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明細書 :波長変換組成物及び波長変換フィルム及び太陽電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5999450号 (P5999450)
登録日 平成28年9月9日(2016.9.9)
発行日 平成28年9月28日(2016.9.28)
発明の名称または考案の名称 波長変換組成物及び波長変換フィルム及び太陽電池
国際特許分類 C09K  11/06        (2006.01)
H01L  31/055       (2014.01)
H01L  31/048       (2014.01)
FI C09K 11/06
H01L 31/04 622
H01L 31/04 560
請求項の数または発明の数 17
全頁数 20
出願番号 特願2013-538557 (P2013-538557)
出願日 平成24年10月10日(2012.10.10)
国際出願番号 PCT/JP2012/076236
国際公開番号 WO2013/054818
国際公開日 平成25年4月18日(2013.4.18)
優先権出願番号 2011224206
2012079313
優先日 平成23年10月11日(2011.10.11)
平成24年3月30日(2012.3.30)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成27年6月5日(2015.6.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
発明者または考案者 【氏名】伊原 博隆
【氏名】神徳 啓邦
個別代理人の代理人 【識別番号】100099508、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 久
【識別番号】100195327、【弁理士】、【氏名又は名称】森 博
【識別番号】100197642、【弁理士】、【氏名又は名称】南瀬 透
【識別番号】100093285、【弁理士】、【氏名又は名称】久保山 隆
【識別番号】100182567、【弁理士】、【氏名又は名称】遠坂 啓太
審査官 【審査官】西澤 龍彦
参考文献・文献 国際公開第2011/096506(WO,A1)
特開2011-009536(JP,A)
特開2001-352091(JP,A)
特開平10-261811(JP,A)
山田泰輔,機能性オルガノゲル~ピレン/ジメチルアニリン含有脂質によるExcimerおよびExciplex発光挙動からの分子配,化学関連支部合同九州大会講演予稿集,1998年 7月10日,35巻,154頁
宮本皓史,グルタミド脂質超構造体を利用したピレンエキサイマ-の形成制御,高分子学会予稿集,2008年 5月 8日,57巻1号,1PD154頁
宮本皓史,グルタミド脂質による機能性分子ゲルの精密構築,化学関連支部合同九州大会・外国人研究者交流国際シンポジウム講演予稿集,2009年 7月11日,46巻,286頁
佐川 尚,蛍光性分子集合体を用いたエネルギー移動材料の開発と有機薄膜太陽電池への応用,日本化学会講演予稿集,2007年 3月12日,87巻1号,77頁
調査した分野 C09K 11/00- 11/89
H01L 31/00- 31/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
蛍光性分子と自己集積性分子とが結合した自己集積性蛍光体を、ベースポリマー中に含み、前記蛍光性分子が、アントラセン誘導体であることを特徴とする波長変換組成物。
【請求項2】
前記アントラセン誘導体が、9-(4-ヒドロキシフェニル)アントラセン、9-(4-アミノフェニル)アントラセン及び9,10-ジフェニルアントラセン-1-アミンからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の波長変換組成物。
【請求項3】
前記自己集積性蛍光体が、ベースポリマー中で会合して配向し、エキサイマを生成している請求項1又は2に記載の波長変換組成物。
【請求項4】
前記自己集積性蛍光体が、ベースポリマー中で会合して配向性会合体を形成している請求項1~3のいずれかに記載の波長変換組成物。
【請求項5】
前記配向性会合体が、繊維状会合体である請求項4に記載の波長変換組成物。
【請求項6】
前記ベースポリマー100質量部に対する前記自己集積性蛍光体の濃度が、蛍光性分子換算で0.0001質量部以上10質量部以下である請求項1~5のいずれかに記載の波長変換組成物。
【請求項7】
前記ベースポリマー100質量部に対する前記自己集積性蛍光体の濃度が、蛍光性分子換算で0.0001質量部以上2質量部以下である請求項6に記載の波長変換組成物。
【請求項8】
前記自己集積性分子が、アミノ酸誘導体、多環芳香族誘導体、コレステロール誘導体及び糖誘導体から選ばれる1種以上である請求項1~7のいずれかに記載の波長変換組成物。
【請求項9】
前記自己集積性分子が、ジドデシル化グルタミド、ジブチル化グルタミド及びジドデシル化リジンから選ばれる1種以上である請求項1~7のいずれかに記載の波長変換組成物。
【請求項10】
前記自己集積性分子が、分散基を有する請求項1~9のいずれかに記載の波長変換組成物。
【請求項11】
前記蛍光性分子と自己集積性分子とが結合した自己集積性蛍光体以外の蛍光物質をさらに含有することを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の波長変換組成物。
【請求項12】
前記蛍光物質が、前記蛍光性分子と自己集積性分子とが結合した自己集積性蛍光体の発光した光を吸収し、より長波長に発光する蛍光物質である請求項11に記載の波長変換組成物。
【請求項13】
前記ベースポリマーが可視光領域に吸収をもたないポリマーである請求項1~12のいずれかに記載の波長変換組成物。
【請求項14】
前記ベースポリマーが、ポリメチルメタクリレート又はポリスチレンである請求項1~12のいずれかに記載の波長変換組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載の波長変換組成物を成形してなる波長変換フィルム。
【請求項16】
請求項15に記載の波長変換フィルムと、光電変換素子とを有することを特徴とする太陽電池。
【請求項17】
請求項1~14のいずれかに記載の波長変換組成物を含む封止材と、光電変換素子とを有することを特徴とする太陽電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の波長域の光を、目的とする波長域の光に波長変換することが可能な波長変換組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光は、300~3000nm程度の波長域の混合光である。太陽光を、太陽電池のような光電変換デバイスに利用する場合、必ずしもすべての波長の光が利用されているわけではない。具体的に利用される光の波長は、結晶シリコン系太陽電池では、波長域が300~1100nm付近であるが、アモルファスシリコン太陽電池では400~600nm付近、化合物系太陽電池は400~1300nm付近であり、結晶シリコン系太陽電池に比べて短波長域の光は利用率が小さい。
太陽電池を普及させるための課題の一つとして、変換効率の向上が挙げられる。特に短波長域の光は利用率が小さく、変換効率が結晶シリコン系太陽電池より低いアモルファスシリコン系太陽電池や化合物系太陽電池、有機系太陽電池等では深刻な課題となっている。解決策の一つは、従来まで利用されていなかった波長域(特に短波長域)の光エネルギーをいかに利用するかにある。
【0003】
このため、エネルギー効率の点から、従来まで利用されていなかった波長域(特に短波長域)の光エネルギーを必要な波長の光に変換して用いることが求められている。
その方法の一つとして、透明ポリマーの中に蛍光体を分散させ、短波長域の光を太陽電池に適する長波長域の光に変換する波長変換フィルムが開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1,2には、蛍光体としてEuのようなレアメタルを利用する無機系粒子を透明ポリマーの中に分散させた波長変換フィルムが開示されている。しかしながら、このような波長変換フィルムでは、透明ポリマー中で無機系粒子が凝集することにより、十分に波長変換に寄与できなかったり、太陽光透過率が低下するなどの問題が生じやすい。また、原料にレアメタルを使用しているため、コスト高となる。
【0005】
