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明細書 :負極活物質及びその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6218608号 (P6218608)
登録日 平成29年10月6日(2017.10.6)
発行日 平成29年10月25日(2017.10.25)
発明の名称または考案の名称 負極活物質及びその利用
国際特許分類 H01M   4/48        (2010.01)
H01M   4/13        (2010.01)
H01M   4/62        (2006.01)
FI H01M 4/48
H01M 4/13
H01M 4/62 Z
請求項の数または発明の数 13
全頁数 16
出願番号 特願2013-551791 (P2013-551791)
出願日 平成24年12月27日(2012.12.27)
国際出願番号 PCT/JP2012/083866
国際公開番号 WO2013/100050
国際公開日 平成25年7月4日(2013.7.4)
優先権出願番号 2011285282
優先日 平成23年12月27日(2011.12.27)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年12月18日(2015.12.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
発明者または考案者 【氏名】高田 潤
【氏名】橋本 英樹
【氏名】藤井 達生
【氏名】中西 真
【氏名】菅野 了次
【氏名】小林 玄器
【氏名】高野 幹夫
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】瀧 恭子
参考文献・文献 特開平11-283626(JP,A)
特開2000-340256(JP,A)
特開2008-177061(JP,A)
国際公開第2011/074586(WO,A1)
調査した分野 H01M 4/00-4/62
特許請求の範囲 【請求項1】
非晶質酸化鉄、フェリハイドライト及びレピドクロサイトからなる群から選択される少なくとも1種の酸化鉄を含み、
該酸化鉄が、鉄及び酸素を主成分とし、更にケイ素及び/又はリンを含み、
該酸化鉄における鉄、ケイ素又はリンの元素比率が原子数%で60~99.9:40~0.1 (鉄及びケイ素又はリンの原子数%の合計を100とする)であるか、又は
該酸化鉄における鉄、ケイ素、リンの元素比率が原子数%で66~87:2~27:1~32 (鉄、ケイ素及びリンの原子数%の合計を100とする)である、
リチウムイオン2次電池用負極活物質。
【請求項2】
前記酸化鉄における鉄、ケイ素又はリンの元素比率が原子数%で70~95:30~5 (鉄及びケイ素又はリンの原子数%の合計を100とする)である、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項3】
前記酸化鉄として、鉄酸化細菌によって生成された酸化鉄を用いることを特徴とする、請求項1又は2に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項4】
前記酸化鉄が鉄バクテリア浄水法によって生じた凝集沈殿物から分離されたものである、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記鉄酸化細菌がレプトスリックス属(Leptothrix)に属する細菌である、請求項3又は4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記鉄酸化細菌がレプトスリックス・コロディニ(Leptothrix cholodnii) OUMS1(NITE BP-860)である、請求項3又は4に記載の製造方法。
【請求項7】
前記酸化鉄が0.1~5重量%の炭素を含有する、請求項3~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の負極活物質を構成成分として含むリチウムイオン2次電池用負極材。
【請求項9】
前記負極活物質に加えて導電助剤と結着剤を含む、請求項8に記載のリチウムイオン2次電池用負極材。
【請求項10】
前記導電助剤が炭素粉末及び/又は炭素繊維であり、且つ前記結着剤がフッ素樹脂である、請求項9に記載のリチウムイオン2次電池用負極材。
【請求項11】
前記負極活物質を40~90重量%、前記導電助剤を5~40重量%、前記結着剤5~20重量%含有する、請求項9又は10に記載のリチウムイオン2次電池負極材。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか一項に記載のリチウムイオン2次電池用負極材を含むリチウムイオン2次電池用負極。
【請求項13】
請求項12に記載のリチウムイオン2次電池用負極を備えたリチウムイオン2次電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高出力、高容量且つ優れたサイクル特性を有する電極が得られる負極活物質に関する。更に、本発明は、該負極活物質を構成成分として含むリチウムイオン2次電池用負極材、該リチウムイオン2次電池用負極材を含むリチウムイオン2次電池用負極、及び該リチウムイオン2次電池用負極を備えたリチウムイオン2次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノート型パソコンおよびデジタルカメラなどの消費電力の高い製品に対し、高エネルギー密度、高電圧、充電容量、放電容量及びサイクル特性に優れた2次電池が必要とされている。2次電池としては、ニッケル-水素電池、鉛蓄電池、ニッケル-カドミウム電池などが用いられてきたが、充電容量及び放電容量に優れる2次電池として、リチウムイオン2次電池が注目されている。
【0003】
リチウム(Li)イオン電池は正極にLi金属酸化物(例えばLiCoO2)、負極に炭素材料(例えばグラファイト)を用い、電解液を解して正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで電力を取り出す2次電池である。図1に模式図を示す。その特性向上(高エネルギー密度化)のためには主構成要素である、正極、負極、電解液の改良が重要であり、特に正極活物質の高電圧化、高容量化、高出力化、負極活物質の高容量化、高出力化が極めて重要である。
【0004】
グラファイトは電位が低く、その層間にLiイオンを吸蔵することができる(LiC6⇔6C+Li++e-)ため市販品に最も広く使用されているが、理論容量は372 mAh/gで、今後普及が期待されている電気自動車用電源などの用途としては容量が低いこと、良好な出力特性が得られないことが問題となっている。近年、遷移金属酸化物が低電位において高い可逆容量が得られることが報告されており、様々な遷移金属酸化物の研究がなされている。これはコンバージョン反応と呼ばれておりLiの挿入と共に金属の価数が低価数になり最後には金属にまで還元されるため、多くの電子を利用でき高容量化が達成される(例えば、Co3O4+8Li⇔3Co+4Li2O)(非特許文献1-3)。
【0005】
特に酸化鉄系材料(例えばFe2O3)では2005年以降に数多くの報告がなされている(非特許文献4-7)。電極の負極としての特性を評価するためには3.0-0Vの低電位での可逆容量を評価することになる。これまでの酸化鉄系粉末材料では20-100 mA/g程度の低い電流密度において500-800 mAh/g程度の可逆容量が得られている(非特許文献4-7)。
【0006】
しかしながら、これらの非特許文献に開示された負極材はいずれもサイクル特性が悪く、負極材としての性能は十分とは言えなかった。また、これらのいずれの非特許文献にも、非晶質酸化鉄、フェリハイドライト又はレピドクロサイトからなる負極材は示唆されていない。
【0007】
また、特許文献1及び特許文献2には、リチウム空気電池の空気極(正極)において、酸化鉄を使用することが開示されている。しかしながら、リチウムイオン電池の負極材として酸化鉄を使用することは記載されていない。
【0008】
さらに、鉄酸化細菌によって生成された酸化鉄(以下、これをバイオジナス酸化鉄と称することもある)を電極に使用することで、放電容量及び充電容量に優れるリチウムイオン2次電池を提供できることが以前に報告されている(特許文献3)。しかしながら、特許文献3ではバイオジナス酸化鉄の正極活物質及びリチウムイオン2次電池の正極としての利用が報告されているのみである。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2011-258489号公報
【特許文献2】特開2011-134628号公報
【特許文献3】特開2008-177061号公報
【0010】

