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明細書 :アミロイドβタンパク特異的産生抑制ポリペプチド

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6168998号 (P6168998)
登録日 平成29年7月7日(2017.7.7)
発行日 平成29年8月2日(2017.8.2)
発明の名称または考案の名称 アミロイドβタンパク特異的産生抑制ポリペプチド
国際特許分類 C07K  14/81        (2006.01)
C07K  14/00        (2006.01)
C07K   7/06        (2006.01)
C12N   9/99        (2006.01)
A61K  38/16        (2006.01)
A61K  38/08        (2006.01)
A61P  25/28        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
FI C07K 14/81
C07K 14/00 ZNA
C07K 7/06
C12N 9/99
A61K 38/16
A61K 38/08
A61P 25/28
A61P 43/00 111
請求項の数または発明の数 6
全頁数 25
出願番号 特願2013-554307 (P2013-554307)
出願日 平成25年1月16日(2013.1.16)
国際出願番号 PCT/JP2013/050663
国際公開番号 WO2013/108780
国際公開日 平成25年7月25日(2013.7.25)
優先権出願番号 2012006687
2012208277
優先日 平成24年1月17日(2012.1.17)
平成24年9月21日(2012.9.21)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成27年11月27日(2015.11.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
発明者または考案者 【氏名】井原 康夫
【氏名】舟本 聡
【氏名】佐々木 亨
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】高山 敏充
参考文献・文献 米国特許出願公開第2009/0176711(US,A1)
国際公開第2009/068269(WO,A1)
Cell,2005年,Vol. 122,pp.435-447
調査した分野 C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号3~6、及び14の何れか1つにて示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む、γセクレターゼ活性阻害剤。
【請求項2】
配列番号3、4、6、8、又は14にて示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む、βセクレターゼ活性阻害剤。
【請求項3】
配列番号3、4、6、14、又は22にて示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む、Aβタンパク質産生抑制剤。
【請求項4】
配列番号3、4、6、14、又は22にて示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む、アルツハイマー病治療及び/又は予防剤。
【請求項5】
配列番号3、4、6、14、又は22にて示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
【請求項6】
アルツハイマー病を治療及び/又は予防するための、医薬の製造のための、配列番号3、4、6、14、又は22にて示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの使用。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アミロイドβタンパク質の産生を特異的に抑制するポリペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
アミロイドβタンパク質(以下、本明細書においてAβタンパク質と称することがある。)は、アルツハイマー病の原因タンパク質の1つとして考えられている。具体的には、このAβタンパク質が脳内にて蓄積していることが、アルツハイマー病の病態の1つとして認識されている。このようなAβタンパク質が、脳内にて蓄積することによって剛直な繊維状の分子構造を形成し、脳内の神経細胞を死に至らしめることなり、結果として神経機能が損傷してアルツハイマー病が発症するものと考えられている。
【0003】
Aβタンパク質は、細胞膜貫通タンパク質であるアミロイド前駆体タンパク質(以下、本明細書にてAPPと称することがある。)がβセクレターゼによって切断された細胞膜貫通タンパク質であるβCTFが、更にγセクレターゼにて切断されて細胞膜から遊離し、脳内にて蓄積するものと考えられている。
【0004】
γセクレターゼにて切断されたβCTFはAβタンパク質と、AICDとに分けられることが知られており、APPがβセクレターゼによって切断されることにより、sAPPβが遊離することも知られている(図1)。
【0005】
成熟APPを基準にすれば、Aβタンパク質は653~694番目のアミノ酸残基に該当し、βCTFは653~751番目のアミノ酸残基に該当する。また、sAPPβは18~652番目のアミノ酸残基に該当し、AICDは701~751番目のアミノ酸残基に該当する。
【0006】
以上のことから、γセクレターゼの阻害剤はアルツハイマー病の原因タンパク質である、Aβタンパク質の蓄積を抑制する効果を発揮する剤として考えられていた。
【0007】
ところが、それぞれ膜貫通タンパク質であるPen-2、プレセニリン、ニカストリン、及びAph-1を含む複合体として知られるγセクレターゼは、アスパラギン酸プロテアーゼに属し、上述のAPPのみならずAPLP1、APLP2、Notch、Jagged2、Delta1、E-cadherin、N-cadherin、CD44、ErbB4、Nectin1、LRP1等といった膜貫通タンパク質、レセプター等も基質とするプロテアーゼである。
【0008】
従って、Aβタンパク質の産生抑制作用を得るために、L-685,458、DAPT、LY-411,575等といったγセクレターゼの活性阻害剤を使用すれば、上述のβCTF以外のタンパク質に対するγセクレターゼのプロテアーゼとしての酵素活性までもが抑制されてしまい、斯かる阻害剤をそのまま薬剤として用いれば、副作用が生じるといった可能性が危惧されている。
【0009】
例えば、γセクレターゼの阻害剤の1つであるLY-411,575は、胸腺を萎縮させることや脾臓における成熟B細胞の細胞数を減少させること等が報告されており、このような阻害剤をそのまま医薬組成物とした場合、免疫等の点で副作用を引き起こす可能性が示唆されている(非特許文献1)。さらに、γセクレターゼの酵素活性そのものを低下させると、皮膚の異常、扁平上皮ガン、脾臓の肥大等を引き起こすことも報告されている(非特許文献2)。
【0010】
また、Aβタンパク質の産生機序に鑑みれば、βセクレターゼの酵素活性を阻害する化合物も有効であると考えられるが、βセクレターゼのノックアウトマウスは、出生数が減少するといった報告があり、アルツハイマー病に対する薬剤としては好ましくない。
【0011】
そして、非ステロイド性抗炎症薬(以下、本明細書でNSAIDsと称することがある。)がAβタンパク質の産生抑制剤として有効であるといった知見が存在するが、いくつかの家族性アルツハイマー病(例えば、プレセニリンの変異を有する場合。)には、効果がないことが知られている(非特許文献3)。さらに軽度認知障害やアルツハイマー病患者から分離したγセクレターゼは活性が変化しており、Aβ42を低下させるγセクレターゼモヂュレーターの効果が低いことがわかった(非特許文献4)。
【0012】
また、βCTFの細胞外領域であるN末端にFLAGタグを付して発現させた場合、抗FLAG抗体の存在下では、γセクレターゼによる分解が見られない(非特許文献5)。
【先行技術文献】
【0013】

