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明細書 :電池システムと充放電測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5773547号 (P5773547)
登録日 平成27年7月10日(2015.7.10)
発行日 平成27年9月2日(2015.9.2)
発明の名称または考案の名称 電池システムと充放電測定装置
国際特許分類 G01R  31/36        (2006.01)
G01R  33/09        (2006.01)
G01R  21/08        (2006.01)
H01M  10/48        (2006.01)
H02J   7/00        (2006.01)
FI G01R 31/36 A
G01R 33/06 R
G01R 21/08
H01M 10/48 P
H02J 7/00 Q
請求項の数または発明の数 7
全頁数 40
出願番号 特願2013-556263 (P2013-556263)
出願日 平成25年1月30日(2013.1.30)
国際出願番号 PCT/JP2013/000476
国際公開番号 WO2013/114865
国際公開日 平成25年8月8日(2013.8.8)
優先権出願番号 2012019205
2012275948
優先日 平成24年1月31日(2012.1.31)
平成24年12月18日(2012.12.18)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成26年10月6日(2014.10.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】506122327
【氏名又は名称】公立大学法人大阪市立大学
発明者または考案者 【氏名】辻本 浩章
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】230104019、【弁護士】、【氏名又は名称】大野 聖二
【識別番号】100109841、【弁理士】、【氏名又は名称】堅田 健史
【識別番号】100167933、【弁理士】、【氏名又は名称】松野 知紘
【識別番号】100174137、【弁理士】、【氏名又は名称】酒谷 誠一
審査官 【審査官】菅藤 政明
参考文献・文献 特開平2-146936(JP,A)
特開2011-47731(JP,A)
特開平8-50929(JP,A)
特開平2-170061(JP,A)
調査した分野 G01R 21/08
G01R 31/36
G01R 33/09
H01M 10/44
H01M 10/48
H02J 7/00
H02J 13/00
特許請求の範囲 【請求項1】
充放電可能な二次電池と、
前記二次電池の端子間に検査スイッチを介して接続された検査抵抗と、
前記二次電池を充電する充電器を接続可能な一対の外部端子と、
前記二次電池の両電極間の電圧を計測する電池電圧計と、
前記二次電池と前記外部端子との間の接続線に隣接配置された磁性膜と、
前記二次電池の端子間に、前記磁性膜と直列に接続されたセンサ抵抗と、
前記磁性膜の電圧を測定するセンサ電圧計と、
前記二次電池を充電する際に、前記電池電圧計の計測結果に基づいて、前記二次電池の両電極間の電圧が充電開始電圧から充電終了電圧になるまでの充電時間を計測するタイマと、
前記検査スイッチを制御するとともに、前記タイマによる計測結果と、前記センサ電圧計によって測定される前記検査抵抗で消費される消費電力と、に基づいて、前記二次電池の残留電力量を算出する制御部と、を有することを特徴とする電池システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記二次電池を充電する際には、前記検査抵抗に電流が流れないよう、前記検査スイッチを制御し、
充電終了後、前記検査抵抗に電流が流れるよう、前記検査スイッチを制御し、
前記検査抵抗に流れる電流による前記センサ電圧計の計測結果を取得後、前記検査抵抗に電流が流れないよう、前記検査スイッチを制御することを特徴とする請求項1に記載の電池システム。
【請求項3】
充放電可能な二次電池と、
前記二次電池を充電する充電器を接続可能な一対の外部端子と、
前記二次電池の両電極間の電圧を計測する電池電圧計と、
前記二次電池と前記外部端子との間の接続線に隣接配置された磁性膜と、
前記二次電池の端子間に、前記磁性膜と直列に接続されたセンサ抵抗と、
前記磁性膜の電圧を測定するセンサ電圧計と、
前記二次電池を充電する際に、前記電池電圧計および前記センサ電圧での計測結果に基づいて、前記二次電池の両電極間の電圧が充電開始電圧から充電終了電圧になるまでの間における充電電力量を算出する制御部と、を有することを特徴とする電池システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記二次電池を充電する際に、前記二次電池の両電極間の電圧が前記充電開始電圧から前記充電終了電圧になるまでの間における、微小時間ごとの充電電力を積算し、前記充電電力量を算出する、請求項3に記載の電池システム。
【請求項5】
前記磁性膜が隣接配置される接続線、前記磁性膜、前記センサ抵抗および前記センサ電圧計から構成される磁性膜電力センサのゲインは、前記二次電池の充電時も放電時も等しい、請求項3または4に記載の電池システム。
【請求項6】
前記磁性膜が隣接配置される接続線に流れる電流の向きは、前記磁性膜の磁化容易軸の方向と等しい、請求項1乃至5のいずれかに記載の電池システム。
【請求項7】
二次電池からの電流を、二次電池と負荷抵抗と導体膜とを直列に接続する第一接続回路と、該二次電池と充電器と該導体膜とを直列に接続する第二接続回路とを相互に切り替え可能な充放電測定装置であって、
前記導体膜に対して平行に配置され、前記二次電池から前記負荷抵抗および前記充電器ヘの接続に対して並列に接続される磁性膜を有し、該磁性膜における電圧変化を検出する電圧検出手段を有する充放電測定装置。