【非特許文献1】Malini, R., Uma, U., Sheela, T., Ganesan, M., and Renganathan, N. G. Conversion reactions: a new pathway to realise energy in lithium-ion battery-review. Ionics 15, 301-307 (2009).
【非特許文献2】Ji, L., Lin, Z., Alcoutlabi, M., and Zhang, X. Recent developments in nanostructuredanode materials for rechargeable lihium-ion batteries. Energy Environ. Sci. 4, 2682-2699 (2011).
【非特許文献3】Poizot, P., Laruelle, S., Grugeon, S., Dupont, L. and Tarascon, J. M. Nano-sized transition-metal oxides as negative-electrode materials for lithium-ion batteries. Nature 407, 496-499 (2000).
【非特許文献4】Chen, J., Xu, L., Li, W. and Gou, X. α-Fe2O3 nanotubes in gas sensor and lithium-ion battery applications. Adv. Mater. 17, 582-586 (2005).
【非特許文献5】Liu, S. et al. Fiberlike Fe2O3 macroporousnanomaterials fabricated by calcinatingregenerate cellulose composite fibers. Chem. Mater. 20, 3623-3628 (2008).
【非特許文献6】Liu, H. et al. Electrochemical performance of α-Fe2O3 nanorods as anode material for lithium-ion cells. Electrochim. Acta 54, 1733-1736 (2009).
【非特許文献7】Chun, L., Wu, X., Lou, X. and Zhang, Y. Hematite nanoflakes as anode electrode materials for rechargeable lithium-ion batteries. Electrochim. Acta 55, 3089-3092 (2010).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
公知の酸化鉄系粉末材料については、得られる放電容量は500-800 mAh/g程度でサイクルを重ねるにつれ劣化する、更に、高電流レートでの容量が小さくサイクル特性が悪いという問題があった。
【0012】
また、以前に報告のあるバイオジナス酸化鉄を用いた電極は正極のみをターゲットとしている。
【0013】
そこで、本発明は、高出力、高容量且つ優れたサイクル特性を有する電極が得られる負極活物質を提供することを目的とする。更に、本発明は、該負極活物質を構成成分として含むリチウムイオン2次電池用負極材、該リチウムイオン2次電池用負極材を含むリチウムイオン2次電池用負極、及び該リチウムイオン2次電池用負極を備えたリチウムイオン2次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、非晶質酸化鉄、フェリハイドライト及びレピドクロサイトからなる群から選択される少なくとも1種の酸化鉄を負極活物質として使用することにより、上記目的を達成できるという知見を得た。また、自然界から得られるバイオジナス酸化鉄粉末を負極活物質として使用することでも上記目的を達成することができるという知見を得た。
【0015】
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の負極活物質、リチウムイオン2次電池用負極材、リチウムイオン2次電池用負極、及びリチウムイオン2次電池を提供するものである。
【0016】
(I) 負極活物質
(I-1) 非晶質酸化鉄、フェリハイドライト及びレピドクロサイトからなる群から選択される少なくとも1種の酸化鉄を含む負極活物質
(I-2) 前記酸化鉄が、鉄及び酸素を主成分とし、更にケイ素及び/又はリンを含有する、(I-1)に記載の負極活物質。
(I-3) 前記酸化鉄における鉄、ケイ素又はリンの元素比率が原子数%で60~99.9:40~0.1 (鉄及びケイ素又はリンの原子数%の合計を100とする)である、(I-1)又は(I-2)に記載の負極活物質。
(I-4) 前記酸化鉄における鉄、ケイ素、リンの元素比率が原子数%で66~87:2~27:1~32 (鉄、ケイ素及びリンの原子数%の合計を100とする)である、(I-1)又は(I-2)に記載の負極活物質。
(I-5) 前記酸化鉄が鉄酸化細菌によって生成された酸化鉄である、(I-1)~(I-4)のいずれか一項に記載の負極活物質。
(I-6) 前記酸化鉄が鉄バクテリア浄水法によって生じた凝集沈殿物から分離されたものである、(I-5)に記載の負極活物質。
(I-7) 前記鉄酸化細菌がレプトスリックス属(Leptothrix)に属する細菌である、(I-5)又は(I-6)に記載の負極活物質。
(I-8) 前記酸化鉄が非晶質である、(I-7)に記載の負極活物質。
(I-9) 前記鉄酸化細菌がレプトスリックス・コロディニ(Leptothrix cholodnii) OUMS1(NITE BP-860)である、(I-5)又は(I-6)に記載の負極活物質。
(I-10) 前記酸化鉄がフェリハイドライト及び/又はレピドクロサイトである、(I-9)に記載の負極活物質。
(I-11) 前記酸化鉄が0.1~5重量%の炭素を含有する、(I-5)~(I-10)のいずれか一項に記載の負極活物質。
【0017】
(II) リチウムイオン2次電池用負極材及び負極
(II-1) (I-1)~(I-11)のいずれか一項に記載の負極活物質を構成成分として含むリチウムイオン2次電池用負極材。
(II-2) 前記負極活物質(a)に加えて導電助剤(b)と結着剤(c)を含む、(II-1)に記載のリチウムイオン2次電池用負極材。
(II-3) 前記導電助剤(b)が炭素粉末及び/又は炭素繊維であり、且つ前記結着剤(c)がフッ素樹脂である、(II-2)に記載のリチウムイオン2次電池用負極材。
(II-4) 前記負極活物質(a)を40~90重量%、前記導電助剤(b)を5~40重量%、前記結着剤(c)5~20重量%含有する、(II-2)又は(II-3)に記載のリチウムイオン2次電池負極材。
(II-5) (II-1)~(II-4)のいずれか一項に記載のリチウムイオン2次電池用負極材を含むリチウムイオン2次電池用負極。
【0018】
(III) リチウムイオン2次電池
(III-1) (II-5)に記載のリチウムイオン2次電池用負極を備えたリチウムイオン2次電池。
【発明の効果】
【0019】
本発明の負極活物質を利用することで、高出力、高容量で優れたサイクル特性を有する電極が得られる。更には、鉄酸化細菌によって生成された酸化鉄を利用することで、極めて単純な方法で、このような電極を得ることができる。また、この電極はLiイオン電池の負極として極めて優秀な特性を示すため、Liイオン電池が利用されている様々な分野での利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】Liイオン電池の模式図である。左側電極が負極(グラファイト)を示し、右側電極が正極(LiCoO2)を示す。正極と負極の間を、電解液を介してLiが移動することによって電子を取り出している。一般的に、正極にはLiとの電位差が大きい材料が、負極にはLiとの電位差が小さい材料が用いられ、その電位差で電池の電圧が決まる。市販のLiイオン電池は正極にLiCoO2、負極にグラファイトを用いており、電圧は3.6 V程度である。
【図2】本発明のリチウムイオン2次電池の一形態を示す分解図である。
【図3】バイオジナス酸化鉄電極(電極1)の充放電曲線を示すグラフである。電圧範囲3.0-0V、電流密度0.05C (33.3 mA/g)
【図4】バイオジナス酸化鉄電極(電極1)の充放電曲線を示すグラフである。電圧範囲3.0-0V、電流密度1C (666 mA/g)
【図5】OUMS1由来バイオジナス酸化鉄電極(電極2)の充放電曲線の充放電曲線を示すグラフである。電圧範囲3.0-0V、電流密度1C (666 mA/g)
【図6】電極1、2及びrefのサイクル特性(充電容量のサイクル変化)を示すグラフである。電流密度0.05C、1C
【図7】バイオジナス酸化鉄電極(電極1’)のサイクル特性(充電容量のサイクル変化)を示すグラフである。電流密度666 mA/g
【図8】電極3~6のサイクル特性(充電容量のサイクル変化)を示すグラフである。電流密度300 mA/g
【図9】電極1、3~6及びrefのサイクル特性(充電容量のサイクル変化)を示すグラフである。電流密度600 mA/g (電極3~6)、666 mA/g (電極1、ref)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。