【非特許文献1】Wong,G. T.et al.J.Biol.Chem.2004;279:12876-12882
【非特許文献2】Choi,S.H.et al.J.Neurosci.2007;27:13579-13580
【非特許文献3】Page,R.M.et al.J.Biol.Chem.2008;283:677-683
【非特許文献4】Kakuda,N.et al.EMBO Mol.Med.2012;4:344-352
【非特許文献5】Shah,S.et al.Cell.2005;122:435-447
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述のように、アルツハイマー病の治療及び/又は予防の為には、Aβタンパク質の蓄積を阻害する化合物の開発が求められているにもかかわらず、Aβタンパク質の産生を特異的に阻害する化合物に関する知見は何ら得られていない。
【0015】
従って、本発明の主な目的は、Aβタンパク質の産生を特異的に阻害し、アルツハイマー病に対する治療及び/又は予防の為の薬剤の有効成分となる化合物を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、Aβタンパク質の産生を特異的に抑制する化合物を探索するに際して、βCTFに対してγセクレターゼが酵素反応を起こすことにより、Aβタンパク質を産生するところに着目した。ここで、γセクレターゼそのものの酵素活性を阻害する観点ではなく、γセクレターゼとβCTFとの結合を特異的に阻害する観点から、Aβタンパク質の産生を特異的に抑制する効果を発揮する化合物の探索を行った。
【0017】
本発明者は、βCTFの細胞外ドメインとなるN末端領域に対して特異的に結合するモノクローナル抗体の存在する環境下において、βCTFとγセクレターゼを反応させたところ、Aβタンパク質の産生を顕著に、且つ特異的に阻害する効果を発揮することを見出した。また、γセクレターゼのβCTF以外の基質に対する酵素活性には殆ど影響を及ぼさないことも見出した。
【0018】
本発明者は、斯かる知見に基づいて鋭意研究を重ねた結果、Aβタンパク質の産生を特異的に抑制する効果を発揮する化合物として、特定のアミノ酸配列を有するペプチドが特に顕著な効果を発揮することを見出した。本発明は、以下に示す態様を広く包含するものである。
【0019】
項1 配列番号1、13、14、又は22の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有し、βCTFのN末端領域に結合するポリペプチド。
【0020】
更に、以下の(項1-1)~(項1-6)に記載した態様の発明が例示される。
(項1-1)配列番号2~14、又は22の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有する、上記項1に記載のポリペプチド。
(項1-3)配列番号3、4、6、10、11、14、又は22の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有する、上記項1に記載のポリペプチド。
(項1-4)アミド末端がアセチル化及び/又はカルボキシ末端がアミド化された、上記項1、及び項(1ー1)~(1-3)の何れか1つに記載のポリペプチド。
(項1-5)前記βCTFのN末端領域が、配列番号15にて示されるアミノ酸配列を有することを特徴とする、上記項1、及び項(1-1)~(1-4)の何れか1つに記載のポリペプチド。
(項1-6)前記結合が、50μM以下のKD値を満たすことを特徴とする上記項1、及び項(1-1)~(1-5)の何れか1つに記載のポリペプチド。
【0021】
項2 上記項1、及び(項1-1)~(項1-6)の何れか1つに記載のポリペプチドを含む、γセクレターゼ活性阻害剤。
【0022】
更に、以下の(項2-1)~(項2-3)に記載した態様の発明が例示される。
(項2-1)上記項1、及び(項1-1)~(項1-6)の何れか1つに記載のポリペプチドを含む、βCTF特異的γセクレターゼ活性阻害剤。
【0023】
(項2-2)配列番号3にて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む上記項2に記載の、γセクレターゼ活性阻害剤。
【0024】
(項2-3)配列番号3にて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む上記項2に記載の、βCTF特異的γセクレターゼ活性阻害剤。
【0025】
項3 上記項1、及び(項1-1)~(項1-6)の何れか1つに記載のポリペプチドを含む、βセクレターゼ活性阻害剤。
【0026】
更に、以下の(項3-1)~(項3-3)に記載した態様の発明が例示される。
(項3-1)上記項1、及び(項1-1)~(項1-6)の何れか1つに記載のポリペプチドを含む、APP特異的βセクレターゼ活性阻害剤。
【0027】
(項3-2)配列番号6にて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む上記項3に記載の、βセクレターゼ活性阻害剤。
【0028】
(項3-3)配列番号6にて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む上記項3に記載の、APP特異的βセクレターゼ活性阻害剤。
【0029】
項4 上記項1、及び(項1-1)~(項1-6)の何れか1つに記載のポリペプチドを含む、Aβタンパク質産生抑制剤。
【0030】
更に、以下の(項4-1)~(項4-3)に記載した態様の発明が例示される。
(項4-1)上記項1、及び(項1-1)~(項1-6)の何れか1つに記載のポリペプチドを含む、Aβタンパク質特異的産生抑制剤。
【0031】
(項4-2)配列番号6にて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む上記項4に記載の、Aβタンパク質産生抑制剤。
【0032】
(項4-3)配列番号6にて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む上記項4に記載の、Aβタンパク質特異的産生抑制剤。
【0033】
項5 上記項1、及び(項1-1)~(項1-6)の何れか1つに記載のポリペプチドを含む、アルツハイマー病治療及び/又は予防剤。
【0034】
更に、以下の(項5-1)に記載した態様の発明が例示される。
(項5-1)配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、上記項5に記載の治療及び/又は予防剤。
【0035】
項6 上記項1、及び(項1-1)~(項1-6)の何れか1つに記載のポリペプチドを、アルツハイマー病患者に投与する工程を含む、アルツハイマー病を治療及び/又は予防する方法。
【0036】
更に、以下の(項6-1)に記載した態様の発明が例示される。
(項6-1)配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを、アルツハイマー病患者に投与する工程を含む、上記項6に記載の方法。
【0037】
項7 アルツハイマー病の治療及び/又は予防における使用のための、上記項1、及び(項1-1)~(項1-6)の何れか1つに記載のポリペプチド。
【0038】
更に、以下の(項7-1)に記載した態様の発明が例示される。
(項7-1)アルツハイマー病の治療及び/又は予防における使用のための、配列番号6に示されるアミノ酸配列を有する、上記項7に記載のポリペプチド。
【0039】
項8 アルツハイマー病を治療及び/又は予防するための、医薬の製造のための、上記項1、及び(項1-1)~(項1-6)の何れか1つに記載のポリペプチドの使用。
【0040】
更に、以下の(項8-1)に記載した態様の発明が例示される。
(項8-1)アルツハイマー病を治療及び/又は予防するための、医薬の製造のための、配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドの、上記項8に記載の、使用。
【0041】
以下に、本発明をより詳細に説明する。
【0042】
本発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。例えば、遺伝子工学及び分子生物学的技術であれば、Sambrook and Russell,”Molecular Cloning A LABORATORY MANUAL”,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,(2001);Ausubel,F.M.et al.“CurrentProtocols in Molecular Biology”,John Wiley&Sons,New York等の文献を参照すればよい。
【0043】
ポリペプチド
本発明に係るポリペプチドは、配列番号1、13、14、又は22の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有する。好ましくは、配列番号2~14、又は22の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有する。より好ましくは、配列番号2~8、10~12、14、又は22の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有する。さらに好ましくは、配列番号3、4、6、10、11、14、又は22の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有する。
【0044】
なお、上記配列番号1にて示されるアミノ酸配列のうち、2番目、3番目、4番目、5番目、11番目、12番目、13番目、14番目、16番目、19番目、21番目、22番目及び23番目の位置のアミノ酸残基は、下記の表1に示すアミノ酸残基の何れかである。
【0045】
【表1】
JP0006168998B2_000002t.gif