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の充電及び放電時における電力量の管理システムおよびそれを用いた電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池をはじめとする蓄電池(二次電池)は、高密度化と用途拡大に伴い、ノートパソコンや携帯電話などの携帯通信機器、ハイブリッドカー・電気自動車、更には住宅用の蓄電池にも用いられてきている。昨今の環境問題等を背景としたエネルギー消費の低減化、電力消費の低減化の要請は高まっており、蓄電池の利用がこの要請に応えることができるものと期待されている。しかし、蓄電池を電力消費の低減化に役立てるためには、蓄電池の電力量管理(電池容量管理)は大きな課題である。
【0003】
従来、蓄電池の電力量管理は、蓄電池の端子電圧を基本に時間や温度情報を含む経験式等を用いて充放電量を推測し、管理制御していた。
【0004】
しかしながら、従来の方法の場合、蓄電池の蓄電状況(電池容量の変化)について電池の端子電圧を基本に時間・温度情報を考慮して間接的に推測しているので、その推測精度には限界があり、稼働状況や使用環境条件によっては過充電や充電不足が生じる。また、従来の方法では放電時(電池使用時)は過放電などの問題も発生する。
【0005】
また、蓄電池には可燃性材料が使われることが多く、過充電による発火危険性など安全面での問題点も指摘される。また、ユーザが蓄電池の充電不足をしっかり認識していない場合、予想より早い充電時期となり不便を感じてしまうこともある。その一方、過放電は電池特性上、電池の性能寿命を短縮することになってしまう。また、蓄電池の残量表示がある場合においては、残量が少なくなると電池特性上、端子電圧の降下が急になるため結果として感覚的な「電池切れ」の時期が予期以上に早く、使用実感と合わないなどの不便さもある。
【0006】
上記問題は、二次電池の稼働状況や使用環境条件により、充放電時における電池容量の変化を正確に検出できないことに起因している。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2009-232659号公報
【特許文献2】特開2001-332310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みて創作されたものであり、充放電時における二次電池の容量変化を正確に測定することで適正な充放電管理し得る電池システムと充放電測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
具体的に本発明に係る電池システムは、
充放電可能な二次電池と、
前記二次電池の端子間に検査スイッチを介して接続された検査抵抗と、
前記二次電池の両電極から延設され前記検査抵抗と並列に設けられた一対の外部端子と、
前記二次電池の両電極間の電圧を計測する電圧計と、
前記二次電池が放電した電力量を計測する放電電力計測手段と、
充電時間および放電時間を計測するタイマと、
制御部を有し、
前記制御部は、前記二次電池に前記一対の外部端子を介して充電する際には、充電開始電圧から充電終了電圧までの充電時間を計測し、
充電終了後、前記検査スイッチによって前記検査抵抗に電流を流し、
前記放電電力計測手段により求めた前記検査抵抗で消費される電力と前記充電時間に基づいて残留電力量を算出することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、二次電池からの電流を、二次電池と負荷抵抗と導体膜とを直列に接続する第一接続回路と、該二次電池と充電器と該導体膜とを直列に接続する第二接続回路とを相互に切り替え可能な充放電測定装置を提供する。この充放電測定装置では、前記導体膜に対して平行に配置され、前記二次電池から前記負荷抵抗および前記充電器への接続に対して並列に接続される磁性膜を有し、該磁性膜における電圧変化を検出する電圧検出手段を有する。
【0011】
後述するように本発明者は、二次電池の容量変化について従来のように電池の端子間の電圧を測定するよりも磁性膜電力センサにより測定する方が有用であるという知見を得た。この知見に基づいて本発明の充放電測定装置は提供されたものである。具体的には、磁性膜電力センサの磁性膜に二次電池から負荷への電流に並列な電流を流す放電系の第一接続回路と、同じ磁性膜に蓄電池から二次電池への電流に並列な電流を流す充電系の第二接続回路と、を充放電ごとに交互に切り替え可能な回路構成を提供している。
【0012】
また、本発明の充放電測定装置は、前記磁性膜を直列に2つ接続し、直流電流による磁界を逆方向に印加し、前記電圧検出手段は、2つの前記磁性膜の電流方向の端部間の出力電圧を差動増幅して電圧変化を検出する、請求項1に記載の充放電測定装置。
【0013】
本充放電測定装置の場合、磁気抵抗効果型の磁性膜電力センサを活用したものである。磁気抵抗効果型の磁性膜電力センサは電流方向の電圧変化を測定するので幅細形状の電流経路に適しており、スマートグリッド等への応用に適している。その一方、後述するように磁性膜電力センサの出力電圧には大きなバイアス電圧が発生する。これをキャンセル(低減)するために本充放電測定装置では、磁性膜の素子を2つ直列接続して電流による磁界を逆方向に印加する。これにより各磁性膜に逆のバイアス電圧が発生するので出力電圧を差し引けばバイアス電圧をキャンセルすることができる。
【0014】
また、本充放電測定装置は、前記磁性膜と直列にダミー抵抗を接続し、前記電圧検出手段は、前記磁性膜とダミー抵抗との電流方向の端部間の出力電圧を差動増幅して電圧変化を検出しても良い。
【0015】
この充放電測定装置も、磁気抵抗効果型の磁性膜電力センサを活用したものであるが、ここでは磁性膜の素子にダミー抵抗を直列接続することでバイアス電圧をキャンセルしている。
【0016】
また、上記磁性膜は、電流方向に対して所定の傾斜角度θ1を有する短い幅細形状の各磁性膜を電流方向に間を空けて複数配置したものである場合もある。
【0017】
この磁気抵抗効果型の磁性膜電力センサにおける磁性膜の場合、素子の磁性膜は負荷電流の方向に間隔を空けて縞状に成膜される。さらに、この各縞状の磁性膜は負荷電流の向きに対してそれぞれ傾斜している。例えば、負荷電流の向きが左から右の場合、素子の磁性膜が右傾斜している。このような構成の磁性膜を本明細書では「バーバーポール磁性膜」と称している。この場合、上述してきた直流電流による磁界(バイアス磁界)の印加が不要となる。これは各素子の磁性膜の磁界一抵抗特性があたかもバイアス磁界によりバイアスされているかのような特性を有するからである。
【0018】
さらに、本充放電測定装置では前記磁性膜を直列に2つ接続し、該磁性膜の一方は、電流方向に対して所定の傾斜角度θ1を有する短い幅細形状の各磁性膜を電流方向に間を空けて複数配置し、他方は、電流方向に対して前記一方の磁性膜とは逆の所定の傾斜角度θ2を有する短い幅細形状の各磁性膜を電流方向に間を空けて複数配置するものであり、前記電圧検出手段は、2つの前記磁性膜全体の電流方向の端部間の出力電圧の変化を検出することができる。
【0019】
還元すれば、上記バーバーポール磁性膜を採用し、負荷電流の向きに対して磁性膜が互いに逆の傾きになるように直列接続した場合、例えば、負荷電流の向きが左から右の場合、一方の素子の磁性膜が右傾斜し、他方の素子の磁性膜が左傾斜するような場合である。この構成の場合、それぞれの素子(磁性膜)が差動的直列配置になり、磁界ゼロ点を動作点として出力電圧の変化のみを取り出すことができる。
【0020】
また、前記電圧検出手段は、前記磁性膜の電流方向に対して幅方向の端部間の出力電圧の変化を検出しても良い。
【0021】
上述の磁性膜電力センサの磁性膜では、磁気抵抗効果型の磁性膜電力センサとして電流方向の端部電圧の変化を測定していたが、磁性膜の幅方向の出力電圧の変位を測定する所謂プレナーホール効果型(PHE型)の磁性膜電力センサを活用したもので、二次電池の充放電管理をしても良い。この場合、磁性膜の幅をある程度確保する必要があるが、その反面、バイアス電圧の出力が本来的に回避できるため有利である。
【0022】
なお、前記磁性膜は、金属磁性体、巨大磁気抵抗(GMR)素子、トンネル磁気抵抗(TMR)素子、高分子磁性体、磁気抵抗効果を有する半導体を主成分とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の充放電測定装置によれば、充放電時における二次電池の容量変化を正確に測定することで適正な充放電管理することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明における磁性膜電力センサの構造を示した略斜視図である。
【図2】図1に示す磁性膜電力センサにおける電力測定原理を説明する模式図である。
【図3】直流電力計測のための計測系を示した略回路図である。
【図4】図3の接続回路の変形例であり、磁気抵抗効果型電力センサ1、1’を直列接続し、外部磁界Hの印可方向が逆になるように設置する。
【図5】電池の放電特性を示すグラフ図である。
【図6】異なる放電流での電池の端子電圧の変化の一例を示したものである。
【図7】異なる温度環境での電池の放電特性を示したものである。
【図8】電池により負荷に電力を供給する場合と電池に外部電源より充電する場合の電力の移動量(放電量、充電量)をモニターする回路を示したものである。
【図9】図8の回路において電力計として磁性膜電力センサ素子を用いた接続回路の一例を示している。
【図10】磁性膜電力センサのうちプレーナーホール効果(PHE型)型の磁性膜電力センサ1”を用いた鉛電池の充放電測定装置の接続回路を示している。
【図11】図10の接続回路における充電時の磁性膜電力センサ1”の出力(黒丸印(1):Vm)と充電電流I1と電池の端子電圧から得られた電池への充電電力(黒四角印(2))の時間変化を示したグラフ図である。
【図12】、図10の接続回路における磁性膜電力センサ1”の出力(黒丸印(1))の積算量と充電電力の積算量の変化の様子を示している。
【図13】図10の接続回路における放電時の磁性膜電力センサ1”の出力(黒丸印(1):Vm)と放電電流I1と負荷抵抗R1の端子電圧から得られた負荷での消費電力(放電電力黒四角印(2))との時間変化である。
【図14】図10の接続回路における磁性膜電力センサ1”の出力(Vm)の積算量(黒丸印(1):ΣVmt)と負荷抵抗R1での消費電力(放電電力)の積算量(黒四角印(2))の変化の様子を示している。
【図15】図10の接続回路において用いた磁性膜電力センサ1”の出力特性を示している。
【図16】図10の接続回路における充電時の磁性膜電力センサ1”の出力の積算量(黒丸印(2):ΣVmt)と充電電力(黒四角印(1))の積算量との時間変化を示している。
【図17】図10の接続回路における放電時の磁性膜電力センサ1”の積算量(黒丸印(2):ΣVmt)、充電電力(黒四角印(1))の積算量、磁性膜電力センサ1”の出力の積算量の85%(黒三角印(3))を示している。
【図18】放電時の磁性膜電力センサ1”出力(黒丸印(1)Vm)、電池の電力量の減少(2)、電池の端子電圧(黒四角印(3))の時間変化を示している。
【図19】図18の放電終了時電圧11[V]を0、放電開始時電圧(満充電時)を1[V]として書き直したものである。
【図20】充放電を繰り返したときの電池の端子電圧(黒三角印(3))、磁性膜電力センサの出力(黒丸印(1))、電力量の時間変化(黒四角印(2))とを示したものである。
【図21】充放電を繰り返したときの電池の端子電圧(黒三角印(3))、磁性膜電力センサの出力(黒丸印(1))、電力量の時間変化(黒四角印(2))を放電終了時電圧11[V]を0、放電開始時電圧(満充電時)を1として書き直したものを示している。
【図22】使用可能電力量を示す概念図である。
【図23】本発明に係る電池システムの構成を示す図である。
【図24】本発明に係る電池システムで充電電力量を確認する動作を示す図である。
【図25】本発明に係る電池システムで放電する動作を示す図である。
【図26】バーバーポール型の磁気抵抗効果型の磁性膜電力センサにおける磁性膜を示している。
【図27】磁性膜の上部に設ける斜めの導体膜と電極を示している。
【図28】長手方向の電圧V1と磁界Hとの関係を示している。
【図29】差動型のバーバーポール型の磁気抵抗効果型の磁性膜電力センサを示しており、(a)には上方から見た写真、(b)にはこの磁性膜電力センサをマイクロストリップ線路の測定に用いた模式図が示されている。
【図30】通常の磁気抵抗効果による磁性膜の電気抵抗の変化の様子を示している。
【図31】傾きの異なるバーバーポールパターンによりバーバーポール磁性膜の磁気抵抗効果が磁性膜の左右で正負に異なるバイアス磁界が印可されているかのような特性を示している。
【図32】差動型のバーバーポール磁気抵抗効果型の磁性膜電力センサの増幅回路の接続の様子を示している。
【図33】図32の具体的な測定系を示している。
【図34】(a)は図33のA-B端子間の出力特性、(b)は図33のC-B端子間の出力特性を示している。
【図35】図33のオペアンプの出力電圧を示している。
【図36】長軸と平行にバイアス磁界を印加したときの測定系の模式図を示している。
【図37】図36の測定系の出力特性を示している。
【図38】導体膜に負荷電流(I1)を流したときの電力計としての特性の測定系が示されている。
【図39】バイアス磁界を印加せずに導体膜に負荷電流(I1)を流した時の出力特性を示している。
【図40】素子長手方向(磁性膜の長手方向)への磁界印加による出力変化を示す。
【図41】バイアス磁界を印可した時の測定系を示している。
【図42】バイアス磁界印加したときの本磁気抵抗効果型の磁性膜電力センサの出力特性を示している。
【図43】直流電力計測に使用したセンサの磁気抵抗応答曲線を示す図である。
【図44】センサBの磁気抵抗効果特性を示す図である。
【図45】素子のパターンを示す図である。
【図46】直流電力計測の実験系の回路を示す図である。
【図47】消費電力とセンサ出力の関係を示すグラフである。
【図48】センサBの直流電力計測の結果を示す図である。
【図49】充放電時の回路を示す図である。
【図50】放電時の結果を示す図である。
【図51】充電時の結果を示す図である。
【図52】交流の場合の電力測定結果を示す図である。
【図53】センサを小型にした時の磁気抵抗応答曲線を示す図である。
【図54】センサを小型にした時の電力測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の充放電測定装置の具体的な実施形態および周辺装置について説明する。まず、本充放電測定装置で電力測定手段として用いる磁性膜電力センサについて説明する。

【0026】
この磁性膜電力センサ1は、図1示すように、上から導体膜1a、絶縁膜1b、磁性膜1cの三層構造となっている。例えば、導体膜1a、絶縁膜1b、磁性膜1cはそれぞれ銅Cu、ポリイミド基盤、パーマロイで構成される。導体膜1aに電流I1を流すと磁界が生じる。このとき磁界Hは電流I1に比例するので、H=αI1と書ける。

【0027】
磁界Hが印加されたことにより磁性膜1cで磁気抵抗効果が起こり、抵抗値が変化する。抵抗値の変化量(ΔR)は、磁界Hに比例するので、△R=βHと書ける。そして最終的に、△R=αβI1となり、抵抗の変化量(ΔR)は導体膜1cに流れる電流に比例することがわかる。