【0022】
本発明の負極活物質は、非晶質酸化鉄、フェリハイドライト及びレピドクロサイトからなる群から選択される少なくとも1種の酸化鉄を含むことを特徴とする。

【0023】
フェリハイドライトとは、低結晶性の酸化鉄を意味する。X線回折パターンに現れるピークの数によって2-line ferrihydriteや6-line ferrihydrite等と呼ばれている。2-line ferrihydriteの組成はFe4(O, OH, H2O)で6-line ferrihydriteの組成はFe4.6(O, OH, H2O)12とされている(R. A. Eggleton and R. W. Fitzpatrick, “New data and a revised structural model for ferrihydrite”, Clays and Clay Minerals, Vol.36, No. 2, pp111-124, 1988)。

【0024】
レピドクロサイトとは、化学式がγ-FeOOHで表される結晶性の酸化鉄である。結晶系は斜方晶系、空間群はBbmm、格子定数はa=0.3071, b=1.2520, c=0.3873Å,α=β=γ=90°である。

【0025】
本発明で使用する酸化鉄は、好ましくは鉄及び酸素を主成分とし、更にケイ素及び/又はリンを含有する酸化鉄であり、より好ましくは鉄及び酸素を主成分とし、更にケイ素及びリンを含有する酸化鉄である。

【0026】
本発明のケイ素又はリンを含有する酸化鉄の鉄、ケイ素又はリンの元素比率は、原子数%で60~99.9:40~0.1、好ましくは70~95:30~5 (鉄及びケイ素又はリンの原子数%の合計を100とする)であることが望ましい。

【0027】
本発明のケイ素及びリンを含有する酸化鉄の鉄、ケイ素、リンの元素比率は、原子数%で66~87:2~27:1~32、好ましくは70~75:5~15:5~20 (鉄、ケイ素及びリンの原子数%の合計を100とする)であることが望ましい。

【0028】
本発明の酸化鉄としては、合成法により調製された酸化鉄、及び鉄酸化細菌によって生成された酸化鉄のいずれも使用することができる。以下、フェリハイドライト並びにケイ素及び/又はリンを含有する酸化鉄の合成法を示す。

【0029】
(フェリハイドライト)
本発明のフェリハイドライトの合成法としては、鉄化合物を次のように反応させることを例示できる。

【0030】
鉄化合物を溶媒に溶かし攪拌下にアルカリ水溶液(例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウム等)を滴下しpHを10程度にし、得られた沈殿物を蒸留水で洗浄し、遠心分離で回収する。得られたものを減圧下で乾燥し、粉砕することで2-line ferrihydriteを調製することができる。

