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明細書 :マクロ多孔性チタン化合物モノリスとその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5986187号 (P5986187)
登録日 平成28年8月12日(2016.8.12)
発行日 平成28年9月6日(2016.9.6)
発明の名称または考案の名称 マクロ多孔性チタン化合物モノリスとその製造方法
国際特許分類 C01G  23/04        (2006.01)
C04B  38/00        (2006.01)
FI C01G 23/04 Z
C04B 38/00 303Z
請求項の数または発明の数 19
全頁数 31
出願番号 特願2014-500117 (P2014-500117)
出願日 平成25年2月18日(2013.2.18)
国際出願番号 PCT/JP2013/000886
国際公開番号 WO2013/121801
国際公開日 平成25年8月22日(2013.8.22)
優先権出願番号 2012032411
優先日 平成24年2月17日(2012.2.17)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年10月20日(2015.10.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】陰山 洋
【氏名】中西 和樹
【氏名】小林 洋治
【氏名】北田 敦
【氏名】長谷川 丈二
個別代理人の代理人 【識別番号】100107641、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 耕一
審査官 【審査官】壷内 信吾
参考文献・文献 米国特許出願公開第2010/0324155(US,A1)
国際公開第2007/021037(WO,A1)
特表平06-505469(JP,A)
特開2000-239709(JP,A)
特表2011-518094(JP,A)
特開2002-154823(JP,A)
特開2000-103608(JP,A)
特開昭61-127607(JP,A)
特開平10-067574(JP,A)
独国特許出願公開第10121928(DE,A1)
K. KOLBRECKA et al.,SUB-STOICHIOMETRIC TITANIUM OXIDES AS CERAMIC ELECTRODES FOR OXYGEN EVOLUTION - STRUCTURAL ASPECTS OF THE VOLTAMMETRIC BEHAVIOUR OF TinO2n-1,Electrochimica Acta,1994年 8月,Vol.39, No.11/12,p.1591-1595
S.-Y. PARK et al.,Characteristics of Pt thin films on the conducting ceramics TiO and Ebonex (Ti4O7) as electrode materials,Thin Solid Films,1995年 3月15日,Vol.258, No.1/2,p.5-9
窒化チタンにより成る電極における塩酸の電解に際する陰極プロセスの研究(和文標題),Izvestiya Vysshikh Uchebnykh Zavedenij Khimiya i Khimicheskaya Tekhnologiya,1976年,Vol.19, No.2,p.275-277
調査した分野 C01G1/00-23/08
C01B15/00-23/00
C01B33/20-39/54
C04B35/42-35/51
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
単相の酸素欠損型酸化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有し、
前記酸素欠損型酸化チタンに基づく電子伝導性を有するマクロ多孔性チタン化合物モノリス。
【請求項2】
電気抵抗率が10Ω・cm以下である、請求項1に記載のマクロ多孔性チタン化合物モノリス。
【請求項3】
カーボン粒子および/または金属粒子が、前記骨格内および/または前記骨格の表面に配置されている、請求項1に記載のマクロ多孔性チタン化合物モノリス。
【請求項4】
電極である、請求項1に記載のマクロ多孔性チタン化合物モノリス。
【請求項5】
二酸化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有するマクロ多孔性二酸化チタンモノリスと、チタン還元能を有する金属と、を容器に収容し、
前記容器内を真空雰囲気または不活性ガス雰囲気とし、
前記モノリスおよび前記金属を加熱することで、前記金属を酸素ゲッターとして、前記モノリスを構成する二酸化チタンから酸素原子を奪う気相還元を行って、
酸素欠損型酸化チタンから構成される骨格と前記マクロ孔との共連続構造を有し、前記酸素欠損型酸化チタンに基づく電子伝導性を有するマクロ多孔性酸素欠損型酸化チタンモノリスを得る、マクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法。
【請求項6】
箔状の前記金属を前記容器に収容する請求項5に記載のマクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法。
【請求項7】
前記金属がジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)から選ばれる少なくとも1種である請求項5に記載のマクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法。
【請求項8】
前記加熱の温度が900~1300℃である請求項7に記載のマクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法。
【請求項9】
前記マクロ多孔性二酸化チタンモノリスの骨格を構成する二酸化チタンがアナターゼ型である請求項5に記載のマクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法。
【請求項10】
酸窒化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有し、
前記酸窒化チタンに基づく電子伝導性を有するマクロ多孔性チタン化合物モノリス。
【請求項11】
二酸化チタンまたは酸素欠損型酸化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有するマクロ多孔性チタン化合物モノリスと、金属窒化物と、を容器に収容し、
前記容器内を真空雰囲気または不活性ガス雰囲気とし、
前記モノリスおよび前記金属窒化物を加熱することで、前記金属窒化物を酸素ゲッターおよび窒素供給源として、前記モノリスを構成するチタン化合物から酸素原子を奪うとともに窒素原子を供給する気相還元を行って、
酸窒化チタンから構成される骨格と前記マクロ孔との共連続構造を有し、前記酸窒化チタンに基づく電子伝導性を有するマクロ多孔性酸窒化チタンモノリスを得る、マクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法。
【請求項12】
粉末状の前記金属窒化物を前記容器に収容する請求項11に記載のマクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法。
【請求項13】
前記金属窒化物が、窒化チタン、窒化ジルコニウムおよび窒化ハフニウムから選ばれる少なくとも1種である請求項11に記載のマクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法。
【請求項14】
前記加熱の温度が950~1200℃である請求項13に記載のマクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法。
【請求項15】
二酸化チタンから構成される骨格と前記マクロ孔との共連続構造を有するマクロ多孔性二酸化チタンモノリスと、前記金属窒化物と、を前記容器に収容する請求項11に記載のマクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法。
【請求項16】
窒化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有し、
前記窒化チタンに基づく電子伝導性を有するマクロ多孔性チタン化合物モノリス。
【請求項17】
二酸化チタン、酸素欠損型酸化チタンまたは酸窒化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有するマクロ多孔性チタン化合物モノリスを、アンモニアを含む雰囲気においてアンモニアの熱分解温度以上で熱処理して、前記モノリスを構成するチタン化合物から酸素原子を奪うとともに窒素原子を供給する気相還元を行って、
窒化チタンから構成される骨格と前記マクロ孔との共連続構造を有し、前記窒化チタンに基づく電子伝導性を有するマクロ多孔性窒化チタンモノリスを得る、マクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法。
【請求項18】
前記熱処理の温度が1000℃以上である請求項17に記載のマクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法。
【請求項19】
二酸化チタンから構成される骨格と前記マクロ孔との共連続構造を有するマクロ多孔性二酸化チタンモノリスを、アンモニアを含む雰囲気においてアンモニアの熱分解温度以上で熱処理する請求項17に記載のマクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、マクロ多孔性を有するチタン化合物モノリスとその製造方法とに関する。より具体的に、本発明は、酸素欠損型酸化チタン、酸窒化チタンまたは窒化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有するマクロ多孔性チタン化合物モノリスと、その製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
シリカなどの無機材料から構成された、細孔を有する多孔性モノリスが知られている。当該モノリスは、クロマトグラフィー用分離カラム、酵素担体、触媒担体などに広く使用されている。このような多孔性モノリスの製造には、一般に、液相反応であるゾル-ゲル法が用いられる。ゾル-ゲル法とは、分散媒に分散させた、加水分解性の官能基を有する無機低分子化合物を出発物質として、ゾル-ゲル反応、すなわち、当該化合物の加水分解とその後の重縮合とにより、酸化物の凝集体または重合体を得る方法を示す。出発物質である無機低分子化合物は、例えば、金属アルコキシド、金属塩化物および加水分解性の官能基を有する金属塩である。
【0003】
従来の一般的な多孔性モノリスは、通常、メソ孔(直径が2nm以上50nm未満の細孔)のみを有する。このような多孔性モノリスは、各種用途に望まれる特性を必ずしも満たしているとはいえない。特許文献1(国際公開第03/002458号)には、ゾル-ゲル転移と相分離とが同時に起こるようにゾル-ゲル反応の条件を調整することにより、狭い細孔経分布を有するメソ細孔に加えて、制御されたマクロ孔(直径が50nm以上の細孔)を併せ持つ多孔性モノリスの製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2(国際公開第2007/021037号)には、二酸化チタン(TiO)により構成される骨格と、制御されたメソ孔およびマクロ孔とを有する多孔性モノリスの製造方法が開示されている。特許文献2に開示の方法では、特許文献1に開示の方法をベースに、無機低分子化合物(例えばアルコキシド)の状態における加水分解性が非常に強く、従来のゾル-ゲル法では細孔の制御が難しかったチタンの化合物である二酸化チタンの多孔性モノリスが実現する。
【0005】
一方、二酸化チタン以外のチタン化合物から構成される多孔性モノリスの製造方法に関する開示は非常に少ない。当該方法を開示する文献である非特許文献1には、マクロ孔の鋳型となる高分子物質を含む有機溶媒と二酸化チタン粉末とを混合し、得られた混合物を成形、焼成して得た多孔性モノリスに対して水素を用いた還元処理を施すことにより、当該モノリスに酸素欠損を導入する方法が開示されている。この多孔性モノリスは、酸素欠損型酸化チタンに基づく電子伝導性を有する。しかし、この方法で製造された多孔性モノリスは、その製造方法から判断して基本的に粉末の凝集体であって、混合物に分散した高分子物質の焼失によって形成されたマクロ孔を有するのみであり、制御されたマクロ孔を有さない。また、この多孔性モノリスでは酸素欠損型酸化チタンの粉末同士が互いに結着しているが、酸素欠損型酸化チタンからなる単一の結晶相は実現していないと考えられる。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】国際公開第03/002458号
【特許文献2】国際公開第2007/021037号
【0007】

