TOP > 国内特許検索 > 動作補助装置、及び動作補助装置の同調制御方法 > 明細書

明細書 :動作補助装置、及び動作補助装置の同調制御方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5761832号 (P5761832)
登録日 平成27年6月19日(2015.6.19)
発行日 平成27年8月12日(2015.8.12)
発明の名称または考案の名称 動作補助装置、及び動作補助装置の同調制御方法
国際特許分類 A61H   3/00        (2006.01)
A61B   5/11        (2006.01)
A61F   2/48        (2006.01)
B25J  11/00        (2006.01)
B25J  13/08        (2006.01)
FI A61H 3/00 B
A61B 5/10 310G
A61F 2/48
B25J 11/00 Z
B25J 13/08 Z
請求項の数または発明の数 9
全頁数 20
出願番号 特願2013-550360 (P2013-550360)
出願日 平成24年12月21日(2012.12.21)
国際出願番号 PCT/JP2012/083326
国際公開番号 WO2013/094747
国際公開日 平成25年6月27日(2013.6.27)
優先権出願番号 2011279362
優先日 平成23年12月21日(2011.12.21)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年6月23日(2014.6.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】橋本 稔
【氏名】涌井 康洋
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100088306、【弁理士】、【氏名又は名称】小宮 良雄
【識別番号】100126343、【弁理士】、【氏名又は名称】大西 浩之
審査官 【審査官】増山 慎也
参考文献・文献 特許第3930399(JP,B2)
調査した分野 A61H 3/00
A61B 5/11
A61F 2/48
B25J 11/00
B25J 13/08
特許請求の範囲 【請求項1】
装着者の屈曲可動部位に対応して配置される関節部、
前記関節部に接続されており、装着者に装着されるリンク、
前記関節部の動きを駆動するアクチュエータ、
装着者の屈曲可動部位の動作と前記関節部の動作との相互作用力を検出する相互作用力検出センサと、前記相互作用力検出センサの検出した前記相互作用力、及び関節角度センサの検出した関節角度に基づき前記屈曲可動部位の動作位相θ’hを推定する位相推定部と、により構成され、動作の位相θ’hを取得する位相取得部、
前記位相取得部の取得した前記屈曲可動部位の動作の位相θ’hを入力振動とする位相振動子モデルに基づいて、予め設定された目標位相差を維持しつつ装着者の屈曲可動部位の動作と前記関節部の動作とを同調させるための前記関節部の動作目標値を算出する目標値算出部、および
前記目標値算出部の算出した動作目標値に基づいて、前記アクチュエータを駆動する駆動制御部、を備えることを特徴とする動作補助装置。
【請求項2】
前記位相推定部が、前記相互作用力検出センサの検出した相互作用力λ、及び前記関節角度センサの検出した前記関節角度qにより、下記の式(1)で、前記装着者の屈曲可動部位のトルクτ’を推定し、
【数1】
JP0005761832B2_000020t.gif
(式(1)中、Mh、Ghは、それぞれ、人間の慣性項、重力項を示す。)
さらに前記式(1)を用いて、動作中の人間の最大トルクτ’h_maxと最小トルクτ’h_minを推定し、これらを下記の式(2)に代入し、推定したトルクτ’の振幅A’hを算出し、
【数2】
JP0005761832B2_000021t.gif
前記トルクτ’hと前記振幅A’hから極座標上の位相角のy座標を下記の式(3)により算出し、
【数3】
JP0005761832B2_000022t.gif
三平方の定理から下記の式(4)のように、x座標を算出して、
【数4】
JP0005761832B2_000023t.gif
下記の式(5)の極座標変換を行い、
【数5】
JP0005761832B2_000024t.gif
前記装着者の屈曲可動部位の動作位相θ’hを推定するものであることを特徴とする請求項1に記載の動作補助装置。
【請求項3】
前記目標値算出部が、下記の式(6)、式(7)の関係を有する位相振動子からなる数学モデルに基づいて、前記動作目標値として、前記関節部の駆動トルクを、式(7)のOutputにより算出することを特徴とする請求項1または2に記載の動作補助装置。
【数6】
JP0005761832B2_000025t.gif
【数7】
JP0005761832B2_000026t.gif
(式(6)中、ωa、θa、Kは、それぞれ前記関節部の固有振動数、位相角、同調ゲインを示し、θdは、前記目標位相差を示す。式(7)中、Aaと、θa0は、それぞれOutput波形の振幅と振動子の初期位相を示す。)
【請求項4】
前記駆動制御部が、前記目標値算出部の算出した動作目標値に基づいて、前記アクチュエータをフィードバック制御するものであることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の動作補助装置。
【請求項5】
装着者の屈曲可動部位に対応して配置される関節部と、前記関節部に接続されており、装着者に装着されるリンクと、前記関節部の動きを駆動するアクチュエータとを備え、装着者の動作を補助する補助装置の制御方法であって、
装着者の屈曲可動部位の動作位相θ’hを取得する位相取得ステップ、
前記位相取得ステップで取得された前記屈曲可動部位の動作位相θ’hを入力振動とする位相振動子モデルに基づいて、予め設定された目標位相差を維持しつつ装着者の屈曲可動部位の動作と前記関節部の動作とを同調させるための前記関節部の動作目標値を算出する目標値算出ステップ、および
前記目標値算出ステップで算出された動作目標値に基づいて、前記アクチュエータを駆動する駆動制御ステップ、を備えることを特徴とする同調制御方法。
【請求項6】
前記位相取得ステップが、
前記装着者の屈曲可動部位の動作と前記関節部の動作との相互作用力を検出する相互作用力検出ステップ、
前記関節部の関節角度を検出する関節角度検出ステップ、および
前記相互作用力検出ステップで検出した前記相互作用力、及び前記関節角度ステップで検出した前記関節角度に基づいて、前記装着者の屈曲可動部位の動作位相θ’hを推定する位相推定ステップ、によって構成されていることを特徴とする請求項5に記載の同調制御方法。
【請求項7】
前記位相推定ステップが、
前記相互作用力検出ステップで検出した相互作用力λ、及び前記関節角度ステップで検出した前記関節角度qにより、下記の式(1)で、前記装着者の屈曲可動部位のトルクτ’を推定するトルク推定ステップ、
【数8】
JP0005761832B2_000027t.gif
(式(1)中、Mh、Ghは、それぞれ、人間の慣性項、重力項を示す。)
さらに前記式(1)を用いて、動作中の人間の最大トルクτ’h_maxと最小トルクτ’h_minを推定し、これらを下記の式(2)に代入し、推定したトルクτ’の振幅A’hを算出するトルク振幅算出ステップ、
【数9】
JP0005761832B2_000028t.gif
前記トルクτ’hと前記振幅A’hから極座標上の位相角のy座標を下記の式(3)により算出するy座標算出ステップ、
【数10】
JP0005761832B2_000029t.gif
三平方の定理から下記の式(4)によりx座標を算出するx座標算出ステップ、および
【数11】
JP0005761832B2_000030t.gif
下記の(5)の極座標変換を行い、前記装着者の屈曲可動部位の動作位相θ’hを算出する位相変換ステップ、を備えるものであることを特徴とする請求項6に記載の同調制御方法。
【数12】
JP0005761832B2_000031t.gif