【0031】
鉄化合物としては、具体的には硝酸鉄、硫酸鉄、塩化鉄、炭酸鉄等を例示することができるが、これらの中では、硝酸鉄が好ましい。

【0032】
鉄化合物を反応させる媒体としては、水溶液、アルコール等を例示できるが、水溶液が好ましい。

【0033】
反応の際の温度は10~50℃、好ましくは20~30℃の温度である。

【0034】
(ケイ素及び/又はリンを含有する酸化鉄)
本発明のケイ素及び/又はリンを含有する酸化鉄の合成法としては、鉄化合物、ケイ素化合物、リン化合物を次のように反応させることを例示できる。

【0035】
鉄化合物及びケイ素化合物及び/又はリン化合物を所定の比で溶媒に溶かし攪拌下にアルカリ水溶液(例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウム等)を滴下しpHを10程度にし、得られた沈殿物を蒸留水で洗浄し、遠心分離で回収する。得られたものを減圧下で乾燥し、粉砕することでケイ素及び/又はリンを含有する酸化鉄を調製することができる。

【0036】
鉄化合物としては、具体的には硝酸鉄、硫酸鉄、塩化鉄、炭酸鉄等を例示することができるが、これらの中では、硝酸鉄が好ましい。

【0037】
ケイ素化合物としては、具体的にはケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等を例示することができる。

【0038】
リン素化合物としては、具体的にはリン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等を例示することができる。

【0039】
鉄化合物等を反応させる媒体としては、水溶液、アルコール等を例示できるが、水溶液が好ましい。

【0040】
反応の際の温度は、10~50℃、好ましくは20~30℃である。

【0041】
<鉄酸化細菌によって生成された酸化鉄(バイオジナス酸化鉄)>
鉄酸化細菌としては、非晶質酸化鉄、フェリハイドライト又はレピドクロサイトを形成するものであればよく、特に限定されるものではない。鉄酸化細菌としては、例えば、トキソシリックス属細菌(Toxothrix sp.)、レプトスリックス属細菌(Leptothrixsp.)、クレノシリックス属細菌(Crenothrix sp.)、クロノシリックス属細菌(Clonothrix sp.)、ガリオネラ属細菌(Gallionellasp.)、シデロカプサ属細菌(Siderocapsa sp.)、シデロコッカス属細菌(Siderococcus sp.)、シデロモナス属細菌(Sideromonassp.)、プランクトミセス属細菌(Planktomyces sp.)などを挙げることができる。

【0042】
上記レプトスリックス属細菌であるレプトスリックス・オクラセア(Leptothrix ochracea)は、中空繊維状鞘構造のバイオジナス酸化鉄を生成することが可能である。また、ガリオネラ属細菌(Gallionella sp.)であるガリオネラ・フェルギネア(Gallionella ferruginea)は、螺旋状のバイオジナス酸化鉄を生成することが可能である。

【0043】
レプトスリックス属に属する細菌などの鉄酸化細菌によって生成される酸化鉄は、一般的には非晶質の酸化鉄である。

【0044】
レプトスリックス属細菌の一例としては、レプトスリックス・コロディニ OUMS1株が挙げられる。当該レプトスリックス・コロディニOUMS1株は、2009年12月25日に、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818))に、受託番号NITE P-860として寄託されている。また、この菌株は、現在国際寄託に移管されており、その受託番号はNITE BP-860である。レプトスリックス・コロディニ OUMS1株が生成する酸化鉄は、フェリハイドライト及びレピドクロサイトである酸化鉄である。

【0045】
バイオジナス酸化鉄を得る方法としては、特に限定されるものではなく、種々の方法を用いることができる。例えば、バイオ浄水法(鉄バクテリア浄水法)や浄水場などに存在している鉄酸化細菌によって生成された凝集沈殿物から得る方法(特開2005-272251号公報参照)、及び特開平10-338526号公報に開示されたパイプ状微粒子酸化鉄の製造方法などを、バイオジナス酸化鉄を得る方法として用いることができ、その説明は当該文献を適宜援用することができる。

【0046】
ここで上記「鉄バクテリア浄水法」とは、ポリ塩化アルミニウム(PAC)などの凝集剤の凝集効果のみを利用して原水中の不純物を除去する急速濾過浄水法とは対照的に、微生物の浄化作用によって不純物を除去させる方法である。ここで微生物の浄化作用によって不純物を除去させる方法としては、例えば鉄酸化細菌等の微生物が有する凝集作用を利用して原水中の不純物を凝集沈殿させ除去する方法が挙げられる。また、微生物を用いて浄水を行なうこと以外は特に限定されるものではなく、既述の砂層の表面に微生物膜形成させ、砂層で原水を濾過するだけの所謂「緩速濾過浄水法(自然濾過法)」であっても、濾過層の閉塞を防ぎ濾過速度を維持するために濾過層の洗浄を行なう、所謂「中速濾過浄水法」であってもよい。

【0047】
上記鉄バクテリア浄水法に含まれる鉄酸化細菌のうち、特にレプトスリックス属細菌は、鉄バクテリア浄水法の濾過層における優勢菌であり、中空繊維状鞘構造のバイオジナス酸化鉄を主に生成する。本発明者らは、レプトスリックス属細菌が生産する中空繊維状鞘構造のバイオジナス酸化鉄が内径約1.0μm、外径約1.2μmの中空を有し、ほぼ均一な粒子であるという優れた特性を有していることを確認している。

【0048】
なお、本発明において「鉄バクテリア浄水法」は、上述と同じ作用によって原水中の鉄イオン等を凝集させて除去する現象自体を含む意味であり、真に浄水を目的とした実用規模での浄水の実施のみを含むものではなく、実験室レベルの小規模実施をも含む意味である。

【0049】
本発明で用いられ得るバイオジナス酸化鉄としては、鉄バクテリア浄水法によって生じた凝集沈殿物から、そこに含まれるバイオジナス酸化鉄を分離したものが好適に利用され得る。バイオジナス酸化鉄の分離方法は、凝集沈殿物からバイオジナス酸化鉄を分離し得る方法であれば特に限定されるものではなく、簡単には上記凝集沈殿物の懸濁液を、バイオジナス酸化鉄を通さず、不純物のみを通すポアサイズ(メッシュサイズ)を持った篩、メッシュ、フィルター、紙漉きで用いられる簀子状ネット等に、当該懸濁液を通じればよい。