【0028】
図2には図1に示す磁性膜電力センサ1での電力測定原理について説明する。入力電流は並列に配置される磁性膜電力センサ1の導体膜1aと磁性膜1bとにそれぞれ電流I1、I2として分流される。導体膜1aには電力測定対象となる負荷R1(Load R1)が直列配置され、磁性膜1bには電流I2を確保するための抵抗R2が直列配置される。導体膜1aの抵抗Rcuと磁性膜の抵抗Rmrとは、負荷R1と抵抗R2とに比べて十分小さいものとする。そうすると抵抗R2にかかる電圧V2は入力電圧Vinと近似できる。同様に負荷R1にかかる電圧V1もVinと近似できる。

【0029】
このときに磁性膜1bの電圧Vmrの変化量△Vmrは、磁性膜の抵抗の変化量をΔRmrとして、△Vmr=I2・△Rmrと表せる。I2≒Vin/R2と近似し、△Rmr=αβ・I1となることから、結果、△Vmr=(Vin/R2)αβ・I1となる。

【0030】
これより負荷での消費電力は、V1・I1≒(R2/αβ)△Vmrと表せる。この式において、前半部分の(R2/αβ)は定数であるため磁性膜1bにかかる電圧の変化量△Vmrが消費電力に比例することがわかる。よってこの△Vmrの値を計測することにより負荷にかかる消費電力がわかる。

【0031】
本発明の電池システムおよび充放電測定装置では、このような磁性膜電力センサ1を電力測定手段として使用している。磁性膜電力センサ1は、従来の機械式積算電力量計等と比較し、小形・軽量、作製が容易であり、自己消費電力が低く、出力が電気量であるといった利点を有するからである。すなわち、磁性膜電力センサ1は種々の電子機器、電池、電気機器への組み込み型のセンサとして使用可能であり、電池の充放電の管理、制御には適したものである。

【0032】
次に図3を参照すれば、直流電力計測のための計測系を示している。磁性膜電力センサ1としてはPHE型(プレーナーホール効果型)電力センサや磁気抵抗効果型電力センサがある。プレーナーホール効果型電力センサは、磁性膜に電流を流した時に、電流と直角方向の電圧の変化を出力とする。磁気抵抗効果型電力センサは、磁性膜に電流を流した時に、電流と同じ方向の電圧の変化を出力とする。

【0033】
磁気抵抗型電力センサは、磁性膜に流れる電流と同方向の端子電圧を出力とできるため、素子を細長く形成することができる。しかし、本質的には大きなバイアス電圧を発生するという課題がある。これは直流電圧による電力を測定しにくいという課題がある。後述するバーバーポール型にした場合には理想的にはバイアス電圧を抑制することはできる。しかし、実際は、構造の不均一、磁気特性の不均衡のため若干のバイアス電圧を発生する。

【0034】
一方、プレーナーホール効果型電力センサでは出力にバイアス電圧が発生するということはない。しかし磁性膜に流れる電流に対して直角方向に幅が必要となるため、回路の接続線に配置しにくいという課題がある。

【0035】
したがって、磁気抵抗効果型電力センサは、単独では直流電力測定ができない。磁気抵抗効果型電力センサは、このバイアス電圧を除去し、変化分のみの電圧信号を得る必要がある。図3では、バイアス電圧をキャンセルするため、磁性膜電力センサ1の磁性膜のオフセット抵抗と同じ抵抗値を持つ抵抗R3を直列接続し、さらに磁性膜と抵抗R3の接続点を接地(センタータップ)することで、電圧変化分のみを検出する。

【0036】
なお、磁性膜電力センサ1に流れる電流の方向と直角方向にバイアス磁界が印加される。若しくは予め電流の流れる方向に対して傾いた方向に磁性膜の磁化容易軸を誘導しておく。

【0037】
図4は、図3の接続回路の変形例であり、磁気抵抗効果型電力センサ1、1’を直列接続し、外部磁界Hの印加方向が逆になるように設置する。また、それぞれの磁気抵抗効果型電力センサ1、1’の間の接続点は接地する。この回路構成にすれば、オフセット電圧は互いにキャンセルし、磁界Hによる変化分は正負逆方向に変化する。磁気抵抗効果型電力センサ1、1’を接続した両端の出力電圧は差動的に足しあわされて図3の場合の2倍となる。

【0038】
したがって、図3~図4のような素子接続方法によれば磁気抵抗効果型電力センサでの電力計測の欠点であった、直流バイアスの影響による直流電力測定不能という問題を解消し得る。

【0039】
次に電池の放電特性について説明する。図5は鉛畜電池の放電特性を示すグラフ図である。縦軸は端子電圧(Volt)で、横軸は電力量(Wh)である。ラインNewは劣化していない電池であり、ラインOldは劣化した電池の放電特性である。このグラフ図からわかるように放電と共に電池の端子電圧は徐々に低下し、最終的には急激な端子電圧の低下がみられる。また、電池の劣化の程度により、端子電圧が低下する電力量が異なる。

【0040】
なお、本発明で対象としている二次電池(充電可能)には多くの車に搭載されている鉛蓄電池、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、一般に広く販売されているニッケルカドミウム電池などある。どの電池についても、基本的に図5で示される劣化の違いによる放電特性の違いは存在する。

【0041】
図6に異なる放電流での端子電圧の変化の一例を示している。縦軸は電池の端子電圧を示し、横軸は電池の残存放電容量(%)を示す。ラインAは100Ahの電池を5A(20時間率)で定電流放電させた時の電池電圧の変化を示す。ラインBは100Ahの電池を10A(10時間率)で放電させた時の電池電圧の変化を示す。ラインCは100Ahの電池を20A(5時間率)で放電させた時の電池電圧の変化を示す。ラインDは100Ahの電池を100A(1時間率)で放電させた時の電池電圧の変化を示す。

【0042】
この図より放電流が異なると端子電圧の変化の様子が異なることがわかる。また、端子電圧が同じ場合であっても、それまでの放電の履歴によって、電池の残存放電容量(残存電力)が異なることがわかる。

【0043】
また、図7には異なる温度環境での電池の放電特性を示す。縦軸は電池電圧(2.4V~4.4V)であり、横軸は容量(0~2500mAh)を示す。円筒型18650サイズで、公称容量が2000mAh、放電電流は0.2C(400mA)の時の放電特性を示す。また、グラフ中の各ラインは、放電中の温度環境を示している。温度環境が異なると端子電圧の変化が異なることがわかる。

【0044】
以上のことより、従来一般的に行っていた電池の端子電圧を読み取ることで、電池の残存電力量を予測する方法では、電池の使用環境や使用状態により電池端子電圧の降下曲線は異なっているため正確な電池の残存電力量を測定することができないことがわかる。そこで、電池の残存電力量を正確に測定する本充放電測定装置が以下に例示される。

【0045】
図8に電池により負荷に電力を供給する場合と電池に外部電源より充電する場合の電力の移動量(放電量、充電量)をモニターする回路を示す。充放電の際、電流の流れる方向は正負に変化する。しかしながら、電池の端子電圧の極性は変わらないので、電力計の出力は充電時に正であれば放電時には負の出力が得られ、充放電時の出力信号を積分回路で積分すれば電池の残電力量が得られる。この電力計は双方向性を有するため非常に簡単な電気回路で電池の残量を得ることができる。

【0046】
図9は、図4の転用例である。図8の回路において電力計とした部分に、図4で示した磁性膜電力センサ素子1、1’を用いた接続回路の例を示している。ここでの磁性膜電力センサ1、1’は、磁性膜の電流方向の電圧変位を測定する磁気抵抗効果型電力センサを用いている。この接続回路では、充放電の電力管理を行うため、整流回路3、充電器4、切替スイッチ5が付加されている。

【0047】
整流回路3は交流電流を直流電流に変換するものであり、ブリッジ回路が簡易構成例となる。また、充電器4は交流電流を発生するものであり、図示しないが充電器4は、外部電源若しくは駆動装置が接続される。なお、充電器4が直流電圧を発生する場合は、整流回路3は不要である。

【0048】
磁気抵抗効果型電力センサの場合、単独の磁性膜電力センサ素子の接続構成では、直流電圧を扱うと、大きな直流バイアス電圧が出力される。したがって、これを解消するために図9の接続回路では、2つの磁気抵抗効果型電力センサ素子1、1’を直列に接続し、接点を接地する。この構成にすることで、電流による磁界を逆方向に印加して直流バイアス電圧を差動的に足し合わせることでバイアス出力電圧をキャンセルしている。結果、磁気抵抗効果型の磁性膜電力センサを用いても直流電力も測定可能となる。

【0049】
まず、切替スイッチ5を負荷R1側に接続した場合、図8で説明したように直流電源である電池の消費電力を検出することができる。一方、切替スイッチ5を充電器4側に接続すると充電器4によって、電池に充電される電力を検出することができる。

【0050】
したがって、図9の接続方法の場合、電池により負荷R1に電力を供給する場合と、外部電源により電池に充電する場合の電力とにおける電力の移動量(放電量、充電量)をモニタリングすることができる。

【0051】
また、バイアス出力電圧のキャンセルに関しては、図3の接続回路の転用し、ダミー抵抗体R2により磁性膜電力センサ1で発生した直流バイアス電圧と同等の電圧を発生させることで差し引いてもよい。

【0052】
さらに、磁気抵抗効果型電力センサとしては所謂バーバーポール型の磁性膜電力センサを用いてもよい。このバーバーポール型の磁性膜電力センサ及びこれを用いた接続回路については本明細書の末尾で図26以降を参照しつつ別途説明する。

【0053】
次に、図10には、磁性膜電力センサのうちプレーナーホール効果(PHE型)型電力センサ1”を用いた鉛電池の充放電測定装置の接続回路を示している。プレナーホール効果型電力センサ1”は、磁性膜1”cの幅方向(電流に直角な方向)の電圧変位を測定するものである。プレナーホール効果型磁性膜電力センサ1”は、本質的にはバイアス電圧を発生しない。