【請求項8】
前記目標値算出ステップで、下記の式(6)、式(7)の関係を有する位相振動子からなる数学モデルに基づいて、前記動作目標値として、前記関節部の駆動トルクを、式(7)のOutputにより算出することを特徴とする請求項6または7に記載の同調制御方法。
【数13】
JP0005761832B2_000032t.gif
【数14】
JP0005761832B2_000033t.gif
(式(6)中、ωa、θa、Kは、それぞれ前記関節部の固有振動数、位相角、同調ゲインを示し、θdは、前記目標位相差を示す。式(7)中、Aaと、θa0は、それぞれOutput波形の振幅と振動子の初期位相を示す。)
【請求項9】
前記駆動制御ステップで、前記目標値算出部の算出した動作目標値に基づいて、前記アクチュエータをフィードバック制御することを特徴とする請求項6~のいずれかに記載の同調制御方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、装着型の動作補助装置、及び装着型の動作補助装置の同調制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者を支援する介護福祉士の人材不足が問題となっている。そのため、福祉ロボットの研究開発が盛んに行われている(特許文献1)。福祉ロボットの一種である装着型の動作補助装置は、高齢者の日常生活支援として実用化が期待されている。
【0003】
こうした装着型動作補助具の制御方式の一つとして、人間と装置との協調運動を実現する同調制御という制御方式が提案されている(非特許文献1)。同調制御では、装置の人間に対する同調性を調節することができる。同調性を高めることにより装置が人間の動作タイミングに合わせる運動の補助に利用することができる。一方、同調性を低下させることにより、装置が人間を牽引する運動教示リハビリテーションとして利用することが期待される。これまでにこの同調制御によって装着者をより快適に運動させるよう補助する装着型運動支援装置が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】国際公開第2009/084387号
【特許文献2】特開2012-66375号公報
【特許文献3】特開2005-305615号公報
【0005】