【0046】
なお、配列番号14に示されるアミノ酸配列の3番目のアミノ酸残基は、L-4,4’ビフェニルアラニン残基である。即ち、配列番号14にて示されるアミノ酸配列を有する本発明にかかるポリペプチドにおいて、2番目のグリシンのカルボキシル基と上記L-4,4’ビフェニルアラニンのアミド基がペプチド結合しており、4番目のスレオニンのアミド基と上記L-4,4’ビフェニルアラニンのアミド基がペプチド結合している。
【0047】
同様に、配列番号22に示されるアミノ酸配列の3番目のアミノ酸残基は、L-4,4’ビフェニルアラニン残基である。即ち、配列番号22にて示されるアミノ酸配列を有する本発明にかかるポリペプチドにおいて、2番目のアルギニンのカルボキシル基と上記L-4,4’ビフェニルアラニンのアミド基がペプチド結合しており、4番目のグリシンのアミド基と上記L-4,4’ビフェニルアラニンのアミド基がペプチド結合している。
【0048】
本発明に係るポリペプチドは、アミド末端がアセチル化されていてもよく、又はカルボキシ末端がアミド化されていてもよい。そして、アミド末端がアセチル化され、且つカルボキシ末端がアミド化されていてもよい。
【0049】
本発明に係るポリペプチドは、適宜修飾が施されていてもよい。具体的には、ビオチン修飾、蛍光色素修飾、糖鎖修飾、脂質修飾等が挙げられ、これらの何れかに限定されるものではない。
【0050】
このような修飾箇所は、特に限定されるものではなく、ポリペプチド内部、ポリペプチドのC末端、又はポリペプチドのN末端の何れであってもよい。
【0051】
これらの修飾方法は、公知の方法を採用すればよく、特に限定されるものではない。
【0052】
本発明に係るポリペプチドはβCTFのN末端領域に結合する。βCTFとは、APP(例えばNCBIのAccession No Q95241.1等に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質)が、βセクレターゼによって切断された産物であるために、βCTFのN末端領域に結合するということは、APPに結合するということ同意である。そして、βCTFのN末端領域とは、APPからすれば、βセクレターゼの切断認識部位付近に該当するものである。
【0053】
また、βCTFのN末端領域付近はγセクレターゼによっても認識及び切断され、切断後の断片がAβタンパク質(例えばNCBIのAccession No 1Z0Q_A、1BA6_A)に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質)として産生されるため、βCTFのN末端領域に結合するということは、Aβタンパク質に結合するということ同じ意味である。
【0054】
本発明に係るポリペプチドが結合する、βCTFのN末端領域の具体的なアミノ酸配列は、特に限定はされないが、例えば、配列番号15等にて示されるアミノ酸配列である。また、配列番号15にて示されるアミノ酸の一部であってもよい。なお、本発明におけるβCTFのN末端領域とは、必ずしもβCTFのN末端に存在するAsp残基を含んでいなくともよい。
【0055】
上述したβCTFのアミノ酸配列として、具体的にはヒト型のβCTFであれば、例えば配列番号20に示すアミノ酸配列が挙げられる。また、マウス型のβCTFであれば、例えば配列番号21に示すアミノ酸配列が挙げられる。
【0056】
本発明に係るポリペプチドと、βCTFのN末端領域との結合の強さは、特に限定はされないが、例えば解離定数(KD)にて表すとすれば、通常50μM以下程度の範囲を満たすものであり、好ましくは5μM以下程度である。
【0057】
本発明に係るポリペプチドは、種々の溶媒に可溶であり、その具体的な溶媒は特に限定されることはないが、例えば水、PBS、DMSO、DMF等の溶媒が挙げられる。また、これらの溶媒を二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0058】
本発明に係るポリペプチドは、βCTFのN末端領域に結合する。上述のように当該領域は、γセクレターゼのβCTF切断認識部位付近に該当する領域であることから、γセクレターゼの活性阻害剤として有用である。
【0059】
また、本発明に係るポリペプチドは、βCTFのN末端領域に結合する。上述のように当該領域は、βセクレターゼのAPP切断認識付近に該当する領域であることから、βセクレターゼの活性阻害剤として有用である。
【0060】
本発明に係るポリペプチドは、公知の方法によって作製することが出来る。具体的には、ペプチド合成機などを用いた化学的な製造方法を採用してもよいし、ポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する核酸を宿主細胞に導入して、生化学的な合成方法を採用してもよい。
【0061】
なお、製造した本発明に係るポリペプチドはカラムクロマトグラフィー等の公知の方法を用いて精製すればよい。
【0062】
γセクレターゼ活性阻害剤
本発明に係るγセクレターゼ活性阻害剤は、上述の本発明に係るポリペプチドを含む。上述のポリペプチドの中でも、配列番号2~14、又は22の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドが好ましい。
【0063】
このような本発明に係るγセクレターゼ活性阻害剤に含まれる好ましいポリペプチドの中でも、配列番号3、4、6、7、10、14、又は22の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドが好ましい。
【0064】
さらに、配列番号3、4、6、10又は14の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;配列番号3、4、6、又は14の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;配列番号3、4、又は6の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;配列番号3又は6にて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドの順により好ましく、これらの中でも最も好ましいポリペプチドは、配列番号3にて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0065】
本発明に係るγセクレターゼ活性阻害剤に含まれる本発明に係るポリペプチドは、上述のようにβCTFのN末端領域に結合する。本発明に係るγセクレターゼ活性阻害剤は、このような現象に基づいて機能を発揮するために、γセクレターゼが認識するβCTF以外の他の基質に対するγセクレターゼ活性は阻害しない傾向となる。即ち、本発明のγセクレターゼは、βCTF特異的γセクレターゼ活性阻害剤とすることが好ましい。
【0066】
「βCTF特異的」とは、γセクレターゼ活性阻害剤がγセクレターゼの活性を阻害する基質として、βCTFとその他の候補基質が同時に存在している場合に、βCTFをより活性を阻害する基質として選択する傾向であることを示す。
【0067】
本発明のγセクレターゼ活性阻害剤をβCTF特異的γセクレターゼ活性阻害剤とする場合、γセクレターゼ活性阻害剤が競合的な阻害活性を示すことが好ましい。
【0068】
本発明に係るγセクレターゼ活性阻害剤は、上述の本発明のポリペプチドを含むものであるが、当該ポリペプチド以外に成分を含まず、そのままγセクレターゼ活性阻害剤としてもよい。
【0069】
本発明に係るγセクレターゼ活性阻害剤に、本発明に係るポリペプチド以外の他の成分が含有される場合、その具体的な他の成分は、γセクレターゼの活性阻害効果を減少させない限り、特に限定されるわけではないが、例えば防腐剤、殺菌剤、安定剤等といった公知の剤が含まれていてもよい。そしてこの場合、本発明に係るγセクレターゼ活性阻害剤における本発明に係るポリペプチドの含有割合は、γセクレターゼ活性阻害剤に対して通常0.001~99.9重量%程度とすればよい。
【0070】
上述のように、γセクレターゼはβCTFを基質として認識し、Aβタンパク質を産生させる。従って、本発明に係るγセクレターゼ活性阻害剤に含まれる本発明に係るポリペプチドは、Aβタンパク質の産生抑制剤としても有用である。
【0071】
βセクレターゼ活性阻害剤
本発明に係るβセクレターゼ活性阻害剤は、上述の本発明に係るポリペプチドを含む。上述のポリペプチドの中でも、配列番号2~14、又は22の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドが好ましい。
【0072】
