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明細書 :代用気管

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6092789号 (P6092789)
登録日 平成29年2月17日(2017.2.17)
発行日 平成29年3月8日(2017.3.8)
発明の名称または考案の名称 代用気管
国際特許分類 A61F   2/04        (2013.01)
FI A61F 2/04
請求項の数または発明の数 2
全頁数 7
出願番号 特願2013-556226 (P2013-556226)
出願日 平成24年12月28日(2012.12.28)
国際出願番号 PCT/JP2012/084084
国際公開番号 WO2013/114782
国際公開日 平成25年8月8日(2013.8.8)
優先権出願番号 2012016291
優先日 平成24年1月30日(2012.1.30)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年11月19日(2015.11.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
発明者または考案者 【氏名】窪田 正幸
個別代理人の代理人 【識別番号】100080089、【弁理士】、【氏名又は名称】牛木 護
【識別番号】100161665、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 知之
【識別番号】100121153、【弁理士】、【氏名又は名称】守屋 嘉高
【識別番号】100178445、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 淳二
【識別番号】100133639、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 卓哉
【識別番号】100188994、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 裕介
審査官 【審査官】寺澤 忠司
参考文献・文献 特許第3245156(JP,B2)
特開2011-010866(JP,A)
調査した分野 A61F 2/04
特許請求の範囲 【請求項1】
気管欠損部の治療に用いるために気管内に挿入される代用気管であって、ワイヤーを隙間なくコイル状に巻くことで形成されるとともに、紡錘形に形成された第1のコイルと、この第1のコイルの外側に隙間なく設けられた第2のコイルとからなり、中央部に前記第1のコイル及び第2のコイルからなる2重コイル部が形成され、この2重コイル部の両端に前記第1のコイルからなる1重コイル部が形成されたことを特徴とする代用気管。
【請求項2】
前記ワイヤーは、常温では記憶された形状を維持し冷却すると軟化する超弾性を有する形状記憶合金からなることを特徴とする請求項記載の代用気管。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、気管欠損部の治療に用いられる代用気管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、巨大な気管欠損部の治療は、欠損部を肋軟骨や人工被覆材などの被覆材を用いて被覆することで行なわれてきた。しかし、現在まで、理想的な被覆材は見出されていない。その理由は、気管は呼吸サイクルに合わせて内圧が変化するが、被覆材にはその内圧の変化に耐えることのできる恒常的な強度が要求され、さらに、生体反応による肉芽形成や感染などを惹起しないことが要求されるからである。なお、工業的に作成された非生体素材を被覆材に用いた場合は、感染や肉芽形成による内腔狭窄が問題となる。一方、医用工学を用いて産生された素材を用いた場合は、培養過程で牛のアルブミンなどが用いられるため、狂牛病などに対する安全性が問題となる。
【0003】
ところで、気管欠損部を放置した場合は、薄いながらも気道の内圧の変化に耐えることのできる線維性被膜が形成されるが、長期的には気管欠損部のサイズに比例した内腔狭窄をきたす。一方、特許文献1には、気管の狭窄部や閉塞を拡張保持するための形状記憶合金製ステントが開示されている。そこで、この線維性被膜の形成を利用し、上記のステントを一時的な代用気管として気管内に挿入することで、内腔狭窄をきたさずに気管欠損部を自然治癒させることができるものと期待された。
【0004】
