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明細書 :新規分岐ポリエチレングリコール及びその用途

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5999659号 (P5999659)
登録日 平成28年9月9日(2016.9.9)
発行日 平成28年9月28日(2016.9.28)
発明の名称または考案の名称 新規分岐ポリエチレングリコール及びその用途
国際特許分類 C08G  65/32        (2006.01)
A61K  47/48        (2006.01)
FI C08G 65/32
A61K 47/48
請求項の数または発明の数 10
全頁数 16
出願番号 特願2013-549309 (P2013-549309)
出願日 平成24年12月13日(2012.12.13)
国際出願番号 PCT/JP2012/082333
国際公開番号 WO2013/089182
国際公開日 平成25年6月20日(2013.6.20)
優先権出願番号 2011273122
2012156495
優先日 平成23年12月14日(2011.12.14)
平成24年7月12日(2012.7.12)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成27年12月11日(2015.12.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
発明者または考案者 【氏名】長崎 幸夫
【氏名】池田 豊
【氏名】河崎 弘道
【氏名】片町 仁哉
個別代理人の代理人 【識別番号】110000741、【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
審査官 【審査官】井津 健太郎
参考文献・文献 特表2011-521067(JP,A)
特開平11-322916(JP,A)
特表2005-520006(JP,A)
特開平03-088822(JP,A)
特表2005-538224(JP,A)
特表2007-527892(JP,A)
調査した分野 C08G 65/00-65/48
A61K 9/00-47/48
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(I)で表される機能化ポリエチレングリコール:
【化1】
JP0005999659B2_000012t.gif
式中、
【化2】
JP0005999659B2_000013t.gif
部分(A部分ともいう)は、下記の基a~kからなる群より選ばれ、
【化3】
JP0005999659B2_000014t.gif
上記基において、
各Xは、-O-、-C(=O)O-または-C(=O)NH-を表し、
各mおよびnは、独立して、整数1~12から選ばれ、
各PEGは、独立して-(CHCH-O-)を表し、
各Rは独立して水素原子もしくはC1-6アルキルを表し、
各qは、独立して、整数5~3000から選ばれる。
【請求項2】
A部分が、基a、b、c、d、fおよびgよりなる群から選ばれる、請求項1に記載の機能化ポリエチレングリコール。
【請求項3】
A部分が、基a、b、c、d、fおよびgよりなる群から選ばれ、かつ、Xが-O-である、請求項1に記載の機能化ポリエチレングリコール。
【請求項4】
A部分が、基aまたはgであり、各Xが-O-であり、かつ、各qが独立して、8~1000である、請求項1に記載の機能化ポリエチレングリコール。
【請求項5】
少なくとも1つの反応し得るアミノ基を分子中に有する生物活性物質と反応し得る請求項1に記載の機能化ポリエチレングリコールを反応体として含んでなる、生物活性物質を修飾するためのポリエチレングリコール化作用剤。
【請求項6】
少なくとも1つの反応し得るアミノ基を分子内に有する有機化合物を修飾するための反応体としての請求項1に記載の式(I)で表される機能化ポリエチレングリコールの使用。
【請求項7】
請求項1に記載の機能化ポリエチレングリコールと少なくとも1つの反応しうるアミノ基を有する生物活性物質とを前者の2つのアルデヒド基と後者のアミノ基が反応し得る条件下で反応させる工程を含んでなる、PEG化生物活性物質の製造方法。
【請求項8】
生物活性物質が治療用タンパク質である、請求項5に記載の作用剤。
