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明細書 :エステルの加水分解によるカルボン酸及びアルコールの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6061399号 (P6061399)
登録日 平成28年12月22日(2016.12.22)
発行日 平成29年1月18日(2017.1.18)
発明の名称または考案の名称 エステルの加水分解によるカルボン酸及びアルコールの製造方法
国際特許分類 C07C  51/09        (2006.01)
C07C  53/126       (2006.01)
C07C  57/12        (2006.01)
C07C  57/03        (2006.01)
C07C  59/64        (2006.01)
C07C 271/22        (2006.01)
C07C 269/06        (2006.01)
C07C  31/04        (2006.01)
C07C  29/12        (2006.01)
C07C  27/02        (2006.01)
C07C  31/20        (2006.01)
C07C  31/22        (2006.01)
B01J  31/02        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
C07B  53/00        (2006.01)
FI C07C 51/09
C07C 53/126
C07C 57/12
C07C 57/03
C07C 59/64
C07C 271/22
C07C 269/06
C07C 31/04
C07C 29/12
C07C 27/02
C07C 31/20 A
C07C 31/22
B01J 31/02 103Z
C07B 61/00 300
C07B 53/00 G
請求項の数または発明の数 4
全頁数 21
出願番号 特願2013-551598 (P2013-551598)
出願日 平成24年12月13日(2012.12.13)
国際出願番号 PCT/JP2012/082310
国際公開番号 WO2013/099623
国際公開日 平成25年7月4日(2013.7.4)
優先権出願番号 2011289040
優先日 平成23年12月28日(2011.12.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年12月4日(2015.12.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】石原 一彰
【氏名】坂倉 彰
【氏名】越仮 良樹
個別代理人の代理人 【識別番号】110000017、【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
審査官 【審査官】吉森 晃
参考文献・文献 Nat. Prot.,2007年,Vol.2, No.7,p.1746-1751
Org. Lett.,2011年11月29日,Vol.14, No.1,p.30-33
調査した分野 C07C
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
カルボン酸エステルを水中において、下記一般
【化1】
JP0006061399B2_000023t.gif
(式中、R7、R8、R9及びR10は、それぞれ独立してアリール基である)
で表されるピロ硫酸アンモニウム塩触媒の存在下に加水分解することにより、カルボン酸及びアルコールを製造することを特徴とする、カルボン酸及びアルコールの製造方法。
【請求項2】
前記カルボン酸エステルが光学活性カルボン酸エステルであり、前記カルボン酸及び/又は前記アルコールが光学活性カルボン酸及び/又は光学活性アルコールであることを特徴とする、請求項記載のカルボン酸及びアルコールの製造方法。
【請求項3】
前記アルコール及び前記カルボン酸のうちのいずれか一方が水溶性であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のカルボン酸及びアルコールの製造方法。
【請求項4】
カルボン酸エステルを水中においてカルボン酸及びアルコールに加水分解することにより、カルボン酸及びアルコールを製造するための触媒であって、下記一般
【化2】
JP0006061399B2_000024t.gif
(式中、R7、R8、R9及びR10は、それぞれ独立してアリール基である)
で表されるピロ硫酸アンモニウム塩からなることを特徴とする、カルボン酸及びアルコールの製造用触媒。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸エステルの加水分解による、カルボン酸及びアルコールの製造方法に関する。さらには、当該製造方法に用いられる触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
カルボン酸エステルの加水分解により、カルボン酸及びアルコールを得る反応は、医薬品や有機材料などの合成プロセスにおける基幹反応であり、高効率な加水分解法の開発が強く望まれている。従来、カルボン酸エステルの加水分解は、水と有機溶媒(メタノール、THFなど)の均一系混合溶媒中、化学量論量以上の塩基(水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなど)を用いて実施されていた。一方、本発明者らは、カルボン酸エステルの加水分解反応ではないが、特許文献1に示すように、嵩高いN,N-ジアリールアミンと硫酸との存在下で、カルボン酸とアルコールとを脱水縮合してエステル化合物を製造する方法を開発している。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2010-209027
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の加水分解方法においては、水と基質を均一に混合させるために、有機溶媒の使用が必要不可欠であり、有機溶媒を使用しないと不均一系となり、加水分解の反応性に劣る。しかしながら、有機溶媒は、環境への負荷が懸念されており、廃液処理の観点からも使用されないことが望まれている。また、水に比較してコスト高である。さらに、上記加水分解方法においては、塩基が生成物であるカルボン酸により中和されてしまう。従って、化学量論量以上の塩基を用いる必要がある。また、塩基性条件下では不安定であるカルボン酸エステルには、適用できないといった問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決し、水のみを反応溶媒とし、塩基を使用しない条件下にもカルボン酸エステルを加水分解して、カルボン酸及びアルコールを製造することが可能な方法を提供することを目的とする。さらに、その製造方法に用いられる触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、新たに開発したブレンステッド酸触媒を用いることにより、有機溶媒及び塩基を用いずに水溶媒中にてカルボン酸エステルを効率良く加水分解し、カルボン酸及びアルコールを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明のカルボン酸及びアルコールの製造方法は、カルボン酸エステルを水中において、下記一般式(1)
【化1】
JP0006061399B2_000002t.gif
(式中、R1、及びR4は、それぞれ独立してアリール基であり、R2、R3、R5、及びR6は、それぞれ独立してアリール基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基又は水素原子である)
で表されるピロ硫酸アンモニウム塩触媒の存在下に加水分解することにより、カルボン酸及びアルコールを製造することを特徴とする。
【0008】
また、本発明のカルボン酸及びアルコールの製造用触媒は、カルボン酸エステルをカルボン酸及びアルコールに加水分解することにより、カルボン酸及びアルコールを製造するための触媒であって、下記一般式(3)
【化2】
JP0006061399B2_000003t.gif
(式中、R11、及びR14は、それぞれ独立してアリール基であり、R12、R13、R15、及びR16は、それぞれ独立してアリール基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基又は水素原子である)
で表されるピロ硫酸アンモニウム塩からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のカルボン酸及びアルコールの製造方法によれば、カルボン酸エステルの加水分解において、新規なピロ硫酸アンモニウム塩を触媒として用いることにより、水溶媒中においても、カルボン酸エステルの加水分解が効率よく進行し、カルボン酸とアルコールを高収率で得ることができる。従って、有機溶媒及び塩基を使用する必要がない。また、本発明のカルボン酸及びアルコールの製造用触媒によれば、カルボン酸エステルの加水分解活性に優れている。このため、水溶媒中において、有機溶媒及び塩基を用いることなく、カルボン酸エステルを加水分解し、カルボン酸及びアルコールを効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のカルボン酸及びアルコールの製造方法において、適用可能なカルボン酸エステルは、下記一般式(5)
【化3】
JP0006061399B2_000004t.gif
(式中、R’及びR”は、それぞれ独立して一価の炭化水素基である)で表されるカルボン酸エステルであって、特に限定されない。

