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明細書 :HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤及びスクリーニング方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5686814号 (P5686814)
登録日 平成27年1月30日(2015.1.30)
発行日 平成27年3月18日(2015.3.18)
発明の名称または考案の名称 HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤及びスクリーニング方法
国際特許分類 A61K  31/7125      (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
A61P   1/04        (2006.01)
A61P  29/00        (2006.01)
A61P  31/04        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  37/06        (2006.01)
A61P  37/08        (2006.01)
FI A61K 31/7125 ZNA
A61K 48/00
A61P 1/04
A61P 29/00
A61P 31/04
A61P 35/00
A61P 37/06
A61P 37/08
請求項の数または発明の数 5
全頁数 70
出願番号 特願2012-534041 (P2012-534041)
出願日 平成23年9月14日(2011.9.14)
国際出願番号 PCT/JP2011/071023
国際公開番号 WO2012/036215
国際公開日 平成24年3月22日(2012.3.22)
優先権出願番号 2011138825
2010209587
優先日 平成23年6月22日(2011.6.22)
平成22年9月17日(2010.9.17)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審判番号 不服 2014-023004(P2014-023004/J1)
審査請求日 平成26年5月16日(2014.5.16)
審判請求日 平成26年11月11日(2014.11.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】谷口 維紹
【氏名】柳井 秀元
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審理対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100124291、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 悟
【識別番号】100126653、【弁理士】、【氏名又は名称】木元 克輔
【識別番号】100139000、【弁理士】、【氏名又は名称】城戸 博兒
【識別番号】100152191、【弁理士】、【氏名又は名称】池田 正人
参考文献・文献 特開2011-084517(JP,A)
特表2008-504335(JP,A)
特表2009-517404(JP,A)
NATURE,2009年11月5日,Vol.462,p.99-104
NAT.REV.IMMUNOL,2004年,Vol.4,No.4,p.249-258
調査した分野 A61K31/00-33/44
A61P1/00-43/00
CAPLUS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UNIPROT/GENBANK/EMBL/DDBJ/GENESEQ
特許請求の範囲 【請求項1】
非メチル化CG配列を含まず、長さが15~30塩基のホスホロチオエートオリゴヌクレオチドからなる、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤であって、
前記ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、
配列番号40に記載の塩基配列、又は、
配列番号40に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列であって、HMGBタンパクに対する結合能を有する塩基配列、
からなるホスホロチオエートオリゴヌクレオチドである、抑制剤。
【請求項2】
非メチル化CG配列を含まず、長さが15~30塩基のホスホロチオエートオリゴヌクレオチドからなる、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤であって、
前記ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、
配列番号40に記載の塩基配列、又は、
配列番号40に記載の塩基配列において1~3個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列であって、HMGBタンパクに対する結合能を有する塩基配列、
からなるホスホロチオエートオリゴヌクレオチドである、抑制剤。
【請求項3】
細胞内において、免疫応答を活性化する核酸とHMGBタンパクとの結合を阻害する、請求項1又は2に記載の抑制剤。
【請求項4】
HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化が、抗原特異的な適応免疫系、多発性硬化症、死細胞による過剰な免疫応答、移植臓器拒絶反応、自己免疫疾患、炎症性腸疾患、アレルギー、敗血症、炎症による腫瘍の増殖、及び核酸含有病原体により引き起こされる炎症性疾患からなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の抑制剤。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の抑制剤及び薬学的に許容される担体を含有する、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制用組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤、及び、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫応答とその制御において、自己と非自己の識別はその根幹を担っている。自然免疫系及び適応免疫系は、それぞれに特有の機構によってこの識別を担うとともに、自己に応答しない仕組み、いわゆる免疫寛容を確立・維持している。自然免疫応答の活性化は適応免疫応答の誘導にも関与していることが知られていることから、自然免疫応答の抑制は適応免疫応答の抑制にも有効であることが知られている。
【0003】
適応免疫系においては、ランダムな抗原受容体を発現するリンパ球レパートリーを構築後、ほとんどの自己反応性リンパ球が中枢性寛容機構によって排除され、末梢になお残存する自己反応性リンパ球は、末梢性寛容機構によって抑制されることが明らかにされてきた。
【0004】
適応免疫系による抗原の認識はリンパ球の抗原受容体による特異的な分子構造認識を特徴とするが、自然免疫系では、病原体等が持つ分子のパターンを認識するとされており、Toll様受容体(Toll-like receptor、TLR)をはじめとして、多くの自然免疫活性化受容体が知られている。特に、核酸による自然免疫活性化はウイルス等の病原体の排除に重要であるとともに、一方で種々の免疫病態の発症や増悪に関与すするとされていることから大きな関心が寄せられている。しかしながら、自然免疫系における核酸の識別機構には未だ不明な点が多く、核酸により活性化される免疫応答を担う分子群として、Toll様受容体(Toll-like receptor、TLR)3、TLR7、TLR9、RIG-I様受容体(RIG-I-like receptor)、DAI、AIM2等の受容体分子群が同定されてきたが、未だにその全貌は不明である(例えば非特許文献1~3を参照)。
【0005】
HMGB(high-mobility group box)タンパクには、HMGB1、HMGB2及びHMGB3が存在することが知られている。これらのHMGBタンパクは、核内に多く存在し、クロマチン構造や転写の制御に関わっていると考えられている。また、細胞質や細胞外にも存在することが知られている。
【0006】
特許文献1には、細胞外に分泌されたHMGB1タンパクと、細胞表面の最終糖化産物受容体(RAGE)との結合を阻害する、合成二本鎖核酸又は核酸アナログ分子が記載されている。
【0007】
特許文献2には、細胞外に分泌されたHMGB1タンパクとRAGEの相互作用を阻害する、HMGB1アンタゴニストが記載されている。
【0008】
非特許文献4には、塩基フリーホスホロチオエートデオキシリボースホモポリマーがTLR9及びTLR7に高い親和性を有し、これらのTLRのアンタゴニストとして作用することが記載されている。
【0009】
非特許文献5には、5’-TCCATGACGTTCCTGATGCT-3’(配列番号37)の塩基配列を有するホスホロチオエートオリゴヌクレオチドのマウスへの投与がIFN(インターフェロン)-γ応答を誘導するのに対し、5’-TCCATGAGCTTCCTGATGCT-3’(配列番号38)の塩基配列を有するホスホロチオエートオリゴヌクレオチドはこのような応答を起こさないことが記載されている。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】特表2008-504335号広報
【特許文献2】特表2009-517404号広報
【0011】

【非特許文献1】Kawai T.et al,Nat.Rev.Immunol 7:131-137,2006.
【非特許文献2】Yoneyama et al,J.Biol.Chem 282:15315-15318,2007.
【非特許文献3】Burckstummer T.et al,Nat.Immunol.10:266-272,2009.
【非特許文献4】Haas T.et al,Immunity,28:315-323,2008.
【非特許文献5】Cowdery JS.et al,J.Immunol.156:4570-4575,1996.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤及び、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド及びその誘導体からなる群から選択される1種以上の化合物からなり、HMGBタンパクに結合することによって、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化を抑制する、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤を提供する。
【0014】
本発明はまた、生体にホスホロチオエートオリゴヌクレオチド及びその誘導体からなる群から選択される1種以上の化合物を投与する工程を含む、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制方法を提供する。
【0015】
本発明はまた、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤としての使用のための、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド及びその誘導体からなる群から選択される1種以上の化合物を提供する。
【0016】
本発明はまた、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド及びその誘導体からなる群から選択される1種以上の化合物の、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤への応用を提供する。
【0017】
発明者らは、核酸によって仲介される免疫応答の活性化には、HMGBタンパクが必須であることを明らかにした。すなわち、発明者らは、核酸によって仲介される免疫応答の活性化は、HMGBタンパクによって仲介されることを明らかにした。発明者らは、さらに、上記の化合物が、HMGBタンパクに強く結合することによって、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化を強力に抑制することを明らかにした。したがって、上記の化合物は、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤として利用することができる。上記の抑制剤は、核酸によって仲介される免疫応答に限らず、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化を抑制する。
【0018】
上記の化合物は、非メチル化CG配列を含まず、長さが5~40塩基のホスホロチオエートオリゴヌクレオチドであることが好ましく、(1)配列番号40に記載の塩基配列又は(2)配列番号40に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列であって、HMGBタンパクに対する結合能を有する塩基配列、からなるホスホロチオエートオリゴヌクレオチドであることがより好ましい。
【0019】
これらのホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤として利用することができる。
【0020】
上記の化合物は、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの誘導体であり、当該誘導体は、塩基フリーホスホロチオエートデオキシリボースホモポリマー(以下、「PS」という場合がある。)であってもよい。PSは、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドから塩基部分を除いた構造を有する化合物である。
【0021】
実施例で示すように、PSは、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤として利用することができる。
【0022】
本発明の抑制剤は、細胞内において、免疫応答を活性化する核酸とHMGBタンパクとの結合を阻害することにより、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化を強力に抑制する。すなわち、本発明の抑制剤は、発明者らが今回初めて明らかにした機構に基づいて、細胞内のHMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化を抑制するものである。
【0023】
HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化としては、抗原特異的な適応免疫系、多発性硬化症、死細胞による過剰な免疫応答、移植臓器拒絶反応、自己免疫疾患、炎症性腸疾患、アレルギー、敗血症、炎症による腫瘍の増殖、核酸含有病原体により引き起こされる炎症性疾患等が例示される。本発明の抑制剤を投与することにより、ヒト及び動物の生体において、これらの症状を予防又は治療(改善)することができる。
【0024】
本発明はまた、上記の抑制剤及び薬学的に許容される担体を含有する、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制用組成物を提供する。
【0025】
本発明はまた、被検物質の存在下及び非存在下で、HMGBタンパクと標識核酸とを混合する混合ステップと、標識核酸に結合したHMGBタンパクを定量する定量ステップと、被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも少ない場合に、当該被検物質が、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤であると判定し、被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも多い場合に、当該被検物質が、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の促進剤であると判定する、判定ステップと、を含む、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法を提供する。
【0026】
本発明はまた、被検物質の存在下及び非存在下で、固相化されたHMGBタンパクを放置する放置(インキュベーション)ステップと、放置ステップ後の固相化されたHMGBタンパクに、標識核酸を接触させる、標識核酸接触ステップと、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸を定量する定量ステップと、被検物質の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量が、被検物質の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量よりも少ない場合に、当該被検物質が、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤であると判定し、被検物質の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量が、被検物質の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量よりも多い場合に、当該被検物質が、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の促進剤であると判定する、判定ステップと、を含む、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法を提供する。
【0027】
本発明はまた、被検物質の存在下及び非存在下で、固相化された核酸とHMGBタンパクとを接触させる、接触ステップと、固相化された核酸に結合したHMGBタンパクを定量する定量ステップと、被検物質の存在下で固相化された核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下で固相化された核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも少ない場合に、当該被検物質が、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤であると判定し、被検物質の存在下で固相化された核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下で固相化された核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも多い場合に、当該被検物質が、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の促進剤であると判定する、判定ステップと、を含む、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法を提供する。
【0028】
上記本発明のスクリーニング方法によれば、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤又は促進剤のスクリーニングを可能にすることができる。これらのスクリーニング方法は、発明者らが今回初めて明らかにした、免疫応答の活性化がHMGBタンパクによって仲介されるという新たな機構に基づくものである。これらのスクリーニング方法により、簡便に効率よくスクリーニングを行うことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化、すなわち、死細胞による過剰な免疫応答、移植臓器拒絶反応、自己免疫疾患、炎症性腸疾患、アレルギー、敗血症、炎症による腫瘍の増殖、核酸含有病原体により引き起こされる炎症性疾患等の新たな原理に基づいた抑制剤が提供される。また、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1の結果を示すグラフである。
【図2】実施例2の結果を示すグラフである。
【図3】実施例3の結果を示すグラフである。
【図4】実施例4の結果を示すグラフである。
【図5】実施例5の結果を示す写真である。
【図6】実施例6の結果を示す写真である。
【図7】実施例7の結果を示すグラフである。
【図8】実施例8の結果を示すグラフである。
【図9】実施例9の結果を示すグラフである。
【図10】実施例10の結果を示すグラフである。
【図11】実施例11の結果を示すグラフである。
【図12】実施例12の結果を示す写真である。
【図13】実施例13の結果を示す写真である。
【図14】実施例14の結果を示す写真である。
【図15】実施例15の結果を示す写真である。
【図16】実施例16の結果を示すグラフである。
【図17】実施例17の結果を示すグラフである。
【図18】実施例18の結果を示すグラフである。
【図19】実施例19の結果を示すグラフである。
【図20】実施例20の結果を示すグラフである。
【図21】実施例21の結果を示す写真である。
【図22】実施例22の結果を示すグラフである。
【図23】実施例23の結果を示す写真である。
【図24】実施例24の結果を示すグラフである。
【図25】実施例25の結果を示すグラフである。
【図26】実施例26の結果を示すグラフである。
【図27】実施例27の結果を示すグラフである。
【図28】実施例28の結果を示す写真である。
【図29】実施例29の結果を示すグラフである。
【図30】実施例30の結果を示すグラフである。
【図31】実施例31の結果を示すグラフである。
【図32】実施例32の結果を示すグラフである。
【図33】実施例33の結果を示すグラフである。
【図34】実施例34の結果を示すグラフである。
【図35】実施例35の結果を示すグラフである。
【図36】実施例36の結果を示すグラフである。
【図37】実施例37の結果を示すグラフである。
【図38】実施例38の結果を示すグラフである。
【図39】実施例39の結果を示すグラフである。
【図40】実施例40の結果を示すグラフである。
【図41】実施例41の結果を示す写真である。
【図42】実施例42の結果を示す写真である。
【図43】HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の概略図である。
【図44】HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤のスクリーニング方法の1つの態様を示す図である。
【図45】実施例43の結果を示す写真(a)及びグラフ(b)である。
【図46】CpG-B(S)、CpG-Rev(S)、CpG-M(S)及びPSの構造を示す図である。
【図47】実施例44の結果を示す写真である。
【図48】実施例45の結果を示すグラフである。
【図49】実施例46の結果を示すグラフである。
【図50】実施例47の結果を示すグラフである。
【図51】実施例48の結果を示すグラフである。
【図52】実施例49の結果を示すグラフである。
【図53】実施例50の結果を示すグラフである。
【図54】実施例51の結果を示すグラフである。
【図55】実施例52の結果を示す写真である。
【図56】実施例53の結果を示す写真である。
【図57】実施例54の結果を示すグラフである。
【図58】実施例55の結果を示すグラフである。
【図59】実施例56の結果を示すグラフである。
【図60】実施例57の結果を示すグラフである。
【図61】実施例58の結果を示すグラフである。
【図62】実施例59の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明者らが新たに解明した機構に基づいた、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤が提供される。この抑制剤は、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド及びその誘導体からなる群から選択される1種以上の化合物からなる。

【0032】
ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドとは、オリゴデオキシリボヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体である。

【0033】
抑制剤は、非メチル化CG配列を含まず、長さが5~100塩基であるホスホロチオエートオリゴヌクレオチドからなることが好ましい。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの長さは、10~40塩基であることがより好ましく、15~30塩基であることが更に好ましく、15~20塩基であることが特に好ましい。このようなホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、HMGBタンパクと結合して、HMGBタンパクをマスクすることにより、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化を抑制することができる。非メチル化シトシン・グアニン(CG)配列とは、5’-CG-3’の塩基配列であって、メチル化されていない配列を意味する。非メチル化CG配列を含まない5~100塩基のオリゴヌクレオチドは、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答を活性化しない。一方、100塩基を超える長さのオリゴヌクレオチドは、免疫応答を活性化する場合がある。