このような本発明に係るβセクレターゼ活性阻害剤に含まれる好ましいポリペプチドの中でも、配列番号3~8、10~12、14、又は22の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドが好ましい。
【0073】
さらに、配列番号3~8、10、12又は14の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;配列番号3~8、12、又は14の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;配列番号3~8又は14の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;配列番号3~6、8又は14の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;配列番号3、4、6、8又は14の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;配列番号3、4、6、又は8の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;配列番号4、6、又は8の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;配列番号4又は6にて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドの順により好ましく、これらのポリペプチドの中でも最も好ましいのは、配列番号4にて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0074】
本発明に係るβセクレターゼ活性阻害剤に含まれる本発明に係るポリペプチドは、上述のようにAPPのβセクレターゼの切断認識部位付近に結合する。本発明に係るβセクレターゼ活性阻害剤は、このような現象に基づいて機能を発揮するために、βセクレターゼが認識するAPP以外の他の基質に対するβセクレターゼ活性は阻害しない傾向となる。即ち、本発明のβセクレターゼは、APP特異的βセクレターゼ活性阻害剤とすることが好ましい。
【0075】
「APP特異的」とは、βセクレターゼ活性阻害剤がβセクレターゼの活性を阻害する基質として、APPとその他の候補基質が同時に存在している場合に、APPをより活性を阻害する基質として選択する傾向であることを示す。
【0076】
本発明のβセクレターゼ活性阻害剤をAPP特異的βセクレターゼ活性阻害剤とする場合、βセクレターゼ活性阻害剤が競合的な阻害活性を示すことが好ましい。
【0077】
本発明に係るβセクレターゼ活性阻害剤は、上述の本発明のポリペプチドを含むものであるが、当該ポリペプチド以外に成分を含まず、そのままβセクレターゼ活性阻害剤としてもよい。
【0078】
本発明に係るβセクレターゼ活性阻害剤に、本発明に係るポリペプチド以外の他の成分が含有される場合、その具体的な他の成分は、βセクレターゼの活性阻害効果を減少させない限り、特に限定されるわけではないが、例えば防腐剤、殺菌剤、安定剤等といった公知の剤が含まれていてもよい。そしてこの場合、本発明に係るβセクレターゼ活性阻害剤における本発明に係るポリペプチドの含有割合は、βセクレターゼ活性阻害剤に対して通常0.001~99.9重量%程度とすればよい。
【0079】
上述のように、βセクレターゼはAPPを基質として認識してβCTFを産生し、産生されたβCTFはγセクレターゼの働きによって分解されてAβタンパク質を産生させる。従って、本発明に係るβセクレターゼ活性阻害剤に含まれる本発明に係るポリペプチドは、Aβタンパク質の産生抑制剤としても有用である。
【0080】
Aβタンパク質産生抑制剤
本発明に係るAβタンパク質産生抑制剤は、上述の本発明に係るポリペプチドを含む。上述のポリペプチドの中でも、配列番号2~14、又は22の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドが好ましい。
【0081】
このような本発明に係るAβタンパク質産生抑制剤に含まれる好ましいポリペプチドの中でも、配列番号3、4、6、10、11、14、又は22の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドが好ましい。
【0082】
さらに、配列番号3、4、6、10、14、又は22の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;配列番号3、4、6、10、又は14の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;配列番号3、4、6、又は14の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;配列番号3、4、又は6の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;配列番号3又は6にて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドの順により好ましく、これらのポリペプチドの中でも最も好ましいのは、配列番号6にて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0083】
本発明に係るAβタンパク質産生抑制剤は、上述の本発明のポリペプチドを含むものであるが、当該ポリペプチドは特にβCTF特異的γセクレターゼ阻害活性作用、及び/又はAPP特異的βセクレターゼ活性阻害作用を発揮する。APPがβセクレターゼの働きによってβCTFを産生し、当該βCTFはγセクレターゼの働きによってAβタンパク質を産生することから、本発明に係るポリペプチドを含むAβタンパク質産生抑制剤は、特にAβタンパクを特異的に産生抑制する効果を発揮する。
【0084】
従って、本発明に係るAβタンパク質産生抑制は、Aβタンパク質特異的産生抑制剤とすることが好ましい。
【0085】
「Aβタンパク質特異的」とは、本発明に係るAβタンパク質産生抑制剤が、他の産生抑制候補物質と共存している場合に、他の物質よりもAβタンパク質をより選択的に産生を抑制する傾向であることを示す。
【0086】
本発明に係るAβタンパク質産生抑制剤に、本発明に係るポリペプチド以外の他の成分が含有される場合、その具体的な他の成分は、Aβタンパク質産生抑制効果を減少させない限り、特に限定されるわけではないが、例えば防腐剤、殺菌剤、安定剤等といった公知の剤が含まれていてもよい。そしてこの場合、本発明に係るAβタンパク質産生抑制剤における本発明に係るポリペプチドの含有割合は、Aβタンパク質産生抑制剤に対して通常0.001~99.9重量%程度とすればよい。
【0087】
Aβタンパク質が産生されて蓄積することは、アルツハイマー病の発症機序の1つであるために、Aβタンパク質の産生を抑制することは、アルツハイマー病の予防及び/又は治療に有用である。
【0088】
従って、本発明に係るAβタンパク質産生抑制剤に含まれるポリペプチドは、アルツハイマー病の治療及び/又は予防剤としても有用である。
【0089】
以上のことから、上述した本発明に係るポリペプチドは、アルツハイマー病の治療及び/又は予防における使用に好適である。
【0090】
具体的な『アルツハイマー病の治療及び/又は予防における使用』とは、以下の「アルツハイマー病の治療及び/又は予防剤」にて詳述する使用方法を参照すればよい。
【0091】
また、上述した本発明に係るポリペプチドは、アルツハイマー病の治療及び/又は予防するための、医薬の製造のための使用に好適である。
【0092】
具体的な『アルツハイマー病の治療及び/又は予防するための、医薬の製造のための使用』についても、以下の「アルツハイマー病の治療及び/又は予防剤」にて詳述する使用方法を参照すればよい。
【0093】
アルツハイマー病治療及び/又は予防剤
本発明に係るアルツハイマー病治療及び/又は予防剤は、上述の本発明に係るポリペプチドを含む。上述のポリペプチドの中でも、配列番号2~14、又は22の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドが好ましい。
【0094】
このような本発明に係るアルツハイマー病治療及び/又は予防剤に含まれる好ましいポリペプチドの中でも、配列番号3、4、6、10、11、14、又は22の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドが好ましい。
【0095】