【非特許文献1】K. Kolbrecka, J. Przyluski,"Sub-stoichiometric titanium oxides as ceramic electrodes for oxygen evolution-structural aspects of the voltammetric behaviour of TinO2n-1", Electrochimica Acta, vol. 39 [11-12], pp. 1591-1595 (1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、二酸化チタン以外のチタン化合物である、酸素欠損型酸化チタン、酸窒化チタンまたは窒化チタンから構成され、制御されたマクロ孔および電子伝導性を有するマクロ多孔性チタン化合物モノリスと、その製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のマクロ多孔性チタン化合物モノリスは、単相の酸素欠損型酸化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有し、前記酸素欠損型酸化チタンに基づく電子伝導性を有する。
【0010】
本発明のマクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法は、二酸化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有するマクロ多孔性二酸化チタンモノリスと、チタン還元能を有する金属とを容器に収容し、前記容器内を真空雰囲気または不活性ガス雰囲気とし、前記モノリスおよび前記金属を加熱することで、前記金属を酸素ゲッターとして、前記モノリスを構成する二酸化チタンから酸素原子を奪う気相還元を行って、酸素欠損型酸化チタンから構成される骨格と前記マクロ孔との共連続構造を有し、前記酸素欠損型酸化チタンに基づく電子伝導性を有するマクロ多孔性酸素欠損型酸化チタンモノリスを得る方法である。
【0011】
別の側面から見た本発明のマクロ多孔性チタン化合物モノリスは、酸窒化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有し、前記酸窒化チタンに基づく電子伝導性を有する。
【0012】
別の側面から見た本発明のマクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法は、二酸化チタンまたは酸素欠損型酸化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有するマクロ多孔性チタン化合物モノリスと、金属窒化物とを容器に収容し、前記容器内を真空雰囲気または不活性ガス雰囲気とし、前記モノリスおよび前記金属窒化物を加熱することで、前記金属窒化物を酸素ゲッターおよび窒素供給源として、前記モノリスを構成するチタン化合物から酸素原子を奪うとともに窒素原子を供給する気相還元を行って、酸窒化チタンから構成される骨格と前記マクロ孔との共連続構造を有し、前記酸窒化チタンに基づく電子伝導性を有するマクロ多孔性酸窒化チタンモノリスを得る方法である。
【0013】
別の側面から見た本発明のマクロ多孔性チタン化合物モノリスは、窒化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有し、前記窒化チタンに基づく電子伝導性を有する。
【0014】
別の側面から見た本発明のマクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法は、二酸化チタン、酸素欠損型酸化チタンまたは酸窒化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有するマクロ多孔性チタン化合物モノリスを、アンモニアを含む雰囲気においてアンモニアの熱分解温度以上で熱処理して、前記モノリスを構成するチタン化合物から酸素原子を奪うとともに窒素原子を供給する気相還元を行って、窒化チタンから構成される骨格と前記マクロ孔との共連続構造を有し、前記窒化チタンに基づく電子伝導性を有するマクロ多孔性窒化チタンモノリスを得る方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、二酸化チタン以外のチタン化合物である、酸素欠損型酸化チタン、酸窒化チタンまたは窒化チタンから構成され、制御されたマクロ孔および電子伝導性を有するマクロ多孔性チタン化合物モノリスとその製造方法とが提供される。また、本発明によれば、単相の酸素欠損型酸化チタンから構成される骨格を有するマクロ多孔性チタン化合物モノリスが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施例で作製したマクロ多孔性二酸化チタンモノリスの走査型電子顕微鏡(SEM)による観察像を示す図である。
【図2】図2は、実施例で作製したマクロ多孔性二酸化チタンモノリスおよびマクロ多孔性酸素欠損型酸化チタンモノリスに対する水銀圧入法による細孔分布測定結果を示す図である。
【図3】図3は、実施例で作製したマクロ多孔性二酸化チタン(アナターゼ型)モノリスおよびマクロ多孔性酸素欠損型酸化チタンモノリスに対するX線回折(XRD)測定による回折ピークを示す図である。
【図4】図4は、実施例で作製したマクロ多孔性酸素欠損型酸化チタンモノリスのSEMによる観察像を示す図である。
【図5】図5は、実施例で作製したマクロ多孔性酸素欠損型酸化チタン(Ti)モノリスについて電気抵抗率の温度依存性評価結果を示す図である。
【図6】図6は、実施例で作製したマクロ多孔性酸素欠損型酸化チタンモノリスについて、電気抵抗率の温度依存性評価結果を示す図である。
【図7A】図7Aは、実施例で作製したマクロ多孔性二酸化チタン(ルチル型)モノリスおよびマクロ多孔性酸素欠損型酸化チタンモノリスに対するXRD測定による回折ピークを示す図である。
【図7B】図7Bは、図7Aに示すR1の回折ピークにおける回折角2θにして20度から30度の範囲を拡大した図である。
【図8】図8は、実施例で作製したマクロ多孔性酸窒化チタンモノリスのSEMによる観察像を示す図である。
【図9】図9は、実施例で作製したマクロ多孔性酸窒化チタンモノリスおよびマクロ多孔性窒化チタンモノリスに対するXRD測定による回折ピークを示す図である。
【図10】図10は、実施例で作製したマクロ多孔性窒化チタンモノリスのSEMによる観察像を示す図である。
【図11】図11は、実施例で作製した、カーボン粒子が配置された、マクロ多孔性二酸化チタンモノリスおよびマクロ多孔性酸素欠損型酸化チタンモノリスのSEMによる観察像を示す図である。
【図12】図12は、実施例で作製したマクロ多孔性二酸化チタンモノリスおよびマクロ多孔性酸素欠損型酸化チタンモノリスに対する窒素吸脱着法による細孔分布測定結果を示す図である。
【図13】図13は、実施例で作製したマクロ多孔性二酸化チタンモノリスおよびマクロ多孔性酸素欠損型酸化チタンモノリスに対する窒素吸脱着法による細孔分布測定結果を示す図である。
【図14】図14は、実施例で作製した、カーボン粒子が配置されたマクロ多孔性酸素欠損型酸化チタンモノリスに対する熱重量分析(TG)の評価結果を示す図である。
【図15】図15は、実施例で作製した、カーボン粒子が配置されたマクロ多孔性酸素欠損型酸化チタンモノリスに対するラマン分光分析の評価結果を示す図である。
【図16】図16は、実施例で作製したマクロ多孔性酸素欠損型酸化チタンモノリスに対するサイクリックボルタモグラム(CV)の評価結果を示す図である。
【図17】図17は、実施例で作製したマクロ多孔性酸素欠損型酸化チタンモノリスに対するCVの評価結果を示す図である。
【図18】図18は、実施例で作製した、白金粒子が配置されたマクロ多孔性酸素欠損型酸化チタンモノリスのSEMによる観察像を示す図である。
【図19】図19は、実施例で作製した、白金粒子が配置されたマクロ多孔性酸素欠損型酸化チタンモノリスに対するリニアスイープボルタンメトリー(LSV)の評価結果を示す図である。
【図20】図20は、実施例で作製した、白金粒子が配置されたマクロ多孔性酸素欠損型酸化チタンモノリスに対する、メタノール存在下でのLSVの評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の第1態様は、単相の酸素欠損型酸化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有し、前記酸素欠損型酸化チタンに基づく電子伝導性を有するマクロ多孔性チタン化合物モノリスを提供する。

【0018】
第2態様は、第1態様に加え、電気抵抗率が10Ω・cm以下であるマクロ多孔性チタン化合物モノリスを提供する。

【0019】
第3態様は、第1または第2態様に加え、カーボン粒子および/または金属粒子が、前記骨格内および/または前記骨格の表面に配置されているマクロ多孔性チタン化合物モノリスを提供する。

【0020】
第4態様は、第1~第3態様のいずれか1つに加え、電極であるマクロ多孔性チタン化合物モノリスを提供する。

【0021】
第5態様は、二酸化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有するマクロ多孔性二酸化チタンモノリスと、チタン還元能を有する金属と、を容器に収容し、前記容器内を真空雰囲気または不活性ガス雰囲気とし、前記モノリスおよび前記金属を加熱することで、前記金属を酸素ゲッターとして、前記モノリスを構成する二酸化チタンから酸素原子を奪う気相還元を行って、酸素欠損型酸化チタンから構成される骨格と前記マクロ孔との共連続構造を有し、前記酸素欠損型酸化チタンに基づく電子伝導性を有するマクロ多孔性酸素欠損型酸化チタンモノリスを得る、マクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法を提供する。

【0022】
第6態様は、第5態様に加え、箔状の前記金属を前記容器に収容する、マクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法を提供する。

【0023】
第7態様は、第5または第6態様に加え、前記金属がジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)から選ばれる少なくとも1種である、マクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法を提供する。

【0024】
第8態様は、第5~第7態様のいずれか1つに加え、前記加熱の温度が900~1300℃である、マクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法を提供する。

【0025】
第9態様は、第5~第8態様のいずれか1つに加え、前記マクロ多孔性二酸化チタンモノリスの骨格を構成する二酸化チタンがアナターゼ型である、マクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法を提供する。

【0026】
第10態様は、酸窒化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有し、前記酸窒化チタンに基づく電子伝導性を有するマクロ多孔性チタン化合物モノリスを提供する。

【0027】
第11態様は、二酸化チタンまたは酸素欠損型酸化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有するマクロ多孔性チタン化合物モノリスと、金属窒化物と、を容器に収容し、前記容器内を真空雰囲気または不活性ガス雰囲気とし、前記モノリスおよび前記金属窒化物を加熱することで、前記金属窒化物を酸素ゲッターおよび窒素供給源として、前記モノリスを構成するチタン化合物から酸素原子を奪うとともに窒素原子を供給する気相還元を行って、酸窒化チタンから構成される骨格と前記マクロ孔との共連続構造を有し、前記酸窒化チタンに基づく電子伝導性を有するマクロ多孔性酸窒化チタンモノリスを得る、マクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法を提供する。

【0028】
第12態様は、第11態様に加え、粉末状の前記金属窒化物を前記容器に収容する、マクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法を提供する。

【0029】
第13態様は、第11または第12態様に加え、前記金属窒化物が、窒化チタン、窒化ジルコニウムおよび窒化ハフニウムから選ばれる少なくとも1種である、マクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法を提供する。

【0030】
第14態様は、第11~第13態様のいずれか1つに加え、前記加熱の温度が950~1200℃である、マクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法を提供する。

【0031】
第15態様は、第11~第14態様のいずれか1つに加え、二酸化チタンから構成される骨格と前記マクロ孔との共連続構造を有するマクロ多孔性二酸化チタンモノリスと、前記金属窒化物と、を前記容器に収容する、マクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法を提供する。

【0032】
第16態様は、窒化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有し、前記窒化チタンに基づく電子伝導性を有するマクロ多孔性チタン化合物モノリスを提供する。

【0033】
第17態様は、二酸化チタン、酸素欠損型酸化チタンまたは酸窒化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有するマクロ多孔性チタン化合物モノリスを、アンモニアを含む雰囲気においてアンモニアの熱分解温度以上で熱処理して、前記モノリスを構成するチタン化合物から酸素原子を奪うとともに窒素原子を供給する気相還元を行って、窒化チタンから構成される骨格と前記マクロ孔との共連続構造を有し、前記窒化チタンに基づく電子伝導性を有するマクロ多孔性窒化チタンモノリスを得る、マクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法を提供する。

【0034】
第18態様は、第17態様に加え、前記熱処理の温度が1000℃以上である、マクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法を提供する。

【0035】
第19態様は、第17または第18態様に加え、二酸化チタンから構成される骨格と前記マクロ孔との共連続構造を有するマクロ多孔性二酸化チタンモノリスを、アンモニアを含む雰囲気においてアンモニアの熱分解温度以上で熱処理する、マクロ多孔性チタン化合物モノリスの製造方法を提供する。

【0036】
本明細書において「マクロ多孔性チタン化合物モノリス」とは、制御されたマクロ孔を有するチタン化合物モノリスをいう。「制御されたマクロ孔」とは、モノリス骨格との共連続構造を示すマクロ孔であって、直径の均一性が高く、孤立孔(マクロ孔としての孤立孔、以下同じ)を有さないマクロ孔、を意味する。

【0037】
本明細書において「マクロ孔」とは、IUPACによる提唱に従い、直径が50nm以上の細孔をいう。同様に「メソ孔」とは、直径が2nm以上50nm未満の細孔をいう。直径が2nm未満の細孔は「マイクロ孔」である。細孔の直径および平均径は、一般的な細孔分布測定、例えば水銀圧入法または窒素吸脱着法による細孔分布測定により求めることができる。

【0038】
[マクロ多孔性酸素欠損型酸化チタンモノリスの製造方法]
本発明のマクロ多孔性酸素欠損型酸化チタンモノリス(以下、酸素欠損モノリス)の製造方法では、前駆体であるマクロ多孔性二酸化チタンモノリス(以下、二酸化モノリス)と、チタン還元能を有する金属とを使用する。

【0039】
前駆体である二酸化モノリスは、二酸化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有する。この共連続構造は、上述のように、マクロ孔の直径の均一性が高く、孤立孔を有さない。本発明の酸素欠損モノリスの製造方法では、前駆体モノリスの骨格を構成するチタン化合物を二酸化チタンから酸素欠損型酸化チタンに変化させる。このとき、マクロ多孔性モノリスとしての構造が維持される。これにより、前駆体モノリスにおける骨格とマクロ孔との共連続構造が維持された酸素欠損モノリスが得られる。すなわち、得られた酸素欠損モノリスの共連続構造では、マクロ孔の直径の均一性が高く、孤立孔が存在しない。酸素欠損型酸化チタンの粉末を凝集させた(結着させた)従来の成形体、例えば、エボネックス(Ebonex)では、このようなマクロ孔の制御は達成できない。凝集状態の粉末間に存在する、ランダムなサイズおよび形状を有する空間が観察されるだけである。