【0054】
したがって、図10の接続回路では図9の接続回路のようにバイアス電圧をキャンセルする構成を設ける必要がない。この接続回路において放電電流(負荷電流)又は充電電流であるIは、放電時又は充電時に互いに逆方向に流れる。また、Iは常に電池の電圧をモニターするために、磁性膜1”cと抵抗Rに流れている。以下に示す実験では、充電電流Iは、2A一定とし、放電流は負荷R(=5Ω)を流れる電流I=2.4A~2.2Aであった。

【0055】
図11は、図10の接続回路における充電時の磁性膜電力センサ1”の出力(黒丸印(1):Vm)と充電電流I1と電池の端子電圧から得られた電池への充電電力(白四角印(2):W)の時間変化を示したグラフ図である。左縦軸は磁性膜1c”の出力Vm(mV)であり、右縦軸は充電電力(W)であり横軸は時間(min)である。なお、Vmは、磁性膜電力センサ出力である。図11から、明らかなように磁性膜電力センサ出力(1)と充電電力(2)は非常に良く一致している。

【0056】
図12に、図10の接続回路における磁性膜1c”の出力(磁性膜電力センサ出力Vm)の積算量(黒丸印(1):ΣVmt)と充電電力の積算量の変化の様子を示している。左縦軸はΣVmt(mV・h)であり、右縦軸は充電電力量(W・h)であり、横軸は時間(min)である。図11と同様に磁性膜電力センサ1”の出力の積算量(1)と充電電力の積算量(白四角(2))は非常に良く一致していることがわかる。

【0057】
図13は、図10の接続回路における放電時の磁性膜電力センサ1”の出力(黒丸印(1):Vm)と放電電流Iと負荷抵抗Rの端子電圧から得られた負荷での消費電力(放電電力白四角印(2))との時間変化である。左縦軸は、Vm(mV)であり、右縦軸は消費電力(W)であり、横軸は時間(min)である。図11の充電時に比べ、磁性膜1”cの出力(1)について放電開始時から数分の変化の様子は若干異なる(Vmが降下している)。

【0058】
その一方、負荷抵抗Rでの消費電力(2)の変化の様子とは良く一致していることがわかる。なお、磁性膜電力センサ1”の出力は、充電時(図11)の場合の約1/2になった。これは、磁性膜1”cの容易軸の向きと流れる電流の方向に若干のずれがあり、充電時と放電時で電流の方向が変わったことに伴うゲインの違いである。

【0059】
図14は、図10の接続回路における磁性膜電力センサ1”の出力(Vm)の積算量(黒丸印(1):ΣVmt)と負荷抵抗Rでの消費電力(放電電力)の積算量(白四角印(2))の変化の様子を示している。左縦軸は積算量ΣVmt(mV・h)であり、右縦軸は消費電力量(W・h)であり、横軸は時間(min)である。図12と同様に磁性膜電力センサ1”の出力の積算量(1)と消費電力の積算量(2)とは非常に良く一致していることがわかる。

【0060】
次に、図15(a)、(b)、(c)は図10の接続回路において用いた磁性膜電力センサ1”の出力特性を示している。図15(a)は、放電時の特性で縦軸はΣVmt(V・min)であり、横軸は消費電力量(W・h)である。図15(b)は、充電時の特性で、縦軸はΣVmt(V・min)であり、横軸は充電電力量(W・h)である。充放電時の近似直線とのずれは放電時6%、充電時2%であった。なお縦軸の指数は、10-6である。

【0061】
図15(c)は、図15(a)および(b)を同一縦軸上にプロットし直したものである。充電電流と、放電電流は方向が異なるため、磁性膜電力センサ1”の出力電圧Vmは充電時と放電時で極性が変わる。ここでは、充電時を正、放電時を負としている。放電時と充電時で積算値であるΣVmtの傾きが変わるのは、充電時と放電時の電流の向きでゲインが変わるためである。

【0062】
図16は、図10の接続回路における充電時の磁性膜電力センサ1”の出力の積算量(黒丸印(1):ΣVmt)と充電電力(白四角印(2))の積算量との時間変化を示している。これは図12と同じである。また図17に放電時の磁性膜電力センサ1”の積算量(黒丸印(2):ΣVmt)、放電電力(白四角印(1))の積算量、磁性膜電力センサ1”の出力の積算量の85%(黒三角印(3))を示している。これは図14と同じである。

【0063】
電池の充放電は、充電終了電圧を14[V]、放電終了電圧を11[V]とし、充放電を繰り返した。充電電力量は充電電流と電池の端子電圧から算出し、24.519[Wh]であった。また、放電電力量は放電電流と負荷端子電圧から算出し、21.0[Wh]であった。これより充電効率は約85%であった。充電効率を考慮し、充放電時の電池からの電力の増減を正確に求めることができることを示している。

【0064】
図18に放電時の磁性膜電力センサ1”出力(黒丸印(1)Vm)、電池の電力量の減少(2)、電池の端子電圧(白四角印(3))の時間変化を示している。左縦軸に電池の電力量(W・h)と磁性膜電力センサ1”の出力Vm(mV)、右縦軸に電池の端子電圧(V)、横軸に時間(min)を示す。電池の電力量の時間変化(2)と電池の端子電圧の時間変化(3)とは明らかに異なっている様子がわかる。

【0065】
図19は、図18の放電終了時電圧11[V]を0、放電開始時電圧(満充電時)を1[V]として書き直したものであり、磁性膜電力センサ1”の出力(黒丸印(3):Vm)、電池の電力量の減少(白三角印(2))、電池の端子電圧(白四角印(1))の時間変化を示している。縦軸は規格化されたVm、電池の電力量、電池の端子電圧(いずれも%)であり、横軸は時間(min)である。電池の端子電圧が放電開始時(満充電時)の電圧(白四角印(1))が50%まで減少したときには、充電された電力量(白三角印(2))の93%をすでに消費し、7%の電力量を残すのみになっていることを示している。

【0066】
図20は、充放電を繰り返したときの電池の端子電圧(バツ印(3))、磁性膜電力センサの出力の積算値ΣVmt(黒丸印(1))、電力量(白四角印(2))と経過時間との関係を示している。なお、この電池は使用の経歴が長く、いわゆる劣化した電池である。左縦軸に電池の電力量(W・h)と磁性膜電力センサ1”の出力の積算値ΣVmt(mV・h)、右縦軸に電池の端子電圧Vbat(V)、横軸が時間(min)を表す。このグラフは、充電と放電を4回繰り返したことを示す。

【0067】
充電終了電圧を14[V]、放電終了電圧を11[V]とし、充放電を繰り返している。繰り返すごとに充電終了電圧14[V]に達する時間が短くなり、充電量が少なくなっていく様子がわかる(2)。したがって、放電電力量も少なくなっている。また、端子電圧(3)の減少の様子は毎回異なり、充電電力量が少なくなっていることを反映していないことが明らかである。

【0068】
図21に充放電を繰り返したときの電池の端子電圧(バツ印(3))、磁性膜電力センサの出力の積分値(黒丸印(1))、電力量の時間変化(白四角印(2))を放電終了時電圧11[V]を0、放電開始時電圧(満充電時)を1としてプロット直したものを示す。縦軸は規格化されたVm、電池の電力量、電池の端子電圧(いずれも%)であり、横軸は時間(min)である。充電時は充電開始電圧から充電終了電圧(14V)への電圧変化を0~100%に規格化し、放電時には放電開始電圧から放電終了電圧(11V)を100~0%として表示している。これは図20をプロットしなおしたものである。

【0069】
充放電を繰り返しても、Vmの積分値ΣVmt(1)は毎回、電池からの充放電時の電力量(2)の変化と同じように変化していくことがわかる。しかしながら、端子電圧(3)は、電力量(2)と関連性なく変化していることがわかる。

【0070】
ここで注目すべき点は、充電を開始してから電池の端子電圧が14(V)になるまでの時間と、放電を開始してから電池の端子電圧が11(V)になるまでの時間が各充放電特性時にほぼ等しいということである。また、図11および図13で示したように、一定電流での充放電であれば、電池の残量電力量や端子電圧に関わらず、時間に対してほぼ一定値を示すということである。

【0071】
これらのことは、放電開始時の所定電流での消費電力から、放電するまでの時間を見積もれることを示している。すなわち、電池の残存電力量を可視化できることを意味する。つまり、充電開始電圧から充電終了電圧まで、一定電流で充電した時の充電時間を、その電流で放電した時の放電時間とみなす。

【0072】
図22を参照する。図22(a)には、図11(充電時)の模式図を示す。縦軸は磁性膜電力センサの出力であり、横軸は時間である。この時、充電終了時間はT10である。図22(b)には、図13(放電時)の模式図を示す。縦軸は磁性膜電力センサの出力であり、横軸は時間である。

【0073】
この時、消費される電力は、時間によらず一定であるとみなす。また放電時間は充電時間Tcと同じとみなす。すると、放電時の初期消費電力Vm0と充電時間Tcの積である面積Sの部分が、電池の使用可能電力量とみなせる。この使用可能電力量Sは、図20および図21から、劣化してくると少なくなる。

【0074】
しかし、電池の劣化程度を知らなくても(つまり電池の使用履歴を知らなくても)、使用可能電力量を見積もることができる。このような機能を有する電池システムは大変有用である。

【0075】
充放電の電力を管理することのできる具体的な構成としては、図8および図9で示した充放電測定装置をすでに示した。しかし、充放電測定装置および図9の切替スイッチ5を制御する制御部などを備えることで、残存電力量を表示することができる電池システムを実現することができる。

【0076】
図23に、この原理を用いた電池システムの構成を示す。電池システム30は、二次電池32と、磁性膜電力センサ34と、電池電圧計36と検査抵抗40と検査スイッチ42と、接続スイッチ44と、制御部46を含む。さらに、電流計38と、表示部48を含んでもよい。