【0034】
上記のホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、配列番号40に記載の塩基配列又は配列番号40に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列であって、HMGBタンパクに対する結合能を有する塩基配列からなるホスホロチオエートオリゴヌクレオチドであることがより好ましい。配列番号40の塩基配列は、5’-TCCATGAGSTTCCTGATGCT-3’であり、ここでSはG又はCを表す。また、SがCである場合の塩基配列からなるホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは後述するCpG-Rev(S)(配列番号38)に対応し、SがGである場合の塩基配列からなるホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは後述するCpG-M(S)(配列番号39)に対応する。また、1若しくは数個とは、1~10個、より好ましくは1~5個、更により好ましくは1~3個、特に好ましくは1又は2個を意味する。

【0035】
ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、配列番号40に記載の塩基配列からなることが更に好ましい。このような塩基配列からなるホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化を強力に抑制することができる。

【0036】
ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの誘導体としては、HMGBタンパクに対する結合能を有するものであれば特に制限されず、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの骨格の少なくとも一部をリン酸ジエステル結合に変換したもの、少なくとも一部のデオキシリボースをリボースに変換したもの、少なくとも一部の塩基を除いたもの、少なくとも一部をPNA(peptide nucleic acid)に変換したもの、少なくとも一部をLNA(Locked nucleic acid)に変換したもの、少なくとも一部の塩基を塩基アナログに変換したもの等を例示できる。これらの誘導体の中でも、塩基フリーホスホロチオエートデオキシリボースホモポリマー(PS)が好ましい。

【0037】
PSとは、化学式(CPS)で表される化合物であり、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドから塩基部分を全て除いた構造を持つ。nは10~100であることが好ましく、15~25であることがより好ましい。

【0038】
上記のホスホロチオエートオリゴヌクレオチド、PS又はこれらの誘導体は、核酸合成装置等を用いて合成したものでもよく、北海道システムサイエンスやファスマック等のメーカーから購入したものでもよい。

【0039】
実施例に示すように、PSは、インビトロにおいて、0.1~50μM、より好ましくは1~10μM、特に好ましくは5μMの濃度で投与することにより、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化を抑制することができる。この結果は、そのままインビボにも適用することができる。

【0040】
CpG-B ODNは、実施例に示すように、TLR9(Toll様受容体9)を欠失した細胞、又は、TLR9の発現量が少ないMEF等の細胞を用いたインビトロ実験において、0.1~10μM、より好ましくは0.3~3μM、特に好ましくは1μMの濃度で投与することにより、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化を抑制することができる。この結果は、そのままインビボにも適用することができる。

【0041】
HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤を臨床で使用する際には、抑制剤に、賦形剤、安定化剤、保存剤、緩衝剤、溶解補助剤、乳化剤、希釈剤、等張化剤等の添加剤が適宜混合された、組成物の形態であってもよい。HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制用組成物は、必須成分である上記の抑制剤の他に、薬学的に許容される担体を含む。薬学的に許容される担体としては、医薬品等に通常使用される各種の成分、すなわち、水、低級アルコール、多価アルコール、油剤、界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子化合物、増粘剤、皮膜剤、粉体、キレート剤、pH調整剤、動植物・微生物由来の抽出物、糖類、アミノ酸類、有機アミン類、合成樹脂エマルジョン、皮膚栄養剤、ビタミン類、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、各種薬効剤等が挙げられ、上記の抑制剤の効果を損なわない範囲で適宜加えることができる。投与形態としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口剤、注射剤、坐剤、液剤等による非経口剤、あるいは軟膏剤、クリーム剤、貼付剤等による局所投与等を挙げることができる。抑制剤の使用量は症状、年齢、体重、投与方法等に応じて適宜選択される。

【0042】
1実施形態において、上記の抑制剤が抑制する、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化は、核酸によって仲介される免疫応答の活性化である。免疫応答を活性化する核酸とは、二本鎖RNA(double-stranded RNA、dsRNA)、一本鎖RNA(single-stranded RNA、ssRNA)、5’三リン酸化RNA、microRNA、ウイルスRNA、ウイルスDNA、微生物DNA(微生物由来のDNA)、真核生物DNA、B-DNA(通常のDNAの立体構造をとった合成DNA、B型DNA)ISD(IFN-stimulatory DNA)、非メチル化オリゴヌクレオチド等を意味する。ISDとは、45塩基の合成DNA(配列番号36)であり、ISDを細胞内に導入するとI型IFN誘導が起こるが、これはTLR非依存性に、IRF-3の活性化を介して行われることが知られている。本明細書において、これらの免疫応答を活性化する核酸を総称して「全ての免疫原性核酸」と呼ぶ場合がある。また、本明細書において、用語「免疫応答」は「自然免疫応答」及び「適応免疫応答」の双方を含む。

【0043】
1実施形態において、上記の抑制剤が抑制する、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化は、核酸によって仲介される免疫応答の活性化ではなく、HMGBタンパクのサイトカインとしての機能に基づく免疫応答の活性化である。上記の抑制剤がHMGBタンパクに結合することによって、HMGBタンパクのサイトカインとしての機能に基づく免疫応答の活性化が抑制される。

【0044】
HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化としては、抗原特異的な適応免疫系、多発性硬化症、死細胞による過剰な免疫応答、移植臓器拒絶反応、関節リウマチ等の自己免疫疾患、炎症性腸疾患、アレルギー、敗血症、炎症による腫瘍の増殖、核酸含有病原体により引き起こされる炎症性疾患が例示される。これらの免疫応答は不利益をもたらす例である。ここで、過剰な免疫応答とは、例えば肝臓の壊死性炎症のように、ウイルス感染、循環異常や代謝異常、単純炎症反応等の外的要因で壊死した細胞が炎症を誘発し、さらにこの炎症が新たな細胞の壊死を引き起こすという負の連鎖反応を意味する。また、死細胞は、壊死細胞であることが好ましい。また、核酸含有病原体とは、ウイルス、微生物、寄生虫等を意味する。

【0045】
上記の免疫応答を活性化する核酸をリポフェクトアミン(商品名、インビトロジェン社)やDOTAP(商品名、ロシュ社)等の陽イオン性脂質を用いてヒト細胞を含む動物細胞の細胞質内に投与すると、IFN-β、IFN-α1、IFN-α4等のI型IFN(インターフェロン)やケモカイン、炎症性サイトカインの遺伝子発現を誘導し、免疫応答が惹起されることが知られている。

【0046】
非メチル化オリゴヌクレオチドとしてCpG オリゴデオキシリボヌクレオチド(以下、CpG ODNという場合がある。)が、dsRNAとしてpoly(I:C)が、ssRNAとしてpoly(U)が、B-DNAとしてpoly(dA:dT)・(dT:dA)等が用いられる場合がある。

【0047】
CpG ODNとは、細菌DNAに出現頻度の高い、非メチル化CG配列(5’-CG-3’)を含む合成オリゴヌクレオチドである。CpG ODNにはポリGテールを有するCpG-A ODN(D型とも言われる。)や、B細胞を強力に活性化し、Th1型サイトカインの産生を誘導するCpG-B ODN(K型とも言われる。)等が存在する。CpG-B ODNとしては、例えば、5’-TCCATGACGTTCCTGATGCT-3’(配列番号1)等の配列を有するものが使用可能である。また、CpG-A ODNとしては、例えば、5’-GGTGCATCGATGCAGGGGGG-3’(配列番号2)等の配列を有するものが使用可能である。これらのCpG ODNは、部分的にリン酸ジエステル結合をホスホロチオエート結合等に変換した構造を持つものであってもよい。

【0048】
CpG ODNは10~30merのものが好ましく、poly(I:C)は10~10000merのものが好ましく、poly(U)は10~10000merのものが好ましく、poly(dA:dT)・(dT:dA)は10~10000merのものが好ましい。

【0049】
本発明は、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法を提供する。このスクリーニング方法の第1の実施形態は、被検物質の存在下及び非存在下で、HMGBタンパクと、標識核酸とを混合する混合ステップと、標識核酸に結合したHMGBタンパクを定量する定量ステップと、被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量と、被検物質の非存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量とを比較し、被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下における標識核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも少ない場合に、被検物質が、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤であると判定し、被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも多い場合に、被検物質が、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の促進剤であると判定する、判定ステップと、を含むものである。

【0050】
混合ステップにおいて、HMGBタンパクとしては、HMGB1、2又は3の組換え体をいずれも好適に使用できる。発明者らは、HMGBタンパクが、全ての免疫原性核酸に結合することを初めて明らかにした。

【0051】
標識核酸としては特に制限はないが、CpG ODN、poly(I:C)、poly(U)、B-DNA、5’三リン酸化RNA、microRNA等の合成核酸、HSV-1やワクシニアウイルスDNA等のウイルスDNA、微生物DNA、ウシ胸腺DNA等が例示できる。しかしながら、より均質であることから合成核酸であることがより好ましい。上記の合成核酸は10~100merであることが好ましく、15~25merであることがより好ましい。標識には特に制限はなく、ビオチン、FITC等の蛍光色素、ジゴキシゲニン(digoxigenin)、放射性同位元素等で行われてよい。

【0052】
被検物質としては、被検物質単体でヒト細胞を含む動物細胞を刺激した場合に、免疫応答を活性化しないものであれば特に制限はなく、核酸、核酸類似体、タンパク、低分子化合物等を使用できる。

【0053】
被検物質で動物細胞を刺激した場合に免疫応答が活性化されるか否かは、被検物質による刺激によって、IFN-β、IFN-α1、IFN-α4等のI型IFN(インターフェロン)やケモカイン、炎症性サイトカインなどの発現が増加するか否かを測定することにより調べることができる。こららの遺伝子又はタンパクの発現が増加した場合には、免疫応答が活性化したと判断することができる。

【0054】
混合ステップにおいて、被検物質の濃度は、0.1~100μMであることが好ましい。また、HMGBタンパクの濃度は1~200μg/mlであることが好ましい。また、標識核酸の濃度は0.1~100μMであることが好ましい。これらを適切なプロテアーゼ阻害剤を含むバッファー等の溶媒中で混合し、0.5~24時間反応させることが好ましい。

【0055】
定量ステップは、ストレプトアビジン結合磁性ビーズや、抗FITC抗体結合磁性ビーズ等を用いたプルダウンアッセイによって行ってもよいし、Electrophoretic Mobility Shift Assay(EMSA)等によって行ってもよい。

【0056】
例えば、標識核酸にビオチン標識核酸を用い、ストレプトアビジン結合磁性ビーズを用いたプルダウンアッセイを行う場合、混合ステップにより得られたサンプルにストレプトアビジン結合磁性ビーズを添加し、サンプル中のビオチン標識核酸をストレプトアビジン結合磁性ビーズに結合させる。続いて、磁性ビーズの磁気を利用して、標識核酸に結合したHMGBタンパクを回収する。回収したサンプルを、例えばSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)に供した後、ゲル上のHMBGタンパクを、例えばPVDF膜に転写し、抗HMGB抗体を用いて染色した後、デンシトメトリー解析等により定量することができる。

【0057】
判定ステップにおいて、被検物質の存在下及び非存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量を比較し、被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下における標識核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも少ない場合に、被検物質が、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤であると判定する。また、被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下における標識核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも多い場合に、被検物質が、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の促進剤であると判定する。

【0058】
第1実施形態のスクリーニング方法において、次のような変形が可能である。標識核酸として、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド及びその誘導体からなる群から選択される化合物、例えば、配列番号40に記載の塩基配列からなるホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを用いる。

【0059】
ここで、上記の標識核酸と、HMGBタンパクのそれぞれを、互いにFRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer、蛍光共鳴エネルギー移動)を起こす関係にある蛍光物質で標識しておく。このような関係にある蛍光物質の対としては、例えば、N,N,N’,N”-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)と5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)とFAM、BHQ-1と2’7’-ジメトキシ-4’5’-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)等が挙げられる。これにより、上記の化合物とHMGBタンパクが結合するとFRETが起こり、励起波長に対して生じる蛍光波長が変化する。したがって、試料の蛍光を観察することにより、上記の化合物とHMGBタンパクとが結合したか否かを容易に検出することが可能となる。

【0060】
混合ステップにおいて、被検物質の存在下及び非存在下で、標識した標識核酸と、標識したHMGBタンパクとを混合する。そして、定量ステップにおいて、蛍光観察によりFRETが起きたか否かを測定することにより、標識核酸とHMGBタンパクとの結合の程度を定量的に評価することにより、標識核酸に結合したHMGBタンパクを定量する。

【0061】
続いて、判定ステップにおいて、被検物質の存在下及び非存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量を比較し、被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下における標識核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも少ない場合に、被検物質が、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤であると判定する。また、被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下における標識核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも多い場合に、被検物質が、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の促進剤であると判定する。

【0062】
このような変形により、更に簡便に、効率よく、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤又は促進剤のスクリーニングを行うことができる。

【0063】
HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法の第2実施形態は、被検物質の存在下及び非存在下で、固相化されたHMGBタンパクを放置する放置(インキュベーション)ステップと、放置ステップ後の固相化されたHMGBタンパクに、標識核酸を接触させる、標識核酸接触ステップと、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸を定量する定量ステップと、被検物質の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量が、被検物質の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量よりも少ない場合に、被検物質が、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤であると判定し、被検物質の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量が、被検物質の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量よりも多い場合に、被検物質が、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の促進剤であると判定する、判定ステップと、を含むものである。

【0064】
このスクリーニング方法により、より簡便に、効率よく、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤又は促進剤のスクリーニングを行うことができる。

【0065】
放置ステップでは、固相化されたHMGBタンパクを被検物質の存在下及び非存在下で放置する。HMGBタンパクとしては、HMGB1、2又は3の組換え体をいずれも好適に使用できる。

【0066】
HMGBタンパクは固相担体にあらかじめ固相化して使用する。固相担体としては、特に制限されないが、例えば、ガラス、セラミックス、金属酸化物等の無機物質、天然高分子、合成高分子等からなり、マイクロプレート、マイクロチップ、ビーズ、フィルム、シート等の形態のものが利用できる。固相担体は、表面がアミノ基(-NH)やカルボキシル基(-COOH)等の官能基で修飾されていてもよい。

【0067】
例えば、固相担体として、96ウェルマイクロプレートを用いる場合、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)等の緩衝液に1~100μg/mlの濃度で溶解したHMGBタンパクの溶液を、マイクロプレートの各ウェルに分注し、4~37℃で0.5~24時間放置することにより、HMGBタンパクを固相化することができる。このマイクロプレートは、使用前にPBS等の緩衝液で洗浄し、結合しなかったHMGBタンパクを除去することが好ましい。また、非特異的な吸着を抑制するために、2%ウシ血清アルブミン(BSA)含有PBS(2%BSA-PBS)等の緩衝液を添加してブロッキングすることが好ましい。

【0068】
被検物質としては、被検物質単体でヒト細胞を含む動物細胞を刺激した場合に、免疫応答を活性化しないものであれば特に制限はなく、核酸、核酸類似体、タンパク、低分子化合物等を使用できる。被検物質の溶媒としては、PBS等の緩衝液を用いることができる。被検物質の非存在下で放置ステップを行う場合には、被検物質を含まない緩衝液のみを用いればよい。放置ステップにおける被検物質の濃度は、0.1~100μMであることが好ましい。また、放置ステップにおいて、対照物質の存在下で放置ステップを行う試験群を設けてもよい。対照物質としては、HMGBタンパクに結合することが分かっている核酸や、結合しないことが分かっている化合物等を用いることができ、例えば、HMGBタンパクに結合することが分かっているものとしてB-DNAを用いることができる。放置ステップは、4~37℃で0.5~24時間行うことが好ましい。放置ステップの後にPBS等の緩衝液で洗浄し、未反応の被検物質や対照物質を除去することが好ましい。

