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明細書 :超音波による温度測定及び探傷方法超音波による温度、欠陥の測定方法ならびにその測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6217021号 (P6217021)
公開番号 特開2015-102481 (P2015-102481A)
登録日 平成29年10月6日(2017.10.6)
発行日 平成29年10月25日(2017.10.25)
公開日 平成27年6月4日(2015.6.4)
発明の名称または考案の名称 超音波による温度測定及び探傷方法超音波による温度、欠陥の測定方法ならびにその測定装置
国際特許分類 G01N  29/04        (2006.01)
G01K  11/24        (2006.01)
FI G01N 29/04
G01K 11/24
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願2013-244628 (P2013-244628)
出願日 平成25年11月27日(2013.11.27)
審査請求日 平成28年10月11日(2016.10.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】平林 勝
【氏名】荒 邦章
個別代理人の代理人 【識別番号】100139114、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 貞嗣
【識別番号】100092495、【弁理士】、【氏名又は名称】蛭川 昌信
【識別番号】100139103、【弁理士】、【氏名又は名称】小山 卓志
【識別番号】100145920、【弁理士】、【氏名又は名称】森川 聡
【識別番号】100094787、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 健二
【識別番号】100097777、【弁理士】、【氏名又は名称】韮澤 弘
【識別番号】100091971、【弁理士】、【氏名又は名称】米澤 明
審査官 【審査官】田中 秀直
参考文献・文献 特開2013-140119(JP,A)
特開昭63-085442(JP,A)
特開昭61-077757(JP,A)
米国特許第05121340(US,A)
特開昭54-136386(JP,A)
調査した分野 G01N 29/00-29/52
G01K 1/00-19/00
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
測定環境に、超音波の伝搬媒体となる金属棒に、測定用切込みを対にして設け、該金属棒を測定環境に挿入し、超音波センサによって前記金属棒に超音波を伝播させ、前記金属棒の測定用切込みならびに金属棒先端部からの反射波を解析することによって測定環境の温度と測定環境内にある構造物の欠陥の有無とを測定する超音波による温度、欠陥の測定方法であって、
前記超音波センサから発信する超音波を制御する超音波発信制御手段と、
超音波センサが受信した超音波を制御する超音波受信制御手段と、
前記超音波発信制御手段の情報と前記超音波受信手段の情報から、前記測定環境の温度を解析する温度解析手段と、
前記金属棒先端部から反射された超音波を基に前記金属先端部近傍の構造物の欠陥を探傷する探傷手段とからなる
ことを特徴とする超音波による温度、欠陥の測定方法。
【請求項2】
前記対となる測定用切込みは、測定点の位置に合わせて前記金属棒の複数位置に設けることを特徴とする請求項1に記載の超音波による温度、欠陥の測定方法。
【請求項3】
前記金属棒は、測定環境の高温ならびに、放射線環境下に耐える高融点材料であることを特徴とする請求項1乃至2に記載の超音波による温度、欠陥の測定方法。
【請求項4】