一方、特許文献3,4のように透明ポリマーの中に分散させる蛍光体として、有機材料系蛍光体を使用した例が報告されている。しかしながら、実用的な変換効率を得るためには透明ポリマーの中に有機材料系蛍光体を高濃度で添加する必要があり、結果として太陽光透過率が低下して、エネルギー変換効率も低下するという問題がある。また、高濃度の有機材料系蛍光体を必要とするため、波長変換フィルム自体の透明性や強度の低下などの問題に繋がる。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2004-134805号公報
【特許文献2】特開平11-345993号公報
【特許文献3】特開2001-352091号公報
【特許文献4】特開平10-261811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来の波長変換フィルムには、光透過性や波長変換効率の面で改良の余地が残されており、本格的な普及にいたっていないのが実状である。そのため、レアメタルフリーで、低濃度でも波長変換効率の高い有機系発光体を使用した波長変換フィルムの開発に期待が寄せられている。
【0008】
かかる状況下、本発明の目的は、光透過性に優れ、短波長域の光を長波長域の光に高効率に変換することができる波長変換組成物及び該波長変換組成物を成形してなる波長変換フィルムを提供することである。また、本発明の他の目的は、該波長変換フィルムを備えた太陽電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 蛍光性分子と自己集積性分子とが結合した蛍光体を、ベースポリマー中に含み、前記ベースポリマー100質量部に対する前記蛍光体の濃度が、蛍光性分子換算で0.0001質量部以上10質量部以下である波長変換組成物。
<2> 前記ベースポリマー100質量部に対する前記蛍光体の濃度が、蛍光性分子換算で0.0001質量部以上2質量部以下である<1>に波長変換組成物。
<3> 前記蛍光体が、ベースポリマー中で会合して配向し、エキサイマを生成している<1>又は<2>に記載の波長変換組成物。
<4> 前記蛍光体が、ベースポリマー中で会合して配向性会合体を形成している<1>~<3>のいずれかに記載の波長変換組成物。
<5> 前記配向性会合体が、繊維状会合体である<4>に記載の波長変換組成物。
<6>
<7> 前記蛍光性分子が、ピレン誘導体である<1>~<5>のいずれかに記載の波長変換組成物。
<8> 前記ピレン誘導体が、1-ピレンブタン酸及びピレン1-アミンからなる群から選ばれる少なくとも一種である<7>記載の波長変換組成物。
<9>
<10>
<11> 前記自己集積性分子が、アミノ酸誘導体、多環芳香族誘導体、コレステロール誘導体及び糖誘導体から選ばれる1種以上である<1>~<5>、<7>、<8>のいずれかに記載の波長変換組成物。
<12> 前記自己集積性分子が、ジドデシル化グルタミド、ジブチル化グルタミド及びジドデシル化リジンから選ばれる1種以上である<1>~<5>、<7>、<8>のいずれかに記載の波長変換組成物。
<13> 前記自己集積性分子が、分散基を有する<1>~<5>、<7>、<8>、<11>、<12>のいずれかに記載の波長変換組成物。
<14> 前記蛍光性分子と自己集積性分子とが結合した蛍光体以外の蛍光物質をさらに含有する<1>~<5>、<7>、<8>、<11>~<13>のいずれかに記載の波長変換組成物。
<15> 前記蛍光物質が、前記蛍光性分子と自己集積性分子とが結合した蛍光体の発光した光を吸収し、より長波長に発光する蛍光物質である<14>に記載の波長変換組成物。
<16> 前記ベースポリマーが可視光領域に吸収をもたないポリマーである<1>~<5>、<7>、<8>、<11>~<15>のいずれかに記載の波長変換組成物。
<17> 前記ベースポリマーが、ポリメチルメタクリレート又はポリスチレンである<1>~<5>、<7>、<8>、<11>~<15>のいずれかに記載の波長変換組成物。
<18> <1>~<5>、<7>、<8>、<11>~<17>のいずれかに記載の波長変換組成物を成形してなる波長変換フィルム。
<19> <18>に記載の波長変換フィルムと、光電変換素子とを有する太陽電池。
<20> <1>~<5>、<7>、<8>、<11>~<17>のいずれかに記載の波長変換組成物を含む封止材と、光電変換素子とを有する太陽電池。
<21> 蛍光性分子と自己集積性分子とが結合した蛍光体を、ベースポリマー中に含み、前記蛍光性分子が、アントラセン誘導体である波長変換組成物。
<22> 前記アントラセン誘導体が、9-(4-ヒドロキシフェニル)アントラセン、9-(4-アミノフェニル)アントラセン及び9,10-ジフェニルアントラセン-1-アミンからなる群から選ばれる少なくとも一種である<21>に記載の波長変換組成物。
<23> 前記蛍光体が、ベースポリマー中で会合して配向し、エキサイマを生成している<21>又は<22>に記載の波長変換組成物。
<24> 前記蛍光体が、ベースポリマー中で会合して配向性会合体を形成している<21>~<23>のいずれかに記載の波長変換組成物。
<25> 前記配向性会合体が、繊維状会合体である<24>に記載の波長変換組成物。
<26> 前記ベースポリマー100質量部に対する前記蛍光体の濃度が、蛍光性分子換算で0.0001質量部以上10質量部以下である<21>~<25>のいずれかにに記載の波長変換組成物。
<27> 前記ベースポリマー100質量部に対する前記蛍光体の濃度が、蛍光性分子換算で0.0001質量部以上2質量部以下である<26>に記載の波長変換組成物。
<28> 前記自己集積性分子が、アミノ酸誘導体、多環芳香族誘導体、コレステロール誘導体及び糖誘導体から選ばれる1種以上である<21>~<27>のいずれかに記載の波長変換組成物。
<29> 前記自己集積性分子が、ジドデシル化グルタミド、ジブチル化グルタミド及びジドデシル化リジンから選ばれる1種以上である<21>~<27>のいずれかに記載の波長変換組成物。
<30> 前記自己集積性分子が、分散基を有する<21>~<29>のいずれかに記載の波長変換組成物。
<31> 前記蛍光性分子と自己集積性分子とが結合した蛍光体以外の蛍光物質をさらに含有する<21>~<30>のいずれかに記載の波長変換組成物。
<32> 前記蛍光物質が、前記蛍光性分子と自己集積性分子とが結合した蛍光体の発光した光を吸収し、より長波長に発光する蛍光物質である<31>に記載の波長変換組成物。
<33> 前記ベースポリマーが可視光領域に吸収をもたないポリマーである<21>~<32>のいずれかに記載の波長変換組成物。
<34> 前記ベースポリマーが、ポリメチルメタクリレート又はポリスチレンである<21>~<32>のいずれかに記載の波長変換組成物。
<35> <21>~<34>のいずれかに記載の波長変換組成物を成形してなる波長変換フィルム。
<36> <35>に記載の波長変換フィルムと、光電変換素子とを有する太陽電池。
<37> <21>~<34>のいずれかに記載の波長変換組成物を含む封止材と、光電変換素子とを有する太陽電池。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、目的波長域以外の低波長の光を、目的波長に高効率で変換可能な波長変換組成物及び該波長変換フィルム並びに、該波長変換フィルムを備えた太陽電池を初めとした応用製品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】蛍光体-1の透過型顕微鏡写真である。
【図2】(a)波長変換フィルム-2(UV照射なし)、(b)波長変換フィルム-2(UV照射あり)の写真である。
【図3】波長変換フィルム-2の蛍光スペクトルを示す図である。
【図4】波長変換フィルム-8の蛍光スペクトルを示す図である。
【図5】波長変換フィルム-2の蛍光スペクトル、太陽光のスペクトル及びアモルファスシリコンの分光感度特性を示す図である。
【図6】波長変換フィルム-9の吸収スペクトル、蛍光スペクトルを示す図である。
【図7】波長変換フィルム-10の吸収スペクトル、蛍光スペクトルを示す図である。
【図8】波長変換フィルム-2の円二色性(CD)スペクトルを示す図である。
【図9】波長変換フィルムを備えたアモルファスシリコン太陽電池の変換効率を示す図である(波長変換フィルム-2及び波長変換フィルム-8)。
【図10】波長変換フィルムを備えたアモルファスシリコン太陽電池の電流測定法による評価結果を示す図である(波長変換フィルム-2、波長変換フィルム-9及び波長変換フィルム-10)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<1.波長変換組成物>
本発明の波長変換組成物は、発光性分子と自己集積性分子とが結合した、波長変換能を有する発光体を、ベースポリマー中に含んでなる組成物である。
本発明において、「波長変換」とは、特定波長帯の光を吸収し、より長波長帯の光を発することで、吸収光を長波長側に変換するダウンコンバージョン型波長変換を意味する。