【0069】
標識核酸接触ステップにおいて、放置ステップ後の固相化されたHMGBタンパクに、標識核酸を接触させる。標識核酸としては特に制限はないが、CpG ODN、poly(I:C)、poly(U)、B-DNA、5’三リン酸化RNA、microRNA等の合成核酸、HSV-1やワクシニアウイルスDNA等のウイルスDNA、微生物DNA、ウシ胸腺DNA等が例示できる。しかしながら、より均質であることから合成核酸であることがより好ましい。上記の合成核酸は10~100merであることが好ましく、15~25merであることがより好ましい。HMGBタンパクがHMGB1である場合には、標識核酸はRNAであってもよい。標識には特に制限はなく、ビオチン、FITC等の蛍光色素、ジゴキシゲニン(digoxigenin)、放射性同位元素等で行われてよい。標識核酸接触ステップの後にPBS等の緩衝液で洗浄し、未反応の標識核酸を除去することが好ましい。ここで、放置ステップで添加した被検物質が、標識核酸のHMGBタンパクへの結合を阻害する場合があり、このような阻害を行う被検物質は、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤である。

【0070】
定量ステップにおいて、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸を定量する。標識核酸の定量方法には特に制限はない。例えば、標識核酸がビオチンで標識されていた場合には、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)やアルカリフォスファターゼ(AP)等で標識された、抗ビオチン抗体を反応させ、未反応の抗体を洗浄した後、抗体に結合していたHRPやAP等の酵素に対応した基質を反応させて、発光や発色を得る。得られた発光や発色を、プレートリーダー等を用いて定量する。

【0071】
あるいは、標識核酸がビオチンで標識されていた場合には、抗ビオチン抗体の代わりにHRPやAPで標識されたストレプトアビジンを用いてもよい。

【0072】
例えば、標識核酸がFITCで標識されていた場合には、抗FITC抗体を反応させて標識核酸を定量してもよいし、標識核酸のFITCに励起光を照射し、発生する蛍光を、蛍光プレートリーダー等を用いて定量してもよい。

【0073】
例えば、標識核酸が放射性同位元素で標識されていた場合には、マイクロプレートシンチレーションカウンター等を用いて標識核酸を定量してもよい。

【0074】
判定ステップにおいて、被検物質の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量と、被検物質の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量とを比較し、被検物質の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量が、被検物質の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量よりも少ない場合に、被検物質が、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤であると判定する。また、被検物質の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量が、被検物質の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量よりも多い場合に、被検物質が、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の促進剤であると判定する。

【0075】
図44に、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法の1つの態様を示す。放置ステップ(図44a)において、被検物質3の存在下及び非存在下並びに陽性対照物質2の存在下で、固相化されたHMGBタンパク1を放置する。続いて標識核酸接触ステップ(図44b)において、ビオチン標識B-DNA 4を接触させる。続いて定量ステップ(図44c及び図44d)において、固相化されたHMGBタンパク1に結合したビオチン標識B-DNA 4を定量する。図44cでは、酵素標識された抗ビオチン抗体5を反応させている。続いて酵素の基質6を添加し(図44d)、発光又は発色をプレートリーダー等を用いて定量する。被検物質3の非存在下(陰性対照)で放置ステップを行ったサンプルにおいては、固相化されたHMGBタンパク1に標識核酸が結合する。これに対し、陽性対照物質2の存在下で放置ステップを行ったサンプルにおいては、固相化されたHMGBタンパク1への標識核酸の結合が阻害される。図44の被検物質3の場合は、被検物質3の存在下で放置ステップを行ったサンプルにおいて、固相化されたHMGBタンパク1へのビオチン標識B-DNA 4(標識核酸)の結合が阻害されている。そして、被検物質3の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパク1に結合したビオチン標識B-DNA 4の量よりも、被検物質3の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパク1に結合したビオチン標識B-DNA 4の量が少ないため、被検物質3が、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤であると判定される。

【0076】
HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法の第3実施形態は、被検物質の存在下及び非存在下で、固相化された核酸とHMGBタンパクとを接触させる、接触ステップと、固相化された核酸に結合したHMGBタンパクを定量する定量ステップと、被検物質の存在下で固相化された核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下で固相化された核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも少ない場合に、被検物質が、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤であると判定し、被検物質の存在下で固相化された核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下で固相化された核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも多い場合に、被検物質が、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の促進剤であると判定する、判定ステップと、を含むものである。

【0077】
このスクリーニング方法により、より簡便に、効率よく、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤又は促進剤のスクリーニングを行うことができる。

【0078】
接触ステップでは、被検物質の存在下及び非存在下で固相化された核酸とHMGBタンパクとを接触させる。核酸としては、例えば、配列番号40に記載の塩基配列からなるホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを用いることができる。核酸の固相化方法は特に制限されないが、例えば、ストレプトアビジンをコートしたマルチウェルプレートに、ビオチン標識した上記の核酸を結合させること等によって行うことができる。HMGBタンパクとしては、HMGB1、2又は3の組換え体をいずれも好適に使用できる。

【0079】
被検物質としては、被検物質単体でヒト細胞を含む動物細胞を刺激した場合に、免疫応答を活性化しないものであれば特に制限はなく、核酸、核酸類似体、タンパク、低分子化合物等を使用できる。被検物質の溶媒としては、PBS等の緩衝液を用いることができる。接触ステップにおける被検物質の濃度は、0.1~100μMであることが好ましい。接触ステップは、4~37℃で0.5~24時間行うことが好ましい。接触ステップの後にPBS等の緩衝液で洗浄し、未反応の被検物質や対照物質を除去することが好ましい。接触ステップで添加した被検物質が、核酸とHMGBタンパクとの結合を阻害する場合があり、このような阻害を行う被検物質は、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤である。

【0080】
定量ステップにおいて、固相化された核酸に結合したHMGBタンパクを定量する。標識核酸の定量方法には特に制限はない。例えば、予めHMGBタンパクを蛍光物質で標識しておき、この蛍光を定量することができる。あるいは、HMGBタンパクに対する抗体を用いてHMGBタンパクを定量してもよい。

【0081】
判定ステップにおいて、被検物質の存在下で固相化された核酸に結合したHMGBタンパクの量と、被検物質の非存在下で固相化された核酸に結合したHMGBタンパクの量とを比較し、被検物質の存在下で固相化された核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下で固相化された核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも少ない場合に、被検物質が、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤であると判定する。また、被検物質の存在下で固相化された核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下で固相化された核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも多い場合に、被検物質が、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の促進剤であると判定する。