【0077】
二次電池32は、充放電可能であれば、特に限定するものではない。また、複数の二次電池を直列若しくは並列につないであってもよい。磁性膜電力センサ34は、磁性膜29、導体膜28、センサ電圧計27、センサ抵抗26を含む。磁性膜29は、磁気抵抗効果型の磁性膜であっても、プレーナーホール効果型の磁性膜であってもよい。すでに説明したように磁気抵抗効果型であれば、素子形状若しくはセンタータップ構成を用いて、バイアス電圧をキャンセルできる構成にするのが望ましい。なお、図23では、プレーナーホール効果型磁性膜を用いた場合を示す。

【0078】
磁性膜29は導体膜28に重ねて用いられる。導体膜28に流れる電流との位置関係を固定させるためである。この際に、導体膜28に流れる電流の向きと、磁性膜29の磁化容易軸の方向を合せておくのが望ましい。もし、ずれていると、図20に示したように、充電時と放電時で磁性膜電力センサ34のゲインが異なるからである。また、磁性膜29と導体膜28の一端同士は連結させてある。なお、磁性膜29と導体膜28との関係は、磁性膜29は二次電池32と外部電極30t1、30t2の間の接続線に隣接配置されたと言える。

【0079】
なお、磁性膜29は単一の膜でなくてもよい。図4や図27で示すように複数の磁性膜で構成されたものであってもよい。

【0080】
磁性膜29にはセンサ電圧計27が接続される。図23ではプレーナーホール効果型なので、磁性膜29に流れる電流と直角の方向の電圧を測定する。磁気抵抗効果型の磁性膜29を用いる場合は、磁性膜29に流れる方向の両端の電圧を計測する。磁性膜29は、センサ抵抗26の一端に連結される。センサ抵抗26は、十分に大きな抵抗値を有する抵抗である。電池から流れる電流の値に係らず、実質的に一定電流が流れるようにするためである。

【0081】
なお、センサ電圧計27は、磁性膜29の形状および構成によって、接続が変わる。したがって、センサ電圧計27の電圧を測定するとは、測定する回路の電流で発生する磁界によって変化する磁性膜29の抵抗を、磁性膜電力センサの出力電圧とできるように測定することを意味する。

【0082】
電池電圧計36は、二次電池32の端子電圧を計測する。また、電流計38は、電池システム30に流れる電流を計測する。いずれも、電圧値、電流値が測定若しくは換算できれば、内部構成等は限定されるものではない。

【0083】
検査抵抗40は、充電後にどれくらいの電力量が二次電池32に蓄積されるかを検査するための抵抗である。また、検査スイッチ42は、蓄積された電力量を検査する際に、検査抵抗40と二次電池32を接続するためのスイッチである。また、接続スイッチ44は、外部との接続を連結遮断するスイッチである。検査スイッチ42、接続スイッチ44ともに後述する制御部46で制御される。

【0084】
制御部46は、MPU(Micro Processor Unit)とメモリで構成されるコンピューターである。タイマ46tおよび表示部48が、制御部46に接続される。また、制御部46は、センサ電圧計27、電池電圧計36、電流計38、検査スイッチ42、接続スイッチ44に接続されている。

【0085】
制御部46は、タイマ46tからは、信号Stを受信する。経過時間を計測するためである。したがって、信号Stは時刻情報である。また、制御部46からタイマ46tに計測開始信号Cts(図示せず)を送信し、測定終了信号Ctt(図示せず)を送信し、その結果タイマが出力する信号Stから経過時間を知ってもよい。この場合の信号Stはタイマ46tが作成した時間情報である。

【0086】
いずれにしても、タイマ46tを有する事で、制御部46は、所定時刻間の時間を取得することができる。言い換えると、タイマ46tは、充電時間および放電時間に係る時間を計測すると言える。

【0087】
また、制御部46は、後述するように残留電力量を算出できるので、それを信号Sdとして表示部48に送る。表示部48は、8セグメントから構成される表示器であってもよいし、液晶や有機ELを用いた表示器であってもよい。また、単に所定のライトを点灯させるだけでもよい。

【0088】
また、制御部46は、センサ電圧計27と接続され、センサ電圧計27から、磁性膜29における電圧を信号Svmとして受信する。また、制御部46は、電池電圧計36、電流計38とも接続され、それぞれ電池端子間の電圧を信号Svb、電流値を信号Siで受信する。

【0089】
また、制御部46は、接続スイッチ44と検査スイッチ42とも接続され、指示Ccn、指示Cckによってそれぞれの開閉もしくは接続点の変更を指示することができる。

【0090】
次に全体の接続関係を説明する。外部端子30t1、30t2は、電池システム30と外部の機器を接続する端子である。二次電池32の一方の極(図23では正極)は、外部端子30t1と接続され、他方の極(図23では負極)は外部端子30t2と接続されている。正極から外部端子30t1までの間には、導電膜28、電流計38、検査スイッチ42、接続スイッチ44が直列に接続される。

【0091】
導電膜28と電流計38は検査スイッチ42より正極側に配置され、接続スイッチ44は、検査スイッチ42より外部端子30t1側に配置される。検査スイッチ42は、正極側から接続スイッチ44若しくは検査抵抗40の一端との間の接続の切換を行う。検査抵抗40の他端は、外部端子30t2と負極の間に接続される。

【0092】
二次電池32の両極間には、電池電圧計36が接続される。また二次電池32の両極間には、磁性膜29とセンサ抵抗26が直列に接続される。なお、前述したように、磁性膜29と導電膜28と重ねて構成される。磁性膜29の電圧を計測するようにセンサ電圧計27が接続される。センサ電圧計27は、すでに説明したように、磁気抵抗効果型とプレーナーホール効果型で磁性膜29への接続点が異なる。なお、上記の接続関係は、接続の趣旨が変わらない限りにおいて、接続順を変更してもよい。

【0093】
また、上記の構成において、磁性膜電力センサ34は、共に放電電力計測手段であり、充電電力計測手段でもある。

【0094】
以上の構成を含む電池システム30についてその動作を説明する。図23を参照して、充電時には、外部との接続端子30t1、30t2には、充電器50が接続される。図23では定電流電源を接続している。検査スイッチ42は外部端子30t1側と接続している。制御部46が充電開始とすると、接続スイッチ44を指示Ccnで外部の充電器50と連結させ電池システム30に外部から電流をながす。

【0095】
なお、充電開始は、外部からの指示で行ってもよいし、図8のように、スイッチによって充電器50にいつでも接続できる構成の場合は、電池電圧計36を監視し、所定の電圧になったら充電を開始してもよい。充電を開始する電池電圧を充電開始電圧(例えば11V)と呼ぶ。

【0096】
図23の場合に充電する際は、矢印の方向に充電電流Icgが流れる。電流Icgは、導体膜28を流れる。その際に発生する磁界は、磁性膜29にとって外部磁界となり、磁性膜29にプレナーホール効果による電圧を発生させる。導体膜28を流れた電流Icgは二次電池32内を流れ、再び外部端子30t2から充電器50に戻る。

【0097】
また、導電膜28を流れた電流の一部は、磁性膜29にも流れる。ただし、センサ抵抗26は、大きな値なので、磁性膜29を通過する電流Imcは一定と考えてよい。

【0098】
制御部46は、充電を開始したら、まずタイマ46tから時刻を取得し、これを充電開始時刻とする。そして、電池電圧計36が所定電圧(例えば14V)になったら、充電を終了させる。これを充電終了電圧と呼ぶ。充電の終了は、制御部46から接続スイッチ44に指示Ccnを送り、接続スイッチ44を切断することで実現してよい。充電が終了したらタイマ46tから時刻を取得し、充電終了時刻とする。制御部46は、充電開始時刻および充電終了時刻から充電時間Tcを算出する。

【0099】
充電されている間、制御部46は、微小時間ΔT毎にセンサ電圧計27の値Vmを計測し、微小時間ΔTにおける電力量ΔWhを算出し積算する(足し加えていく)。センサ電力計27の電圧Vmは、充電電力を示す値である。つまり、電圧Vmと微小時間ΔTの積は、電力量ΔWhを示す。したがって、電力量ΔWhは、センサ電圧Vmと時間の積を積算した値ΣVmtであってもよい。もちろん、センサ電圧Vmを電力に換算し、時間との積を積算してもよい。

【0100】
制御部46は電池電圧計36が充電終了電圧となるまで積算値ΣVmtを算出し続ける。この際に、表示部48に現在充電中を示す表示若しくは現在の積算値ΣVmtを表示してもよい。

【0101】
電池電圧計36が充電終了電圧となったら、制御部46は、指示Ccnを接続スイッチ44に送り、充電器50との接続を切断する。また、充電開始から充電終了までの時間を充電時間Tcとして算出する。この際に表示部48に充電終了を示す表示および充電時間Tcを表示してもよい。

【0102】
次に図24を参照する。充電が終了したら、制御部46は、検査スイッチ42に指示Cckを送り、検査抵抗40に電流Ickを流す。この時電流Ickは二次電池32の正極から負極に向かって、検査抵抗40を負荷とする回路を流れる。ここで、流れる電流Ickによるセンサ電圧計27の値を初期消費電力Vm0(図22(b)参照)として読み取る。そして、充電時間Tcと初期消費電力Vm0を積算した値を充電電力量Wcgとする。これは図22(b)の面積Sに相当する。

【0103】
なお、初期消費電力Vm0を読み取ったら、検査スイッチ42は、直ちに外部端子30t1側に切換えてよい。検査抵抗40に電流を流し続けるのは電力のロスになるからである。

【0104】
この充電電力量Wcgは、図21で示したように二次電池の劣化具合によって値が変わる。つまり、二次電池の使用履歴を知らなくても、充電した二次電池32に蓄積された電力量を知ることができる。制御部46は表示部48にこの充電電力量Wcgを残存電力量として表示する。この際、表示は「充電電力量Wcgの絶対値に関係する表示」を少なくとも行えるようにする。