【請求項9】
生物活性物質が治療用タンパク質である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
治療用タンパク質が、酵素、サイトカイン、可溶性受容体タンパク質、抗体および抗体フラグメントからなる群より選ばれる、請求項5に記載の作用剤。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規分岐ポリエチレングリコール及びその用途に関し、より具体的には、機能化二分岐ポリエチレングリコール及びその生活性タンパク質を初めとするアミノ基含有薬剤の体内動態を改善するための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品候補となるタンパク質または核酸の生体内での動態(生体内滞留性、プロテアーゼもしくはヌクレアーゼに対する安定性、免疫原性、等)を改善する技術として当該タンパク質等のポリエチレングリコール化(PEG化:PEGylation)が有用であり、これまでにいくつものPEG化タンパク質が医薬品として、FDAで承認され、また、開発途上のものもある。典型的には、承認され、上市された医薬品としては、PEG-アスパラギナーゼ、PEG-アデノシンデアミナーゼ、PEG-インターフェロンα2a、PEG-インターフェロンα2b、PEG-G-CSF、PEG-成長ホルモン受容体アンタゴニスト、また、非タンパク質医薬品として、分岐型PEG-抗VEGFアプタマー、等を挙げることができる。なかでもタンパク質に結合した際に分岐型となる枝分かれPEGは近年特に注目され新規の医薬品開発が困難な昨今の状況においても新規のPEG化医薬品開発に貢献している(非特許文献1)。
【0003】
これまでにPEG化医薬品で使用されている分岐PEGは活性エステルで機能化されているものがほとんどであり、当該活性エステルを介してタンパク質中のアミノ基と反応させることが可能である。しかしながら、このような活性エステル基は、一般に、タンパク質中のリジンだけでなくヒスチジンとも反応してしまう。また、活性エステルを末端基とするPEGをタンパク質のアミノ基と反応させるPEG化では、アミド結合によりアミノ基の塩基性(または陽荷電性)は大きく変化してしまうため、しばしばタンパク質活性の大幅な減少を招いてしまう。そのため、アミノ基の塩基性(または陽荷電性)を維持したままPEG化タンパク質を製造する技術の確立が望まれている。さらに、従来の分岐型PEGの合成及び精製には煩雑なステップを含むという欠点も存在する。このような反応条件の厳しさ、反応効率の悪さ及び副生成物の問題などから、医薬品としての効果が期待されながらも現状のPEG化技術では開発に至らなかったタンパク質も数多く存在する。
【先行技術文献】
【0004】
非特許文献1:Bioconjugate Chem. 1995, 6, 62-69
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、PEG化に際して、例えば標的タンパク質中の1級アミンであるリジン残基、または存在する場合には、N-末端アミノ酸残基のアミノ基と反応し、アミノ基の陽荷電性を変化させず、製造工程も従来の分岐PEG化用化合物と比較し簡便な方法で製造できるPEG化用化合物またはPEG化技術を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
【0006】
本発明者等は、今回、例えば、以下の反応スキームで選択的にアミノ基のみをPEG化できることを新たに解明した。
【0007】
【化1】
JP0005999659B2_000002t.gif

【0008】
上式中、PEGはポリエチレングリコール鎖であり、Rはアミノ化合物のアミノ基以外の残基または部分である。
【0009】