【0040】
前駆体モノリス(二酸化モノリス)の骨格を構成する二酸化チタンがアナターゼ型であることが好ましい。この場合、単一の結晶相(以下、「単相」ともいう)の酸素欠損型酸化チタンから骨格が構成される酸素欠損モノリス(単相の酸素欠損モノリス)を得ることができる。ルチル型二酸化チタンから構成される骨格を有する二酸化モノリスからは、単相の酸素欠損モノリスを得ることができない。単相の酸素欠損モノリスの形成も、本発明の利点の一つである。例えば、エボネックスは、酸素欠損状態が異なる(酸化状態が異なる)複数種のチタン粉末が混在した凝集体にすぎない。

【0041】
前駆体である二酸化モノリスは、メソ孔を有していてもいなくてもよい。

【0042】
前駆体である二酸化モノリス、すなわち、二酸化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有するマクロ多孔性二酸化チタンモノリスを形成する方法は、特に限定されない。例えば、特許文献1,2に開示の方法に従って、二酸化モノリスを形成できる。二酸化モノリスは、例えば、George Hasegawa et al., "Facile Preparation of Hierarchically Porous TiO Monoliths", Journal of American Ceramic Society, vol. 93 [10], pp. 3110-3115 (2010)に開示されている方法により形成してもよく、この場合、アナターゼ型二酸化チタンから構成される骨格を有する二酸化モノリスの形成がより確実となる。当該方法では、キレート剤、強酸塩および相分離制御剤を用いた、相分離を伴うゾル-ゲル反応と、ゾル-ゲル反応後におけるキレート剤の除去および水中でのエージングとによって、アナターゼ型二酸化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有する二酸化モノリスを形成している。相分離を伴うゾル-ゲル反応によって骨格およびマクロ孔の共連続構造が形成されるのは特許文献1,2に開示の方法においても同様であり、これらの方法では、マクロ孔の制御の精密性および自由度が高い、例えばマクロ孔の直径の均一性がより高い、二酸化モノリスを形成できる。すなわち、これらの方法により形成した二酸化モノリスの使用によって、マクロ孔の制御の精密性および自由度が高い、例えばマクロ孔の直径の均一性がより高い、酸素欠損モノリスが得られる。このような酸素欠損モノリスによって、例えば、流体の透過性の精密な制御が可能である。

【0043】
前駆体である二酸化モノリスは、得たい酸素欠損モノリスの骨格およびマクロ孔の構成(例えば、マクロ孔の平均径、モノリスの空孔率)に応じて選択すればよい。

【0044】
チタン還元能を有する金属は、チタンよりも酸素に対する親和性が大きい金属である限り限定されないが、例えば、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)から選ばれる少なくとも1種である。「チタンよりも酸素に対する親和性が大きい」ことから明らかであるように、チタン還元能を有する金属にチタン自体は含まれない。

【0045】
本発明の酸素欠損モノリスの製造方法では、二酸化モノリスとチタン還元能を有する金属とを容器に収容し、前記容器内を真空雰囲気または不活性ガス雰囲気とし、当該二酸化モノリスおよび金属を加熱する。そして、上記金属を酸素ゲッターとして、二酸化モノリスの骨格を構成する二酸化チタンから酸素原子を奪う気相還元を行う。

【0046】
二酸化モノリスおよび上記金属を容器に収容し、容器内を真空雰囲気または不活性ガス雰囲気とするのは、気相還元を安定かつ確実に実施するためである。この観点からは、容器は、二酸化モノリスおよび上記金属を収容した後に密閉できる密閉容器であることが好ましい。また、真空雰囲気および不活性ガス雰囲気は、酸素の分圧が非常に小さい(例えば10-1Pa以下であり、4×10-2Pa以下が好ましい)雰囲気を意味する。容器内の酸素の分圧が大きくなるほど、気相還元が阻害されるためである。真空雰囲気は、例えば、圧力10-3~10-1Paの雰囲気であり、圧力2×10-2~4×10-2Paの雰囲気が好ましい。不活性ガスは、例えば、窒素、アルゴンである。不活性ガス雰囲気の圧力は酸素の分圧が非常に小さい限り特に限定されない。

【0047】
容器内の真空雰囲気または不活性ガス雰囲気は、二酸化モノリスおよび上記金属の加熱を開始した時点で既に実現していることが好ましい。換言すれば、二酸化モノリスおよび上記金属を収容した容器内を真空雰囲気または不活性ガス雰囲気とした後に、当該モノリスおよび金属を加熱することが好ましい。また、気相還元を実施する間、容器内の真空雰囲気または不活性ガス雰囲気が保たれていることが好ましい。これらにより、一度還元された二酸化モノリスの再酸化が抑制され、気相還元をより安定かつ確実に実施することができる。なお、加熱前の真空雰囲気または不活性ガス雰囲気がそのまま維持されるように、公知の設備および手法を応用して、容器内の雰囲気を調整してもよいが、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気を達成した後に容器を封止して加熱する方が、得られる酸素欠損型酸化チタンの組成が制御しやすい。これは、加熱の間、容器内の雰囲気を調整し続けていると、二酸化チタンから遊離した酸素が上記金属と反応することなく系外に排出されてしまい、容器内に収容する上記金属の量によって酸素欠損型酸化チタンの組成を制御することが難しくなるためである。

【0048】
容器を構成する材料は、気相還元によって自らが変質したり腐食したりしないとともに、気相還元を阻害しない材料が好ましい。容器に使用する材料として、ガラス、石英、ステンレス、モネル合金が好適である。

【0049】
上記金属が箔状である、すなわち、箔状の上記金属を容器に収容することが好ましく、この場合、二酸化チタンから遊離した酸素による上記金属の酸化が効率的となり(上記金属による二酸化チタンから遊離した酸素の捕捉が効率的となり)、気相還元をさらに安定かつ確実に実施することができる。気相還元の安定性および確実性の観点から、金属箔の平均厚みは、例えば0.01μm~100μmであり、0.1μm~100μmが好ましい。粉末状の上記金属を用いることも可能であるが、粉末の表面は酸化されやすく、その程度が粒形によって異なるため、気相還元の制御性が若干低くなる。

【0050】
容器に収容した二酸化モノリスおよび上記金属の加熱方法は特に限定されない。例えば、加熱温度に調整した炉内に、二酸化モノリスおよび上記金属を収容した容器全体を収容すればよい。炉内を真空にして加熱することも可能である。

【0051】
二酸化モノリスおよび上記金属の加熱温度は、二酸化モノリスの気相還元が進行する温度である限り限定されない。具体的な加熱温度は、金属の種類および気相還元時の容器内の圧力により異なるが、金属がジルコニウムの場合、例えば900℃以上1300℃以下であり、1000℃以上1200℃以下が好ましい。加熱温度が低すぎると、気相還元が安定して進行しない。加熱温度が高すぎると、均一なマクロ孔の共連続構造が消失する。また、単相の低次酸化モノリスが得られなくなる。

【0052】
本発明の酸素欠損モノリスの製造方法において、上記金属は酸素ゲッターとなり、二酸化モノリスを構成する二酸化チタンから酸素原子を奪う。このような気相還元により、モノリスの外表面のみならずマクロ孔の内部にまで安定かつ確実に還元反応を進行させることができ、前駆体である二酸化モノリスの共連続構造を保持した(制御されたマクロ孔構造を保持した)酸素欠損モノリスが得られる。

【0053】
得られた酸素欠損モノリスは、共連続構造を示す骨格、すなわち連続した骨格を構成する酸素欠損型酸化チタンに基づく電子伝導性を有する。電子伝導性の程度は、当該骨格を構成する酸素欠損型酸化チタン自体の物性による。なお、この電子伝導性の獲得により、白色であった二酸化モノリスの色は、酸素欠損モノリスでは黒色に変化する。

【0054】
本明細書における「電子伝導性を有する」とは、少なくとも半導体であることを意味する10Ω・cm以下の電気抵抗率ρを示すことをいう。全ての温度域でこのような電気抵抗率ρを示す必要はないが、例えば常温において10Ω・cm以下の電気抵抗率ρを示すことが好ましい。作製したモノリスの骨格を構成する材料の組成および温度域によって、当該モノリスは、さらに低い電気抵抵抗率ρ、例えば10Ω・cm以下、10Ω・cm以下、1Ω・cm以下、10-1Ω・cm以下を示す。

【0055】
酸素欠損型酸化チタンとは、二酸化チタンよりもチタンが還元された状態にある(二酸化チタンよりも酸素のモル当量が少ない)酸化チタンをいう。酸素欠損型酸化チタンは、例えば、式Ti2n-1(nは2,3,4または6)により示される酸化チタンである。酸素欠損型酸化チタンは必ずしも上記式を満たす組成である必要はないが、容器内に収容する、二酸化モノリスに対する上記金属の量を適度な範囲とし、気相還元の時間を十分に確保することによって、上記式を満たす酸素欠損型酸化チタンから骨格が構成された酸素欠損モノリスを得ることができる。適度な範囲とは、例えば、二酸化モノリスに含まれる二酸化チタンの全てを、上記式を満たす酸素欠損型酸化チタンにするのに必要な化学量論比上の上記金属の重量の5重量%から10重量%過剰となる範囲である。上記式を満たす酸素欠損型酸化チタンとするために必要な気相還元の時間は、二酸化モノリスのサイズ、形状、空孔率およびマクロ孔の直径、容器に収容する金属の形態ならびに加熱温度によって異なるが、一日以上必要なことがある。酸素欠損型酸化チタンの組成は、骨格に対するX線回折(XRD)を用いた結晶構造解析により評価できる。

【0056】
金属にジルコニウムを用いてTi(上記式においてnが2)を得るための気相還元の反応式は、4TiO+Zr→2Ti+ZrOである。同様に、金属にジルコニウムを用いてTi(nが3)、Ti(nが4)およびTi11(nが6)を得るための気相還元の反応式は、それぞれ6TiO+Zr→2Ti+ZrO、8TiO+Zr→2Ti+ZrO、12TiO+Zr→2Ti11+ZrOである。容器に収容する上記金属の重量の適度な範囲は、これらの反応式から求めることができる。

【0057】
また、本発明の酸素欠損モノリスの製造方法では、アナターゼ型の二酸化チタンから構成された骨格を有する二酸化モノリスを前駆体に選択し、容器内に収容する二酸化モノリスに対する上記金属の量を上記適度な範囲とし、気相還元の時間を十分に長くとることによって、単相の酸素欠損型酸化チタンから構成される骨格を有する酸素欠損モノリスを形成できる。これは、非特許文献1に開示されている、粒子状の酸素欠損型酸化チタンが結着した多孔性モノリスを形成する方法、エボネックスを形成する方法、あるいは二酸化チタンの多孔性モノリスに酸素原子との反応性を有する粒子(例えばカーボン粒子)を予め混在させておき、熱などを利用して当該粒子と二酸化チタンの酸素原子との反応を進行させて、酸素が欠損したチタンから骨格が構成される多孔性モノリスを形成する方法、によっては実現できない。なお、単相の酸素欠損型酸化チタンから構成される骨格の形成には、加熱時の熱も寄与していると考えられる。得られた酸素欠損モノリスの骨格が単相の酸素欠損型酸化チタンから構成されているか否かは、当該骨格に対するX線回折(XRD)を用いた結晶構造解析、あるいは当該骨格の物性解析(例えば、導電性解析や磁性解析)によって判断できる。例えば、ある結晶相に基づく回折ピーク以外のピークがXRDの回折パターンに観察されない場合、モノリスの骨格は当該結晶相の単相であるといえる。