【0105】
二次電池32は、使用履歴によって劣化の程度が変わる。これは同じ規格の二次電池であっても、満タンに充電した時の容量が変わることを意味する。すなわち、ガソリン自動車で例えると、ガソリンタンクの容量自体が減少することを意味する。そのような状況においては、充電量をパーセント表示しても、満充電の際の電力量が不明である以上あまり意味がない。

【0106】
一方、充電電力Wcgの絶対値に関係する表示を行えば、充電電力Wcg自体の変化をも使用者は知ることができる。充電電力Wcgの絶対値に関係する表示とは、例えば電気を利用して走行する自動車では、一定速度で走行した際の走行距離、走行時間であってもよい。また、通常の使用状況において保持すべき推奨電力量に対する割合であってもよい。ロボットであれば、所定の作業に換算したときの活動時間であってもよい。

【0107】
なお、充電電力Wcgは、実際の電力に換算した値であってもよいし、センサ電圧Vmと時間の積を充電時間の間積算したΣVmt(電圧と時間の積)であってもよい。また、制御部46は、充電電力量Wcgを算出すれば足り、実際に表示部48で表示を行わなくてもよい。例えば、充電電力量Wcgを信号として出力するだけでもよい。

【0108】
以上のように、制御部46は、二次電池32に一対の外部端子(30t1、30t2)を介して充電する際に、充電開始電圧から充電終了電圧までの充電時間Tcを計測し、充電終了後、検査スイッチ42によって検査抵抗40に電流Ickを流し、検査抵抗40で消費される初期消費電力Vm0と前記充電時間に基づいて充電電力量すなわち、残留電力量を算出する。なお、電流Ickは充電時の電流Icgとほぼ同じになるようにあらかじめ検査抵抗40の値を決めておくのが望ましい。

【0109】
次に図25を参照して、制御部46は、接続スイッチ44を外部端子30t1側に接続する。そして電池システム30に負荷52が接続されると、二次電池32の正極から外部端子30t1、負荷52、外部端子30t2、負極と電流Idが流れる。この負荷52による電流Idが流れている間、制御部46は、微小時間ΔT毎にセンサ電圧計27の値Vmを測定し、放電電力量をΔT・Vmとして求める。そして、充電電力量Wcgから放電電力量ΔT・Vmを減算し、新たな充電電力量Wcgとする。

【0110】
制御部46は、減少した充電電力量Wcgを表示部48に表示させる。この表示の際も、充電電力量Wcgの絶対値に係る表示を行えばよい。これは残留電力量となる。使用者は残りの充電電力量Wcgを使用に則った時間若しくは仕事量といった尺度で把握することができる。もちろん、このような表示と共に、充電終了直後の充電電力量Wcgに対するパーセント表示を行ってもよい。

【0111】
上記の電力管理において、磁性膜電力センサ34の部分は、磁性膜29を用いた構成でなくても、充電と放電の電力を計測できることができ、放電電力を測定することができれば、実現することができる。ただし、電池システム30に一体的に設けるとすると、磁性膜29を用いた電力センサ34は、センサ電圧計27の電圧を測定するだけで、電力を測定することができるので、小型化が可能で好適である。

【0112】
上記のように、充電時間Tcと初期消費電力Vm0から充電電力量Wcgを求めたのは、充電時と放電時で磁性膜電力センサ34のゲインが異なったからである。したがって、充電時と同じ電流方向で放電時も磁性膜電力センサ34が使用出来る場合、若しくは、磁性膜電力センサ34の磁性膜29と導体膜28との設定が精密に行え、充電時と放電時の磁性膜電力センサ34のゲインが等しいとみなすことができる場合は、充電時間Tcを測定しなくても、充電時の電力積算量であるΣVmtを充電電力量Wcgとしてもよい。

【0113】
磁性膜電力センサ34のゲインが充電時および放電時で同一に出来る場合は、検査抵抗40と検査スイッチ42は不要である。また、放電時も充電時と同じ電流方向で磁性膜電力センサ34を使用するには、充電時と放電時で電流路を変更するためのスイッチが別途必要となる。

【0114】
制御部46は、充電開始電圧から、微小時間毎の充電電力を積算し、ΣVmtを求める。充電終了電圧になったら、接続スイッチ44を切断し、ΣVmtを充電電力量Wcgとする。電池システム30が負荷に接続されたら、上記同様に、負荷での消費電力を充電電力量Wcgから減算し、新たな充電電力量Wcgとする。この充電電力量Wcgは残留電力量である。

【0115】
制御部46は、「充電電力量Wcgの絶対値に関係する表示」を行うことで、使用者は、二次電池32の実質的に使用することのできる電力量を知ることができる。負荷が接続された場合は、図25での説明通り、消費電力量を充電電力量Wcgから減算してゆけばよい。

【0116】
また、このように充電時と放電時の磁性膜電力センサ34のゲインが等しいとみなせる場合は、充電時間Tcを測定する必要がないので、充電を一定電流という条件で行う必要はない。例えば、急速充電を行う場合、過電流を周期的に流す等して、充電時間を短くすることがある。

【0117】
そのような場合であっても、充電時の電力量を磁性膜電力センサ34とタイマ46tで計測し、ΣVmtを求め、それを充電電力量Wcgとすることで残留電力量を見積もることができる。なお、上記の説明で、電池システム30は二次電池32と磁性膜電力センサ34や制御部46を含んで構成されるが、二次電池以外の部分を充放電測定装置としてもよい。

【0118】
以上により、電池の端子電圧で管理するよりも、磁性膜電力センサ(薄膜電力計)で二次電池の充放電を管理する方が有用であることが理解される。また、充放電を繰り返すごとに(使用しているうちに)充電可能電力量すなわち使用可能電力量が減少する二次電池の管理には磁性膜電力センサが最も優れていることも理解される。

【0119】
以上の結果より、磁性膜電力センサを用いた本発明の充放電測定装置は、スマートグリッド、スマートバッテリ等への応用が最適であると結論出来る。電力問題回避に非常に有用である。

【0120】
ここで前述したバーバーホール型の磁性膜電力センサ及びこれを用いた本充放電測定装置の接続回路の一例について言及する。

【0121】
図26にはバーバーポール型の磁気抵抗効果型の磁性膜電力センサにおける磁性膜を示している。図27は磁性膜の上部に設ける斜めの導体膜と電極が示されている(以下、バーバーポール電極と呼ぶ)。また以下、磁性膜とその上部に形成された斜め導体(バーバーポール電極)との一体型磁性膜を「バーバーポール磁性膜」と称する。

【0122】
図26はバーバーポール磁性膜(磁界センサ)1を上方から見たときの電流方向と磁化方向とを示したイメージ図を示している。また、図27は磁性膜1の上部に設ける斜め導体と電極パッドが示されており、(a)では全体視を、(b)では(a)の丸囲み部分の拡大視を示している。図26~図27に示す導体膜1c、磁性膜1aは、それぞれ図1の磁気センサ部1の導体膜1c、磁性膜1aに相当する。

【0123】
磁性膜として長さ30mm、幅1mm、膜厚約0.1μmのパーマロイ(NiFe)膜を用いている。バーバーポール磁性膜には図26~図27に示すように磁性膜の幅方向(紙面上下方向)に斜めの導体膜1c(図4の最上側の導体膜1cに相当)を設けており、Cuを用いている。この導体膜1cは幅0.5mm、長さ3mm、膜厚0.1μm、導体膜-導体膜の間隔1mmである(図27参照)。

【0124】
図26~図27に示す磁気センサ1を磁性膜電力センサとして用いる場合、磁性膜1aには電流を流す必要がある。この際、導体膜1cを設けることにより電流は電気抵抗のより小さい方向に流れる性質を持っている(図26参照)。まず、磁性膜(パーマロイ膜)1aの電気抵抗に比べ導体膜(Cu膜)1aの方は約10倍程度電気抵抗は小さい。

【0125】
したがって、電流は、磁性膜1aの長手方向を直進するよりも導体膜-導体膜間の距離の短い方と導体膜1cを流れる方が電気抵抗が小さくなる。磁性膜には形状異方性、誘導異方性により予め長手方向に磁化方向(磁化容易方向)が誘導されているので、電流の流れる方向と磁化方向とに角度が生じることになる。

【0126】
そのため、図28(b)に示すようにバーバーポール磁性膜1aの磁気抵抗特性はに示すように通常の磁気抵抗効果による磁界-抵抗特性があたかもバイアス磁界によりバイアスされているかのような特性を示す。なお、図28は、長手方向の電圧V1と磁界Hとの関係を示しており、(a)は図2に相当し通常の磁気抵抗効果を表しており磁界Hに対する出力電圧V1は遇関数を形成するため線形特性を得るためにバイアス磁界を付与する心要があるのに対して、(b)ではバーバーポール磁性膜の磁気抵抗効果を示しており、バイアス磁界が不要であることが理解されよう。

【0127】
図29に差動型のバーバーポール型の磁気抵抗効果型の磁性膜電力センサを示しており、この磁性膜電力センサをマイクロストリップ線路の測定に用いた模式図が示されている。

【0128】
図30に通常の磁気抵抗効果による磁性膜の電気抵抗の変化の様子を示しておく。傾きの異なるバーバーポールパターンによりバーバーポール磁性膜の磁気抵抗効果は磁性膜の左右で正負に異なるバイアス磁界が印可されているかのような特性を示す(図31)。図31に示すように左のバーバーポール磁性膜1は、印加磁界に対して負にバイアスされている特性Bを示し、右のバーバーポール磁性膜1は正にバイアスされているかの特性Aを示す。

【0129】
この異なるバーバーポール磁性膜1、1を直列に接続し、同じ方向たとえば左から右方向に磁界を印可すると各々のバーバーポール磁性膜の抵抗は一方では減少し、また他方では増加するように変化する。それらを差動出力させることが出来れば図31の下図のように磁界ゼロ点を動作点として変化のみを取り出すことができるようになる。

