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明細書 :脳機能改善剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成27年5月11日(2015.5.11)
発明の名称または考案の名称 脳機能改善剤
国際特許分類 A61K  31/438       (2006.01)
A61K  31/4545      (2006.01)
A61P  25/28        (2006.01)
A61P  25/16        (2006.01)
A61P  25/14        (2006.01)
A61P  25/18        (2006.01)
A61P  25/24        (2006.01)
A61P  25/20        (2006.01)
A61P  25/30        (2006.01)
A61P  25/00        (2006.01)
A61P  25/22        (2006.01)
A61P   3/14        (2006.01)
FI A61K 31/438
A61K 31/4545
A61P 25/28
A61P 25/16
A61P 25/14
A61P 25/18
A61P 25/24
A61P 25/20
A61P 25/30
A61P 25/00
A61P 25/22
A61P 3/14
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 37
出願番号 特願2013-555296 (P2013-555296)
国際出願番号 PCT/JP2013/051388
国際公開番号 WO2013/111799
国際出願日 平成25年1月24日(2013.1.24)
国際公開日 平成25年8月1日(2013.8.1)
優先権出願番号 2012012897
優先日 平成24年1月25日(2012.1.25)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IS , JP , KE , KG , KM , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US , UZ , VC
発明者または考案者 【氏名】福永 浩司
出願人 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100140109、【弁理士】、【氏名又は名称】小野 新次郎
【識別番号】100075270、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 泰
【識別番号】100101373、【弁理士】、【氏名又は名称】竹内 茂雄
【識別番号】100118902、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 修
【識別番号】100122644、【弁理士】、【氏名又は名称】寺地 拓己
審査請求 未請求
テーマコード 4C086
Fターム 4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA05
4C086ZA12
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZC39
4C086ZC41
要約 本発明により、式(I)で表される化合物を含む、脳機能改善に使用される医薬組成物が提供される。
特許請求の範囲 【請求項1】
式(I):
【化1】
JP2013111799A1_000011t.gif
[式中、Rは、水素原子、C1-6アルキル、シアノ、-C(=O)NR1112、または-C(=O)OR13を表し;
は、水素原子、C1-6アルキル、ヒドロキシ、-X-R14、または-NR1516を表し;
、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルチオ、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6アルキルスルホニル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、シアノ、ニトロ、-C(=O)NR1718、および-C(=O)OR19から選択され;
11およびR12は、それぞれ独立に、水素原子、C1-6アルキル、C6-10アリール、および5~10員ヘテロアリールから選択され;または
11およびR12はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、含窒素ヘテロ環を形成し、該含窒素ヘテロ環は、C1-6アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルコキシC1-6アルキル、C1-6アルキルチオ、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6アルキルスルホニル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、アミノC1-6アルキル、(C1-6アルキルアミノ)C1-6アルキル、[ジ(C1-6アルキル)アミノ]C1-6アルキル、-C(=O)NR2223、-C(=O)OR24、-(C1-6アルキル)C(=O)NR2223、および-(C1-6アルキル)C(=O)OR24から選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
13は、水素原子、C1-6アルキル、C6-10アリール、および5~10員ヘテロアリールから選択され、ここで該アルキル基は、C6-10アリール、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルチオ、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6アルキルスルホニル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、-C(=O)NR2223、および-C(=O)OR24から選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
は、-O-、-S-、-SO-、または-SO-を表し;
14は、C1-6アルキル、C6-10アリール、および5~10員ヘテロアリールから選択され;
15は、水素原子、C1-6アルキル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、または-C(=O)-R21を表し、ここで該アルキル基は、C6-10アリール、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルチオ、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6アルキルスルホニル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、-C(=O)NR2223、および-C(=O)OR24から選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
16は、水素原子、C1-6アルキル、C6-10アリール、または5~10員ヘテロアリールを表し、ここで該アルキル基は、C6-10アリール、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルチオ、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6アルキルスルホニル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、-C(=O)NR2223、および-C(=O)OR24から選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;または
15およびR16はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、含窒素ヘテロ環を形成し、該含窒素ヘテロ環基は、C1-6アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルコキシC1-6アルキル、C1-6アルキルチオ、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6アルキルスルホニル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、アミノC1-6アルキル、(C1-6アルキルアミノ)C1-6アルキル、[ジ(C1-6アルキル)アミノ]C1-6アルキル、-C(=O)NR2223、-C(=O)OR24、-(C1-6アルキル)C(=O)NR2223、および-(C1-6アルキル)C(=O)OR24から選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
17およびR18は、それぞれ独立に、水素原子、C1-6アルキル、C6-10アリール、および5~10員ヘテロアリールから選択され;またはR17およびR18はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、含窒素ヘテロ環基を形成し;
19は、水素原子、C1-6アルキル、C6-10アリール、および5~10員ヘテロアリールから選択され;
21は、水素原子、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C6-10アリール、および5~10員ヘテロアリールから選択され、ここで該アルキル基およびアルコキシ基は、C6-10アリール、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルチオ、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6アルキルスルホニル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、-C(=O)NR2223、および-C(=O)OR24から選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
22およびR23は、それぞれ独立に、水素原子、C1-6アルキル、C6-10アリール、および5~10員ヘテロアリールから選択され、またはR22およびR23はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、含窒素ヘテロ環基を形成し;
24は、それぞれ独立に、水素原子、C1-6アルキル、C6-10アリール、および5~10員ヘテロアリールから選択される]
で表される化合物または医薬として許容なその塩を含有する、脳機能改善に使用される医薬組成物。
【請求項2】
が、-C(=O)OR13であり、R13は、請求項1に定義された1以上の置換基により置換されていてもよいC1-6アルキルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
が、C1-6アルキルチオまたは-NR1516を表し、R15およびR16が請求項1に定義されたとおりである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
基-NR1516が、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、[(C1-6アルコキシカルボニル)C1-6アルキル]アミノ、もしくは[(C6-10アリール)C1-6アルキル]アミノを表し、または基-NR1516が、1-ピロリジニル、1-ピペリジニル、1-ピペラジニル、4-モルホリニル、もしくは1-ホモピペリジニルから選択される含窒素ヘテロ環基を表し、ここで該含窒素へテロ環基は請求項1に定義された1以上の置換基により置換されていてもよい、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
、R、R、およびRが、それぞれ独立に、水素原子、およびC1-6アルキルから選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
式(I)で表される化合物または医薬として許容なその塩が
2’,3’-ジヒドロ-2-メチルチオ-2’,4-ジオキソスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-8-メチル-2-メチルチオ-2’,4-ジオキソスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-6,8-ジメチル-2-メチルチオ-2’,4-ジオキソスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-2-メチルアミノ-2’,4-ジオキソスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-8-メチル-2-メチルアミノ-2’,4-ジオキソスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-6,8-ジメチル-2-メチルアミノ-2’,4-ジオキソスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-2’,4-ジオキソ-2-(フェネチルアミノ)スピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-8-メチル-2’,4-ジオキソ-2-(フェネチルアミノ)スピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-6,8-ジメチル-2’,4-ジオキソ-2-(フェネチルアミノ)スピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-2-(エトキシカルボニルメチル)アミノ-2’,4-ジオキソスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-2-(エトキシカルボニルメチル)アミノ-8-メチル-2’,4-ジオキソスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-2-(エトキシカルボニルメチル)アミノ-6,8-ジメチル-2’,4-ジオキソスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-2-ジメチルアミノ-2’,4-ジオキソスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-2-ジメチルアミノ-8-メチル-2’,4-ジオキソスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-2-ジメチルアミノ-6,8-ジメチル-2’,4-ジオキソスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-2’,4-ジオキソ-2-ピペリジノスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-8-メチル-2’,4-ジオキソ-2-ピペリジノスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-6,8-ジメチル-2’,4-ジオキソ-2-ピペリジノスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
および医薬として許容なそれらの塩;
から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
認知機能障害の治療または予防に使用される、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
認知機能障害が、神経変性疾患、精神疾患、および広汎性発達障害から選択される疾患である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
認知機能障害が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病、およびハンチントン病、統合失調症、双極性障害、うつ病、恐怖症、睡眠障害、薬物依存症、自閉症、アスペルガー症候群、精神遅滞、多動性障害、およびチック障害から選択される疾患である、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
有効量の式(I):
【化2】
JP2013111799A1_000012t.gif
[式中、R、R、R、R、R、およびRは、請求項1に定義されたとおりである]で表される化合物を含む、電位依存性T型カルシウムチャネル活性化剤。
【請求項11】
が、-C(=O)OR13であり、R13は、請求項1に定義した1以上の置換基により置換されていてもよいC1-6アルキルである、請求項10に記載の電位依存性T型カルシウムチャネル活性化剤。
【請求項12】
が、C1-6アルキルチオまたは-NR1516を表し、R15およびR16が請求項1に定義されたとおりである、請求項10または11に記載の電位依存性T型カルシウムチャネル活性化剤。
【請求項13】
基-NR1516が、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、[(C1-6アルコキシカルボニル)C1-6アルキル]アミノ、もしくは[(C6-10アリール)C1-6アルキル]アミノを表し、または基-NR1516が、1-ピロリジニル、1-ピペリジニル、1-ピペラジニル、4-モルホリニル、もしくは1-ホモピペリジニルから選択される含窒素ヘテロ環基を表し、ここで該含窒素へテロ環基は請求項1に定義された1以上の置換基により置換されていてもよい、請求項12に記載の電位依存性T型カルシウムチャネル活性化剤。
【請求項14】
、R、R、およびRが、それぞれ独立に、水素原子、およびC1-6アルキルから選択される、請求項10~13のいずれか1項に記載の電位依存性T型カルシウムチャネル活性化剤。
【請求項15】
式(I)で表される化合物または医薬として許容なその塩が、請求項6に記載の化合物および医薬として許容なそれらの塩から選択される、請求項10~14のいずれか1項に記載の電位依存性T型カルシウムチャネル活性化剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、脳機能の改善に有用な薬剤、およびそれを用いた脳機能の改善方法、特に認知機能障害の治療方法または予防方法に関する。また本発明は、脳機能改善に有用な薬剤のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病などの脳機能に関わる疾患は世界的な問題となっており、高齢化社会を迎える日本ではその克服は早急な解決が求められる課題である。世界のアルツハイマー型認知症の患者数は約2000万人といわれており、日本では約150万人の認知症患者のうちの4割以上がアルツハイマー型認知症と推定されている。
【0003】
アルツハイマー病の治療の有力な手段として、コリンエステラーゼ阻害剤であるドネペジル塩酸塩(アリセプト(登録商標))が広く使用されており、新たなアセチルコリンエステラーゼ阻害剤についても製造承認がされている。しかし、ドネペジル塩酸塩の臨床成績の有効率は50%程度であり、更に強力かつ安全な薬剤が必要とされている。
【0004】
新規な作用機作による脳機能改善を目標として新規薬剤の探索研究も行われている。例えば、アセチルコリン遊離促進作用を有するZSET1446や、N-メチル-D-アスパルテート(NMDA)受容体活性化作用を有するネフィラセタムなどについて報告がされており、臨床試験も行われている(特許文献1および2、非特許文献1~4)。しかしながら現時点においてはアセチルコリンエステラーゼ阻害剤以外の薬剤についての新たな製造承認はなく、特に既存の薬剤と異なる作用機作を有する新規薬剤の開発が強く望まれている。
【0005】
さらに、精神疾患(統合失調症、双極性障害、うつ病、恐怖症、睡眠障害、薬物依存症など)、広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー症候群、精神遅滞、多動性障害、チック障害など)などの高次脳機能障害には認知機能障害が主な随伴症状である。療育による認知機能改善療法は疾患の予後を改善することが知られているが、有効な認知機能改善薬の開発が強く望まれている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】国際公開WO2003/080046
【特許文献2】国際公開WO2002/060907
【0007】