理論により拘束されるものではないが、この反応スキームでは、被修飾分子中のアミノ基と修飾分子中アルデヒド基(又はホルミル)を2つ有するジアルデヒド体が反応し、環構造を形成することによりアミノ基の効果的な修飾が可能であるものと理解できる。当該修飾方法は、中性の水溶液中で反応が進行することから様々な生体分子へ展開が可能である。この反応では第一級アミン(アミノ基)のみ反応するためヒスチジン等の第二級アミン(イミノ基)とは反応しない。また、この反応は中性付近の温和な条件で効率よく反応し、これまでのPEG化機構とは全く異なる結合様式にてタンパク質のアミノ基をアルキル化できる。したがって、当該反応スキームに従うジアルデヒド体または当該ジアルデヒド体と同様に環構造を形成し得るその類似体である機能化ポリエチレングリコールを用いるPEG化は、少なくとも1個の反応しうるアミノ基を有する化合物、特に、生物活性物質である、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、その他の低分子有機化合物等、を中性付近の水溶液中で容易にポリエチレングリコールによる修飾ができ、しかも、当該アミノ基の塩基性(または陽荷電性)を変えないので、非修飾生物活性物質の活性を大きく損なうことなく目的のPEG化化合物を提供できることが確認された。
【0010】
したがって、本発明によれば、下記式(I)で表される機能化ポリエチレングリコールが提供される。
【0011】
【化2】
JP0005999659B2_000003t.gif

【0012】
式中、
【0013】
【化3】
JP0005999659B2_000004t.gif

【0014】
部分(以下、単にA部分とも称す場合あり)は、下記の基a~kからなる群より選ばれ、
【0015】
【化4】
JP0005999659B2_000005t.gif

【0016】
上記基において、
各Xは、独立して-O-、-C(=O)O-または-C(=O)NH-を表し、
各PEGは、独立して-(CHCH-O-)を表し、
各mおよびnは、独立して、整数1~12から選ばれ、
各Rは、独立して水素原子もしくはC1-6アルキルを表し、
各qは、独立して整数5~3000から選ばれる。
【0017】
前記機能化ポリエチレングリコールは、上述したとおりアミン化合物または生理活性物質中のアミノ基(-NH)のみと反応し得るので、アミノ基、イミノ基、さらにはヒドロキシル基等と反応し得る活性エステルを末端基とするポリエチレングリコールと異なり反応選択性を有し、しかも生物活性物質中のアミノ基の陽荷電性を変化させない。
【0018】
したがって、別の態様の本発明として、
前記式(I)で表される機能化ポリエチレングリコールを反応体として含んでなる、少なくとも1つの反応し得るアミノ基を分子内に有する有機化合物の修飾用作用剤、または
少なくとも1つの反応し得るアミノ基を分子内に有する有機化合物を修飾するための反応体としての前記式(I)で表される機能化ポリエチレングリコールの使用、または
前記式(I)で表される機能化ポリエチレングリコールと少なくとも1つの反応し得るアミノ基を分子内に有する生物活性物質とを前者の2つのアルデヒド基と後者のアミノ基が反応し得る条件下で反応させる工程を含んでなる、PEG化生物活性物質の製造方法、
も提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の前記式(I)で表される機能化ポリエチレングリコールは、それらを用いて少なくとも1つの反応し得るアミノ基を分子内に有する生物活性物質を修飾(または、PEG化)することにより、未修飾生理活性物質の活性を少なくとも一部は保持しながら、未修飾体に比べて体内動態(生体内滞留性、生体内代謝に対する抵抗性、免疫原性、等)が大きく改善された生成物を提供できる。
【発明の詳細な記述】
【0020】
本発明について、より具体的に説明する。
【発明の詳細な記述】
【0021】
本願発明に関して、ポリエチレングリコール(PEG)化とは、タンパク質、ペプチドまたは非ペプチド分子の1以上のポリエチレングリコール(PEG)鎖の共有結合を介する修飾を意味する。
【発明の詳細な記述】
【0022】
前記式(I)で表される機能化ポリエチレングリコールは、分子中の2つのアルデヒド基(またはホルミル)が一緒になって、少なくとも1つの反応しうるアミノ基を有する化合物、例えば、生物活性物質である、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、その他の低分子有機化合物の1つのアミノ基と反応して環構造を有するアミン化合物を形成するように機能化されている。反応しうるアミノ基とは、機能化ポリエチレングリコールの2つのアルデヒド基と反応できる状態にあるアミノ基を意味し、該当する生理活性物質の分子の如何なる位置に存在するものであっても、前記2つのアルデヒド基の結合したアルキレン部分と一緒になって環構造を形成するように反応する状態にあるアミノ基を制限することなく包含する。このようなアミノ基は、該当する分子中に1以上存在することができる。