【0011】
ここで、一価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シクロアルキル基等が挙げられる。アルキル基としては、直鎖状、又は分枝状のアルキル基であって、特に限定されない。例えば、直鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、イコシル基等が挙げられる。分岐アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-メチル-1-ブチル基、1-プロピルブチル、sec-アミル基、イソアミル基、tert-アミル基、ネオペンチル基、3-ペンチル基、1-ブチルペンチル等が挙げられる。

【0012】
また、アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基等が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基、プロパ-2-イン-1-イル基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基等が挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。

【0013】
いずれの炭化水素基も置換基を有していてもよい。その置換基としては、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基等が挙げられる。なお、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。

【0014】
例えば、アルキル基置換アリール基としては、トリル基等が挙げられる。アリール基置換アルケニル基としては、3-フェニル-2-プロペニル基等が挙げられる。

【0015】
本発明のカルボン酸及びアルコールの製造方法において用いることのできるカルボン酸エステルとしては、例えば、以下の化合物が挙げられる。ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸イソプロピル、2-プロピル吉草酸メチル、エチレングリコールジラウリン酸エステル、グリセロールトリオレイン酸エステル、酢酸1-ドデシル、プロピオン酸1-ドデシル、酢酸5-ノニル、酢酸シンナミル、酢酸1-(6-tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)ドデシル、酢酸1-[6-(p-メトキシベンジル)オキシ]ドデシル。

【0016】
本発明のカルボン酸とアルコールの製造方法において、カルボン酸エステルは、光学活性カルボン酸エステルであってもよい。本発明によれば、光学活性カルボン酸エステルであっても、ラセミ化を防止し、光学活性を有するカルボン酸及び/又はアルコールを得ることができる。従来、光学活性カルボン酸エステルの加水分解においては、ラセミ化を伴うために、光学活性カルボン酸及び/又は光学活性アルコールを一工程にて製造することが困難であった。即ち、保護基を利用し、多段階工程にて行う必要があった。このため、本発明は、光学活性なカルボン酸及び/又はアルコールを製造するために極めて有用である。光学活性カルボン酸及び光学活性アルコールは、医薬品などの中間体として有用な化合物である。光学活性カルボン酸エステルとして、例えば、下記に例示するエステルが挙げられるが、これに限定されない。

【0017】
【化4】
JP0006061399B2_000005t.gif

【0018】
特に、光学活性カルボン酸は、α-アミノ酸エステルであることが好ましい。α-アミノ酸エステルを加水分解することにより得られる光学活性カルボン酸は、特にラセミ化しやすいために、従来においては保護基を利用して多段階にわたる反応を経て製造されていた。しかしながら、本発明によれば、ラセミ化を防止できるため、保護基を利用する必要もなく、工程が低減される。α-アミノ酸エステルを加水分解することにより得られる光学活性カルボン酸は、特に医薬中間体として有用であるため、特に本発明は、医薬用途に好適に実施され得る。α-アミノ酸エステルとしては、例えば、下記に示されるエステルが例示されるが、これに限定されない。

【0019】
【化5】
JP0006061399B2_000006t.gif

【0020】
特に、本発明において、得られるカルボン酸又はアルコールのうちのいずれか一方が、水溶性であることが好ましい。得られるカルボン酸又はアルコールのうちのいずれか一方が水溶性である場合、高収率で加水分解が進行する。

【0021】
水溶性のカルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、シュウ酸、クエン酸及び酒石酸等が挙げられるが、これに限定されない。このうち特に、酢酸、及びプロピオン酸が、高い収率でアルコールを得ることができるために、好ましい。

【0022】
一方、水溶性のアルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、エチレングリコール、及びグリセロール等が挙げられるが、これに限定されない。このうち特に、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセロールが、水溶性に優れているため、高い収率でカルボン酸を得ることができるために、好ましい。

【0023】
さらには、本発明の製造方法によれば、塩基に不安定なカルボン酸エステルにも適用可能である。従って、従来加水分解することが困難であったカルボン酸エステルを加水分解することにより、カルボン酸及び/又はアルコールを得ることができる。塩基に不安定なカルボン酸エステルとしては、例えば、N-Fmoc-L-フェニルアラニンメチルエステル等が挙げられるが、これに限定されない。