【0050】
上記凝集沈殿物は、既述の鉄バクテリア浄水法において原水中の鉄イオン等が鉄酸化細菌の凝集作用によって凝集し、塊状となって沈殿したものである。但し、本発明でいう凝集沈殿物は、鉄酸化細菌の凝集作用によって、原水中の不純物が凝集していれば足り、特に沈降(沈殿)していない凝集物をも含む意味である。即ち本発明でいう凝集沈殿物は、水等において浮遊状態であっても、また洗浄等によって沈殿物が再懸濁された懸濁液状態であってもよい。更には水分を蒸発させた乾燥状態であってもよい。

【0051】
また、凝集沈殿物の取得方法は、特に限定されるものではなく、浄水施設における濾過層上に堆積した沈殿物を掻きとってもよいし、緩速(中速)濾過浄水法における逆洗水(洗浄水)であってもよい。また、別途濾過装置で濾別した濾過残渣であってもよいし、遠心分離機で取得した沈殿であってもよい。更には自然沈降により沈降した凝集沈殿物を、デカンテーションにより得た沈殿物であってもよい。

【0052】
また、上記凝集沈殿物から効率良くバイオジナス酸化鉄を回収するためには、凝集沈殿物に分散剤を作用させることが好ましい。上記分散剤は、鉄バクテリア浄水法において生じる凝集沈殿物中に含まれる中空繊維状鞘構造のバイオジナス酸化鉄の塊化(バルキング)を解消することができるものであれば特に限定されるものではなく、天然物であっても合成物であってよい。分散剤としては、製紙業に一般的に用いられている、抄紙用粘剤を好適に用いることが可能である。

【0053】
抄紙用粘剤としては、例えば和紙の紙漉きに使用されるノリウツギ(糊空木;Hydrangea paniculata)抽出液、トロロアオイ(黄蜀葵;Abelmoschus manihot ( Hibiscus manihot) )抽出液等の植物由来抄紙用粘剤(「ネリ」)や、微生物が生産する多糖類を有効成分とする抄紙用粘剤(例えば、特開平8-325986号公報参照)や、ノニオン性抄紙用粘剤等の合成抄紙用粘剤(例えば、特開2003-253587号公報、及び特開2000-290892号公報参照)等が挙げられる。このうちノリウツギ抽出液、トロロアオイ抽出液等の植物由来抄紙用粘剤は、分散能力が高いこと、環境リスク等の安全性が高い等の観点から、特に好ましい分散剤であると言える。その他、本発明において利用可能な分散剤としては、多糖類、ポリウロニド、アルギン酸ナトリウム、セルロース誘導体、ポリメタリン酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド等が利用可能である。

【0054】
次に凝集沈殿物と分散剤との作用方法について説明する。作用方法は、凝集沈殿物と分散剤とが水等の適当な溶媒中で接触し、分散剤の分散効果が得られる条件であれば特に限定されるものではない。簡単には、凝集沈殿物と分散剤とを適当な割合で水に懸濁し、所定時間、静置又は振とうしながら作用させればよい。なお、凝集沈殿物と分散剤とが接触する頻度が高く、分散効果がより顕著に得られるという点で振とうしながら作用させることが好ましい。また、作用温度についても特に限定されるものではないが、0~25℃で行なうことが好ましく、5~15℃が更に好ましい。また、作用時間の好ましい条件については、凝集沈殿の状態、分散剤の分散能力、分散剤の濃度、凝集沈殿物と分散剤との混合割合等によって異なるため、適宜好ましい条件を検討して適用すればよい。一般的には30分間以上7日間(168時間)以内が好ましく、2時間以上1日間(24時間)以下が更に好ましい。作用時間が短すぎると十分な分散効果が得られず、逆に長すぎると作業効率が落ちるからである。また、凝集沈殿物と分散剤の混合割合の好ましい条件についても、凝集沈殿の状態、分散剤の分散能力、分散剤の濃度等によって異なるため、適宜好ましい条件を検討して適用すればよい。

【0055】
次に上記凝集沈殿物と分散剤の作用後の溶液(以下、「分散液」と称する)からバイオジナス酸化鉄を回収する方法について説明する。回収方法は、バイオジナス酸化鉄と泥、砂等の不純物とを分離することができる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、バイオジナス酸化鉄を通さず、不純物のみを通すポアサイズ(メッシュサイズ)を持ったメッシュ、フィルター、紙漉きで用いられる簀子状ネット等に、上記分散液を通じればよい。ここで、回収に用いられるメッシュ等のポアサイズ(メッシュサイズ)の好ましい条件であるが、バイオジナス酸化鉄の状態、不純物の種類等によって異なるため、適宜好ましい条件を検討して適用すればよい。なお、ポアサイズ(メッシュサイズ)を大きくすれば、回収時間を短縮することができるが、回収率は下がる。逆にポアサイズ(メッシュサイズ)を小さくすれば回収率は上がるが、回収時間は長くなる。本発明者等の検討によれば、中速濾過浄水法で得られた凝集沈殿物とノリウツギ抽出液との分散液から、中空繊維状鞘構造のバイオジナス酸化鉄の回収を行なう場合、ポアサイズ(メッシュサイズ)は、約1 mm×1 mm以下が好ましいということがわかった。

【0056】
次に、浄水場などに存在している鉄酸化細菌によって生成された凝集沈殿物からバイオジナス酸化鉄を得る方法を以下に説明する。まず、自然濾過法などを用いている浄水場に存在している鉄酸化細菌、例えば、レプトスリックス属細菌であるレプトスリックス・オクラセア(以下適宜「L. ochracea」と記す)が形成する沈殿物を採取する。このL. ochraceaが沈殿物を形成するバイオジナス酸化鉄の構成元素比、構造などは、上記鉄酸化細菌が生存する環境の温度、水質などにより変化するが、L. ochraceaが沈殿物を生成することができる条件であれば、特に限定されるものではなく、中空繊維状鞘構造の構造を主とするバイオジナス酸化鉄を得ることができる。