【発明の詳細な記述】
【0023】
環構造を形成し、特に、タンパク質のような複数のアミノ基を有する化合物をPEG化するとの観点に立てば、式(I)で表される機能化ポリエチレングリコールは、式中のA部分が、基a、b、c、d、e、fおよびgで表されるものが好ましく、基a、b、cおよびgで表されるものがより好ましく、基aおよびgで表されるものが特に好ましい。
【発明の詳細な記述】
【0024】
一方、分子内に少なくとも1つの反応し得るアミノ基を有する化合物は、遊離の状態にあるもの、または何らかの支持体(例えば、生体内移植用担体またはバイオセンサーの表面等)に固定ないし結合された状態にあることができる。また、生物活性物質は、医療用、例えば、治療用または診断用タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド(siRNA、アプタマー等)であることができる。タンパク質は、糖タンパク質、リポタンパク質を包含する概念として使用しており、それらには、天然由来のもの、遺伝子操作による組換え由来のもの、融合タンパク質が包含される。したがって、式(I)の機能化ポリエチレングリコールの反応対象たるアミノ基は、糖タンパク質にあっては、糖残基中に存在するものであることもできる。
【発明の詳細な記述】
【0025】
生理活性物質としては、医療用、例えば、治療用または診断用タンパク質またはペプチドが好ましく、酵素(例えば、アスパラギナーゼ、アデノシンデアミナーゼ等)、サイトカイン(例えば、インターロイキン1、2、6、等、インターフェロンα、β、γ、腫瘍壊死因子、リンホトキシン、コロニー刺激因子、エリスロポエチン、上皮増殖因子、繊維芽細胞増殖因子、等)、可溶性受容体タンパク質(例えば、腫瘍壊死因子受容体、各種インターロイキン受容体、チロシンキナーゼ受容体等由来)、ホルモン(例えば、インスリン、ヒト成長ホルモン等)、抗体(例えば、抗癌用、抗アレルギー用および抗感染症用抗体)ならびにこれらの活性フラグメント等を挙げることができる。
【発明の詳細な記述】
【0026】
式(I)のA部分としての基a~kにおいて、mおよびnは、相互に独立して、整数1~12、好ましくは、1~6から選ばれる。PEGは、各々独立して-(CHCH-O-)を表し、ここで、Rは水素原子又はC1-6アルキルを表し、このアルキル基は直鎖又は分岐であることができ、限定されるものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルを挙げることができ、好ましくはメチル又はエチルである。各qは、一般的に、本発明の目的に沿う限りいかなる整数であることもでき、限定されるものでないが、5~3000、好ましくは8~1000、より好ましくは12~700、特に好ましくは20~600であることができる。また、A部分における各Xは、独立して-O-、-C(=O)O-または-C(=O)NH-であることができるが、結合の安定性等を考慮すると、-O-であることが好ましい。
【発明の詳細な記述】
【0027】
本発明の機能化ポリエチレングリコールは、当業者であれば、式(I)で表される構造を参考に、当該技術分野に公知の出発原料又は公知の方法を利用して容易に提供できるものと理解するが、都合よくは次の反応スキームにしたがって製造するのが効果的である。
【発明の詳細な記述】
【0028】
【化5】
JP0005999659B2_000006t.gif

【発明の詳細な記述】
【0029】
上記式中、A部分は、式(I)について定義したのと、Xが-O-であり、Rがメチル基であること以外は同義であり、A部分は、次の基a’~k’から選ばれ、A部分はA部分について定義したのと、RがHであること以外は同義である。
【発明の詳細な記述】
【0030】
【化6】
JP0005999659B2_000007t.gif

【発明の詳細な記述】
【0031】