【0024】
次に、本発明の製造方法において用いられるピロ硫酸アンモニウム塩触媒は、下記一般式(1)
【化6】
JP0006061399B2_000007t.gif
(式中、R1、及びR4は、それぞれ独立してアリール基であり、R2、R3、R5、及びR6は、それぞれ独立してアリール基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基又は水素原子である)で表される。

【0025】
尚、一般式(1)において、R1、R2、及びR3におけるそれぞれの位置関係、及びR4、R5、及びR6におけるそれぞれの位置関係は、特に限定されるものではない。上記一般式(1)において、1つのNに結合する3つの置換基のうち、少なくとも1つがアリール基であることを意味する。

【0026】
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基等が挙げられる。特に、活性が高いことから、フェニル基であることが好ましい。これらは、置換基を有するものであってもよい。ピロ硫酸アンモニウム塩触媒は、複数の水素結合を利用して、触媒活性部位であるアンモニウムカチオン部位とピロ硫酸アニオンとを嵩高く疎水的なアリール基で覆った超分子構造を形成することで、多量の水の存在下にも安定となり、高い触媒活性を示すものと推測される。

【0027】
好ましくは、アリール基は、少なくとも片方のオルト位に分岐アルキル基、置換基を有する分岐アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有するシクロアルキル基、アリール基又は置換基を有するアリール基を持つものである。ここで、置換基としてのアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基等が挙げられる。分岐アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-メチル-1-ブチル基、sec-アミル基、イソアミル基、tert-アミル基、ネオペンチル基、3-ペンチル基等が挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。また、分岐アルキル基が置換基を有している場合、その置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、シクロアルキル基、アリール基等が挙げられる。なお、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。シクロアルキル基が置換基を有している場合、その置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基等が挙げられる。アリール基が置換基を有している場合、その置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基等が挙げられる。また、アリール基は、さらにパラ位に置換基を有していてもよい。パラ位の置換基としては、分岐アルキル基、置換基を有する分岐アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有するシクロアルキル基、アリール基、置換基を有するアリール基、又はハロゲン原子が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。これらのうち、分岐アルキル基、及びハロゲン原子が好ましい。分岐アルキル基のうちでは、イソプロピル基が好ましく、ハロゲン原子のうちでは、ヨウ素原子が好ましい。

【0028】
なお、例えば、2-(1,1’-ビナフチル)基は、オルト位にナフチル基を有するナフチル基とみることができるから、オルト位に置換基を有するナフチル基の一例とみなすものとする。ここで、ピロ硫酸アンモニウム塩としては、エステル化合物の加水分解収率の良さを考慮すると、アリール基は、両方のオルト位に分岐アルキル基、アリール基又は置換基を有するアリール基を持つフェニル基であることが好ましい。特に、イソプロピル基、又はフェニル基を持つフェニル基であることが好ましい。また、アリール基は、両方のオルト位の置換基とともにパラ位にハロゲン原子、又は分岐アルキル基を有していてもよい。パラ位の置換基としては、特に、ヨウ素原子、又はイソプロピル基を持つフェニル基であることが好ましい。

【0029】
また、上記一般式(1)中、アルキル基としては、直鎖状、又は分枝状のアルキル基であって、特に限定されない。例えば、直鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、イコシル基等が挙げられる。分岐アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-メチル-1-ブチル基、1-プロピルブチル、sec-アミル基、イソアミル基、tert-アミル基、ネオペンチル基、3-ペンチル基等が挙げられる。

【0030】
また、アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基、プロパ-2-イン-1-イル基等が挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。

【0031】
いずれのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はシクロアルキル基も置換基を有していてもよい。その置換基としては、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基などが挙げられる。なお、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。

【0032】
特に、ピロ硫酸アンモニウム塩触媒は、下記一般式(2)
【化7】
JP0006061399B2_000008t.gif
(式中、R7、R8、R9及びR10は、それぞれ独立してアリール基である)で表されるピロ硫酸アンモニウム塩触媒であることが好ましい。即ち、上記一般式(1)において、1つのNに結合する3つの置換基のうち、いずれか2つがアリール基であって、他の1つが水素原子である(上記一般式(1)において、R1及びR4が、それぞれ独立してアリール基であって、R2及びR3のうちのいずれか一方、並びにR5及びR6のうちのいずれか一方が、それぞれ独立してアリール基であって、R2及びR3のうちの他方、並びにR5及びR6のうちの他方が、水素原子である)ことが好ましい。ここで、特に好適なR7、R8、R9及びR10は、それぞれ独立して、好ましい例として上記に説明したアリール基と同様である。このようなピロ硫酸アンモニウム塩触媒は、触媒活性部位であるアンモニウムカチオン部位とピロ硫酸アニオンとを嵩高く疎水的なアリール基でバランスよく覆った超分子構造を形成することで、多量の水の存在下にも極めて安定となり、高い触媒活性を示すものと推測される。

【0033】
このようなピロ硫酸アンモニウム塩の構造式の例を以下に示す。

【0034】
【化8】
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【0035】
本発明のカルボン酸及びアルコールの製造方法において、反応温度は反応速度や副生成物の比率などを考慮して適宜設定すればよいが、例えば20~100℃の範囲で設定することができ、特に60~80℃の範囲で設定することが好ましい。また、反応基質や生成物が熱により分解しやすい化合物である場合には、分解を防止するために、20~60℃、好ましくは30~50℃の範囲で設定することができる。

