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明細書 :多孔質バルク体からなる有機質分離材、それを利用した有機質分離方法および有機質分離装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-073490 (P2014-073490A)
公開日 平成26年4月24日(2014.4.24)
発明の名称または考案の名称 多孔質バルク体からなる有機質分離材、それを利用した有機質分離方法および有機質分離装置
国際特許分類 B01D  69/02        (2006.01)
B01D  61/36        (2006.01)
B01D  71/02        (2006.01)
B01D  71/32        (2006.01)
C04B  38/00        (2006.01)
C04B  35/14        (2006.01)
C04B  35/18        (2006.01)
C04B  35/10        (2006.01)
C07C  29/76        (2006.01)
C07C  31/04        (2006.01)
C07C  31/08        (2006.01)
C07C  31/10        (2006.01)
C07C  51/43        (2006.01)
C07C  53/08        (2006.01)
C07C 253/34        (2006.01)
C07C 255/03        (2006.01)
C07D 319/12        (2006.01)
FI B01D 69/02
B01D 61/36
B01D 71/02
B01D 71/32
C04B 38/00 303Z
C04B 35/14
C04B 35/18
C04B 35/10 Z
C07C 29/76
C07C 31/04
C07C 31/08
C07C 31/10
C07C 51/43
C07C 53/08
C07C 253/34
C07C 255/03
C07D 319/12
請求項の数または発明の数 19
出願形態 OL
全頁数 22
出願番号 特願2013-190386 (P2013-190386)
出願日 平成25年9月13日(2013.9.13)
優先権出願番号 2012201087
優先日 平成24年9月13日(2012.9.13)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】三宅 通博
【氏名】亀島 欣一
【氏名】西本 俊介
【氏名】猪木 栄作
【氏名】佐々木 彩香
出願人 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001070、【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
審査請求 未請求
テーマコード 4C022
4D006
4G019
4G030
4H006
Fターム 4C022JA10
4D006GA28
4D006MA22
4D006MA31
4D006MB03
4D006MB11
4D006MB15
4D006MB17
4D006MB19
4D006MC01X
4D006MC02
4D006MC28
4D006MC30
4D006PA01
4D006PB14
4D006PB32
4D006PB70
4G019FA15
4G030AA36
4G030AA37
4G030CA09
4G030GA18
4G030GA27
4H006AA02
4H006AA04
4H006AD17
4H006BB31
4H006BS10
4H006FE11
要約 【課題】多孔質バルク体からなる新規な有機質分離材を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、ガス透過率が5×10-14~2×10-112の範囲にある多孔質バルク体からなる有機質分離材であり、さらには多孔質バルク体からなる有機質分離材に水とアルコールなどの有機質からなるガス状態の混合物を接触させることにより、有機機質を効率よく分離する方法であり、さらには多孔質バルク体を備えた有機質分離装置である。本発明の多孔質バルク体からなる有機質分離材を利用することにより、従来の蒸留法にくらべて、低エネルギーで水と有機質からなる混合物または有機質同士からなる混合物を分離することができる。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
ガス透過率が5×10-14~2×10-112の範囲にある多孔質バルク体からなる有機質分離材。
【請求項2】
前記ガス透過率が1×10-13~1×10-112の範囲にある請求項1に記載の多孔質バルク体からなる有機質分離材。
【請求項3】
前記多孔質バルク体の細孔径が1~100μmの範囲にある請求項1または2に記載の多孔質バルク体からなる有機質分離材。
【請求項4】
前記多孔質バルク体の細孔径が3~50μmの範囲にある請求項1~3のいずれかに記載の多孔質バルク体からなる有機質分離材。
【請求項5】
前記多孔質バルク体の厚さが1~10mmの範囲にある請求項1~4のいずれかに記載の多孔質バルク体からなる有機質分離材。
【請求項6】
前記多孔質バルク体の厚さが2~7mmの範囲にある請求項1~5のいずれかに記載の多孔質バルク体からなる有機質分離材。
【請求項7】
前記多孔質バルク体がアルミナ、シリカ、およびゼオライト以外のアルミノシリケートからなる群から選ばれる少なくとも1種類の多孔質バルク体である請求項1~6のいずれかに記載の多孔質バルク体からなる有機質分離材。
【請求項8】
前記多孔質バルク体がステンレスおよびアルミニウムからからなる群から選ばれる少なくとも1種類の多孔質バルク体である請求項1~6のいずれかに記載の多孔質バルク体からなる有機質分離材。
【請求項9】
前記多孔体がフッ素樹脂からからなる多孔質バルク体である請求項1~6のいずれかに記載の多孔質バルク体からなる有機質分離材。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の多孔質バルク体からなる有機質分離材に、水と有機質からなるガス状態の混合物または有機質同士からなるガス状態の混合物を接触させることを特徴とする有機質分離方法。
【請求項11】
前記有機質がアルコールである請求項10に記載の有機質分離方法。
【請求項12】
前記有機質がメチルアルコール、エチルアルコールまたはプロピルアルコールである請求項10または11に記載の有機質分離方法。
【請求項13】
前記有機質が有機カルボン酸である請求項10に記載の有機質分離方法。
【請求項14】
前記有機質が酢酸である請求項10または13に記載の有機質分離方法。
【請求項15】
前記水と有機質からなる混合物または有機質同士からなる混合物を、加熱手段を備えた蒸発装置に供給し、前記混合物のガスを発生させる工程(A)と、
前記蒸発装置から発生した前記混合物のガスを前記多孔質バルク体からなる有機質分離材の一方の側から導入し、前記有機質分離材の他方の側から前記有機質分離材を透過した前記混合物のガスを排出する工程(B)と、
からなる請求項10~14のいずれかに記載の有機質分離方法。
【請求項16】
前記工程(B)において、前記工程(A)で発生するガスの圧力によって、および/または系の減圧によって、前記混合物のガスが前記多孔質バルク体からなる有機質分離材を透過するようにする請求項15に記載の有機質分離方法。
【請求項17】
請求項1~9のいずれかに記載の多孔質バルク体からなる有機質分離材を備えた有機質分離装置。
【請求項18】
請求項15に記載の有機質分離方法を実施するための有機質分離装置であって、
前記工程(A)において、前記水と有機質からなる混合物または有機質同士からなる混合物のガスを発生させるための、加熱手段を備えた蒸発装置と、
前記工程(B)において、前記蒸発装置から発生した混合物のガスを前記多孔質バルク体からなる有機質分離材の一方の側から導入するための機構と、前記有機質分離材の他方の側から前記有機質分離材を透過した前記混合物のガスを排出するための機構と、
を備えた請求項17に記載の有機質分離装置。
【請求項19】