【非特許文献1】張霞,「神経振動子を用いたモーションアシストのための同調制御」,信州大学大学院工学系研究科平成19年度修士論文
【非特許文献2】琴坂信哉,Strefan Schaal,”ロボットの打撃運動を生成する神経振動子のパラメータ学習”,第17回日本ロボット学会学術講演会予稿集,1999,Vol.3,p.3541-3547
【非特許文献3】青山元,近藤敏之,村田智,伊藤宏司,“位相振動子と力学系モデルの相互作用による歩行パターン生成”電子情報通信学会,2002,NC2001-155
【非特許文献4】伊藤宏司,“身体知システム論”,共立図書,2005
【非特許文献5】伊藤聡,湯浅秀男,羅志偉,伊藤正美,柳原大,“リズム運動の環境適応に関する数理的モデルについて“,計測自動制御学会論文集,vol34,No.9,p.1237-1245
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている装着型運動支援装置では、同調制御の運動パターンの生成に神経振動子の相互抑制モデルが用いられている(非特許文献2)。しかし、通常人間の脚のように多関節の対象を動作させる場合では、各振動子の間は一定の位相差を生じている。そのため、前記相互抑制モデルによるパターンでは、その同調はできても位相差を発生させることが困難であるという課題があった。また、前記相互抑制モデルを用いて動作パターンの生成を行った場合、振動入力に対して任意の出力波形を得るためには、10個近い数のパラメータを設定する必要があり、その調整が困難であるという課題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に対応するためなされたものであり、人間と動作補助装置との動作に任意の位相差を生じさせて動作させることを可能にする動作補助装置を提供することを目的とする。また、上記動作補助装置の制御を少ないパラメータ数で便に行える動作補助装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、上記課題を解決するための請求項1の動作補助装置は、装着者の屈曲可動部位に対応して配置される関節部、前記関節部に接続されており、装着者に装着されるリンク、
前記関節部の動きを駆動するアクチュエータ、装着者の屈曲可動部位の動作と前記関節部の動作との相互作用力を検出する相互作用力検出センサと、前記相互作用力検出センサの検出した前記相互作用力、及び関節角度センサの検出した関節角度に基づき前記屈曲可動部位の動作位相θ’hを推定する位相推定部と、により構成され、動作の位相θ’hを取得する位相取得部、前記位相取得部の取得した前記屈曲可動部位の動作の位相θ’hを入力振動とする位相振動子モデルに基づいて、予め設定された目標位相差を維持しつつ装着者の屈曲可動部位の動作と前記関節部の動作とを同調させるための前記関節部の動作目標値を算出する目標値算出部、および前記目標値算出部の算出した動作目標値に基づいて、前記アクチュエータを駆動する駆動制御部、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2の動作補助装置は、請求項に記載のものであり、前記位相推定部が、前記相互作用力検出センサの検出した相互作用力λ、及び前記関節角度センサの検出した前記関節角度qにより、下記の式(1)で、前記装着者の屈曲可動部位のトルクτ’hを推定し、
【数1】
JP0005761832B2_000002t.gif
(式(1)中、Mh、Ghは、それぞれ、人間の慣性項、重力項を示す。)
さらに前記式(1)を用いて、動作中の人間の最大トルクτ’h_maxと最小トルクτ’h_minを推定し、これらを下記の式(2)に代入し、推定したトルクτ’の振幅A’hを算出し、
【数2】
JP0005761832B2_000003t.gif
前記トルクτ’hと前記振幅A’hから極座標上の位相角のy座標を下記の式(3)により算出し、
【数3】
JP0005761832B2_000004t.gif
三平方の定理から下記の式(4)のように、x座標を算出して、
【数4】
JP0005761832B2_000005t.gif
下記の式(5)の極座標変換を行い、
【数5】
JP0005761832B2_000006t.gif
前記装着者の屈曲可動部位の動作位相θ’hを推定するものであることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の動作補助装置は、請求項1または2に記載のものであり、前記目標値算出部が、下記の式(6)、式(7)の関係を有する位相振動子からなる数学モデルに基づいて、前記動作目標値として、前記関節部の駆動トルクを、式(7)のOutputにより算出することを特徴とする。
【数6】
JP0005761832B2_000007t.gif
【数7】
JP0005761832B2_000008t.gif
(式(6)中、ωa、θa、Kは、それぞれ前記関節部の固有振動数、位相角、同調ゲインを示し、θdは、前記目標位相差を示す。式(7)中、Aaと、θa0は、それぞれOutput波形の振幅と振動子の初期位相を示す。)
【0011】
請求項に記載の動作補助装置は、請求項1~のいずれかに記載のものであり、前記駆動制御部が、前記目標値算出部の算出した動作目標値に基づいて、前記アクチュエータをフィードバック制御するものであることを特徴とする。
【0012】
請求項に記載の同調制御方法は、装着者の屈曲可動部位に対応して配置される関節部と、前記関節部に接続されており、装着者に装着されるリンクと、前記関節部の動きを駆動するアクチュエータとを備え、装着者の動作を補助する補助装置の制御方法であって、装着者の屈曲可動部位の動作位相θ’hを取得する位相取得ステップ、前記位相取得ステップで取得された前記屈曲可動部位の動作位相θ’hを入力振動とする位相振動子モデルに基づいて、予め設定された目標位相差を維持しつつ装着者の屈曲可動部位の動作と前記関節部の動作とを同調させるための前記関節部の動作目標値を算出する目標値算出ステップ、および前記目標値算出ステップで算出された動作目標値に基づいて、前記アクチュエータを駆動する駆動制御ステップ、を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項に記載の同調制御方法は、請求項に記載のものであり、前記位相取得ステップが、前記装着者の屈曲可動部位の動作と前記関節部の動作との相互作用力を検出する相互作用力検出ステップ、前記関節部の関節角度を検出する関節角度検出ステップ、および前記相互作用力検出ステップで検出した前記相互作用力、及び前記関節角度ステップで検出した前記関節角度に基づいて、前記装着者の屈曲可動部位の動作位相θ’hを推定する位相推定ステップ、によって構成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項に記載の同調制御方法は、請求項に記載のものであり、前記位相推定ステップが、前記相互作用力検出ステップで検出した相互作用力λ、及び前記関節角度ステップで検出した前記関節角度qにより、式(1)で、前記装着者の屈曲可動部位のトルクτ’を推定するトルク推定ステップ、さらに前記式(1)を用いて、動作中の人間の最大トルクτ’h_maxと最小トルクτ’h_minを推定し、これらを式(2)に代入し、推定したトルクτ’の振幅A’hを算出するトルク振幅算出ステップ、前記トルクτ’hと前記振幅A’hから極座標上の位相角のy座標を式(3)により算出するy座標算出ステップ、三平方の定理から式(4)によりx座標を算出するx座標算出ステップ、式(5)の極座標変換を行い、前記装着者の屈曲可動部位の動作位相θ’hを算出する位相変換ステップとを備えるものであることを特徴とする。
【0015】
請求項に記載の同調制御方法は、請求項6または7に記載のものであり、前記目標値算出ステップで、式(6)、式(7)の関係を有する位相振動子からなる数学モデルに基づいて、前記動作目標値として、前記関節部の駆動トルクを、式(7)のOutputにより算出することを特徴とする。
【0016】
請求項に記載の同調制御方法は、請求項6~のいずれかに記載のものであり、前記駆動制御ステップで、前記目標値算出部の算出した動作目標値に基づいて、前記アクチュエータをフィードバック制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る動作補助装置、及びその同調制御方法は、動作補助装置の出力を決定する運動パターン生成の際に用いる振動子モデルとして位相振動子モデルを採用して、装着者の動作を位相振動子の入力振動とし、人間の動作に対して任意の位相差を生じさせたパターンを生成することを可能にさせるものである。これにより、動作補助装置が、装着者の動作に対して任意の位相差を維持しながら同調して動作するよう同調制御することを可能にする。
【0018】
本発明に係る装着型動作補助装置、及びその制御方法によれば、簡便なパラメータ設定によって、動作補助装置の動作パターン生成を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】複数の位相振動子の接続を示すモデルの図である。
【図2】本発明における同調制御の概要図である。
【図3】装着者となる人体を示す図である。
【図4】図3に示す人体の脚部を一自由度膝関節モデルで表し、この一自由度膝関節モデルに本発明の動作補助装置の可動機構を装着した状態の使用状態を示す図である。
【図5】本発明の動作補助装置の電気系のブロック図である。
【図6】本発明の動作補助装置の機能を示すブロック図である。
【図7】本発明の動作補助装置の同調制御方法を示すフローチャートである。
【図8】同調制御シミュレーションの結果のトルク波形のグラフである。
【図9】同調制御シミュレーションの結果の関節角度のグラフである。
【図10】位相差調節シミュレーションの結果のトルク波形のグラフである。
【図11】K=0.1としたときの装置と装着者の位相の正弦波形である。
【図12】K=1.0としたときの装置と装着者の位相の正弦波形である。
【図13】K=5.0としたときの装置と装着者の位相の正弦波形である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明に係る装着型動作補助装置、及びその同調制御方法を実施するための形態について説明する。

