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明細書 :移動装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-104188 (P2015-104188A)
公開日 平成27年6月4日(2015.6.4)
発明の名称または考案の名称 移動装置
国際特許分類 H02P   5/50        (2006.01)
B65G   1/06        (2006.01)
FI H02P 5/50 A
B65G 1/06 511A
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2013-241901 (P2013-241901)
出願日 平成25年11月22日(2013.11.22)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り (1)平成25年5月22日に、「ロボティクス・メカトロニクス講演会2013」の要旨集(平成25年5月22日,第237頁,一般社団法人日本機械学会)にて発表 (2)平成24年5月24日に、「ロボティクス・メカトロニクス講演会2013」にてポスター講演により発表
発明者または考案者 【氏名】江上 正
【氏名】長島 祥
【氏名】長内 亜里紗
出願人 【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100098626、【弁理士】、【氏名又は名称】黒田 壽
審査請求 未請求
テーマコード 3F022
5H572
Fターム 3F022FF26
3F022NN05
3F022NN21
5H572AA08
5H572BB07
5H572DD02
5H572EE07
5H572GG02
5H572HC08
5H572LL01
要約 【課題】複数の駆動回転体を駆動するいずれの駆動手段で負荷変動が生じる場合でも当該複数の駆動回転体間で周速差が生じるのを抑制する。
【解決手段】複数の駆動回転体にそれぞれ回転駆動力を付与する第1駆動モータ21及び第2駆動モータ22の回転速度を検出する第1回転速度センサ23及び第2回転速度センサ24の検出結果に基づいて、各駆動モータの回転速度をそれぞれの目標回転速度に追従させる駆動信号を生成して各駆動モータの駆動制御を行う制御部20を有し、制御部20は、各駆動モータの駆動制御を行う際、検出した当該駆動モータの回転速度と目標回転速度との速度差の情報に加え、検出した他の駆動モータの回転速度の情報も用いて、当該他の駆動モータとの間の回転速度差を目標速度差に近づけつつ、当該駆動モータの回転速度を目標回転速度に追従させる駆動信号を生成する。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の駆動回転体を回転駆動させることにより移動する移動装置において、
駆動信号に従った回転速度で駆動することにより前記複数の駆動回転体にそれぞれ回転駆動力を付与する複数の駆動手段と、
前記複数の駆動手段の回転速度をそれぞれ検出する複数の回転速度検出手段と、
各駆動手段の回転速度をそれぞれの目標回転速度に追従させる駆動信号を生成して各駆動手段の駆動制御を行う駆動制御手段とを有し、
前記駆動制御手段は、各駆動手段の駆動制御を行う際、前記回転速度検出手段が検出した当該駆動手段の回転速度と該駆動手段の目標回転速度との速度差の情報に加え、他の回転速度検出手段が検出した他の駆動手段の回転速度の情報も用いて、該他の駆動手段との間の回転速度差を目標速度差に近づけつつ、当該駆動手段の回転速度を該駆動手段の目標回転速度に追従させる駆動信号を生成することを特徴とする移動装置。
【請求項2】
請求項1の移動装置において、
前記駆動制御手段は、各駆動手段間の回転速度差を目標速度差に近づけつつ、各駆動手段の回転速度をそれぞれの目標回転速度に近づける各駆動手段の駆動信号を求めるための評価関数を用いて、各駆動手段の駆動信号を生成することを特徴とする移動装置。
【請求項3】
請求項1又は2の移動装置において、
前記複数の駆動回転体は、細長い経路部材に対し、当該複数の駆動回転体の各周面が接触するように配置されることを特徴とする移動装置。
【請求項4】
請求項3の移動装置において、
前記複数の駆動回転体は、同一の経路部材にそれぞれの周面を接触させた状態で回転駆動するものであることを特徴とする移動装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の駆動回転体を回転駆動させることにより移動する移動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の移動装置としては、例えば、複数の車輪(駆動回転体)を回転駆動させて路面上を走行する自動車等の車両が知られている。また、鉛直方向、水平方向又はこれらの方向に傾斜する傾斜方向へ延びるワイヤーロープ、ベルト、レールなどの細長い経路部材に複数のローラや車輪(駆動回転体)の各周面を接触させて当該経路部材上を走行する電車、エレベータ等の自走式移動装置なども知られている。このような移動装置においては、経時使用によって、路面や経路部材などの表面(以下「被移動面」という。)と接触する駆動回転体の周面が摩耗し、移動性能が悪化していく。そのため、可能な限り、このような駆動回転体の摩耗を抑制することが望まれる。特に、駆動回転体は、被移動面との間で大きな摩擦力を得るために、比較的柔らかい材料で形成されることが多く、そのような駆動回転体は摩耗しやすいので、摩耗の抑制が重要となる。