【非特許文献1】The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics Vol. 326, No. 1, 127-134, 2008;
【非特許文献2】The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics Vol. 317, No. 3, 1079-1087, 2006;
【非特許文献3】Yakugaku Zasshi Vol. 130, No. 5, 717-721, 2010;
【非特許文献4】Journal of Neurochemistry Vol. 110, 170-181, 2009;
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、脳機能の改善に有用な新たな薬剤の提供、およびそれを用いた脳機能改善方法の提供を目的とする。さらに本発明は、脳機能改善に有用な薬剤のスクリーニング方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意研究を進めたところ、ヘテロスピロ環構造を有する一群の化合物が脳機能改善効果を有することを見いだし、本発明を完成させた。
【0010】
本発明の1つの側面によれば、以下の(1)~(7)に記載する医薬組成物が提供される。
【0011】
(1)式(I):
【0012】
【化1】
JP2013111799A1_000003t.gif
[式中、Rは、水素原子、C1-6アルキル、シアノ、-C(=O)NR1112、または-C(=O)OR13を表し;
は、水素原子、C1-6アルキル、ヒドロキシ、-X-R14、または-NR1516を表し;
、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルチオ、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6アルキルスルホニル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、シアノ、ニトロ、-C(=O)NR1718、および-C(=O)OR19から選択され;
11およびR12は、それぞれ独立に、水素原子、C1-6アルキル、C6-10アリール、および5~10員ヘテロアリールから選択され;または
11およびR12はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、含窒素ヘテロ環基を形成し、該含窒素ヘテロ環基は、C1-6アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルコキシC1-6アルキル、C1-6アルキルチオ、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6アルキルスルホニル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、アミノC1-6アルキル、(C1-6アルキルアミノ)C1-6アルキル、[ジ(C1-6アルキル)アミノ]C1-6アルキル、-C(=O)NR2223、-C(=O)OR24、-(C1-6アルキル)C(=O)NR2223、および-(C1-6アルキル)C(=O)OR24から選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
13は、水素原子、C1-6アルキル、C6-10アリール、および5~10員ヘテロアリールから選択され、ここで該アルキル基は、C6-10アリール、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルチオ、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6アルキルスルホニル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、-C(=O)NR2223、および-C(=O)OR24から選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
は、-O-、-S-、-SO-、または-SO-を表し;
14は、C1-6アルキル、C6-10アリール、および5~10員ヘテロアリールから選択され;
15は、水素原子、C1-6アルキル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、または-C(=O)-R21を表し、ここで該アルキル基は、C6-10アリール、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルチオ、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6アルキルスルホニル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、-C(=O)NR2223、および-C(=O)OR24から選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
16は、水素原子、C1-6アルキル、C6-10アリール、または5~10員ヘテロアリールを表し、ここで該アルキル基は、C6-10アリール、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルチオ、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6アルキルスルホニル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、-C(=O)NR2223、および-C(=O)OR24から選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;または
15およびR16はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、含窒素ヘテロ環基を形成し、該含窒素ヘテロ環基は、C1-6アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルコキシC1-6アルキル、C1-6アルキルチオ、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6アルキルスルホニル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、アミノC1-6アルキル、(C1-6アルキルアミノ)C1-6アルキル、[ジ(C1-6アルキル)アミノ]C1-6アルキル、-C(=O)NR2223、-C(=O)OR24、-(C1-6アルキル)C(=O)NR2223、および-(C1-6アルキル)C(=O)OR24から選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
17およびR18は、それぞれ独立に、水素原子、C1-6アルキル、C6-10アリール、および5~10員ヘテロアリールから選択され;またはR17およびR18はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、含窒素ヘテロ環基を形成し;
19は、水素原子、C1-6アルキル、C6-10アリール、および5~10員ヘテロアリールから選択され;
21は、水素原子、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C6-10アリール、および5~10員ヘテロアリールから選択され、ここで該アルキル基およびアルコキシ基は、C6-10アリール、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルチオ、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6アルキルスルホニル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、-C(=O)NR2223、および-C(=O)OR24から選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
22およびR23は、それぞれ独立に、水素原子、C1-6アルキル、C6-10アリール、および5~10員ヘテロアリールから選択され、またはR22およびR23はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、含窒素ヘテロ環基を形成し;
24は、それぞれ独立に、水素原子、C1-6アルキル、C6-10アリール、および5~10員ヘテロアリールから選択される]
で表される化合物または医薬として許容なその塩を含有する、脳機能改善に使用される医薬組成物。
【0013】
(2)Rが、-C(=O)OR13であり、R13は、上記(1)に定義された1以上の置換基により置換されていてもよいC1-6アルキルである、上記(1)に記載の組成物。
【0014】
(3)Rが、C1-6アルキルチオまたは-NR1516を表し、R15およびR16が上記(1)に定義されたとおりである、上記(1)または(2)に記載の組成物。
【0015】
(4)基-NR1516が、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、[(C1-6アルコキシカルボニル)C1-6アルキル]アミノ、もしくは[(C6-10アリール)C1-6アルキル]アミノを表し、または基-NR1516が、1-ピロリジニル、1-ピペリジニル、1-ピペラジニル、4-モルホリニル、もしくは1-ホモピペリジニルから選択される含窒素ヘテロ環基を表し、ここで該含窒素へテロ環基は上記(1)に定義された1以上の置換基により置換されていてもよい、上記(3)に記載の組成物。
【0016】
(5)R、R、R、およびRが、それぞれ独立に、水素原子、およびC1-6アルキルから選択される、上記(1)~(4)のいずれかに記載の組成物。
【0017】
(6)式(I)で表される化合物または医薬として許容なその塩が