【0021】
<位相振動子モデル>
最初に、位相振動子モデルについて説明する。位相振動子モデルは、単振動を行う振動子間に用いるパターン生成モデルである。位相振動子モデルは、他の振動子に対する同調や位相差の調製が可能であるため、多関節ロボットの各関節の運動パターン生成などに用いられる(特許文献3、非特許文献3-5)。これら既存の研究では、多関節ロボットの各関節の動作や、二足歩行用ロボットの左右の足の動作を制御するために位相振動子モデルによるパターン生成を行っている。一方、本発明は、人体へ装着する動作補助装置の動作において、装着者の動作を入力振動として位相振動子モデルによる動作パターン生成を行う制御方法であり、同一ロボット内での処理でない点で新規である。また、本発明は、装着者の身体の一部も一つの振動子であると仮定して、人体と装置の間での動作を、任意の位相差を維持しながら同調制御する点で新規である。

【0022】
図1に、複数の位相振動子の接続を示すモデルを示し、下記の式(8)に、位相振動子のモデル式を示す。
【数8】
JP0005761832B2_000009t.gif

【0023】
式(8)のうち、θは振動子の位相角を示し、ωは固有角振動数を示し、nは隣り合う振動子の数を示し、Kijは振動子i-j間に働く相互作用の強さを示す。右辺第二項が振動子間の相互作用項であり、これにより複数の振動子間で引き込みや同調が起こる。(8)式は、振動子iがn個の振動子と相互作用していることを表す式である。j(=1~n)は、周囲の振動子を表している。

【0024】
<同調制御の概要>
図2に、本発明による同調制御の概要の一例を示す。まず、装置の関節部(Each joint of Motion Assist)の動作と装着者(Human)の屈曲可動部位の動作との相互作用(Interaction)から生じる相互作用力(Interaction Torque)と、装置の関節角度(Joint Angle)とから、装着者のトルク(Expected Human’s Torque)を推定する。次に、推定された装着者のトルクから装着者の動作位相θ’hとしてトルクの位相θ’hを推定(EOM (Estimation Of Motion) of Human Model)する。次に、装着者の動作位相θ’hを、位相振動子(Phase Oscillator)の入力振動として位相振動子のモデル式に代入し演算する。位相振動子のモデル式により、装着者の動作に同調した出力として、目標トルクや目標角度などの動作目標値(Output)が算出される。この際、演算処理を行うモデル式において、入力に対する任意の位相差を生じさせることが可能になる。次に、この動作目標値に従って、装置の次の動作(Motion)を生成する。この一連の動作を繰り返すことにより、装置の動作を装着者の動作へ同調させる。

【0025】
<装着者の屈曲可動部位のモデル例>
図3に、装着者となる人体100を示す。ここでは、装着者の屈曲可動部位(関節)が一例として、膝関節である例を示す。人体100は、脚部(Human Leg)として、大腿部101、膝関節102、下腿部103を有している。図4では、図3に示す人体の脚部をモデル化した、一自由度膝関節モデル(Human Leg)を示している。同図では、この一自由度膝関節モデルに装着した状態の動作補助装置1の可動機構2を例示している。動作補助装置は、屈曲可動部位の動作の位相として、本モデルにおける装着者のトルクの推定値を元に、膝関節102(屈曲可動部位の一例)のトルク波形の位相を推定する。

【0026】
<動作補助装置の構成例>
図4に示す動作補助装置1の可動機構2は、関節部11、リンク12、リンク13、アクチュエータ21、相互作用力検出センサ22、関節角度センサ23、装着具15、及び装着具16を備えている。図に示す抵抗やピストンポンプは、装置1がヒトの足に負荷や駆動力を与えることを等価的に示したものであり、装置1の構成ではない。

【0027】
関節部11は、装着者の屈曲可動部位である膝関節102に対応して配置されるものである。この例では、膝関節102の自由度に対応させて、一自由度(一軸)で回転する関節部11を用いている。なお、手首のように多自由度で動く屈曲可動部位に動作補助装置を装着する場合、多自由度を有する関節部を用いることが好ましい。