【0036】
本発明のカルボン酸及びアルコールの製造方法において、反応時間は、反応基質、反応温度などに応じて適宜設定すればよいが、通常は数分~数10時間である。好ましくは、10~60時間、特に20~50時間である。なお、カルボン酸エステルの加水分解反応はカルボン酸エステルが完全に消費されるまで行ってもよいが、反応が進むにつれて反応速度が極端に遅くなる場合には完全に消費されなくても反応を終了してカルボン酸及び/又はアルコールを取り出した方が好ましい場合もある。

【0037】
また、触媒の使用量は、特に限定しないが、カルボン酸エステルに対して、0.5~15mol%、好ましくは1~10mol%、特に3~8mol%である。この範囲よりも少ないと活性に劣り、一方この範囲よりも多くても反応性が向上しないために不経済である。

【0038】
さらに、溶媒としての水の使用量は、特に限定されないが、カルボン酸エステル1mmolあたり、0.1~10mL、好ましくは1~5mL、特に2~4mLとなる範囲で設定することができる。この範囲よりも少ないと活性に劣り、一方、この範囲よりも多くても反応性が向上しない。

【0039】
本発明のカルボン酸及びアルコールの製造方法において、目的とするカルボン酸及びアルコールを単離するには、通常知られている単離手法を適用すればよい。例えば、触媒を中和した後デカンテーションすることにより、容易に単離することができる。得られたカルボン酸及び/又はアルコールは、必要に応じて、カラムクロマトグラフィーなどで精製することができる。

【0040】
本発明の製造方法によれば、反応溶媒として、水のみを使用し、有機溶媒を必要としないため、コストが削減されるとともに、環境への負荷がなく、廃液処理の必要もない。また、製造工程においても極めて安全性が確保され得る。また、本発明の製造方法によれば、塩基を使用する場合とは異なり、酸性条件下で実施することができるため、触媒量の使用で高収率に製造することができ、製造効率が向上する。

【0041】
次に、本発明のカルボン酸及びアルコールの製造用触媒は、上記カルボン酸及びアルコールの製造方法で説明したピロ硫酸アンモニウム塩と同様な構造からなる。当該ピロ硫酸アンモニウム塩は、水溶媒中において塩基を用いずにも、カルボン酸エステルの加水分解反応に高い活性を示す。このため、カルボン酸及びアルコールの製造に好適に用いることができる。特に好適な触媒は、上記製造方法で好適に用いられるピロ硫酸アンモニウム塩と同様である。即ち、ピロ硫酸アンモニウム塩を表す上記一般式(3)中のR11、R12、R13、R14、R15、及びR16は、それぞれ上記一般式(1)中のR1、R2、R3、R4、R5、及びR6と対応している。

【0042】
触媒としてのピロ硫酸アンモニウム塩は、例えば、以下のようにして製造することができる。即ち、第1の製造方法では、下記一般式(4)
【化9】
JP0006061399B2_000010t.gif
(式中、R17は、アリール基であり、R18、及びR19は、それぞれ独立してアリール基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基又は水素原子である)
で表されるアミンと、硫酸とを有機溶媒中に溶解させ、60~100℃に加熱する。

【0043】
或いは、第2の製造方法では、下記一般式(4)
【化10】
JP0006061399B2_000011t.gif
(式中、R17は、アリール基であり、R18、及びR19は、それぞれ独立してアリール基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基又は水素原子である)で表されるアミンと、発煙硫酸とを接触させる。

【0044】
ピロ硫酸アンモニウム塩の製造方法において用いられるアミンは、いずれも下記一般式(4)
【化11】
JP0006061399B2_000012t.gif
(式中、R17は、アリール基であり、R18、及びR19は、それぞれ独立してアリール基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基又は水素原子である)で表される。

【0045】
好適なアリール基は、上記カルボン酸及びアルコールの製造方法に使用されるピロ硫酸アンモニウム塩について説明した好ましいアリール基と同様である。特に、少なくとも片方のオルト位に分岐アルキル基、置換基を有する分岐アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有するシクロアルキル基、アリール基又は置換基を有するアリール基を持つものが好ましい。特に、R18、又はR19のうちのいずれか一方がアリール基である第2級アミンであることが好ましい。このような例としては、以下の第2級アミンが挙げられる。

【0046】
【化12】
JP0006061399B2_000013t.gif

【0047】
さらに、第3級アミンとして、以下の第3級アミンが具体例として挙げられる。第3級アミンにおいて、全ての置換基がアリール基又は置換基を有するアリール基である場合、全てのパラ位にアルキル基を有するものは、その反応性に劣るために好適ではない。

【0048】
【化13】
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【0049】
また、R18、及びR19のうちのいずれか一方がアリール基であって、他方がアルキル基である第3級アミンの例を以下に挙げる。ここで、アルキル基の炭素数は、入手しやすさと収率の良さを考慮すると、8~20個であることが好ましい。

【0050】
【化14】
JP0006061399B2_000015t.gif

【0051】
第1のピロ硫酸アンモニウム塩の製造方法において、アミンと硫酸との使用量は、特に限定されないが、好ましくはモル比で0.5:3~3:0.5、より好ましくは1:2~2:1、特に好ましくは1:1である。この範囲よりも一方が多くても生成率が向上しないために不経済である。使用される硫酸は、いずれの市販品又は合成したものであってもよく、特に限定されない。

【0052】
また、反応温度は50~100℃の範囲で設定することが必要である。この温度よりも低いと、活性の高い触媒を得ることができない。一方、この温度よりも高くても収率が向上しないために適切ではない。好ましくは、60~80℃の範囲で設定することができる。本発明によれば、所定の温度範囲にて加熱することによって触媒活性の高いピロ硫酸アンモニウム塩が生成し、優れた活性を示すことを見出した。