【0003】
特許文献1には、扁平なベルト状の経路部材上を移動する昇降装置(自走式移動装置)が開示されている。この昇降装置は、駆動ローラ(駆動回転体)とベルト(経路部材)を挟み込むように配置された2つの従動ローラとを備えている。各従動ローラと駆動ローラとの挟持により駆動ローラとベルトとの間の摩擦力が確保されているので、駆動ローラが回転駆動すると、駆動ローラはベルト上を転がり移動する。これにより、駆動ローラが取り付けられている昇降装置は、ベルトに沿って昇降することができる。
【0004】
ベルトの厚みが昇降方向において均一でない場合、厚みの大きなベルト部位が駆動ローラと従動ローラとの間に挟持されたときに過剰な挟持力が発生して、ベルトやローラが損耗しやすくなる。これを考慮して、前記特許文献1に開示された昇降装置では、駆動ローラに対して従動ローラを付勢する付勢手段として電動シリンダを用い、この電動シリンダを制御してその付勢力を変更できる構成となっている。この昇降装置において、駆動ローラに接続された駆動源に対してトルク指令を伝送する制御部は、駆動ローラを回転駆動させるとともに、その回転駆動に伴う負荷トルク値を検出する。そして、この負荷トルク値が所定の閾値よりも大きくなったとき、駆動ローラと従動ローラとの間に厚みの大きなベルト部位を挟み込んだものと判断し、電動シリンダを制御して、駆動ローラに対する従動ローラの付勢力を弱める。一方、検出した負荷トルク値が所定の閾値よりも小さくなったら、駆動ローラと従動ローラとの間に厚みの小さなベルト部位を挟み込んだものと判断し、電動シリンダを制御して、駆動ローラに対する従動ローラの付勢力を強める。
【0005】
前記特許文献1によれば、このような制御を行うことで、駆動ローラの回転駆動に伴う負荷に応じて駆動ローラに対する従動ローラの付勢力が動的に適切な値に調節されるとしている。その結果、ベルト及びローラの損耗を抑えることができるとともに、ベルトとローラとの間の滑りを抑制した昇降駆動が可能となる。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2011-219267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、移動装置における駆動回転体の摩耗を抑制する上では、駆動回転体の周面と路面や経路部材などの被駆動面との間の滑りを可能な限り発生させないことが求められる。この滑りを抑制する上では、被駆動面に接触する駆動回転体を複数配置し、回転駆動する個々の駆動回転体と被駆動面との間に生じる静止摩擦力を小さくすることが有効である。ただし、複数の駆動回転体を搭載する移動装置においては、これらの駆動回転体間に周速差(駆動回転体の周面移動速度の差)が生じると、周速が相対的に速い駆動回転体が支配的となって移動装置が移動するときには、周速が相対的に遅い駆動回転体で滑りが発生する。また、逆に、周速が相対的に遅い駆動回転体が支配的となって移動装置が移動するときには、周速が相対的に速い駆動回転体で滑りが発生する。
【0008】
このような滑りの原因となる駆動回転体間の周速差を引き起こす各駆動回転体の周速変動は、主に、各駆動回転体を回転駆動させる駆動手段の負荷変動に起因して発生する。複数の駆動回転体を単一の駆動手段により一体的に回転駆動させる構成であれば、駆動手段に負荷変動が生じても、この駆動手段によって回転駆動する複数の駆動回転体間では実質的に同じ周速変動が生じる。よって、複数の駆動回転体間での周速差が生じにくく、その周速差に起因した滑りも発生しにくい。
【0009】
ところが、移動装置の重量等との関係で、単一の駆動手段では当該移動装置を移動させるのに十分な駆動トルクが得られない場合がある。この場合、複数の駆動回転体をそれぞれ個別に駆動手段により回転駆動させる構成を採用する必要がある。この構成において、これらの駆動回転体を駆動する各駆動手段の負荷変動は、各駆動回転体とこれらの駆動回転体がそれぞれ接触する被駆動面部分との接触状態(摩擦係数や当接圧など)によって大きく影響を受ける。一般に、被駆動面の表面状態は一様ではなく、各駆動回転体が同時期に接触する被駆動面上の地点はそれぞれ異なることから、個々の駆動手段に生じる負荷変動は互いに異なるものとなる。したがって、異なる駆動手段で回転駆動する複数の駆動回転体により移動する移動装置においては、これらの駆動回転体の間で周速差が生じやすく、その周速差に起因した滑りが発生して駆動回転体の摩耗が生じやすいという問題がある。しかも、このような移動装置は、通常、所望の移動速度となるように移動速度が制御されることから、移動装置の移動速度を所望の移動速度に追従させながら周速差を無くすことが求められる。
【0010】