測定環境に、超音波の伝搬媒体となる金属棒に、測定用切込みを対にして設け、該金属棒を測定環境に挿入し、超音波センサによって前記金属棒に超音波を伝播させ、前記金属棒の測定用切込みならびに金属棒先端部からの反射波を解析することによって測定環境の温度と測定環境内にある構造物の欠陥の有無とを測定する超音波による温度、欠陥の測定装置であって、
前記超音波センサから発信する超音波を制御する超音波発信制御手段と、
超音波センサが受信した超音波を制御する超音波受信制御手段と、
前記超音波発信制御手段の情報と前記超音波受信手段の情報から、前記測定環境の温度を解析する温度解析手段と、
前記金属棒先端部から反射された超音波を基に前記金属先端部近傍の構造物の欠陥を探傷する探傷手段とからなる
ことを特徴とする超音波による温度、欠陥の測定装置。
【請求項5】
前記対となる測定用切込みは、測定点の位置に合わせて前記金属棒の複数位置に設けることを特徴とする請求項4に記載の超音波による温度、欠陥の測定装置。
【請求項6】
前記金属棒は、測定環境の高温ならびに、放射線環境下に耐える高融点材料であることを特徴とする請求項1乃至2に記載の超音波による温度、欠陥の測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用した遠隔地点の温度ならびに欠陥を検出する方法およびその装置に関する。詳細には、所定位置に測定用切込みを設けた金属棒に超音波を伝播させ、金属棒に設けられた測定用切込みからの反射波を解析することによって所定位置での周囲温度と、さらには、金属棒先端部にある構造物の欠陥の有無を測定する技術に関する。
【0002】
ここで、測定用切込みとは、金属棒の断面に設けて超音波を反射させるようにするためのものであり、「形状不連続部」であればよく、矩形みぞ、スリット、ノッチ、穴、突起などの任意の形状を採用することができる。本発明では、これらを総称して「測定用切込み」として説明する。
【背景技術】
【0003】
一般に、液体、固体を問わず、遠隔位置あるいは狭隘部の温度を測定する場合には、超音波センサによって液体あるいは固体中に超音波を伝播させ、その反射波の戻り時間を測定し、基準音速との対比を行い、速度の変化から液体の温度を測定する方法が用いられている。(特許文献1)
また、遠隔位置あるいは狭隘部の温度を測定する場合には、光ファイバなどを利用して、遠隔位置あるいは狭隘部での超音波センサによる超音波伝播を実現し、その反射波の戻り時間を測定し、基準音速との対比を行い、超音波の速度の変化から液体の温度を測定する方法が用いられている。(特許文献2)
さらに、超音波を利用した一般的な温度測定の原理は数多く紹介されているが、基本原理的な技術紹介であり、実用に即した測定方法とするためには種々の工夫が必要とされる。(非特許文献1)
しかしながら、これらは、超音波センサが正常に稼働できる比較的低温の環境に限られたものである。
【0004】
一方、福島第一原子力発電所の事故に見られるように、過酷事故における原子炉内の温度測定の重要度が再認識され、一方で原子炉内に挿架されるセンサは、過酷環境によって破損し、その機能を果たさなかった。主たる課題は、温度、放射線にあった。また、このような高温、高放射線環境下での測定要求は、原子炉施設の事故に限らず、再処理施設のガラス固化体処理プロセスなどに例示されるように、測定を不可あるいは困難にしていた。
【0005】
また、事故などに限らず、原子炉施設では安全上重要な機器や設備に対する健全性維持が要求される。ただ、これを実現するためには、原子炉施設の容器の蓋を開放するなどの必要が生じ、施設の稼働中に検査を行うことができず、やむを得ず施設を停止した時に検査を行うことで対処している。このやり方では、施設を停止するによって本来の稼働中の状況測定が困難となっていた。
【0006】
すなわち、高温、高放射線環境下においても環境温度の測定を可能とする測定方法の実現が要求されるようになってきた。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2013-178127号公報
【特許文献2】特開2009-210395号公報
【0008】