【0013】
発光性分子としては、蛍光を発する蛍光性分子、リン光を発するリン光性分子が挙げられ、縮合反応等により、自己集積性分子と結合することができる官能基(アミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等)を有しているもの好ましい。発光性分子は、蛍光性分子、特にエキサイマ形成等によりストークシフト(励起極大波長と発光極大波長の差)が大きく、かつ量子収率の高い蛍光を発する蛍光性分子であることが好ましい。

【0014】
本発明において、「エキサイマ」とは、励起子二量体のことであり、単量体の蛍光より長波長側に発光領域があることを特徴とする。なお、厳密には同一の分子二つからなる二量体をエキサイマと呼び、異なる分子からなる二量体はエキサイプレックス(exciplex)と呼ばれるが、本発明においては区別しない。すなわち、本発明においてエキサイマには、異なる蛍光性分子を含む蛍光体同士が会合して、エキサイプレックスを形成する場合も該当する。

【0015】
本発明における蛍光性分子としては、エキサイマを形成する部位をもつ分子、あるいは複数種を組み合わせた場合にエキサイプレックスを形成する分子が好ましく、詳しくは後述する自己集積性分子との結合性の観点では、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等を含む、これらの分子の誘導体が好ましい。

【0016】
このような分子としては例えばピレン誘導体、アントラセン誘導体、ナフタレン誘導体、フルオレン誘導体、ペリレン誘導体、コロネン誘導体、フェナントレン誘導体、フルオランテン誘導体、カルバゾール誘導体、クリセン誘導体、トリフェニレン誘導体、テトラセン誘導体、ペンタセン誘導体、フルオレノン誘導体、アズレン誘導体、オリゴフェニレンビニレン誘導体、オリゴフェニレンエチニレン誘導体、ポルフィリン誘導体、シアニン色素の誘導体などが挙げられる。これらの蛍光性分子は単独でもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。

【0017】
この中でも、ピレン誘導体、またはアントラセン誘導体が好ましい。各種太陽電池では、内部に用いられている封止材の劣化を防ぐために紫外線吸収剤が表層に用いられていることが多く、紫外線が有効に利用されていない。ピレン誘導体、またはアントラセン誘導体は、吸収波長が紫外領域にあり、かつエキサイマ蛍光波長が、ピレン誘導体で約400~550nm、アントラセン誘導体で約450~600nmであり、封止材材料の劣化が起こりづらく、後述する太陽電池に用いられる光電変換素子の吸収波長域にあるため、各種太陽電池用の波長変換組成物(波長変換フィルム)として使用する場合に好適である。さらに、蛍光性分子としてピレン誘導体、またはアントラセン誘導体を使用することで、紫外光吸収剤の利用を低減することも期待できる。

【0018】
ピレン誘導体として、例えば、ピレンカルボン酸、ピレンジカルボン酸、ピレンブタン酸、メチルピレンカルボン酸、メトキシピレンブタン酸、ピレンカルバルデヒド、ピレンアミン、ピレンジアミン、ニトロピレンアミン、ピレンオール、ピレンジオール、フェニルピレンを挙げることができる。より具体的には、1-ピレンカルボン酸、1,6-ピレンジカルボン酸、1-ピレンブタン酸、6-メチルピレン-1-カルボン酸、6-メトキシピレン-1-ブタン酸、ピレン-1-カルバルデヒド、ピレン-1-アミン、ピレン-2-アミン、ピレン-1,6-ジアミン、6-ニトロピレン-1-アミン、ピレン-1-オール、ピレン-1,6-ジオール、2-フェニルピレン、6-プロピルピレン-1-プロピオン酸を挙げることができるが、これらに限定されない。また、これらの蛍光性分子は単独でもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
この中でも、1-ピレンブタン酸、ピレン-1-アミンが好適である。