上記反応スキームの各反応はそれ自体公知であり、必要があれば、後述する実施例に記載の工程を参照し、または改良して行うことができる。例えば、第一の工程は、エチレンオキシドの開環アニオン重合、好ましくはリビングアニオン重合に相当する。第二の工程は、PEG化したポリエチレングリコールの成長末端のヒドロキシル基のエーテル化(又はアルキル化)であり、また、それ自体公知の合成反応を利用できる。第三の工程は、不飽和二重結合の酸化ヒドロキシル化であり、また、第四の工程はビシナル(vicinal)の2個のヒドロキシル基間をマラプラード(Malaprade)型酸化に供する工程であり、第四の工程はPEGの末端ヒドロキシル基のアルキル化であり、いずれも、当該技術分野で十分に検討され、熟知されている反応である。したがって、上記反応スキームの各工程に従えば、式(I)の機能化ポリエチレングリコールを効果的に製造できる。こうして提供できる機能化ポリエチレングリコールは、Mw/Mnが1.07以下、好ましくは1.05以下の、所謂、単分散性ポリマーと称することができる。
【発明の詳細な記述】
【0032】
式(I)の機能化ポリエチレングリコールは、アミノ基を分子内に有する遊離化合物または材料表面上もしくは材料チップ等に固定化されたアミノ基を分子内に有する化合物と、例えば、水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン(THF)の如き反応溶媒中で、必要があれば、緩衝化された溶液中、冷却温度(例えば、4℃)~100℃、好ましくは、4~37℃の温度で、目的の反応が完了するまで反応せしめることにより、上述したアミノ基を有する生理活性物質の分岐ポリエチレングリコール化を達成することができる。
【発明の詳細な記述】
【0033】
したがって、本発明の製造方法にいう、機能化ポリエチレングリコールの2つのアルデヒドと生物活性物質のアミノ基が反応し得る条件は、好ましくは、4~37℃で4~72時間反応混合物を撹拌することにある。こうして、生物活性物質、例えば、タンパク質又はペプチドは分岐ポリエチレングリコールにより効果的に修飾することができる。
【発明の詳細な記述】
【0034】
なお、前記A部分を有する上記出発原料は、それ自体公知であるか、本発明者等の一部の発明を開示する、例えば、特表2011-84496号公報に記載されているとおり公知であるか、かような公知化合物の製造方法を、必要により、改良して製造したものであることができる。かような原料の代表的なものとしては次の構造式で表される化合物を挙げることができる。
【発明の詳細な記述】
【0035】
【化7】
JP0005999659B2_000008t.gif

【発明の詳細な記述】
【0036】
上記式中、n及びmは、上記式(I)について定義したのと同義である。
【発明の詳細な記述】
【0037】
別法として、上記のごときA部分を有する出発原料は、それぞれ、-(CH-OHおよび-(CH-OHにおける、-CHOH部分を酸化して-COOHに転化した後、HO-PEGまたはHN-PEGと反応せしめ、上記式(I)のXが、独立して-C(=O)O-または-C(=O)NH-で表される機能化ポリエチレングリコールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】後述する実施例の例2において、リゾチームを本発明の機能化ポリエチレングリコールでPEG化して得られた反応生成物のHPLCの解析結果を表すHPLCチャートである。図中のpeak 1が反応生成物を含む画分のピーク1に相当し、LysozymeはPEG化する前のリゾチームを含む画分のピークに相当する。
【図2】図1のピーク1の画分、リゾチーム及び分子量マーカーについてSDS-PAGE解析を行った結果を表す図に代わる写真である。レーン(Lane)1はマーカーに由来し、レーン(Lane)2はリゾチーム由来し、レーン(Lane)3はピーク1の画分(PEG化リゾチーム)に由来する泳動結果を示す。
【図3】リゾチームを本発明に従う機能化ポリエチレングリコールまたは従来の活性エステル型ポリエチレングリコールでPEG化して得られたPEG化リゾチームの、未修飾リゾチームの活性に対する相対残存活性を示すグラフである。
【図4】後述する実施例の例4において、リゾチームを本発明の機能化ポリエチレングリコールでPEG化して得られた反応生成物(レーン3)のSDS-PAGE解析を行った結果を表す図に代わる写真である。レーン1は、タンパク質マーカーを、レーン2はリゾチームを、レーン3はPEG化リゾチーム画分に由来する泳動結果を示す。
【発明を実施するための態様】
【0039】
