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明細書 :上肢リハビリテーション支援装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-214343 (P2016-214343A)
公開日 平成28年12月22日(2016.12.22)
発明の名称または考案の名称 上肢リハビリテーション支援装置
国際特許分類 A61H   1/02        (2006.01)
A63B  23/12        (2006.01)
FI A61H 1/02 K
A63B 23/12
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2015-099847 (P2015-099847)
出願日 平成27年5月15日(2015.5.15)
発明者または考案者 【氏名】坂口 正道
【氏名】和田 郁雄
【氏名】堀場 充哉
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
【識別番号】506218664
【氏名又は名称】公立大学法人名古屋市立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001128、【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C046
Fターム 4C046AA30
4C046AA47
4C046BB05
4C046CC04
4C046DD33
4C046FF09
要約 【課題】腕の筋肉のみを使った訓練法の問題を解決し、筋肉に加えて手の指先の触覚を利用したリハビリ効果の大きい上肢リハビリテーション支援装置を提供する。
【解決手段】上肢リハビリテーション支援装置は、平面上を前後左右に移動可能な一対の運動提示部10と、被験者イの指に対する接触対象としての触覚提示部30とを有している。被験者イは、一対の運動提示部10に左右の掌を置くと共に、左手に含まれる指の少なくとも1本と右手に含まれる指の少なくとも1本とを触覚提示部30の上にそれぞれ接触させて、リハビリ訓練を行う。
【選択図】 図10
特許請求の範囲 【請求項1】
平面上を前後左右に移動可能な一対の運動提示部と、被験者の指に対する接触対象としての触覚提示部とを有する上肢リハビリテーション支援装置において、
前記被験者は、一対の前記運動提示部に左右の掌を置くと共に、左手に含まれる指の少なくとも1本と右手に含まれる指の少なくとも1本とを前記触覚提示部の上にそれぞれ接触させて、リハビリ訓練を行うことを特徴とする上肢リハビリテーション支援装置。
【請求項2】
一対の前記運動提示部は、左右鏡面対称な位置になるように移動可能なことを特徴とする請求項1に記載の上肢リハビリテーション支援装置。
【請求項3】
前記触覚提示部は、前記被験者の指が接触し該指に対して刺激を付与することが可能な接触表面を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の上肢リハビリテーション支援装置。
【請求項4】
前記触覚提示部は、前記被験者の指が接触する接触表面を備え、
該接触表面は、凹凸の大きさが異なる2以上のパターンを持つ面からなることを特徴とする請求項1または2に記載の上肢リハビリテーション支援装置。
【請求項5】
前記触覚提示部は、前記被験者の指が接触する接触表面を備え、
該接触表面は、第1の凸凹面と、該第1の凸凹面よりも凸凹が大きい第2の凸凹面とを含んで構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の上肢リハビリテーション支援装置。
【請求項6】
前記触覚提示部は平面状であり、鉛直方向に対して傾斜した平板上に設置されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の上肢リハビリテーション支援装置。
【請求項7】
一対の前記運動提示部の間に配置された鏡を有し、
該鏡は、一対の前記運動提示部を相互に結んだ仮想直線に交差する方向を向くと共に、一対の前記運動提示部に置かれた前記左右の掌のうちの一方の鏡像を前記被験者に見せることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の上肢リハビリテーション支援装置。
【請求項8】
被験者が上肢のリハビリ訓練を行う際に使用する上肢リハビリテーション支援装置であって、
前記被験者の左手に含まれる指の少なくとも1本と前記被験者の右手に含まれる指の少なくとも1本とがそれぞれ接触する触覚提示部と、
