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明細書 :トリブロックコポリマー及びその使用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6004449号 (P6004449)
登録日 平成28年9月16日(2016.9.16)
発行日 平成28年10月5日(2016.10.5)
発明の名称または考案の名称 トリブロックコポリマー及びその使用
国際特許分類 C08F   8/32        (2006.01)
C08F 293/00        (2006.01)
C08L  53/00        (2006.01)
C08F 112/14        (2006.01)
A61K  31/787       (2006.01)
A61P   1/02        (2006.01)
A61P  39/06        (2006.01)
C08G  65/326       (2006.01)
FI C08F 8/32
C08F 293/00
C08L 53/00
C08F 112/14
A61K 31/787
A61P 1/02
A61P 39/06
C08G 65/326
請求項の数または発明の数 8
全頁数 17
出願番号 特願2013-555297 (P2013-555297)
出願日 平成25年1月24日(2013.1.24)
国際出願番号 PCT/JP2013/051395
国際公開番号 WO2013/111801
国際公開日 平成25年8月1日(2013.8.1)
優先権出願番号 2012012279
優先日 平成24年1月24日(2012.1.24)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年1月25日(2016.1.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
発明者または考案者 【氏名】長崎 幸夫
【氏名】プア ミン・リー
【氏名】ションパトンピクンラット ペンナパー
【氏名】吉冨 徹
個別代理人の代理人 【識別番号】110000741、【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
審査官 【審査官】岡▲崎▼ 忠
参考文献・文献 特開2011-184429(JP,A)
特表2007-520260(JP,A)
国際公開第2009/133647(WO,A1)
調査した分野 C08F 8/00-8/50
112/00-112/36
293/00
A61K 31/00-31/60
A61P 1/00-1/18
39/00-39/06
C08L 53/00-53/02
C08G 65/00-65/48
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(II)
【化1】
JP0006004449B2_000009t.gif
式中、
1は、独立して、-S-(CH2c-S-(CH2cCO--(CH2cS-、-CO(CH2cS-から選ばれ、ここでcは1ないし5の整数であり、
2は、独立して、-C1-6アルキレン-NH-(C1-6アルキレン)q-であり、ここでqは0または1の整数であり、そして
Rは、独立して、Rの総数nの少なくとも50%が2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル-4-イル、2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシル-3-イル、2,2,5,5-テトラメチルピロリン-1-オキシル-3-イル及び2,4,4-トリメチル-1,3-オキサゾリジン-3-オキシル-2-イル、2,4,4-トリメチル-1,3-チアゾリジン-3-オキシル-2-イル及び2,4,4-トリメチル-イミダゾリンジン-3-オキシル-2-イルから選ばれる環状ニトロキシドラジカル化合物の残基を表し、存在する場合には、残りのRが水素原子、ハロゲン原子またはヒドロキシ基であり、
mは、20~5,000の整数であり、そして
nは、独立して、3~1,000の整数である、
で表され、かつ、
水性媒体中において、ポリイオンコンプレックスミセルの形態にあるポリイオンコンプレックスを数平均分子量5000のポリアクリル酸と形成する
ことを特徴とするトリブロックコポリマー。
【請求項2】
Rが、次式
【化2】
JP0006004449B2_000010t.gif
式中、R’はメチル基である、
で表される基から選ばれ、Rの総数nの少なくとも80%を前記式で表される基が占める、
請求項記載のトリブロックコポリマー。
【請求項3】
請求項1または2に記載のトリブロックコポリマーおよびポリアニオンを含むポイオンコンプレックスであって、水性媒体中においてポリイオンコンプレックスミセルの形態にあることを特徴とするポリイオンコンプレックス
【請求項4】
ポリアニオンが、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスルホン酸、DNA、RNAおよびアニオン性蛋白質から選ばれる請求項に記載のポリイオンコンプレックス。
【請求項5】
ポリアニオンが、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸またはポリスルホン酸である請求項3または4に記載のポリイオンコンプレックス。
【請求項6】
請求項3~5のいずれかに記載のポリイオンコンプレックスと生理学的に許容され得る希釈剤または賦形剤を含む組成物。
【請求項7】
請求項3~5のいずれかに記載のポリイオンコンプレックス有効成分として含む生体内局所の炎症を抑制するための製薬学的製剤