【0028】
関節部11によって、リンク12とリンク13とが接続されている。これにより、関節部11を支点として、リンク12とリンク13とが回転するように動作可能になっている。リンク12は、大腿部101に沿わせて装着可能な長さで形成されており、大腿部101に固定するための装着具15を有している。装着具15は、例えばリンク12と大腿部101とを一緒に締めて固定するベルトである。リンク13は、下腿部103に沿わせて装着可能な長さで形成されており、下腿部103に固定するための装着具16を有している。装着具16は、例えばリンク13と下腿部103とを一緒に締めて固定するベルトである。なお、例えば椅子に座った状態の装着者に動作補助装置1を装着する場合のように、装着具15を備えなくても、装着者に対してリンク12の位置を固定することが可能であれば、リンク12が装着具15を有していなくてもよい。つまり、装着者の屈曲可動部位の動きと共に動くリンクが装着具を有していればよい。

【0029】
アクチュエータ21は、関節部11の動きを駆動するものである。アクチュエータ21は、一例として電動式のモータである。以下、アクチュエータ21をモータ21ともいう。アクチュエータ21は、後述する駆動制御部34により、回転速度や回転角、静止位置などの動作を制御される。アクチュエータ21に駆動されて関節部11が動き、リンク12とリンク13とが相対的に動く。モータ21には、適切な減速比の減速機を取り付けてもよい。

【0030】
相互作用力検出センサ22は、装着者の膝関節102の動作と関節部11の動作とによる相互作用力を検出するものであり、関節部11に設けられている。相互作用力検出センサ22として、この例ではトルクセンサを用いている。以下、相互作用力検出センサ22をトルクセンサ22ともいう。相互作用力検出センサ22として、力を検出する力センサ、力覚センサを用いて、トルクを算出するようにしてもよい。

【0031】
関節角度センサ23は、関節部11の関節角度を検出するものである。関節角度は、モータ21の回転角度から求めることができるので、モータ21の回転角度を検出するものであってもよい。本実施形態では、関節角度センサ23としてモータ21の回転角度を検出するエンコーダを用いている。以下、関節角度センサ23をエンコーダ23ともいう。

【0032】
図5に、動作補助装置1の電気系のブロック図を示す。

【0033】
動作補助装置1は、可動機構2、コンピュータ(PC)3、及びインタフェース回路4を備えている。前述したように、可動機構2には、モータ(Motor)21、トルクセンサ(Torque Sensor)22、及びエンコーダ(Encoder)23が備えられている。コンピュータ3は、可動機構2の動きを制御するためのものである。コンピュータ3は、内蔵するメモリに記憶されているプログラムに従って動作する。コンピュータ3として、同図に示すような本体とディスプレイとで構成される汎用的なコンピュータを用いてもよいし、CPU(中央処理演算回路)やプログラムを記憶するメモリ等を実装した基板、モジュールなどを用いて小型化してもよい。

【0034】
インタフェース回路4は、可動機構2とコンピュータ3とを接続するための回路である。インタフェース回路4は、一例として、トルクセンサ22の検出値を適切なレベルに増幅するアンプ(Amp)、そのアンプの出力をアナログ信号からデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換器(A/D)、モータードライバー(Motor Driver)、コンピュータ3が出力するモータ21駆動用のデジタル信号をアナログ信号に変換するデジタル/アナログ変換器(D/A)、及び、エンコーダ23の出力をコンピュータ3に入力するためのカウンター(Counter)を備えている。ここでは、A/D、D/A、及びCounterを備える汎用のインタフェースボード(Inter Face Board)をコンピュータ3の拡張カードスロットに実装して用いている。

【0035】
コンピュータ3及びインタフェース回路4を小型化して、可動機構2と一体型に構成してもよい。この場合、装置1が電池を内蔵して、電池で動作できるようにすることが好ましい。

【0036】
コンピュータ3がプログラムに従って動作することで、図6に示すように、位相推定部32、目標値算出部33、及び駆動制御部34として機能する。同図に示すように、位相取得部31は、トルクセンサ(相互作用力検出センサ)22、エンコーダ(関節角度センサ)23、及び位相推定部32によって構成されている。位相取得部31は、装着者の屈曲可動部位の動作の位相θ’hを取得する。位相推定部32は、トルクセンサ22の検出した相互作用力(トルク)、及びエンコーダ23の検出した関節角度に基づいて、装着者の屈曲可動部位の動作位相θ’hを推定する。目標値算出部33は、屈曲可動部位の動作位相θ’hを入力振動とする位相振動子モデルに基づいて、予め設定された目標位相差を維持しつつ、装着者の屈曲可動部位(膝関節102)の動作と関節部11の動作とを同調させるための関節部11の動作目標値を算出する。動作目標値は、一例として、関節部11の目標トルクや目標関節角度である。駆動制御部34は、目標値算出部33の算出した動作目標値に基づいて、モータ21を駆動する。

【0037】
<位相振動子モデルの同調制御への適用>
位相振動子のモデル式は、単振動を行う振動子間に用いるパターン生成モデルである。動作補助装置1の動作を生成する位相振動子と装着者との間での動作の同調を実現させるため、装着者も装置と同様の振動子に従い動作していると仮定し、装着者の屈曲可動部位の動作の位相を推定する。以下具体的に説明する。

【0038】
図7は、動作補助装置1の同調制御方法を示すフローチャートである。

【0039】
コンピュータ3(図5参照)は、相互作用力検出ステップS1で、トルクセンサ22から、装着者の屈曲可動部位の動作と関節部11の動作との相互作用力を検出する。又、コンピュータ3は、関節角度検出ステップS2で、エンコーダ23から、関節部11の関節角度を検出する。ステップS1、ステップS2は、何れを先に実行してもよいが、ほぼ同時に実行する。