【非特許文献1】「超音波を用いた新規な非破壊・ 非接触モニタリング手法」長岡技術科学大学工学部機械系 井原郁夫准教授
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術で記載した問題点に鑑み、高温、高放射線環境下の過酷な環境においても精度良く環境温度の測定ができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の発明は、測定環境に、超音波の伝搬媒体となる金属棒に、測定用の測定用切込みを対にして設け、該金属棒を測定環境に挿入し、超音波センサによって前記金属棒に超音波を伝播させ、前記金属棒の測定用切込みならびに金属棒先端部からの反射波を解析することによって測定環境の温度と測定環境内にある構造物の欠陥の有無とを測定する超音波による温度、欠陥の測定方法であって、前記超音波センサから発信する超音波を制御する超音波発信制御手段と、超音波センサが受信した超音波を制御する超音波受信制御手段と、前記超音波発信制御手段の情報と前記超音波受信手段の情報から、前記測定環境の温度を解析する温度解析手段と、前記金属棒先端部から反射された超音波を基に前記金属先端部近傍の構造物の欠陥を探傷する探傷手段と、
からなる超音波による温度、欠陥の測定方法である。
【0011】
本発明の第2の発明は、第1の発明に付加して、前記対となる測定用切込みは、測定点の位置に合わせて前記金属棒の複数位置に設けた超音波による温度、欠陥の測定方法である。
【0012】
本発明の第3の発明は、第1乃至第2の発明に付加して、前記金属棒は、測定環境の高温ならびに、放射線環境下に耐える高融点材料である超音波による温度、欠陥の測定方法。
【0013】
本発明の第4の発明は、測定環境に、超音波の伝搬媒体となる金属棒に、測定用切込みを対にして設け、該金属棒を測定環境に挿入し、超音波センサによって前記金属棒に超音波を伝播させ、前記金属棒の測定用切込みならびに金属棒先端部からの反射波を解析することによって測定環境の温度と測定環境内にある構造物の欠陥の有無とを測定する超音波による温度、欠陥の測定装置であって、前記超音波センサから発信する超音波を制御する超音波発信制御手段と、超音波センサが受信した超音波を制御する超音波受信制御手段と、前記超音波発信制御手段の情報と前記超音波受信手段の情報から、前記測定環境の温度を解析する温度解析手段と、前記金属棒先端部から反射された超音波を基に前記金属先端部近傍の構造物の欠陥を探傷する探傷手段とからなる超音波による温度、欠陥の測定装置である。
【0014】
本発明の第5の発明は、第4の発明に付加して、前記対となる測定用切込みは、測定点の位置に合わせて前記金属棒の複数位置に設けた超音波による温度、欠陥の測定装置である。
【0015】
本発明の第6の発明は、第4乃至第5の発明に付加して、前記金属棒は、測定環境の高温ならびに放射線環境下に耐える高融点材料である超音波による温度、欠陥の測定装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、
まず、温度測定用の超音波センサが測定環境外あるいは遠隔に設けることができるため、測定環境の高温ならびに放射線環境下に耐える温度測定を実現できる。また、特別の環境温度対応の構造が不要であり、安価に製造することができる。
【0017】
また、測定環境内に挿入する超音波の伝搬媒体となる金属棒が、高温ならびに放射線環境下に耐える材料であるため、測定環境内の遠隔部ならびに狭隘部に挿入することができ、許容される測定範囲を大きく確保することができる。このため、何らかの災害などで破壊された測定環境構造物に測定段階で挿入することができる。
一方、挿入する金属棒が剛体であり、予め測定環境内、例えば、測定環境構造物の建造時に予め金属棒を組み込んでおくことも可能である。
【0018】
また、温度測定が予め設けられた対となる測定用切込みの温度による間隔の変化を音速に置き換えて測定するものであり、温度測定精度を高度に達成、維持することができる。
【0019】
また、超音波は、超音波の伝播媒体である金属棒ならびに測定用切込みなどによる減衰が少ないため、複数の測定環境で、かつ、同時測定が可能となり、スピーデイな測定による測定効率を向上させることができる。
【0020】
一方、超音波の伝播媒体である金属棒の先端部からの反射波を解析することによって、金属棒の先端部近傍の欠陥を探傷することができ、温度測定と同時に欠陥の探傷を実現でき、測定効率を向上することができる。
【0021】
さらに、高温ならびに放射線環境下の測定環境に晒されるものが、超音波の伝搬媒体となる金属棒であることから、測定対象となる施設などが稼働中、停止中に係らず温度ならびに欠陥を探傷することができ、モニタリング装置として常時利用することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の超音波による温度、欠陥の測定装置の機器構成の一実施例を示す図である。
【図2】本発明の温度測定と欠陥探傷を同時測定する信号処理の手順の概要を示す図である。
【図3】本発明の温度測定と欠陥探傷を同時測定する信号処理を模式的に示す図である。
【図4】本発明の実施例1による温度測定の測定精度を確認する超音波による温度測定装置の機器構成を示す図である。
【図5】本発明の実施例1による温度測定の測定精度を示した図である。
【図6】本発明の実施例2となる超音波による温度、欠陥の測定装置の機器構成を示す図である。
【図7】本発明の実施例2による温度測定の測定精度を示した図である。
【図8】本発明の実施例2における超音波による温度測定ならびに構造物の欠陥の探傷時の信号解析の状態を示す図である。
【図9】測定用切込みの具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、測定環境に、超音波の伝搬媒体となる金属棒に、測定用切込みを対にして設け、該金属棒を測定環境に挿入し、超音波センサによって前記金属棒に超音波を伝播させ、前記金属棒の測定用切込みならびに金属棒先端部からの反射波を解析することによって測定環境の温度と測定環境内にある構造物の欠陥の有無とを測定する超音波による温度、
欠陥の測定方法であって、前記超音波センサから発信する超音波を制御する超音波発信制御手段と、超音波センサが受信した超音波を制御する超音波受信制御手段と、前記超音波発信制御手段の情報と前記超音波受信手段の情報から、前記測定環境の温度を解析する温度解析手段と、前記金属棒先端部から反射された超音波を基に前記金属先端部近傍の構造物の欠陥を探傷する探傷手段と、からなる超音波による温度、欠陥の測定方法ならびに測定装置である。