【請求項8】
生体内局所が、歯周ポケット、癌病巣部および関節炎の発症部位から選ばれる請求項に記載の製薬学的製剤
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、トリブロックコポリマーに関し、より具体的には、環状ニトロキシドラジカルをペンダント基として有する2つのポリマーブロックとそれらを両端に共有結合したポリ(エチレングリコール)のブロックを含むトリブロックコポリマー、ならびに当該トリブロックコポリマーを活性成分として含む生体適用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
活性酸素種(ROS)は、体内で、脂質、蛋白質、糖、核酸などを酸化変性させ、細胞機能を障害する。通常、生体内では酸化-抗酸化(レドックス)のバランスを厳密に調節しているが、このROSが過剰に生成されると、酸化-抗酸化因子のバランスが酸化の方向に傾く。この状態のことを「酸化ストレス」といい、様々な疾患の原因または誘因になることが知られている。実際に、体内の酸化ストレスが増加すると、アルツハイマーやパーキンソン病などの神経難病、動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞、腎不全、糖尿病、癌など、さまざまな病気を発症することが明らかとなっている。このため、酸化ストレス障害を効果的に治療できるデバイスの開発が求められている。
【0003】
特に、近年、歯周病が引き起こす酸化ストレスが全身の疾患に対して大きな影響を与えていることが明らかになりつつある。このような特定の体内局所において、低分子または高分子化ROS消去剤を用いた治療が考えられるものの、これらのROS消去剤は歯周ポケットをはじめとする特定の体内局所から簡単に除去されるため治療効果が低いことが問題であった。このような特定の体内局所の疾患、例えば歯周病を効果的に治療し、全身疾患への波及を防ぐにはi)当該局所、例えば歯周ポケットに容易に注入が可能であり、ii)注入された薬剤が長期にわたって当該局所、例えば歯周ポケット内に滞留し、継続的効果を示すことに加え、iii)エネルギー産生に関係する「善玉活性酸素」を消去することなく安全である。という三つのポイントをクリアしなければならない。
【0004】
これまで本発明者らは触媒的に活性酸素を消去するニトロキシドラジカルをナノ粒子に封入し、静脈投与あるいは経口投与用ナノ治療薬として検討を進め、癌や虚血性疾患、腸疾患に有効であることを示してきた(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、参照)。特に炎症や癌など、pHの低下している疾病部位で崩壊し、抗酸化能を発揮するナノ粒子の設計は安全で高い効果を発揮している。これまでのナノ粒子の役割はこのように、「安全に薬物を運ぶ」と言う大きな使命を果たし、効果が認められてきた。
【0005】
しかしながら、上述したように、体内局所に滞留し、継続的効果を示し、局所以外には実質的に作用しない手段を提供することも必要であろう。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】WO2009/133647
【特許文献2】特開2011-078706
【特許文献3】特願2010-28199
【特許文献4】特願2010-211826
【特許文献5】特願2010-260471
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明の目的は、高分子化薬剤またはそのナノ粒子による生体処置に際して安全性を向上することのみならず、特定の生体内局所に滞留する新規な材料を提供することにある。本発明者等は、このような材料として、特定の生体内局所およびその周囲環境に応答して高分子化薬剤またはナノ粒子がゲル化する材料を開発の対象とした。
【0008】
こうして、本発明者等は、一定の活性薬剤残基、特に、活性薬剤残基とポリカチオン荷電性のペンダント、を含有するポリマーブロック2個とそれらにはさまれたポリ(エチレングリコール)ブロックを含むA-B-A型のトリブロックコポリマーが、上記の生体内局所またはその周囲環境に応答してゲル化し、局所で所望の活性を示すことを見出した。また、活性薬剤残基を有するが、ポリイオン荷電性でないペンダント基を含有する場合のトリブロックコポリマーも当該技術分野で利用できることを見出した。
【0009】
したがって、上記課題を解決するための手段として、ここに、一般式(I)
CNR-PEG-CNR (I)
式中、
CNRは、独立して、少なくとも1つのイミノ基またはエーテル結合を有する連結基を介してポリマー主鎖に結合する環状ニトロキシドラジカルをペンダント基の一部として含有する反復単位を含むポリマーセグメントであり、
PEGはポリ(エチレングリコール)を含むセグメントである、
で表されるトリブロックコポリマーまたはその塩を開示する。
【0010】
概括的には、前記環状ニトロキシドラジカルが、o-もしくはp-フェニレン-(C1-6アルキレン-NH)-(C1-6アルキレン)またはo-もしくはp-フェニレン-(C1-6アルキレン-O)-(C1-6アルキレン)で表され、ここで、pは1~3の整数であり、qは0または1の整数である、の連結基を介してポリマー主鎖に結合しており、かつ、限定されるものではないが、環状ニトロキシドラジカルが、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル-4-イル、2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシル-3-イル、2,2,5,5-テトラメチルピロリン-1-オキシル-3-イル及び2,4,4-トリメチル-1,3-オキサゾリジン-3-オキシル-2-イル、2,4,4-トリメチル-1,3-チアゾリジン-3-オキシル-2-イル及び2,4,4-トリメチル-イミダゾリンジン-3-オキシル-2-イルからなる群より選ばれ、