【0040】
続いて、コンピュータ3は、トルク推定ステップS3で、装着者の屈曲可動部位(膝関節102)の動きのトルクτ’hを推定する。トルクτ’hは、下記の式(1)で表される推定式で算出する。
【数9】
JP0005761832B2_000010t.gif

【0041】
式(1)において、Mh、Gh、λは、それぞれ、人間の慣性項、重力項、相互作用力を示す。相互作用力はトルクセンサ22の検出値である。人間の慣性項や重力項については、既存の公知のデータベースから決定してもよいし、実測した値を用いてもよい。例えば、公知のデータベースとして、文献「阿江通良,湯海鵬,横井孝志,“日本人アスリートの身体部分慣性特性の推定”,バイオメカニズム11,(1992),pp.23-33」が挙げられる。装置装着時の屈曲可動部位(膝関節)の関節角度qと、関節部11の関節角度は等値であるとして、エンコーダ23の検出値で求めた関節角度をqとする。

【0042】
さらに、コンピュータ3は、トルク振幅算出ステップS4で、式(1)を用いて、動作中の人間の最大トルクτ’h_maxと最小トルクτ’h_minを求め、これを下記の式(2)に代入し、推定トルクの振幅A’hを求める。
【数10】
JP0005761832B2_000011t.gif

【0043】
式(2)において、最大トルクτ’h_max及び最小トルクτ’h_minは演算時の1周期前の動作の数値を用い、初期値は任意の値に設定する。

【0044】
続いて、コンピュータ3は、y座標算出ステップS5で、式(1)で求めたτ’hと式(2)で求めたA’hとから、極座標上の位相角のy座標を下記の式(3)により算出する。
【数11】
JP0005761832B2_000012t.gif

【0045】
次に、コンピュータ3は、x座標算出ステップS6で、三平方の定理から、下記の式(4)によりx座標を算出する。
【数12】
JP0005761832B2_000013t.gif

【0046】
次に、コンピュータ3は、位相変換ステップS7において、式(3),式(4)で算出したy座標、x座標を、下記の式(5)により極座標変換を行い、装着者の屈曲可動部位の動作(トルク)の位相(位相角)θ’hを求める。
【数13】
JP0005761832B2_000014t.gif

【0047】
このようにして、装着者の屈曲可動部位の動作の位相θ’hを推定取得できる。

【0048】
次に、コンピュータ3は、目標値算出ステップS8で、位相推定ステップ(ステップS1~S7)で取得された屈曲可動部位の動作の位相θ’hを入力振動とする位相振動子モデルに基づいて、予め設定された目標位相差を維持しつつ装着者の屈曲可動部位の動作と関節部11の動作とを同調させるための関節部11の動作目標値を算出する。

【0049】
動作目標値は、下記式(6)、式(7)の関係を有する位相振動子からなる数学モデルに基づいて算出する。

【0050】
先ず、式(8)の位相振動子モデルを基にした下記の式(6)で、関節部11の位相角を算出する。下記の式(6)に、位相θ’hを入力する。
【数14】
JP0005761832B2_000015t.gif
式(6)において、ωa、θa、Kは、それぞれ装置1の固有振動数、位相角、同調ゲインであり、θdは、装着者の屈曲可動部位の動きと装置1の関節部11の動きとの間の目標位相差を示す。

【0051】
コンピュータ3は、式(6)で求めた装置1の関節部11の位相角から、下記の式(7)で求められるOutputを動作目標値とする。この例においては、Outputの出力波形を、関節部11が発生する駆動トルクとする。
【数15】
JP0005761832B2_000016t.gif

【0052】
式(7)において、Aa、θa0は、それぞれ出力波形の振幅、振動子の初期位相を示す。また、式(7)の右辺第二項は、出力の初期値を0とするための項である。

【0053】
次に、コンピュータ3は、駆動制御ステップS9で、動作目標値に基づいて、アクチュエータ21を駆動制御する。具体的には、コンピュータ3は、関節部11が動作目標値Output波形の駆動トルクを発生するように、モータ21の動作パターンを生成して、モータ21を駆動する。

【0054】
駆動制御ステップS9では、動作目標値に基づいて、モータ21をフィードバック制御することが好ましい。

【0055】
コンピュータ3は、ステップS1~S9の一連の動きを繰り返す。

【0056】
なお、コンピュータ3(図5参照)は、相互作用力検出ステップS1、関節角度検出ステップS2、トルク推定ステップS3、トルク振幅算出ステップS4、y座標算出ステップS5、x座標算出ステップS6、位相変換ステップS7において、位相推定部32(図6参照)として動作し、目標値算出ステップS8において目標値算出部33(図6参照)として動作し、駆動制御ステップS9において、駆動制御部34として動作する。また、相互作用力検出ステップS1~位相変換ステップS7が、本発明における、装着者の屈曲可動部位の動作位相θ’hを取得する位相取得ステップに相当する。また、トルク推定ステップS3~位相変換ステップS7が、本発明における、相互作用力検出ステップS1で検出した相互作用力、及び関節角度検出ステップS2で検出した関節角度に基づいて、装着者の屈曲可動部位の動作位相θ’hを推定する位相推定ステップに相当する。

【0057】
なお、目標値算出ステップS8で、動作目標値として関節部11の駆動トルクの波形を算出する例について説明したが、動作目標値として関節部11の関節角度(目標角度)、又は関節部11の回転速度を算出するようにしてもよい。関節部11の駆動トルク、関節角度、回転速度は、相互に変換可能であるので、制御に適したパラメータを算出すればよい。