2’,3’-ジヒドロ-2-メチルチオ-2’,4-ジオキソスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-8-メチル-2-メチルチオ-2’,4-ジオキソスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-6,8-ジメチル-2-メチルチオ-2’,4-ジオキソスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-2-メチルアミノ-2’,4-ジオキソスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-8-メチル-2-メチルアミノ-2’,4-ジオキソスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-6,8-ジメチル-2-メチルアミノ-2’,4-ジオキソスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-2’,4-ジオキソ-2-(フェネチルアミノ)スピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-8-メチル-2’,4-ジオキソ-2-(フェネチルアミノ)スピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-6,8-ジメチル-2’,4-ジオキソ-2-(フェネチルアミノ)スピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-2-(エトキシカルボニルメチル)アミノ-2’,4-ジオキソスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-2-(エトキシカルボニルメチル)アミノ-8-メチル-2’,4-ジオキソスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-2-(エトキシカルボニルメチル)アミノ-6,8-ジメチル-2’,4-ジオキソスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-2-ジメチルアミノ-2’,4-ジオキソスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-2-ジメチルアミノ-8-メチル-2’,4-ジオキソスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-2-ジメチルアミノ-6,8-ジメチル-2’,4-ジオキソスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-2’,4-ジオキソ-2-ピペリジノスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-8-メチル-2’,4-ジオキソ-2-ピペリジノスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
2’,3’-ジヒドロ-6,8-ジメチル-2’,4-ジオキソ-2-ピペリジノスピロ[2-シクロペンテン-1,3’-イミダゾ[1,2-a]ピリジン]-3-カルボン酸エチルエステル;
および医薬として許容なそれらの塩;
から選択される、上記(1)~(5)のいずれかに記載の組成物。
【0018】
(7)認知機能障害の治療または予防に使用される、上記(1)~(6)のいずれかに記載の組成物。
【0019】
(8)認知機能障害が、神経変性疾患、精神疾患、および広汎性発達障害から選択される疾患である、上記(7)に記載の組成物。
【0020】
(9)認知機能障害が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病、およびハンチントン病、統合失調症、双極性障害、うつ病、恐怖症、睡眠障害、薬物依存症、自閉症、アスペルガー症候群、精神遅滞、多動性障害、およびチック障害から選択される疾患である、上記(7)に記載の組成物。
【0021】
本発明の別の側面によれば、以下の(10)~(15)に記載する脳機能改善方法が提供される。
【0022】
(10)有効量の式(I):
【0023】
【化2】
JP2013111799A1_000004t.gif
[式中、R、R、R、R、R、およびRは、上記(1)に定義されたとおりである]で表される化合物を対象に投与することを含む、脳機能改善方法。
【0024】
(11)Rが、-C(=O)OR13であり、R13は、上記(1)に定義した1以上の置換基により置換されていてもよいC1-6アルキルである、上記(10)に記載の方法。
【0025】
(12)Rが、C1-6アルキルチオまたは-NR1516を表し、R15およびR16が上記(1)に定義されたとおりである、上記(10)または(11)に記載の方法。
【0026】
(13)基-NR1516が、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、[(C1-6アルコキシカルボニル)C1-6アルキル]アミノ、もしくは[(C6-10アリール)C1-6アルキル]アミノを表し、または基-NR1516が、1-ピロリジニル、1-ピペリジニル、1-ピペラジニル、4-モルホリニル、もしくは1-ホモピペリジニルから選択される含窒素ヘテロ環基を表し、ここで該含窒素へテロ環基は上記(1)に定義された1以上の置換基により置換されていてもよい、上記(12)に記載の方法。
【0027】
(14)R、R、R、およびRが、それぞれ独立に、水素原子、およびC1-6アルキルから選択される、上記(10)~(13)のいずれかに記載の方法。
【0028】
(15)式(I)で表される化合物または医薬として許容なその塩が、上記(6)に記載の化合物および医薬として許容なそれらの塩から選択される、上記(10)~(14)のいずれかに記載の方法。
【0029】
本発明のさらに別の側面によれば、以下の(16)~(21)に記載する治療方法または予防方法が提供される。
【0030】
(16)有効量の式(I):
【0031】
【化3】
JP2013111799A1_000005t.gif
[式中、R、R、R、R、R、およびRは、上記(1)に定義されたとおりである]で表される化合物を対象に投与することを含む、認知機能障害の治療方法または予防方法。
【0032】
(17)Rが、-C(=O)OR13であり、R13は、上記(1)に定義された1以上の置換基により置換されていてもよいC1-6アルキルである、上記(16)に記載の方法。
【0033】
(18)Rが、C1-6アルキルチオまたは-NR1516を表し、R15およびR16が上記(1)に定義されたとおりである、上記(16)または(17)に記載の方法。
【0034】
(19)基-NR1516が、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、[(C1-6アルコキシカルボニル)C1-6アルキル]アミノ、もしくは[(C6-10アリール)C1-6アルキル]アミノを表し、または基-NR1516が、1-ピロリジニル、1-ピペリジニル、1-ピペラジニル、4-モルホリニル、もしくは1-ホモピペリジニルから選択される含窒素ヘテロ環基を表し、ここで該含窒素へテロ環基は上記(1)に定義された1以上の置換基により置換されていてもよい、上記(18)に記載の方法。
【0035】
(20)R、R、R、およびRが、それぞれ独立に、水素原子、およびC1-6アルキルから選択される、上記(16)~(19)のいずれかに記載の方法。
【0036】
(21)式(I)で表される化合物または医薬として許容なその塩が、上記(6)に記載の化合物および医薬として許容なそれらの塩から選択される、上記(16)~(20)のいずれかに記載の方法。
【0037】
本発明のさらに別の側面によれば、以下の(22)~(31)に記載するスクリーニング方法が提供される。
【0038】
(22)電位依存性T型カルシウムチャネルのカルシウムイオン流入量を増加させる作用を有する化合物を選抜する工程を含む、脳機能改善活性を有する化合物のスクリーニング方法。
【0039】
(23)電位依存性T型カルシウムチャネルが、Cav3.1、Cav3.2、およびCav3.3から選択される、上記(22)に記載の方法。
【0040】
(24)電位依存性T型カルシウムチャネルが発現した細胞を用いたアッセイ系に被検化合物を添加し、添加による細胞内カルシウムイオンレベルの変化を測定する工程を含む、上記(22)または(23)に記載の方法。
【0041】
(25)電位依存性T型カルシウムチャネルの遺伝子を細胞に導入することにより、電位依存性T型カルシウムチャネルを発現させた細胞を使用する、上記(22)~(24)のいずれかに記載の方法。
【0042】
(26)Neuro2A細胞、PC12細胞、HEK293細胞、およびCOS7細胞から選択される細胞に電位依存性T型カルシウムチャネルの遺伝子を導入する、上記(25)に記載の方法。
【0043】
(27)脳機能改善活性を有する化合物のスクリーニング方法であって
(a)電位依存性T型カルシウムチャネルの発現量が異なる2種類の神経細胞を調製する工程;
(b)電位依存性T型カルシウムチャネルの発現量が低い細胞(細胞A)を用いたアッセイ系(アッセイ系A)に被検化合物を添加し、添加による細胞内のカルシウムイオンレベルの変化を測定する工程;
(c)電位依存性T型カルシウムチャネルの発現量が高い細胞(細胞B)を用いたアッセイ系(アッセイ系B)に被検化合物を添加し、添加による細胞内のカルシウムイオンレベルの変化を測定する工程;
(d)アッセイ系Bにおけるカルシウムレベルの上昇がアッセイ系Aにおける上昇よりも大きい化合物を選抜する工程
を含む、前記スクリーニング方法。
【0044】
(28)細胞Bが電位依存性T型カルシウムチャネル遺伝子を導入した細胞である、上記(27)に記載の方法。
【0045】
(29)アッセイ系AおよびBの両方において、ニコチンの添加により細胞内のカルシウムレベルが上昇することを確認する工程を更に含む、上記(27)または(28)に記載の方法。
【0046】
(30)細胞AがNeuro2A細胞、PC12細胞、HEK293細胞、およびCOS7細胞から選択される細胞である、上記(27)~(29)のいずれかに記載の方法。
【0047】
(31)細胞Bが、細胞AにCav3.1、Cav3.2、またはCav3.3の遺伝子を導入した細胞である、上記(27)~(30)のいずれかに記載の方法。
【0048】
本発明の別の側面によれば、以下の(32)~(37)に記載する電位依存性T型カルシウムチャネル活性化剤が提供される。
【0049】
(32)有効量の式(I):
【0050】
【化4】
JP2013111799A1_000006t.gif
[式中、R、R、R、R、R、およびRは、上記(1)に定義されたとおりである]で表される化合物を含む、電位依存性T型カルシウムチャネル活性化剤。
【0051】
(33)Rが、-C(=O)OR13であり、R13は、上記(1)に定義された1以上の置換基により置換されていてもよいC1-6アルキルである、上記(32)に記載の電位依存性T型カルシウムチャネル活性化剤。
【0052】
(34)Rが、C1-6アルキルチオまたは-NR1516を表し、R15およびR16が上記(1)に定義されたとおりである、上記(32)または(33)に記載の電位依存性T型カルシウムチャネル活性化剤。
【0053】