ここで、ポリマー主鎖が重合性不飽和二重結合に由来し、当該主鎖にフェニレンの未結合末端が結合していることを特徴とするトリブロックコポリマーまたはその塩が提供される。
上記連結基は、o-もしくはp-フェニレン-(C1-6アルキレン-NH)-(C1-6アルキレン)が好ましい。このような連結基を有するトリブロックコポリマーまたはその塩は一定の酸性水中でカチオン荷電性を示し当該ポリマーに追加の機能を付与する。
【0011】
より具体的な態様の本発明として、
一般式(II)
【0012】
【化1】
JP0006004449B2_000002t.gif

【0013】
式中、
は、独立して、単結合、-S-(CH-、-S-(CHCO-、-(CHS-、-CO(CHS-、からなる群より選ばれ、ここでcは1ないし5の整数であり、
は、独立して、-C1-6アルキレン-NH-(C1-6アルキレン)-または-C1-6アルキレン-O-(C1-6アルキレン)-であり、ここでqは0または1であり、そして
Rは、独立して、Rの総数nの少なくとも50%が2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル-4-イル、2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシル-3-イル、2,2,5,5-テトラメチルピロリン-1-オキシル-3-イル及び2,4,4-トリメチル-1,3-オキサゾリジン-3-オキシル-2-イル、2,4,4-トリメチル-1,3-チアゾリジン-3-オキシル-2-イル及び2,4,4-トリメチル-イミダゾリンジン-3-オキシル-2-イルからなる群より選ばれる環状ニトロキシドラジカル化合物の残基を表し、存在する場合には、残りのRが水素原子、ハロゲン原子またはヒドロキシ基であり、
mは、20~5,000の整数であり、そして
nは、独立して、3~1,000の整数である、
で表されるトリブロックコポリマーまたはその塩を提供する。
【0014】
当該トリブロックコポリマーの複数の分子は、非荷電状態では水中でCNR部をコアーとし、一方でPEG部をシェル部とするように会合した分子集合体、所謂、ポリマーミセルを形成する。したがって、かような集合体を形成する際に、疎水性の低分子薬剤を共存させることにより、これらの薬剤をコアー部に封入することができることから、例えば、薬剤のデリバリー用キャリヤーとして使用できる(必要があれば、一般的な高分子界面活性剤の挙動を参照されたい。)。また、連結基中にイミノ基を含有するトリブロックコポリマーは、酸性水性媒体中でポリカチオンを形成し、適当なアニオンとのゲルを形成する目的で使用できる。このようなゲル組成物は、本発明の別の態様でもあり、活性酸素の消去を必要とする生体内局所に滞留させるための都合よく使用できる。
【0015】
<発明の記述>
本願発明にいう、ペンダント基は、当該技術分野で一般に認識されているとおりの、ある官能基を持った側鎖を意味する。具体的には、ペンダント基は、o-もしくはp-フェニレン-(C1-6アルキレン-NH)-(C1-6アルキレン)-またはo-もしくはp-フェニレン-(C1-6アルキレン-O)-(C1-6アルキレン)(ここで、pは1~3の整数であり、qは0または1の整数である)の連結基に、その記載されている右末端において環状ニトロキシドラジカル残基が共有結合している基である。より具体的には、上記一般式(II)の-フェニレン-(C1-6アルキレン-NH)-(C1-6アルキレン)-Rまたは-C1-6アルキレン-O-(C1-6アルキレン)-Rで表される側鎖を参照すれば、本発明にいうペンダント基をより明瞭に理解できるであろう。このようなペンダント基が結合する主鎖としては、限定されるものではない。本発明において、残基とは、それぞれ対応する化合物から水素原子が1個除去された状態にある基を意味し、例えば、典型的な環状ニトロキシドラジカルにあっては、一般式(II)のRについて定義する基を参照できる。
こうして、ペンダント基の好ましい態様のものとしては、前記環状ニトロキシドラジカルが、o-もしくはp-フェニレン-C1-6アルキレン-NH-(C1-6アルキレン)-(ここで、qは0または1である)の連結基を介してポリマー主鎖に結合しており、かつ、環状ニトロキシドラジカルが、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル-4-イル、2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシル-3-イル、2,2,5,5-テトラメチルピロリン-1-オキシル-3-イル及び2,4,4-トリメチル-1,3-オキサゾリジン-3-オキシル-2-イル、2,4,4-トリメチル-1,3-チアゾリジン-3-オキシル-2-イル及び2,4,4-トリメチル-イミダゾリンジン-3-オキシル-2-イルからなる群より選ばれる。
【0016】
当該主鎖にフェニレンの未結合末端が結合していることを特徴とするトリブロックコポリマーまたはそのポリカチオンにおいて、「フェニレンの未結合末端」とは、o-もしくはp-フェニレンのC1-6アルキレンが結合している位置と反対側の末端を意味する。また、本願明細書において、結合という場合、他に特記しない限り、共有結合を意味する。
【0017】