【0082】
上記のスクリーニング方法により得られた、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の促進剤は、ウイルス、微生物、寄生虫等による感染症の防御機構の活性化、抗ウイルス活性の増大、免疫細胞の分化のバランスを制御してアレルギーの病状を改善する、抗腫瘍応答を活性化する等の目的で使用することができる。これらの免疫応答は有利な効果をもたらす例である。
【実施例】
【0083】
(プルダウンアッセイ)
質量分析の前に、マウス胎児繊維芽細胞(mouse embryonic fibroblast、MEFs)をpoly(dA:dT)・(dT:dA)(B-DNA、10μg/ml)で4時間刺激した。刺激後、細胞をダウンスホモジナイザー(Wheaton science社)を用いてホモジナイザーションバッファー(20mM HEPES pH7.4、20%グリセロール、50mM KCl、2mM MgCl、1mM PMSF、10μg/ml アプロチニン、10μg/ml ロイペプチン)中でホモジナイズした。細胞質タンパク抽出物は、ホモジナイズしたサンプルを14500rpmで30分遠心して調製した。細胞質タンパク抽出物を、5’末端をビオチン標識したB-DNA 1.4μg/mlとともにインキュベートした後、ストレプトアビジン結合磁気ビーズ(インビトロジェン社)を添加して4℃で15分間インキュベートした。プルダウンしたサンプルをDNase I(インビトロジェン社)と反応バッファー(20mM Tris-Cl pH8.4、20mM MgCl、50mM KCl)中で反応させ、上清を銀染色(インビトロジェン社)又は質量分析に供した。
【実施例】
【0084】
インビトロプルダウンアッセイは、次のようにして行った。HMGB1、2又は3の組換え体を、まず、競合物質の存在下及び非存在下で室温で30分処理した。上清をビオチン標識B-DNAと4℃で30分混合した後、ストレプトアビジン結合磁気ビーズ(インビトロジェン社)を添加して結合バッファー(50mM Tris-Cl pH7.5、150mM NaCl、1mM EDTA、1%NP-40、100μg/ml ロイペプチン、1mM PMSF、1mM NaVO)中でインキュベーションした。続いて混合物を結合バッファーでよく洗浄し、SDS-PAGEで分離後、抗HMGB1、2又は3抗体を用いてイムノブロットした。
【実施例】
【0085】
(マウス、細胞、試薬)
Balb/cの遺伝的背景を持つTlr9-/-マウス以外は、C57BL/6の遺伝的背景を持つマウスを用いた。Tlr9-/-、Hmgb1-/-、Hmgb2-/-マウスの作成は常法により行った。MEFs、RAW264.7、NIH3T3、HEK293T細胞、Tlr9-/-マウスの骨髄由来cDCs(conventional dendritic cells)及びpDCs(plasmacytoid dendritic cell precursors)の維持は常法により行った。Hmgb1-/-マクロファージ、cDCs及びpDCsは、胎児肝臓造血前駆細胞(分化マーカーのない細胞をミルテニー社のMACS Lineage depletion kitで精製したもの)を、SCF(20ng/ml)、IL-3(10ng/ml)及びIL-6(10ng/ml)の存在下で2日間培養した後、20ng/ml M-CSF(マクロファージ)、20ng/ml GM-CSF(cDCs)、100ng/mlヒトFlt3L(pDCs)の存在下で6日間培養することにより調製した。SCF、IL-3及びIL-6はペプロテック社から購入した。IFN-γ及びTNF-αはR&Dシステムズから購入した。IFN-βは東レ株式会社から親切にも提供された。B-DNA及びウシ胸腺DNAはシグマ社から購入した。ビオチン標識poly(dA:dT)・(dT:dA)は北海道システムサイエンス社から購入した。ISD(IFN-stimulatory DNA)、CpG ODN、FITC標識塩基フリーホスホロチオエートデオキシリボースホモポリマー(PS、20mer)及びFITC標識塩基フリーナチュラルデオキシリボースホモポリマー(PD、20mer)はファスマック社から購入した。PDとは、PSのホスホロチオエート結合をホスホジエステル結合に変換したものである。精製ワクシニアウイルスDNA(MO株)はA.Kato及びM.Kidokoroより提供された。HSV DNAはY.Kawaguchiから親切にも提供された。5’-三リン酸RNAはC.Reis e Sousa及びJ.Rehwinkelから提供された。大腸菌DNA(微生物DNA)及びR837はインビボジェン社から購入した。poly(U)及びリポポリサッカライド(LPS)はシグマ社から購入した。poly(I:C)はGEヘルスケアバイオサイエンス社から購入した。B-DNA、poly(I:C)及びその他の核酸リガンドは、特記しない限り10μg/mlの濃度で使用した。CpG-A ODNとDOTAP(ロシュ社)の複合体形成は常法により行った。MitoTracker Deep Red 633はインビトロジェン社から購入した。抗HMGB1抗体及び抗HMGB2抗体はアブカム社から購入した。抗HMGB3抗体はトランスジェニック社から購入した。抗IRF3抗体(ZM3)はZymed社から購入した。抗β-アクチン抗体(AC-15)はシグマ社から購入した。抗NF-κB p65抗体(C20)はサンタクルズバイオテクノロジー社から購入した。抗リン酸化STAT1抗体(58D6)はセルシグナリング社から購入した。
【実施例】
【0086】
(プラスミド構築)
マウスHMGB cDNAはMEFs由来の全RNAをもとに、RT-PCRにより得て、pGEX4T3ベクター(GEヘルスケアバイオサイエンス社)のSal I及びNot Iサイトにクローニングした。グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)タグ付きHMGBタンパクは、グルタチオンセファロースビーズ(GEヘルスケアバイオサイエンス社)を用いて精製した。HMGBタンパク及びGSTタンパクはトロンビンプロテアーゼ(ノバジェン社)処理によって分離した。
【実施例】
【0087】
マウスRIG-I(配列番号3)、HMGB1(配列番号4)及びRab5(配列番号5)のcDNAは、MEF由来の全RNAに対する、逆転写を伴うポリメラーゼ連鎖反応(以下、RT-PCRという場合がある)により得られ、pCAGGS-CFP、pCAGGS-YFP及びpCAGGS-RFPベクター(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、101、15416-15421、2004を参照)のXhoI及びNotI認識部位にそれぞれクローニングし、CFP-RIG-I、YFP-HMGB1及びRFP-Rab5を得た。
【実施例】
【0088】
(イムノブロット解析)
細胞溶解及びイムノブロット解析は常法により行った。IRFダイマーはネイティブPAGE及び後に続く抗マウスIRF3抗体を使用したイムノブロット解析により行った。IRF3ダイマーの定量はNIH Imageソフトウエアにより行った。3回の独立した実験により同様の結果が得られた。
【実施例】
【0089】
(RNA解析)
RNA抽出及び逆転写反応は常法により行った。定量的リアルタイムRT-PCR解析(定量的RT-PCR)はライトサイクラー480(商品名、ロシュ社)及びSYBR Greenシステム(ロシュ社)を用いて行った。全データはグリセルアルデヒド三リン酸脱水素酵素(GAPDH)遺伝子について得られた結果を用いて標準化した、相対的発現単位で表示した。データは3重に測定し、平均±標準偏差として表示した。全てのデータについて、2回以上の独立した実験において同様の結果が得られた。
【実施例】
【0090】
定量的RT-PCRのためのプライマー配列は次のとおりであった。HMGB1 センス 5’-CCAAAGGGGAGACCAAAAAG-3’(配列番号6)、HMGB1 アンチセンス 5’-TCATAGGGCTGCTTGTCATCT-3’(配列番号7)、HMGB2 センス 5’-TGCCTTCTTCCTGTTTTGCT-3’(配列番号8)、HMGB2 アンチセンス 5’-GGACCCTTCTTTCCTGCTTC-3’(配列番号9)、HMGB3 センス 5’-GGAGATGAAAGATTATGGACCAG-3’(配列番号10)、HMGB3 アンチセンス 5’-CTTTGCTGCCTTGGTG-3’(配列番号11)、GBP1 センス 5’-CTCAGCAGCAGTGCAAAAGG-3’(配列番号12)、GBP1 アンチセンス 5’-GCTCCTGGAGGGTTTCTGTG-3’(配列番号13)、IRF7 センス 5’-GCAAGGGTCACCACACTA-3’(配列番号14)、IRF7 アンチセンス 5’-CAAGCACAAGCCGAGACT-3’(配列番号15)、IL-12p40 センス 5’-GACACGCCTGAAGAAGATGAC-3’(配列番号16)、IL-12p40 アンチセンス 5’-TAGTCCCTTTGGTCCAGTGTG-3’(配列番号17)、GAPDH センス 5’-CTCATGACCACAGTCCATGC-3’(配列番号18)、GAPDH アンチセンス 5’-CACATTGGGGGTAGGAACAC-3’(配列番号19)、IL-6 センス 5’-ATGAAGTTCCTCTCTGCAAGAGACT-3’(配列番号20)、IL-6 アンチセンス 5’-CACTAGGTTTGCCGAGTAGATCTC-3’(配列番号21)、RANTES センス 5’-ACGTCAAGGAGTATTTCTACAC-3’(配列番号22)、RANTES アンチセンス 5’-GATGTATTCTTGAACCCACT-3’(配列番号23)、IκB-α センス 5’-TTGGTGACTTTGGGTGCT-3’(配列番号24)、IκB-α アンチセンス 5’-TGACATCAGCCCCACATTT-3’(配列番号25)、IFN-α1 センス 5’-GCCTTGACACTCCTGGTACAAATGAG-3’(配列番号26)、IFN-α1 アンチセンス 5’-CAGCACATTGGCAGAGGAAGACAG-3’(配列番号27)、IFN-α4 センス 5’-GACGACAGCCAAAGAAGTGA-3’(配列番号28)、IFN-α4 アンチセンス 5’-GAGCTATGTCTTGGCCTTCC-3’(配列番号29)、IFN-β センス 5’-CCACCACAGCCCTCTCCATCAACTAT-3’(配列番号30)、IFN-β アンチセンス 5’-CAAGTGGAGAGCAGTTGAGGACATC-3’(配列番号31)。
【実施例】
【0091】
但し、実施例50、54及び56における定量的RT-PCRで使用したプライマーの塩基配列は次の通りであった。Ifna4 フォワード鎖(Fw)5’-CAATGACCTCAAAGCCTGTGTG-3’(配列番号47)、Ifna4 リバース鎖(Rv)5’-CACAGTGATCCTGTGGAAGT-3’(配列番号48)、Ifnb1(Fw)5’-CCACCACAGCCCTCTCCATCAACTAT-3’(配列番号49)、Ifnb1(Rv)5’-CAAGTGGAGAGCAGTTGAGGACATC-3’(配列番号50)、Il6(Fw)5’-ACGATGATGCACTTGCAGAA-3’(配列番号51)、Il6(Rv)5’-GTAGCTATGGTACTCCAGAAGAC-3’(配列番号52)、Tnfa(Fw)5’-TCATACCAGGAGAAAGTCAACCTC-3’(配列番号53)、Tnfa(Rv)5’-GTATATGGGCTCATACCAGGGTTT-3’(配列番号54)、Ccl5(RANTES)(Fw)5’-ACGTCAAGGAGTATTTCTACAC-3’(配列番号22)、Ccl5(RANTES)(Rv)5’-GATGTATTCTTGAACCCACT-3’(配列番号23)、Gapdh(Fw)5’-CTCATGACCACAGTCCATGC-3’(配列番号18)、Gapdh(Rv)5’-CACATTGGGGGTAGGAACAC-3’(配列番号19)。
【実施例】
【0092】
(統計解析)
対照群及び試験群の結果はスチューデントのt検定により評価した。
【実施例】
【0093】
(ELISA)
マウスIFN-β、IL-6及びIL-1βはELISAにより測定した。IFN-β ELISAキットはPBLバイオメディカルラボラトリーズ社から購入した。IL-6及びIL-1β ELISAキットはR&Dシステムズ社から購入した。全データについて、追加の独立した2回の試験において同様の結果が得られた。
【実施例】
【0094】
(RNA干渉)
siRNAベクターは、オリゴヌクレオチドをpSUPER.retro.puro レトロウイルスベクターのEcoRI及びHindIIIサイトに挿入することにより構築した。マウスHMGB1、2及び3(pan-HMGB-siRNA、以下、HMBG-siという場合がある。);HMGB2;及びレニラルシフェラーゼ(Renilla luciferase)(対照、以下、Ctrl-siという場合がある。)のsiRNAの標的配列は、それぞれ5’-GTATGAGAAGGATATTGCT-3’(配列番号32)、5’-GCGTTACGAGAAACCAGTT-3’(配列番号33)及び5’-GTAGCGCGGTGTATTATACA-3’(配列番号34)であった。遺伝子導入されたMEFs細胞はピューロマイシン(シグマ社)2μg/mlで、RAW264.7細胞はピューロマイシン4μg/mlで48時間選択した。
【実施例】
【0095】
Electrophoretic mobility shift assay (EMSA)
EMSAは常法により行った。NF-κBのコンセンサス配列(5’-TCGACCCGGGACTTTCCGCCGGGACTTTCCGCCGGGACTTTCCGG-3’、配列番号35)を用いた。NF-κB-DNA複合体中に存在するp65の存在は、抗p65抗体を用いたスーパーシフトバンドの検出により確認した。
【実施例】
【0096】
(ウイルス感染)
MOI(multiplicity of infection)1.0のHSV-1又はVSVを12時間細胞に感染させた。HSV-1及びVSVの収率を測定する場合には、常法によりプラーク形成アッセイを行った。全データについて、追加の独立した2回の試験において同様の結果が得られた。ウイルスの調製は常法により行った。
【実施例】
【0097】
(蛍光顕微鏡観察)
HeLa細胞(5×10個)を、底面がガラス製の35mm組織培養ディッシュ(松浪硝子工業株式会社)上で培養した。蛍光顕微鏡観察は、レーザー走査型共焦点顕微鏡IX81(オリンパス株式会社)を用いて行った。2重及び3重カラーイメージは連続取得モードにより撮影し、交差励起を防いだ。
【実施例】
【0098】
(オリゴヌクレオチド)
ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドであるCpG-B(配列番号37、以下「CpG-B(S)」と標記する場合がある。)、CpG-Rev(配列番号38、以下「CpG-Rev(S)」と標記する場合がある。)及びCpG-M(配列番号39、以下「CpG-M(S)」と標記する場合がある。)並びにPSを用いた。これらの化合物の塩基配列を図46に示す。図46において、下線を付した、CG(CpG-B(S))、GC(CpG-Rev(S))及びGG(CpG-M(S))は、各ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドにおける特徴的な塩基配列である。また、上記のほか、次のホスホロチオエートオリゴヌクレオチドも使用した。CpG ODN 1018(S)5’-TGACTGTGAACGTTCGAGATGA-3’(配列番号55)、ODN 1019(S)5’-TGACTGTGAAGGTTAGAGATGA-3’(配列番号56)。また、次のオリゴヌクレオチドも使用した。CpG-A 5’-ggTGCATCGATGCAgggggG-3’(配列番号2)。CpG-Aは、小文字表記の塩基はホスホロチオエート骨格をもち、大文字表記の塩基はリン酸ジエステル骨格をもつ。
【実施例】
【0099】
(マウス脾細胞の調製)
C57BL/6Jマウスの脾臓を摘出し、これにDNase I・collagenase D入りPBSを25Gの注射針(Nipro)で注入し、滲出した細胞浮遊液を回収した。さらに脾臓を新たなDNase I・collagenase D入りPBS中で細切し、これを回収して37℃インキュベーション(30分)した。両者をセルストレイナー(メッシュサイズ40μm、BD)に通し、PFE(PBS pH7.2(インビトロジェン)に1mM EDTA(GIBCO)及び2%FCS(HyClone)を添加したもの)で洗浄した後1×RBC Lysis Buffer(eBioscience)に懸濁し赤血球を溶血させた。得られた細胞をさらに2度PFEで洗浄した後、再度セルストレイナー(メッシュサイズ40μm、BD)に通し、RPMI培地に懸濁した。
【実施例】
【0100】
(ウェスタンブロッティングによるシグナル伝達経路の活性化の解析)
実施例53において、1次抗体として、次の抗体を使用した。ウサギ抗IRF3ポリクローナル抗体(Invitrogen)、ウサギ抗リン酸化IRF3(Ser396)(4D4G)抗体(Cell Signaling)、マウス抗IκBα(L35A5)抗体(Cell Signaling)、ウサギ抗リン酸化IκBα(Ser32)(14D4)抗体、(Cell Signaling)、ウサギ抗JNK抗体(Cell Signaling)、ウサギ 抗リン酸化JNK(Thr183/Tyr185)(81E11)抗体(Cell Signaling)、ウサギ抗p38 MAPキナーゼ抗体(Cell Signaling)、ウサギ抗リン酸化p38 MAPキナーゼ(Thr180/Tyr182)抗体(Cell Signaling)。また、2次抗体として、次の抗体を使用した。抗ウサギIgG HRP結合抗体(GE Healthcare)抗マウスIgG HRP結合抗体 (GE Healthcare)。
【実施例】
【0101】
(細胞質DNA又はRNAにより活性化される免疫応答におけるHMGBの役割)
(実施例1)
Hmgb1+/+MEF細胞又はHmgb1-/-MEF細胞を、B-DNA(図1a)又はpoly(I:C)(図1b)で6時間、又はリポポリサッカライド(LPS)(200ng/ml)(図1c)で2時間刺激した。IFN-β mRNAの誘導レベルを定量的RT-PCRで測定した。結果を図1に示す。「*」はHmgb1+/+MEF細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。
Hmgb1-/-MEF細胞では、細胞質へのDNA又はRNAの送達によるIFN-β誘導が低下した。
【実施例】
【0102】
(実施例2)
Hmgb2+/+MEF細胞又はHmgb2-/-MEF細胞をB-DNA(図2a)又はpoly(I:C)(図2b)で6時間、又はLPS(200ng/ml)(図2c)で2時間刺激した。IFN-β mRNAの誘導レベルを定量的RT-PCRで測定した。結果を図2に示す。「*」はHmgb2+/+MEF細胞と比較した場合にp<0.001であることを示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。
【実施例】
【0103】
Hmgb2-/-MEF細胞における、IFN-β誘導の低下は、細胞質へのDNAの送達により観察されたが、RNAの送達によっては観察されなかった。
【実施例】
【0104】