前記工程(B)において、前記工程(A)で発生するガスの圧力によって、および/または系の減圧によって、前記混合物のガスが前記多孔質バルク体からなる有機質分離材を透過するようにする機構を備えた請求項18に記載の有機質分離装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質バルク体からなる有機質分離材、それを利用した有機質分離方法および有機質分離装置に関する。より詳しくは、本発明は、優れたガス透過率を有する多孔質バルク体からなる有機質分離材を使用することにより、アルコール等の有機質を効率よく分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発酵により得られるバイオエタノールの濃度は数mass%~10mass%程度であるので、燃料や工業原料として利用するためには、濃縮が欠かせない。エタノールの濃縮は、一般に膨大なエネルギーを投入して蒸留・脱水法により行なわれている。そのため、バイオエタノールの低コストで高効率な分離濃縮技術の開発を目指して、ゼオライト膜や高分子膜を用いた分離濃縮法が検討されている。たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12には、ゼオライト(シリカライト、MFI、MOR、CHA、FAU、LTA等)の膜を用いてアルコールを分離する方法が多く提案されている。また、特許文献13には、高分子膜としてポリ尿素またはポリアミドを用いてエタノールを分離濃縮する方法が提案されている。しかし、これらのゼオライト分離膜および高分子膜はいずれもガス透過率が小さく、アルコールの分離速度が小さいという欠点がある。
なお、アルミナは膜の基板として使われているが、アルミナ膜を使ったアルコールの分離濃縮に関する報告はほとんどない。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2005-87882号公報
【特許文献2】特開2006-43576号公報
【特許文献3】特開2006-42673号公報
【特許文献4】特開2011-83750号公報
【特許文献5】特開2012-081463号公報
【特許文献6】特開2012-067091号公報
【特許文献7】特開2012-066183号公報
【特許文献8】特開2011-121040号公報
【特許文献9】特開2011-115691号公報
【特許文献10】特開2011-83750号公報
【特許文献11】特開2010-88992号公報
【特許文献12】特開2007-185639号公報
【特許文献13】特開平5-245345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ゼオライト膜や高分子膜は有機質の分離においてガス透過性が悪く、分離効率が悪いことに鑑み、さらに優れた多孔質バルク体からなる有機質分離材を開発することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、これまで有機質分離材としては使用されてこなかった特定の材質の多孔質バルク体が、優れたガス透過率を有する、水と有機質からなるガス状態の混合物または有機質同士からなるガス状態の混合物から有機質を分離するための好適な有機質分離材として使用できることを見出した。そして、このような有機質分離材を利用した有機質分離方法および有機質分離装置を使用することにより、アルコール等の有機質を効率よく分離することができることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は下記の事項を包含する。
[1]ガス透過率が5×10-14~2×10-112の範囲にある多孔質バルク体からなる有機質分離材。
[2]前記ガス透過率が1×10-13~1×10-112の範囲にある[1]に記載の多孔質バルク体からなる有機質分離材。
[3]前記多孔質バルク体の細孔径が1~100μmの範囲にある[1]または[2]に記載の多孔質バルク体からなる有機質分離材。
[4]前記多孔質バルク体の細孔径が3~50μmの範囲にある[1]~[3]のいずれかに記載の多孔質バルク体からなる有機質分離材。
[5]前記多孔質バルク体の厚さが1~10mmの範囲にある[1]~[4]のいずれかに記載の多孔質バルク体からなる有機質分離材。
[6]前記多孔質バルク体の厚さが2~7mmの範囲にある[1]~[5]のいずれかに記載の多孔質バルク体からなる有機質分離材。
[7]前記多孔質バルク体がアルミナ、シリカ、およびゼオライト以外のアルミノシリケートからなる群から選ばれる少なくとも1種類の多孔質バルク体から構成される[1]~[6]のいずれかに記載の多孔質バルク体からなる有機質分離材。
[8]前記多孔質バルク体がステンレスおよびアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種類の多孔質バルク体から構成される[1]~[6]のいずれかに記載の多孔質バルク体からなる有機質分離材。
[9]前記多孔質バルク体がフッ素樹脂からからなる多孔質バルク体から構成される[1]~[6]のいずれかに記載の多孔質バルク体からなる有機質分離材。
[10][1]~[9]のいずれかに記載の多孔質バルク体からなる有機質分離材に、水と有機質からなるガス状態の混合物または有機質同士からなるガス状態の混合物を接触させることを特徴とする有機質分離方法。
[11]前記有機質がアルコールである[10]に記載の有機質分離方法。
[12]前記有機質がメチルアルコール、エチルアルコールまたはプロピルアルコールである[10]または[11]に記載の有機質分離方法。
[13]前記有機質が有機カルボン酸である[10]に記載の有機質分離方法。
[14]前記有機質が酢酸である[10]または[13]に記載の有機質分離方法。
[15]前記水と有機質からなる混合物または有機質同士からなる混合物を、加熱手段を備えた蒸発装置に供給し、前記混合物のガスを発生させる工程(A)と、
前記蒸発装置から発生した前記混合物のガスを前記多孔質バルク体からなる有機質分離材の一方の側から導入し、前記有機質分離材の他方の側から前記有機質分離材を透過した前記混合物のガスを排出する工程(B)と、
からなる[10]~[14]のいずれかに記載の有機質分離方法。
[16]前記工程(B)において、前記工程(A)で発生するガスの圧力によって、および/または系の減圧によって、前記混合物のガスが前記多孔質バルク体からなる有機質分離材を透過するようにする[15]に記載の有機質分離方法。
[17][1]~[9]のいずれかに記載の多孔質バルク体からなる有機質分離材を備えた有機質分離装置。
[18][15]に記載の有機質分離方法を実施するための有機質分離装置であって、
前記工程(A)において、前記水と有機質からなる混合物または有機質同士からなる混合物のガスを発生させるための、加熱手段を備えた蒸発装置と、
前記工程(B)において、前記蒸発装置から発生した混合物のガスを前記多孔質バルク体からなる有機質分離材の一方の側から導入するための機構と、前記有機質分離材の他方の側から前記有機質分離材を透過した前記混合物のガスを排出するための機構と、
を備えた[17]に記載の有機質分離装置。
[19]前記工程(B)において、前記工程(A)で発生するガスの圧力によって、および/または系の減圧によって、前記混合物のガスが前記多孔質バルク体からなる有機質分離材を透過するようにする機構を備えた[18]に記載の有機質分離装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、アルミナ、シリカ、ゼオライト以外のアルミノシリケート、ステンレス、アルミニウム、フッ素樹脂など、これまで有機質分離材以外の用途に使用されてきた多孔質バルク体を有機質分離材として使用することにより、アルコール等の有機質を効率よく分離することができるようになり、たとえば、バイオマス発酵等によりえられる低濃度アルコールを高濃度アルコールに分離濃縮することが可能となる。
【0008】
さらに、本発明の多孔質バルク体からなる有機質分離材を使用した有機質分離方法および有機質分離装置には、従来の蒸留法にくらべて、きわめて低エネルギーで水と有機質または有機質同士を分離することができるという特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施例で用いられたガス透過率試験機である。
【図2】図2は、実施例で用いられた有機物分離濃縮試験機である。
【図3】図3は、実施例6(表5)に示す多孔質バルク体のガス透過率に対する、30分間の透過量(黒い丸印、右軸)およびその透過溶液のエタノール濃度(黒い四角印、左軸)のプロットである。
【図4】図4は、実施例7において測定された、実施例6で用いたアルミナ試料(アルミナー1)の5 mass%のエタノール水溶液に対する透過量と分離時間のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
—有機質分離材のガス透過率—
本発明の有機質分離材は、ガス透過率が5×10-14~2×10-112の範囲にある多孔質バルク体からなる有機質分離材であり、さらに好ましくはガス透過率が1×10-13~1×10-112の範囲にある多孔質バルク体からなる有機質分離材である。