上述のとおり、ポリマー主鎖は本発明の目的に沿う限り限定されないが、好ましくは、重合性不飽和二重結合を有する、例えば、置換エチレンのような不飽和二重結合を有する重合性モノマーのラジカル重合により形成される主鎖を意味する。このような主鎖の具体的なものとしては、上記特許文献1に記載のものを挙げることができる。
【0018】
さらに好ましいトリブロックコポリマーは、一般式(II)
【0019】
【化2】
JP0006004449B2_000003t.gif

【0020】
式中、
は、独立して、単結合、-S-(CH-、-S-(CHCO-、-(CHS-、-CO(CHS-、からなる群より選ばれ、ここでcは1ないし5の整数であり(なお、単結合に続く前者の2つはそれらが記載されている方向性で結合される式中の左側のLに相当し、後者の2つはそれらが記載されている方向性で結合される式中の右側のLに相当する)、
は、独立して、-C1-6アルキレン-NH-(C1-6アルキレン)-または-C1-6アルキレン-O-(C1-6アルキレン)-であり、ここでqは0または1であり、そして
Rは、独立して、Rの総数nの少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは約100%が2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル-4-イル、2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシル-3-イル、2,2,5,5-テトラメチルピロリン-1-オキシル-3-イル及び2,4,4-トリメチル-1,3-オキサゾリジン-3-オキシル-2-イル、2,4,4-トリメチル-1,3-チアゾリジン-3-オキシル-2-イル及び2,4,4-トリメチル-イミダゾリンジン-3-オキシル-2-イルからなる群より選ばれる環状ニトロキシドラジカル化合物の残基を表し、存在する場合には、残りのRが水素原子、ハロゲン原子またはヒドロキシ基であり、
mは、20~5,000、好ましくは、20~1000、より好ましくは50~200の整数であり、そして
nは、独立して、3~1,000、好ましくは、3~100、より好ましくは3~50の整数である、
で表される。
【0021】
1-6アルキレンは、具体的には、限定されるものではないが、メチレン、1,2-プロパンジイル、1,3-プロパンジイル、1,4-ブタンジイル、等の対応するアルキルのジイル基を挙げることができる。
【0022】
R基の環状ニトロキシドラジカルは、好ましくは、次式
【0023】
【化3】
JP0006004449B2_000004t.gif

【0024】
式中、R’はメチル基である、
で表される基を挙げることができる。上記の最初の式で表される残基が、以下で、TEMPOと略称されることのある基である。
【0025】
このようなトリブロックコポリマーは、主鎖または主鎖とペンダント基の一部を有するトリブロックコポリマーの前駆体を準備し、次いで、当該前駆体に環状にトロキシドラジカル残基を導入することにより都合よく製造することができる。また、別法では、各ブロックをそれぞれ独立して準備し、次いで、それらを目的のトリブロックコポリマーを形成するように結合してもよい。典型的な製造方法は、後述する実施例に示すが、両末端を反応可能に修飾したポリ(エチレングリコール)の末端にCNRの前駆体となる得るポリマーセグメントを結合し、または当該両末端から成長させた後、少なくとも1つイミノ基またはエーテル結合を有する連結基を介して結合されている環状ニトロキドラジカルを導入することにより実施できる。上記特許文献1には、CNRに相当するポリマーブロックとPEGに相当するポリマーブロックを含むジブロックコポリマーの製造方法が記載されているが、一旦、本発明に従うトリブロックコポリマーの前駆体を生成したら、本発明にいうペンダント基を完成させる方法は、特許文献1に記載の方法に習うことができる。
【0026】
こうして製造したトリブロックコポリマーの中、ペンダント基にイミノ基(-NH-)を有するものは、適当な無機または有機の酸と塩を形成し得る。かような酸としては、限定されるものでないが、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸等の無機酸、酢酸、蓚酸、メタンスルホン酸等の有機酸を挙げることができる。また、当該イミノ基を有するトリブロックコポリマーはイミノ基に起因し、酸性の水性媒体中でカチオンに荷電可能であり、ポリカチオンとなり得る。したがって、当該ポリカチオンはアニオン性基を1個またはそれ以上有する化合物またはポリアニオンとイオンコンプレックスを形成できる。このような化合物としては、酵素、例えばエラスターゼ、が挙げられ、ポリアニオンとしては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスルホン酸、DNA、RNA、アニオン性蛋白質、等が挙げられる。
【0027】
理論により、拘束されるものではないが、このとき当量のポリアニオンとポリカチオンからなるポリイオンコンプレックスは水性媒体中で疎水化して、親-疎水性ポリマーミセルのコアーとなり、水溶性のPEGはループ状に表層を形成するシェルとなり、図1の概念図から理解できるような、所謂、フラワーミセルをもたらす。このイオンコンプレックスは塩濃度と温度に敏感であるので、例えば、温度37℃、イオン強度150mMの体液に触れると壊れ、粒子間での架橋が生じてゲル化する。上記トリブロックコポリマーは、ポリカチオン部に環状ニトロキシドラジカルを導入しているため、ゲル化とともに環状ニトロキシドラジカル部分を表面に露出することにより、所謂、悪玉活性酸素を消去するように作用するものと理解できる。