【0024】
また、前記対となる測定用切込みは、測定点の位置に合わせて前記金属棒に設けた構造であり、複数対を設けることもできる。

【0025】
また、前記金属棒は、測定環境の高温ならびに、放射線環境下に耐える高融点材料で構造する。高融点材料としては、ステンレス鋼などの鉄材、タングステン、モリブデン、ジルコニウムが好ましい。これらのうち、タングステン、モリブデン、ジルコニウムがより好ましい。

【0026】
図1に、本発明の超音波による温度、欠陥の測定装置の構成概要を示す。
なお、以降の説明において、温度、欠陥の測定装置を測定装置、超音波媒体である金属棒を金属棒、制御プログラム/記憶装置を制御PRGと略して説明する。

【0027】
測定装置1は、大きく、温度、欠陥の測定の制御全般をつかさどる制御装置2と、超音波を金属棒に発信、ならびに金属棒からの超音波の受信を行う超音波センサ3と、超音波を測定環境へ伝播させる金属棒4とで構成する。

【0028】
制御装置2は、測定装置1内に接続された各機器の制御と、制御PRG2eの情報を基に超音波発信制御手段2e1、超音波受信制御手段2e2、温度解析手段2e3、探傷手段2e4の各手段を起動・制御する制御部2a、超音波の発信、受信等に関して超音波センサ3との信号の仲介・制御を行うI/Oポート2b、I/Oポート2bからの情報に基づき超音波センサ3への超音波信号を送信する送信回路2c、および超音波センサ3からの超音波信号を受信する受信回路2dで構成する。制御部2aには、制御部の操作用の入力部2f、表示部2gが接続され、測定者による制御部2aへの指示と、制御部2a内の測定結果などの確認を行う表示部2gが接続されている。

【0029】
超音波センサは3、金属棒4への超音波の送信と金属棒4からの超音波の受信を行う。

【0030】
金属棒4は、高融点材料の棒材で構成するが、測定環境の測定位置に1対の測定用切込み、本図でば、BとC、DとE、FとGであり、L1、L2、L3の長さ、Δ1、Δ2、Δ3の間隔の誤差は、温度測定精度に直接的に影響するため予め精度よく切込み加工することが必要である。また、その測定用切込み箇所は、測定位置に合わせて任意に、1~複数個所に設置することができる。なお、Δ1、Δ2、Δ3の温度に対する長さの変化は微小であるため、無視しても測定精度には影響をもたらさないレベルである。

【0031】
また、測定用切込みは、矩形みぞ、スリット、ノッチ、穴、突起などの任意の形状でもよいが、測定環境への金属棒4を挿入する際の金属棒自身の強度、挿入時の曲りなどを考慮すると、全方向にバランスのとれた外径部の矩形みぞが好ましい。

【0032】
測定用切込みの具体例を図9に示すが、測定用切込みの断面形状は、四角、丸などの任意の形状とすることができる。

【0033】
制御PRG2eは、超音波発信制御手段2e1、超音波受信制御手段2e2、温度解析手段2e3、探傷手段2e4のような制御プログラムを内蔵する。なお、超音波発信制御
手段2e1、超音波受信制御手段2e2、探傷手段2e4については、特許文献1、2、非特許文献1を始め、一般的に公開されている技術であり、それらの技術を適宜利用するものであるため、本発明では詳述しない。