(35)基-NR1516が、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、[(C1-6アルコキシカルボニル)C1-6アルキル]アミノ、もしくは[(C6-10アリール)C1-6アルキル]アミノを表し、または基-NR1516が、1-ピロリジニル、1-ピペリジニル、1-ピペラジニル、4-モルホリニル、もしくは1-ホモピペリジニルから選択される含窒素ヘテロ環基を表し、ここで該含窒素へテロ環基は上記(1)に定義された1以上の置換基により置換されていてもよい、上記(34)に記載の電位依存性T型カルシウムチャネル活性化剤。
【0054】
(36)R、R、R、およびRが、それぞれ独立に、水素原子、およびC1-6アルキルから選択される、上記(32)~(35)のいずれかに記載の電位依存性T型カルシウムチャネル活性化剤。
【0055】
(37)式(I)で表される化合物または医薬として許容なその塩が、上記(6)に記載の化合物および医薬として許容なそれらの塩から選択される、上記(32)~(36)のいずれかに記載の電位依存性T型カルシウムチャネル活性化剤。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、新たな脳機能改善に用いることができる医薬組成物、特にアルツハイマー病などの認知機能障害の処置方法となる治療剤または予防剤が提供される。さらに本発明は、脳機能改善に有用な化合物の効率なスクリーニング方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、海馬でのシナプス伝達長期増強におけるST101(100pM)の影響を表すチャートである。縦軸はシナプス後集合電位(fEPSP)の振幅を表し、横軸は経過時間を表す。
【図2】図2は、海馬でのシナプス伝達長期増強におけるSAK1(100pM)の影響を表すチャートである。縦軸はシナプス後集合電位(fEPSP)の振幅を表し、横軸は経過時間を表す。
【図3】図3は、海馬でのシナプス伝達長期増強におけるSAK3(100pM)の影響を表すチャートである。縦軸はシナプス後集合電位(fEPSP)の振幅を表し、横軸は経過時間を表す。
【図4】図4は、ST101、SAK1およびSAK3の各投与群における1分後および60分後のLTP強度を表すグラフである。図中の*(p<0.05)、**(p<0.01)はコントロールと被検化合物群の間の有意性を示す。
【図5】図5は、抗リン酸化CaMKII抗体及び抗CaMKII抗体を用いてブロッティングを行った結果を示す図であり、LTPの60分後に海馬CA1領域を摘出して、免疫ブロットによるCaMKIIの自己リン酸化をコントロールと被検化合物(ST101、SAK1およびSAK3)を処置した群で比較した。
【図6】図6は、図5のブロッティングによる免疫反応物の定量解析結果に基づく、マウスの海馬CA1領域のCaMKIIの自己リン酸化レベル(phosphorylation)を示すグラフである。グラフの縦軸は、対照(コントロール)の自己リン酸化レベルを100%として、被検化合物の刺激効果を計算した値を示す。図中の*(p<0.05)、**(p<0.01)はコントロール群と被検化合物処置の間の有意性を示す。
【図7】図7は、遺伝子導入を行っていない(non-transfected)マウス神経芽腫細胞株 Neuro2A 細胞の細胞内カルシウムイオンレベルにおける、SAK3添加およびニコチン刺激の影響を示すグラフである。グラフの縦軸は蛍光顕微鏡により測定した細胞内カルシウムイオン濃度変化を示し、横軸は経過時間を示す。また、カルシウム濃度変化の程度を表すために、インセットにおいて高カリウム(脱分極)刺激による細胞内カルシウム濃度変化を合わせて示す。
【図8】図8は、T型カルシウムチャネル(Cav3.1)遺伝子を導入した(transfected)マウス神経芽腫細胞株 Neuro2A 細胞の細胞内カルシウムイオンレベルにおける、SAK3添加およびニコチン刺激の影響を示すグラフである。グラフの縦軸は蛍光顕微鏡により測定した細胞内カルシウムイオン濃度変化を示し、横軸は経過時間を示す。
【図9】図9は、カルシウムイオンの細胞内流入量を示すグラフであり、白色の棒グラフは遺伝子導入を行っていないマウス神経芽腫細胞株 Neuro2A 細胞での結果を、黒色はT型カルシウムチャネル(Cav3.1)遺伝子を導入したマウス神経芽腫細胞株 Neuro2A 細胞における結果を表す。また、「mibe」はミベフラジルの添加を意味する。縦軸はSAK3添加によるカルシウム濃度変化(Ratio)の変化の割合(Δ値)(図7における添加後の最大値から添加前の最小値を差し引いた値)を示す。図中の**は遺伝子を導入した細胞でのコントロールとSAK3処置の間の有意性(p<0.01)を示し、##は遺伝子導入した細胞でのSAK3処置とミベフラジル存在下でのSAK3処置の間の有意性(p<0.01)を示す。
【図10】図10は、カルシウムイオンの細胞内流入量を示すグラフであり、白色の棒グラフは遺伝子導入を行っていないマウス神経芽腫細胞株 Neuro2A 細胞での結果を、黒色はT型カルシウムチャネル(Cav3.1)遺伝子を導入したマウス神経芽腫細胞株 Neuro2A 細胞における結果を表す。また、「mibe」はミベフラジルの添加を意味する。。縦軸はSAK3添加によるカルシウム濃度変化(Ratio)の変化の割合(Δ値)(図8における添加後の最大値から添加前の最小値を差し引いた値)を示す。図中の**はSAK3存在下と非存在下の間の有意性(p<0.01)を示し、##はSAK存在下でのミベフラジル非存在下と存在下の間の有意性(p<0.01)を示し、+は遺伝子導入なしと遺伝子導入した細胞間の有意性(p<0.05)を示す。
【図11】図11は、T型カルシウムチャネル(Cav3.1)遺伝子を導入したマウス神経芽腫細胞株 Neuro2A 細胞の細胞内カルシウムイオンレベルのATP添加による変動について、SAK3添加の影響を示すグラフである。グラフの縦軸は蛍光顕微鏡により測定した細胞内カルシウムイオン濃度変化を示し、横軸は経過時間を示す。
【図12】図12は、T型カルシウムチャネル(Cav3.1)遺伝子を導入したマウス神経芽腫細胞株 Neuro2A 細胞におけるATP刺激後のカルシウムイオンの細胞内流入量を示すグラフである。図中の***はSAK3非存在下(Non)と存在下(SAK3)の間の有意性(p<0.001)を示す。
【図13】図13は、T型カルシウムチャネル(Cav3.1)遺伝子を導入したマウス神経芽腫細胞株 Neuro2A 細胞の細胞内カルシウムイオンレベルの代謝型グルタミン酸受容体アゴニスト(DHPG)添加による変動について、SAK3添加の影響を示すグラフである。グラフの縦軸は蛍光顕微鏡により測定した細胞内カルシウムイオン濃度を示し、横軸は経過時間を示す。
【図14】図14は、T型カルシウムチャネル(Cav3.1)遺伝子を導入したマウス神経芽腫細胞株 Neuro2A 細胞におけるDHPG刺激後のカルシウムイオンの細胞内流入量を示すグラフである。
【図15】図15は、T型カルシウムチャネル(Cav3.1)遺伝子を導入したマウス神経芽腫細胞株 Neuro2A 細胞の細胞内カルシウムイオンレベルについて、SAK3添加の影響を示すグラフである。グラフの縦軸は蛍光顕微鏡により測定した細胞内カルシウムイオン濃度変化を示し、横軸は経過時間を示す。
【図16】図16は、T型カルシウムチャネル(Cav3.1)遺伝子を導入したマウス神経芽腫細胞株 Neuro2A 細胞の細胞内カルシウムイオンレベルについて、ST101添加の影響を示すグラフである。グラフの縦軸は蛍光顕微鏡により測定した細胞内カルシウムイオン濃度変化を示し、横軸は経過時間を示す。
【図17】図17は、嗅球摘出マウスを用いたY字迷路試験におけるSAK3投与の影響を示すグラフである。縦軸にマウスが測定時間内に各アームに侵入した回数(total arm entries)(自発運動量)を示す。図中の*はSham群との間の有意性(p<0.05)を示し、**はSham群との間の有意性(p<0.01)を示す。
【図18】図18は、嗅球摘出マウスを用いたY字迷路試験におけるSAK3投与の影響を示すグラフであり、縦軸は正常の交替行動の指標(空間作業記憶の正解率)であるalternation(%)を示す。図中の*はSham群との間の有意性(p<0.05)を示し、**はSham群との間の有意性(p<0.01)を示し、##は溶剤のみを投与したOBXマウス群(Veh.+OBX)との間の有意性(p<0.05)を示す。
【図19】図19は、嗅球摘出マウスを用いた新奇物体認識試験におけるSAK3投与の影響を示すグラフであり、既知オブジェクトと新奇オブジェクトの接触回数の割合 (%) を判別指数 (Discrimination index)として縦軸に示す。図中の**は既知と新規オブジェクト接触回数の割合の有意性(p<0.01)を示す。
【図20】図20は、海馬内で遊離するアセチルコリンの量(20分ごとに定量)におけるSAK3投与の影響を示すグラフである。縦軸は刺激前(-100~-120分)のアセチルコリン遊離量を100%として表した。
【図21】図21は、偽手術マウス(Sham)と嗅球摘出マウス(OBX)における海馬内で遊離するアセチルコリンの量におけるSAK3投与の影響を示すグラフであり、縦軸は、図20の経過時間:20~80分の間に遊離したアセチルコリンの量をSham群を100%として算出した値を示す。図中の*はShamとOBXの間の有意性(p<0.05)を示し、#はOBXとOBX+SAK3投与の間の有意性(p<0.05)を示す。
【図22】図22は、培養マウス大脳皮質細胞を用いて自己リン酸化を指標にしてCaMKIIの活性化反応を示した免疫ブロットである。被検化合物(SAK3、SAK8およびSAK9)を添加したマウス大脳皮質細胞での活性化レベルを確認するために、抗リン酸化CaMKII抗体及び抗CaMKII抗体を用いてブロッティングを行った結果を示す図である。BE(Brain extract)はCaMKIIのタンパク質の泳動位置を確認するために電気泳動して、免疫ブロットをおこなった。
【図23】図23は、ブロッティングによる免疫反応物の定量解析結果に基づく、マウス大脳皮質細胞のCaMKIIアルファ(50kDaのアルファサブユニット)の自己リン酸化レベルを示すグラフの一例である。グラフの縦軸は、コントロール(無刺激)時のリン酸化CaMKIIの割合を、100%として計算した値を示す。図中の*(p<0.05)、**(p<0.01)はコントロールと被検化合物の間の有意性を示す。
【図24】図24は、ブロッティングによる免疫反応物の定量解析結果に基づく、マウス大脳皮質細胞のCaMKIIベータ(60kDaのベータサブユニット)の自己リン酸化レベルを示すグラフの一例である。グラフの縦軸は、コントロール(無刺激)時のリン酸化CaMKIIの割合を、100%として計算した値を示す。図中の*(p<0.05)、**(p<0.01)はコントロールと被検化合物の間の有意性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明を更に具体的に説明する。