【0058】
本発明の酸素欠損モノリスの製造方法により得た酸素欠損モノリスでは、前駆体である二酸化モノリスのマクロ孔の構造(例えば、直径、形状)は保持されているが、気相還元時の熱により、二酸化モノリスで存在していたメソ孔は失われていることがある。

【0059】
本発明の酸素欠損モノリスの製造方法により得た酸素欠損モノリスは、前駆体である二酸化モノリスの骨格およびマクロ孔の構成に応じて、様々な用途に使用可能である。電子伝導性ならびに骨格およびマクロ孔の共連続構造に由来する高い流体透過性、触媒特性およびハンドリング強度に着目すると、酸素欠損モノリスは、例えば、電池用電極、表面にガス官能型の機能性薄膜を設けたガスセンサ用の電極、反応性電極などの電極に使用できる。電極としての使用により、各種の電気化学的反応、例えば、有機および無機化合物の酸化、還元、合成などを進行させることができる。その具体的な例は限定されないが、一例は、メッキ、フェノールの酸化、カルボン酸の還元である。機能性薄膜を高分子電解質などの電解質薄膜とすることにより燃料電池用電極への使用も可能である。酸素欠損型酸化チタンが可視光・紫外光を吸収するワイドギャップ半導体であることにさらに着目すると、酸素欠損モノリスは、水分解あるいは有機物分解特性を有する光触媒材料、太陽電池あるいは色素増感電池の電極に使用できる。酸素欠損モノリスにドープ種をドープしてさらなる特性を付与してもよく、例えばカチオンドープにより強誘電性を付与した場合、酸素欠損モノリスの電子デバイスへの使用も視野に入れることができる。触媒担体として使用することもできる。

【0060】
本発明の酸素欠損モノリスの製造方法は、酸素欠損モノリスが得られる限り、説明した以外の任意の工程を含むことができる。

【0061】
当該任意の工程は、例えば、粒子(典型的には金属粒子および/またはカーボン粒子)を、マクロ多孔性モノリスの骨格内および/または骨格の表面(すなわちマクロ孔の壁面)に配置する工程である。粒子が骨格内および/または骨格の表面に配置された酸素欠損モノリスは、配置された当該粒子に由来する特性を発揮することが期待される。金属粒子が配置された場合、その種類によっては、例えば、当該金属粒子に由来する触媒特性を示す酸素欠損モノリスが得られる。触媒特性を示す酸素欠損モノリスは、例えば、反応性電極に使用できる。カーボン粒子が配置された場合、例えば、カーボン粒子に基づく高い細孔容積および比表面積を示す酸素欠損モノリスが得られる。気相還元時の熱によって骨格内のメソ孔が失われた場合においても、カーボン粒子が配置された酸素欠損モノリスが高い細孔容積、比表面積を示すことが期待される。

【0062】
金属は、例えば、白金、金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、銀、銅、ニッケル、鉄およびアルミニウムから選ばれる少なくとも1種であり、白金、金、パラジウム、ロジウムおよびルテニウムから選ばれる少なくとも1種であってもよく、白金およびパラジウムから選ばれる少なくとも1種であってもよい。

【0063】
酸素欠損モノリスの骨格内および/または骨格の表面に粒子を配置する方法は、二酸化モノリスを気相還元して酸素欠損モノリスを得る本発明の製造方法が実施できる限り、限定されない。方法の例は:
(1)骨格内および/または骨格の表面に粒子が配置された二酸化モノリスに対して上記気相還元を実施することで、骨格内および/または骨格の表面に粒子が配置された酸素欠損モノリスを得る方法;
(2)骨格内および/または骨格の表面に粒子前駆体が配置された二酸化モノリスに対する上記気相還元の実施を経て、骨格内および/または骨格の表面に粒子が配置された酸素欠損モノリスを得る方法;および
(3)二酸化モノリスに対する上記気相還元の実施により酸素欠損モノリスを得た後に、得られた酸素欠損モノリスの骨格内および/または骨格の表面に粒子を配置する方法;を含む。(1)、(2)、(3)のいずれの方法も、カーボン粒子の配置および金属粒子の配置に適用できる。(1)の方法において、二酸化モノリス内にカーボン粒子を配置した場合においても、上記気相還元の進行により、カーボン粒子による二酸化モノリス骨格からの酸素の引き抜き(カーボン粒子の酸化)が抑えられる。このため、単相の酸素欠損モノリスを得ることができる。

【0064】
(1)の方法について、二酸化モノリスへの粒子の配置は、例えば、(a)粒子を含む溶液と二酸化モノリスとを接触させた後に乾燥させる方法、(b)粒子の前駆体を含む溶液と二酸化モノリスとを接触させた後、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気または還元性雰囲気下で二酸化モノリスに熱を加えることにより前駆体から粒子を形成する方法、あるいは(c)粒子が金属粒子である場合、粒子の前駆体を含む溶液と二酸化モノリスとを接触させた後、前駆体を化学的に還元させることにより前駆体から粒子を形成する方法、によって実施できる。溶液とモノリスとの接触は、例えば、溶液へのモノリスの含浸である。(c)の化学的な還元は、例えば、前駆体の還元剤を含む溶液とモノリスとを接触させることにより進めることができる。還元剤は、例えば、ホルムアルデヒド、ギ酸、ヒドラジンである。二酸化モノリスをゾルゲル法により形成する場合、湿潤ゲルの状態で上記(a)、(b)または(c)を行ってもよい。粒子の前駆体は、金属粒子について、例えば当該金属の塩であり、カーボン粒子について、例えば樹脂である。樹脂は、例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリルである。粒子の前駆体を含む溶液では、当該前駆体が溶液に溶解していることが好ましい。換言すれば、粒子の前駆体は、二酸化モノリスと接触する溶液への溶解性を有することが好ましい。この場合、二酸化モノリスの骨格内(メソ孔内)への粒子の配置がより確実となる。(a)の方法では、溶液に含まれる金属粒子のサイズが小さければ、二酸化モノリスの骨格内(メソ孔内)に金属粒子を配置できる。

【0065】
(2)の方法について、二酸化モノリスへの粒子の前駆体の配置は、(1)の方法と同様に実施することができる。前駆体からの粒子の形成は、上記気相還元による二酸化モノリスからの酸素欠損モノリスの形成を阻害しない限り、上記気相還元と同時または上記気相還元の後に実施することができる。気相還元の後に実施する場合、前駆体からの粒子の形成は、(1)の方法と同様に実施すればよい。

【0066】
(3)の方法について、得られた酸素欠損モノリスへの粒子の配置は、例えば、(a)粒子を含む溶液と酸素欠損モノリスとを接触させた後に乾燥させる方法、(b)粒子の前駆体を含む溶液と酸素欠損モノリスとを接触させた後、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気または還元性雰囲気下で酸素欠損モノリスに熱を加えることにより前駆体から粒子を形成する方法、(c)粒子が金属粒子である場合、粒子の前駆体を含む溶液と二酸化モノリスとを接触させた後、前駆体を化学的に還元させることにより前駆体から粒子を形成する方法あるいは(d)粒子が金属粒子である場合、酸素欠損モノリスの導電性を利用して、電解メッキなどの電気化学的手法により金属粒子を形成する方法が実施できる。(a)、(b)、(c)については、(1)の方法と同様である。(d)の方法では、酸素欠損モノリスにメソ孔が残存している場合、当該モノリスの骨格内(メソ孔内)への粒子の配置がより確実となる。

【0067】
配置された粒子のサイズは特に限定されないが、例えば、2nm~1μmであり、2nm~100nmが好ましく、触媒の用途においては10nm以下が特に好ましい。

【0068】
[マクロ多孔性酸素欠損型酸化チタンモノリス]
本発明の酸素欠損モノリスは、単相の(単一の結晶相)の酸素欠損型酸化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有し、酸素欠損型酸化チタンに基づく電子伝導性を有する。この共連続構造は、上述のように、マクロ孔の直径の均一性が高く、孤立孔を有さない。酸素欠損型酸化チタンは、例えば、式Ti2n-1(nは2,3,4または6)により示される酸化チタンである。電子伝導性の程度は、当該モノリスの骨格を構成する酸素欠損型酸化チタン自体の物性による。電気抵抗率は、例えば10Ω・cm以下であり、常温において10Ω・cm以下であることが好ましく、当該モノリスの骨格を構成する酸素欠損型酸化チタンの組成および温度域によっては、例えば10Ω・cm以下、10Ω・cm以下、1Ω・cm以下、さらには10-1Ω・cm以下となる。

【0069】
本発明の酸素欠損モノリスは、メソ孔を有していてもいなくてもよい。

【0070】
本発明の酸素欠損モノリスでは、粒子、例えばカーボン粒子および/または金属粒子、が、当該モノリスの骨格内(メソ孔内)および/または骨格の表面(マクロ孔の壁面)に配置されていてもよい。金属粒子およびカーボン粒子については、酸素欠損モノリスの製造方法の説明において上述したとおりである。

【0071】
本発明の酸素欠損モノリスは、例えば、本発明の酸素欠損モノリスの製造方法により形成できる。

【0072】
本発明の酸素欠損モノリスは、その骨格およびマクロ孔の構成に応じて、様々な用途に使用可能である。具体的な用途の例は、本発明の酸素欠損モノリスの製造方法の説明において上述したとおりである。

【0073】
[マクロ多孔性酸窒化チタンモノリスの製造方法]
本発明のマクロ多孔性酸窒化チタンモノリス(以下、酸窒化モノリス)の製造方法では、前駆体である二酸化モノリスまたは酸素欠損モノリスと、金属窒化物とを使用する。

【0074】
前駆体モノリスは、二酸化チタンまたは酸素欠損型酸化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有する。この共連続構造は、上述のように、マクロ孔の直径の均一性が高く、孤立孔を有さない。本発明の酸窒化モノリスの製造方法では、前駆体モノリスの骨格を構成するチタン化合物を、二酸化チタンまたは酸素欠損型酸化チタンから酸窒化チタンに変化させる。このとき、マクロ多孔性モノリスとしての構造が維持される。これにより、前駆体モノリスにおける骨格とマクロ孔との共連続構造が維持された酸窒化モノリスが得られる。すなわち、得られた酸窒化モノリスの共連続構造では、マクロ孔の直径の均一性が高く、孤立孔が存在しない。酸窒化チタンの粉末を凝集させた(結着させた)成形体では、このようなマクロ孔の制御は達成できない。凝集状態の粉末間に存在する、ランダムなサイズおよび形状を有する空間が観察されるだけである。酸素欠損型酸化チタンは、本発明の酸素欠損モノリスの製造方法の説明において上述したとおりである。

【0075】
前駆体モノリスが二酸化モノリスである場合、当該モノリスの骨格を構成する二酸化チタンの結晶系は限定されず、アナターゼ型であってもルチル型であってもよい。前駆体モノリスは、メソ孔を有していてもいなくてもよい。

【0076】
前駆体である二酸化モノリスの形成方法は特に限定されず、本発明の酸素欠損モノリスの製造方法の説明において上述したとおりである。例えば、特許文献1,2に開示の方法、あるいはGeorge Hasegawa et al.文献に開示されている方法に従って二酸化モノリスを形成できる。これらの方法では、マクロ孔の制御の精密性および自由度が高い、例えばマクロ孔の直径の均一性がより高い、二酸化モノリスを形成できる。すなわち、これらの方法により形成した二酸化モノリスの使用によって、マクロ孔の制御の精密性および自由度が高い、例えばマクロ孔の直径の均一性がより高い、酸窒化モノリスが得られる。このような酸窒化モノリスによって、例えば、流体の透過性の精密な制御が可能である。