【0130】
また、通常の磁気抵抗効果の磁性膜1を用いる場合には図30に示すような大きなバイアス磁界を印可して、動作点を直線性の良い所に設定する必要がある。しかし、図31に示すように差動型のバーバーポール磁性膜を用いることにより動作点を零磁界に移動させることが出来、また磁界による電気抵抗の変化も2倍に拡大することができる。無バイアス磁界で磁性膜電力センサを動作させることができるという点で有利である。

【0131】
図32に差動型のバーバーポール磁気抵抗効果型の磁性膜電力センサ1の増幅回路の接続の様子を示す。図32のB端子を接地し、A端子、C端子からの電気信号を演算増幅器で加算することによりバイアス電圧の無い、磁界の変化のみを出力する電気信号を得ることができる。

【0132】
図33に測定系を示す。増幅器の全ての抵抗値は2kΩとし、増幅ゲインは1である。

【0133】
次に、一様な外部磁界に対するバーバーポール磁性膜の磁性膜電力センサ1の出力特性を測定した。図34(a)は図33のA-B端子間の出力特性、(b)は図33のC-B端子間の出力特性、図35(c)は図33のオペアンプの出力電圧を示している。これらの図は縦軸が出力(V)であり、横軸は外部から印加された磁界(図33のヘルムホルツコイルによる磁界)である。なお、図34(a)に示すA-B端子間の出力特性については、AB間の出力オフセットが742[mV]、AB間の出力変化が4[mV]、ABの出力変化率が0.42[%]、抵抗変化率が0.0031/0.742*100=0.42[%]である。

【0134】
また、図34(b)に示すC-B端子間の出力特性については、CB間の出力オフセットが743[mV]、CB間の出力変化が2.6[mV]、CB間の出力変化率が0.35[%]、抵抗変化率が0.0026/0.7430*100=0.35[%]である。また、図35(c)に示す図33のオペアンプの出力特性ついては、AC間の出力オフセットが1.46[mV]、AC間の出力変化が0.11[mV]、AC間の出力変化率が7.5[%]、抵抗変化率0.00011/0.00146*100=7.5[%])である。

【0135】
図34(a)、(b)では磁界に対して大きく抵抗が変化している。図35(c)では図34(a)、(b)に比べバイアス電圧が大きく減少しているのがわかる。また磁界による出力電圧の変化は小さい。したがって、磁性膜1c中の磁化の向きや磁区構造が多磁区状態になり一軸異方性を持った単磁区になっていないと思われる。

【0136】
【表1】
JP0005773547B2_000002t.gif

【0137】
表1にバーバーポール磁性膜による出力改善結果を示す。出力の変化率(出力電圧)大きく減少しているのは、膜中の磁化が十分に素子長手方向に揃っていないのが原因と推察される。しかしながら、オフセット電圧の急激な減少により抵抗変化率が急激に改善され、バーバーポール磁性膜1の差動接続によりデバイスとしての性能が格段と向上していることがわかる。オフセット電圧の減少は素子に繋がる増幅回路の増幅率を大きく出来るメリットをもたらし、非常に有益な結果であると思われる。

【0138】
また、図36に長軸と平行にバイアス磁界を印加したときの測定系の模式図を示す。先に述べたように磁化方向を強制的に一方向にそろえることにより素子(デバイス)としての特性の変化について検討した。

【0139】
図36の測定系の出力特性を図37に示している。図37(a)はバーバーポールを設けないで作製した素子(差動接続)において磁性膜長手方向にバイアス磁界を印加した場合の出力特性を示している。縦軸は出力電圧(V)であり、横軸は外部からの磁界(Oe)である。このから明らかなようにバーバーポール無し、バイアス磁界有りの場合の抵抗変化は非常に小さい。その抵抗変化率は0.00022%で非常に小さいものであった。

【0140】
図37(b)では、バーバーポール有りで磁性膜長手方向にバイアス磁界無しの素子の場合の出力特性、すなわちバーバーポール磁性膜1の長手方向に直流バイアス磁界を印加しない場合の出力特性が示されている。縦軸は出力電圧(V)であり、横軸は外部からの磁界(Oe)である。

【0141】
図37(c)では、バーバーポール有りで磁性膜長手方向にバイアス磁界有りの素子の出力特性、すなわちバーバーポール磁性膜1の長手方向に直流バイアス磁界を印可した場合の出力特性が示されている。縦軸は出力電圧(V)であり、横軸は外部からの磁界(Oe)である。素子長手方向にバイアス磁界を印可するか否かにより出力特性が大きく変化している様子がわかる。これは磁性膜の異方性の強さが十分で無いのが原因であると推察できる。

【0142】
その異方性の強さを補うような素子長手方向へのバイアス磁界により、磁化が磁界方向に強く揃えられ、磁化と電流と明確な角度が出来たことによるものと推察される。抵抗変化率はバイアス磁界無しの場合は0.6%、バイアス磁界有りの場合は3.3%以上であり、バイアス磁界が非常に有効であるといえる。

【0143】
図38では、導体膜に負荷電流(I1)を流したときの電力計としての特性の測定系が示されている。本来の電力計測では、負荷に流れる負荷電流(I1)は導体膜に、負荷電圧の大きさに比例した電流(I2)を磁性膜に流して測定する。しかし、図38ではI1とI2を個別に設定できるようにして特性を評価した。

【0144】
図39は、バイアス磁界を印加せずに導体膜に負荷電流(I1)を流した時の出力特性を示している。左縦軸は、出力(V)であり、右縦軸は導体膜に流した電流(A)であり、横軸は時間(sec)である。この測定では、磁性膜に流す直流電流(I2)は2mAとした。また、負荷電流(I1)は負荷抵抗に接続した直流電源を用いて設定した。負荷電流を0[A]~1[A]まで0.2[A]刻みで増加させ、その後0.2[A]刻みで減少させながらそれぞれ50[s]間測定した。

【0145】
負荷電流(I1)の増加に伴い出力が増加している様子が分かる。しかしながら負荷電流の変化に対して電力センサ出力の変化は明確に電流の変化を反映しているとは言えない。磁性膜の磁化の向きが印可されている磁界に比例して動いていないことがその一因であると思われる。

【0146】
図40に素子長手方向(磁性膜の長手方向)への磁界印加による出力変化を示す。縦軸は電力センサ出力(V)であり、横軸は外部からの磁界(Oe)である。グラフ中、丸は長軸方向バイアス磁界がゼロの場合、四角は10Oeの場合、三角は40Oeの場合、黒四角は100Oeの場合である。無磁界状態(丸)では磁性膜の異方性の強さと磁化の向きとの関係でこの状態では電力計としての出力は一意に定まらず、電力計として期待できない。

【0147】
しかし、印加磁界の大きさが100e、400eとでは広い範囲で直線性と良い感度を得ることが出来ている。また、1000e印加の場合には明らかに感度の低下が見られるが、100e、400eの場合と比較すると直線領域が広がっている様子が分かる。バイアス磁界はある程度の大きさまでは膜の磁区構造を整え、高感度と良い直線性を得ることが出来るが大きなバイアス磁界は感度を低下させることが明らかである。

【0148】
磁性膜の保持力を若干超える程度のバイアス磁界印加は、電力計としての感度を大きく改善する効果を有する。また、異方性磁界以上の印加磁界は感度を減少させるが電力計としての動作範囲を広げる効果を有すると言える。印加磁界の大きさを変えることにより測定可能な電流(電力)を設定できると言える。ただし、感度は減少する。

【0149】
図41は、バイアス磁界を印可した時の測定系を示している。ここでは永久磁石を用いてバイアス磁界を印可した。磁界の大きさは磁石の距離を調整することにより設定した。

【0150】
また、図42はバイアス磁界印加したときの本磁気抵抗効果型の磁性膜電力センサの出力特性を示している。左縦軸はセンサ出力(V)であり、右縦軸は導体膜に流した電流値(A)であり、横軸は時間(sec)である。バイアス磁界の大きさは400eである。その他の測定条件は図39の場合と同じである。この図42からバイアス磁界の印可により出力電圧の電流変化への追随性は向上していることが明らかである。また、若千の誤差を生じているが、膜特性の向上や交流バイアスの印加により大きく改善できるものと思われる。また交流電力計測では全く問題なく動作すると思われる。

【0151】
以上の結果より、バーバーポール型磁性膜磁性膜電力センサおよび差動型バーバーポール磁性膜磁性膜電力センサはスマートグリッド、スマートバッテリー等への応用が最適であると結論でき、電力不足等の回避にも有利である。

【0152】
以上、本発明の種々の磁性膜電力センサついての実施形態およびその概念について説明してきたが本発明はこれに限定されるものではなく特許請求の範囲および明細書等に記載の精神や教示を逸脱しない範囲で他の変形例、改良例が得られることは当業者は理解できるであろう。

【0153】
次に、バッテリー電力計測時にセンサを使用し、直流電力の計測を行い、センサ出力の線形性や精度について検討した。図43に直流電力計測に使用したセンサの磁気抵抗応答曲線を示す。縦軸は差動抵抗の値(Ω)であり、横軸は印加磁界(Oe)である。外部より0.02Hz交流磁界を外部磁界を印加し測定している。

【0154】
電力センサとしての動作範囲は磁界H=0付近の磁界と抵抗値の比例関係にある部分である。なおセンサA(図43)、センサB(図44)としているのは、後に述べるバッテリーの充放電電力計測は2つのバッテリーを使用し、それぞれのバッテリーの電力2つのセンサを使用し計測している。その2つのセンサをそれぞれセンサA、センサBとしている。

【0155】
次にセンサBの磁気抵抗効果特性を図44に示す。センサAとセンサBはそれぞれガラス基板にパーマロイを真空蒸着し、エッチングによりパターン形成をしている。使用した素子のパターンを図45(a)に示す。磁性膜が斜めに傾いたものが左右対称に配置された構造になっている。