前記被験者の左右一対の上肢のうちの左右同じ接触部位にそれぞれ接触する一対の運動提示部とを備え、
一対の前記運動提示部は各々、前記被験者の左右それぞれの指が前記触覚提示部に接触した状態で、前記接触部位を平面上にて前後左右に案内することを特徴とする上肢リハビリテーション支援装置。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、平面上を前後左右に移動可能な、一対の運動提示部を有する上肢リハビリテーション支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
厚生労働省の2011年度調査によると、日本の脳卒中総患者数は111万人にものぼる。また、脳卒中後遺症の患者は推計約160万人にものぼり、これは介護が必要となった原因の第一位を占めている。脳卒中の発症後に後遺症として最も多いものが片麻痺であり、立つ、歩くという基本的な動作を阻害されることが多い。これにより、食事、更衣、移動などの生活の中で不可欠な日常動作に支障が生じる。そのため、麻痺した機能の改善は、その後の生活の質に大きく関わる。麻痺した機能は、脳の可塑性によりリハビリテーションで回復可能であることが証明されたことをきっかけに、現在様々な方法で、例えば非特許文献1に示すようにリハビリテーションが行われている。
【0003】
その中に、非特許文献2に示す、麻痺肢を動かしているような運動錯覚を利用して運動機能の回復を図る方法がある。これは、上肢の非麻痺肢と麻痺肢との間に鏡を置き、非麻痺肢が鏡に写り動いている像を覗きながら、麻痺肢を非麻痺肢と同じように動かそうと努力するミラーセラピーと呼ばれる訓練法である。
【0004】
従来の非特許文献2に示すミラーセラピーでは、箱の中に鏡を設置したミラーボックスが用いられており、被験者はミラーボックスの中で非麻痺肢を動かす。このため、前腕の回内外、手関節と手指の屈伸、拇指内外転、対立動作などはできるが、肩関節を含む上肢全体の動作はできない。
【0005】
また、スポンジやブロック等を握る運動も行われているが、これらの運動は非麻痺肢のみで行われており、麻痺肢もできるだけ同じ動作をするよう教示しているが、実際に麻痺肢でスポンジ等を握る動作は行っていない。
【0006】
この他、ミラーセラピーを二人で行い、被験者の非麻痺肢の運動に合わせて、協力者が被験者の麻痺肢を他動的に動かす訓練も行われている。このとき、被験者の麻痺肢には刺激が加えられているが、この場合訓練装置として触覚刺激を提示する機構や部位は備えておらず、被験者が自ら動作し触覚を知覚するアクティブタッチは実現できていない。
【0007】
また、従来の特許文献1に示す健康用具は、柔軟性のある材料で作った掌で握ることができる二つの握袋を鏡の両側に配置し、被験者は非麻痺肢と麻痺肢それぞれの手で握袋の把持運動を行う。二つの握袋は可撓性のチューブで連結されているため、一方の握袋を非麻痺側肢で握り込むと、他方の握袋が膨らみ、麻痺側肢にも刺激が提示される。この用具では、非麻痺肢の手を握り込むと麻痺肢の手は押し広げられるので、非麻痺肢と麻痺肢の手に同じ刺激を加えることはできない。
【0008】
従来の特許文献2に示す上肢リハビリテーション支援装置は、ステージのアームレストに前腕部を載せ、グリップを手で握ることで、左右鏡面対象運動を行う。この装置では、上肢や手関節の運動訓練が実施可能である。
【0009】
また、非特許文献3にも、いくつかリハビリテーションに利用可能なロボット等が示されているが、これらの装置も、被験者が棒状や球状のグリップを把持するか、あるいは被験者の上肢を装置に装着し手には何も把持していない物ばかりであり、上肢運動のリハビリテーションにおいて触覚を提示する機構や部位は備えていない。
【0010】
以上の通り、従来生理学でも運動系と感覚系は別々に記述され、リハビリテーションにおける運動訓練と感覚訓練は別々に実施されていた。ところが、実際の健常者の動きは、例えば果物の皮を剥く場合、腕の筋肉により果物を手に取り、手の指先の触覚により果物の大きさや形状把握し、皮を剥くときのナイフの動きを制御する。また本を読む場合は、腕の筋肉により本を取り、指先の触覚で本を持つ力やページをめくる指の動作を制御する。このように、上肢機能にとって運動と感覚は密接に関係しているものの、従来の上肢リハビリテーション支援装置は、筋肉による動作訓練のみで、手の指先の触覚を利用した訓練とはなっておらず、患者に対してリハビリ効果を十分引き出していない問題があった。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】特開2007-105411号公報
【特許文献2】特開2010-201111号公報
【0012】