しかし、特許文献1に開示されたようなコイル状のステントを気管内に挿入してみたところ、異物に対する生体反応として旺盛な肉芽形成を惹起してしまい、結局、肉芽の一部がステントの内側に侵入し、内腔狭窄をきたしてしまうことが判明した。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開平11-99207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明では上記問題点に鑑み、気管欠損部の治療に用いるために気管内に挿入される代用気管であって、肉芽が内側に侵入することを確実に防止することのできる、新規の代用気管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1記載の代用気管は、気管欠損部の治療に用いるために気管内に挿入される代用気管であって、ワイヤーを隙間なくコイル状に巻くことで形成されるとともに、紡錘形に形成された第1のコイルと、この第1のコイルの外側に隙間なく設けられた第2のコイルとからなり、中央部に前記第1のコイル及び第2のコイルからなる2重コイル部が形成され、この2重コイル部の両端に前記第1のコイルからなる1重コイル部が形成されたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項記載の代用気管は、請求項において、前記ワイヤーは、常温では記憶された形状を維持し冷却すると軟化する超弾性を有する形状記憶合金からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1記載の代用気管によれば、ワイヤーを隙間なくコイル状に巻くことで形成されるとともに、紡錘形に形成された第1のコイルと、この第1のコイルの外側に隙間なく設けられた第2のコイルとからなるので、コイルが2重になっていることにより、肉芽が内側に侵入することを確実に防止することができる。ま、中央部に前記第1のコイル及び第2のコイルからなる2重コイル部が形成され、この2重コイル部の両端に前記第1のコイルからなる1重コイル部が形成されたので、1重コイル部を気管に挿入し欠損部に2重コイル部を位置させることにより、2重コイル部により肉芽が内側に侵入することを確実に防止することができるとともに、代用気管を欠損部に適合した状態で気管内に留置させることができ、代用気管が移動することを確実に防止することができる。
【0010】
また、本発明の請求項記載の代用気管によれば、前記ワイヤーは、常温では記憶された形状を維持し冷却すると軟化する超弾性を有する形状記憶合金からなることにより、欠損部が自然治癒した後に代用気管を冷却して内視鏡的に抜去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の代用気管の一実施例を示す正面図である。
【図2】本発明の代用気管の一実施例を示す写真である。
【図3】本発明の代用気管を使用した動物実験を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の代用気管の実施例について、添付した図面を参照しながら説明する。なお、本発明の代用気管は、小児外科、呼吸器外科、再生外科などの分野で用いることができるものである。
【実施例1】
【0013】
本実施例の代用気管を示す図1において、1は気管欠損部の治療に用いるために気管内に挿入される代用気管であって、ワイヤー2を隙間なくコイル状に巻くことで形成されている。ワイヤー2は、好ましくは、常温では記憶された形状を維持し冷却すると軟化する超弾性を有する形状記憶合金からなる。このような形状記憶合金としては、例えば、常温では記憶された形状を維持しマイナス10℃に冷却すると軟化するチタン・ニッケル合金を用いることができる。なお、チタン・ニッケル合金は、長期間体内に留置しても劣化がないという利点を有する。
【実施例1】
【0014】
また、代用気管1は、紡錘形にワイヤー2を巻くことで形成された第1のコイル3と、この第1のコイル3の外側に隙間なくワイヤー2を巻くことで設けられた第2のコイル4とからなる。第2のコイル4は、第1のコイル3の中心軸方向における中央部にのみ設けられている。すなわち、代用気管1の中心軸方向における中央部に第1のコイル3及び第2のコイル4からなる2重コイル部5が形成されている。また、この2重コイル部5の両端には、それぞれ第1のコイル3からなる1重コイル部6が形成されている。
【実施例1】
【0015】