さらに、配列番号3、4、6、10、14、又は22の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;配列番号3、4、6、10、又は14の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;配列番号3、4、6、又は14の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;配列番号3、4、又は6の何れか1つにて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;配列番号3又は6にて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドの順により好ましく、これらのポリペプチドの中でも最も好ましいのは、配列番号6にて示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0096】
本発明に係るアルツハイマー病治療及び/または予防剤は、上述の本発明のポリペプチドを含むものであるが、当該ポリペプチドは特にAβタンパク質特異的産生抑制作用を発揮することから、本発明に係るアルツハイマー病治療及び/又は予防剤は、副作用を低いといった顕著な効果を発揮する。
【0097】
本発明に係るアルツハイマー病の治療及び/又は予防剤に、本発明に係るポリペプチド以外の他の成分が含有される場合、その具体的な他の成分は、アルツハイマー病の治療及び/又は予防効果を減少させない限り、薬学的に許容可能な担体或いは添加物が含まれていてもよい。
【0098】
薬学的に許容可能な担体又は添加物とは、任意の担体、希釈剤、賦形剤、懸濁剤、潤滑剤、アジュバント、媒体、乳化剤、吸収剤、保存剤、界面活性剤、着色剤、香料、或いは甘味料を意味し、これらの中でも公知のものを適宜採用すればよい。
【0099】
この場合、本発明に係るアルツハイマー病の治療及び/又は予防剤における本発明に係るポリペプチドの含有割合は、アルツハイマー病の治療及び/又は予防剤に対して通常0.001~99.9重量%程度とすればよい。
【0100】
本発明に係るアルツハイマー病の治療及び/又は予防剤の剤型は、たとえば錠剤、散剤、シロップ剤、ハップ剤、注射剤、点滴剤等が挙げられ、特に限定はされないが、注射剤又は点滴剤とすることが好ましい。このような注射剤や点滴剤は、水性であっても、非水性であっても、懸濁性であっても良い。また、用時調製型の剤型であってもよい。
【0101】
本発明に係るアルツハイマー病の治療及び/又は予防剤は、アルツハイマー病に罹患した患者に投与する工程を含む免疫疾患の治療方法における利用可能性を有している。また、アルツハイマー病の病態や症状を発症していないものの、アルツハイマー病の素因を持ち得る患者に投与する工程を含むアルツハイマー病の予防方法における利用可能性も有する。さらに、アルツハイマー病発症前段階の軽度認知障害(例えばMMSE26点以下等)を呈する者においても利用可能性を有する。
【0102】
本発明のアルツハイマー病患者とは、特に限定はされないが、例えば、記憶障害、見当識障害、学習障害、注意障害、空間認知機能、問題解決能力の障害等といった、徐々に進行する認知障害等の症状を呈する患者であり、その所見として画像診断等で大脳皮質に老人斑(Aβタンパク質の沈着像)が存在すると診断される患者;びまん性の脳萎縮が存在すると診断される患者;タウタンパク質、Aβ等の髄液バイオマーカー、血液バイオマーカー等で診断された患者であればよい。
【0103】
本発明に係るアルツハイマー病の治療及び/又は予防剤の投与量並びに投与方法は、対象とする患者の性別、人種、年齢、全身状態、疾患の重篤度等に応じて、0.001~100mg/kg/dayの範囲で適宜設定することができる。
【0104】
本発明に係るアルツハイマー病の治療及び/又は予防剤は、上記の量を一日に一度に投与してもよく、数回に分けて投与してもよい。また、上記疾患に対する治療効果を有する範囲において、投与間隔は、毎日、隔日、毎週、隔週、2~3週毎、毎月、隔月または2~3ヶ月毎でもよい。投与方法は、例えば経口、筋肉内、静脈内、動脈内、くも膜下腔内、皮内、腹腔内、鼻腔内、肺内、眼内、腟内、頸部内、直腸内、皮下等へ投与する方法が挙げられ、特に限定はされない。
【0105】
アルツハイマー病の治療及び/又は予防方法
本発明に係るアルツハイマー病の治療及び/又は予防方法は、上述の本発明に係るポリペプチドを、アルツハイマー病患者に投与する工程を含む。
【0106】
具体的な、アルツハイマー病患者、投与方法等については、上記「アルツハイマー病治療及び/又は予防剤」にて詳述したものを参照すればよい。
【発明の効果】
【0107】
以下に、本発明に係るポリペプチドが有する効果について列挙する。なお、本発明に係るポリペプチドは、以下の全ての効果を有するポリペプチドに限定されないのは言うまでもない。
【0108】
本発明に係るポリペプチドは、γセクレターゼ活性阻害剤、特にβCTF特異的γセクレターゼ活性阻害剤の有効成分として用いることができる。
【0109】
本発明に係るポリペプチドは、βセクレターゼ活性阻害剤、特にAPP特異的βセクレターゼ活性阻害剤の有効成分として用いることができる。
【0110】
本発明に係るポリペプチドは、Aβタンパク質産生抑制剤、特にAβタンパク質特異的産生抑制剤の有効成分として用いることができる。
【0111】
本発明に係るポリペプチドは、アルツハイマー病治療及び/又は予防剤の有効成分として用いることができる。特にヒト等の個体に投与した場合、副作用が少ないアルツハイマー病治療及び/又は予防剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】Aβタンパク質、βCTF、APP、sAPPβ、及びAICDと、γセクレターゼ並びにβセクレターゼの切断部位を示す模式図。
【図2】本発明に係るポリペプチドの、in vitroにおけるγセクレターゼ活性阻害実験結果を示す図。
【図3】本発明に係るポリペプチドの、in vitroにおけるγセクレターゼ活性阻害実験結果を示す図。
【図4】本発明に係るポリペプチドの、in vitroにおけるγセクレターゼ活性阻害実験結果を示す図。
【図5】本発明に係るポリペプチドの、in vitroにおけるβセクレターゼ活性阻害実験結果を示す図。
【図6】本発明に係るポリペプチドの、細胞レベルでのγセクレターゼ活性阻害実験、βセクレターゼ活性阻害実験、並びにAβタンパク質産生抑制実験結果を示す図。
【図7-1】図6に示す実験結果をグラフ化した図。
【図7-2】図6に示す実験結果をグラフ化した図。
【図8】本発明に係るポリペプチドの、細胞レベルでのγセクレターゼ活性阻害実験、βセクレターゼ活性阻害実験、並びにAβタンパク質産生抑制実験結果を示す図。
【図9】本発明に係るポリペプチドを、動物個体に投与した実験結果を示す図。
【図10】本発明に係るポリペプチドの細胞内分布を示す図。(A)は、CHOーK1細胞に対して、本発明に係るビオチン化ポリペプチドを作用させた後に、細胞を固定しTriron X 100処理し、アビジン修飾化Alexa488を作用させた結果を示す。(B)は、APPを過剰発現させたCHOーK1細胞(以下、7WD10細胞)に対して、本発明に係るビオチン化ポリペプチドを作用させた後に、細胞を固定しTriron X 100処理し、アビジン修飾化Alexa488を作用させた結果を示す。(C)は、7WD10細胞に対して、細胞を固定しTriron X 100処理し、アビジン修飾化Alexa488のみを作用させた結果を示す。なお、これらの図中のバーは、50μmを示す。
【図11】本発明に係るポリペプチドのマウス型Aβ産生抑制を示す図。(A)は、CHO-K1細胞、Neuro2A細胞(N2A)に対して、本発明にかかるポリペプチドを作用させた際のウエスタンブロッティング像を示す。(B)は、(A)のデータをデンシトメトリーで解析した結果を示す。
【図12】本発明に係るポリペプチドのマウス腹腔への投与実験結果を示す図。(A-1)及び(A-2)は、腹腔投与後の大脳皮質中におけるAβの量を解析したウエスタンブロッティング像を示す。(B)は、(A)のデータをデンシトメトリーで解析した結果を示す。(C)は、腹腔投与後の海馬における、本発明に係るポリペプチドの局在を示す組織免疫染色像。図中のバーは、50μmを示す。
【図13】本発明に係るポリペプチドの、Aβタンパク質産生抑制実験結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0113】
以下に本発明をより詳細に説明するための実施例を記載する。なお、本発明が以下に示す実施例に記載の内容に限定されないのは言うまでもない。
<実施例>
〔ポリペプチドの作製〕
βCTFのN末端領域に該当するポリペプチドである配列番号15にて示されるポリペプチド(Amyloidβ 1-9)に対して特異的に結合するポリペプチドを、ポリペプチドスクリーニング技術を用いて同定し、製造した。