【0053】
第1のピロ硫酸アンモニウム塩の製造方法において用いることができる有機溶媒は、従来公知のいずれの有機溶媒であってもよく、特に限定されない。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼンなどの炭化水素系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶媒、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、ブロモベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどのエーテル系溶媒などが挙げられ、これらは単独で用いてもよいし複数を混合して用いてもよい。特に、硫酸、アミン、ピロ硫酸アンモニウム塩の溶解性に優れていることから、1,4-ジオキサン等が好ましい。

【0054】
また、溶媒の使用量は、特に限定されるものではないが、基質(アミン)1モルに対して、好ましくは0.1~10L、特に1~4Lとなる範囲で、設定することができる。

【0055】
反応時間は、反応基質、反応温度などに応じて適宜設定すればよいが、通常は数分~数時間である。好ましくは、10~60分間、特に20~40分間である。

【0056】
第1のピロ硫酸アンモニウム塩の製造方法において、溶媒は、目的とする生成物から除去することができる。例えば、減圧下に溶媒を留去することが好ましい。第1の製造方法によれば、触媒の製造に用いられる硫酸が安価であるため、製造コストが削減される。

【0057】
さらに、本発明の第2のピロ硫酸アンモニウム塩の製造方法において用いられる発煙硫酸は、いずれの市販の、或いは合成した発煙硫酸であってもよく、特に限定されない。発煙硫酸に含まれるSO3の濃度も特に限定されないが、例えば、市販入手可能であることから60~25%、特に30%であることが好ましい。

【0058】
第2のピロ硫酸アンモニウム塩の製造方法において、アミンと発煙硫酸との使用量は、特に限定されないが、好ましくはモル比で0.5:3~3:0.5、より好ましくは1:2~2:1、特に好ましくは1:1である。この範囲よりも一方が多くても生成率が向上しないために不経済である。

【0059】
上記アミンと発煙硫酸との接触方法は、特に限定されないが、例えば、アミンと発煙硫酸とを有機溶媒中に溶解させることにより、接触させることができる。温度は特に限定されないが、経済的な観点、及びSO3の放出防止等を考慮して、室温で行うことが好ましい。本発明の第2のピロ硫酸アンモニウム塩の製造方法によれば、室温で製造できるために、加熱を必要とせず、製造が容易である。