【非特許文献1】萩原宏毅,塚田絵里子:神経リハビリテーションの現状と展望,帝京科学大学紀要,第8巻,pp.1-10,2012.
【非特許文献2】平山尚吾,井上優,佐藤ゆかり,原田和宏,香川幸次郎:脳卒中片麻痺患者の手指運動機能障害に対するミラーセラピーの効果,理学療法学,第39巻第5号,pp.330-337,2012年.
【非特許文献3】Bruce TV et al.: Robotic Devices as Therapeutic and Diagnostic Tools for Stroke Recovery, Archives of Neurology 2009, 66(9), pp.1086-1090.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記のような上肢リハビリテーション支援装置において、腕の筋肉のみを使った訓練法の問題を解決し、筋肉に加えて手の指先の触覚を利用したリハビリ効果の大きい上肢リハビリテーション支援装置を提供することを目的とする。
【0014】
具体的な症例としては、特に脳卒中の片麻痺、半側空間無視、注意障害、パーキンソン病、幻肢痛などへの効果が期待できる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために本発明は、以下のようである。
【0016】
発明1は、平面上を前後左右に移動可能な一対の運動提示部と、被験者の指に対する接触対象としての触覚提示部とを有する上肢リハビリテーション支援装置において、被験者は、一対の運動提示部に左右の掌を置くと共に、左手に含まれる指の少なくとも1本と右手に含まれる指の少なくとも1本とを触覚提示部の上にそれぞれ接触させて、リハビリ訓練を行うことを特徴とする上肢リハビリテーション支援装置である。
【0017】
発明2は、一対の運動提示部は、左右鏡面対称な位置になるように移動可能なことを特徴とする発明1に記載の上肢リハビリテーション支援装置である。
【0018】
発明3は、触覚提示部は、被験者の指が接触しその指に対して刺激を付与することが可能な接触表面を備えていることを特徴とする発明1又は2に記載の上肢リハビリテーション支援装置である。
【0019】
発明4は、触覚提示部は、被験者の指が接触する接触表面を備え、その接触表面は、凹凸の大きさが異なる2以上のパターンを持つ面からなることを特徴とする発明1又は2に記載の上肢リハビリテーション支援装置である。
【0020】
発明5は、触覚提示部は、被験者の指が接触する接触表面を備え、その接触表面は、第1の凸凹面と、その第1の凸凹面よりも凸凹が大きい第2の凸凹面とを含んで構成されていることを特徴とする発明1または2に記載の上肢リハビリテーション支援装置である。
【0021】
発明6は、触覚提示部は平面状であり、鉛直方向に対して傾斜した平板上に設置されることを特徴とする発明1乃至5のいずれか1つに記載の上肢リハビリテーション支援装置である。
【0022】
発明7は、一対の運動提示部の間に配置された鏡を有し、その鏡は、一対の運動提示部を相互に結んだ仮想直線に交差する方向を向くと共に、一対の運動提示部に置かれた左右の掌のうちの一方の鏡像を被験者に見せることを特徴とする発明1乃至6のいずれか1つに記載の上肢リハビリテーション支援装置である。
【0023】
発明8は、被験者が上肢のリハビリ訓練を行う際に使用する上肢リハビリテーション支援装置であって、被験者の左手に含まれる指の少なくとも1本と被験者の右手に含まれる指の少なくとも1本とがそれぞれ接触する触覚提示部と、被験者の左右一対の上肢のうちの左右同じ接触部位にそれぞれ接触する一対の運動提示部とを備え、一対の運動提示部は各々、被験者の左右それぞれの指が前記触覚提示部に接触した状態で、接触部位を平面上にて前後左右に案内することを特徴とする上肢リハビリテーション支援装置である。
【発明の効果】
【0024】
発明1は、被験者が、運動提示部に、左右の掌を置き、左右の手の指のうち、少なくとも1本の指が、水平面の上に接触して、リハビリ訓練を行うことができる。手は、ヒトにとって物に触れて対象物や環境を認識する知覚器官であり、特に指先は2点識別閾の分解能が高いなど、敏感な部位である。このため、上肢運動には指先への触覚フィードバックが必要であり、腕の動きに加えて、刺激に敏感な指先に触覚を提示することで、リハビリ効果を増加させることができる。また、発明2の訓練後、麻痺側肢を非麻痺側肢と同じ動きができるかを確認することができる。
【0025】
さらに、上肢リハビリテーション支援装置を水平面(平板)の上に設置して用いることができるので、上肢リハビリテーション支援装置の強度部材を減らし、軽量化し、構造を簡素化できる。その結果コストダウンも可能なので、上肢リハビリテーション支援装置を適正な価格で提供することができる。
【0026】
発明2は、一対の運動提示部は、左右の鏡面対称な位置になるように移動可能であるので、ミラーセラピー効果がある。よって、麻痺肢と非麻痺肢の左右鏡面対象な上肢運動により体性感覚をフィードバックしながら、同時に麻痺肢と非麻痺肢の指先に同じ触覚刺激を提示することにより、リハビリ効果を促進する効果がある。
