離s)毎の強度信号の時間変化に基づいて、散乱点の位置毎のパワースペクトルを算出する。具体的には、時間の経過とともに変化する散乱点の位置毎の強度信号(時間信号)をそれぞれフーリエ変換することによって、散乱点の位置毎のパワースペクトルを算出する。図4に、ある散乱点の位置について算出したパワースペクトルP(f)の一例を示す。

【0025】
図4に示すパワースペクトルP(f)の周波数f=0Hz周辺は、ホモダインスペクトルとヘテロダインスペクトルが混在している。また、振動素子52により参照ミラー50を周波数2kHzで振動させて参照光の位相変調を行っているため、周波数f=2kHz周辺にヘテロダインスペクトルが分離されている。ホモダインスペクトルは、従来の動的光散乱法で測定されるスペクトルと同様のものであり、多重散乱の影響を直接受ける。一方、ヘテロダインスペクトルは、光源のコヒーレンス長の範囲内の散乱光成分のみが参照光と干渉したものである。

【0026】
演算処理部80は、散乱点の位置毎のパワースペクトルのそれぞれから2kHzのヘテロダイン信号を取り出し、その時間相関関数を算出する。この時間相関関数は、光源の時間的コヒーレンス特性によって近似的に単散乱光成分に限定される。時間相関関数γ(τ)は、遅延時間τを変数とし単調に指数減衰する関数であり、次式により表される。

【0027】
【数1】
JP0005946193B2_000002t.gif

【0028】
ここで、Dは拡散係数である。また、qは散乱ベクトルの大きさであり、次式により表される。

【0029】
【数2】
JP0005946193B2_000003t.gif

【0030】
ここで、λは光源の波長であり、nは溶媒の屈折率である。また、θは散乱角であり、本実施形態の光学系の幾何学的な配置からθ=約πとなる。

【0031】
演算処理部80は、得られた時間相関関数に数値フィッティングすることで、散乱点の位置毎に拡散係数Dを算出する。散乱点の位置(壁面SWから散乱点までの距離s)毎の拡散係数Dを求めることで、距離sに依存した試料媒質40中の粒子の拡散運動の変化を同時に測定することができる。また、拡散係数Dからストークス‐アインシュタイン関係式を用いて粒径を求めることで、試料媒質40中の粒径分布(散乱点の位置毎の粒径)を同時に測定することもできる。

【0032】
なお、距離sに依存する拡散係数D(s)の理論値は、次式に表されるH.Brennerの式から求めることができる。

【0033】
【数3】
JP0005946193B2_000004t.gif

【0034】
ここで、α=cosh-1(1+s/R)であり、Rは粒子の半径であり、Dは自由拡散係数である。自由拡散係数Dは、ストークス‐アインシュタイン関係式により、次式で表される。

【0035】
【数4】
JP0005946193B2_000005t.gif

【0036】
ここで、kはボルツマン定数であり、Tは溶媒の絶対温度であり、ηは溶媒の粘度である。式(3)から、拡散係数D(s)はs→∞で1を取り、Rが大きいほど容器壁面(界面)近傍で顕著に減少する。

【0037】
2.測定結果
図5、図6に、本実施形態の測定装置における測定結果を示す。本測定では、試料媒質40として、平均半径R=0.55μmで体積濃度10%のポリスチレンラテックス粒子の懸濁液を使用した。また、低コヒーレンス光源10として、中心波長λ=827nm、半値全幅Δλ=18nmであるSLDを使用した。本測定で使用する光源のコヒーレンス長lは、次式により約16μmと算定される。

【0038】
【数5】
JP0005946193B2_000006t.gif

【0039】
ミー散乱理論により求められる輸送平均自由行程を粒子間距離として考えると、平均半径R=0.55μmで体積濃度10%の粒子の懸濁液における粒子間距離は36.7μmと計算される。この粒子間距離は式(5)で求められる光軸方向分解能であるコヒーレンス長l=約16μmよりも十分に大きいため、単散乱光成分のみを抽出できると考えられる。

【0040】
また本測定では、光検出器70として、ピクセル数=4096のラインセンサカメラを使用した。ラインセンサカメラの1ピクセルあたりの波長分解能は0.04nmとなり、光軸方向の空間的な走査分解能(距離sの分解能)は約2μmとなる。

【0041】
図5は、固液界面から粒子中心(散乱点)までの距離s=6μm、18μm、33μmについて測定した後方散乱光振幅の時間相関関数γ(τ)の測定結果である。なお、図5における実線は、測定した時間相関関数に指数関数を非線形フィッティングさせた結果である。図5に示すように、測定された時間相関関数は負指数関数に沿って単調減少を示しており、単散乱光成分のみを検出していることが確認された。また、図5を見ると、固液界面から粒子中までの距離sの減少とともに緩和時間が増加していることがわかる。この結果は、固液界面に漸近すると粒子のブラウン運動が抑制されることを示している。