【0034】
温度解析手段2e3について説明する。
超音波の速度と、温度との関係は、次式で表される。

【0035】
V=a+b・t (1)
T=2・Δ/V (2)
ここで、Vは音速(m/s)、tは測定位置の温度(℃)、aは超音波伝播材料毎に決定される基準音速で定数(m/s)、bは超音波伝播材料毎に決定される温度に対する音速の変動定数、Tは超音波が1対の測定用切込みから戻ってきた時間の差(s)、Δは1対の測定用切込みの間隔(m)である。
この2つの式から、次式を得ることができる。

【0036】
t=(2・Δ/T-a)/b (3)
tを演算することによって、測定環境の測定位置の温度を測定することができる。

【0037】
このtを演算する過程を図2によって、その概念を説明する。
図2a)は、図1の金属棒4における測定用切込みを1対設置した場合を表わしているが、測定用切込みの符号は図1と合わせて表示している。
図2b)は、超音波センサにおける超音波の送受信の信号を示したものである。
(1)は、超音波センサから発信された超音波の戻り波の受信信号であり原信号と称す。図中の波形は、A点での反射信号、測定用切込みB、C点での反射信号、金属棒4と構造物5との接点であるH点での反射信号、さらに、構造物5に存在する欠陥Iからの反射信号を表わす。
(2)は、構造物5の欠陥がない場合のリファレンス信号である。
ここで、リファレンス信号は、温度等を測定する前、予め、1)金属棒を液体中に入れる前、2)金属棒を液体中に入れるが、構造物に接触させる前に、リファレンス信号を取得しておく。

【0038】
つぎに、(1)と(2)の信号波形から、(1)-(2)の演算を行うことで、(3)の信号抽出(探傷)を行う。(3)の波形は、欠陥があることを表わしている。

【0039】
つぎに、L1測定位置の測定用切込みBと対となる測定用切込みCを各々指定し、この間の信号波形を取り出すことで、(4)測定位置の温度測定の信号抽出を行う。
このB-C間での超音波伝播時間から上述の演算式によって、測定位置での温度を測定する。

【0040】
図2の具体的な信号状態を図3に示す。
図3a)は図2b)(1)の原信号を表し、図3b)は図2b)のリファレンス信号を表し、図3c)は図2c)の信号抽出(探傷)を表し、図3d)は信号抽出(温度)を表わしている。
〔実施例1〕
本発明の実施例1として、超音波による温度測定の測定精度について図4を基に説明する。

【0041】
超音波センサ3の先端部に金属棒4を接続し、該金属棒4の測定点(1)となる位置に1対の測定用切込みと、測定点(2)となる位置に1対の測定用切込みを設け、各々の1対の測定用切込みの中間部に、一般的に利用されている熱電対6を設けた。
実施例1に使用する各機器類の仕様は次の通りである。
1)超音波発信源(印加電圧):約マイナス400Vのパルス電圧
2)超音波センサの中心周波数:約5MHz
3)金属棒の材質:ステンレス鋼
4)金属棒の径:φ10mm
5)測定点(1)(の左側の測定用切込み)までの長さ:130mm
6)測定点(2)(の左側の測定用切込み)までの長さ:850mm
7)測定点(1)の間隔:100mm
8)測定点(2)の間隔:100mm
9)熱電対の型式:K型(クロメル-アルメル)
測定温度として、測定点(1)を常温測定し、測定点(2)の部分を電気炉7に収納して電気炉の加熱によって複数の高温環境条件を設定し、超音波による温度測定と熱電対による温度測定の精度比較を行った。