【0027】
発明3は、触覚提示部が被験者の指に対して刺激を付与することが可能であることを特徴とする。触覚提示部は、表面に様々な材質の物を用いたり、凹凸を設けたりして、指触覚の刺激を強化させる。触覚提示部を、平面状に形成して上肢リハビリテーション支援装置に使用することで、リハビリ効果を増すことができる。
【0028】
発明4は、触覚提示部は、指触覚の大きさが異なる2以上のパターンを有している。指触覚の大きさを変えることで、被験者である患者の症状に合わせた運用ができるので、リハビリ効果を増すことができる。
【0029】
発明5は、触覚提示部は、被験者の指が接触する接触表面を備え、その接触表面は、第1の凸凹面と、その第1の凸凹面よりも凸凹が大きい第2の凸凹面とを含んで構成されているので、被験者の指に異なった刺激を与え、リハビリ効果を増すことができる。
【0030】
発明6は、触覚提示部は平面状であり、鉛直方向に対して傾斜した平板上に設置されるので、上肢に負荷を与えたサンディングの様な運動ができるので、リハビリ効果を増すことができる。
【0031】
発明7は、運動提示部の間、即ち被験者の左右の掌の中間に、鏡を設置して用いることを特徴とする。これにより、非麻痺肢の側から鏡をのぞき込むことにより、麻痺肢が存在する場所に非麻痺肢の左右が反転した像が映し出され、非麻痺肢の反転像を自分の麻痺肢の様に感じる錯覚を生じる。このとき、麻痺肢も非麻痺肢の左右鏡面対象な運動を行っている体性感覚のフィードバックと、麻痺肢の指先に非麻痺肢と全く同じ触覚刺激が提示されることで、錯覚を生じる強度が増し、リハビリ効果を増すことができる。
【0032】
発明8は、一対の運動提示部を、被験者の左右一対の上肢のうちの左右同じ部位にそれぞれ接触することで、掌を置くだけでなく、上肢の他の部位に運動を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態である上肢リハビリテーション支援装置1の支援装置本体2の斜視図を示す。
【図2】支援装置本体2の(a)上面図と(b)正面図とを示す。
【図3】支援装置本体2の機構の模式図を示す。
【図4】第2実施形態の上肢リハビリテーション支援装置1の正面図であって、支援装置本体2を平板40上に置き、触覚提示部30を、中心線A-Aに対して左右対称に配置した図を示す。
【図5】第2実施形態である上肢リハビリテーション支援装置1の斜視図であって、支援装置本体2を平板40上に置き、触覚提示部30を、中心線A-Aに対して左右対称に配置した図を示す。
【図6】第2実施形態の触覚提示部30を示す。触覚提示部30は、平坦面32、小さな凸凹面34、および大きな凸凹面36を有し、中心線A-Aに対して左右対称に配置されている。
【図7】第2実施形態である上肢リハビリテーション支援装置1の触覚提示部30を、中心線A-Aに対して左右対称に、平坦面32、小さな凸凹面34、および大きな凸凹面36配置した平面図を示す。
【図8】第2実施形態である上肢リハビリテーション支援装置1の触覚提示部30の平坦面32、小さな凸凹面34の配置パターンを示す、(a)は、小さな凸凹面34を円形に配置、(b)は、小さな凸凹面34を四角形に配置、(c)は、小さな凸凹面34を三角形に配置、(d)は、小さな凸凹面34を複数の同心円の円弧状に左右対称に配置、(e)は、複数の短冊状に左右対称に配置している。
【図9】被験者イが第2実施形態である上肢リハビリテーション支援装置1を使用している状態の全体を示す。
【図10】被験者イが第2実施形態である上肢リハビリテーション支援装置1を使用している状態を示す。
【図11】被験者イが第2実施形態である上肢リハビリテーション支援装置1を使用している指先(腹部)が触覚提示部30に接触している状態を示す。
【図12】被験者イが第2実施形態である上肢リハビリテーション支援装置1を使用している指先(爪部含む)が触覚提示部30に接触している状態を示す。
【図13】被験者イが第3実施形態である上肢リハビリテーション支援装置1を傾斜させて使用している状態を示す。
【図14】第4実施形態である上肢リハビリテーション支援装置1の中央上部に鏡50を設置した状態を示す。
【図15】被験者イが第4実施形態である上肢リハビリテーション支援装置1を使用している状態を示す。
【図16】上肢リハビリテーション支援装置1により、指先を触覚提示部30に接触させない状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0035】
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態である上肢リハビリテーション支援装置1の支援装置本体2の斜視図を示す。支援装置本体2の両端および中央部の下部に、車輪20が二つずつ設置されており、机42などの平らな平板40上を前後に移動可能である。車輪20の上に、リニアガイド18があり、一対の運動提示部10がリニアガイドに、直線移動ができるように取り付けられている。リニアガイド18の両端部には、一対のプーリ12が配置され、そのプーリ12間にベルト14が張られている。