【0077】
前駆体である酸素欠損モノリスの形成方法は特に限定されず、例えば、本発明の酸素欠損モノリスの製造方法に従って形成できる。当該方法では、マクロ孔の制御の精密性および自由度が高い、例えばマクロ孔の直径の均一性がより高い、酸素欠損モノリスを形成できる。すなわち、当該方法により形成した酸素欠損モノリスの使用によって、マクロ孔の制御の精密性および自由度が高い、例えばマクロ孔の直径の均一性がより高い、酸窒化モノリスが得られる。

【0078】
本発明の酸窒化モノリスの製造方法では、例えば、前駆体モノリスとして二酸化モノリスを使用して、より具体的には、二酸化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有する二酸化モノリスと、金属窒化物とを容器に収容して、気相還元を行ってもよい。

【0079】
前駆体である二酸化モノリスおよび酸素欠損モノリスは、得たい酸窒化モノリスの骨格およびマクロ孔の構成(例えば、マクロ孔の平均径、モノリスの空孔率)に応じて選択すればよい。

【0080】
本発明の酸窒化モノリスの製造方法では、前駆体モノリスと金属窒化物とを容器に収容し、前記容器内を真空雰囲気または不活性ガス雰囲気とし、当該モノリスおよび金属窒化物を加熱する。そして、上記金属窒化物を酸素ゲッターおよび窒素供給源として、前駆体モノリスの骨格を構成する二酸化チタンまたは酸素欠損型酸化チタンから酸素原子を奪うとともに窒素原子を供給する気相還元を行う。

【0081】
金属窒化物は、気相還元時に二酸化チタンまたは酸素欠損型酸化チタンから酸素原子を奪うとともに、これらのチタン化合物に窒素原子を供給できる限り限定されない。金属窒化物は、例えば、窒化チタン(TiN)、窒化ジルコニウム(ZrN)および窒化ハフニウム(HfN)から選ばれる少なくとも1種である。これらの窒化物は、チタンおよびチタンと同じ4族元素に属する元素の窒化物であるために二酸化チタンおよび酸素欠損型酸化チタンに対する還元力が適当であり、気相還元による酸窒化チタンの形成に好ましい。金属窒化物は、これらの窒化物と同程度の安定性(平衡酸素分圧)を有する金属窒化物であってもよい。

【0082】
前駆体モノリスおよび上記金属窒化物を容器に収容し、容器内を真空雰囲気または不活性ガス雰囲気とするのは、気相還元を安定かつ確実に実施するためである。この観点からは、容器は、前駆体モノリスおよび上記金属酸化物を収容した後に密閉できる密閉容器であることが好ましい。真空雰囲気および不活性ガス雰囲気は、本発明の酸素欠損モノリスの製造方法の説明において上述したとおりである。不活性ガス雰囲気の圧力は酸素の分圧が非常に小さい(例えば10-1Pa以下であり、4×10-2Pa以下が好ましい)限り特に限定されない。

【0083】
容器内の真空雰囲気または不活性ガス雰囲気は、前駆体モノリスおよび上記金属窒化物の加熱を開始した時点で既に実現していることが好ましい。換言すれば、前駆体モノリスおよび上記金属窒化物を収容した容器内を真空雰囲気または不活性ガス雰囲気とした後に、当該モノリスおよび金属窒化物を加熱することが好ましい。また、気相還元を実施する間、容器内の真空雰囲気または不活性ガス雰囲気が保たれていることが好ましい。これらにより、一度還元された前駆体モノリスの再酸化が抑制され、窒素化を含む気相還元をより安定かつ確実に実施することができる。容器内の雰囲気の調整には、公知の設備および手法を応用できる。なお、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気を達成した後に、容器を封止して加熱することが好ましい。

【0084】
容器を構成する材料は、本発明の酸素欠損モノリスの製造方法の説明において上述したとおりである。

【0085】
上記金属窒化物が粉末状である、すなわち、粉末状の上記金属窒化物を容器に収容することが好ましく、この場合、上記金属窒化物による、二酸化チタンまたは酸素欠損型酸化チタンから遊離した酸素の捕捉が効率的となるとともに、加熱による上記金属窒化物からの窒素種の気相への移動が効率的となり、窒素化を含む気相還元をさらに安定かつ確実に実施することができる。気相還元の安定性および確実性の観点から、粉末の平均粒径は、例えば0.01μm~100μmであり、10μm~100μmが好ましい。

【0086】
容器に収容する、前駆体モノリスに対する上記金属窒化物の量は、金属窒化物の種類および加熱温度によっても異なるが、前駆体モノリス100重量部に対して、例えば2~100重量部であり、50~100重量部が好ましい。気相還元の時間は、前駆体モノリスのサイズ、形状、空孔率およびマクロ孔の直径、容器に収容する金属窒化物の形態ならびに加熱温度によって異なるが、一日以上必要なことがある。

【0087】
容器に収容した前駆体モノリスおよび上記金属窒化物の加熱方法は特に限定されない。例えば、加熱温度に調整した炉内に、前駆体モノリスおよび上記金属窒化物を収容した容器全体を収容すればよい。炉内を真空にして加熱することも可能である。

【0088】
前駆体モノリスおよび上記金属窒化物の加熱温度は、前駆体モノリスの窒素化を含む気相還元が進行する温度である限り限定されない。具体的な加熱温度は、金属窒化物の種類および気相還元時の容器内の圧力により異なるが、金属窒化物が窒化チタン、窒化ジルコニウムおよび窒化ハフニウムから選ばれる少なくとも1種である場合、例えば950℃以上1200℃以下であり、1000℃以上1200℃以下が好ましい。加熱温度が低すぎると、気相還元が安定して進行しない。加熱温度が高すぎると、単相の酸窒化モノリスが得られなくなる。

【0089】
本発明の酸窒化モノリスの製造方法において、上記金属窒化物は酸素ゲッターおよび窒素供給源となり、前駆体モノリスを構成する二酸化チタンまたは酸素欠損型酸化チタンから酸素原子を奪うとともに、これらのチタン化合物に窒素原子を供給する。このような気相還元により、モノリスの外表面のみならずマクロ孔の内部にまで安定かつ確実に還元反応を進行させることができ、前駆体モノリスの共連続構造を保持した(制御されたマクロ孔構造を保持した)酸窒化モノリスが得られる。

【0090】
得られた酸窒化モノリスは、共連続構造を示す骨格、すなわち連続した骨格を構成する酸窒化チタンに基づく電子伝導性を有する。電子伝導性の程度は、当該骨格を構成する酸窒化チタン自体の物性による。なお、前駆体に二酸化モノリスを用いた場合、電子伝導性の獲得により、白色であった二酸化モノリスの色は、酸窒化モノリスでは黒色に変化する。

【0091】
本発明の酸窒化モノリスの製造方法では、容器内に収容する前駆体モノリスに対する上記金属窒化物の量を上記適度な範囲とし、気相還元の時間を十分に長くとることによって、単相の酸窒化チタンから構成される骨格を有する酸窒化モノリスを形成できる。なお、単相の酸窒化チタンから構成される骨格の形成には、加熱時の熱も寄与していると考えられる。得られた酸窒化モノリスの骨格が単相の酸窒化チタンから構成されているか否かは、当該骨格に対するX線回折(XRD)を用いた結晶構造解析、あるいは当該骨格の物性解析(例えば、磁性解析)によって判断できる。

【0092】
本発明の酸窒化モノリスの製造方法により得た酸窒化モノリスでは、前駆体モノリスのマクロ孔の構造(例えば、直径、形状)は保持されているが、気相還元時の熱により、前駆体モノリスで存在していたメソ孔は失われていることがある。

【0093】
本発明の酸窒化モノリスの製造方法により得た酸窒化モノリスは、前駆体モノリスの骨格およびマクロ孔の構成に応じて、様々な用途に使用可能である。具体的な用途の例は、本発明の酸素欠損モノリスの製造方法の説明において上述した用途と同様である。なお、酸窒化チタンは、酸素欠損型酸化チタンと同様、可視光・紫外光を吸収するワイドギャップ半導体であり、カチオンドープにより強誘電性を付与できる。

【0094】
本発明の酸窒化モノリスの製造方法は、酸窒化モノリスが得られる限り、説明した以外の任意の工程を含むことができる。

【0095】
当該任意の工程は、例えば、粒子(典型的には金属粒子および/またはカーボン粒子)を、マクロ多孔性モノリスの骨格内および/または骨格の表面に配置する工程である。この工程を実施する方法の例、粒子の種類、および粒子の配置により得られる効果などは、酸素欠損モノリスの製造方法の説明において上述したとおりである。ただし、酸素欠損モノリスの製造方法と酸窒化モノリスの製造方法との間で前駆体モノリスおよび得られるモノリスが異なるため、上述した方法の例(1)、(2)および(3)において、前駆体モノリスは「二酸化モノリスまたは酸素欠損モノリス」と、得られるモノリスは「得られた酸窒化モノリス」と解釈する。

【0096】
[マクロ多孔性酸窒化チタンモノリス]
本発明の酸窒化モノリスは、酸窒化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有し、酸窒化チタンに基づく電子伝導性を有する。この共連続構造は、上述のように、マクロ孔の直径の均一性が高く、孤立孔を有さない。電子伝導性の程度は、当該モノリスの骨格を構成する酸窒化チタン自体の物性による。

【0097】
本発明の酸窒化モノリスの骨格は、単相(単一の結晶相)の酸窒化チタンから構成されてもよい。

【0098】
本発明の酸窒化モノリスは、メソ孔を有していてもいなくてもよい。

【0099】
本発明の酸窒化モノリスでは、粒子、例えばカーボン粒子および/または金属粒子、が、当該モノリスの骨格内(メソ孔内)および/または骨格の表面(マクロ孔の壁面)に配置されていてもよい。金属粒子およびカーボン粒子については、酸素欠損モノリスの製造方法の説明において上述したとおりである。

【0100】
本発明の酸窒化モノリスは、例えば、本発明の酸窒化モノリスの製造方法により形成できる。

【0101】
本発明の酸窒化モノリスは、その骨格およびマクロ孔の構成に応じて、様々な用途に使用可能である。具体的な用途の例は、本発明の酸素欠損モノリスと同様である。

【0102】
[マクロ多孔性窒化チタンモノリスの製造方法]
本発明のマクロ多孔性窒化チタンモノリス(以下、窒化モノリス)の製造方法では、前駆体である二酸化モノリス、酸素欠損モノリスまたは酸窒化モノリスと、アンモニアとを使用する。

【0103】
前駆体の一種である二酸化モノリスは、二酸化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有する。前駆体の別の一種である酸素欠損モノリスは、酸素欠損型酸化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有する。前駆体のさらに別の一種である酸窒化モノリスは、酸窒化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有する。これらの共連続構造は、上述のように、マクロ孔の直径の均一性が高く、孤立孔を有さない。酸素欠損型酸化チタンは、本発明の酸素欠損モノリスの製造方法の説明において上述したとおりである。

【0104】
本発明の窒化モノリスの製造方法では、前駆体モノリスの骨格を構成するチタン化合物を、二酸化チタン、酸素欠損型酸化チタンまたは酸窒化チタンから窒化チタンに変化させる。このとき、マクロ多孔性モノリスとしての構造が維持される。これにより、前駆体モノリスにおける骨格とマクロ孔との共連続構造が維持された窒化モノリスが得られる。すなわち、得られた窒化モノリスの共連続構造ではマクロ孔の直径の均一性が高く、孤立孔が存在しない。窒化チタンの粉末を凝集させた(結着させた)成形体では、このようなマクロ孔の制御は達成できない。凝集状態の粉末間に存在する、ランダムなサイズおよび形状を有する空間が観察されるだけである。