【0042】
図6は、固液界面から粒子中心までの距離s(散乱点の位置)毎の拡散係数の測定結果である。図6において黒塗り点で示す測定値は、測定された拡散係数Dを粒子の自由拡散係数Dで規格化した値である。なお、自由拡散係数Dの測定値として、容器壁面から50~100μm離れた位置の拡散係数の平均値を用いた。また、図6における実線は、平均半径R=0.55μmとして、式(3)で算出した理論値であり、破線は、理論値と、次式で示す光源の時間コヒーレンス関数g(s)とを畳み込み積分した数値結果である。ここでは、光源の時間コヒーレンス関数をガウス分布関数で仮定した。

【0043】
【数6】
JP0005946193B2_000007t.gif

【0044】
図6に示すように、拡散係数の測定値D/Dは、固液界面の近傍で大幅に減少し、固液界面から遠く離れるに従って最大値1.0に漸近する結果となった。また、拡散係数の測定値D/Dは、破線の数値結果(光源のコヒーレンス関数を考慮した理論値)と良く一致しており、本実施形態の測定装置により、固液界面からの距離sに依存する粒子の拡散係数の変化を高精度に測定できることがわかる。また、本実施形態によれば、固液界面からの距離sを変化させるために参照ミラーの位置を走査させることなく、固液界面からの距離sに依存する粒子の拡散係数の測定を同時に(実時間で)測定することができる。

【0045】
3.変形例
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

【0046】
例えば、上記実施形態では、低コヒーレンス光源としてSLDを用いる場合について説明したが、他の低コヒーレンス光源、或いは白色LED等の極短コヒーレンス光源を用いてもよい。また、回折格子を用いて参照光と散乱光の波長分解を行う場合について説明したが、プリズム等を用いて参照光と散乱光の波長分解を行うようにしてもよい。

【0047】
また、上記実施形態では、固液界面(容器42壁面と試料媒質40の界面)近傍における微粒子の拡散運動の変化を測定する例について説明したが、本発明は、気液界面(空気と試料媒質の界面)近傍における微粒子の拡散運動の変化を測定する場合にも適用することができる。気液界面近傍においても、固液界面近傍における場合と同様に、ブラウン粒子に対する抑制効果が発生する。

【0048】
気液界面近傍における微粒子の拡散運動の変化を測定する場合には、図7に示すように、光カプラ20で分割された一方の光(コリメータ30からの平行光)が、透明容器42の上部開口から試料媒質40に対して垂直に入射するように、測定装置1の光学系を設定する。ここで、図中sは、気液界面IF(空気と試料媒質40の界面)から試料媒質40中の粒子中心(散乱点)までの距離を示す。そして、上記実施形態と同様の手法により、散乱点の位置(気液界面IFから散乱点までの距離s)毎の拡散係数Dを求める測定を行う。

【0049】
なお、気液界面から粒子中心までの距離sに依存する拡散係数D(s)の理論値は、次式に表されるH.Brennerの式から求めることができる。

【0050】
【数7】
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【0051】
図8は、図7に示す測定装置における、気液界面IFから粒子中心までの距離s(散乱点の位置)毎の拡散係数の測定結果である。本測定では、試料媒質40として、平均半径R=0.23μmで体積濃度1%のポリスチレンラテックス粒子の懸濁液を使用した。また、低コヒーレンス光源10として、中心波長λ=827nm、半値全幅Δλ=18nmであるSLDを使用した。また、光検出器70として、ピクセル数=2048のラインセンサカメラを使用した。ラインセンサカメラの空間分解能(距離sの分解能)は約4μmとなる。

【0052】
図8において黒塗り点で示す測定値は、測定された拡散係数Dを粒子の自由拡散係数Dで規格化した値である。また、図8における実線は、平均半径R=0.23μmとして、式(7)で算出した理論値であり、破線は、この理論値と、式(6)で示す光源の時間コヒーレンス関数g(s)とを畳み込み積分した数値結果である。

【0053】
図8に示すように、拡散係数の測定値D/Dは、気液界面(s=0)の近傍で減少し、気液界面から遠く離れるに従って最大値1.0に漸近する結果となった。また、拡散係数の測定値D/Dは、破線の数値結果(光源のコヒーレンス関数を考慮した理論値)と良く一致しており、図7に示す実施形態により、気液界面からの距離sに依存する粒子の拡散係数の変化を高精度に測定できることがわかる。また、本実施形態によれば、気液界面からの距離sを変化させるために参照ミラーの位置を走査させることなく、気液界面からの距離sに依存する粒子の拡散係数の測定を同時に(実時間で)測定することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 測定装置、10 低コヒーレンス光源、20 光カプラ、22 光ファイバ、24 光ファイバ、26 光ファイバ、28 光ファイバ、30 コリメータ、32 コリメータ、40 試料媒質、42 容器、50 参照ミラー、52 振動素子、60 凹面ミラー、62 回折格子、64 凹面ミラー、70 光検出器、 80 演算処理部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7