【0011】
ここで、多孔質バルク体からなる有機質分離材のガス透過率は次の方法により測定されるものである。多孔質バルク体を10mmφ、厚さ3mmのディスク状に成形し、治具に取り付け、ガス透過率測定用の試験体とする。試験体をガス透過率試験機(図1)に取り付け、ガス供給圧力(大気圧との差分)Pが0.01,0.02,および0.03MPaの条件で高純度窒素ガスの透過流量Qを求め、式(1)を用いて、窒素ガスの透過率を算出する。

【0012】
μ=ηQL/PA (1)
式(1)中、Aは試料の断面積、Lは試料の厚さである。また,ηは窒素ガスの室温における動粘係数で、1.75×10-5 Paを用いる。

【0013】
—有機質分離材の細孔径—
本発明の有機質分離材は、好ましくは、細孔径が1~100μmの範囲にある多孔質バルク体からなる有機質分離材であり、さらに好ましくは、細孔径が3~50μm、たとえば5~50μmの範囲にある多孔質バルク体からなる有機質分離材である。

【0014】
ここで、多孔質バルク体からなる有機質分離材の細孔径は次の方法により測定されるものである。水銀圧入法(水銀ポロシメータ)により多孔質バルク体の細孔径分布(測定可能範囲;5.5nm~500μm)を測定して最も分布の多い細孔径を決定し、それを前記多孔質バルク体の細孔径とみなす。

【0015】
本発明の有機質分離材は、好ましくは、厚さが1~10mmの範囲にある多孔質バルク体からなる有機質分離材であり、さらに好ましくは、厚さが2~7mmの範囲にある多孔質バルク体からなる有機質分離材である。

【0016】
本発明の有機質分離材は、好ましくは、アルミナ、シリカ、およびゼオライト以外のアルミノシリケートからなる群から選ばれる少なくとも1種類の多孔質バルク体から構成される有機質分離材、ステンレスおよびアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種類の多孔質バルク体から構成される有機質分離材、あるいはフッ素樹脂からなる多孔質バルク体から構成される有機質分離材である。これらの有機質分離材のそれぞれについて以下に詳細に説明する。

【0017】
-アルミナからなる多孔質バルク体-
本発明の有機質分離材のうちでアルミナからなる多孔質バルク体は次のようにして製造される。

【0018】
骨材となるアルミナや水酸化アルミニウム粉末を主原料とし、これに水と造孔材となる有機物を加えてスラリーを作製し、この原料スラリーを鋳込み成形し、乾燥により水分を除いた後、500~700℃に焼成して、造孔材を除去し、残ったアルミナ骨格を1000~1500℃で焼成することで製造される。