【0059】
本発明の1つの側面によれば、上記式(I)により表される化合物または医薬として許容なその塩を含有する、医薬組成物、特に脳機能改善に用いられる医薬組成物、脳機能改善剤、または認知機能障害の治療剤または予防剤が提供される。

【0060】
式(I)の定義に関して「C1-6アルキル」とは、炭素数1~6の直鎖状、分岐鎖状、環状または部分的に環状のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、3-メチルブチル、2-メチルブチル、1-メチルブチル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、4-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2-メチルペンチル、1-メチルペンチル、3-エチルブチル、および2-エチルブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロプロピルメチルなどが含まれ、例えば、C1-4アルキルおよびC1-3アルキルなども含まれる。

【0061】
本明細書において「C1-6アルコキシ」とは、アルキル部分として既に定義した炭素数1~6のアルキル基を有するアルキルオキシ基[-O-(C1-6アルキル)]を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、s-ブトキシ、i-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、3-メチルブトキシ、2-メチルブトキシ、1-メチルブトキシ、1-エチルプロポキシ、n-ヘキシルオキシ、4-メチルペントキシ、3-メチルペントキシ、2-メチルペントキシ、1-メチルペントキシ、3-エチルブトキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、およびシクロプロピルメチルオキシなどが含まれ、例えば、C1-4アルコキシおよびC1-3アルコキシなども含まれる。また、本明細書において「C1-4アルコキシ」には、例えばC1-3アルコキシなども含まれる。

【0062】
本明細書において「C1-6アルキルチオ」とは、アルキル部分として既に定義した炭素数1~6のアルキル基を有するアルキルチオ基[-S-(C1-6アルキル)]を意味し、例えば、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、i-プロピルチオ、n-ブチルチオ、s-ブチルチオ、i-ブチルチオ、t-ブチルチオ、n-ペンチルチオ、3-メチルブチルチオ、2-メチルブチルチオ、1-メチルブチルチオ、1-エチルプロピルチオ、n-ヘキシルチオ、4-メチルペンチルチオ、3-メチルペンチルチオ、2-メチルペンチルチオ、1-メチルペンチルチオ、3-エチルブチルチオ、2-エチルブチルチオ、シクロプロピルチオ、シクロブチルチオ、シクロペンチルチオ、シクロヘキシルチオ、およびシクロプロピルメチルチオなどが含まれ、例えば、C1-4アルキルチオおよびC1-3アルキルチオなども含まれる。

【0063】
本明細書において「C1-6アルキルスルフィニル」とは、アルキル部分として既に定義した炭素数1~6のアルキル基を有するアルキルスルフィニル基[-SO-(C1-6アルキル)]を意味し、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、n-プロピルスルフィニル、i-プロピルスルフィニル、n-ブチルスルフィニル、s-ブチルスルフィニル、i-ブチルスルフィニル、t-ブチルスルフィニル、n-ペンチルスルフィニル、3-メチルブチルスルフィニル、2-メチルブチルスルフィニル、1-メチルブチルスルフィニル、1-エチルプロピルスルフィニル、n-ヘキシルスルフィニル、4-メチルペンチルスルフィニル、3-メチルペンチルスルフィニル、2-メチルペンチルスルフィニル、1-メチルペンチルスルフィニル、3-エチルブチルスルフィニル、2-エチルブチルスルフィニル、シクロプロピルスルフィニル、シクロブチルスルフィニル、シクロペンチルスルフィニル、シクロヘキシルスルフィニル、およびシクロプロピルメチルスルフィニルなどが含まれ、例えば、C1-4アルキルスルフィニルおよびC1-3アルキルスルフィニルなども含まれる。

【0064】
本明細書において「C1-6アルキルスルホニル」とは、アルキル部分として既に定義した炭素数1~6のアルキル基を有するアルキルスルホニル基[-SO-(C1-6アルキル)]を意味し、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、n-プロピルスルホニル、i-プロピルスルホニル、n-ブチルスルホニル、s-ブチルスルホニル、i-ブチルスルホニル、t-ブチルスルホニル、n-ペンチルスルホニル、3-メチルブチルスルホニル、2-メチルブチルスルホニル、1-メチルブチルスルホニル、1-エチルプロピルスルホニル、n-ヘキシルスルホニル、4-メチルペンチルスルホニル、3-メチルペンチルスルホニル、2-メチルペンチルスルホニル、1-メチルペンチルスルホニル、3-エチルブチルスルホニル、2-エチルブチルスルホニル、シクロプロピルスルホニル、シクロブチルスルホニル、シクロペンチルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル、およびシクロプロピルメチルスルホニルなどが含まれ、例えば、C1-4アルキルスルホニルおよびC1-3アルキルスルホニルなども含まれる。

【0065】
本明細書において「C1-6アルキルアミノ」とは、アルキル部分として既に定義した炭素数1~6のアルキル基を有するアルキルアミノ基[-NH-(C1-6アルキル)]を意味し、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、n-プロピルアミノ、i-プロピルアミノ、n-ブチルアミノ、s-ブチルアミノ、i-ブチルアミノ、t-ブチルアミノ、n-ペンチルアミノ、3-メチルブチルアミノ、2-メチルブチルアミノ、1-メチルブチルアミノ、1-エチルプロピルアミノ、n-ヘキシルアミノ、4-メチルペンチルアミノ、3-メチルペンチルアミノ、2-メチルペンチルアミノ、1-メチルペンチルアミノ、3-エチルブチルアミノ、2-エチルブチルアミノ、シクロプロピルアミノ、シクロブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、シクロヘキシルアミノ、およびシクロプロピルメチルアミノなどが含まれ、例えば、C1-4アルキルアミノおよびC1-3アルキルアミノなども含まれる。

【0066】
本明細書において「ジ(C1-6アルキル)アミノ」とは、2つのアルキル部分として既に定義した炭素数1~6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基[-NH-(C1-6アルキル)]を意味し、2つのアルキル部分は同一であっても異なっていてもよい。当該基の例には、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジ(n-プロピル)アミノ、ジ(i-プロピル)アミノ、ジ(n-ブチル)アミノ、ジ(s-ブチル)アミノ、ジ(i-ブチル)アミノ、ジ(t-ブチル)アミノ、ジ(n-ペンチル)アミノ、ジ(3-メチルブチル)アミノ、ジ(2-メチルブチル)アミノ、ジ(1-メチルブチル)アミノ、ジ(1-エチルプロピル)アミノ、ジ(n-ヘキシル)アミノ、ジ(4-メチルペンチル)アミノ、ジ(3-メチルペンチル)アミノ、ジ(2-メチルペンチル)アミノ、ジ(1-メチルペンチル)アミノ、ジ(3-エチルブチル)アミノ、ジ(2-エチルブチル)アミノ、ジシクロプロピルアミノ、ジシクロブチルアミノ、ジシクロペンチルアミノ、ジシクロヘキシルアミノ、およびジシクロプロピルメチルアミノなど、並びにエチル(メチル)アミノ、n-プロピル(メチル)アミノ、i-プロピル(メチル)アミノ、n-ブチル(メチル)アミノ、s-ブチル(メチル)アミノ、i-ブチル(メチル)アミノ、t-ブチル(メチル)アミノ、n-ペンチル(メチル)アミノ、(3-メチルブチル)(メチル)アミノ、(2-メチルブチル)(メチル)アミノ、(1-メチルブチル)(メチル)アミノ、(1-エチルプロピル)(メチル)アミノ、n-ヘキシル(メチル)アミノ、(4-メチルペンチル)(メチル)アミノ、(3-メチルペンチル)(メチル)アミノ、(2-メチルペンチル)(メチル)アミノ、(1-メチルペンチル)(メチル)アミノ、(3-エチルブチル)(メチル)アミノ、および(2-エチルブチル)(メチル)アミノ、シクロプロピル(メチル)アミノ、シクロブチル(メチル)アミノ、シクロペンチル(メチル)アミノ、シクロヘキシル(メチル)アミノ、および(シクロプロピルメチル)(メチル)アミノなどが含まれ、例えば、(C1-4アルキル)(メチル)アミノおよび(C1-3アルキル)(メチル)アミノなども含まれる。

【0067】
本明細書において「C1-6アルコキシカルボニル」とは、アルコキシ部分として既に定義したC1-6アルコキシ基を有するアルコキシカルボニル基を意味し、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニルの他、C1-3アルコキシカルボニルなどが含まれる。

【0068】
本明細書における「ヒドロキシC1-6アルキル」には、例えばヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、1-ヒドロキシエチルなどが含まれる。

【0069】
本明細書における「アミノC1-6アルキル」には、例えばアミノメチル、2-アミノエチル、1-アミノエチルなどが含まれる。

【0070】
本明細書における「C1-6アルコキシC1-6アルキル」は式-(C1-6アルキル)-O-(C1-6アルキル)で表される基を意味し、例えばメトキシメチル、エトキシメチル、2-メトキシエチル、1-メトキシエチルなどが含まれる。

【0071】
本明細書における「C1-6アルキルアミノC1-6アルキル」は式-(C1-6アルキル)-NH-(C1-6アルキル)で表される基を意味し、例えば(メチルアミノ)メチル、(エチルアミノ)メチル、2-(メチルアミノ)エチル、1-(メチルアミノ)エチルなどが含まれる。

【0072】
本明細書における「ジ(C1-6アルキルアミノ)C1-6アルキル」は式-(C1-6アルキル)-N(C1-6アルキル)で表される基を意味し、ジアルキルアミノ部分の2つのアルキル基は同一であっても異なっていてもよい。当該基の例には、(ジメチルアミノ)メチル、(ジエチルアミノ)メチル、2-(ジメチルアミノ)エチル、1-(ジメチルアミノ)エチルなどが含まれる。

【0073】
本明細書における「-(C1-6アルキル)C(=O)NR2223」は、C1-6アルキルの任意の炭素原子が基-C(=O)NR2223により置換された基を意味し、ここでC1-6アルキルは既に定義したとおりである。

【0074】
本明細書における「-(C1-6アルキル)C(=O)OR24」は、C1-6アルキルの任意の炭素原子が基-C(=O)OR24により置換された基を意味し、ここでC1-6アルキルは既に定義したとおりである。