【0058】
本実施形態においては、装着者のトルクやトルクの位相は、装着者と装置との間の相互作用力や関節角度から演算により推定しているが、本発明の実施をするためには、トルクや位相の取得方法は特に制限されず、他の方法に適宜変更が可能である。例えば、装着者に直接センサを取り付けることにより、装着者の正確なトルクや位相を取得するようにしてもよい。この場合、装置に、測定者に取り付けるセンサを接続する。装着者に直接センサを取り付けて装着者のトルクを取得する場合、図7のフローチャートのステップS1~S4を省略でき、測定者に直接センサを取り付けて装着者の位相を取得する場合、ステップS1~S7を省略することができる。

【0059】
式(6)、式(7)で表される位相振動子の数学モデルに基づいて装置の動作パターンを生成する例について説明したが、位相振動子の数学モデルは他の数学モデルに基づくものを用いてもよい。

【0060】
動作補助装置1が、一自由度の関節部11を備える例について説明したが、複数の関節部を備えて各関節部がリンクで連結された動作補助装置に本発明を適用することができる。複数の関節部がリンクで連結される場合、関節部の接続数に対応した複数の位相振動子があるものと考え、式(8)に基づき、各位相振動子の影響を加算して、装着者の関節の動作の位相を算出すればよい。多自由度の関節部の場合も同様に加算して算出すればよい。

【0061】
<シミュレーションによる同調制御実験>
本発明の効果を確認するため、シミュレーションによる検証実験を行った。このシミュレーションにおいては、装置の装着者は自身の動作を常に維持するものとして、同調制御を行う動作補助装置と装着者との相互作用をシミュレートした。シミュレーションや後述する実機による同調制御実験では、慣性項、重力項として、前述した公知の文献「日本人アスリートの身体部分慣性特性の推定」に記載の日本人青年男性のデータを用いた。シミュレーションで用いた各数値は、人間の脚部の質量mh=3.0kg,長さlh=3.9×10-1m,装置の質量ma=1.0kg,長さla=3.5×10-1mとして、各係数Mh=1.5×10-1kg・m2/rad,Ma=4.1×10-2kg・m2/rad,Ch=0.1 kg・m2/s・rad,Ca=0.1kg・m2/s・rad,Gh=5.7N・m,Ga=1.7N・m,k1=263.6N・m/rad,k2=26.4N・m・s/radと設定した。

【0062】
<シミュレーション1>
シミュレーションは、図4のモデルで行った。また、下記の式(9)は、本モデルにおける運動方程式を示す。式(9)において、右辺第一項から、慣性項、粘性項、重力項、相互作用力項を示す。なお、このうち相互作用力項については、下記の式(10)を用いて導出する。(粘性係数は、上記の通り、Ch、Caとも0.1を用いた。)
【数16】
JP0005761832B2_000017t.gif
【数17】
JP0005761832B2_000018t.gif

【0063】
本シミュレーションにおいて、装着者は、あらかじめ設定したトルク波形を維持して周期運動を行うものとする。本シミュレーションにおいては、トルク波形の周波数は0.80Hz、振幅は0.80Nmに設定した。装着者は、目標軌道と現在角度からPD(Proportional - Derivative)制御でトルクを決定し、運動を行うものとする。また、このシミュレーションでは、装置が装着者のトルクを正確に推定できているものとし、装着者のトルク値をそのまま推定値に用いる。装置の振動子の固有角周波数ωaを、5.7rad/s(周波数0.90Hz)、初期位相θa0を1.5πrad、出力するトルク波形の振幅Aaを1.0Nmに設定した。前述した同調制御の流れに従い、装置は装着者のトルクの推定値を元に位相振動子の出力を得るものとする。本実験においては、装置の目標位相差θdは0radとし、同調ゲインを0.1、1.0、5.0とした場合の相互作用についてそれぞれシミュレーションを行った。

【0064】
図8は、シミュレーションの結果のトルク波形のグラフを示す。同図に示す波形のうち、実線で表される波形は装着者(膝関節102)の位相θ’hの正弦波形を示し、破線で表される波形は、それぞれの同調ゲインにおける装置(関節部11)の位相θaの正弦波形を示す。同図から、同調ゲインが小さいほど装置の周波数が固有周波数に近づいていき、逆に、同調ゲインが大きくなるに従って、装置の周波数が装着者の周波数に近づいていることが認められる。

【0065】
図9は、シミュレーションの結果の装着者(膝関節102)の関節角度のグラフを示す。図に示す波形のうち、実線で表される波形は装置との相互作用なしで運動した場合の装着者の関節角度を示し、破線は、各同調ゲインで制御される装置と相互作用した場合の装着者の関節角度を示す。同図から、装置を装着しないで運動した場合と比較して、同調ゲインが大きく設定された装置を装着した場合は、装置が装着者のリズムに合わせて動作し、それによって膝関節の運動の振幅が増幅されていることが認められる。これは、装着型の動作補助装置1を本実施例による同調制御により制御することにより、装着者の運動に対する高い補助効果が得られることを示している。

【0066】
<シミュレーション2>
(シミュレーションによる位相差調節実験)
本発明に係る同調制御方法により動作する動作補助装置の出力波形が、任意の位相差を維持しながら装着者の動作に同調することを確認するため、シミュレーションによる位相差調節実験を行った。シミュレーションの際には、同調ゲインKは5.0に設定し、目標位相差θdを0radとした場合と、0.33πradとした場合、0.67πradとした場合について、それぞれについて相互作用をシミュレーションした。その他の条件については、前述のシミュレーション実験と同様である。