【0105】
前駆体モノリスが二酸化モノリスである場合、当該モノリスの骨格を構成する二酸化チタンの結晶系は限定されず、アナターゼ型であってもルチル型であってもよい。前駆体モノリスは、メソ孔を有していてもいなくてもよい。

【0106】
前駆体である二酸化モノリスの形成方法は特に限定されず、本発明の酸素欠損モノリスの製造方法の説明において上述したとおりである。例えば、特許文献1,2に開示の方法、あるいはGeorge Hasegawa et al.文献に開示されている方法に従って二酸化モノリスを形成できる。これらの方法では、マクロ孔の制御の精密性および自由度が高い、例えばマクロ孔の直径の均一性がより高い、二酸化モノリスを形成できる。すなわち、これらの方法により形成した二酸化モノリスの使用によって、マクロ孔の制御の精密性および自由度が高い、例えばマクロ孔の直径の均一性がより高い、窒化モノリスが得られる。このような窒化モノリスによって、例えば、流体の透過性の精密な制御が可能である。

【0107】
前駆体である酸素欠損モノリスの形成方法は特に限定されず、例えば、本発明の酸素欠損モノリスの製造方法に従って形成できる。前駆体である酸窒化モノリスの形成方法は特に限定されず、例えば、本発明の酸窒化モノリスの製造方法に従って形成できる。これらの方法では、マクロ孔の制御の精密性および自由度が高い、例えばマクロ孔の直径の均一性がより高い、酸素欠損モノリスまたは酸窒化モノリスを形成できる。すなわち、当該方法により形成した酸素欠損モノリスまたは酸窒化モノリスの使用によって、マクロ孔の制御の精密性および自由度が高い、例えばマクロ孔の直径の均一性がより高い、窒化モノリスが得られる。

【0108】
本発明の窒化モノリスの製造方法では、例えば、前駆体モノリスとして二酸化モノリスを、より具体的には、二酸化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有する二酸化モノリスを、アンモニアを含む雰囲気においてアンモニアの熱分解温度以上で熱処理してもよい。

【0109】
前駆体である二酸化モノリス、酸素欠損モノリスおよび酸窒化モノリスは、得たい窒化モノリスの骨格およびマクロ孔の構成(例えば、マクロ孔の平均径、モノリスの空孔率)に応じて選択すればよい。

【0110】
本発明の窒化モノリスの製造方法では、前駆体モノリスを、アンモニアを含む雰囲気においてアンモニアの熱分解温度以上で熱処理する。そして、アンモニアの熱分解により生成した反応性水素および窒素を酸素ゲッターおよび窒素供給源として、前駆体モノリスの骨格を構成する二酸化チタン、酸素欠損型酸化チタンまたは酸窒化チタンから酸素原子を奪うとともに窒素原子を供給する気相還元を行う。

【0111】
前駆体モノリスを熱処理する雰囲気はアンモニアを含む雰囲気であればよく、例えば、アンモニア雰囲気である。当該雰囲気における酸素の分圧は、非常に小さい(例えば10-1Pa以下、好ましくは4×10-2Pa以下)ことが好ましい。当該雰囲気の圧力は特に限定されない。アンモニア雰囲気は、例えば、前駆体モノリスを容器に収容し、当該容器にアンモニアを導入して密閉することにより、または当該容器に連続的にアンモニアを導入することにより実現できる。容器へのアンモニアの導入および容器内の雰囲気の調整には、公知の設備および手法を応用できる。

【0112】
容器を構成する材料は、本発明の酸素欠損モノリスの製造方法の説明において上述したとおりである。

【0113】
熱処理温度は、アンモニアの熱分解温度(400~500℃)以上であり、例えば、600℃以上である。本発明の窒化モノリスの製造方法では、アンモニアの熱分解による反応性水素および反応性窒素の生成を利用して、酸素ゲッターだけではなく窒素原子の供給源としてもアンモニアを機能させている。効率的な気相還元を実施する観点からは、熱処理温度は1000℃以上が好ましい。

【0114】
熱処理の方法は特に限定されず、例えば、熱処理温度に調整した炉内に、前駆体モノリスが収容されるとともにアンモニアを密閉した、またはアンモニアが連続的に流されている容器を収容すればよい。

【0115】
熱処理時間(気相還元の時間)は、前駆体モノリスのサイズ、形状、空孔率およびマクロ孔の直径ならびに熱処理温度によって異なるが、数時間から一日以上必要なことがある。

【0116】
本発明の窒化モノリスの製造方法において、熱処理の熱により熱分解したアンモニアが酸素ゲッターおよび窒素供給源となって、前駆体モノリスを構成する二酸化チタン、酸素欠損型酸化チタンまたは酸窒化チタンから酸素原子を奪うとともに、これらのチタン化合物に窒素原子を供給する。このような気相還元により、モノリスの外表面のみならずマクロ孔の内部にまで安定かつ確実に還元反応を進行させることができ、前駆体モノリスの共連続構造を保持した(制御されたマクロ孔構造を保持した)窒化モノリスが得られる。また、窒化チタンは非常に融点および硬度が高く、成形および微細加工が難しい材料であるが、本発明の窒化モノリスの製造方法では、このような成形および微細加工が難しい材料から構成された骨格を有するマクロ多孔性モノリスを比較的簡便に製造できる。

【0117】
得られた窒化モノリスは、共連続構造を示す骨格、すなわち連続した骨格を構成する窒化チタンに基づく電子伝導性を有する。電子伝導性の程度は、当該骨格を構成する窒化チタン自体の物性による。なお、前駆体に二酸化モノリスを用いた場合、電子伝導性の獲得により、白色であった二酸化モノリスの色は、窒化モノリスでは茶褐色に変化する。

【0118】
本発明の窒化モノリスの製造方法により得た窒化モノリスでは、前駆体モノリスのマクロ孔の構造(例えば、直径、形状)は保持されているが、気相還元時の熱により、前駆体モノリスで存在していたメソ孔は失われていることがある。また、これとは逆に、Tiとアンモニアとが反応した場合など、前駆体モノリスに存在しなかったメソ孔が窒化モノリスにおいて現れることがある。

【0119】
本発明の窒化モノリスの製造方法により得た窒化モノリスは、前駆体モノリスの骨格およびマクロ孔の構成に応じて、様々な用途に使用可能である。具体的な用途の例は、本発明の酸素欠損モノリスの製造方法の説明において上述した用途と同様である。なお、窒化チタンは、キャパシタ、触媒(アルキンへの水素添加によるシス-alkene化)、触媒担体(メタノール酸化)としての用途が期待されており、また、転移温度約5Kの超伝導体でもある。

【0120】
本発明の窒化モノリスの製造方法は、窒化モノリスが得られる限り、説明した以外の任意の工程を含むことができる。

【0121】
当該任意の工程は、例えば、粒子(典型的には金属粒子および/またはカーボン粒子)を、マクロ多孔性モノリスの骨格内および/または骨格の表面に配置する工程である。この工程を実施する方法の例、粒子の種類、および粒子の配置により得られる効果などは、酸素欠損モノリスの製造方法の説明において上述したとおりである。ただし、酸素欠損モノリスの製造方法と窒化モノリスの製造方法との間で前駆体モノリスおよび得られるモノリスが異なるため、上述した方法の例(1)、(2)および(3)において、前駆体モノリスは「二酸化モノリス、酸素欠損モノリスまたは酸窒化モノリス」と、得られるモノリスは「得られた窒化モノリス」と解釈する。

【0122】
[マクロ多孔性窒化チタンモノリス]
本発明の窒化モノリスは、窒化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有し、窒化チタンに基づく電子伝導性を有する。この共連続構造は、上述のように、マクロ孔の直径の均一性が高く、孤立孔を有さない。電子伝導性の程度は、当該モノリスの骨格を構成する窒化チタン自体の物性による。

【0123】
本発明の窒化モノリスの骨格は、単相(単一の結晶層)の窒化チタンから構成されてもよい。

【0124】
本発明の窒化モノリスは、メソ孔を有していてもいなくてもよい。

【0125】
本発明の窒化モノリスでは、粒子、例えばカーボン粒子および/または金属粒子、が、当該モノリスの骨格内(メソ孔内)および/または骨格の表面(マクロ孔の壁面)に配置されていてもよい。金属粒子およびカーボン粒子については、酸素欠損モノリスの製造方法の説明において上述したとおりである。