【0019】
アントラセン誘導体としては、フェニルアントラセンアミン、ジフェニルアントラセンアミン、(ヒドロキシフェニル)アントラセン、(カルボキシフェニル)アントラセン、ピリジルアントラセン、ナフチルアントラセン、(ヒドロキシナフチル)アントラセン、(アミノナフチル)アントラセン、アントリルオキシ酢酸、ビス(ジヒドロキシフェニル)アントラセンを挙げることができる。より具体的には、アントラセン誘導体としては、9-(4-ヒドロキシフェニル)アントラセン、9-(4-アミノフェニル)アントラセン、9,10-ジフェニルアントラセン-1-アミン、9-(4-カルボキシフェニル)アントラセン、9-(4-ピリジル)アントラセン、9-(1-ナフチル)アントラセン、9-(1-ヒドロキシ-4-ナフチル)アントラセン、9-(1-アミノ-4-ナフチル)アントラセン、4-(9-アントリル)フェノキシ酢酸、9,10-ビス(3,5-ジヒドロキシフェニル)アントラセンを挙げることができるが、これらに限定されない。また、これらの蛍光性分子は単独でもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
この中でも、9-(4-ヒドロキシフェニル)アントラセン、9-(4-アミノフェニル)アントラセン、9,10-ジフェニルアントラセン-1-アミンが好適である。

【0020】
また、本発明で用いられるリン光性分子としては、元素周期表の8族、9族または10族に属するいずれか1種の金属を含有し、リン光発光を示す錯体系化合物が挙げられ、例えば、イリジウム錯体、オスミウム錯体、希土類錯体などのリン光発光を示す有機金属錯体が挙げられる。
このような有機金属錯体の配位子となる有機化合物としては、例えば、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ポルフィリン誘導体、トリフェニレン誘導体、ビピリジン誘導体、ロザリン誘導体、アントラセン誘導体、フタロシアニン誘導体等が挙げられる。
また、リン光性分子として、錯体系化合物以外にもエオシン誘導体、クロロフィル誘導体、βカロチン誘導体、環状アジン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニレン誘導体などを用いてもよい。

【0021】
また、「自己集積性分子」とは、自己組織化的に集合する作用のある分子であり、本発明では対象となるベースポリマー中で自己組織化することが可能な分子を意味する。なお、一般的な自己集積性分子は適当な溶媒中において会合体を形成するが、ベースポリマー等の多量の異成分を含む溶液中においては会合体の形成が困難となる場合が多い。本発明における自己集積性分子は、溶媒中に限らずベースポリマーを含む溶液中でも会合体を形成するものであり、溶媒を留去する等により固化した場合でも、その会合体が固体中で維持される。さらに、ベースポリマーを含む溶液中あるいは融液中で会合体を形成しない分子であっても、溶媒を留去するなどによりフィルム化(固化)させることによって、フィルムを構成するベースポリマー中で自己組織化的に集合・配向しうる分子も、本発明における自己集積性分子に該当する。

【0022】
このような自己集積性分子としては、ベースポリマー中で会合を促進する部位(例えば、アミド結合、エステル結合、ウレタン結合、尿素結合)を有し、かつ、適度な分散性を付与するための炭化水素部位を有する分子であることが好ましい。前記炭化水素部位は、例えば、炭素数3~40の直鎖アルキル基、分枝アルキル基、環状アルキル基が挙げられる。なお、前記炭化水素部位は、ベースポリマーとの親和性が確保できる範囲で、ヘテロ原子(酸素、チッソ、イオウ)が含まれていてもよい。

【0023】
このような自己集積性分子として、例えば、各種アミノ酸誘導体、多環芳香族誘導体、コレステロール誘導体、糖誘導体が挙げられ、好適な例としては、グルタミン酸ジアルキルアミドやアスパラギン酸ジアルキルエステル、リジンジアルキルアミド、アシルグルコサミン、アルキルオキシアゾベンゼン、ジアルコキシアントラセンなどが挙げられる。
好適な具体例としては、ジドデシル化グルタミド、ジブチル化グルタミド、ジドデシル化リジンが挙げられる。
なお、これらの自己集積性分子は単独でもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。

【0024】
上記発光性分子と自己集積性分子とが結合した発光体の製造方法はいかなる方法でもよく、例えば、適当な溶媒に、発光性分子と自己集積性分子を溶解し、そこに縮合剤を加えて、発光性分子と自己集積性分子のそれぞれが有する官能基を反応させて結合する方法が挙げられる。

【0025】
本発明の波長変換組成物において、ベースポリマーに含ませる発光体として、上記の蛍光性分子と自己集積性分子とが結合してなる蛍光体を使用することが好ましい。
このような蛍光体を用いることにより、前記蛍光体を構成する自己集積性分子の作用により、ベースポリマー中で前記蛍光体が集積するため、自己集積性分子と共に蛍光体を構成する蛍光性分子も高効率で集合・配向し、波長変換に適したエキサイマ生成が促進されるため、波長変換効率が向上する。

【0026】
一方、自己集積性分子と結合させずに蛍光性分子のみをベースポリマーに分散させた場合には、二量体構造の形成が困難となり、蛍光性分子濃度が高濃度(10質量%程度)にならないと実用的なレベルでエキサイマ蛍光を発することができない。そのため、コスト高になるだけでなく、フィルムの透明度や、フィルム強度などが低下する問題に繋がる。

【0027】
また、蛍光性分子をベースポリマー中で集合させる方法として、ポリマー側鎖に蛍光性分子を結合させたポリマー蛍光体、これをベースポリマーに含ませる方法がある。同方法でも、ベースポリマー中で、ある程度の量の蛍光性分子を集合させることができるものの、蛍光性分子は前記ポリマー蛍光体中で立体障害により自由な配置をとることができないため、該蛍光性分子がエキサイマ生成に有利な配向状態になりにくい。そのため、上記ポリマー蛍光体では、本発明の蛍光体と比較して、蛍光性分子のエキサイマの生成確率は低くなる。結果として、ベースポリマーに前記ポリマー蛍光体を添加する場合に、エキサイマ生成を促進するためには、前記ポリマー蛍光体を高濃度で使用せざるを得ず、コスト高、フィルム強度の低下を導くだけでなく、凝集による透明度の低下に繋がる。