この問題を解決する方法としては、例えば、各駆動回転体の周速が目標周速値に追従するように、個々の駆動手段の回転速度を個別制御する駆動制御を行うという方法が考えられる。この方法は、例えば、各駆動手段の回転速度を回転速度検出手段により検出し、検出した各駆動手段の回転速度とそれぞれの目標回転速度との速度差の情報に基づいて、それぞれの駆動手段の回転速度をそれぞれの目標回転速度に追従させる駆動信号を生成し、それらの駆動信号を各駆動手段へ出力するという駆動制御(以下「独立速度制御」という。)により実現できる。この独立速度制御においては、駆動回転体間の周速差を十分に抑制できるほどの精度で各駆動手段の回転速度をそれぞれの目標回転速度に追従させることができれば、駆動回転体間における周速差に起因した滑りによる駆動回転体の摩耗の問題を解決することが可能である。しかも、これらの駆動回転体の回転駆動により移動する移動装置の移動速度が所望の移動速度に追従するように制御することができる。
【0011】
しかしながら、この独立速度制御においては、駆動回転体の周速が目標周速値に追従するように個々の駆動手段の回転速度がそれぞれ独立して調整されることになる。そのため、目標周速値よりも速い駆動回転体と目標周速値よりも遅い駆動回転体とが存在する時期が生じることがある。このような時期においては、これらの駆動回転体間の周速差が拡大して滑りが発生し、駆動回転体の摩耗が生じてしまう。
【0012】
また、前記問題を解決する方法としては、例えば、いずれかの駆動回転体(以下「主駆動回転体」という。)の周速に対して他の駆動回転体(以下「従駆動回転体」という。)の周速が追従するように、当該従駆動回転体の駆動手段を駆動制御するという方法が考えられる。この方法は、例えば、各駆動手段の回転速度を回転速度検出手段により検出し、主駆動回転体の駆動手段と従駆動回転体の駆動手段との回転速度差の情報に基づいて、その回転速度差が目標の回転速度差(例えばゼロ)に追従するように従駆動回転体の駆動手段を駆動させる駆動信号を生成し、その駆動信号を当該従駆動回転体の駆動手段へ出力するという駆動制御(以下「一方向同期速度制御」という。)により実現できる。
【0013】
この一方向同期速度制御においては、駆動回転体間の周速差を十分に抑制できるほどの精度で主駆動回転体の周速に対して従駆動回転体の周速を追従させることができれば、駆動回転体間における周速差に起因した滑りによる駆動回転体の摩耗の問題を解決することが可能である。しかも、この一方向同期速度制御によれば、上述した独立速度制御において生じ得る駆動回転体間の周速差が拡大する時期が生じないため、独立速度制御と比較して、周速差に起因した滑りによる駆動回転体の摩耗を抑制することができる。また、主駆動回転体の周速が目標周速値に追従するように駆動制御すれば、移動装置の移動速度が所望の移動速度に追従するように制御することもできる。
【0014】
この一方向同期速度制御において、主駆動回転体に対応する駆動手段に負荷変動が生じた場合には、これにより生じる当該主駆動回転体の周速変動に連動して従駆動回転体の周速も変動し、駆動回転体間における周速差を抑制できる。しかしながら、従駆動回転体に対応する駆動手段に負荷変動が生じた場合には、これにより生じる当該従駆動回転体の周速変動に連動して主駆動回転体の周速が変動することはない。したがって、この場合には、駆動回転体間における周速差を抑制できず、滑りが発生して、駆動回転体の摩耗が生じてしまう。
【0015】
なお、前記特許文献1や本出願人が提案した特願2012-159630号では、駆動回転体と被駆動面との間の滑りを抑制する技術が提案されている。しかしながら、これらの技術で抑制しようとしている滑りは、単一の駆動回転体と被駆動面との間で生じる滑りであり、複数の駆動回転体間で生じた周速差によって生じる滑りを抑制できるものではない。
【0016】
本発明は、以上の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、複数の駆動回転体をそれぞれ個別の駆動手段で回転駆動させることにより移動する移動装置において、所望の移動速度に追従した移動を実現しつつ、いずれの駆動手段で負荷変動が生じる場合でも当該複数の駆動回転体間で周速差が生じるのを抑制でき、各駆動回転体の摩耗を抑制できる移動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するために、請求項1の発明は、複数の駆動回転体を回転駆動させることにより移動する移動装置において、駆動信号に従った回転速度で駆動することにより前記複数の駆動回転体にそれぞれ回転駆動力を付与する複数の駆動手段と、前記複数の駆動手段の回転速度をそれぞれ検出する複数の回転速度検出手段と、各駆動手段の回転速度をそれぞれの目標回転速度に追従させる駆動信号を生成して各駆動手段の駆動制御を行う駆動制御手段とを有し、前記駆動制御手段は、各駆動手段の駆動制御を行う際、前記回転速度検出手段が検出した当該駆動手段の回転速度と該駆動手段の目標回転速度との速度差の情報に加え、他の回転速度検出手段が検出した他の駆動手段の回転速度の情報も用いて、該他の駆動手段との間の回転速度差を目標速度差に近づけつつ、当該駆動手段の回転速度を該駆動手段の目標回転速度に追従させる駆動信号を生成することを特徴とする。