【0036】
支援装置本体2は、モータを使用せず、機械的な機構のみで鏡像運動を実現するため、電力の供給や制御用コンピュータは必要としない。

【0037】
図2に、支援装置本体2の上面図と正面図とを示す。
上肢リハビリテーション支援装置1の大きさは、幅825mm、長さ120mm、高さ62mmである。支援装置本体2の両端および中央部に車輪20が二つずつ設置されており、机42などの平らな平板40上を前後に移動可能である。よって、リニアガイド18が前後方向に移動するので、運動提示部10は、それぞれ前後方向、およびリニアガイドに沿った直角方向に移動ができる。

【0038】
支援装置本体2において、手を乗せる運動提示部10までの高さは33mm、片手の可動範囲は左右約230mmである。支援装置本体2の前後の可動範囲は机の広さなどによって定まり、支援装置本体2はその可動範囲内で自由に動ける。部材にはアルミ合金(A2017)を使用して軽量化し、重量は1.9kgである。細長い形状だが、持ち運ぶには十分軽量で組み立て分解も容易である。また、支援装置本体2は鏡像運動を実現するために、リニアガイド18とベルト14を使用している。

【0039】
図3に支援装置本体2の機構の模式図を示す。両端に設置されたプーリ12にベルト14を張り、左側の運動提示部10を手前のベルト14とピン16で固定し、右側の運動提示部10を奥側のベルト14とピン16で固定する。これにより、支援装置本体2は、左右対称な鏡像運動を実現した。また、運動提示部10とベルト14のピン16による固定場所を変更することで、左右で同期した運動の実現も可能である。また、ピン16を外すと、運動提示部10とベルト14は固定されずフリーになり、左右で同期しない運動ができる。