以下、限定されるものでないが、本発明関して、具体例を挙げながらさらに具体的に説明する。本発明によれば、生物活性タンパク質を、その一定の活性を保持したま効果的なPEG化を効率よく行うことが実現できた。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の説明を簡潔にする目的で上記式(I)のA部分が基(b)および(g)で表され、Xが-O-であり、m及びnがそれぞれ整数1である化合物の例を挙げるが、本発明をこれに限定することを意図するものではない。
【0041】
例1: 機能化ポリエチレングリコール(PEG)の製造(下記合成スキームにしたがった)
【0042】
【化8】
JP0005999659B2_000009t.gif

【0043】
(1)化合物2の合成
本合成で用いる器具はあらかじめ120℃にて10時間乾燥庫で乾燥させておいた。200mナスフラスコに化合物1(64mg,0.50mmol)を加え、三方活栓を取り付けた。窒素置換しながら蒸留THF溶媒(30mL)、カリウムナフタレン(0.30M,3.37mL,1.00mmol)を加え15分攪拌した。エチレンオキシド(5.58mL,0.11mol)を加え、25℃で60時間攪拌した。反応後、冷凍庫で冷やした2-プロパノール(IPA)1.50Lにより再沈殿を行った。遠心分離により反応物を分離させ、上澄み液を除いた。反応物をメタノールに溶かし200mLナスフラスコに回収し、エバポレーターにて反応物を濃縮させ、再び再沈殿を行った。再沈殿は3回行った。3回目のエバポレートの終了後、1,4-ジオキサン10mLに反応物を溶解させ、凍結乾燥を行った。凍結乾燥後、化合物2を収率93%で得た。
H NMR(CDCl,400MHz)
5.53ppm(s,2H),3.83-3.45ppm(m,976H),3.36ppm(s,4H),2.76ppm(br,2H),2.18ppm(s,4H)
GPC Mn9459,Mw/Mn1.19
【0044】
(2)化合物3の合成
100mLナスフラスコに化合物2(920mg,0.10mmol)を入れ三方活栓を取り付けた。THF溶媒15mLを加え、0℃の氷浴につけながらNaH(24.0mg,0.60mmol)を加え、30分間攪拌した。続いて、CHI(0.5mL,8.0mmol)を加え、室温にて30時間攪拌した。反応後、セライトろ過にてNaHを除去し、エバポレーターで反応物を濃縮させた。冷凍庫で冷した2-プロパノール(IPA)200mLで再沈殿を行った。遠心分離により反応物を分離させ、溶媒のみを捨てた。反応物をメタノールに溶かし200mLナスフラスコに回収し、エバポレーターにて反応物を濃縮させた。再沈殿は3回行った。3回目のエバポレーターが終了後、1,4-ジオキサン5mLに反応物を溶解させ、凍結乾燥を行った。凍結乾燥後、化合物3を収率85%で得た。
H NMR(CDCl,400MHz)
5.54ppm(s,2H),3.83-3.45ppm(m,976H),3.38ppm(s,6H),3.36(s,4H),2.18(s,4H)
GPC Mn10015,Mw/Mn1.13
【0045】
(3)化合物4の合成
100mLバイアル瓶で化合物3(500mg,0.01mmol)をアセトン(3mL)、水(3mL)、アセト二トリル(3.0mL)に溶解させ、N-メチルモルホリン N-オキシド(60.0mg,0.5mmol)、マイクロカプセル化四酸化オスミウム(10.1mg)を加えた。室温にて48時間振とうさせた。反応後、ろ過により四酸化オスミウムを取り除き、エバポレートし反応物を濃縮した。続いて、冷凍庫で冷した2-プロパノール(IPA)200mLで再沈殿を行った。遠心分離により反応物を分離させ、上澄み液を除いた。反応物をメタノールに溶かし200mLナスフラスコに回収し、エバポレーターにて反応物を濃縮させ、再び再沈殿を行った。再沈殿は3回行った。3回目のエバポレーターが終了後、1,4-ジオキサン5mLに反応物を溶解させ、凍結乾燥を行った。凍結乾燥後、化合物4を収率91%で得た。
H NMR(CDCl,400MHz)
3.92-3.90ppm(br,2H),3.83-3.45ppm(m,976H),3.38ppm(s,6H),3.35ppm(s,2H),3.26-3.28(m,2H),3.21ppm(s,2H),1.85-1.65(m,4H)
GPC Mn9319,Mw/Mn1.14
【0046】
(4)化合物5の合成