【0075】
本明細書において「C6-10アリール」は、例えば、フェニル、1-ナフチルまたは2-ナフチルを意味する。

【0076】
本明細書において「5~10員へテロアリール」とは、酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選択される1以上のヘテロ原子を含む、環原子が5~10の単環または縮合環の芳香族ヘテロ環基を意味する。具体例としては、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、フリル、チエニル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、インドリル、キノリニル、キノキサリル、キナゾリニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾフラニルなどが含まれる。

【0077】
本明細書において「含窒素ヘテロ環基」とは、1つの窒素原子を含み、更に酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選択される1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、環原子が5~10の単環または縮合環の飽和、部分飽和または不飽和のヘテロ環基を意味する。具体例としては、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、インドリル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ホモピペリジニル、モルホリニルなどが含まれる。

【0078】
上記式(I)で表される化合物に関する本発明には、互変異性体、幾何異性体、光学異性体などの各種の立体異性体、およびそれらの混合物が含まれる。例えば、式(I)で表される化合物は、下記の式(Ia)および(Ib)の化合物を包含する。

【0079】
【化5】
JP2013111799A1_000007t.gif
式(I)の化合物の「医薬として許容な塩」とは、医薬品として使用可能な塩であれば特に限定されない。本発明化合物が塩基と形成する塩としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウムなどの無機塩基との塩;メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン等の有機塩基との塩などが挙げられる。当該塩は、酸付加塩であってもよく、かかる塩としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸;および、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などの有機酸酸との酸付加塩が挙げられる。

【0080】
更に、式(I)で表される化合物には、水和物、各種溶媒和物や結晶多形等も含まれる。

【0081】
式(I)で表される化合物に含まれる原子(例えば、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、および硫黄原子など)は、それぞれの天然に最も多く存在する同位体以外の同位体原子であってもよく、当該同位体原子は放射性同位体原子であってもよい。すなわち、本発明の1つの側面によれば、同位体原子で標識化された本明細書で既に定義された式(I)の化合物、またはその塩が提供される。ここで、同位体原子による標識化は、例えば、放射性同位体による標識化(H、14C、32Pなど)であってもよく、化合物の調製の容易さの側面からは、Hによる標識化が好ましい。

【0082】
本発明の1つの態様において、式(I)の化合物は、プロドラッグとして投与され、生体内において活性化合物に変換される。

【0083】
式(I)の化合物は、例えばHeterocycles, Vol.81, No.9, 2010, 2075-2086に記載の製造方法により調製することができる。例えば、式(I)の化合物は以下のスキームに示す工程により合成することができる。

【0084】
【化6】
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[式中、R、R、R、R、R13、R14、R15、およびR16は、本明細書において既に定義したとおりである]
式(II)の化合物は、塩基存在下、例えば室温下、クロロホルムなどの適当な溶媒中で、クロロアセト酢酸エステル(例えば、クロロアセト酢酸エチルエステルなど)と反応させることにより、式(III)の化合物に変換することができる。式(III)の化合物は、例えば過熱下(例えば溶媒還流下)、適当な溶媒(例えばクロロホルムなど)の溶媒中で、アミンと反応させることにより、式(IV)の化合物に変換することができる。所望の化合物に対応する式(II)の化合物を用いることにより、または式(III)もしくは式(IV)の化合物の置換基を変換することのより、所望の式(I)の化合物を合成することができる。また必要に応じて保護基の導入および脱離を行ってもよい。

【0085】
本発明における脳機能改善には、脳機能障害の改善、例えば、脳血管障害、脳外傷、脳腫瘍、ウイルス性脳炎、低酸素脳症、アルコール中毒などに起因する脳機能障害の改善が含まれる。本発明は特に、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知機能障害に適用することができる。認知機能障害には、例えば、神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病、およびハンチントン病など)、精神疾患(統合失調症、双極性障害、うつ病、恐怖症、睡眠障害、薬物依存症など)、広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー症候群、精神遅滞、多動性障害、チック障害など)などが含まれる。

【0086】
本発明の医薬組成物は、種々の剤形、例えば、経口投与のためには、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤、液剤、乳剤、懸濁液、溶液剤、酒精剤、シロップ剤、エキス剤、エリキシル剤とすることができ、非経口剤としては、例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤などの注射剤;経皮投与または貼付剤、軟膏またはローション;口腔内投与のための舌下剤、口腔貼付剤;ならびに経鼻投与のためのエアゾール剤とすることができるが、これらには限定されない。これらの製剤は、製剤工程において通常用いられる公知の方法により製造することができる。

【0087】
当該医薬組成物は、一般に用いられる各種成分を含みうるものであり、例えば、1種以上の薬学的に許容され得る賦形剤、崩壊剤、希釈剤、滑沢剤、着香剤、着色剤、甘味剤、矯味剤、懸濁化剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、補助剤、防腐剤、緩衝剤、結合剤、安定剤、コーティング剤等を含みうる。また本発明の医薬組成物は、持続性または徐放性剤形であってもよい。

【0088】
本発明の治療剤、予防剤、または医薬組成物の投与量は、投与経路、患者の体型、年齢、体調、疾患の度合い、発症後の経過時間等により、適宜選択することができ、本発明の医薬組成物は、治療有効量および/または予防有効量の上記式(I)の化合物を含むことができる。本発明において上記式(I)の化合物は、一般に1~10000mg/日/成人の用量で使用されうる。当該医薬組成物の投与は、単回投与または複数回投与であってもよい。

【0089】
本発明の治療剤または予防剤は、必要に応じ、従来公知の着色剤、保存剤、香料、風味剤、コーティング剤、抗酸化剤、ビタミン、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、およびミネラル分(鉄、亜鉛、マグネシム、ヨードなど)などの成分を含有していてもよい。本発明の治療剤または予防剤は、医薬組成物、機能性食品、健康食品、飲料、サプリメントなどに適した形態、例えば顆粒剤(ドライシロップを含む)、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)、錠剤(チュアブル剤などを含む)、散剤(粉末剤)、丸剤などの各種の固形製剤、または内服用液剤(液剤、懸濁剤、シロップ剤を含む)などの液状製剤などの形態で調製してもよい。また、本発明の治療剤または予防剤は、そのまま、医薬組成物、機能性食品、健康食品、サプリメントなどとして使用することもできる。

【0090】
製剤化のための添加物としては、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤、分散剤、湿潤剤、防腐剤、粘稠剤、pH調整剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、溶解補助剤が挙げられる。また、液剤の形態にする場合は、ペクチン、キサンタンガム、グアガムなどの増粘剤を配合することができる。また、コーティング剤を用いてコーティング錠剤にしたり、ペースト状の膠剤とすることもできる。さらに、他の形態に調製する場合であっても、従来の方法に従えばよい。

【0091】
本発明の1つの側面によれば、電位依存性T型カルシウムチャネルのカルシウムイオン流入量を増加させる作用を有する化合物を選抜する工程を含む、脳機能改善活性を有する化合物のスクリーニング方法が提供される。上記工程においては、電位依存性T型カルシウムチャネル発現細胞を用いたアッセイにより化合物を選抜してもよい。

【0092】
本発明の別の側面によれば、電位依存性T型カルシウムチャネルの発現量が異なる2種類の神経細胞を使用する、脳機能改善活性を有する化合物のスクリーニング方法が提供される。スクリーニング対象となる被検化合物としては特に限定されず、有機化合物および無機化合物(特に、低分子化合物)、タンパク質、ペプチドなどが例として挙げられる。

【0093】
スクリーニングで使用される電位依存性T型カルシウムチャネル発現細胞は、特に限定されない。好ましくは、下記式で表される化合物(SAK3):

【0094】
【化7】
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の添加によりカルシウムイオンレベルの有意な上昇が観察される神経細胞を用いることができる。

【0095】
スクリーニングで使用される、電位依存性T型カルシウムチャネルの発現量が異なる2種類の神経細胞は、発現量が有意に異なれば特に限定されない。好ましくは、上記式で表される化合物(SAK3)の添加によりカルシウムイオンレベルが実質的に上昇しない神経細胞を、電位依存性T型カルシウムチャネルの発現量が低い細胞(細胞A)として使用することができる。また、上記化合物の添加によりカルシウムイオンレベルの有意な上昇が観察される神経細胞を、電位依存性T型カルシウムチャネルの発現量が高い細胞(細胞B)として好ましく用いることができる。

【0096】
本発明のスクリーニングにおいては、哺乳動物由来の細胞を使用することができ、ヒト由来細胞、またはマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、サルなどの非ヒト哺乳動物由来の細胞を用いることができる。

【0097】
本発明のスクリーニングにおいては、電位依存性T型カルシウムチャネルの発現量が低い天然の細胞を使用することができ、その具体例としては、神経芽腫細胞(例えば、Neuro2A細胞、PC12細胞)、HEK293細胞、COS7細胞などが挙げられる。または電位依存性T型カルシウムチャネル遺伝子のノックアウト細胞を使用することもできる。これらの細胞は、細胞Aとして使用することができる。

【0098】
電位依存性T型カルシウムチャネル発現細胞の具体例としては、中枢神経細胞(例えば、海馬錐体細胞、視床感覚関連細胞、小脳プルキンエ細胞、嗅球顆粒細胞など)末梢運動神経細胞(脊髄後根感覚神経、副腎髄質細胞など)などが挙げられる。または電位依存性T型カルシウムチャネル遺伝子を導入した遺伝子組み換え細胞を使用することもできる。遺伝子を導入する電位依存性T型カルシウムチャネルの例としては、Cav3.1、Cav3.2、Cav3.3などが挙げられる。これらの細胞を、細胞Bとして使用することができる。遺伝子を導入する細胞の具体例としては、神経芽腫細胞(例えば、Neuro2A細胞、PC12細胞)、HEK293細胞、COS7細胞などが挙げられる。