【0019】
得られるアルミナ多孔質バルク体の多孔性は、用いる造孔材の大きさと添加量で制御され、目的の形状や用途に応じて決められる。造孔材としては、セルロースやカーボンに加えて、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルアルコール等が挙げられ、これらの粉末や繊維が使用される。
市販の多孔質アルミナ、例えば、アルミナろ過板などが利用可能である。

【0020】
-シリカからなる多孔質バルク体-
本発明の有機質分離材のうちでシリカからなる多孔質のバルク体は次のようにして製造される。

【0021】
骨材となる珪石粉末を主原料とし、これに水と造孔材となる有機物を加えてスラリーを作製し、この原料スラリーを鋳込み成形し、乾燥により水分を除いた後、500~700℃で造孔材を除去して残ったシリカ骨格を1000~1500℃で焼成することで製造される。

【0022】
得られるシリカ多孔質バルク体の多孔性は、用いる造孔材の大きさと添加量で制御され、目的の形状や用途に応じて決められる。造孔材としては、セルロースやカーボンに加えて、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルアルコール等が挙げられ、これらの粉末や繊維が使用される。
市販の多孔質シリカ、例えばガラスろ過板などが利用可能である。

【0023】
-ゼオライト以外のアルミノシリケートからなる多孔質バルク体-
本発明の有機質分離材のうちでゼオライト以外のアルミノシリケートからなる多孔質バルク体は、焼成法や水熱法等により製造される。

【0024】
耐火物などに代表されるアルミノシリケート多孔質バルク体は、骨材となるアルミノシリケート粉末を主原料とし、これに水と造孔材となる有機物を加えてスラリーを作製し、この原料スラリーを鋳込み成形し、乾燥により水分を除いた後、500~700℃で造孔材を除去して残ったアルミノシリケート骨格を1000~1500℃で焼成することで製造される。

【0025】
得られるアルミノシリケート多孔質バルク体の多孔性は、用いる造孔材の大きさと添加量で制御され、目的の形状や用途に応じて決められる。骨材には、珪石、アルミナや水酸化アルミニウムに加えて、長石、カオリン粘土、ハロイサイト粘土、雲母粘土、ムライトなどが用いられる。造孔材としては、セルロースやカーボンに加えて、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルアルコール等が挙げられ、これらの粉末や繊維が使用される。

【0026】
市販のアルミノシリケート多孔質バルク体、例えば耐火断熱レンガ等が利用可能である。
アルミノシリケート多孔質バルク体である軽量気泡コンクリート(ALC)は、ボールミル等で粉砕された粉末珪石等の珪酸質と、セメント粉末や生石灰粉末等の石灰質とを主原料とし、これに水と発泡剤であるアルミニウム粉末等の添加物とを加えてスラリーを作製し、この原料スラリーを、補強筋を予め配設した型枠内に打設し、アルミニウム粉末の反応により発泡させると共に、石灰質原料の反応により半硬化(半硬化養生)させ、その後水熱処理で養生させることで製造される。これらの過程で珪酸カルシウム水和物であるトバモライト(Ca5NaxSi6-xAlxH2O18・4H2O)等が生成する。

【0027】
-ステンレスから構成される多孔質バルク体-
本発明の有機質分離材のうちでステンレスから構成される多孔質バルク体は次のようにして製造される。

【0028】
ステンレスの多孔質バルク体は、一般に粉末冶金法でつくられる。例えば、ステンレス粉末(平均粒径が1~30μm)と熱可塑性バインダーとを混合・混練し、所望の形状に成形後、成形体を脱脂・焼結することにより、多孔質バルク体を製造する。この焼結過程で、金属粉末の粒子同士の間で原子の拡散現象が生じ、これにより成形体が徐々に緻密化することによって焼結に至る。

【0029】
バインダーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
市販のステンレス多孔質バルク体、例えばSUS316焼結体等が利用可能である。

【0030】
-アルミニウムから構成される多孔質バルク体-
アルミニウムの多孔質バルク体の作製法の一つとして発泡法がある。発泡アルミニウムは、軽量かつ低融点のアルミニウムを溶融し、そこに発泡剤を投入する、あるいは不活性ガスをバブリングすることで均一に起泡させ、これを冷却することで得られる。例えば、金属アルミニウムを溶融し、これに増粘剤(例えば金属カルシウム)を加え、発泡剤(例えば、水素化チタン、炭酸塩)を1~3重量%加えて、密閉状態のもとで発泡させると、均一な独立気泡の発泡アルミニウムが得られる。

【0031】
-フッ素樹脂から構成される多孔質バルク体-
フッ素樹脂であるポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕多孔質バルク体は、PTFEの耐熱性、耐薬品性、耐候性、電気的絶縁性、非粘着性等に加え、多孔質化により比重の低下、気体・液体等の含有・透過、誘電率の低下等の性質が付与される。

【0032】
PTFE多孔体は、PTFE樹脂を融点以上の温度で焼成した後、粉砕して得られるPTFEの焼成粉砕物を作製し、PTFEの焼成粉砕物を金型内に置き、圧力を加えながら融点近傍で焼成することで得られる。例えば,焼成粉砕物を1~800g/cm2の圧力で所定形状に成形し、焼成することでPTFE多孔体が作製される。
市販のPTFE多孔質バルク体、例えばPTFEフィルターなどが利用可能である。

【0033】
-有機質分離材の切削加工-
本発明の多孔質バルク体から構成される有機質分離材は、用途に応じて、切削加工、ドリル加工、研磨加工等の機械加工により任意の形状に加工することが可能である。例えば、混合溶液の分離やガス分離などの用途のために、チューブ状や円盤状に機械加工することができる。円盤状に加工する場合は、バンドソー等で円盤状に切削し、紙ヤスリやグラインダー等で所望の直径に調整する。