【0028】
以上のように、本発明の波長変換組成物に係る蛍光体は、自己集積性部位を有しない蛍光体やポリマー側鎖に結合させた蛍光体と比べ、ベースポリマーに含まれる蛍光体濃度(すなわち、蛍光性分子濃度)が低濃度でも、エキサイマ蛍光を発する二量体構造を形成しやすいため、波長変換組成物の波長変換効率を向上させることができる。さらにこの蛍光体、さらには該蛍光体が配向して会合した配向性会合体は、それ自身は可視光に吸収をほとんどもたず(すなわち透明である)、フィルム全体の光透過性を阻害することもなく、短波長領域の光を吸収して、より長波長側にエキサイマ蛍光を発することができる。

【0029】
配向性会合体は、上述の蛍光性分子と自己集積性分子とが結合した蛍光体が配向して会合したものである。配向性会合体の形状は、蛍光性分子が隣接するように会合していることが好ましい。蛍光性分子が隣接するように会合する形態として、ミセル型の球状会合体、繊維状会合体などが挙げられ、特に繊維状会合体が好適である。繊維状会合体であれば、その厚み方向の大きさが小さくなり、光の散乱が起こりづらくなる。さらに、繊維状会合体であれば、蛍光性分子がほぼ均等に隣接することができるため、発光される光の波長はほぼ一定になるため好ましい。

【0030】
ベースポリマーは、発光性分子と自己集積性分子とが結合してなる発光体、特には蛍光性分子と自己集積性分子とが結合してなる蛍光体、さらには該蛍光体が配向して会合した配向性会合体を分散させるための基材(マトリックス)である。
ベースポリマーは、上記発光体に含まれる発光性分子の吸収波長、発光波長の光、特には蛍光性分子の吸収波長、発光波長の光に対して透明なポリマーであればよく、ベースポリマーが可視光領域に極大吸収波長を持たないポリマーであることが好ましく、特にベースポリマーが可視光領域に吸収を持たないポリマーであることが好ましい。

【0031】
このようなベースポリマーとしては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エバール、ブチラール、ビニロン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などを用いることができる。このような汎用性ポリマーをベースポリマーに用いることができるので低コストであり、フィルム化に特別の基盤技術を必要としない。
上記ポリマーの中でも、ポリメチルメタクリレートやポリスチレンは、上記発光体、蛍光体及び配向性会合体の分散性が高く、可視光領域に吸収を持たない透明性の高いポリマーを低コストで入手できるため好適である。

【0032】
本発明の波長変換組成物は、従来の有機系の蛍光体を含有する波長変換組成物に比し、ベースポリマーに含まれる発光体(蛍光体)が低濃度でも十分な変換効率を得ることができる。ベースポリマーに含まれる発光体(蛍光体)の濃度は、フィルム等の成形品の形状、厚みを考慮して、波長変換組成物全体としての透明性を失わない範囲で決定される。具体的には、発光性分子が蛍光性分子の場合、通常、蛍光体分子換算でベースポリマー100質量部に対して、0.0001質量部以上10質量部以下であり、より透明度を高めたいときには、2質量部以下である。濃度が高すぎると、波長変換組成物全体としての透明性が低下したり、ベースポリマーの性質を変えたりするなどの悪影響があるため好ましくない。

【0033】
本発明の波長変換組成物の製造方法は特に限定されないが、発光性分子(特には蛍光性分子)と自己集積性分子とが結合した発光体と、ベースポリマーとを適当な溶媒に分散したのちに、溶媒を留去する方法が挙げられる。この方法により、本発明の波長変換組成物は、フィルム状や、封止材などの形態とすることができる。

【0034】
上記発光体(蛍光体)がより均一に分散した波長変換組成物を得ることができる点で、上記発光体(蛍光体)における自己集積性分子は、分散基を有することが好ましい。ここで分散基とは、ベースポリマーとの親和性をある程度高めるための官能基であり、透明性の低下や光散乱の原因となる凝集を抑制させるための官能基を意味する。
そのため、ベースポリマーの種類によって、分散基の種類も異なるが、ベースポリマーが上述のポリスチレン等汎用性ポリマーのように疎水性の高いポリマーである場合には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などの脂肪族炭化水素基が好ましい。また、ベースポリマーの種類によっては、コレステリル基やパーフルオロ鎖も「分散基」の候補となる。

【0035】
脂肪族炭化水素基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、ベースポリマーの種類によって、通常、炭素数2~30の中から選択される。アルキル基の具体例としては、ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。
これらの脂肪族炭化水素基は、自己集積性分子に対し、1又は複数結合していてもよく、複数結合している場合には、それぞれが同じでも異なっていてもよい。

【0036】
また、本発明の波長変換組成物は、より波長変換効率を高めるために、上記蛍光性分子と自己集積性分子とが結合した蛍光体以外の蛍光物質をさらに含有していてもよい。該蛍光物質が、特に上記蛍光性分子と自己集積性分子とが結合した蛍光体の発光した光を吸収し、より長波長に発光する蛍光物質であることが好ましい。
蛍光物質として、従来公知の蛍光物質(希土類元素を含む複合酸化物等の無機系蛍光物質、ローダミン類、クマリン類等の有機系蛍光物質)を使用することができ、その種類や含有量は、上記蛍光性分子と自己集積性分子とが結合した蛍光体の種類や量を考慮して、適宜選択される。なお、有機系の蛍光物質として、(自己集積性分子を結合させていない)上記の蛍光性分子を使用してもよい。

【0037】
上記蛍光性分子と自己集積性分子とが結合した蛍光体における蛍光性分子がピレン誘導体の場合には、該蛍光体の発光した光を吸収し、より長波長に発光する蛍光物質として、具体例を示すと、アントラセン、9-フェニルアントラセン、ペリレン、ルブレン、クマリン6、クマリン153、9,10-ジフェニルアントラセン、ナイルレッド等が挙げられる。

【0038】
<2.波長変換フィルム>
本発明の波長変換フィルムは、本発明の波長変換組成物を成形し、フィルム状にしたものである。波長変換フィルムの成形は、特に限定はなく、従来公知の樹脂フィルム成形の方法(例えば、インフレーション法、カレンダー法、キャスティング法等)により行うことができる。

【0039】
本発明の波長変換フィルムの厚さは、目的とする波長変換効率、透明性、強度等を考慮の上、目的に応じて任意の厚さとすることができる。例えば、太陽電池用の波長変換フィルムとする場合には、通常、0.1mm~10mm程度であることが多い。
また、本発明の波長変換フィルムは、フィルムの最適化(素材の選択や均質化、多層化、ひずみの改善など)によって変換効率の大幅な改善が期待できる。
なお、上述した本発明の発光体(蛍光体)における自己集積性分子が上記分散基を有すると、溶媒中での前記発光体(蛍光体)の分散性も向上するため、塗布法での波長変換フィルムを製造しやすくなるという利点がある。