(実施例3)
全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG-si)、又は対照siRNA(Ctrl-si)を発現するレトロウイルスで形質転換したMEFに、B-DNA又はpoly(I:C)を脂質導入(リポフェクション)した。続いて、IFN-β(図3a及びe)、IFN-α4(図3b及びf)、IL-6(図3c及びg)、RANTES(図3d及びh)のmRNAの発現レベルを定量的RT-PCRで測定した。結果を図3に示す。「*」はCtrl-si-MEFと比較した場合にp<0.01であることを示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。
【実施例】
【0105】
全てのHMGBを欠失したMEFは、細胞質DNA又はRNAに対する免疫応答が欠損していた。
【実施例】
【0106】
(実施例4)
全てのHMGBを欠失したMEFに、様々な供給源から調製された核酸、すなわち、HSV-1 DNA(図4a)、ワクシニアウイルスDNA(図4b)、5’-三リン酸RNA(図4c)、微生物DNA(図4d)、ウシ胸腺DNA(図4e)、ISD(図4f)を、脂質導入により、細胞質に送達した。ISDの塩基配列は5’-TACAGATCTACTAGTGATCTATGACTGATCTGTACATGATCTACA-3’(配列番号36)である。対照としてLPSによる刺激も行った(図4g)。脂質導入から6時間後におけるIFN-β mRNAの発現量を定量的RT-PCRで測定した。結果を図4に示す。「*」はCtrl-si-MEFと比較した場合にp<0.01であることを示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。
【実施例】
【0107】
全てのHMGBを欠失したMEFを、LPS(200ng/ml)により2時間刺激した結果、IFN-βが誘導された(図4g)。これに対し、全てのHMGBを欠失したMEFは、様々な供給源から調製された核酸の細胞質への送達から6時間後におけるIFN-β誘導が欠損していた(図4a~h)。
【実施例】
【0108】
(細胞質核酸受容体に媒介されたシグナル経路の活性化、及び抗ウイルス免疫応答におけるHMGBの必要性)
(実施例5)
全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG-si)、又は対照siRNA(Ctrl-si)を発現するレトロウイルスで形質転換したMEFに、B-DNA又はpoly(I:C)を脂質導入(リポフェクション)した。IRF3の二量体化をネイティブPAGE及びそれに続くイムノブロットにより評価した。結果を図5に示す。
【実施例】
【0109】
(実施例6)
全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG-si)、又は対照siRNA(Ctrl-si)を発現するレトロウイルスで形質転換したMEFに、B-DNA又はpoly(I:C)を脂質導入(リポフェクション)した。NF-κBの活性化をEMSAにより評価した。結果を図6に示す。
【実施例】
【0110】
(実施例7)
ウイルス感染によるI型IFNの誘導を検討した。全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG-si)、又は対照siRNA(Ctrl-si)を発現するレトロウイルスで形質転換したMEFに、VSV又はHSV-1を感染させた。I型IFN、すなわち、IFN-β(図7a及びb)、IFN-α1(図7c及びd)、IFN-α4(図7e及びf)のmRNAの発現レベルを定量的RT-PCRで測定した。結果を図7に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。「*」はCtrl-si-MEFと比較した場合にp<0.01であることを示し、「**」はCtrl-si-MEFと比較した場合にp<0.05であることを示す。
【実施例】
【0111】
(実施例8)
樹状細胞(DCs)のサブセットの1つである形質細胞様樹状細胞の前駆細胞(plasmacytoid dendritic cell precursors、pDCs)においては、TLR9を介して大量のI型IFNの産生が誘導されることが知られている。脾臓由来のpDCsにおいては、DNAウイルスである1型単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virustype 1、HSV-1)により感染を受けると、TLR9を介してI型IFNの発現が誘導されるが、骨髄由来のpDCsやcDCs(conventional DCs)においては、HSV-IによるI型IFNの発現誘導に、TLR9非依存性の経路も存在することが報告されている。
【実施例】
【0112】
Hmgb1+/+又はHmgb1-/-cDCsを、TLRリガンド、すなわち、poly(I:C)(図8a及びb)、CpG-B ODN(図8c及びd)で刺激した。対照としてLPSによる刺激も行った(図8e及びf)。続いて、IL-6(図8a、c、e)及びTNF-α(図8b、d、f)のmRNAの発現レベルを定量的RT-PCRで測定した。結果を図8に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。「*」は野生型細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
【実施例】
【0113】
(実施例9)
Hmgb1+/+又はHmgb1-/-pDCsを、TLRリガンド、すなわち、CpG-B ODN(図9a)及びpoly(U)(図9b)で刺激した。対照としてR837(TLR7アゴニスト)による刺激も行った(図9c)。続いて、IFN-βのmRNAの発現レベルを定量的RT-PCRで測定した。結果を図9に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。「*」は野生型細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
【実施例】
【0114】
(HMGBへの高結合親和性核酸類似体を用いた、核酸により活性化される免疫応答の干渉)
(実施例10)
MEFはTLR9の発現量が少ないことが知られている。MEFを、1μMのCpG-B ODNによる30分間の前処理の有無の後に、B-DNA(図10a)、poly(I:C)(図10b)又はLPS(図10c)の細胞質への送達により刺激した。IFN-β mRNAの発現レベルを定量的RT-PCRで測定した。結果を図10に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。「*」は前処理された細胞の結果が、前処理されなかった細胞の結果に対してp<0.01であることを示す。
【実施例】
【0115】
(実施例11)
骨髄由来のTlr9-/-pDCsを、5μM PS又は1μM CpG-B ODNによる30分間の前処理の有無の後に、1μg/mlのpoly(U)(図11a)の脂質導入又は25μg/mlのR837(図11b)のいずれかにより8時間刺激した。IFN-β mRNAの発現を定量的RT-PCRで測定した。結果を図11に示す。「*」は前処理された細胞の結果が、前処理されなかった細胞の結果に対してp<0.01であることを示す。
【実施例】
【0116】
(HMGBの同定とそのDNA及びRNAへの結合)
(実施例12)
HMGBを同定した。B-DNAで4時間刺激したMEFの細胞質抽出物を、ビオチン結合B-DNA及びストレプトアビジン結合磁性ビーズを用いたプルダウンアッセイに供した。B-DNAに結合したタンパクをDNase I処理により溶出した。溶出されたタンパク質は、SDS-PAGE及びそれに続く銀染色により可視化され(図12a)、続いて質量分析により解析された。図12aに銀染色の結果を示す。図12bにHMGB1、2及び3に対する抗体を用いたイムノブロット解析の結果を示す。
【実施例】
【0117】
(実施例13)
HMGBのDNA、RNA及び塩基フリーホスホロチオエートデオキシリボースホモポリマー(PS)への結合を検討した。図13に結果を示す。組換えHMGB1又は2並びにビオチン結合B-DNAを用いたインビトロプルダウンアッセイを、1、3、10、30、100μg/mlの非標識核酸(B-DNA、poly(I:C)、poly(U)、ウシ胸腺DNA、微生物DNA)、R837(1、3、10、30、100μg/ml)(上及び中段パネル)、塩基フリーナチュラルデオキシリボースホモポリマー(PD;0.01、0.1、0.3、1、3μg/ml;下段パネル)、及び塩基フリーホスホロチオエートデオキシリボースホモポリマー(PS;0.01、0.1、0.3、1、3μg/ml;下段パネル)の存在下で行った。下段パネルでは、段階的に増加する非標識B-DNA又はCpG-B ODN(0.1、0.3、1、3μg/ml)も使用した。CpG-B ODN及びPSの半数阻害濃度(IC50)は非標識B-DNAのそれよりも、それぞれ150分の1及び100分の1であった。
【実施例】
【0118】
(実施例14)
組換えHMGB1及びビオチン結合poly(U)を用いて、段階的に増加する非標識CpG-B ODN、PS又はR837(0.1、1又は10μg/ml)の存在下で、インビトロプルダウンアッセイを行った。結果を図14に示す。
【実施例】
【0119】
(実施例15)
組換えHMGB3及びビオチン結合B-DNAを用いて、1又は10μg/mlの非標識B-DNA又はpoly(I:C)の存在下又は非存在下で、インビトロプルダウンアッセイを行った。結果を図15に示す。
【実施例】
【0120】
(核酸により活性化される免疫応答におけるHMGBの必須の役割)
(実施例16)
Hmgb1+/+又はHmgb1-/-MEFにB-DNA(図16a、b、c)又はpoly(I:C)(図16d、e、f)を脂質導入(リポフェクション)した。続いて、IFN-α4(図16a及びd)、IL-6(図16b及びe)、RANTES(図16c及びf)のmRNAの発現レベルを定量的RT-PCRで測定した。結果を図16に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。「*」はHmgb1+/+MEF細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。HMGB1の非存在下では、様々なサイトカイン及びケモカイン遺伝子の誘導が低下した。
【実施例】
【0121】
(実施例17)
野生型及び同腹仔由来のHmgb1-/-MEFを段階的に増加するB-DNA(0.1、1、5、10μg/ml)(図17a及びb)又はpoly(I:C)(0.1、1、5、10μg/ml)(図17c及びd)で6時間刺激、又はLPS(10、50、100、500ng/ml)(図17e及びf)で2時間刺激した。IFN-β(図17a、c、e)及びIL-6(図17b、d、f)のmRNAの発現を定量的RT-PCRで測定した。結果を図17に示す。
【実施例】
【0122】
(実施例18)
Hmgb1+/+又はHmgb1-/-cDCs(conventional dendritic cells)にB-DNA(図18a、b、c)又はpoly(I:C)(図18d、e、f)を脂質導入(リポフェクション)した。続いて、IFN-β(図18a及びd)、IFN-α4(図18b及びe)、IL-6(図18c及びf)のmRNAの発現レベルを定量的RT-PCRで測定した。結果を図18に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。「*」はHmgb1+/+cDCs細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
【実施例】
【0123】
HMGB1の非存在下では、様々なサイトカイン及びケモカイン遺伝子の誘導が低下した。cDCsにおけるpoly(I:C)に対する応答はRLR及びTLR3の双方により媒介されていると考えられる。
【実施例】
【0124】
(実施例19)
HMGB2の非存在下でのサイトカイン遺伝子の誘導を検討した。野生型及び同腹仔由来のHmgb2-/-MEFを段階的に増加するB-DNA(0.1、1、5、10μg/ml)(図19a及びb)又はpoly(I:C)(0.1、1、5、10μg/ml)(図19c及びd)で6時間刺激、又はLPS(10、50、100、500ng/ml)(図19e及びf)で2時間刺激した。IFN-β(図19a、c、e)及びIL-6(図19b、d、f)のmRNAの発現を定量的RT-PCRで測定した。結果を図19に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。
【実施例】
【0125】
(実施例20)
Hmgb1-/-MEFにおけるHMGB2のノックダウンの影響を検討した。HMGB2を標的としたsiRNA(HMBG2-si)、又は対照siRNA(Ctrl-si)を発現するレトロウイルスで形質転換したHmgb1-/-MEFを、B-DNA(図20a及びb)又はpoly(I:C)(図20c及びd)で刺激し、IFN-β(図20a及びc)又はIFN-α4(図20b及びd)のmRNAの発現を定量的RT-PCRで測定した。対照siRNA(Ctrl-si)を発現するHmgb1+/+についても、比較のために解析した。結果を図20に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。「*」は対照siRNA(Ctrl-si)を発現する細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
【実施例】
【0126】
(実施例21)
HMGB2を標的としたsiRNAの効果を検討した。野生型のMEFを、示されたsiRNAレトロウイルスで形質転換し、各HMGBタンパクの発現をイムノブロット解析により解析した。結果を図21に示す。
【実施例】
【0127】
(実施例22)
全てのHMGBを標的としたsiRNAの効果を検討した。野生型のMEFを、全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG-si)、又は対照siRNA(Ctrl-si)を発現するレトロウイルスで形質転換し、HMGB1(図22a)、HMGB2(図22b)及びHMGB3(図22c)タンパクの発現を定量的RT-PCRにより解析した。結果を図22に示す。「*」はCtrl-siを導入したMEFと比較した場合にp<0.01であることを示す。
【実施例】
【0128】
(実施例23)
全てのHMGBを標的としたsiRNAの効果を検討した。野生型のMEFを、全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG-si)、又は対照siRNA(Ctrl-si)を発現するレトロウイルスで形質転換し、各HMGBタンパクの発現をイムノブロット解析により解析した。結果を図23に示す。
【実施例】
【0129】
(実施例24)
HMGB欠失細胞における、様々な核酸による細胞質の刺激に対する、免疫応答の欠損を検討した。全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG-si)、又は対照siRNA(Ctrl-si)を発現するレトロウイルスで形質転換したMEFを、HSV-1 DNA(図24a)、ワクシニアウイルスDNA(図24b)、5’-三リン酸RNA(図24c)、微生物DNA(図24d)、ウシ胸腺DNA(図24e)、ISD(図24f)示された核酸で6時間、又はLPS(200ng/ml)(図24g)で2時間刺激した。IL-6遺伝子のmRNA発現レベルを定量的RT-PCRで測定した。結果を図24に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。「*」はCtrl-siを導入したMEFと比較した場合にp<0.01であることを示す。
【実施例】
【0130】
(実施例25)
HMGB欠失細胞における、様々な濃度の核酸リガンドに対する免疫応答の欠損を検討した。全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG-si)、又は対照siRNA(Ctrl-si)を発現するMEFを、段階的に増加するB-DNA(0.1、1、5、10μg/ml)(図25a、d)又はpoly(I:C)(0.1、1、5、10μg/ml)(図25b、e)で6時間刺激、又はLPS(10、50、100、500ng/ml)(図25c、f)で2時間刺激した。IFN-β(図25a、b、c)又はIL-6(図25d、e、f)のmRNAの発現を定量的RT-PCRで測定した。結果を図25に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。
【実施例】
【0131】
(実施例26)
HMGB欠失細胞における、様々な濃度の核酸リガンドに対する免疫応答の欠損を検討した。全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG-si)、又は対照siRNA(Ctrl-si)を発現するMEFを、段階的に増加するB-DNA(0.1、1、5、10μg/ml)(図26a、c)又はpoly(I:C)(0.1、1、5、10μg/ml)(図26b、d)で6時間刺激、又はLPS(10、50、100、500ng/ml)(図26e)で2時間刺激した。IFN-β(図26a及びb)又はIL-6(図26c、d、e)の発現をELISAで測定した。結果を図26に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。
【実施例】
【0132】
(実施例27)
HMGB欠失細胞の、様々なサイトカイン刺激への応答を検討した。全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG-si)、又は対照siRNA(Ctrl-si)を発現するMEFを、B-DNA(10μg/ml)で6時間(図27a)、IFN-β(500ユニット/ml)で6時間(図27b)、IFN-γ(1ユニット/ml)で2時間(図27c)又はTNF-α(10ng/ml)で2時間(図27d)刺激した。IFN-β(図27a)、IRF7(図27b)、GBP1(図27c)及びIκB-α(図27d)のmRNA発現量を定量的RT-PCRで測定した。結果を図27に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。基本的に、これらのリガンドの異なる量においても同じ結果が得られた。
【実施例】
【0133】
(実施例28)
HMGB欠失細胞における、IFN-γに誘導されたSTAT1の活性化を検討した。全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG-si)、又は対照siRNA(Ctrl-si)を発現するMEFをIFN-γ(1又は10ユニット/ml)で30分間刺激した。リン酸化されたSTAT1及びβ-アクチンを、抗リン酸化STAT1(p-STAT1)及び抗β-アクチン抗体でそれぞれ検出した。結果を図28に示す。
【実施例】
【0134】
(実施例29)