本発明において、各駆動手段の駆動制御の際に生成される駆動信号は、回転速度検出手段が検出した当該駆動手段の回転速度と該駆動手段の目標回転速度との速度差の情報に基づいて生成されるものである。よって、このようにして生成される各駆動信号に従って駆動する各駆動手段の回転速度を、それぞれの目標回転速度に追従させることができる。したがって、各駆動回転体の周速を目標周速値に追従させることができ、当該移動装置の移動速度が所望の移動速度に追従するように制御することができる。
また、本発明において、各駆動手段の駆動制御の際に生成される駆動信号は、上述した情報だけでなく、他の回転速度検出手段が検出した他の駆動手段の回転速度の情報にも基づいて生成されるものである。これにより、このようにして生成される各駆動信号に従って駆動する各駆動手段の回転速度を、自分以外の他の駆動手段の回転速度に追従させるという駆動制御(以下「双方向同期速度制御」という。)が実現される。このような双方向同期速度制御により、いずれの駆動手段で負荷変動が生じた場合でも、各駆動手段間における回転速度差を目標速度差に近づけることができる。したがって、複数の駆動回転体間で周速差が生じるのを抑制することができ、その周速差による駆動回転体の摩耗を抑制できる。
また、いずれかの駆動手段で負荷変動が生じて駆動手段間で回転速度差が生じた場合、上述した一方向同期速度制御では、主駆動回転体の駆動手段の回転速度に近づくように従駆動回転体の駆動手段の回転速度が調整される。これに対し、本発明における双方向同期速度制御によれば、駆動手段間の回転速度差が目標速度差に近づくように各駆動手段の回転速度がそれぞれ調整される。その結果、駆動手段間で回転速度差を一方向同期速度制御よりも迅速に目標速度差に近づけることができる。
【0018】
また、請求項2の発明は、請求項1の移動装置において、前記駆動制御手段は、各駆動手段間の回転速度差を目標速度差に近づけつつ、各駆動手段の回転速度をそれぞれの目標回転速度に近づける各駆動手段の駆動信号を求めるための評価関数を用いて、各駆動手段の駆動信号を生成することを特徴とする。
本発明によれば、最適制御理論を利用して、各駆動手段間の回転速度差と目標速度差との誤差、各駆動手段の回転速度とそれぞれの目標回転速度との誤差を同時に小さくすることが可能な各駆動手段の駆動信号を求めることができる。
【0019】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の移動装置において、前記複数の駆動回転体は、細長い経路部材に対し、当該複数の駆動回転体の各周面が接触するように配置されることを特徴とする。
このような移動装置においては、複数の駆動回転体間の周速差が生じると、これによる滑りによって、駆動回転体の摩耗だけでなく、細長い経路部材の摩耗も問題となる。本発明によれば、複数の駆動回転体間の周速差を抑制できる結果、滑りが抑制されて、駆動回転体の摩耗だけでなく細長い経路部材の摩耗も抑制できる。
【0020】
また、請求項4の発明は、請求項3の移動装置において、前記複数の駆動回転体は、同一の経路部材にそれぞれの周面を接触させた状態で回転駆動するものであることを特徴とする。
複数の駆動回転体が同一の経路部材にそれぞれの周面を接触させた状態で回転駆動する構成においては、複数の駆動回転体間の周速差によって滑りが生じやすいので、駆動回転体の摩耗の問題が深刻化する。本発明によれば、このような深刻な問題を解決することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数の駆動回転体をそれぞれ個別の駆動手段で回転駆動させることにより移動する移動装置において、所望の移動速度に追従した移動を実現しつつ、いずれの駆動手段で負荷変動が生じる場合でも当該複数の駆動回転体間で周速差が生じるのを抑制でき、各駆動回転体の摩耗を抑制できるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態に係る昇降装置を示す斜視図である。
【図2】同昇降装置における走行体を示す斜視図である。
【図3】同走行体の従動ローラをZ軸方向から見たときの模式図である。
【図4】同昇降装置における4つの駆動ローラを駆動する駆動制御系の構成を示すブロック図である。
【図5】同昇降装置における制御部の制御内容を示すブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る移動装置を、経路部材であるワイヤーロープ上を移動する昇降装置に適用した一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る昇降装置1を示す斜視図である。
図2は、本昇降装置1における走行体2を示す斜視図である。
本昇降装置1は、所定の昇降経路に沿って配置される経路部材として、断面が略円形状の部材であるワイヤーロープ100を用い、このワイヤーロープ100に沿って移動して上昇及び下降が可能なものである。本実施形態においては、ワイヤーロープ100が鉛直方向に沿って配置された例であるが、鉛直方向に対して斜め方向に配置される場合でも、水平方向に配置される場合でもよい。また、ワイヤーロープ100に代えて、ベルト状のテザーなど、他の形状の経路部材を用いてもよい。