【0040】
本発明の波長変換組成物、波長変換フィルムは、波長変換効率が高く、かつ、ベースポリマーの性質を阻害することがないため、波長変換を利用する様々な用途に適用できる。
例えば、太陽光発電産業、農業、照明産業への適用が挙げられる。

【0041】
太陽光発電産業への適用としては、例えば、本発明の波長変換組成物を成形してなる波長変換フィルムと、光電変換素子とを有する太陽電池が挙げられる。該太陽電池では、光電変換素子の前段に波長変換フィルムを配置し、該波長変換フィルムに入射した光を、光電変換素子に適した波長に変換して光電変換素子に供することにより、光電変換効率が向上する。
使用される波長変換フィルムは、使用される光電変換素子に適した波長の光を供することができるように、含有させる発光体(蛍光体)及びベースポリマーの種類、発光体(蛍光体)の含有量を選択する。また、複数の波長変換フィルムを組み合わせて(積層して)使用してもよい。

【0042】
また、太陽電池における光電変換素子は封止材によって封止されていることがあるが、本発明の波長変換組成物を含む封止材であれば、上述の本発明の波長変換フィルムと同様に、光電変換素子に適した波長に変換して供することができるため、光電変換効率が向上させることができる。なお、本発明の波長変換組成物を含む封止材とは、本発明の波長変換組成物のみで形成した封止材、及び、本発明の波長変換組成物を他の公知の封止材材料に添加し、形成した封止材を意味する。
また、波長変換組成物を含む波長変換フィルムと、波長変換組成物を含む封止材を組み合わせて(積層して)使用してもよい。

【0043】
本発明の太陽電池における光電変換素子として、太陽電池に使用される公知の光電変換素子が使用でき、具体的には、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン等のシリコン系光電変換素子;CIS,CIGS,InGaAs,GaAs,CdTe等の化合物系光電変換素子;色素増感型、有機薄膜型等の有機系光電変換素子およびこれらを積層あるいは接合した複合型光電変換素子が挙げられる。本発明の太陽電池は、上述のように本発明の波長変換組成物を含む波長変換フィルムや封止材により、光電変換素子に適した波長の光を、光電変換素子供することができるため、変換効率の低いアモルファスシリコン、化合物系光電変換素子、有機系光電変換素子への展開が有望である。

【0044】
農業としては、グリーンハウス用の波長変換材料として本発明の波長変換組成物、波長変換フィルムを使用することができる。本発明の波長変換組成物は、短波長領域の光エネルギーを吸収するため、植物へのダメージを軽減できるだけでなく、光合成に利用しやすい波長に変換する。すなわち、波長変換材料としてだけでなく、光フィルタの役目を果たす。