【0126】
本発明の窒化モノリスは、例えば、本発明の窒化モノリスの製造方法により形成できる。

【0127】
本発明の窒化モノリスは、その骨格およびマクロ孔の構成に応じて、様々な用途に使用可能である。具体的な用途の例は、本発明の酸素欠損モノリスと同様である。
【実施例】
【0128】
[前駆体モノリスの作製]
前駆体である二酸化モノリスを、George Hasegawa et al.文献に開示の方法に従って作製した。具体的には、以下の手順で作製した。
【実施例】
【0129】
チタンプロポキシド(チタン(IV)プロポキシド)10mLと、1-プロパノール7.0mLと、チタンプロポキシドの加水分解性を抑制するキレート剤としてエチルアセチルアセトネート5.0mLとをガラス容器内でよく混合して、均一な黄色の溶液を得た。次に、得られた溶液に分子量1万のポリエチレングリコール0.875gを加え、溶液の温度を60℃に昇温して、加えたポリエチレンオキシドを当該溶液に完全に溶解させた。次に、溶液の温度を40℃に下げ、チタンプロポキシドの加水分解性を抑制する強酸塩として濃度1Mの硝酸アンモニウム溶液2.0mLを、溶液を強く攪拌しながらゆっくりと加えた。次に、さらなる攪拌を3分間続けた後、得られた均一な溶液を40℃で24時間放置して、湿潤ゲル(wet gel)を得た。このサンプルの典型的なゲル化時間は、30分から1時間であった。
【実施例】
【0130】
次に、容器を60℃に昇温し、溶媒をエタノールに置換して8時間以上放置した後、混合比が異なるエタノールと水との5種類の混合溶液により溶媒を次々に置換した。エタノール/水混合溶液は、置換に用いた順に、エタノール/水=9/1、エタノール/水=8/2、エタノール/水=7/3、エタノール/水=1/1およびエタノール/水=3/7(いずれも重量比)とした。溶媒の置換と置換との間隔は8時間以上とした。次に、溶媒を水に置換して60℃で24時間放置した後、40℃で48時間乾燥させて、乾燥ゲル(dry gel)を得た。
【実施例】
【0131】
次に、得られた乾燥ゲルを600℃で焼成して残留有機物を除去し、二酸化チタンから構成される骨格を有する二酸化モノリスAを得た。得られた二酸化モノリスAの走査型電子顕微鏡(SEM)による観察像を図1に、水銀圧入法による細孔分布測定結果を図2に、骨格を構成する材料のXRD回折ピークを図3に、それぞれ示す。図2,3において「TiO」と示されているものが、二酸化モノリスAに対する結果である。なお、図3において、破線は各チタン酸化物の理論上の回折ピーク、実線は二酸化モノリスAおよび実施例1で作製した各酸素欠損モノリスに対して実際に測定された回折ピークである。図1~3に示す結果から、二酸化モノリスAが、アナターゼ型二酸化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有するマクロ多孔性モノリスであることが確認された。また、図2に示す結果から、二酸化モノリスAにおけるマクロ孔の直径の均一性が高いことが確認された。
【実施例】
【0132】
なお、モノリスAをはじめ、これ以降作製したモノリスの細孔分布は、特に記載が無い限り、細孔分布測定装置(Quantachrome Instruments社製、Pore Master 60-GT)を用い、0.05~50μmの範囲を測定した。また、モノリスAをはじめ、これ以降作製したモノリスの骨格を構成する材料に対するXRD回折ピークは、広角X線回折装置(Bruker社製、D8 Advance)を用い、回折角2θにして10~60度の範囲を測定した。その際、モノリスの骨格を粉砕して粉末とした後、得られた粉末を粉末試料用のセルに充填して、反射法によりX線回折測定を行った。
【実施例】
【0133】
(実施例1:酸素欠損モノリスの作製)
上記のように作製した二酸化モノリスAから酸素欠損モノリスを作製した。具体的には、以下の手順で作製した。
【実施例】
【0134】
二酸化モノリスAとジルコニウム箔(平均厚さ100μm)とを石英管に収容し、石英管を密閉した。石英管に収容したジルコニウム箔の量は、二酸化モノリス骨格を構成する二酸化チタンを還元して酸素欠損型酸化チタンに変化させる化学量論比上の量の5~10重量%過剰な量とした。サンプルは、4種類の酸素欠損型酸化チタン(Ti、Ti、TiおよびTi11)骨格の形成を目的として、ジルコニウム箔の量を変えた4種類を準備した。次に、石英管の内部を圧力4×10-2Paの真空とし、これ以降、石英管に気体の出入りが無いように封止状態とした。次に、電気炉に容器全体を入れ、当該炉を昇温速度100℃毎時で昇温し、1050℃(TiおよびTi11モノリスの作製時)から1150℃(TiおよびTiモノリスの作製時)℃で24時間、加熱処理を行った。加熱処理後、炉内の温度を降温速度100℃毎時で室温まで冷却した後、電気炉から石英管を取り出し、石英管が自然に冷却するのを待ってから封止を破り、内部のモノリスを取り出した。加熱処理前は白色であったモノリスAが、加熱処理後は黒色に変化していた。
【実施例】
【0135】
このようにして作製した4種類のモノリスのSEMによる観察像を図4に、水銀圧入法による細孔分布測定結果を図2に、骨格を構成する材料のXRDによる回折ピークを図3に、それぞれ示す。図2,3において「Ti」などと示されているものが、実施例1で作製した各酸素欠損モノリスに対する結果である。
【実施例】
【0136】
図3に示すように、得られた4種類のモノリスは、それぞれ4種類の酸素欠損型酸化チタン(Ti、Ti、TiおよびTi11)から構成される骨格を有していた。また、回折ピークがシャープであるとともに理論上の回折角2θとほぼ同一の位置に検出されており、他の結晶相に基づく回折ピークが観察されなかったことから、単相の酸素欠損型酸化チタンから骨格が構成されていることが確認された。図2,4に示す結果からは、得られた4種類の各モノリスが、骨格とマクロ孔との共連続構造を有するマクロ多孔性モノリスであり、マクロ孔の直径の高い均一性を含め、前駆体であるモノリスAの構造を維持していることが確認された。
【実施例】
【0137】
次に、作製した4種類のモノリスのうち、Tiから構成される骨格を有する酸素欠損モノリス(Tiモノリス)について電気抵抗率ρ(Ω・cm)の温度依存性を評価した。評価結果を図5に示す。図5に示すように、当該モノリスは室温における電気抵抗率が1.5x10-2Ω・cmと非常に低く、室温からの降温に伴って電気抵抗率が減少するという金属的挙動を示した後、単相のTiに対して従来報告されていたように、約150Kで金属-半導体体転移を起こした。このことから、作製したTiモノリスが、単相のTiから構成される骨格を有していることが確認された。なお、図5において右肩に示されているグラフは、大きく示されているグラフの拡大図である。モノリスの電気抵抗率ρは、得られたモノリスの一部を切り取って、切り取った破片を数ミリ角の直方体に成形した後、Quantum Design社製Physical Property Measurement System を用いて4端子法で測定した。
【実施例】
【0138】
同様に測定した、他の3種類のモノリスに対する電気抵抗率ρの温度依存性を、Tiモノリスにおける電気抵抗率ρの温度依存性と併せて図6(a)、(b)に示す。図6(a)、(b)に示すように、常温(300K)付近における電気抵抗率ρは、Tiモノリスで5.6×10Ω・cm、Tiモノリスで1.9×10Ω・cm、Ti11モノリスで2.3×10-2Ω・cmであった。
【実施例】
【0139】
これとは別に、作製した4種類のモノリスに対して、その金属-半導体体転移温度をデザイン社製、超伝導量子干渉計SQUIDにて評価した(MPMSにて測定)。これにより、Ti11モノリスは130K付近、Tiモノリスは150K付近、Tiモノリスは450K付近、Tiモノリスは400-600K付近で金属-半導体体転移を起こすことが確認された。これらの転移温度は、単相の各酸素欠損型酸化チタンに対して従来報告されている転移温度とほぼ同様であり、各酸素欠損モノリスが、単相の各酸素欠損型酸化チタンから構成される骨格を有していることが確認された。
【実施例】
【0140】
(実施例2)
乾燥ゲルの焼成温度を800℃とした以外は上述した前駆体モノリスの作製方法に従って、二酸化モノリスBを得た。この二酸化モノリスBに対して、SEMによる観察、水銀圧入法による細孔分布測定、および骨格を構成する材料のXRD回折ピークの評価を行った。図7Aに、二酸化モノリスBの骨格を構成する材料のXRD回折ピークを示す。図7Aにおいて、「TiO」と示されているものが、二酸化モノリスBに対する結果である。なお、図7Aにおいて、2つの破線のうち下方の破線はルチル型TiOの理論上の回折ピーク、実線は二酸化モノリスBおよび当該モノリスを気相還元して得た酸素欠損モノリスに対して実際に測定された回折ピークである。これらの評価結果から、二酸化モノリスBがルチル型二酸化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有するマクロ多孔性モノリスであること、二酸化モノリスAと同様に、二酸化モノリスBにおけるマクロ孔の直径の均一性が高いことが確認された。
【実施例】
【0141】
次に、上記のように作製した二酸化モノリスBから酸素欠損モノリスを作製した。具体的には、実施例1と同様に、4種類の酸素欠損型酸化チタン(Ti、Ti、TiおよびTi11)骨格の形成を目的として、ジルコニウム箔の量を変えた(実施例1と同一とした)4種類のサンプルR1~R4を準備し、石英管を用いて気相還元を行った。R1,R2,R3およびR4は、それぞれTi11、Ti、TiおよびTi骨格の形成を目的としたサンプルである。
【実施例】
【0142】
このようにして作製した4種類のモノリスに対して、SEMによる観察および水銀圧入法による細孔分布測定を行ったところ、これらのモノリスは骨格とマクロ孔との共連続構造を有するマクロ多孔性モノリスであり、マクロ孔の直径の高い均一性を含め、前駆体である二酸化モノリスBの構造を維持していることが確認された。
【実施例】
【0143】
また、このようにして作製した4種類のモノリスについて、その骨格を構成する材料のXRDによる回折ピークを図7Aに示す。図7Aにおいて「R1」などと示されているものが、実施例2で作製した各酸素欠損モノリスに対する結果である。
【実施例】
【0144】
図7Aに示すように、得られた4種類のモノリスは単相ではなく、2種類以上の酸素欠損型酸化チタンから構成される骨格を有していることが確認された。R3およびR4の回折プロファイルにおける「星印」は、Tiに由来する回折ピークを示す。すなわち、R3およびR4は、それぞれTiおよびTi骨格の形成を目的としたサンプルであったが、いずれもTiおよびTiの回折ピーク(R2の破線として、Tiの理論上の回折ピークを示す)が検出された。R2はTi骨格の形成を目的としたサンプルであったが、Tiの形成は僅かであり、Tiの回折ピークが支配的であった。R1はTi11骨格の形成を目的としたサンプルであったが、回折角2θにして20~30度の範囲を拡大した図7Bに示すように、4種類の酸素欠損型酸化チタンから構成される骨格を有していた。
【実施例】
【0145】
(実施例3:酸窒化モノリスの作製)
上記のように作製した二酸化モノリスAから、酸窒化モノリスを作製した。具体的には、以下の手順で作製した。
【実施例】
【0146】
二酸化モノリスAと窒化ジルコニウム粉末(平均粒径100μm)とを石英管に収容し、石英管を密閉した。石英管に密閉した窒化ジルコニウム粉末の量は、二酸化チタン100重量部に対して50重量部とした。次に、石英管の内部を圧力4x10-2Paの真空とし、これ以降、石英管に気体の出入りが無いように封止状態とした。次に、1150℃に保持した電気炉に容器全体を入れ、24時間、加熱処理を行った。加熱処理後、電気炉から石英管を取り出し、降温速度100℃毎時で室温まで冷却した後、封止を破り、内部のモノリスを取り出した。加熱処理前は白色であったモノリスAが、加熱処理後は黒色に変化していた。
【実施例】
【0147】
このようにして作製したモノリスのSEMによる観察像を図8に、骨格を構成する材料のXRDによる回折ピークを図9に、それぞれ示す。図9において「Ti4.90.1」と示されているものが、実施例3で作製した酸窒化モノリスに対する結果である。
【実施例】
【0148】
図9に示すように、得られたモノリスは酸窒化チタン(Ti4.90.1)から構成される骨格を有していた。また、結晶の回折ピークがシャープであるとともに理論上の回折角2θ(図9において破線で示す)とほぼ同一の位置に検出されており、他の結晶相に基づく回折ピークが観察されなかったことから、単相のTi4.90.1から骨格が構成されていることが確認された。図8に示す結果から、得られたモノリスが、骨格とマクロ孔との共連続構造を有する多孔性モノリスであることが確認された。また、図8に示される骨格およびマクロ孔の様子から、ならびに実施例1の結果を併せて考えると、得られたモノリスは、マクロ孔の直径の高い均一性を含め、前駆体であるモノリスAの構造を維持していると推定された。
【実施例】
【0149】
(実施例4:窒化モノリスの作製)
上記のように作製した二酸化モノリスAから、窒化モノリスを作製した。具体的には、以下の手順で作製した。