【0099】
本発明のスクリーニング方法のアッセイ系において、特に細胞Aを使用するアッセイ系Aと細胞Bを使用するアッセイ系Bの両方において、ニコチンを添加することによりカルシウムイオンレベルが上昇することを確認する工程を含んでいてもよい。当該工程により、電位依存性T型カルシウムチャネル以外のCa2+流入路が双方のアッセイ系に存在することを確認することができ、本スクリーニング方法のバリデーションとすることができる。

【0100】
細胞の培養、遺伝子組み換え細胞の調製などは公知の方法に基づいて行うことができる。また、被検化合物の投与は、例えば、細胞が保持される溶液などに被検化合物を含ませることなどにより、対象に被検化合物を作用させることにより行うことができる。

【0101】
本発明のスクリーニング方法は、電位依存性T型カルシウムチャネルにおけるCa2+流入量増加により、アセチルコリン遊離を促進する作用を有する化合物のスクリーニングに利用することができる。このような化合物は、アセチルコリン遊離促進による脳機能改善効果を有するのに加え、例えばZSET1446といった臨床試験に供せられる化合物と同様の特性を有し、副作用のリスクなどの観点から医薬として好ましい特性を有すると考えられる。

【0102】
本発明のさらに別の側面によれば、式(I)の化合物を含む、電位依存性T型カルシウムチャネル活性化剤が提供される。ここで式(I)の化合物は本明細書において既に定義された通りである。本発明の電位依存性T型カルシウムチャネル活性化剤は、例えば、試験用の試薬として使用することができる。本発明の別の態様によれば、電位依存性T型カルシウムチャネルを含む系に式(I)の化合物を添加する工程を含む、電位依存性T型カルシウムチャネルの活性化方法が提供される。
【実施例】
【0103】
以下、実施例を示すことにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0104】
試薬および統計処理
試験において以下の試薬を使用した:
【実施例】
【0105】
【化8】
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ZSET1446(以下、ST101と称する)は公知の方法で合成することができる。Sonexa Therapeutics Inc (San Diego, USA) から供与を受けた化合物を本試験においては使用した。上記式(I)の化合物であるSAK 誘導体(SAK1, 3, 8, および9)は、Heterocycles, Vol.81, No.9, 2010, 2075-2086に記載の方法により調製することができる。本試験においては、国立大学法人信州大学・筧昭一教授から供与を受けた化合物を使用した。ミベフラジル2塩酸塩(Mibefradil dihydrocholoride)は、Sigma-Aldrich より購入した。
【実施例】
【0106】
全てのデータは平均値 ± 標準誤差で算出した。統計上有意な差に関して、多群間の比較は一元配置分散分析 (one-way analysis of variance) 後に、Dunnett の多重比較法を用いて行った。また、危険率5%未満をもって統計上有意差ありと判定した。
【実施例】
【0107】
[試験例1]マウス海馬CA1領域におけるシナプス伝達長期増強(LTP)に対する影響
雄性マウスC57BL/6(10-12週齢)の脳を矢状断で切断し、海馬 CA1 領域を含む冠状断脳スライス (400 μm) を作製した。海馬スライスを95% O2/5% CO2 ガスで飽和させた人工脳脊髄液 (126 mM NaCl, 5 mM KCl, 26 mM NaHCO3, 1.3 mM MgSO4-7H2O, 1.26 mM KH2PO4, 2.4 mM CaCl2-2H2O, 10 mM グルコース) 中において、34 ℃で2時間回復させた。海馬スライスを測定チャンバーに移し、ST101 (100 pM)、SAK1 (100 pM)、SAK3 (100 pM) を人工脳脊髄液に添加して、灌流適用した。その後、海馬CA1領域に入力するSchaffer 側枝と交連線維を刺激電極で刺激し、それにより惹起される CA1 領域における シナプス後集合電位(fEPSP) の測定を行った。測定後、スライス切片から海馬 CA1 領域のみを切り出し、免疫ブロットによる測定用に、-80 ℃にて凍結保存した。
【実施例】
【0108】
結果を図1~4に示す。海馬におけるシナプス伝達長期増強(LTP)は哺乳動物における記憶の素過程である。臨床治験中のST101にはLTP増強作用が見られないが、SAK1、SAK3には強い増強作用が確認された。本実験結果より、本発明の脳機能改善剤がシナプス伝達長期増強を誘導し、記憶に関する脳機能を改善することが予想される。
【実施例】
【0109】
[試験例2]海馬CA1領域におけるCaMKIIの自己リン酸化反応(活性化反応)に対する影響
上記の凍結マウス脳スライス切片 (海馬 CA1 領域) を用いて、ホモジナイジングバッファー (50 mM Tris-HCl pH 7.5、0.5 % Triton X-100、4 mM EGTA、0.5 M NaCl、10 mM EDTA、1 mM Na3VO4、30 mM ピロリン酸ナトリウム、50 mM NaF、1 mM DTT、100 nM カリクリンA、50 μg/mL ロイペプチン、25 μg/mL ペプスタチンA、50 μg/mL トリプシン阻害剤) を1サンプルあたり150 μL 添加し、氷上でホモジナイズした。その後、冷却遠心分離機 (14,000×g、10 分、4 ℃) で遠心分離後に、上清100 μL を採取し、6×Laemmli buffer を20 μL 加え100 ℃ で3分間煮沸し、免疫ブロット用のサンプルとした。なお、上清の一部を用いてBradford法により蛋白質濃度を測定した。同量の蛋白質を含む試料を、10% SDS- ポリアクリルアミド電気泳動ゲル (SDS-PAGE gel) へ添加し、ゲル1枚当たり80 mA で180分間、SDS-PAGE を行った。泳動分離後、PVDF メンブレンに70 V で120分間転写を行った。抗体の非特異的結合を防ぐために、スキムミルクを5 % の濃度で溶解した Tween、Tris-bufferd saline (TTBS:50 mM Tris-HCl, pH 7.5, 150 mM NaCl および 0.1 % Tween 20) 中にメンブレンを浸し、常温でブロッキングを 1 時間行った後、次に示す一次抗体を4 ℃で一晩反応させた。一次抗体には、抗リン酸化CaMKII抗体 (1:5000, Fukunaga et al., J. Biol. Chem. 267, 22527-22533, 1992) 及び 抗CaMKII抗体 (1:5000, Fukunaga et al., J. Neurochem. 51, 1070-1078, 1988) を用いた。TTBS 溶液で洗浄後、メンブレンを 西洋ワサビペルオキシダーゼ (HRP)-標識化抗ウサギ IgG 抗体 (1:5000, GE healthcare, Buckinghamshire, UK) の二次抗体と常温で 60分間反応させた。TTBS 溶液による洗浄後、二次抗体に標識された HRP を ECL detection system (GE healthcare) により発光させ、X 線フィルム (Fuji Medical X-ray Film, Fuji Film) に感光させることによりバンドの検出を行った。免疫反応物の定量解析には NIH image 解析ソフトを用いた。
【実施例】
【0110】
抗リン酸化CaMKII抗体及び抗CaMKII抗体を用いてブロッティングを行った結果を図5に示し、免疫反応物の定量解析結果を図6のグラフに示す。海馬におけるシナプス伝達長期増強 (LTP) には記憶形成に必須のカルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ II (CaMKII) の活性化(自己リン酸化)が必須である。LTP増強作用のある SAK1およびSAK3の投与マウスにおいてはリン酸化されたCaMKIIが増加しており、CaMKII の活性化が増強されていることが確認された。
【実施例】
【0111】
[試験例3]T型カルシウムチャネル非発現細胞と発現細胞での効果
マウス神経芽腫細胞株 Neuro2A 細胞は、Human Science Research Resources Bank (#IFO50081, Osaka, Japan) から購入した。Neuro2A 細胞は、10% 牛胎児血清を含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM) に、37 ℃/5% CO2の条件下で培養した。その後 Neuro2A 細胞を、ガラスボトムディッシュに1~2 x 106 cell/φ35-mm ディッシュの濃度で播種し標準培地に24時間培養した後、Lipofectamine 2000 (Invitrogen, Carsbad, CA, USA) を用いてT型カルシウムチャネル(Cav3.1)遺伝子を含んだプラスミドベクター (Lipofectamine 2000 : DNA=1μl : 1μg、1.5 ml の無血清培地) を用いてトランスフェクト(遺伝子導入)した。T型カルシウムチャネル(Cav3.1)遺伝子はOriGene Technologies, Inc.から、プラスミドベクターpCMV-SPORT6 は、Thermo Fisher Scientific Ltd.から、Lipofectamine 2000はInvitrogenから購入し、前述のLipofectamine 2000とプラスミドベクターとの比率調整以外は、Lipofectamine 2000に添付のプロトコルに従いトランスフェクトした。トランスフェクトから6時間後に無血清培地を標準培地に置換し、さらに48時間培養した後、Cav3.1発現を確認後に、カルシウムイメージング(カルシウム濃度測定)を行った。
【実施例】
【0112】