【0024】
本昇降装置1は、昇降距離が長いケースを想定したものであり、そのため、ワイヤーロープ100は強いテンションで張られている。このようなケースとしては、昇降装置を用いて高層ビルやタワーなどの清掃、検査等を行うケースや、地球上から静止軌道以上まで延びる昇降経路を昇降する宇宙エレベータあるいは軌道エレベータとして昇降装置を使用するケースなど、様々なケースが挙げられる。昇降装置1は、その用途に応じて、走行体2A,2B上に、清掃部材、撮像装置、籠体(ゲージ)などの各種部品が取り付けられるが、それらの部品についての説明は省略する。

【0025】
昇降装置1の走行体2は、第1走行体フレーム2Aと第2走行体フレーム2Bとから構成され、蝶番部材5によって図2に示すような展開状態にすることができる。走行体2には、ワイヤーロープ100を挟持する駆動回転体としての4つの駆動ローラ3A,3B,3C,3Dと従動回転体としての4つの従動ローラ4A,4B,4C,4Dとを備えた駆動装置が設けられている。駆動ローラ3A,3B,3C,3Dは、第1走行体フレーム2A側に設けられており、従動ローラ4A,4B,4C,4Dは、第2走行体フレーム2B側に設けられている。

【0026】
4つの駆動ローラ3A,3B,3C,3Dのうちの2つの駆動ローラ3A,3Bは、駆動手段である後述する第1駆動モータからの駆動力を、動力伝達ベルト6Aを介して分配し、それぞれ回転駆動する。同様に、残りの2つの駆動ローラ3C,3Dは、別の駆動手段である後述する第2駆動モータからの駆動力を、動力伝達ベルト6Bを介して分配し、それぞれ回転駆動する。従動ローラ4A,4B,4C,4Dは、それぞれ、駆動ローラ3A,3B,3C,3Dとの間にワイヤーロープ100を挟み込むように配置されている。各従動ローラ4A,4B,4C,4Dは、図3に示すように、それぞれ、スプリング7A,7B,7C,7Dによって駆動ローラ3A,3B,3C,3D側に付勢されており、その付勢力によって駆動ローラ3A,3B,3C,3Dとの間にワイヤーロープ100を挟持している。