【0057】
その後、上記沈殿物を洗浄する。洗浄に用いる液としては、特に限定されるものではないが、蒸留水を用いることが好ましい。更に、篩を用いて、洗浄した汚泥から砂などの不純物を除去することによりバイオジナス酸化鉄を得ることができる。また、必要であれば、得られたバイオジナス酸化鉄に対し遠心分離機を用いて比重ごとに選別してもよい。

【0058】
なお、特開平10-338526号公報に開示されたパイプ状微粒子酸化鉄の製造方法を用いることによって、パイプ状の酸化鉄を得ることも可能である。

【0059】
上記鉄酸化細菌によって生成されたバイオジナス酸化鉄の構造は、生成に用いる鉄酸化細菌や、生成時の条件によって異なるが、中空繊維状鞘構造、螺旋状、粒状及び糸状の何れかの形状が含まれているものである。例えば、汚泥を採取する浄水場によって、中空繊維状鞘構造のバイオジナス酸化鉄が主に含まれる場合があり、また、粒状のバイオジナス酸化鉄が主に含まれる場合がある。

【0060】
しかし、上記鉄酸化細菌によって生成された酸化鉄であれば、上記何れかの形状、又は上記何れかの形状を複数含んでいるにかかわらず、本発明の負極活物質に用いることができる。

【0061】
上記バイオジナス酸化鉄の構成元素としては、鉄及び酸素を主成分とし、ケイ素、リンなどを更に含んだ組成である。また、バイオジナス酸化鉄には、更に、炭素が0.1~5重量%、特に0.2~2重量%の割合で含まれていることがある。この組成は、鉄酸化細菌が存在している環境などによって適宜変化するものである。したがって、2-line ferrihydrite などの合成された酸化鉄には、その組成においてリン及びケイ素が含まれていない点で異なっている。更に、SEMによるサンプル測定結果から、バイオジナス酸化鉄において各構成元素は、均一に分布していることが明らかとなっている。

【0062】
<リチウムイオン2次電池用負極材及び負極>
本発明のリチウムイオン2次電池用負極材は、上記の負極活物質を構成成分として含むことを特徴とする。

【0063】
本発明のリチウムイオン2次電池用負極材は、負極活物質(a)に加えて、好ましくは導電助剤(b)と結着剤(c)を含む。

【0064】
上記の導電助剤(b)としては、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛など)、人工黒鉛、カ-ボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、ポリフェニレン誘導体、ポリアセチレンなどが挙げられ、好ましくは炭素粉末及び/又は炭素繊維である。

【0065】
上記の結着剤(c)としては、例えば、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、澱粉、ジアセチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルクロリド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリプロピレン、SBR、EPDM、スルホン化EPDM、フッ素ゴム、ポリブタジエン、ポリエチレンオキシドなどが挙げられ、好ましくはフッ素樹脂である。

【0066】
本発明のリチウムイオン2次電池用負極材の負極活物質(a)、導電助剤(b)、結着剤(c)の含有率は、特に限定されるものではないが、例えば、それぞれ40~90重量%、5~40重量%、5~20重量%、好ましくは50~80重量%、10~30重量%、5~10重量%とすることができる。

【0067】
本発明のリチウムイオン2次電池用負極は、上記リチウムイオン2次電池用負極材を含むことを特徴とする。上記負極活物質(a)、導電助剤(b)及び結着剤(c)を1-メチル-2-ピロリジノン等の溶剤に分散させ、混練したものを銅箔等の集電体に塗布することによって、本発明のリチウムイオン2次電池用負極を得ることができる。

【0068】
上記の集電体は、導電性の金属であれば特に限定されず、例えば、銅、ステンレス等の単体又はそれらの合金が挙げられる。

【0069】
また、上記リチウムイオン2次電池用負極の形状としては、特に限定されるものではないが、シート状であることが好ましい。シート状であれば、上記リチウムイオン2次電池用負極のサイズを小さく抑えることができるからである。

【0070】
<リチウムイオン2次電池>
本発明のリチウムイオン2次電池は、上記リチウムイオン2次電池用負極を備えていることを特徴とする。以下に本発明のリチウムイオン2次電池の一例について説明する。

【0071】
図2は、本発明のリチウムイオン2次電池10の分解図である。図2に示すように、正極1からSUS板負極6側には、スペーサー2、本発明のリチウムイオン2次電池用負極3、SUS板4、バネ5、SUS板負極6を備えており、正極1からSUS板負極6と逆側には、テフロンスペーサー7、SUS板4、テフロンスペーサー7、セル基板8を備えている。

【0072】
スペーサー2及びテフロンスペーサー7は、間隙を設けるためのものであり、スペーサー2としては、たとえば、セルガード#2500など、テフロンスペーサー7としてはテフロン(登録商標)を材料として用いることができる。また、スペーサー2及びテフロンスペーサー7の厚みは、特に限定されるものではなく適宜設定すればよい。

【0073】
リチウム負極3とSUS板負極6とは、ともにリチウムイオン2次電池10における負極を構成するものである。正極1としては、公知の材料を用いることができ、例えば、LiCoO2などの複合酸化物を基体上に塗布したものを用いることができる。また、SUS板負極6としては、好ましくは、耐腐食性を有することが好ましいため、クロム及びニッケルを含むステンレス鋼であるSUS304などを用いることが好ましい。

【0074】
SUS板4としては、導電性を有するものでものであれば特に限定されるものではない。また、耐腐食性を有することが好ましいため、クロム及びニッケルを含むステンレス鋼であるSUS304などを用いることが好ましい。

【0075】
セル基板8としては、SUSを用いることができる。また、セル基板8は、耐腐食性を有することが好ましいため、クロム及びニッケルを含むステンレス鋼であるSUS304などを用いることが好ましい。

【0076】
上記リチウムイオン2次電池10に使用する電解液としては、ポリカーボネート(PC)及び1,2-ジメトキシエタン(DME)の混合溶液、エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)の混合溶液などを用いることができる。