【0060】
接触時間は、触媒が生成可能な時間であって、反応温度、反応基質等に応じて適宜設定すればよいが、通常は数分~数時間である。好ましくは、10~60分、特に20~40分である。溶媒に溶解させる場合において、使用される有機溶媒、溶媒の使用量、及び溶媒の除去方法としては、上記第1のピロ硫酸アンモニウム塩の製造方法において説明したものと同様である。
【実施例】
【0061】
[実施例1] ピロ硫酸アンモニウム塩触媒の調製
(1)第1の製造方法
【実施例】
【0062】
【化15】
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【実施例】
【0063】
上記式(6)に示すように、N,N-ジアリールアミン(0.10mmol、5mol%)及び硫酸(0.10mmol、5mol%)をフラスコに量り取り、1,4-ジオキサン(0.1mL)に溶解させ、80℃にて30分間攪拌した。室温まで冷ました後、減圧下で1,4-ジオキサンを留去した。得られたピロ硫酸アンモニウム塩は、1H NMR(CD3CN)で解析した。その化学シフト(ppm)を以下に示す。
δ 0.89 (d, J = 6.9 Hz, 12H), 1.07 (d, J = 6.9 Hz, 6H), 2.63 (septet, J = 6.9 Hz, 1H), 2.86 (septet, J = 6.9 Hz, 2H), 6.57 (s, 2H), 7.01 (t, J = 7.3 Hz, 1H), 7.10 (d, J = 7.3 Hz, 2H), 7.18-7.31 (m, 10H), 9.01 (s, 2H)。
【実施例】
【0064】
(2)第2の製造方法
硫 酸の代わりに30%のSO3含有発煙硫酸を用い、温度を室温(20℃)にした以外は、上記(1)第1の製造方法と同様に製造し、解析した。化学シフトは、実施例1(1)の製造方法で得られたピロ硫酸アンモニウム塩とほぼ同じであった。その化学シフト(ppm)を以下に示す。従って、実施例1(1)の製造方法で得られたピロ硫酸アンモニウム塩と同様な構造であることが分かる。
δ 0.95 (d, J = 6.9 Hz, 12H), 1.05 (d, J = 6.9 Hz, 6H), 2.61 (septet, J = 6.9 Hz, 1H), 2.90 (septet, J = 6.9 Hz, 2H), 6.54 (s, 2H), 7.04-7.31 (m, 9H), 7.37 (d, J = 6.8 Hz, 4H), 9.23 (s, 2H)。
【実施例】
【0065】
[比較例1] 室温で調製したアンモニウム塩触媒の調製
上記実施例1と同様に、N,N-ジアリールアミン(0.10mmol、5mol%)及び硫酸(0.10mmol、5mol%)をフラスコに量り取り、1,4-ジオキサン(0.1mL)に溶解させ、室温(約20℃)にて30分間攪拌した。その後、減圧下で1,4-ジオキサンを留去した。得られたアンモニウム塩は、1H NMR(CD3CN)で解析した。その化学シフト(ppm)を以下に示す。アンモニウムプロトンの化学シフト(7.59ppm)が、実施例1(1)及び(2)の製造方法で得られたピロ硫酸アンモニウム塩(9.01、9.23ppm)に比べて大きく異なっているため、その構造が異なることがわかる。
δ 0.84 (d, J = 6.8 Hz, 12H), 1.11 (d, J = 6.9 Hz, 6H), 2.71 (septet, J = 6.9 Hz, 2H), 2.75 (septet, J = 6.9 Hz, 1H), 6.67 (s, 2H), 7.18-7.35 (m, 5H), 7.26-7.58 (m, 8H), 7.59 (s, 2H)。
【実施例】
【0066】
[実施例2] ラウリン酸メチルの加水分解によるラウリン酸(及びメタノール)の製造
実施例1(1)で得られたピロ硫酸アンモニウム塩触媒(5mol%)に、ラウリン酸メチル(2mmol)及び水(1~8mL)を添加して、攪拌しながら60℃に24時間加熱し、ラウリン酸メチルの加水分解反応を行った。得られた反応混合物を一部抜き取り、1H NMR(CDCl3)によって解析し、ラウリン酸の収率を算出した。その化学シフト(ppm)を以下に示す。また、結果を表1に示す。
ラウリン酸メチル:δ 0.88 (t, J = 6.6 Hz, 3H), 1.29 (m, 16H), 1.62-1.65 (m, 2H), 2.30 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 3.66 (s, 3H)
ラウリン酸:δ0.89 (t, 3H), 1.16-1.37 (m, 16H), 1.64 (q, J = 7.3, 2H), 2.35 (t, J = 7.3 Hz, 2H)
【実施例】
【0067】
【表1】
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【実施例】
【0068】
表1から明らかなように、ラウリン酸メチル2mmolに対して、水の使用量が増えるに従い収率は向上し、1~8mLの水量範囲においては、8mLが最も収率が高く、86%の収率を得ることができたことが分かる。
【実施例】
【0069】
[比較例2] 他触媒によるラウリン酸メチルの加水分解によるラウリン酸(及びメタノール)の製造
上記実施例2と同様な反応条件下において、ピロ硫酸アンモニウム塩触媒の代わりに、硫酸(H2SO4、5mol%)、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA、5mol%)、水酸化リチウム(LiOH、100mol%)、並びに水酸化リチウム(LiOH)及び臭化テトラブチルアンモニウム混合物(LiOH(100mol%)+Bu4NBr(5mol%))を用いて、20~26時間反応を行った。結果を表2に示す。
【実施例】
【0070】
【表2】
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【実施例】
【0071】
表2から明らかなように、硫酸(5mol%)及び水酸化リチウム(100mol%)は極めて低活性であった。水酸化リチウムに相間移動触媒として臭化テトラブチルアンモニウム(5mol%)を添加しても反応性は向上しなかった。水中でエステル脱水縮合を促進するドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)を用いると加水分解は進行したが、収率は本実施例1のN,N-ジアリールアンモニウム塩触媒を用いた場合に比べて、低かった。また、DBSAは、反応後の分離が困難で、後処理が煩雑であり、本実施例の触媒に比べ、その取り扱いに劣る。尚、DBSAを触媒として用いた水中でのエステル脱水縮合法については、文献(J. Am. Chem.Soc. 2001, 123, 10101・10102. 及び J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 11971・11978.)に記載されている。一方、比較例1にて製造されたアンモニウム塩を触媒として用いて同様にラウリン酸メチルの加水分解を行ったところ、収率は3%であり、活性に劣ることが分かる。