【0027】
本実施形態における駆動ローラ3A,3B,3C,3D及び従動ローラ4A,4B,4C,4Dは、ワイヤーロープ100との接触面(ローラ外周面)が、ワイヤーロープ100の断面形状(断面円形状)に沿って湾曲している。これにより、ワイヤーロープ100の周面と駆動ローラ3A,3B,3C,3D及び従動ローラ4A,4B,4C,4Dとの接触面積を増やし、高い摩擦力を確保して、滑りの発生を抑制している。

【0028】
また、第2走行体フレーム2Bには、走行方向前方部と後方部にそれぞれガイド部8A,8Bが設けられている。これらのガイド部8A,8Bは、ワイヤーロープ100を3面でガイドしており、これにより、駆動ローラ3A,3B,3C,3D及び従動ローラ4A,4B,4C,4Dによる挟持部へワイヤーロープ100が適正に送り込まれるようにガイドされる。また、昇降装置1には、各種制御を行う電気回路基板や電源等も適宜設けられる。

【0029】
また、本実施形態の昇降装置1には、昇降装置1の姿勢維持のためのジャイロ装置10が搭載されている。このジャイロ装置10は、図1に示したように、走行体2の走行方向前方部に取り付けられているが、走行体2の走行方向中央部や後方部に取り付けてもよい。また、本実施形態におけるジャイロ装置10には、それぞれホイールケースに収納された状態の2つのフライホイール11A,11Bが設けられている。2つのフライホイール11A,11Bの自転軸であるホイール中心軸Oxに沿って延びる各ホイール軸部には、フライホイール駆動手段としてのホイール駆動モータ12A,12Bが個別に接続されている。各ホイール駆動モータ12A,12Bは互いに同期して駆動し、各ホイール駆動モータ12A,12Bの駆動力により、各フライホイール11A,11Bはそのホイール中心軸Oxを中心に回転駆動(自転)する。ホイール中心軸Oxを中心に自転している2つのフライホイール11A,11Bの回転軸保存性によって、ホイール中心軸Oxの軸方向を保つ効果が得られる。これにより、ワイヤーロープ100の長手方向中心軸Oz回りにおける走行体2の回転が抑制され、走行体2の姿勢が維持される。