【0034】
-有機質分離方法-
本発明の有機質分離材は、水と混和しやすい揮発性の有機質(有機化合物)と水との分離に利用することができる。

【0035】
水と混和しやすい揮発性の有機質として、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどのアルコール、ギ酸、酢酸などの有機カルボン酸、さらにアセトン、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン、アセトニトリル、1,4-ジオキサンなどがあげられる。

【0036】
本発明の有機質分離材を、アルコール等の有機物の分離材として利用する方法は次のとおりである。一般的なバイオエタノールは濃度5~10mass%程度のエタノール水溶液として回収される。本発明の有機質分離材を用いて、エタノール水溶液をガス状態にした上で有機質分離材に通過させることにより、上記エタノール水溶液を濃縮することができる。2~3回程度濃縮操作を繰り返すことにより、蒸留等の公知の手法に比べて遙かに効率的に(低エネルギーで)、バイオエタノールのエタノール濃度を90mass%程度にまで高めることができる。

【0037】
また、本発明の有機質分離材は、有機質の混合物から一方の有機質の分離に利用することができる。このとき有機質の混合物としては、たとえば2種またはそれ以上の揮発性の有機質の混合物があげられ、異なる2種の有機質またはそれ以上の有機質の混合物としては、たとえばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどのアルコール、ギ酸、酢酸などの有機カルボン酸、さらにアセトン、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン、アセトニトリル、1,4-ジオキサンなどが例示できる。さらに有機質としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、へプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロへプタンなどの脂肪族または脂環式炭化水素などを例示することができる。本発明の有機質分離材は、前記に例示したものの中から、適宜に選択した有機質の混合物の分離に適用される。

【0038】
本発明の有機質分離材は、従来蒸留法では分離が困難であった異性体混合物、たとえば1-プロパノールと2-プロパノールのプロパノール異性体混合物、1-ブチルアルコール、2-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコールなどのブチルアルコール異性体混合物、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレンなどのキシレン異性体混合物から目的の異性体を分離することもできる。

【0039】
本発明の有機質分離材を水とアルコールからなる混合物からアルコールを分離する方法について具体的に説明する。そのときのアルコールの濃度は任意であるが、通常は1~95mass%、好ましくは5~90mass%である。水とアルコールからなる混合物が液体状態(アルコール水溶液)であるときは、分離の際にこれを加熱等によりガス状態にして、本発明の有機質分離材に接触させるようにする。接触の際の温度は、通常15~65℃、好ましくは25~55℃である。一般的には、バイオエタノールは濃度5~10mass%程度のエタノール水溶液として回収されるので、これから分離操作を繰り返すことにより、バイオエタノールのエタノール濃度を90mass%程度にまで高めることができる。

【0040】
また、本発明の有機質分離材と他の有機質分離材、たとえばゼオライトからなる多孔質バルク体とを組み合わせて利用することもできる。たとえば、本発明の多孔質バルク体からなる有機質分離材を用いてエタノールを分離すると、分離を繰り返しても90mass%程度で濃縮限界となる。そこで、さらに濃縮するためには、本発明者らが別途提案(PCT/JP2012/056535: WO2012/124727)したゼオライトからなる多孔質バルク体を組み合わせて濃縮すると95mass%以上まで濃縮することができる。

【0041】
-有機質分離プロセス-
本発明の有機質分離材を利用することにより、有機質の好適な分離プロセス(方法)を実施することができる。すなわち、本発明の多孔質バルク体からなる有機質分離材に、水と有機質からなるガス状態の混合物または有機質同士からなるガス状態の混合物を接触させることにより、その有機質を混合物から分離することができ、とくにエタノールの分離濃縮に適用して好ましい結果がもたらされる。このような分離方法は「蒸気透過法」としてすでに知られている方法に相当し、有機質分離材として本発明の多孔質バルク体を用いる点に特徴がある。

【0042】
本発明の有機質分離方法の好適な実施形態としては、たとえば、
前記水と有機質からなる混合物または有機質同士からなる混合物を、加熱手段を備えた蒸発装置に供給し、前記混合物のガスを発生させる工程(A)と、
前記蒸発装置から発生した前記混合物のガスを前記多孔質バルク体からなる有機質分離材の一方の側から導入し、前記有機質分離材の他方の側から前記有機質分離材を透過した前記混合物のガスを排出する工程(B)と、
からなる有機質分離方法が挙げられる。

【0043】
本発明の有機質分離プロセスにおいて、工程(A)で用いられる蒸発装置の温度は20~70℃、好ましくは30~60℃である。
また、工程(B)では、工程(A)で発生するガスの圧力によって、および/または系の減圧によって、混合物のガスが多孔質バルク体からなる有機質分離材を透過するようにすることが好ましい。

【0044】
ここで、有機質分離材を透過した後の水と有機質の混合物のガス(混合ガス)において、水と有機質のどちらが濃縮されるか(どちらの濃度が高くなるか)は、用いる有機質分離材および混合ガスに含まれる有機質の種類によって異なる場合がある。すなわち、有機質分離材を透過した後の混合ガス中の有機質の濃度が、有機質分離材を透過する前の混合ガス中の有機質の濃度より高くなる場合も、低くなる場合もあり得る。

【0045】
たとえば、後記実施例に示すように、アルミナからなる多孔質バルク体に、アルコール水溶液、1, 4-ジオキサン水溶液またはアセトニトリル水溶液のガスを透過させた場合は、透過後の混合ガスにおいて、それぞれアルコール、1, 4-ジオキサン、アセトニトリルなどの有機質が濃縮される。一方で、同じくアルミナからなる多孔質バルク体に酢酸水溶液のガスを透過させた場合は、透過後の混合ガスにおいて水が濃縮される、換言すれば有機質分離材を透過させる前の混合ガスにおいて酢酸が濃縮される。