【実施例】
【0072】
[実施例3] カルボン酸エステルの加水分解によるカルボン酸及び水溶性アルコールの製造
以下の表3に示すように、得られるアルコールが水溶性であるカルボン酸エステルを用いて、カルボン酸エステルの加水分解反応を行った。即ち、実施例1(1)で得られたピロ硫酸アンモニウム塩触媒(5mol%)に、カルボン酸エステル1mmol及び水4mLを添加して、攪拌しながら60~80℃に24~48時間加熱した。得られた反応混合物を一部抜き取り、1HNMR(CDCl3)によって解析し、下記のシグナルを比較することによりカルボン酸の収率を算出した。その化学シフト(ppm)を以下に示す。また、結果を表3に示す。
【実施例】
【0073】
1.ラウリン酸エチル:δ 2.29 (t, J = 7.7 Hz, 2H)
ラウリン酸:δ 2.35 (t, J = 7.3 Hz, 2H)
2.ラウリン酸イソプロピル:δ 2.25 (t, J = 7.5 Hz, 3H)
ラウリン酸:δ 2.35 (t, J = 7.3 Hz, 2H)
3.エチレングリコールジラウリン酸エステル:δ 2.31 (t, J = 7.8 Hz, 4H)
ラウリン酸:δ 2.35 (t, J = 7.3 Hz, 2H)
4.グリセロールトリオレイン酸エステル:δ 2.31 (t, J = 6.9 Hz, 4H), 2.32 (t, J = 7.5 Hz, 2H)
オレイン酸:δ 2.35 (t, J = 7.3 Hz, 2H)
5.グリセロールトリパルミチン酸エステル:δ 2.31 (t, J = 7.3 Hz, 6H)
パルミチン酸:δ 2.34 (t, J = 7.3 Hz, 2H)
6.グリセロールトリリノール酸エステル:δ 2.31 (t, J = 7.3 Hz, 6H))
リノール酸:δ 2.34 (t, J = 7.6 Hz, 2H)
7.2-プロピル吉草酸メチル:δ 2.21 (m, 1H), 3.67 (s, 3H)
2-プロピル吉草酸:δ 2.37 (m, 1H)
【実施例】
【0074】
【表3】
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【実施例】
【0075】
表3から明らかなように、加水分解されて得られるアルコールが水溶性であるカルボン酸エステルは、いずれも高効率で加水分解され、カルボン酸が高収率で得られることが分かる。また、スケールアップしてカルボン酸エステル(グリセロールトリオレイン酸エステル)を100mmol使用した場合、触媒が3mol%でも反応が良好に進行した。
【実施例】
【0076】
[実施例4] カルボン酸エステルの加水分解によるアルコール及び水溶性カルボン酸の製造
以下の表4に示すように、得られるカルボン酸が水溶性であるカルボン酸エステルを用いて、カルボン酸エステルの加水分解反応を行った。即ち、実施例1(1)で得られたピロ硫酸アンモニウム塩触媒(5mol%)に、カルボン酸エステル1mmol及び水4mLを添加して、攪拌しながら40~80℃に24時間加熱した。得られた反応混合物を一部抜き取り、1H NMR(CDCl3)によって解析し、下記のシグナルを比較することによりアルコールの収率を算出した。その化学シフト(ppm)を以下に示す。また、結果を表4に示す。
【実施例】
【0077】
1.酢酸1-ドデシル:δ 4.05 (t, J = 6.6 Hz, 2H)
1-ドデカノール:δ 3.64 (t, J = 6.4 Hz, 2H)
2.プロピオン酸1-ドデシル:δ 4.18 (t, J = 6.1 Hz, 2H)
1-ドデカノール:δ 3.64 (t, J = 6.4 Hz, 2H)
3.酢酸5-ノニル:δ 4.89 (m, 1H)
5-ノナノール:δ 3.56-3.59 (m, 1H)
4.酢酸6-TBDPO-1-ヘキシル:δ 4.03 (t, J = 6.4 Hz, 2H)
6-TBDPO-1-ヘキサノール:δ 3.61 (t, J = 6.6 Hz, 2H)
5.酢酸6-PMBO-1-ヘキシル:δ 4.02 (t, J = 6.9 Hz, 2H)
6-PMBO-1-ヘキサノール:δ 3.63 (t, J = 6.5 Hz, 2H)
6.酢酸シンナミル:δ 4.73 (dd, J = 1.1, 6.5 Hz, 2H)
シンナミルアルコール:δ 4.32 (dd, J = 1.5, 5.7 Hz, 2H)
【実施例】
【0078】
【表4】
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【実施例】
【0079】
表4から明らかなように、加水分解されて得られるカルボン酸が水溶性であるカルボン酸エステルは、いずれも高効率で加水分解され、アルコールが高収率で得られることが分かる。尚、表4の最下部のカルボン酸エステルが酢酸シンナミルである加水分解反応は、生成物であるシンナミルアルコールが二量化してジシンナミルエーテルが副生する恐れがあるために、40℃といった低温で反応を行ったが、93%という高収率でアルコールを得ることができた。ここで、収率のカッコ内はジシンナミルエーテルの収率を示す。
【実施例】
【0080】
[実施例5] 光学活性カルボン酸エステルの加水分解による光学活性カルボン酸の製造
以下の表5に示すように、得られるカルボン酸が光学活性カルボン酸である光学活性カルボン酸エステル1mmolを用いて、カルボン酸エステルの加水分解反応を行った。即ち、実施例1(1)で得られたピロ硫酸アンモニウム塩触媒(5mol%)に、カルボン酸エステル1mmol及び水4mLを添加して、攪拌しながら80℃に9~20時間加熱した。得られた反応混合物を水で希釈した後、酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮することによって得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで生成することにより、光学活性カルボン酸を得た。また、生成物の光学純度はキラルHPLCにより測定した。特徴的な1H NMR (CDCl3)の化学シフト(ppm)及びキラルHPLCの分析条件を以下に示す。また、結果を表5に示す。
【実施例】
【0081】
1,2. (S)-2-メトキシ-2-フェニル酢酸メチル:δ 3.41 (s, 3H)
(S)-2-メトキシ-2-フェニル酢酸:δ 3.33 (s, 3H);HPLC (Daicel ChiralcelOJ-H, hexane・i-PrOH 200:1, 1 mL/min) t = 33.1 [S-体], 37.5 [R-体] min
3,4. N-Cbz-L-フェニルグリシンメチルエステル:δ 3.73 (s, 3H), 5.38 (d, J = 7.3 Hz, 1H)
N-Cbz-L-フェニルグリシン:δ 5.40 (d, J = 6.9 Hz, 1H);HPLC (Daicel Chiralcel OJ-H, hexane・i-PrOH・TFA 75:25:0.1, 1.0 mL/min) t = 16.6 [L-体], 12.5 [D-体] min