【0030】
次に、昇降装置1の移動制御について説明する。
本実施形態においては、4つの駆動ローラ3A,3B,3C,3Dのうちの2つずつを、それぞれ異なる第1駆動モータ及び第2駆動モータによって駆動する。そのため、4つの駆動ローラ3A,3B,3C,3Dを単一の駆動モータで駆動する構成と比較して、当該移動装置を移動させるのに十分な駆動トルクが得やすい。特に、本実施形態の昇降装置1は、姿勢制御のために重量の大きなジャイロ装置10等を搭載するため、当該昇降装置1を昇降させるために大きな駆動トルクを必要とする構成である。このような構成であっても、複数の駆動モータを用いて駆動ローラ3A,3B,3C,3Dを駆動することで、十分な駆動トルクが得られる。ただし、上述したとおり、このように異なる駆動モータで回転駆動する複数の駆動ローラ3A,3B,3C,3Dにより昇降装置1を移動させる場合、これらの駆動ローラ間で周速差が生じやすく、その周速差に起因した滑りが発生して駆動ローラの摩耗が生じやすいという問題がある。本実施形態では、上述した双方向同期速度制御により、この問題を解決する。

【0031】
図4は、本実施形態における昇降装置1の駆動ローラ3A,3B,3C,3Dを駆動する駆動制御系の構成を示すブロック図である。
本実施形態においては、2つの駆動モータ21,22の回転速度をそれぞれ検出する第1回転速度センサ23及び第2回転速度センサ24が設けられている。これらの第1回転速度センサ23及び第2回転速度センサ24が検出した検出回転速度ω,ωは、制御部20に送られる。制御部20は、第1回転速度センサ23及び第2回転速度センサ24による検出回転速度(角速度)ω,ωに基づいて、各駆動モータ21,22の入力値u,uを求め、その入力値に基づく駆動信号を生成して各駆動モータ21,22へ出力する。これにより、各駆動モータ21,22は、その駆動信号に従って回転駆動する。

【0032】
ここで、第1回転速度センサ23によって検出される第1駆動モータ21の回転速度ωと、第1駆動モータ21の目標回転速度である第1目標回転速度Rとの誤差(第1誤差)をe(e=R-ω)とする。第2回転速度センサ24によって検出される第2駆動モータ22の回転速度ωと、第2駆動モータ22の目標回転速度である第2目標回転速度Rとの誤差(第2誤差)をe(e=R-ω)とする。また、第1駆動モータ21の回転速度ωと、第2駆動モータ22の回転速度ωとの誤差(相互誤差)を、e12(e12=ω-ω)とする。そして、本実施形態における制御部20は、これらの3つの誤差、すなわち、第1誤差e、第2誤差e、及び、相互誤差e12を同時に小さくするための最適な各駆動モータ21,22の入力値u,uを、最適制御理論に基づいて求める。

【0033】
具体的に説明すると、まず、第1駆動モータ21と第2駆動モータ22の運動方程式は、下記の式(1)及び(2)にそれぞれ示すものとなる。これらの式において、d,dは、それぞれ、第1駆動モータ21及び第2駆動モータ22に関わる負荷外乱であり、J,Jは、それぞれ、第1駆動モータ21及び第2駆動モータ22に関わる慣性モーメントであり、B,Bは、それぞれ、第1駆動モータ21及び第2駆動モータ22に関わる粘性定数であり、K,Kは、それぞれ、第1駆動モータ21及び第2駆動モータ22に関わるトルク定数である。これらのパラメータ値は、第1駆動モータ21及び第2駆動モータ22が同じ仕様であれば、第1駆動モータ21と第2駆動モータ22との間でほぼ同じ値をとることになる。
【数1】
JP2015104188A_000003t.gif

【0034】
前記式(1)及び(2)を離散時間系で表すと、下記の式(3)及び(4)にそれぞれ示すものとなる。ただし、kはサンプリング時期を示す0以上の整数である。
【数2】
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【0035】
ここで、本実施形態においては、第1駆動モータ21と第2駆動モータ22の目標回転速度R,Rは同一のものであり、R(k)=R(k)が成り立ち、R(k)=R(k)=R(k)とする。第1駆動モータ21と第2駆動モータ22の個々の回転速度誤差e(k),e(k)は、下記の式(5)及び(6)に示すものとなるので、第1駆動モータ21と第2駆動モータ22との間の回転速度差e12(k)は、下記の式(7)に示すとおり、e12(k)=e(k)-e(k)で表すことができる。
【数3】
JP2015104188A_000005t.gif