【0040】
片麻痺患者が麻痺側と非麻痺側の手をそれぞれ運動提示部10に乗せ、非麻痺側の手を前後や左右に動作させると麻痺側の手は左右対称な鏡像運動をする。リニアガイド18を使用し、プーリ軸にベアリングを用いることで摩擦を軽減しているが、モータ等の動力を使用していないため、器具を動作させるためには多少の力が必要となる。前後方向は車輪20の効果で軽く動かすことができるが、左右方向はリニアガイド18やベルト14の張力等の影響で動作に約2Nの力を要した。

【0041】
(第2実施形態)
図4に、第2実施形態の上肢リハビリテーション支援装置1の正面図を示す。図4に示すように、支援装置本体2は平板40上に置かれ、触覚提示部30は、中心線A-Aに対して左右対称に配置される。すなわち、上肢リハビリテーション支援装置1は、平板40の上に設置して用いるものである。平板40の大きさは、横幅740mm、奥行き500mmである。

【0042】
図5に、第2実施形態である上肢リハビリテーション支援装置1を示す。机42の上に平板40が置かれ、支援装置本体2は、平板40の中心線A-Aに対して左右対称に配置される。また、平板40の上に触覚提示部30が、中心線A-Aに対して左右対称に配置される。また、中心線A-Aは、上肢リハビリテーション支援装置1の一対のプーリ12の中点を通り、リニアガイド18に垂直な線でも良い。平板40の中心線A-Aとリニアガイド18に垂直な線の中心線A-Aは、完全に一致する必要はなく、ほぼ平行であれば良い。

【0043】
図6に、第2実施形態の触覚提示部30を示す。触覚提示部30は、被験者イの指ニに対する接触対象として機能するものであり、言い換えれば、被験者イの指ニが接触する指接触部である。触覚提示部30は、平坦面32、第1の凸凹面としての小さな凸凹面34、および、第2の凸凹面としての大きな凸凹面36を有し、中心線A-Aに対して左右対称に配置されている。これらの面32、34、36は全体として、被験者イの指ニ(図11参照)が接触する接触表面となっている。この触覚提示部30の接触表面は、相互に異なる表面パターンの面32、34、36を含んでいるので、その接触表面に接触する指ニに対して刺激を付与することが可能となっている。

【0044】
指先は触覚が特に発達した部分である。これは、指先の触覚は、敏感であるばかりでなく識別能力も優れている。たとえば点字は、指先で読み、空間分解能である2点識別閾は、掌の1/3以下といわれている。

【0045】
よって、触覚提示部30は、指先への刺激の小さい順に、平坦部としての平坦面32、小さな凸凹面34、および大きな凸凹面36の3種類を用いた。この触覚提示部30は、中心線A-Aに対して左右対称に配置される。

【0046】
また、触覚提示部30は、凹凸の断面形状や大きさを変えるだけでなく、凹凸部の形状を、円形や四角形や三角形にしたり、凹凸部を円弧状や放射状に配置したりもできる。また、触覚提示部30の表面には、紙、布、木材、樹脂、金属、ガラスなど、様々な材質を用いることもできる。

【0047】
図7に、第2実施形態である上肢リハビリテーション支援装置1の触覚提示部30を、中心線A-Aに対して左右対称に、平坦面32、小さな凸凹面34、および大きな凸凹面36配置した平面図を示す。図7は、図5に対し上下が逆となっている。

【0048】
図8に、第2実施形態である上肢リハビリテーション支援装置1の触覚提示部30の平坦面32、小さな凸凹面34の配置パターンを示す。

【0049】
図8(a)は、小さな凸凹面34を円形に配置しその他は平坦面32としている。

【0050】
同様に図8(b)は、小さな凸凹面34を四角形に配置、図8(c)は、小さな凸凹面34を三角形に配置し、その他は平坦面32としている。図8(b)(c)では、中心線A-Aに対する片側だけを図示している。