【0077】
電解液に溶解させる塩としては、リチウムイオン2次電池に用いられる公知のリチウム塩を用いることができる。例えば、LiClO4、LiPF6などを用いることができる。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例等を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【実施例】
【0079】
[バイオジナス酸化鉄の精製]
京都府城陽市の公共施設である文化パルク城陽に設置した鉄酸化細菌の培養槽からバイオジナス酸化鉄を含んだ地下水スラリーを回収した。この培養槽の優先種は鉄酸化細菌レプトスリックス・オクラセアであり、得られるバイオジナス酸化鉄は直径1μm程度のチューブ形状である。このスラリーに28%NH3水溶液を加えてpH10.5に調整し10分撹拌し、撹拌をとめて40分静置した。デカンテーションにより上澄みのみフィルターろ過し、4倍量の蒸留水で洗浄した。得られた含水ケーキをエタノールに分散し、15分撹拌した。懸濁液をフィルターろ過し、100℃で乾燥した。乾燥粉末をメノウ製乳鉢で30分粉砕し、これを活物質(活物質1)とした。
【実施例】
【0080】
単離菌株レプトスリックス・コロディニOUMS1を国際公開第2011/074586号に記載の方法で培養し、得られたバイオジナス酸化鉄を蒸留水で洗浄した後に減圧下で乾燥した。乾燥粉末をメノウ製乳鉢で30分粉砕し、これを活物質(活物質2)とした。
【実施例】
【0081】
なお、活物質1は非晶質であり、活物質2はフェリハイドライトとレピドクロサイトの混合物であった。
【実施例】
【0082】
[ケイ素及びリンを含まない酸化鉄、ケイ素及び/又はリンを含有する酸化鉄]
ケイ素やリンを含まない酸化鉄の合成はEggletonらの報告を参考にし、次の方法で作製した(R.A.Eggleton and R.W.Fitzpatrick, Clays Clay Miner. 36, 111-124(1988).)。0.025 mol/LのFe(NO3)3・9H2O (ナカライテスク、99.0%)水溶液を調製した。水溶液をスターラーで激しく撹拌しながらアンモニア水溶液(ナカライテスク、28wt%)をゆっくり滴下し、pH 10.0となったところで15 min放置した。遠心分離機(HITACHI、CT6EL型)を用いて3000 rpmの回転数で約10 min遠心分離し、上澄みを捨て蒸留水を加え攪拌した。この操作を電気伝導度が0になるまで繰り返した。得られた沈殿物を減圧下で乾燥し、粉砕してケイ素やリンを含まない酸化鉄を得た(活物質3)。
【実施例】
【0083】
ケイ素を含有する酸化鉄の合成はSeehraらの報告を参考にし、次の方法で作製した(M.S. Seehra, P. Roy, A. Raman, A. Manivannan, Solid State Commun., 130 , 597-601(2004).)。0.025 mol/LのFe(NO3)3・9H2O (ナカライテスク、99.0 %)水溶液(溶液(1))と、適量のm-Na2SiO3・9H2O (ナカライテスク)水溶液(溶液(2))を調製し、溶液(1)に溶液(2)を加え1 Lの水溶液を調製した。Siの濃度はSi/(Si + Fe)×100で30%に調製した。水溶液にアンモニアを滴下する以降の手順はケイ素及びリンを含まない酸化鉄の合成方法と同様である(活物質4)。
【実施例】
【0084】
リンを含有する酸化鉄の合成は、m-Na2SiO3・9H2OをKH2PO4 (関東化学)に変更してP/(P + Fe)×100で30%に調製した以外は、ケイ素を含有する酸化鉄の合成方法と同様に行った(活物質5)。
【実施例】
【0085】
ケイ素及びリンを含有する酸化鉄の合成は、ケイ素源としてm-Na2SiO3・9H2Oを、リン源としてKH2PO4を用いて(Si+P)/(Fe+Si+P)×100でケイ素15%、リン15%に調製した以外は、ケイ素を含有する酸化鉄及びリンを含有する酸化鉄の合成方法と同様に行った(活物質6)。
【実施例】
【0086】
また、活物質3は2-line ferrihydriteであり、Si及び/又はPが添加された活物質4~6は非晶質化しており、バイオジナス酸化鉄の構造に似ることを確認した。
【実施例】
【0087】
[電極作製とコインセルの組み立て方法]
電極を作製するために、活物質として活物質1及び活物質2、導電助剤としてケッチェンブラック(ライオン株式会社)と気相成長カーボンファイバー(VGCF、昭和電工株式会社)を重量比7:3で混合したもの、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF、クレハ)を使用した。混合比は重量比で(バイオジナス酸化鉄):(導電助剤):(PVDF)=64:27:9とした。バイオジナス酸化鉄と導電助剤を所定の混合比で秤量し、ジルコニア製ボールミル容器とジルコニア製ボールを使用して、遊星ボールミル(フリッチュ,P-7)で400 rpm、24時間混合した。混合粉末に所定量のPVDF粉末を加え混合し、1-メチル-2-ピロリジノン(シグマアルドリッチ)を適量加えスラリー状にした。スラリーを50μmのドクターブレードで銅箔上に塗布し、塗布電極をφ15.95 mmに打抜いた。活物質1及び活物質2で作製した電極をそれぞれ電極1及び電極2と呼ぶ(L-BIOX及びOUMS1とも称する)。
【実施例】
【0088】
比較試料として市販の酸化鉄(α-Fe2O3、関東化学製)で上記と同様の方法で電極を作製した。この電極を電極refと呼ぶ。
【実施例】
【0089】
活物質1を上述の遊星ボールミルで200 rpm、24時間予備粉砕した。その後、上記の方法で電極を作製した。この電極を電極1’と呼ぶ。
【実施例】
【0090】