【0114】
【表2】
JP0006168998B2_000003t.gif

【0115】
下記に示す実験において、上述の配列番号2~14に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドは全てDMSOに溶かした状態で使用した。

【0116】
上記のペプチド名「#4」の配列番号15に示すアミノ酸配列に対する解離定数(KD)を測定したところ、2.62μMであった。

【0117】
〔In vitroでの解析〕
実験例1:γセクレターゼ活性阻害実験1
図2の(A)に示すようなβCTFを含むポリペプチド(C99-FLAG:配列番号16)及びC末端側にFLAGペプチドを有するマウス由来のNotchタンパク質(NCBI Accession No Q01705.2の改変型;配列番号17;以後、Notchとする)を、それぞれ最終濃度が50nMとなるような溶液を調整した。

【0118】
これらの溶液に、9-7ポリペプチド、6-5ポリペプチド、#1ポリペプチド、#2ポリペプチド、#3ポリペプチド、及び#4ポリペプチドを、それぞれの最終濃度が50μMとなるように添加し、次いで50μLのCHAPSO可溶化膜画分(γセクレターゼ含有画分)と4時間反応させた。反応温度は37°Cで行った。陰性対照実験として、上記6種類のポリペプチドに代えてDMSOを用いた。

【0119】
反応後の各サンプルを、C99-FLAGを用いたものは、図2の(A)に示すようにC99-FLAGのN末端を特異的に認識するモノクローナル抗体(82E-1)で、ウエスタンブロットを行い、γセクレターゼによって分解されることにより産生されるAβ40タンパク質の量を測定した。一方、Notchを用いたものは、抗FLAGモノクローナル抗体でウエスタンブロットを行い、同じくγセクレターゼによって分解されることによって産生されるNICDの量を測定した。結果を図2の(B)及び(C)に示す。

【0120】
図2(B)は、Aβタンパク質及びNICDの存在を示すウエスタンブロッティング像である。上記6種類のポリペプチドの存在下では、C99-FLAGはγセクレターゼによって殆ど分解されることはないことを示すC99にて示すバンドが示されている。中でも、#4、#2、#1等のポリペプチドが、γセクレターゼのβCTFに対する切断活性をより阻害することが明らかとなった。

【0121】
一方、上記6種類のいずれのポリペプチドも、NICDの存在を示すバンドが示されていることから、γセクレターゼのNotchに対する切断活性は阻害していないことも明らかとなった。

【0122】
図2(C)は、Aβタンパク質及びNICDを、図2(B)にて示すウエスタンブロッティング像における各バンドの濃さを基に定量化したグラフである。グラフの縦軸はコントロールとして用いたDMSOでの結果を100%とした相対値を示す。上記6種類のポリペプチドの中でも、#1が特にAβタンパク質に対するγセクレターゼの切断活性を阻害しており、Notchに対する切断活性を阻害していないことが明らかとなった。以上のことから、#1ポリペプチドが、最もβCTFに対して選択的にγセクレターゼの切断活性を阻害することが示唆される。

【0123】
実験例2:γセクレターゼ活性阻害実験2
使用するポリペプチドを#1ポリペプチドのみとし、斯かる#1ポリペプチドの添加量を、最終濃度がそれぞれ0.5、1、5、10、20、及び50μMとなるように添加した以外は、上記実験例1と同様の実験を行った。

【0124】
結果を図3の(A)及び(B)に示す。なお、図中にて0μMとあるのは、陰性対照実験として#1ポリペプチドの代わりにDMSOを用いたものである。図3(A)は、Aβタンパク質及びNICDの存在を示すウエスタンブロッティング像である。#1ポリペプチドは濃度依存的にβCTFに対するγセクレターゼの切断活性をより阻害することが明らかとなった。

【0125】
一方、#1ポリペプチドはその濃度に係らず、NICDの存在を示すバンドが示されていることから、γセクレターゼのNotchに対する切断活性は阻害していないことも明らかとなった。

【0126】
図3(B)は、Aβタンパク質及びNICDを、図3(A)にて示すウエスタンブロッティング像における各バンドの濃さを基に定量化したグラフである。グラフの縦軸はコントロールとして用いたDMSOでの結果を100%とした相対値を示す。#1ポリペプチドは濃度依存的に、βCTFに対する選択的なγセクレターゼ切断活性を阻害することが示唆される。

【0127】
実験例3:γセクレターゼ活性阻害実験3
使用するポリペプチドをS4ポリペプチドとし、その添加量を最終濃度がそれぞれ1、5、10、20、及び50μMとなるように添加した以外は、上記実験例1と同様の実験を行った。本実験例では50μMとなるように#4ポリペプチドも添加した。

【0128】
結果を図4に示す。なお、図中にてcontとあるのは、陰性対照実験としてDMSOを添加したものである。図4は、Aβタンパク質及びNICDの存在を示すウエスタンブロッティング像である。S4ポリペプチドも、上記#1ポリペプチドと同様に濃度依存的にβCTFに対するγセクレターゼの切断活性をより阻害することが明らかとなった。

【0129】
一方、S4ポリペプチドも、#1ポリペプチドと同様に、その濃度に係らず、NICDの存在を示すバンドが示されていることから、γセクレターゼのNotchに対する切断活性は阻害していないことも明らかとなった。

【0130】
以上のことからS4ポリペプチドも、#1ポリペプチドと同様に、βCTFに対して選択的にγセクレターゼ切断活性を阻害することが示唆される。

【0131】
実験例4:βセクレターゼ活性阻害実験1
図5の(A)に示すようなAPPを含むポリペプチド(APP-EQ-FLAG:配列番号18)を、最終濃度が50nMとなるような溶液を調整した。

【0132】
この溶液に、9-7ポリペプチド、6-5ポリペプチド、#1ポリペプチド、#2ポリペプチド、#3ポリペプチド、#4ポリペプチド、#5ポリペプチド、#6ポリペプチド、#7ポリペプチド、#8ポリペプチド、#9ポリペプチド、及び#10ポリペプチドを、それぞれの最終濃度が50μMとなるように添加し、次いで50μLのβセクレターゼ(0.02U/μL)と4時間反応させた。反応温度は37°Cで行った。陰性対照実験として、上記12種類のポリペプチドに代えてDMSOを用いた。

【0133】
反応後の各サンプルを、図5の(A)に示すようにAPP-EQ-FLAGのN末端を特異的に認識するモノクローナル抗体(82E-1)で、ウエスタンブロットを行い、βセクレターゼによって分解されることにより産生されるAβ33-FLAGタンパク質の量を測定した。

【0134】
結果を図5の(B)に示す。図5(B)は、βCTF(Aβ33)の存在を示すウエスタンブロッティング像である。上記12種類のポリペプチドのうち、#7を除く11種類のポリペプチドは、APPに対するβセクレターゼの切断活性を阻害することが明らかとなった。

【0135】
中でも、#2、#4、#6、#1、#3、#5、#10、#8、及び#9のポリペプチドの順により好適に、βセクレターゼのAPPに対する切断活性をより阻害することが明らかとなった。