本実施例の代用気管1は、気管欠損部に欠損孔を通して気管内に設置されるものであり、代用気管1を設置した後に気管欠損部を閉鎖することなく放置したままにしておくと、欠損部は線維性被膜で完全に閉鎖される。したがって、本実施例の代用気管1を用いた治療は、気管狭窄のない自然治癒を来すものであり、生体材料を用いた場合のような感染の虞がない。そして、気管欠損部に相当する部分を2重コイル部5とすることで、肉芽が内側に侵入することが確実に防止され、欠損部に2重コイル部5をフィットさせることで、代用気管1の移動が防止される。
【実施例1】
【0016】
以上のように、本実施例の代用気管は、気管欠損部の治療に用いるために気管内に挿入される代用気管1であって、ワイヤー2を隙間なくコイル状に巻くことで形成されるとともに、紡錘形に形成された第1のコイル3と、この第1のコイル3の外側に隙間なく設けられた第2のコイル4とからなる。
【実施例1】
【0017】
したがって、コイルが2重になっていることにより、肉芽が内側に侵入することを確実に防止することができる。また、これにより、長期間の使用にも耐えることができる。さらに、ワイヤー2をコイル状に巻くだけで簡単に形成されるので、種々のサイズのものを容易かつ安価に製造することが可能である。
【実施例1】
【0018】
また、中央部に前記第1のコイル3及び第2のコイル4からなる2重コイル部5が形成され、この2重コイル部5の両端に前記第1のコイル3からなる1重コイル部6が形成されたものである。
【実施例1】
【0019】
したがって、1重コイル部6を気管に挿入し欠損部に2重コイル部5を位置させることにより、2重コイル部5により肉芽が内側に侵入することを確実に防止することができるとともに、代用気管1を欠損部に適合した状態で気管内に留置させることができ、代用気管が移動することを確実に防止することができる。
【実施例1】
【0020】
また、前記ワイヤー2は、常温では記憶された形状を維持し冷却すると軟化する超弾性を有する形状記憶合金からなるものである。
【実施例1】
【0021】
したがって、欠損部が自然治癒した後に代用気管1を冷却して内視鏡的に抜去することができる。なお、代用気管1は、コールドスプレーなどを吹きつけることにより冷却することができる。
【実施例1】
【0022】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。
【実施例2】
【0023】
0.4mm径のチタン・ニッケル合金からなるワイヤー2を隙間なくコイル状に巻いて代用気管を作成した。その写真を図2に示す。なお、ワイヤー2は、ソルブ株式会社が巻き爪矯正用に開発したもので、常温では記憶された形状を維持しマイナス10℃に冷却すると軟化する超弾性を有している。
【実施例2】
【0024】
ここで、第1のコイル3は、全長を24mm、両端部における径を4mm、中央部における径を6mmとして、紡錘形に形成した。そして、この第1のコイル3の外側に第2のコイル4を隙間なく設けた。第2のコイル4の全長は12mmとした。なお、第1のコイル3と第2のコイル4の端部から直線状に伸びるワイヤー2’は、代用気管1の使用時に切断されるものである。
【実施例2】
【0025】
そして、この代用気管1を用いて、家兎を用いた動物実験を行った。
【実施例2】
【0026】
筋肉内麻酔薬注入にて鎮静を加え、頚部縦切開にて頚部気管(直径6~7mm)を露出した。そして、図3(a)に示すように、気管Aの前半周を6軟骨輪にわたって切除して気管前壁Bを摘出することで、鋭的に気管Aに欠損部Cを作成した。つぎに、図3(b)~(c)に示すように、欠損部Cから代用気管1を挿入した。欠損孔Cより代用気管1を曲げながら両端の1重コイル部6を気管Aの内腔に差し込み、欠損部Cに2重コイル部5が位置するように設置することにより、中央部の2重コイル部5により欠損部Cを閉塞した。欠損部Cの断端と代用気管1を5-0非吸収糸にて数針固定した。切開した前頚筋群や皮下組織を連続縫合閉鎖し、手術を終了した。術後数日抗生剤を使用したほかは特に処置をせず、麻酔覚醒後は通常の家兎飼料を摂食させた。術直後の数日には経口摂取が不良のため、皮下に点滴液を注入して水分補給を適宜行った。
【実施例2】
【0027】
体重2.5kgの家兎5羽を用いて実験を行ったところ、5羽とも2ヶ月以上の長期生存が確認された。気管内視鏡検査を行ったところ、代用気管1に軽度の浸出液の付着はあるものの、内腔は保たれていた。
【符号の説明】
【0028】
1 代用気管
2 ワイヤー
3 第1のコイル
4 第2のコイル
5 2重コイル部
6 1重コイル部
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図2】
2