【0045】
また、照明産業としては、LEDや有機EL用の波長変換材料として使用できる。本発明の波長変換組成物、波長変換フィルムは、発光エネルギーを吸収し、異なった波長の光を放出することが可能であるため、適当な発光素子と発光性分子を組み合わせことで様々な波長の光を発することできる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0047】
波長変換組成物、波長変換フィルムの製造に使用した化合物は以下の通りである。
ジドデシル化L-グルタミド(合成品)
ジブチル化L-グルタミド(合成品)
ジドデシル化L-リジン(合成品)
ジ(2-エチルヘキシル)L-グルタミド(合成品)
9-(4-アミノフェニル)アントラセン(合成品)
9,10-ジフェニルアントラセン-1-アミン(合成品)
9,10-ジフェニルアントラセン(東京化成工業株式会社)
ナイルレッド(東京化成工業株式会社)
1-ピレンブタン酸(東京化成工業株式会社)
ピレン-1-アミン(東京化成工業株式会社)
テトラヒドロフラン(ナカライテスク株式会社)
トリエチルアミン(ナカライテスク株式会社)
シアノリン酸ジエチル(和光純薬工業株式会社)
メタノール(ナカライテスク株式会社)
クマリン153(アルドリッチ株式会社)
ポリスチレン(アルドリッチ、Mw:~280,000)
ポリメチルメタクリレート(アルドリッチ、Mw:~120,000)
ジメチルアミノナフタレン(東京化成工業株式会社)
エチレン-酢酸ビニル共重合体(アルドリッチ株式会社)
(エチレン60mol%-酢酸ビニル40mol%)
【実施例】
【0048】
1.蛍光体の製造方法
蛍光性分子と自己集積性分子とが結合した自己集積性蛍光体(以下、「蛍光体」とする)を以下の方法で合成した。
【実施例】
【0049】
「蛍光体-1」
蛍光性分子として1-ピレンブタン酸(0.37g)を、自己集積性分子としてジドデシル化L-グルタミド(0.60g)を用い、テトラヒドロフラン(70mL)に溶解させ、氷浴中でかき混ぜながらトリエチルアミン(0.32mL)およびシアノリン酸ジエチル(0.38mL)を加えた。12時間室温でかき混ぜて反応を進行させたのち、溶媒を除去し、メタノールから再結晶を行って、蛍光体-1(0.89g)を得た。
【実施例】
【0050】
蛍光体-1について、透過型電子顕微鏡による評価を行った。透過型顕微鏡観察は、蛍光体-1(7.2mg)をベンゼン(20mL)に溶解させ、銅メッシュ上にキャストして、透過型電子顕微鏡(日本電子、JEM-2000X)を使用して行った。
蛍光体-1の透過型顕微鏡写真を図1に示す。蛍光体-1は、ナノ繊維からなる繊維状会合体を形成していた。なお、比較のため観察した参照サンプル(1-ピレンブタン酸)ではこのようなナノ繊維からなる繊維状会合体の形成は確認できなかった。
【実施例】
【0051】
「蛍光体-2」
ジドデシル化L-グルタミドに代えて、自己集積性分子としてジブチル化L-グルタミド(0.5g)を用い、蛍光体-1と同様な方法により蛍光体-2を得た。
【実施例】
【0052】
「蛍光体-3」
1-ピレンブタン酸に代えて、蛍光性分子としてピレン-1-アミン(0.2g)を、ジドデシル化L-グルタミドに代えて、自己集積性分子としてジドデシル化L-リジン(0.6g)を用い、蛍光体-1と同様な方法により蛍光体-3を得た。
【実施例】
【0053】
「蛍光体-4」
ジドデシル化L-グルタミドに代えて、自己集積性分子としてジ(2-エチルヘキシル)L-グルタミド(0.6g)を用い、蛍光体-1と同様な方法により蛍光体-4を得た。
【実施例】
【0054】
「蛍光体-5」
1-ピレンブタン酸に代えて、蛍光性分子として9-(4-アミノフェニル)アントラセン(0.3g)を、ジドデシル化L-グルタミドに代えて、自己集積性分子としてジドデシル化L-リジン(0.6g)を用い、蛍光体-1と同様な方法により蛍光体-5を得た。
【実施例】
【0055】
「蛍光体-6」
1-ピレンブタン酸に代えて、蛍光性分子として9,10-ジフェニルアントラセン-1-アミン(0.4g)を、ジドデシル化L-グルタミドに代えて、自己集積性分子としてジドデシル化L-リジン(0.6g)を用い、蛍光体-1と同様な方法により蛍光体-6を得た。
【実施例】
【0056】
表1に合成した蛍光体-1~6の蛍光性分子と自己集積性分子をまとめて示す。
【実施例】
【0057】
【表1】
JP0005999450B2_000002t.gif
【実施例】
【0058】
2.波長変換フィルムの製造方法
以下の製法で、波長変換フィルムを製造した。
「波長変換フィルム-1」
蛍光体-1(1mg)とベースポリマーであるポリスチレン(1g)をベンゼン(20mL)に溶解させ、室温でガラス基板上にキャストし、溶媒を蒸発させることによって、ベースポリマー100質量部に対して、蛍光体をピレン誘導体換算で0.1質量部含む波長変換フィルム-1を得た。
【実施例】
【0059】
「波長変換フィルム-2」
蛍光体-1(7.2mg)とベースポリマーであるポリスチレン(1g)をベンゼン(20mL)に溶解させ、室温でガラス基板上にキャストし、溶媒を蒸発させることによって、ベースポリマー100質量部に対して、蛍光体をピレン誘導体換算で0.72質量部含む波長変換フィルム2を得た。
【実施例】
【0060】
「波長変換フィルム-3」
蛍光体-1(30mg)とベースポリマーであるポリスチレン(1g)をクロロホルム(20mL)に溶解させ、室温でガラス基板上にキャストし、溶媒を蒸発させることによって、ベースポリマー100質量部に対して、蛍光体をピレン誘導体換算で3.0質量部含む波長変換フィルム-3を得た。
【実施例】
【0061】
「波長変換フィルム-4」
蛍光体-2(3.6mg)とベースポリマーであるポリメチルメタクリレート(1g)を酢酸エチル(20mL)に溶解させ、室温でガラス基板上にキャストし、溶媒を蒸発させることによって、ベースポリマー100質量部に対して蛍光体をピレン誘導体換算で0.36質量部含む波長変換フィルム-4を得た。
【実施例】
【0062】
「波長変換フィルム-5」
蛍光体-5(5mg)とベースポリマーであるスチレン(1g)を、トルエン(20mL)に溶解させ、室温でガラス基板上にキャストし、溶媒を蒸発させることによって、ベースポリマー100質量部に対して蛍光体をアントラセン誘導体換算で0.5質量部含む波長変換フィルム-5を得た。
【実施例】
【0063】
「波長変換フィルム-6」
蛍光体-1(3.6mg)とジメチルアミノナフタレン(1.0mg)およびベースポリマーであるスチレン(1g)を、ベンゼン(20mL)に溶解させ、室温でガラス基板上にキャストし、溶媒を蒸発させることによって、波長変換フィルム-6を得た。
【実施例】
【0064】
「波長変換フィルム-7」
蛍光体-4(5mg)とベースポリマーであるスチレン(1mg)を、トルエン(20mL)に溶解させ、室温でガラス基板上にキャストし、溶媒を蒸発させることによって、波長変換フィルム-7を得た。
【実施例】
【0065】
「波長変換フィルム-8(比較例)」
比較例として、自己集積性分子を含まない蛍光体を含む波長変換フィルム-8を製造した。
蛍光性分子として1-ピレンブタン酸(2.9mg)と、ベースポリマーであるポリスチレン(1g)とをベンゼン(20mL)に溶解させ、室温でガラス基板上にキャストし、溶媒を蒸発させることによって、波長変換フィルム-8を得た。
【実施例】
【0066】
「波長変換フィルム-9」
蛍光体-1(7.2mg)と9,10-ジフェニルアントラセン(1.0mg)、をベースポリマーであるエチレン-酢酸ビニル共重合体(1g)を酢酸エチル(10mL)に溶解させ、室温でガラス基板上にキャストし、溶媒を蒸発させることによって、ベースポリマー100質量部に対して蛍光体-1をピレン誘導体換算で0.72質量部、9,10-ジフェニルアントラセン換算で0.1質量部含む波長変換フィルム-9を得た。
【実施例】
【0067】
「波長変換フィルム-10」