【0156】
図43、44に示した磁気抵抗応答曲線は図45のAB間とBC間の抵抗値の差(差動抵抗)を示している。またセンサA、センサBいずれに対しても磁気抵抗応答曲線を計測する際にバイアス磁界10Oeを印加している。なお、バイアス磁界の方向は図45のHbiasの方向である。また、図45(a)のパターンの拡大図を図45(b)に示す。磁性膜の磁化方向は、AおよびBからCの方向に向かってバイアス磁界Hbiasによって付与される。

【0157】
なお、図45のセンサについて説明する。図45(a)の素子は、磁性膜を矢羽形状の形成したものである。端子Aから端子Cまでは、紙面に向かって右下がりの傾斜部分を直列に連結したものであり、端子Cから端子Bまでは紙面に向かって右上がりの傾斜部分を直列に連結している。

【0158】
このセンサは、端子A-B間の抵抗値を抵抗値ABとし、端子C-B間の抵抗値を抵抗値CBとすると、差動抵抗が(抵抗値AB)-(抵抗値CB)によって得られる。すなわち、本センサは、直流バイアスを軽減できる。また、このセンサは、Hbais方向に直流バイアス磁界(図45(a)参照)を印加して使用する。

【0159】
図45(b)を参照して、矢羽形状の左側では、傾斜した磁性膜片が直列に連結された形状をしている。ここで、矢印の方向にバイアス磁界が印加されると、磁性膜中の磁化はバイアス方向に揃う。一方、電流を端子Aから端子Cに流すと、傾斜部分では、磁化方向に対して左側に角度θだけ傾いた電流が流れる。

【0160】
一方、矢羽形状の右側では、磁性膜片の傾斜が左側とは逆なので、磁化に対する電流は右側に角度θだけ傾いて流れる。電流は端子Cから端子Bに向かって流れるからである。

【0161】
この状態で、点線で示すように導体膜60をセンサに被せ、端子V1から端子V2に向かって電流を流す。すると、紙面右から左に磁界Hが発生する。図45(b)を参照して、この磁界によって磁性膜の磁化は傾けられる。この時、矢羽形状の左側では、電流に近づくように磁化が動き、矢羽形状の右側では、電流から遠ざかる方向に磁化が傾く。

【0162】
矢羽形状の右側と左側を同じように作製しておけば、A-C間とC-B間の磁気抵抗特性はほぼ同じにすることができる。しかも、磁性膜片の傾斜方向が左右で異なるため、A-C間とC-B間での極性が反対になる。したがって、A-C間の抵抗とC-B間の抵抗の差分をとれば、仮に直流バイアスがあっても、これをキャンセルすることができる。


【0163】
ここでバイアス磁界について説明する。磁性膜は多数の磁区から出来ており、各磁区により磁化方向がわずかにずれている。磁性膜電力センサはその磁化方向をそろえるために外部から磁界を印加して、単磁区にした状態で使用する。その外部磁界のことをバイアス磁界という。

【0164】
図43、44に示した磁気抵抗応答のセンサを使用し直流電力計測を行った。実験系を図46に示す。センサ電圧をDC電源で20V一定にし、負荷電流を1A~4Aの間で1Aずつステップ上に変化させている。Rmr1とRmr2がセンサ部分でR1、R2が固定抵抗、Rが可変抵抗でこれを調節することでブリッジの平衡をとり、図46のV1とV2の差動出力をセンサ出力として計測している。

【0165】
表2および表3のセンサ出力平均値は、各消費電力でのセンサ出力の平均値を表し、センサ出力換算値は消費電力とセンサ出力平均値を直線近似し、その直線から各センサ出力を消費電力に換算したものである。またその換算値と理論値との誤差を表の右側に示している。最大で誤差1.3%であり、精度良く電力を計測することができている。図47(b)のグラフは横軸を消費電力(W)、縦軸をセンサ出力(V)としたものであり、線形性良く出力されていることが分かる。

【0166】
【表2】
JP0005773547B2_000003t.gif

【0167】
【表3】
JP0005773547B2_000004t.gif

【0168】
次にセンサBの直流電力計測の結果を図48に示す。センサBも同様に線形性良く出力されている誤差の要因として計測時にブリッジ回路が完全に平衡に取れていないことに起因するオフセット電圧の影響、センサの動作範囲において磁気抵抗応答曲線が完全には線形にはなっていないということが考えられる。

【0169】
次に車載用バッテリーを2個を直列接続し、充放電の行い、その電力を磁性膜電力センサを使用し計測する。

【0170】
近年、環境問題を背景とし、走行中に温室効果ガスのCOを排出せず、またエンジンではなくモーターを使用することで振動が少なく、静かで快適な電気自動車(以下EV)が普及し始めている。この電気自動車には多数のリチウムイオン電池を直列に接続したものが並列に数列並べて搭載されている。

【0171】
リチウムイオン電池は、過充電されると、最悪の場合、発火や破裂が起こる。またリチウムイオン電池以外の他の電池でも、過充電や過放電をすることで電池の劣化を早めたりする。磁性膜電力センサの小型軽量という利点を生かし、電池1つ1つにセンサを組み込み、残存電力量をモニタリングしておくことで、こういった問題を解決することができる。図49に充放電時の回路を示す。

【0172】
バッテリーA、Bは同様の製品を使用し、バッテリーAは新品で、バッテリーBは経年劣化によりかなり電池容量の減ったものを使用している。このような電池を使うことで充電時、放電時共にバッテリー間に電力のアンバランスが生じる。そういった電池ごとのアンバランスを含め正確に電力を測定できるかを目的とし、新しいバッテリーと劣化したバッテリーの2つを使用している。

【0173】
今回放電は2A定電流放電を、充電は1.5A定電流充電を行い、センサAでバッテリーAの電力を、センサBでバッテリーBの電力を計測している。この計測の際、先に行った直流電力計測で同一の消費電力ではセンサ出力Aの方が大きいため、それぞれのセンサに印加する縦バイアス磁界を調節することで、同一の消費電力でほぼ同一のセンサ出力が出るように調整している。図50に放電時の結果を図51に充電時の結果を示す。

【0174】
図50(a)は、バッテリーAの放電時、図50(b)はバッテリーBの放電時、図50(c)はバッテリーAおよびBを直列にした時の消費電力と時間の関係を示す。いずれのグラフも左縦軸は消費電力(W)、右縦軸はセンサ出力(V)、横軸は時間(min)である。

【0175】
なお、図示していないが、バッテリーAおよびバッテリーBの電極端子には電圧計を配置させ、計測回路全体に流れる電流も測定できるようにし、バッテリーAおよびバッテリーBの充電電力および消費電力(放電電力)をそれぞれ個別に測定できるようにした。

【0176】
図50を参照して、バッテリーAは新しいバッテリーであるので、測定の間一定の電力を放電することができた。なお、消費電力とセンサ出力を重ねると、区別がつかないほど同じ挙動を示す。バッテリーBは劣化したバッテリーであるので、測定の後半で電力低下が生じた。この場合も、消費電力とセンサ出力は全く同じ挙動をしているのがわかる。

【0177】
バッテリーAおよびBを直列にし、全体としてみると、バッテリーAおよびBの特性がそのまま加算され、バッテリーBの放電電力が低下した部分で、全体の特性も低下した。図51は図50と同様のグラフであるが、充電時の特定である点だけが異なる。

【0178】
放電時は70分間の放電を行い、充電時は110分間の充電を行っている。充電時、放電時共に電力を精度よく計測できていることが分かる。今回の計測で行ったように個々のバッテリーにセンサを搭載し、その出力をモニタリングすることで、バッテリーに異常が起きた時に、どのバッテリーに異常が発生しているか発見することができ、セキュリティーセンサとしての役割を果たすことを示した。

【0179】
以上のように磁気抵抗効果型薄膜電力計を使用し、車載用バッテリーの充放電電力計測を行った。これを行うに先立ち、まず使用するセンサの磁気抵抗効果特性を測定し、そのセンサを使った直流電力計測を行い、電力センサとして機能していることの確認、センサ出力の線形性、精度の確認を行った。バッテリーの充放電電力計測は新品のバッテリーと経年劣化したバッテリーの2つを使用し充放電電力の計測を行った。センサ出力が精度良く充放電電力を計測できていることが確認できた。

【0180】
また、上記では、バッテリーの充放電電力計測のみしか扱わなかったが薄膜電力センサは交流電力(高周波を含む)もN次高調波も計測することができる。このように多機能な電力センシングデバイスは従来存在しなかった。またセンサの大きさが5mm×5mm程度の大きさで作製することができるので、あらゆる家電製品に組み込むことも可能である。

【0181】
なお、図46の回路では、直流での消費電力を測定した(図47、図48)が、交流についても、同様に計測できることを確認した。図52には、周波数60Hz、電圧20V、電流1~4Aの場合の測定結果を示す。また、その時の測定値を表4に示す。

【0182】
【表4】
JP0005773547B2_000005t.gif

【0183】
また、図45のセンサをより小型にした(3mm×3mm)ものを作製し、同様の特性を得ることができた。そのセンサの磁気抵抗応答曲線を図53に、また電力測定結果を図54に示す。直流の場合同様線形性よく測定できているのがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明の電池システムは、自動車、飛行機、船舶といった電気を使って駆動するものや、産業用、民生用を問わず、自律駆動するロボットの電源として広く利用することができる。また本発明に係る充放電測定装置は、電池を使用するシステムだけでなく、産業用、民生用を問わず、電気を使用する場所で消費電力を計測することに利用できる。
【符号の説明】
【0185】
1 磁性膜電力センサ
1a 導体膜
1b 絶縁膜
1c 磁性膜
3 整流回路(プリッジ回路)
4 充電器
5 切替スイッチ
26 センサ抵抗
27 センサ電圧計
28 導体膜
29 磁性膜
30 電池システム
30t1、30t2 外部端子
32 二次電池
34 磁性膜電力センサ
36 電池電圧計
40 検査抵抗
42 検査スイッチ
44 接続スイッチ
46 制御部
46t タイマ
48 表示部
50 充電器
52 負荷

R1 負荷
R2 抵抗
R3 ダミー抵抗体
Rcu 1次導体
Rmr 磁性膜
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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