【0051】
凹凸部の形状を円形や四角形や三角形にすることで、被験者イは、指先で凹凸部を辿ってリハビリ訓練をすることができる。よって、円運動、四角形運動、三角形運動の同動向または逆方向の繰り返し運動ができる。

【0052】
図8(d)は、小さな凸凹面34を複数の同心円の円弧状に左右対称に配置し、図8(e)は、小さな凸凹面34を複数の短冊状に左右対称に配置し、その他は平坦面32としている。

【0053】
円弧の小さな凸凹面34または短冊状の小さな凸凹面34を指先でたどることで、大きな円弧や小さな円弧の運動や、傾斜角度の異なる直線運動をすることができる。

【0054】
ここで、小さな凸凹面34は、大きな凸凹面36でも良いし、様々な形状にすることができる。

【0055】
図9に、被験者イが第2実施形態である上肢リハビリテーション支援装置1を使用している状態の全体を示す。

【0056】
被験者イは、椅子44に座ってリハビリ訓練を行う。

【0057】
図10に、被験者イが第2実施形態である上肢リハビリテーション支援装置1を使用している状態を示す。

【0058】
被験者イは、上肢リハビリテーション支援装置1の中心線A-Aに対して左右対称になるように、椅子44に座る。上肢のうちで運動提示部10に接触する接触部位としての左右の掌ハ(図11参照)を、運動提示部10の上に置くと共に、左手の指ニのうちの少なくとも1本と右手の指ニのうちの少なくとも1本とをそれぞれ触覚提示部30の上に接触させて置く。ミラーセラピーと同じ左右鏡像運動の訓練を行うためである。そして、一対の運動提示部10は各々、被験者イの左右それぞれの指ニが触覚提示部30に接触した状態で、その運動提示部10に置かれた掌ハを平面上にて前後左右に案内する。

【0059】
図11に、被験者イが第2実施形態である上肢リハビリテーション支援装置1を使用している指先ニ(腹部)が触覚提示部30に接触している状態を示す。

【0060】
運動提示部10の大きさは、掌ハだけを置き、指先で床面に触れることが可能な幅100mm ×長さ100mm である。上肢リハビリテーション支援装置1の下には約10mm の隙間があるため、左右対称に触覚提示部30を配置することで、上肢を鏡像運動させながら健常側と麻痺側の両方の手に同じ触覚刺激を与えることができる。

【0061】
図12に、被験者イが第2実施形態である上肢リハビリテーション支援装置1を使用している指先(爪部含む)が触覚提示部30に接触している状態を示す。

【0062】
爪部を含む指先も触覚の敏感な部位である。

【0063】
(第3実施形態)
図13に、被験者イが第3実施形態である上肢リハビリテーション支援装置1を傾斜させて使用している状態を示す。

【0064】
水平な平板40の上での使用を想定しているが、場合によっては、鉛直方向に対して傾いた平板40の上で使用することで、サンディングの様な運動も可能である。

【0065】
このため、患者(被験者イ)自身による自動介助運動が可能な人であれば操作可能である。

【0066】
(第4実施形態)
図14に、第4実施形態である上肢リハビリテーション支援装置1の中央上部に鏡50を設置して使用する状態を示す。

【0067】
図15に、被験者イが第4実施形態である上肢リハビリテーション支援装置1の中央上部に鏡50を設置して使用している状態を示す。非麻痺肢側から鏡50をのぞき込んだ場合に、麻痺肢があるべき場所に非麻痺肢の像が見えるように、被験者イの頭部の位置や鏡50の位置や角度を調整する。例えば、その鏡50は、一対の運動提示部10を相互に結んだ仮想直線L1(図2参照)に交差する方向(例えば、仮想直線L1と略直交する方向)を向いて設置される。そして、鏡50は、一対の運動提示部10に置かれた左右の掌ハのうちの一方の鏡像を被験者イに見せる。その一方の鏡像とは、具体的には非麻痺肢側(健常側)の鏡像である。また、鏡50は、上記左右の掌ハのうちの他方を被験者イから見えないように隠す。このミラーセラピーと同じ訓練を実施する際には、麻痺肢は被験者イから見えないように隠して実施する。