蛍光体-1(7.2mg)と9,10-ジフェニルアントラセン(1.0mg)、クマリン153(0.3mg)、ナイルレッド(0.12mg)をベースポリマーであるエチレン-酢酸ビニル共重合体(1g)を酢酸エチル(10mL)に溶解させ、室温でガラス基板上にキャストし、溶媒を蒸発させることによって、ベースポリマー100質量部に対して蛍光体-1をピレン誘導体換算で0.72質量部、9,10-ジフェニルアントラセン換算で0.1質量部、クマリン153換算で0.03質量部、ナイルレッド換算で0.012質量部、含む波長変換フィルム-10を得た。
【実施例】
【0068】
表2に波長変換フィルム-1~10の構成をまとめて示す。
【実施例】
【0069】
【表2】
JP0005999450B2_000003t.gif
【実施例】
【0070】
3.評価
(1)目視観察
波長変換フィルム-1~10を観察したところ、目視で透明であり、白濁などは認められなかった。代表例として波長変換フィルム-2の写真を図2(a)に示す。
波長変換フィルム-1~10に、UV照射(波長365nm)したところ、明らかにフィルムが発光することが確認された。代表例として、波長変換フィルム-2の写真を図2(b)に示す。
【実施例】
【0071】
(2)蛍光スペクトルの評価
波長変換フィルム-2と、波長変換フィルム-8について、蛍光スペクトル測定装置(日本分光、FP-6500)を用いて蛍光スペクトルの評価を行った結果を図3(波長変換フィルム-2)、図4(波長変換フィルム-8)に示す。
図3に示すように、自己集積性分子であるジドデシル化L-グルタミドと蛍光性分子である1-ピレンブタン酸とが結合した、蛍光体1を分散させた波長変換フィルム-2では、長波長の450nm近傍をピークトップとする蛍光スペクトルが得られた。1-ピレンブタン酸自体の蛍光スペクトル(図示せず)のピークは、390nmであるため、波長変換フィルム-2では、長波長側に蛍光波長がシフトしていることが確認された。
一方、自己集積性分子を結合させていない1-ピレンブタン酸を分散させた波長変換フィルム-8では、1-ピレンブタン酸自体のピークトップに近い390nm近傍にピークトップがあり、蛍光波長がシフトは認められなかった。
【実施例】
【0072】
参考のため、図5に波長変換フィルム-2の発光特性、太陽光のスペクトル及びアモルファスシリコンの吸収帯を示す。波長変換フィルム-2の発光はアモルファスシリコンの吸収帯に重なることがわかる。
【実施例】
【0073】
上記と同様に波長変換フィルム-9と、波長変換フィルム-10について、吸収スペクトル、蛍光スペクトルの評価を行った結果を図6(波長変換フィルム-9)、図7(波長変換フィルム-10)に示す。
図6に示すように、波長変換フィルム-9の蛍光スペクトルでは、蛍光体-1由来の蛍光スペクトルが消失し、430nm付近に、ジフェニルアントラセン由来の蛍光スペクトルが観察された。これは、蛍光体-1からジフェニルアントラセンへのエネルギー移動が起きたためと考えられる。
図7に示すように、波長変換フィルム-10の蛍光スペクトルでは、蛍光体-1、9,10-ジフェニルアントラセン由来の蛍光スペクトルが消失し、470nm付近に、クマリン153由来の蛍光スペクトルが、570nm付近に、ナイルレッド由来の蛍光スペクトルが、観察された。これは、蛍光体-1から9,10-ジフェニルアントラセンを経由して、クマリン153、ナイルレッドへのエネルギー移動が起きたためと考えられる。
【実施例】
【0074】
(3)円二色性(CD)スペクトル
図8に、波長変換フィルム-2の円二色性(CD)スペクトルを示す。測定は、円二色性(CD)スペクトル測定装置(日本分光、J725)を用いて行った。
図8から明らかなように、非常に大きなCD強度が得られており、波長変換フィルム-2に含まれる蛍光性分子と自己集積性分子が結合した蛍光体がベースポリマー中で配向して会合し、配向性会合体を形成していることが確認された。
【実施例】
【0075】
(4)太陽電池としての評価
(テスト1)
本発明の波長変換フィルムを備えたアモルファスシリコン太陽電池の性能評価を行った。
まず、アモルファスシリコン太陽電池YG-B5050(Shenzhen Global Solar Energy Technology Co., Ltd.製、5×5cm)の表面に波長変換フィルム-2(厚み:0.04mm)を貼付け、次いで、フィルム表面での光の散乱を抑えるため、ジエチレングリコールを適量滴下してフィルム表面に広げた後に、石英基板で覆った。
得られた波長変換フィルムを備えた太陽電池を、ソーラーシュミレーター(SAN-EI ELECTRIC製(XES-70S1)、AM 1.5G、100mW/cm2、照射光サイズ7×7cm)にセットし、変換効率を評価した。
また、比較として、上記と同様の方法で、フィルムを有さないアモルファスシリコン太陽電池、蛍光体を含まないポリスチレンフィルム(厚み:0.035mm)を備えたアモルファスシリコン太陽電池及び波長変換フィルム-8(厚み:0.036mm)を備えたアモルファスシリコン太陽電池を製造し、変換効率の評価を行った。
図9に結果を示す。なお、図9における変換効率は、フィルムを有さないアモルファスシリコン太陽電池の変換効率を基準とした相対値である。
【実施例】
【0076】
図9に示されるように、波長変換フィルム-2を備えた太陽電池は、フィルムを有さない太陽電池と比較して、変換効率が5%以上向上していることがわかる。また、波長変換フィルム-2を備えた太陽電池は、自己集積性分子と結合していない蛍光体を含む波長変換フィルム-8を備えた太陽電池と比較しても、変換効率が3.5%以上向上していることがわかる。
これらの結果から、本発明の波長変換フィルムは、太陽電池の変換効率の向上に寄与することが確認された。
【実施例】
【0077】
(テスト2)
波長変換フィルム-2、波長変換フィルム-9及び波長変換フィルム-10について、電流測定法による評価を行った。
まず、ポリエチレンテレフタレートフィルムの上に製膜した波長変換フィルム-2(厚み0.040nm)を、電流計に接続した市販の多結晶シリコン太陽電池(株式会社 太陽工房製、7.0cm2)の上に設置し、UVライト(365nm)照射して、電流値を測定した。図10に結果を示す。
波長変換フィルム-2を設置しない場合と比較して、波長変換フィルム-2を設置すると太陽電池が生み出す電流値が33%向上した(12.3μA→16.4μA)。この結果は、多結晶シリコン太陽電池の分光感度が低い365nmの光が、波長変換フィルム-2によって長波長側へ変換されたためと考えられる。
【実施例】
【0078】
同様にポリエチレンテレフタレートフィルムの上に製膜した波長変換フィルム-9(厚み0.040nm)について、上記電流測定法による評価を行った。図10に結果を示す。
波長変換フィルム-9を設置しない場合と比較して、波長変換フィルム-9を設置すると太陽電池が生み出す電流値が96%向上した(12.3μA→23.5μA)。この結果は、多結晶シリコン太陽電池の分光感度が低い365nmの光が、波長変換フィルム-9によってより長波長側へ変換されたためと考えられる。
【実施例】
【0079】
同様にポリエチレンテレフタレートフィルムの上に製膜した波長変換フィルム-10(厚み0.040nm)について、上記電流測定法による評価を行った。図10に結果を示す。
波長変換フィルム-10を設置しない場合と比較して、波長変換フィルム-10を設置すると太陽電池が生み出す電流値が78%向上した(12.3μA→21.5μA)。この結果は、多結晶シリコン太陽電池の分光感度が低い365nmの光が、波長変換フィルム-10によってより長波長側へ変換されたためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、太陽電池を初めとした応用製品に好適に使用できる波長変換組成物、波長変換フィルムが提供される。本発明の波長変換組成物及び該波長変換フィルムは、Euのようなレアメタルを利用しない有機材料であり、かつ、従来の有機系蛍光体に対して、蛍光体の含有量が少ない有機材料であるため、ポリマー素材が有する軽量性かつ柔軟性が維持され、応用性も高いという利点を有する。
また、本発明の波長変換フィルムを備えた太陽電池は、変換効率が大きく向上するため、本発明は工業的に有望である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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