一方、ペンダント基にエーテル結合(-O-)を有するトリブロックコポリマーは、水中で、CNRセグメントに相当する部分が疎水性を示し、ポリイオンコンプレックスの形成を伴うことなく、それら自他疎水性のコアーとなり、水溶性のPEGはループ状に表層を形成するシェルとなることにより、図1の概念図に示されるような、所謂、フラワーミセルを形成する。上述したとおり、このような疎水性のコアーには、疎水性の低分子薬剤を封入することができる。したがって、環状ニトロキシドラジカル部分の悪玉活性酸素を消去するように作用を有したまま、限定されるものでないが、任意の難水溶性薬剤、例えば、イホスファミド、シクロホスファミド、ダカルバジン、テモゾロミド、ニムスチン、ブスルファン、メルファラン、エノシタビン、カペシタビン、カルモフール、ゲムシタビン、シタラビン、テガフール、テガフール・ウラシル、ネララビン、フルオロウラシル、フルダラビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、メトトレキサート、イリノテカン、エトポシド、ソブゾキサン、ドセタキセル、ノギテカン、パクリタキセル、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンブラスチン、アクチノマイシンD、アクラルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ピラルビシン、ブレオマイシン、ぺプロマイシン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン、ネダプラチン等の当該技術分野で公知の各種抗腫瘍性物質、ムコスタ(レバミピド)及びその類延体、ビタミンE、β-カロテン、ユビキノン(コエンザイムQ)、ビリルビン、カテキン、レスベラトール、タンニン、エブセレン、アミノステロイド、プロブコール、ビタミンE類縁化合物、エイコサノイド代謝阻害薬、カテノロイド、レチノイド、ピペリン、等の水難溶解性の抗酸化剤、ならびにビタミンE(アスコルビン酸)、グルタチオン、フラボノイド、尿酸、等の水溶性抗酸化剤、ならびにスーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、セルロプラスミン、メタロチオネイン、チオレドキシン、等のタンパク質性抗酸化剤、ならびに白金コロイド、フラーレン、等の粒子状抗酸化剤のデリバリー用キャリヤーとして使用できる。
【0028】
前記のトリブロックコポリマーから形成されるゲルまたはポリイオンコンプレックスを含む組成物は、生理学的に許容され得る希釈剤、例えば、滅菌水、鉱酸を含む酸性水溶液、生理食塩水、生理的に許容される緩衝剤を含む溶液等または賦形剤、例えば、ソビトール、デキストリン、ブドウ糖、マンニトール、アミノ酸(例えば、グリシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、グルタミン酸等)等を含むことができる。
当該組成物は、炎症を惹起する活性酸素の消去伴う機序またはそれ以外の機序を介して炎症を抑制することができる。かような炎症は、限定されるものでないが、脳梗塞、心筋梗塞、急性・慢性腎不全、アルツハイマー病、パーキンソン病、慢性閉塞性肺疾患、糖尿病、動脈硬化、肝炎、消化管炎症等を挙がることができる。また、当該組成物は生体内局所での流動性を調整できるとともに、その場に滞留できるように調製できる。本発明者等が注視している生体内局所としては、限定されるものではないが、歯周ポケット、癌病巣部、関節炎、等を挙げることができる。
【0029】
こうして、本発明は、水性媒体(滅菌水、酸または緩衝剤を、さらに必要により、食塩等を含む)、好ましくは、pH3~10、より好ましくは、pH4~8、さらに好ましくはそれらの酸性領域にある、水性媒体と上記のトリブロックコポリマーまたはそのポリカチオンを含むゲルゲルを形成するための組成物も提供する。また、当該組成物は、活性酸素の消去剤として使用でき、特に、生体局所滞留性を利用して、活性酸素の消去を必要とする生体内に滞留されるための組成物として提供できる。
さらに、炎症を抑制することが必要な患者に当該組成物を投与(静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、等の経路による)することにより、炎症を予防または治療することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のトリブロックコポリマーがフラワーミセルを形成し、適当な環境下で生体内局所にインジェクタブルゲルを形成する概念図である。
【図2】製造例1で得られたPCMS-b-PEG-b-PCMSトリブロックコポリマーのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)測定とNMRスペクトル測定の結果を表す図である。
【図3】製造例2で得られるPMNT-b-PEG-b-PMNTトリブロックコポリマーのSEC測定NMRスペクトルの測定結果を表す図である。
【図4】上記PMNT-b-PEG-b-PMNTトリブロックコポリマー精製結果を表す図である。
【図5】製造例3で得られたポリイオンコンプレックスミセルのモル比とpH変化に対するポリイオンコンプレックスミセルの動的光散乱測定の結果である。
【図6】濃縮したポリイオンコンプレックスミセルのゲル化様子(r=1:1、60mg/ml)を表す図に代わる写真である。
【図7】ポリイオンコンプレックスミセル(r=1:1)の生体内ゲル化の観察図に代わる写真である。
【図8】ポリイオンコンプレックス注射後のマウスの体重変化を表すグラフである。
【図9】ポリイオンコンプレックスゲル(RIG)の局所滞留性を示す図面に代わるイメージング写真である。