T 型カルシウムチャネル発現 Neuor2A 細胞が撒かれたガラスボトムディッシュを灌流液(Krebs-Hepes緩衝液;KRH)中で、2.5 μM の Fura-2-AM (Sigma, St Louis, MO, USA) を添加し、37 ℃ で30分間インキュベートした。Fura-2-AMを含まないKRHに灌流液を置き換え、蛍光顕微鏡で細胞内カルシウムを測定しながら、Neuro2A 細胞を、SAK3 (100 pM)で刺激し、その後必要に応じて、ニコチン (1 μM)、ATP (0.1 μM)、DHPG (20 μM) でさらに刺激した。T型カルシウムチャネル阻害剤であるミベフラジル(mibefradil、10μM)を添加する系においては、還流液(外液)に添加した。
【実施例】
【0113】
経時的なカルシウム濃度変化を図7および図8に示す。Cav3.1 非発現細胞(図7)では、SAK3を添加してもカルシウム濃度に変化が無く、ニコチンの添加後にカルシウム濃度の上昇が確認された。Cav3.1 発現細胞(図8)では、SAK3添加後にカルシウム濃度の上昇が確認されたが、ミベフラジルを加えた系ではSAK3によるカルシウム濃度の上昇が確認されなかった。
【実施例】
【0114】
SAK3により誘発されるカルシウムイオンの細胞内流入量を図9に示す。Cav3.1 非発現細胞(non-transfected cells)ではSAK3はカルシウムイオン流入量の変化は見られないのに対し、Cav3.1 発現細胞(transfected cells)ではカルシウムイオン流入量の上昇が確認された。この上昇はT型電位依存性カルシウムチャネル阻害剤であるミベフラジル(mibe)の添加によってほぼ消失した。図10はニコチンにより誘導されるカルシウムイオン流入量を示す。非発現細胞に比べて、発現細胞ではSAK3存在下でニコチン誘発のカルシウムイオン流入量の上昇が2倍に亢進する。一方で、ミベフラジル(mibe)の添加によりSAK3の効果は消失した。
【実施例】
【0115】
T型カルシウムチャネル発現細胞でのATP誘発と代謝型グルタミン酸受容体アゴニスト誘発に対する SAK3の効果を図11~14に示す。図11はカルシウムイオン濃度の経時的変化を、図12はATP添加により誘発されるカルシウムイオン流入量を示す。図13はカルシウムイオン濃度の経時的変化を、図14は、代謝型グルタミン酸受容体アゴニストである3,5-ジヒドロキシフェニルグリシン(DHPG)の添加により誘発されるカルシウムイオン流入量を示す。ATPまたはDHPGの添加により誘発されるカルシウムイオン流入量は、SAK3の存在下で増強されることはなく、SAK3はATP受容体および代謝型グルタミン受容体を解するカルシウム流入には影響しないことが示された。
【実施例】
【0116】
T型カルシウムチャネル非発現細胞と発現細胞でのSAK3とST101の効果の比較試験結果について、SAK3の添加による影響の経時変化を図15に、ST101の添加による経時変化を図16にそれぞれ示す。T型電位依存性カルシウムチャネルに対してSAK3はST101に比較して10倍以上の活性化を示す。この結果は海馬神経細胞においてCaMKII活性化作用の違いと相関している。即ち、海馬神経細胞においてもSAK3はT型電位依存性カルシウムチャネルの活性化反応を介して、LTPを増強していると考えられる。
【実施例】
【0117】
[試験例4]認知機能改善効果
実験には、10週齢のDDY 雄性マウス (Nippon SLC, Hamamatsu, Japan) を使用した。動物は東北大学大学院薬学研究科の動物実験施設において一定条件下 (温度22±2 ℃、12h:12h明暗サイクル) で、水・飼料を自由に与えて飼育を行った。尚、本論文中に記載した動物の取り扱い及び動物実験は、東北大学実験動物委員会の承認を得て、東北大学動物実験指針に基づいて行った。
【実施例】
【0118】
嗅球摘出マウス(OBXマウス)は、DDY 雄性マウスを用いて作製した。嗅球摘出手術は、ペントバルビタールナトリウム (50mg/kg i.p.; Dainippon, Osaka, Japan) で麻酔した条件で施行した。マウスを脳固定器に固定し、嗅球上の頭蓋骨をドリルで穿孔し、直径1mmの穴をあけた。嗅球を、吸引ポンプにて前頭前皮質を傷つけないように吸引除去した。Sham 群では、嗅球の吸引除去を除いて OBX 群と同一の操作を行った。
【実施例】
【0119】
SAK3 は、5% ジメチルスルホキシド (DMSO) に溶解して用いた。行動薬理試験開始30分前に、SAK3 (0.1-3.0 mg/kg) を腹腔内に投与し、対照群のマウスには同量の溶剤(Veh.)を投与した。
【実施例】
【0120】
Y 字型迷路試験:マウスの自発運動量と空間作業記憶を評価する Y 字迷路試験を行った。マウスを Y 字迷路のいずれかのアームの先端に置き、8分間にわたって迷路内を自由探索させ、マウスが移動したアームの位置を選択した順に記録した。マウスが測定時間内に各アームに移動した回数をカウントし、これを total arm entries とした。さらに、この中で連続して異なる三つのアームを選択した組み合わせをカウントし、この数を交替行動回数 (No. of alternation) とした。No. of alternation の total arm entries から 2 を引いた数に対する割合を、正常の交替行動の指標 (空間作業記憶の正解率) として alternation (%) で表した。total arm entries と alternation (%)を図17と18にそれぞれ示す。
【実施例】
【0121】
新奇物体認識試験:本試験はマウスの新奇性を好む特性を利用したもので、2つのオブジェクトを置いた装置内で10分間自由に探索させた (訓練試行、training session)。訓練試行の1時間後、片方を新奇オブジェクトに置換した装置内でさらに5分間自由に探索させた (保持試行、trial session)。訓練試行及び保持試行では、2つのオブジェクトに対するそれぞれの接触回数を測定した。保持試行における総接触回数に対する新奇オブジェクトの接触回数の割合 (%) を判別指数 (Discrimination index) として算出した。結果を図19に示す。図19の白抜きのグラフは訓練試行から存在した既知オブジェクトへの保持試行における総接触回数の割合で、黒カラムは新奇オブジェクトの接触回数の割合[判別指数 (Discrimination index)]を表示する。
【実施例】
【0122】
図17および19に示されるY字迷路試験および新奇物体認識試験の結果より、嗅球摘出による認知機能障害が 1 mg/kg の投与によりほぼ改善されることが確認された。
【実施例】
【0123】
[試験例5]海馬内アセチルコリン遊離促進効果
海馬内で遊離するアセチルコリンの量をマイクロダイアリス法により測定した。ガイドカニューレ及び透析プローブ (AG-4; Eicom, Kyoto, Japan) の設置は、1.5% ハロタン (Takeda Chemical Industries Ltd., Osaka, Japan) で麻酔を維持した条件でマウスを脳定位固定装置に固定し、左側海馬 (AP=+3, L=+3, V=-1.8) にガイドカニューレを設置し、ガイドカニューレに透析プローブを挿入した。マウス海馬からの脳内 ACh 試料採取は、プローブ設置手術の翌日に行った。手術からの回復を確認したマウスを、無麻酔、自由行動下でプローブをマイクロポンプ (ESP-64; Eicom) に接続して、リンゲル液 (1.3 mM CaCl2, 3mM KCl, 146 mM NaCl および 1mM MgSO4) を毎分2μL の流速で流した。ダイアリシス試料は19.5分毎に採取し、オートインジェクター (EAS-20; Eicom) を用いてアセチルコリン分離用カラムに注入し、分析には微量生体資料分析システム (HTEC-500; Eicom) を用いた。SAK3は、試験開始40分前(図8のグラフで-40分の時点)に腹腔内投与した。ニコチン誘発性 ACh 遊離は、3mM ニコチンを含むリンゲル液をプローブから試験開始から20分間(図20のグラフの0~20分の間)灌流投与し、その後は通常のリンゲル液に置換え測定した。
【実施例】
【0124】
上記の試験結果を図20および図21に示す。認知機能障害を示す嗅球摘出マウス(OBXマウス)をにおいて、SAK3を投与しない群ではニコチンによるアセチルコリンの遊離量は Sham群と比べて顕著に低下しているが、SAK投与群ではアセチルコリンの遊離量が上昇し、1.0 mg/kg 投与群では Sham 群を上回る遊離量が確認された(図20および21)。
【実施例】
【0125】
[試験例6]マウス大脳皮質細胞におけるCaMKIIの自己リン酸化反応(活性化反応)に対する影響
マウス大脳皮質の分散培養は既報の方法(Fukunaga et al., J. Biol. Chem. 267, 22527-22533, 1992)に従って行った。3週間培養後にインキュベーションメディウム(KRH)に 100pMのSAK3, SAK8, SAK9を添加して、30分間インキュベーションした。刺激後メディウムを除去、細胞は凍結保存した。凍結した大脳皮質細胞は試験例2における方法と同様の方法により、ホモジナイズ後に免疫ブロット法にて、CaMKIIの活性化状態(自己リン酸化反応)を定量分析した。
【実施例】
【0126】
抗リン酸化CaMKII抗体及び抗CaMKII抗体を用いてブロッティングを行った結果を図22に示し、免疫反応物の定量解析結果(2例)を図23および24のグラフに示す。SAK3、SAK8、およびSAK9の投与マウスにおいてはリン酸化されたCaMKIIが増加しており、CaMKII の活性化が増強されていることが確認された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図6】
4
【図9】
5
【図10】
6
【図11】
7
【図12】
8
【図13】
9
【図14】
10
【図17】
11
【図18】
12
【図19】
13
【図20】
14
【図21】
15
【図23】
16
【図24】
17
【図5】
18
【図7】
19
【図8】
20
【図15】
21
【図16】
22
【図22】
23