電極を作製するために、活物質として活物質3~6、導電助剤としてケッチェンブラックVGCFを重量比7:3で混合したもの、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF,クレハ)を使用した。混合比は重量比で(活物質3~6):(導電助剤):(PVDF)=70:20:10とした。活物質3~6と導電助剤を所定の混合比でポリプロピレン容器に秤量し、1-メチル-2-ピロリジノン(シグマアルドリッチ)を適量加え、自転・公転ミキサー(Thinky、AR-100)で混合した。混合したスラリーにPVDFを加え再度混合した。こうして得られたスラリーを50μmのドクターブレードで銅箔上に塗布し、塗布電極をφ15.95 mmに打抜いた。活物質3~6で作製した電極をそれぞれ電極3~6と呼ぶ。
【実施例】
【0091】
作製した電極を正極とし、対極にLi箔(本城金属)を用いてコインセルを組み立てた。セパレーターはセルガード#2000を、電解液は1M LiPF6 in EC:DEC = 3:7 vol% (富山薬品工業株式会社)を使用した。
【実施例】
【0092】
試験例1
[電極1,2及び1’の充放電特性評価]
電極1及び2の負極特性を調べるために、作製したコインセルの充放電測定を電圧範囲3.0-0V、電流密度33.3 mA/g (C/20)及び666 mA/g (1C)、定電流条件、25℃の条件で行った。充放電装置には東洋システム株式会社のTOSCAT-3100、北斗電工株式会社のHJ-1001 SD8、株式会社ナガノのBTS2004を用いた。図3、4に電極1の充放電曲線を示す。
【実施例】
【0093】
C/20の測定では、初期放電容量は1430 mAh/gと非常に大きな値を示した。続く2サイクル以降では930 mAh/gの可逆放電容量が得られた(図3)。高電流密度1Cの測定では、初期放電容量は730 mAh/gであり、その後のサイクルでは600 mAh/g程度の可逆放電容量が得られた(図4)。充電容量についても0.05Cにおいて900 mAh/g、1Cにおいて550 mAh/gと大きな可逆容量が得られた(図6)。この結果は、これまでに報告のある酸化鉄粉末を用いた電極特性の中で最も高い値であった。また、実用材料であるグラファイトの理論容量372 mAh/gを遥かに超える可逆容量が得られたことから、このバイオジナス酸化鉄電極はLiイオン電池の負極として利用可能である。
【実施例】
【0094】
また、電極2は高電流密度1Cの測定において20サイクルで600 mAh/gの充電容量が得られた(図5、6)。
【実施例】
【0095】
比較試料として市販のα-Fe2O3の電極特性を測定した(図6、電極ref)。電極refは初期の容量は高いもののサイクル特性が悪くサイクルを重ねるにつれて容量が劣化し、50サイクルにおいては初期容量の約1/3で360 mAh/gまで劣化した。このようにサイクル特性が悪く高い可逆容量を得られないことが一般的な酸化鉄の問題点である。二次電池の電極として用いる場合にサイクル特性が悪いということは致命的な欠点である。
【実施例】
【0096】
以上の比較実験から、本発明の微生物由来酸化鉄は総じてサイクル特性に優れており、最も優れたサイクル特性を示す電極1は550 mAh/gの高い可逆容量が得られた。
【実施例】
【0097】
活物質1の長期サイクル特性(100サイクル以上)を調べるために、電極1’の充放電測定を電圧範囲3.0-0V、電流密度666 mA/g (1C)、定電流条件、25℃の条件で行った。可逆放電容量は下がったが(430 mAh/g)、サイクル特性は150サイクルでほぼ100%の容量を維持した(図7)。
【実施例】
【0098】
試験例2
[電極3~6の充放電特性評価]
電極3~6の負極特性を調べるために、作製したコインセルの充放電測定を電圧範囲3.0-0V、電流密度300 mA/g (図8)及び600 mA/g (図9)、定電流条件、50サイクル、25℃の条件で行った。
【実施例】
【0099】
図8の電流密度300 mA/gの測定結果から、ケイ素やリンを含まない電極3は初期サイクルでの充電容量が約890 mA/gと高いものの、サイクル特性が悪く50サイクル目には約600 mAh/gとなり、50サイクル目の容量維持率は67%であった。一方、電極4~6は初期の容量が僅かに低い(電極4:約755 mAh/g、電極5:約740 mAh/g、電極6:約790 mAh/g)ものの、サイクル特性が良好で、50サイクル目の容量維持率はそれぞれ79.5、80.3、89.6%であった。この結果から、ケイ素やリンを酸化鉄の構造中に入れることでサイクル特性が良くなることがわかった。
【実施例】
【0100】
この傾向は、図9に示した電流密度300 mA/gの測定結果でも同様であった。即ち、ケイ素やリンを含まない電極3は初期サイクルでの充電容量が約760 mAh/gと高いものの、サイクル特性が悪く50サイクル目には約520 mAh/gとなり、50サイクル目の容量維持率は68.2%であった。一方、電極4~6は初期の容量が僅かに低い(電極4:約755 mAh/g、電極5:約700 mAh/g、電極6:約740 mAh/g)ものの、サイクル特性が良好で、50サイクル目の容量維持率はそれぞれ74.7、70.6、87.0%であった。
【実施例】
【0101】
どちらの電流量においても最もサイクル特性が良く50サイクル目の容量が最も高かったのは電極6(Si15%、P15%)であった。電極4(Si30%)と電極5(P30%)は、50サイクル目の容量は電極3(SiとP無し)と同程度であったがサイクル特性が良好であった。
【実施例】
【0102】
また、電極3(SiとP無し)は電流量300 mA/gから2倍の600 mA/gにすると、例えば充電容量の極大値が140 mAh/g程度と大きく低下したのに対し、SiやPあるいは両者を含む電極4~6では充電容量の極大値の低下は大きくても50 mAh/g程度であり、大電流量を流しても容量が劣化し難くなっており、レート特性が良かった。
【実施例】
【0103】
比較として図6に示した市販のα-Fe2O3の充放電特性も図9に示した。電極3~6は全て市販の酸化鉄よりも優れたサイクル特性と可逆容量を示した。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8