【図10】ポリイオンコンプレックスゲル(RIG)の局所滞留性(定量化)についてのグラフ表示である。
【図11】カラギーナン誘発性炎症モデルに対するポリイオンコンプレックスゲル(RIG)の保護効果についてのグラフ表示である。

【実施例】
【0031】
以下に、具体例を挙げ、さらに本発明を具体的に説明するが、これらの具体例に本発明を限定することを意図するものではない。
【0032】
<製造例1> ポリクロロメチルスチレン-b-ポリエチレングリコール-b-ポリクロロメチルスチレン(PCMS-b-PEG-b-PCMS)トリブロックコポリマーの合成
PCMS-b-PEG-b-PCMSは、次の合成スキーム1に従い合成した:
【0033】
【化4】
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【0034】
両末端にチオール基を有しているポリエチレングリコール(HS-PEG-SH)(Mn:10000;0.115mmol,1.15g)を反応容器に加えた。次に、反応容器中を真空にした後、窒素ガスを吹き込む操作を3回繰り返すことにより、反応容器内を窒素雰囲気にした。反応容器に1.89mg/mLのアゾビスイソブチロニトリル/トルエン(0.115mmol/10ml)溶液とクロロメチルスチレン(8.63mmol,1.22mL)を加え、60℃まで加熱し、24時間攪拌した。反応混合物をポリクロロチルスチレンホモポリマーに対しての良溶媒であるジエチルエーテルを用いて3回洗浄操作を行った後、ベンゼン凍結乾燥を行い、白い粉体を得た。収量は、1.45mgであり、収率は91.6%であった。得られたPCMS-b-PEG-b-PCMsトリブロック共重合体のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)測定とNMRスペクトルの結果を図2に示す。
【0035】
<製造例2> 2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(TEMPO)を有するトリブロックコポリマーの合成
(1)式(II)におけるLが-CH-NH-であるトリブロックコポリマー(PMNT-b-PEG-b-PMNT)
反応容器に、PCMS-b-PEG-b-PCMS(Mn:13800;1.45g,0.105mmol)を加えた。次に、4-アミノ-TEMPO(2.34g,13.69mmol)を12mLのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、反応容器に加え、室温で24時間攪拌を行った。反応終了後、反応溶液を透析膜(Spectra/Por molecular weight cut-off size 3,500 Spectrum Medical Industries Inc.,Houston TX)中に加え、2Lのメタノールに対して透析を行った。メタノールは2時間ごとに8回交換し、エバポレーションを行い、ベンゼン凍結乾燥を行った。収率は、92.1%であった。
【0036】
1 NMR測定の結果より、クロロメチル基が100%反応し、TEMPOが導入されていることが認められた(図3)。またSECの結果は、副反応が生じず、PCMS-b-PEG-b-PCMSと同様のクロマトグラムを示すことが明らかとなった。さらに、SECを用いて分取し、各フラクションの電子スピン共鳴(ESR)シグナルを測定したところ、未反応アミノ-TEMPOのESRシグナルが消失したことから、未反応のアミノ-TEMPOが精製によって完全除去されていることが確認された(図4)。
(2)式(II)におけるL2が-CH2-O-であるトリブロックコポリマー
4-アミノ-TEMPOに代え、4-ヒドロキシ-TEMPOを用い、反応溶液にNaHを溶解したジメチルホルムアミド(DMF)を用いる他は、上記(1)に記載のものと同様な操作を繰返すことにより、目的のトリブロックコポリマーを製造する。
【0037】
<製造例3>ポリイオンコンプレックスミセルの設計
PMNT-b-PEG-b-PMNTトリブロックポリマーの粉末を0.1M HCl水溶液に溶解し、PMNT鎖のアミノ基を完全にプロトン化させ、水系の凍結乾燥を行い回収した。次に、PMNT-b-PEG-b-PMNTトリブロックポリマーとポリアクリル酸(PAA;Mn:5000)をそれぞれNaHPOバッファー(0.1M,pH6.28)に溶解し、濃度を5mg/mlにしたカチオンPMNT-b-PEG-b-PMNT水溶液とアニオンPAA水溶液を調製した。PAA水溶液にPMNT-b-PEG-b-PMNTトリブロックポリマー水溶液を攪拌しながら滴下し、ポリイオンコンプレックスミセルを調製した。ここで、PMNT-b-PEG-b-PMNTとPAAのモル比rが4:1、2:1、1:1、1:2となるように4つのポリイオンコンプレックスミセルを調製した(モル比r=[PAAの活性化されたカルボキシル基のモル数]/[PMNT-b-PEG-b-PMNTの活性化されたアミノ基のモル数])。得られたポリイオンコンプレックスミセルのゼータ電位を測定した(下記表1参照)。さらに、各モル比のポリイオンコンプレッスミセル溶液を5つのグループに分け、0.01M HCl/NaOHによりそれぞれのpHを4から8まで調整した。得られたポリイオンコンプレックスミセルの平均粒径を動的光散乱(DLS)測定により行ったところ、平均粒径が45~80nmの単峰性の粒子であることが確認された(図5参照)。
【0038】
【表1】
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【0039】
<製造例4>インジェクタブルゲルの設計