【0046】
また、有機質同士の混合ガスを有機質分離材に透過させた場合に、有機質分離材を透過した混合ガスにおいてどちらの有機質が濃縮されるかも、用いる有機質分離材および混合ガスに含まれる有機質の種類によって異なる可能性がある。

【0047】
したがって、有機質分離材を透過した後の混合ガス中に目的とする有機質が濃縮される場合は、前記工程(B)に続いて、その透過後の(排出される側にある)混合ガスから目的とする有機質の濃度が高い混合物の液体(混合液)を回収する工程(C1)を、さらに行うことができる。逆に、有機質分離材を透過する前の混合ガス中に目的とする有機質が濃縮される場合は、前記工程(B)に続いて、その透過前の(導入される側にある)混合ガスから目的とする有機質の濃度が高い混合物の液体(混合液)を回収する工程(C2)を、さらに行うことができる。これは、混合ガスが水と有機質の混合ガスである場合も、有機質同士の混合ガスである場合も共通である。

【0048】
-有機質分離装置-
本発明の多孔質バルク体からなる有機質分離材を備えた有機質分離装置を利用することにより、有機質の好適な分離プロセスを実施することができる。このような分離装置は「蒸気透過法」を実施するための装置としてすでに知られているものに相当し、有機質分離材として本発明の多孔質バルク体を用いる点に特徴がある。

【0049】
本発明の有機質分離装置の好適な実施形態の例としては、たとえば、
前記工程(A)において、前記水と有機質からなる混合物または有機質同士からなる混合物のガスを発生させるための、加熱手段を備えた蒸発装置と、
前記工程(B)において、前記蒸発装置から発生した混合物のガスを前記多孔質バルク体からなる有機質分離材の一方の側から導入するための機構と、前記有機質分離材の他方の側から前記有機質分離材を透過した前記混合物のガスを排出するための機構と、
を備えた有機質分離装置が挙げられる。

【0050】
混合物のガスを有機質分離材の一方の側から導入するための機構は、たとえば、混合ガスを発生させるための加熱手段を備えた蒸発装置と、分離材が備えられたチャンバーとを連結するような導入管および導入口のような形態であってもよいし、混合ガスを発生させるための加熱手段を備えた蒸発装置の上部に(同じチャンバー内に)導入管等を介さず分離材を直接据え置くような形態であってもよい。

【0051】
また、混合物のガスを有機質分離材の他方の側から排出するための機構は、たとえば、分離材が備えられたチャンバーまたは分離材が備えられた蒸発装置と連結された排出管および排出口のような形態であってもよい。

【0052】
有機物分離装置は、前記工程(B)において、前記工程(A)で発生するガスの圧力によって、および/または系の減圧によって、前記混合物のガスが前記多孔質バルク体からなる有機質分離材を透過するようにする機構を備えていることが好ましい。特に、系の減圧によって混合物のガスが前記多孔質バルク体からなる有機質分離材を透過するようにする機構が好ましく、たとえば、系内のガスを系外に排出することにより系内の圧力を下げるポンプ等の減圧装置を、前記排出管の先に連結させて用いることができる。

【0053】
また、前述したような有機質分離プロセスにおいて、有機質分離材を透過した後の混合ガス中に目的とする有機質が濃縮されていて、その透過後の(排出される側にある)混合ガスから目的とする有機質の濃度が高い混合物の液体(混合液)を回収する実施形態が想定される場合は、有機質分離装置はさらにそのための機構、たとえば、混合ガスを冷却して混合液とするための機構(トラップ等)を、前記排出機構の下流側に備えることができる。一方、前述したような有機質分離プロセスにおいて、有機質分離材を透過する前の混合ガス中に目的とする有機質が濃縮されていて、その透過前の(供給される側にある)混合ガスから目的とする有機質の濃度が高い混合物の液体(混合液)を回収する実施形態が想定される場合は、有機質分離装置はさらにそのための機構、たとえば、混合ガスを冷却して混合液とするための機構を前記供給機構の上流側に備えることができる。

【0054】
このような装置の基本的な構成は、たとえば、図2で用いられた有機物分離濃縮試験機に準じて、あるいは公知の蒸気透過法用の装置に準じて作製することができる。
本発明の有機質分離装置を利用することにより、従来の蒸留法にくらべて、きわめて低エネルギーでもって、水と有機質または有機質同士を分離することができるという特徴がある。

【0055】
-有機質分離方法および有機質分離装置の利用可能性-
本発明の有機質分離方法および有機質分離装置は、実験室レベルから工業的なプラントレベルのいずれにおいても利用が可能である。たとえば、実験室的規模としては従来蒸留法により溶媒回収が行われていたが、それに代わり本発明の多孔質バルク体を使用した溶媒回収装置として利用が可能である。

【0056】
また、石油化学工業などの化学工業においても、従来蒸留法により溶媒回収が行われているが、それに代わり本発明の多孔質バルク体を使用した溶媒回収装置として利用が可能である。
いずれの場合にも、本発明の多孔質バルク体を使用した溶媒回収装置として利用すると、従来の蒸留法にくらべて低エネルギーであといえる。

【0057】
-有機質分離材の他の用途-
本発明の有機質分離材は、従来の粉状または膜状のゼオライトや、それらにバインダーを添加して製造される成型体と同様に、分子ふるい能、吸着能、イオン交換能、固体酸性などを活かした各種の用途に利用することができる。本発明の有機質分離材はガスの透過率が大きく、処理速度が大きいという特徴がある。