【0036】
前記式(3)~(7)よりエラーシステムと呼んでいる拡大形を構成すると、下記の式(8a)又は(8b)が得られる。これらの式において、Δは1階差分値を表すものであり、例えば、第1駆動モータ21のモータ入力値であれば、Δu(k)=u(k)-u(k-1)となる。
【数4】
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【数5】
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【0037】
前記式(8a)及び(8b)では、第1駆動モータ21及び第2駆動モータ22に対して非干渉である。また、前記式(8a)及び(8b)では、d(k)及びR(k)がいずれも一定であるとすれば、これらの項を消去することができる。なお、常に一定でなくても最終的に一定値になる場合には同様に扱うことができる。

【0038】
本実施形態では、上述したとおり、第1誤差e(k)、第2誤差e(k)、及び、相互誤差e12(k)を同時に小さくするためのものであるため、前記式(8a)又は(8b)に対する評価関数として、下記の式(9)を定義する。ただし、下記の式(9)中のパラメータQ及びHは、それぞれ、下記の式(10)及び(11)に示すとおりである。
【数6】
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【数7】
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【0039】
前記式(9)に示す評価関数を用いることにより、前記式(8a)や(8b)の非干渉なエラーシステムは、第1駆動モータ21と第2駆動モータ22が互いに干渉し合うことになる。前記(9)に示す評価関数は、第1駆動モータ21と第2駆動モータ22の各回転速度誤差e(k),e(k)の重みγ,γと、両者の回転速度差e12(k)の重みγ12を含んでいる。これらの重みγ,γ,γ12を変更することで様々な制御が実現できる。

【0040】
例えば、γ=0、γ=0、γ12=0の場合、第1駆動モータ21及び第2駆動モータ22が互いに独立した独立速度制御が実現される。また、γ≠0、γ=0、γ12≠0の場合、第1駆動モータ21の回転速度を主とする一方向同期速度制御が実現される。また、γ=0、γ≠0、γ12≠0の場合、第2駆動モータ22の回転速度を主とする一方向同期速度制御が実現される。そして、γ≠0、γ≠0、γ12≠0の場合、第1駆動モータ21及び第2駆動モータ22の回転速度がお互いに同期する双方向同期速度制御が実現される。

【0041】
したがって、本実施形態の制御部20を用いれば、評価関数の重みγ,γ,γ12を適宜変更することで、双方向同期速度制御のみならず、各駆動モータ21,22の独立速度制御から、いずれかの駆動モータ21,22を主とする一方向同期速度制御まで実現可能である。

【0042】
前記式(8a)又は(8b)に示したエラーシステムに対し、前記式(9)に示す評価関数を最小にするような最適制御入力(モータ入力値)u(k),u(k)を最適制御理論に基づいて導出すると、それぞれ、下記の式(12)及び(13)が得られる。これらの式(12)及び(13)を変形すると、下記の式(14)及び(15)が得られ、これらの式(14)及び(15)に基づいて図5に示すブロック線図が得られる。
【数8】
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【数9】
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【0043】
本実施形態の昇降装置1は、断面が円形状であるワイヤーロープ100を鉛直方向に延ばした経路部材とした自走式の移動装置の例であるが、ベルト状等の他の形状の経路部材や、水平方向あるいは鉛直方向に対して傾斜方向する方向に延ばした経路部材などに対応する移動装置であってもよい。
また、本実施形態においては、2つの駆動モータ21,22で4つの駆動ローラ3A,3B,3C,3Dを駆動させる構成について説明したが、3つ以上の駆動モータで3つ以上の駆動ローラを駆動させる構成であっても同様である。
【符号の説明】
【0044】
1 昇降装置
2 走行体
3A,3B,3C,3D 駆動ローラ
4A,4B,4C,4D 従動ローラ
6A,6B 動力伝達ベルト
10 ジャイロ装置
11A,11B フライホイール
12A,12B ホイール駆動モータ
20 制御部
21,22 駆動モータ
23,24 回転速度センサ
100 ワイヤーロープ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4