【0136】
実験例5:βセクレターゼ活性阻害実験2
使用するポリペプチドをS4及び#4ポリペプチドとし、これらのポリペプチドの添加量を、最終濃度がそれぞれ1、5、10、20、50、及び100μMとなるように添加した以外は、上記実験例4と同様の実験を行った。

【0137】
結果を図5(C)に示す。なお、図中にてcontとあるのは、陰性対照実験としてDMSOを添加したものである。

【0138】
S4ポリペプチドは、#4ポリペプチドには劣るもののAPPに対するβセクレターゼの切断活性を阻害することが明らかとなった。また、S4ポリペプチドも#4ポリペプチドも、濃度依存的にβセクレターゼのAPPに対する切断活性をより阻害することが明らかとなった。

【0139】
〔培養細胞での解析〕
実験例6:Aβタンパク質産生抑制実験1
APPタンパク質を安定に発現し、且つ、一過的にNotchを発現するCHO-K1細胞(7WD10細胞)に対して、#1、#2、及び#4ポリペプチドを作用させて、Aβタンパク質の産生と、Notchタンパク質の切断を確認する実験を行った。

【0140】
上記細胞の培養液に、上記3種類のポリペプチドをそれぞれ最終濃度が1、5、10、20、並びに50μMとなるように添加した。その後、細胞培養液(Medium)或いは細胞破砕液(Cell lysate)中に含まれるsAPPβ、NICD、βCTF(c99)、及びAβタンパク質(細胞溶解液中に存在するものをintracellular Aβとし、細胞培養液中に存在するものをreleased Aβとする)それぞれ認識する抗体を用いたウエスタンブロッティング法にて確認した。

【0141】
結果を図6、図7-1、及び図7-2にて示す。図中にて1μM L685458とあるのは、上記3種類のポリペプチドに代えて、最終濃度が1μMとなるようにγセクレターゼの阻害剤であるL685458を添加した実験結果を示す。

【0142】
図6では、#1、#2、及び#4ポリペプチドの何れを添加した場合でも、その添加した最終濃度に依存して、細胞溶解液中にsAPPが存在しなくなることが示されている。このことは、#1、#2、及び#4の全てのポリペプチドが、7WD10細胞にて発現しているAPPに対して、内在的なβセクレターゼによる切断活性を好適に阻害していることを示している。一方で、γセクレターゼの阻害剤であるL685458には、この様な現象は見られなかった。

【0143】
また、#1、#2、及び#4ポリペプチドの何れを添加した場合でも、細胞溶解液中のβCTF(C99)並びにAβタンパク質が、添加した最終濃度に依存して減少することが示されている。このことから、#1、#2、及び#4の全てのポリペプチドは、7WD10細胞にて発現しているβCTFか、或いはAPPがβセクレターゼによって切断されたβCTFに対して、内在的なγセクレターゼによる切断活性を好適に阻害していることを示している。この様なβCTF(C99)並びにAβタンパク質が減少する現象は、γセクレターゼの阻害剤であるL685458を添加した場合にも見られた。

【0144】
そして、#1、#2、及び#4ポリペプチドの何れを添加した場合でも、細胞培養液中のAβタンパク質も、その添加した濃度に依存して減少し、L685458を添加した場合も細胞培養液中のAβタンパク質が減少することが明らかとなった。

【0145】
以上のことから、#1、#2、及び#4ポリペプチドの何れも、APPを過剰発現する細胞において、内在的なγセクレターゼ及びβセクレターゼによる切断活性を好適に阻害することが明らかとなった。このことは、#1、#2、及び#4の全てのポリペプチドが、細胞レベルにおいてAβタンパク質の産生を抑制することを明らかに示している。

【0146】
そして、#1、#2、及び#4の全てのポリペプチドを添加した場合には、その添加した濃度に係らず、細胞溶解液中にNICDの存在量を減少させないことが明らかに示されている。一方、γセクレターゼの阻害剤であるL685458を添加した場合には、NICDの量が減少していることも明らかである。

【0147】
このことは、#1、#2、及び#4ポリペプチドの何れも、細胞レベルにおいて、APPに対するβセクレターゼによる切断活性、並びにβCTFに対するγセクレターゼの阻害活性を特異的に阻害するものであり、延いては細胞レベルにおいて、Aβタンパク質の産生を特異的に阻害する活性を有していることを示している。

【0148】
図7-1及び図7-2は、細胞溶解液中のsAPPβ、NICD、及びAβタンパク質並びに細胞溶解液中のAβタンパク質の量を、図6にて示すウエスタンブロッティング像における各バンドの濃さを基にして定量化したグラフである。グラフの縦軸はコントロールとして用いたDMSOでの結果を100%とした相対値を示す。また、グラフ中の「*」並びに「**」は、それぞれAnova,Scheff’s post hoc testによってP<0.05、並びにp<0.001の有意差であることを示している。

【0149】
図7-1及び図7-2に示すグラフからも、γセクレターゼの阻害剤であるL685458とは異なり、#1、#2、及び#4ポリペプチドの何れも、細胞レベルにおいて、APPに対するβセクレターゼによる切断活性、並びにβCTFに対するγセクレターゼによる切断活性を特異的に阻害するものであり、延いては細胞レベルにおいて、Aβタンパク質の産生を特異的に阻害する活性を有していることを示している。

【0150】
実験例7:Aβタンパク質産生抑制実験2
使用するポリペプチドをS4ポリペプチドのみとし、その添加量を最終濃度が25及び50μMとなるように添加し、使用する細胞をAPPタンパク質を発現し、且つ、一過的にNotch並びにβセクレターゼの基質であるシアル酸転移酵素(st6gal)を発現するCHO-K1細胞(7WD10細胞)を用い、更にAβタンパク質の産生と、Notchタンパク質の切断を確認に付け加えて、シアル酸転移酵素の切断の確認を行った以外は、上記実験例6と同様の実験を行った。

【0151】
結果を図8に示す。S4ポリペプチドを添加した場合、細胞溶解液中のAβタンパク質(intracellular Aβ)は減少するが、細胞溶解液中のNICDの量は減少しないことが明らかとなった。このことから、S4ポリペプチドは、細胞レベルにおいてもγセクレターゼの阻害活性を有し、延いてはβCTFに対するγセクレターゼの切断活性を特異的に阻害することを示している。

【0152】
さらに、S4ポリペプチドを添加した場合には、細胞培養液中のsAPPβの産生量を減少させるのに対し、細胞培養液中のst6galの産生量は減少させないことが示されている。このことから、S4ポリペプチドは、細胞レベルにおいてもβセクレターゼの阻害活性を有し、延いてはAPPに対するβセクレターゼの切断活性を特異的に阻害することを示している。

【0153】
そして、S4ポリペプチドを添加した場合には、細胞培養液中のAβタンパク質(released Aβ)の量を減少させることも明らかに示されている。以上のことから、S4ポリペプチドは、#1、#2、及び#4ポリペプチドと同様に、細胞レベルにおいてもAβタンパク質の産生を特異的に阻害する活性を有していることを示している。