HMGB欠失RAW264.7細胞における、核酸による細胞質刺激に対する免疫応答の欠損を検討した。全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG-si)、又は対照siRNA(Ctrl-si)を発現するRAW264.7細胞を、B-DNA(図29a)又はpoly(I:C)(図29b)で示された時間刺激した。IFN-β遺伝子のmRNA発現量を定量的RT-PCRで測定した。結果を図29に示す。「*」はCtrl-si発現細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
【実施例】
【0135】
(実施例30)
HMBG-si又はCtrl-siを発現するRAW264.7細胞を、段階的に増加するB-DNA(0.1、1、5、10μg/ml)(図30a及びd)又はpoly(I:C)(0.1、1、5、10μg/ml)(図30b及びe)で6時間刺激、又はLPS(10、50、100、500ng/ml)(図30c及びf)で2時間刺激した。示されたサイトカイン遺伝子のmRNA発現量を定量的RT-PCRで測定した。結果を図30に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。
【実施例】
【0136】
(実施例31)
HMGB欠失NIH3T3細胞における、核酸による細胞質刺激に対する免疫応答を検討した。全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG-si)、又は対照siRNA(Ctrl-si)を発現するNIH3T3細胞を、B-DNA(図31a)又はpoly(I:C)(図31b)で示された時間刺激した。IFN-β遺伝子のmRNA発現量を定量的RT-PCRで測定した。結果を図31に示す。「*」はCtrl-si発現細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
【実施例】
【0137】
(実施例32)
HMBG-si又はCtrl-siを発現するNIH3T3細胞を、段階的に増加するB-DNA(0.1、1、5、10μg/ml)(図32a及びc)又はpoly(I:C)(0.1、1、5、10μg/ml)(図32b及びd)で9時間刺激、又はLPS(10、50、100、500ng/ml)(図32e)で2時間刺激した。IFN-β(図32a及びb)又はIL-6(図32c、d、e)のmRNA発現量を定量的RT-PCRで測定した。結果を図32に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。
【実施例】
【0138】
(実施例33)
B-DNA刺激によるインフラマソーム(inflammasome)経路の活性化と細胞死におけるHMGBの関与を検討した。
【実施例】
【0139】
Hmgb1+/+又はHmgb1-/-胎児肝臓造血前駆細胞由来マクロファージ(図33a)、及び全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG-si)、又は対照siRNA(Ctrl-si)を発現するRAW264.7細胞(図33b)にB-DNAを脂質導入し、12時間後に分泌された成熟IL-1βの量をELISAで測定した。RAW264.7細胞は50ng/mlのLPSで16時間刺激し、インフラマソームを活性化させた。結果を図33に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。図33に結果を示す。「*」は野生型細胞又はCtrl-si発現細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。NDは検出されなかったことを意味する。
【実施例】
【0140】
HMBG-si又はCtrl-siを発現するRAW264.7細胞を、段階的に増加するB-DNAで刺激した。細胞は24時間の刺激後に回収し、トリパンブルーで染色した。未処理細胞に対する生細胞の百分率を計算した。結果を図33cに示す。HMGB-siを発現しているRAW264.7細胞は、DNAに誘導される細胞死に対して、より耐性であった。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。
【実施例】
【0141】
(実施例34)
全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG-si)、又は対照siRNA(Ctrl-si)を発現するMEFに、VSV(図34a)又はHSV-1(図34b)を感染させ、24時間後にウイルスタイターを測定した。結果を図34に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。「*」はCtrl-si発現細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
【実施例】
【0142】
(実施例35)
全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG-si)、又は対照siRNA(Ctrl-si)を発現するRAW264.7細胞に、VSV(図35a、b、c)又はHSV-1(図35d、e、f)を感染させた。続いて、IFN-β(図35a及びd)、IFN-α1(図35b及びe)及びIFN-α4(c及びf)のmRNA発現量を測定した。結果を図35に示す。「*」はCtrl-si発現細胞と比較した場合にp<0.01であることを示し、「**」はCtrl-si発現細胞と比較した場合にp<0.05であることを示す。NDは検出されなかったことを意味する。
【実施例】
【0143】
(実施例36)
全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG-si)、又は対照siRNA(Ctrl-si)を発現するRAW264.7細胞に、VSV又はHSV-1を感染させた。続いて、ウイルスタイターを測定した。結果を図36に示す。「*」はCtrl-si発現細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
【実施例】
【0144】
(核酸に媒介されたTLRの活性化にはHMGBが必要である)
(実施例37)
全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG-si)、又は対照siRNA(Ctrl-si)を発現するRAW264.7細胞を、poly(I:C)(図37a及びb)又はCpG-B ODN(図37c及びd)で刺激し、IL-6(図37a及びc)及びTNF-α(図37b及びd)のmRNAの発現量を定量的RT-PCRで測定した。結果を図37に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。「*」はCtrl-si発現細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。NDは検出されなかったことを意味する。
【実施例】
【0145】
(実施例38)
全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG-si)、又は対照siRNA(Ctrl-si)を発現するRAW264.7細胞を、CpG-A ODN、並びにCpG-A ODN及びDOTAPで刺激し、IFN-β(図38a)及びIFN-α4(図38b)のmRNAの発現量を定量的RT-PCRで測定した。DOTAP(商品名、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)はDNA、RNA等の負に帯電した分子を真核細胞中にカチオンリポソームを介して導入するための試薬である。結果を図38に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。「*」はCtrl-si発現細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
【実施例】
【0146】
(実施例39)
核酸類似体を用いた刺激による、核酸により活性化される免疫応答の阻害を検討した。 MEFにB-DNAを脂質導入した後、1μM CpG-B ODNで0、1、2、3時間共刺激し、IFN-βの誘導をELISAで測定した。結果を図39に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。「*」はCpG-B ODNでの刺激を伴わない、B-DNAによる刺激と比較した場合に、p<0.01であることを示す。
【実施例】
【0147】
(実施例40)
骨髄由来Tlr9-/-cDCsを、5μM PS又は1μM CpG-B ODNで30分の前処理の有無の後に、50μg/mlのpoly(I:C)(脂質導入なし)(図40a)、又は25μg/mlのR837(図40b)で4時間刺激した。IL-12p40 mRNAの発現量を定量的RT-PCRで測定した。結果を図40に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。「*」は、前処理された細胞の結果に対する、前処理されなかった細胞の結果がp<0.01であることを示す。NDは検出されなかったことを意味する。
【実施例】
【0148】
(実施例41)
HMGB1及びRIG-Iの細胞内局在を検討した。HeLa細胞に、CFPタグを付けたRIG-I(CFP-RIG-I)及びYFPタグを付けたHMGB1(YFP-HMGB1)の発現ベクターを、RFPタグを付けたRab5(RFP-Rab5)と共に又はRFP-Rab5なしで導入した。遺伝子導入から16時間後、細胞をpoly(I:C)で2時間刺激し、レーザー走査型共焦点顕微鏡を用いて蛍光顕微鏡観察を行った。
【実施例】
【0149】
図41に発現ベクター(CFP-RIG-I、YFP-HMGB1、RFP-Rab5)を共導入された細胞の蛍光顕微鏡写真を示す。図41の上段及び下段は、それぞれ単独(左から右に、RIG-I、HMGB1、Rab5)及び重ね合わせ(左から右に、CFP-RIG-I+YFP-HMGB1、CFP-RIG-I+RFP-Rab5、YFP-HMGB1+RFP-Rab5、CFP-RIG-I+YFP-HMGB1+RFP-Rab5)の写真を示す。スケールバーは5μmを示す。多くの細胞で観察された、代表的な結果を示す。RIG-I及びHMGB1の双方が部分的にRab5と重なっており、これは、RIG-I及びHMGB1のエンドソーム膜への動員、及びおそらくはHMGBによるRIG-Iの活性化を示している。
【実施例】
【0150】
(実施例42)
CFP-RIG-I及びYFP-HMGB1発現ベクターを共導入した細胞を、poly(I:C)刺激後に、MitoTracker Deep Red 633(mitoTR、インビトロジェン社)で染色し、レーザー走査型共焦点顕微鏡を用いて蛍光顕微鏡観察を行った。図42に細胞の蛍光顕微鏡写真を示す。図42の上段及び下段は、それぞれ単独(左から右に、CFP-RIG-I、YFP-HMGB1、mitoTR)及び重ね合わせ(左から右に、CFP-RIG-I+YFP-HMGB1、CFP-RIG-I+mitoTR、YFP-HMGB1+mitoTR、CFP-RIG-I+YFP-HMGB1+mitoTR)の写真をそれぞれ示す。スケールバーは5μmを示す。
【実施例】
【0151】
ここで示されるように、RIG-IはmitoTRと重なっており、HMGB1及びmitoTRの間には、重なりは全く見られなかった。実施例41で示された結果と共に、この結果は、次のように解釈される。HMGB1によるpoly(I:C)認識の後、RIG-Iが活性化されてミトコンドリアに局在化し、そこでIPS-1/MAVSと相互作用する。
【実施例】
【0152】
これらの観察は、核酸認識及び免疫応答の活性化の一連の活動における「スナップショット」であり、この観察においては、RIG-Iの一部の画分がHMGB1と相互作用し、一方で他の画分がHMGB1から解離してIPS-1/MAVSと結合している。
【実施例】
【0153】
図43に、上記の実施例の結果に基づいて作成した、核酸によって仲介される免疫応答の活性化、すなわちHMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の概略図を示す。全ての免疫原性核酸はHMGBに結合し(promiscuous sensing、広範な認識)、これは後に続く免疫応答を活性化するための特異的パターン認識受容体による認識(discriminative sensing、特異的な認識)に必要である。
【実施例】
【0154】
(実施例43)
マイクロプレートを用いて、固相化されたHMGBタンパクを用いた、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤のスクリーニング方法を評価した。5μg/mlの濃度でPBSに溶解した組換えHMGB1タンパクを、100μlずつ、96ウェルマイクロプレートに分注し、25℃で1時間放置して固相化した。各ウェルをPBS溶液で2回洗浄後、2%BSA-PBS溶液を100μlずつ加え、25℃で1時間放置してブロッキングした。各ウェルをPBS溶液で2回洗浄後、PBS溶液のみ、75μg/mlのB-DNA、100μg/mlのpoly(I:C)、100ng/mlのLPS及び25μg/mlのR837を溶解したPBS溶液を100μlずつ添加し、25℃で1時間放置した。続いて、各ウェルをPBS溶液で2回洗浄後、1μMの5’末端をビオチン標識したB-DNA又はPBS溶液のみを100μlずつ加え、25℃で1時間放置した。続いて、各ウェルをPBS溶液で2回洗浄後、PBS溶液で200倍希釈したHRP標識抗ビオチン抗体(R&D社)を100μlずつ加え、25℃で1時間放置した。各ウェルをPBS溶液で2回洗浄後、HRPの基質溶液(BD バイオサイエンス社)を100μlずつ加え、25℃で15分間発色させた。各ウェルの吸光度をマイクロプレートリーダー(Model 680、バイオラッド社)で定量した。図45(a)に発色後のマイクロプレートの写真を示し、図45(b)に各サンプルの吸光度のグラフを示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。
【実施例】
【0155】
(HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化に対する、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド及びPSの効果)
ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドであるCpG-B(S)、CpG-Rev(S)及びCpG-M(S)並びにPSを用いた実験を行った。これらの化合物の塩基配列を図46に示す。図46において、下線を付した、CG(CpG-B(S))、GC(CpG-Rev(S))及びGG(CpG-M(S))は、各ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドにおける特徴的な塩基配列である。
【実施例】
【0156】
(インビトロプルダウンアッセイ)
(実施例44)
実施例13と同様にして、0.1、0.5、2.5、12.5、62.5μg/mlのCpG-B(S)、CpG-Rev(S)、CpG-M(S)及びPSを競合物質として、組換えHMGB1及びビオチン結合B-DNAを用いたインビトロプルダウンアッセイを行った。結果を図47に示す。CpG-Rev(S)及びCpG-M(S)(データ示さず)はPSよりも強い競合性を示した。
【実施例】
【0157】
(HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制)
(実施例45)
MEFの培地に0.1、0.25、0.5、0.75、1μMの濃度のCpG-B(S)、CpG-Rev(S)又はPSを添加し、1時間処理した。続いて、これらのMEFに5μg/mlのB-DNA又は5μg/mlのpoly(I:C)を脂質導入して24時間刺激し、IFN-βの産生をELISA法により測定した。結果を図48に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。(a)~(c)はB-DNAで刺激した結果を示し、(d)~(f)はpoly(I:C)で刺激した結果を示す。その結果、CpG-B(S)(図48a及びd)又はCpG-Rev(S)(図48b及びe)で処理したMEFにおいて、IFN-βの産生が顕著に減弱していた。また、今回実験した濃度においては、PSを用いた場合のMEFによるIFN-βの産生の抑制は、CpG-B(S)又はCpG-Rev(S)を用いた場合と比較して弱いことが明らかとなった(図48c及びf)。
【実施例】
【0158】
以上の結果から、MEFによるIFN-βの産生の抑制には、塩基部分の存在が重要であることが明らかとなった。TLR9を介した免疫応答の活性化にはCpG-B(配列番号1)の第8番目及び第9番目の塩基がCGの配列であることが重要であることが知られているが、この配列をGCに変え、リン酸ジエステル結合を全てホスホロチオエート結合に置き換えたCpG-Rev(S)(配列番号38)で処理したMEFにおいて、IFN-βの産生が顕著に減弱していた。この結果から、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制には、非メチル化CG配列(5’-CG-3’)は重要ではなく、(1)ホスホロチオエート結合を有していること、及び(2)塩基を有していること、が重要であると考えられる。
【実施例】
【0159】
(実施例46)
野生型マウス由来の骨髄細胞を、上述したようにヒトFlt3Lで分化誘導してpDCsを得た。このpDCs(以下、「Flt3-DCs」という場合がある。)を、3μMのCpG-M(S)の存在下で1時間処理した後、1μMのCpG-A(TLR9アゴニスト)又は5μg/mlのpoly(U)(TLR7アゴニスト)を脂質導入して24時間刺激し、IFN-α及びIFN-βの産生をELISA法により測定した。結果を図49に示す。(a)及び(b)はIFN-αの産生量の測定結果を示し、(c)及び(d)はIFN-βの産生量の測定結果を示す。また、(a)及び(c)はCpG-Aで刺激した結果を示し、(b)及び(d)はpoly(U)で刺激した結果を示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。その結果、Flt3-DCsは、CpG-M(S)による処理によって、CpG-A又はpoly(U)で刺激された場合のIFN-α及びIFN-βの産生が顕著に抑制されることが明らかとなった。
【実施例】
【0160】
(インビボ敗血症モデル)
(実施例47)
マウスへのLPS投与は、敗血症のモデルとして用いられる。致死量のLPSをマウスに投与した場合、血中における炎症性サイトカインTNF-α、IL-1β、IL-6の濃度はLPS投与後間もなく上昇し、2~3時間後にピークを迎え、その後数時間で基底濃度に戻る。一方、マウスの生存の経過を追うと、多くの個体が死に至るにはLPS投与から12~48時間の経過を要する。この時期に血中で高濃度に存在するサイトカインとして見出されたのが、HMGB1である。HMGB1の血中濃度は、LPS投与後8時間のうちには変化が見られず、その後上昇して、投与から16~36時間後に高濃度を維持する。血中のHMGB1濃度と敗血症の重症度が相関していること、HMGB1の中和抗体を投与すると生存率が上昇することから、敗血症の致死性に対するHMGB1の寄与の重要性が伺える。
【実施例】
【0161】
また、敗血症モデルにおいては肝細胞が壊死(ネクローシス)を起こすことが知られており、壊死細胞によって放出される核酸などのDAMPsが症状を増悪させている可能性が考えられる。これらのいわゆる炎症メディエーターを阻害することで、症状を改善できる可能性について検討した。