上記で調製した各モル比およびpHを有するポリイオンコンプレックスミセル(モル比r=4:1、2:1、1:1;pH4-8)溶液(5mg/ml)を遠心エバポレーションにより濃縮し、イオン強度を150mMに調整し、温度37℃の水浴中でゲル化実験を試験管反転法により検討した。イオン強度150mMかつ温度37℃の環境下で不可逆的ゲル化したポリイオンコンプレックスミセルのモル比に対するpH及び濃度の最適な条件を検討したところ、モル比rが4:1の場合が40mg/mlとpH5、モル比rが2:1の場合が50mg/mlとpH4-5、モル比rが1:1の場合が60mg/mlとpH5-6の条件でゲル化することを見出した(下記表2および図6参照)。
【0040】
【表2】
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【0041】
<試験1> 生体内でのゲル化の形成
製造例3にしたがい、PMNT-b-PEG-b-PMNTとPAAのモル比rが1:1のポリイオンコンプレックス(5mg/ml、9ml)を調製し、2つのグループに分けて0.1M HCl水溶液によりpHを5と6に調整し、遠心エバポレーションにより50mg/mlに濃縮した。濃縮した各pHのミセル溶液をマウスの左腿に100μl皮下注射したところ、マウスの体内でゲルの形成を確認し、また組織接着性を示した(表3、図7)。しかしながら、モル比rが2:1(pH4、5、6)の条件ではゲル化は確認されなかった。
【0042】
【表3】
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【0043】
<試験2> インジェクタブルゲルの毒性試験
またゲルの生体毒性評価実験において、モル比rが1:1、pH6、60mg/mlのポリイオンコンプレックスを調製し、10匹のマウスの左腿と右後足にそれぞれ100μlと50μlずつ皮下注射し、4週間にわたってマウスの体重変化を記録した。その結果、マウスの体重が徐々に増加し、生存率が100%であることが確認された(図8参照)。この結果から、本発明により開発されたインジェクタブルゲルの毒性が非常に低いことが示される。
【0044】
<試験3>インジェクタブルゲルの局所滞留性(L-band電子スピン共鳴法によるイメージング)
各群3匹のマウスを使用した。試験1で用いたニトロキシドラジカル含有ポリイオンコンプレックスミセル(PMNT-b-PEG-b-PMNTとPAAのモル比rが=1:1(RIG)、pH6、60mg/ml)の溶液を3匹のマウスの左後足に70μl皮下注射した。比較群として、3匹のマウスの右後足にそれぞれ低分子のニトロキシドラジカル化合物(4-aminoTEMPO;5.45mg/ml)、ニトロキシドラジカル含有高分子(PEG-b-PMNT両親媒性ブロック子ポリマーから透析法を用いて高分子ミセルを形成させたもの)のミセル溶液(RNP;60mg/ml)、および低分子の4-aminoTEMPOを物理的にニトロキシドラジカルなしのポリイオンコンプレックスミセルに内包させたものに混ぜた溶液(TEMPOの代わりにアミノエタノールを導入したポリマーを用いて形成させたTEMPOの含有されていないフラワーミセル(nRIG)と4-aminoTEMPOを混合し、そのままゲル化させることにより、ゲル中に4-aminoTEMPOを内包させることにより形成した。)(nRIG+4-aminoTEMPO;モル比r=1:1、pH6、60mg/ml)を、それぞれ、70μl注射した。投与直後のマウスを用いてL-bandの電子スピン共鳴法(ESR)によりマウスの足におけるニトロキシドラジカルの局所滞留性をイメージング化した。その結果、低分子の4-aminoTEMPO溶液は投与後に30分以内にマウスの足からESRシグナルが消失した。4-aminoTEMPOをミセル化したRNP溶液は少し滞留性が上がったものの、1時間でシグナルが消失した。同様に4-aminoTEMPOを混合したnRIG含有ゲルも拡散により1時間までしか滞留性が見られなかった。これらに対し、本発明にしたがうポリイオンコンプレックスミセル溶液を注射してマウスの足底内でRIGをゲル化させた結果、測定中の5時間の間ずっと強いESRシグナルが検出されていた。したがって、本発明にしたがうポリイオンコンプレックスミセルから形成されるゲルは優れた局所滞留性をもつことが確認された。当該イメージングを示す図面に代わる写真を添付する(図9参照)。
このように、非侵襲的なイメージングを用いる評価方法は、通常、薬剤残存量を評価したり、また酸化ストレス度合を評価することに適するものと認識されている。
【0045】
<試験4>インジェクタブルゲルの局所滞留性(X-band電子スピン共鳴法による定量化)
4つのグループ(4-aminoTEMPO、RNP、RIG、nRIG+4-aminoTEMPO)につき、各グループ3匹のマウス(n=3)を使用した。低分子のニトロキシドラジカル化合物である4-aminoTEMPO(5.45mg/ml)、ニトロキシドラジカル含有高分子ミセル溶液(RNP;60mg/ml)、ニトロキシドラジカル含有ポリイオンコンプレックスミセル(RIG:モル比r=1:1、pH6、60mg/ml)溶液、低分子の4-aminoTEMPOを物理的にニトロキシドラジカルなしのポリイオンコンプレックスミセル(nRIG+4-aminoTEMPO:モル比r=1:1、pH6、60mg/ml)に混ぜた溶液を50μlずつマウスの右後足に皮下注射した。投与後に異なる時間帯(0h、1h、3h、12h、24h、72h)においてマウスを解剖し、採取した右後足の組織に酸化剤のフェリシアン化カリウム(200mM)を入れてホモジナイズした溶液をX-band電子スピン共鳴法により各時間帯の局所滞留性を定量化した。結果を図10に示す。