5,6. N-Cbz-O-ベンジル-L-セリンメチルエステル:δ 5.12 (s, 2H), 3.75 (s, 3H)
N-Cbz-O-ベンジル-L-セリン:δ 5.13 (s, 2H);HPLC (Daicel Chiralcel OD-H, hexane・i-PrOH・TFA 90:10:0.1, 1 mL/min) t = 18.7 [S-体], 24.6 [R-体] min
7,8. N-Fmoc-L-フェニルアラニンメチルエステル:δ 3.10 (m, 1H), 3.15 (m, 1H), 3.74 (s, 3H)
N-Fmoc-L-フェニルアラニン:δ 3.13 (m, 1H), 3.22 (m, 1H);HPLC (DaicelChiralcel OD-H, hexane・i-PrOH・TFA 90:10:0.1, 1.0 mL/min) t = 16.5 [L-体], 12.9 [D-体] min
9. N-Cbz-L-フェニルアラニンメチルエステル:δ 3.10 (m, 2H), 3.71 (s, 3H)
N-Cbz-L-フェニルアラニン:δ 3.12 (m, 1H), 3.21 (m, 1H);HPLC (Daicel Chiralcel OD-H, hexane・i-PrOH・TFA 90:10:0.1, 0.8 mL/min) t = 26.3 [L-体], 22.9 [D-体] min
10. N-Cbz-L-バリンメチルエステル:δ 2.11 (m, 1H), 3.68 (s, 3H)
N-Cbz-L-バリン:δ 2.23 (m, 1H);HPLC (Daicel Chiralpak OD-H, hexane・i-PrOH・TFA 90:10:0.1, 1.0 mL/min) t = 6.0 [L-体], 12.0 [D-体] min
【実施例】
【0082】
【表5】
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【実施例】
【0083】
表5から明らかなように、加水分解されて得られるカルボン酸が光学活性カルボン酸である光学活性カルボン酸エステルは、いずれも高効率で加水分解された。また、得られたカルボン酸は、塩基性条件下でラセミ化しやすいが、エナンチオ選択性が>99%と極めて高く、ラセミ化を防止できることが分かる。更に、スケールアップしてカルボン酸エステル(N-Cbz-L-フェニルグリシンメチルエステル)を100mmol使用した場合、触媒が1mol%でも反応が良好に進行した。
【実施例】
【0084】
一方、比較例として、塩基として水酸化リチウム(LiOH)を1当量用い、H2O・MeOH・THF(2:1:1)溶媒中において室温下に2~4時間、1、3、5及び7と同じカルボン酸エステルを加水分解反応させた結果を表5の2*、4*、6*および8*に示す。表5から明らかなように、2*において収率は94%と高収率で得られたが、エナンチオ選択性が97%であって、一部ラセミ化されていたことが分かる。また、4*及び6*においても収率はそれぞれ93%及び94%と高収率で得られたが、エナンチオ選択性がそれぞれ15%及び65%であって、ラセミ化されていたことが分かる。また、8*においてはアミノ基の保護基であるFmoc基が完全に分解してしまったため、目的とするカルボン酸は全く得られなかった。したがって、本実施例の製造方法によれば、ラセミ化を防止し、光学活性カルボン酸を得るのに極めて有用であることが分かる。
【実施例】
【0085】
[実施例6] フェニル基のパラ位にヨウ素原子を有する触媒の製造及び反応性
【実施例】
【0086】
【化16】
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【実施例】
【0087】
まず、フェニル基のパラ位にヨウ素原子をN,N-ジアリールアミンを、式(7)の上段にしたがって以下の手順により合成した。実施例1の式(6)で用いたN,N-ジアリールアミン(447mg,1.0mmol)および炭酸カルシウム(150mg,1.5mmol)をフラスコに量り取り、ジクロロメタンとメタノールの混合溶媒(8:3v/v,11mL)に溶解した。この溶液にBnMe3+ICl2- (418mg,1.2mmol)を加え、室温にて3時間撹拌した。不溶物質を濾過により除去した後、ろ液に飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液(20mL)を加え、ジエチルエーテル(20mL×3)で抽出した。有機層を合わせて無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,ヘキサン-酢酸エチル1:0→40:1)で生成することにより、パラ位にヨウ素原子を有するN,N-ジアリールアミンが得られた。得られたパラ位にヨウ素原子を有するN,N-ジアリールアミンの構造は、1H NMR(CDCl3)、13C NMR(CDCl3)、および高分解能マススペクトル(HRMS,FAB)で解析した。そのデータを以下に示す。
1H NMR (CDCl3) δ 0.97 (d, J = 7.0 Hz, 12H), 1.06 (d, J = 7.0 Hz, 6H), 2.62 (septet, J = 7.0 Hz, 1H), 2.92 (septet, J = 7.0 Hz, 2H), 5.31 (s, 1H), 6.49 (s, 2H), 7.09-7.20 (m, 10H), 7.36 (s, 2H); 13C NMR (CDCl3) δ 22.9 (4C), 24.1 (2C), 28.4 (2C), 34.2, 77.8, 120.3 (2C), 127.0 (2C), 127.9 (4C), 129.0 (4C), 130.8 (2C), 134.1 (2C), 138.6 (2C), 138.9 (2C), 140.9, 144.1, 146.1; HRMS (FAB) calcd for C33H37IN [M+H]+ 574.1971, found 574.1989。
【実施例】
【0088】
得られたパラ位にヨウ素原子を有するN,N-ジアリールアミン(0.1mmol,5mol%)を用い、実施例1の「(1)第1の製造方法」と同じ方法により対応するピロ硫酸アンモニウム塩(式(7)の下段の矢印上に示した触媒)を製造した後、そのまま直ちにラウリン酸メチルの加水分解反応に使用した。反応条件は式(7)中に示したとおりであり、収率は87%であった。
【実施例】
【0089】
本出願は、2011年12月28日に出願された日本国特許出願第2011-289040号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、主に薬品化学産業に利用可能であり、例えば種々の医薬品や有機材料として利用される種々のカルボン酸及びアルコールを製造する際に利用することができる。特に、油脂(油脂から脂肪族カルボン酸の製造プロセス)、可塑剤(エステル蒸留釜残からアルコール成分の回収プロセス)、及び光学活性中間体(高純度の光学活性カルボン酸の製造プロセス)等の分野において有用である。