【実施例】
【0162】
C57BL/6マウスにLPS 1.25mg/匹を腹腔内投与した場合に惹起される敗血症モデルにおいて、CpG-M(S)の効果を検討した。LPSの投与の1時間前に、100μg/匹のCpG-M(S)又は生理食塩水を尾静脈投与し、マウスの生存率を測定した。結果を図50に示す。CpG-M(S)を投与したマウスにおいて、生存率の改善が認められた。LPSの投与により、肝臓等において細胞死が生じ、核酸が放出され、これらの核酸によって、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化が誘導されると考えられる。特定の理論に拘泥する物ではないが、CpG-M(S)の投与により、このようなHMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化が抑制されていることが考えられる。
【実施例】
【0163】
図50に示すように、CpG-M(S)の投与を行わなかった対照群(n=10)ではLPS注射後12~48時間後に全個体が死亡したのに対し、CpG-M(S)を投与後にLPSを注射したサンプル群(n=10)では70%が生存した。
【実施例】
【0164】
(塩基配列の検討)
(実施例48)
MEFに5mer、10mer(配列番号41)、15mer(配列番号42)及び20mer(配列番号43)の塩基数のpoly(dA)(プリン塩基)の塩基配列を有するホスホロチオエートオリゴヌクレオチド(以下「poly(dA)(S)」と標記する場合がある。)又は5mer、10mer(配列番号44)、15mer(配列番号45)及び20mer(配列番号46)の塩基数のpoly(dC)(ピリミジン塩基)の塩基配列を有するホスホロチオエートオリゴヌクレオチド(以下「poly(dC)(S)」と標記する場合がある。)を1時間1μMで前処理した。続いて、5μg/mlの濃度のB-DNAを脂質導入することで前処理後のMEFを刺激し、3時間後又は6時間後のIFN-βのmRNAの誘導をRT-PCRにて検討した。
【実施例】
【0165】
結果を図51に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。(a)はpoly(dA)(S)の結果を示し、(b)はpoly(dC)(S)の結果を示す。陽性対照としてCpG-M(S)で前処理したものを用い、陰性対照としてオリゴを添加せずに前処理したものを用いた。poly(dA)(S)及びpoly(dC)(S)のいずれも、B-DNA刺激によるIFN-β mRNAの誘導を抑制した。特にプリン塩基であるpoly(dA)(S)を用いた場合のIFN-β mRNAの誘導の抑制は顕著であった。また、15mer以上の長さのホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、IFN-β mRNAの誘導の抑制効果が大きかった。
【実施例】
【0166】
(核酸認識受容体シグナルを阻害する非免疫原性オリゴデオキシリボヌクレオチドの探索)
(各種オリゴデオキシリボヌクレオチド(ODN)のI型IFN産生抑制能の比較)
(実施例49)
poly(dA:dT)・(dT:dA)(B型コンフォメーションをとるdsDNA、以下、「B-DNA」という。)、dsRNAであるpoly(I:C)をマウス胎児線維芽細胞(MEF)の細胞内にリポフェクション法によって導入すると、I型IFN(IFN-α/β)及び炎症性サイトカインが産生されることが報告されている。そこでまず、予め培地中にODNを加えておくこと(以下、「ODN前処理」という。)による免疫応答抑制を、核酸刺激によるI型IFNの産生量を指標として検討した。核酸刺激の1時間前に各種ODNによる前処理を行った場合、行わなかった場合について、MEFにおけるI型IFNの産生量をELISAにて定量した。その結果、CpG-B(S)、CpG-Rev(S)、CpG-M(S)、CpG ODN 1018(S)、ODN 1019(S)を前処理に用いると、培地中のODN濃度上昇に依存してI型IFNの産生が抑制された。また、塩基をもたずホスホロチオエート骨格のみからなるODN(PS)は、上記の塩基をもつODNで前処理を行った場合よりも、I型IFN産生抑制能が低いことが明らかになった。結果を図52に示す。
【実施例】
【0167】
より詳細には、MEFにおいて、各種ODN(CpG-B(S)、CpG-Rev(S)、CpG-M(S)、CpG ODN 1018(S)、ODN 1019(S)、PS)による前処理の1時間後に、5μg/mL B-DNA(A-F)、或いは5μg/mL poly(I:C)(G-L)で刺激を行い、24時間後の培養液上清中のIFN-βをELISAで定量した。それぞれ独立した2つのサンプルを用いて、平均値と標準偏差を示した。図52中、「*」はP<0.05で、「**」はP<0.01でCpG-M(S)(+)とCpG-M(S)(-)の値に有意差があることを示す。
【実施例】
【0168】
(実施例50)
タンパク質の合成阻害がODNによる免疫応答抑制の原因である可能性を検討した。CpG-B(S)及びCpG-M(S)について、MEFにおけるI型IFN及び炎症性サイトカインのmRNAの誘導を定量的RT-PCRにて検討した。その結果、図53に示すように、CpG-B(S)、又はCpG-M(S)を前処理に用いると、I型IFN及び炎症性サイトカインのいずれも、mRNAの発現誘導が抑制された。よって、これらのODNはmRNA発現誘導より上流を標的として免疫応答抑制を行っていることが示唆された。また、CpG-M(S)と同じ塩基配列をもち且つリン酸ジエステル骨格からなるODN(CpG-M)を前処理に用いた場合には、CpG-M(S)で前処理を行った場合のようなI型IFN及び炎症性サイトカインの発現誘導の抑制が見られなかった。
【実施例】
【0169】
より詳細には、MEFにおいて、各種ODN(CpG-B(S)、CpG-M(S)、CpG-M(S)と同じ配列でリン酸ジエステル骨格をもつODN(CpG-M))による前処理の1時間後に、5μg/mL B-DNA、或いは5μg/mL poly(I:C)を細胞内に導入し、刺激を行った。刺激から3、6時間後に全RNAを回収し、(A)Ifna4、(B)Ifnb1、(C)Il6、(D)Ccl5のmRNAの誘導を定量的RT-PCRにより定量した。それぞれ独立した2つのサンプルを用いて、平均値と標準偏差を示した。図53中、N.D.は検出不能を示す。「*」はP<0.05で、「**」はP<0.01でCpG-M(S)(-)の値との間に有意差があることを示す。
【実施例】
【0170】
(核酸の取込み効率の解析)
(実施例51)
実施例50の解析より、MEFにODN前処理を施すことでB-DNA、poly(I:C)刺激によるIFN産生が抑制されることが示された。これについて、ODNはどのような機構でIFN産生を抑制しているのかについて検討した。B-DNA、poly(I:C)を用いて細胞を刺激する際、リポフェクション法によって核酸を導入する必要がある。したがって、実施例50においては、ODNがリポフェクションによるB-DNA、poly(I:C)の細胞内への取込みを阻害することにより、結果としてIFN産生が抑制されている可能性が考えられた。そこで、5’末端がFITC標識されたB-DNAを細胞内に取り込ませる際、TLR9を活性化しないと考えられるCpG-Rev(S)、CpG-M(S)、ODN 1019(S)の前処理の有無がB-DNA取込みに与える影響について検討した。結果を図54に示す。FITC標識B-DNAを導入したMEFにおいて、FITCに由来する蛍光をフローサイトメトリーにて観測した。フローサイトメトリー解析はFACSCalibur(BD)を用いて行った。この条件下において、IFN産生を阻害するCpG-B(S)、CpG-Rev(S)、CpG-M(S)で前処理したサンプル(図54、C、D、E)では処理無しのコントロール(図54、B)と比較し、同程度若しくはより強い蛍光が観測され、B-DNAの取り込みを阻害していないことが明らかとなった。一方で、ODN 1019(S)による前処理を行ったMEF(図54、F)では、コントロールの細胞群(図54、B)と比較し、FITC由来の蛍光を発する細胞が少なかったことから、ODN 1019(S)はリポフェクションによるB-DNAのMEFへの取込みを阻害していることが判明した。
【実施例】
【0171】
より詳細には、各種ODNによる前処理を行わず、FITC標識B-DNAを導入しなかったMEF(A)、3μg/mL FITC標識B-DNAのみを導入したMEF(B)、及び1μM CpG-B(S)(C)、1μM CpG-Rev(S)(D)、1μM CpG-M(S)(E)、1μM ODN 1019(S)(F)による前処理を1時間行った後、3μg/mL FITC標識B-DNAを導入したMEFについて、細胞内に取込まれたFITC標識B-DNA由来の蛍光を、フローサイトメトリーにて検出した。FITC由来蛍光の蛍光強度を横軸とし、細胞数をヒストグラムで示した。図54中、各パネル中の数値は、FITC陽性細胞の全体に占める割合を示す。
【実施例】
【0172】
ODN 1019(S)がどのようにリポフェクションによる核酸の細胞質内への導入を阻害しているかその機構は不明であるが、この様式の抑制作用の解析は、ここでは主眼とはしていない。したがって本明細書においては、ODN 1019(S)による取り込み阻害機構についてはこれ以上の解析を行わず、以下の実験には、CpG-B(S)と同様に核酸の取込みを阻害しない CpG-M(S)を用いた。
【実施例】
【0173】
(CpG-M(S)とHMGBタンパク質との結合及び核酸受容体シグナル経路の抑制)
(実施例52)
上記の結果から、CpG-M(S)によるIFN産生の抑制は、核酸の取り込み阻害によるものではないことが明らかとなった。そこで、CpG-M(S)による抑制の作用点はどこかについて検討した。核酸認識に関連するシグナル伝達分子に着目し、解析を進めた。B-DNAやpoly(I:C)の刺激によってI型IFNの誘導のみならずNF-κB経路及びMAPキナーゼ経路が活性化されることが知られているが、B-DNAやpoly(I:C)とHMGBタンパク質との結合を阻害することで、これらのシグナル伝達経路の活性化が抑制される可能性を検討した。CpG-M(S)とHMGBタンパク質との結合についてインビトロプルダウンアッセイにて検討した。HMGB1の組換えタンパク質を精製し、ビオチン標識B-DNAと混合すると、図55Aに示すように、HMGB1はB-DNAと結合した。この結合はCpG-B(S)を競合物として加えていくことで完全に阻害された。次に、このHMGB1とCpG-B(S)との強い結合をCpG-M(S)によって阻害できるかどうかを検討した。図55Bに示すように、ビオチン標識CpG-B(S)とHMGB1タンパク質を混合し、ここにCpG-M(S)を添加していくと用量依存的にCpG-B(S)とHMGB1との強い結合を阻害できることが判明した。ビオチン標識していないCpG-B(S)を添加した場合と同等に結合が阻害されたことから、CpG-M(S)はCpG-B(S)と同程度に強くHMGB1と結合することが示唆された。また同時に、図55Bに示すように、CpG-M(S)は、塩基をもたないホスホロチオエート骨格のみのODN(PS)及びCpG-M(S)と同じ配列でリン酸ジエステル骨格をもつODN(CpG-M)よりも強くHMGB1と結合することが示された。
【実施例】
【0174】
より詳細には、HMGB1の組換えタンパク質2μgと終濃度2.5μg/mLのビオチン標識B-DNAに対し、競合物(Competitor)として終濃度0、0.1、0.5、2.5、12.5、62.5μg/mLのCpG-B(S)を加え、インキュベーションした(室温、30分)。ストレプトアビジン結合磁気ビーズを用いてビオチン標識B-DNAをプルダウンし、共沈したタンパク質に対し抗HMGB1抗体を用いて、ウェスタンブロッティングによりHMGB1を検出した。結果を図55Aに示す。また、HMGB1の組換えタンパク質2μgと終濃度0.2μMのビオチン標識CpG-B(S)に対し、競合物として終濃度0、1、2、4、8、16、32μMのビオチン標識していないCpG-B(S)、CpG-M(S)、塩基をもたないホスホロチオエート骨格のみのODN(PS)、CpG-M(S)と同じ配列でリン酸ジエステル骨格をもつODN(CpG-M)を加えた。ストレプトアビジン結合磁気ビーズを用いてビオチン標識CpG-Bをプルダウンし、共沈したタンパク質に対し抗HMGB1抗体を用いて、ウェスタンブロッティングによりHMGB1を検出した。結果を図55Bに示す。
【実施例】
【0175】
(実施例53)
実施例49の検討において、HMGB1に高い結合親和性を有すると考えられるCpG-M(S)の方が、ホスホロチオエート骨格のみのPSよりも核酸刺激によるIFN誘導の抑制能が強かったこと、実施例50の検討において、CpG-M(S)がI型IFN及び炎症性サイトカインのmRNA誘導を抑制するのに対しCpG-Mは抑制しなかったことを考慮すると、CpG-M(S)による免疫応答抑制作用は、CpG-M(S)がHMGBタンパク質と強く結合することによって、免疫原性核酸のHMGBタンパク質への結合による下流の免疫受容体への結合及びシグナル伝達を阻害することに起因するのではないかと考えられた。この仮説に則れば、CpG-M(S)の抑制作用はI型IFNの誘導のみにとどまらず、NF-κBやMAPキナーゼの活性化経路にまで及んでいるはずである。そこで次に、核酸刺激によるこれら転写因子やシグナル伝達分子の活性化へのCpG-M(S)の抑制作用について検討した。
【実施例】
【0176】
B-DNAやpoly(I:C)等の核酸刺激によるI型IFNの誘導には転写因子であるIFN regulatory factor 3(IRF3)が重要な役割を果たしていることが報告されている。IRF3は、無刺激時は単量体として細胞質内に存在するが、リン酸化等によって活性化を受けると、ホモ二量体を形成し核内移行することが知られている。そこでIRF3の活性化を、リン酸化を指標に検討した。図56に結果を示す。核酸刺激によるIRF3のリン酸化は、CpG-M(S)の前処理によって顕著に抑制されていることが明らかになった。次に、NF-κB経路の活性化をIκBαのリン酸化を指標として、またMAPキナーゼ経路の活性化をc-Jun N-terminal kinase(JNK)、p38のリン酸化を指標として検討した。その結果、やはりCpG-M(S)の前処理により、これらの転写因子、シグナル伝達分子の活性化も著明に減弱していることが明らかとなった。以上のことから、CpG-M(S)はHMGBタンパク質と結合することにより、B-DNAやpoly(I:C)とHMGBタンパク質との結合を阻害し、それらによる自然免疫受容体刺激によるシグナル経路を抑制していることが示唆された。
【実施例】
【0177】
より詳細には、1μM CpG-M(S)による1時間の前処理を行った、或いは行わなかったC57BL/6Jマウス由来のMEFに対し、1μg/mL B-DNA(A)或いは1μg/mL poly(I:C)(B)を細胞質内に導入し、刺激を行った。刺激後0.5、1、1.5、2、3、4時間後のタンパク質のサンプルを回収し、IRF3、IκBα、JNK、p38のリン酸化(p-IRF3、p-IκBα、p-JNK、p-p38)を、ウェスタンブロッティングにより検出した。
【実施例】
【0178】
(CpG-M(S)の抑制作用におけるTLR9の関与の検討)
(実施例54)
上記の結果から、CpG-M(S)はB-DNAの細胞内への取込みには影響を与えず、細胞内核酸認識受容体下流のシグナル伝達経路の活性化を阻害することが明らかになった。CpG-M(S)はHMGBタンパク質を標的として免疫応答を抑制していることが強く示唆される。ところで、CpG-M(S)は、TLR9アゴニストであるCpG-B(S)と1塩基のみ異なる配列をもつ。そこで、TLR9が発現している細胞種においても、CpG-M(S)は核酸刺激による免疫系の活性化を抑制できるか否かについて検討した。また、CpG-M(S)自体がTLR9によって認識され、アゴニストとして作用してしまう可能性について検討した。Tlr9遺伝子欠損(Tlr9-/-)マウス及び対照(Tlr9+/-)マウス由来のcDCを用い、細胞内核酸刺激に対する応答がCpG-M(S)前処理によって抑制されるか検討した。図57に示すように、これらのマウス由来のcDCをB-DNA又はpoly(I:C)で刺激すると、両者のcDCにおいてI型IFN及び炎症性サイトカインの遺伝子の発現が同等に誘導された。このとき、CpG-M(S)の前処理によって、Tlr9+/- cDC、Tlr9-/- cDCのいずれの場合においてもI型IFN及び炎症性サイトカイン遺伝子の発現誘導が抑制された。以上のことより、MEF以外の細胞種においてもCpG-M(S)は核酸刺激による免疫系活性を抑制することが明らかになった。また、この抑制作用はTLR9のシグナルには依存せず、TLR9より上流の、おそらくHMGBタンパク質とCpG-M(S)の結合によってもたらされるものと推察された。さらに、B-DNA又はpoly(I:C)で刺激せず、CpG-M(S)のみ添加した場合にはI型IFNも炎症性サイトカインも誘導されなかったことから、CpG-M(S)はTLR9のアゴニストであるCpG-B(S)とは異なり、免疫原性をもたないことが明らかになった。
【実施例】
【0179】
より詳細には、Tlr9遺伝子欠損マウス(Tlr9-/-)及び対照マウス(Tlr9+/-)由来のcDCに1μM CpG-M(S)により前処理を行い、或いはコントロールとして前処理を行わず、1時間後に5μg/mL B-DNA、5μg/mL poly(I:C)を細胞内に導入し、刺激を行った。刺激から3、6時間後に全RNAを回収し、(A)Ifna4、(B)Ifnb1、(C)Il6、(D)TnfaのmRNAの誘導を定量的RT-PCRにより定量した。それぞれ独立した2つのサンプルを用いて、平均値と標準偏差を示した。図54中、N.D.は検出不能を示す。「*」はP<0.05で、「**」はP<0.01でCpG-M(S)(+)とCpG-M(S)(-)の値に有意差があることを示す。
【実施例】
【0180】
(CpG-M(S)によるTLR経路の抑制の検討)
(実施例55)
実施例54の結果より、CpG-M(S)がTLR9のさらに上流を標的として核酸刺激による免疫系活性を抑制すると考えられた。そこで、同じく核酸を認識する膜型受容体であるTLR7の下流のシグナル経路も、同様にCpG-M(S)によって抑制され得るかについて検討した。CpG-M(S)はTLR9のアゴニストとして免疫原性をもたない。よって、TLR7及びTLR9を多く発現し、それぞれのリガンドであるssRNA、CpGモチーフをもつDNAを認識すると大量のI型IFNを産生する細胞、pDCを用いて、TLR7、TLR9が核酸認識した際のI型IFNの誘導がCpG-M(S)によって抑制されるか検討した。図58に示すように、pDCをTLR9リガンドであるCpG-A、又はTLR7リガンドであるpoly(U)で刺激すると、IFN-αの産生が誘導されたが、この産生はCpG-M(S)での前処理によって抑制された。
【実施例】
【0181】
より詳細には、3μM CpG-M(S)で前処理を行った、或いは行わなかったC57BL/6Jマウス由来のpDCを、(A)TLR9リガンドである1μM CpG-A、(B)TLR7リガンドである5μg/mL poly(U)で刺激し、24時間後の培養上清中のIFN-αをELISAにて定量した。「**」はCpG-M(S)(-)と(+)との値にP<0.01で有意差があることを示す。