【0068】
(指先を刺激することの作用・効果)
従来のミラーセラピーは、箱の中に鏡を設置したミラーボックスを用いて実施され、被験者イはミラーボックスの中で非麻痺肢を動かし、鏡50に映った非麻痺肢の動きを見て、麻痺肢も同じように動いているようにイメージする。このとき、麻痺肢の体性感覚が完全に喪失していて全く麻痺肢の運動を知覚できない場合、あるいは健常者の様に麻痺肢も非麻痺肢と全く同一に動作できる場合は、視覚情報と体制感覚の不一致による違和感は生じない。

【0069】
これに対し、麻痺肢の感覚が残存している上、麻痺肢の動作が非麻痺肢の動作と一致していない場合は、視覚的に麻痺肢も動作している情報が提示されても、感覚の不一致が錯覚強度を減少させてしまい、リハビリ効果の減少を招いていた。

【0070】
本発明は、まず運動提示部10の左右鏡像動作により、運動機能が十分でない麻痺肢も非麻痺肢と同じ動作を可能とする上、さらに麻痺肢の指先に非麻痺肢の指先に提示している触覚と全く同一の刺激を提示可能なため、従来技術において錯覚の発生およびリハビリ効果を減少させてしまう要因が発生しない。

【0071】
また、手はヒトにとって物に触れて対象物や環境を認識する知覚器官であり、特に指先は2点識別閾の分解能が高いなど、敏感な部位である。他分野で擬似的に触覚を提示する技術も開発されているが、本発明における触覚提示は、日常的にヒトが物に触れる動作と同一でること、擬似的な触覚提示ではなく実物に触れて触覚を提示すること、非麻痺肢の指先と麻痺肢の指先に提示する触覚刺激が全く同一であることから、麻痺肢が非麻痺肢と同じ動作を実現できているという強い錯覚を発生させることができ、従来と比較して非常に高いリハビリ効果が得られる。

【0072】
上肢リハビリテーション支援装置1により、ミラーセラピー訓練を行った後、ピン16を除いて一対の運動提示部10の左右移動をフリーにする。この状態で、ミラーセラピー訓練を再現することができるかを訓練する。麻痺腕が健常腕と同じ動きができるようになれば効果があったことになる。

【0073】
なお、指先を触覚提示部30に接触させない状態で上肢リハビリテーション支援装置1を用いたとすれば、被験者イの掌ハは、図16のように運動提示部10上に載置される。

【0074】
(他の実施形態)
(1)上述の第2~4実施形態において、触覚提示部30は、接触表面として、平坦面32と小さな凸凹面34と大きな凸凹面36とを有しているが、凸凹面を含んでいなくてもよく、例えば平坦面32だけで構成されていてもよい。

【0075】
(2)上述の各実施形態において、被験者イの掌ハが運動提示部10に置かれてリハビリ訓練がなされるが、支援装置本体2は、掌ハに限らず、被験者イの左右一対の上肢のうちの左右同じ部位が一対の運動提示部10にそれぞれ接触するものであってもよい。ここで、上肢とは、肩に付着する運動器官であり、肩関節から指先までを指す。
【符号の説明】
【0076】
1 上肢リハビリテーション支援装置
2 支援装置本体
10 運動提示部
12 プーリ
14 ベルト
16 ピン
18 リニアガイド
20 車輪
30 触覚提示部
32 平坦面
34 小さな凸凹面
36 大きな凸凹面
40 平板
42 机
44 椅子
50 鏡
イ 被験者
ロ 被験者の手
ハ 掌
ニ 指
図面
【図3】
0
【図7】
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【図8】
2
【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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