【実施例】
【0150】
アンモニアを流入させるための管体を接続した内容積4.5x10mLの石英管に二酸化モノリスAを収容した。次に、石英管の内部にアンモニアを流量200mL/分で流しながら、1000℃に保持した電気炉に容器全体を入れ、24時間、熱処理を行った。熱処理後、電気炉から石英管を取り出し、降温速度100℃毎時で室温まで冷却した後、石英管内部のモノリスを取り出した。熱処理前は白色であったモノリスAが、熱処理後は茶褐色に変化していた。
【実施例】
【0151】
このようにして作製したモノリスのSEMによる観察像を図10に、骨格を構成する材料のXRDによる回折ピークを図9に、それぞれ示す。図9において「TiN」と示されているものが、実施例4で作製した窒化モノリスに対する結果である。
【実施例】
【0152】
図9に示すように、得られたモノリスは窒化チタン(TiN)から構成される骨格を有していた。また、結晶の回折ピークがシャープであるとともに理論上の回折角2θ(図9において破線で示す)とほぼ同一の位置に検出されており、他の結晶相に基づく回折ピークが観察されなかったことから、単相のTiNから骨格が構成されていることが確認された。図10に示す結果から、得られたモノリスが、骨格とマクロ孔との共連続構造を有する多孔性モノリスであることが確認された。また、図10に示される骨格およびマクロ孔の様子から、ならびに実施例1の結果を併せて考えると、得られたモノリスは、マクロ孔の直径の高い均一性を含め、前駆体であるモノリスAの構造を維持していると推定された。
【実施例】
【0153】
これとは別に、二酸化モノリスAの代わりに実施例1で作製したTiモノリスを用いて、アンモニアによる同様の熱処理(気相還元)を行ったところ、図10に示すように、二酸化モノリスAを用いた場合と同様のTiNモノリスが得られた。
【実施例】
【0154】
(実施例5:カーボン粒子が配置された酸素欠損モノリスの作製)
カーボン粒子が骨格内および骨格の表面に配置された二酸化モノリスから、カーボン粒子が骨格内および骨格の表面に配置された酸素欠損モノリスを作製した。具体的には、以下の手順で作製した。
【実施例】
【0155】
二酸化モノリスAの作製方法に従って、湿潤ゲルを得た。得られたゲルに対して、二酸化モノリスAの作製と同様に、溶媒置換および水中60℃での24時間の放置を実施した後、当該ゲルを、カーボン粒子の前駆体であるポリアクリル酸の水溶液(濃度10重量%)に浸漬し、その後、40℃で48時間乾燥させて、乾燥ゲルを得た。次に、得られた乾燥ゲルを窒素気流中(流量:1L/分)600℃で2時間焼成して、二酸化チタンから構成される骨格を有し、当該骨格内および骨格の表面にカーボン粒子が配置された二酸化モノリスCを得た。得られた二酸化モノリスCのSEMによる観察像を図11に、窒素吸脱着測定法による窒素吸脱着等温線測定結果を図12に、同測定法による細孔分布測定結果を図13にそれぞれ示す。図11~13において、「TiO-C」と示されているものが二酸化モノリスCに対する結果である。図12,13において、「TiO」と示されているものが二酸化モノリスAに対する結果である。実施例5における窒素吸脱着測定は、窒素吸脱着測定装置(日本ベル社製、BELSORP-mini II)を用いて行った。
【実施例】
【0156】
図11に示す結果から、二酸化モノリスCが、二酸化モノリスAと同様に、二酸化チタンから構成される骨格とマクロ孔との共連続構造を有するマクロ多孔性モノリスであることが確認された。図12,13に示す結果から、二酸化モノリスCでは、二酸化モノリスAと比較して、マイクロ孔およびメソ孔が増加していることが確認された。マイクロ孔の増加は、図12に示すグラフにおいて、相対圧力p/p0が小さい領域で吸着容積Vaが増加していることから確認される。これらの増加分は、カーボン粒子に起因すると推定され、カーボン粒子が二酸化モノリスC内に配置されていることが確認された。より具体的には、マイクロ孔の増加はカーボン粒子自体が有する細孔によると推定される。メソ孔については、骨格内にカーボン粒子が配置されることにより、物理的障害からチタン化合物の結晶粒のサイズが変化して、当該結晶粒間の空隙に相当するメソ孔が増加したと推定される。前駆体としてポリアクリル酸の代わりにポリビニルピロリドンを使用した場合においても、同様の二酸化モノリスCを作製することができた。
【実施例】
【0157】
次に、上記のように作製した二酸化モノリスCから、Tiにより骨格が構成され、骨格内および骨格の表面にカーボン粒子が配置された酸素欠損モノリスを作製した。具体的には、以下の手順で作製した。
【実施例】
【0158】
二酸化モノリスCとジルコニウム箔(平均厚さ100μm)とを石英管に収容し、石英管を密閉した。石英管に収容したジルコニウム箔の量は、二酸化モノリス骨格を構成する二酸化チタンを還元してTiに変化させる化学量論比上の量の10重量%過剰な量とした。次に、石英管の内部を圧力4×10-2Paの真空とし、これ以降、石英管に気体の出入りが無いように封止状態とした。次に、電気炉に容器全体を入れ、当該炉を昇温速度100℃毎時で昇温し、1050℃で24時間、加熱処理を行った。加熱処理後、炉内の温度を降温速度100℃毎時で室温まで冷却した後、電気炉から石英管を取り出し、石英管が自然に冷却するのを待ってから封止を破り、内部のモノリスを取り出した。
【実施例】
【0159】
このようにして作製したTiモノリスのSEMによる観察像を図11に、窒素吸脱着測定法による窒素吸脱着等温線および細孔分布測定結果をそれぞれ図12および図13に示す。図11~13において、「Ti-C」と示されているものが二酸化モノリスCから作製したTiモノリスに対する結果である。図12,13において、「Ti」と示されているものが、実施例1で作製したTiモノリスに対する結果である。実施例5で作製した酸素欠損モノリスの骨格がTiから構成されていることは、別途、実施例1と同様のXRD測定により確認した。
【実施例】
【0160】
図11に示すように、得られたTiモノリスが、骨格とマクロ孔との共連続構造を有するマクロ多孔性モノリスであり、マクロ孔の直径の高い均一性を含め、前駆体であるモノリスCの構造を維持していることが確認された。なお、図11のTiモノリスの骨格表面には微細な凹凸が観察されるが、これはカーボン粒子の存在によってTi結晶の成長が物理的に阻害され、隣り合う結晶粒が融合することなく各結晶粒が表面に観察されるようになった結果と推定された。図12,13に示すように、実施例1で作製したTiモノリスではメソ孔がほとんど確認できないのに対し、実施例5で作製したTiモノリスでは、直径がメソ孔に相当する細孔が確認され、当該モノリスのBET法による比表面積は98m-1であった。確認された細孔は、カーボン粒子の配置によって形成されたと考えられる。
【実施例】
【0161】
作製したカーボン配置Tiモノリスに対する熱重量(TG)測定結果を図14に示す。TG測定は、測定対象であるモノリスを乳鉢で粉砕して得たサンプル(重量1.86mg)に対して、差動型示差熱天秤(リガク社製、Thermo Plus EVO TG8120)を用い、エアフロー100mL/分および昇温速度5℃/分の測定条件にて行った。図14に示すTG曲線について、温度100℃までの重量減少はモノリスに吸着した水の蒸発に由来し、100℃から400℃における重量減少は、モノリスに残留する有機物の熱分解(燃焼)に由来し、400℃から520℃における重量増加は、モノリス骨格を構成するTiのTiOへの酸化に由来し、520℃以上の重量減少は、モノリス内のカーボン粒子の燃料に由来する、と考えられる。このTG曲線から見積もったモノリス内のカーボン粒子の量は、モノリス全体の重量のおよそ9重量%であった。
【実施例】
【0162】
作製したカーボン配置Tiモノリスに対するラマン分光分析の測定結果を図15に示す。ラマン分光は、ラマン顕微鏡(堀場製作所社製、XploRA)を用い、レーザー波長532nm、フィルター1%、グリッド2400T、露光時間2秒、積算回数20回の測定条件にて行った。図15に示すように、波数1340cm-1付近にカーボンのDバンド(spカーボン)および波数1600cm-1付近にカーボンのGバンド(spカーボン)が測定され、Tiモノリスへのカーボンの配置が確認された。
【実施例】
【0163】
(実施例6)
実施例6では、マクロ多孔性モノリスの電極としての使用を考慮し、電気化学的な当該モノリスの安定性、および当該モノリスの電極としての具体的な応用を確認した。実施例6における、マクロ多孔性モノリスにより構成される電極(以下、モノリス電極)の電気化学特性は、ポテンショスタット/ガルバノスタット(北斗電工社製、HSV-110)および三極式セルを用いて評価した。
【実施例】
【0164】
実施例1で作製したTiモノリスを評価対象として準備した。硫酸電解液(濃度0.1mol/L)中における当該モノリス電極のサイクリックボルタモグラム(CV)を、図16および17に示す。CVの評価は、Tiモノリス電極を作用極に配置し、対極に白金線を、参照極にAg/AgCl参照電極(ALS社製)をそれぞれ使用して実施した。図16に示すように、Tiモノリス電極は、高い水素過電圧および酸素過電圧を示し、硫酸電解液中において広い電位窓を有することが確認された。図17は、カットオフ電位を0Vから2.2Vとしたときの2サイクル目および100サイクル目のCV曲線を示す。図17に示すように、2サイクル目と100サイクル目とにおいて電流値の変化がほとんどないことから、Tiモノリス電極は優れた安定性を示すことが確認された。
【実施例】
【0165】
次に、Tiモノリスの電極としての応用を、当該モノリスに白金触媒粒子を担持させて確認した。モノリス電極への白金触媒の担持は、電解メッキにより行った。具体的には、濃度0.5mmol/Lの塩化白金酸水溶液を準備し、これを三極式セルに収容した後、実施例1で作製したTiモノリスをセルの作用極に、白金線を対極に、Ag/AgCl参照電極(ALS社製)を参照極にそれぞれ配置した。次に、当該セルに対して、-0.5Vの定電位保持を10分間実施した。図18に、電界メッキ後のモノリス電極のSEM観察像を示す。図18に示すように、直径数百ナノメートル程度の白金粒子が、モノリス骨格の表面に無数に担持されている状態が確認できた。
【実施例】
【0166】
(応用1:水の電気分解)
白金粒子を担持させたTiモノリス電極の硫酸電解液(濃度0.1mol/L)中におけるCV曲線を図19に示す。CVの評価は、白金担持モノリス電極を作用極に配置し、対極に白金線を、参照極にAg/AgCl参照電極(ALS社製)をそれぞれ使用して、三極式セルにおいて実施した。カットオフ電位は-0.7Vから2.0Vとした。図19に示すように、モノリスに担持された白金粒子による触媒作用により、およそ1.5V以上の電位で酸素の発生に起因する電流が、およそ-0.3V以下の電位で水素の発生に起因する電流が流れることが確認された。
【実施例】
【0167】
(応用2:メタノールの酸化)
白金を担持させたTiモノリス電極のメタノール硫酸水溶液(メタノール濃度1.0mol/L、硫酸濃度0.1mol/L)中におけるリニアスイープボルタンメトリー(LSV)曲線を図20に示す。LSVの評価は、白金担持モノリス電極を作用極に配置し、対極に白金線を、参照極にAg/AgCl参照電極(ALS社製)をそれぞれ使用して、三極式セルにおいて実施した。走査は0.40Vから1.30Vまでとした。比較のために、白金担持前のTiモノリスを参照極に使用した対比実験を併せて実施した。評価結果を図20に示す。図20において、実線が白金担持モノリス電極のLSV曲線を示し、点線が白金粒子を担持していないモノリス電極のLSV曲線を示す。
【実施例】
【0168】
図20に示すように、白金担持前のモノリス電極ではメタノールの酸化に起因する電流が明確に確認できなかったのに対して、白金担持モノリス電極では、0.90V以上の電位において、メタノールの酸化に起因する電流値の上昇が確認できた。このように、触媒をモノリス内に配置することによって、反応性電極をはじめとして、様々な用途に応用できることが確認された。
【実施例】
【0169】
本発明は、その意図および本質的な特徴から逸脱しない限り、他の実施形態に適用しうる。この明細書に開示されている実施形態は、あらゆる点で説明的なものであってこれに限定されない。本発明の範囲は、上記説明ではなく添付したクレームによって示されており、クレームと均等な意味および範囲にあるすべての変更はそれに含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明の製造方法により形成したマクロ多孔性チタン化合物モノリスは、電池用電極、ガスセンサ用電極などの電気化学素子、光触媒などの触媒、電子デバイスなどに幅広く使用できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7A】
6
【図7B】
7
【図8】
8
【図9】
9
【図10】
10
【図11】
11
【図12】
12
【図13】
13
【図14】
14
【図15】
15
【図16】
16
【図17】
17
【図18】
18
【図19】
19
【図20】
20