【実施例】
【0182】
(実施例56)
次に、定量的RT-PCRにてI型IFN遺伝子の発現誘導を解析したところ、図59に示すように、CpG-A、poly(U)のいずれを用いて刺激した場合も、mRNAのレベルでI型IFN遺伝子の発現が抑制された。このことから、CpG-M(S)はTLR7、TLR9による核酸認識に共通した機構を標的として、I型IFNの誘導を抑制していることが示唆された。
【実施例】
【0183】
より詳細には、10μM CpG-M(S)で前処理を行った、或いは行わなかったC57BL/6Jマウス由来のpDCを、1μM CpG-Aで刺激した際の(A)Ifna4、(B)Ifnb1、及び、5μg/mL poly(U)で刺激した際の(C)Ifna4、(D)Ifnb1のmRNA誘導を定量的RT-PCRにて定量した。いずれもそれぞれ独立した2つのサンプルを用いて、平均値と標準偏差を示した。N.D.は検出不能を示す。「*」はP<0.05で、「**」はP<0.01でCpG-M(S)(+)とCpG-M(S)(-)との値に有意差があることを示す。
【実施例】
【0184】
(CpG-M(S)の核酸刺激による適応免疫系活性化の抑制及び病態モデルにおける評価)
上記の結果から、インビトロにおけるCpG-M(S)の自然免疫応答抑制能が示された。病原体由来分子パターン(Pathogen-associated molecular patterns;PAMPs)や自己の組織に由来するダメージ関連分子パターン(Damage-associated molecular patterns;DAMPs)を素早く認識し、応答を行う自然免疫は、生体内の非自己を速やかに排除する点で重要である。しかし同時に、適応免疫系を活性化し、より特異性の高い免疫応答を惹起することもまた自然免疫の重要な役割である。
【実施例】
【0185】
そこで、まず、インビボにおける自然免疫応答、及びこれにより活性化される適応免疫応答は、CpG-M(S)によって抑制され得るか否かをCD8T細胞の活性化を指標に検討した。さらに、CpG-M(S)による適応免疫系の抑制に加え、上記の結果から示された、CpG-M(S)には免疫原性がないことに着眼し、実験的自己免疫性脳脊髄炎(Experimental autoimmune encephalomyelitis;EAE)や敗血症などの病態モデルにおいてCpG-M(S)が与える影響について検討した。
【実施例】
【0186】
(CpG-M(S)による抗原特異的CD8T細胞の活性化抑制)
(実施例57)
自然免疫系の活性化は適応免疫系の活性化と密接に関連している。抗原とアジュバントを投与することで抗原に特異的な適応免疫系が活性化されることは良く知られており、アジュバントが自然免疫系を活性化し、樹状細胞等において共刺激分子を発現させ、成熟化を促すことでT細胞への抗原提示を促進していると考えられている。核酸と抗原の投与によって抗原特異的な適応免疫系が惹起されることは多数報告されており、ここでは適応免疫系の活性化をCpG-M(S)が抑制できるか否か、核酸としてB-DNAを用い、抗原として卵白アルブミンタンパク質(ovalbumin;OVA)を投与した際に誘導されるOVA特異的CD8T細胞を指標に検討を行った。マウスをOVAとB-DNAで免疫する際、CpG-M(S)を投与する群と投与しない群を用意した。免疫後8日目に脾細胞を調製し、OVA特異的MHCクラスIテトラマーを用いてOVAに特異的に反応するCD8T細胞をフローサイトメトリーにて検出した。図60に示すように、OVAのみでマウスを感作させた場合(0.97%)と比較し、B-DNAと一緒にOVAで免疫した場合ではOVA特異的CD8T細胞の割合(12.6%)は有意に増強していた。このとき、CpG-M(S)を投与したマウスではこの割合(2.41%)は著明に減弱していた。すなわち、CpG-M(S)は核酸による適応免疫系の活性化を抑制できることが示された。
【実施例】
【0187】
より詳細には、(A)OVAのみ(B-DNA(-))、(B)OVAとB-DNA(B-DNA(+))、又は(C)OVAとB-DNAに更にCpG-M(S)を加えたもの(B-DNA(+)・CpG-M(S)(+))をC57BL/6Jマウスに腹腔内投与した。8日後の脾臓におけるOVA特異的CD8T細胞の割合を、MHCクラスIテトラマーを用いて、フローサイトメトリーにより解析した。図60に、CD8T細胞についてゲートをかけた細胞を表示している。また、CD44陽性且つMHCテトラマー陽性の分画を赤枠で囲んでいる。表記の数字はCD8T細胞にゲートをかけた細胞集団におけるCD44陽性且つMHCテトラマー陽性分画の割合を示す。
【実施例】
【0188】
(EAE病態におけるCpG-M(S)の評価)
(実施例58)
EAEはヒトの多発性硬化症(Multiple sclerosis;MS)の動物モデルのひとつである。MSは中枢神経系における自己免疫性の脱ミエリン炎症疾患であり、マウスのEAEでは、ミエリン由来のペプチド(MOGペプチド35-55、Operon、以下「MOGペプチド」という。)をフロイント完全アジュバント(complete Freund’s adjuvant;CFA)とともに正常マウスに投与し、免疫することで発症させることができる。MSとEAEに共通する病理的所見は、中枢神経系へのB細胞、T細胞、マクロファージの浸潤とその結果生じる神経障害であり、その病態の増悪には核酸が関与しているという報告もある。
【実施例】
【0189】
そこで、CpG-M(S)を投与することによってEAEの病態を軽減できるのではないかと考え、実験を行った。EAEでは、尾や四肢の麻痺といった神経障害の重症度をスコア化することで、自己免疫性炎症の進行を評価できる。EAEの病態スコアは、表1の基準に基づいて判定した。MOGペプチドとCFAとをマウス後背部に皮下注射し、免疫した。注射1週間後から2日おきに3回、CpG-M(S)(n=4)又はコントロールとしてPBSを投与(n=4)し、その後の病態の評価を行った。結果を図61に示す。CpG-M(S)投与群では、対照群と比較しEAEの病態が顕著に軽減されていた。すなわち、CpG-M(S)はEAEの病態を軽減できることが示された。
【実施例】
【0190】
より詳細には、C57BL/6Jマウスの後背部へのMOGペプチド及びCFAの投与後1週間後から2日おきに3回、CpG-M(S)(CpG-M(S)(+)、n=4)又は対照としてPBS(CpG-M(S)(-)、n=4)を尾静脈注射により投与した。図61に、MOGペプチドの投与からの日数を横軸として、各群の病態スコアの経過を平均値と標準偏差で示した。「*」はP<0.05で、「**」はP<0.01で、「***」はP<0.001でCpG-M(S)(+)とCpG-M(S)(-)との値に有意差があることを示す。
【実施例】
【0191】
【表1】
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【実施例】
【0192】
(壊死細胞による免疫系活性化に対するCpG-M(S)の抑制効果)
(実施例59)
次に、壊死細胞によって惹起される免疫系の活性化(死細胞による過剰な免疫応答)をCpG-M(S)が抑制できるかどうかについて検討した。マウスマクロファージ系細胞株であるJ774.1細胞を繰り返し凍結融解することで壊死を誘導し、この壊死細胞をCpG-M(S)の存在下、非存在下で脾細胞と混合して、炎症性サイトカインであるIL-6及びTNF-αの産生をELISAにて検討した。図62に示すように、CpG-M(S)で前処理した脾細胞では、前処理のCpG-M(S)の濃度の上昇に依存してIL-6及びTNF-αの産生量が減弱する結果が得られた。これらの結果は、ターゲットの脾細胞での応答を抑制しているのか、又は壊死細胞によって放出される炎症性メディエーターを直接阻害しているのか不明ではあるが、CpG-M(S)が壊死細胞によって惹起される免疫系活性化を抑制できることを示しているものと考えられた。
【実施例】
【0193】
図62において、J774.1細胞に壊死を誘導させ、CpG-M(S)の存在下、非存在下で脾細胞と混合し、24時間後の培養上清中の(A)IL-6及び(B)TNF-αをELISAにて定量した結果を示す。
【実施例】
【0194】
(考察)
(免疫応答抑制ODNの探索とCpG-M(S)の作用点の解析)
CpG-B(S)はCGモチーフを1箇所もち、このCGがTLR9に認識されることで細胞内の免疫応答が惹起される。よって、TLR9の発現が低いMEFにおいてはCpG-B(S)は免疫応答を惹起しないものの、TLR9を発現するpDCやマクロファージも存在する生体内においては、免疫応答抑制効果のみを期待することは困難である。したがって、TLR9による認識を免れることを目的として、CpG-B(S)の配列中のCGをGCに置き換えたCpG-Rev(S)、GGに置き換えたCpG-M(S)を合成し、これらがMEFにおいてCpG-B(S)と同様のI型IFN産生抑制効果を持つことを確認した。また同じくCGモチーフをもつCpG ODN 1018(S)に対し、CGをGG及びAGで置き換えたODN 1019(S)を合成し、同様に検討したところ、CpG ODN 1018(S)、ODN 1019(S)の両者ともにMEFにおいてI型IFN産生抑制を示した。
【実施例】
【0195】
続いて行った各種ODNによるB-DNA取込み阻害の検討において、CpG-Rev(S)及びCpG-M(S)と、ODN 1019(S)とでは大きな違いが見られた。CpG-Rev(S)及びCpG-M(S)ではB-DNAの取り込みに影響を与えなかったものの、ODN 1019(S)による前処理を行ったMEFでは細胞内に取込まれたB-DNAが少なかったことから、ODN 1019(S)はB-DNAの細胞内への取り込みを阻害していると考えられた。取り込み阻害機構の詳細は不明であるが、ODNの全体配列やこれに起因するODNの立体構造が何らかの影響を与えていると考えられる。取り込み阻害による免疫系抑制効果は本研究の焦点とするものではないため、ODN 1019(S)を用いたその後の検討は行なわず、CpG-M(S)に焦点をあて、解析を進めた。
【実施例】
【0196】
CpG-M(S)はどのようにして核酸刺激に対する応答を阻害しているのか、阻害の作用点はどこかについて検討した。CpG-M(S)はHMGBタンパク質と強く結合し、その機能を阻害することで、核酸に対する免疫応答を抑制しているのではないかと考えた。まずインビトロプルダウンアッセイによる解析から、CpG-M(S)はHMGB1と強く結合することが示された。さらに、CpG-M(S)がHMGBタンパク質の機能を阻害することで核酸刺激による応答を抑制しているとする仮説は、本研究で得られた以下の4つの結果によって支持される。
【実施例】
【0197】
(i)細胞内核酸刺激によって活性化される主要な転写因子、シグナル伝達分子である、IRF3、NF-κB及びMAPキナーゼのいずれも、CpG-M(S)での前処理によって活性化が顕著に抑制されていた。このことから、CpG-M(S)がこれらの転写因子やシグナル伝達分子の活性化経路の上流で作用していることが示唆される。また、B-DNA、poly(I:C)のどちらの刺激によるシグナル経路活性化もCpG-M(S)によって抑制されたことから、CpG-M(S)は細胞内のDNA及びRNAの両者の認識機構に共通するしくみを標的としていると考えられる。
【実施例】
【0198】
(ii)CpG-M(S)による抑制作用は、Tlr9遺伝子欠損cDCにおいても観察された。すなわち、CpG-M(S)による抑制の作用点はTLR9のシグナル伝達系よりさらに上流であることが示唆される。TLR9のシグナル経路の活性化にもHMGB1が必要であるという報告と併せて考えると、CpG-M(S)はTLR9より上流においてHMGB1を阻害しているものと考えられた。
【実施例】
【0199】
(iii)pDCにおいて、TLR7、9のどちらの刺激によるI型IFN誘導もCpG-M(S)によって抑制された。このことから、上述の(i)、(ii)と併せて、CpG-M(S)は細胞内核酸認識機構のみならずTLRによる核酸認識にも共通するしくみを標的としていると考えられる。これは、CpG-M(S)がHMGB1を阻害しているとする仮説を支持するものと考えられる。
【実施例】
【0200】
(iv)CpG-M(S)のHMGB1に対する結合は、塩基部分をもたずホスホロチオエート骨格のみからなるPSのそれと比較し、非常に強いことが明らかとなった。PSもHMGB1と結合はするものの結合親和性は低く、また同時に核酸刺激に対する免疫応答の抑制作用も、CpG-M(S)と比較して非常に弱いことが判明した。このことは、ODNとHMGB1との結合の強さがODNの免疫応答の抑制作用の強さと相関していることを示唆しており、ODNがHMGB1を阻害することによってこの抑制作用がもたらされるという仮説を支持しているものと考えられる。
【実施例】
【0201】
HMGBタンパク質に強く結合するための核酸の要因として、以下の3つの要素が必要であると考えられる。
【実施例】
【0202】
(i)ホスホロチオエート結合骨格を有するオリゴDNAは、通常のホスホジエステル結合骨格のオリゴDNAよりも、HMGB1との結合が強い。
【実施例】
【0203】
(ii)塩基部位が存在するODNの方が、塩基をもたない骨格のみのものより、HMGB1との結合が強い。このとき、結合親和性は塩基配列には依存しないと考えられる。実際、塩基部位が全てアデニンもしくはチミンであり且つホスホロチオエート骨格をもつODNを前処理に用いた場合においても、核酸刺激による免疫応答は抑制されるという知見を得ている。ただし、CpG-B(S)のようにオリゴDNA内にCGモチーフをもつことでTLR9に認識されてしまい、免疫応答を活性化してしまう可能性も考えられる。なお、CGモチーフを有しないCpG-M(S)には免疫系活性化能は認められなかった。
【実施例】
【0204】
(iii)ODNによる抑制作用には15mer以上の鎖長が必要である。上記のホスホロチオエート骨格、及びアデニンもしくはチミンのみから成る塩基部位を有する、鎖長5mer、10mer、15mer又は20merのODNを用いて抑制作用を検討したところ、20merのものでは抑制効果が見られたが、それ以下の鎖長ではほとんど抑制が認められなかった。これらの知見から、オリゴDNAとHMGBタンパク質との結合、及び免疫応答の抑制作用には、ホスホロチオエート骨格を有し、20mer程度の鎖長で且つ塩基部位を有することが重要であると推察される。これらの特徴を明らかにしたことは、HMGBタンパク質を標的とした抑制剤を考える上で有用な情報であると期待される。
【実施例】
【0205】
次に、CpG-M(S)には免疫系活性化能はないことに着眼し、核酸が関与するような病態を軽減する抑制剤として、CpG-M(S)を用いることについて検討した。OVAを抗原としてB-DNAと一緒にマウスに免疫した際のOVA特異的CD8T細胞の活性化はCpG-M(S)の投与によって顕著に抑制されていることが明らかとなった。すなわち、CpG-M(S)は自然免疫系の活性化を抑制するのみならず、インビボにおいて適応免疫系をも抑制できることが判明した。抗原特異的CD8T細胞の活性化に関しては、CD40とTLRの刺激が相乗的に働くことが報告されており、このときのTLRの刺激はI型IFNの誘導を行う要因として考えられている。したがって、CpG-M(S)投与によって観察されたCD8T細胞の活性化の抑制は、CpG-M(S)が樹状細胞等において自然免疫系の活性化を阻害されることで、引き続いて誘導される適応免疫系をも抑制されるものと考えられる。しかし、CpG-M(S)が直接CD8T細胞に感作する可能性等、その他の影響も厳密には否定できない。
【実施例】
【0206】
CpG-M(S)は自然免疫系のみならず適応免疫系をも抑制できるという観点から、自己免疫疾患のモデルの1つであるEAE病態モデルにおいて、CpG-M(S)の評価を行った。その結果、CpG-M(S)の投与によってEAEの病態が劇的に改善できることが判明した。今回の解析で用いたプロトコルでは、MOGペプチドをCFAと混合して正常マウスに投与した。よって、MOGペプチド特異的MHCクラスII拘束性CD4T細胞の活性化が誘導される。しかし、EAEの病態には、T細胞応答に留まらず、様々な因子がその増悪に寄与していることが報告されており、TLR9を介したシグナルの関与も指摘されている。EAEの病態の軽減は、こうした核酸認識受容体シグナルをCpG-M(S)が抑制している可能性も考えられた。
【実施例】
【0207】
(HMGB1の炎症性サイトカインとしての役割とCpG-M(S))
CpG-M(S)を抗HMGB1抗体のように個体に投与することによってHMGB1の炎症性サイトカイン機能を阻害し、敗血症の病態を抑制できる可能性を検討した。マウスへのLPS投与による敗血症モデルにおいて評価した結果、CpG-M(S)を予め投与しておくことによって、生存率が顕著に改善することが明らかとなった。MEFやRAW264.7などの細胞において、LPS刺激によるサイトカインの産生自体はCpG-M(S)は抑制しないという知見が得られており、CpG-M(S)は細胞へのLPS刺激そのものを抑制しているものではないことが示唆される。
【実施例】
【0208】
CpG-M(S)の作用点の可能性として、LPS投与によって血中に放出されたHMGB1とCpG-M(S)が会合し、HMGB1の炎症性メディエーターとしての機能を阻害していることが考えられる。或いは、LPS投与によって肝細胞が壊死を起こすことが知られていることから、壊死などによって放出された核酸が惹起する免疫応答を、CpG-M(S)が抑制していることも考えられる。
【実施例】
【0209】
そこで、J774.1細胞に壊死を生じさせ、脾細胞と混合したところ、ODNを投与しない場合には脾細胞において産生されるIL-6やTNF-αなどの炎症性サイトカインが、CpG-M(S)の投与によって抑制されていた。調製した壊死細胞溶液には、細胞から流出したHMGB1と壊死細胞由来の核酸の両者に加え、それらの複合体も含まれていると考えられることから、この結果は、現段階では上記の2つのいずれの仮説にも矛盾しない。炎症性メディエーターとしてのHMGB1をCpG-M(S)が結合することで阻害しているのか、壊死細胞による免疫系活性化を抑制しているのか、その両者の可能性があるのか、さらには核酸の関与の有無などを明らかすることで、今後CpG-M(S)を生体に投与することも視野に入れることができると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0210】
本発明により、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化、すなわち、抗原特異的な適応免疫系、多発性硬化症、死細胞による過剰な免疫応答、移植臓器拒絶反応、自己免疫疾患、炎症性腸疾患、アレルギー、敗血症、炎症による腫瘍の増殖、核酸含有病原体により引き起こされる炎症性疾患等の新たな原理に基づいた抑制剤が提供される。また、HMGBタンパクによって仲介される免疫応答の活性化の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法が提供される。
【符号の説明】
【0211】
1…HMGBタンパク、2…陽性対照物質、3…被検物質、4…ビオチン標識B-DNA、5…抗ビオチン抗体、6…基質。
図面
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