低分子化合物(4-aminoTEMPO)および4-aminoTEMPO混合nRIGゲル(nRIG+4-aminoTEMPO)のほうでは1時間以内投与部位から拡散により消失したことが分かった。またTEMPO含有ジブロックポリマーから成る高分子ミセル(RNP)では12時間以内に投与部位から消失したのに対し、RIGは72時間後にも40%残存していることが明らかとなった。これらの結果から、RIGは優れた局所滞留性を示すことが改めて確認できた。
【0046】
<試験5> カラギーナン誘発性関節炎モデルに対するインジェクタブルゲルの保護効果
9つのグループ(対照(Control)、RIG、nRIG、Saline@Carr、RIG@Carr、nRIG@Carr、4-amino-TEMPO@Carr、RNP@Carr、nRIG+4-amino-TEMPO@Carr)につき、各5匹のマウス(n=5)を使用した。
試験した各グループは、それぞれ次の意味を有する:
Control:後述
RIG:TEMPO含有フラワーミセルを投与して、TEMPO含有ゲルが生体内で形成されたもの
nRIG:TEMPOが含有されていないフラワーミセルを投与して、TEMPOの含有されていないゲルが生体内で形成されたもの
Saline@Carr:生理食塩水を投与して18時間後にカラギーナンが投与されたもの
RIG@Carr:TEMPO含有フラワーミセルを投与して18時間後にカラギーナンが投与されたもの
nRIG@Carr:TEMPOが含有されていないフラワーミセルを投与して18時間後にカラギーナンが投与されたもの
4-amino-TEMPO@Carr:4-amino-TEMPOを投与して18時間後にカラギーナンが投与されたもの
RNP@Carr:TEMPO含有高分子ミセルを投与して18時間後にカラギーナンが投与されたもの
nRIG+4-amino-TEMPO@Carr:4-amino-TEMPOが内包されたTEMPO非含有フラワーミセルを投与して18時間後にカラギーナンが投与されたもの

まずマウスを6時間絶食させ、ホットプレートによる熱刺激試験(51℃)を用いる正常なマウスの後足の痛覚過敏を評価した。マウスがホットプレートの上で後足を舐めたり、引っ張ったり、震えたりするまでの時間をPaw Withdrawal Latencies(PWL)とした。そして、RIGゲルを形成するニトロキシドラジカル含有ポリイオンコンプレックスミセル(RIG;モル比r=1:1、pH6、60mg/ml)、nRIGゲルを形成するニトロキシドラジカルなしのポリイオンコンプレックスミセル(nRIG;モル比r=1:1、pH6、60mg/ml)、食塩水(Saline)、低分子ニトロキシドラジカル化合物溶液(4-aminoTEMPO;5.45mg/ml)、ニトロキシドラジカル含有高分子ミセル溶液(RNP;60mg/ml)、低分子の4-aminoTEMPOを物理的にニトロキシドラジカルなしのポリイオンコンプレックスミセル(nRIG+4-aminoTEMPO;モル比r=1:1、pH6、60mg/ml)に混ぜた溶液をマウスの右後足に50μlずつ皮下注射した。18時間後、Saline@Carr、RIG@Carr、nRIG@Carr、4-amino-TEMPO@Carr、RNP@Carr、およびnRIG+4-aminoTEMPO@Carrの各グループ(n=5)のマウスの右後足に5%カラギーナン(Carrageenan)懸濁液を50μl皮下注射した。Controlグループ(n=5)は何も投与しないグループにした。カラギーナン投与6時間後、再びホットプレートによる熱刺激試験を行った。炎症発生後のPWL時間を炎症発生前のPWL時間を引いた後のPaw Withdrawal latency(PWL)の時間差をグラフの縦軸に表す。この時間差が大きいほど、炎症が高いことを示している。そして、採取したマウスの右後足の組織をホモジナイズし、遠心分離により取った上澄みについて、好中球の浸潤の指標であるミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性及び炎症性サイトカイン量(TNF-αとIL-1β)をELISAキットにより測定した。結果を図11に示す。
図から、ニトロキシドラジカルを含有しないnRIGのみのグループでは、MPOの活性惹起が局所の足及び血中の両方において確認された。一方で、RIGグループはその活性化を有意に抑制した。これらの結果はRIG自身が炎症惹起を引き起こすことがないことを示唆する。また、Saline@Carr、nRIG@Carr、4-amino-TEMPO@Carr、RNP@Carr、nRIG+4-amino-TEMPO@Carrのグループではカラギーナンにより誘起されたMPO活性を有意に抑制することができなかったのに対して、RIG@CarrのグループではMPOの活性の有意な抑制が確認された。
同様な傾向として、RIGゲルは炎症性サイトカインであるTNF-αとIL-1βの発生も有意に抑制し、カラギーナン誘発の痛覚過敏を効果的に予防した。これらの結果から、RIGゲルが好中球やマクロファージの産生する活性酸素を効果的に消去していることを示唆する。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のトリブロックコポリマーは、生体内に注入することによりゲルを形成するための組成物の活性成分として利用できることのみならず、ポリマー中に環状ニトロキシドラジカルを担持しているので生体内活性酸素除去剤として使用できる。したがって、本発明は医薬製造業等で利用可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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