水(500μL)に過ヨウ素酸ナトリウム(2.70mg,0.013mmol)を溶解させ、化合物4(101mg,0.01mmol)に滴下して加え、室温で1時間攪拌した。反応後、ジクロロメタンを用いて抽出し、硫酸ナトリウムにより脱水し、エバポレーターにより反応物を濃縮した。1,4-ジオキサン5mLに反応物を溶解させ、凍結乾燥を行った。凍結乾燥後、化合物5を収率15%で得た。
H NMR(CDCl,400MHz)
9.79-9.78ppm(t,2H),3.83-3.45ppm(m,976H),3.51ppm(s,4H),3.38(s,6H),2.57(d,4H)
GPC Mn10325,Mw/Mn1.23
【0047】
例2: 化合物5を用いた分岐型PEG化タンパク質の合成
合成した分岐型PEG(化合物5、10kDa)をニワトリリゾチーム(分子量約14.3kDa)に対して5倍当量加え0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)中、4℃で、6時間反応させた。
【0048】
リゾチーム及び反応生成物について行ったHPLC(高速液体クロマトグラフィー)の結果を表すHPLCチャートの解析結果を図1に示す。
【0049】
HPLCにより得られたピーク1(peak 1)を分取し、SDS-PAGEにより解析した結果を、図2に示す。
【0050】
上記の解析結果、および後述のモデル合成の結果より、ピーク1はリゾチームより分子量が約10kDa大きい、分岐型PEGが1個リゾチームに結合したPEG化リゾチームに相当することが確認された。
【0051】
例3: 機能化ポリエチレングリコール(PEG)の製造(下記合成スキームにしたがった)
【化9】
JP0005999659B2_000010t.gif

【0052】
(1)化合物2の合成
本合成で用いる器具はあらかじめ120℃にて10時間乾燥庫で乾燥させておいた。100mLナスフラスコに化合物1(0.07g、0.50mmol)を加え、三方活栓を取り付けた。窒素置換しながら蒸留THF溶媒(30mL)、カリウム・ナフタレン(0.30M、3.37mL、1.00mmol)を加え15分攪拌した。蒸留後のエチレンオキサイド(5.60mL、0.11mol)を加え、60時間攪拌した。反応後、冷凍庫で冷やしたIPA1.50Lにより再沈殿を行った。遠心分離により反応物を分離させ、上澄み液を除いた。反応物をメタノールに溶かし200mLナスフラスコに回収し、エバポレーターにて反応物を濃縮させ、再び再沈殿を行った。再沈殿は3回行った。3回目のエバポレーターが終了後、1,4-ジオキサン5mLに反応物を溶解させ、凍結乾燥を行った。凍結乾燥後、化合物2を収率86%で得た。
GPC Mn7815,Mw/Mn=1.05
【0053】
(2)化合物3の合成
200mLナスフラスコに化合物2(723mg、0.10mmol)を入れ三方活栓を取り付けた。THF溶媒15mLを加え、0℃の氷浴につけながら水素化ナトリウム(58.8mg、1.47mmol)を加え、30分間攪拌した。続いて、ヨウ化メチル(0.75mL、12.0mmol)を加え、室温にて48時間攪拌した。反応後、セライトろ過にて不溶物を除去し、エバポレーターで反応物を濃縮させた。冷凍庫で冷やしたIPA(1.5L)で再沈殿を行った。遠心分離により反応物を分離させ、溶媒のみを捨てた。反応物をメタノールに溶かし200mLナスフラスコに回収し、エバポレーターにて反応物を濃縮させた。再沈殿は3回行った。3回目のエバポレーターが終了後、1,4-ジオキサン5mLに反応物を溶解させ、凍結乾燥を行った。凍結乾燥後、化合物3を収率73%で得た。
GPC Mn7803,Mw/Mn=1.05
【0054】
(3)化合物4の合成
100mLバイアル瓶で化合物3(434mg、0.06mmol)をアセトン(3.0mL)、水(3.0mL)、アセト二トリル(3.0mL)に溶解させ、N-メチルモルホリン N-オキシド(57.3mg、0.49mmol)、四酸化オスミウム(12.5mg、0.05mmol)を加えた。室温にて48時間振とうさせた。反応後、ろ過により四酸化オスミウムを取り除き、エバポレートし反応物を濃縮した。続いて、冷凍庫で冷したIPA(200mL)で再沈殿を行った。遠心分離により反応物を分離させ、上澄み液を除いた。反応物をメタノールに溶かし200mLナスフラスコに回収し、エバポレーターにて反応物を濃縮させ、再び再沈殿を行った。再沈殿は3回行った。3回目のエバポレーターが終了後、1,4-ジオキサン5mLに反応物を溶解させ、凍結乾燥を行った。凍結乾燥後、化合物4を収率87%で得た。