【0058】
本発明の有機質分離材の用途は特に限定されるものではないが、代表的な用途の一つとして、その多孔質材質および孔のサイズ等の性質に応じて、様々な分子が混合している液体または気体中から特定の分子を分離ないし吸着する分離・吸着材としての用途が挙げられる。本発明の有機質分離材は、気体中に混合している水を細孔に吸着させることができるので、脱水・乾燥材として利用することができる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
-分離濃縮装置-
多孔質バルク体を10mmφ、厚さ3mmのディスク状に成形し、治具に取り付け、分離濃縮性能測定用の試験体とした。多孔質バルク体による有機物含有水溶液の分離濃縮実験は、図2に示す有機物分離濃縮試験機を用い蒸気透過法で行なわれた。40℃の5、50、70、90mass%の有機物含有水溶液からの蒸気を30分間多孔質バルク体を通過させ、液体窒素で冷却したトラップで通過蒸気を回収した。回収量を秤量し、回収液中の有機物濃度をガスクロマトグラフで分析した。回収された溶液の全量から流速(フラックス)を算出した。また、回収前後の有機物の濃度変化から、次式を用いて分離係数を算出した。
(Y/Y)/(X/X) (3)
なお、Xは供給側、Yは透過側の、有機物(O)および水(W)の質量分率である。
【実施例】
【0060】
[実施例1]
-アルミナ多孔質バルク体の作製-
アルミナ原料にはタイメイ化学工業(株)社製のTM-300Dを用い,造孔材には総研化学(株)社製の粒径が10,20,および30μmの単分散PMMAアクリル樹脂粒子(MX-1000,MX-2000,およびMX-3000)を用いた。100mLのプラスチック製のポットに2mmφのジルコニアボールを100g入れ、アルミナとPMMAが体積比で6:4,5:5,4:6となるようにアルミナ5.00gに対してPMMAを1.02g,1.53g,2.29g添加し、溶媒としてエタノールを24g用いて、ポットへの充填率が40%の状態で60rpm、6時間ボールミル混合した。得られたスラリーを70℃の恒温槽中で一晩乾燥させ、乾燥物をメノー製の乳鉢を用いて解砕して、造孔材入りのアルミナ粉末を得た。この粉末1.50gを秤量し、ステンレス製の20mmφのダイスを利用して50MPaで一軸加圧成形した。得られた成形体を昇温速度5.0℃/minで600℃まで加熱し、600℃で1時間熱処理することで造孔材であるPMMAを焼くことで除去した。次に、1000℃までを昇温速度10℃/min、1000℃から1500℃までを昇温速度5.0℃/minで加熱し、1500℃で2時間熱処理することで、アルミナ多孔質バルク体を得た。
【実施例】
【0061】
[実施例2]
30μmのPMMAをアルミナに対して50%添加して、実施例1で作製したアルミナ多孔質バルク体(30μm,50%)について、気孔率、ガス透過率、アルコール分離濃縮性能を評価した。アルキメデス法で測定した気孔率は54%であった。多孔質バルク体を10mmφ、厚さ3mmのディスク状に成形し、治具に取り付け試験体とした。この試験体のガス透過性能を図1に示す装置で測定したところ、2.28x10-13m2と見積もられた。
【実施例】
【0062】
次に、試験体のアルコール分離濃縮性能を図2に示す装置で評価し、アルコール濃度をガスクロマトグラフで測定した。アルコール水溶液には5mass%,50mass%,70mass%,90mass%のメタノール水溶液、エタノール水溶液、1-プロパノール水溶液を用い、30分間の分離濃縮実験を行ない、透過量よりフラックス(kg(h・m2)-1)、濃縮前後の濃度変化より分離係数を算出した。評価結果を表1示す。
【実施例】
【0063】
【表1】
JP2014073490A_000003t.gif
【実施例】
【0064】
[実施例3]
アルミノシリケート多孔質バルク体として、市販の耐火断熱レンガ、イソライト工業(株)社製のISD-COR(Al2O3;78mass%,SiO2;20mass%)を用いた。耐火レンガの気孔率は47%であった。耐火断熱レンガを10mmφ、厚さ3mmのディスク状に成形し、治具に取り付け試験体とした。この試験体のガス透過性能を図1に示す装置で測定したところ、1.00x10-11m2と見積もられた。
【実施例】
【0065】
次に、試験体のアルコール分離濃縮性能を図2に示す装置で評価し、アルコール濃度をガスクロマトグラフで測定した。アルコール水溶液には5mass%,50mass%,70mass%,90mass%のメタノール水溶液、エタノール水溶液、1-プロパノール水溶液を用い、30分間の分離濃縮実験を行ない、透過量よりフラックス(kg(h・m2)-1)、濃縮前後の濃度変化より分離係数を算出した。評価結果を表2に示す。
【実施例】
【0066】
【表2】
JP2014073490A_000004t.gif
【実施例】
【0067】
[実施例4]
ステンレス多孔質バルク体として、市販のステンレス焼結体、小段金属(株)社製の細孔径10μmのSUS316L焼結体を用いた。SUS316L焼結体の気孔率は46%であった。焼結体を10mmφ、厚さ3mmのディスク状に成形し、治具に取り付け試験体とした。この試験体のガス透過性能を図1に示す装置で測定したところ、7.55x10-12m2と見積もられた。
【実施例】
【0068】
次に、試験体のアルコール分離濃縮性能を図2に示す装置で評価し、アルコール濃度をガスクロマトグラフで測定した。アルコール水溶液には5mass%,50mass%,70mass%,90mass%のメタノール水溶液、エタノール水溶液、1-プロパノール水溶液を用い、30分間の分離濃縮実験を行ない、透過量よりフラックス(kg(h・m2)-1)、濃縮前後の濃度変化より分離係数を算出した。評価結果を表3に示す。
【実施例】
【0069】
【表3】
JP2014073490A_000005t.gif