【0042】
超音波による温度測定と熱電対による温度測定の精度の比較を行った結果を表1に示す。

【0043】
【表1】
JP0006217021B2_000002t.gif
また、表1のデータをグラフ化したものを図5に示す。

【0044】
超音波による測定温度が、熱電対による測定温度よりも高めに測定される傾向はあるが、その測定誤差は5%程度であり、充分実用に供しうることが判った。
さらに、詳細な校正を行うことによって、測定誤差を2%程度まで小さくすることが可能との見通しを得た。
〔実施例2〕
つぎに実施例2として、超音波による温度測定と測定環境内の構造物の傷の探傷について、図6、図7、図8を基に説明する。
図6は、超音波センサ3の先端部に金属棒4を接続し、該金属棒4を恒温槽内の水中に挿入し、該金属棒4の測定点(1)となる位置に1対の測定用切込みを設け、さらに金属棒4の先端に密着する形で、底面部に欠陥を設けた構造物(SUSブロック)を配設した実施例2の構成図である。

【0045】
超音波センサ3から発信された超音波の測定点(1)の1対の測定用切込みからの反射信号による測定点の温度測定と、金属棒4の先端部に設けた構造物(SUSブロック)の欠陥からの反射信号による探傷とを同時に行うものである。恒温槽の水中には、図示しないが熱電対の温度計を配置している。
実施例2に使用する各機器類の仕様は次の通りである。
1)超音波発信源(印加電圧):約マイナス400Vのパルス電圧
2)超音波センサの中心周波数:約5MHz
3)金属棒の材質:タングステン
4)金属棒の径:φ10mm
5)測定点(1)(の左側の測定用切込み)までの長さ:140mm
6)測定点(1)の間隔:30mm
7)熱電対の型式:K型(クロメル-アルメル)
表2には、超音波による温度測定と熱電対による温度測定との温度測定の精度の比較結果を示す。

【0046】
【表2】
JP0006217021B2_000003t.gif
また、表2のデータをグラフ化したものを図7に示す。

【0047】
20℃付近では超音波による温度測定値が若干低めに出る傾向ではあるが、全体として相関性ある温度測定結果を得ることができている。

【0048】
図8に、図7における超音波による温度測定と、熱電対による温度測定との相関を確認した時の超音波による温度測定時の信号解析の状態を示す。

【0049】
図8a)は、横軸に経過時間、縦軸に信号レベル(ボルト:V)として、測定環境内(ここでは恒温槽の水中)の構造物に欠陥がない場合の信号状態を示した図であるが、反射境界からの超音波反射が明確に把握されている。また、金属棒4の先端からの反射信号も明確に把握されている。

【0050】
図8b)は、測定環境内の構造物に欠陥がある場合の信号状態を示した図であるが、反
射境界からの超音波反射、金属棒4の先端からの反射信号に合わせて、信号の右端部にあるように構造物の欠陥からの反射も明確に把握されている。

【0051】
以上のように、超音波の伝搬媒体に、剛体であり、かつ、高温下で、放射線環境下に耐える金属棒で、高融点材料を採用することにより、温度測定、欠陥探傷を高精度に行うことができる。また、超音波の伝搬媒体が金属棒であることによって、既存建屋、新設建屋を問わず、金属棒を測定環境下へ容易に挿入することができることから、災害等で破壊された構造物、例えば福島第一原子力発電所内の破壊された建屋内であっても、金属棒を挿入(例えば、ヘリコプターでホバリングしながら、上空から金属棒を破壊された建屋内に挿入)することによって劣悪環境下の温度測定を可能とすることができる。

【0052】
新設する建屋、建造物などにあっては、金属棒を挿入する経路に、予めパイプ等を敷設しておくことで、温度測定を容易にすることができる。
【符号の説明】
【0053】
1…温度、欠陥の測定装置
2…制御装置
2a…制御部
2b…I/Oポート
2c…送信回路
2d…受信回路
2e…記憶部(制御プログラム/記憶装置)
2f…入力部
2g…表示部
3…超音波センサ
4…金属棒(超音波の伝播媒体)
5…構造物
6…熱電対
7…電気炉
A…超音波の発信・受信基点
B…第1測定用切込みの1番目の切込み
C…第1測定用切込みの2番目の切込み
D…第2測定用切込みの1番目の切込み
E…第2測定用切込みの2番目の切込み
F…第3測定用切込みの1番目の切込み
G…第3測定用切込みの2番目の切込み
H…構造物の欠陥
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8