【0154】
〔動物への投与〕
実験例8:Aβタンパク質産生抑制実験
50%DMSOを溶媒とした#4ポリペプチド溶液をC57BL/6マウスに0.2ng/gとなるように投与した。投与は、上記マウスの右側海馬に直接投与した。投与後3時間後、右側海馬を摘出し、TBSと6M塩酸グアニジンにより抽出したAβタンパク質の量をサンドウィッチELISA法(製品名:ヒト/ラットβアミロイド(40)ELISA キット ワコー免疫化学〔型番294-62501〕;製品名:ヒト/ラットβアミロイド(42)ELISA キット ワコー免疫化学〔型番290-62501〕:共に和光純薬)にて測定した。陰性対照実験として、#4ポリペプチドとは逆順のアミノ酸配列を有するポリペプチド(rev#4:配列番号19)を、同一マウスの左側海馬に投与した。

【0155】
結果を図9に示す。図9は、マウスから採取したAβタンパク質を定量化したグラフである。グラフの縦軸はコントロールとして用いた陰性対照実験としてrev#4ポリペプチド投与した際に採取したでのAβタンパク質の量を100%とした相対値を示す。

【0156】
#4ポリペプチドは、マウス個体に投与しても上述の実験例6の結果と同様にAβタンパク質の産生を顕著に抑制することが明らかとなった。そして、この結果から#1、#2及びS4ポリペプチドをマウス個体に投与しても、#4ポリペプチドと同様にAβタンパク質の産生を顕著に抑制することが期待される。

【0157】
〔培養細胞での解析:その2〕
実験例9:細胞内分布の検討
公知の方法を用いてビオチン修飾化#4ポリペプチドを作製した。これをCHO-K1細胞、及び上述の7WD10細胞に作用させた後に、細胞を固定化し、次いでTriton X-100処理を施した。その後、アビジン修飾されたAlexa488を作用させた。陰性対照として、ビオチン修飾化#4ポリペプチドを作用させず、アビジン修飾されたAlexa488を作用させた実験を行った。結果を図10に示す。内在性のAPPタンパク質を低レベルで発現するCHO-K1細胞では、細胞内において#4ポリペプチドがAPPと結合する事が明らかとなった。また、APPを過剰発現する7WD10細胞では、細胞内のAPPに対しても顕著に結合する事が明らかとなった。

【0158】
これらの結果から、#4ポリペプチドは細胞内に侵入し、細胞表面に露出する前のAPPにも結合する機能を発揮する事が明らかとなった。この事は、結果的にAβの産生を抑制する事を示唆している。

【0159】
実験例10:マウス型Aβ産生阻害実験
CHO-K1細胞及びNeuro2A細胞(N2A)の培養液に、#1、#2、及び#4ポリペプチドを最終濃度が20μMとなるように添加した。コントロールとして、最終濃度が20μMとなるようにγセクレターゼの阻害剤であるL685458及びDMSOを添加した。

【0160】
その後、細胞培養液中に含まれるAβを、これを認識する抗体(抗マウスAβ抗体)を用いたウエスタンブロッティング法にて確認した。結果を図11に示す。
図中にてLとあるのは、にγセクレターゼの阻害剤であるL685458(最終濃度1μM)を示す。#1、#2、及び#4ポリペプチドの何れを添加した場合でも、CHO-K1及びNeuro2A細胞に対しても、Aβの培地中での産生量が減少することが示されている。CHO-K1細胞及びNeuro2A細胞の何れも、マウス型のAPPを発現する事から、#1、#2、及び#4の全てのポリペプチドは、マウス型のAβタンパク質の産生を抑制することを明らかに示している。

【0161】
〔動物への投与:その2〕
実験例11:マウスの腹腔内への投与
10匹の野生型マウス(C57 BL/6 N Cr Slc、7週齢)の腹腔内に、DMSOに溶解した#4ポリペプチドを150mg/kg投与した。投与は3日連続して行い、4日の後にマウスを安楽死させ、大脳を摘出した。

【0162】
摘出した大脳を公知の方法で溶解し、抗4G8抗体で免疫沈降を行った後に、抗マウスAβ抗体を用いたウエスタンブロッティングに供した。陰性対照として、DMSOのみを投与した群(10匹)も同様に実験を行った。

【0163】
また、ウエスタンブロッティングでは、5、10、50、100、及び200pgのゲッ歯類由来のAβを標準物質として実験を行った。結果を図12の(A-1)及び(A-2)に示す。

【0164】
陰性対照(1~5及び6~10)のAβを示すバンドと比較して、#4ポリペプチドを腹腔内投与したマウスでは、大脳中のAβを示すバンドが減少する事が明らかとなった。また、これらのバンドをデンシトメトリーで定量化した結果を示す図12のBからは、#4ポリペプチドが、優れたAβの産生抑制効果を発揮する事も明らかとなった。

【0165】
次いで、公知の方法を用いて作製した、FITC修飾化#4ポリペプチドをマウスの腹腔内に投与した。投与量は150mg/kgで3日間連続して行い、投与から4日後にマウスを安楽死させ、海馬組織周辺の切片を作製した。陰性対照として、FITC修飾化#4ポリペプチドに変えて、DMSOを投与した。この切片を蛍光顕微鏡解析した結果を図12のCに示す。

【0166】
図中のCA1とは、CA1野と呼ばれる部位であり、ここでは陰性対照と比較して、#4ポリペプチドの存在を示す緑色に染色された部位が確認された。また、図中のDGは歯状回(Dentate Gyrus)と呼ばれる部位であり、ここでも、#4ポリペプチドの存在を示す緑色に染色された部位が確認された。そして、図中のCPLVとは、脈絡叢と呼ばれる脳脊髄液を産生する部位であり、ここで血管において#4ポリペプチドの存在を示す緑色に染色された部位が確認された。

【0167】
実験例12:Aβタンパク質産生抑制実験3
実験例6と同様に、APPタンパク質を安定に発現し、且つ、一過的にNotchを発現するCHO-K1細胞(7WD10細胞)に対して、#4、L13、S2、及びS4ポリペプチドを作用させて、Aβタンパク質の産生と、Notchタンパク質の切断を確認する実験を行った。

【0168】
上記細胞の培養液に、上記4種類のポリペプチドを、図に示すように。それぞれ最終濃度が25又は50μM(#4ポリペプチドについては25μMのみ)となるように添加した。その後、細胞培養液(Medium)のAβタンパク質と細胞破砕液(Cell lysate)中のNICDをそれぞれ認識する抗体を用いたウエスタンブロッティング法にて確認した。

【0169】
結果を図13にて示す。図中にてDMSOとあるのは、ネガティブコントロールの結果を示している。

【0170】
図13では、S2ポリペプチドは、最終濃度を50μMとして使用した場合に、上述した#4ポリペプチド及びS4ポリペプチドと同程度にAβタンパク質の産生を抑制する効果を発揮することを明らかに示している。また、NICDについてはなんら影響を及ぼさなかった。従って、S2ポリペプチドも、Aβタンパク質の産生を特異的に阻害する活性を有していることを示している。

【0171】
一方で、L13ポリペプチドは、NICDには何ら影響を及ぼさないが、Aβの産生量を抑制することはできなかった。

【0172】
以上の結果から、本発明に係るポリペプチドは、腹腔内に投与しても脳に到達し、脳内のAβの産生を抑制する効果を発揮する事が明らかに示された。また、本発明に係るポリペプチドは、マウス型のAβのみならず、ヒト型のAβの産生を抑制する事が明らかであるために、ヒトに投与しても、脳内のAβの産生を抑制する効果を発揮することも示唆される。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7-1】
6
【図7-2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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