【0067】
図10は、シミュレーションの結果のトルク波形のグラフを示す。同図から、目標位相差の設定により、装着者の動作の位相に対する装置の位相差を調節できることが認められる。

【0068】
<実機による同調制御実験>
図4に示すように、ヒトの足に装置1の駆動機構2を装着し、実機による実験を行った。モータには減速比50の株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ製の製品を使用しており、その定格トルクは5.4Nm、最大トルクは24Nmである。また、この減速機には、トルクセンサが内蔵されており、これにより、装着者と装置の間に発生する相互作用力を検出する。

【0069】
この装置1の動作は、既に説明した通であるが、図5を参照して要約すると、コンピュータ3が、位相振動子により算出されるトルクから指令電圧を決定し、D/Aコンバータからドライバを通してモータ21に電圧を与え、アーム(図4のリンク13に相当)を駆動させる。そして、駆動後のアームの関節角度をエンコーダ23、相互作用力をトルクセンサ22で計測し、それぞれドライバ、アンプを通してA/Dコンバータとカウンタからコンピュータ3へ取り込む。これらの情報を元に位相振動子により次の装置のトルクを算出する。

【0070】
被験者は地面に足がつかない程度の台に腰掛けた状態で運動を行う。被験者は右足の頸部を装置のリンク13と固定用のバンド(装着具16)によって固定し、被験者と装置の運動を相互作用させる。リンク12は、腰掛台に対して動かないように固定した(図4参照)。被験者が椅子に座った状態であり、大腿部101やリンク12が腰掛台に対して動かないので、図4に示す装着具15の装着は省略した。また、実験時の被験者の運動を評価するため、表面筋活動電位の計測を行う。計測箇所は、膝関節伸展時に使用する大腿直筋、内側広筋、外側広筋と、屈脚に使用する大腿二頭筋、半腱様筋の5箇所である。

【0071】
本実験では、装着者は、0.80Hzで運動を行い、装置との相互作用を検証した。装置の振動子の固有角振動数ωaを、5.7rad/s(周波数0.90Hz)、初期位相θa0を0.10πrad、出力するトルク波形の振幅Aaを6.0Nmに設定した。まず、同調ゲインKを0.1、1.0、5.0と調節した場合の各振動子の位相と、推定した装着者の位相の正弦波形を図11、図12、図13に示す。各図から、同調ゲインが小さいと装置の固有周波数に近づき、逆に、同調ゲインが大きくなると、装着者の固有周波数に近づいていることが認められる。また、Kが0.1、1.0の時に、推定される装着者の位相が乱れやすくなっているのは、装置と装着者の動作の周波数の違いによって、装置が装着者の動作の補助になる場合と、逆に、装着者の動作を阻害する場合とが混在しているため、装着者のトルクの推定値が変動しやすくなり、それを元に求めている装着者の位相の推定値も変動しているためと考えられる。

【0072】
(補助効果の検証)
同調ゲインをK=5.0とした装置の装着者の運動に対する補助効果を検証するため、計測した筋活動電位のRMS(root mean square)を用いて最大随意収縮強度(%MVC)を導出した。検証用に、図4に示すように、筋活動電位を測定するための筋活動電位センサ201を装着者に付した。筋活動電位センサ201の配線の先には、図示しないが、筋活動電位測定器を接続した。最大随意収縮強度は、十秒間におけるRMS値の平均を最大随意収縮時のRMSで除することで求めた。表1に装着者のみによる運動した場合と、装置と相互作用した場合に計測した5つの筋の最大随意収縮強度を示す。
【表1】
JP0005761832B2_000019t.gif

【0073】
同表から、装着者のみによる運動の場合に比べ、装置と相互作用する場合の最大随意収縮強度は減少する傾向にあることが認められる。特に、伸展に使用される大腿直筋、内側広筋、外側広筋については、10%近くの減少が認められた。これは、本実施例に係る同調制御がされた装置により、装着者の動作が効果的に補助されていることを示している。一方、半腱様筋については、装置と相互作用する場合には、最大随意収縮強度が上昇することが認められた。これは、膝関節の伸展時に固定している固定用バンドにより、装着者の足がモータ側の関節回転軸方向へ引っ張られる力が働いたためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る動作補助装置、及び動作補助装置の同調制御方法は、装着者の動作に対して任意の位相差を生じさせた動作補助装置の動作パターンを生成することができるので、脚などのように多関節の対象の動作を補助する場合にも、装着者の動作を的確に補助することができる。本装置やその同調制御方法は、位相差や同調ゲインを適宜設定することで、装置の人間に対する同調性を調節することができる。そのため、同調性を高めることにより装置が人間の動作タイミングに合わせる運動の補助に利用することができる。また、同調性を低下させることにより、装置が人間を牽引する運動教示リハビリテーションに利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1は動作補助装置、2は可動機構、3はコンピュータ、4はインタフェース回路、11は関節部、12・13はリンク、15・16は装着具、21はアクチュエータ(モータ)、22は相互作用力検出センサ(トルクセンサ)、23は関節角度センサ(エンコーダ)、31は位相取得部、32は位相推定部、33は目標値算出部、34は駆動制御部、100は人体、101は大腿部、102は膝関節、103は下腿部、201は筋活動電位センサ、S1は相互作用力検出ステップ、S2は関節角度検出ステップ、S3はトルク推定ステップ、S4はトルク振幅算出ステップ、S5はy座標算出ステップ、S6はx座標算出ステップ、S7は位相変換ステップ、S8は目標値算出ステップ、S9は駆動制御ステップである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12