【実施例】
【0070】
[実施例5]
PTFE多孔質バルク体として、市販のPTFEフィルター、アドバンテック(株)社製の細孔径10μmのPF100を用いた。PTFEフィルターの厚さが1mmであったので、3枚重ねて試験体とした。この試験体のガス透過性能を図1に示す装置で測定したところ、6.29x10-12m2と見積もられた。
【実施例】
【0071】
次に、試験体のアルコール分離濃縮性能を図2に示す装置で評価し、アルコール濃度をガスクロマトグラフで測定した。アルコール水溶液には5mass%,50mass%,70mass%,90mass%のメタノール水溶液、エタノール水溶液、1-プロパノール水溶液を用い、30分間の分離濃縮実験を行ない、透過量よりフラックス(kg(h・m2)-1)、濃縮前後の濃度変化より分離係数を算出した。評価結果を表4に示す。
【実施例】
【0072】
【表4】
JP2014073490A_000006t.gif
【実施例】
【0073】
[実施例6]
実験に用いた18種類(アルミナ系、シリカ系、アルミノシリケート系、ステンレス系、アルミニウム系、PTFE)の多孔質バルク体のガス透過率、5 mass%のエタノール水溶液に対する30分間の透過量およびその透過溶液のエタノール濃度(分離濃縮濃度)を表5に示す。また、図3にガス透過率に対する30分間の透過量およびその透過溶液のエタノール濃度のプロットを示す。ガス透過率の増加と共に、透過量は増加するが、分離濃縮率が低下した。この結果より、アルコールの分離濃縮性能を左右する因子の1つがガス透過率と考えられる。
【実施例】
【0074】
【表5】
JP2014073490A_000007t.gif
【実施例】
【0075】
[実施例7]
実施例6で用いたアルミナ試料(アルミナー1)の5 mass%のエタノール水溶液に対する透過量の時間依存性を図1に示す装置で測定した。測定結果を図4に示す。一定の透過速度で透過量は直線的に増加した。この結果は、エタノール濃縮がバルク体内での多段の蒸留(繰り返しの蒸留)によるのではなく、他の機構によることを示す。細孔内の狭い部分でエタノールと水が凝縮、広い部分で蒸発を繰り返すことで、エタノールが濃縮されるならば、分離時間と共に狭い部分が閉塞され、透過速度が低下し、透過量が減ってくる。しかし、多孔質バルク体による分離においては、透過量は直線的に増加する。現時点では、濃縮機構は明確ではないが、多段の蒸留による濃縮ではない。
【実施例】
【0076】
[実施例8]
実施例6で用いたアルミナ試料(アルミナー1)の1,4-ジオキサン水溶液およびアセトニトリル水溶液に対する濃縮分離性能を図2で示す装置で評価し、1,4-ジオキサンおよびアセトニトリル濃度をガスクロマトグラフで測定した。40℃の5 mass%水溶液を用い、1時間濃縮実験を行い、透過量よりフラックス(kg(h・m2)-1)、濃縮前後の濃度変化より分離係数を算出した。評価結果を表6に示す。
【実施例】
【0077】
【表6】
JP2014073490A_000008t.gif
【実施例】
【0078】
[実施例9]
実施例6で用いたアルミナ試料(アルミナー4)の酢酸水溶液に対する濃縮分離性能を図2で示す装置で評価し、酢酸濃度をガスクロマトグラフで測定した。40℃の5 mass%酢酸水溶液20 gを用い、1.5時間分離実験を行い、透過量よりフラックス(kg(h・m2)-1)、分離前後の濃度変化をもとめた。評価結果を表7に示す。表から分かるように、酢酸水溶液に対しては、アルコール、1, 4-ジオキサン、アセトニトリル水溶液とは異なり、水が主にアルミナ多孔体を透過すること、すなわちアルミナ多孔体により脱水されることで、供給側の酢酸水溶液が濃縮された。
【実施例】
【0079】
【表7】
JP2014073490A_000009t.gif
【実施例】
【0080】
[参考例]
蒸留・脱水法以外のアルコール水溶液の分離濃縮技術に関しては、ゼオライト膜による方法が多数報告されている。これらの報告は、疎水性のZSM-5(MFI)型ゼオライト膜による低濃度アルコール溶液の分離濃縮に関するものと、親水性のA(LTA)型ゼオライト膜やX、Y(FAU)型ゼオライト膜による90mass%以上のアルコール溶液の脱水に関するものとに大別される。
【実施例】
【0081】
それに対し、本発明は、1~95mass%、好ましくは5~90mass%のアルコール溶液の分離濃縮に対応できるものである。
例えば、エタノールの分離濃縮に関する特開2005-87890(特許文献1)、特開2006-42673(特許文献3)においては、シリカライト膜(ケイ素100%から成るMFI型ゼオライト膜)を用いた浸透気化法による分離濃縮性能を以下のように報告している。
【実施例】
【0082】
特開2005-87890(特許文献1)には、9.4mass%の発酵液(エタノール水溶液)を76mass%まで濃縮することができ、その時のフラックスは0.054 kg(h・m2)-1であったと記載されている。
【実施例】
【0083】
特開2006-42673(特許文献3)には、7mass%のエタノール水溶液を83mass%まで濃縮することができ、その時のフラックスは0.35kg(h・m2)-1であったと記載されている。
また、特開平5-245345(特許文献13)においては、高分子膜を用いたエタノールの分離濃縮性能を報告しているが、30 mass%程度のエタノール溶液が得られたと記載されている。
【実施例】
【0084】
以上の結果、多孔質バルク体を用いる分離濃縮技術は、膜を用いる技術と比較して、格段に高効率、すなわち膜と同程度の分離濃縮性能をもち、かつフラックスが桁違いに大きく、しかも所望の多孔質バルク体の作製が容易であるので、有望であると結論される。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3