GPC Mn7869,Mw/Mn=1.04
【0055】
(4)化合物5の合成
水(100μL)とメタノール(400μL)の混合液に過ヨウ素酸ナトリウム(5.23mg、0.02mmol)を溶解させ、化合物4(147mg、0.02mmol)に滴下して加え、1時間攪拌した。反応後、ジクロロメタンを用いて抽出し、硫酸ナトリウムにより脱水し、エバポレーターにより反応物を濃縮した。1,4-ジオキサン5mLに反応物を溶解させ、凍結乾燥を行った。凍結乾燥後、化合物5を収率45%で得た。
GPC Mn7849,Mw/Mn=1.05
【0056】
例4: 化合物5を用いた分岐型PEG化タンパク質の合成
リゾチーム1.5mgをpH10.35(0.05mM)の炭酸バッファー150μLに溶解させた。この溶液70μLを、化合物5を4.0mg(リゾチームに対し5倍当量)が入ったエッペンに入れ、さらにpH10.35(0.05mM)の炭酸バッファー600μLを加え、室温にて36時間静置させ反応させた。反応後の溶液をHPLCにて解析し、PEG化リゾチームのピークを分取し脱塩カラムにて精製した。
HPLCにより得られたPEG化リゾチーム含有画分を分取し、SDS-PAGEにより解析した結果を、図4に示す。
【0057】
例5: モデル合成
合成した分岐型PEG化合物とアミノ基の結合部位の構造を解析するため、上記の両化合物5と同様に合成した分岐型PEG(約5kDa)と2-アミノエタノールを反応させ、構造解析を行った。MALDI-TOF MSの結果より以下の反応スキームで示されるようにアミノ基と分岐型PEGが結合していることがわかった。
【0058】
【化10】
JP0005999659B2_000011t.gif

【0059】
計算値(n+m=98):4567.408[M+H]
実験値:4569.961[M+H]
【0060】
試験例1: PEG化リゾチームの活性の評価
この試験例は、上記の例2の方法で得られた分岐型PEG(10kDa)化リゾチーム(本発明例)と従来のN-ヒドロキシスクシンイミド活性化エステルPEG(日油株式会社:ME-050HS;比較例)をニワトリリゾチーム(分子量約14.3kDa)に対して5倍当量加え0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)中、4℃において3時間反応させて合成し、単離精製して得られた単鎖PEG(5kDa)化リゾチーム(コントロール)との活性を未PEG化リゾチームの活性の相対的な残存活性について対比評価するものである。
【0061】
試験は、基質として、ミクロコッカス・リゾディクティカス(Micrococcus lysodeikticus)を用い、基質0.24mgを含む66mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.2)800μLにPEG化リゾチーム(0.8μg)及びウシ血清アルブミン(20μg)を含む66mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.2)を200μL加え450nmの吸収を5分間測定し当該基質の加水分解活性を測定した。結果を、図3のグラフに示す。図3から、コントロールのPEG化リゾチームは直鎖PEGが一つ結合するだけで活性が大きく失われ、本来の活性のおよそ1%となるのに対し、本発明に従う分岐型PEG化により得られるPEG化リゾチームのでは、有意に高いリゾチーム活性が残存していることが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、例えば、アミノ基を有する各種生物活性化合物を分岐ポリエチレングリコールで、アミノ基の陽荷電性を変化させることなく効果的に修飾することができる機能化ポリエチレングルコールを提供できる。したがって、本発明は限定されるものではないが医薬製造業で利用できる。
図面
【図1】
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【図2】
1
【図3】
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【図4】
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